JP2006151211A - 電動パワーステアリング装置用減速ギヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】高面圧条件下での摩耗耐久性と寸法安定性に優れた特性を有する、操舵補助出力発生用電動モータの出力をステアリングシャフトに伝達するための電動パワーステアリング装置用減速ギヤの提供。
【解決手段】前記減速ギヤが、ポリアミドイミド樹脂と繊維状充填材を含有したポリアミドイミド樹脂組成物からなる樹脂部3を金属製芯管1の外周に一体に設け、前記樹脂部3の外周面にギヤ歯10を形成して構成されたウォームホイール11を備える電動パワーステアリング装置用減速ギヤにより達成される。
【選択図】図1
【解決手段】前記減速ギヤが、ポリアミドイミド樹脂と繊維状充填材を含有したポリアミドイミド樹脂組成物からなる樹脂部3を金属製芯管1の外周に一体に設け、前記樹脂部3の外周面にギヤ歯10を形成して構成されたウォームホイール11を備える電動パワーステアリング装置用減速ギヤにより達成される。
【選択図】図1
Description
本発明は、電動モータによる補助出力を、減速歯車機構を介して車両のステアリング機構に伝達する電動パワーステアリング装置に関し、特に金属製芯管の外周に、樹脂組成物からなり外周面にギヤ歯が形成ざれた樹脂部を一体に設けてなる従動歯車を備え、グリース潤滑される電動パワーステアリング装置に関する。
自動車に組み込まれる電動パワーステアリング装置には、電動モータに比較的高回転低トルクのものが使用されるため、電動モータとステアリングシャフトとの間に減速機構が組み込まれている。減速機構としては、一組で大きな減速比が得られる等の理由から、図1に示すように、電動モータ(図示せず)の回転軸に連結するウォーム12とウォーム12に噛み合うウォームホイール11とから構成される電動パワーステアリング装置用減速ギヤ20(以下、単に減速ギヤともいう。)が、一般的に使用される。
このような減速ギヤ20では、ウォームホイール11とウォーム12の両方を金属製とすると、ハンドル操作時に歯打ち音や振動音等の不快音が発生するという不具合が生じていた。そこで、ウォームホイール11に、金属製の芯管(以下、芯金ともいう。)1の外周に、樹脂製で外周面にギヤ歯10を形成してなる樹脂部3を一体化させたものを使用して騒音対策を行っている。
上記樹脂部3には、例えば、特許文献1に示されるように、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)などのベース樹脂にガラス繊維や炭素繊維等の強化材を配合した材料の他、ガラス繊維や炭素繊維などを含有しないMCナイロン(モノマーキャストナイロン)、ポリアミド6、又はポリアミド66等が使用されている。中でも、寸法安定性やコストを考慮して、強化材を含有しないMCナイロン、ガラス繊維を含有したポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46等が主流となっている。
特公平6-60674号公報
しかしながら、近年、装置の小型化と更なる高出力への対応のため、ウォームホイールにも小径化、高伝達トルク化が求められるとともに、より優れた耐摩耗性が要求されつつあり、そうした場合、従来のポリアミド系樹脂材料では、ウォームホイールとして十分な特性が得られなくなるという問題が生じている。
本発明は、このような状況に艦みてなされたものであり、電動パワーステアリング装置の小型化、高出力化に伴い、従来材料より高いレベルで要求されることになる機械強度と耐摩耗性を確保した樹脂組成物からなるウォームホイールを備えた電動パワーステアリング用減速ギヤを提供することを目的とする。
上記目的は、操舵補助出力発生用電動モータの出力をステアリングシャフトに伝達するための電動パワーステアリング装置用減速ギヤにおいて、前記減速ギヤが、少なくともポリアミドイミド樹脂と繊維状充填材を含有したポリアミドイミド樹脂組成物からなる樹脂部を金属製芯管の外周に一体に設け、前記樹脂部の外周面にギヤ歯を形成して構成されたウォームホイールを備えることを特徴とする電動パワーステアリング装置用減速ギヤにより達成される。
