JP2006002259A - キャスト塗工シートの製造方法及びキャスト塗工シート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明の第1のキャスト塗工シートの製造方法は、透気性支持体上に、水分量12〜40質量%の塗被層を形成し、該層の表面に湿潤液を付与した後、加熱鏡面に圧接し乾燥することで、光沢層を形成することを特徴とする。本発明の第2のキャスト塗工シートの製造方法は、透気性支持体上に、光沢層用塗工液を塗工して塗被層を形成した後、該層を増粘又はゲル化させ、さらに該層の水分量が12質量%以上の状態で、その表面に湿潤液を付与し、これを加熱鏡面に圧接し乾燥することで、光沢層を形成することを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
(1)支持体上に光沢層用塗工液を塗工して塗被層を形成し、該層が湿潤状態のままキャストドラムに圧接するウエットキャスト法、
(2)支持体上に光沢層用塗工液を塗工して塗被層を形成し、該層をゲル化させた後、キャストドラムに圧接するゲル化キャスト法、
(3)支持体上に光沢層用塗工液を塗工して塗被層を形成し、該層を充分に乾燥した後、水又は湿潤液にて再湿潤させ、その後キャストドラムに圧接して仕上げるリウエットキャスト法、
(4)リウエットキャスト法(3)と同様の工程を経るが、塗被層を充分に乾燥した後、再湿潤せずキャストドラムに圧接して仕上げるドライキャスト法、
(5)キャストドラム側に光沢層用塗工液を塗工して塗被層を形成し、該層を乾燥させた後、これを支持体に圧接・転写させるプレキャスト法がある(非特許文献1)。
本発明の第2のキャスト塗工シートの製造方法は、透気性支持体上に、光沢層用塗工液を塗工して塗被層を形成した後、該層を増粘又はゲル化させ、さらに該層の水分量が12質量%以上の状態で、その表面に湿潤液を付与し、これを加熱鏡面に圧接し乾燥することで、光沢層を形成することを特徴とする。
なお、本明細書では、「増粘」は架橋なく粘度が増加すること、「ゲル化」は架橋して粘度が大幅に増加することを意味するものとする。
従来のキャスト塗工法、すなわち、(1)再湿潤させないウエットキャスト法、(2)ゲル化させた後、再湿潤させないゲル化キャスト法、(3)塗被層を充分に乾燥させてから(乾燥後の水分量は12質量%を大きく下回る)、再湿潤させるリウエットキャスト法、(4)塗被層を乾燥させ、再湿潤させないドライキャスト法、(5)キャストドラム側に塗被層を形成するプレキャスト法のいずれとも異なる全く新規な方法である。
赤外線水分計は、近赤外線域にある水の吸収波長(具体的には1.2μm、1.45μm、1.94μm)の光を塗被層に照射すると、層の水分量に応じて光が吸収されるので、これを利用し、その減衰量から水分量を測定するものである。厳密には、吸収波長のみの計測では、層の表面状態や色等の影響を受け、安定した測定が難しいため、水の影響を受けにくい近赤外線(参照波長)を別に設定し、吸収波長と参照波長の光を交互に照射し、反射してくる両波長光のエネルギーの比から、水分量を算出する。
また、前記感温性高分子化合物としては、感温点未満で親水性、感温点以上で疎水性を呈するものであり、かつ感温点が0〜30℃であるものが好適である。
なお、かかる感温性高分子化合物を用いた記録媒体は、特開2003−40916号公報等に開示されており、公知であるが、該文献には光沢層への適用については言及されていない。
「キャスト塗工シートの製造方法」
キャスト塗工シートは透気性支持体上に光沢層を有するもので、本発明では光沢層の形成工程が特徴的なものとなっている。透気性支持体と光沢層との間には必要に応じて下塗り層を設けることができる。
以下、透気性支持体、下塗り層、光沢層の順に説明する。本発明はインクジェット記録用のキャスト塗工シートに好ましく適用できるため、層の組成等は、インクジェット記録用を基本として説明するが、本発明は他の用途にも勿論適用可能である。
透気性支持体は、透気性を備えたものであれば特に限定されるものではなく、一般の塗工紙に使用される酸性紙や中性紙等の透気性原紙、透気性樹脂シート等が挙げられる。
