JP2006274313A - 熱交換器用銅合金管及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 熱交換器用銅合金管は、Sn:0.1乃至1.0質量%、P:0.005乃至0.1質量%、Fe:0.03乃至0.1質量%、O:0.005質量%以下及びH:0.0002質量%以下を含有し、必要におうじてZn:0.01乃至1.0質量%を含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成を有し、平均結晶粒径が30μm以下であり、0.2%耐力が95乃至200N/mm2である。
【選択図】 なし
Description
Snが1.0質量%より多く含まれると、鋳塊における凝固偏析が激しくなると共に、押出時の変形抵抗も大きくなる。この鋳塊における偏析は、製品においても十分に解消されず、製品管の組織が不均一になり、この組織不均一により、機械的性質の低下及び耐食性の低下が生じやすい。凝固偏析を解消し、更に押出時の変形抵抗を低減できる押出条件にするためには、請求項1に記載の熱間押出条件では不十分であり、熱間押出前の加熱温度及び/又は加熱時間を増加させる必要があって、生産コストを増大させてしまう。また、Snの含有量が1.0質量%より多いと、ろうの濡れ拡がり性も低下する。従って、Snの含有量は1.0質量%以下とする。
脱酸を主目的として添加するPは、0.1質量%より多く含まれると、熱間押出時に割れが発生しやすくなると共に、応力腐食割れ感受性が高くなり、熱交換器としての信頼性を低下させる。一方、Pが0.005質量%未満の場合は、脱酸不足によりSnの酸化物が大量に発生し、鋳塊の健全性を低下させ、熱間押出時の巻き込みの原因となったり、熱間押出自体を困難にする。従って、Pの含有量は0.005乃至0.1質量%とする。
Feは析出効果により銅合金の耐力を向上させる。この耐力向上の効果を得るために、Fe含有量は、0.03質量%以上とする。一方、Feが0.1質量%を超えて添加されると、湯流れ、鋳肌及び芯割れ等の鋳造性が劣化すると共に、押出性が劣化する。即ち、Feを0.1質量%以下にすることにより、鋳造性及び押出性の劣化が防止されて、生産性が向上する。また、Feを0.1質量%以下とすることにより、ろう付け性の劣化も防止される。これらの作用効果は、管内面に溝を形成した内面溝付管及び外面にフィンを形成した外面フィン加工管のいずれにおいても同様に奏される。
酸素が0.005質量%より多く含まれると、形成されたSn及びCuの酸化物が鋳塊に巻込まれ、鋳塊の健全性を低下させる。また、製造時の焼鈍工程において水素脆化を発生させやすくし、ろうの濡れ広がり性、0.2%耐力及び疲れ強さも低下させる。従って、酸素の含有量は0.005質量%以下とする。
水素が0.0002質量%より多く含まれると、熱間押出時の割れ、焼鈍時の膨れが発生しやすくなり、製品歩留りが低下する。従って、水素の含有量は0.0002質量%以下とする。
Znを添加することにより、銅合金管の熱伝導率を大きく低下させることなく、強度、耐熱性及び疲れ強さを向上させることができる。また、Znの添加により、抽伸加工時及び転造加工時等の工具磨耗を低減させることができ、溝付きプラグの寿命を延長させる効果がある。Znの含有量が0.01質量%以下では、上述の効果が十分でない。一方、Znが1.0質量%より多く含まれると、応力腐食割れ感受性が高くなり、応力腐食割れの可能性が懸念される。従って、Znを添加する場合は、Znの含有量は0.01乃至1.0質量%とする。
平均結晶粒径は、銅合金管の軸方向に平行の断面について、JISH0501に定められた切断法により、肉厚方向の平均結晶粒径を測定し、これを管軸方向に任意の10箇所で測定してそれらの平均を平均結晶粒径とした。
上述の組成及び平均結晶粒径を有する銅合金管は、その0.2%耐力が95乃至200N/mm2である。好ましくは、0.2%耐力は100乃至150N/mm2である。本発明においては、Feを含有することにより、0.2%耐力を従来よりも高めることができる。そして、後述する焼鈍処理により、0.2%耐力のバラツキを抑制することができる。0.2%耐力が95N/mm2である場合、加工時に管の直進性が損なわれ、曲げ性等に不都合が生じる可能性があり、また疲労強度が低下する虞がある。一方、0.2%耐力が200N/mm2を超えると、管が硬くなり、曲げ加工性及び拡管加工性が低下して、加工時に割れ及び座屈が発生する。
