JP2005290309A - 記録媒体製造用塗工液 - Google Patents

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Abstract

【課題】 インク組成物を記録媒体に付着させる方法により行う各種印刷方式、ペンなどの筆記用具による記録方式あるいは加熱によりインク組成物を発色させる感熱記録方式などに使用される紙、シート、フィルム、布等を支持体とした高い表面光沢を有する記録媒体、更には、インク吸収性、表面光沢、画質に優れたインクジェット用記録媒体を効率よく製造するのに有用な製造方法を提供すること。
【解決手段】 40℃における粘度が20mPa・s以上300mPa・s以下であり、25℃における粘度が10000mPa・s以上であることを特徴とする記録媒体製造用塗工液および該塗工液を使用した記録媒体の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明はインク組成物を記録媒体に付着させる方法により行う各種印刷方式、ペンなどの筆記用具による記録方式あるいは加熱によりインク組成物を発色させる感熱記録方式などに使用される紙、シート、フィルム、布等を支持体とした高い表面光沢を有する記録媒体を効率よく製造するのに有用な記録媒体製造用塗工液、記録媒体の製造方法および記録媒体に関し、更に、インク吸収性、表面光沢、画質に優れたインクジェット用記録媒体を効率よく製造するのに有用な記録媒体製造用塗工液および記録媒体の製造方法ならびに記録媒体に関する。
インクジェット記録方式は、記録時の騒音が少なく、カラー化が容易であること、高速記録が可能であることから広い分野で利用が進められている。
近年、銀塩写真並の高画質を得るためのインクジェット用記録媒体の技術開発が進み、ポリオレフィンで被覆した紙やポリマーフィルムなどの平滑性の高い支持体上に、無機微粒子により形成される微小空隙を有するインク吸収層を設けた記録媒体が、銀塩写真画質に迫るものとして市販されている。ところが、インク吸収性の無い支持体上で、十分なインク吸収容量を該インク吸収層だけで確保しようとすれば、35μm以上の非常に厚いインク吸収層を形成しなければならない。該厚みを持つインク吸収層を得るためにはその数倍の厚みの塗工液を均質な厚みで塗布し、乾燥工程においても膜厚の均質性を保ちながら、かつ、効率良く該記録媒体を製造するのは困難であり問題となる。
その解決手段の一つとして、例えば特許文献1には、無機微粒子とともに、ポリビニルアルコールとホウ酸及び/又はホウ砂を含む塗工液を用いた記録媒体の製造方法が開示されている。該塗工液は、比較的高い温度領域(およそ40℃以上)では低粘度水溶液の状態を保つが、15℃程度の低温領域では増粘する(ゲル状になる)。また、無機微粒子とともに、ゼラチンを含む塗工液を用いた場合にも同様の温度変化による増粘性を示す。該性質を利用することによって厚膜の塗工層を均質に保つことが可能である。しかしながら、該塗工液は15℃以下の冷風を用いて冷却し増粘させる(セットさせる)必要があり、かつ、該塗工液の増粘は可逆的であるため乾燥がある程度進み再度低粘度化が起こらなくなるまでの間、温風による乾燥を行えないため生産性が低い問題がある。また、近年、ホウ素化合物に関して、水質に係わる厳しい環境基準が設けられているが、ポリビニルアルコールとホウ酸及び/又はホウ砂を含む塗工液を用いる場合には水質汚染が懸念される。また、乾燥時間の短縮及び乾燥にかかるエネルギー費用の軽減のため、塗工液の固形分濃度を高め、蒸発させるべき水の量を減らそうとする場合、ポリビニルアルコールやゼラチンなどの水溶性ポリマーのみをバインダーとした塗工液においては、高濃度化することによって塗工液粘度が急激に増加してしまい、塗工液の取り扱いが困難になる、塗工液を支持体上に均質に塗工することが困難となる等の問題がある。
また、銀塩写真並の表面光沢を得るためのインクジェット用記録媒体として、キャスト法を用いた記録媒体も市販されている。キャスト法には、顔料や接着剤を主成分とする塗工液組成物を原紙上に塗工した後、塗工層が湿潤状態にある間に鏡面仕上げした加熱ドラムの表面に圧着し、乾燥するウェットキャスト法(直接法)、湿潤状態の塗工層をいったん乾燥あるいは半乾燥して凝固させた後、再湿潤液により湿潤可塑化させ、鏡面仕上げした加熱ドラムに圧着し乾燥するリウェットキャスト法、湿潤状態の塗工層を凝固処理によりゲル状態にして、鏡面仕上げした加熱ドラムに圧着し乾燥するゲル化キャスト法(凝固法)の3種類の方法が一般的に知られており、これらのキャスト法は、いずれも、湿潤可塑化状態にある塗工層を鏡面仕上げした加熱ドラムに圧着して乾燥し、加熱ドラムから離
型させて鏡面を写し取ることは共通している。キャスト法は一般に前述の冷却セットを利用する製造方法に比べて生産性の点で優れているといわれているが、キャスト法にて得られた記録媒体の表面は、高光沢、高平滑となるが、塗工層表面に数ミクロンあるいはそれ以下のサイズの微小な地割れ状のクラックが多数存在しており、高解像度の画像が得られにくいという問題がある。
