JP2006316298A - 溶接性および靱性を兼ね備えた引張り強さ700MPa級以上の高張力鋼材およびその製造方法 - Google Patents

溶接性および靱性を兼ね備えた引張り強さ700MPa級以上の高張力鋼材およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 溶接性および靱性を兼ね備えた引張り強さ700MPa級以上の高張力鋼材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 質量%で、C:0.005〜0.08%、Si:0.01〜0.40%、Mn:0.10〜3.0%、Al:0.010〜0.10%、W:0.10〜3.0%、Nb:0.010〜0.080%、V:0.010〜0.50%を含有し、ベイナイトまたはマルテンサイト相のラス構造を内包する大傾角粒界に100nm以下の間隔でWを含有する金属間化合物が析出し、該化合物の平均粒子径が1μm以下であり、該化合物としてWの析出量が定電位電解抽出残渣を蛍光X線分析によって定量分析して得られる分析値が0.005%超であり、光学顕微鏡による断面観察の視野内においてベイナイトまたはマルテンサイト相が面積率で50%以上を有することを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、引張り強さが700MPa以上と高く、詳しくは鋼板の圧延方向の引張り強さが700MPa以上であり、各種構造用材料あるいは機械用部品として、組み立て、建造の際に主に溶接を適用し、その継手特性にも母材と同等の仕様が必要である高張力鋼、例えば造船、橋梁、建築用各種鋼材、さらには室温以下の温度で使用する耐圧貯蔵容器の製造に際して使用する鋼材に関する。
炭素含有量が0.3%以下のいわゆる低炭素鋼は、加工性と溶接性に優れ、多くの構造物で使用される。建築物、車両、船舶、産業用機械などはこれら低炭素鋼で骨格、あるいは内殻ないしは外殻を構成し、構造体が必要とする強度を主に担う。Cを低減した「軟鋼」では、その強度を極力高めて構造体の重量を軽減するための技術開発が盛んに行われてきた。溶接構造でなる構造体は、鋼の比強度(単位質量あたりの強さ)を上げることで大型化もしくは構造の複雑化、さらには強度が高いことで得られる安全性を獲得してきた。
しかし、低炭素鋼の強度上昇には炭素以外の合金元素の大量添加が必要であったり、あるいは鋼の製造に際して厳格に結晶組織を制御するための装置の複雑化を伴うなど、高強度化あるいは加工性を得る代わりに生産性の低下や生産コストの上昇を伴うという問題があった。特に近年は、構造体製造時に不可避の溶接施工工程を極力短縮することが試みられ、溶接入熱を増大させる技術の開発が進められた。その結果、溶接時の入熱は5万J/cmを超えることが多くなり、一部には10万J/cm、建築物では20万J/cmを超える入熱での溶接さえ実施されている。こうした高い溶接入熱の場合、被溶接材料は大きな熱影響を受け、溶融金属の直近では1400℃もの高温にさらされ、また鋼のA3変態点である900℃以上の温度にさらされる、いわゆる「溶接熱影響部」の幅が広くなる。その結果、この溶接熱影響部では、厳格に組織を制御して製造した低炭素鋼の組織が、大きな溶接入熱による昇温と、その後の溶接継手の冷却速度とで決まる制御不可能な組織形態に変質することになる。溶接後に残留応力除去のための焼き鈍し程度の熱処理は施されるにせよ、そうした熱処理は変態点以上への再加熱ではないことから、変質した組織を改善させることは困難である。
こうした溶接熱影響部においても、構造体は溶接熱影響のない健全部と同様な特性を極力維持することが求められるため、結局はこの溶接熱影響部での鋼材の特性発揮が最重要課題となり、その確保のための技術開発が材料開発の主要課題となった。
結晶組織、特に溶接ボンド近傍の旧γ粒径の増大を防止すべく、高温で分解しにくい窒化物や酸化物を利用した鋼材に関する発明が特許文献1および2などで記載されている。しかし、本発明で対象とする、強度が700MPa以上で、組織の構成が50%以上ベイナイトまたはマルテンサイトである高張力鋼においては、これらの発明を適用しても、材料の強度を適正に発現するために実施した結晶組織の製造時における上述の形態、すなわち母材と同等の結晶粒径、転位密度、析出物の分散密度は溶接時の熱影響によって再変態を経過することによって変化してしまうために再現することが困難であり、母材と同等の靭性が確保できる場合でもこうした熱影響部での強度を母材と同等にすることが困難となるという課題が未解決であった。
一方で、NiやMoなどを添加して、鋼材の焼き入れ性を制御し、強度を確保する手法も当然、合金設計の考え方としては妥当である。しかし、NiやMoは高価な元素であって、工業的には構造用鋼に例えば5%を超えて大量添加することは実用的ではない。コストの大幅上昇を嫌って、添加量を制限する場合には効果が少なく、コスト増のみが問題となるため、実用的な解決策にはなりがたい。Nb,V,Tiなどの元素を大量に添加した場合にはこれらの元素を主体とする炭化物ないし窒化物が析出して強度こそ上昇するものの、これらが脆性破壊の起点あるいは伝播経路として作用し、いわゆる「析出脆化」を生じやすい。高張力鋼の熱影響部の特性をバランス良く得ようとする場合には、工業的にほとんど手詰まりの状態となっていた。
一方で、その機構は不明であるが、Wを添加し、材料の強度向上を図る技術については、耐熱鋼を中心に多くの技術が開発されている。特許文献3〜5にはCrを0.8%以上含有する耐熱鋼において、そのクリープ破断強度を向上させる目的でWを0.01〜3.5%含有する鋼材についての発明が記載されている。ただし、これらはいずれもクリープ特性の向上が趣旨であって、その溶接熱影響部における強度と靭性の両立については、耐熱鋼の仕様温度が最低でも400℃以上であるために靭性に対する要求がほとんど無く、あっても施工時の割れ、あるいは水圧試験時の損傷を対象としたものであり、また元来耐熱鋼で構成される高温高圧の発電プラントあるいは石油化学プラントでは入熱の高い溶接条件は、溶接継ぎ手の脆化を懸念して、これを全く採用しない。従って、Wの添加は大入熱の溶接熱影響部特性を制御するためのものではなく、本発明の対象とする室温以下での構造体に施される大入熱溶接の熱影響部における特性確保を考慮しておらず、その化学成分構成が原因となり、仮に大入熱溶接を適用した場合には必然的に靭性は著しく低下することが通例であった。
また、室温以下で使用される構造用材料にWを添加する技術については、他の鋼材の特性向上を図るために適用されている例がある。特許文献6には結晶粒径を微細に制御する厚鋼板の製造方法に関する発明の開示があり、Wを2.0%以下の範囲で添加する鋼材に関する発明の記載がある。しかし、この場合にはWを材料の焼入れ性向上の目的で添加しているため、その析出制御に関しての記載が無く、従ってWを主体とする金属間化合物等を効果的に利用する技術については全く知見されていない。特許文献7では鋼板の幅方向温度分布を制御して鋼板の板面内結晶粒を至る所均一に制御する方法に関する発明の記載があるが、やはりこの場合にもWの添加は焼入れ性向上が目的であって、析出量を制限する技術の記載がない。すなわちWの金属間化合物による析出強化を積極的に利用する技術の記載がない。同様に特許文献8では鋼板表面のスケール均一性を目的とした鋼板の製造方法と鋼板に関する発明の記載があるものの、上記の技術と全く同様にWの析出制御に関する知見が無く、金属間化合物による析出強化の積極的利用は考慮されていてない。
