JP4133158B2 - 変性ポリビニルアセタール樹脂 - Google Patents

変性ポリビニルアセタール樹脂 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、柔軟性、高湿度下における樹脂基材への接着性、耐熱性、熱分解性、耐湿性、強靱性に優れ、酸素透過度が低く、適度の接着性を有し、溶液にしたときに低粘度で、粘度の経時安定性に優れた変性ポリビニルアセタール樹脂、及び、それを用いた接着剤組成物、インク、塗料組成物、熱現像性感光材料、セラミックスグリーンシート用スラリー組成物、及び、セラミックスグリーンシートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂は、強靱性、造膜性、顔料等の無機・有機粉体等の分散性、塗布面への接着性等に優れていることから、例えば、インク、塗料、焼付け用エナメル、ウォッシュプライマー、ラッカー、分散剤、接着剤、セラミックスグリーンシート、熱現像性感光材料、水性インク受容層等のバインダー等の様々な用途で使用されている。
このようにポリビニルアセタール樹脂が様々な用途に使用される最も大きな理由は、ポリビニルアセタール樹脂中に水酸基が存在するため、その水素結合により強靱性を有するからであるが、その反面、水素結合のために柔軟性がやや乏しくなる。
【0003】
これに対して、例えば、特許文献1には、ポリビニルアセタール樹脂の側鎖に長鎖のグリコール系構造を有するユニットを導入することによりポリビニルアセタール樹脂の内部可塑化を図る技術が開示されている。しかし、長鎖の導入によりポリビニルアセタール樹脂の柔軟性は改善されるものの、溶剤に溶解した際の溶液粘度が高くなったり、溶液中での保存安定性が悪く経時的に粘度が上昇したりするという問題があった。
【0004】
また、特に近年では、環境保護の観点から芳香族系溶剤のトルエン、キシレン等を使用せずに、エタノール、プロパノール等のアルコール系の単独溶剤への溶解性に優れたポリビニルアセタール樹脂を使用する頻度が増している。環境保護の観点においては、自動車におけるVOC規制に見られるように、ハイソリッド化、水性化、粉体化の大きな三つの流れがある。特にハイソリッド化は他の2つに比べて設備投資が要らず、使用溶剤を少なくし、固形分濃度を高くするだけであり、性能を従来品から推測でき保証できるため、盛んに取り組みが行われている。ポリビニルアセタール樹脂を用いてハイソリッド化を実現する方法としては、固形分濃度、すなわちバインダー含有量を高くすることが考えられるが、通常、固形分濃度を高くすると溶液粘度が上昇し、溶液の経時粘度安定性が悪くなるという問題がある。
【0005】
これらの問題に対して、溶液粘度を低下させる方法としては、例えば、低重合度化や分子構造の変性等による方法が挙げられ、特許文献2には、70〜96モル%のケン化度をもつポリビニルアルコールを原料としたポリビニルブチラール樹脂を含む印刷インク及び塗料が開示されている。しかし、このポリビニルブチラール樹脂を含む溶液では、粘度は低くなるが、粘度の経時安定性、フィルムにしたときの柔軟性においては充分なものではなく、残存するアセチル基の量を抑制することにより、低粘度化、ハイソリッド化が実現できるとの記載はあるが、基材との接着性、耐湿性等のその他の性能についての記載もなかった。
【0006】
ポリビニルアセタール樹脂の用途の1つとして、インクや塗料のバインダーが挙げられる。
ポリビニルアセタール樹脂は、インクや塗料のバインダーとして用いられる場合には、包装材、特に高意匠性の食品包装材のプリントインクとして用いられることが非常に多い。このような食品包装材用インクには意匠性が求められるものの汎用性が高いため、例えば、最近注目を集めているような紫外線(UV)硬化等の特殊技術により印刷する方法よりも、溶剤系で塗工乾燥を行う方法が未だに主流である。また、印刷インクを用いて印刷された包装物が、直接口に触れる可能性があるため、使用溶剤・樹脂の量だけでなく種類も規制されている。そのなかで、ポリビニルアセタール樹脂が用いられるのは、それ自身が環境問題への影響が少なく、エタノールへの溶解性が優れているからである。
しかし、ポリビニルアセタール樹脂は、基材、特に樹脂フィルムへの接着性において若干劣り、特に冷蔵庫内から常温環境下に保管場所を変えた場合には、その結露によりインク自身が吸湿し、結果として基材とインクとが剥離する等の問題があった。
【0007】
また、食品の保証期間は、その基材フィルムの酸素透過度が高い程短くなる。これは空気中の酸素が基材フィルムを透過し、基材フィルム内部の食品を酸化劣化させるためであり、これに対して、例えば、塩化ビニリデン、エバール等の酸素透過度の低いフィルムを用いることができるが、これらのフィルムは価格的に非常に高いため、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系の安価な酸素透過度の高いフィルムが主に使用されているおり、インクとして使用されているポリビニルアセタール樹脂も、酸素、窒素、二酸化炭素、水蒸気等を透過しやすいものであるため、基材フィルムの酸素透過度が高くなり、食品の保証期間が短くなるという問題があった。
【0008】
また、ポリビニルアセタール樹脂の用途の1つとして、接着剤が挙げられる。
従来、ポリビニルアセタール樹脂と、フェノール樹脂、エポキシ樹脂又はメラミン樹脂等の熱硬化性樹脂とを主成分とする接着剤は、プリント基板用接着剤として広く用いられている。
プリント回路基板は、通常、銅箔、フェノール含浸紙及びこれらを接着する接着剤とから構成された積層板を用いて構成されており、銅張り積層板の表面の銅をエッチングすることにより所望の印刷回路が形成されたプリント基板を得ることができる。近年、各種の電子・電気機器の軽量化及び小型化に伴って、プリント回路基板では小型化及び印刷回路の高密度化が進展している。その結果、プリント回路基板に部品を実装する際のハンダ浴への浸漬時間が長くなっている。そのため、プリント回路基板を構成するための接着剤としては、従来よりも優れた耐熱性を示すものが要求されており、特に、高温下における銅箔の密着強度の向上すなわち銅箔の引き剥がし強度の向上、及び、ハンダ耐熱性の向上が強く望まれている。
【0009】
これに対して、特許文献3には、ポリビニルアセタール樹脂を混合アセタール化し、ポリビニルアセタール樹脂自身の耐熱性を高めたもの;特許文献4には、混合アセタール中に無水マレイン酸又はマレイン酸を導入することにより接着強度及び耐熱性を高めたもの;特許文献5には、全アセタール化部分の約85〜100重量%をガラス転移点の高いアセトアルデヒドによるアセタール化部分とすることにより耐熱性を高めたもの等が開示されている。しかし、ハンダ浴への浸漬時間の長時間化が著しいため、これらのポリビニルアセタール樹脂の有する耐熱性では、未だ不充分であった。
【0010】
また、最近では、特許文献6に開示されているように、多層プリント回路基板として、ガラスクロス等にエポキシ樹脂を含浸させたプリプレグに、接着剤付き銅箔を重ね合わせ、銅張り積層板の表面の銅をエッチングしたり、スルーホールを形成したりした後、更にその上部に接着剤付き銅箔を重ね、同様にエッチングしたり、スルーホールを形成したりすることで多層プリント回路基板を作製する方法が知られている。このとき用いられる接着剤としては、熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂を主成分とし、ポリビニルアセタール樹脂を添加したものが知られているが、この接着剤についても耐熱性の向上が強く望まれており、耐熱性が未だ不充分であった。
更に、ポリビニルアセタール樹脂は、その分子中に水酸基を有しているため、夏場等の湿度の高い時期に接着剤層が吸湿してしまい、その結果としてハンダ耐熱性が悪くなるという問題もあった。
【0011】
また、ポリビニルアセタール樹脂の用途の1つとして、熱現像性感光材料が挙げられる。
熱現像性感光材料は、主に脂肪酸の銀塩、有機還元剤、場合によっては少量の感光性ハロゲン化銀を高分子バインダー中に分散して得られる組成物を支持体上に塗工してなるものである。
従来から広範囲に用いられているハロゲン化銀材料は、その優れた写真特性により、より広範囲かつ高品質な素材として画像形成分野に利用されているが、現像及び定着が複雑でしかも処理工程が湿式であるため、処理が煩雑かつ多量の化学廃液を排出するという問題があった。これに対して、現像工程を熱処理で行う熱現像性感光材料が開発され、実用化されている。
【0012】
例えば、特許文献7には、有機銀塩、還元剤及び有機銀イオンに対して触媒的に接触しているハロゲン化銀からなる熱現像性感光材料が開示されており、例えば、紙、樹脂フィルム、金属箔、ガラス板等の支持体上に、ポリビニルブチラール、ポリメタクリル酸メチル、酢酸セルローズ、ポリ酢酸ビニル、酢酸プロピオン酸セルローズ、酢酸酪酸セルローズ等の造膜性結合材を塗布してなる熱現像性感光材料が開示されている。
【0013】
上記造膜性結合材としては、ポリビニルアセタール樹脂が最適であるが、ポリビニルアセタール樹脂の吸湿性及び残存する水分量によって、塗工した後の画像特性に、かぶり、階調不良、感度不足が生じたり、生フィルム及び画像形成後のフィルム保管時に経時変化等が生じたりすることがあった。更に、一般のポリビニルアセタール樹脂には種々の組成のものがあり、しかも製法上、微量の不純物を含んでいるため、これら不純物の影響により、調製したバインダー溶液が感光性を生じて着色したり、塗工した後の画像特性に、かぶり、階調不良、感度不足が生じたり、フィルムの生保存性不良等を生じたりすることがあった。
【0014】
これに対して、銀塩、還元剤、添加剤等の改善が図られてきた。例えば、特許文献8には、バインダーとしてポリビニルブチラール樹脂を用いており、独立した安定化剤及び安定化剤プレカーサ成分を含まずに、チオン化合物の銀塩を用いる技術が開示されている。しかし、バインダーの組成を特定することにより問題解決を図った技術は開示されていない。
【0015】
更に、熱現像性感光材料のうち熱現像式銀塩フィルムでは、従来のウェット式のゼラチンを使用したX線感光フィルムに比べて画像特性、特に画像濃度、画像/階調部の鮮明度がやや劣るためその向上が望まれているが、そのためには、加熱時の銀の核成長を厳しくコントロールする必要がある。
【0016】
また、ポリビニルアセタール樹脂の用途の1つとして、積層セラミックスコンデンサが挙げられる。
積層セラミックスコンデンサを製造する場合には、一般に次のような工程を経て製造される。まず、セラミックス粉末を有機溶剤中に分散した分散液にバインダー樹脂と可塑剤とを加え、ボールミル等の混合装置により均一に混合し脱泡してスラリー組成物を調製する。次いで、このスラリー組成物をドクターブレード、3本ロールリバースコーター等を用いて、剥離性の支持体上に塗布し、これを加熱して乾燥した後、支持体から剥離してグリーンシートを得る。得られたグリーンシート上に内部電極となる導電ペーストをスクリーン印刷等により塗布したものを複数枚積み重ね、加熱圧着して積層体を得る。それを所定の形状に切断し、焼成して得たセラミックス焼結体の端面に外部電極を焼結することで積層セラミックスコンデンサが得られる。
【0017】
このようなグリーンシートには、ハンドリング性を良くするために、ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂が用いられており、例えば、特許文献9、特許文献10、特許文献11及び特許文献12等において開示されている。
【0018】
近年、電子機器の小型化に伴い、積層セラミックスコンデンサは小型大容量化が求められている。その方策として、従来のものよりも微細な粒子径(例えば、0.3μm以下)のセラミックス粉末を用いて得られる薄層(例えば、3μm以下)のグリーンシートを500層以上積み重ねることが試みられている。
【0019】
しかし、セラミックス粉末の粒子径を小さくすると、表面積が増えるのでバインダーの添加量を増やす必要があり、そのためにスラリーの粘度が高くハンドリングが困難になるばかりでなく、セラミックス粉末が凝集し易くなり、経時的に粘度が上昇するという問題があった。
【0020】
また、このような薄層のグリーンシートを500層以上に積み重ねるためには、熱圧着時の接着性、支持体からの剥離性及びグリーンシートの強度が非常に重要となる。例えば、積層時の熱圧着性を向上させるためには、アセタール化度が高く水酸基量の少ない又は重合度の低いポリビニルアセタール樹脂を使用することが有効であるが、支持体からグリーンシートが剥離しにくくなったり、グリーンシートが柔らかく、剥離工程での剥離に耐え得るだけの強度が得られなかったりすることがあり、結果として、グリーンシートが破れたり、異常に伸びてしまうという問題があった。また、グリーンシートの支持体からの剥離性及びグリーンシートの強度を向上させるためには、アセタール化度が低く水酸基量の多い又は重合度の高いポリビニルアセタール樹脂を使用することが有効であるが、熱圧着時の接着性が低く、圧着後にグリーンシートが積層面から剥離したり、重合度の高いポリビニルアセタール樹脂を使用した場合はスラリーの粘度が高くなってスラリー化が困難となったりするという問題があった。
【0021】
これに対して、可塑剤の添加量を増加させることでグリーンシートの熱圧着性を改善することも考えられるが、可塑剤を過剰に添加すると、焼結時の収縮率が悪くなったり、グリーンシートとして保管した場合に可塑剤が経時的にブリードアウトしたりするため、グリーンシートの保存安定性に問題があった。
【0022】
また、積層枚数が多くなると、脱バインダー工程でのバインダーの分解が完全に進み難くグリーンシート中にバインダーの分解生成物が残分として残り、結果として電気特性を悪化させることがあった。また、低温焼結基板(LTCC)等のガラスパウダーを使用し、電極として銅配線を使用する基板では、500℃以下で完全にバインダーが熱分解することが必要であり、熱分解が完全でない場合は、電気特性を悪化させることがあった。ここで、ポリビニルアセタール樹脂は熱分解性に乏しく灰分が残るという問題があった。
【0023】
更に、グリーンシートの薄層化が進んだ積層セラミックスコンデンサでは、グリーンシートの外部環境、特に湿気により影響を受けやすくなっており、吸湿性のあるバインダーを使用した場合には、経時的にシートの強度や柔軟性が変わり、良品化率が下がるといった問題があった。
【0024】
このように、変性ポリビニルアセタール樹脂は、柔軟性の改善及び環境保護のための高ソリッド化に対応して溶液にしたときの粘度を低くすること、及び、粘度の経時安定性を改善することが求められていた。また、インクや塗料のバインダーとして用いられる場合には、特に高湿度下における樹脂基材への接着性の向上、及び、食品の保証期間を延ばすために酸素透過度を低くすることが求められていた。また、プリント基板用接着剤に用いられる場合には、ハンダ耐熱性及び高温下における金属箔の引き剥がし強度等の耐熱性の向上、及び、高湿度下におけるハンダ耐熱性の向上が求められていた。また、熱現像性感光材料に用いられる場合には、耐湿性を向上し、水分量を減らすことにより、生フィルムの保存性、画像形成後のフィルムの保存性、及び、画像特性を向上させることが求められていた。また、セラミックスグリーンシート用スラリー組成物に用いられる場合には、熱分解性及び耐湿性の向上が求められており、グリーンシートにしたときに、熱圧着時の接着性とシート強度及び支持体からの剥離性とを両立できるバランスのよい接着性を有することが求められていた。
