JP4012497B2 - 溶接熱影響部靭性に優れた高張力鋼およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、引張り強さが550MPa以上と高く、詳しくは鋼板の圧延方向の引張り強さが550MPa以上であり、各種構造用材料あるいは機械用部品として、組み立て、建造の際に主に溶接を適用し、その継手特性にも母材と同等の仕様が必要である高張力鋼、例えば造船、橋梁、建築用各種鋼材、さらには室温以下の温度で使用する耐圧貯蔵容器の製造に際して使用する鋼に関する。
炭素含有量が0.3%以下のいわゆる低炭素鋼は、加工性と溶接性に優れ、多くの構造物で使用される。建築物、車両、船舶、産業用機械などはこれら低炭素鋼で骨格、あるいは内隔ないしは外殻を構成し、構造体が必要とする強度を主に担う。Cを低減した「軟鋼」では、その強度を極力高めて構造体の重量を軽減するための技術開発が盛んに行われてきた。溶接構造でなる構造体は、鋼の比強度(質量あたりの強さ)を上げることで大型化もとくは構造の複雑化、さらには強度が高いことで得られる安全性を獲得してきた。
しかし、低炭素鋼の強度上昇には炭素以外の合金元素の大量添加が必要であったり、あるいは鋼の製造に際して厳格に結晶組織を制御するための装置の複雑化が伴い、高強度化あるいは加工性を得る代わりに生産性あるいは生産コストの上昇が伴い、問題となっていた。特に近年は、構造体製造時に不可避の溶接施工工程を極力短縮することが試みられ、溶接入熱を増大させる技術の開発が進められた。その結果、溶接時の入熱は5万J/cmを超えることが多くなり、一部には10万J/cm、建築物では100万J/cmを超える入熱での溶接さえ実施されている。こうした高い溶接入熱の場合、被溶接材料は大きな熱影響を受け、溶融金属直近では1400℃もの高温にさらされ、また鋼のA1変態点である720℃付近以上の温度にさらされる、いわゆる「溶接熱影響部」の幅が広くなる。その結果、厳格に組織を制御した低炭素鋼の組織は、溶接熱影響を受けて消失し、その後の継ぎ手の冷却速度で決まる制御不可能な組織形態とならざるを得ない。溶接後に残留応力除去のための焼き鈍し程度の熱処理は施されるにせよ、変態点以上への再加熱は実施しないことからこうしてできた組織はその後変質させることは困難である。
こうした熱影響部においても、構造体は非熱影響部と同様な特性を極力維持することが求められるため、結局はこの溶接熱影響状態での鋼材の特性の発揮が最重要課題となり、その確保のための技術が研究されることとなった。
結晶組織、特に溶接ボンド近傍の旧γ粒径の増大を防止すべく、高温で分解しにくい窒化物や酸化物を利用した鋼材に関する技術の記載が特許文献1、特許文献2などにみられる。しかし、本発明で対象とする高張力鋼においてはこれら技術を適用しても、材料の強度を発現するために実施した結晶組織の製造時における形態は再現することが困難であり、必要とする靭性が確保できる場合でもこうした熱影響部での強度確保が困難となるという課題が未解決であった。
一方で、NiやCr、Moなどを添加して、鋼材の焼き入れ性を向上し、強度を確保する手法も当然、合金設計の考え方としては妥当である。しかし、NiやMoは高価な元素であって、工業的には構造用鋼に例えば5%を超えて大量添加することは実用的ではない。コストの大幅上昇を嫌って、添加量を制限する場合には効果が少なく、コスト増が問題となるため、実用的な解決策にはなりがたい。また、Crは析出脆化を起こしやすく、強度上昇と引き替えに靭性を失ってしまう。Nb、V、Tiなどの元素を大量に添加した場合でも同様であり、高張力鋼の熱影響部の特性をバランス良く得ようとする場合には、工業的にほとんど手詰まりの状態となっていた。
一方で、その機構は不明であるが、Wを添加し、材料の強度向上を図る技術については、耐熱鋼を中心に多くの技術が開発されている。特許文献3、特許文献4、特許文献5にはCrを0.8%以上含有する耐熱鋼において、そのクリープ破断強度を向上させる目的でWを0.01〜3.5%含有する鋼材についての記載がある。ただし、これらはいずれもクリープ特性の向上が趣旨であって、その溶接熱影響部における強度と靭性の両立については、耐熱鋼の使用温度が最低でも400℃以上であるために靭性に対する要求がほとんど無く、あっても施工時の割れ、あるいは水圧試験時の損傷を対象としたものであり、また元来耐熱鋼で構成される高温高圧の発電プラントあるいは石油化学プラントでは入熱の高い溶接条件は、溶接継ぎ手の脆化を懸念して、これを全く採用しない。従って、Wの添加は大入熱の溶接熱影響部特性を制御するためのものではなく、また鋼中での存在形態も当然異なっていて、本発明の対象とする室温以下での構造体に施される大入熱溶接の熱影響部における特性確保を考慮しておらず、その化学成分構成が原因となり、仮に大入熱溶接を適用した場合には必然的に靭性は著しく低下することが通例であった。
