前記構成の本発明において、液浸露光用液体としては、実質的に純水もしくは脱イオン水からなる水、あるいはフッ素系不活性液体を好適に使用することができるが、コスト性、後処理の容易性などから考慮して、水がより好適である。
本発明において使用可能なレジスト膜は、従来慣用のレジスト組成物を用いて得られたあらゆるレジスト膜が使用可能であり、特に限定して用いる必要はない。
また、本発明において使用可能な保護膜としての特性は、露光光に対して透明で、液浸露光用液体に対して実質的な相溶性を持たず、かつレジスト膜との間でミキシングを生じないことであり、さらにはレジスト膜への密着性がよく、かつ剥離性が良いことであり、そのような特性を具備する保護膜を形成可能な保護膜材料としては、特定のフッ素系樹脂をフッ素系溶剤に溶解してなる組成物を用いる。
上記フッ素系樹脂としては、鎖式パーフルオロアルキルポリエーテル、環式パーフルオロアルキルポリエーテル、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などを用いることができる。
そして、実用的には、市販の中で、鎖式パーフルオロアルキルポリエーテルであるデムナムS−20、デムナムS−65、デムナムS−100、デムナムS−200(以上、ダイキン工業社製)、環式パーフルオロアルキルポリエーテルであるサイトップシリーズ(旭硝子社製)、テフロン(R)−AF1600、テフロン(R)−AF2400(デュポン社製)などを用いることができる。
上記フッ素系樹脂の中でも、鎖式パーフルオロアルキルポリエーテルと環式パーフルオロアルキルポリエーテルからなる混合樹脂が好適である。
また、上記フッ素系溶剤としては、上記フッ素系樹脂を溶解し得る溶剤であれば良く、特に限定されないが、例えばパーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン等のパーフルオロアルカンまたはパーフルオロシクロアルカン、これらの一部に二重結合の残ったパーフルオロアルケン、さらにはパーフルオロテトラヒドロフラン、パーフルオロ(2−ブチル)テトラヒドロフラン等のパーフルオロ環状エーテル、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロテトラペンチルアミン、パーフルオロテトラヘキシルアミン等のフッ素系溶剤を用いることができる。また、これらのフッ素系溶剤と相溶性を有する他の有機溶剤、界面活性剤等も適宜混合して用いることが可能である。
フッ素系樹脂濃度は、膜を形成し得る範囲であれば特に限定されないが、塗布性等を考慮した場合、0.1〜30wt%程度とすることが好ましい。
好適な保護膜材料としては、鎖式パーフルオロアルキルポリエーテルと環式パーフルオロアルキルポリエーテルからなる混合樹脂をパーフルオロトリブチルアミンに溶解せしめた構成とすることが好ましい。
さらに、本発明の保護膜除去用溶剤としては、上記フッ素樹脂を溶解せしめるフッ素系溶剤であれば良い。このような保護膜除去用溶剤の中でも、洗浄後の乾燥性の点から、沸点150℃以下程度の溶剤を用いることが好ましい。この観点からパーフルオロ(2−ブチル)テトラヒドロフラン(沸点:102℃)が最も好ましい。
前述のように、本発明液浸露光プロセスに用いられるレジスト膜材料としては、慣用のポジ型レジスト、ネガ型ホトレジストを使用することができる。これらの具体例を以下に例示する。
まず、ポジ型ホトレジストに用いられる樹脂成分としては、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、シルセスキオキサン系樹脂等が用いられる。
前記アクリル系樹脂としては、例えば、酸解離性溶解抑制基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1)を有し、この構成単位(a1)以外の他の(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位をも含めて、(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位80モル%以上、好ましくは90モル%(100モル%が最も好ましい)含む樹脂が好ましい。
また、前記樹脂成分は、解像性、耐ドライエッチング性、そして、微細なパターンの形状を満足するために、前記(a1)単位以外の複数の異なる機能を有するモノマー単位、例えば、以下の構成単位の組み合わせにより構成される。
すなわち、ラクトン単位を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(以下、(a2)または(a2)単位という。)、アルコール性水酸基含有多環式基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(以下、(a3)または(a3)単位という。)、前記(a1)単位の酸解離性溶解抑制基、前記(a2)単位のラクトン単位、および前記(a3)単位のアルコール性水酸基含有多環式基のいずれとも異なる多環式基を含む構成単位(以下、(a4)または(a4)単位という)などである。
これら(a2)、(a3)および/または(a4)は、要求される特性等によって適宜組み合わせ可能である。好ましくは、(a1)と(a2)、(a3)および(a4)から選択される少なくとも一つの単位を含有していることにより、解像性およびレジストパターン形状が良好となる。なお、(a1)〜(a4)単位の内、それぞれについて、異なる単位を複数種を併用してもよい。
そして、メタアクリル酸エステルから誘導される構成単位とアクリル酸エステルから誘導される構成単位は、メタアクリル酸エステルから誘導される構成単位とアクリル酸エステルから誘導される構成単位のモル数の合計に対して、メタアクリル酸エステルから誘導される構成単位を10〜85モル%、好ましくは20〜80モル%、アクリル酸エステルから誘導される構成単位を15〜90モル%、好ましくは20〜80モル%となるように用いると好ましい。
ついで、上記(a1)〜(a4)単位について詳細に説明する。(a1)単位は、酸解離性溶解抑制基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位である。この(a1)における酸解離性溶解抑制基は、露光前は樹脂成分全体をアルカリ不溶とするアルカリ溶解抑制性を有するとともに、露光後は発生した酸の作用により解離し、この樹脂成分全体をアルカリ可溶性へ変化させるものであれば特に限定せずに用いることができる。一般的には、(メタ)アクリル酸のカルボキシル基と、環状または鎖状の第3級アルキルエステルを形成する基、第3級アルコキシカルボニル基、または鎖状アルコキシアルキル基などが広く知られている。
前記(a1)における酸解離性溶解抑制基として、例えば、脂肪族多環式基を含有する酸解離性溶解抑制基を好適に用いることができる。前記多環式基としては、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テロラシクロアルカンなどから1個の水素元素を除いた基などを例示できる。具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基などが挙げられる。この様な多環式基は、ArFレジストにおいて、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。これらの中でもアダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロドデカニル基が工業上好ましい。
前記(a1)として好適なモノマー単位を下記一般式(1)〜(7)に示す。なお、これら一般式(1)〜(7)において、Rは水素原子またはメチル基、R1は低級アルキル基、R2およびR3はそれぞれ独立して低級アルキル基、R4は第3級アルキル基、R5はメチル基、R6は低級アルキル基、R7は低級アルキル基である。上記R1〜R3およびR6〜R7はそれぞれ、炭素数1〜5の低級の直鎖または分岐状アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられる。工業的にはメチル基またはエチル基が好ましい。また、R4は、tert−ブチル基やtert−アミル基のような第3級アルキル基であり、tert−ブチル基である場合が工業的に好ましい。
(a1)単位として、上記に挙げた中でも、特に、一般式(1)、(2)、(3)で表される構成単位は、透明性が高く高解像性で耐ドライエッチング性に優れるパターンが形成できるため、より好ましい。
前記(a2)単位は、ラクトン単位を有するので、現像液との親水性を高めるために有効である。このような(a2)単位は、ラクトン単位を有し、樹脂成分の他の構成単位と共重合可能なものであればよい。例えば、単環式のラクトン単位としては、γ-ブチロラクトンから水素原子1つを除いた基などが挙げられる。また、多環式のラクトン単位としては、ラクトン含有ポリシクロアルカンから水素原子を1つを除いた基などが挙げられる。
前記(a2)として好適なモノマー単位を下記一般式(10)〜(12)に示す。これら一般式において、Rは水素原子またはメチル基である。
前記一般式(12)に示したようなα炭素にエステル結合を有する(メタ)アクリル酸のγ-ブチロラクトンエステル、そして、一般式(10)や(11)のようなノルボルナンラクトンエステルが、特に工業上入手しやすく好ましい。
前記(a3)単位は、アルコール性水酸基含有多環式基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位である。前記アルコール性水酸基含有多環式基における水酸基は極性基であるため、これを用いることにより樹脂成分全体の現像液との親水性が高まり、露光部におけるアルカリ溶解性が向上する。従って、樹脂成分が(a3)を有すると、解像性が向上するため好ましい。そして、(a3)における多環式基としては、前記(a1)の説明において例示したものと同様の脂肪族多環式基から適宜選択して用いることができる。
