JP2013066903A - 中空状動力伝達シャフト - Google Patents
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Abstract
【課題】絞り加工において、絞り加工部の増肉を図りつつ、製品の振れを抑制する中空状動力伝達シャフト、ドライブシャフトアッセンブリー、プロペラシャフトアッセンブリーを提供する。
【解決手段】中空素材をダイスに送り込むことによる塑性加工の縮径によって成形された中空状動力伝達シャフトである。中空素材の送り込み開始端部に拘束治具の挿入軸部を挿入して送り込み開始端部内径を拘束しつつ素材を縮径させる。
【選択図】図1
【解決手段】中空素材をダイスに送り込むことによる塑性加工の縮径によって成形された中空状動力伝達シャフトである。中空素材の送り込み開始端部に拘束治具の挿入軸部を挿入して送り込み開始端部内径を拘束しつつ素材を縮径させる。
【選択図】図1
Description
本発明は、中空状動力伝達シャフトおよびドライブシャフト(駆動軸)やプロぺラシャフト(推進軸)に関する。
ドライブシャフトやプロペラシャフトに使用される動力伝達シャフトは、その種類を構造で大別すると、中実の棒材から加工された中実シャフトと、鋼管などから加工された中空シャフトに分けられる。
近年、自動車の足回りの軽量化、捩り剛性やNVH特性の向上といった機能面での必要性から中空シャフトや中空ロングステム外輪が用いられることが多くなってきた。この一体型中空シャフトは、例えば、鋼管をその軸周りに回転させながら、高速度で直径方向に打撃して縮径させるスウェージング加工や鋼管をダイスに軸方向に押し込むことで縮径させるプレス加工により成形されたものが用いられる(特許文献1)。
このような成形方法においては、内径寸法精度を高めたり、縮径時に素材の塑性流動による内径面への加工しわの発生や振れの発生を抑えるため、加工する際加工部内径側に棒状のマンドレルという内径拘束型を挿入して加工することがある。また絞り加工後、ワークを取り外す際には、エジェクタと呼ばれる円筒状の治具をシャフト端面に押しあててワークをダイスから取り外す。
しかしながら、マンドレルを使用すると、絞り加工時の増肉量が減るため、絞り加工部の捩り強度、特にスプライン部の捩り強度に必要な肉厚を確保するには絞り加工前の鋼管の肉厚を大きくしておくなどの対策が必要となる。その為製品重量が増加するという問題がある。
ところで、絞り量が少なく、絞り加工後の内径面に発生する加工しわが少ない場合、マンドレルを廃止することができるが、振れが出る可能性がある。また、加工長さが長い程、振れが大きくなるという問題がある。
本発明の課題は、絞り加工において、絞り加工部の増肉を図り、スプライン部の強度向上を図りつつ、製品の振れを抑制する中空状動力伝達シャフト、ドライブシャフトアッセンブリー、プロペラシャフトアッセンブリーを提供することを目的とする。
本発明の中空状動力伝達シャフトは、軸方向端部が細径部とされるとともに、この細径部にトルク伝達部を構成する雄スプラインが形成され、前記細径部が、中空素材をダイスに送り込むことによる塑性加工の縮径によって成形される中空状動力伝達シャフトであって、中空素材の送り込み開始端部に拘束治具の挿入軸部を挿入して、送り込み開始端部内径を拘束しながら、素材を縮径させて前記細径部を形成しているものである。中空素材をダイスに送り込むことによる塑性加工として、スウェージング加工やプレス加工等がある。
本発明の中空状動力伝達シャフトによれば、中空素材の送り込み開始端部の内径を、拘束治具の挿入軸部にて拘束しているので、スウェージング加工やプレス加工等の塑性加工による素材の曲がりを抑制することができる。
雄スプラインにおける根元部よりも開口端側に、拘束治具の挿入軸部が挿入されて縮径させるようにできる。これによって、スプライン根元部直下の内径は拘束されない。
特に、前記雄スプラインにおける根元部から拘束治具の挿入軸部までの軸方向間隔を、根元部の肉厚以上として、前記細径部を形成するのが好ましい。
