JP2006086956A - 圧電セラミックス共振子及びレゾネータ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 圧電セラミックスの表面粗さに着目したところ、振動電極が形成される一対の面の表面粗さの差が小さい場合に機械的強度を向上することができることを確認して本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、互いに対向する主面S1及び主面S2を有する圧電セラミックス基材と、主面S1に形成された電極E1及び主面S2に形成された電極E2と、を備え、主面S1における電極E1が形成された領域の表面粗さRaをRa1、主面S2における電極E2が形成された領域の表面粗さRaをRa2とすると、少なくとも電極E1と電極E2とが対向している主面S1及び主面S2上の領域が、|Ra1−Ra2|/(Ra1+Ra2)/2≦5%…(1)の条件を満足することを特徴とする圧電セラミックス共振子である。
【選択図】図6
Description
端子電極31、32の上には、導電性樹脂や半田のような導電性と接着性の機能を併せ持つ導電固定子4によって圧電セラミックス共振子2が接着固定される。圧電セラミックス共振子2と基板3との間は、導電固定子4の厚みによって一定の振動空間が確保される。
キャップ5は、圧電セラミックス共振子2を覆うように基板3上に例えば接着剤によって接着されている。キャップ5も、基板3と同様にステアタイト(MgO・SiO2)、アルミナ(Al2O3)等のセラミックスで構成することもできるが、合金のような金属で構成してもよい。また、キャップ5の板厚も、基板3と同程度とすればよい。
以上のようなレゾネータ1は、例えば、特開平8−237066号公報(特許文献1)に開示されている。
そこで本発明は、圧電セラミックスが本来有する特性を低下することなく機械的強度を向上することのできる圧電セラミックス共振子を提供することを目的とする。また本発明は、そのような圧電セラミックス共振子を用いることにより自由落下耐性の優れたレゾネータを提供することを目的とする。
本発明において、|Ra1−Ra2|/(Ra1+Ra2)/2≦2%の条件を満足することが機械的強度向上にとって好ましい。
ただし、式(2)において0.97≦α≦1.01、0.04≦x≦0.16、0.48≦y≦0.58、0.32≦z≦0.41
図2は、本実施の形態におけるレゾネータ1を説明するための断面図である。なお、図2に示すレゾネータ1の基本的な構成は従来の技術の欄で説明したので、ここでの繰り返しの説明は省略する。
図1において、短冊状の圧電セラミックス基板21の電極が形成されている面(主面)の表面粗さを本発明は特定している。主面は圧電セラミックス基板21の表裏両面に対向して存在し、図1において、一対の主面の一方を主面S1、他方を主面S2とする。この主面S1及び主面S2の表面粗さRaを、各々Ra1(μm)、Ra2(μm)とすると、主面S1及び主面S2の表面粗さの差は|Ra1−Ra2|で表される。また、主面S1及び主面S2の表面粗さの平均値は(Ra1+Ra2)/2で表される。これらより、|Ra1−Ra2|/(Ra1+Ra2)/2≦5%…(1)が構成される。
まず、試験片は以下のようにして作製した。出発原料として、酸化鉛(PbO)粉末、酸化チタン(TiO2)粉末、酸化ジルコニウム(ZrO2)粉末、炭酸マンガン(MnCO3)粉末、酸化ニオブ(Nb2O5)粉末、酸化珪素(SiO2)粉末を準備した。この原料粉末を、モル比でPb0.99[(Mn1/3Nb2/3)0.10Ti0.53Zr0.37]O3となるように秤量した後、各粉末の総重量に対して副成分としてのMnCO3粉末を0.2wt%、SiO2粉末を0.07wt%添加し、各々ボールミルを用いて湿式混合を10時間行った。
クロスヘッド速度:0.2mm/min
クロスヘッド曲率半径/支点間距離:0.1(クロスヘッド曲率半径=0.5mm、支点間距離=2mm)
図7は、表面粗さ平均値((|Ra1−Ra2|/(Ra1+Ra2)/2))と3点曲げ強度の関係を示す。表面粗さ平均値と3点曲げ強度が比例関係にあるわけではなく、図6を参酌すると、表面粗さ平均値が大きい場合であっても、表面粗さの差/表面粗さ平均値を制御することにより3点曲げ強度を向上できることがわかる。
以上の結果より、本発明は、式(1)の条件を満足する圧電セラミックス共振子2を用いることとした。ただし、主面、特に電極対向面の表面粗さがあまり大きくなることは好ましくなく、本発明においては表面粗さRaを0.2μm以下とすることが特に好ましい。