また、室温以下で使用される構造用材料にWを添加する技術については、他の鋼材の特性向上を図るために適用されている例がある。特許文献6には結晶粒径を微細に制御する厚鋼板の製造方法に関する開示があり、Wを2.0%以下の範囲で添加する鋼材に関しての記載がある。しかし、この場合にはWを材料の焼入れ性向上の目的で添加しているため、その析出割合に関しての記載が無く、従って固溶強化を効果的に利用する技術については全く知見されていない。特許文献7では鋼板の幅方向温度分布を制御して鋼板の板面内結晶粒を至る所均一に制御する方法に関する技術の記載があるが、やはりこの場合にもWの添加は焼入れ性向上が目的であって、析出量を制限する技術の記載がない。すなわちWの固溶強化を積極的に利用する技術の記載がない。同様に特許文献8では鋼板表面のスケール均一性を目的とした鋼板の製造方法と鋼板に関する記載があるものの、上記の技術と全く同様にWの析出制御に関する知見が無く、固溶強化の積極的利用は考慮されていてない。
特許文献9と特許文献10では溶接熱影響部の疲労強度を向上せる技術に関する記載があり、Wを0.01〜2.0%添加し、析出強化または固溶強化で作用させる記載がみられる。しかし、その析出割合に対しての言及はなく、金属間化合物としての析出も全く知見しておらず、単にWを添加することで鋼材強度の向上をねらったものであり、当然析出量の制御がなされない場合はこれら技術を用いても、本発明の効果である固溶Wによる靭性低下の少ない強度向上効果は得られない。従って以上の従来技術をもってしても、強度550MP以上の高張力鋼における大入熱溶接の際にもその熱影響部において母材と同様な強度と靭性特性を確保する技術は実現することはできないという課題が残されていた。
特公昭57−19744号公報 特許第3256118号公報 特開平10−46290号公報 特開平8−225884号公報 特開平9−217146号公報 特許第2633743号公報 特開平4−350119号公報 特開平9−271806号公報 特開平7−331382号公報 特開平2003−3229号公報
本発明は、従来の高張力鋼が抱える問題点、すなわち低炭素鋼の溶接熱影響部の強度と靭性を同時に高めることが困難である場合の、工業生産性が高くかつ合金添加量がコストに大きな影響を与えない条件の下での合金設計を可能とする、新しい鋼材を提供する。
本発明は上記のような従来鋼の課題、すなわち引張り強さ520MPa以上の高張力鋼において、入熱が5万J/cmを超える大入熱溶接において、溶接ボンドの靭性を確保することを必須とする継ぎ手において、母材同等以上の強度を付与するためになされたものであって、その要旨とするところは以下の通りである。
(1)質量%で、C:0.001〜0.05%、Si:0.01〜0.50%、Mn:0.10〜3.0%、W:0.10〜1.0%を含有し、さらに、P≦0.03%、S≦0.02%、O≦0.01%に制限し、Nb:0.005〜0.017%、V:0.005〜0.045%、Ti:0.005〜0.041%、Zr:0.005〜0.1%の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼組成を有し、溶接時に鋼材のAc1点以上にさらされる熱影響部において析出W量が添加W量の1%以下であり、同時に熱影響部以外の母材において析出W量が添加W量の10%以下であり、さらに、次式で示されるLP値が、Wを含有する金属間化合物Laves相の析出抑制のために2.5以下であることを特徴とする、引張り強さ550MPa以上の溶接熱影響部靭性に優れた高張力鋼。
LP=3×(%Si)+(%W)+2×(%Cr)+0.5×(%Mo)
(2)さらに、質量%でMo:0.01〜1.0%含有することを特徴とする、上記(1)に記載の引張り強さ550MPa以上の溶接熱影響部靭性に優れた高張力鋼。
(3)さらに、質量%で、Ni:0.01〜5.0%、Cu:0.01〜1.0%Cr:0.10〜1.0%、B:0.0003〜0.005%の1種または2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の引張り強さ550MPa以上の溶接熱影響部靭性に優れた高張力鋼。
(4)さらに、質量%で、Ca:0.0003〜0.005%、Mg:0.0003〜
0.005%、Ba:0.0003〜0.005%、Y:0.0005〜0.10%、C
e:0.0005〜0.10%、La:0.0005〜0.10%の1種または2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の引張り強
さ550MPa以上の溶接熱影響部靭性に優れた高張力鋼。
(5)さらに、質量%で、Al:0.002〜0.20%、Ta:0.002〜0.20%1種または2種含有することを特徴とする、上記(1)ないし(4)のいずれか1項に記載の引張り強さ550MPa以上の溶接熱影響部靭性に優れた高張力鋼。