縮径範囲において、拘束治具にて拘束された範囲の内径が拘束治具にて拘束されなかった範囲の内径よりも大径となって、拘束治具にて拘束されなかった範囲の肉厚を、拘束治具にて拘束された範囲の肉厚より大きくするのが好ましい。
拘束治具は、製品押し出し用筒状体と、この筒状体に挿通されるマンドレルとからなり、筒状体から突出するマンドレル突出部が前記挿入軸部を構成することができる。スウェージング加工装置に使用するエジェクタとマンドレルを用いてマンドレル突出部を中空素材の送り込み開始端部に挿入して送り込み開始端部内径を拘束しつつ、素材を縮径させる。
また、拘束治具は、製品押し出し用中実体と、この製品押し出し用中実体の素材側の端面から素材側に突出する前記挿入軸部とからなるものであってもよい。この場合、拘束治具自体の構成の簡略化を図ることができる。
素材加工前の外径をD1、素材加工後の縮径外径をD2としたときに、(D1−D2)/D1=0.30以下の絞り量とするのが好ましい。
前記中空素材を冷間引抜鋼管とすることができる。また、中空状動力伝達シャフトとして、高周波焼入焼戻の硬化処理がなされたものであっても、浸炭焼入焼戻の硬化処理がなされたものであってもよい。
本発明のドライブシャフトアッセンブリーは、前記中空状動力伝達シャフトを用いたものであり、本発明のプロペラシャフトアッセンブリーは、前記中空状動力伝達シャフトを用いたものである。
本発明では、スウェージング加工やプレス加工等の塑性加工による素材の曲がりを抑制することができ、製品の振れを抑制できる。また、縮径される範囲において、内径が拘束される端部以外では、内径が拘束されないため、肉厚を大とすることができ、強度向上を図ることができる。しかも、縮径させる範囲(絞り加工する範囲)全体にマンドレル等の治具を挿入する必要がないので、治具に製作に対する費用を低減することができ、ダイス寿命の長寿化を図ることができる。
スプライン根元部直下の内径は拘束されないようにすることによって、応力集中部であるスプライン根元部の肉厚を大とすることができ、シャフトの強度向上を達成できる。特に、根元部予定部から拘束治具の挿入軸部までの軸方向間隔を、スプライン根元部の肉厚以上とすることによって、シャフトの強度向上が安定したものとなる。
拘束治具として、製品押し出し用筒状体とマンドレルとからなるものでは、既存のエジェクタとマンドレルを用いることができ、低コスト化を達成できる。また、製品押し出し用中実体にて構成するものでは、拘束治具の簡素化を図ることができ、しかも、挿入軸部の中空素材への挿入量が安定するので、スプライン根元部を安定して増肉することができる。
(D1−D2)/D1=0.30以下に設定することによって、絞り量を比較的小さくでき、絞り加工後の内径面に発生する加工しわを少なくでき、高品質の製品を提供できる。
前記素材を冷間引抜鋼管とすることによって、寸法精度が良い、表面肌がなめらかである、及び機械的強度を高めることができる等の冷間引抜鋼管の特徴を製品に生かすことができる。すなわち、冷間引抜鋼管を用いたものでは、内面(内周面)の寸法精度が安定し、しかも加工しわが少ない高品質のシャフトを提供できる。また、高周波焼入焼戻等の硬化処理を施すことによって、強度的に優れたものとなる。
本発明のドライブシャフトアッセンブリーおよびプロペラシャフトアッセンブリーは、前記中空状動力伝達シャフトを用いたものであるので、強度的に優れるとともに、振れが生じていない高精度の製品となる。
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。
図1は本発明に係る中空動力伝達シャフト20(図4参照)を形成するための加工装置を示している。加工装置はスウェージング加工を行うものであって、半径方向に往復動可能のダイス(金型)2を円周方向に複数個配設した金型装置を備える。この場合、金型2の内径面に素材通路5が形成される。
素材通路5は、素材送り方向に沿って上流側から下流側に向かって内径側へ傾斜する素材導入部6と、この導入部6の下流側に設けられる加工部7と、この加工部7の下流側に設けられる逃げ部8とを有する。