特許文献9と10では溶接熱影響部の疲労強度を向上させる発明に関する記載があり、Wを0.01〜2.0%添加し、析出強化または固溶強化で作用させる記載がみられる。しかし、その析出割合に対しての言及はなく、金属間化合物としての析出も全く知見しておらず、単にWを添加することで鋼材強度の向上を目的としたものであり、当然析出量の制御がなされない場合はこれら技術を用いても、本発明の課題である700MPa級鋼の強度と靱性を母材と溶接部ともに達成することは上述の理由から困難である。
一方、TiとWを同時に添加し、Wを析出させて強化に寄与させる発明に関しての記載が特許文献11に見られる。しかし、TiとWとを同時添加する技術的思想は上記特許文献12にも記載があって、さらに熱処理で組織を制御する方法を併記してはいるが、安定なTi−W−Cの析出による強化のみに関する知見であり、短時間の溶接熱サイクルでは析出しがたいWを主体とする金属間化合物については知見もなくまた、制御する技術の記載もない。単に上記炭化物の析出量を規定して有効利用する旨の知見があるのみである。
従って以上述べてきたように、従来技術にある高張力鋼の合金設計においてWは焼き入れ性の向上、または炭化物として析出強化により材料強度を向上させることを第一の作用・効果として用いる発明に関するもののみであり、これらの発明では必然的に溶接熱影響部での析出物による脆化は避けがたく、強度700MPa級以上の高張力鋼における溶接の熱影響部において母材と同様な強度と靭性特性を確保することは実現することができないという課題が残されていた。
特公昭57−019744号公報 特許第03256118号公報 特開平10−46290号公報 特開平08−225884号公報 特開平09−217146号公報 特許第02633743号公報 特開平04−350119号公報 特開平09−271806号公報 特開平07−331382号公報 特開2003−3229号公報 特開2003−313630号公報 特許第02987735号公報
本発明は、従来の高張力鋼が抱える問題点、すなわち低炭素鋼の強度靱性バランスを調質して製造する引張り強さが700MPa級以上の鋼材において、溶接熱影響部の強度と靭性を同時に母材と同等に高めることが困難であるという問題点を解決する鋼材を提案し、さらにその化学成分を有する鋼において強度と靱性バランスを常に安定して得るための製造方法についても同時に提供する。
本発明は上記のような従来鋼の課題、すなわち引張り強さ700MPa級以上の高靱性高張力鋼であって、入熱が5万J/cmを超える大入熱溶接の熱影響部の靭性を確保することを必須とする鋼材において、継手でも母材同等の強度、靱性を備えるためになされたものであって、その要旨とするところは以下の通りである。以下で溶接性を備えるとは、大入熱溶接の熱影響部が母材と同等の強度と靭性を備えることを意味する。
(1)質量%で、C:0.005〜0.08%、Si:0.01〜0.40%、Mn:0.10〜3.0%、Al:0.010〜0.10%、W:0.10〜3.0%、V:0.010〜0.50%、Nb:0.010〜0.080%を含有し、不純物としてP、S、N、Oを、P:0.020%以下、S:0.0040%以下、N:0.020%以下、Ti:0.005%以下、O:0.0060%以下に制限し、残部Feおよび不可避的不純物よりなる成分組成を有し、低温変態組織であるベイナイトまたはマルテンサイト相のラス構造を内包する大傾角粒界(隣接する結晶粒の方位が5度以上の粒界)に、100nm以下の間隔でWを含有する金属間化合物(析出した金属間化合物の70%以上が実質的にFe2W、Fe76である金属間化合物群)が析出し、かつ金属間化合物の平均粒子径が1μm以下であり、Wを含有する金属間化合物としてWの析出量が定電位電解抽出残渣を蛍光X線分析によって定量分析して得られる分析値において0.005%超であり、光学顕微鏡による断面観察の視野内において低温変態組織であるベイナイトまたはマルテンサイト相あるいはそれらの混合組織が面積率で50%以上を有することを特徴とする、溶接性および靱性を兼ね備えた引張り強さ700MPa級以上の高張力鋼材。
(2)さらに、質量%で、Ni:0.010〜0.50%、Cu:0.010〜0.50%、Co:0.010〜0.50%の1種または2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)に記載の溶接性および靱性を兼ね備えた引張り強さ700MPa級以上の高張力鋼材。
(3)さらに、質量%で、Cr:0.020〜0.60%、Mo:0.010〜0.50%の1種または2種を含有することを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の溶接性および靱性を兼ね備えた引張り強さ700MPa級以上の高張力鋼材。
(4)さらに、質量%で、B:0.0003〜0.0035%を含有することを特徴とする、上記(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の溶接性および靱性を兼ね備えた引張り強さ700MPa級以上の高張力鋼材。
(5)さらに、質量%で、Ca:0.0003〜0.0045%、Mg:0.0003〜0.0045%、Y:0.001〜0.050%、Ce:0.001〜0.050%、La:0.001〜0.050%の1種または2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)ないし(4)のいずれか1項に記載の溶接性および靱性に優れた引張り強さ550MPa級以上の高張力鋼材。
(6)上記(1)ないし(5)のいずれか1項に記載の成分を有する鋼片を、熱間で粗圧延、仕上圧延を行い、その後の冷却により鋼材中における低温変態組織であるベイナイトまたはマルテンサイト相あるいはそれらの混合組織を面積率で50%以上とし、さらに、600〜700℃の温度域に加熱所要時間1〜240分で昇温し、該温度域に1時間以上、1000時間以下保持した後、1℃/s以上の冷却速度で加速冷却し、または保持時間が1時間以上、500時間以内の場合に放冷することを特徴とする、溶接性および靱性を兼ね備えた引張り強さ700MPa級以上の高張力鋼材の製造方法。
本発明を適用することによって引張り強さが700MPa級以上である高張力鋼において強度と靭性を母材と溶接熱影響部の双方で同時に達成することのできる鋼材を工業的に安価に供給することが可能となり、溶接入熱を高めた高能率溶接の適用が高張力鋼で可能となって、溶接構造物の製造を容易ならしめ、工期短縮、施工コスト低減に貢献するところ大である。
