JP2006057070A - ポリビニルアセタール系樹脂用可塑剤及びそれを用いたペースト - Google Patents
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Abstract
【課題】
ポリビニルアセタール系樹脂に対して好適な可塑化効果を示し、かつ、適度な揮発性を持つポリビニルアセタール系樹脂用可塑剤を提供することを目的とする。更に、ポリビニルアセタール系樹脂用可塑剤を用いて得られるセラミックペースト、導電ペースト、誘電ペーストを提供する。
【解決手段】
本発明のポリビニルアセタール系樹脂用可塑剤は、一般式(1)で表される分子構造であることを特徴とする。
[式中、R1は、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、nは1〜5の自然数を表す。R2、R3は、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基を表し、それぞれ同一であっても異なっていても良い。]
【選択図】 なし
ポリビニルアセタール系樹脂に対して好適な可塑化効果を示し、かつ、適度な揮発性を持つポリビニルアセタール系樹脂用可塑剤を提供することを目的とする。更に、ポリビニルアセタール系樹脂用可塑剤を用いて得られるセラミックペースト、導電ペースト、誘電ペーストを提供する。
【解決手段】
本発明のポリビニルアセタール系樹脂用可塑剤は、一般式(1)で表される分子構造であることを特徴とする。
[式中、R1は、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、nは1〜5の自然数を表す。R2、R3は、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基を表し、それぞれ同一であっても異なっていても良い。]
【選択図】 なし
Description
本発明は、セラミックペースト、導電ペースト、誘電ペーストに用いられるポリビニルアセタール系樹脂に対する可塑化効果が高く、かつ、適度な揮発性を持つポリビニルアセタール系樹脂用可塑剤に関する。更に、ポリビニルアセタール系樹脂用可塑剤を用いるセラミックペースト、導電ペースト、誘電ペーストに関する。
ポリビニルアセタール系樹脂は、強靱性、製膜性、顔料等の無機・有機粉体等の分散性、塗布面への接着性等に優れていることから、例えば、インク、塗料、プライマー、分散剤、接着剤、セラミックグリーンシート、熱現像性感光材料、水性インク受容層等のバインダ樹脂等の用途に使用されている。例えば、積層セラミックコンデンサの製造に用いられるセラミックグリーンシート用バインダ樹脂とする場合は、以下のようにして使用される。ポリビニルブチラール樹脂を有機溶剤に溶解し、可塑剤、分散剤等を添加した後、セラミック粉末を加え、ボールミル等により均一に混合し、セラミックスラリーを得る。このスラリーをドクターブレード、リバースロールコーター等を用いて、離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)またはステンレスプレート等の支持体面に流延成形する。これを加熱等により、溶剤等の揮発分を溜去させた後、支持体から剥離してセラミックグリーンシートを得る。
このような用途に用いられるポリビニルアセタール系樹脂に対しては、シートに柔軟性を付与したり、積層する際の接着力を高めたりする目的で可塑剤が添加されている。用いられる可塑剤としては、一般に、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)等のフタル酸系の可塑剤や、ジオクチルアジペート(DOA)のようなアジピン酸系のものが挙げられる。
