JP2006225724A - ブレージング用フィン材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】0.8mass%以上2.0mass%以下のSi、1.0mass%を超え3.0mass%以下のMn、および0.10mass%を超え0.7mass%未満のFeを含有するアルミニウム合金を、板厚0.1mm以下にて最終の中間焼鈍を行い、表層から見た表面積の80%以上が圧延方向に長さ10mm以上である再結晶粒によって占められる結晶組織を有するようにし、その後板厚圧下率30%未満で冷間圧延するブレージング用フィン材の製造方法、およびこの方法によりされたブレージング用フィン材。
【選択図】図1
Description
(1)0.8mass%以上2.0mass%以下のSi、1.0mass%を超え3.0mass%以下のMn、および0.10mass%を超え0.7mass%未満のFeを含有し、板厚0.1mm以下にて最後に行う中間焼鈍後に、表層から見た表面積の80%以上が圧延方向に長さ10mm以上の径を有する再結晶粒によって占められる結晶組織を持つアルミニウム合金を板厚圧下率30%未満で冷間圧延して製造されたことを特徴とするブレージング用フィン材、
(2)前記アルミニウム合金が、前記成分に加えてさらに、(a)3.0mass%以下のZn、0.3mass%以下のIn、0.3%mass以下のSnの1種または2種以上、および/または(b)0.25mass%以下のCu、0.1mass%以下のTi、0.1mass%以下のZrの1種または2種以上、および/または(c)0.2mass%以下のNi、0.2mass%以下のCr、0.2mass%以下のCoの1種または2種以上を含有し、残部Alおよび不可避不純物からなる組成の合金であることを特徴とする(1)項記載のブレージング用フィン材、
(3)0.8mass%以上2.0mass%以下のSi、1.0mass%を超え3.0mass%以下のMn、および0.10mass%を超え0.7mass%未満のFeを含有するアルミニウム合金を、板厚0.1mm以下にて最終の中間焼鈍を行い、表層から見た表面積の80%以上が圧延方向に長さ10mm以上の径を有する再結晶粒によって占められる結晶組織を有するようにし、その後板厚圧下率30%未満で冷間圧延することを特徴とするブレージング用フィン材の製造方法、および
(4)前記アルミニウム合金が、前記成分に加えてさらに、(a)3.0mass%以下のZn、0.3mass%以下のIn、0.3%mass以下のSnの1種または2種以上、および/または(b)0.25mass%以下のCu、0.1mass%以下のTi、0.1mass%以下のZrの1種または2種以上、および/または(c)0.2mass%以下のNi、0.2mass%以下のCr、および0.2mass%以下のCoの1種また2種以上を含有し、残部Alおよび不可避不純物からなる組成の合金であることを特徴とする(3)項記載のブレージング用フィン材の製造方法
を提供するものである。
本発明ではAl−Fe−Mn−Si系金属間化合物が微細に分散し、それらが中間焼鈍時に転位や亜結晶粒界の移動を妨げる効果によって、粗大な再結晶組織を得ることが目的である。必須元素のうちケイ素(Si)、マンガン(Mn)はフィン材のろう付後の強度向上、Si、Mn、鉄(Fe)は微細な金属間化合物を得て、再結晶の粗大化を図る目的で含有させる。
上述の元素の他に、化合物をさらに微細化する元素(例えばニッケル(Ni)、クロム(Cr)、コバルト(Co))を本発明のフィン材に加えても構わない。その場合には、フィン材の耐食性、結晶組織制御の観点から好ましい含有量の上限はそれぞれ0.2mass%である。
本発明のフィン材に用いられるアルミニウム合金の組成は、上述の元素の他、残部Alおよび不可避不純物から成るものである。
本発明においては、最後の中間焼鈍後の圧延材の表層からみた表面積の80%以上を占める再結晶粒の径の長さは、圧延材表面における圧延方向で、10mm以上、好ましくは10〜80mm、さらに好ましくは10〜40mmである。この圧延材を得るためには、例えば、上記組成のAl合金を双ロール連続鋳造圧延法により、鋳造速度500〜300mm/minで、板厚2〜9mmの板状鋳塊に作製し、通常の冷間圧延の条件で板厚0.1mm以下に圧延して、300〜480℃、30〜150分の最後の中間焼鈍を行なえばよい。中間焼鈍の温度が低すぎると十分に強度が低下しないため、得られるフィン材の成形性に劣り、また、高すぎると析出粒子が粗大化し、得られるフィン材のろう付加熱後の強度が低下する。