(6)溶接時に鋼材のAc1点以上にさらされる熱影響部において金属間化合物FeW型Laves相の割合が析出W量として添加W量に対して1%以下であることを特徴とする、上記(1)ないし(5)のいずれか1項に記載の引張り強さ550MPa以上の溶接熱影響部靭性に優れた高張力鋼。
(7)特性X線測定による鋼材中の偏析W濃度分析値の最高値を、W添加量で除したWの偏析度が、1.5以下であることを特徴とする、上記(1)ないし(6)のいずれか1項に記載の引張り強さ550MPa以上の溶接熱影響部靭性に優れた高張力鋼。
(8)上記(1)ないし(7)のいずれか1項に記載の鋼組成を有する鋼を、熱間圧延または鍛造等の熱間加工後の冷却工程で、または、焼準、焼戻、焼鈍等の熱処理後の冷却工程で、400〜700℃の温度域での保時時間もしくは通過時間を30時間以内に制限することを特徴とする、溶接時に鋼材のAc1点以上にさらされる熱影響部において析出W量が添加W量の1%以下であり、同時に熱影響部以外の母材において析出W量が添加W量の10%以下であり、さらに、次式で示されるLP値が、Wを含有する金属間化合物Laves相の析出抑制のために2.5以下となる、引張り強さ550MPa以上の溶接熱影響部靱性に優れた高張力鋼の製造方法。
LP=3×(%Si)+(%W)+2×(%Cr)+0.5×(%Mo)
本発明の適用によって、入熱の大きい溶接を用いた場合でも継ぎ手の靭性と強度が高い構造物を製造する上で、合金添加量が少なく、かつ引張り強さが520MPa以上である高張力鋼材を安価に供給することが可能となる。
まず、本発明において記載の鋼の各種構成元素の質量割合を請求項に記載のごとく決定した理由を以下に詳細に述べる。
C:鋼中にあって、転位の近傍に集積し、材料変形挙動を支配するとともに、結晶格子の形態を単純なBCC構造からBCTなどの準安定構造への移行を容易にする役割を担う。種々の遷移元素と炭化物を形成し、強化に寄与する。本発明ではこれら因子を発現するために最低0.001%が必要で、0.05%を超えて添加するとWが一部炭化物として析出して、本発明鋼のWの析出割合、母材にて10%以下、溶接熱影響部にて1%以下を維持できなくなるため、最大添加量を0.05%とした。ただし、上記のごとくCの存在はWを固溶状態でとどめおき、固溶強化元素として主に使用するという目的からは少ない方が良い。0.001〜0.05%の範囲においては、好ましくは0.04%未満、さらに望ましくは0.015%未満であることがWの炭化物としての析出を完全に0とするうえで良い。
Si:鋼材の精錬時における脱酸元素として有用であり、同時に鋼中に固溶した場合には固溶強化、あるいは焼入れ性の向上に寄与し、材料の強度上昇と組織制御に有用である。脱酸に必要な最低量として0.01%を規定し、0.5%以上の添加で鋼材の靭性を著しく損なう場合があることから、その成分範囲を0.01〜0.5%とした。
Mn:Siと同様に脱酸を支配し、また固溶状態で材料の焼入れ性向上に寄与する。0.10%未満では脱酸に不十分であり、3.0%を超えて添加する場合、偏析部位で材料が著しく脆化する場合があるため、その添加範囲を0.10〜3.0%とした。
W:本発明において必須であり、かつ最も材料特性を支配する重要な元素である。主に鋼中には固溶状態にあって、結晶格子に大きな歪みを与える。これによる固溶強化は大きく、しかも靭性を大きく低下させないことが本発明者らの詳細な研究によって明らかとなった。その成分範囲は、強化に必要な最低量が0.10%であり、1.0%を超えて添加するとFe2W型金属間化合物を生成して材料強化能がかえって低下し、また同時に大型の金属間化合物の存在によって脆化する場合があることから、その添加範囲を0.10〜1.0%に制限した。ただし、このWを単純に鋼材の一成分としてとらえ、添加するだけでは本発明の効果を十分に得ることはできない。
Wは、固溶状態にあってはじめて上記の効果を発揮する。析出した場合には添加したWに見合う強化が実現しないばかりか、先述のとおりに脆化する場合がある。溶接時に鋼材のAc1点以上にさらされる熱影響部において析出W量が添加W量の1%を超えると、図2に示すように、吸収エネルギーは47Jを下回る場合があることが判る。また、熱影響部以外の母材において析出W量が添加W量の10%を超えると、固溶強化が維持できずに強度が550MPaに届かないこととなる。そのため、本発明においては溶接時に鋼材のAc1点以上にさらされる熱影響部(以下、このような熱影響部を「溶接熱影響部」という。)において析出W量が添加W量の1%以下であり、同時に熱影響部以外の母材において析出W量が添加W量の10%以下であるものとした。