前記(a3)におけるアルコール性水酸基含有多環式基は特に限定されないが、例えば、水酸基含有アダマンチル基などが好ましく用いられる。さらに、この水酸基含有アダマンチル基が、下記一般式(13)で表されるものであると、耐ドライエッチング性を上昇させ、パターン断面形状の垂直性を高める効果を有するため、好ましい。なお、一般式中、lは1〜3の整数である。
前記(a3)単位は、上記したようなアルコール性水酸基含有多環式基を有し、かつ樹脂成分の他の構成単位と共重合可能なものであればよい。具体的には、下記一般式(14)で表される構成単位が好ましい。なお、一般式(14)中、Rは水素原子またはメチル基である。
前記(a4)単位において、「前記酸解離性溶解抑制基、前記ラクトン単位、および前記アルコール性水酸基含有多環式基のいずれとも異なる」多環式基とは、樹脂成分において、(a4)単位の多環式基が、(a1)単位の酸解離性溶解抑制基、(a2)単位のラクトン単位、および(a3)単位のアルコール性水酸基含有多環式基のいずれとも重複しない多環式基、という意味であり、(a4)が、樹脂成分を構成している(a1)単位の酸解離性溶解抑制基、(a2)単位のラクトン単位、および(a3)単位のアルコール性水酸基含有多環式基をいずれも保持していないことを意味している。
前記(a4)単位における多環式基は、ひとつの樹脂成分において、前記(a1)〜(a3)単位として用いられた構成単位と重複しないように選択されていればよく、特に限定されるものではない。例えば、(a4)単位における多環式基として、前記(a1)単位として例示したものと同様の脂肪族多環式基を用いることができ、ArFポジレジスト材料として従来から知られている多数のものが使用可能である。特にトリシクロデカニル基、アダマンチル基、テトラシクロドデカニル基から選ばれる少なくとも1種以上であると、工業上入手し易いなどの点で好ましい。(a4)単位としては、上記のような多環式基を有し、かつ樹脂成分の他の構成単位と共重合可能なものであればよい。
前記(a4)の好ましい例を下記一般式(15)〜(17)に示す。これらの一般式中、Rは水素原子またはメチル基である。
上記アクリル系樹脂成分の組成は、該樹脂成分を構成する構成単位の合計に対して、(a1)単位が20〜60モル%、好ましくは30〜50モル%であると、解像性に優れ、好ましい。また、樹脂成分を構成する構成単位の合計に対して、(a2)単位が20〜60モル%、好ましくは30〜50モル%であると、解像度に優れ、好ましい。また、(a3)単位を用いる場合、樹脂成分を構成する構成単位の合計に対して、5〜50モル%、好ましくは10〜40モル%であると、レジストパターン形状に優れ、好ましい。(a4)単位を用いる場合、樹脂成分を構成する構成単位の合計に対して、1〜30モル%、好ましくは5〜20モル%であると、孤立パターンからセミデンスパターンの解像性に優れ好ましい。
(a1)単位と(a2)、(a3)および(a4)単位から選ばれる少なくとも一つの単位は、目的に応じ適宜組み合わせることができるが、(a1)単位と(a2)および(a3)単位の3元ポリマーがレジストパターン形状、露光余裕度、耐熱性、解像製に優れ、好ましい。その際の各構成単位(a1)〜(a3)のそれぞれの含有量としては、(a1)が20〜60モル%、(a2)が20〜60モル%、および(a3)が5〜50モル%が好ましい。
また、本発明における樹脂成分樹脂の質量平均分子量(ポリスチレン換算、以下同様)は特に限定するものではないが5000〜30000、さらに好ましくは8000〜20000とされる。この範囲よりも大きいとレジスト溶剤への溶解性が悪くなり、小さいと耐ドライエッチング性やレジストパターン断面形状が悪くなるおそれがある。
また、前記シクロオレフィン系樹脂としては、下記一般式(18)に示す構成単位(a5)と、必要に応じて前記(a1)から得られる構成単位を共重合させた樹脂が好ましい。
(式中、R
8は前記(a1)単位において酸解離性溶解抑制基として例示した置換基であり、mは0〜3の整数である)なお、前記(a5)単位においてmが0の場合は、(a1)単位を有する共重合体として用いることが好ましい。
さらに、前記シルセスキオキサン系樹脂としては、下記一般式(19)で表される構成単位(a6)、および下記一般式(20)で表される構成単位(a7)を有するものが挙げられる。
(式中、R
9は脂肪族の単環または多環式基を含有する炭化水素基からなる酸解離性溶解抑制基であり、R
10は直鎖状、分岐状または環状の飽和脂肪族炭化水素基であり、Xは少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1〜8のアルキル基であり、mは1〜3の整数である)
(式中、R
11は水素原子もしくは直鎖状、分岐状または環状のアルキル基であり、R
12は直鎖状、分岐状または環状の飽和脂肪族炭化水素基であり、Xは少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1〜8のアルキル基である)
上記(a6)および(a7)において、R9の酸解離性溶解抑制基は、露光前のシルセスキオキサン樹脂全体をアルカリ不溶とするアルカリ溶解抑制性を有すると同時に、露光後に酸発生剤から発生した酸の作用により解離し、このシルセスキオキサン樹脂全体をアルカリ可溶性へ変化させる基である。このようなものとして、例えば、下記一般式(21)〜(25)のような、嵩高い、脂肪族の単環または多環式基を含有する炭化水素基からなる酸解離性溶解抑制基が挙げられる。このような酸解離性溶解抑制基を用いることにより、解離後の溶解抑制基がガス化しにくく、脱ガス現象が防止される。
前記R9の炭素数は、解離したときにガス化しにくいと同時に適度なレジスト溶媒への溶解性や現像液への溶解性から好ましくは7〜15、より好ましくは9〜13である。
前記酸解離性溶解抑制基としては、脂肪族の単環または多環式基を含有する炭化水素基からなる酸解離性溶解抑制基であるかぎり、使用する光源に応じて、例えばArFエキシマレーザーのレジスト組成物用の樹脂において、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。一般的には、(メタ)アクリル酸のカルボキシル基と環状の第3級アルキルエステルを形成するものが広く知られている。
特に、脂肪族多環式基を含有する酸解離性溶解抑制基であることが好ましい。脂肪族多環式基としては、ArFレジストにおいて、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。例えば、脂肪族多環式基としては、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テロラシクロアルカン等から1個の水素原子を除いた基を挙げることができ、より具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基などが挙げられる。
上記一般式の中でも一般式(23)で表される2−メチル−2−アダマンチル基、および/または一般式(24)で表される2−エチル−2−アダマンチル基を有するシルセスキオキサン樹脂は、脱ガスが生じにくく、さらに、解像性や耐熱性等のレジスト特性に優れているので好ましい。
また、前記R10およびR11における炭素数は、レジスト溶媒に対する溶解性と分子サイズの制御の点から好ましくは1〜20、より好ましくは5〜12である。特に、環状の飽和脂肪族炭化水素基は、得られるシルセスキオキサン樹脂の高エネルギー光に対する透明性が高いこと、ガラス転移点(Tg)が高くなり、PEB(露光後加熱)時の酸発生剤からの酸の発生をコントロールしやすくなること等の利点を有するので好ましい。
前記環状の飽和脂肪族炭化水素基としては、単環式基であっても、多環式基であってもよい。多環式基としては、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等から2個の水素原子を除いた基を挙げることができ、より具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基などが挙げられる。
これらR10およびR12として、より具体的には、下記一般式(26)〜(31)で表される脂環式化合物あるいはそれらの誘導体から水素原子を2つ除いた基を挙げることができる。
前記誘導体とは、前記化学式(26)〜(31)の脂環式化合物において、少なくとも1つの水素原子が、メチル基、エチル基等の低級アルキル基、酸素原子、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子等の基で置換されたものを意味する。中でも化学式(26)〜(31)なる群から選択される脂環式化合物から水素原子を2つ除いた基が、透明性が高く、また工業的に入手しやすい点で好ましい。
さらに、前記R11は、レジスト溶媒への溶解性から、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜4の低級アルキル基である。このアルキル基としては、より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基等を例示することができる。
R11は、前記候補からシルセスキオキサン樹脂の所望のアルカリ溶解性に応じて適宜選択される。R11が水素原子の場合に最もアルカリ溶解性が高くなる。アルカリ溶解性が高くなると、高感度化できるという利点がある。