また、中空動力伝達シャフト20を形成するための素材(中空素材)Sとしては、冷間引抜鋼管からなる。ここで、冷間引抜鋼管とは、穴のあいたダイスに素材を通し、決められた寸法に引き落とす引き抜き加工を行った鋼管である。
この加工装置においては、素材Sの送り込み開始端部S1に挿入される挿入軸部11(11A)を有する拘束治具10(10A)を備える。この図1における拘束治具10Aは、加工後の製品Mを押出すための製品押し出し用筒状体(エジェクタ)12(12A)と、このエジェクタに挿通されるマンドレル13とを有する。製品押し出し用筒状体12Aの端面(製品押圧端面)12aから突出するマンドレル突出部にて前記挿入軸部11Aを構成することになる。
次に図1に示す加工装置を用いて中空動力伝達シャフト20の加工方法を説明する。まず、図1(a)に示すように、挿入軸部11Aを素材通路5にその逃げ部8側から挿入した状態とする。この場合、挿入軸部11Aを加工部7に位置させる。
この状態で、中空素材Sを素材通路5に導入部6側から送り込まれる。その際、まず、素材通路5の先端外周縁部(エッジ)Saが導入部6に接触する。そして、素材通路5に中空素材Sが送り込まれれば、各金型2は径方向に往復動して、素材Sを打圧することになる。すなわち、中空素材Sをダイス(金型)2で打圧しつつ軸方向(素材送り方向)に沿って上流側から下流側へ送ることになる。
この送りによって、挿入軸部11Aに対して中空素材Sの送り込み開始端部S1が外嵌していくことになる。そして、挿入軸部11Aが送り込み開始端部S1に嵌入された状態で、マンドレル13と素材Sとが一体的に素材送り方向に沿って上流側から下流側へ送られることになる。この実施形態では、製品押し出し用筒状体12Aとマンドレル13とは別個に移動することができる。このため、図1(a)の実線で示すように、加工終了時点で、製品押し出し用筒状体12Aの端面12aに製品Mの端面14(図1(b)参照)が当接する範囲で、加工開始前に製品押し出し用筒状体(エジェクタ)12Aを素材通路5の下流側外部に待機させておくことができる。また、図1(a)の仮想線で示すように、エジェクタ12Aを素材通路5に挿入しておいて、加工途中より製品Mの端面14に製品押し出し用筒状体12Aの端面12aを当接させるものであってもよい。
ところで、この図1に示す加工では、図1(b)に示す形状のものを製品Mとするものである。このため、この図1(b)に示す状態から、エジェクタ12Aを下流側から上流側へ送ることによって、製品Mを金型から押し出して取り出すことができる。
この製品Mは、軸方向両端部側の細径部M2と、テーパ部M3を介して細径部M2に連設される軸方向中間部の大径部M1とを形成したものである。このため、一方の細径部M2を加工した後、他方の細径部M2を加工することになる。両端部の細径部M2を同時に加工する事もできる。この際、前記加工装置にて縮径されてなる細径部M2における肉厚t2が大径部M1の肉厚t1よりも大きくなっている。また、細径部M2の送り込み開始端部S1の内面(内周面)は拘束治具10Aの挿入軸部11Aに拘束されるため、送り込み開始端部S1の内径d2aが、送り込み開始端部S1以外の細径部M2の内径d2よりも大径となる。このため、送り込み開始端部S1の肉厚t2aが肉厚t2よりも小となっている。
内面(内周面)が拘束されない部位の内径d2は、寸法精度や内面しわが懸念されるため、絞り量(縮径率)が比較的少ないものに適用するのが好ましい。そして、素材加工前の外径をD1と、素材加工後の縮径外径をD2としたときに、(D1−D2)/D1=0.30以下の絞り量とするのが好ましい。
本発明の中空素材の送り込み開始端部S1の内径を、拘束治具10(10A)の挿入軸部11(11A)にて拘束しているので、スウェージング加工の塑性加工による素材の曲がりを抑制することができ、製品の振れを抑制できる。また、縮径される範囲において、内径が拘束される端部以外では、内径が拘束されないため、肉厚を大とすることができ、強度向上を図ることができる。しかも、縮径させる範囲(絞り加工する範囲)全体にマンドレル等の治具を挿入する必要がないので、治具に製作に対する費用を低減することができ、ダイス寿命の長寿化を図ることができる。
