JP2006233360A - 炭素繊維および炭素繊維の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 炭素化時に炭素繊維に残留した応力を緩和できるので、特に炭素化温度の高い、高弾性率であっても高強度炭素繊維とすることができる炭素繊維の製造方法を提供する。
【解決手段】 炭素繊維を1400℃以上に加熱した後、室温まで平均降温速度30℃/秒で冷やす炭素繊維の製造方法とこれにより得られる、試長5mmでの単繊維引張強度が750kg/mm2以上、試長25mmでの単繊維引張強度が600kg/mm2以上である炭素繊維である。
【選択図】 なし
【解決手段】 炭素繊維を1400℃以上に加熱した後、室温まで平均降温速度30℃/秒で冷やす炭素繊維の製造方法とこれにより得られる、試長5mmでの単繊維引張強度が750kg/mm2以上、試長25mmでの単繊維引張強度が600kg/mm2以上である炭素繊維である。
【選択図】 なし
Description
本発明は、特に高弾性率を有しながらも強度発現性に優れる炭素繊維とその製造方法に関する。
以下の1)〜5)に挙げる、炭素繊維の高強度化に関する技術が知られている。
1)モノマーやポリマー原液のろ過を強化する技術(特許文献1、2)
2)凝固浴条件を最適化し前駆体繊維を緻密化する技術(特許文献3)
3)前駆体繊維の単繊維径を細くし、耐炎化遅延元素を混入する技術(特許文献4)
4)前駆体繊維の単繊維間接着を抑制するために離型性、平滑性に優れた油剤を適用する技術(特許文献5、6)
5)焼成工程で生成した表面欠陥を電解処理することでエッチング除去する技術(特許文献7)
1)モノマーやポリマー原液のろ過を強化する技術(特許文献1、2)
2)凝固浴条件を最適化し前駆体繊維を緻密化する技術(特許文献3)
3)前駆体繊維の単繊維径を細くし、耐炎化遅延元素を混入する技術(特許文献4)
4)前駆体繊維の単繊維間接着を抑制するために離型性、平滑性に優れた油剤を適用する技術(特許文献5、6)
5)焼成工程で生成した表面欠陥を電解処理することでエッチング除去する技術(特許文献7)
しかしいずれの技術においても、炭素化炉を出た炭素繊維は平均で60℃/秒以上、最大では200℃/秒で急冷され、熱膨張係数の異なる繊維軸方向とその垂直方向のそれぞれの方向で熱膨張係数に従って急激な体積収縮が起こり、そこで発生した応力は緩和することなく炭素繊維に残存していた。
本発明の課題は、高弾性率を有しながら高強度物性を発現する炭素繊維を提供することである。
本発明の第1の要旨は、試長5mmでの単繊維引張強度が750kg/mm2以上、試長25mmでの単繊維引張強度が600kg/mm2以上である炭素繊維にあり、第2の要旨は、炭素繊維を1400℃以上に加熱した後、室温まで平均降温速度30℃/秒で冷やす炭素繊維の製造方法にある。
本発明によれば、炭素化時に炭素繊維に残留した応力を緩和できるので、特に炭素化温度の高い、高弾性率であっても高強度炭素繊維とすることができる。
まず、本発明の炭素繊維の製造方法について詳しく説明する。
『炭素繊維』
本発明で使用する炭素繊維は、アクリル繊維を前駆体繊維とする炭素繊維に限らず、ピッチ系炭素繊維であってもよい。
本発明で使用する炭素繊維の好ましい製造方法は、以下の原材料、方法を用いて得られる。
『炭素繊維』
本発明で使用する炭素繊維は、アクリル繊維を前駆体繊維とする炭素繊維に限らず、ピッチ系炭素繊維であってもよい。
本発明で使用する炭素繊維の好ましい製造方法は、以下の原材料、方法を用いて得られる。
「アクリロニトリル系ポリマー」
前駆体繊維となるアクリル繊維を構成するアクリロニトリル系ポリマーは、アクリロニトリルのホモポリマーやアクリロニトリルと共重合可能なモノマーとの共重合体を用いることができる。後者の場合、炭素化を良好に行う目的で、共重合体中のアクリロニトリル単位の割合は、90モル%以上であることが好ましい。