本発明の700MPa級以上の強度を有する、母材および溶接継手の双方で靭性に優れた鋼材とその製造方法について説明する。
先ず、本発明の目的を達成するために、鋼材中に基本成分として含有する化学成分および不可避的不純物として制限すべき化学成分の限定理由について説明する。
なお、以下の説明において特に説明のない限り、「%」は「質量%」を意味するものとする。
C:Cは鋼材の組織を形成し、その強度を決定する上で厳密に制御する必要のある重要な元素である。本発明ではその引張り強さが700MPa以上である高張力鋼に関しているため、組織はベイナイト、あるいはマルテンサイトおよびベイナイトとマルテンサイトの混合相を鋼材断面の光学顕微鏡観察において50%以上含有する組織であることが望ましい。この観点から鋼材の製造時における冷却速度、他の合金添加元素を勘案して、その下限を0.005%に限定した。0.005%未満の炭素量では強度の低下が生じ、本発明の目的とする高張力鋼は得られない。また、Cを0.08%を超えて添加する場合、本発明の最大の特徴であるWを金属間化合物として析出させ、強化に用いるという手段が活用できない場合があることから、その添加上限を0.08%とした。
Si:Siは鋼材の製造において、脱酸ないしは粒内固溶強化に有効である。その効果は0.01%から発現し、0.40%を超えて添加すると基材である鉄との原子半径差に起因する強化作用が大きくなりすぎるためにかえって靭性を損なう場合があることから、その添加上限を0.40%とした。SiはWを金属間化合物として析出させる駆動力を上げる作用を有しており、Si含有量が多すぎるとW含有金属間化合物が粗大化するおそれがあるが、0.40%以下の含有量であれば金属間化合物の粗大化を招かない。
Mn:Mnは鋼材の焼入れ性を高めて組織による強化に利用できる元素である。その効果は0.10%から発現し、3.0%を超えて添加すると鋳造工程において強偏析を生じてインゴットの損壊を招聘する場合があることから、その添加範囲を0.10〜3.0%に限定した。
Al:Alは強い脱酸効果を有し、本発明鋼の出鋼脱酸時あるいは二次精錬時に鋼中酸素濃度を制御することができる。加えて、脱酸以外にも窒素との親和力が高く、鋼中窒素濃度を制御する能力を有する。本発明鋼では意図的にTiを制限して鋼中に析出しないように配慮しているが、Alが窒素を固定することで、Tiの窒化物としての析出は実質的に皆無となることから、Alは単なる脱酸を目的として添加するのではなく、鋼中窒素の制御元素、ひいてはTiの析出を制限することに特徴を有している。
その効果は0.010%から顕著となり、0.10%を超えて添加する場合、鋼中にAl酸化物(主にAl23)のクラスターを生成して、かえって鋼材の靭性を損なうことから、その添加範囲を0.010〜0.10%に制限した。AlはSi同様、W金属間化合物の析出を促進させる作用を有しているが、Al含有量が0.10%以下であれば金属間化合物の粗大化を招かない。
W:Wは本発明鋼の主要必須添加元素であり、主にW系金属間化合物(実質的にFeとWから構成され、該化合物中の80%質量比以上をFeとWが占め、かつ金属間化合物の内70%以上のものが化学量論比としてFe2WもしくはFe76である場合を、本発明においてW系金属間化合物と便宜上規定する)を析出させて低温変態組織の粒界に析出して強度を発現し、発明の効果を発揮する。全てのWがW系金属間化合物として強化に寄与するのみでなく、残余のWは非平衡の固容状態にあり、基材である鉄の格子にひずみを与え、強化を促進する。金属間化合物の析出に必要な最低添加量が0.10%であり、3.0%を超えて添加することは、ミクロ偏析を助長して析出物の分散状態における均一性が失われ、析出強化の効果を組織全体に均一に得られない場合があり、むしろ靭性を劣化させる場合があることから、その添加範囲を0.10〜3.0%に限定した。なお、Wを添加して金属間化合物として析出させることは、請求項1〜5に記載の鋼を単に製造するだけではその安定達成は困難であり、後述する析出制御熱処理を製造工程として適用することが望ましい。
Nb:Nbは鋼中で炭素と結合して鋼材の変態挙動に影響を与える。特にAC3点以下の温度で鋼材を圧延する場合に、組成的過冷却状態にあるオーステナイト相の再結晶を抑制する効果に優れ、加えて熱処理時に析出した場合には析出強化にも有効である。その添加は0.010%未満では効果がなく、0.080%を超えて添加する場合には、粗大な炭化物として結晶粒界に析出する傾向があり、その場合に本発明の最大の特徴である添加WがNbの一部を置換して炭化物中に固容することで間接的に析出し、金属間化合物の析出が実現出来ない場合があることから、その添加上限を0.080%に限定した。
V:VはNbと同様に炭化物としてまたは窒素と結合して窒化物として析出するが、主に500℃以下の冷却中に、あるいは熱処理時に析出することで析出強化作用を通じて鋼材を強化する。また、析出しない状態にあるVは鋼材の焼き入れ性を高め、低温変態を誘引し、強度向上に貢献する。その添加量は0.010%から発現し、0.50%を超えて添加する場合には粗大な粒界炭化物として析出し、これも同様に一部がWと置換するため、Wを金属間化合物として活用することを特徴とする本発明の効果を減ずることから、その添加範囲を0.010〜0.50%に制限した。
なお、WをFe2WもしくはFe76として析出させ、工業的に強化に活用するためには常に低温変態組織であるベイナイトあるいはマルテンサイト等のラス構造を有する結晶組織の大傾角粒界(隣接する結晶粒の方位差が5度以上である場合に、本発明ではその粒界を大傾角粒界と称することとする)に析出させ、かつその析出した金属間化合物どうしの粒子表面間距離が電子顕微鏡観察を20視野以上、同一試料に対して実施した場合に、平均値として100nm以下である鋼材を製造する必要がある。このためには請求項1〜5の化学成分を具備することが第一の必要条件であり、続いて常法により加熱し、または鋳造後の顕熱により加熱することなく、熱間で粗圧延、仕上圧延を行い、その直後に1℃/s以上の冷却速度で加速冷却しまたは放冷することによりベイナイト組織あるいはマルテンサイト組織を得、さらに、600〜700℃の温度域に加熱所要時間1〜240分で昇温し、該温度域に1時間以上、1000時間以下保持した後、1℃/s以上の冷却速度で加速冷却しまたは放冷することが必要である。なお、放冷の場合は600〜700℃保持時間を500時間以下とする。
高張力鋼の製造方法には種々あって、化学成分によっては本発明で必要とする低温変態組織を比較的緩冷却の条件でも得られる場合がある。このような条件下では上記金属間化合物は大傾角粒界に析出しうるが、その析出間隔の制御までは工業的な安定性を考慮する場合には達成が困難である。