(D1−D2)/D1=0.30以下に設定することによって、絞り量を比較的小さくでき、絞り加工後の内径面に発生する加工しわを少なくでき、高品質の製品を提供できる。素材Sを冷間引抜鋼管とすることによって、寸法精度が良い、表面肌がなめらかである、及び機械的強度を高めることができる等の冷間引抜鋼管の特徴を製品に生かすことができる。すなわち、冷間引抜鋼管を用いたものでは、内面(内周面)の寸法精度が安定し、しかも加工しわが少ない高品質のシャフトを提供できる。
ところで、図1に示す拘束治具10Aでは、エジェクタ12Aの外径DAを、製品Mの細径部M2の外径D2よりも小さく設定されたものである。これに対して、図2に示す拘束治具10(10B)では、エジェクタ12Bの外径DBを、製品Mの細径部M2の外径D2よりも大きく設定されたものである。
このような拘束治具10Bを用いても、図1に示す拘束治具10Aと同様、マンドレル突出部が挿入軸部11Bとなって、中空素材Sの送り込み開始端部S1の内径を拘束できる。このため、この図2に示す拘束治具を用いても、図1に示す加工装置と同様の作用効果を奏する。
図3では、拘束治具10(10C)は、製品押し出し用中実体15と、この製品押し出し用中実体の素材側の端面15aから素材側に突出する挿入軸部11(11C)とからなる。このため、加工する場合、図3(a)に示すように、挿入軸部11Cが加工部7に位置するように、拘束治具10Cを素材通路5に嵌入させた状態とする。
この状態で、中空素材Sは素材通路5に導入部6側から送り込まれる。その際、まず、素材通路5の先端外周縁部(エッジ)Saが導入部6に接触する。そして、素材通路5に中空素材Sが送り込まれれば、各金型2は径方向に往復動して、素材を打圧することになる。すなわち、中空素材Sを金型2で打圧しつつ軸方向(素材送り方向)に沿って上流側から下流側へ送ることになる。
加工部7に入った素材Sの端部S1が挿入軸部11Cに外嵌された状態となって、素材Sの端面14が製品押し出し用中実体15の端面15aが当接すれば、この素材Sの送り込みと一体的にこの拘束治具10Cが上流側から下流側へ図3(b)に示すように移動する。このため、拘束治具10Cの挿入軸部11Cによって、素材Sの端部S1の内径が拘束される。この場合、挿入軸部11Cの突出長さは一定であるので、挿入軸部11Cにて拘束される端部S1の軸方向長さは、一定である挿入軸部11Cの突出長さとなる。
図3に示す拘束治具10(10C)では、製品押し出し用中実体15の外径DCを、製品Mの細径部(縮径部)M2の外径D2よりも小さく設定されたものである。
次に、図4は、前記図1〜図3等の加工装置にて加工された製品Mをもって構成した中空動力伝達シャフト20を用いたドライブシャフトアッセンブリーを示している。このシャフト20は、軸方向両端部にスプライン(雄スプライン)21(21a,21b)が形成される。すなわち、前記製品Mの細径部M2,M2の端部に、トルク伝達部を構成する雄スプライン21(21a,21b)が形成されることによって、中空動力伝達シャフト20が構成される。そして、一方にスプライン21aを介して固定式等速自在継手23が連結され、他方のスプライン21bを介して摺動型等速自在継手24が連結されている。
固定式等速自在継手23は、外側継手部材25と、内側継手部材26と、トルク伝達要素としての複数のボール27と、ボール27を保持するケージ28とを主要な部材として含む。なお、この場合の固定式等速自在継手は、ツェッパ型を例示したが、トラック溝の溝底に直線部を有するアンダーカットフリー型等の他の固定式等速自在継手であってもよい。
外側継手部材25はマウス部31と軸部(ステム部)32とからなり、マウス部31は一端にて開口した椀状で、その球面状の内周面(内球面)33に、軸方向に延びた複数のトラック溝34が円周方向に等間隔に形成してある。