本発明に係る樹脂組成物のべ一ス樹脂である、ポリアミドイミド樹脂は、スーパーエンジニアリング樹脂と呼ばれる一連の樹脂群に属し、その機械的性質や耐熱性はポリアミド系樹脂のそれを大きく上回っている。尚、ポリアミドイミド樹脂は、耐熱性の最も優れた材料の一つであるポリイミド樹脂に比して、耐熱性は少し劣るものの、分子中にアミド結合があるため耐衝撃性、耐摩耗性が特に優れることから、電動パワーステアリング装置用ウォームホイール用途のような、高荷重摺動材料として極めて好適である。その耐熱性に関しても、ポリアミドイミド樹脂のガラス転移温度は280〜290℃と高く、電動パワーステアリング装置用ウォームホイール用途としては必要にして十分なレベルである。更に、そのような高いガラス転移温度を有することから、ポリアミドイミド樹脂の高温下における強度保持率は非常に高いレベルにあり、このことからも、ガラス転移温度が60〜80℃であり、高温下における強度低下が大きいポリアミド系樹脂と比較し、ポリアミドイミド樹脂が、より好適な電動パワーステアリング用材料であることがわかる。
本発明によれば、ウォームホイールの樹脂部を、繊維状充填材等を含むポリアミドイミド樹脂組成物で形成することにより、従来の使用条件より高面圧条件下での摩耗耐久性、及び寸法安定性に優れた、高信頼性の電動パワーステアリング装置用減速ギヤを提供することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の実施形態を説明する。
図1は、本発明の減速ギヤの一例を示す斜視図であるが、金属製の芯管1の外周に、樹脂組成物製でその外周端面にギヤ歯を形成した樹脂部3を一体化したウォームホイールを備える。このような構成自体は、従来のウォームホイールと同様である。また、ウォーム12には制限はなく、従来と同様に金属製とすることができる。
初めに、図1の斜視図を参照しながら説明する。ウォームホイール11は、芯金1と芯金1の外周に一体的に設けられた樹脂部3とで構成されている。そして、樹脂部3の外径面には、金属製等のウォーム12と噛み合う歯10が形成されている。
次に、平歯車25の構成を、図2の斜視図を参照しながら説明する。平歯車25は、芯金22と芯金22の外周に一体的に設けられた樹脂部23とで構成されている。そして、樹脂部23の外径面には、金属製等の平歯車26と噛み合う歯24が形成されている。
さらに、はすば歯車37の構成を、図3の斜視図を参照しながら説明する。はすば歯車37は、芯金42と芯金42の外周に一体的に設けられた樹脂部43とで構成されている。そして、樹脂部43の外径面には、金属製等のはすば歯車38と噛み合う歯44が形成されている。
次に、傘歯車39の構成を、図4の斜視図を参照しながら説明する。傘歯車39は、芯金42aと芯金42aの外周に一体的に設けられた樹脂部43aとで構成されている。そして、樹脂部43aの外径面には、金属製等の傘歯車40と噛み合う歯44aが形成されている。
その次に、ハイポイドギヤ50の構成を、図5の斜視図を参照しながら説明する。ハイポイドギヤ50は、芯金42bと芯金42bの外周に一体的に設けられた樹脂部43bとで構成されている。そして、樹脂部43bの外径面には、金属製等のハイポイドギヤ51と噛み合う歯44bが形成されている。
図1に戻って説明すると、樹脂部3を形成する樹脂材料としては、従来の性能とコストとのバランスの点で、強化材を含有しないMCナイロン、ガラス繊維を含有したポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46等が好ましいとされていた。これらの樹脂材料は、従来条件では一定以上の性能を示し、ウォームホイール11の相手材である金属製のウォーム12の摩耗に対して有利に働き、減速ギヤとして機能することができた。しかしながら、装置の小型化、作動トルク増大の結果もたらされる、非常に過酷な使用条件下では、これらの樹脂材料を用いた場合、ギヤ歯10の過大な摩耗・変形に伴って所望の機能が発揮されなくなった。このため、ウォームホイール用材料として、従来材料より性能レベルの高い、信頼性に優れる樹脂組成物の適用が強く求められていた。