さらに、加熱によりインク組成物を発色させることによって印刷を行う感熱記録、グラビア印刷、オフセット印刷その他各種方式による印刷、ペンなどの筆記用具による記録などに用いる記録媒体においても、上記したような問題点の改良がのぞまれている。
このように、各種方式による記録媒体において、表面光沢性、高画質、地球環境保全や省エネルギーなどの見地から十分に満足出来得る記録媒体が望まれており、その製造に使用される記録媒体用塗工液および、記録媒体の効率的な製造方法の開発が求められている。
特開2000- 218927号公報
本発明はインク組成物を記録媒体に付着させる方法により行う各種印刷方式、ペンなどの筆記用具による記録方式あるいは加熱によりインク組成物を発色させる感熱記録方式などに使用される紙、シート、フィルム、布等を支持体とした記録媒体の製造において、従来に比べ、より効率的に、高い表面光沢を有する記録媒体の製造に適した記録媒体用塗工液、更には該塗工液を用いた該記録媒体の製造方法、該製造方法により製造される記録媒体を提供することを目的とするものである。なかでも従来に比べ、インク吸収性、表面光沢、画質に優れたインクジェット用記録媒体を効率よく製造するのに有用な塗工液および該塗工液を用いた記録媒体の製造方法ならびに該製造方法により製造される記録媒体を提供することを目的とするものである。
本発明者等は、前記問題を解決するために鋭意検討した結果、40℃における粘度が20mPa・s以上300mPa・s以下であり、25℃における粘度が10000mPa・s以上であることを特徴とする記録媒体製造用塗工液および該塗工液を使用した記録媒体の製造方法が前記問題の解決に有効であることを見出し、本発明をなすに至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
1) 40℃における粘度が20mPa・s以上300mPa・s以下であり、25℃における粘度が10000mPa・s以上であることを特徴とする記録媒体製造用塗工液。
2) 一定の温度(感温点)以下の温度領域では親水性を示し、感温点を超える温度領域では疎水性を示す高分子化合物(A)を含む高分子エマルジョンを含有することを特徴とする1)に記載の記録媒体製造用塗工液。
3) 無機微粒子を含有することを特徴とする1)または2)に記載の発明の記録媒体製造用塗工液。
4) 前記無機微粒子が、金属酸化物および/またはその前駆体(金属源)とテンプレートと水を混合反応させ製造された複合体であることを特徴とする1)〜3)のいずれかに記載の記録媒体製造用塗工液。
5) 前記記録媒体が、インクジェット用記録媒体である1)〜4)のいずれかに記載の記録媒体製造用塗工液。
6) 支持体上に1層以上の塗工層を設けた記録媒体の製造方法であって、該塗工層の少なくとも1層の形成方法が、1)〜5)のいずれかに記載の記録媒体製造用塗工液を塗工した後、該塗工層を湿潤状態において加熱された鏡面仕上げの固体表面に圧着し、該塗
工層表面に光沢を付与することを特徴とする記録媒体の製造方法。
7) 支持体上に1層以上の塗工層を設けた記録媒体であって、該塗工層の少なくとも1層が、1)〜5)のいずれかに記載の記録媒体製造用塗工液を塗工して製造されたことを特徴とする記録媒体。
8) 6)に記載の記録媒体の製造方法によって製造された記録媒体。
本発明を用いれば、インク組成物を記録媒体に付着させる方法により行う各種印刷方式や、ペンなどの筆記用具による記録方式などに使用される紙、シート、フィルムおよび、布等を支持体とした高い表面光沢を有する記録媒体を効率よく製造することが可能となり、更に、インク吸収性、表面光沢および画質に優れたインクジェット用記録媒体を効率よく製造することも可能となり、産業上の利用価値は甚だ大きなものである。
本発明について、以下に具体的に説明する。
本発明の記録媒体製造用塗工液は40℃における粘度が20mPa・s以上300mPa・s以下であり、25℃における粘度が10000mPa・s以上であることによって、塗工を行う際の40℃付近の温度では該塗工液および塗工直後の塗工層が低粘度であるため、その表面張力によって極めて平滑で均質な表面が容易に得られ、続く塗工層の冷却によって塗工層が25℃以下となった場合に極めて大きな粘度(ゲル状)となり、さらに、温風による乾燥を速やかに開始しても再び低粘度化することがないため、得られた平滑かつ均質な表面をそのままの状態に保ちながら乾燥を行うことができ、極めて均質で高い表面光沢の塗工層を持つ記録紙を高い生産性で生産することが可能である。
さらに、25℃における塗工液の粘度が10000mPa・s以上であることから、塗工後のセットに冷風を用いることが必須ではなく、効率的に記録紙を製造することができる。
本発明において粘度はB型粘度計による測定値を用いる。