内側継手部材26は、軸心部のスプライン孔26aにてシャフト20の端部のスプライン21aとスプライン嵌合させることにより、シャフト20とトルク伝達可能に結合してある。内側継手部材26は球面状の外周面(外球面)35を有し、軸方向に延びた複数のトラック溝36が円周方向に等間隔に形成してある。
外側継手部材25のトラック溝34と内側継手部材26のトラック溝36とは対をなし、各対のトラック溝34,36で形成されるボールトラックに1個ずつ、ボール27が転動可能に組み込んである。ボール27は外側継手部材25のトラック溝34と内側継手部材26のトラック溝36との間に介在してトルクを伝達する。
マウス部31の開口部はブーツ40で塞いである。ブーツ40は、大径部40aと、小径部40bと、大径部40aと小径部40bとを連結する蛇腹部40cとからなる。大径部40aはマウス部31の開口部に取り付けてブーツバンド41で締め付けてある。小径部40bはシャフト20のブーツ装着部43に取り付けてブーツバンド42で締め付けてある。
摺動型等速自在継手24は、ここではトリポード型の例を示してあるが、ダブルオフセット型等、他の摺動型等速自在継手を採用することもできる。等速自在継手24は、外側継手部材51と、内側継手部材としてのトラニオン52と、トルク伝達要素としてのローラ53とを主要な構成要素としている。
外側継手部材51はマウス部51aとステム部51bとからなり、ステム部51bにて終減速機の出力軸とトルク伝達可能に連結するようになっている。マウス部51aは一端にて開口したカップ状で、内周の円周方向三等分位置に軸方向に延びるトラック溝56が形成してある。このためマウス部51aの横断面形状は花冠状を呈する。
トラニオン52はボス58と脚軸59とからなり、ボス58のスプライン孔58aにてシャフト20のスプライン21bとトルク伝達可能に結合している。脚軸59はボス58の円周方向三等分位置から半径方向に突出している。各脚軸59にはローラ53を回転自在に支持させてある。
ここでも、ブーツ60を取り付けて外側継手部材51の開口部を塞いである。ブーツ60は、大径部60aと、小径部60bと、大径部60aと小径部60bとの間の蛇腹部60cとからなり、大径部60aをマウス部51aの開口端部に取り付けてブーツバンド61で締め付け、小径部60bをシャフト20のブーツ装着部63に取り付けてブーツバンド62で締め付けてある。
このため、このシャフト20においては、軸方向両端部にスプライン21a,21bを形成する必要がある。すなわち、図5に示すように、加工装置にて縮径部M2を形成した後、スプライン21を形成することになる。この場合、この絞り加工部(縮径部M2)の端面14は寸法精度が安定しない。そこで、図5の二点鎖線で示すように、この端面14を切削して、スプライン21を形成する。図5において、Aは端面14の旋削(切削)代を示している。Eは挿入軸部11(11C)による内径拘束外の範囲を示し、増肉される範囲である。このように、挿入軸部11Cの挿入位置(挿入範囲)は、旋削取代を考慮しなければならない。また、このようなシャフト20では、後述するように、熱硬化処理を行うので、挿入軸部11Cの挿入位置としては、この熱処理変化量等も考慮する必要がある。
スプライン21は転造加工又はプレス加工にて形成する。転造加工は、一対のダイスを使用し、このダイス間に中空素材Sを介在させ、ダイスを回転させてスプラインを成形する加工である。プレス加工は、中空素材Sをダイスに軸方向に押し込んでスプラインを成形する加工である。このように、スプライン21を形成した後は、図6(a)(b)に示すように、等速自在継手23(24)からの抜けを規制する止め輪が装着される周方向溝72が形成される。