なお、本発明で、「表層から見た表面積」とは、板厚方向と垂直な面(LT−ST面)から目視で見たときの表面積をいい、その際の圧延材の大きさ(長さおよび幅)はいくつでも良い。スリッターを施した製品条幅でも、スリッター前の圧延全幅でも構わない。測定の便利上、製品条幅が好ましいが、どの大きさで測定しようとも結果は同じである。
なお、図1〜4において、各上段はろう付け前、各下段はろう付け後を示し、スケールの最小目盛りは図1,2では1mm、図3,4では0.5mmである。また、再結晶粒サイズは、長径(圧延方向。図中左右方向)で測定したものである。図3、4では、上段に示すろう付け前の完全繊維状組織から下段に示すろう付け後の再結晶組織へ再結晶し、結晶粒の形状が大きく変化する。これに対して、図1、2では、上段に示すろう付け前の再結晶組織は、下段に示すろう付け後の図では圧延方向に若干展進して、異方性の特徴が弱くなっており、結晶組織の短径(巾方向。図中上下方向)が太くなり、再結晶が生じているが、鋸歯状の形状の結晶粒界を維持している。すなわち、ろう付け後において、図1、2に示されるような再結晶組織(圧延方向に長さ10mm以上の径を有する粗大な鋸歯状の再結晶粒が表面積の80%以上を占める組織)であれば、中間焼鈍後の再結晶組織が本発明で規定する再結晶組織であることが推測できる。
本発明においては、上記で説明された条件以外は、適宜常法を用いてフィン材を製造することができる。
実施例
(本発明例)
表1に示す本発明規定組成のAl合金No.1を溶解し、得られる溶湯をロール径880mmの双ロールを用いた連続鋳造圧延法により、溶湯の冷却速度1000mm/minで幅1000mmの板状鋳塊に鋳造して、コイル状に巻き取り、板厚0.1mm以下で、400℃、120分間の最後の中間焼鈍を行なった。中間焼鈍後、後述のマクロ観察により、表層からみた再結晶粒の圧延方向の径の長さの最大のものは18mmであり、10mm以上の再結晶粒は、表面積の約90%を占めていた。次いでこれを板厚圧下率20%で冷間圧延して本発明例1のフィン材を製造した。同様にして、表1に示す本発明規定組成のAl合金No.2〜5を用いて、それぞれ本発明例2〜5のフィン材を製造した。
表1に示す本発明規定外組成のAl合金No.6〜11を用いた他は、本発明例1〜5と同様にして、それぞれ比較例6〜11のフィン材を製造した。
また、本発明規定組成である、表1中の合金No.1を用いたが、中間焼鈍を280℃で600分間に変更した以外は、本発明例1〜5と同様にして比較例12のフィン材を製造した。
本発明例および比較例のフィン材について、冷間圧延中に破断したか否か、また、レベリングおよびスリッティング工程において通板出来なかった、或いは困難だったか否かを評価した。上記のような製造上の不具合によって工業的に製造出来なかったものについては、残部をラボ設備を用いてフィン材に冷間圧延して試験或いは評価した。これらの試験、評価結果を表2に示す。
表2で圧延中の破断の有無は、前記の冷間圧延中の破断の有無である。
また、最終の中間焼鈍後、および圧延完了後の結晶組織を、Al合金フィン材200mm×20mmの表面を王水に浸漬することによりマクロエッチングして、マクロ組織を観察し、評価した。表2では、再結晶組織が、圧延方向に長さ10mm以上の径の再結晶粒が表面積に対して80%以上の場合には○、80%未満60%以上であった場合には△、60%未満の場合は×で示した。なお、表面積中の10mm以上の再結晶粒が占める割合は、マクロエッチングしたフィン材表面の写真を画像としてコンピュータに取り込み、画像解析ツールを用いて解析した。
また、以下の評価試験を行なった。それぞれの試験結果について表2に示した。
フィン材をろう付相当条件(600℃×4分)で加熱したのち、引張強さ、および導電率を測定した。引張強さはJIS Z 2241に準じ、導電率はJIS H 0505に準じてそれぞれ評価した。
ここで、導電率は熱伝導性の指標であり、フィンの導電率が5%IACS向上すると、熱交換器の熱効率は1%程度向上する。
耐垂下性は、フィン材を突き出し長さが50mmとなるように水平に指示し、600℃で10分間加熱、加熱後の垂下量(mm)を測定し、評価した。自己耐食性は7日間のCASS試験を行ったのち重量減少率を調べて評価した。
