JP4669709B2 - ブレージング用フィン材およびその製造方法 - Google Patents
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(1)Fe:1.0%を超え2.2%以下(組成を示す%は「mass%」を意味する。以下同様。)、Si:0.5〜1.5%及びMn:0.4〜1.3%を必須成分として含み、選択成分として、Znを3.0%以下と、さらに下記(a)及び(b)で示された元素群の1つまたは2つ以上の元素とを含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金を、溶湯の冷却速度10℃/秒以上で鋳造し、板厚0.1mm以下で行う最終の中間焼鈍を300℃〜480℃の範囲で行い、該焼鈍によりアルミニウム合金を再結晶させて形成された、表層から見た表面積の80%以上が圧延方向に長さ10mm以上の径を有する再結晶粒によって占められる結晶組織を持つ圧延材に、圧下率30%以下の最終冷間圧延を行うことを特徴とするブレージング用フィン材の製造方法。
(a)In:0.3%以下(零を含まない)、Sn:0.3%以下(零を含まない)の一方または両者
(b)Ti:0.1%以下(零を含まない)、Zr:0.1%以下(零を含まない)の1種または2種
(2)Fe:1.0%を超え2.2%以下、Si:0.5〜1.5%及びMn:0.4〜1.3%を必須成分として含み、選択成分として、Znを3.0%以下と、下記(a)及び(b)で示された元素群の1つまたは2つ以上の元素とを含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金を、溶湯の冷却速度10℃/秒以上で鋳造し、板厚0.1mm以下で行う最終の中間焼鈍を300℃〜480℃の範囲で行い、該焼鈍によりアルミニウム合金を再結晶させて形成された、表層から見た表面積の80%以上が圧延方向に長さ10mm以上の径を有する再結晶粒によって占められる結晶組織を持つ圧延材に、圧下率30%以下の最終冷間圧延を行ない製造されたことを特徴とするブレージング用フィン材。
(a)In:0.3%以下(零を含まない)、Sn:0.3%以下(零を含まない)の一方または両者
(b)Ti:0.1%以下(零を含まない)、Zr:0.1%以下(零を含まない)の1種または2種
を提供するものである。
必須元素である鉄(Fe)とケイ素(Si)は、ろう付後の強度向上、及び微細な金属間化合物を得て再結晶粒を粗大化する目的で添加する。
Feの含有量が1.0mass%以下では強度の向上が十分ではなく、2.2mass%を超えると本発明で規定する冷却速度であっても晶出相が粗大化し、再結晶の核生成サイトが増すために再結晶組織が微細となる。またフィン材の耐食性が低下する。上記効果の点からFeの含有量は1.2mass%を超え1.8mass%未満の範囲が好ましい。
上述の元素の他に、化合物をさらに微細化する元素(例えばクロム(Cr)、コバルト(Co))を本発明のフィン材に加えても構わない。その場合には、フィン材の耐食性、結晶組織制御の観点から好ましい上限は0.2mass%である。
本発明のフィン材に用いられるアルミニウム合金の組成は、上述の元素の他、残部Alおよび不可避不純物から成るものである。
本発明においては、最後の中間焼鈍後の圧延材の表層からみた表面積の80%以上を占める再結晶粒の径の長さは、圧延材表面における圧延方向で、10mm以上、好ましくは10〜80mm、さらに好ましくは10〜40mmである。
なお、本発明で、「表層から見た表面積」とは、板厚方向と垂直な面(LT−ST面)から目視で見たときの表面積をいい、その際の圧延材の大きさ(長さおよび幅)はいくつでも良い。スリッターを施した製品条幅でも、スリッター前の圧延全幅でも構わない。測定の便利上、製品条幅が好ましいが、どの大きさで測定しようとも結果は同じである。
0.1mm以下の板厚における最終の中間焼鈍は、300℃から480℃で行うことによって本発明で規定する結晶組織が得られる。本発明では、微細な分散相によって粗大な再結晶組織を得るものであり、従って通常のフィン材用アルミニウム合金よりも再結晶温度は一般に高温になる。よって300℃から480℃という温度範囲は、通常のフィン材用アルミニウム合金を再結晶させるための焼鈍温度より高温である。中間焼鈍の温度が低すぎると十分に強度が低下しないため、得られるフィン材は成形性に劣り、また、高すぎると析出粒子が粗大化し、得られるフィン材のろう付加熱後の強度が低下する。具体的な再結晶温度は、合金組成や工程によって変わるため、それぞれの再結晶温度を評価してから決定するのが好ましい。また、連続式焼鈍では粗大な再結晶組織が得られないことがあるため、バッチ式の焼鈍を行うことが好ましい。焼鈍時間については特に限定はないが、一般的な30分から6時間の範囲で行えば良い。
最終の中間焼鈍後のサンプルを採取出来ない場合には、フィン製品を観察しても良い。なぜならば中間焼鈍で粗大な結晶組織になっている場合、その後、本発明で規定されるような低い圧延率で圧延した後の結晶組織もほぼ同等なものとなるためである。