ところで、スプライン21の根元部22(図6参照)は応力集中部である。そこで、形成された動力伝達用シャフト20においては、雄スプライン21における根元部22よりも開口端側に、拘束治具10の挿入軸部11が挿入されて縮径させられてなるのが好ましい。このため、前記スェージング加工時においては、図5に示すように、中空素材Sのスプライン予定部71における根元部予定部70よりも開始端側に、拘束治具10(10C)の挿入軸部11(11C)が挿入されて縮径させるのが好ましい。すなわち、挿入軸部11Cの内径拘束端11aが、根元部予定部70の直下に達しないようにする。Bは根元部予定部70と内径拘束端11aとの軸方向間隔寸法を示している。
ところで、図5(b)では、スプライン21の根元部22の肉厚(スプライン小径部肉厚)をCとした場合、この肉厚Cと前記間隔Bとが略同一である。これに対して、図5(a)では、スプライン21の根元部22の肉厚(スプライン小径部肉厚)をCとした場合、この肉厚Cよりも前記間隔Bを大きくしている。
このように、中空素材Sのスプライン予定部71における根元部予定部70よりも開始端側に、拘束治具10Cの挿入軸部11Cが挿入されて縮径させるようにできる。これによって、スプライン根元部直下の内径は拘束されない。これによって、応力集中部であるスプライン根元部22の肉厚を大とすることができ、シャフトの強度向上を達成できる。特に、根元部予定部70から拘束治具10Cの挿入軸部11Cまでの軸方向間隔を、根元部22の肉厚以上とすることによって、シャフト20の強度向上が安定したものとなる。
スプライン21が形成された製品Mに対して、図6(a)に示すように、硬化処理を施すのが好ましい。硬化処理として、高周波焼入焼戻や浸炭焼入焼戻等である。ここで、高周波焼入とは、高周波電流の流れているコイル中に焼入れに必要な部分を入れ、電磁誘導作用により誘導起電力を生じさせ、この電磁誘導作用により、ジュール熱が発生することを利用して、伝導性物体を過熱する原理を応用した焼入れである。そして、高周波焼入焼戻は、上記原理に基づき、鋼を焼入れ温度まで急速加熱し、急冷する操作を行うことである。浸炭焼入焼戻は、鉄鋼の表面に炭素を浸入させたあとに焼入れ・焼戻しを行う熱処理である。図6(a)のクロスハッチングは、前記のような硬化処理にて形成された硬化層80を示している。図6(b)については、周方向溝72近傍を除く外面から内面まで焼入れを行う全硬化焼入れを示している。クロスハッチングは硬化層を示している。
高周波焼入焼戻等の硬化処理を施すことによって、強度的に優れたものとなる。高周波焼入では、部分焼入れが出来る、疲労強度を上げることが出来る、耐摩耗性の向上、材質が安価な炭素鋼でよい、焼入れ条件の調整が容易で、有効深さ等調整できる等の利点を生かせることができる。また、浸炭焼入では、表面は硬く、内部は硬さが低く、じん性のある材料をつくることができる。
ところで、前記加工装置は、スウェージング加工するものであったが、他の実施形態として、鋼管をダイスに軸方向に押し込むことで縮径させるプレス加工により成形するものであってもよい。この場合、図1等に示す拘束治具10(10A)を使用して、中空素材Sの送り込み開始端部S1に拘束治具10Aの挿入軸部11Aを挿入して送り込み開始端部内径を拘束しつつ素材を縮径させるようにすればよい。
また、前記実施形態では、中空状動力伝達シャフトとしてドライブシャフトアッセンブリーに用いたが、プロペラシャフトアッセンブリーに用いることもできる。このように、ドライブシャフトアッセンブリーやプロペラシャフトアッセンブリーに前記中空状動力伝達シャフトを用いたものであるので、強度的に優れるとともに、振れが生じていない高精度の製品となる。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、前記実施形態では、中空素材Sとして、冷間引抜鋼管を用いたが、電縫管(溶接管)や継目無鋼管(シームレス鋼管)等を用いてもよい。ここで、電縫管は、鋼板を管状に丸め、その継目を溶接して製造したものである。また、継目無鋼管(シームレス鋼管)は、パイプの長手方向に溶接や鍛接によるパイプの継目(シーム)の無いものである。また、図5に示すように、スプライン21を有するシャフト20を形成する場合、拘束治具10を、中実体15と挿入軸部11Cとからなるものを用いたが、図1や図2等に示すように、エジェクタ12と、このエジェクタ12に挿通されるマンドレル13とを備えた拘束治具を用いてもよい。