このWの析出形態には、Wを含む炭化物あるいはLaves相型金属間化合物があり、どちらも靭性を低下させる。両者の析出温度域は700℃以下であり、特に400℃以上の高温で長時間保持すると析出する。700℃では30時間、400℃では10000時間程度から析出が始まることを実験的に確かめた。700℃以上の高温ではこれらの析出物は不安定であり、本発明の範囲の添加では、後述するごとく偏析度を1.5以下に抑制していれば全て分解固溶することもまた、研究の結果明らかとなった。従って、通常の製造工程において、鋼材を最終製品とする前の熱処理、例えば焼き入れ、焼準し、焼戻し、焼鈍し等において、400〜700℃の温度域に30時間を超えて保持すると、母材部あるいは熱影響部いずれも、Wは本発明の制限を超えて析出する。鋼板が薄い場合、あるいは鋼塊が小さい場合には400〜700℃の温度範囲で30時間以上保持することは無いが、厚板、あるいは大型鋼塊ではこのような熱履歴がとられる場合がある。本発明鋼ではこの点に留意し、加算的な場合(焼入れ+焼戻しなどの複合熱処理あるいは繰り返し焼戻し処理など)も含めて、上記温度域での通過ないしは保持時間を厳格に制限する必要がある。
溶接継手においては、材料の靭性を十分に確保すべく組織を制御すると、材料強度が低下する場合が多い。このような場合にWの添加は有効で、組織制御だけで強度が550MPaに達しない場合に、W添加で強度を確保することが可能となる。しかし、この場合にも同様に、溶接後に材料の高温割れを防止すべく冷却を遅らせたり、あるいは継手の残留応力軽減のための応力除去焼鈍を長時間にわたって実施する場合、当該温度域の保持および通過時間に注意し、合計で30時間以下に制御する必要がある。溶接時に700℃まで再熱されない、溶接熱影響部近傍母材においては、製造工程における焼き戻し処理に加えて溶接熱影響、そしてその後の応力除去焼鈍が加わるために、この時間制限を逸脱する場合が多い。従って材料が構造体として完成するまでの間、上記温度域の保持および通過時間は厳格に制限する必要がある。請求項6はこの様な研究成果による知見に基づいてなされた発明である。Wは700℃〜400℃の温度域において、本発明鋼の場合専ら(概略90%以上)Fe2W型Laves相として析出する。主に粒界に粗大に析出する傾向にある。溶接熱影響部は、特に結晶粒が粗大化する部位があり、靭性は低下する。この低下を防止する為にはWの析出、特に溶接熱影響部でのWの析出の実質的全てを占めるFe2Wの析出の割合は、析出W量として添加W量に対して1%を超えてはならない事を実験的に確認した。なお、Fe2W型Laves相は700℃以上ではほぼ全量が再固溶して分解する。従って、Ac1変態点(720℃付近)以上に再加熱される溶接熱影響部では、その後の加熱ないしは冷却工程で長時間400〜700℃にさらされる場合、全量が粒界析出し、より靭性に悪い影響を与えることが判った。従って、金属間化合物Fe2W型Laves相の割合を析出W量として添加W量に対して1%以下に限定した。
なお、上述のW析出抑制、偏析抑制の技術を用いても、鋼中にSi、Cr、Moが多く存在し、次式で示される金属間化合物Laves相の析出促進パラメータLP値が2.5を超えると、鋼中でのWのLaves相としての溶解度積に影響があり、金属間化合物の析出が生じる場合があることを実験的に確かめた。
LP=3×(%Si)+(%W)+2×(%Cr)+0.5×(%Mo)
このパラメータは、鋼中にWとSi以外に、本発明の各請求項で記載した各種元素を添加した鋼を実験室の高周波誘導式真空加熱炉で溶製してインゴットとなし、続いて熱間圧延して試作し、その鋼材中における析出Fe2W量および、入熱5万J/cm以上の条件でTIG溶接あるいはSMAW溶接にて複数パスにて得られた継ぎ手の溶接熱影響部中に存在するFe2W量を、有機酸溶液中において定電位電解することで基材を溶解除去して残留した鋼中析出物をフィルターで捕集した後に吸光光度法などによる化学分析で定量し、LP値が2.5を超えたときに鋼材中のFe2W析出が増加して結果的にW析出量が母材で10%あるいは溶接熱影響部で1%を超え、強度が550MPaに届かないか、もしくは継ぎ手の靭性が構造材料に要求される靭性値を得られない、例えばシャルピー衝撃試験で、構造物の使用温度において47Jを得られないことを実験的に見いだした。LP値の式中の各構成元素質量割合にかかる係数は全て実験式として最小自乗法で一次元の加算則を仮定して実験結果を、Laves相の析出の有無について整理した場合の概略の値である。図1にはこのパラメータLPとLaves相の析出量の関係を示す図である。明らかに、横軸LP値とLaves相析出量の関係はしきい値で大きく変化している。LP値を2.5以下に制御しないとLaves相の析出は制限できない。図2にはLaves相を含めたWの析出割合(Wの全析出量/添加W量)×100%と、強度600〜660MPaを有する本発明鋼溶接熱影響部の0℃におけるシャルピー吸収エネルギーの関係を示した。Wの溶接熱影響部における析出割合が1%を超えると、吸収エネルギーは47Jを下回る場合があることが判る。