光沢層のキャスト仕上げ時(塗被層の加熱鏡面への圧接時)の操業性(蒸気の抜けやすさ)と、塗工液の支持体への浸透抑制を考慮すれば、支持体の王研式透気度は10〜350秒/cc、さらには10〜200秒/100cc、特に20〜100秒/100ccであることが好ましい。
また、透気性原紙に紙力増強剤を添加すると、湿潤状態でキャスト仕上げされる際の原紙の寸法安定性や強度を高めることができる。紙力増強剤としては、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂、N−ビニルホルムアミド・ビニルアミン共重合体等が挙げられる。中でも、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂は、湿潤時の紙の寸法安定性の向上効果が大きく、好ましい。紙力増強剤は、透気性原紙に内添、塗布、又は含浸して用いることができる。
透気性支持体上には、必要に応じて単層又は複数層の下塗り層を設けることができる。下塗り層を介して光沢層を形成することで、光沢性を向上させることができる。これは、支持体よりも柔軟な下塗り層の存在によって、キャスト仕上げ時の塗被層の加熱鏡面への密着性が向上するためと推定される。
また、インクジェット記録用等では、下塗り層を設けることで全体のインク吸収性が高まるため、印刷濃度や印刷にじみ抑制、ベタ印刷の均一性等の印刷適性が向上する傾向にあり、好適である。
顔料の平均粒子径(凝集顔料の場合は凝集粒子径)は特に制限はないが、インク吸収性や、後から形成する光沢層の表面平滑性や光沢性の観点から、1〜12μm程度、さらには2〜10μm、特に2〜7μmが好ましく、かかる範囲内の異なる平均粒子径の顔料を複数併用することもできる。
かかる構成により、光沢性がより向上する。理由は必ずしも明らかではないが、コロイダルシリカ(S)及び重合体(P)、あるいはこれらの複合体の存在が、下塗り層のインク吸収性を維持したまま、光沢層用塗工液の下塗り層への浸透を抑制するためと推定される。さらに、理由は不明であるが、光沢層のキャスト仕上げ時の加熱鏡面からの離型性も向上する傾向がある。
コロイダルシリカ(S)の平均粒子径は特に制限はないが、4〜200nm、特に10〜60nmが好ましい。
コロイダルシリカ(S)の配合量は特に制限はないが、それ以外の顔料100質量部に対し、1〜30質量部、特に1〜10質量部が好ましい。
重合体(P)は単独重合体でも共重合体でも良く、さらには、これら重合体の置換誘導体でも良い。置換誘導体としては、例えば、カルボキシ基を導入したものや、導入したカルボキシ基をアルカリ反応性に変性したもの等が挙げられる。
重合体(P)の配合量は特に制限はないが、コロイダルシリカ(S)以外の顔料100質量部に対し、1〜20質量部、特に1〜5質量部が好ましい。
(1)重合体(P)の原料である上記エチレン性モノマーをシランカップリング剤等とコロイダルシリカ(S)の存在下で重合させることで、Si−O−P結合(P:重合体成分)を生成させ、重合体(P)の生成と同時に複合化する、
(2)必要に応じてシラノール基等で変性した重合体(P)とコロイダルシリカ(S)とを反応させて、Si−O−P結合(P:重合体成分)を生成させ、複合化する等の方法で得られる。
下塗り層用塗工液は、通常固形分濃度が5〜50質量%程度に調整される。
塗工液の塗工量は特に制限はないが、インク吸収性、光沢性、印刷濃度、層強度等の観点から、絶乾質量で2〜60g/m2程度、さらには2〜30g/m2程度、特に4〜10g/m2程度が好ましい。塗工液の塗工法は、光沢層と同様である。
塗被層を乾燥後、さらに必要に応じてスーパーカレンダ、ブラシ掛け等の平滑化処理を施しても良い。
本発明では、光沢層の形成方法が特徴的なものとなっている。
本発明の第1のキャスト塗工シートの製造方法では、透気性支持体上、あるいはその上に必要に応じて設けられる下塗り層上に、水分量12〜40質量%の塗被層を形成し、該層の表面に湿潤液を付与した後、加熱鏡面に圧接し乾燥することで、光沢層を形成することを特徴とする。なお、この製造方法では、湿潤液を付与する前に、必要に応じて塗被層を増粘又はゲル化させても良い。
