図1は、本発明の実施例1に係る内燃機関の排気浄化装置を表す概略構成図、図2は、実施例1の内燃機関の排気浄化装置が適用されたハイブリッド車両を表す概略構成図、図3は、実施例1の内燃機関の排気浄化装置の構成図、図4は、実施例1の内燃機関の排気浄化装置における排気浄化制御を表すフローチャートである。
実施例1の内燃機関の排気浄化装置が適用されたハイブリッド車両において、図2に示すように、車両には、動力源として、内燃機関としてのエンジン101と、電気モータとしてのモータジェネレータ102が搭載されており、また、この車両には、エンジン101の出力を受けて発電を行うモータジェネレータ103が搭載されている。これらのエンジン101と各モータジェネレータ102,103は、動力分割機構104によって接続されている。この動力分割機構104は、エンジン101の出力をモータジェネレータ103と駆動輪105とに振り分けると共に、モータジェネレータ102からの出力を駆動輪105に伝達したり、減速機106及び駆動軸107を介して駆動輪105に伝達される駆動力に関する変速機として機能する。
モータジェネレータ102は交流同期電動機であり、交流電力によって駆動する。インバータ108は、バッテリ109に蓄えられた電力を直流から交流に変換してモータジェネレータ102に供給すると共に、モータジェネレータ103によって発電される電力を交流から直流に変換してバッテリ109に蓄えるためのものである。モータジェネレータ103も、基本的には上述したモータジェネレータ102とほぼ同様の構成を有しており、交流同期電動機としての構成を有している。この場合、モータジェネレータ102が主として駆動力を出力するのに対し、モータジェネレータ103は主としてエンジン101の出力を受けて発電するものである。
また、モータジェネレータ102は主として駆動力を発生させるが、駆動輪105の回転を利用して発電(回生発電)することもでき、発電機として機能することも可能である。このとき、駆動輪105にはブレーキ(回生ブレーキ)が作用するので、これをフットブレーキやエンジンブレーキと併用することにより、車両を制動させることができる。一方、モータジェネレータ103は主としてエンジン101の出力を受けて発電をするが、インバータ108を介してバッテリ109の電力を受けて駆動する電動機としても機能することができる。
エンジン101のクランクシャフト110には、各気筒のクランク角度を検出するクランク角センサ111が設けられている。このクランク角センサ111は、エンジンECU112に接続され、検出結果を出力している。また、モータジェネレータ102及びモータジェネレータ103の各駆動軸113,114には、それぞれの回転位置及び回転数を検出する回転数センサ115,116が設けられている。各回転数センサ115,116は、それぞれモータECU117に接続され、検出結果を出力している。
上述した動力分割機構104は、プラネタリギヤユニットにより構成されている。即ち、この動力分割機構(プラネタリギヤユニット)104は、サンギヤ141と、このサンギヤ141の周囲に配置された複数のプラネタリギヤ142と、この各プラネタリギヤ142を保持するギヤキャリア143と、プラネタリギヤ142のさらに外周に配置されたリングギヤ144とから構成されている。そして、エンジン101のクランクシャフト110が中心軸145を介してギヤキャリア143に結合されており、エンジン101の出力はプラネタリギヤユニット104のギヤキャリア143に入力される。また、モータジェネレータ102は内部にステータ146とロータ147を有しており、このロータ147が駆動軸113を介してリングギヤ144に結合され、ロータ147及びリングギヤ144は図示しないギヤユニットを介して減速機106に結合されている。この減速機106は、モータジェネレータ102からプラネタリギヤユニット104のリングギヤ144に入力された出力を駆動軸107に伝達するものであり、モータジェネレータ102は駆動軸107と常時接続された状態となっている。
また、モータジェネレータ103は、上述したモータジェネレータ102と同様に、内部にステータ148とロータ149を有しており、このロータ149が駆動軸114及び図示しないギヤユニットを介してサンギヤ141に結合されている。つまり、エンジン101の出力は、プラネタリギヤユニット104で分割され、サンギヤ141を介してモータジェネレータ103のロータ149に入力される。また、エンジン101の出力は、プラネタリギヤユニット104で分割され、リングギヤ144などを介して駆動軸107にも伝達可能となっている。