【0025】
【特許文献1】
特開平6−263521号公報
【特許文献2】
特開平11−349889号公報
【特許文献3】
特開昭58−3802号公報
【特許文献4】
特開昭58−98307号公報
【特許文献5】
特開昭63−301208号公報
【特許文献6】
特開平9−504970号公報
【特許文献7】
特公昭43−4924号公報
【特許文献8】
特昭開49−52626号公報
【特許文献9】
特開平3−197511号公報
【特許文献10】
特開平3−200805号公報
【特許文献11】
特開平4ー175261号公報
【特許文献12】
特開平4−178404号公報
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、柔軟性、高湿度下における樹脂基材への接着性、耐熱性、熱分解性、耐湿性、強靱性に優れ、酸素透過度が低く、適度の接着性を有し、溶液にしたときに低粘度で、粘度の経時安定性に優れた変性ポリビニルアセタール樹脂、及び、それを用いた接着剤組成物、インク、塗料組成物、熱現像性感光材料、セラミックスグリーンシート用スラリー組成物、及び、セラミックスグリーンシートを提供することを目的とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】
本発明1は、主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有し、かつ、エチレン含有率が1〜20モル%、ケン化度が80モル%以上である変性ポリビニルアルコールをアセタール化してなる変性ポリビニルアセタール樹脂であって、主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有する変性ポリビニルアセタール樹脂である。
【0028】
本発明2は、少なくとも、主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有する変性ポリビニルアルコールを含有し、かつ、全体としてのエチレン含有率が1〜20モル%、全体としてのケン化度が80モル%以上であるポリビニルアルコール混合物をアセタール化してなる変性ポリビニルアセタール樹脂であって、主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有する変性ポリビニルアセタール樹脂である。
【0029】
本発明3は、本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂を用いてなるインクである。
本発明4は、本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂を用いてなる塗料である。
本発明5は、本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂と、フェノール樹脂、エポキシ樹脂及びメラミン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂とを含有する接着剤である。
本発明6は、本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂を用いてなる熱現像性感光材料である。
本発明7は、本発明1又は本発明2の変性ビニルアセタール樹脂、セラミックス粉末、可塑剤、及び、有機溶剤を含有するセラミックスグリーンシート用スラリー組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0030】
本発明1の変性ポリビニルアセタール樹脂は、変性ポリビニルアルコールをアセタール化してなるものであって、主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有するものである。主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有することにより、溶液にしたときの粘度を低減することができ、粘度の経時安定性を得る効果、及び、柔軟性、耐熱性、接着性、耐湿性、熱分解性、溶剤溶解性等を向上させる効果が得られる。
【0031】
なお、本明細書において、主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有するとは、分子内のエチレンユニットの全てが一体となって結合しているのではなく、分子内のエチレンユニットが主鎖中に2以上に分かれて点在していることを意味する。
【0032】
また、本発明1の変性ポリビニルアセタール樹脂が主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有していることは、例えば、示差走査熱量計により測定されるガラス転移温度や有機溶剤への溶解性により確認することができる。上記ガラス転移温度の測定において、主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有している場合には、ガラス転移温度は1つのみ現れ、エチレンユニットがブロックで存在している場合には、ガラス転移温度は2つ現れる。上記有機溶剤への溶解性の確認において、主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有している場合には、エタノール/トルエン=1/1(重量比)の混合液、メチルエチルケトン等の有機溶剤に完全に溶解する。エチレンユニットがブロックで存在している場合には、有機溶剤への溶解性に劣り、未溶解物が発生する。
【0033】
上記変性ポリビニルアルコールとしては主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有するものであれば特に限定されず、例えば、ビニルエステルとエチレンとの共重合体をケン化したもの、ビニルエステルとエチレンとエチレン性不飽和単量体とが共重合されてなる共重合体をケン化したもの、末端変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。上記変性ポリビニルアルコールが主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有することにより、アセタール化反応を行うのに必要な水溶性が向上し、アセタール化して得られる本発明1の変性ポリビニルアセタール樹脂は、主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有するものとなる。
【0034】
なお、上記変性ポリビニルアルコールの主鎖におけるエチレンユニットのランダム性については、例えば、共重合の際の、重合開始剤、重合温度、モノマーの添加方法、重合時間等を調整することにより制御することができる。また、変性ポリビニルアルコールが主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有していることは、例えば、水への溶解性により確認することができる。変性ポリビニルアルコールが主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有している場合には、水に完全に溶解し、エチレンユニットがブロックで存在している場合には、水への溶解性に劣り、未溶解物が発生する。
【0035】
上記ビニルエステルとしては特に限定されず、例えば、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等が挙げられ、なかでも、酢酸ビニルが経済的に好ましい。
【0036】
上記エチレン性不飽和単量体としては特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フタル酸、無水フタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びそのナトリウム塩、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0037】
上記末端変性ポリビニルアルコールは、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸等のチオール酸等のチオール化合物の存在下で、酢酸ビニル等のビニルエステル系単量体とエチレンとが共重合されてなる共重合体をケン化したものである。
【0038】
上記ビニルエステルとエチレンとエチレン性不飽和単量体とが共重合されてなる共重合体を作製する際に配合されるエチレン性不飽和単量体の配合量は、2.0モル%未満であることが好ましい。エチレン性不飽和単量体に由来するユニットを多く含むと、充分な水溶性を有しにくくなったり、本発明1の変性ポリビニルアセタール樹脂を溶液にしたときの粘度の経時安定性が悪くなったりすることがある。なかでも、上記変性ポリビニルアルコールとしては、エチレン性不飽和単量体に由来するユニットを含まないものが好ましい。
【0039】
上記変性ポリビニルアルコールは、エチレン含有率が1〜20モル%である。1モル%未満であると、本発明1の変性ポリビニルアセタール樹脂の柔軟性及び耐熱性が低下し、溶液にしたときに粘度を低減する効果が小さく、その経時安定性が悪くなり、接着性、耐湿性及び熱分解性の向上効果を充分に得ることができない。20モル%を超えると、変性ポリビニルアルコールの水溶性が低下するためアセタール化反応が困難になったり、得られる本発明1の変性ポリビニルアセタール樹脂の溶剤溶解性が悪くなったり、溶液にしたときの粘度の経時安定性が悪くなったりする。なお、本明細書において、エチレン含有率は、変性ポリビニルアルコールを構成する単量体単位の全数に対するエチレン単位の数の割合を表す。
上記変性ポリビニルアルコールのエチレン含有率が1〜20モル%であることにより、アセタール化して得られる本発明1の変性ポリビニルアセタール樹脂のエチレン含有率も1〜20モル%となる。
【0040】
上記変性ポリビニルアルコールは、ケン化度が80モル%以上である。80モル%未満であると、変性ポリビニルアルコールの水溶性が低下するためアセタール化反応が困難になり、水酸基量が少なくなることによりアセタール化反応自体も困難になる。
【0041】
上記アセタール化は、上記変性ポリビニルアルコールの水溶液にアルデヒドを添加し、公知の方法により行うことができる。
上記アルデヒドとしては特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドを含む)、アセトアルデヒド(パラアセトアルデヒドを含む)、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。なかでも、アセトアルデヒド及び/又はブチルアルデヒドが好適に用いられる。これらのアルデヒドは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0042】
本発明1の変性ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、アセタール化が1種のアルデヒドで行われた場合及びアセタール化が2種以上混合したアルデヒドで行われた場合のいずれの場合であっても、40〜80モル%であることが好ましい。40モル%未満であると、本発明1の変性ポリビニルアセタール樹脂は水溶性となり、有機溶剤に不溶となる。80モル%を超えると、残存水酸基数が少なくなり本発明1の変性ポリビニルアセタール樹脂の強靱性が損なわれることがある。なお、上記アセタール化度には、本発明1の変性ポリビニルアセタール樹脂の用途に応じて、より好適な範囲を選定してもよい。
なお、本明細書において、アセタール化度は、アセタール化により2つの水酸基から1つのアセタール基が形成されることから、アセタール基を2つの水酸基として数えて計算したときのアセタール化度(モル%)である。
【0043】
本発明1の変性ポリビニルアセタール樹脂の重合度は特に限定されないが、50〜3500であることが好ましい。この範囲であれば、本発明1の変性ポリビニルアセタール樹脂及び上記変性ポリビニルアルコールを生産性よく製造できる。より好ましくは200〜3500である。なお、上記重合度には、本発明1の変性ポリビニルアセタール樹脂の用途に応じて、より好適な範囲を選定してもよい。
【0044】
本発明1の変性ポリビニルアセタール樹脂の水分量は、2.5重量%以下であることが好ましい。2.5重量%を超えると、後述する本発明6の熱現像性感光材料等に用いられた場合に充分な特性を発現できないことがある。上記水分量を2.5重量%以下にする方法としては、アセタール化後の水又は水/アルコールの混合溶液等による洗浄の後に、乾燥により規定の量以下までに除去する方法等が挙げられる。より好ましくは2.0重量%以下である。
【0045】
本発明1の変性ポリビニルアセタール樹脂のアルデヒド量は、100ppm以下であることが好ましい。100ppmを超えると、後述する本発明6の熱現像性感光材料に用いられた場合に充分な特性を発現できないことがある。上記アルデヒド量を100ppm以下にする方法としては、水又は水/アルコールの混合溶液等による洗浄操作にて精製して規定量以下まで除去する方法等が挙げられる。より好ましくは50ppm以下、更に好ましくは10ppm以下である。
【0046】
本発明1の変性ポリビニルアセタール樹脂を製造する具体的方法としては、例えば、変性ポリビニルアルコールを溶媒に溶解させ、酸触媒の存在下で、所望のアセタール化度を与えるよう所定量のアルデヒドと反応させた後、アルカリ又は停止剤によりアセタール化反応を停止させ、水洗、乾燥する方法等が挙げられる。
【0047】
上記溶媒としては特に限定されず、例えば、水、アルコール、水/アルコール混合溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。
上記酸触媒としては特に限定されず、有機酸、無機酸のどちらでも使用可能であり、例えば、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸等が挙げられる。
上記アルカリとしては特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
上記停止剤としては特に限定されず、例えば、エチレンオキサイド等のアルキレンオキサイド、エチレングリコールジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0048】