一方、前記アルキル基の炭素数が大きくなるほど、また、嵩高くなるほど、シルセスキオキサン樹脂のアルカリ溶解性が低くなる。アルカリ溶解性が低くなると、アルカリ現像液に対する耐性が向上するので、該シルセスキオキサン樹脂を用いてレジストパターンを形成する際の露光マージンが良くなり、露光に伴う寸法変動が小さくなる。また、現像むらがなくなるので、形成されるレジストパターンのエッジ部分のラフネスも改善される。
前記一般式(8)、(9)中のXについては、特に直鎖状のアルキル基が好ましい。アルキル基の炭素数は、シルセスキオキサン樹脂のガラス転移(Tg)点やレジスト溶媒への溶解性から、1〜8、好ましくは1〜4の低級アルキル基である。また、フッ素原子で置換されている水素原子の数が多いほど、200nm以下の高エネルギー光や電子線に対する透明性が向上するので好ましく、最も好ましくは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキル基である。各Xは、それぞれ同一であっても異なっていても良い。なお、一般式(8)中のmは、酸解離性溶解抑制基を解離しやすくするという理由で、1〜3の整数であり、好ましくは1である。
シルセスキオキサン系樹脂として、より具体的には、下記一般式(32)、(33)で表されるものが挙げられる。
(式中、R
5,R
10,R
12,およびnは前出と同様である)
本発明のシルセスキオキサン樹脂を構成する全構成単位中、(a6)および(a7)で表される構成単位の割合は、30〜100モル%、好ましくは70〜100%、より好ましくは100モル%である。
また、(a6)および(a7)で表される構成単位の合計に対し、(a6)で表される構成単位の割合は、好ましくは5〜70モル%、より好ましくは10〜40モル%である。(a7)で表される構成単位の割合は、好ましくは30〜95モル%、より好ましくは60〜90モル%である。
(a6)で表される構成単位の割合を上記範囲内とすることにより、酸解離性溶解抑制基の割合が自ずと決まり、シルセスキオキサン樹脂の露光前後のアルカリ溶解性の変化が、ポジ型レジスト組成物のベース樹脂として好適なものとなる。
シルセスキオキサン系樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、(a6)および(a7)で表される構成単位以外の構成単位を有していても良い。例えばArFエキシマレーザーのレジスト組成物用のシルセスキオキサン樹脂において用いられているもの、例えば、下記一般式(34)で表される、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基(R’)を有するアルキルシルセスキオキサン単位等を例示することができる。
シルセスキオキサン系樹脂の質量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算)は、特に限定するものではないが、好ましくは2000〜15000、さらに好ましくは3000〜8000とされる。この範囲よりも大きいとレジスト溶剤への溶解性が悪くなり、小さいとレジストパターン断面形状が悪くなるおそれがある。
また、質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)、すなわちポリマー分散度は、特に限定するものではないが、好ましくは1.0〜6.0、さらに好ましくは1.5〜2.5である。この範囲よりも大きいと解像度、パターン形状が劣化するおそれがある。
また、本発明のシルセスキオキサン系樹脂は、(a6)および(a7)で表される構成単位によって構成されるシルセスキオキサンを基本骨格に有するポリマーであるので、200nm以下の高エネルギー光や電子線に対する透明性が高い。そのため、本発明のシルセスキオキサン樹脂を含むポジ型レジスト組成物は、例えば、ArFエキシマレーザーより短波長の光源を用いたリソグラフィーにおいて有用であり、特に、単層プロセスでも、線幅150nm以下、さらには120nm以下といった微細なレジストパターンを形成することができる。また、2層レジスト積層体の上層と用いることで、120nm以下、さらには100nm以下の微細なレジストパターンを形成するプロセスにも有用である。
さらに、前記ネガ型レジスト組成物に用いられる樹脂成分としては、慣用されるものであれば限定されないが、具体的には以下のようなものが好ましい。
このような樹脂成分としては、酸によりアルカリ不溶性となる樹脂成分であって、分子内に、たがいに反応してエステルを形成しうる2種の官能基を有し、これがレジスト材料に同時添加する酸発生剤より発生した酸の作用により、脱水してエステルを形成することによりアルカリ不溶性となる樹脂(a8)が、好ましく用いられる。ここでいう、たがいに反応してエステルを形成しうる2種の官能基とは、例えば、カルボン酸エステルを形成するための、水酸基とカルボキシル基またはカルボン酸エステルのようなものを意味する。換言すれば、エステルを形成するための2種の官能基である。このような樹脂としては、例えば、樹脂主骨格の側鎖に、ヒドロキシアルキル基と、カルボキシル基およびカルボン酸エステル基の少なくとも一方とを有するものが好ましい。さらには、前記樹脂成分としては、ジカルボン酸モノエステル単位を有する重合体からなる樹脂成分(a9)も好ましい。
前記(a8)は、換言すれば、下記一般式(35)で表される構成単位を少なくとも有する樹脂成分である。
(式中、R
13は水素原子、C1〜C6のアルキル基、もしくはボルニル基、アダマンチル基、テトラシクロドデシル基、トリシクロデシル基等の多環式環骨格を有するアルキル基である。)
このような樹脂の例としては、α‐(ヒドロキシアルキル)アクリル酸およびα‐(ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキルエステルの中から選ばれる少なくとも1種のモノマーの重合体(単独重合体または共重合体)(a8−1)、およびα‐(ヒドロキシアルキル)アクリル酸およびα‐(ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキルエステルの中から選ばれる少なくとも1種のモノマーと、他のエチレン性不飽和カルボン酸およびエチレン性不飽和カルボン酸エステルの中から選ばれる少なくとも1種のモノマーとの共重合体(a8−2)などが好ましく挙げられる。
上記重合体(a8−1)としては、α‐(ヒドロキシアルキル)アクリル酸とα‐(ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体が好ましく、また、共重合体(a8−2)としては、前記他のエチレン性不飽和カルボン酸やエチレン性不飽和カルボン酸エステルとして、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステルの中から選ばれる少なくとも1種を用いたものが好ましい。
前記α‐(ヒドロキシアルキル)アクリル酸やα‐(ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキルエステルにおけるヒドロキシアルキル基の例としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基などの低級ヒドロキシアルキル基が挙げられる。これらの中でもエステルの形成しやすさからヒドロキシエチル基やヒドロキシメチル基が好ましい。
また、α‐(ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキルエステルのアルキルエステル部分のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、アミル基などの低級アルキル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ボルニル基、アダマンチル基、テトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]ドデシル基、トリシクロ[5.2.1.02.6]デシル基などの橋かけ型多環式環状炭化水素基などが挙げられる。エステル部分のアルキル基が多環式環状炭化水素基のものは、耐ドライエッチング性を高めるのに有効である。これらのアルキル基の中で、特にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの低級アルキル基の場合、エステルを形成するアルコール成分として、安価で容易に入手しうるものが用いられるので好ましい。
低級アルキルエステルの場合は、カルボキシル基と同様にヒドロキシアルキル基とのエステル化が起こるが、橋かけ型多環式環状炭化水素とのエステルの場合は、そのようなエステル化が起こりにくい。そのため、橋かけ型多環式環状炭化水素とのエステルを樹脂中に導入する場合、同時に樹脂側鎖にカルボキシル基があると好ましい。
一方、前記(a8−2)における他のエチレン性不飽和カルボン酸やエチレン性不飽和カルボン酸エステルの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸などの不飽和カルボン酸、これらの不飽和カルボン酸のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ヘキシル、オクチルエステルなどのアルキルエステルなどが挙げられる。また、エステル部分のアルキル基として、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ボルニル基、アダマンチル基、テトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]ドデシル基、トリシクロ[5.2.1.02.6]デシル基などの橋かけ型多環式環状炭化水素基を有するアクリル酸またはメタクリル酸のエステルも用いることができる。これらの中で、安価で容易に入手できることから、アクリル酸およびメタクリル酸、あるいは、これらのメチル、エチル、プロピル、n−ブチルエステルなどの低級アルキルエステルが好ましい。