本発明の記録媒体製造用塗工液は一定の温度(感温点)以下の温度領域では親水性を示し、感温点を超える温度領域では疎水性を示す高分子化合物(A)を含む高分子エマルジョンを含有するものであることが好ましい。さらに、40℃における粘度が20mPa・s以上300mPa・s以下であり、25℃における粘度が10000mPa・s以上となる塗工液を得るためには、前記感温点は25℃以上39℃以下であることが好ましく、27℃以上37℃以下であることがさらに好ましい。
本発明の塗工液の40℃における粘度を20mPa・s以上300mPa・s以下に制御する方法としては、塗工液の固形分濃度調整、あるいは後述の、無機微粒子の一次粒子径の選択(粒子径が小さいほど高粘度の塗工液を得やすい)などが挙げられる。
本発明に用いる高分子化合物(A)は、単独重合することによって該温度応答性(親水性−疎水性の変化)を呈する高分子化合物が得られるモノマー(主モノマー(M))の単独重合高分子化合物、又は二種類以上の主モノマー(M)の共重合高分子化合物、さらには、該主モノマー(M)と反応して高分子化合物を作ることができかつ単独重合によっては該温度応答性を呈する高分子化合物が得られないモノマー(副モノマー(N))と主モノマー(M)との共重合高分子化合物である。主モノマー(M)と副モノマー(N)は各々1種又は2種以上のものを組み合わせて用いることも出来る。
主モノマー(M)の単独重合により高い温度応答性を有する高分子化合物(A)が得られるが、主モノマー(M)と副モノマー(N)とを共重合することによって、主モノマー(M)の単独重合高分子化合物とは異なる感温点を持つ高分子化合物(A)が得られたり、主モノマー(M)の単独重合高分子化合物とは異なる成膜性を有する高分子化合物(A
)を得ることができる。
主モノマー(M)としてはN−アルキル又はN−アルキレン置換(メタ)アクリルアミド誘導体(ここで、(メタ)アクリルとはメタアクリル(又はメタクリル)又はアクリルを簡便に表記したものである)、ビニルメチルエーテルなどが挙げられ、具体的には例えば、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−シクロプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルピロリジン、N−(メタ)アクリロイルピペリジン、N−テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(2,2−ジメトキシエチル)−N−メチルアクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルモルホリンなどが挙げられる。成膜性の観点から、N−イソプロピルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−アクリロイルモルホリンが好ましい
副モノマー(N)としては親油性ビニル化合物、親水性ビニル化合物、イオン性ビニル化合物などが挙げられ、具体的には、親油性ビニル化合物としてはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、エチレン、イソプレン、ブタジエン、酢酸ビニル、塩化ビニルなどが挙げられ、親水性ビニル化合物としては2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、2−メチル−5−ビニルピリジン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−アクリロイルピロリジン、アクリロニトリル、などが挙げられ、イオン性ビニル化合物としてはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸、ブテントリカルボン酸、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノメチル等のカルボン酸基含有モノマー、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アクリルスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマーなどが挙げられる。特に、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、メタアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミドが好ましく用いられる。また、本発明の塗工液を用いて得られる塗工層の成膜性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸、ブテントリカルボン酸、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノメチル等のカルボン酸基含有モノマー、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アクリルスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマーなどのアニオン基含有モノマーを用いることは好ましく、特にアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のカルボン酸基含有モノマーを用いることは好ましい。