さらに、繊維組織から再結晶した組織と、粗大再結晶組織から再結晶した組織では、結晶粒界の形状が異なる。すなわち図1〜4のろう付け加熱前後におけるフィン材結晶組織の写真に示すように粗大再結晶組織から再結晶した結晶粒界(図1,2:本発明例)は、繊維組織からのそれ(図3,4:比較例)と比較し、鋸歯状になる。これは繊維組織からの再結晶する場合と異なり、一度再結晶することにより歪みが低減したことによって再結晶の駆動力が小さくなっており、さらに中間焼鈍温度が高いため析出が進み、粒界の移動を妨げる分散粒子が多いためである。このような違いに注目すると、ろう付後の再結晶組織から、加熱前の再結晶組織が推定でき、さらに中間焼鈍温度直後の再結晶組織を推測できる。なお、図1〜4において、各上段はろう付け前、各下段はろう付け後を示し、スケールの最小目盛りは図1,2では1mm、図3,4では0.5mmである。また、再結晶粒サイズは、長径(圧延方向。図中左右方向)で測定したものである。図3、4では、上段に示すろう付け前の完全繊維状組織から下段に示すろう付け後の再結晶組織へ再結晶し、結晶粒の形状が大きく変化する。これに対して、図1、2では、上段に示すろう付け前の再結晶組織は、下段に示すろう付け後の図では圧延方向に若干展伸して、異方性の特徴が弱くなっており、結晶組織の短径(巾方向。図中上下方向)が太くなり、再結晶が生じているが、鋸歯状の形状の結晶粒界を維持している。すなわち、ろう付け後において、図1、2に示されるような再結晶組織(圧延方向に長さ10mm以上の径を有する粗大な鋸歯状の再結晶粒が表面積の80%以上を占める組織)であれば、中間焼鈍後の再結晶組織が本発明で規定する再結晶組織であることが推測できる。
本発明においては、上記のように作成された圧延材に圧下率30%以下の最終冷間圧延を行ってブレージング用フィン材を製造するものである。圧下率は12〜28%であることが好ましい。また、圧下率以外の条件は、通常の条件に従い冷間圧延を行なうことができる。
実施例
(本発明例)
表1に示す合金No.Aの組成のAl合金を溶解し、得られた溶湯を表2に示される冷却速度により得られた鋳塊を、表2に示す製造工程に従い、ロール径880mmの双ロールを用いた連続鋳造圧延法により幅1000mmの板状鋳塊に鋳造してコイル状に巻き取り、次いでこれを焼鈍、冷間圧延して実施例No.1のフィン材を製造した。中間焼鈍後、表層からみた再結晶粒の圧延方向の径の長さの最大のものは18mmであり、10mm以上の再結晶粒は、表面積の約90%を占めていた。前記連続鋳造圧延法における溶湯の冷却速度は、鋳塊のミクロ観察を行いデントライトアームスペーシングを測定することによって求めた。
次いで、使用合金を表1に示す合金No.B〜Fに代え、溶湯の冷却速度、製造工程を表2に示すように、本発明規定条件内で種々に変化させ、No.2〜6のフィン材を製造した。また、No.1〜6において最終の中間焼鈍後、および圧延完了後の結晶組織を、Al合金フィン材200mm×20mmの表面を王水に浸漬することによりマクロエッチングして、マクロ組織を観察し、結果を表2に示した。表2では表層における再結晶組織が、圧延方向に長さ10mm以上の径である再結晶粒によって表面積の80%以上が占められている場合には○、80%未満60%以上の場合は△、60%未満の場合は×で示した。なお、表面積中の10mm以上の再結晶粒が占める割合は、マクロエッチングしたフィン材表面の写真を画像としてコンピュータに取り込み、画像解析ツールを用いて解析した。
表1に示す本発明規定外組成である合金No.G〜KのAl合金を用い、表2に示した製造条件を用いてNo.7〜11のフィン材を製造した。最終の中間焼鈍後、および圧延完了後に本発明例と同様に結晶組織を評価した。結果を表2に示す。
フィン材の製造条件を表2に示すように本発明規定外とし、合金No.A〜Eを用いてNo.12〜16のフィン材を製造した。最終の中間焼鈍後、および圧延完了後に本発明例と同様に結晶組織を評価した。結果を表2に示す。
本発明例、比較例1および比較例2で製造されたNo.1〜16のフィン材について、以下の評価試験を行なった。
耐垂下性は、フィン材を突き出し長さが50mmとなるように水平に支持し、600℃で10分間加熱、加熱後の垂下量(mm)を測定し、評価した。
また、前記フィン材をろう付相当条件(600℃×4分)で加熱したのち、引張強さ、および導電率を測定した。引張強さはJIS Z 2241に準じ、導電率はJIS H 0505に準じてそれぞれ評価した。
ここで、導電率は熱伝導性の指標であり、フィンの導電率が5%IACS向上すると、熱交換器の熱効率は1%程度向上する。
一方で、コルゲート状に成形したフィン材を、長さ100mmのチューブ材に組み付け、ろう付けにより5段のミニコアを作製した。このミニコアについてフィン溶けの有無をミクロ観察により調べて評価した。フィン溶けの評価は、特開2003−34851号公報記載の内容と同等の基準で行った。