前駆体繊維となるアクリル繊維を構成するアクリロニトリル系ポリマーは、アクリロニトリルのホモポリマーやアクリロニトリルと共重合可能なモノマーとの共重合体を用いることができる。後者の場合、炭素化を良好に行う目的で、共重合体中のアクリロニトリル単位の割合は、90モル%以上であることが好ましい。
アクリロニトリルと共重合可能なモノマーとしては、特に制限は無いが、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどに代表されるアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどに代表されるメタクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、スチレン、ビニルトルエンなどに代表される不飽和モノマー類、メタリルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸及びこれらのアルカリ金属塩などが挙げられる。
アクリロニトリルと共重合可能なモノマーとして、炭素化工程における環化反応を促進する目的でカルボン酸基を有するモノマーやアクリルアミド系モノマーを用いることが好ましい。このようなカルボン酸基を有するモノマーとしては、メタクリル酸やイタコン酸が好ましい。又、アクリルアミド系モノマーとしてはアクリルアミドが好ましい。
「重合方法」
アクリロニトリル系ポリマーの重合方法には、溶液重合、懸濁重合など、公知の重合方法の何れも採用することができる。アクリロニトリル系ポリマーから、未反応モノマーや重合触媒残渣、その他の不純物類を極力除く処理を施すことが好ましい。
アクリロニトリル系ポリマーの重合方法には、溶液重合、懸濁重合など、公知の重合方法の何れも採用することができる。アクリロニトリル系ポリマーから、未反応モノマーや重合触媒残渣、その他の不純物類を極力除く処理を施すことが好ましい。
また、前駆体繊維紡糸での延伸性や炭素繊維の性能発現性等の点から、共重合体の重合度は、極限粘度〔η〕が1以上、特に1.4以上の範囲が好ましい。ただし、通常、極限粘度〔η〕は、2を超えない範囲のものが利用される。
「紡糸方法」
アクリロニトリル系ポリマーは、溶剤に溶解され、紡糸原液となる。溶剤としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの有機溶剤や、塩化亜鉛、チオシアン酸ナトリウムなどの無機化合物の水溶液が使用できる。アクリル繊維中に金属が含有せず、また、工程が簡略化される点で有機溶剤が好ましい。その中でも凝固糸の緻密性が高いという点で、ジメチルアセトアミドを溶剤に用いることがより好ましい。
アクリロニトリル系ポリマーは、溶剤に溶解され、紡糸原液となる。溶剤としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの有機溶剤や、塩化亜鉛、チオシアン酸ナトリウムなどの無機化合物の水溶液が使用できる。アクリル繊維中に金属が含有せず、また、工程が簡略化される点で有機溶剤が好ましい。その中でも凝固糸の緻密性が高いという点で、ジメチルアセトアミドを溶剤に用いることがより好ましい。
紡糸した際、緻密な凝固糸を得るためには、紡糸原液中のポリマー濃度を17質量%以上、より好ましくは19質量%以上とすることが好ましい。アクリロニトリル系ポリマーの分子量にもよるが、適正な粘度・流動性を有するものとするため、通常ポリマー濃度は、25質量%を超えない範囲が好ましい。
アクリル繊維の紡糸法は、湿式紡糸法か乾湿式紡糸法が好ましいが乾式紡糸法でも良い。湿式紡糸法、乾湿式紡糸法は用途に応じ使い分けられる。通常、より生産性を高くしたい場合は湿式紡糸で、より高いストランド強度を持つ炭素繊維を得たい場合は、乾湿式紡糸を選択する方が好ましい。
紡糸原液は、ノズル孔より凝固浴中に吐出し凝固糸となる。凝固浴は、凝固糸引き取りに十分な余裕がある条件に設定する必要がある。そして、凝固糸の断面形状が円形になるように、凝固浴に含まれる溶剤濃度、温度を設定する。