この理由は定かではないが、以下のように推察される。
光沢層の骨格がある程度形成された状態で、ある程度の湿潤状態を維持したまま、表面に湿潤液を付与すると、湿潤液が層内部に深く浸透することがなく、層の表面、若しくは表面及びその近傍にのみ作用する。この結果、再湿潤時に不均一に膨潤することが抑制され、薄く均一な再湿潤層が形成され、高光沢なキャスト面が得られるものと推察される。
なお、本発明の第2の製造方法では、第1の製造方法と異なり、湿潤液付与時の塗被層の水分量の上限は規定されない。水分量に関係なく、骨格が形成されるからである。したがって、第2の製造方法では、増粘又はゲル化に際して、水分量が低下しても良いし、略同レベルが維持されても良い。また、骨格が形成されれば良いので、増粘又はゲル化の度合いは、完全でなくても(いわば半増粘又は半ゲル化でも)良い。
第2の製造方法では、増粘又はゲル化により強度の高い骨格が形成されるため、加熱鏡面に圧接する際の水分蒸発量の増加に伴うピンホールの形成は抑えられるものの、同様の傾向にあることには変わりない。したがって、第2の製造方法でも、湿潤液付与時の塗被層の水分量を12〜40質量%、さらには14〜35質量%、特に18〜32質量%とすることが好ましい。
微細顔料としては、気相法シリカ、メソポーラスシリカ、活性ケイ酸を縮合させて製造された湿式法シリカのコロイド状物、アルミナ酸化物、及びアルミナ水和物から選ばれる少なくとも1種、特に気相法シリカ及び/又はアルミナ酸化物が好ましく用いられる。
なお、水性ポリウレタン樹脂は、ポリウレタンエマルジョン、ポリウレタンラテックス等の形態で好適に用いられる。
本発明の第2の製造方法では、後記するように、感温性高分子化合物を上記一般の接着剤に代えて、あるいは上記一般の接着剤と組み合わせて用いることができる。
インク定着剤としては、各種カチオン性化合物等が好ましく用いられ、その具体例としては、(1)ポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミン等のポリアルキレンポリアミン類又はその誘導体、(2)第2級又は第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル重合体や、これらのアクリルアミドとの共重合体、(3)ポリビニルアミン及びポリビニルアミジン類、(4)ジシアンジアミド・ホルマリン共重合体に代表されるジシアン系カチオン性化合物、(5)ジシアンジアミド・ポリエチレンアミン共重合体に代表されるポリアミン系カチオン性化合物、(6)エピクロルヒドリン・ジメチルアミン共重合体、(7)ジアリルジメチルアンモニウム−SO2重縮合体、(8)ジアリルアミン塩・SO2重縮合体、(9)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、(10)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体、(11)アリルアミン塩の共重合体、(12)ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩共重合体、(13)アクリルアミド・ジアリルアミン共重合体、(14)5員環アミジン構造を有するカチオン性樹脂、(15)ジメチルアミノプロピルアクリルアミドの重合体等が挙げられる。これらは1種又は2種以上用いることができる。
このようにして処理した顔料は、インク定着剤が一部結合した構造を呈することで安定化しているのか、更にインク定着剤を追添しても凝集し難いという特性を有する。以下、かかる顔料を、カチオン性微細顔料と称す。
カチオン性微細顔料に用いられる顔料としては、シリカの他、アルミノシリケート等があるが、シリカ、特に気相法シリカが好ましい。
塗工量を2g/m2以上とすることで、優れた光沢性とインク吸収性が得られ、15g/m2以下とすることで、光沢層のひび割れが抑制され、インクジェット印刷時のドット真円性等が良好なものとなる。
この方法としては特に制限はないが、