本発明鋼においては不純物であるP、S、Oは溶接熱影響部のみならず母材の靭性を損なう影響をもたらすことから、上述の各成分元素を最適化しても、化学成分や強度とは無関係に靭性劣化が生じる場合がある。これを防止する目的で、Pを0.03%未満、Sを0.02%未満、Oを0.01%未満に厳格に制限した。
また、以下の選択元素を添加して鋼材の強度を高め、組織を制御して本発明の効果を高めることが可能である。すなわち、Nb、Ti、V、Zrの析出強化および未再結晶温度制御元素の1種または2種以上を制御添加する。
以上が本発明の中核技術であるが、さらに以下の選択元素を添加して鋼材の強度を高め、組織を制御して本発明の効果をさらに高めることが可能である。すなわち析出強化未再結晶温度制御元素であるMo、あるいはさらにNi、CuCr、Bの焼入れ性向上元素の1種または2種以上、あるいはさらにCa、Mg、Ba、Y、Ce、Laの硫化物形態制御ないしは微細酸化物分散状態制御元素の1種または2種以上、加えてさらにAl、Ta2次脱酸元素ないしは炭化物、窒化物形成元素の1種または2種以上の添加である。以下にこれら選択元素の添加範囲を制限した理由を述べる。
Nbは、窒素、炭素と結合してNbCないしはNbNとして整合析出し、材料を析出強化する。析出強化を適正に制御すれば靭性を大きく低下させることなく強度を向上させうることが知られている。その添加量は0.005%から効果を発揮し、0.017%を超えて添加すると析出物が粗大化して材料が脆化するため、その添加範囲を0.005〜0.017%に限定した。
VもNbと同様に析出強化に寄与する。その析出量はNbほど多くないが、Nbと複合析出することが知られており、複合添加ではより一層の析出強化が期待できる。0.005%以上添加しないと効果が発現せず、0.045%を超えて添加する場合には粗大な炭窒化物として析出することから鋼材の脆化を来すため、添加範囲を0.005%〜0.045%とした。
Tiは、特にNとの親和力が高く、主にTiNとなって窒素を固定する。TiNそのものは比較的粗大で析出強化には寄与しがたいが、N含有量が低い場合にはTiCとして析出強化に寄与する。TiNの析出が促されると、後述するB添加効果が助長されることから、Bの有効活用のために添加する場合もある。その効果は0.005%から発現し、0.041%以上では粗大な炭窒化物を生成して材料を劣化させる場合があるため、添加範囲を0.005〜0.041%に制限した。
Zrは、Tiと同様な効果を有し、最もNとの親和力が高いが、炭化物としては粗大であり、炭化物ないしは窒化物として利用する際に炭素量、窒素量との兼ね合いで添加する必要がある。その効果は0.005%から発現し、0.1%以上で著しい脆化を引き起こすことから、その添加範囲を0.005%〜0.1%に制限した。
Moは、焼き入れ性向上元素であるが、同時に固溶強化能が高く、またMo2Cとして析出し、強い2次硬化現象を示す。0.01%以上添加しないと析出強化がみられず、1.0%を超えて添加すると強化が高くなりかえって材料が脆化するため、その添加範囲を0.01〜1.0%に制限した。なお、MoのCとの析出力は極めて高く、その析出制御は困難であるため、Wと同等な効果は得られないため、本発明では選択元素として添加するにとどめた。
Niは、基材の高靭化に寄与し、材料の靭性向上には多く使用されている。また変態点低下による焼入れ性の向上から強度が高くなるなど利点は大きい。しかし、一方で大量添加は元素が高価であるために積極的に用いることはできず、また無拡散変態時の残留オーステナイト生成の観点からは有害である。添加の効果は0.01%から発現し、5.0%以上の添加は鋼材の結晶格子構造をBCCからFCCへと変化させてしまうことが懸念されるため、その添加範囲を0.01〜5.0%に限った。
Cuは、オーステナイト形成元素であり、オーステナイト相中にわずかに固溶して材料の焼き入れ性に寄与し、またフェライト相ではイプシロンCuの形で析出強化に寄与する。過剰添加は粒界フィルム状Cuの析出を誘発するため、効果の発現する0.01%から粒界析出の頻発しない限界含有量1.0%を本発明における制限範囲とした。
Crは、焼き入れ性向上に有効で、かつ材料の耐食性にも奏功する元素である。しかし、島状マルテンサイトなどの硬質第二相を生成しやすく、強度は向上できるが靭性を失いやすい。従って、焼き入れ性向上の観点から最低でも0.10%が必要で、靭性維持の観点から添加量を1.0%に制限した。
Bは、粒界からの結晶粒の核生成を抑制する効果を有し、極少量でも粒界へ偏析する傾向が強いことから、微量添加で高い焼入れ性を獲得できる元素である。その効果は0.0003%から既に発現し、0.005%を超えて添加すると粒界脆化もしくは硼化物析出による脆化を来すため、その添加範囲を0.0003%〜0.005%に制限した。なお、Bの効果をより一層高めるためには既述したTiの同時添加は有効である。
Caは、硫化物形態制御元素として、MnSの無害化に有益であり、その結果材料の靭性向上に寄与する。0.0003%以上添加しないと効果が無く、0.005%を超えて添加すると、酸素との親和力が高いためにCaOのクラスターを形成して靭性を逆に低下させる。そのため添加範囲を0.0003%〜0.005%に制限した。