凝固浴には、紡糸原液に用いられた溶剤の水溶液が好適に使用される。ノズル孔より吐出される紡糸原液が所望の繊維径の凝固糸となるように、含まれる溶剤の濃度を調節する。使用する溶剤の種類にも依存するが、例えば、ジメチルアセトアミドを使用する場合、その濃度は50〜80質量%に選択する。
また、凝固浴の温度は、凝固糸の緻密性の観点からは温度が低い方が好ましい。しかしながら、湿式紡糸の場合、凝固浴の温度を下げすぎると凝固糸の引き取り速度が低下し、全体的な生産性が低下する点を考慮し、通常、50℃以下、より好ましくは20〜40℃以下の範囲に選択する。
通常、湿熱延伸倍率を高くすると繊維内部構造の破壊が起こり、この破壊が炭素繊維の欠陥の元となり、性能の低下を招くことが分かっている。これは湿熱延伸倍率を低くすることで回避できるが、生産性を変更しないとした場合、乾燥緻密化後の延伸倍率を通常に比べて大きくする必要があるため、紡糸工程通過性が悪くなり、かえって生産性が低下する可能性がある。これらのことから、湿熱延伸倍率は4倍以下にすることが好ましく、乾燥緻密化後の延伸倍率は5倍以下が好ましい。
さらに繊維破壊が起こる湿熱延伸倍率の上限は品種ごとに異なるため、湿熱延伸倍率を生産条件ごとに考える必要がある。
湿熱延伸に先立って、温水中で溶剤の洗浄を行っても良い。当然のことながら、かかる湿熱延伸における延伸倍率は1倍を下回るものではない。
湿熱延伸に先立って、温水中で溶剤の洗浄を行っても良い。当然のことながら、かかる湿熱延伸における延伸倍率は1倍を下回るものではない。
さらに、この湿熱延伸に用いる延伸浴温度は、単糸同士が融着しない範囲で、できるだけ高温にすることが効果的である。この観点から、延伸浴の温度は70℃以上の高温とすることが好ましい。また、多段延伸の場合は、その最終浴を90℃以上の高温にすることが好ましい。
湿熱延伸、洗浄後、繊維表面には、公知の方法によって油剤処理を施す。油剤の種類は特に限定されないが、アミノシリコン系界面活性剤が好適に使用される。この油剤処理後、乾燥緻密化が行われる。この乾燥緻密化の温度は、繊維のガラス転移温度を超える温度に選択する。ガラス転移温度は、繊維自体の状態が、実質的には含水状態から乾燥状態へと変化することによって異なることもあり、温度が100〜200℃程度の加熱ローラーを用いる方法が好ましい。
乾燥緻密化後の延伸については、高温の加熱ローラー、熱盤などを利用する乾熱延伸、あるいは加圧スチームによるスチーム延伸など種々の方式があるが、本発明の製造方法では、水の可塑化効果を利用することで、より分子鎖の可動状態にできる理由から、スチーム延伸が好ましい。またスチーム圧が低すぎれば、水の可塑化効果を十分に利用できず、高すぎれば蒸気の性状が不安定になることから、スムーズな延伸を行うためには、170〜250kPaであることが望ましく、190〜220kPaであることがより好ましい。さらにスチーム延伸機に入る直前のトウの温度は、80〜120℃であることが望ましく、90〜100℃であることがより望ましい。80℃以上とすることで、スチーム延伸機内で繊維の温度が上がりきらないうちに延伸され紡糸が不安定になるということが防げる。一方120℃以下としておけば、スチーム延伸機内で繊維を可塑化する水分の拡散は良好である。
前延伸倍率と後延伸倍率を合わせた合計延伸倍率が、低すぎると繊維の配向が十分でなくなり炭素繊維の性能が低下し、高すぎると糸切れが生じ生産上好ましくない。この観点から、合計延伸倍率は7〜20倍が好ましく、10〜15倍がより好ましい。
「耐炎化」
アクリル繊維の耐炎化条件としては、200〜300℃の酸化性雰囲気中、緊張あるいは延伸条件下で、耐炎化繊維の密度が好ましくは1.25g/cm3以上、より好ましくは1.32g/cm3以上になるまで加熱するのが良い。耐炎化が不十分であると、前炭素化する際に単糸間接着などを起こしやすくなる。雰囲気については空気、酸素、二酸化窒素など、公知の酸化性雰囲気を採用できるが、経済性の面から空気が好ましい。