Wはα鉄中に固溶した場合には鉄の格子を大きくひずませる効果を有する程に原子半径が大きい元素であるが故に、固溶しがたいとともに拡散が遅く、核生成と析出が通常の製造工程では生じがたい場合がある。本発明ではこのWを含有するW系金属間化合物を必ず鋼中に定電位電解抽出残渣の蛍光X線分析による定量分析値で0.005%超析出させる必要がある。そこで、本発明者らは研究を重ね、W系金属間化合物として析出の容易な条件を低温変態組織において見いだした。その条件は低温変態を生じたα鉄組織を600〜700℃の温度域に加熱所要時間1〜240分で昇温し、該温度域に1時間以上、1000時間以下保持した後、1℃/s以上の冷却速度で加速冷却しまたは放冷する方法である。Wの遅い拡散を加速するために温度を高めること、W系金属間化合物の低炭素鋼における析出限界温度である720℃(本発明者らの実験的な知見)を下回る温度に加熱すること、加熱時間が工業的に妥当であってコストの著しい上昇につながらない範囲であることを同時に満たす条件が上記の熱処理条件となる。
しかし、以上の条件を全て満足しても、本発明鋼ではW系金属間化合物の有効活用が出来ない場合があり得る。これは本発明鋼を種々の用途に適用する上で重要で、特に粒界に炭化物を形成するような製造条件、例えば熱間圧延後の制御冷却時、圧延後の通常の冷却時、または熱処理等の工程中、Ti(C,N)の析出があると、Wは(Ti,W)(C,N)の形で析出する場合があって、特に鋼板の中心偏析部でTiが濃縮される部位がある場合に生じやすいことを、発明者らは実験によって知見した。この効果はNb,Vについても本発明の添加範囲を超えて大量添加した場合にも同様であるが、それらよりもWによる置換が頻発する傾向がある。WのTi(C,N)中への固溶を防止するには種々の熱処理や製造プロセスの工夫も一部有効ではあるが、完全に防止することが難しく、基本的にTiを0.005%以下とし、Ti(C,N)の析出そのものを制限してしまうことが最も有効な防止策であることを、実験結果の解析によって知見した。Cは鋼材強度と組織制御の点から添加するが、Nは不純物として低減する必要がある。本発明はこれらの新規知見の上に依ってたつものであり、従来のW添加鋼に関連する技術とは異なっている。本発明ではW系金属間化合物を粒界に析出させて鋼材の強化に活用する。このための目標値として析出W量は、定電位電解抽出残渣の湿式定量分析結果によって絶対値を測定する場合において、0.005質量%以上であることを目的としている。Tiを0.005%超添加する場合、析出Tiと結合するC量は12.5ppm以上となる。この結合Tiの半分がWに置換した場合でも、0.0095%が析出することになる。添加Ti量が増加すればこの値はさらに上昇する。実際にはTiCの一部をWが置換する割合は半分以下であるため、実質的にTiを0.005%以下に制限しさえすればWの炭化物としての析出は制御できる。
なお、Wを安定して析出させるための熱処理条件は以下のような実験結果に基づいて決定した。
本発明および、本発明からはNb,V,Tiの添加量が過剰側に外れる鋼を50kg、300kg、2tonの真空溶解で溶製し、インゴットに鋳造して、その後必要に応じて熱間鍛造等で圧延用の小型スラブとし、実験室の熱間圧延機にて15〜60mmの厚みの鋼板に圧延した。圧延温度は700〜1000℃の間で種々変化させ、圧延後の冷却は放冷もしくは水冷を実施した。その後、材料の強度を700MPa級以上でかつ、0℃以下の靱性遷移温度を有するように、必要に応じて焼戻した。また別途AC3点以上に再加熱して焼入れ、あるいは放冷などの再熱処理を加えた。
その後、鋼板を200〜AC1温度(概略740℃)までの温度範囲で種々の加熱速度、保定時間、冷却速度にて金属間化合物析出処理を実施した。処理の後、鋼板の圧延方向と平行な方向の板厚1/2位置からJIS Z2201に記載の4号引張り試験片で強度が700MPa以上であることを確認した後、JIS Z2202に記載の2mmV溝付き4号衝撃試験片で延性−脆性破面遷移温度(以降単に遷移温度と称する)を求め、同時に鋼材の板厚中心位置から15mm角の分析用試験片を採取し、これを定電位電解して得た残渣を吸引濾過して採取し、その濾紙上に捕らえた析出物をX線回折によって構造解析し、加えて湿式分析(主に酸溶解後に蛍光X線分析)にて捕集量を検量、その後、最初に溶解した基材の質量を検量(解け残った基材の量を秤量して溶解前の量からの差として算出)して、析出割合を質量%で求めた。図1はこの実験結果を示す。横軸はLarson-Miller Parameter(LMP)であり、一般にLMP=(絶対温度)×(log10(保定時間)+C)で表現される、温度と保定時間の等価換算パラメータである。この値が大きいことは高温かつ長時間であることを意味し、処理温度が異なっていてもある程度、保定時間を変えることで同等の熱処理が加えられたとの解釈を与えうる推定計算式である。縦軸がW系金属間化合物としての析出W量である。図中、■は析出処理温度が700℃超の場合、●は析出処理温度が600℃未満の場合、△は析出処理温度が600〜700℃の場合である。LMP値がおおよそ11000以上で析出W量が0.0050%を超える場合があることが明らかである。600〜700℃において1時間以上の保定を実施した場合に析出W量は十分な値となっている。ところが、LMP値がたとえ高い場合でも必ずしも十分な析出量が得られていない。熱処理時の最高加熱温度が600℃未満と700℃以上ではたとえLMP値が11000を超えている場合であっても析出W量は十分ではない。これはW系金属間化合物の析出が単純な拡散律速による成長や均一核生成に基づいた機構によるものではなく、粒界上の不均一拡散と偏析が大きな影響を与えていること、加えて700℃付近に析出限界温度があり、これを超える温度ではWが全て固溶状態となってしまうため、粒界析出強化による強度向上は得られないことに原因がある。
本発明では上記の実験結果に基づいて、W系金属間化合物析出処理条件として、600〜700℃で1時間以上なる必要条件を求めた。
ところで、金属間化合物は粒界上にあって処理時間とともに成長することは、他の析出物と変わるところはない。したがって、あまりにも長時間加熱し続ける場合には析出物の粗大化が生じ、析出物どうしの間隔はかえって減少することはOstwardの成長則として一般に知られている事実である。今回の図1における実験でも全く同様な傾向が観察された。
図2は600〜700℃でW系金属間化合物析出処理を実施した場合の時間と材料の析出処理前後における引張り強さで評価した強度向上量Δσ(MPa)の関係を示した。粒界析出強化は非常に効果的であり、処理時間が1時間程度で20MPaの強度向上が認められる。時間とともに析出密度は増加し、やがて析出限界平衡値に達するまで強度の向上は継続する。その間、基材自体の転位組織回復によって軟化が生じるものの、析出が継続している間は強度向上効果が軟化を上回る。600〜700℃の温度範囲では、処理温度にも多少依存はするが、概略1000時間を超えて処理した場合、W系金属間化合物による強度向上効果が析出物自体の粗大化による粒子表面間距離の拡大と、基材の組織回復による軟化で大きく低下し、20MPa以上の向上は見られなくなる。さらなる長時間の処理では粗大化の進行と粒子/基材間の整合性消失によりもはや析出強化の効果はほぼ消失し、むしろ処理前よりも強度低下が生じるために、強度向上量Δσはマイナスに転じる。