2 ダイス(金型)
10(10A)(10B)(10C) 拘束治具
11(11A)(11B)(11C) 挿入軸部
12(12A)(12B) 筒状体(エジェクタ)
13 マンドレル
15 中実体
S 中空素材
S1 開始端部
10(10A)(10B)(10C) 拘束治具
11(11A)(11B)(11C) 挿入軸部
12(12A)(12B) 筒状体(エジェクタ)
13 マンドレル
15 中実体
S 中空素材
S1 開始端部
Claims (12)
- 軸方向端部が細径部とされるとともに、この細径部にトルク伝達部を構成する雄スプラインが形成され、前記細径部が、中空素材をダイスに送り込むことによる塑性加工の縮径によって成形される中空状動力伝達シャフトであって、
中空素材の送り込み開始端部に拘束治具の挿入軸部を挿入して、送り込み開始端部内径を拘束しながら、素材を縮径させて前記細径部を形成していることを特徴とする中空状動力伝達シャフト。 - 前記雄スプラインにおける根元部よりも開口端側に、拘束治具の挿入軸部が挿入されて縮径させられてなることを特徴とする請求項1に記載の中空状動力伝達シャフト。
- 前記雄スプラインにおける根元部から拘束治具の挿入軸部までの軸方向間隔を、根元部の肉厚以上として、前記細径部を形成していることを特徴とする請求項2に記載の中空状動力伝達シャフト。
- 縮径範囲において、拘束治具にて拘束された範囲の内径が拘束治具にて拘束されなかった範囲の内径よりも大径となって、拘束治具にて拘束されなかった範囲の肉厚が、拘束治具にて拘束された範囲の肉厚より大きくなっていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の中空状動力伝達シャフト。
- 拘束治具は、製品押し出し用筒状体と、この筒状体に挿通されるマンドレルとからなり、筒状体から突出するマンドレル突出部が前記挿入軸部を構成することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の中空状動力伝達シャフト。
- 拘束治具は、製品押し出し用中実体と、この製品押し出し用中実体の素材側の端面から素材側に突出する前記挿入軸部とからなることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の中空状動力伝達シャフト。
- 素材加工前の外径をD1、素材加工後の縮径外径をD2としたときに、(D1−D2)/D1=0.30以下の絞り量としたことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の中空状動力伝達シャフト。
- 前記中空素材を冷間引抜鋼管としたことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の中空状動力伝達シャフト。
- 高周波焼入焼戻の硬化処理がなされてなることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の中空状動力伝達シャフト。
- 浸炭焼入焼戻の硬化処理がなされてなることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の中空状動力伝達シャフト。
- 前記請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の中空状動力伝達シャフトを用いたことを特徴とするドライブシャフトアッセンブリー。
- 前記請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の中空状動力伝達シャフトを用いたことを特徴とするプロペラシャフトアッセンブリー。
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