(i)水分量12〜40質量%の光沢層用塗工液を塗工し、水分量を略同レベルに維持したまま湿潤液を付与する(湿潤液を付与する前には、必要に応じて増粘やゲル化させても良い。)、
(ii)水分量12質量%超の光沢層用塗工液を塗工して塗被層を形成し、これを熱風乾燥機、赤外線ヒータ等の乾燥手段にて積極的に乾燥し、水分量を12〜40質量%に調整する、
(iii)水分量12質量%超の光沢層用塗工液を塗工して塗被層を形成し、湿潤液を付与するまでの間の自然乾燥により塗被層の水分量を12〜40質量%に調整する、
(iv)水分量12質量%超の光沢層用塗工液を塗工して塗被層を形成し、湿潤液を付与するまでの間に、透気性支持体やこの上に必要に応じて設けられる下塗り層に水分が浸透することを利用して、塗被層の水分量を12〜40質量%に調整する、
及び(v)(ii)〜(iv)の組み合わせ等が挙げられる。
(1)〜(4)の方法の中では、ゲル化の制御やゲル化後の層均一性の点で、(4)の方法が好ましい。
以下、該法について詳細に説明する。
かかる感温性高分子化合物を用いることで、感温性高分子化合物が疎水性を呈する温度域で、光沢層用塗工液を塗工して塗被層を形成した後(この際には増粘やゲル化等せず容易に塗工できる)、感温性高分子化合物が親水性を呈する温度域に温度変化させることで、該層を増粘又はゲル化させることができる。
(1)のタイプでは、感温点以上の温度に調整した塗工液を塗工後、感温点未満に冷却することで、塗被層を増粘又はゲル化することができる。(2)のタイプでは、逆に、感温点以下の温度に調整した塗工液を塗工後、感温点より高い温度に加熱することで、塗被層を増粘又はゲル化することができる。
(2)のタイプでは、温度を上げて増粘又はゲル化する際に、水分が蒸発するので、湿潤液付与時の塗被層の水分量を制御することが相対的に難しい。したがって、本発明では、塗工後、温度を下げることで、塗被層を増粘又はゲル化できる(1)のタイプが特に好適である。以下、このタイプについて言及する。
したがって、感温点未満の温度域では親水性、感温点以上の温度で疎水性を呈するタイプでは、感温性高分子化合物と水とが共存する系の温度を、感温性高分子化合物が疎水性を示す温度域(感温点以上の温度)から徐々に降下させたときの温度−粘度曲線において、粘度が急激に変化(増粘)する転移点を感温点として測定することができる。
その他、感温性高分子化合物が疎水性を示す温度域(感温点以上の温度)において得られる感温性高分子化合物の水分散液を徐々に冷却したときに、該分散液が透明化あるいはゲル化し始める温度を、感温点として測定することもできる。
感温点が0℃以上であれば、塗被層を比較的容易に感温点未満とすることができ、増粘又はゲル化の効率が良好となる。なお、感温点未満とするのに長時間を要すると、その間に塗工液が下塗り層や透気性支持体に浸透し、良好な光沢層が形成されず、光沢性が低下する恐れがある。また、感温点が30℃以上では、塗工時の温度管理が困難となり、塗工と同時に増粘又はゲル化するなど、均一塗工や、増粘又はゲル化の制御等が困難となる。
具体的には、ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体の存在下で、単独重合によって温度応答性(親疎水性の変化)を呈する高分子化合物が得られるモノマー(主モノマー(M))、及び必要に応じてこれと共重合可能で、単独重合によっては温度応答性を呈する高分子化合物が得られないモノマー(副モノマー(N))を重合して得られる高分子化合物が挙げられる。
ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体、主モノマー(M)、副モノマー(N)は、各々1種あるいは2種以上用いることができる。
感温性高分子化合物中のポリビニルアルコール及び/又はその誘導体の含有率は特に制限はないが、光沢層の耐水性の観点から、0.1〜50質量%、特に0.5〜20質量%が好ましい。