図2の実験結果をもって、本発明ではW系金属間化合物析出処理継続時間の最長時間に1000時間を設定した。Wの添加に対する強化向上量Δσのしきい値を20MPaとした。これ以下の強度上昇量はW添加によるコスト上昇を補完しないことが理由である。なお、600〜700℃の析出処理温度が保たれている時では、昇温時の加熱所要時間は該温度到達時間が1〜240分の間では効果が不変であり、また240分を過ぎるとW系金属間化合物ではなく炭化物(主にセメンタイトとNb,Vの炭化物)が生成し、W系金属間化合物が析出すべき粒界に析出し、析出処理中に速やかに粗大化することを別途電子顕微鏡観察によって認めた。加熱所要時間が240分超の場合は、そのために強度向上量Δσが20MPa以上にならないことが観察されたため、昇温速度として、処理温度である600〜700℃までの到達温度までの加熱所要時間を1〜240分に限った。なお、本発明において1分以内に鋼板を600〜700℃に加熱する実験も試みたが、実質的に厚み8mm以上の鋼板では均一に該温度に加熱することが出来なかったことから、短時間側の制限を1分としてある。
冷却速度については1℃/s以上の加速冷却、あるいは放冷をすることを本発明方法として提示しているが、基本的に加速冷却の方法に制限はなく、水冷、油例、送風冷却、ミスト冷却、接触冷却などが有効であり、本発明の効果を確実に得られる。ただし、加速冷却する場合は1℃/s以上の冷却速度を確保しないと、例えば700℃で1000時間の処理を実施した後に、冷却中にさらに基材が軟化して強度向上量Δσが20MPa以下となる場合が、板厚が厚い場合にある。また、放冷は本発明の範囲内で500時間以内の比較的短時間処理の場合に全く強度向上効果を失わないことを確認したことから、放冷も本発明の析出処理に適用出来る方法として規定した。
本発明では上記のTi以外にも不可避的不純物としてP、S、NとOの混入がある。鋼材の強度と靱性を維持し、構造用材料たらしむる為にはこれらの許容含有量に制限を加える必要があり、それぞれPは0.020%以下、鋼材の靱性を安定して高く維持するために、好ましくは0.010%以下、Sは0.0040%以下、Pの制限理由と全く同様の理由から好ましくは0.0030%以下とする必要がある。P、Sは粒界偏析が強く、金属間化合物の粗大化を助長するが、含有量が左記範囲内であれば、本発明の微細なW含有金属間化合物を生成することができる。NはTiと炭窒化物を生成するとWの析出を誘引する。Alによって固定されるべき元素であるため、その添加量を0.020%に制限した。制限が無い場合、製造工程で大気中より容易に混入する。Oは脱酸剤であるAlを投与する場合に製造工程の耐火物から混入する場合があるので、その上限を管理する必要があって、0.0060%以下とした。
以上が本発明の根幹である。本発明では発明の効果を活用すべく、必要に応じて以下の合金元素を追加して添加することができる。
Ni,Co,Cu:何れもγ相の安定化元素であり、鋼材に添加して焼入れ性を向上させ強度を高めることに有効であり、Wの析出には影響を与えない。NiとCoはさらに鋼材の靱性を高め、Cuは靱性に影響を与えない。その効果はそれぞれ0.010%から認められ、0.50%を超えて添加する場合には、NiではWと逆偏析してWのミクロ偏析を助長することからW系金属間化合物の析出状態が鋼板の各部で均一でなくなる場合があって、靭性が低下することがあるため、Coでは製造コストの問題から大量添加が困難であるため、Cuは粒界脆化によって鋼材の熱間加工性を低下させる場合があることから、その添加量上限を全て0.50%に制限した。
Cr、Mo:何れもフェライト相安定化元素であり、鋼材の焼入れ性向上に特に顕著に貢献する。その効果はCrが0.020%から、Moは0.010%から認められる。両者ともに炭化物形成元素であることから、熱処理時等に炭化物として析出した場合、Nb,Vと同様にWを一部固溶して、添加したWの析出強化能を減ずる場合があるので、それぞれ単独ではその上限を0.60%と0.50%に制限する。
B:Bは極少量の添加で焼入れ性を向上させる。Wの析出とは全く無関係なので、W添加量との間に合金設計上の制限は無い。その添加は0.0003%から有効で、0.0035%を超えて添加すると、硼化物を生成して鋼材の靱性を劣化させる場合があることから、添加量を0.0003%〜0.0035%に制限した。
さらに本発明では靱性を必要とする鋼材において最も有害なMnSの生成防止のためにその形態制御元素として、Ca,Mg,La,Ce,Yの一種または二種以上を単独で、あるいは同時に添加することもまた可能である。先の元素群と、これら元素群は単独で、あるいは同時に添加することが出来て、それぞれ本発明の効果を妨げない。
Ca:Caは溶鋼中に添加してSと結合し、鋼中の活性Sをトラップする機能を有している。転炉、二次精錬、連続鋳造の凝固時に添加できて、粗大MnSの生成を効果的に防止する。その脱硫効果は0.0003%から顕れ、0.0045%を超えて添加した場合には酸化物クラスターを生成して鋼材の靱性を損なう場合があることから、その添加範囲を0.0003%〜0.0045%とした。
Mg:Mgも同様にSと結合してMgSを生成することにより粗大MnSの生成を防止する能力を有する。かつては製鋼技術が未発達であったためにあまり頻繁には用いられていなかったが、近年、添加合金の改良により有効な脱硫剤として添加できるようになった。本発明ではこのMgも脱硫剤として添加することができる。その効果は0.0003%から認められ、0.0045%を越える添加では、粒界に偏析して鋼材の熱間加工性を低下させる場合があることから、その上限を0.0045%に制限した。
Y,Ce,La:希土類元素の中で脱硫能を有する元素である。いずれもCa、Mgと同様な効果を有する。その効果は0.001%から発現し、0.050%を超えて添加すると、酸化物クラスターを形成して鋼材の靱性を低下させる場合があることから、その添加範囲を0.001%〜0.050%に制限した。
なお、本発明は700MPa級以上の強度を有する高張力鋼に関するが、その組織はフェライト単相組織では達成出来ない。γ相からα相への冷却変態時に格子変態であるベイナイト変態を生じ、結果としてベイナイト組織またはマルテンサイト組織あるいはそれらの混合組織を得ると、それを焼戻しても微細な組織が得られ、鋼材の破壊靱性を向上させると同時に、鋼中に多量の転位を導入して鋼材の強度を向上させる効果を有する。本発明ではWを金属間化合物として粒界に析出させて活用する。従って、Wの効果が最も顕著に表れるためには、粒界を構成する転位群が材料の塑性変形に応じて移動することを粒界析出したW系金属間化合物によって阻止し、この現象を通じて強度を発現させる必要がある。そのためには鋼中転位密度が1012〜1015個/m2程度以上となる必要があって、これらより低い場合には基材がフェライト組織となり、強度が700MPa級には及ばないことから、組織がベイナイトまたはマルテンサイトを含むことを必要条件とした。