図1に示す本発明の樹脂部3には、少なくともポリアミドイミド樹脂と繊維状充填材を含有するポリアミドイミド樹脂組成物が用いられているため、ウォームホイールの小径化、及び作動トルクの増大に伴う高面圧使用条件にも対応可能なホイール歯の強度、および耐摩耗性が確保されている。このため、本発明の樹脂組成物は、高面圧使用環境下においても、高信頼性を有する電動パワーステアリング装置用減速ギヤ用の材料として極めて好適である。
以下には、本発明に係る電動パワーステアリング装置用減速ギヤ用の樹脂組成物のべース樹脂であるポリアミドイミド樹脂について詳細に述べる。本発明に係るポリアミドイミド樹脂は、その名の通り分子骨格にアミド基とイミド基を有する熱可塑性樹脂であり、その原料はトリカルボン酸類とジアミンである。原料は、耐熱性の面から、芳香族系が好ましく、例えば、酸成分としては、無水トリメリット酸、無水トリメリット酸モノクロリドが好ましく、アミン成分としては、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、4,4'‐ジアミノジフェニルエーテル、4,4'‐ジアミノジフェニルメタン、ビス[4‐(4‐アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2'−ビス[4‐(4‐アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等を挙げることができる。尚、アミン成分としては、例えば上記のものを2種類以上併用して使用しても良い。
ポリアミドイミド樹脂には幾つかの製造方法があるが、本発明に係るポリアミドイミド樹脂は、如何なる製造方法により得られたものであっても良い。尚、以下には、ポリアミドイミド樹脂の代表的な製造方法である、酸クロライド法、イソシアネート法、直接重合法について簡単に述べる。酸クロライド法は、無水トリメリット酸モノクロライドとジアミンを、0〜30℃の低温で反応させ、ポリアミド酸とした後、脱水閉環してポリアミドイミドとする方法である。ここで、閉環は無水酢酸/トリエチルアミンなどの脱水剤で行うこともできるが、いったんポリアミド酸を水中で沈殿させた後、熱処理でイミド化させることも可能であり、後者の方がより一般的である。イソシアネート法は、ジアミンから誘導されたジイソシアネートを無水トリメリット酸と反応させる方法である。つまり、この方法によれば、ポリアミド酸を経由することなく、炭酸ガスを発生させつつ、一段でポリアミドイミドを合成することができる。直接重合法は、無水トリメリット酸とジアミンをモノマーとするものであり、酸クロライド法に比べ原料代が安くなるというメリットがあるが、重合を進行させるには200℃以上に加熱する必要があり、その結果枝別れ構造ができやすいという欠点も有する。
尚、本発明に係るポリアミドイミド樹脂においては、良好な成形性を確保するためその重合度が設定されることが必要である。具体的には、重合度は、ジメチルホルムアミド中30℃で濃度1g/d1で測定した還元粘度表示で、0.015m3/kg〜0.10m3/kgの範囲内のものを用いることができる。ここで、高分子溶液の還元粘度は、溶液粘度と溶媒粘度との比から1を引いた値である「比粘度」を溶液濃度で割った値である。
また、本発明に係るポリアミドイミド樹脂組成物には、繊維状充填材として、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、炭化珪素繊維、ウォラスナイト、及び/又は酸化亜鉛ウィスカー、チタン酸カリウム・ウィスカー、ホウ酸アルミニウム・ウィスカーなどのウィスカー類が含まれる。尚、上記繊維状充填材は、単独でもしくは2種類以上を併用して用いても良い。