Mgも、同様に硫化物形態制御機能を有する。また、脱酸力が高く、鋼中に酸化物あるいは酸硫化物として微細に分散すると、粒界の移動障害として機能し、溶接熱影響部の靭性を向上させる効果を有する。その効果は0.0003%から発現し、0.005%以上の添加は強い脱酸力が製鋼工程の耐火物を損耗させ、鋼中不純物濃度をかえって高めてしまうことから、添加範囲を0.0003%〜0.005%に制限した。
Baは、Ca、Mgを凌駕する脱酸力を有しており、同時に硫化物形態制御能を有する。0.0003%から材料の靭性向上に有効であり、0.005%以上の添加は耐火物の損耗を著しく促進するため、添加範囲を0.0003%〜0.005%に限った。
希土類元素として知られるY、Ce、Laは、いずれも硫化物形態制御能を有する。これらの硫化物形態制御効果は0.0005%から発現し、0.10%を超える添加は、製鋼工程の鋳造時に浸漬ノズルの閉塞を誘発しやすいことから、スラブ製造に困難を来すため、その添加範囲を0.0005%〜0.10%に制限した。
本発明の最大の特徴である固溶Wによる材料の強化を、工業的に安定してなしうるにはWの偏析についての課題を解決することは不可避である。Wは溶鉄が凝固する際の固液分配比が大きく、従って凝固組織におけるミクロ偏析が常態化する。偏析度の高いMnよりも偏析が強く、平均で1.6〜1.7、凝固条件によっては2.0となる場合もあることが、研究の結果明らかとなった。最大1.0%のWを添加した場合、部分的に2.0%のW濃縮部が形成される可能性を示唆している。
こうしたミクロ偏析を分析することは簡単で、画像処理装置を備えた特性X線分析装置により、例えば電子顕微鏡観察下でそのX線強度分布図を作成することは、今日一般に実施することができる。そこで、この偏析を少ない状態、例えば均質化焼鈍などを鋼材の製造工程において実施することにより、低減することで部分的なWの濃度の変動を少なくすることが可能である。本発明においては、Wの過剰添加はその析出を誘引することから添加量を最大1.0%に制限したが、この場合に金属間化合物や炭化物として、請求項1に記載したW析出割合を超えないための条件として、上記特性X線分析装置による測定で、Wの偏析が低減されていることを定量的に確認し、鋼材の品質を保つことが可能である。ここでは定量的な判定のための指標として、偏析度=(特性X線測定による鋼材中の偏析W濃度分析値の最高値)/(W添加量)を導入し、この値が1.5以下である場合には、母材部あるいは熱影響部いずれも、Wが請求項1に記載の値以上に析出しないことを実験的に確認し、本発明に具備すべき条件とした。Wの偏析度を1.5以下とするための達成手段は熱処理、高温での加工など手段を問わない。図3は、上記偏析度と0℃における母材靭性(シャルピー吸収エネルギー)の関係を示した。偏析度が1.5を超える場合ではWの析出割合が母材において全て10%を超えていることを別途定電位電解抽出残渣の湿式化学分析で確認した。偏析度1.5超では母材靭性は47Jに達することはない。
なお、本発明においては製鋼工程での制約は特にない。通常の高炉−転炉−二次精錬などの高炉一貫製造工程を経て連続鋳造、インゴット鋳造などでスラブまたはインゴットを得ても良く、また電気炉あるいは他の熱源を利用した還元溶融炉によってスクラップを原料としてインゴットを得ることも可能である。スラブあるいはインゴットはさらに、再加熱の後に均質加熱処理を施して偏析を軽減し、続いて熱間圧延あるいは熱間鍛造して鋼板や棒鋼、鋼管、線材とすることが可能であって、本発明を構造材料として利用する上で有効であり、発明の効果を全く妨げない。造塊までの工程で使用する耐火物や雰囲気などにも通常の製鉄工程が適用可能で、特殊な装置、プロセスの導入が必要ではない。最終製品である鋼の特性として清浄度、あるいは結集粒径などが制御されている必要がある場合には、溶解法としてESR法やプラズマ溶解、さらには一方向凝固法、帯状溶融精錬法すなわちゾーンメルティングなども適用できて、本発明の効果に何ら支障を及ぼさない。また、インゴットあるいはスラブ等の中間製品でのサイズあるいは重量にも制限が無く、数百トン〜グラム単位での製造も可能である。
ただし、鋼中の析出W量制御には最大の注意が必要で、偏析度を1.5以下とし、さらに熱間圧延または鍛造等の熱間加工後の冷却工程で、または、焼準、焼戻、焼鈍等の熱処理後の冷却工程で、400〜700℃の温度範囲で不連続であっても30時間を超える保持は本発明の効果が十分に発揮できない場合があるため、これを適用できない。
本発明の高張力鋼は、上述のとおり入熱の大きい溶接を用いた場合でも継ぎ手の靭性と強度が高い構造物を製造することができるので、大入熱溶接用、特に入熱が5万J/cmを超える大入熱溶接用として用いると好ましい。