主モノマー(M)と副モノマー(N)の共重合割合は、得られる共重合高分子化合物が一定の温度を境界にして親水性と疎水性が可逆的に変化する温度応答性を呈する範囲の中で決められる。つまり、副モノマー(N)の割合が多すぎれば得られる共重合高分子化合物が該温度応答性を示さなくなる。
即ち、主モノマー(M)と副モノマー(N)の共重合割合は用いるモノマー種の組み合わせに依存するが、生成する高分子化合物中における副モノマー(N)の割合は50質量%以下が好ましい。更に好ましくは、30質量%以下である。また、副モノマー(N)の添加効果がより良く発現されるためには0.01質量%以上が好ましい。
本発明において、高分子化合物(A)の「感温点」とは、その親水性−疎水性が変化する温度であり、「温度応答性」とは、該親水性−疎水性の変化を示す性質を意味する。また、本発明において、「親水性」とは高分子化合物(A)と水とが共存する系において高分子化合物(A)は水と相溶した状態の方が、相分離した状態よりも安定であることを意味し、「疎水性」とは高分子化合物(A)と水とが共存する系において高分子化合物(A)は水と相分離した状態の方が、相溶した状態よりも安定であることを意味する。該親水性−疎水性の変化は例えば、高分子化合物(A)と水とが共存する系の温度変化に伴う急激な粘度変化、または高分子化合物(A)と水とが共存する系の透明性の急激な変化、高分子化合物(A)の水に対する溶解性の急激な変化として現れる。本発明においては、高分子化合物(A)と水とが共存する系の温度を、高分子化合物(A)が疎水性を示す温度領域(感温点を超える温度)から徐々に低下させたときの粘度を測定して得られる温度−粘度曲線が急激に変化する転移点として高分子化合物(A)の感温点を求める。
本発明に用いる高分子エマルジョンは、含有する高分子化合物(A)の温度変化による親水性−疎水性の変化の影響によって急激に粘度変化を生じる温度(感温点)を有する。
本発明の塗工液をインクジェット用記録媒体製造において使用する場合、インクジェット記録ではアニオン基を有する染料インクを用いることは、多くの場合、カチオン基を有する染料インクと比較して光耐久性が高いため好ましい。そのため当該アニオン基を有する染料インクを記録媒体に定着させる目的でカチオン性高分子やカチオン性粒子などカチオン性の化合物を塗工液に添加することが好ましく、該塗工液調製の容易さの観点から高分子化合物(A)がカチオン性または非イオン性であることはより好ましい。カチオン性の高分子化合物(A)は例えば、重合に使用する副モノマー(N)として、カチオン基を持つエチレン性不飽和モノマーを含めることによって得ることができ、該観点から少なくとも一種類以上の、カチオン基を持つエチレン性不飽和モノマーを副モノマー(N)として使用することは好ましい。該カチオン基を持つエチレン性不飽和モノマーは各々1種または2種以上のものを組み合わせて用いることも出来る。特に、太陽光または蛍光灯の光に、得られる記録媒体にインクジェットプリンターを用いて印刷を行った印刷物を曝しておいた場合に生じる退色の度合いの観点および得られる高分子エマルジョンのコロイド安定性の観点から、該カチオン基を持つエチレン性不飽和モノマーとしては3級アミノ基および/または4級アンモニウム塩基を含有することがより好ましい。
3級アミノ基および/または4級アンモニウム塩基を含有する高分子化合物(A)は、例えば主モノマー(M)と、副モノマー(N)として3級アミノ基および/または4級アンモニウム塩基を含有するモノマーとを共重合させて得られる。主モノマー(M)、副モノマー(N)(3級アミノ基および/または4級アンモニウム塩基を含有するモノマーを含む)は各々1種または2種以上のものを組み合わせて用いることも出来る。
3級アミノ基または4級アンモニウム塩基含有する副モノマー(N)としては、ビニロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2,3−ジメチル−1−ビニルイミダゾリニウムクロライド、トリメチル−(3−(メタ)アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミドおよびその4級アンモニウム塩、トリメチル−(3−(メタ)アクリルアミド)アンモニウムクロライド、1−ビニル−2−メチル−イミダゾール、1−ビニル−2−エチル−イ