なお、表面粗さの測定には、(株)小坂研究所のSE−30Dを用いた。
試験片(圧電セラミックス基板21)に真空蒸着装置を用いて図2に示すように、振動電極22、23を形成する。振動電極22、23は厚さ0.01μmのCr下地層と厚さ2μmのAgとから構成される。振動電極22、23形成後に、以上の試験片から切出しにより3.5mm×0.6mm×0.3mmの圧電セラミックス共振子2を作製した。この圧電セラミックス共振子2は導電固定子4により基板3と接着されるが、樹脂厚によって嵩上げされて振動空間が確保される。この基板3はステアタイトから構成されており、上下面に端子電極31、32が形成されている。次に、圧電セラミックス共振子2を保護するようにステアタイトからなるキャップ5を基板3と接着する。最後に、バレル研磨によって端部を粗面化した後に基板3の上下面に形成されている端子電極31、32をつなぐように基板3の側面に電極を形成する。最終的なレゾネータ1の外寸は4.5mm×2.0mm×1.1mmである。
ここで、厚みすべりモードの場合、支持間距離Lは3λ以上であることが好ましく、3.75λ以上であることがより好ましい。これは振動電極22、23付近に閉じ込められた振動を抑圧しないために必要である。また、支持間距離Lの上限はレゾネータ1の外形(図2のL1)−0.5mmとするのが好ましく、気密性を有したキャップ5の接着幅を確保するために必要な条件である。ここで、この支持間距離Lとは、分極方向に平行な方向の距離をいう。
また、分極方向が主面に対して垂直な厚み縦モードの場合、やはり支持間距離Lを3λ以上とすることが好ましく、3.75λ以上であることがより好ましい。この場合、支持間距離Lは圧電セラミックス共振子2の長手方向の距離である。
<圧電セラミックス>
本発明に用いる圧電セラミックスは、ペロブスカイト型構造を有するPZTを主成分として、この主成分は好ましくはMn、Nbを含有する。さらに好ましい主成分は、以下の組成式で示される。なお、ここでいう化学組成は焼結後における組成をいう。
組成式中、0.97≦α≦1.01、
0.04≦x≦0.16、
0.48≦y≦0.58、
0.32≦z≦0.41である。
なお、組成式中、α、x、y及びzはそれぞれモル比を表す。
Pb量を示すαは、0.97≦α≦1.01の範囲とすることが好ましい。αが0.97未満では、緻密な焼結体を得ることが困難である。一方、αが1.01を超えると良好な耐熱性を得ることができない。よって、αは、0.97≦α≦1.01の範囲とすることが好ましく、さらに0.98≦α<1.00とすることが好ましく、0.99≦α<1.00とすることがより好ましい。
Al2O3及びSiO2は、圧電セラミックスの機械的強度向上にとって有効である。Al2O3は、主成分、特にPbα[(Mn1/3Nb2/3)xTiyZrz]O3に対して0.15wt%以上添加することが好ましく、0.6wt%以上添加することがより好ましい。Al2O3の添加量を増やしていっても、圧電セラミックスの特性を害することがないため、その上限は特に限定されないが、得られる効果が飽和すると解されることから、主成分に対する添加量を3.0wt%以下、好ましくは2.0wt%以下、さらに好ましくは1.5wt%以下とする。
また、SiO2の添加量は、主成分、特にPbα[(Mn1/3Nb2/3)xTiyZrz]O3に対して0.005〜0.15wt%、より好ましいSiO2の添加量は0.01〜0.12wt%、さらに好ましいSiO2の添加量は0.01〜0.07wt%とする。
Cr2O3は良好な耐熱性を得る上で有効である。好ましいCr2O3の添加量は主組成、特にPbα[(Mn1/3Nb2/3)xTiyZrz]O3に対して0.65wt%以下、より好ましいCr2O3の添加量は0.50wt%以下である。さらに好ましいCr2O3の添加量は0.01〜0.30wt%、より一層好ましいCr2O3の添加量は0.01〜0.10wt%である。
なお、以上の副成分はあくまで好ましい一例であって、他の副成分を用いることを排除するものではない。
次に、本発明に用いる圧電セラミックスの好ましい製造方法について、その工程順に説明する。(原料粉末、秤量)
主成分の原料として、酸化物又は加熱により酸化物となる化合物の粉末を用いる。具体的にはPbO粉末、TiO2粉末、ZrO2粉末、MnCO3粉末、Nb2O5粉末等を用いることができる。原料粉末は最終的に得たい組成に該当するように、それぞれ秤量する。なお、上述した原料粉末に限らず、2種以上の金属を含む複合酸化物の粉末を原料粉末としてもよい。
次に、秤量された各粉末の総重量に対して、副成分を所定量添加する。各原料粉末の平均粒径は0.1〜3.0μmの範囲で適宜選択すればよい。