これらベイナイトまたはマルテンサイト組織には、低温変態の特徴である剪断変形に起因する「ラス構造」が必ず存在し、旧γ粒内およびパケット粒内やブロック粒内に電子顕微鏡観察によって見られる。このラス境界も広義の粒界ではあるが、その隣接するラス組織の角度は僅かに1度から3度程度であり、金属間化合物の析出による境界の自由エネルギー低下は、5度以上のブロック粒界やパケット粒界、さらには旧γ粒界に比較して大きくない。すなわち、金属間化合物の析出拠点になりにくく、かつたとえ析出しても析出密度が低いために強化の目安となる粒子表面間距離は小さくはならない。すなわち強化に寄与しないことが本発明者らの研究によって明らかとなった。そこで本発明では金属間化合物を5度以上の大傾角粒界に主に析出させて、その間隔(正確には隣り合う粒子表面間の距離)が100nm以下となるように化学成分と製造方法を規定した。
その上で、上記マルテンサイト組織またはベイナイト組織、あるいはそれらの混合組織が、鋼材の光学顕微鏡による断面観察の視野内において50%を超える場合にのみ、W系金属間化合物による析出強化の効果が発現することを研究の末に確認した。本発明で組織の割合を定めた理由は上記の通りである。
鋼材の低温変態組織であるベイナイトまたはマルテンサイト相あるいはそれらの混合組織を面積率で50%以上とするためには、本発明の成分を有する鋼片を熱間圧延し、その直後に1℃/s以上の冷却速度で加速冷却すれば良い。鋼片の成分として焼入れ性の高い成分組成を用い、あるいは板厚の薄い鋼材を製造する場合には、圧延直後の冷却を放冷とすることによっても低温変態組織の面積率を50%以上とすることが可能である。
また、金属間化合物の種類については、本発明の範囲でWを添加した際に析出する可能性のある金属間化合物がFe2WとFe76型のいわゆる「Laves相」と「μ相」であって、その拡張系、すなわちLaves相型であってもFeやWの一部が他の金属元素、例えばNbやV等に置換した形を含んで、Wの析出重量として0.005%であれば良く、上記したように粒子間隔は粒界上で100nm以下であり、これを制御する一つの目安として平均粒子径は1μm以下であればよい事を実験的に求めた。以上が本発明の骨子である。
本発明における組織の獲得には特別の制限はないが、結果としてベイナイト組織またはマルテンサイト組織(焼き戻したものも含む)を有していればよい。ただし、下部ベイナイトを主体とする組織の場合、あるいは上部ベイナイトであっても硬質第二相(炭化物や残留オーステナイトなど)を多量に含み、靱性を獲得しにくい場合には焼戻しを施して本発明鋼の靱性を高めることができる。ただし、本発明はあくまでW系金属間化合物による析出強化を活用する技術であり、追加実施する熱処理で金属間化合物の析出状態が請求項1に規定の状態から逸脱する処理は避けねばならない。
そのためには熱処理の昇温は加熱方法、手段には依らず600〜700℃に1〜240分で昇温し、1時間以上当該温度で保持して、その後放冷または必要に応じて加速冷却することで、鋼材の靱性を高める。これら制限無くしてW含有金属間化合物析出強化鋼を工業的に安定した特性を付与して生産することは困難であることが、本発明者らの研究開発によって明らかとなった。昇温の手段はガスバーナー、抵抗加熱方式を用いた管状炉による通常の連続加熱設備、鋼管等でも一般的な誘導加熱設備を用いた迅速熱処理設備、あるいは赤外線や通電加熱等の新しい加熱方式を用いても良く、制限はない。なお、加熱後に析出脆化を別途嫌う材料では、加速冷却して脆化温度帯通過時間を制限する方法も有効である。
本鋼の製造工程そのものについては何ら制限がない。高炉−転炉の銑鋼一貫工程を適用することも、真空誘導加熱炉を用いた高純度鋼製造工程を使用したり、電気炉−炉外精錬設備を適用することも、また一度製造したインゴットを再溶融して不純物を低減するESR法、帯状溶融法なども全て適用できて、本発明鋼の製造は可能である。また、熱間圧延、熱間加工、鍛造、鋼管成型、続く熱処理にも制限が無く、鋼材を目的とする形状に製造する上での制限は無く、本発明の効果を適用することができる。
なお、本鋼は溶接性に優れていることもまた特徴の一つである。溶接入熱10万J/cm以上の大入熱溶接時には、溶接熱影響部では必ず750℃以上、すなわち本鋼のAC1変態点以上に加熱されるため、一度再固溶し、W系金属間化合物は溶接後の冷却速度の関係から析出しなくなる。W系金属間化合物の特徴は粒界に析出して強度を向上させることであり、本発明では特に50%以上のベイナイト組織またはマルテンサイト組織を導入して、有効結晶粒径を小さく制御することにより同時に靱性を確保している。しかし、溶接熱影響部では溶接の熱影響とその後の冷却速度により組織の制御が困難なため、粒界に金属間化合物が析出している場合に靱性劣化が懸念される場合がある。ところが、縷々述べてきたごとくW系金属間化合物は溶接熱影響のようなAC1変態点以上の温度からの急速冷却過程では析出しがたく、したがって工業的な析出強化処理として請求項6のような熱処理が必要となるのであるが、すなわち溶接熱影響部ではW系金属間化合物による強化作用が消失する。その反面、急速冷却で低温変態組織が発達し、基材自体が転位で強化され、W系金属間化合物の消失による強度低下を補い、強度と靱性がバランス良く得られることとなる。
鋼材を強化する手法は非常に多く提案されているが、本発明では溶接継ぎ手以外では有効だった析出強化が継ぎ手においては無効となり、強度を組織形成で補完するが、析出強化による弊害、すなわち溶接熱影響部で析出脆化する危険性を排除してある化学成分設計となっていることもまた、新しい鋼材設計思想であり、新知見による技術である。本発明の化学成分範囲制限において、W添加量、C添加量、Mn添加量の制限は上記のような溶接継ぎ手の靱性も考慮した結果を反映した。
本発明は上記詳細に説明したとおりのものであるが、そのポイントをまとめると以下のとおりである。
本発明の高張力鋼は、Wによる固溶強化、Nb、Vによる析出強化、低温変態組織を面積率で50%以上とする組織制御に加え、母材中に平均粒子径1μm以下の微細なW含有金属間化合物を低温変態組織の大傾角粒界に100μm以下の間隔で析出させ、W析出量を0.005%超とすることにより、母材の引張り強さを700MPa級以上としている。
また、C、N含有量を本発明範囲内とし、特にTiNの粗大析出を抑制し、本発明の化学成分範囲とすることで材料の焼入性を調整しているので、必要とする高い母材靭性を確保することができる。
一方、溶接熱影響部については、溶接時の熱影響によってW析出物が消失するので、Wを含む金属間化合物による析出強化に起因する強度の上昇が得られない。従って、溶接熱影響部が溶接後の急冷却に起因する強度上昇を受けたとしても、母材で有効だったWを含む金属間化合物の析出強化が消失している分、熱影響部の不必要な強度上昇を避けることができ、好適な熱影響部強度を実現することができる。