また、本発明に係るポリアミドイミド樹脂組成物には、繊維状充填材として、好適には、ガラス繊維が含まれている。本発明において、ガラス繊維を充填するのは、更に機械的強度を向上させるとともに、ポリアミドイミド樹脂の吸水に伴う寸法変化を最小限に抑えるためである。尚、本発明において充填されるガラス繊維としては、直径で5〜9μmの範囲、より好ましくは6〜8μmの範囲に入るものが用いられる。ところで、繊維径が5〜9μmのガラス繊維は、従来の繊維径が10〜13μのガラス繊維と同じ重量含有率とした場合には実質の本数が増加することになる。このため、繊維径5〜9μmのガラス繊維を含むポリアミドイミド樹脂組成物を材料に用いたウォームホイール成形体の、ガラス繊維による寸法変化抑制効果は、繊維径10〜13μmのものを充填した場合より大きくなる。更に、そのような寸法変化抑制効果の向上だけでなく、繊維径5〜9μmのガラス繊維を含むポリアミドイミド樹脂組成物を材料に用いたウォームホイール成形体においては、同一重量含有率の場合繊維径10〜13μmのガラス繊維を含むポリアミドイミド樹脂組成物を材料に用いたものと比較して、ガラス繊維本数の増加分だけ、より大きな荷重を受けることが可能となるため、より高面圧条件下での使用においても、歯部の摩耗がより生じにくくなっている。従って、繊維径が5〜9μmのガラス繊維を充填した.ポリアミドイミド樹脂組成物を材料として用いたウォームホイール成形体は、高面圧下での摩耗耐久性や寸法安定性に優れた、高信頼性の電動パワーステアリング装置用減速ギヤを提供することができる。
また、本発明に係るガラス繊維の繊維長は100〜900μm、より好ましくは300〜600μmである。繊維長が100μm未満の場合は、短すぎて補強効果及び寸法抑制効果が少なく、好ましくない。ま.た繊維長が900μmを超える場合は、寸法抑制効果、および補強効果が向上するものの、樹脂部成形工程での繊維の破損や、同一方向への配向性の低下(同一の方向への配向が乱されること)による成形精度悪化等が想定されるようになり、外径部に歯形状を有する樹脂部の成形が困難になり、好ましくない。
尚、本発明に係るガラス繊維の含有量は、樹脂組成物全体の10〜50重量%、より好ましくは15〜35重量%である。ガラス繊維の配合量が10重量%未満の場合は、機械的強度、および寸法変化の改善効果が少なく好ましくない。補強材の配合量が50重量%を超える場合には、図1に示すウォーム12を損傷し易くなり、ウォーム12の摩耗が促進されて減速ギヤとしての耐久性が不足する可能性があり好ましくない。
ところで、本発明に係るガラス繊維には、紡糸直後に、ポリアミドイミド樹脂との接着性を考慮して、表面処理剤により表面処理が施されていることが必要である。具体的には、好ましくは、結束剤と呼ばれる樹脂系エマルジョン、ガラスと樹脂の双方を結合するためのカツプリン剤、および潤滑剤、静電気防止剤等の、様様な成分が加えられた表面処理剤により処理され使用される。
本発明では、好ましくは、シラン系カップリング剤を使用する。シラン系カップリング剤は、一端にガラス繊維と結合するシラノール基を、他端にベース樹脂(以下、マトリックス、マトリックス樹脂、又は樹脂マトリックスともいう。)あるいは結束剤と結合可能な有機官能基を有している。尚、熱可塑性樹脂をマトリックスとする繊維強化樹脂組成物の場合には、結束剤は樹脂マトリックス中に溶融・拡散せずに、ガラス繊維表面に残留する。このため、繊維強化熱可塑性樹脂組成物のカップリング剤としては、結束剤との接着に優れたアミノシラン系のカップリング剤(具体的には、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、あるいはγ−アミノプロピルトリエトキシシラン等)が好適である。従って、ポリアミドイミド樹脂組成物においては、表面処理剤によりガラス繊維表面を処理した場合、ガラス繊維−カップリング剤−結束剤‐樹脂マトリックスの4層構造が形成されることになる。
