JP2006045605A - 中空状動力伝達シャフトの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】軸方向に肉厚差や焼入れ率の差がある場合でも、安定した品質を確保することができる中空状動力伝達シャフトの製造方法を提供することができる。
【解決手段】中空状シャフト素材1’の外周表面1gの側に、移動式の誘導加熱コイル5を外装し、誘導加熱コイル5に所定周波数の高周波電流を通じつつ、これを軸方向に移動させて、外周表面1gの側から高周波焼入れを行う。その際、比較的厚肉の小径部1bに対しては、誘導加熱コイル5に通じる高周波電流の周波数を相対的に低くし、比較的薄肉の大径部1aに対しては、誘導加熱コイル5に通じる高周波電流の周波数を相対的に高くする。
【選択図】図3
【解決手段】中空状シャフト素材1’の外周表面1gの側に、移動式の誘導加熱コイル5を外装し、誘導加熱コイル5に所定周波数の高周波電流を通じつつ、これを軸方向に移動させて、外周表面1gの側から高周波焼入れを行う。その際、比較的厚肉の小径部1bに対しては、誘導加熱コイル5に通じる高周波電流の周波数を相対的に低くし、比較的薄肉の大径部1aに対しては、誘導加熱コイル5に通じる高周波電流の周波数を相対的に高くする。
【選択図】図3
Description
本発明は、等速自在継手等の継手に連結される中空状動力伝達シャフトの製造方法に関する。本発明の製造方法によって製造された中空状動力伝達シャフトは、例えば、自動車の動力伝達系を構成するドライブシャフト(駆動軸)やプロペラシャフト(推進軸)に適用することができる。
例えば、自動車の動力伝達系において、減速装置(ディファレンシャル)から駆動輪に動力を伝達する動力伝達シャフトは、ドライブシャフト(駆動軸)と呼ばれることがある。特に、FF車に使用されるドライブシャフトでは、前輪操舵時に大きな作動角と等速性が要求され、また、懸架装置との関係で軸方向の変位を吸収する機能が要求されるので、その一端部をダブルオフセット型等速自在継手やトリポード型等速自在継手等の摺動型等速自在継手を介して減速装置側に連結し、その他端部をバーフィールド型等速自在継手(ゼッパジョイントと呼ばれることもある。)等の固定側等速自在継手を介して駆動輪側に連結する機構が多く採用されている。
上記のようなドライブシャフトとしては、従来、また現在においても、中実シャフトが多く使用されているが、自動車の軽量化、ドライブシャフトの剛性増大による機能向上、曲げ一次固有振動数のチューニング最適化による車室内の静粛性向上等の観点から、近時では、ドライブシャフトを中空シャフト化する要求が増えてきている。
ドライブシャフト等に適用される中空状動力伝達シャフトとしては、例えば、下記の特許文献1〜3に記載されたものが知られている。
特許文献1では、中空シャフトの内周表面を軸方向のほぼ全域に亘って熱硬化処理している。この熱硬化処理は、例えば、中空シャフトの外周表面側から高周波焼入れ・焼戻しを行うことにより、外周表面から内周表面に至る全深さ領域に対して施している(同文献の段落番号0012参照)。
特許文献2では、例えば、高周波焼入れ・焼戻しにより、中空シャフトの軸方向のほぼ全域に亘って、外周表面から内周表面に至る全深さ領域に熱硬化処理を施している(同文献の段落番号0012参照)。
特許文献3では、中空シャフトの静的強度とねじり疲労強度を中実シャフト以上にするために、中空シャフトを0.7〜0.9の焼入れ率で高周波焼入れしている。
特開2002―349538号公報
特開2002―356742号公報
特開2003―90325号公報
一般に、この種の中空状動力伝達シャフトは、高剛性化と軽量化を図るために軸方向中間部は大径部かつ比較的薄肉に形成すると共に、軸方向両側部の小径部は強度確保のために比較的厚肉に形成している。このように、この種の中空状動力伝達シャフトは、軸方向に肉厚差があるために、焼入れ条件の設定が難しく、熱処理により安定した品質を確保できない場合がある。すなわち、比較的薄肉の大径部に合わせて焼入れ条件を設定した場合、比較的厚肉の小径部では硬化層深さが不足して所要の強度が得られない場合がある。一方、比較的厚肉の小径部に合わせて焼入れ条件を設定した場合、比較的薄肉の大径部では過加熱の状態となり、焼入れ後の組織が粗大化して強度低下の原因となる場合がある。
また、この種の中空状動力伝達シャフトでは、強度バランス等を高めるために、例えば大径部と小径部とで焼入れ率(硬化層の深さと肉厚との比率)を変える場合があるが、従来の製造方法では上記と同様の不都合が生じる場合がある。
本発明の課題は、軸方向に肉厚差や焼入れ率の差がある場合でも、安定した品質を確保することができる中空状動力伝達シャフトの製造方法を提供することである。