前記樹脂成分(a8−2)の樹脂においては、α‐(ヒドロキシアルキル)アクリル酸およびα−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキルエステルの中から選ばれる少なくとも1種のモノマー単位と他のエチレン性不飽和カルボン酸およびエチレン性不飽和カルボン酸エステルの中から選ばれる少なくとも1種のモノマー単位との割合は、モル比で20:80ないし95:5の範囲、特に50:50ないし90:10の範囲が好ましい。両単位の割合が上記範囲にあれば、分子内または分子間でエステルを形成しやすく、良好なレジストパターンが得られる。
また、前記樹脂成分(a9)は、下記一般式(36)または(37)で表される構成単位を少なくとも有する樹脂成分である。
(式中、R
14およびR
15は炭素数0〜8のアルキル鎖を表し、R
16は少なくとも2以上の脂環式構造を有する置換基を表し、R
17およびR
18は水素原子、または炭素数1〜8のアルキル基を表す)
このようなジカルボン酸モノエステルモノマー単位を有する樹脂成分を用いたネガ型レジスト組成物は、解像性が高く、ラインエッジラフネスが低減される点で好ましい。また、膨潤耐性が高く、液浸露光プロセスにおいてはより好ましい。このようなジカルボン酸モノエステル化合物としては、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、トラウマチン酸等が挙げられる。
さらに、上記ジカルボン酸モノエステル単位を有する樹脂としては、ジカルボン酸モノエステルモノマーの重合体または共重合体(a9−1)、およびジカルボン酸モノエステルモノマーと、前述したα‐(ヒドロキシアルキル)アクリル酸、α‐(ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキルエステル、他のエチレン性不飽和カルボン酸およびエチレン性不飽和カルボン酸エステルの中から選ばれる少なくとも1種のモノマーとの共重合体(a9−2)などが好ましく挙げられる。上記ネガ型レジストに用いられる樹脂成分は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また樹脂成分の重量平均分子量は1000〜50000、好ましくは2000〜30000である。
上記樹脂の中で、アクリル系樹脂((a1)〜(a4))を用いたポジ型レジストについては、比較的水液浸耐性のある樹脂を含むポジ型レジストであるが、液浸露光における限界解像の寸法に近づくほど、パターンの解像性が劣化しやすくなる。この解像性劣化を促す要因は一つではなく、そのような要因を除去するために、本発明保護膜を形成して浸漬液とレジスト膜を完全に分離することは極めて有効である。
また、シルセスキオキサン系樹脂((a6)および(a7))を用いたポジ型レジスト、あるいは特定の樹脂(a8)および/または(a9)を用いたネガ型レジストについては、上記アクリル系樹脂を用いたポジ型レジストに比べ、液浸耐性が低いものと考えられ、本発明保護膜を用いることにより液浸露光への適正を向上せしめることが可能となる。
さらには、シクロオレフィン系樹脂を用いた場合、本願比較例にもあるように、液浸露光耐性が非常に低いことが知られており、パターン形成自体が不可能となる。このような樹脂を含むポジ型レジストを用いた場合であっても、本発明保護膜を用いることにより液浸露光への適用を可能とすることができる。
また、上記ポジ型あるいはネガ型レジスト用の樹脂成分と組み合わせて用いる酸発生剤としては、従来化学増幅型レジストにおける酸発生剤として公知のものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。
前記酸発生剤の具体例としては、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、(4−メトキシフェニル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート、(p−tert−ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロブタンスルホネート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート、(4−トリフルオロメチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、(4−トリフルオロメチルフェニル)ジフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート、トリ(p−tert−ブチルフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネートなどのオニウム塩などが挙げられる。
オニウム塩のなかでも、トリフェニルスルホニウム塩は、分解しにくく有機ガスを発生しにくいので、好ましく用いられる。トリフェニルスルホニウム塩の配合量は、酸発生剤の合計に対し、好ましくは50〜100モル%、より好ましくは70〜100モル%、最も好ましくは100モル%とすることが好ましい。
また、トリフェニルスルホニウム塩のうち、特に、下記一般式(38)で表される、パーフルオロアルキルスルホン酸イオンをアニオンとするトリフェニルスルホニウム塩は、高感度化できるので、好ましく用いられる。
(式中、R
19、R
20、R
21は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8、好ましくは1〜4の低級アルキル基、または塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子であり;pは1〜12、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜4の整数である。)
上記酸発生剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
その配合量は、前述の樹脂成分100質量部に対し、0.5質量部、好ましくは1〜10質量部とされる。0.5質量部未満ではパターン形成が十分に行われないし、30質量部を超えると、均一な溶液が得られにくく、保存安定性が低下する原因となるおそれがある。
また、本発明のポジ型あるいはネガ型レジスト組成物は、前記樹脂成分と酸発生剤と、後述する任意の成分を、好ましくは有機溶剤に溶解させて製造される。
有機溶剤としては、前記樹脂成分と酸発生剤を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来化学増幅型レジストの溶剤として公知のものの中から任意のものを1種または2種以上適宜選択して用いることができる。
例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類や、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、またはジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテルまたはモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類およびその誘導体や、ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルピン酸メチル、ピルピン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類などを挙げることができる。これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
また、このようなポジ型あるいはネガ型レジストにおいては、レジストパターン形状、経時安定性などを向上させるために、さらに、クエンチャーとして、公知のアミン好ましくは、第2級低級脂肪族アミンや第3級低級脂肪族アミン等や、有機カルボン酸やリンのオキソ酸などの有機酸を含有させることができる。
前記低級脂肪族アミンとは、炭素数5以下のアルキルまたはアルキルアルコールのアミンを言い、この第2級や第3級アミンの例としては、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリベンチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられるが、特にトリエタノールアミンのようなアルカノールアミンが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのアミンは、前記樹脂成分に対して、通常0.01〜2.0質量%の範囲で用いられる。
前記有機カルボン酸としては、例えば、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適である。
前記リンのオキソ酸若しくはその誘導体としては、リン酸、リン酸ジ−n−ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステルなどのリン酸またはそれらのエステルのような誘導体、ホスホン酸、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸−ジ−n−ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステルなどのホスホン酸およびそれらのエステルのような誘導体、ホスフィン酸、フェニルホスフィン酸などのホスフィン酸およびそれらのエステルのような誘導体が挙げられ、これらの中で特にホスホン酸が好ましい。