一方、結束剤としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、酢酸ビニル樹脂、およびアクリル樹脂等を用いることができる。尚、本発明に係るガラス繊維の結束剤としては、無水マレイン酸をー成分とするコポリマー(具体的には、無水マレイン酸とビニルエステルとのコポリマー、無水マレイン酸とビニルエーテルとのコポリマー、あるいは無水マレイン酸とアクリル酸とのコポリマー等)が好適である。その理由は、結束剤とカップリング剤との組合せを、無水マレイン酸を一成分とするコポリマーとアミノシラン系カップリング剤、との組合せとすることで、強力なガラス繊維−カップリング剤‐結束剤−樹脂マトリックスの4層構造を構築させ、非常に強固なガラス繊維/樹脂界面構造を形成させる結果として、本発明に係るポリアミドイミド樹脂組成物を材料として成形した電動パワーステアリング用ウォームホイール成形体の耐磨耗性を更に向上させることが可能となるためである。
また、本発明のポリアミドイミド樹脂組成物には、ゼオライト、カオリン、マイカ、クレー、タルク、アルミナ、シリカなどの非繊維状充填材を添加することもできる。更に、本発明のポリアミドイミド樹脂組成物には、顔料、染料、帯電防止剤、およびフッ素樹脂などの固体潤滑剤、などの配合剤も必要に応じて極小量添加してもよい。更には、添加剤として、成形時、および使用時の熱による劣化を防止す.るために、ヨウ化物系熱安定剤やアミン系酸化防止剤を、それぞれ単独あるいは併用して添加してもよい。
ところで、本発明に係る電動パワーステアリング装置用減速ギヤは、上述のポリアミドイミド樹脂をベース樹脂とした、少なくとも繊維状充填材を含有する樹脂組成物を射出成形して得ることができる。具体的には、金属製の芯管をコアとしてポリアミドイミド樹脂組成物をインサート成形することにより得られる。芯金とポリアミドイミド樹脂組成物との間にγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、等のシランカップリング剤を接着剤として使用してもよい。尚、本発明のような射出成形体を製造するには、ポリアミドイミド樹脂組成物の温度をポリアミドイミド樹脂の溶融温度よりも高い温度、具体的には300〜400℃に設定し、射出圧力を、例えば4.90×107〜2.45×108Pa(500〜2500kgf/cm2)、射出保持圧力を、4.90×107〜1.18×108Pa(500〜1200kgf/cm2)、のような適度な圧力条件下において成形することで、機械的強度と寸法精度に優れ、尚且つ、ボイドの極めて少ない射出成形体を得ることができる。
また、本発明に係るポリアミドイミド樹脂組成物を原材料に用いて射出成形により得られる成形体である樹脂部は、成形後に行うポストキュア処理により、ポリアミドイミド樹脂の分子量の更なる増大とともに、機械的強度が好適に向上する。従って、ポストキュア処理を施したウォームホイール成形体を用いて、歯部分の磨耗が極めて少なく、歯元の曲げ応力や繰り返しの疲労性に優れた、電動パワーステアリング装置用減速ギヤを提供することができる。
尚、本発明に係るポリアミドイミド樹脂組成物で構成される成形体、即ち樹脂部は、好ましくは、260℃以上において本格的にポストキュアされたものである。ところで、ポストキュアは、樹脂部におけるクラック発生を防止するため、成形体を金型から取り出して、オーブンに入れてキュアを行ったほうが良い。また、ポストキュアの条件としては、例えば、以下のように設定できる。即ち、先ず、165℃で24時間、その後引き続き、218℃で24時間、更に、243℃で24時間、252℃で24時間処理した後、260℃で72時間以上処理する、のように設定できる。
また、本発明に係る電動パワーステアリング装置用ウォームホイールは、ポリアミドイミド樹脂組成物から成形された樹脂部を、芯金をコアにしてインサート成形した後、引き続き、速やかにポストキュアを行い、その後、歯部の表面を切削加工してウォームホイールに仕上げているが、切削加工を行なう際、その切削量は1.5mm未満に抑えることが必要である。これは、1.5mm以上切削した場合には、切削の結果得られる表層においては、ポストキュアの効果が十分に及んでいない恐れがある、即ち、ポリアミドイミドの分子量が十分に向上していない恐れがあるためである。また、もし、ポストキュア後に1.5mm以上切削する場合には、ポストキュアを再度実施した後再度切削する工程が必要と考えられる。
