以下に述べる本発明の実施例の第1の特徴は、画像・時系列データ生成記憶部に一旦保存された当該被検体の第1の時系列データと第1の時系列データに付帯情報として付加された前記被検体の心拍情報に基づいて所定の時系列データ表示速度を有した第2の時系列データを生成し、この第2の時系列データに基づいて種々の診断パラメータを計測することにある。
又、本発明の実施例の第2の特徴は、画像・時系列データ生成記憶部に一旦保存された当該被検体の第1の時系列データと第1の時系列データに付帯情報として付加された前記被検体の心拍情報に基づいて所定の時系列データ表示速度を有した第2の時系列データを生成し、この第2の時系列データの所定時相における前記被検体の画像データを画像・時系列データ生成記憶部から読み出して第2の時系列データと共に表示することにある。
(装置の構成)
以下では、本発明の実施例における超音波診断装置の構成と各ユニットの基本動作につき図1乃至図7を用いて説明する。尚、本実施例における超音波診断装置の全体構成を示すブロック図を図1に示す。又、図2は、この超音波診断装置を構成する送受信部及びデータ生成部のブロック図であり、図4は、時系列データ計測部のブロック図である。
図1に示す超音波診断装置100は、被検体に対して超音波の送受波を行なう超音波プローブ3と、超音波プローブ3に対して送受信を行なう送受信部2と、送受信部2から得られた受信信号に基づいてBモードデータやカラードプラデータ、更には、ドプラスペクトラムを生成するデータ生成部4を備え、更に、データ生成部4において得られたBモードデータ、カラードプラデータを走査方向単位で保存してBモード画像データ及びカラードプラ画像データを生成すると共に、所定走査方向におけるドプラスペクトラム及びBモードデータを時系列的に保存してドプラスペクトラムデータ及びMモードデータを生成する画像・時系列データ生成記憶部5を備えている。
尚、画像・時系列データ生成記憶部5には、後述の生体信号計測ユニット6から供給されるA/D変換後の生体信号も上述の超音波時系列データと共に保存され時系列データ(第1の時系列データ)が構成される。そして、画像・時系列データ生成記憶部5に保存された超音波時系列データ及び生体信号(即ち、時系列データ)には後述の心拍周期計測部7から供給される被検体の心拍情報が付帯情報として付加される。
又、超音波診断装置100は、心拍情報の収集を目的として被検体の心電波形(ECG波形)や心音波形(PCG波形)等の生体信号を計測する生体信号計測ユニット6と、計測された生体信号に基づいて心拍周期を計測する心拍周期計測部7と、画像・時系列データ生成記憶部5に一旦保存された時系列データの付帯情報に基づいて時系列データ表示速度を設定する表示速度設定部8を備え、更に、表示速度設定部8からの制御信号に従がって画像・時系列データ生成記憶部5に保存されている上述の時系列データを所定の時系列データ表示速度で読み出して表示用時系列データ(第2の時系列データ)を生成する表示データ生成部9と、表示データ生成部9において生成された表示用時系列データに基づいて診断パラメータを計測する時系列データ計測部10と、表示データ生成部9において生成された表示用時系列データや時系列データ計測部10が計測した診断パラメータの計測結果を表示する表示部11を備えている。尚、表示データ生成部9では、前記表示用時系列データの所定時相における画像データと表示用時系列データを合成した表示データを生成することも可能であり、このとき生成された表示データは表示部11にて表示される。
更に、超音波診断装置100は、送受信部2及びデータ生成部4に対して、例えば、超音波パルスの中心周波数とほぼ等しい周波数の連続波あるいは矩形波を発生する基準信号発生部1と、操作者によって患者情報の入力や装置の初期設定、更には種々のコマンド信号の入力等が行なわれる入力部12と、超音波診断装置100の各ユニットを統括的に制御するシステム制御部13を備えている。
超音波プローブ3は、被検体の表面に対してその前面を接触させ超音波の送受波を行なうものであり、1次元に配列された複数個(N個)の微小な超音波振動子をその先端部に有している。この超音波振動子は電気音響変換素子であり、送信時には電気パルスを超音波パルス(送信超音波)に変換し、又、受信時には超音波反射波(受信超音波)を電気信号(受信信号)に変換する機能を有している。この超音波プローブ3は小型、軽量に構成されており、ケーブルを介して送受信部2の送信部21及び受信部22に接続されている。超音波プローブ3にはセクタ走査対応、リニア走査対応、コンベックス走査対応等があり、診断部位に応じて任意に選択される。以下では心機能計測を目的としたセクタ走査用の超音波プローブ3を用いた場合について述べるが、この方法に限定されるものではなく、リニア走査対応、あるいはコンベックス走査対応であってもよい。
次に、図2に示した送受信部2は、超音波プローブ3から送信超音波を放射するための駆動信号を生成する送信部21と、超音波プローブ3からの受信信号に対して整相加算を行なう受信部22を備えている。
送信部21は、レートパルス発生器211と、送信遅延回路212と、パルサ213を備え、レートパルス発生器211は、送信超音波の繰り返し周期を決定するレートパルスを、基準信号発生部1から供給される連続波あるいは矩形波を分周することによって生成し、このレートパルスを送信遅延回路212に供給する。