本発明1の変性ポリビニルアセタール樹脂は、主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有し、所定のエチレン含有率及びケン化度を有する変性ポリビニルアルコールをアセタール化したものであり、含有される水酸基の水素結合力が弱まっていることから、溶液にしたときの粘度が低く、その経時安定性に優れ、かつ、柔軟性に優れた塗膜を形成することができる。このような本発明1の変性ポリビニルアセタール樹脂は、セラミックス、インク、塗料、接着剤、特殊コーティング、各種バインダー等の分野に効果的に使用できる。
【0049】
本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコール混合物をアセタール化してなるものであって、主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有するものである。主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有することにより、溶液にしたときの粘度を低減することができ、粘度の経時安定性を得る効果、及び、柔軟性、耐熱性、接着性、耐湿性、熱分解性、溶剤溶解性等を向上させる効果が得られる。なお、本発明2の主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有する変性ポリビニルアセタール樹脂とは、主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有する変性ポリビニルアセタールを含有する変性ポリビニルアセタール樹脂であることを意味し、未変性ポリビニルアセタールを一部に含有していてもよい。また、本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂における変性ポリビニルアセタールが主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有していることは、例えば、変性ポリビニルアセタールの示差走査熱量計により測定されるガラス転移温度、変性ポリビニルアセタールの有機溶剤への溶解性により確認することができる。上記ガラス転移温度の測定において、主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有している場合には、ガラス転移温度は1つのみ現れ、エチレンユニットがブロックで存在している場合には、ガラス転移温度は2つ現れる。上記有機溶剤への溶解性の確認において、主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有している場合には、エタノール/トルエン=1/1(重量比)の混合液、メチルエチルケトン等の有機溶剤に完全に溶解する。エチレンユニットがブロックで存在している場合には、有機溶剤への溶解性に劣り、未溶解物が発生する。
【0050】
上記ポリビニルアルコール混合物は、複数種のポリビニルアルコールからなるものであり、少なくとも、主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有する変性ポリビニルアルコールを含有し、未変性ポリビニルアルコールを含有していてもよい。
【0051】
本発明2における上記変性ポリビニルアルコールとしては主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有するものであれば特に限定されず、例えば、ビニルエステルとエチレンとの共重合体をケン化したもの、ビニルエステルとエチレンとエチレン性不飽和単量体とが共重合されてなる共重合体をケン化したもの、末端変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。本発明2における上記変性ポリビニルアルコールが主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有することにより、アセタール化反応を行うのに必要な水溶性が向上し、アセタール化して得られる本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂は、主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有するものとなる。なお、本発明2における上記変性ポリビニルアルコールの主鎖におけるエチレンユニットのランダム性については、例えば、共重合の際の、重合開始剤、重合温度、モノマーの添加方法、重合時間等を調整することにより制御することができる。
【0052】
上記ポリビニルアルコール混合物は、全体としてのエチレン含有率が1〜20モル%である。1モル%未満であると、本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂の柔軟性及び耐熱性が低下し、溶液にしたときに粘度を低減する効果が小さく、その経時安定性が悪くなり、接着性、耐湿性及び熱分解性の向上効果を充分に得ることができない。20モル%を超えると、ポリビニルアルコール混合物の水溶性が低下するためアセタール化反応が困難になったり、得られる本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂の溶剤溶解性が悪くなったり、溶液にしたときの粘度の経時安定性が悪くなったりする。
【0053】
なお、本明細書において、上記ポリビニルアルコール混合物の全体としてのエチレン含有率(モル%)は、上記ポリビニルアルコール混合物を構成する各ポリビニルアルコールのエチレン含有率に重量比を掛け、その総和を求めたものである。ここで、未変性ポリビニルアルコールのエチレン含有率は0モル%とする。例えば、変性ポリビニルアルコールAと変性ポリビニルアルコールBとからなるポリビニルアルコール混合物については、下記式(1)より全体としてのエチレン含有率(モル%)が求められる。
【0054】
【数1】
Figure 0004133158
【0055】
式(1)中、Xは、ポリビニルアルコール混合物の全体としてのエチレン含有率を表し、Aは、ポリビニルアルコールAの重量を表し、Aは、ポリビニルアルコールAのエチレン含有率を表し、Bは、ポリビニルアルコールBの重量を表し、Bは、ポリビニルアルコールBのエチレン含有率を表す。
【0056】
また、本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂の全体としてのエチレン含有率(モル%)についても同様の方法により求めることができるが、これは、アセタール化する前のポリビニルアルコール混合物の値と同じであるので、変性ポリビニルアルコール混合物を構成するポリビニルアルコールのそれぞれについてエチレン含有率がわかっている場合はこれを用いることができる。また、ポリビニルアルコール混合物の全体としてのエチレン含有率が1〜20モル%であることにより、アセタール化して得られる本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂の全体としてのエチレン含有率も1〜20モル%となる。
【0057】
上記ポリビニルアルコール混合物は、全体としてのケン化度が80モル%以上である。80モル%未満であると、ポリビニルアルコール混合物の水溶性が低下するためアセタール化反応が困難になり、水酸基量が少なくなることによりアセタール化反応自体も困難になる。
【0058】
なお、本明細書において、上記ポリビニルアルコール混合物の全体としてのケン化度(モル%)は、上記ポリビニルアルコール混合物を構成する各ポリビニルアルコールのケン化度に重量比を掛け、その総和を求めたものである。例えば、変性ポリビニルアルコールAと変性ポリビニルアルコールBとからなるポリビニルアルコール混合物については、下記式(2)より全体としてのケン化度(モル%)が求められる。
【0059】
【数2】
Figure 0004133158
【0060】
式(2)中、Yは、ポリビニルアルコール混合物の全体としてのケン化度を表し、Aは、ポリビニルアルコールAの重量を表し、Aは、ポリビニルアルコールAのケン化度を表し、Bは、ポリビニルアルコールBの重量を表し、Bは、ポリビニルアルコールBのケン化度を表す。
【0061】
また、本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂の全体としてのケン化度(モル%)についても同様の方法により求めることができるが、これは、アセタール化する前のポリビニルアルコール混合物の値と同じであるので、変性ポリビニルアルコール混合物を構成するポリビニルアルコールのそれぞれについてケン化度がわかっている場合はこれを用いることができる。また、ポリビニルアルコール混合物の全体としてのケン化度が80モル%以上であることにより、アセタール化して得られる本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂の全体としてのケン化度も80モル%以上となる。
【0062】
本発明2における上記アセタール化は、上記ポリビニルアルコール混合物の水溶液にアルデヒドを添加し、公知の方法により行うことができる。
本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、アセタール化が1種のアルデヒドで行われた場合及びアセタール化が2種以上混合したアルデヒドで行われた場合のいずれの場合であっても、40〜80モル%であることが好ましい。40モル%未満であると、本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂は水溶性となり、有機溶剤に不溶となる。80モル%を超えると、残存水酸基数が少なくなり本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂の強靱性が損なわれることがある。なお、上記アセタール化度には、本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂の用途に応じて、より好適な範囲を選定してもよい。
【0063】
本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂の重合度は特に限定されないが、50〜3500であることが好ましい。この範囲であれば、本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂及び変性ポリビニルアルコールを生産性よく製造できる。より好ましくは200〜3500である。なお、上記重合度には、本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂の用途に応じて、より好適な範囲を選定してもよい。また、本明細書において、本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂の重合度は、本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂を構成する各成分の重合度に重量比を掛け、その総和を求めたものである。
【0064】
本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂の水分量は、2.5重量%以下であることが好ましい。2.5重量%を超えると、後述する本発明6の熱現像性感光材料等に用いられた場合に充分な特性を発現できないことがある。上記水分量を2.5重量%以下にする方法としては、アセタール化後の水又は水/アルコールの混合溶液等による洗浄の後に、乾燥により規定の量以下までに除去する方法等が挙げられる。より好ましくは2.0重量%以下である。
【0065】
本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂のアルデヒド量は、100ppm以下であることが好ましい。100ppmを超えると、後述する本発明6の熱現像性感光材料に用いられた場合に充分な特性を発現できないことがある。上記アルデヒド量を100ppm以下にする方法としては、水又は水/アルコールの混合溶液等による洗浄操作にて精製して規定量以下まで除去する方法等が挙げられる。より好ましくは50ppm以下、更に好ましくは10ppm以下である。
【0066】
本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂を製造する具体的方法としては、例えば、ポリビニルアルコール混合物を溶媒に溶解させ、酸触媒の存在下で、所望のアセタール化度を与えるよう所定量のアルデヒドと反応させた後、アルカリ又は停止剤によりアセタール化反応を停止させ、水洗、乾燥する方法等が挙げられる。
【0067】
本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂は、主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有し、所定のエチレン含有率及びケン化度を有するポリビニルアルコール混合物をアセタール化したものであり、含有される水酸基の水素結合力が弱まっていることから、溶液にしたときの粘度が低く、その経時安定性に優れ、かつ、柔軟性に優れた塗膜を形成することができるものである。このような本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂は、セラミックス、インク、塗料、接着剤、特殊コーティング、各種バインダー等の分野に効果的に使用できる。
【0068】
本発明3は、本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂を用いてなるインクである。
本発明3のインクに用いられる場合における本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、アセタール化が1種のアルデヒドで行われた場合及びアセタール化が2種以上混合したアルデヒドで行われた場合のいずれの場合であっても、60〜75モル%であることがより好ましい。60モル%未満であると、本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂の親水性が増大して耐水性が充分でないことがある。75モル%を超えると、残存水酸基数が少なくなり本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂のアルコール系溶剤への溶解性が充分でないことがある。
【0069】
本発明3のインクに用いられる場合における本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂の重合度は特に限定されないが、50〜3500であることが好ましい。50未満であると、原料であるポリビニルアルコールの生産が難しくなることがある。3500を超えると、本発明3のインクの溶液粘度が高くなりすぎ、分散性が悪く、均一なインクが得られない。より好ましくは50〜1000である。
【0070】
本発明3のインクは、本発明1又は本発明2のポリビニルアセタール樹脂、顔料、有機溶剤等を配合し、これを常法により混合することによって調製することができる。