しかしながら、これらの可塑剤では十分な可塑化効果が得られなかったり、揮発性が高いために、シートの乾燥時や保存時に可塑剤が揮発し、可塑化効果が低下したりするという保存性安定性の問題があった。また、電子回路の高密度化に伴い、セラミックグリーンシートの薄膜化が進むに従い、可塑剤の添加によってシート強度が低下し、クラックが生じたり、シートが破れたりするという問題があった。特に、近年積層セラミックコンデンサは高性能化のために多層化が進んでおり、セラミックグリーンシートの薄膜化が求められている。従来使用されているDBPやDOAのような揮発性の高い可塑剤は、溶剤を乾燥させる工程で可塑剤も一緒に揮発してしまい、シートに残存する可塑剤量が減少しシートの柔軟性が低下する。その結果、グリーンシートをPETフィルム等から剥離するときや積層、熱圧着時に破れるという課題が顕在化しつつある。このような現象は、従来のグリーンシートでも見られたが、グリーンシートが厚いため、表面は可塑剤が揮発するものの、内部には可塑剤が残留しているために柔軟性が保持でき、大きな問題とはなっていなかった。しかしながら、薄層化することでその影響が顕著に見られるようになってきた。すなわち、従来使用されている可塑剤では、薄層化したときに可塑剤が揮発するために、シートの柔軟性が著しく低下する。
また、更に、DOP、DBP等のフタル酸系の可塑剤は、内分泌攪乱物質の疑いがある等、環境面でも問題があった。このような観点からも、ポリビニルアセタール系樹脂に好適に使用できる可塑化効果が高く、かつ、適度な揮発性を有する新規可塑剤が望まれていた。
本発明は、上記問題を解決し、ポリビニルアセタール系樹脂に対して好適な可塑化効果を示し、かつ適度な揮発性を持つポリビニルアセタール系樹脂用可塑剤を提供することを目的とする。更に、ポリビニルアセタール系樹脂に対して好適な本発明の可塑剤を用いて得られるセラミックペースト、導電ペースト、誘電ペーストを提供することを目的とする。ここでいう適度な揮発性とは、ペーストをシートに成形し、溶剤を揮発させた時には、可塑剤の揮発が少なく、且つシートの焼成時には、略完全に揮発、焼成され、残留しない特性をいう。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリビニルアセタール系樹脂用可塑剤は、一般式(1)で表される分子構造であることを特徴とする。
本発明のポリビニルアセタール系樹脂用可塑剤は、一般式(1)で表される分子構造であることを特徴とする。
[式中、R1は、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、nは1〜5の自然数を表す。R2、R3は、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基を表し、それぞれ同一であっても異なっていても良い。]
一般式(1)中のR1は、炭素数1〜6のアルキレン基を表し、直鎖状であっても良いし分岐を含んでいても良いが、R1の炭素数が7以上になるとポリビニルアセタール系樹脂に対する相溶性が低下したり、適度な揮発性が得られない。さらに、好適には2〜4である。
上記R1としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、1−メチルメチレン、1−メチルエチレン、1−メチルプロピレン、2−メチルプロピレン、1−メチルブチレン、2−メチルブチレン、1−メチルペンチレン、2−メチルペンチレン、3−メチルペンチレン、1−エチルメチレン、1−エチルメチレン、1−エチルエチレン、1−エチルプロピレン、2−エチルプロピレン、1−エチルブチレン、2−エチルブチレン、1,1−ジメチルメチレン、1,1−ジメチルエチレン、1,2−ジメチルエチレン、1,1−ジメチルプロピレン、1,2−ジメチルプロピレン、2,2−ジメチルプロピレン、1,3−ジメチルプロピレン、1,1−ジメチルブチレン、1,2−ジメチルブチレン、1,3−ジメチルブチレン、1,4−ジメチルブチレン、2,2−ジメチルブチレン、2,3−ジメチルブチレン等が挙げられる。
一般式(1)中のnは、1〜5の自然数を表す。nが6以上になるとポリビニルアセタール系樹脂に対する相溶性、可塑化効果、適度な揮発性が得られなくなる。
一般式(1)中のR2、R3は、炭素数1〜20のアルキル基を表し、直鎖状であっても分岐状であっても、環状であっても良く、これらが複合されていても良い。また、R2と
R3は、それぞれ同一であっても異なっていても良い。
R3は、それぞれ同一であっても異なっていても良い。