原料粉末を湿式混合した後、700〜950℃の範囲内で所定時間保持する仮焼を行う。このときの雰囲気はN2又は大気とすればよい。仮焼の保持時間は0.5〜5時間の範囲で適宜選択すればよい。
なお、主成分の原料粉末と副成分の原料粉末を混合した後に、両者をともに仮焼に供する場合について示したが、副成分の原料粉末を添加するタイミングは上述したものに限定されるものではない。例えば、まず主成分の粉末のみを秤量、混合、仮焼及び粉砕する。そして、仮焼粉砕後に得られた主成分の粉末に、副成分の原料粉末を所定量添加し混合するようにしてもよい。
粉砕粉末は、後の成形工程を円滑に実行するために顆粒に造粒される。この際、粉砕粉末に適当なバインダ、例えばポリビニルアルコール(PVA)を少量添加し、かつこれらを十分に混合し、その後に例えばメッシュを通過させて整粒することにより造粒粉末を得る。次いで、造粒粉末を200〜300MPaの圧力で加圧成形し、所望の形状の成形体を得る。
成形時に添加したバインダを除去した後、1100〜1250℃の範囲内で所定時間成形体を加熱保持し焼結体を得る。このときの雰囲気はN2又は大気とすればよい。加熱保持時間は0.5〜4時間の範囲で適宜選択すればよい。
焼結体に分極処理用の電極を形成した後、分極処理を行う。分極処理は、50〜300℃の温度で、1.0〜2.0Ec(Ecは抗電界)の電界を焼結体に対して0.5〜30分間印加する。
分極処理温度が50℃未満になると、Ecが高くなるため分極電圧が高くなり、分極が困難になる。一方、分極処理温度が300℃を超えると、絶縁オイルの絶縁性が著しく低下するため分極が困難となる。よって、分極処理温度は50〜300℃とする。好ましい分極処理温度は60〜250℃、より好ましい分極処理温度は80〜200℃である。
また、印加する電界が1.0Ecを下回ると分極が進行しない。一方、印加する電界が2.0Ecを超えると実電圧が高くなって焼結体がブレークしやすくなり、圧電セラミックスの作製が困難となる。よって、分極処理の際に印加する電界は1.0〜2.0Ecとする。好ましい印加電界は1.1〜1.8Ec、より好ましい印加電界は1.2〜1.6Ecである。
分極処理は、上述した温度に加熱された絶縁オイル、例えばシリコンオイル浴中で行う。なお、分極方向は所望の振動モードに応じて決定する。つまり、厚みすべりモードの場合には、主面に平行な方向に分極を行い、厚み縦モードの場合には主面に垂直な方向に分極を行えばよい。
Claims (5)
- 互いに対向する主面S1及び主面S2を有する圧電セラミックス基材と、
前記主面S1に形成された電極E1及び前記主面S2に形成された電極E2と、を備え、
前記主面S1における前記電極E1が形成された領域の表面粗さRaをRa1、
前記主面S2における前記電極E2が形成された領域の表面粗さRaをRa2とすると、
少なくとも前記電極E1と前記電極E2とが対向している前記主面S1及び前記主面S2上の領域が、|Ra1−Ra2|/(Ra1+Ra2)/2≦5%…(1)の条件を満足することを特徴とする圧電セラミックス共振子。 - |Ra1−Ra2|/(Ra1+Ra2)/2≦2%であることを特徴とする請求項1に記載の圧電セラミックス共振子。
- 前記圧電セラミックス基材は、Pbα[(Mn1/3Nb2/3)xTiyZrz]O3…(2)で示されるペロブスカイト化合物を主成分とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電セラミックス共振子。
ただし、式(2)において0.97≦α≦1.01、0.04≦x≦0.16、0.48≦y≦0.58、0.32≦z≦0.41 - 互いに対向する主面S1及び主面S2を有する圧電セラミックス基材と、前記主面S1に形成された電極E1及び前記主面S2に形成された電極E2とを備える圧電セラミックス共振子と、
前記圧電セラミックス共振子を支持する基板と、を備え、
前記圧電セラミックス基材が、前記主面S1における前記電極E1が形成された領域の表面粗さRaをRa1、前記主面S2における前記電極E2が形成された領域の表面粗さRaをRa2とすると、
少なくとも電極E1と電極E2とが対向している主面S1及び主面S2上の領域が、|Ra1−Ra2|/(Ra1+Ra2)/2≦5%の条件を満足することを特徴とするレゾネータ。 - 前記基板は端子電極を備え、
前記圧電セラミックス共振子は、導電部材を介して、前記基板に両端支持されるとともに、振動電極と導通することを特徴とする請求項4に記載のレゾネータ。
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