以下、実施例、及び比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
[ウォームホイール試験体の作製]
(実施例1)
芯金:炭素を0.45%含有の機械構造用炭素鋼の素材で直径65mm、幅16mmに加工、表面に深さ0.5mmのローレット加工を施した。
(実施例1)
芯金:炭素を0.45%含有の機械構造用炭素鋼の素材で直径65mm、幅16mmに加工、表面に深さ0.5mmのローレット加工を施した。
樹脂部:ポリアミドイミド樹脂組成物はポリアミドイミド樹脂70wt%+ガラス繊維30wt%であり、ポリアミドイミド樹脂は、ソルベイアドバンストポリマーズ(株)製トーロン(登録商標)4203Lであり、還元粘度が0.09m3/kgである。ガラス繊維は、結束剤として無水マレイン酸と酢酸ビニルのコポリマーと、カップリング剤としてγ−アミノプロピルトリエトキシシランとを含む表面処理剤で表面処理したもの(平均繊維径約6μm、平均繊維長約400μm)である。
樹脂組成物の調製:無水マレイン酸と酢酸ビニルのコポリマーとγ−アミノプロピルトリエトキシシランとを含む表面処理剤で表面処理したガラス繊維(平均繊維径約6μm、平均繊維長約400μm)30重量%とポリアミドイミド樹脂(トーロン(登録商標)4203L)70重量%とをヘンシェルミキサー(三井三池工業(株)製のFM10B)で混合した後、スクリューを備えた一軸押出機(田辺プラスチック機械(株)製のVS30−28V押出機)により押出して、樹脂組成物の成形用ペレットを得た。
外径部に切削代を残したはすば形状を有し、内径64mm、外径83mm、幅15.5mmの大きさの樹脂部を、射出成形機(日本製鋼所(株)製N70−BII型射出成形機)を使用してポリアミドイミド樹脂組成物の温度を345‐365℃、射出圧力を1.18×108Pa(1200kgf/cm2)、射出保持圧力を9.81×107Pa(1000kgf/cm2)にて芯金部をコアにして、接着剤としてγ−アミノプロピルトリエトキシシランを用い、インサート成形した。引き続き、オーブン内において、260℃、72時間のポストキュアを行った後、歯部を約0.5mm切削してウォームホイールに仕上げた。
(比較例1)
芯金:実施例1と同じ。
芯金:実施例1と同じ。
樹脂部:ポリアミドイミド樹脂組成物はポリアミドイミド樹脂70wt%+ガラス繊維30wt%であり、ポリアミドイミド樹脂は実施例1と同じである。ガラス繊維は、実施例1と同一の無水マレイン酸と酢酸ビニルのコポリマーとγ−アミノプロピルトリエトキシシランとを含む表面処理剤で表面処理したもの(平均繊維径約13μm、平均繊維長約400μm)である。
樹脂組成物の調製・樹脂部の成形・加工は、実施例1に記載した方法と同様に行い、ウォームホイールに仕上げた。
(比較例2)
芯金:実施例1と同じ。
芯金:実施例1と同じ。
樹脂部:ポリアミド66樹脂組成物はポリアミド66樹脂70wt%+ガラス繊維30wt%であり、ポリアミド66樹脂は宇部興産(株)製ウベナイロン2020Uである。ガラス繊維は、実施例1と同一の無水マレイン酸と酢酸ビニルのコポリマーとγ−アミノプロピルトリエトキシシランとを含む表面処理剤で表面処理したもの(平均繊維径約6μm、平均繊維長約400μm)である。
樹脂組成物の調製:無水マレイン酸と酢酸ビニルのコポリマーとγ−アミノプロピルトリエトキシシランとを含む表面処理剤で表面処理したガラス繊維(平均繊維径約6μm、平均繊維長約400μm)30重量%とポリアミド66樹脂(ウベナイロン2020U)70重量%とをヘンシェルミキサー(三井三池工業(株)製のFM10B)で混合した後、スクリューを備えた一軸押出機(田辺プラスチック機械(株)製のVS30−28V押出機)により押出して、樹脂組成物の成形用ペレットを得た。