送信遅延回路212は、送信に使用される超音波振動子と同数(Nチャンネル)の独立な遅延回路から構成されており、送信において細いビーム幅を得るために所定の深さに送信超音波を収束するための遅延時間と所定の方向に送信超音波を放射するための遅延時間をレートパルスに与え、このレートパルスをパルサ213に供給する。パルサ213は、Nチャンネルの独立な駆動回路を有し、超音波プローブ3に内蔵された超音波振動子を駆動するための駆動パルスを前記レートパルスに基づいて生成する。
一方、受信部22は、Nチャンネルから構成されるプリアンプ221、A/D変換器222及びビームフォーマ223と、加算器224を備えている。プリアンプ221は、超音波振動子によって電気的な受信信号に変換された微小信号を増幅して十分なS/Nを確保し、このプリアンプ221において所定の大きさに増幅されたNチャンネルの受信信号は、A/D変換器222にてデジタル信号に変換され、ビームフォーマ223に送られる。
ビームフォーマ223は、所定の深さからの超音波反射波を集束するための集束用遅延時間と、所定方向に対して受信指向性を設定するための偏向用遅延時間をA/D変換器222から出力されるNチャンネルの受信信号の各々に与え、加算器224は、これらビームフォーマ223からの受信信号を整相加算(所定の方向から得られた受信信号の位相を合わせて加算)する。
次に、データ生成部4は、受信部22の加算器224から出力された受信信号に対してBモードデータを生成するためのBモードデータ生成部41と、前記受信信号に対して直交検波を行なってドプラ信号の検出を行なうドプラ信号検出部42と、検出されたドプラ信号に基づいてカラードプラデータの生成を行なうカラードプラデータ生成部43と、前記ドプラ信号の周波数スペクトラム(ドプラスペクトラム)を生成するスペクトラム生成部44を備えている。
そして、Bモードデータ生成部41は、包絡線検波器411と対数変換器412を備え、包絡線検波器411は、受信部22の加算器224から供給された整相加算後の受信信号を包絡線検波し、この包絡線検波信号は対数変換器412においてその振幅が対数変換される。一般に、被検体内からの受信信号は、80dB以上の広いダイナミックレンジをもった振幅を有しており、これを30dB程度のダイナミックレンジを有する通常のテレビモニタに表示するには、対数変換による振幅圧縮が必要となる。
ドプラ信号検出部42は、π/2移相器421、ミキサ422−1及び422−2、LPF(低域通過フィルタ)423−1及び423−2を備えており、受信部22の加算器224から供給される受信信号に対して直交位相検波を行なってドプラ信号を検出する。
又、カラードプラデータ生成部43は、ドプラ信号記憶回路431、MTIフィルタ432、自己相関演算器433を備え、ドプラ信号検出部42のドプラ信号はドプラ信号記憶部431に一旦保存される。次いで、高域通過用のデジタルフィルタであるMTIフィルタ432は、ドプラ信号記憶部431に保存されたドプラ信号を読み出し、このドプラ信号に対して臓器の呼吸性移動や拍動性移動などに起因するドプラ成分(クラッタ成分)を除去する。又、自己相関演算器433は、MTIフィルタ432によって血流情報のみが抽出されたドプラ信号に対して自己相関値を算出し、更に、この自己相関値に基づいて血流の平均流速値や分散値などを算出する。
一方、スペクトラム生成部44は、SH(サンプルホールド回路)441と、HPF(高域通過フィルタ)442と、FFT(Fast-Fourier-Transform)分析器443を備えており、ドプラ信号検出部42において得られたドプラ信号に対してFFT分析を行なう。尚、SH441及びHPF442は何れも2チャンネルで構成され、夫々のチャンネルにはドプラ信号検出部42から出力されるドプラ信号の複素成分、即ち実成分(I成分)と虚成分(Q成分)が供給される。
次に、SH441には、上記LPF423−1及び423−2から出力されたドプラ信号と、システム制御部13が基準信号発生部1の基準信号を分周して生成したサンプリングパルス(レンジゲートパルス)が供給され、このサンプリングパルスによって所望の距離からのドプラ信号がサンプルホールドされる。尚、このサンプリングパルスは、送信超音波が放射されるタイミングを決定するレートパルスから遅延時間Ts後に発生し、この遅延時間Tsは入力部12において任意に設定可能である。
即ち、操作者は、サンプリングパルスの遅延時間Tsを変更することによって超音波プローブ3から所望の距離Lgにおけるドプラ信号を抽出することが可能となる。尚、このとき、遅延時間Tsと所望距離Lgは、被検体内の音速度をCとすれば、2Lg/C=Tsの関係にある。
次に、SH441から出力された所望距離Lgのドプラ信号に重畳した階段状のノイズ成分は、HPF442によって除去され、更に、平滑化されたドプラ信号は、FFT分析器443に供給されてドプラスペクトラムが生成される。
FFT分析器443は、図示しない演算回路と記憶回路を備え、HPF442から出力されるドプラ信号は前記記憶回路に一旦保存され、前記演算回路は、この記憶回路に保存された一連のドプラ信号の所定期間においてFFT分析を行なってドプラスペクトラムを生成する。