上記R2、R3としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、1−メチルエチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1−メチルヘキシル、2−メチルヘキシル、3−メチルヘキシル、4−メチルヘキシル、5−メチルヘキシル、1−メチルヘプチル、2−メチルヘプチル、3−メチルヘプチル、4−メチルヘプチル、5−メチルヘプチル、6−メチルヘプチル、1−エチルエチル、1−エチルプロピル、2−エチルプロピル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、3−エチルブチル、1−エチルペンチル、2−エチルペンチル、3−エチルペンチル、4−エチルペンチル、1−エチルヘキシル、2−エチルヘキシル、3−エチルヘキシル、4−エチルヘキシル、5−エチルヘキシル、1−エチルヘプチル、2−エチルヘプチル、3−エチルヘプチル、4−エチルヘプチル、5−エチルヘプチル、6−エチルヘプチル、1−プロピルエチル、1−プロピルプロピル、2−プロピルプロピル、1−プロピルブチル、2−プロピルブチル、3−プロピルブチル、1−プロピルペンチル、2−プロピルペンチル、3−プロピルペンチル、4−プロピルペンチル、1−プロピルヘキシル、2−プロピルヘキシル、3−プロピルヘキシル、4−プロピルヘキシル、5−プロピルヘキシル、1−プロピルヘプチル、2−プロピルヘプチル、3−プロピルヘプチル、4−プロピルヘプチル、5−プロピルヘプチル、6−プロピルヘプチル、シクロヘキシル、2−メチルシクロヘキシル、3−メチルシクロヘキシル、2,2−ジメチルシクロヘキシル、2,3−ジメチルシクロヘキシル、2,4−ジメチルシクロヘキシル、2,5−ジメチルシクロヘキシル、3,3−ジメチルシクロヘキシル、2−エチルシクロヘキシル、3−エチルシクロヘキシル、4−エチルシクロヘキシル、5−エチルシクロヘキシル等が挙げられる。
本発明で用いられるポリビニルアセタール系樹脂とは、α−オレフィン単位を20モル%まで含有する変性ビニルアセタール系樹脂を含む。
上記α−オレフィン単位が含有されることによって得られる変性ポリビニルアセタール系樹脂ではチクソ性が向上する。
α−オレフィン単位の含有量が20モル%を超えると変性ポリビニルアルコール系樹脂の溶解性が低下し、アセタール化反応が十分に進行しなかったり、得られる変性ポリビニルアセタール系樹脂の溶剤に対する溶解性が低下したりする。好ましくは、α−オレフィンとしては、炭素数1〜10の直鎖状又は環状のものが好ましく、さらに好ましくは炭素数2〜6の直鎖状のものであり、例えば、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンチレン、へキシレン、シクロヘキシレン、シクロヘキシルエチレン、シクロヘキシルプロピレン等が挙げられる。
上記ポリビニルアセタール系樹脂は、ポリビニルアルコール系樹脂を温水で溶解した後、酸触媒の存在下で所定のアセタール化度となるようにアルデヒドを添加し、反応させた後、水洗、中和、乾燥することで得ることができる。
上記ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度が低すぎると溶解性が低下し、アセタール化が十分に進行しなかったり、得られるポリビニルアセタール系樹脂の溶剤に対する溶解性が低下する。アセタール化度が低すぎると、得られるポリビニルアセタール系樹脂の溶剤に対する溶解性が低下するので、上記ポリビニルアセタール系樹脂は、ケン化度が80モル%以上のポリビニルアルコール系樹脂をアセタール化することで得られるものであって、重合度が200〜4000、アセタール化度が40〜80mol%であることが好ましい。
上記反応に用いられるアルデヒドは、特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドを含む)、アセトアルデヒド(パラアセトアルデヒドを含む)、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアルデヒド、m−ヒドロキシアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。これらのアルデヒドは単独で用いても2種以上併用しても良く、アセトアルデヒド及び/又はブチルアルデヒドが好適に用いられる。