ミダゾール、1−ビニル−2−フェニル−イミダゾール、1−ビニル−2、4,5−トリメチル−イミダゾール、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートおよびその4級アンモニウム塩、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびその4級アンモニウム塩、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびその4級アンモニウム塩、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびその4級アンモニウム塩、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミドおよびその4級アンモニウム塩、N−(3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミドおよびその4級アンモニウム塩、N−(3−ジエチルアミノプロピル)メタクリルアミドおよびその4級アンモニウム塩、N−(3−ジエチルアミノプロピル)アクリルアミドおよびその4級アンモニウム塩、o−,m−,p−アミノスチレンおよびその4級アンモニウム塩、o−,m−,p−ビニルベンジルアミンおよびその4級アンモニウム塩、N−(ビニルベンジル)ピロリドン、N−(ビニルベンジル)ピペリジン、N−ビニルイミダゾールおよびその4級アンモニウム塩、2−メチル−1−ビニルイミダゾールおよびその4級アンモニウム塩、N−ビニルピロリドンおよびその4級アンモニウム塩、N,N’−ジビニルエチレン尿素およびその4級アンモニウム塩、α−,またはβ−ビニルピリジンおよびその4級アンモニウム塩、α−,またはβ−ビニルピペリジンおよびその4級アンモニウム塩、2−,または4−ビニルキノリンおよびその4級アンモニウム塩等が例示される。特に、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのメチルクロライド4級化合物が好ましく用いられる。
主モノマー(M)と3級アミノ基および/または4級アンモニウム塩基含有モノマーを含む副モノマー(N)の共重合割合は、得られる共重合高分子化合物が感温点を境にして親水性と疎水性が可逆的に変化する温度応答性を呈する範囲の中で決められる。
本発明に用いる高分子化合物(A)中の3級アミノ基および/または4級アンモニウム塩基含有副モノマー(N)単位の含有率は、上記条件の範囲の中で決められるが、塗工液調整の容易さの観点から0.01質量%以上が好ましく、成膜性の観点から50質量%以下が好ましい。更に好ましくは0.1〜30質量%である。
さらに、太陽光または蛍光灯の光に印刷物を曝しておいた場合に生じる退色の度合いの観点から、3級アミノ基含有モノマーよりも4級アンモニウム塩基含有副モノマー(N)を使用する方がより好ましい。
さらに、3級アミノ基および/または4級アンモニウム塩基含有副モノマー(N)および、前記アニオン基含有副モノマー(N)を共に含有することは、前述の該塗工液調製の容易さ、および本発明の高分子エマルジョンを用いて得られる塗工層の成膜性、の両方の観点から好ましく、特に該アニオン基含有副モノマー(N)としてアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のカルボン酸基含有副モノマー(N)を用いることは好ましい。
本発明に用いる高分子化合物(A)のガラス転移点は、成膜性および得られる記録媒体の柔軟性などの観点から−50〜150℃が好ましく、一般的には得られる記録媒体への柔軟性付与の観点から−50〜30℃が好ましい。ただし、本発明の塗工液をインクジェット用記録媒体製造に使用する場合は、得られるインクジェット用記録媒体のインク吸収性を重視する場合には30〜130℃が好ましく、得られるインクジェット用記録媒体の柔軟性とインク吸収層の透明性を重視する場合には−50〜30℃が好ましい。
本発明に用いる高分子エマルジョンを製造するに際しては、高分子化合物(A)の感温点を超える温度領域において重合反応を行うことが好ましい。該温度領域において高分子化合物(A)は疎水性を示しエマルジョンを形成することから、該温度領域において、広く知られている高分子エマルジョンの製造技術を用いることによって本発明に用いる高分子エマルジョンが得られる。具体的には、水に界面活性剤を溶解し、前記主モノマー(M)、副モノマー(N)等共重合モノマー成分を加えて乳化させ、ラジカル重合開始剤を加
えて一括仕込みによる反応により乳化重合を行う方法のほか、連続滴下、分割添加などの方法により反応系に上記共重合成分や、ラジカル重合開始剤を反応系に供給する方法が挙げられる。
本発明に用いる高分子化合物(A)を含む高分子エマルジョンを製造するにおいては、界面活性剤を利用することが好ましい。
本発明に用いる高分子エマルジョンは、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性の何れであっても良い。