図1に戻って、画像・時系列データ生成記憶部5は、例えば、走査方向θ1乃至θPに対する超音波送受波によって得られた受信信号に基づいてデータ生成部4が生成した走査方向単位のBモードデータやカラードプラデータを順次保存してBモード画像データ及びカラードプラ画像データを生成する。更に、画像・時系列データ生成記憶部5は、所望の走査方向θxに対する複数回の超音波送受波によって得られたBモードデータを時系列的に保存してMモードデータを生成し、同様な超音波送受波により走査方向θxの所定距離Lgからの受信信号に基づいて得られたドプラスペクトラムを時系列的に保存してドプラスペクトラムデータを生成する。又、生体信号計測ユニット6にて計測された生体信号も画像・時系列データ生成記憶部5に保存される。そして、上述の超音波時系列データや生体信号には、心拍周期計測部7が生体信号計測ユニット6の生体信号に対して計測した被検体の心拍周期が付帯情報として付加される。即ち、画像・時系列データ生成記憶部5において第1の時系列データである上述のMモードデータ、ドプラスペクトラムデータ及び生体信号の生成と保存が行なわれる。
一方、生体信号計測ユニット6は、例えば、被検体体表に装着する計測用電極と、この計測用電極から得られた生体信号を所定の振幅に増幅する増幅器と、増幅された生体信号をデジタル信号に変換するA/D変換器(何れも図示せず)を備えており、被検体の心拍情報を収集する機能を有している。本実施例では、特に被検体のECG波形を計測するECGユニットあるいはPCG波形を計測するPCGユニットについて述べるが、他の生体信号を計測する生体信号計測ユニットであってもよい。
そして、心拍周期計測部7は、生体信号計測ユニット6のECGユニットから供給されるECG波形あるいはPCGユニットから供給されるPCG波形に基づいて被検体の心拍周期を計測する。
図3は、生体信号計測ユニット6によって計測されたECG波形あるいはPCG波形に対し上述の心拍周期計測部7が行なう心拍周期計測の具体例を示したものであり、図3(a)に示したECG波形においては、最大値を呈するR波を検出し、次いで隣接した2つのR波の間隔(R−R間隔)T10を心拍周期Toとして計測する。一方、図3(b)に示したPCG波形においては、所定の閾値TLより大きな値を示すS1波とS2波の対を検出し、S1−S1あるいはS2−S2の間隔T20を心拍周期Toとして計測する。
次に、図1に示した表示速度設定部8は、画像・時系列データ生成記憶部5に保存されている超音波時系列データや生体信号を読み出して表示部11に表示する際に、これらの時系列データの付帯情報である心拍周期Toを読み出し、この心拍周期Toと後述のシステム制御部13から供給される時系列データの表示心拍数Noに基づいて時系列データの読み出し速度、即ち、時系列データ表示速度Nxを設定する。但し、上記表示心拍数Noは表示部11のモニタにおいて表示される時系列データの心拍数を示す。
即ち、被検体の心拍周期がTo、表示心拍数がNoの場合、モニタ上の端部から他の端部への時系列データのスクロールあるいはムービングバーの移動に要する時間Ts(sec)はTs=No・Toとなり、前記時系列データの表示に必要なデータ数をNrとすれば、時系列データ表示速度Nx(データ数/秒)はNx=Nr/(To・No)に基づいて設定される。
次に、表示データ生成部9は、表示速度設定部8から供給される時系列データ表示速度Nxに基づきMモードデータ、ドプラスペクトラムデータ及び生体信号の時系列データ(第1の時系列データ)を画像・時系列データ生成記憶部5から順次読み出し、スクロール方式あるいはムービングバー方式の表示用時系列データ(第2の時系列データ)を生成する。但し、時系列データ表示速度Nxは、通常、画像・時系列データ生成記憶部5に対するBモードデータ及びドプラスペクトラムの書き込み速度より遅いため、画像・時系列データ生成記憶部5に保存されている上記時系列データ(第1の時系列データ)の中から所定間隔でサンプリングした時系列データ、あるいは複数の時系列データの平均化によって新たに生成した時系列データによって表示用時系列データ(第2の時系列データ)が構成される。
又、表示データ生成部9は、上述の表示用時系列データと画像データ、あるいは診断パラメータの計測結果等を合成して表示データを生成することも可能である。即ち、表示データ生成部9は、表示用時系列データの所定時相におけるBモード画像データあるいはカラードプラ画像データを画像・時系列データ生成記憶部5から読み出す。そして、読み出した画像データあるいは後述の時系列データ計測部10における各種診断パラメータの計測結果と前記表示用時系列データの各々に対し所定表示フォーマットによる走査変換を行なった後合成して表示データを生成する。
次に、時系列データ計測部10の具体例につき、図4のブロック図を用いて説明する。この時系列データ計測部10は、Mモードデータに対して診断パラメータの計測を行なうMモードデータ計測部101と、ドプラスペクトラムデータに対して診断パラメータの計測を行なうスペクトラムデータ計測部102を有し、スペクトラムデータ計測部102は、トレース波形生成部111と特徴量選定部112と診断パラメータ計測部113を備えている。