上記酸触媒としては、特に規定されず、有機酸、無機酸いずれも用いることができるが、例えば、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸等が挙げられる。また、中和に用いられるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
本発明のポリビニルアセタール系樹脂用可塑剤は、ポリビニルアセタール系樹脂に対する可塑化効果が優れているため、セラミックペースト、導電ペースト、誘電ペースト等のポリビニルアセタール系樹脂をバインダ樹脂として用いる用途に好適に使用することができ、その際のポリビニルアセタール系樹脂用可塑剤の添加量は、ポリビニルアセタール系樹脂100重量部に対して10重量部〜50重量部であることが好ましく、少なくなると可塑化効果が十分に得られず、多くなると塗工後のシートが柔軟になりすぎたり、可塑剤がブリードアウトしたりしてシートを形成する際や積層する際の取り扱いが困難になる。
請求項2記載のセラミックペーストは、請求項1記載のポリビニルアセタール系樹脂用可塑剤、ポリビニルアセタール系樹脂、セラミックス粉末及び溶剤とを主たる構成成分として含有するが、分散剤等を適宜配合しても良い。
上記セラミックペーストは、ドクターブレード法等の公知の方法によってシート状に製膜してセラミックグリーンシートとして用いることができる。
セラミックス粉末としては、セラミックス粉末単独のもの、ガラス−セラミックス複合系、結晶化ガラス系のもの等が挙げられ、具体的には、例えば、チタン酸バリウム、アルミナ(Al2 O3 )、ジルコニア(ZrO2 )、マグネシア(MgO)、窒化アルミニウム(AlN)等が挙げられる。
上記溶剤は、有機溶剤であれば、400℃以下で、ほぼすべての溶剤がセラミックペーストの焼成の際に、揮発するので、特に限定されず、セラミックス粉末、導電性粉末、誘電性粉末等の無機粉末を含む樹脂を溶解できるペースト調製用の公知の有機溶剤が利用でき、例えば、脂肪族アルコール、アルコールエステル、カルビトール系溶媒、セロソルブ系溶媒、ケトン系溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられ、具体的には、アルコール、アルコールエステル、アルコールエーテル、アセトン、ヘキサン、ペンタン等の液状炭化水素、トルエン、キシレンなどの液状芳香族炭化水素等が挙げられる。
請求項3記載の導電ペーストは、請求項1記載のポリビニルアセタール系樹脂用可塑剤、ポリビニルアセタール系樹脂、導電性粉末及び溶剤とを主たる構成成分として含有するが、必要に応じて、分散剤等を適宜配合しても良い。
上記導電ペーストは、ドクターブレード法などの公知の方法によってシート状に製膜し、焼成し、導電性粉末以外の構成成分を脱脂して電極等の導電体を形成できる。
上記導電性粉末としては、特に限定されず、焼結できる公知の金属微粒子等が用いられ、例えば、金微粒子、銀微粒子、銅微粒子等が挙げられる。なお、金属微粒子としては、超微粒子と呼ばれるナノサイズからサブミクロンサイズになると活性が高まるため、超微粒子サイズの金属超微粒子であることが好ましい。
上記金属微粒子としては、中でも、金属表面が脂肪酸、脂肪酸塩や脂肪酸エステルで被覆処理された表面処理金属微粒子であることがより好ましい。例えば、脂肪酸に被覆された銀微粒子、特に直鎖脂肪酸に被覆された銀微粒子等が挙げられる。
また上記の金属超微粒子の例として、特開平10−183207号公報で開示される超微粒子がある。この超微粒子は、内部に金属核があり、周囲にその母材としての金属有機化合物が取り巻き、有機成分が外方に向いて配置しているので、有機溶剤等の中で金属超微粒子の凝集が少なく安定した分散状態となっている。