アクリル繊維の耐炎化条件としては、200〜300℃の酸化性雰囲気中、緊張あるいは延伸条件下で、耐炎化繊維の密度が好ましくは1.25g/cm3以上、より好ましくは1.32g/cm3以上になるまで加熱するのが良い。耐炎化が不十分であると、前炭素化する際に単糸間接着などを起こしやすくなる。雰囲気については空気、酸素、二酸化窒素など、公知の酸化性雰囲気を採用できるが、経済性の面から空気が好ましい。
「前炭素化」
耐炎化繊維は、炭素化に先立って前炭素化しておくことが好ましい。その条件としては、最高温度が550〜800℃の不活性雰囲気中、緊張化で、300〜500℃の温度領域において500℃/分以下、好ましくは300℃/分以下の昇温速度で前炭素化処理をすることが炭素繊維の機械的特性を向上させるために有効である。雰囲気については窒素、アルゴン、ヘリウムなど公知の不活性雰囲気を採用できるが、経済性の面から窒素が望ましい。
耐炎化繊維は、炭素化に先立って前炭素化しておくことが好ましい。その条件としては、最高温度が550〜800℃の不活性雰囲気中、緊張化で、300〜500℃の温度領域において500℃/分以下、好ましくは300℃/分以下の昇温速度で前炭素化処理をすることが炭素繊維の機械的特性を向上させるために有効である。雰囲気については窒素、アルゴン、ヘリウムなど公知の不活性雰囲気を採用できるが、経済性の面から窒素が望ましい。
「炭素化」
炭素化条件としては、1200〜1800℃の不活性雰囲気中、1000〜1200℃の温度領域において500℃/分以下、好ましくは300℃/分以下の昇温速度で炭素化処理をすることが炭素繊維の機械的特性を向上させるために有効である。雰囲気については窒素、アルゴン、ヘリウムなど、公知の不活性雰囲気を採用できるが、経済性の面から窒素が望ましい。
炭素化条件としては、1200〜1800℃の不活性雰囲気中、1000〜1200℃の温度領域において500℃/分以下、好ましくは300℃/分以下の昇温速度で炭素化処理をすることが炭素繊維の機械的特性を向上させるために有効である。雰囲気については窒素、アルゴン、ヘリウムなど、公知の不活性雰囲気を採用できるが、経済性の面から窒素が望ましい。
『応力緩和』
以上のようにして得られた炭素繊維に残存する応力は、炭素繊維を1400℃以上に加熱した後、室温まで平均降温速度30℃/秒で冷やすことにより緩和される。
以上のようにして得られた炭素繊維に残存する応力は、炭素繊維を1400℃以上に加熱した後、室温まで平均降温速度30℃/秒で冷やすことにより緩和される。
応力緩和時に炭素繊維にかける張力は、5kg重/mm2以下であることが好ましく、張力1kg重/mm2以下であることがより好ましい。張力を5kg重/mm2以下とすることにより炭素繊維の応力集中をうまく解消することができる。
処理温度は、1400℃以上であることが必要であり、1500℃以上がより好ましく、1600℃以上がさらに好ましい。その温度に保持する時間は、10分以上が好ましく、20分以上がより好ましく、30分以上がさらに好ましい。後述する(B)の場合は、処理時間を長くすることに対して特に問題は生じないが、(A)の場合は、炭素繊維を移送するローラーの回転速度の低速化に限界がある。
炭素繊維の徐冷の仕方は、不活性雰囲気下での加熱、室温まで平均降温速度30℃/秒ができればよく、(A)炭素繊維を製造する際の炭素化炉を用いても、(B)一旦炭素繊維を得た後、炭素繊維をバッチ式の炉に入れても構わない。不活性雰囲気としては、窒素、アルゴン、ヘリウムなど、公知の不活性雰囲気を採用できる。経済性の面から窒素が望ましい。
「(A)炭素繊維を製造する際の炭素化炉を使用する方法」
炭素化炉内の温度を1400℃以上、好ましくは1500℃以上に設定し、炭素化炉内の繊維を移送するローラーの回転速度を調整することで熱処理時間が10分以上、張力が5kg重/mm2以下、平均降温速度が30℃/秒以下になるようにする。平均降温速度は、10℃/秒以下で徐冷することが好ましく3℃/秒以下で徐冷することがさらに好ましい。平均30℃/秒以下とすることにより、応力集中は解消し、新たに応力集中が生じることもない。平均降温速度を小さくすることは、炭素繊維の物性に新たな悪影響を生じることはないが、炭素繊維の生産性は著しく低下する。