【0071】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂の配合量は、本発明3のインク全量に対して5〜25重量%であることが好ましい。5重量%未満であると、インクの塗膜を形成した場合に造膜性に乏しくなることがある。25重量%を超えると、溶液粘度が高くなり過ぎ顔料の分散性が悪くなることがある。より好ましくは10〜20重量%である。
【0072】
上記顔料としては特に限定されず、例えば、無機系顔料又は有機系顔料が挙げられる。上記無機系顔料としては特に限定されず、例えば、酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。上記有機系顔料としては特に限定されず、例えば、ジアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料等が挙げられる。
【0073】
上記顔料の配合量は、本発明3のインク全量に対して、濃縮インクとしては15〜30重量%が好ましく、希釈されたインク製品としては10〜15重量%が好ましい。10重量%未満では、塗布後のインク濃度が低くなり、目的の色味をだすことができないことがある、30重量%を超えると、顔料を分散させることができずに凝集することがある。
【0074】
上記有機溶剤としては、本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂を溶解し、本発明3のインクに適度な混練性を与えるものであれば特に限定されず、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類等が挙げられ、なかでも、アルコール系の溶剤が環境保護の観点から好ましい。これらの有機溶剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記有機溶剤の配合量は、本発明3のインク全量に対して60〜85重量%であることが好ましい。
【0075】
本発明3のインクには、必要に応じて、更に接着促進剤、遅延剤、可塑剤、充填剤、ワックス、相溶化剤、界面活性剤、分散剤、粘着性付与剤等が配合されてもよい。
【0076】
本発明3のインクは、本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂を用いることにより、ハイソリッド化しても粘度の経時安定性が優れているので、長期間保管しても問題なく使用できる。また、本発明3のインクは、樹脂基材への接着性及び耐湿性に優れ、高湿度環境下での樹脂基材への接着性に優れているので、アイスクリーム、チョコレート等の冷蔵で保管する食品の包装材料の印刷に有効に使用でき、更にガスバリア性に優れ酸素透過度が低いので、食品の保証期間を延ばすこともできる。
【0077】
本発明4は、本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂を用いてなる塗料である。
本発明4の塗料に用いられる場合における本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、アセタール化が1種のアルデヒドで行われた場合及びアセタール化が2種以上混合したアルデヒドで行われた場合のいずれの場合であっても、60〜75モル%であることがより好ましい。60モル%未満であると、本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂の親水性が増大して耐水性が充分でないことがある。75モル%を超えると、残存水酸基数が少なくなり本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂のアルコール系溶剤への溶解性が充分でないことがある。
【0078】
本発明4の塗料に用いられる場合における本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂の重合度は特に限定されないが、50〜3500であることが好ましい。50未満であると、原料であるポリビニルアルコールの生産が難しくなることがある。3500を超えると、本発明4の塗料の溶液粘度が高くなりすぎ、分散性が悪く、均一なインクが得られない。より好ましくは50〜1000である。
【0079】
本発明4の塗料は、本発明1又は本発明2のポリビニルアセタール樹脂、顔料、有機溶剤等を配合し、これを常法により混合することによって調製することができる。
【0080】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂の配合量は、本発明4の塗料全量に対して5〜25重量%であることが好ましい。5重量%未満であると、塗料の塗膜を形成した場合に造膜性に乏しくなることがある。25重量%を超えると、溶液粘度が高くなり過ぎ顔料の分散性が悪くなることがある。より好ましくは10〜20重量%である。
【0081】
本発明4における上記顔料としては特に限定されず、例えば、無機系顔料又は有機系顔料が挙げられ、本発明3のインクにおける顔料と同様のものを用いることができる。
上記顔料の配合量は、本発明4の塗料全量に対して、濃縮塗料としては15〜30重量%が好ましく、希釈された塗料製品としては10〜15重量%が好ましい。10重量%未満では、塗布後の塗料濃度が低くなり、目的の色味をだすことができないことがある、30重量%を超えると、顔料を分散させることができずに凝集することがある。
【0082】
本発明4の塗料における上記有機溶剤としては、本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂を溶解し、本発明4の塗料に適度な混練性を与えるものであれば特に限定されず、例えば、本発明3のインクにおける有機溶剤と同様のものを用いることができ、なかでも、アルコール系の溶剤が環境保護の観点から好ましい。これらの有機溶剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記有機溶剤の配合量は、本発明4の塗料全量に対して60〜85重量%であることが好ましい。
【0083】
本発明4の塗料には、必要に応じて、更に接着促進剤、遅延剤、可塑剤、充填剤、ワックス、相溶化剤、界面活性剤、分散剤、粘着性付与剤等が配合されてもよい。
【0084】
本発明4の塗料は、本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂を用いることにより、ハイソリッド化しても粘度の経時安定性が優れているので、長期間保管しても問題なく使用できる。また、本発明4の塗料は、樹脂基材への接着性及び耐湿性に優れ、高湿度環境下での樹脂基材への接着性に優れているので、アイスクリーム、チョコレート等の冷蔵で保管する食品の包装材料の印刷に有効に使用でき、更にガスバリア性に優れ酸素透過度が低いので、食品の保証期間を延ばすこともできる。
【0085】
本発明5は、本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂と、フェノール樹脂、エポキシ樹脂及びメラミン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂とを含有する接着剤である。
本発明5の接着剤に用いられる場合における本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、アセタール化が1種のアルデヒドで行われた場合及びアセタール化が2種以上混合したアルデヒドで行われた場合のいずれの場合であっても、60〜80モル%であることがより好ましい。60モル%未満であると、本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂の親水性が増大して耐水性が充分でないことがある。80モル%を超えると、残存水酸基数が少なくなり本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂の強靱性が損なわれたり、熱硬化性樹脂との反応性が低下したりすることがある。
【0086】
本発明5の接着剤に用いられる場合における本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂の重合度は特に限定されないが、1000〜3500であることがより好ましい。1000未満であると、接着後の引き剥がし強度が低下することがあり、3500を超えると、接着剤溶液の粘度が高くなりすぎるため塗工性が悪く、均一な接着剤組成物を得ることができない。更に好ましくは1500〜3000である。
【0087】
本発明5の接着剤における本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂と上記熱硬化性樹脂との配合比は、重量比で、3:97〜70:30であることが好ましい。本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂の配合比が3未満であると、銅箔への接着性が低下することがあり、70を超えると、耐熱性が悪くなることがある。なかでも、上記熱硬化性樹脂の主成分がフェノール樹脂及び/又はメラミン樹脂である場合には、重量比で、30:70〜70:30であることがより好ましく、上記熱硬化性樹脂の主成分がエポキシ樹脂である場合には、重量比で、3:97〜30:70であることがより好ましい。
【0088】
本発明5の接着剤を調製するのに用いられる溶剤としては特に限定されず、例えば、アセトンメチルエチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール及びブタノール等のアルコール類;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類等が適宜用いられる。
【0089】
本発明5の接着剤は、耐熱性の向上等の目的に応じて、上記以外の熱硬化性樹脂、硬化剤、酸化防止剤、消泡剤、帯電防止剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0090】
本発明5の接着剤は、本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂を含有することにより、本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂が熱硬化性樹脂との反応性が高く、吸湿性に優れているため、耐熱性及び接着強度に優れたものであり、特に耐熱接着強度に優れたものである。本発明5の接着剤は、例えば、プリント回路基板の積層板の接着剤として用いれば、耐熱性、特にハンダ耐熱性及び引き剥がし強度を大幅に改善することができ、得られた接着剤付き銅箔は、高湿度の環境下に長時間放置されても、ハンダ耐熱性及び引き剥がし強度に優れたものとなる。
【0091】
本発明6は、本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂を用いてなる熱現像性感光材料である。
本発明6の熱現像性感光材料に用いられる場合における本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂は、アセトアルデヒド及び/又はブチルアルデヒドによりアセタール化されたものであることが特に好ましく、これにより、本発明6の熱現像性感光材料は、画像特性のバランスが取りやすいものとなる。
【0092】
本発明6の熱現像性感光材料に用いられる場合における本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、アセタール化が1種のアルデヒドで行われた場合及びアセタール化が2種以上混合したアルデヒドで行われた場合のいずれの場合であっても、65〜80モル%であることがより好ましい。65モル%未満であると、本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂の水酸基量が多いために親水性のバランスが取りにくくなり、画像形成後のフィルム保存時に有機酸が結晶物質を作り、塗膜表面が白っぽくなる等の問題を生じることがある。80モル%を超えると、残存水酸基数が少なくなり本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂の強靱性が損なわれて塗膜強度が低下したり、ハロゲン化銀の分散性が悪くなって画像特性等が悪くなったりすることがある。
【0093】
本発明6の熱現像性感光材料に用いられる場合における本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂の重合度は特に限定されないが、200〜3000であることがより好ましい。更に好ましくは、本発明6の熱現像性感光材料に用いられる銀塩の分散性、塗膜強度、塗工性等のバランスを取りやすい200〜1000である。
【0094】
本発明6の熱現像性感光材料に用いられる場合における本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂の残存アセチル基の量は、25モル%以下であることが好ましい。25モル%を超えると、得られる感光性フィルム同士のブロッキングが生じたり、画像が鮮明でなくなったりすることがある。より好ましくは15モル%以下である。
【0095】
本発明6の熱現像性感光材料に用いられる場合における本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂の水分量は、2.5重量%以下であることが好ましい。2.5重量%を超えると、塗工溶液のポットライフが低下したり、塗膜強度を向上するために添加される架橋剤、例えば、イソシアナト基を含有する化合物と反応して充分な塗膜強度が得られなかったり、水と反応することを見込んで架橋剤の添加量を増やした際にかぶり等の原因になったりすることがある。上記水分量を2.5重量%以下にする方法としては、アセタール化後の水又は水/アルコールの混合溶液等による洗浄の後に、乾燥により規定の量以下までに除去する方法等が挙げられる。より好ましくは2.0重量%以下である。
【0096】
本発明6の熱現像性感光材料に用いられる場合における本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂のアルデヒド量は、100ppm以下であることが好ましい。100ppmを超えると、塗工溶液中に含まれる還元剤によりアルデヒドが還元され、塗工溶液の保存性を低下させ、フィルムの生保存性の低下、かぶり等の原因になることがある。上記アルデヒド量を100ppm以下にする方法としては、水又は水/アルコールの混合溶液等による洗浄操作にて精製して規定量以下まで除去する方法等が挙げられる。より好ましくは50ppm以下、更に好ましくは10ppm以下である。
【0097】