具体的には、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−シクロプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルピロリジン、N−(メタ)アクリロイルピペリジン、N−テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(2,2−ジメトキシエチル)−N−メチルアクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
ここで、親油性ビニル化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、エチレン、イソプレン、ブタジエン、酢酸ビニル、塩化ビニル等が挙げられる。
親水性ビニル化合物としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、2−メチル−5−ビニルピリジン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−アクリロイルピロリジン等が挙げられる。
イオン性ビニル化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸、ブテントリカルボン酸、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノメチル等のカルボン酸基含有モノマー、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アクリルスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー等が挙げられる。
また、調製して用いることもできる。上記高分子エマルジョンは、特開2003−040916号公報に記載の方法にて調製できる。すなわち、感温性高分子化合物の感温点以上の温度下で、ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体の存在下、上述したモノマーを用いて重合反応を行うことで調製できる。より具体的には、水に乳化剤を溶解し、ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体と主モノマー(M)、必要に応じて副モノマー(N)、ラジカル重合開始剤を加えて乳化重合する方法等が挙げられる。モノマーやラジカル重合開始剤は、一括添加、連続添加、あるいは分割添加することができる。
塗工液の溶媒としては水が好適に用いられるが、感温性高分子化合物の感温点の調整や、キャスト仕上げ時の乾燥を遅くして、印刷適性の良好な光沢層を得る等の理由から、水の代わりに有機溶媒を用いたり、水と有機溶媒を併用することもできる。
光沢層用塗工液は、調製後塗工するまでの間、感温点以上の温度に保持されていることが好ましい。
かかる手順を採用することで、塗工後、塗被層を速やかに増粘又はゲル化させることができ、その結果、インクジェット記録用等としての印刷適性に優れ、顔料インクに対しても良好な印刷適性を呈する光沢層が形成できる。
湿潤液としては塗被層の表面を湿潤し得るものであれば特に制限はないが、水等が好ましく用いられる。また、キャスト仕上げ時の加熱鏡面からの離型性を考慮すれば、離型剤を含む水が好ましく用いられる。
中でも、離型性向上効果に優れ、且つ印刷にじみを抑制する効果をも有することから、高級脂肪酸アミドが好ましく用いられる。特に、光沢層及び/又は湿潤液にカチオン性化合物が含まれる場合、その効果は顕著である。
湿潤液にカチオン性化合物を添加することで、印刷の耐水性や印刷濃度を向上することができる。カチオン性化合物としては、光沢層のインク定着剤で例示したものが用いられる。
湿潤液に保存性改良剤を添加することで、印刷の保存性を改良することができる。その具体例としては、ポリ塩化アルミニウム等のアルミニウム化合物や、炭酸ジルコニウムアンモニウム、酢酸ジルコニウム等のジルコニウム化合物等の水溶性多価金属塩や、ビス[2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エチル]スルホン、2−(フェニルチオ)エタノール等の含イオウ化合物、ベンゾトリアゾール、酸化セリウム等の紫外線吸収剤、アスコルビン酸、ビタミンE、ジブチルヒドロキシトルエン、ルチン等の酸化防止剤、ヒンダードアミン等のラジカル捕捉剤等が挙げられる。中でも、ビス[2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エチル]スルホンは、インクジェット印刷の耐ガス性が向上するため、好ましい。