上記金属超微粒子の金属核としては、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pd、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、V、Cr、Mn、Y、Zr、Nb、Mo、Ca、Sr、Ba、Sb等があり、金属核の直径は1〜100nmである。
上記金属有機化合物には、有機金属錯体や有機金属化合物、金属アルコキシド等が挙げられる。具体的には、ナフテン酸、オクチル酸、ステアリン酸、安息香酸、パラトルイル酸、n−デカン酸等の脂肪酸の金属塩;イソプロポキシド、エトキシド等の金属アルコキシド;アセチルアセトンの金属錯塩等が挙げられる。ナフテン酸金属塩としては、例えば、ナフテン酸銀、ナフテン酸ビスマス、ナフテン酸バナジウム等が挙げられ、貴金属に限らず各種金属のナフテン酸塩が用いられる。
導電ペーストに用いられる溶剤としては、セラミックペーストに使用されるものと同様のものが挙げられる。
請求項4記載の誘電ペーストは請求項1記載のポリビニルアセタール系樹脂用可塑剤、ポリビニルアセタール系樹脂、誘電性粉末及び溶剤とを主たる構成成分として含有するが、分散剤等を適宜配合しても良い。
請求項4記載の誘電ペーストをドクターブレード法等の公知の方法によってシート状に製膜し、焼成し、誘電性粉末以外の構成成分を脱脂して誘電体層が得られる。
上記誘電性粉末としては、セラミックス粉末と同様のものが用いられる他、ガラス粉末、ガラスフリット等の無機物の粉末、SiO2 、Al2 O3 、CaO、B2 O3 、MgOおよびTiO2等を含むガラス粉末とアルミナ、ジルコニア、マグネシア、ベリリア、ムライト、シリカ等の無機物の粉末との混合物等が挙げられる。
上記誘電ペーストに用いられる溶剤としては、セラミックペーストに使用されるものと同様のものが挙げられる。
上述したように、本発明の可塑剤は、ポリビニルアセタール系樹脂に対して、可塑化効果が高く、少量の添加でも十分な可塑化効果を発揮する。高温で乾燥しても揮発性も低いため、シートの乾燥時に柔軟性、接着性が低下することを防ぐことができるのでポリビニルアセタール系樹脂の可塑剤として好適に使用できる。特に、可塑剤使用量を少なくし、厚みも薄いため可塑剤の揮発しやすい状態で用いるセラミックグリーンシートの製造においては、既存可塑剤に代わって好適に用いることができる。更に、適度の揮発性を有するので、可塑剤の残留による積層セラミックコンデンサ製造における焼成時のボイドの発生などを防ぐ効果も期待できる。また、更に、フタル酸系の物質を含んでいないため、環境に対する影響を低減することができる。
本発明の可塑剤は、適度な揮発性という特性から、具体的には、厚みが5μm以下の薄層グリーンシート形成用セラミックペーストに好適に使用できる。このような薄層グリーンシートにおいては、シート強度を確保するために重合度が1700〜4000程度のポリビニルアセタール樹脂が用いられる。しかし、重合度が高いために柔軟性が低く、可塑化効果の高い可塑剤を使用する必要がある。また、乾燥後も柔軟性を保持するために、薄いグリーンシート作製工程でも揮発し難いという低揮発性も求められる。本発明の可塑剤は、可塑化効果が高く、適度の揮発性を有するので、このような目的に好適に使用できる。
以下、本発明を実施例において、更に詳細に説明する。
(可塑剤の製造)
(実施例1)
ポリビニルアセタール系樹脂として、BH−3(積水化学工業製、重合度1700)を10重量%含むエタノール溶液に、ポリビニルアセタール系樹脂100重量部に対して30重量部となるように表1の実施例1に示す一般式(1)のR1がエチレン、R2がオクチル、R3がオクチル、nが2である可塑剤を添加した。得られた溶液をキャスト法により製膜し、60℃及び140℃で20分乾燥させポリビニルアセタール系樹脂のシートを得た。得られたポリビニルアセタール系樹脂のシートの熱流動性を評価した。
(実施例1)
ポリビニルアセタール系樹脂として、BH−3(積水化学工業製、重合度1700)を10重量%含むエタノール溶液に、ポリビニルアセタール系樹脂100重量部に対して30重量部となるように表1の実施例1に示す一般式(1)のR1がエチレン、R2がオクチル、R3がオクチル、nが2である可塑剤を添加した。得られた溶液をキャスト法により製膜し、60℃及び140℃で20分乾燥させポリビニルアセタール系樹脂のシートを得た。得られたポリビニルアセタール系樹脂のシートの熱流動性を評価した。