なお、本発明6の熱現像性感光材料に用いられる場合における本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂の製造においては、ヒンダードフェノール系、ビスフェノール系及びリン酸系等の酸化防止剤は使用しないことが好ましい。通常、変性ポリビニルアルコールとアルデヒドとのアセタール化反応においては、アルデヒドの酸化防止のため、又は、得られる変性ポリビニルアセタール樹脂の酸化防止及び耐熱性向上のために、反応系又は樹脂系に酸化防止剤が添加されるが、上記酸化防止剤を使用すると、本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂中に残存し、塗工溶液のポットライフの低下、生フィルムの生保存性の低下を引き起こし、かぶりや画像/階調部の鮮明性が損なわれることがある。
【0098】
本発明6の熱現像性感光材料の配合は、本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂を用いること以外は、従来の熱現像性感光材料の配合と変わらず、例えば、本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂に、有機銀塩、還元剤、必要に応じて少量の感光性ハロゲン化銀又はハロゲン化銀形成成分、架橋剤、増感剤等が配合され、銀により黒色画像を形成させる場合には更に色調剤が配合されてもよく、カラー画像を形成させる場合には更にカラーカプラー、ロイコ染料等が配合されてもよい。
【0099】
本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂の配合量は、重量比で、有機銀塩に対して1:10〜10:1であることが好ましく、より好ましくは1:5〜5:1である。
【0100】
上記有機銀塩は、光に比較的安定な無色又は白色の銀塩である。
上記有機銀塩としては、感光したハロゲン化銀の存在下で80℃以上に加熱されたときに還元剤と反応して銀を生じるものであれば特に限定されず、例えば、メルカプト基、チオン基又はカルボキシル基を有する有機化合物の銀塩;ベンゾトリアゾール銀等が挙げられる。具体的には、メルカプト基又はチオン基を有する化合物の銀塩、3−メルカプト−4−フェニル1,2,4−トリアゾールの銀塩、2−メルカプト−ベンツイミダゾールの銀塩、2−メルカプト−5−アミノチアゾールの銀塩、1一フェニル−5−メルカプトテトラチアゾールの銀塩、2−メルカプトペンゾチアゾールの銀塩、チオグリコール酸の銀塩、ジチオ酢酸の銀塩等のジチオカルボン酸の銀塩、チオアミド銀、チオピリジン銀塩、メルカプトオキサジアゾールの銀塩、メルカプトトリアジンの銀塩、脂肪族カルボン酸の銀塩;カプリン酸銀、ラウリル酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、ステアリン酸銀、ベヘン酸銀、マレイン酸銀、フマル酸銀、酒石酸銀、フロイン酸銀、リノール酸銀、オレイン酸銀、ヒドロキシステアリン酸銀、アジピン酸銀、セバシン酸銀、コハク酸銀、酢酸銀、酪酸銀、樟脳酸銀等、芳香族カルボン酸銀、チオンカルボン酸銀、チオエーテル基を有する脂肪族カルボン酸銀、テトラザインデンの銀塩、S−2−アミノフェニルチオ硫酸銀、含金属アミノアルコール、有機酸金属キレート等が挙げられる。なかでも、脂肪族カルボン酸の銀塩が好ましく、より好ましくはベヘン酸銀である。
上記有機銀塩の粒子径は、0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜5μmである。
【0101】
上記有機銀塩には、感光性ハロゲン化銀を触媒的に接触させてもよい。
上記感光性ハロゲン化銀としては特に限定されず、例えば、臭化銀、ヨウ化銀、塩化銀、塩臭化銀、ヨウ臭化銀、塩ヨウ化銀等が挙げられる。
上記有機銀塩に感光性ハロゲン化銀を触媒的に接触させる方法としては特に限定されず、例えば、予め調整した有機銀塩の溶液や分散液に、又は、有機銀塩を含むフィルム材料に、ハロゲン化銀形成成分を作用させて有機銀の一部をハロゲン化銀に形成する方法等が挙げられる。
上記感光性ハロゲン化銀形成成分としては、有機銀塩に作用してハロゲン化銀を形成するものであれば特に限定されないが、ヨウ素イオンを含むものであることが好ましい。
上記感光性ハロゲン化銀の配合量は、有機銀塩100重量部に対して0.0005〜0.2重量部であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.2重量部である。
【0102】
上記還元剤としては特に限定されず、併用される有機銀塩に応じて適宜選択され、例えば、置換フェノール類、ビスフェノール類、ナフトール類、ビスナフトール類、ポリヒドロキシベンゼン類、ジ又はポリヒドロキシナフタレン類、ハイドロキノンモノエーテル類、アスコルビン酸又はその誘導体、還元性糖類、芳香族アミノ化合物、ヒドロキシアミン類、ヒドラジン類、フェニドン類、ヒドロキノン類、ヒンダードフェノール類等が挙げられ、光分解性のものと熱分解性のものがある。なかでも、光分解性の還元剤が好ましく、特にヒンダードフェノール類が好ましい。
【0103】
上記還元剤の配合量は、有機銀塩100重量部に対して0.0001〜3.0重量部であることが好ましく、より好ましくは0.01〜1.0重量部である。
上記還元剤には、光分解を促進する化合物を併用してもよく、ハロゲン化銀と還元剤との反応を阻害するための被覆剤を併用してもよい。
【0104】
本発明6の熱現像性感光材料を製造する方法としては、例えば、本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂、有機銀塩、還元剤及び溶剤をボールミルで分散させた後に、必要に応じて、更にハロゲン化銀又はハロゲン化銀形成成分、各種添加剤を加えボールミルで分散させ、得られた分散液を支持体上に有機銀塩が規定の量となるように塗布し、溶剤を蒸発させる方法等が挙げられる。なお、上記有機銀塩と還元剤とは、これらを一括して本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂に配合し、これを支持体上に1層にして形成してもよいが、上記有機銀塩と還元剤とを各々別に本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂に配合して、これらを支持体上に各々別に2層にして形成してもよい。
【0105】
上記溶剤としては、本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂を溶解することができ、水分をほとんど含有しないものが好適に用いられる。なかでも、ケトン、エステル類が好ましく、より好ましくはジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等である。
【0106】
上記支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアセタール、セルロースエステル、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ニトロセルロース、ポリエチレンナフタレート、塩化ビニル、塩素化ポリプロピレン等の樹脂フィルム;ガラス;紙;アルミニウム板等の金属板等が用いられる。
【0107】
上記支持体上に塗布される銀の量は、支持体1mあたり0.1〜5.0gであることが好ましい。0.1g未満であると、画像濃度が低くなることがあり、5.0gを超えると、画像濃度の向上がみられなくなる。より好ましくは0.3〜3.0gである。なお、塗布は両面又は片面のいずれでもよい。
【0108】
本発明6の熱現像性感光材料は、長期間保管してもブロッキングの問題がなく、水分の吸湿の影響による生フィルム保存性の低下、かぶりを抑えることができ、親水性のバランスを保つことにより、画像形成後のフィルムの保存性等に優れており、優れた画像特性を示す。
【0109】
本発明7は、本発明1又は本発明2の変性ビニルアセタール樹脂、セラミックス粉末、可塑剤、及び、有機溶剤を含有するセラミックスグリーンシート用スラリー組成物である。
本発明7のセラミックスグリーンシート用スラリー組成物に用いられる場合における本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、アセタール化が1種のアルデヒドで行われた場合及びアセタール化が2種以上混合したアルデヒドで行われた場合のいずれの場合であっても、40〜79モル%であることがより好ましい。40モル%未満であると、本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂が水溶性となり、有機溶剤に不溶となる。79モル%を超えると、残存水酸基数が少なくなり本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂の強靱性が損なわれ、グリーンシートの強度が低下することがある。
【0110】
本発明7のセラミックスグリーンシート用スラリー組成物に用いられる場合における本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂の重合度は特に限定されないが、300〜2400であることがより好ましい。300未満であると、セラミックスグリーンシートに成形したときの強度が低く、支持体からの剥離の際にセラミックスグリーンシートが切れたり、クラックが入ったりしやすく、2400を超えると、スラリーの溶液粘度が高くなりすぎるために分散性が悪く、均一なスラリーを得ることができない。
【0111】
本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂の配合量は、本発明7のセラミックスグリーンシート用スラリー組成物全量に対して3〜15重量%であることが好ましい。3重量%未満であると、セラミックス粉末全体に分散される本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂の量が不充分となり、得られるセラミックスグリーンシートの柔軟性が不充分で、焼結後にクラック等が発生することがある。15重量%を超えると、本発明7のセラミックスグリーンシート用スラリー組成物の粘度が高くなり過ぎて分散性が低下したり、得られたセラミックスグリーンシートを焼成する際にシートの収縮率が大きくなったりする。
【0112】
上記セラミックス粉末としては特に限定されず、従来セラミックスグリーンシートを製造するのに用いられていたセラミックス粉末が挙げられる。このようなセラミックス粉末としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、マグネシア、サイアロン、スピネルムライト、結晶化ガラス、炭化ケイ酸、窒化ケイ酸、窒化アルミニウム等からなる粉末が挙げられる。これらのセラミックス粉末は単独で用いられてもよく、2種以上併用されてもよい。
【0113】
また、これらのセラミックス粉末には、MgO−SiO−CaO系、B−SiO系、PbO−B−SiO系、CaO−SiO−MgO−B系又はPbO−SiO−B−CaO系等のガラスフリットを添加してもよい。
【0114】
上記セラミックス粉末の粒子径は、微細であることが好ましく、薄層のセラミックスグリーンシートを得るためには、特に微細な粒子径のセラミックス粉末を用いることが好ましい。例えば、3μm以下のセラミックスグリーンシートを得るためには、上記セラミックス粉末の粒子径は0.3μm以下であることが好ましい。
【0115】
上記セラミックス粉末の配合量は、本発明7のセラミックスグリーンシート用スラリー組成物全量に対して30〜80重量%であることが好ましい。30重量%未満であると、本発明7のセラミックスグリーンシート用スラリー組成物の粘度が低くなり過ぎてセラミックスグリーンシートを成形する際のハンドリング性が悪くなることがある。80重量%を超えると、本発明7のセラミックスグリーンシート用スラリー組成物の粘度が高くなり過ぎて混練性が低下することがある。
【0116】
上記可塑剤としては特に限定されず、本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂との相溶性に優れているものであれば、任意の可塑剤を用いることができる。例えば、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル系;リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリエチル等のリン酸エステル系;リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル等の脂肪酸エステル系;ブチルフタリルグリコレート、トリエチレングリコール−2−エチルブチレート等のグリコール誘導体等が挙げられる。これらの可塑剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0117】
上記可塑剤の配合量は、本発明7のセラミックスグリーンシート用スラリー組成物全量に対して0.1〜10重量%であることが好ましい。0.1重量%未満であると、可塑剤を配合したことによるセラミックスグリーンシートの柔軟性が充分に得られない。10重量%を超えると、セラミックスグリーンシートが柔らかくなりすぎてセラミックスグリーンシートを成形する際のハンドリング性が悪くなることがある。
【0118】
上記有機溶剤としては特に限定されず、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0119】
上記有機溶剤の配合量は、本発明7のセラミックスグリーンシート用スラリー組成物全量に対して20〜80重量%であることが好ましい。この範囲であれば、本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂を溶解し、本発明7のセラミックスグリーンシート用スラリー組成物に適度な混練性を与えることができる。
【0120】
本発明7のセラミックスグリーンシート用スラリー組成物には、本発明7の目的を達成し得る範囲内で、必要に応じて、潤滑剤、分散剤、解膠剤、濡れ剤、帯電防止剤、消泡剤等を含有させてもよい。
【0121】
本発明7のセラミックスグリーンシート用スラリー組成物は、本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂、セラミックス粉末、可塑剤及び有機溶剤を配合し、これを常法により混合することで調製することができる。
【0122】
本発明7のセラミックスグリーンシート用スラリー組成物をシート状に賦形して乾燥することによりセラミックスグリーンシートを得ることができる。例えば、本発明7のセラミックスグリーンシート用スラリー組成物を、必要に応じて脱泡した後、剥離性のポリエステルフィルム、ステンレス鋼のプレート等の支持体上に塗布し、加熱、乾燥により有機溶剤を除去し、その後支持体から剥離する。このような本発明7のセラミックスグリーンシート用スラリー組成物を用いてなるセラミックスグリーンシートもまた本発明の1つである。
【0123】