この850℃に30秒間加熱したときの平均結晶粒径の測定法は、前述のとおりである。850℃に30秒間加熱することは、ろう付け時の加熱条件を想定しており、この加熱により平均結晶粒径が100μmを超えると、熱交換器のろう付け部及びその近傍において疲れ強さが低下し、エアコン等の運転時に高い圧力が必要なHFC系フロンを冷媒に使用すると、使用中に銅合金管の破壊が発生しやすくなる。従って、850℃に30秒間加熱した後の平均結晶粒径は100μm以下とすることが望ましい。なお、この平均結晶粒径は80μm以下であることが更に望ましい。
銅合金管を850℃に30秒間加熱した後、JISZ2241に準拠した方法により引張り試験を行ない、オフセット法により0.2%耐力を算出する。850℃に30秒間加熱した後の0.2%耐力が40N/mm2未満であると、運転圧力が高いHFC系フロン系の冷媒を使用したときに、銅合金管に疲労破壊が起こりやすい。従って、850℃に30秒間加熱した後の0.2%耐力が40N/mm2以上であることが望ましい。
銅合金管を850℃に30秒間加熱した後、JISZ2273に定められた疲れ試験方法により疲れ強さを測定する。この試験材の銅合金管を850℃に30秒間加熱した後、銅合金管の両管端を固定して92MPaの両振り応力を付与する。この場合に、繰り返し数107回未満で破断した場合は、運転時に高い圧力が必要なHFC系フロンを冷媒に使用する熱交換器では、その信頼性が低下する。従って、850℃に30秒間加熱した後の疲れ強さとして、繰返し応力92MPaで疲労試験を行ったとき、繰り返し数が107回以上であることが望ましい。
得られたビレットを加熱炉で加熱し、熱間押出を行なう。この場合に、熱間押出前に、ビレットをビレットヒーター及び/又はインダクションヒーターにより750乃至1000℃に加熱する。このとき、750℃よりも低い温度の加熱では、鋳塊のSnの偏析が十分に解消されず、また押出時のビレットの変形抵抗も大きくなり、押出機の能力が不足したり、エネルギー使用の増大による原単位の増加及びコスト上昇につながる。また、熱間押出前のビレット加熱温度が1000℃よりも高い場合は、ビレット表面の酸化膜量が多くなり、巻き込みの原因となりやすい。
押出し後、750℃以上になった素管を、水中押出し又は押出し後の水冷により、表面温度が100℃になるまでの平均冷却速度が1.5℃/秒以上となるように冷却を行なう。この冷却速度が1.5℃/秒以下であると、素管の結晶粒が粗大となり、最終製品においても粗大結晶粒又は混粒組織になりやすく、最終製品の曲げ加工及びヘアピン(H/P)曲げ加工時に、肌荒れ及び割れの原因となる。
押出しで得られた素管に、圧延加工及び抽伸加工を行ない、平滑管を製作する。このときの各加工率が、圧延加工の場合は92%超、抽伸加工の場合は1回の抽伸加工における加工率が40%超であると、圧延破断及び抽伸破断の原因となったり、寸法不良等の製品不良が多くなってしまう。なお、圧延加工及び抽伸加工により管は外径と肉厚が減少し、長さが増加する。圧延加工率及び抽伸加工率は、[(加工前の管の断面積−加工後の管の断面積)/加工前の管の断面積]×100(%)により求めることができる。
抽伸加工のまま、即ち硬質材では、引張強さ及び0.2%耐力が高く、かつ伸びが小さいため、曲げ加工等の加工性が低い。そこで、焼鈍処理により、均一な再結晶組織として、銅合金管を軟質化することにより、曲げ及び拡管等に高い加工性を付与することができる。このため、450乃至700℃の温度に5乃至20分間加熱して焼鈍処理することが好ましい。本発明の銅合金管を、この条件で焼鈍することにより、0.2%耐力が95乃至200N/mm2の銅合金管を容易に得ることができる。また、この焼鈍処理により、製造工程の条件のバラツキによる銅合金管の特性のバラツキを抑制することができる。
供試材を、以下の工程により製作した。
(1)電気銅を原料とし、溶湯中に所定のSn及びFeを添加し、更に必要に応じてZnを添加した後、Cu−P母合金を添加することにより、所定組成の溶湯を作製した。