また、冷間圧延中に破断したか否か、また、レベリングおよびスリッティング工程において通板出来なかった、或いは困難だったか否かを評価した。これら工業的に製造出来なかったものについては、残部をラボ設備を用いてフィン材に冷間圧延して試験した。これらの試験結果を表3に示す。
一方、No.7は添加Fe量が多いため、晶出相が粗大化した。そのため圧延中に破断した。また、再結晶の核生成サイトが増したため、再結晶が微細となった。その結果、垂下量が増加し、フィン溶けが生じた。
逆にNo.8はFe量が少なく、初晶Siが生成したため、再結晶がミクロンオーダーであった。その結果垂下量が増加し、フィン溶けが生じた。またFe量が少ないため、ろう付加熱後の引張強さ、導電率がともに低下した。
No.9はNo.8にMnを添加した分、引張強さは向上したが、導電率はさらに低下した。Siは初晶ではなく、Al−Mn−Si系の金属間化合物として分散したため、結晶組織が粗大化し、レベリング工程に通板不可であった。耐フィン溶け性は改善された。
No.10は添加Si量が多いため、No.8と同様に初晶Siが生成した。
No.11はSi量が少なく、Al−Fe系の晶出物が粗大化し、再結晶の核生成サイトとなった。従って中間焼鈍後のグレインサイズが圧延方向で4〜5mmとなった。さらに、Si量が不足したため、ろう付加熱後の引張強さが低下した。
No.12は鋳造時の冷却速度が低いため、晶出相が粗大化した。グレインサイズが数μmまで微細化し、またろう付加熱後の引張強さと導電率も低下した。
No.13は最終の冷間圧延率が高く、従ってフィン材まで圧延した際に内部ひずみ量が多く、再結晶の核生成サイトが増した。これによりろう付加熱時の再結晶組織が微細となり、垂下量が増加し、フィン溶けが生じた。また、冷間圧延率が高いことにより、ろう付加熱前のフィン材素板の引張強さが増加し、圧延中に破断した。
No.14は最終の中間焼鈍温度が低く、再結晶が生じず、ファイバー組織を維持した。No.13と同様にろう付加熱前のフィン材素板の引張強さが増加し、圧延中に破断が生じた。
No.15は最終の中間焼鈍温度が高すぎて、金属間化合物の一部が母相に固溶した。これによりろう付加熱後の引張強さ、導電率がともに低下した。サイズの小さい金属間化合物が優先して母相に固溶したため、粒界のピン止め効果が働かず、ろう付加熱後の再結晶粒が微細化した。このため垂下量が増し、フィン溶けが生じた。
No.16は一回目の中間焼鈍を連続式焼鈍で行った。これによって材料内部のひずみ量が減少し、二回目(最終)の中間焼鈍時に再結晶の駆動力が低下した。従って再結晶が生じず、ファイバー組織を維持した。ろう付加熱前のフィン材素板の引張強さが増加し、圧延中に破断が生じた。
Claims (2)
- Fe:1.0%を超え2.2%以下(組成を示す%は「mass%」を意味する。以下同様。)、Si:0.5〜1.5%及びMn:0.4〜1.3%を必須成分として含み、選択成分として、Znを3.0%以下と、さらに下記(a)及び(b)で示された元素群の1つまたは2つ以上の元素とを含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金を、溶湯の冷却速度10℃/秒以上で鋳造し、板厚0.1mm以下で行う最終の中間焼鈍を300℃〜480℃の範囲で行い、該焼鈍によりアルミニウム合金を再結晶させて形成された、表層から見た表面積の80%以上が圧延方向に長さ10mm以上の径を有する再結晶粒によって占められる結晶組織を持つ圧延材に、圧下率30%以下の最終冷間圧延を行うことを特徴とするブレージング用フィン材の製造方法。
(a)In:0.3%以下(零を含まない)、Sn:3.0%以下(零を含まない)の一方または両者
(b)Ti:0.1%以下(零を含まない)、Zr:0.1%以下(零を含まない)
の1種または2種 - Fe:1.0%を超え2.2%以下、Si:0.5〜1.5%及びMn:0.4〜1.3%を必須成分として含み、選択成分として、Znを3.0%以下と、さらに下記(a)及び(b)で示された元素群の1つまたは2つ以上の元素とを含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金を、溶湯の冷却速度10℃/秒以上で鋳造し、板厚0.1mm以下で行う最終の中間焼鈍を300℃〜480℃の範囲で行い、該焼鈍によりアルミニウム合金を再結晶させて形成された、表層から見た表面積の80%以上が圧延方向に長さ10mm以上の径を有する再結晶粒によって占められる結晶組織を持つ圧延材に、圧下率30%以下の最終冷間圧延を行ない製造されたことを特徴とするブレージング用フィン材。
(a)In:0.3%以下(零を含まない)、Sn:3.0%以下(零を含まない)の一方または両者
(b)Ti:0.1%以下(零を含まない)、Zr:0.1%以下(零を含まない)の1種または2種
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