高分子化合物(A)を含む高分子エマルジョンがアニオン性の場合には、アニオン性界面活性剤および/または非イオン性界面活性剤を使用する。例えば、脂肪酸石鹸、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩、p−スチレンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、ホルマリン重縮合物、高級脂肪酸とアミノ酸の縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、ナフテン酸塩等、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン、アルキルエーテル硫酸塩、第二級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、アルキルエーテル燐酸エステル塩、アルキル燐酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤が挙げられる。非イオン性界面活性剤としてはポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンプロックコポリマー、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
また高分子化合物(A)を含む高分子エマルジョンがカチオン性の場合には、カチオン性界面活性剤および/または非イオン性界面活性剤を使用する。例えば、カチオン性界面活性剤としては、ラウリルアミン塩酸塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルアンモニウムヒドロキシド、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられ、非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンプロックコポリマー、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
高分子化合物(A)を含む高分子エマルジョンが非イオン性である場合には、非イオン性界面活性剤を使用する。非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンプロックコポリマー、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
高分子化合物(A)を含む高分子エマルジョンが両性の場合には、両性界面活性剤を使用することが高分子エマルジョンのpHの変化に対する安定性の観点から好ましいが、本発明の塗工液中で該高分子エマルジョンがカチオン性を示す場合にはカチオン性界面活性剤を使用する事ができ、本発明の塗工液中で該高分子エマルジョンがアニオン性を示す場合にはアニオン性界面活性剤を使用する事ができる。 両性界面活性剤としてはカルボキシベタイン型、アミノカルボン酸塩、レシチン等が挙げられる。
これらの界面活性剤の使用量としては、高分子化合物(A)を含む高分子エマルジョンの樹脂固形分100質量部に対して0.05〜50質量部であることが好ましく、さらに好ましくは1〜30質量部である。
本発明においては、前記界面活性剤を1種単独で使用することもできるし、またその2種以上を併用することもできる。
本発明に用いる高分子エマルジョン重合時に「反応性基を有する界面活性剤」を使用す
るとによって非反応性の界面活性剤の使用量を減らすことは、得られる記録媒体に印刷した画像の耐水性の観点から好ましい。反応性基を有する界面活性剤は、一般に反応性界面活性剤と称され、分子中に疎水基、親水基および反応性基を有する化合物を挙げることができる。該反応性基としては、例えば、(メタ)アリル基、1- プロペニル基、2- メチル- 1- プロペニル基、イソプロペニル基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等の炭素- 炭素二重結合を有する官能基が挙げられる。
アニオン性を有する反応性界面活性剤としては、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、カルボン酸塩基、燐酸塩基等の構造を含有するものが挙げられ、スルホン酸塩基を有するビニルモノマーとして、例えばアリルスルホン酸、2- メチルアリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、4- ビニルベンゼンスルホン酸、2- (メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、3- (メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、2- アクリルアミド- 2- メチルプロパンスルホン酸等の各種のスルホン酸基含有ビニルモノマー類を各種の塩基性化合物により中和することにより得られるもの等が挙げられる。