トレース波形生成部111は、表示データ生成部9において生成された表示用時系列データにおけるドプラスペクトラムデータ(以下、表示用ドプラスペクトラムデータと呼ぶ。)の最大周波数fpに対応する最高流速Vpのトレース波形を生成する。又、特徴量選定部112は、表示部11に所定の時系列データ表示速度Nxのスクロール方式あるいはムービングバー方式で表示されているトレース波形、あるいは、好適なタイミングで静止したトレース波形に対し、例えば、入力部12からの指示信号に基づいて左室流入血流計測におけるトレース波形の特徴量であるE波(拡張早期血流波形:early diastoric flow)及びA波(心房収縮期血流波形:atrial contraction flow)を選定し、E波の位置(時刻)情報とA波の位置(時刻)情報を診断パラメータ計測部113に供給する。尚、E波及びA波の選定は、通常、表示部11に静止表示されたトレース波形に対し操作者が入力部12から入力する指示信号に基づいて行なわれる場合が多い。
一方、診断パラメータ計測部113は、図示しない演算回路を備え、トレース波形生成部111から供給された最高流速Vpのトレース波形と特徴量選定部112から供給された前記トレース波形のE波及びA波の位置情報に基づいて診断パラメータ「E/A」及び「DCT(減速時間:deceleration time)」の計測を行なう。
次に、表示データ生成部9が生成した表示用ドプラスペクトラムデータに基づいてスペクトラムデータ計測部102のトレース波形生成部111が生成した最高流速Vpのトレース波形に対し、診断パラメータ計測部113が行なう診断パラメータ計測の具体例を図5に示す。図5(a)は、時系列データ表示速度Nxによって表示された2心拍分のトレース波形Cpを、又、図5(b)は、前記トレース波形Cpに同期したECG波形Epを示している。そして、診断パラメータ計測部113の演算回路は、特徴量選定部112がトレース波形Cpに対して選定した時刻t4におけるE波の振幅(流速)VEと時刻t5におけるA波の振幅(流速)VAの比VE/VAによって診断パラメータ「E/A」を算出する。
次いで、E波の極大からの下降曲線に対して接線Ctを設定し、この接線CtとベースラインBLとが交わる時刻t6とE波の時刻t4との間隔を診断パラメータ「DCT」として算出する。尚、図5では、説明をわかりやすくするために表示心拍数Noが2の場合について示したが、実際の表示心拍数Noは4心拍乃至8心拍が用いられる。
次に、図1の表示部11は、図示しない変換回路とモニタを備え、表示データ生成部9が生成した表示用時系列データ(第2の時系列データ)の表示や前記表示用時系列データとこの表示用時系列データの所定時相における画像データの表示を行ない、更に、前記表示用時系列データとトレース波形あるいは診断パラメータ計測結果等の表示を行なう。即ち、表示部11の変換回路は、表示データ生成部9が生成した上記の表示データに対してD/A変換とテレビフォーマット変換を行なって映像信号を生成しモニタに表示する。
図6は、表示部11のモニタにおける表示例を示したものであり、このモニタには、画像データ、表示用時系列データ及びトレース波形、診断パラメータの計測結果等が表示される。例えば、モニタの表示面140は、時系列データ表示速度Nxでトレース波形Cp及び生体信号(ECG波形)Epが表示される時系列データ表示領域141と、このトレース波形Cp及びECG波形Epの例えばムービングバーで示した所定時相における画像データ(Bモード画像データ)が表示される画像データ表示領域142と、診断パラメータの計測結果が表示される診断パラメータ表示領域143から構成される。
尚、図6では、表示用時系列データとしてECG波形を表示する場合について示したが、ECG波形の他に表示用ドプラスペクトラムデータを表示してもよい。この場合、表示用ドプラスペクトラムとトレース波形の重畳表示(合成表示)が好適である。
次に、トレース波形を例に、表示用時系列データあるいはトレース波形を表示する際のスクロール方式とムービングバー方式につき図7を用いて説明する。図7は、表示用時系列データの表示心拍数Noが2の場合におけるトレース波形Cpを示したものであり、図7(a)に示したスクロール方式では、例えば2心拍分のトレース波形Cpが左端部に向かって時系列データ表示速度Nxで移動し、最も古いトレース波形は左端部において消滅し、最新のトレース波形が右端部にて新たに表示される。一方、図7(b)のムービングバー方式では、ムービングバーMBが左端部から右端部に向って時系列データ表示速度Nxで繰り返し移動し、このムービングバーMBの位置において最も古いトレース波形は最新のトレース波形に更新される。尚、図示しないECG波形Epや表示用ドプラスペクトラムデータもトレース波形Cpと同期してデータの移動や更新が順次行なわれる。
図6に戻って、画像データ表示領域142では、時系列データ表示領域141に表示された上述の表示用時系列データあるいはトレース波形が更新される時相のBモード画像データが表示される。例えば、時系列データ表示領域141において、ムービングバーMBが設定されたトレース波形Cp及びECG波形Epの時相に対応したBモード画像データが画像データ表示領域142に表示される。
又、画像データ表示領域142に表示されるBモード画像データには、ドプラスペクトラムを得るための超音波送受波方向θxを示すドプラマーカDmと、このドプラマーカDm上のレンジゲート位置を示すレンジゲートマーカRgが重畳表示される。一方、トレース波形表示領域141のトレース波形Cpには、図5(a)と同様にしてE波及びA波の位置情報や振幅情報、診断パラメータ「DCT」を計測するための接線Ct等を重畳表示してもよい。