また、溶接熱影響部の不必要な強度上昇を上記のように防止でき、さらに本発明では靭性に有害なTiNの析出を防止しているので、これら効果が相まって、溶接熱影響部の靭性を良好に保持することができる。
表1、3に示す成分を有する鋼を、通常の高炉−転炉−二次精錬−連続鋳造−熱間圧延−熱処理工程を経て、厚み8〜120mmの鋼板とし、あるいは別途電気炉熔解−二次精錬−インゴット鋳造−熱間鍛造−熱間圧延−熱処理工程を経て同様に鋼板試験片を作成した。鋼塊重量は2tonから300ton、鋼板は6〜12m長、2〜4m幅で2.0〜12tonの重量となった。この鋼板試験片から、鋼板幅方向中心部、板厚1/4位置、および1/2位置より各種試験片を採取し、鋼板特性の代表値とした。図3は試験片の採取要領を示す図である。
試作鋼板には種々の熱処理を施した。表1〜4のNo.1〜21については、熱間圧延後、直接焼き入れ(圧延終了温度840〜880℃)+焼戻し(620℃×20分)後に放冷を行った。No.22〜31については、熱間圧延後放冷+再加熱(930℃)×30分+放冷+焼戻し(640℃×20分)を行った。No.32〜36については、圧延まま+15%プレス加工(板厚方向)+焼戻し(600℃×20分)を行った。No.37〜41については、圧延まま+焼戻し(650℃×20分)とした。No.50〜70については、全て熱間圧延後放冷+再加熱(930℃)×30分+放冷+焼戻し(640×20分)とした。
いずれも、上記熱処理終了後に請求項6に記載の金属間化合物析出処理を目的とした熱処理方法を適用し、Wの析出を工業的に制御した。金属間化合物析出処理の処理温度と処理時間は、表2、4に示すとおりである。処理温度は本発明の600〜700℃の範囲内にある。処理時間は、No.69、70を除いて本発明の範囲内にある。析出熱処理の昇温に要する加熱所要時間は5〜240分の範囲内とし、いずれも本発明の範囲内にある。析出熱処理終了後の冷却については、冷却速度1〜15℃/sの加速冷却とした。
評価は前記の方法で採取したJIS4号引張り試験片で引張り特性を、同じく2mmVノッチつき4号衝撃試験片でシャルピー吸収エネルギー遷移曲線を採取し、さらに金属組織を圧延方向と平行な断面で光学顕微鏡にて組織現出腐食を施した後に観察し、断面組織の50%以上が実質的にベイナイトまたはマルテンサイト、あるいはそれらの混合組織であることを確認した。また、材料中に存在するW化合物(本発明ではほとんどがW系金属間化合物)は、有機酸を用いた基材の定電位電解で残渣を抽出し、そのX線回折により存在形態を、また湿式分析によりW量を分析し、化学量論比に基づいて析出量を計算した。
試作した鋼は、45度のV開先を加工し、入熱20万J/cmのアーク溶接を実施し、溶接後に4号衝撃試験片を採取し、ボンド位置にV溝が位置するよう加工して、シャルピー吸収エネルギーを測定して溶接継手の靱性を代表(以降、継手の靱性と称する)した。
表1〜4には本発明鋼及び比較鋼の化学成分、引張り強さ、母材及び継手中の析出W量(W系金属間化合物中に含有されるW量の母合金に対する析出質量分率)を示した。また、透過型電子顕微鏡による薄膜観察により、大傾角粒界上のW系金属間化合物の平均粒子径を、一試料あたり20視野以上観察してその平均を取って代表値とし、示した。同様に、粒子間距離も20粒界以上を観察して測定し、平均値として算出して代表値とし、示した。加えて−20℃における母材と溶接継手の靱性を示した。本発明鋼を構造用鋼として考えた場合に、最低限度必要な靭性値として、寒冷地での使用も考慮して−20℃の吸収エネルギーは47J以上が必要である場合が通常、多いため、これをしきい値として評価に用いた。すなわち、47J以上の吸収エネルギーを発揮できない材料は、本発明鋼の目的を達していないと判断した。また、既に述べたごとく、引張り強さを向上させるWの効果は、材料強度にかかわらず発揮されるが、特に強度を向上させたい材料で工業的に有意であることは言うまでもない。従って、高張力鋼に使用される場合を想定して、これにもしきい値を設け、先述の700MPa級高張力鋼を想定して、680MPa以上を発揮する材料であることが本発明鋼の条件とした。すなわち、本発明鋼は680MPa以上の強度を有するとともに、Wを含有して−20℃における吸収エネルギーが47J以上の材料特性を有する鋼に限られる。
なお、表2、4において、母材TS:母材の板厚中心位置における引張り強さ測定結果(2点平均)、継手TS:溶接継手の熱影響部を試験片平行部に含む引張り試験片で評価した、溶接方向と垂直方向の板面内における板厚中心位置の引張り強さ(MPa)、母材vE−20:母材の板厚中心位置における−20℃のシャルピー吸収エネルギー(3点平均)、継手vE−20:溶接継手ボンドにV溝を加工したシャルピー試験の−20℃における吸収エネルギー(3点平均)、母材析出W量:母材の定電位電解抽出残渣を湿式分析(主に蛍光X線分析)で定量解析して得た析出Wの母合金質量に対する質量%、継手W析出量:溶接継手における溶接熱影響部の定電位電解抽出残渣を湿式分析(主に蛍光X線分析)で定量解析して得た析出Wの母合金質量に対する質量%、IMC粒子径:低温変態組織の大傾角粒界に析出したW系金属間化合物の粒子径を一試料あたり20視野以上観察して平均した結果、IMC粒子間隔:低温変態組織の鋼材断面における大傾角粒界上に析出したW系金属間化合物どうしの粒子表面間距離の20以上の測定値の平均値、母材の低温変態組織率:母材の組織の断面におけるベイナイトまたはマルテンサイト、またはそれらの和の全組織に占める面積率(100倍の光学顕微鏡視野で5視野の平均)をそれぞれ意味する。
Figure 2006316298
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Figure 2006316298
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表1、2に示すものが本発明例である。鋼成分、析出熱処理条件いずれも本発明範囲内にあり、母材の金属組織及び金属間化合物の析出状況はいずれも本発明を満たしている。一方、継手のW析出物はほぼ消滅していることがわかる。この結果として、母材、継手とも、強度は680MPa以上を確保し、同時に吸収エネルギー47J以上を確保することができた。
表3、4には本発明に対する比較鋼の分析、評価結果を示した。表中のアンダーライン部は本発明範囲を外れていることを示す。