熱流動温度の測定は、昇温式フローテスター等を用い、一定速度で昇温するシリンダー内の樹脂を定荷のプラグで細孔より押出、樹脂の流出量又はプラグ降下量を基に測定される。熱流動温度の指標として、樹脂流出が開始される温度、一定の流出速度が得られる温度等があるが、本発明の実施例では、一定の流出速度が得られる温度を採用した。上記熱流動温度の測定は、具体的には、島津製作所製キャピラリーレオメーターCFT−500Dを用いて以下のように測定した。試料を50℃で5分保持した後、シリンダ圧力を9.8×106(Pa)とし、毎分6℃で昇温し、直径1mm、長さ10mmのダイを流動する速度(cm3/s)を測定し、10×10−4(cm3/s)の速度で流動する温度を熱流動温度とした。熱流動温度が低いほど可塑化効果が高いことを示す。
(実施例2〜6)
実施例1で用いた可塑剤の一般式(1)のR1、R2、R3、nを表1に示す実施例2〜6のものにかえた以外は実施例1と同様にしてポリビニルアセタール系樹脂のシートを得、実施例1と同様にポリビニルアセタール系樹脂のシートの熱流動性を評価した。
実施例1で用いた可塑剤の一般式(1)のR1、R2、R3、nを表1に示す実施例2〜6のものにかえた以外は実施例1と同様にしてポリビニルアセタール系樹脂のシートを得、実施例1と同様にポリビニルアセタール系樹脂のシートの熱流動性を評価した。
(実施例7〜12)
重合度3800、ケン化度98モル%のポリビニルアルコールを用い、常法によりブチラール化度68モル%のポリビニルアセタールを得た。得られたポリビニルアセタール樹脂及び実施例1〜6の可塑剤を用いてポリビニルアセタール樹脂の熱流動性を評価した。(表2)。
重合度3800、ケン化度98モル%のポリビニルアルコールを用い、常法によりブチラール化度68モル%のポリビニルアセタールを得た。得られたポリビニルアセタール樹脂及び実施例1〜6の可塑剤を用いてポリビニルアセタール樹脂の熱流動性を評価した。(表2)。
(比較例1〜8)
表1に示す様に、比較例2〜4では、実施例1で用いたポリビニルアセタール樹脂、表2に示す様に比較例6〜8では実施例7で用いたポリビニルアセタール樹脂を用い、可塑剤として、いずれも新日本理化社製のジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルアジペート(DOA)を用いて実施例1と同様にして調製したポリビニルアセタール系樹脂のシートについて熱流動性を評価した。また、比較例1、比較例5として可塑剤を添加していないものも同様に調製し同様に熱流動性を評価した。
表1に示す様に、比較例2〜4では、実施例1で用いたポリビニルアセタール樹脂、表2に示す様に比較例6〜8では実施例7で用いたポリビニルアセタール樹脂を用い、可塑剤として、いずれも新日本理化社製のジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルアジペート(DOA)を用いて実施例1と同様にして調製したポリビニルアセタール系樹脂のシートについて熱流動性を評価した。また、比較例1、比較例5として可塑剤を添加していないものも同様に調製し同様に熱流動性を評価した。
表1から分かるように、DOP、DBPと比べると実施例の本発明の可塑剤は60℃で乾燥した後の熱流動温度が低く、可塑化効果が高くなる。また、120℃で乾燥した後の熱流動温度もDBPでは、可塑剤を添加していないときとほぼ同じ200℃程度となるのに対して、本発明の可塑剤の場合熱流動温度は、150℃程度と依然高い可塑化効果を示していることから適度の揮発性を有していることが分かる。
また、DOAと比較すると、60℃で乾燥した後の熱流動性は、やや劣るものが見られものの120℃で乾燥した後の熱流動性はDOAを使用したものより低く、揮発性が低いことが分かる。本発明のポリビニルアセタール系樹脂用可塑剤は、上述のように比較例の可塑剤と比べて可塑化効果が高く、かつ、適度の揮発性を示している。また、フタル酸系の物質を含有していないため、環境への負荷が懸念されるフタル酸系物質の代替可塑剤として有望であることを示している。