上記課題を解決するため、本発明は、軸方向中間部が大径部に形成されると共に、大径部よりも軸方向両側部がそれぞれ小径部に形成された中空状動力伝達シャフトの製造方法であって、パイプ素材に塑性加工を施して、大径部と小径部を有する中空状シャフト素材を成形し、この中空状シャフト素材に対して、所定の領域とその他の領域とで高周波電流の周波数を変えて高周波焼入れを行う構成を提供する。
一般に、高周波焼入れは、高周波電流による電磁誘導を利用して鋼材の表面付近を加熱して焼入れを行う熱処理方法であるが、電磁誘導によって発生する誘導電流(渦電流)は誘導加熱コイルに通じる高周波電流の周波数が高いほど鋼材表面付近に集中して流れ、中心部に向かって急激に減少する傾向があることが知られている。すなわち、誘導電流が鋼材表面付近に集中する表皮効果は、高周波電流の周波数が高いほど大きくなり、逆に、高周波電流の周波数が低いほど小さくなる。したがって、中空状シャフト素材の軸方向の肉厚差や焼入れ率の差に応じて、所定の領域とその他の領域とで高周波電流の周波数を変えて高周波焼入れを行うことにより、各部位における熱処理品質を高め、全体として安定した品質を確保することができる。
上述のように、この種の中空状動力伝達シャフトは、通常、軸方向中間部の大径部を比較的薄肉に形成すると共に、軸方向両側部の小径部を比較的厚肉に形成している。したがって、中空状シャフト素材の大径部を高周波焼入れする際の高周波電流の周波数を相対的に大きくし、中空状シャフト素材の小径部を高周波焼入れする際の高周波電流の周波数を相対的に小さくすることにより、大径部と小径部における熱処理品質を高め、全体として安定した品質を確保することができる。
また、高周波焼入れの方式としては、定置方式と移動方式とがあるが、本発明ではそのいずれの方式も採用することができる。定置方式を採用する場合は、高周波電流の周波数の種類に応じて複数の誘導加熱コイルを配置すると良い。移動方式を採用する場合は、誘導加熱コイルに通じる高周波電流の周波数を変化させる。
上記の塑性加工としては、スウェージング加工やプレス加工等が採用される。前者のスウェージング加工には、ロータリースウェージングとリンクタイプスウェージングがあり、その何れも採用することができる。例えば、ロータリースウェージングは、機内の主軸に組込まれた一対又は複数対のダイスとバッカーとが回転運動を行うと共に、外周ローラとバッカー上の突起により一定ストロークの上下運動を行って、挿入されるパイプ素材に打撃を加えて絞り加工を行う加工法である。また、プレス加工は、パイプ素材をダイスに軸方向に押し込んで絞り加工を行う加工法である。
また、パイプ素材の材質としては、例えば、STKMやSTMA等の機械構造用炭素鋼、または、それらをベースに加工性や焼入れ性等の改善のために合金元素を添加した合金鋼、あるいは、SCr、SCM、SNCM等のはだ焼鋼を用いることができる。
本発明によれば、軸方向に肉厚差や焼入れ率の差がある場合でも、安定した品質を確保することができる中空状動力伝達シャフトの製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。
図1は、中空状の動力伝達シャフト1と、動力伝達シャフト1の一端部に連結された摺動型等速自在継手2と、動力伝達シャフト1の他端部に連結された固定型等速自在継手3とを備えた自動車の動力伝達機構を示している。この実施形態の動力伝達機構において、摺動型等速自在継手2は減速装置(ディファレンシャル)に連結され、固定型等速自在継手3は駆動輪側に連結される。動力伝達シャフト1の一端部は摺動型等速自在継手2のトリポード部材2aにスプライン連結され、摺動型等速自在継手2の外輪2bの端部外周と動力伝達シャフト1の外周にブーツ2cがそれぞれ固定されている。また、動力伝達シャフト1の他端部は固定型等速自在継手3の内輪3aにスプライン連結され、固定型等速自在継手3の外輪3bの端部外周と動力伝達シャフト1の外周にブーツ3cがそれぞれ固定されている。尚、同図には、摺動型等速自在継手2としてトリポード型等速自在継手が例示され、固定型等速自在継手3としてバーフィールド型等速自在継手が例示されているが、他の型式の等速自在継手が用いられる場合もある。
図2は、動力伝達シャフト(ドライブシャフト)1を示している。この動力伝達シャフト1は、軸方向の全域に亘って中空状をなし、軸方向中間部に大径部1a、大径部1aよりも軸方向両側部にそれぞれ小径部1bを有している。大径部1aと小径部1bとは、軸端側に向かって漸次縮径したテーパ部1cを介して連続している。小径部1bは、等速自在継手(2、3)との連結に供される端部側の連結部1dと、ブーツ(2c、3c)が固定される軸方向中間部側のブーツ固定部1eとを有している。連結部1dには、等速自在継手(2、3)にスプライン連結されるスプライン1d1と、等速自在継手(2、3)に対する軸方向抜け止め用の止め輪を装着するための止め輪溝1d2が形成されている。ブーツ固定部1eには、ブーツ(2c、3c)の小径端部の内周を嵌合するための嵌合溝1e1が形成されている。