そして、モータジェネレータ103の発電量を制御してサンギヤ141の回転を制御することにより、プラネタリギヤユニット104全体を無段変速機として用いることができる。即ち、エンジン101またはモータジェネレータ102の出力は、プラネタリギヤユニット104によって変速された後に駆動軸107に出力される。また、モータジェネレータ103の発電量(電気モータとして機能する場合は電力消費量)を制御してエンジン101の回転数を制御することもできる。なお、モータジェネレータ102、モータジェネレータ103の回転数を制御する場合は、回転センサ115,116の出力を参照してモータECU117がインバータ108を制御することにより行われることとなり、これによりエンジン101の回転数も制御可能である。
上述した各種制御は、複数の電子制御ユニット(ECU)によって制御される。ハイブリッド車両として特徴的なエンジン101による駆動と各モータジェネレータ102,103による駆動とは、メインECU118によって総合的に制御される。即ち、メインECU118によりエンジン101の出力と各モータジェネレータ102,103による出力の配分が決定され、エンジン101、各モータジェネレータ102,103を制御すべく、各制御指令がエンジンECU112及びモータECU117に出力される。
また、エンジンECU112及びモータECU117は、エンジン101、各モータジェネレータ102,103の情報をメインECU118にも出力している。このメインECU118には、バッテリ109の充電量が出力されており、この充電量が不足した場合に、メインECU118はバッテリ109に充電をするようにモータジェネレータ103を発電させる制御を行う。
本実施例のハイブリッド車両は、上述したように構成されているので、ハイブリッド車両を運行している間に車両全体で要求される必要出力をエンジン101と各モータジェネレータ102,103とに配分することにより、エンジン101の運転状態を所望の運転状態に制御しつつ、車両全体で要求される出力をも満たすことが可能となっている。
また、上述したエンジン101の排気浄化装置において、図1に示すように、エンジン101は筒内噴射式の多気筒型であって、シリンダブロック11上にシリンダヘッド12が締結されており、このシリンダブロック11に形成された複数のシリンダボア13にピストン14がそれぞれ上下移動自在に嵌合している。そして、シリンダブロック11の下部にクランクケース15が締結され、このクランクケース15内にクランクシャフト110が回転自在に支持されており、各ピストン14はコネクティングロッド17を介してこのクランクシャフト110にそれぞれ連結されている。
燃焼室18は、シリンダブロック11とシリンダヘッド12とピストン14により構成されており、この燃焼室18は、上部(シリンダヘッド12の下面)の中央部が高くなるように傾斜したペントルーフ形状をなしている。そして、この燃焼室18の上部、つまり、シリンダヘッド12の下面に吸気ポート19及び排気ポート20が対向して形成されており、この吸気ポート19及び排気ポート20に対して吸気弁21及び排気弁22の下端部がそれぞれ位置している。この吸気弁21及び排気弁22は、シリンダヘッド12に軸方向に沿って移動自在に支持されると共に、吸気ポート19及び排気ポート20を閉止する方向に付勢支持されている。また、シリンダヘッド12には、吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24が回転自在に支持されており、吸気カム25及び排気カム26が図示しないローラロッカアームを介して吸気弁21及び排気弁22の上端部に接触している。
従って、エンジン101に同期して吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24が回転すると、吸気カム25及び排気カム26がローラロッカアームを作動させ、吸気弁21及び排気弁22が所定のタイミングで上下移動することで、吸気ポート19及び排気ポート20を開閉し、吸気ポート19と燃焼室18、燃焼室18と排気ポート20とをそれぞれ連通することができる。
吸気ポート19には、インテークマニホールド27を介してサージタンク28が連結され、このサージタンク28に吸気管29が連結されており、この吸気管29の空気取入口にはエアクリーナ30が取付けられている。そして、このエアクリーナ30の下流側にスロットル弁31を有する電子スロットル装置32が設けられている。また、シリンダヘッド12には、燃焼室18に直接燃料を噴射するインジェクタ33が装着されており、このインジェクタ33は、吸気ポート19側に位置して上下方向に所定角度傾斜している。更に、シリンダヘッド12には、燃焼室18の上方に位置して混合気に着火する点火プラグ34が装着されている。