本発明のセラミックスグリーンシートを用いることにより、積層セラミックスコンデンサを得ることができる。上記積層セラミックスコンデンサは、本発明のセラミックスグリーンシート上に内部電極となる導電ペーストをスクリーン印刷等により塗布したものを複数枚積み重ね、加熱圧着して積層体を作製し、この積層体を所定の形状及び寸法に切断した後、例えば600℃程度の高温に加熱してバインダー樹脂として用いられている本発明1又は本発明2のポリビニルアセタール樹脂をほぼ完全に分解し、更に例えば1350℃程度の高温に加熱してセラミックス粉末を焼結し、次いで得られたセラミックス焼結体の端面に外部電極を焼結することにより得られる。
【0124】
本発明7のセラミックスグリーンシート用スラリー組成物は、バインダー樹脂として本発明1又は本発明2のポリビニルアセタール樹脂を含有しており、変性ポリビニルアセタール樹脂の水素結合力が立体障害的に弱められているため、バインダー樹脂として未変性ポリビニルアセタール樹脂のみを使用した場合に比べて低粘度で粘度の経時安定性に優れている。これにより、使用溶剤量を減らしてハイソリッド化することができ、スラリーの長期保管も可能となる。
【0125】
本発明のセラミックスグリーンシートは、本発明7のセラミックスグリーンシート用スラリー組成物が可塑剤を過剰に含有する必要がないので、シート強度、特に伸度が大幅に向上し、支持体から剥離しやすくかつ圧着時の接着性に優れた積層時における接着性のバランスが良好なものである。また、本発明のセラミックスグリーンシートは吸湿性が低いので、セラミックスグリーンシートの状態で長期間保管することができ、打ち抜き等の加工をしたりする際に湿度の影響を受けにくい。従って、厚みが3μm以下の薄層セラミックスグリーンシートであっても湿度の影響を受けずに成形でき、セラミックスグリーンシートを損傷することなく積層できる。更に、本発明のセラミックスグリーンシートは、含有する本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂が熱分解性に優れ熱分解残渣が非常に少ないため、厚さが3μm以下の薄層セラミックスグリーンシートを500層以上積み重ねた積層体を焼結した場合においても、焼結後のセラミックスグリーンシート内にバインダーの熱分解残渣がなく、電気特性に優れた積層体を得ることができる。したがって、積層セラミックスコンデンサ等の電子部品の小型化への対応ができるとともに、ガラスパウダーを使用したり、電極に銅を使用したりするような低温での脱バインダー性を要求されるLTCC(低温焼結基板)等にも対応できる。また、本発明のセラミックスグリーンシートは、本発明1又は本発明2の変性ポリビニルアセタール樹脂が単量体単位としてエチレン単位を含有していることにより、可塑剤との相溶性が飛躍的に向上しており、可塑剤のブリードアウトを抑制し、セラミックスグリーンシートを長期間保存することができ、焼結時の収縮率も小さいため寸法安定性等も向上し、部品の小型化に対応できる。
【0126】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0127】
(実施例1)
<変性ポリビニルアセタール樹脂の製造>
重合度800、エチレン含有率5モル%、ケン化度93モル%の主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有する変性ポリビニルアルコール193gを純水2900gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌して溶解させた。この溶液を28℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸20gとn−ブチルアルデヒド115gとを添加し、液温を20℃に下げてこの温度を維持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を30℃に5時間維持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を行い、変性ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。
【0128】
得られた変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d(ジメチルスルホキサイド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてアセタール化度を測定したところ、アセタール化度は68モル%であった。また、示差走査熱量計によりガラス転移温度を測定したところ、ガラス転移温度は1つのみ現れ、エタノール/トルエン=1/1(重量比)の混合液、及び、メチルエチルケトンに完全に溶解したことから、変性ポリビニルアセタール樹脂が主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有するものであることが確認できた。
【0129】
(実施例2〜4)
ポリビニルアルコールの重合度、エチレン含有率、ケン化度、アルデヒドの種類、アセタール化度を表1に示したように変更したこと以外は実施例1と同様の方法により、変性ポリビニルアセタール樹脂を得た。なお、実施例4は変性ポリビニルアルコール/未変性ポリビニルアルコール=1/1(重量比)の混合物を用いた。得られた変性ポリビニルアセタール樹脂について示差走査熱量計によりガラス転移温度を測定したところ、含有される1種の変性ポリビニルアセタールに対応するガラス転移温度は1つのみ現れ、エタノール/トルエン=1/1(重量比)の混合液、及び、メチルエチルケトンに完全に溶解したことから、変性ポリビニルアセタール樹脂が主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有するものであることが確認できた。
【0130】
(比較例1〜4)
エチレンを単量体単位として含まないことの他は実施例1〜4で用いた変性ポリビニルアルコールと同じ構造を有する未変性ポリビニルアルコールを用いたこと以外は、対応する実施例1〜4と同様にしてほぼ同じアセタール化度を有するポリビニルアセタール樹脂を得た。
【0131】
【表1】
Figure 0004133158
【0132】
<性能評価>
実施例1〜4及び比較例1〜4で得られたポリビニルアセタール樹脂の酸素透過係数及び熱分解性を以下の方法により評価し、結果を表2及び表3に示した。
【0133】
(酸素透過係数測定)
ポリビニルアセタール樹脂をエタノール/トルエン=1:1(重量比)の混合溶液に添加し、樹脂濃度が15重量%となるよう溶解した。次にこの溶液をポリエチレンテレフタレート(以下、PETともいう)フィルムに塗布し、50℃、6時間乾燥後、50μmの膜厚を持つポリビニルアセタールフィルムを得た。次に室温において、このポリビニルアセタールフィルムの減圧乾燥処理を6日間実施し測定に供した。測定には、差圧式ガス透過率測定システムを用い、試験ガスに酸素ガスを用い、試験ガス圧力15N/cm、試験温度25℃、ガス透過面積15.2cmで測定し、酸素透過係数を求めた。
【0134】
(熱分解性測定)
測定温度範囲30〜700℃、昇温温度10℃/minで、試験容器として白金パンを開放状態で用い、エアーフロー雰囲気及び窒素フロー雰囲気でそれぞれフロー速度を200ml/minにしてTg/DTA測定を行った。
【0135】
【表2】
Figure 0004133158
【0136】
【表3】
Figure 0004133158
【0137】
表2の結果より、酸素透過係数において、実施例1〜4で得られたポリビニルアセタール樹脂は、比較例1〜4で得られたポリビニルアセタール樹脂よりも値が低く、酸素をより通しにくいことを示している。すなわち、変性ポリビニルアセタール樹脂は、未変性ポリビニルアセタール樹脂よりもガスバリア性が向上していることがわかる。
【0138】
表3の結果より、熱分解性において、実施例1〜4で得られたポリビニルアセタール樹脂は、重量変化率から700℃でほぼ完全に熱分解していた。一方、比較例1〜4で得られたポリビニルアセタール樹脂は、実施例1〜4で得られたポリビニルアセタール樹脂よりも重量変化率が小さかった。すなわち、変性ポリビニルアセタール樹脂は、未変性ポリビニルアセタール樹脂よりも熱分解性が向上していることがわかる。
【0139】
(実施例5〜11)
ポリビニルアルコールの重合度、エチレン含有率、ケン化度、アルデヒドの種類、アセタール化度を表4に示したように変更したこと以外は実施例1と同様にして変性ポリビニルアセタール樹脂を得た。なお、実施例9〜11では変性ポリビニルアルコール/未変性ポリビニルアルコール=1/1(重量比)の混合物を用いた。得られた変性ポリビニルアセタール樹脂について示差走査熱量計によりガラス転移温度を測定したところ、含有される1種の変性ポリビニルアセタールに対応するガラス転移温度は1つのみ現れ、エタノール/トルエン=1/1(重量比)の混合液、及び、メチルエチルケトンに完全に溶解したことから、変性ポリビニルアセタール樹脂が主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有するものであることが確認できた。
【0140】
(比較例5〜11)
エチレンを単量体単位として含まないことの他は実施例5〜11で用いた変性ポリビニルアルコールと同じ構造を有する未変性ポリビニルアルコールを用いたこと以外は、対応する実施例5〜11と同様にして同じアセタール化度を有するポリビニルアセタール樹脂を得た。
【0141】
<性能評価>
実施例5〜11及び比較例5〜11で得られたポリビニルアセタール樹脂の溶液粘度、溶液粘度の経時安定性(粘度変化率)及び塗膜の伸度等の性能を以下の方法で評価し、結果を表4及び表5に示した。
【0142】
(溶液粘度及び粘度の差)
実施例5〜11及び比較例5〜11で得られたポリビニルアセタール樹脂をエタノール/トルエン=1/1(重量比)の混合溶液に添加し、樹脂濃度が10重量%になるように完全に溶解した。次に、この溶液の粘度をブルックフィールドタイプの回転粘度計を使用して20℃で測定した(初期粘度)。
次に、実施例5で得られた変性ポリビニルアセタール樹脂の溶液粘度と、実施例5に対応する比較例5で得られた未変性ポリビニルアセタール樹脂の溶液粘度を比較し、下記式(3)により粘度の差(の割合)を求めた。
【0143】
【数3】
Figure 0004133158
【0144】
式(3)中、Aは、変性ポリビニルアセタール樹脂(実施例5)の粘度を表し、Bは、未変性ポリビニルアセタール樹脂(比較例5)の粘度を表す。
【0145】
同様にして、実施例6〜11で得られた変性ポリビニルアセタール樹脂の溶液粘度と、実施例6〜11にそれぞれ対応する比較例6〜11で得られた未変性ポリビニルアセタール樹脂の溶液粘度とを比較して粘度の差を求めた。
【0146】
(溶液粘度の経時安定性(粘度変化率))
上記初期粘度を測定した溶液を20℃の恒温室に1ケ月間保管し、保管後の粘度を、ブルックフィールドタイプの回転粘度計を使用して20℃で測定し、粘度変化率を下記式(4)により求めた。
【0147】
【数4】
Figure 0004133158
【0148】
式(4)中、Cは、1ケ月後の粘度を表し、Dは、初期粘度を表す。
【0149】
(塗膜の伸度及び伸度の差)
実施例5〜11及び比較例5〜11で得られたポリビニルアセタール樹脂を用いてキャスティングにより厚み50μmのフィルムを作製した。これを引っ張り速度10mm/minで引っ張り、オートグラフ(島津製作所社製)を使用して20℃における最大点伸度を測定した。
次に、実施例5で得られた変性ポリビニルアセタール樹脂の最大点伸度と、実施例5に対応する比較例5で得られた未変性ポリビニルアセタール樹脂の最大点伸度を比較し、下記式(5)により伸度の差(の割合)を求めた。
【0150】
【数5】
Figure 0004133158
【0151】
式(5)中、Eは、変性ポリビニルアセタール樹脂(実施例5)の最大点伸度を表し、Fは、未変性ポリビニルアセタール樹脂(比較例5)の最大点伸度を表す。
【0152】
以下、同様にして、実施例6〜11で得られた変性ポリビニルアセタール樹脂の最大点伸度と、実施例6〜11にそれぞれ対応する比較例6〜11で得られた未変性ポリビニルアセタール樹脂の最大点伸度を比較して伸度の差(の割合)を求めた。
【0153】
【表4】
Figure 0004133158
【0154】
【表5】
Figure 0004133158
【0155】
表4及び表5の結果より、比較例5〜11で得られた未変性ポリビニルアセタール樹脂は、粘度変化率が実施例5〜11で得られた変性ポリビニルアセタール樹脂に比べ大幅に上昇している。すなわち、未変性ポリビニルアセタール樹脂は粘度安定性が悪いことがわかる。また、粘度の差より、変性ポリビニルアセタール樹脂は、未変性のポリビニルアセタール樹脂に比べ溶液粘度が大幅に低いことがわかる。また、塗膜の伸度の差より、変性ポリビニルアセタール樹脂は未変性のポリビニルアセタール樹脂に比べ伸度が大幅に大きくなっており、柔軟性に優れていることがわかる。
【0156】
(実施例12)
<変性ポリビニルアセタール樹脂の製造>
重合度2000、エチレン含有率5モル%、ケン化度98モル%の主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有する変性ポリビニルアルコール193gを純水2900gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌して溶解した。この溶液を28℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸20gを添加し、更にアセトアルデヒド51gを添加した。次に12℃まで冷却し、n−ブチルアルデヒド48gを添加してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を60℃に5時間維持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を行い、変性ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。
【0157】
得られた変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO−dに溶解し、13C−NMRを用いてアセタール化度を測定したところ、アセトアセタール化度が43モル%であり、ブチラール化度が30モル%であり、合計したアセタール化度は73モル%であった。また、示差走査熱量計によりガラス転移温度を測定したところ、ガラス転移温度は1つのみ現れ、エタノール/トルエン=1/1(重量比)の混合液、及び、メチルエチルケトンに完全に溶解したことから、変性ポリビニルアセタール樹脂が主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有するものであることが確認できた。
【0158】
<接着剤組成物の調製>
上記変性ポリビニルアセタール樹脂40g、フェノール樹脂(群栄化学社製、商品名;PL−2205)62g及びエポキシ樹脂(シェル化学社製、商品名;エピコート828)4gをメタノール/メチルエチルケトン/トルエン(重量比=2:2:1)の混合溶剤258gに溶解させ、接着剤組成物を調製した。