これらの添加量は特に制限はないが、湿潤液中、0.05〜10質量%、特に0.1〜5質量%が好ましい。
湿潤液の付与方法は特に制限はなく、光沢層用塗工液の塗工と同様、各種コータ等の塗工装置を用いて実施できる(段落[0060]参照)が、より高度の光沢性が得られることから、キャスト仕上げ時、すなわち加熱鏡面とこれに対向配置されるプレスロールの間を通過する際に湿潤液を同時に付与することが好ましい。
また、光沢層に感温性高分子化合物を用いる場合、加熱鏡面の温度は、感温性高分子化合物のガラス転移温度の±20℃以内の温度に設定することが好ましい。感温性高分子化合物のガラス転移温度が、加熱鏡面の温度より20℃を超えて低い場合、乾燥時に光沢層の成膜が進み過ぎて表面の空隙が低下し、インク吸収性の低下を招く恐れがある。逆に、感温性高分子化合物のガラス転移温度が、加熱鏡面の温度より20℃を超えて高い場合、成膜が不充分となり、空隙の残量が多くなり、光沢性が不充分となる恐れがある。
例えば、裏面側にカール等の防止や、摩擦性の調整、手触り・風合いの調整等を目的として、樹脂、及び必要に応じて顔料や染料を含む裏面層を設けることができる。樹脂としては、インクジェット印刷時のカール防止効果、及びプリンタ搬送性の向上効果に優れ、印刷の質感を写真用印画紙に近づけることができることから、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)等の熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。
かかる裏面層はコーティング法やラミネート法にて形成できる。裏面層の形成タイミングは特に制限はないが、キャスト仕上げ後が好ましい。
本発明の第1、第2の製造方法によれば、光沢性とインクジェット印刷適性の双方に優れ、インクジェット記録用として好適なキャスト塗工シートを安定的に提供することができる。本発明で得られるキャスト塗工シートは、用いるインク(染料系、顔料系)の種類等に関係なく、写真調等の美麗なインクジェット印刷を施すことができるものである。
はじめに、木材パルプ(LBKP:ろ水度440mlCSF)100部、填料(炭酸カルシウム3:タルク1の混合物)15部、市販サイズ剤(商品名:ファイブラン81K、日本エヌエスシー(株)製)0.05部、硫酸バンド0.45部、澱粉0.45部、紙力増強剤(ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂)0.4部、歩留向上剤少々を原料とし、長網抄紙機にて製紙した。坪量は192g/m2とした。この紙に対して、150kg/cmの線圧でスーパーカレンダ処理を施し、透気性支持体(原紙)を得た。この支持体の厚さは205μm、王研式透気度は30秒/100ccであった。
顔料として合成非晶質シリカ(商品名:ファインシールX−60、(株)トクヤマ製、平均二次粒子径6.2μm)100部、接着剤としてシリル変性ポリビニルアルコール(商品名:R1130、クラレ(株)製)25部、蛍光染料(商品名:WhitexBPS(H)、住友化学(株)製)2部、及び水を混合し、下塗り層用塗工液を調製した。固形分濃度は15%とした。
市販気相法シリカ(商品名:レオロシールQS−30、平均一次粒子径9nm、比表面積300m2/g、(株)トクヤマ製)をサンドグラインダーにより水分散粉砕した後、ナノマイザー(商品名:ナノマイザー、ナノマイザー社製)を用いて、粉砕分散を繰り返し、分級後、平均二次粒子径80nmの10%シリカ分散液を調製した。