一方、排気ポート20には、エギゾーストマニホールド35を介して排気管36が連結されており、この排気管36には、排気ガス中に含まれるHC、CO、NOxなどの有害物質を浄化処理する第1触媒装置(第1排気浄化触媒)37と第2触媒装置(第2排気浄化触媒)38とが装着され、第1触媒装置37は排気管36の上流側に配設され、第2触媒装置38は排気管36の下流側に配設されている。また、この第1触媒装置37と第2触媒装置38の間の排気管36には、排気ガス中に含まれるHCを吸着する炭化水素吸着装置(炭化水素吸着材)39が装着されている。
この第1、第2触媒装置37,38は、図1及び図3に示すように、排気ガス中の有害物質を浄化処理するものであり、具体的には、排気ガス中に含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)などの有害物質を浄化処理することができ、特に、空燃比が理論空燃比(ストイキ)近傍にあるときに、排気ガス中の有害物質を効率良く浄化処理することができる。なお、この三元触媒としては、アルミナをベースとし、白金、パラジウム、ロジウムを加えた貴金属が担持されており、炭化水素と一酸化炭素の酸化反応と、窒素酸化物の還元反応を同時に行わせることができる。そして、第1触媒装置37は、排気管36の上流側に燃焼室18に接近して設けられることで、高温の排気ガスにより早期に加熱されて活性化することで、エンジン始動時に排出される排気ガス中の有害物質を適正に浄化処理できるようになっている。
一方、炭化水素吸着装置39は、排気ガス中の炭化水素を吸着可能な炭化水素吸着機能を有するものである。即ち、この炭化水素吸着装置39において、円筒形状をなす大径のハウジング51内の中央部に円筒形状をなす小径の配管52が配設されることで、配管52内に第1通路53が形成されると共に、ハウジング51と配管52との間に第2通路54が形成される。そして、この第2通路54にハニカム形状をなす触媒部55が形成され、この触媒部55に炭化水素吸着機能を有するHC吸着剤が担持されている。従って、炭化水素吸着装置39内に、炭化水素吸着機能を有しない第1通路53と、炭化水素吸着機能を有する第2通路54が形成される。
第1通路53の上流側には、配管52の前端部に位置してこの第1通路53を開閉するバタフライ式の開閉弁56が設けられている。従って、この開閉弁56により第1通路53を開放することで、排気ガスを第1通路53に導入することができ、開閉弁56により第1通路53を閉止することで、排気ガスを第2通路54に導入することができる。この場合、開閉弁56により通路切換手段が構成される。
ところで、図1に示すように、上述したエンジンECU112は、エンジン運転状態に基づいてインジェクタ33や点火プラグ34などを制御可能となっている。即ち、吸気管29の上流側にはエアフローセンサ41及び吸気温センサ42が装着されており、計測した吸入空気量、吸気温度をエンジンECU112に出力している。また、電子スロットル装置32にはスロットルポジションセンサ43が装着されており、現在のスロットル開度をエンジンECU112に出力している。更に、上述したクランク角センサ111は、検出した各気筒のクランク角度をエンジンECU112に出力し、このエンジンECU112は検出したクランク角度に基づいて各気筒における吸気、圧縮、膨張(爆発)、排気の各行程を判別すると共に、エンジン回転数を算出している。また、シリンダブロック11にはエンジン冷却水温を検出する水温センサ45が設けられており、検出したエンジン冷却水温をエンジンECU112に出力している。また、排気管36における第2触媒装置38の上流側には、排気ガスの酸素濃度を検出するO2センサ46が設けられており、現在の排気ガスの酸素濃度をエンジンECU112に出力している。従って、エンジンECU112は、検出した吸入空気量、吸気温度、スロットル開度(または、図示しないアクセルポジションセンサが検出したアクセル開度)、エンジン回転数、エンジン冷却水温、排気ガス中の酸素濃度などのエンジン運転状態に基づいて、燃料噴射量、噴射時期、点火時期などを決定している。