前記有機酸は、樹脂成分100質量部当り0.01〜5.0質量部の割合で用いられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの有機酸は、好ましくは前記アミンと等モル以下の範囲で用いられる。
本発明のポジ型レジスト組成物には、さらに所望により混和性のある添加剤、例えばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤などを添加含有させることができる。
さらには、本発明ネガ型レジスト組成物においては、いっそう架橋密度を向上させ、レジストパターンの形状や解像性や耐ドライエッチング性を向上させる目的で、必要に応じて架橋剤を配合しても良い。
この架橋剤としては、特に制限はなく、従来化学増幅型のネガ型レジストにおいて使用されている公知の架橋剤の中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。この架橋剤の例としては、2,3−ジヒドロキシ−5−ヒドロキシメチルノルボルナン、2−ヒドロキシ−5,6−ビス(ヒドロキシメチル)ノルボルナン、シクロヘキサンジメタノール、3,4,8(または9)−トリヒドロキシトリシクロデカン、2−メチル−2−アダマンタノール、1,4−ジオキサン−2,3−ジオール、1,3,5−トリヒドロキシシクロヘキサンなどのヒドロキシル基またはヒドロキシアルキル基あるいはその両方を有する脂肪族環状炭化水素またはその含酸素誘導体、およびメラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、尿素、エチレン尿素、グリコールウリルなどのアミノ基含有化合物にホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒドと低級アルコールを反応させ、該アミノ基の水素原子をヒドロキシメチル基または低級アルコキシメチル基で置換した化合物、具体的にはヘキサメトキシメチルメラミン、ビスメトキシメチル尿素、ビスメトキシメチルビスメトキシエチレン尿素、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラブトキシメチルグリコールウリルなどを挙げることができるが、特に好ましいのはテトラブトキシメチルグリコールウリルである。これら架橋剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
次に、本発明の保護膜を用いた液浸露光法によるレジストパターン形成方法について、説明する。まず、シリコンウェーハ等の基板上に、慣用のレジスト組成物をスピンナーなどで塗布した後、プレベーク(PAB処理)を行う。なお、基板とレジスト組成物の塗布層との間には、有機系または無機系の反射防止膜を設けた2層積層体とすることもできる。
ここまでの工程は、周知の手法を用いて行うことができる。操作条件等は、使用するレジスト組成物の組成や特性に応じて適宜設定することが好ましい。
次に、上記のようにして硬化されたレジスト膜(単層、複数層)の表面に、例えば、「鎖式パーフルオロアルキルポリエーテルと環式パーフルオロアルキルポリエーテルからなる混合樹脂をパーフルオロトリブチルアミンに溶解せしめた組成物」などの保護膜形成材料組成物を均一に塗布した後、硬化させることによって、レジスト保護膜を形成する。
このようにして保護膜により覆われたレジスト膜が形成された基板を、液浸露光用液体中に浸漬する。
この浸漬状態の基板のレジスト膜に対して、所望のマスクパターンを介して選択的に露光を行う。したがって、このとき、露光光は、液浸露光用液体と保護膜とを通過してレジスト膜に到達することになる。
このとき、レジスト膜は保護膜によって、液浸露光用液体から完全に遮断されており、液浸露光用液体の侵襲を受けて膨潤等の変質を被ることも、逆に液浸露光用液体中に成分を溶出させて液浸露光用液体の屈折率等の光学的特性を変質させることもない。
この場合の露光に用いる波長は、特に限定されず、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、EUV(極紫外線)、VUV(真空紫外線)、電子線、X線、軟X線などの放射線を用いて行うことができる。それは、主に、レジスト膜の特性によって決定される。
上記のように、本発明のレジストパターン形成方法においては、露光時に、レジスト膜上に、空気の屈折率よりも大きくかつ使用されるレジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する液浸露光用液体を介在させる。このような液浸露光用液体としては、例えば、水、またはフッ素系不活性液体等が挙げられる。該フッ素系不活性液体の具体例としては、C3HCl2F5、C4F9OCH3、C4F9OC2H5、C5H3F7等のフッ素系化合物を主成分とする液体が挙げられる。これらのうち、コスト、安全性、環境問題及び汎用性の観点から、水を用いることが好ましい。
また、使用する液浸露光用液体の屈折率としては、「空気の屈折率よりも大きくかつ使用されるレジスト組成物の屈折率よりも小さい」範囲内であれば、特に制限されない。
前記液浸状態での露光工程が完了したら、基板を液浸露光用液体から取り出し、基板から液体を除去し、その後、保護膜を剥離する。本発明保護膜除去用溶剤は、この保護膜の剥離に用いることができ、上記フッ素樹脂を溶解せしめるフッ素系溶剤をそのまま用いることができる。ただし、洗浄後の乾燥性の点から、沸点150℃以下程度の溶剤を用いることが好ましく、この観点からパーフルオロ(2−ブチル)テトラヒドロフラン(沸点:102℃)が好ましい。
次いで、露光したレジスト膜に対してPEB(露光後加熱)を行い、続いて、アルカリ性水溶液からなるアルカリ現像液を用いて現像処理する。ただし、ここでいうPEBは、保護膜の剥離工程前に行っても良い。また、現像処理に続いてポストベークを行っても良い。そして、好ましくは純水を用いてリンスを行う。この水リンスは、例えば、基板を回転させながら基板表面に水を滴下または噴霧して、基板上の現像液および該現像液によって溶解したレジスト組成物を洗い流す。そして、乾燥を行うことにより、レジスト膜がマスクパターンに応じた形状にパターニングされた、レジストパターンが得られる。
このようにしてレジストパターンを形成することにより、微細な線幅のレジストパターン、特にピッチが小さいラインアンドスペースパターンを良好な解像度により製造することができる。なお、ここで、ラインアンドスペースパターンにおけるピッチとは、パターンの線幅方向における、レジストパターン幅とスペース幅の合計の距離をいう。
以下、本発明の実施例を説明するが、これら実施例は本発明を説明するための例示に過ぎず、なんら本発明を限定するものではない。なお、以下の説明においては、実施例とともに比較例も記載している。
(実施例1)
下記の樹脂成分、酸発生剤、および含窒素有機化合物を有機溶剤に均一に溶解し、ポジ型レジスト組成物1を調整した。樹脂成分としては、下記化学式(39a)、(39b)、(39c)に示した3種の構成単位からなるメタクリル酸エステル・アクリル酸エステルの共重合体100質量部を用いた。樹脂成分の調製に用いた各構成単位p、q、rの比は、p=50モル%、q=30モル%、r=20モル%とした。調製した樹脂成分の質量平均分子量は10000であった。
前記酸発生剤としては、トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート3.5質量部と、(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート1.0質量部を用いた。また、前記有機溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートと乳酸エチルの混合溶媒1900質量部との混合溶剤(質量比6:4)を用いた。さらに、前記含窒素有機化合物としては、トリエタノールアミン0.3質量部を用いた。
上記のようにして製造したポジ型レジスト組成物1を用いて、レジストパターンの形成を行った。まず、有機系反射防止膜組成物「AR−19」(商品名、Shipley社製)をスピナーを用いてシリコンウェーハ上に塗布し、ホットプレート上で215℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚82nmの有機系反射防止膜を形成した。そして、この反射防止膜上に、前記ポジ型レジスト組成物1をスピナーを用いて塗布し、ホットプレート上で115℃、90秒間プレベークして、乾燥させることにより、反射防止膜上に膜厚150nmのレジスト膜を形成した。
該レジスト膜上に、環式パーフルオロアルキルポリエーテルを主成分とするフッ素系樹脂{デムナムS−20(ダイキン工業社製)及びサイトップ(旭硝子社製環式パーフルオロアルキルポリエーテル)(混合重量比=1:5)からなる混合樹脂}をパーフルオロトリブチルアミンに溶解させ、樹脂濃度を2.5質量%とした保護膜材料を回転塗布し、90℃にて60秒間加熱し、膜厚37nmの保護膜を形成した。
次に、マスクパターンを介して、露光装置NSR−S302B(ニコン社製、NA(開口数)=0.60、σ=0.75)により、ArFエキシマレーザー(波長193nm)を用いて、パターン光を照射(露光)した。そして、液浸露光処理として、該露光後のレジスト膜を設けたシリコンウェーハを回転させながら、レジスト膜上に23℃にて純水を5分間滴下し続けた。この部分の工程は、実際の製造プロセスでは、完全液浸状態にて露光する工程であるが、先の液浸露光法に対する分析に基づいて、光学系における露光自体は完全に行われることは理論的にも保証されるので、先にレジスト膜を露光しておき、浸漬液のレジスト膜への影響のみを評価できるように、露光後に液浸露光用液体である純水をレジスト膜に負荷させるという簡略的な構成としている。