比較鋼の内、50番鋼はCが下限値以下となり、低温変態組織、ここではベイナイトの分率が40%以下となって母材の引張り強さが680MPa以下となって本発明鋼の具備すべき特徴を満たさなかった例、51番鋼はC添加量が過多となり、大量のセメンタイトが析出したために強度こそ確保出来たものの、粒界脆化が生じて母材、溶接継手ともに目標とする靱性が確保出来なかった例、52番鋼はSiが不足し、脱酸が不十分となって酸化物クラスター(主にMn−Si酸化物)が生成し、酸素濃度が高く、母材、継手ともに靱性が劣化した例、53番鋼はSiが過多となり、Si酸化物のクラスターが生成して母材、継手ともに靱性が確保できなかった例、54番鋼はMn添加量が不足し、鋼材の引張り強さが不足した例、55番鋼はMnが過多となり、母材、継手ともに靱性が劣化した例、56番鋼はNbが不足し、析出強化が不十分となって、引張り強さが確保できなかった例、57番鋼はNbが過剰となり、NbCが粒界に大量にかつ粗大に析出し、靱性が劣化、同時にW系金属間化合物の析出サイトが失われ、金属間化合物の分散析出が実現出来なかった例、58番鋼はVが不足し、析出強化能が低下して強度が確保できなかった例、59番鋼はVが過剰となり、粗大な炭窒化物が生成して母材と継手の靱性が劣化し、さらにW系金属間化合物の粒界析出が生じなかった例、60番鋼はWが不足して金属間化合物による析出強化が達成出来ず、引張り強さを確保出来なかった例、61番鋼はWが過多となり、Wが多量に析出したために析出した金属間化合物としては強化に寄与できないほど粗大化し、同時に靱性劣化が生じた例、62番鋼はAlが不足して脱酸が不十分となり、酸素濃度が高く、Mn−Si系の酸化物クラスターが生成して母材の靱性が劣化した例、63番鋼はAl添加量が過剰で、粗大なAl23クラスターが生成し、母材と継手の靱性が確保出来なかった例、64番鋼はBが過剰で粗大BNと炭硼化物の析出が母材と溶接継手ボンドの粒界双方で生じて、両部位での靱性が劣化した例、65番鋼はNが過多となり、Alが適正添加されているにもかかわらず(Nb,V)(C,N)の析出が増えて、Wが炭化物中に固溶してしまい、析出強化能は炭窒化物の粗大化に伴って全く実現せず、引張り強さと靱性の両方を確保出来なかった例、66番鋼はCrを過剰添加したためにCr炭化物が粒界に粗大析出し、W系金属間化合物の粒界析出が阻害され、引張り強さが低下し、Cr炭化物によって靱性が劣化した例、67番鋼はMoを過剰に添加したため、Mo2Cが多数生成し、W系金属間化合物の析出が生起せず、Moによる析出強化と析出脆化が同時に生じて母材と継手の靱性が劣化した例、68番鋼はTiを添加したためにTi(C,N)の析出が顕著で、炭窒化物中へWが取り込まれ、W系金属間化合物による強化が得られず、強度が不足するとともに(W,Ti)(C,N)の粗大析出で靱性も低下した例である。
69、70番鋼は化学成分については全て本発明の制限範囲にあった鋼であるが、69番鋼はW系金属間化合物析出処理時間が不足し、析出強化の効果は少なく、鋼材強度が680MPaに満たなかった例、70番鋼は逆に長時間の析出処理を実施したために金属間化合物が粗大化して粒子表面間距離が増大して十分な析出強化が得られず、同時に材料の軟化が顕著で、引張り強さを確保出来なかった例である。
W系金属間化合物析出量と熱処理条件の関係を示す図である。 W系金属間化合物析出処理時間と析出強化量Δσの関係を示す図である。 鋼板試験片から特性評価用試験片を採取する要領を示す図である。
符号の説明
1 鋼板試験片
2 JIS Z 2201 4号衝撃試験片
3 JIS Z 2201 4号引張り試験片
4 板厚中心位置
5 鋼板の圧延方向

Claims (6)

  1. 質量%で、
    C :0.005〜0.08%、
    Si:0.01〜0.40%、
    Mn:0.10〜3.0%、
    Al:0.010〜0.10%、
    W :0.10〜3.0%、
    V :0.010〜0.50%、
    Nb:0.010〜0.080%
    を含有し、不純物としてP、S、N、Oを、
    P :0.020%以下、
    S :0.0040%以下、
    N :0.020%以下、
    Ti:0.005%以下、
    O :0.0060%以下
    に制限し、残部Feおよび不可避的不純物よりなる成分組成を有し、低温変態組織であるベイナイトまたはマルテンサイト相のラス構造を内包する大傾角粒界(隣接する結晶粒の方位が5度以上の粒界)に、100nm以下の間隔でWを含有する金属間化合物(析出した金属間化合物の70%以上が実質的にFe2W、Fe76である金属間化合物群)が析出し、かつ金属間化合物の平均粒子径が1μm以下であり、Wを含有する金属間化合物としてWの析出量が定電位電解抽出残渣を蛍光X線分析によって定量分析して得られる分析値において0.005%超であり、光学顕微鏡による断面観察の視野内において低温変態組織であるベイナイトまたはマルテンサイト相あるいはそれらの混合組織が面積率で50%以上を有することを特徴とする、溶接性および靱性を兼ね備えた引張り強さ700MPa級以上の高張力鋼材。
  2. さらに、質量%で、
    Ni:0.010〜0.50%、
    Cu:0.010〜0.50%、
    Co:0.010〜0.50%
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の溶接性および靱性を兼ね備えた引張り強さ700MPa級以上の高張力鋼材。
  3. さらに、質量%で、
    Cr:0.020〜0.60%、
    Mo:0.010〜0.50%
    の1種または2種を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の溶接性および靱性を兼ね備えた引張り強さ700MPa級以上の高張力鋼材。
  4. さらに、質量%で、
    B:0.0003〜0.0035%
    を含有することを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の溶接性および靱性を兼ね備えた引張り強さ700MPa級以上の高張力鋼材。
  5. さらに、質量%で、
    Ca:0.0003〜0.0045%、
    Mg:0.0003〜0.0045%、
    Y :0.001〜0.050%、
    Ce:0.001〜0.050%、
    La:0.001〜0.050%
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の溶接性および靱性に優れた引張り強さ550MPa級以上の高張力鋼材。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の成分を有する鋼片を、熱間で粗圧延、仕上圧延を行い、その後の冷却により鋼材中における低温変態組織であるベイナイトまたはマルテンサイト相あるいはそれらの混合組織を面積率で50%以上とし、さらに、600〜700℃の温度域に加熱所要時間1〜240分で昇温し、該温度域に1時間以上、1000時間以下保持した後、1℃/s以上の冷却速度で加速冷却し、または保持時間が1時間以上、500時間以内の場合に放冷することを特徴とする、溶接性および靱性を兼ね備えた引張り強さ700MPa級以上の高張力鋼材の製造方法。
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