また、エンジンECU112は、エンジン運転状態に基づいて上述した開閉弁56を開閉制御可能となっている。即ち、エンジンECU112は、第1触媒装置37と第2触媒装置38と炭化水素吸着装置39の温度を推定している。そして、このエンジンECU112は第1触媒装置37及び第2触媒装置38の温度が活性化温度より低く、炭化水素吸着装置39の温度も炭化水素脱離温度より低いときには、炭化水素吸着装置39にて、開閉弁56により第1通路53を閉止し、排気ガスを第2通路54の触媒部55に導入する。また、第1触媒装置37及び第2触媒装置38の温度が活性化温度より低く、炭化水素吸着装置39の温度が炭化水素脱離温度以上のときには、炭化水素吸着装置39にて、開閉弁56により第1通路53を開放し、排気ガスを第1通路53に導入する。そして、第1触媒装置37の温度または第2触媒装置38の温度が活性化温度以上のときには、炭化水素吸着装置39の温度に拘らず、炭化水素吸着装置39にて、開閉弁56により第1通路53を開放し、排気ガスを第1通路53に導入する。
この場合、各触媒装置37,38,39の温度は、エンジン運転状態に基づいて算出された排気ガス温度から推定すればよい。例えば、エンジン101の運転状態を表すパラメータとして吸入空気量、燃料噴射量、エンジン負荷、空燃比などに基づいて第1触媒装置37に流入する排気ガス温度を推定し、この排気ガス温度と第1触媒装置37の活性化状況に基づいて炭化水素吸着装置39に流入する排気ガス温度を推定し、この排気ガス温度と炭化水素吸着装置39に吸着された炭化水素の吸着量に基づいて第2触媒装置38に流入する排気ガス温度を推定する。そして各触媒装置37,38,39に流入する排気ガス温度に基づいて各触媒装置37,38,39の温度を推定する。
ここで、上述した実施例1の内燃機関の排気浄化装置による排気浄化制御について、図4のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
エンジン101の排気浄化制御において、図4に示すように、ステップS11にて、エンジンECU112は、エンジン101が駆動中であるかどうかを判定する。即ち、このエンジン101が搭載されたハイブリッド車両は、駆動源が車両の走行状態に応じてエンジン101とモータジェネレータ102との間で間欠的に切り換るため、ここでは、エンジン101が駆動しているかどうかを確認する。このステップS11にて、エンジン101が駆動中でないと判定されたら、何もしないでこのルーチンを抜ける。
一方、ステップS11にて、エンジン101が駆動中であると判定されたら、ステップS12にて、エンジンECU112は、エンジン運転状態に基づいて第1、第2触媒装置37,38及び炭化水素吸着装置39の温度T1,T2,T3を算出して推定する。そして、ステップS13では、エンジンECU112が推定した第1触媒装置37の推定温度T1が活性化温度Ts1(例えば、300℃)以上かどうかを判定する。この場合、エンジン101の始動暖機時には、第1触媒装置37が排気ガスにより十分に昇温されていないため、ステップS13では、第1触媒装置37の推定温度T1が活性化温度Ts1より低いと判定し、ステップS14に移行する。このステップS14では、エンジンECU112が推定した第2触媒装置38の推定温度T2が活性化温度Ts2(例えば、300℃)以上かどうかを判定する。この場合でも、エンジン101の始動暖機時には、第2触媒装置38が排気ガスにより十分に昇温されていないため、ステップS14では、第2触媒装置38の推定温度T2が活性化温度Ts2より低いと判定し、ステップS15に移行する。
続いて、ステップS15では、エンジンECU112が推定した炭化水素吸着装置39の推定温度T3がHC脱離温度Ts3(例えば、120℃)以上かどうかを判定する。この場合、エンジン101の始動暖機時には、炭化水素吸着装置39が排気ガスにより十分に昇温されていないため、ステップS15では、炭化水素吸着装置39の推定温度T3がHC脱離温度Ts3より低いと判定し、ステップS16に移行する。そして、このステップS16にて、開閉弁56により第1通路53を閉止することで、排気ガスを第2通路54に導入可能とする。
従って、エンジン101の暖機時には、燃焼室18から排出された高温の排気ガスは、排気管36を通して第1触媒装置37に到達し、ここで、第1触媒装置37を昇温してから炭化水素吸着装置39に到達する。そして、この炭化水素吸着装置39では、開閉弁56により第1通路53が閉止されているため、排気ガスは第2通路54に導入され、触媒部55にて排気ガス中の炭化水素が吸着除去される。その後、炭化水素が吸着除去された排気ガスは、排気管36を通して第2触媒装置38に到達し、ここで、第2触媒装置38を昇温してから外部に排出される。そのため、各触媒装置37,38,39を用いることで、排気ガス中の炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物などを含む有害物質を適正に浄化処理することができると共に、第1、第2触媒装置37,38を昇温して早期に活性化することができる。