前記純水の滴下工程の後、115℃、90秒間の条件でPEB処理した後、保護膜をパーフルオロ(2−ブチル)テトラヒドロフランを用いて除去した。その後、さらに23℃にてアルカリ現像液で60秒間現像した。アルカリ現像液としては、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いた。
このようにして得た130nmのラインアンドスペースが1:1となるレジストパターンを走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、このパターンプロファイルは良好なものであり、ゆらぎ等は全く観察されなかった。
(実施例2)
上記実施例1と同様の手順で、基板上に反射防止膜、ArFポジ型レジスト、保護膜を形成した。この保護膜を形成した基板に対して、プリズムと液体と波長193nmの2光束干渉露光を用いた株式会社ニコン製の実験装置を用いて液浸露光を行った(このプリズム下面は水を介して保護膜と接触していた)。前記実施例1と同様にPEB処理し、保護膜をパーフルオロ(2−ブチル)テトラヒドロフランを用いて除去した。その後、該レジスト膜を、前記実施例1と同様の条件にて現像処理した。
このようにして得た65nmのラインアンドスペースが1:1となるレジストパターンを走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、このパターンンプロファイルは良好なものであり、ゆらぎ等は全く観察されなかった。さらに、得られたパターンに対して、集束イオンビームSEM(FEI社製Altura835)にて断面形状を観察したところ、断面形状は矩形の良好なものであることが分かった。
(比較例1)
保護膜を設けなかったこと以外は、前記実施例2と同様の操作にて、同様のレジストパターンを形成した。その結果、感度の変動こそ見られなかったものの、パターンプロファイルにおいて若干のゆらぎ(ラインの部分的狭隘化)が観察された。さらに、得られたパターンに対して、集束イオンビームSEM(FEI社製Altura835)にて断面形状を観察したところ、僅かだがTトップ形状が観察された。
(比較例2)
下記の樹脂成分、酸発生剤、および含窒素有機化合物を有機溶媒に均一に溶解し、ポジ型レジスト組成物2を調製した。
前記樹脂成分としては、下記化学式(40)に示される構成単位からなる重合体100質量部を用いた。調製した樹脂成分の質量平均分子量は10000であった。
前記酸発生剤としては、トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート3.5質量部と、(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート1.0質量部を用いた。また、前記有機溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートと乳酸エチルの混合溶媒1900質量部との混合溶剤(質量比6:4)を用いた。さらに、前記含窒素有機化合物としては、トリエタノールアミン0.3質量部を用いた。
上記のようにして製造したポジ型レジスト組成物2を用いて、レジストパターンの形成を行った。まず、有機系反射防止膜組成物「AR−19」(商品名、Shipley社製)をスピナーを用いてシリコンウェーハ上に塗布し、ホットプレート上で215℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚82nmの有機系反射防止膜を形成した。そして、この反射防止膜上に、前記ポジ型レジスト組成物1をスピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で115℃、90秒間プレベークして、乾燥させることにより、反射防止膜上に膜厚150nmのレジスト膜を形成した。次に、マスクパターンを介して、露光装置NSR−S302B(ニコン社製、NA(開口数)=0.60、σ=0.75)により、ArFエキシマレーザー(波長193nm)を用いて、パターン光を照射(露光)した。そして、液浸露光処理として、該露光後のレジスト膜を設けたシリコンウェーハを回転させながら、レジスト膜上に23℃にて純水を5分間滴下し続けた。この部分の工程は、実際の製造プロセスでは、完全液浸状態にて露光する工程であるが、先の液浸露光法に対する分析に基づいて、光学系における露光自体は完全に行われることは理論的にも保証されるので、先にレジスト膜を露光しておき、液浸露光用液体のレジスト膜への影響のみを評価できるように、露光後に液浸露光用液体である純水をレジスト膜に負荷させるという簡略的な構成としている。次に、115℃、90秒間の条件でPEB処理し、さらに23℃にてアルカリ現像液で60秒間現像した。アルカリ現像液としては、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いた。
このようにして得られた130nmのラインアンドスペースが1:1となるレジストパターンを走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、また、その時の感度(Eth)を求めた。その結果、測定感度は9.1mJ/cm2となり、以下に比較するように、感度劣化が大きいことが判明した。
一方、本比較例2のレジスト組成物2を用いて、上記液浸露光処理を行なわず、従来行われている空気層を介した露光による形成方法にてレジストパターンの形成を行ったところ、感度は8.4mJ/cm2であった。通常露光の感度に対する液浸露光処理の感度比を求めたところ(9.1/8.4=)108.3であった。
(比較例3)
下記の樹脂成分、酸発生剤、および含窒素有機化合物を有機溶媒に均一に溶解し、ポジ型レジスト組成物3を調製した。樹脂成分としては、ヒドロキシスチレン単位63モル%、スチレン単位24モル%及びtert−ブチルアクリレート単位13モル%の構成単位からなる共重合体100質量部を用いた。調製した樹脂成分の質量平均分子量は12000であった。酸発生剤としては、ビス(tert−ブチルフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート2.8質量部と、ジメチルモノフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート1.0質量部を用いた。有機溶媒としては、乳酸エチル600質量部を用いた。含窒素有機化合物としては、トリエタノールアミン0.26質量部を用い、その他の成分として、フェニルホスホン酸0.28質量部を用いた。
上記のようにして製造したポジ型レジスト組成物3を用いて、レジストパターンの形成を行った。まず、有機系反射防止膜組成物「AR−3」(商品名、Shipley社製)をスピンナーを用いてシリコンウェーハ上に塗布し、ホットプレート上で220℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚62nmの有機系反射防止膜を形成した。そして、上記で得られたポジ型レジスト組成物3をスピンナーを用いて反射防止膜上に塗布し、ホットプレート上で110℃、90秒間プレベークして、乾燥させることにより、反射防止膜上に膜厚280nmのレジスト膜を形成した。次に、マスクパターンを介して、露光装置NSR−S203(ニコン社製、NA(開口数)=0.60、σ=0.75)により、KrFエキシマレーザー(波長248nm)を用いて、パターン光を照射(露光)した。そして、液浸露光処理として、該露光後のレジスト膜を設けたシリコンウェーハを回転させながら、23℃にて純水をレジスト膜上に5分間滴下し続けた。この部分の工程は、実際の製造プロセスでは、完全液浸状態にて露光する工程であるが、先の液浸露光法に対する分析に基づいて、光学系の露光自体は完全に行われることは理論的にも保証されるので、先にレジスト膜を露光しておき、液浸露光用液体のレジスト膜への影響のみを評価できるように、露光後に液浸露光用液体である純水をレジスト膜に負荷させるという簡略的な構成としている。次に、110℃、90秒間の条件でPEB処理し、さらに23℃にてアルカリ現像液で60秒間現像した。アルカリ現像液としては2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いた。
このようにして得られた140nmのラインアンドスペースが1:1となるレジストパターンを走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、またそのときの感度(Eth)を求めた。その結果、感度は22.0mJ/cm2であった。また、レジストパターンはT−トップ形状となり、表面荒れが見られた。
一方、本比較例のレジスト組成物3を用いて、上記液浸露光処理を行なわず、従来行われている空気層を介した露光による形成方法にてレジストパターンの形成を行ったところ、感度は20.0mJ/cm2であった。この通常露光の感度に対する液浸露光処理の感度比を求めたところ(22.0/20.0=)108.8であった。また、レジストパターンの表面荒れは見られず、良好なものであった。
(比較例4)
下記の樹脂成分、酸発生剤、および含窒素有機化合物を有機溶媒に均一に溶解し、ポジ型レジスト組成物4を調製した。樹脂成分としては、ヒドロキシスチレン単位64モル%、1−エトキシ−1−エチルオキシスチレン単位36モル%構成単位からなる共重合体70質量部とヒドロキシスチレン単位67モル%、テトラヒドロピラニルオキシスチレン単位33モル%構成単位からなる共重合体30質量部の混合樹脂を用いた。調製した樹脂成分の質量平均分子量はそれぞれ8000であった。酸発生剤としては、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン4質量部、tert−ブチルフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート1質量部を用いた。有機溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートと乳酸エチルの混合溶媒600質量部との混合溶剤(質量比6:4)を用いた。含窒素有機化合物としては、トリイソプロパノールアミン0.52質量部を用い、その他の成分として、ドデカン酸0.54質量部を用いた。