【0159】
次に、得られた接着剤組成物をプリント回路基板用銅箔に固形分としての厚さが33μmになるように塗布し、140℃で4分間乾燥して接着剤層付き銅箔を得た。この接着剤層付き銅箔を温度20℃、湿度70%の条件に3日間放置した。その後、上記接着剤層付き銅箔とフェノール含浸紙とを150℃で30分間、1200N/cmの圧力で加圧成形し、銅箔積層板を積層した。
【0160】
(実施例13〜14、比較例12〜13)
変性ポリビニルアルコールの重合度、エチレン含有率、ケン化度、アルデヒドの種類、アセタール化度を表6に示したように変更したこと以外は実施例12と同様にして接着剤組成物を作製し、これを用いて銅箔積層板を積層した。実施例13及び14で得られた変性ポリビニルアセタール樹脂について示差走査熱量計によりガラス転移温度を測定したところ、含有される1種の変性ポリビニルアセタールに対応するガラス転移温度は1つのみ現れ、エタノール/トルエン=1/1(重量比)の混合液、及び、メチルエチルケトンに完全に溶解したことから、変性ポリビニルアセタール樹脂が主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有するものであることが確認できた。
【0161】
(実施例15)
<接着剤組成物の調製>
実施例12で作製した主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有する変性ポリビニルアセタール樹脂40g、メラミン樹脂(三井化学社製、商品名;ユーバン22R)62g及びエポキシ樹脂(シェル化学社製、商品名;エピコート828)4gをメタノール/メチルエチルケトン/トルエン(重量比=2:2:1)の混合溶剤258gに溶解させ、接着剤組成物を調製した。
【0162】
次に、得られた接着剤組成物をプリント回路基板用銅箔に固形分としての厚さが33μmになるように塗布し、140℃で4分間乾燥して、接着剤層付き銅箔を得た。この接着剤層付き銅箔を温度20℃、湿度70%の条件に3日間放置した。その後、上記接着剤層付き銅箔とフェノール含浸紙とを150℃で30分間、1200N/cmの圧力で加圧成形し、銅箔積層板を積層した。
【0163】
(実施例16〜17、比較例14〜15)
変性ポリビニルアルコールの重合度、エチレン含有率、ケン化度、アルデヒドの種類、アセタール化度を表6に示したように変更したこと以外は実施例15と同様にして接着剤組成物を作製し、これを用いて銅箔積層板を積層した。
【0164】
(実施例18)
<接着剤組成物の調整>
実施例12で作製した主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有する変性ポリビニルアセタール樹脂7g、エポキシ樹脂(シェル化学社製、商品名;エピコート828)60g及びメラミン樹脂(三井化学社製、商品名;ユーバン22R)5gをメタノール/メチルエチルケトン/トルエン(重量比=2:2:1)の混合溶剤258gに溶解させ、接着剤組成物を調製した。
【0165】
次に、得られた接着剤組成物をプリント回路基板用銅箔に固形分としての厚さが33μmになるように塗布し、140℃で4分間乾燥して、接着剤層付き銅箔を得た。この接着剤層付き銅箔を温度20℃、湿度70%の条件に3日間放置した。
その後、上記接着剤層付き銅箔とガラスクロスをエポキシ樹脂で含浸したプリプレグとを150℃で30分間、1200N/cmの圧力で加圧成形し、銅箔積層板を積層した。
【0166】
(実施例19〜20、比較例16〜17)
変性ポリビニルアルコールの重合度、エチレン含有率、ケン化度、アルデヒドの種類、アセタール化度を表6に示したように変更したこと以外は実施例15と同様にして接着剤組成物を作製し、これを用いて銅箔積層板を積層した。
【0167】
<性能評価>
実施例12〜20及び比較例12〜17で得られた銅箔積層板について、JISC−6485に準拠して、ハンダ耐熱性及び引き剥がし強度を測定した。なお、試験温度は、ハンダ耐熱性については260℃、引き剥がし強度については150℃とした。結果を表6に示した。
【0168】
【表6】
Figure 0004133158
【0169】
表6の結果より、ハンダ耐熱性、引き剥がし強度共に、実施例12〜20で得られた銅箔積層板は、比較例12〜17で得られた銅箔積層板よりも大幅に高かった。
【0170】
(実施例21)
<変性ポリビニルアセタール樹脂の製造>
重合度300、エチレン含有率5モル%、ケン化度98モル%の主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有する変性ポリビニルアルコール193gを純水2900gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌して溶解させた。この溶液を28℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸20gとn−ブチルアルデヒド115gとを添加し、液温を20℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を30℃に5時間維持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を行い、変性ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。
【0171】
得られた変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO−dに溶解し、13C−NMRを用いてアセタール化度を測定したところ、アセタール化度は68モル%であった。また、示差走査熱量計によりガラス転移温度を測定したところ、ガラス転移温度は1つのみ現れ、エタノール/トルエン=1/1(重量比)の混合液、及び、メチルエチルケトンに完全に溶解したことから、変性ポリビニルアセタール樹脂が主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有するものであることが確認できた。
【0172】
<インクの製造>
上記変性ポリビニルアセタール樹脂4.4gとエタノール25.6gとをガラス瓶に入れ24時間攪拌し、次いで、顔料10gとガラスビーズとを投入し、ペイントシェーカー(Red Devil社製)にて90分間振とうして顔料分散を行った。次いで、酢酸エチル8.5gを追加投入し、更に添加剤を少量投入して60分間振とうを行ってインクを調製した。なお、ガラスビーズは、変性ポリビニルアセタール樹脂、エタノール及び酢酸エチルの合計重量に対して1.5倍量の重量投入した。
【0173】
(実施例22〜27、比較例18〜24)
変性ポリビニルアルコールの重合度、エチレン含有率、ケン化度、アルデヒドの種類、アセタール化度を表7に示したように変更したこと以外は実施例21と同様にしてインクを調製した。実施例22〜27で得られた変性ポリビニルアセタール樹脂について示差走査熱量計によりガラス転移温度を測定したところ、含有される1種の変性ポリビニルアセタールに対応するガラス転移温度は1つのみ現れ、エタノール/トルエン=1/1(重量比)の混合液、及び、メチルエチルケトンに完全に溶解したことから、変性ポリビニルアセタール樹脂が主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有するものであることが確認できた。
【0174】
<性能評価>
実施例21〜27及び比較例18〜24で得られたインクの経時粘度、基材への密着性、酸素透過度を以下の方法で評価し、結果を表7に示した。
【0175】
(インクの経時粘度測定)
メカニカルスペクトロメーター(レオメトリック社製、RMS−800)を用いてせん断速度1000s−1、測定温度25℃でのインクの粘度(mPa・s)を測定した。ジオメトリーには二軸円筒型を使用した。測定はサンプルを二軸円筒型の容器にピペットにて必要量挿入後、プレシェアをかけて5分間放置した後に行った。続いて、各定常ずり速度をサンプルにかけた。定常ずり速度は、まず低速側(1s−1)から高速側(1000s−1)にせん断速度をかけた後、更に高速側から低速側へせん断速度をかけた。流体の粘度挙動は高速せん断速度をかけた後のせん断速度1000s−1時の粘度を粘度値(A)とした。
6ヶ月後のインク状態を再現する加速促進試験として、40℃で72時間放置した後、上記方法と同様の方法で粘度を測定し、粘度値(B)とした。
上記粘度値(A)と上記粘度値(B)からインクの粘度の変化率(粘度比)を算出した。
【0176】
(基材への接着性測定)
インクをバーコーターにて厚さ30μmのポリプロピレンフィルムの上に塗布し、厚さ3μmのインク層を形成した後、温度20℃、湿度90%で3日間放置した。放置後、塗布面にセロハンテープを貼った後引き剥がし、フィルム上のインク残存量を目視にて観察し、以下の3段階で評価した。
○:セロハンテープ剥離後もインク層がフィルム上に完全に残っていた。
△:セロハンテープにインク層の一部が付着していた。
×:セロハンテープにインク層の大部分が付着していた。
【0177】
(酸素透過度測定)
インクをPETフィルムに塗布し、50℃で6時間乾燥後、50μmの膜厚を持つインクフィルムを得た。次に室温において、このインクフィルムの減圧乾燥処理を6日間実施し測定に供した。測定には、差圧式ガス透過率測定システムを用い、試験ガスに酸素ガスを用い、試験ガス圧力15N/cm、試験温度25℃、ガス透過面積15.2cmで測定し、酸素透過係数を求めた。
【0178】
【表7】
Figure 0004133158
【0179】
表7の結果より、実施例21〜27で得られたインクは、比較例18〜24で得られたインクに比べ、インクの経時粘度変化及び酸素透過係数について、大幅に低く、基材への接着性について、大幅に良好であった。
【0180】
(実施例28)
<変性ポリビニルアセタール樹脂の製造>
重合度500、エチレン含有率5モル%、ケン化度98モル%の主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有する変性ポリビニルアルコール193gを蒸留水2900gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌して溶解させた。この溶液を28℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸20gとn−ブチルアルデヒド125gとを添加し、液温を20℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を30℃に5時間維持して反応を完了させ、蒸留水にて洗浄し、水洗後の変性ポリビニルアセタール樹脂分散液に炭酸水素ナトリウムを添加して溶液をpH8に調整した。次いで、溶液を60℃で5時間保持した後冷却し、固形分に対し100倍量の蒸留水で水洗した後、更に、溶液を50℃で5時間保持した後100倍量の蒸留水で水洗し、脱水した後乾燥した。
【0181】
得られた変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO−dに溶解し13C−NMRを用いてアセタール化度を測定したところ、アセタール化度は75モル%であった。また、残存のアルデヒド量は10ppm、残存の水分量は2.0重量%であった。得られた変性ポリビニルアセタール樹脂について示差走査熱量計によりガラス転移温度を測定したところ、ガラス転移温度は1つのみ現れ、エタノール/トルエン=1/1(重量比)の混合液、及び、メチルエチルケトンに完全に溶解したことから、変性ポリビニルアセタール樹脂が主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有するものであることが確認できた。なお、上記アルデヒド量の測定は、変性ポリビニルアセタール樹脂を加熱炉で熱抽出し、抽出物についてガスクロマトグラフィーを用いて測定した。上記水分量は、カールフィッシャー水分計を用いて測定した。
【0182】
<熱現像性感光材料フィルム用塗工溶液の調製>
上記変性ポリビニルアセタール樹脂5.0g、ベヘン酸銀5.0g、メチルエチルケトン40gを24時間ボールミルで混合し、更に、N−ラウリル−1−ヒドロキシ−2−ナフトアミド0.2gを加え、再びボールミルで粉砕して塗工溶液を得た。
【0183】
<熱現像性感光材料フィルムの作製>
上記塗工溶液を、ポリエステル基材上に乾燥後の厚みが10μmとなるように塗布し乾燥した。この塗工面上に、N,N一ジメチル−p−フェニレンジアミン・硫酸鉛0.5g、ポリビニルピロリドン2g、メタノール30mlからなる溶液を乾燥後の厚みが1μmとなるように塗布して乾燥した。このように積層して熱現像性感光材料フィルムを作製した。
【0184】
(実施例29〜34、比較例25〜28)
変性ポリビニルアセタール樹脂の重合度、ケン化度、アルデヒドの種類、アセタール化度、残存水分量、残存アルデヒド量を表8に示したように変更したこと以外は、実施例28と同様にして熱現像性感光材料フィルムを作製した。実施例29〜34で得られた変性ポリビニルアセタール樹脂について示差走査熱量計によりガラス転移温度を測定したところ、含有される1種の変性ポリビニルアセタールに対応するガラス転移温度は1つのみ現れ、エタノール/トルエン=1/1(重量比)の混合液、及び、メチルエチルケトンに完全に溶解したことから、変性ポリビニルアセタール樹脂が主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有するものであることが確認できた。
【0185】
<性能評価>
実施例28〜34及び比較例25〜28で得られた熱現像性感光材料フィルムの性能評価を以下の方法で行った。結果を表8に示した。
【0186】
(生フィルムの保存性)
熱現像性感光材料フィルムを湿度90%、温度20℃で1ヶ月間保管した。その後、感光性フィルムに階調パターンフィルムを通して250ワットの高圧水銀灯で20cmの距離から0.3秒間露光後、110℃の熱板を用いて3秒間加熱してシアン色のパターン画像を得た。これを以下の3水準で評価した。
○:かぶりがなく鮮明度が良好であった。
△:ややかぶりが発生し鮮明度が劣っていた。
×:かぶりが多数発生し鮮明度が悪かった。
【0187】
(生フィルムのブロッキング性)
熱現像性感光材料フィルムをA4サイズに切り、100枚重ねて、湿度90%、温度40℃で1ヶ月間保管した。このときのブロッキングのレベルを以下の3水準で評価した。
○:全くブロッキングしておらず、きれいに1枚1枚が剥離した。
△:フィルムの一部がブロッキングして、剥離し難い部分があった。
×:フィルムの大部分がブロッキングしており、剥離がかなり困難であった。
【0188】
(画像形成後のフィルムの保存性)
感光性フィルムに階調パターンフィルムを通して250ワットの高圧水銀灯で20cmの距離から0.3秒間露光後、110℃の熱板を用いて3秒間加熱してシアン色のパターン画像を得た。その後、湿度90%、温度40℃で1ヶ月間保管した。このときのフィルム表面の状態を以下の3水準で評価した。