尚、図6の画像データ表示領域142には、Bモード画像データの代りにカラードプラ画像データあるいはカラードプラ画像データとBモード画像データが合成された画像データを表示してもよい。又、時系列データ表示領域141には、ドプラスペクトラムデータの代りにMモードデータを表示してもよく、ECG波形の代りにPCG波形等の他の生体信号であっても構わない。更に、診断パラメータ表示領域143には、上述のE/AやDCT等の診断パラメータの代りにMモードデータに基づいて計測された診断パラメータを表示してもよい。
次に、入力部12は、操作パネル上に表示パネルやキーボード、トラックボール、マウス、選択ボタン等の入力デバイスを備え、患者情報の入力、画像表示モードや表示方法の選択、生体信号の選択、ドプラスペクトラムデータやMモードデータを収集する走査方向θxやレンジゲート距離Lg等の各種データ収集条件の設定、表示心拍数Noの設定、更には、種々のコマンド信号の入力等が行なわれる。
又、トレース波形に基づいて診断パラメータを計測する場合には、表示部11に動態表示あるいは静止表示されたトレース波形に対し例えばE波及びA波等の特徴量を選定するための指示信号を入力する。
尚、上述の画像表示モードとして、Bモード、カラードプラモード、ドプラスペクトラムモード及びMモードがあり、生体信号としてECG波形やPCG波形等がある。又、表示方法として画像データ及び時系列データのリアルタイム表示及びフリーズ(静止)表示等がある。
システム制御部13は、図示しないCPUと記憶回路を備え、操作者によって入力部12から入力された入力情報や設定情報、更には選択情報は前記記憶回路に保存される。一方、CPUは、入力部12から入力された上述の情報に基づいて、超音波診断装置100の各ユニットの制御やシステム全体の制御を統括して行なう。
(画像データ及び時系列データの生成手順)
次に、本実施例における画像データ及び時系列データの生成手順につき、図8のフローチャートに沿って説明する。
被検体に対する超音波送受波に先立って、操作者は、患者情報の入力、画像表示モード、表示方法や生体信号の選択、表示心拍数Noの設定、更には種々の超音波データ収集条件の設定を入力部12にて行ない、これらの入力/選択/設定情報をシステム制御部13の記憶回路に保存する。
例えば操作者は、画像表示モードとしてBモードとドプラスペクトラムモードを選択し、計測モードとして最高流速Vpのトレース波形Cpによる左室流入血流計測を選択する。又、生体信号としてECG波形を、表示方法としてリアルタイム表示を選択する(図8のステップS1)。
これらの入力/選択/設定が終了したならば、操作者は、生体信号計測ユニット6に備えられたECGユニットの計測用電極を被検体の所定位置に装着した後、超音波プローブ3の先端(超音波送受波面)を被検体体表面に固定し、最初の超音波送受波方向(走査方向θ1)に対してBモードデータを得るための超音波送受波を行なう。即ち、図2の送受信部2におけるレートパルス発生器211は、基準信号発生部1から供給される基準信号を分周することによって、被検体内に放射される超音波パルスの繰り返し周期を決定するレートパルスを生成し、このレートパルスを送信遅延回路212に供給する。
次いで、送信遅延回路212は、所定の深さに超音波を集束するための集束用遅延時間と、走査方向θ1に超音波を送信するための偏向用遅延時間をレートパルスに与え、このレートパルスをNチャンネルのパルサ213に供給する。そして、パルサ213は、レートパルスによって生成された駆動信号を図示しないケーブルを介して超音波プローブ3におけるN個の超音波振動子に供給し、被検体の走査方向θ1に対して超音波パルスを放射する。
被検体に放射された超音波パルスの一部は、音響インピーダンスの異なる臓器間の境界面あるいは組織にて反射する。又、この超音波が心臓壁や血球などの動きのある反射体で反射する場合、その超音波周波数はドプラ偏移を受ける。
被検体の組織や血球にて反射した超音波反射波(受信超音波)は、超音波プローブ3の超音波振動子によって受信されて電気信号(受信信号)に変換され、この受信信号は、受信部22におけるNチャンネルの独立なプリアンプ221にて所定の大きさに増幅された後、A/D変換器222にてデジタル信号に変換される。更に、デジタル信号に変換された受信信号は、ビームフォーマ223にて所定の遅延時間が与えられた後、加算器224において加算合成されてデータ生成部4のBモードデータ生成部41に供給される。
このとき、ビームフォーマ223では、所定の深さからの超音波反射波を集束するための遅延時間と、超音波反射波に対して走査方向θ1に強い受信指向性をもたせるための遅延時間が、システム制御部13からの制御信号によって設定される。Bモードデータ生成部41に供給された加算器224の出力信号は、包絡線検波と対数変換がなされた後、図1の画像・時系列データ生成記憶部5における画像データ記憶領域に保存される。
次いで、システム制御部13は、走査方向θ2乃至走査方向θPに対しても同様な手順で超音波送受波を行ない、このとき得られたBモードデータは、前記画像データ記憶領域に保存される。即ち、データ記憶部5の画像データ記憶領域には走査方向θ1乃至θPに対するBモードデータが順次保存されて1フレーム分のBモード画像データが生成される。