上記のようにして製造したポジ型レジスト組成物4を用いて、レジストパターンの形成を行った。まず、有機系反射防止膜組成物「DUV−44」(商品名、ブリューワサイエンス社製)をスピンナーを用いてシリコンウェーハ上に塗布し、ホットプレート上で225℃、90秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚65nmの有機系反射防止膜を形成した。そして、上記で得られたポジ型レジスト組成物4をスピンナーを用いて反射防止膜上に塗布し、ホットプレート上で90℃、90秒間プレベークして、乾燥させることにより、反射防止膜上に膜厚280nmのレジスト膜を形成した。次に、マスクパターンを介して、露光装置NSR−S203(ニコン社製、NA(開口数)=0.60、σ=0.75)により、KrFエキシマレーザー(波長248nm)を用いて、パターン光を照射(露光)した。そして、液浸露光処理として、該露光後のレジスト膜を設けたシリコンウェーハを回転させながら、23℃にて純水をレジスト膜上に5分間滴下し続けた。この部分の工程は、実際の製造プロセスでは、完全液浸状態にて露光する工程であるが、先の液浸露光法に対する分析に基づいて、光学系の露光自体は完全に行われることは理論的にも保証されるので、先にレジスト膜を露光しておき、液浸露光用液体のレジスト膜への影響のみを評価できるように、露光後に液浸露光用液体である純水をレジスト膜に負荷させるという簡略的な構成としている。次に、110℃、90秒間の条件でPEB処理し、さらに23℃にてアルカリ現像液で60秒間現像した。アルカリ現像液としては2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いた。
このようにして得られた140nmのラインアンドスペースが1:1となるレジストパターンを走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、またそのときの感度(Eth)を求めた。その結果、感度は26.5mJ/cm2であった。また、レジストパターンはTトップ形状となり、表面荒れが見られた。
一方、本比較例のレジスト組成物4を用いて、上記液浸露光処理を行なわず、従来行われている空気層を介した露光による形成方法にてレジストパターンの形成を行ったところ、感度は16.5mJ/cm2であった。通常露光の感度に対する液浸露光処理の感度比を求めたところ(26.5/16.5=)156.6であった。また、レジストパターンは表面荒れは見られず、良好なものであった。
前記実施例1および2では、保護膜を形成した液浸露光においても、感度等のパターン形成に必要な特性の劣化を伴わず、良好なプロファイルの130nmのラインアンドスペースのパターンが得られることが示されている。また、前記実施例で用いたレジスト膜は、ポジ型のレジスト膜であったが、ネガ型のレジスト膜にも同様に適用できることは明らかである。
(実施例3)
下記樹脂成分、酸発生剤、および含窒素有機化合物を有機溶剤に均一に溶解し、ポジ型レジストを調整した。樹脂成分としては、前記一般式(40)に示した構成単位からなる重合体100質量部を用いた。樹脂成分の質量平均分子量は10000であった。前記酸発生剤としては、トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート3.5質量部と、(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート1.0質量部を用いた。また、前記有機溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートと乳酸エチルの混合溶媒1900質量部との混合溶剤(質量比6:4)を用いた。さらに、前記含窒素有機化合物としては、トリエタノールアミン0.3質量部を用いた。
上記のようにして製造したポジ型レジスト組成物を用いた以外は、実施例1と同様の手順で、基板上に反射防止膜、ArFポジ型レジスト、保護膜を形成した(ただし、レジスト膜厚のみ変更し140nmとした)。この保護膜を形成した基板に対して、実施例2と同様の手段で浸漬露光処理を行った。該レジスト膜を、前記実施例1と同様の条件にて保護膜を除去し、PEB処理し、続いて現像処理した。
このようにして得た90nmのラインアンドスペースが1:1となるレジストパターンを走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、このパターンプロファイルは良好なものであり、ゆらぎ(パターンの狭隘化)等は全く観察されなかった。
(比較例5)
上記実施例3にて示したポジ型ホトレジストを用いて、保護膜を形成しなかった以外は全く同様の手段で、90nmのラインアンドスペースが1:1となるレジストパターンを形成したものの、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、パターンのゆらぎ、膨潤等が激しくパターンは観察できなかった。
(実施例4)
下記樹脂成分、酸発生剤、および含窒素有機化合物を有機溶剤に均一に溶解し、ポジ型レジスト組成物を調整した。樹脂成分としては、下記一般式(41)、(42)に示した構成単位からなる重合体(式(41)のユニット85質量部と式(42)のユニット15質量部)を用いた。樹脂成分の質量平均分子量は10000であった。前記酸発生剤としては、トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート3.0質量部を用いた。また、前記有機溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートと乳酸エチルの混合溶媒1900質量部との混合溶剤(質量比6:4)を用いた。さらに、前記含窒素有機化合物としては、トリエタノールアミン0.25質量部を用いた。
(式(42)中、j=50モル%、k=30モル%、l=20モル%である)
上記のようにして製造したポジ型レジストを用いた以外は、実施例1と同様の手順で、基板上に反射防止膜、ArFポジ型レジスト、保護膜を形成した(ただし、レジスト膜厚のみ変更し140nmとした)。この保護膜を形成した基板に対して、実施例2と同様の手段で液浸露光処理を行った。該レジスト膜を、前記実施例1と同様の条件にて保護膜を除去し、PEB処理し、続いて現像処理した。
このようにして得た90nmのラインアンドスペースが1:1となるレジストパターンを走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、このパターンプロファイルは良好なものであり、ゆらぎ(パターンの狭隘化)等は全く観察されなかった。
(比較例6)
上記実施例4にて示したポジ型ホトレジストを用いて、保護膜を形成しなかった以外は全く同様の手段で、90nmのラインアンドスペースが1:1となるレジストパターンを形成したものの、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、パターンのゆがみ、膨潤等が僅かに発生していた。
(実施例5)
下記樹脂成分、酸発生剤、および含窒素有機化合物を有機溶剤に均一に溶解し、ネガ型レジスト組成物を調整した。樹脂成分としては、下記一般式(43)に示した構成単位からなる重合体を用いた。この樹脂成分に対して、10質量%のテトラブトキシメチル化グリコールウリルからなる架橋剤と、1質量%のトリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネートからなる酸発生剤と、0.6質量%の4−フェニルピリジンからなるアミン成分とを、プロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解し、固形分重量を8.1質量%としたネガ型レジスト材料を用いた。
上記のようにして製造したネガ型レジスト組成物を用いて、レジストパターンの形成を行った。まず、有機系反射防止膜組成物「AR−19」(商品名、Shipley社製)をスピナーを用いてシリコンウェーハ上に塗布し、ホットプレート上で215℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚32nmの有機系反射防止膜を形成した。そして、この反射防止膜上に、前記ネガ型レジスト組成物をスピナーを用いて塗布し、ホットプレート上で110℃、60秒間プレベークして、乾燥させることにより、反射防止膜上に膜厚300nmのレジスト膜を形成した。該レジスト膜上に、デムナムS−10(ダイキン工業社製)およびサイトップ(旭硝子社製)(混合重量比=1:5)からなる混合樹脂をパーフルオロトリブチルアミンに溶解させ、樹脂濃度を2.5wt%とした保護膜材料を回転塗布し、90℃にて60秒間加熱し、膜厚37nmの保護膜を形成した。この保護膜を形成した基板に対して、実施例1と同様の手段で露光処理、続いてレジスト膜上への水の滴下処理を行った(ただし、水の滴下処理は2分間とした)。該レジスト膜を、前記実施例1と同様の条件にて保護膜を除去し、PEB処理し、続いて現像処理した。
このようにして得た160nmのラインアンドスペースが1:1となるレジストパターンを走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、このパターンプロファイルは良好なものであり、ゆらぎ(パターンの狭隘化)、膨潤等は全く観察されなかった。