該分散液にカチオン性化合物として、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体(商品名:PAS−J−81、日東紡績(株)製)10部を添加し、顔料の凝集と、分散液の増粘を起こさせた後、再度ナノマイザーを用いて、粉砕分散を繰り返し、平均二次粒子径300nmの12%シリカ分散液を調製し、カチオン性微細顔料を得た。
・光沢層用塗工液A
上記カチオン性微細顔料100部、接着剤としてポリビニルアルコール(商品名:PVA145、クラレ(株)製)20部、消泡剤0.1部、及び水を混合し、光沢層用塗工液Aを調製した。固形分濃度は10%とした。
・光沢層用塗工液B
40℃下で、上記カチオン性微細顔料100部、接着剤として感温性高分子化合物(商品名:ALB−221、旭化成(株)製、感温点24℃、感温点未満で親水性、感温点以上で疎水性)20部、消泡剤0.1部、及び水を混合し、光沢層用塗工液Bを調製した。固形分濃度は10%とした。
・光沢層用塗工液C
50℃下で、上記カチオン性微細顔料100部、接着剤として感温性高分子化合物(商品名:ALB−213、旭化成(株)製、感温点32℃、感温点未満で親水性、感温点以上で疎水性)20部、消泡剤0.1部、及び水を混合し、光沢層用塗工液Cを調製した。固形分濃度は10%とした。
湿潤液として、ステアリン酸アミド系離型剤の1%水溶液を調製した。
いずれの例においても、上記透気性支持体上に、上記下塗り層用塗工液を絶乾質量が5g/m2となるようにエアーナイフコータで塗工し塗被層を形成し、該層を120℃で1分乾燥して、下塗り層を形成した。この上に、条件を変えて光沢層を形成した。以下、各例における光沢層の形成手順について説明する。
下塗り層の表面温度を23℃に調整した後、該層上に、上記光沢層用塗工液A(23℃に調整)を絶乾質量で5g/m2、ダイコータで塗工し、塗被層を形成した。塗工後、積極的な乾燥は実施しなかった。続いて、塗被層表面に上記湿潤液(23℃)を20ml/m2塗布した。湿潤液付与時の塗被層の水分量は22%であった。湿潤液を付与後直ちに、塗被層を表面温度100℃のキャストドラムに圧接して、光沢性の付与と乾燥を実施し、本発明のキャスト塗工シートを得た。
熱風乾燥機により、塗被層を水分量が14%になるまで乾燥してから湿潤液を付与した以外は、実施例1と同様として、本発明のキャスト塗工シートを得た。
(比較例1)
熱風乾燥機により、塗被層を水分量が5%になるまで乾燥してから湿潤液を付与した以外は、実施例1と同様として、比較用のキャスト塗工シートを得た。
(比較例2)
光沢層用塗工液Aの代わりに、光沢層用塗工液Aを固形分濃度5%に希釈した塗工液(23℃に調整)を用いた以外は、実施例1と同様として、比較用のキャスト塗工シートを得た。湿潤液付与時の塗被層の水分量は42%であった。
湿潤液として純水(23℃)を用いた以外は、実施例1と同様として、本発明のキャスト塗工シートを得た。湿潤液付与時の塗被層の水分量は22%であった。
下塗り層の表面温度を23℃に調整した後、該層上に、硼砂水溶液(固形分3%、23℃)を絶乾質量で1g/m2塗工し、これを23℃で30秒乾燥した後、上記光沢層用塗工液A(23℃に調整)を絶乾質量で5g/m2、ダイコータで塗工し、塗被層を形成した。塗被層は塗工後、直ちにゲル化した。ゲル化後の塗被層の水分量は23%であった。その後、実施例1と同様に、湿潤液の付与及びキャスト仕上げを実施し、本発明のキャスト塗工シートを得た。
(比較例3)
熱風乾燥機により、ゲル化後の塗被層を水分量が5%になるまで乾燥してから湿潤液を付与した以外は、実施例4と同様として、比較用のキャスト塗工シートを得た。
下塗り層上に、上記光沢層用塗工液B(35℃に調整)を絶乾質量で5g/m2、ダイコータで塗工し、塗被層を形成した。続いて、冷風機を用いて温度20℃まで冷却し、塗被層をゲル化させた。この時点の塗被層の水分量は20%であった。その後、実施例1と同様に、湿潤液の付与及びキャスト仕上げを実施し、本発明のキャスト塗工シートを得た。
(比較例4)
熱風乾燥機により、ゲル化後の塗被層を水分量が5%になるまで乾燥してから湿潤液を付与した以外は、実施例5と同様として、比較用のキャスト塗工シートを得た。