一方、表示データ生成部9は、画像・時系列データ生成記憶部5において生成された1フレーム分の画像データ、即ち、走査方向θ1乃至θPにおいて得られたBモード画像データを所定の表示フォーマットに変換して表示データを生成する。そして、表示部11の変換回路は、生成された表示データに対してD/A変換とテレビフォーマット変換を行ない、映像信号を生成して表示部11のモニタに表示する。
以下同様にして、走査方向θ1乃至θPに対する超音波送受波が繰り返し行なわれ、得られたBモード画像データは表示部11においてリアルタイム表示される(図8のステップS2)。
次いで、操作者は、表示部11のモニタにリアルタイム表示された被検体のBモード画像データを参照し、ドプラスペクトラムデータを生成するための走査方向θxにドプラマーカDmを設定し、更に、このドプラマーカDm上の距離LgにレンジゲートRgを設定する(図8のステップS3)。
そして、システム制御部13は、送信部21の送信遅延回路212に対する送信遅延時間と受信部22のビームフォーマ223に対する受信遅延時間を制御して走査方向θ1乃至θPに対し繰り返し行なわれるBモード用の超音波送受波と交互して、ドプラスペクトラムを得るための超音波送受波をドプラマーカDmに対応した走査方向θxに対して行なう。そして、走査方向θxから得られた超音波反射波に対する加算器224の出力信号(受信信号)はドプラ信号検出部42に供給される。
一方、ドプラ信号検出部42は、前記受信信号に対し直交位相検波を行なって検出したドプラ信号をスペクトラム生成部44のSH441に供給し、SH441は、システム制御部13から供給されたレンジゲートRgに対応するサンプリングパルスによってドプラ信号をサンプルホールドする。そして、走査方向θxに対して繰り返し行なわれる超音波送受波によって得られたSH441の出力は、HPF442において平滑化され、FFT分析器443の記憶回路に保存される。
次いで、FFT分析器443の演算回路は、時系列的に得られるドプラ信号に対しFFT分析を行なってドプラスペクトラムを生成し、画像・時系列データ生成記憶部5の時系列データ記憶領域に保存する。
同様にして、スペクトラム算出部44のFFT分析器443は、所定間隔で後続して得られたドプラ信号に対してもFFT分析を行なってドプラスペクトラムを生成し、前記時系列データ記憶領域に逐次保存する。即ち、画像・時系列データ生成記憶部5の時系列データ記憶領域には、ドプラスペクトラムが時系列的に保存されてドプラスペクトラムデータが生成される(図8のステップS4)。
一方、データ生成部4のBモードデータ生成部41は、上述のドプラスペクトラム用超音波送受波と交互して行なわれるBモード用超音波送受波によって得られた受信信号に基づいてBモードデータを生成し、得られたBモードデータは画像・時系列データ生成記憶部5の画像データ記憶領域に走査方向単位で順次保存されて複数枚のBモード画像データが生成される(図8のステップS5)。
又、ドプラスペクトラムデータ及びBモード画像データの生成と並行し、生体信号計測ユニット6に設けられたECGユニットは被検体に対して計測したECG波形をA/D変換し、画像・時系列データ生成記憶部5の時系列データ記憶領域に保存すると共に、心拍周期計測部7に供給する(図8のステップS6)。
そして、ECG波形の供給を受けた心拍周期計測部7は、図3において既に述べたように、最大値計測によってR波を検出し、次いで、検出したR波の間隔から心拍周期Toを計測する(図8のステップS7)。そして、計測された心拍周期Toの情報は画像・時系列データ生成記憶部5に供給され、既に時系列データ記憶領域に保存されているドプラスペクトラムデータ及びECG波形に付帯情報として付加される(図8のステップS8)。又、画像・時系列データ生成記憶部5に保存されているBモード画像データやドプラスペクトラムデータに対し、これらのデータの生成と並行して計測されたECG波形の時相情報が付加される(図8のステップS9)。
(診断パラメータの計測手順)
次に、本実施例における診断パラメータの計測手順につき図9のフローチャートを用いて説明する。尚、操作者は、一旦保存された上述の時系列データを用いて診断パラメータ等の計測を行なう場合、上述の時系列データ及び画像データの生成と保存に引き続いて行なってもよいが、オフライン的に行なってもよい。
操作者は、先ず、超音波診断装置100の入力部12において、必要に応じて診断対象の被検体情報を入力し、更に、観察あるいは計測に用いるためのドプラスペクトラムデータ及びECG波形の選択と時系列データの表示心拍数Noの設定を行なった後、診断パラメータ計測の開始コマンドを入力する(図9のステップS11)。
このコマンド信号を受信したシステム制御部13は、表示速度設定部8及び表示データ生成部9に対して制御信号を供給し、この制御信号を受けた表示速度設定部8は、画像・時系列データ生成記憶部5に記憶されている時系列データ(ドプラスペクトラムデータ及びECG波形)に付帯情報として付加されている心拍周期Toを読み出す(図9のステップS12)。そして、この心拍周期Toとシステム制御部13から供給される時系列データの表示心拍数Noに基づいて時系列データ表示速度Nxを設定し、表示データ生成部9に供給する(図9のステップS13)。
一方、システム制御部13から制御信号を受信した表示データ生成部9は、表示速度設定部8から供給された時系列データ表示速度Nxに基づきドプラスペクトラムデータ及びECG波形を画像・時系列データ生成記憶部5の時系列データ記憶領域から順次読み出し、スクロール方式あるいはムービングバー方式の表示用時系列データ(即ち、表示用ドプラスペクトラムデータ及び表示用ECG波形)を生成する(図9のステップS14)。そして、生成された表示用時系列データの表示用ドプラスペクトラムデータは、時系列データ計測部10のトレース波形生成部111に送られる。