炭素化炉内の温度を1400℃以上、好ましくは1500℃以上に設定し、炭素化炉内の繊維を移送するローラーの回転速度を調整することで熱処理時間が10分以上、張力が5kg重/mm2以下、平均降温速度が30℃/秒以下になるようにする。平均降温速度は、10℃/秒以下で徐冷することが好ましく3℃/秒以下で徐冷することがさらに好ましい。平均30℃/秒以下とすることにより、応力集中は解消し、新たに応力集中が生じることもない。平均降温速度を小さくすることは、炭素繊維の物性に新たな悪影響を生じることはないが、炭素繊維の生産性は著しく低下する。
上記のようにローラーの回転速度を遅くするだけでは、平均降温速度が30℃/秒以下にならない場合は、炭素化炉の出側に新たに保温炉を設け、炉長を伸ばすことで平均降温速度が30℃/秒以下になるようにする。この保温炉の保温材の材質に特に規制はない。
「(B)一旦炭素繊維を得た後、炭素繊維をバッチ式の炉を使用」
炭素繊維を入れたバッチ式の炉の内部温度を1400℃以上に加熱し、所定の温度となったところで炭素繊維を炉内に置く。このとき炭素繊維に張力5kg重/mm2以下とすることが好ましい。その後、その炉の温度を平均降温速度30℃/秒以下冷やす。炭素繊維は、グラファイト製の入れ物中に並べて熱処理するのがより好ましい。炭素繊維は、その張力が5kg重/mm2以下になるのであれば、何かに巻きつけて熱処理を行ってもよい。
炭素繊維を入れたバッチ式の炉の内部温度を1400℃以上に加熱し、所定の温度となったところで炭素繊維を炉内に置く。このとき炭素繊維に張力5kg重/mm2以下とすることが好ましい。その後、その炉の温度を平均降温速度30℃/秒以下冷やす。炭素繊維は、グラファイト製の入れ物中に並べて熱処理するのがより好ましい。炭素繊維は、その張力が5kg重/mm2以下になるのであれば、何かに巻きつけて熱処理を行ってもよい。
「応力緩和後の処理」
応力緩和後の炭素繊維は、従来公知の電解液中で電解酸化処理を施したり、気相又は液相での酸化処理を施したりすることによって、複合材料における炭素繊維とマトリックス樹脂との親和性や接着性を向上させることが好ましい。
応力緩和後の炭素繊維は、従来公知の電解液中で電解酸化処理を施したり、気相又は液相での酸化処理を施したりすることによって、複合材料における炭素繊維とマトリックス樹脂との親和性や接着性を向上させることが好ましい。
さらに、必要に応じて従来公知の方法によりサイジング剤を付与することができる。
『炭素繊維』
以上、説明した炭素繊維の製造方法により得られる炭素繊維は、試長5mmにおける単繊維引張強度平均が750kg/mm2以上であり、かつ試長25mmにおける単繊維引張強度平均が600kg/mm2以上となる。ここで、単繊維引張り試験は、JIS R 7606に記載された試験法に準拠して測定したもの(試験数100個の平均)である。
以上、説明した炭素繊維の製造方法により得られる炭素繊維は、試長5mmにおける単繊維引張強度平均が750kg/mm2以上であり、かつ試長25mmにおける単繊維引張強度平均が600kg/mm2以上となる。ここで、単繊維引張り試験は、JIS R 7606に記載された試験法に準拠して測定したもの(試験数100個の平均)である。
従来、高強度・高弾性率の炭素繊維を得るためには、単繊維直径4μm以下が必要であると考えられていたが、本発明では、平均単繊維径が4.8μm以上であっても、樹脂含浸ストランド引張強度600kg/mm2以上、同引張弾性率32ton/mm2以上である炭素繊維を得ることも可能である。この単繊維直径は、細ければ細いほど紡糸工程での延伸性や工程通過性が悪くなる等の問題があるので、太い直径で高強度・高弾性率の炭素繊維を実現することは有利である。
以下に、実施例により本発明をより具体的に説明する。