一方、エンジン101の暖機を継続すると、炭化水素吸着装置39も昇温されて温度が上昇する。この炭化水素吸着装置39は、炭化水素を吸着可能な温度域があり、所定温度以上になると触媒部(吸着剤)55は吸着した炭化水素を脱離してしまう。そのため、第1、第2触媒装置37,38が十分に活性化していない場合であっても、ステップS15にて、炭化水素吸着装置39の推定温度T3がHC脱離温度Ts3以上であると判定されたら、ステップS17に移行し、開閉弁56により第1通路53を開放することで、排気ガスを第1通路53に導入する。この場合、第2通路54も開放されているが、触媒部55での流動抵抗が大きいため、排気ガスはこの第2通路54にほとんど流れ込まない。
従って、炭化水素吸着装置39では、開閉弁56により第1通路53が開放されているため、排気ガスは第1触媒装置37で有害物質が浄化処理された後、炭化水素吸着装置39の第1通路53を通過して第2触媒装置38に到達し、ここで有害物質を再度浄化処理してから外部に排出される。そのため、排気ガスが炭化水素吸着装置39における第2通路54の触媒部55に導入されることはなく、炭化水素吸着装置39からの炭化水素の脱離を防止することができる。
その後、エンジン101の暖機が完了すると、第1触媒装置37や第2触媒装置38が排気ガスにより昇温されるため、上述したステップS13にて、第1触媒装置37の推定温度T1が活性化温度Ts1以上と判定されると、ステップS17に移行する。また、第1触媒装置37が昇温されていなくても、上述したステップS14にて、第2触媒装置38の推定温度T2が活性化温度Ts2以上と判定されると、ステップS17に移行する。すると、このステップS17にて、開閉弁56により第1通路53を開放することで、排気ガスを第1通路53に導入可能とする。
従って、エンジン101の暖機後には、燃焼室18から排出された高温の排気ガスは、排気管36を通して第1触媒装置37に到達し、ここで、炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物などを含む有害物質を浄化処理してから炭化水素吸着装置39に到達する。そして、この炭化水素吸着装置39では、開閉弁56により第1通路53が開放されているため、排気ガスは第1通路53を通過して第2触媒装置38に到達し、ここで、第1触媒装置37と同様に、有害物質を浄化処理してから外部に排出される。そのため、第1、第2触媒装置37,38だけで、排気ガス中の炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物などを含む有害物質を適正に浄化処理することができる。
このように実施例1の内燃機関の排気浄化装置にあっては、エンジン101の排気管36に、排気ガス中に含まれるHC、CO、NOxなどを浄化処理する第1、第2触媒装置37,38を装着すると共に、この第1、第2触媒装置37,38の間に排気ガス中に含まれる炭化水素を吸着処理する炭化水素吸着装置39を装着し、炭化水素吸着装置39に第1通路53を形成すると共にその外側に第2通路54を形成し、第2通路54にHC吸着剤が担持された触媒部55を設け、第1通路53に開閉弁56を設け、第1触媒装置37及び第2触媒装置38の温度が活性化温度より低く、炭化水素吸着装置39の温度が炭化水素脱離温度以上のときには、炭化水素吸着装置39にて、開閉弁56により第1通路53を開放し、排気ガスを第1通路53に導入するようにしている。
従って、炭化水素吸着装置39が脱離温度以上のときには、第2通路54の触媒部55にて炭化水素を適正に吸着することができず、逆に、脱離させてしまうことから、第1、第2触媒装置37,38が活性化温度より低くても、炭化水素吸着装置39がこの脱離温度以上のときには、開閉弁56により第1通路53が開放し、排気ガスを第1通路53を通過させて触媒部55への流入を阻止することで、炭化水素吸着装置39からの炭化水素の脱離を防止することができ、その結果、排気浄化性能を向上することができる。
また、実施例1の内燃機関の排気浄化装置では、本発明の排気浄化装置をエンジン101とモータジェネレータ102とを動力源として走行可能なハイブリッド車両に適用し、この車両の走行状態に応じて駆動源がエンジン101とモータジェネレータ102との間で間欠的に切り換るとき、つまり、自動停止したエンジン101が再始動されたとき、第1、第2触媒装置37,38及び炭化水素吸着装置39の温度に応じて炭化水素吸着装置39における各通路53,54を切換えるようにしている。従って、第1、第2触媒装置37,38が活性化していないエンジン101の再始動時には、炭化水素吸着装置39の触媒部55により排気ガス中の炭化水素を吸着することができ、炭化水素吸着装置39が高温となったときには、排気ガスを炭化水素吸着装置39の触媒部55に流入させないことで、炭化水素の脱離を防止することができ、その結果、排気浄化性能を向上することができる。