トレース波形生成部111は、表示データ生成部9において生成された表示用ドプラスペクトラムデータの最大周波数fpに対応する最高流速Vpのトレース波形を生成して表示データ生成部9に供給し、表示データ生成部9は、このトレース波形を重畳した表示用ドプラスペクトラムデータを生成する。
そして、表示部11は、表示データ生成部9が生成した上記の表示用スペクトラムデータと表示用ECG波形に対してD/A変換とテレビフォーマット変換を行なって映像信号を生成しモニタに表示する。尚、この場合、表示データ生成部9は、トレース波形のみ、あるいはトレース波形と表示用ECG波形が合成された表示データを生成してもよい(図9のステップS15)。
次に、表示部11のモニタに時系列データ表示速度Nxで表示用ドプラスペクトラムデータあるいは表示用ECG波形と共に表示されたトレース波形を観察した操作者は、入力部12の入力デバイスを用いて所望のタイミングで上述のデータを静止させ、モニタに静止表示された表示心拍数Noのトレース波形に対してE波及びA波を指示する。
一方、特徴量選定部112は、システム制御部13を介して入力部12から供給されるE波及びA波の位置情報に基づいてトレース波形上のE波及びA波を選定し、E波の位置(時刻)情報とA波の位置(時刻)情報を診断パラメータ計測部113に供給する(図9のステップS16)。
そして、診断パラメータ計測部113は、トレース波形生成部111から供給された最高流速Vpのトレース波形と特徴量選定部112から供給されたトレース波形のE波及びA波の位置情報に基づいて診断パラメータ「E/A」及び「DCT」の計測を行なう。
次いで、このとき得られた診断パラメータの計測結果を表示部11のモニタ上に表示する場合は、前記計測結果は表示データ生成部9に供給され、この表示データ生成部9において表示用時系列データやトレース波形と合成されて表示部11のモニタに表示される(図9のステップS17)。
図10は、ステップS17の表示部11における表示例を示したものであり、表示部11のモニタにおける時系列データ表示領域141にはECG波形Epと図示しない表示用ドプラスペクトラムデータに重畳したトレース波形Cpが静止表示され、このトレース波形CpにはE波、A波、DCT等が付加される。一方、診断パラメータ表示領域143には、診断パラメータ「E/A」及び「DCT」の計測結果が表示される。
(画像データの観察手順)
次に、本実施例における画像データの観測手順につき図11のフローチャートを用いて説明する。上述の診断パラメータ計測手順では、時系列データ表示速度Nxによって生成された表示用時系列データに基づいて診断パラメータの計測を行なう場合について述べたが、ここでは、時系列データ表示速度Nxによって生成された表示用時系列データの所定時相における画像データを観察する場合について述べる。この場合の画像データの観察も、図8のステップS8に示した時系列データ及び画像データの生成と保存に引き続いて行なってもよいが、オフライン的に行なってもよい。
先ず、操作者は、超音波診断装置100の入力部12において被検体情報を入力し、次いで、観察する画像データとしてBモード画像データを、又、このBモード画像データの観察時相を設定するための生体信号としてECG波形を選択する。更に、時系列データの表示心拍数Noを設定した後、画像データ観察の開始コマンドを入力する(図11のステップS21)。
上記コマンド信号を受信したシステム制御部13は、表示速度設定部8及び表示データ生成部9に対して制御信号を供給し、この制御信号を受信した表示速度設定部8は、画像・時系列データ生成記憶部5に保存されているBモード画像データあるいはECG波形に付帯情報として付加されている心拍周期Toを読み出す(図11のステップS22)。そして、この心拍周期Toとシステム制御部13から供給される時系列データの表示心拍数Noの情報に基づいて時系列データ表示速度Nxを設定し表示データ生成部9に供給する(図11のステップS23)。
一方、システム制御部13から制御信号を受信した表示データ生成部9は、表示速度設定部8から供給された時系列データ表示速度Nxに基づきECG波形を画像・時系列データ生成記憶部5から順次読み出し、スクロール方式あるいはムービングバー方式の表示用ECG波形を生成する(図11のステップS24)。
次に、表示データ生成部9は、表示用ECG波形の更新時相(例えば、ムービングバー方式の表示用ECG波形に対してムービングバーMBが設定された時相)を検出し、この時相におけるBモード画像データを画像・時系列データ生成記憶部5の画像データ記憶領域から読み出す(図11のステップS25)。そして、上述のBモード画像データと表示用ECG波形を所定の表示フォーマットに変換した後合成し表示データを生成する。次いで、表示部11は、表示データ生成部9が生成した表示データに対してD/A変換とテレビフォーマット変換を行ないモニタに表示する(図11のステップS26)。
図12は、ステップS26の表示部11における表示例を示したものであり、表示部11のモニタにおける時系列データ表示領域141には表示用ECG波形Epがスクロール方式あるいはムービングバー方式で表示され、この表示用ECG波形Epに設定されたマーカMの時相におけるBモード画像データが画像データ表示領域142に表示される。