本発明を記載する際に利用される、炭素繊維の物性と構造パラメーター、具体的には「樹脂含浸ストランド特性」、「単繊維引張り試験」、「結晶サイズ」、「配向度」に関して、その評価方法を予め説明する。実施例中、特記がなされていない場合、記載する各種物性値や指標は、ここに記載する方法により測定、評価された値を表す。通常は複数の試料に対して評価し、その平均値を採用している。
本発明を記載する際に利用される、炭素繊維の物性と構造パラメーター、具体的には「樹脂含浸ストランド特性」、「単繊維引張り試験」、「結晶サイズ」、「配向度」に関して、その評価方法を予め説明する。実施例中、特記がなされていない場合、記載する各種物性値や指標は、ここに記載する方法により測定、評価された値を表す。通常は複数の試料に対して評価し、その平均値を採用している。
(イ)「樹脂含浸ストランド特性」
炭素繊維のストランド強度及びストランド弾性率は、JIS R 7601に記載された試験法に準拠して測定した。尚、測定はn=10で行った。
炭素繊維のストランド強度及びストランド弾性率は、JIS R 7601に記載された試験法に準拠して測定した。尚、測定はn=10で行った。
(ロ)「単繊維引張り試験」
炭素繊維の単繊維引張り強度及び引張り弾性率は、JIS R 7606に記載された試験法に準拠して測定した。尚、測定はn=100で行った。
炭素繊維の単繊維引張り強度及び引張り弾性率は、JIS R 7606に記載された試験法に準拠して測定した。尚、測定はn=100で行った。
(ハ)「結晶サイズ」
炭素繊維を50mm長に切断し、これを30mg精秤採取し、試料繊維軸が正確に平行になるようにして引き揃えた後、試料調整用治具を用いて幅1mmの厚さが均一な繊維試料束に整えた。この繊維試料束に酢酸ビニル/メタノール溶液を含浸させて形態が崩れないように固定した後、これを広角X線回折試料台に固定した。X線源として、リガク社製のCuKα線(Niフィルター使用)X線発生装置を用い、同じくリガク社製のゴニオメーターにより、透過法によってグラファイトの面指数(002)に相当する2θ=25°近傍の回折ピークをシンチレーションカウンターにより検出した。出力は40kV−100mAにて測定した。回折ピークにおける半値巾から下記の式(1)を用いて、結晶領域サイズLcを求めた。
Lc=Kλ/ (β0 cosθ)・・・・・・・・(1)
(式中、Kはシェラー定数0.9、λは用いたX線の波長(ここではCuKα線を用いているので、1.5418Å)、θはBraggの回折角、β0 は真の半値巾、β0 =βE −β1 (βE は見かけの半値巾、β1 は装置定数であり、ここでは1.05×10−2rad)である。)
尚、測定はn=5で行った。
炭素繊維を50mm長に切断し、これを30mg精秤採取し、試料繊維軸が正確に平行になるようにして引き揃えた後、試料調整用治具を用いて幅1mmの厚さが均一な繊維試料束に整えた。この繊維試料束に酢酸ビニル/メタノール溶液を含浸させて形態が崩れないように固定した後、これを広角X線回折試料台に固定した。X線源として、リガク社製のCuKα線(Niフィルター使用)X線発生装置を用い、同じくリガク社製のゴニオメーターにより、透過法によってグラファイトの面指数(002)に相当する2θ=25°近傍の回折ピークをシンチレーションカウンターにより検出した。出力は40kV−100mAにて測定した。回折ピークにおける半値巾から下記の式(1)を用いて、結晶領域サイズLcを求めた。
Lc=Kλ/ (β0 cosθ)・・・・・・・・(1)
(式中、Kはシェラー定数0.9、λは用いたX線の波長(ここではCuKα線を用いているので、1.5418Å)、θはBraggの回折角、β0 は真の半値巾、β0 =βE −β1 (βE は見かけの半値巾、β1 は装置定数であり、ここでは1.05×10−2rad)である。)
尚、測定はn=5で行った。
(ニ)「配向度」