下塗り層上に、上記光沢層用塗工液C(45℃に調整)を絶乾質量で5g/m2、ダイコータで塗工し、塗被層を形成した。続いて、冷風機を用いて温度20℃まで冷却し、塗被層をゲル化させた。この時点の塗被層の水分量は21%であった。その後、実施例1と同様に、湿潤液の付与及びキャスト仕上げを実施し、本発明のキャスト塗工シートを得た。
「光沢性」
得られたキャスト塗工シートの光沢層表面を横方向から目視し、下記基準にて評価した。
◎:極めて高い光沢性がある。
◎〜○:◎と○の中間。
○:高光沢性がある。
△:光沢性がある。
×:光沢性がやや劣る。
××:光沢性がなくマット調。
市販の染料インクタイプのインクジェットプリンタ(商品名:PM−G800、セイコーエプソン(株)製)を用いて黒のベタ印刷を行い、その印刷濃度をマクベス反射濃度計(Macbeth RD−914)で測定した。
印刷濃度の評価と同じプリンタを使用し、ブラック、シアン、マゼンダ、イエロー、レッド、グリーン、ブルーの各色ベタを、互いに境界が接するようにマス目状に印刷し、各色間の境界部でのインクにじみを目視にて評価した。
◎:印刷にじみは全く認められず、極めて良好。
○:印刷にじみがわずかに認められるが、実用上問題なし。
△:印刷にじみがややあり、実用上やや問題。
×:印刷にじみが著しく、実用上極めて問題。
印刷濃度の評価と同じプリンタを使用して印刷を行い、グリーンベタ印刷部の印刷ムラ(濃淡ムラ)を目視にて評価した。
◎:印刷ムラは全く認められず、極めて良好。
○:印刷ムラがわずかに認められるが、実用上問題なし。
△:印刷ムラがややあり、実用上やや問題。
×:印刷ムラがあり、実用上極めて問題。
結果を表1に示す。同表には、光沢層の主な形成条件についても記載してある。
表に示すように、本発明の第1の製造方法を適用した実施例1〜3、及び本発明の第2の製造方法を適用した実施例4〜6ではいずれも、塗被層の水分量が14〜23%の状態で湿潤液を付与してから、キャスト仕上げを実施し、光沢層を形成した。
いずれの実施例においても、光沢性に優れたキャスト塗工シートが得られ、得られたキャスト塗工シートは、印刷にじみがないか、あっても問題のないレベルであり、印刷濃度やベタ印刷の均一性が良好で、インクジェット印刷適性が良好であった。
また、離型剤を含有しない湿潤液を用いると(実施例3)、離型剤を含有する湿潤液を用いる場合(実施例1)に比して、光沢性がやや劣る結果となった。
Claims (6)
- 透気性支持体上に、水分量12〜40質量%の塗被層を形成し、該層の表面に湿潤液を付与した後、加熱鏡面に圧接し乾燥することで、光沢層を形成することを特徴とするキャスト塗工シートの製造方法。
- 透気性支持体上に、光沢層用塗工液を塗工して塗被層を形成した後、該層を増粘又はゲル化させ、さらに該層の水分量が12質量%以上の状態で、その表面に湿潤液を付与し、これを加熱鏡面に圧接し乾燥することで、光沢層を形成することを特徴とするキャスト塗工シートの製造方法。
- 特定の温度域では親水性、それと異なる温度域では疎水性を呈し、親水性を呈する温度域ではこれを含む液が増粘又はゲル化する感温性高分子化合物を含有する光沢層用塗工液を用い、
前記感温性高分子化合物が疎水性を呈する温度域で、前記光沢層用塗工液を塗工して塗被層を形成した後、前記感温性高分子化合物が親水性を呈する温度域に温度変化させることで、該層を増粘又はゲル化させることを特徴とする請求項2に記載のキャスト塗工シートの製造方法。 - 前記感温性高分子化合物は、感温点未満で親水性、感温点以上で疎水性を呈するものであり、かつ感温点が0〜30℃であることを特徴とする請求項3に記載のキャスト塗工シートの製造方法。
- キャスト塗工シートがインクジェット記録用であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のキャスト塗工シートの製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のキャスト塗工シートの製造方法により製造されるものであることを特徴とするキャスト塗工シート。
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