該塩基性化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n- ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ- n- ブチルアミン、ジエタノールアミン、2- ジメチルアミノエチルアルコール、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラ- n- ブチルアンモニウムハイドロキサイド等が挙げられる。硫酸エステル塩基を含有するビニルモノマーとして、例えばアリルアルコールの硫酸エステル等の硫酸エステル基を含有するビニルモノマー類を、前記各種塩基性化合物により中和することにより得られるもの等が挙げられる。燐酸塩基を含有するビニルモノマーとして、例えばモノ{2- (メタ)アクリロイルオキシエチル}アシッドホスフェート等の燐酸基含有ビニルモノマー類を、前記各種塩基性化合物により中和することにより得られるものなどが挙げられる。アリル基(CH2 =C(−R)−CH2 - )(ただしRはアルキル基)を含有するアニオン性を有する反応性界面活性剤としては例えば、ポリオキシエチレンアリルグリシジルノニルフェニルエーテルの硫酸エステル塩等が挙げられ、市販品としては、「アデカリアソープSE- 10N」シリーズ(商標:旭電化工業(株)製)、「エレミノールJS- 2」(商標:三洋化成工業(株)製)、「ラテムルS- 180もしくはS- 180A」(商標:花王(株)製)、「H3390A」および「H3390B」(商標:第一工業製薬(株)製)等がある。(メタ)アクリロイル基(CH2 =C(−R)−C(=O)−O- )(ただしRはアルキル基)を含有するアニオン性を有する反応性界面活性剤としては例えば、市販品として、「エレミノールRS- 30」シリーズ(商標:三洋化成工業(株)製)、「Antox MS- 60」シリーズ(商標:日本乳化剤(株)製)等が挙げられる。プロペニル基(CH3-CH=CH- )を含有するアニオン性を有する反応性界面活性剤としては例えば、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテルの硫酸エステルアンモニウム塩等が挙げられ、市販品としては「アクアロンHS- 10」シリーズおよび「アクアロンBC」シリーズ(商標:第一工業製薬(株)製)等がある。
カチオン性を有する反応性界面活性剤としては、アミン塩基等カチオン性を有する構造を含有するカチオン性ビニルモノマー類等が挙げられる。アミン塩基を有するビニルモノマーとしては、例えばアリルアミン、N,N- ジメチルアリルアミン、N,N- ジエチルアリルアミン、N,N- ジエチルアミノプロピルビニルエーテルのアミノ基含有ビニルモノマー類を、各種酸性化合物により中和することによりえられるもの等が挙げられる。該酸性化合物としては、塩酸、蟻酸、酢酸、ラウリル酸等が挙げられる。カチオン性を有する反応性界面活性剤の市販品として、「RF- 751」(商標:日本乳化剤(株)製)や「ブレンマーQA」(商標:日本油脂(株)製)等が挙げられる。
非イオン性の反応性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エス
テル、ポリオキシエチレン- ポリオキシプロピレンブロック共重合体ような各種のポリエーテル鎖を側鎖に有するビニルエーテル類、アリルエーテル類もしくは(メタ)アクリル酸エステル類のモノマー類などが挙げられる。アリル基(CH2 =C(−R)−CH2 - )(ただしRはアルキル基)を含有する非イオン性の反応性界面活性剤としては例えば、ポリオキシエチレンアリルグリシジルノニルフェニルエーテルが挙げられ、市販品としては、「アデカリアソープNE」シリーズ(旭電化工業(株)製)等がある。(メタ)アクリロイル基(CH2 =C(−R)−C(=O)−O- )(ただしRはアルキル基)を含有する非イオン性の反応性界面活性剤としては市販品として、「RMA- 560」シリーズ(日本乳化剤( 株) 製)、「ブレンマーPE」シリーズ(日本油脂(株)製)等が挙げられる。プロペニル基(CH3 - CH=CH- )を含有する非イオン性の反応性界面活性剤としては例えば、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテルが挙げられ、市販品としては、「アクアロンRNシリーズ」(第一工業製薬( 株) 製)等がある。
これらの反応性界面活性剤の使用量としては、高分子化合物(A)を含む高分子エマルジョン樹脂固形分100質量部に対して0.05〜100質量部であることが好ましく、さらに好ましくは1〜50質量部である。
本発明においては、前記反応性界面活性剤を1種単独で使用することもできるし、またその2種以上を併用することもでき、さらには、前記反応性を有しない界面活性剤と併用することもできる。