請求項1〜10に記載の鋼を、通常の高炉−転炉−二次精錬−連続鋳造−熱間圧延−熱処理工程を経て、厚み6〜120mmの鋼板とし、あるいは別途電気炉熔解−二次精錬−インゴット鋳造−熱間鍛造−熱間圧延−熱処理工程を経て同様に鋼板試験片を作成した。鋼塊重量は2tonから300ton、鋼板は6〜12m長、2〜4m幅で1.8〜12tonの重量となった。図4は試験片の採取要領を示す図である。鋼板試験片としての鋼板1から、鋼板幅方向中心部において、板厚1/4t位置5、および板厚1/2t位置4より、JIS Z 2201に規定された4号衝撃試験片2mmV溝付き2、JIS Z 2201に規定された4号引張り試験片3などの各種試験片を採取し、鋼板特性の代表値とした。
試作鋼板には種々の熱処理を施した。熱間圧延ままのもの、および焼き戻し処理をAc1点以下で実施するもの、焼き入れ焼き戻し処理を実施するもの、焼準処理を実施するもの、焼き戻しを複数回実施するもの、焼き戻しの後にさらに冷間加工を実施し、加えて応力除去焼鈍を実施したものについても評価した。
評価は前記の方法で採取したJIS Z 2201に規定された4号引張り試験片で引張り特性を、同じく2mmVノッチつき4号衝撃試験片でシャルピー吸収エネルギー遷移曲線を採取し、さらに金属組織を圧延方向と平行な断面で光学顕微鏡にて組織現出腐食を施した後に観察した。また、Wの偏析度は、鋼板の1/2板厚位置で鋼板の幅方向に、集束ビーム径10μmのEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)にて線分析し、最高濃度値を測定し、添加W量との比を計算して評価した。さらに、製造工程の熱処理における400〜700℃の保持または通過時間を積算して記録した。また、材料中に存在するW化合物は、有機酸を用いた基材の定電位電解で残渣を抽出し、そのX線回折により存在形態を、また湿式分析によりW量を分析し、化学量論比に基づいて析出量を計算した。
表1、表2には本発明鋼の化学成分、引張り強さ、母材中の析出W量が添加W量に占める割合(母材部W析出割合)、10万J/cmの溶接入熱でV開先を溶接した場合の溶接熱影響部における析出W量が添加W量に占める割合(溶接熱影響部W析出割合)、金属間化合物Fe2W型Laves相が析出W量として添加W量に占める割合、さらには上記方法で測定したW偏析度を示した。ここで、溶接熱影響部とは、溶接時に鋼材のAc1点以上にさらされる熱影響部を意味する。また、Fe2W析出制御パラメータLP値、加えて0℃における母材と溶接ボンドの吸収エネルギーを示した。本発明鋼を構造用鋼として考えた場合に、最低限度必要な靭性値として、0℃の吸収エネルギーは47J以上が必要である場合が通常、多いため、これをしきい値として評価に用いた。すなわち、47J以下の吸収エネルギーを発揮できない材料は、本発明鋼の目的を達していないと判断した。また、既に述べたごとく、引張り強さを向上させるWの効果は、材料強度にかかわらず発揮されるが、特に強度を向上させたい材料で工業的に有意であることは言うまでもない。従って、高張力鋼に使用される場合を想定して、これにもしきい値を設け、先述の550MPa以上を発揮する材料であることが本発明鋼の条件とした。すなわち、本発明鋼は550MPa以上の強度を有するとともに、Wを含有して0℃における吸収エネルギーが47J以上の材料特性を有する鋼に限られる。
Figure 0004012497
Figure 0004012497
表3、表4には、比較鋼の評価結果を示した。第50番鋼はCが上限値0.05を大きく超えたため、添加Wが一部(W、Mo、V)Cとして析出し、母材および溶接熱影響部の靭性が劣化した例、第51番鋼はSiを過剰に添加したため、鋼材そのものが脆化して靭性を確保できなかった例、第52番鋼は添加W量が少なく、室温引張り強さを550MPa確保できなかった例、第53番鋼は添加W量が1.0%を超えて過剰であり、母材中のW析出量は添加量の10.0%を超えてしまったため、金属間化合物Laves相が組織の粒界に析出し、材料が脆化するとともに、粒界近傍の固溶Wが減少し、かえって強度も低下した例、第54〜57番鋼は、選択元素であるNb、V、Ti、Zrがいずれも上限値を超えて添加されたため、全て炭窒化物の過剰析出が生じて脆化し、靭性が低下した例、第58番鋼はBを過剰に添加したため、粒界脆化と硼化物の粗大析出が認められ、この結果材料が脆化した例、第59番鋼は本発明の請求項記載の各化学成分範囲からの個々の元素添加量に関する逸脱はないものの、LP値で規定したFe2W型Laves相の析出を促進するパラメータが2.5を超え、結果として靭性の劣化が生じた例、第60番鋼は製造工程において400〜700℃の温度範囲に保持された時間の総和が30時間を超えたため、同様に金属間化合物Laves相の析出が増加し、材料が脆化した例、第61番鋼はWの偏析度が1.5を超えてしまったために、W析出の多い部位が局所的に生じて材料が脆化した例である。