(2)鋳造温度1130℃で、直径300×長さ3000mmの鋳塊を半連続鋳造した。
(3)鋳塊より長さ480mmのビレットを切り出した。
(4)900℃に保持されたビレットヒーターの中でビレットを加熱して、900℃に到達した後、1.5時間保持し、均質化処理した。
(5)その後、冷却したビレットをインダクションヒーターで加熱し、960℃に到達した後、3分間保持し、その後熱間押出しにより、外径94mm、肉厚10mmの押出し素管を作製した。押出後は押出素管を水冷し、750℃以上の温度から100℃まで、平均冷却速度が3.5℃/秒となった。
(6)押出素管を圧延し、外径が43mm、肉厚が2.2mmの圧延素管を作製した。
(7)圧延素管を抽伸し、抽伸を5回行ない、1回当たり28〜33%の加工率で、外径9.52mm、肉厚0.80mmまで抽伸した。
(8)焼鈍炉にて抽伸素管をローラーハース炉で焼鈍し、供試材とした。
(9)上記供試材について、ろう付け加熱を想定し、供試材を850℃の塩浴炉に30秒間保持した。
(1)成分:供試材より所定量の試料を採取し、組成を分析した。
(2)平均結晶粒径:前述の方法により測定した。
(3)曲げ試験:供試材より長さ1000mmの管を10本採取し、ピッチ25mmでヘアピン曲げ加工を行い、曲げ部の割れの有無を確認した。
(4)0.2%耐力:前述の方法により測定した。
(5)疲労試験:前述の方法により試験した。繰り返し数107回で割れが発生しない限界の曲げ応力と、92MPaの応力付加時の割れの有無を確認した。
(6)ろう付け試験: 長さ300mmの供試材の管を軸方向に半割にし、内面側に直径1.6mm、長さ10mmのりん銅ろう(BCuP−2)を載置し、窒素気流中で850℃に10分間保持して、ろうの拡がり長さを測定した。なお、加熱前に測定した酸化膜の厚さはCu2Oに換算して全て500nm以下であった。
下記表3に示す組成を有する圧延素管を使用し、以下に示す方法で内面溝付管を製造した。なお、(1)乃至(6)の工程は平滑管の場合と同様である。従って、平滑管までの製造条件は第1実施例と同様である。
(7)圧延粗管を抽伸し、加工率40%以下で、外径が12.7mm、肉厚0.34mmの素管を製作した。
(8)溝付転造用素管をインダクションヒーターにより中間焼鈍した。
(9)焼鈍した溝付転造用素管に転造ボールによる溝付転造加工を行い、外径が9.52mm、底肉厚が0.26mmの内面溝付管を製作した。この内面溝は、内部フィン高さが0.2mm、リード角が30°、内部フィン数:55である。製作した内面溝付管を焼鈍、供試材とした。試験項目は、平滑管の場合と同様である、但し、ろう付け試験は行わなかった。
以下、本発明の製造条件を満たす実施例の平滑管又は内面溝付管の製造方法に対し、その製造条件が本発明から外れる比較例の製造方法と比較した結果について説明する。供試材を、以下の工程により作製し、下記表5に示す各工程における品質及び不具合点を調査した。
(1)電気銅を原料とし、溶湯中にSnおよびFeを所定量添加した後、Cu−P母合金を添加することにより、Cu−0.60%Sn−0.06%Fe−0.020%Pなる組成の溶湯を作製した。
(2)鋳造温度1130℃で、直径300×長さ3000mmの鋳塊を半連続鋳造した。
(3)鋳塊より長さ480mmのビレットを切り出した。このとき、鋳塊の鋳造方向に垂直の断面を組織観察すると、結晶粒が微細化され、等軸晶が支配的であった。
(4)下記表5に記載の各押出し前の加熱温度になるまで、ビレットヒーターとインダクションヒーターを使用してビレットを加熱した。その後、熱間押出加工により、外径が94mm、肉厚が10mmの押出素管を作製した。押出加工後は、押出素管を水冷し、750℃以上の温度から、100℃まで冷却するのに、表5に記載の各冷却速度で冷却した。
(5)押出素管を、下記表5に記載の各圧延加工率で圧延加工し、圧延素管を作製した。
(6)この圧延素管を、表7に記載の抽伸加工率で抽伸加工し、外径9.52mm、肉厚0.3mmの抽伸素管を作製した。
(7)焼鈍炉にて抽伸素管を0.2%耐力値が150±5N/mm2となるように焼鈍し、供試材とした。
(8)この供試材を使用して、前述と同様の曲げ試験を行ない、熱間圧延曲げ時の割れの有無を調べた。
(1)巻き込みの有無:
押出し素管を目視により検査し、巻き込み欠陥の有無を調べた。発生する場合は、素管の後端部分に多く発生する傾向があり、次工程に流す際、目視で確認できる範囲を切断除去した。
(2)押出し素管の結晶粒径:
前述の方法により測定した。
(3)圧延、抽伸破断の有無:
設定した工程で破断無く圧延、抽伸できるかを確認した。口付け部の破断も破断とした。
(4)曲げ試験:
前述の方法により確認した。
62;縮径部
43;転造部
64;整形部
65、68、74;潤滑油供給装置
66;縮径ダイス
67;縮径プラグ
70;転造ボール
72;溝付プラグ
73;プラグ軸
75;整形ダイス
Claims (10)
- Sn:0.1乃至1.0質量%、P:0.005乃至0.1質量%、Fe:0.03乃至0.1質量%、O:0.005質量%以下及びH:0.0002質量%以下を含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成を有し、平均結晶粒径が30μm以下であり、0.2%耐力が95乃至200N/mm2であることを特徴とする熱交換器用銅合金管。
- 更に、更に、Zn:0.01乃至1.0質量%を含有することを特徴とする請求項1に記載の熱交換器用銅合金管。
- 管の内面の複数の螺旋溝及び隣接する前記螺旋溝間に形成された複数のフィンを有する内面溝付管であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱交換器用銅合金管。
- 850℃で30秒間加熱した後の平均結晶粒径が100μm以下、0.2%耐力が40N/mm2以上、疲れ試験において繰り返し応力を92MPaとしたとき、繰り返し数n=107回で破断しない疲労強度を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の熱交換器用銅合金管。
- Sn:0.1乃至1.0質量%、P:0.005乃至0.1質量%、Fe:0.03乃至0.1質量%、O:0.005質量%以下及びH:0.0002質量%以下を含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成を有するビレットを、750乃至1000℃に加熱して熱間押出加工した後、750℃以上の温度から水冷することにより、100℃までの平均冷却速度が1.5℃/秒以上となるように冷却し、その後、加工率92%以下の圧延加工及び1回の抽伸加工における加工率が40%以下の抽伸加工を少なくとも1回行うことを特徴とする熱交換器用銅合金管の製造方法。
- 前記ビレットは、更に、Zn:0.01乃至1.0質量%を含有することを特徴とする請求項5に記載の熱交換器用銅合金管の製造方法。
- 前記抽伸加工後に、450乃至700℃の温度に5乃至20分間加熱して焼鈍処理することにより、0.2%耐力が95乃至200N/mm2の銅合金管を得ることを特徴とする請求項4又は5に記載の熱交換器用銅合金管の製造方法。
- 前記抽伸加工の後に、管内面に溝加工を施す工程を有し、前記溝加工工程は、管内にフローティングプラグとこのフローティングプラグに連結軸を介して連結され前記連結軸を中心として回転可能の溝付プラグとを配置すると共に、前記フローティングプラグを縮径ダイスに係合させて前記溝付プラグを管周方向に沿って少なくとも1個配置された転造ボールの配設位置に位置させる工程と、前記転造ボールにより前記素管を前記溝付プラグに押圧して縮径ダイス及び転造ボールにより順次縮径加工すると共に、前記素管の内面に溝形状を転写する工程と、整形ダイスにより前記内面に溝が転写された素管を縮径加工する工程とを有し、内面溝付管を得ることを特徴とする請求項4又は5に記載の熱交換器用銅合金管の製造方法。
- 前記溝加工工程の後に、450乃至700℃の温度に5乃至20分間加熱して焼鈍処理することにより、0.2%耐力が95乃至200N/mm2の銅合金管を得ることを特徴とする請求項7に記載の熱交換器用銅合金管の製造方法。
- 前記縮径加工された内面溝付管を、450乃至700℃の温度に5乃至20分間加熱して焼鈍処理することにより、0.2%耐力が95乃至200N/mm2の銅合金管を得ることを特徴とする請求項9に記載の熱交換器用銅合金管の製造方法。
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