数百本の炭素繊維を酢酸ビニル/メタノール溶液で固め、幅0.5mmほどのサンプルを作製し、サンプルをX線に対して垂直な面上で360°回転させ、(002)反射における最高強度を含む子午線方向のプロファイルの半価幅から式(2)を用いて配向度を算出した。X線源として、リガク社製のCuKα線(Niフィルター使用)X線発生装置を用い、出力は40kV−100mAであった。
配向度:π=(180−B)/180×100・・・・・・・・(2)
B:半価幅
尚、測定はn=5で行った。
また広角X線回折測定はRu−200B(回転対陰極型X線発生装置(株)リガク製)を用いて行った。
(実施例1)
数百本の炭素繊維を酢酸ビニル/メタノール溶液で固め、幅0.5mmほどのサンプルを作製し、サンプルをX線に対して垂直な面上で360°回転させ、(002)反射における最高強度を含む子午線方向のプロファイルの半価幅から式(2)を用いて配向度を算出した。X線源として、リガク社製のCuKα線(Niフィルター使用)X線発生装置を用い、出力は40kV−100mAであった。
配向度:π=(180−B)/180×100・・・・・・・・(2)
B:半価幅
尚、測定はn=5で行った。
また広角X線回折測定はRu−200B(回転対陰極型X線発生装置(株)リガク製)を用いて行った。
(実施例1)
アクリロニトリル単位96質量%、メタクリル酸単位1質量%、アクリルアミド単位3質量%からなるアクリロニトリル系ポリマーを、ジメチルアセトアミドに溶解して紡糸原液(重合体濃度21質量%、原液温度60℃)を調整した。この紡糸原液を、直径0.065mm、孔数12000の口金を用いて、温度35℃、濃度66%のジメチルアセトアミド水溶液に吐出し凝固糸とした。この凝固糸を、冷延伸および温水中延伸を施した後、アミノシリコン系油剤1%水溶液中に浸漬し、180℃の加熱ローラーにて乾燥緻密化した。ここまでの湿熱延伸倍率は3.9倍である。続いて加圧水蒸気中で延伸倍率が合計12.5倍になるように延伸を施して、アクリル繊維を得た。
得られたアクリル繊維を230〜260℃の空気中、緊張化に加熱し密度1.36g/cm3の耐炎化繊維に転換し、さらに、700℃の窒素中、緊張化で前炭素化処理を施し前炭素化繊維とした。
得られた前炭素化繊維を1350℃で焼成し、応力緩和前炭素繊維を得た。この応力緩和前炭素繊維を応力緩和炉(窒素気流下1600℃)に、張力1kg重/mm2で、移送速度2.5m/時で通した。これにより窒素中1600℃で20分以上保持したことになり、平均降温速度は約3℃/秒で室温まで徐冷したことになる。評価結果を表1に示した。
(実施例2)
(実施例2)
応力緩和炉中の炭素繊維の移送速度を5.4m/時にしたほかは実施例と同様に操作し、炭素繊維を得た。これにより窒素中1600℃で10分以上保持したことになり、降温速度は約7℃/秒で室温まで徐冷したことになる。評価結果を表1に示した。
(実施例3)
(実施例3)
実施例1で得られた応力緩和前炭素繊維をバッチ式の炉に入れ、窒素中1600℃で1時間保持した後、約1時間かけて室温まで徐冷した。これにより降温速度は平均約0.5℃/秒で室温まで徐冷したことになる。評価結果を表1に示した。
(比較例1)
(比較例1)
実施例1で得られた応力緩和前炭素繊維を評価した。評価結果を表1に示した。
(比較例2)
(比較例2)
実施例1で得られた前炭素化繊維を1600℃で焼成し、応力緩和前炭素繊維を得た。評価結果を表1に示した。
Claims (2)
- 試長5mmでの単繊維引張強度が750kg/mm2以上、試長25mmでの単繊維引張強度が600kg/mm2以上である炭素繊維。
- 炭素繊維を1400℃以上に加熱した後、室温まで平均降温速度30℃/秒で冷やす炭素繊維の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005049503A JP2006233360A (ja) | 2005-02-24 | 2005-02-24 | 炭素繊維および炭素繊維の製造方法 |
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