Figure 0004012497
Figure 0004012497
LP値とLaves相析出量の関係を示す図である。 溶接熱影響部中のW析出割合と0℃における靭性の関係を示す図である。 Wの鋼中偏析度と0℃における母材の靭性の関係を示す図である。 試験片採取要領を示す図である。
符号の説明
1 鋼板
2 JIS Z 2201に規定された4号衝撃試験片2mmV溝付き
3 JIS Z 2201に規定された4号引張り試験片
4 板厚1/2t位置
5 板厚1/4t位置
6 鋼板の圧延方向

Claims (8)

  1. 質量%で、
    C :0.001〜0.05%、
    Si:0.01〜0.50%、
    Mn:0.10〜3.0%、
    W :0.10〜1.0%
    を含有し、さらに、
    P≦0.03%
    S≦0.02%、
    O≦0.01%
    に制限し、
    Nb:0.005〜0.017%、
    V :0.005〜0.045%、
    Ti:0.005〜0.041%、
    Zr:0.005〜0.1%
    の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼組成を有し、溶接時に鋼材のAc1点以上にさらされる熱影響部において析出W量が添加W量の1%以下であり、同時に熱影響部以外の母材において析出W量が添加W量の10%以下であり、さらに、次式で示されるLP値が、Wを含有する金属間化合物Laves相の析出抑制のために2.5以下であることを特徴とする、引張り強さ550MPa以上の溶接熱影響部靭性に優れた高張力鋼。
    LP=3×(%Si)+(%W)+2×(%Cr)+0.5×(%Mo)
  2. さらに、質量%で
    Mo:0.01〜1.0%含有することを特徴とする、請求項1に記載の引張り強さ550MPa以上の溶接熱影響部靭性に優れた高張力鋼。
  3. さらに、質量%で、
    Ni:0.01〜5.0%、
    Cu:0.01〜1.0%
    Cr:0.10〜1.0%
    B :0.0003〜0.005%
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の引張り強さ550MPa以上の溶接熱影響部靭性に優れた高張力鋼。
  4. さらに、質量%で、
    Ca:0.0003〜0.005%、
    Mg:0.0003〜0.005%、
    Ba:0.0003〜0.005%、
    Y :0.0005〜0.10%、
    Ce:0.0005〜0.10%、
    La:0.0005〜0.10%
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の引張り強さ550MPa以上の溶接熱影響部靭性に優れた高張力鋼。
  5. さらに、質量%で、
    Al:0.002〜0.20%、
    Ta:0.002〜0.20%
    1種または2種含有することを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の引張り強さ550MPa以上の溶接熱影響部靭性に優れた高張力鋼。
  6. 溶接時に鋼材のAc1点以上にさらされる熱影響部において金属間化合物Fe2W型Laves相の割合が析出W量として添加W量に対して1%以下であることを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の引張り強さ550MPa以上の溶接熱影響部靭性に優れた高張力鋼。
  7. 特性X線測定による鋼材中の偏析W濃度分析値の最高値を、W添加量で除したWの偏析度が、1.5以下であることを特徴とする、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の引張り強さ550MPa以上の溶接熱影響部靭性に優れた高張力鋼。
  8. 請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の鋼組成を有する鋼を、熱間圧延または鍛造等の熱間加工後の冷却工程で、または、焼準、焼戻、焼鈍等の熱処理後の冷却工程で、400〜700℃の温度域での保時時間もしくは通過時間を30時間以内に制限することを特徴とする、溶接時に鋼材のAc1点以上にさらされる熱影響部において析出W量が添加W量の1%以下であり、同時に熱影響部以外の母材において析出W量が添加W量の10%以下であり、さらに、次式で示されるLP値が、Wを含有する金属間化合物Laves相の析出抑制のために2.5以下となる、引張り強さ550MPa以上の溶接熱影響部靱性に優れた高張力鋼の製造方法。
    LP=3×(%Si)+(%W)+2×(%Cr)+0.5×(%Mo)
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