大径部1aは比較的薄肉に形成され、小径部1bは比較的厚肉に形成されている。小径部1bの肉厚に対する大径部1aの肉厚の比率(大径部1a/小径部1b)は、例えば、0.7以下である。
また、同図にハッチングを付して示しているように、この動力伝達シャフト1は、軸方向のほぼ全域に亘って、焼入れ処理による硬化層Sを有している。軸方向全域において、硬化層Sは、外周表面1gから所定深さhの領域に形成され、硬化層Sから内周表面1iに至る領域は焼入れ処理により硬化していない未硬化層S0になっている。ロックウェル硬さHRC40(Hv391)以上の硬度を有する硬化層Sの深さhと肉厚tとの比率(h/t)で定義される焼入れ率αは、例えば、大径部1aについて0.6以下、小径部1bについて0.6以上である。
上記構成の動力伝達シャフト1は、例えば、パイプ素材に絞り加工を施して、軸方向中間部に大径部、軸方向両側部に小径部を有する中空状シャフト素材を成形し、この中空状シャフト素材に所要の機械加工(スプラインの転造加工等)を施した後、焼入れ処理を施すことによって製造される。
図3は、焼入れ処理前の中空状パイプ素材1’を示している。まず、機械構造用炭素鋼管(STKM)等のパイプ素材にスウェージング加工を施して、軸方向中間部に大径部1a、軸方向両側部に小径部1bを有する形態に成形する。そして、小径部1bの端部に転造加工等によってスプライン1d1を成形して連結部1dを形成すると共に、連結部1dに転造加工や切削加工等によって止め輪溝1d2を形成する。さらに、ブーツ固定部1eとなる部位に転造加工や切削加工等によってブーツ固定溝1e1を形成する。
その後、図3に示すように、中空状シャフト素材1’の外周表面1gの側に、例えば移動式の誘導加熱コイル5を外装し、誘導加熱コイル5に所定周波数の高周波電流を通じつつ、これを軸方向に移動させて、外周表面1gの側から高周波焼入れを行う。その際、比較的厚肉の小径部1bに対しては、誘導加熱コイル5に通じる高周波電流の周波数を相対的に低くし、比較的薄肉の大径部1aに対しては、誘導加熱コイル5に通じる高周波電流の周波数を相対的に高くする。これにより、大径部1aと小径部1bとの間で肉厚差があり、また、焼入れ率αの差を設ける場合であっても、各部位における熱処理品質を高め、全体として安定した品質を確保することができる。
図4は、他の実施形態に係る中空状の動力伝達シャフト11を示している。この実施形態に係る動力伝達シャフト11が上述した動力伝達シャフト1と異なる点は、大径部1aについて焼入れ率αを1.0としている点、すなわち、大径部1aの全肉厚tに亘って硬化層Sを形成している点にある。その他の事項は上述した実施形態に準じるので、重複する説明を省略する。
図5は、他の実施形態に係る中空状の動力伝達シャフト21を示している。この実施形態に係る動力伝達シャフト21が上述した動力伝達シャフト1と異なる点は、軸方向全域に亘って焼入れ率αを1.0としている点、すなわち、軸方向全域の全肉厚tに亘って硬化層Sを形成している点にある。その他の事項は上述した実施形態に準じるので、重複する説明を省略する。
図6は、他の実施形態に係る中空状の動力伝達シャフト31を示している。この実施形態に係る動力伝達シャフト31が上述した動力伝達シャフト1と異なる点は、小径部1bについて焼入れ率αを1.0としている点、すなわち、小径部1bの全肉厚tに亘って硬化層Sを形成している点にある。その他の事項は上述した実施形態に準じるので、重複する説明を省略する。
1 動力伝達シャフト
11 動力伝達シャフト
21 動力伝達シャフト
31 動力伝達シャフト
1’ 中空状パイプ素材
1a 大径部
1b 小径部
11 動力伝達シャフト
21 動力伝達シャフト
31 動力伝達シャフト
1’ 中空状パイプ素材
1a 大径部
1b 小径部
Claims (2)
- 軸方向中間部が大径部に形成されると共に、該大径部よりも軸方向両側部がそれぞれ小径部に形成された中空状動力伝達シャフトの製造方法であって、
パイプ素材に塑性加工を施して、前記大径部と小径部を有する中空状シャフト素材を成形し、
前記中空状シャフト素材に対して、所定の領域とその他の領域とで高周波電流の周波数を変えて高周波焼入れを行うことを特徴とする中空状動力伝達シャフトの製造方法。 - 前記中空状シャフト素材の大径部を高周波焼入れする際の高周波電流の周波数を相対的に高くし、前記中空状シャフト素材の小径部を高周波焼入れする際の高周波電流の周波数を相対的に低くすることを特徴とする請求項1に記載の中空状動力伝達シャフトの製造方法。
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