図5は、本発明の実施例2に係る内燃機関の排気浄化装置における排気浄化制御を表すフローチャートである。なお、実施例2の内燃機関の排気浄化装置は、実施例1で説明したものとほぼ同様であるため、図1を用いて説明すると共に、実施例1で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
実施例2の内燃機関の排気浄化装置におけるエンジン101の排気浄化制御において、図1及び図5に示すように、ステップS21にて、エンジンECU112は、エンジン101が駆動中であるかどうかを判定し、エンジン101が駆動中でないと判定されたら、何もしないでこのルーチンを抜ける。一方、ステップS21にて、エンジン101が駆動中であると判定されたら、ステップS22にて、エンジンECU112は、エンジン運転状態に基づいて第1、第2触媒装置37,38及び炭化水素吸着装置39の温度T1,T2,T3を算出して推定する。
ステップS23では、エンジンECU112が推定した第1触媒装置37の推定温度T1が活性化温度Ts1以上かどうかを判定する。ここで、エンジン101の始動暖機時には、第1触媒装置37が排気ガスにより十分に昇温されていないため、ステップS23では、第1触媒装置37の推定温度T1が活性化温度Ts1より低いと判定し、ステップS24に移行する。このステップS24では、エンジンECU112が推定した第2触媒装置38の推定温度T2が活性化温度Ts2以上かどうかを判定する。ここで、エンジン101の始動暖機時には、第2触媒装置38が排気ガスにより十分に昇温されていないため、ステップS24では、第2触媒装置38の推定温度T2が活性化温度Ts2より低いと判定し、ステップS25に移行する。
続いて、ステップS25では、エンジンECU112が推定した炭化水素吸着装置39の推定温度T3がHC脱離温度Ts3以上かどうかを判定する。ここで、エンジン101の始動暖機時には、炭化水素吸着装置39が排気ガスにより十分に昇温されていないため、ステップS25では、炭化水素吸着装置39の推定温度T3がHC脱離温度Ts3より低いと判定し、ステップS26に移行する。そして、このステップS26にて、開閉弁56により第1通路53を閉止することで、排気ガスを第2通路54に導入可能とする。
従って、エンジン101の暖機時には、排気ガスが第1触媒装置37の通過時に、この第1触媒装置37を昇温してから炭化水素吸着装置39に到達する。この炭化水素吸着装置39では、第1通路53が閉止されているため、排気ガスは第2通路54の触媒部55に導入されて排気ガス中の炭化水素が吸着除去される。そして、排気ガスは、炭化水素吸着装置39から第2触媒装置38に到達し、この第2触媒装置38を昇温する。そのため、各触媒装置37,38,39を用いることで、排気ガス中の炭化水素を適正に浄化処理することができると共に、第1、第2触媒装置37,38を昇温して早期に活性化することができる。
一方、エンジン101の暖機を継続すると、炭化水素吸着装置39も昇温されて温度が上昇し、触媒部(吸着剤)55は吸着した炭化水素を脱離してしまう。そのため、第1、第2触媒装置37,38が十分に活性化していない場合であっても、ステップS25にて、炭化水素吸着装置39の推定温度T3がHC脱離温度Ts3以上であると判定されたら、ステップS28に移行し、開閉弁56により第1通路53を開放することで、排気ガスを第1通路53に導入する。
従って、炭化水素吸着装置39の第1通路53が開放されているため、排気ガスは第1触媒装置37で有害物質が浄化処理された後、炭化水素吸着装置39の第1通路53を通過して第2触媒装置38に到達し、ここで有害物質を再度浄化処理してから外部に排出される。そのため、排気ガスが炭化水素吸着装置39における第2通路54の触媒部55に導入されることはなく、炭化水素吸着装置39からの炭化水素の脱離を防止することができる。
その後、エンジン101の暖機が完了すると、第1触媒装置37や第2触媒装置38が排気ガスにより昇温されるため、上述したステップS23にて、第1触媒装置37の推定温度T1が活性化温度Ts1以上と判定されると、ステップS27に移行する。また、このステップS24にて、第2触媒装置38の推定温度T2が活性化温度Ts2以上と判定されると、ステップS27に移行する。このステップS27では、第2触媒装置38に導入される排気ガスの空燃比がリーン雰囲気で、且つ、第2触媒装置38の推定温度T2が活性化温度Ts2以上で、且つ、炭化水素吸着装置39の推定温度T3がHC脱離温度Ts3以上かどうかを判定する。