外径部に切削代を残したはすば形状を有し、内径64mm、外径83mm、幅15.5mmの大きさの樹脂部を、射出成形機(日本製鋼所(株)製N70−BII型射出成形機)を使用してポリアミド66樹脂組成物の温度を280‐300℃、射出圧力を1.18×107Pa(120kgf/cm2)、射出保持圧力を9.81×106Pa(100kgf/cm2)にて、芯金部をコアにして、接着剤(シランカップリング剤)としてγ−アミノプロピルトリエトキシシランを用い、インサート成形した。その後、歯部を約0.5mm切削、加工してウォームホイールに仕上げた。
(比較例3)
芯金:実施例1と同じ。
芯金:実施例1と同じ。
樹脂部:ポリアミド66樹脂組成物はポリアミド66樹脂70wt%+ガラス繊維30wt%であり、ポリアミド66樹脂は比較例2と同じである。ガラス繊維は、実施例1と同一の無水マレイン酸と酢酸ビニルのコポリマーとγ−アミノプロピルトリエトキシシランとを含む表面処理剤で表面処理したもの(平均繊維径約13μm、平均繊維長約400μm)である。樹脂組成物の調製、樹脂部の成形・加工は比較例2と同じ。
[ウォームホイール試験体の評価]
上記の各ウォームホイール試験体に対して(1)寸法安定性、(2)耐久性について評価した。各評価方法は以下の通りである。
上記の各ウォームホイール試験体に対して(1)寸法安定性、(2)耐久性について評価した。各評価方法は以下の通りである。
(1)寸法安定性の評価
作製したウォームホイール試験体を下記の条件Iまたは条件IIの下に放置し、所定時間経過後にギヤ外形寸法の変化量を測定した。何れの場合においても、変化量が100μm以下を合格「○」、100μmを超えて130μm以下をほぼ合格「△」、130μmを超えるものを不合格「×」として表1に併記した。条件Iは、60℃、90%RH、70hrであり、条件IIは、80℃、90%RH、300hrである。
作製したウォームホイール試験体を下記の条件Iまたは条件IIの下に放置し、所定時間経過後にギヤ外形寸法の変化量を測定した。何れの場合においても、変化量が100μm以下を合格「○」、100μmを超えて130μm以下をほぼ合格「△」、130μmを超えるものを不合格「×」として表1に併記した。条件Iは、60℃、90%RH、70hrであり、条件IIは、80℃、90%RH、300hrである。
(2)耐久性の評価
作製したウォームホイール試験体を実際の自動車減速ギヤに組み込み、下記条件にて操舵操作を繰り返し行った。ただし、本試験では、ウォームホイール/ウォーム軸間の接触面圧を従来モデルより1.4倍増となるように負荷を調節した。
作製したウォームホイール試験体を実際の自動車減速ギヤに組み込み、下記条件にて操舵操作を繰り返し行った。ただし、本試験では、ウォームホイール/ウォーム軸間の接触面圧を従来モデルより1.4倍増となるように負荷を調節した。
耐久性試験終了後のバックラッシ増加量が3deg以下であった減速ギヤを表記の回数の操舵に耐えることができたと判断し、合格「○」とし、耐久性試験終了後のバックラッシ増加量が3degを超えて5deg以下であった減速ギヤを表記の回数の操舵にほぼ耐えることができたと判断し、ほぼ合格「△」とし、試験途中でバックラッシ増加量が5degを超えた減速ギヤ、及び試験終了後のバックラッシ増加量が5degを超えた減速ギヤを不合格「×」と判断して、表1に記した。
それぞれに、条件Iは、30℃、50%RH、10万回、条件IIは、30℃、50%RH、30万回、条件IIIは、50℃、90%RH、10万回、条件IVは、50℃、90%RH、20万回、条件Vは、50℃、90%RH、30万回である。
表1から明らかなように、本発明の実施例は、電動パワーステアリング用減速ギヤに必要な寸法安定性、および従来の使用条件より高面圧下での摩耗耐久性の何れの項目においても比較例を上回っていた。
以上、円筒ウォームギアであるウォームホイールについて説明してきたが、この発明はこれに限られるものではなく、他の形式のギヤにも適用できることはいうまでもない。例えば、図2に示す平歯車、図3に示すはすば歯車、図4に示す傘歯車、及び図5に示すハイポイドギヤ等へ適用することができる。