○:保管前と変わらない画像を形成していた。
△:一部で保管前と異なり、白くなった部分があった。
×:かなりの部分で保管前と異なり、白くなった部分があった。
【0189】
【表8】
Figure 0004133158
【0190】
表8の結果より、実施例28〜34で得られた熱現像性感光材料フィルムは、比較例25〜28で得られた熱現像性感光材料フィルムに比べ、生フィルムの保存性、生フィルムのブロッキング性及び画像形成後のフィルム保存性について優れていた。
【0191】
(実施例35)
<変性ポリビニルアセタール樹脂の製造>
重合度800、エチレン含有率5モル%、ケン化度93モル%の主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有する変性ポリビニルアルコール193gを純水2900gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌して溶解させた。この溶液を28℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸20gとn−ブチルアルデヒド115gとを添加し、液温を20℃に下げてこの温度を維持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を30℃に5時間維持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を行い、主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有する変性ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。
【0192】
得られた変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO−dに溶解し、13C−NMRを用いてアセタール化度を測定したところ、アセタール化度は68モル%であった。また、示差走査熱量計によりガラス転移温度を測定したところ、ガラス転移温度は1つのみ現れ、エタノール/トルエン=1/1(重量比)の混合液、及び、メチルエチルケトンに完全に溶解したことから、変性ポリビニルアセタール樹脂が主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有するものであることが確認できた。
【0193】
<セラミックスグリーンシート用スラリー組成物の製造>
上記変性ポリビニルアセタール樹脂10重量部を、トルエン30重量部とエタノール15重量部との混合溶剤に加え攪拌溶解した。この樹脂溶液に、可塑剤としてジブチルフタレート3重量部を加え攪拌溶解した。こうして得られた樹脂溶液に、セラミックス粉末として平均粒子経0.3μmのチタン酸バリウム粉末100重量部を加え、ボールミルで36時間混合してチタン酸バリウム粉末を分散させたセラミックスグリーンシート用スラリー組成物を得た。
【0194】
<セラミックスグリーンシートの製造>
上記セラミックスグリーンシート用スラリー組成物を、離型処理したポリエステルフィルム上に約6μmの厚さで塗布し、常温で30分間風乾し、更に熱風乾燥機により60〜80℃で15時間乾燥して有機溶剤を乾燥させ、厚さ3μmの薄層のセラミックスグリーンシートを得た。
【0195】
(実施例36〜41)
ポリビニルアルコールの重合度、エチレン含有率、ケン化度、アルデヒドの種類、アセタール化度、セラミックス粉末の平均粒子径、及び、可塑剤を表9に示したように変更したこと以外は実施例34と同様にして、主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有する変性ポリビニルアセタール樹脂の製造、スラリー組成物及びセラミックスグリーンシートを製造した。なお、実施例39〜41では、変性ポリビニルアセタール樹脂の製造において、変性ポリビニルアルコール/未変性ポリビニルアルコール=1/1(重量比)の混合物を用いた。実施例36〜41で得られた変性ポリビニルアセタール樹脂について示差走査熱量計によりガラス転移温度を測定したところ、含有される1種の変性ポリビニルアセタールに対応するガラス転移温度は1つのみ現れ、エタノール/トルエン=1/1(重量比)の混合液、及び、メチルエチルケトンに完全に溶解したことから、変性ポリビニルアセタール樹脂が主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有するものであることが確認できた。
【0196】
(比較例29〜35)
エチレンを単量体単位として含まないことの他は実施例35〜41で用いた変性ポリビニルアルコールと同じ構造を有する未変性ポリビニルアルコールを用いたこと以外は、対応する実施例35〜41と同様にして、同じアセタール化度を有するポリビニルアセタール樹脂を作製し、これを用いてスラリー組成物の製造及びセラミックスグリーンシートの製造を行った。
【0197】
<性能評価>
実施例35〜41及び比較例29〜35で得られたスラリー組成物の粘度、粘度安定性、及び、セラミックスグリーンシートの剥離性、接着性、伸度を以下の方法により評価し、結果を表9及び表10に示した。実施例35〜41及び比較例29〜35で得られたセラミックスグリーンシートの吸湿性、焼結後の熱分解残渣の量を以下の方法により評価し、結果を表11に示した。
【0198】
(スラリー組成物の粘度及び粘度の差)
実施例35〜41及び比較例29〜35で得られたスラリー組成物の粘度をブルックフィールドタイプの回転粘度計を使用して20℃で測定し、初期粘度とした。
次に、実施例35で得られたスラリー組成物の粘度と、実施例35に対応する比較例29で得られたスラリー組成物の粘度とを比較し、下記式(6)により粘度の差(の割合)を求めた。
【0199】
【数6】
Figure 0004133158
【0200】
式(6)中、Gは、変性ポリビニルアセタール樹脂から作製したスラリー組成物(実施例35)の粘度を表し、Hは、未変性ポリビニルアセタール樹脂から作製したスラリー組成物(比較例29)の粘度を表す。
同様にして、実施例36〜41で得られたスラリー組成物の粘度と、実施例36〜41にそれぞれ対応する比較例30〜35で得られたスラリー組成物の粘度とを比較して粘度の差を求めた。
【0201】
(スラリー粘度の経時安定性(粘度変化率))
上記初期粘度を測定したスラリー溶液を20℃の恒温室に1ケ月間保管し、保管後の粘度を、ブルックフィールドタイプの回転粘度計を使用して20℃で測定し、粘度変化率を下記式(7)により求めた。
【0202】
【数7】
Figure 0004133158
【0203】
式(7)中、Iは、1ケ月後の粘度を表し、Jは、初期粘度を表す。
【0204】
(セラミックスグリーンシートの剥離性)
実施例35〜41及び比較例29〜35で得られたセラミックスグリーンシートを10cm角に切断し、PETフィルム上に10枚重ね、70℃、圧力1500N/cm、10分間の熱圧条件で積層したのち、セラミックスグリーンシートをPETフィルムから剥離した際の剥離状態を目視を主体とする官能試験によって以下の3段階で評価した。
○:PETフィルムに付着したセラミックスグリーンシートがなく、かつ、セラミックスグリーンシートの切れやクラックが全くなかった。
△:PETフィルムに付着したセラミックスグリーンシートが一部認められ、又は、セラミックスグリーンシートの切れ、クラックが一部認められた。
×:PETフィルムに付着したセラミックスグリーンシートが多数認められ、又は、セラミックスグリーンシートの切れ、クラックが多数認められた。
【0205】
(セラミックスグリーンシートの接着性)
実施例35〜41及び比較例29〜35で得られたセラミックスグリーンシートを10cm角に切断して200枚重ね、70℃、圧力1500N/cm、10分間の熱圧条件で積層したのち、セラミックスグリーンシートの層間の接着性を目視を主体とする官能試験によって以下の3段階で評価した。
○:全く層間剥離が認められず、強固に接着している。
△:層間剥離が一部認められた。
×:層間剥離がかなり多く認められた。
【0206】
(シート伸度(伸度の差))
実施例35〜41及び比較例29〜35で得られたセラミックスグリーンシートを、20℃の環境下、引っ張り速度10mm/minで引っ張り、オートグラフ(島津製作所社製)を使用して最大点の伸度を測定した。
次に、実施例35で得られたセラミックスグリーンシートの最大点の伸度と、実施例35に対応する比較例29で得られたセラミックスグリーンシートの最大点の伸度とを比較し、下記式(8)により伸度の差(の割合)を求めた。
【0207】
【数8】
Figure 0004133158
【0208】
式(8)中、Kは、変性ポリビニルアセタール樹脂から作製されたセラミックスグリーンシート(実施例35)の最大点の伸度を表し、Lは、未変性ポリビニルアセタール樹脂から作製されたセラミックスグリーンシート(比較例29)の最大点の伸度を表す。
【0209】
同様にして、実施例36〜41で得られたセラミックスグリーンシートの最大点の伸度と、実施例36〜41にそれぞれ対応する比較例30〜35で得られたセラミックスグリーンシートの最大点の伸度を比較した。
【0210】
【表9】
Figure 0004133158
【0211】
【表10】
Figure 0004133158
【0212】
表9及び表10の結果より、実施例35〜41で得られたスラリー組成物は、比較例29〜35で得られたセラミックスグリーンシートに比べ、スラリー粘度が大幅に低く、スラリー粘度の経時安定性についても非常に安定していた。
また、実施例35〜41で得られたセラミックスグリーンシートは、剥離性、接着性のいずれも良好であった。一方、比較例31、32、34、35で得られたセラミックスグリーンシートは、硬く剥離時にクラックが入り、シート層間のかなりの部分で剥離していることが確認された。
また、実施例35〜41で得られたセラミックスグリーンシートは、比較例29〜35で得られたセラミックスグリーンシートに比べ、よく伸びるセラミックスグリーンシートであり、柔軟性に優れていた。
【0213】
(グリーンシートの吸湿性)
実施例35〜41及び比較例29〜35で得られたセラミックスグリーンシートを10cm角に切断して、湿度90%、温度20℃で5日間放置し、放置前後で重量を測定した。放置前後での重量変化から下記式(9)によりセラミックスグリーンシートの吸湿性を求めた。
【0214】
【数9】
Figure 0004133158
【0215】
式(9)中、Mは、放置後のセラミックスグリーンシートの重量を表し、Nは、放置前のグリーンシートの重量を表す。
【0216】
(変性ポリビニルアセタール樹脂の熱分解残渣)
実施例35〜41及び比較例29〜35で得られた変性ポリビニルアセタール樹脂10mgを窒素雰囲気中で、昇温速度10℃/分で、常温から700℃まで加熱した後の分解残渣の量を求めた。
【0217】
(セラミックスグリーンシートの熱分解残渣)
実施例35〜41及び比較例29〜35で得られたセラミックスグリーンシートを10cm角に切断して500枚重ね、温度70℃、圧力1500N/cm、時間10分間の熱圧条件で積層しセラミックスグリーンシートの積層体を得た。次に、このセラミックスグリーンシートを窒素雰囲気で、昇温速度3℃/分で450℃まで昇温して5時間恒温を保った後、更に昇温速度5℃/分で1350℃まで昇温して10時間恒温を保ち、セラミックスを完全に焼結した。このセラミックスグリーンシートを常温まで冷却した後、シートを半分に割り、ちょうど250層付近のセラミックスグリーンシートの状態を電子額微鏡で観察し、以下の3段楷で評価した。
○:均一に焼結されており、セラミックスパウダー以外のものはなかった。
△:セラミックスグリーンシート内に黒色の点状のものが一部まれに確認された。
×:セラミックスグリーンシート内に黒色の点状のものがかなり多く確認された。
【0218】
【表11】
Figure 0004133158
【0219】
表11の結果より、実施例35〜41で得られたセラミックスグリーンシートは、比較例29〜35で得られたセラミックスグリーンシートに比べ、吸湿性が大幅に低く、含有される変性ポリビニルアセタール樹脂の熱分解残渣が大幅に少なく、かつ、セラミックスグリーンシート自体の熱分解残渣も非常に良好であり、熱分解残渣に起因する黒色のカーボンは確認されなかった。
【0220】
【発明の効果】
本発明によれば、柔軟性、高湿度下における樹脂基材への接着性、耐熱性、熱分解性、耐湿性、強靱性に優れ、酸素透過度が低く、適度の接着性を有し、溶液にしたときに低粘度で、粘度の経時安定性に優れた変性ポリビニルアセタール樹脂、及び、それを用いた接着剤組成物、インク、塗料組成物、熱現像性感光材料、セラミックスグリーンシート用スラリー組成物、及び、セラミックスグリーンシートを提供できる。

Claims (4)

  1. 主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有し、かつ、エチレン含有率が1〜20モル%、ケン化度が80モル%以上である変性ポリビニルアルコールをアセタール化してなり、主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有する変性ポリビニルアセタール樹脂を用いてなることを特徴とするインク。
  2. 主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有し、かつ、エチレン含有率が1〜20モル%、ケン化度が80モル%以上である変性ポリビニルアルコールをアセタール化してなり、主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有する変性ポリビニルアセタール樹脂を用いてなることを特徴とする塗料。
  3. 主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有し、かつ、エチレン含有率が1〜20モル%、ケン化度が80モル%以上である変性ポリビニルアルコールをアセタール化してなり、主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有する変性ポリビニルアセタール樹脂と、フェノール樹脂、エポキシ樹脂及びメラミン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂とを含有することを特徴とする接着剤。
  4. 主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有し、かつ、エチレン含有率が1〜20モル%、ケン化度が80モル%以上である変性ポリビニルアルコールをアセタール化してなり、主鎖の構成単位としてエチレンをランダムに有する変性ポリビニルアセタール樹脂を用いてなることを特徴とする熱現像性感光材料。
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