即ち、第2触媒装置38に導入される排気ガスの空燃比がリーン雰囲気であるときには、この第2触媒装置38が三元触媒であるため、排気ガス中に含有する酸素により触媒に担持された貴金属が劣化してしまう。そこで、第2触媒装置38が活性化状態にあり、炭化水素吸着装置39に炭化水素が十分に吸着しているときに、第2触媒装置38に導入される排気ガスの空燃比がリーン雰囲気であったら、この排気ガスを炭化水素吸着装置39の第2通路54に流入することで、触媒部55に吸着している炭化水素を脱離させ、排気ガスの空燃比をストイキに近づけてから第2触媒装置38に導入するようにしている。
つまり、ステップS27にて、第2触媒装置38に導入される排気ガスの空燃比がリーン雰囲気で、且つ、第2触媒装置38の推定温度T2が活性化温度Ts2以上で、且つ、炭化水素吸着装置39の推定温度T3がHC脱離温度Ts3以上であると判定されたら、ステップS26に移行し、このステップS26にて、開閉弁56により第1通路53を閉止することで、排気ガスを第2通路54に導入する。
従って、エンジン101の運転状態により排気ガスの空燃比がリーン雰囲気となったときには、炭化水素吸着装置39の第1通路53が閉止されているため、排気ガスが第1触媒装置37を通ってから炭化水素吸着装置39の第2通路54に導入され、ここで、触媒部55に吸着している炭化水素が脱離し、排気ガスは空燃比がストイキ近傍となってから第2触媒装置38に導入される。そのため、この排気ガスによる第2触媒装置38の劣化を抑制することができる。
一方、ステップS27にて、第2触媒装置38の推定温度T2が活性化温度Ts2以上で、且つ、炭化水素吸着装置39の推定温度T3がHC脱離温度Ts3以上であると判定されても、第2触媒装置38に導入される排気ガスの空燃比がリーン雰囲気でなかったら、ステップS28に移行し、このステップS28にて、開閉弁56により第1通路53を開放することで、排気ガスを第1通路53に導入する。
従って、エンジン101の暖機後には、炭化水素吸着装置39の第1通路53が開放されているため、排気ガスは、第1触媒装置37で炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物などを含む有害物質が浄化処理されてから炭化水素吸着装置39に到達し、第1通路53を通過して第2触媒装置38に到達し、ここで同様に有害物質を浄化処理してから外部に排出される。そのため、第1、第2触媒装置37,38だけで、排気ガス中の炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物などを含む有害物質を適正に浄化処理することができる。
このように実施例2の内燃機関の排気浄化装置にあっては、第2触媒装置38に導入される排気ガスの空燃比がリーン雰囲気で、第2触媒装置38の推定温度T2が活性化温度Ts2以上で、炭化水素吸着装置39の推定温度T3がHC脱離温度Ts3以上であるときには、開閉弁56により第1通路53を閉止し、排気ガスを第2通路54に導入するようにしている。
従って、エンジン101の運転状態により排気ガスの空燃比がリーン雰囲気となっても、排気ガスを炭化水素吸着装置39の第2通路54に導入し、ここで、触媒部55に吸着している炭化水素を脱離させることで、排気ガスの空燃比をストイキ近傍とすることができ、この排気ガスを第2触媒装置38に導入するため、この排気ガスによる第2触媒装置38の劣化を抑制することができ、その結果、排気浄化性能を向上することができる。
なお、上述した各実施例では、各触媒装置37,38,39の温度をエンジン運転状態に基づいて算出された排気ガス温度から推定するようにしたが、各触媒装置37,38,39内や各触媒装置37,38,39より上流側の排気管36に温度センサを装着することで、各触媒装置37,38,39の温度や各触媒装置37,38,39に流入する排気ガス温度を直接検出するようにしてもよい。また、炭化水素吸着装置39からの炭化水素の脱離判定を触媒温度としたが、触媒部55への炭化水素の吸着量や劣化度合を考慮して判定値を可変としてもよい。
また、本発明の内燃機関の排気浄化装置をハイブリッド車両に搭載されたエンジンに適用して説明したが、交差点などで所定時間停車したときにエンジンを自動停止するアイドルストップ機能を有する内燃機関を搭載した車両に適用することもできる。更に、本発明の内燃機関の排気浄化装置を筒内噴射式の多気筒エンジンに適用して説明したが、この形式のエンジンに限らず、ポート噴射式のエンジンに適用することもできる。