本発明の樹脂製歯車は、例えば、電動パワーステアリング装置のパワーアシスト部を構成する歯車減速機構等に好適である。
1 金属製の芯管
3 樹脂部
8 接着剤
10 ギヤ歯
11 ウォームホイール
12 ウォーム
20 減速ギヤ
3 樹脂部
8 接着剤
10 ギヤ歯
11 ウォームホイール
12 ウォーム
20 減速ギヤ
Claims (9)
- 操舵補助出力発生用電動モータの出力をステアリングシャフトに伝達するための電動パワーステアリング装置用減速ギヤにおいて、前記減速ギヤが、少なくともポリアミドイミド樹脂と繊維状充填材を含有したポリアミドイミド樹脂組成物からなる樹脂部を金属製芯管の外周に一体に設け、前記樹脂部の外周面にギヤ歯を形成して構成されるウォームホイールを備えることを特徴とする電動パワーステアリング装置用減速ギヤ。
- 前記ポリアミドイミド樹脂が、無水トリメリット酸又は無水トリメリット酸モノクロリドとジアミンを主原料とすることを特徴とする、請求項1記載の電動パワーステアリング装置用減速ギヤ。
- 前記繊維状充填材の充填量が、前記ポリアミドイミド樹脂組成物の重量に対して10〜50重量%であり、且つ、前記繊維状充填材の繊維径が5〜9μmであることを特徴とする、請求項1又は2記載の電動パワーステアリング装置用減速ギヤ。
- 前記繊維状充填材の繊維長が、100〜900μmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の電動パワーステアリング装置用減速ギヤ。
- 前記繊維状充填材が、結束剤、カップリング剤、潤滑剤、及び/又は静電防止剤等を含む表面処理剤により処理されているガラス繊維を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載の電動パワーステアリング装置用減速ギヤ。
- 前記結束剤が、無水マレイン酸を一成分とするコポリマーを含むことを特徴とする、請求項5記載の電動パワーステアリング装置用減速ギヤ。
- 前記ポリアミドイミド樹脂の重合度が、ジメチルホルムアミド中温度30℃濃度1g/dlで測定した還元粘度として0.015m3/kg〜0.10m3/kgであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項記載の電動パワーステアリング装置用減速ギヤ。
- 前記樹脂部が、成形された後に260℃以上の温度でポストキュアされることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項記載の電動パワーステアリング装置用減速ギヤ。
- 前記ギヤ歯が、1回のポストキュア毎に1.5mm未満の切削量で形成されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項記載の電動パワーステアリング装置用減速ギヤ。
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JP2004345429A JP2006151211A (ja) | 2004-11-30 | 2004-11-30 | 電動パワーステアリング装置用減速ギヤ |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008256174A (ja) * | 2007-04-09 | 2008-10-23 | Jtekt Corp | 樹脂巻き部品の樹脂部の評価方法及び樹脂巻き部品 |
CN112502565A (zh) * | 2020-11-18 | 2021-03-16 | 宁波职业技术学院 | 一种汽车车窗升降器蜗杆 |
-
2004
- 2004-11-30 JP JP2004345429A patent/JP2006151211A/ja active Pending
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