(比較例7)
上記実施例5にて示したネガ型ホトレジストを用いて、保護膜を形成しなかった以外は全く同様の手段で、160nmのラインアンドスペースが1:1となるレジストパターンを形成したものの、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、パターンのゆがみ、膨潤等が僅かに発生していた。
(実施例6)
下記の樹脂成分、酸発生剤、および含窒素有機化合物を有機溶剤に均一に溶解し、ポジ型レジスト組成物を調整した。樹脂成分としては、下記一般式(44)に示した3種の構成単位からなるメタクリル酸エステルの共重合体100質量部を用いた。樹脂成分の調製に用いた各構成単位s、t、uの比を、s=40モル%、t=40モル%、u=20モル%とした。調製した樹脂成分の質量平均分子量は10000であった。
前記酸発生剤としては、トリ−(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート0.8質量部と、(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート2.0質量部を用いた。また、前記有機溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートと乳酸エチルとの混合溶剤1520質量部(質量比6:4)とγ−ブチロラクトン380質量部との混合溶剤を用いた。さらに、前記含窒素有機化合物としては、トリエタノールアミン0.25質量部を用いた。
上記のようにして製造したポジ型レジスト組成物を用いて、レジストパターンの形成を行った。まず、有機系反射防止膜組成物「AR−19」(商品名、Shipley社製)をスピンナーを用いてシリコンウェーハ上に塗布し、ホットプレート上で215℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚82nmの有機系反射防止膜を形成した。そして、この反射防止膜上に、前記ポジ型レジスト組成物をスピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で130℃、90秒間プレベークして、乾燥させることにより、反射防止膜上に膜厚200nmのレジスト膜を形成した。
該レジスト膜上に、デムナムS−20(ダイキン工業社製)及びサイトップ(旭硝子社製)(混合重量比=1:5)からなる混合樹脂をパーフルオロトリブチルアミンに溶解させ、樹脂濃度を2.5wt%とした保護膜材料を回転塗布し、90℃にて60秒間加熱し、膜厚37nmの保護膜を形成した。
次に、マスクパターンを介して、露光装置NSR−S302B(ニコン社製、NA(開口数)=0.60、2/3輪帯照明)により、ArFエキシマレーザー(波長193nm)を用いて、パターン光を照射(露光)した。そして、液浸露光処理として、該露光後のレジスト膜を設けたシリコンウェーハを回転させながら、レジスト膜上に23℃にて純水を2分間滴下し続けた。この部分の工程は、実際の製造プロセスでは、完全液浸状態にて露光する工程であるが、先の液浸露光法に対する分析に基づいて、光学系における露光自体は完全に行われることは理論的にも保証されるので、先にレジスト膜を露光しておき、浸漬液のレジスト膜への影響のみを評価できるように、露光後に液浸露光用液体である純水をレジスト膜に負荷させるという簡略的な構成としている。
前記純水の滴下工程の後、130℃、90秒間の条件でPEB処理し、その後、保護膜をパーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)を用いて除去した。さらに23℃にてアルカリ現像液で60秒間現像した。アルカリ現像液としては、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いた。
このようにして得た130nmのラインアンドスペースが1:1となるレジストパターンを走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、このパターンプロファイルは良好なものであり、ゆらぎ等は全く観察されなかった。また、その際の感度は17.0mJ/cm2で、焦点深度幅は1.0μmであった。さらに、130nmのラインパターンが±10%内の範囲で得られる露光余裕度は13.15%と良好であった。
(実施例7)
下記樹脂成分、酸発生剤、および含窒素有機化合物を有機溶剤に均一に溶解し、ポジ型レジスト組成物を調整した。樹脂成分としては、前記一般式(41)と下記一般式(45)とにそれぞれ示した構成単位からなる重合体(式(41)のユニット85質量部と式(45)のユニット15質量部)を用いた。樹脂成分の質量平均分子量は10000であった。前記酸発生剤としては、トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート2.4質量部を用いた。また、前記有機溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートと乳酸エチルの混合溶媒1900質量部との混合溶剤(質量比6:4)を用いた。さらに、前記含窒素有機化合物としては、トリエタノールアミン0.27質量部用いた。有機カルボン酸としてサリチル酸0.26質量を用いた。
(x=40モル%、y=40モル%、z=20モル%である)
上記レジスト組成物を、実施例1と同様の手順で、基板上に反射防止膜、上記調製したポジ型レジスト、保護膜を形成した(ただし、レジスト膜厚を変更し150nmとし、プレベーク温度を95℃で90秒間、PEBを90℃で90秒間に変更した)。この保護膜を形成した基板に対して、実施例2と同様の手段で液浸露光処理を行った。該レジスト膜を、PEB処理した後、前記実施例1と同様の条件にて保護膜を除去し、大気中のアミン濃度が約5ppbの場所で180秒間引き置き、続いて現像処理した。
このようにして得た130nmのラインアンドスペースが1:1となるレジストパターンを走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、このパターンプロファイルは良好なものであり、ゆらぎ(パターンの狭隘化)等は全く観察されなかった。また、その際の感度は26.0mJ/cm2であった。
(比較例8)
保護膜を用いなかったこと以外は、上記実施例7で調製したレジスト組成物を用いて、実施例7と同様な方法で180秒間引き置いた後、レジストパターンの形成を行った。
130nmのラインアンドスペースが1:1となるレジストパターンを走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、このパターンプロファイルはT−トップ形状となった。また、その際の感度は33.0mJ/cm2であった。これは、保護膜を用いなかったことで、大気中のアミンによりレジスト膜上の酸が失活したためである。
実施例7、比較例8の結果からわかるように、保護膜を用いることで、大気中のアミンに対する影響をなくすことができる。すなわち、引き置き経時安定性(post
exposure delay)が飛躍的に向上する
(実施例8)
(A)成分として、下記化学式(46)のシルセスキオキサン樹脂85質量部と、下記化学式(47)に示した3種の構成単位からなるメタクリル酸エステル・アクリル酸エステルの共重合体15質量部との混合樹脂を用いた。前記化学式(47)の共重合体の各構成単位v、w、xの比は、v=40モル%、w=40モル%、x=20モル%であり、その質量平均分子量は10000であった。
(B)成分としては、トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート2.4質量部を用いた。(C)成分としては、乳酸エチルとγ−ブチロラクトンとの混合溶媒1900質量部(質量比8:2)との混合溶剤を用いた。(D)成分としては、トリエタノールアミン0.27質量部を用いた。(E)成分としてサリチル酸0.26質量部を用いた。
次に、有機系反射防止膜組成物「AR−19」(商品名、Shipley社製)を、スピンナーを用いてシリコンウェーハ上に塗布し、ホットプレート上で215℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚82nmの有機系反射防止膜を形成した。スピンナーを用いて反射防止膜上にポジ型レジスト組成物を塗布し、ホットプレート上で95℃、90秒間プレベークして、乾燥させることにより、反射防止膜上に膜厚150nmのレジスト層を形成した。次に、該レジスト膜上に、環式パーフルオロアルキルポリエーテルを主成分とするフッ素系樹脂{デムナムS−10(ダイキン工業社製)およびサイトップ(旭硝子社製環式パーフルオロアルキルポリエーテル)(混合重量比=1:5)からなる混合樹脂}をパーフルオロトリブチルアミンに溶解させ、樹脂濃度を2.5質量%としたフッ素系保護膜材料を回転塗布し、90℃にて60秒間加熱し、膜厚37nmの保護膜を形成した。そして、評価試験2として、液浸露光は、ニコン社作成の実験装置を用いて、プリズムと水と193nmの2本の光束干渉による実験(二光束干渉実験)を行った。同様の方法は、前記非特許文献2にも開示されており、実験室レベルで簡易にラインアンドスペースパターンが得られる方法として公知である。
実施例8における液浸露光においては保護膜上面とプリズム下面との間に液浸露光用液体として、水層を形成した。なお、露光量はラインアンドスペースパターンが安定して得られる露光量を選択した。次に、90℃で90秒間の条件でPEB処理し、保護膜をパーフルオロ(2−ブチル)テトラヒドロフランを用いて除去した。その後、実施例1と同様に現像処理を行ったところ、65nmのライアンドスペース(1:1)が得られた。そのパターン形状は矩形性の高いものであった。