尚、画像データの観察において、各時相における画像データの変化を更に詳しく観察する場合には表示用ECG波形を静止表示させる方法が望ましい。即ち、表示部11のモニタに時系列データ表示速度Nxで表示された表示用ECG波形とこの表示用ECG波形の所定時相におけるBモード画像データを観察した操作者は、入力部12の入力デバイスを用いて所望のタイミングで前記表示用ECG波形を静止させ、更に、静止表示された表示用ECG波形の任意の位置(時相)に上述のマーカMを設定する。
マーカMが設定された表示用ECG波形の時相を検出した表示データ生成部9は、前記時相に対応したBモード画像データを画像・時系列データ生成記憶部5の画像データ記憶領域から読み出し、既に生成されている表示データのBモード画像データを更新する。
従がって、表示部11のモニタには表示用ECG波形と、この表示用ECG波形に設定されたマーカMの時相に対応したBモード画像データが夫々静止表示される。そして、前記マーカMを入力部12の入力デバイスを用いて表示用ECG波形の任意の時相に移動することにより、移動後の時相におけるBモード画像データがモニタにおいて新たに表示される。
以上述べたように、本実施例によれば、一旦保存された被検体の生体信号あるいは超音波時系列データを表示する際に、常に好適な時系列データ表示速度あるいは表示心拍数にて表示することが可能となるため高精度な計測を効率よく行なうことができる。
例えば、超音波時系列データあるいは超音波時系列データに基づいて生成されたトレース波形を用いて各種診断パラメータの計測を行なう場合、計測に好適な表示心拍数で表示された上記超音波時系列データあるいはトレース波形に対して計測を行なうことができるため正確な計測が可能となる。
一方、生体信号あるいは超音波時系列データに同期させて画像データの表示を行なう場合、観測に好適な表示心拍数で画像データが表示されるため、心拍周期が極めて短い被検体に対しても微妙な変化を見逃すことなく観察することができる。
更に、上述の実施例によれば、時系列データ表示速度は被検体の心拍情報に基づいて自動設定されるため、操作者の負担が軽減され診断効率を向上させることができる。
又、上述の実施例では、好適な表示心拍数で表示された時系列データあるいはとレース波形を静止表示することにより診断パラメータの計測や画像データの時相選択を行なうことが可能なため、更に、診断効率と診断精度を向上させることができる。
以上、本発明の実施例について述べてきたが、本発明は上記の実施例に限定されるものでは無く、変形して実施することが可能である。例えば、上述の実施例では、画像・時系列データ生成記憶部5に保存された超音波時系列データや生体信号の付帯情報として付加された当該被検体の心拍情報に基づいて好適な時系列データ表示速度を設定する方法について述べたが、画像・時系列データ生成記憶部5に保存された生体信号から上記心拍情報を計測し、得られた心拍情報に基づいて時系列データ表示速度を設定してもよい。
図13は、この場合の超音波診断装置200の全体構成を示すブロック図であり、図1に示したユニットと同様の機能を有するユニットは同一の符号を付加し説明を省略する。即ち、図13に示した表示速度設定部80は、先ず画像・時系列データ生成記憶部5に保存されている生体信号を読み出して心拍周期を計測し、この心拍周期の情報に基づいて時系列データ表示速度Nxの設定を行なう。このような方法によれば図1に示した心拍周期計測部7が不要となり、又、時系列データを画像・時系列データ生成記憶部5に保存する際の手順か簡単となる。
一方、上述の実施例では、画像データとしてBモード画像データ、時系列データとしてドプラスペクトラムデータ、又、ドプラスペクトラムデータの最大流速値のトレース波形に基づいてE/AやDCT等の診断パラメータを計測する場合について述べたが、これらに限定されるものではない。
即ち、Bモード画像データの代りにカラードプラ画像データあるいはカラードプラ画像データとBモード画像データが合成された画像データでもよく、ドプラスペクトラムデータの代りにMモードデータでもよい。又、ECG波形の代りにPCG波形等の他の生体信号であっても構わない。更に、ドプラスペクトラムデータやMモードデータから直接診断パラメータの計測を行なってもよい。
又、上述の実施例の説明では、血流情報を計測するためのドプラスペクトラムデータについて述べたが、心臓壁の運動機能を評価するためのドプラスペクトラムデータであってもよい。
更に、画像・時系列データ生成記憶部5に保存された超音波時系列データ及び生体信号に対して心拍周期の情報を付加してもよいが、何れか一方に対して付加してもよい。
尚、入力部12には、上述の時系列データ表示速度Nxによる表示方法と通常の表示方法を選択する選択スイッチを備え、必要に応じて時系列データ表示速度Nxによる表示を選択してもよい。又、システム制御部13は、心拍周期計測部7による計測結果と予め設定した閾値を比較し、正常範囲外の計測結果が得られた場合には表示部11あるいは入力部12の表示パネルに計測不能のメッセージを表示してもよい。この機能を備えることにより、時系列データ表示速度Nxの表示を選択した場合に上記計測不能のメッセージが表示されたならば、通常の表示方法を再選択することが可能となる。