(セラミックペースト及びグリーンシートの作成)
(実施例13〜24、比較例9〜16)
表3に示す様に、実施例13〜18では、実施例1〜6のポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を、実施例19〜24では実施例7〜12のポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を、比較例10〜12では比較例2〜4のポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を、比較例14〜16では比較例2〜4のポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を用いて、下記のようにしてセラミックグリーンシートを作製した。また可塑剤を用いないものも作成した。(比較例9、比較例13)
(実施例13〜24、比較例9〜16)
表3に示す様に、実施例13〜18では、実施例1〜6のポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を、実施例19〜24では実施例7〜12のポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を、比較例10〜12では比較例2〜4のポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を、比較例14〜16では比較例2〜4のポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を用いて、下記のようにしてセラミックグリーンシートを作製した。また可塑剤を用いないものも作成した。(比較例9、比較例13)
ポリビニルアセタール樹脂10重量部をトルエン40重量部とエタノール40重量部の混合溶剤に加え、溶解し、これに表3に示す可塑剤4重量部とセラミック粉末として粒径0.3μmのチタン酸バリウム粉末100重量部を加え、ボールミルで36時間混合し、セラミックペーストを得た。このセラミックスペーストを離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに約4.5μmの厚さで塗布し、常温で30分乾燥した後、60℃の熱風乾燥機で10時間乾燥し、セラミックグリーンシートを得た。得られたセラミックグリーンシートの厚さは約2μmであった。
実施例のセラミックグリーンシートは、乾燥直後は、柔軟性を持っており、PETフィルムから剥離することができた。しかし、可塑剤を添加しなかった比較例9及び比較例13のグリーンシート、比較例15のグリーンシートは剥離時に破れが生じた。
その後、40℃の乾燥機中で保存し、その状態を見たところ、比較例ではいずれも5日以内にクラックが生じたのに対し、実施例では10日経過してもクラックは観察されなかった。このことから、実施例に記載の本発明の可塑剤を使用したセラミックペーストからセラミックグリーンシートを作成することで得られるシートはクラックの発生がなく、剥離できるので保存安定性に優れていることがわかる。これは、可塑化効果が高く、揮発性の低い可塑剤を使用した効果である。
バインダ樹脂として、ポリビニルアセタール系樹脂を用いてセラミックペースト、導電ペースト、誘電ペーストを作成する際に好適な可塑化効果を示し、かつ適度な揮発性を持つポリビニルアセタール系樹脂用可塑剤として利用できる。
Claims (4)
- 請求項1記載のポリビニルアセタール系樹脂用可塑剤、ポリビニルアセタール系樹脂、セラミック粉末及び溶剤を含有することを特徴とするセラミックペースト。
- 請求項1記載のポリビニルアセタール系樹脂用可塑剤、ポリビニルアセタール系樹脂、導電性粉末及び溶剤を含有することを特徴とする導電ペースト。
- 請求項1記載のポリビニルアセタール系樹脂用可塑剤、ポリビニルアセタール系樹脂、誘電性粉末及び溶剤を含有することを特徴とする誘電ペースト。
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