また、コルゲート状に成形したフィン材を、長さ100mmのチューブ材に組み付け、ろう付けにより5段のミニコアを作製した。このミニコアについてフィン溶けの有無をミクロ観察により調べて評価した。フィン溶けの評価は、特開2003−34851号公報記載の内容と同等の基準で行った。
比較例7は、添加Mn量が少ないため、第二相分散粒子の大部分がAl−Fe−Si系金属間化合物となっていた。このため自己耐食性が低下した。また、Al−Fe−Si系化合物は、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物と比較して粗大であるため、再結晶の核生成サイトとなり、再結晶が微細となった。その結果、垂下量が増加し、フィン溶けが生じた。また、ろう付相当加熱後の引張強さが低下した。
比較例8は添加Si量が多いために、ろう付時フィン溶けが生じた。また、初晶Siが生成したため、再結晶の核となりグレインサイズが微細化し、10mm以下となった。これによりフラットネスが悪化し、レベリングを行えなかった。
比較例9はSiが少なく、Al−Fe−Mn系の晶出物が粗大化し、再結晶の核生成サイトとなった。従って中間焼鈍後のグレインサイズが圧延方向で4〜5mmとなった。さらに、Si量が不足したため、ろう付加熱後の引張強さが低下した。
比較例10は添加Fe量が多いため、第二相分散粒子のうち、Al−Fe−Si系金属間化合物の割合が増していた。このため自己耐食性が低下した。
比較例11はFe量が少なく、MnとSiの晶析出量が減少したため、ろう付相当加熱後の引張強さと導電率が低下した。代わりに初晶Siが生成したため、再結晶の核となりグレインサイズが数百μmに微細化した。初晶Siとグレインサイズによりフィン溶けが生じた。
比較例12は、ろう付中、およびろう付加熱後のフィン特性は問題なかったが、レベリングおよびスリッティング工程においてフラットネスの悪化により通板が困難であった。
Claims (4)
- 0.8mass%以上2.0mass%以下のSi、1.0mass%を超え3.0mass%以下のMn、および0.10mass%を超え0.7mass%未満のFeを含有し、板厚0.1mm以下にて最後に行う中間焼鈍後に、表層から見た表面積の80%以上が圧延方向に長さ10mm以上の径を有する再結晶粒によって占められる結晶組織を持つアルミニウム合金を板厚圧下率30%未満で冷間圧延して製造されたことを特徴とするブレージング用フィン材。
- 前記アルミニウム合金が、前記成分に加えてさらに、(a)3.0mass%以下のZn、0.3mass%以下のIn、0.3%mass以下のSnの1種または2種以上、および/または(b)0.25mass%以下のCu、0.1mass%以下のTi、0.1mass%以下のZrの1種または2種以上、および/または(c)0.2mass%以下のNi、0.2mass%以下のCr、0.2mass%以下のCoの1種または2種以上を含有し、残部Alおよび不可避不純物からなる組成の合金であることを特徴とする請求項1記載のブレージング用フィン材。
- 0.8mass%以上2.0mass%以下のSi、1.0mass%を超え3.0mass%以下のMn、および0.10mass%を超え0.7mass%未満のFeを含有するアルミニウム合金を、板厚0.1mm以下にて最終の中間焼鈍を行い、表層から見た表面積の80%以上が圧延方向に長さ10mm以上の径を有する再結晶粒によって占められる結晶組織を有するようにし、その後板厚圧下率30%未満で冷間圧延することを特徴とするブレージング用フィン材の製造方法。
- 前記アルミニウム合金が、前記成分に加えてさらに、(a)3.0mass%以下のZn、0.3mass%以下のIn、0.3%mass以下のSnの1種または2種以上、および/または(b)0.25mass%以下のCu、0.1mass%以下のTi、0.1mass%以下のZrの1種または2種以上、および/または(c)0.2mass%以下のNi、0.2mass%以下のCr、および0.2mass%以下のCoの1種また2種以上を含有し、残部Alおよび不可避不純物からなる組成の合金であることを特徴とする請求項3記載のブレージング用フィン材の製造方法。
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