本発明の塗工液をインクジェット用記録媒体製造において使用する場合、インクジェット記録ではアニオン基を有する染料インクを用いることは、多くの場合、カチオン基を有する染料インクと比較して光耐久性が高いため好ましい。そのため当該アニオン基を有する染料インクを定着させる目的でカチオン性高分子やカチオン性粒子などカチオン性の化合物をインクジェット用記録媒体用塗工液に添加することが好ましく、該塗工液調製の容易さの観点から高分子化合物(A)を含む高分子エマルジョンにカチオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤を使用することはより好ましい。特に、塗工液に、後述する微粒子(C)として乾式シリカなどのシリカ(酸化ケイ素)を主成分とする粒子とカチオン性高分子を用いた場合には、該塗工液調製の容易さの観点から高分子化合物(A)を含む高分子エマルジョンがカチオン性界面活性剤を含有することが好ましい。この理由は明らかではないが、本発明に用いる高分子エマルジョンが非イオン性界面活性剤のみを含有する場合にはシリカを主成分とする微粒子が凝集を生じ塗工液の調整が容易ではないが、カチオン性界面活性剤の含有により凝集物を生じにくくなることがわかった。
本発明に用いる高分子エマルジョン粒子の平均粒子径は、塗工層の成膜性と高分子エマルジョンの製造効率などの観点から、10〜600nmのものが好ましく、さらに好ましくは10〜200nmである。本発明の高分子エマルジョンを含有する塗工液をインクジェット用記録媒体製造において使用する場合には、塗工層の透明性、発色性の観点から10〜100nmであることがとくに好ましい。ここで言う平均粒子径とは、高分子化合物(A)が疎水性を示す温度領域において動的光散乱法により測定される高分子エマルジョンの数平均粒子径である。 塗工前の塗工液中において、高分子エマルジョンが粒子(B)よりなるコア部と、高分子化合物(A)を含むシェル部とによって形成された粒子を含有することは、成膜性の観点から好ましい。コア部を形成する粒子(B)は有機高分子化合物であっても良いし、無機微粒子であっても良いが、最終的に得られる塗工膜の柔軟性の観点からは有機高分子化合物がより好ましく、最終的に得られる塗工膜の空隙容量の大きさ、インク吸収性等の観点からは無機微粒子がより好ましい。
粒子(B)よりなるコア部と、該コア部の周囲に高分子化合物(A)を含むシェル部とによって形成された高分子エマルジョンは、コア部となる粒子(B)を第一段階の反応で合成した後、または別途用意されたコア部となる粒子(B)を反応系に仕込むなどの後、前述の高分子化合物(A)を含む高分子エマルジョンの合成方法と同様の反応によって製
造することができる。本発明において、粒子(B)は、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性の何れであっても良いが、前述の様に高分子化合物(A)がカチオン性で有ることはより好ましいことから、該高分子化合物(A)をシェル部に含有する高分子エマルジョンを重合する場合には、重合安定性の観点から粒子(B)はカチオン性であることがより好ましい。
粒子(B)よりなるコア部と、高分子化合物(A)を含むシェル部との比率(コア/シェル比(質量比))は、成膜性、得られる塗工層の塗膜強度とインク吸収性などの観点から1/10〜10/1の範囲が好ましい。
粒子(B)が有機高分子化合物である場合、例えば、水性媒体中でのラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などによって得られる従来公知のポリ(メタ)アクリレート系、ポリビニルアセテート系、酢酸ビニル−アクリル系、エチレン酢ビ系、シリコーン系、ポリブタジエン系、スチレンブタジエン系、NBR系、ポリ塩化ビニル系、塩素化ポリプロピレン系、ポリエチレン系、ポリスチレン系、塩化ビニリデン系、ポリスチレン−(メタ)アクリレート系、スチレン−無水マレイン酸系等の共重合体、三次元架橋樹脂などが挙げられ、シリコーン変性アクリル系、フッ素−アクリル系、アクリルシリコーン、エポキシ−アクリル系等の変性共重合体も含まれ、これらの一種または二種以上を含有することができる。ここで、(メタ)アクリレート系とはメタアクリレート系(またはメタクリレート系)またはアクリレート系を簡便に表記したものである。特に、ポリ(メタ)アクリレート系(アクリル系高分子化合物)および/またはポリスチレン−(メタ)アクリレート系(スチレン−アクリル系高分子化合物)に分類される有機高分子化合物が、最終的に得られる塗工層の透明性や耐光黄変性、得られる記録媒体の保存性などの観点から、好ましく用いられる。
有機高分子化合物である場合の粒子(B)は高分子エマルジョンとして得られることが好ましく、広く知られている高分子エマルジョンの製造技術を用いることによって得られ、具体的には、水性溶媒に前述の界面活性剤を溶解し、後述するモノマー成分を加えて乳化させ、ラジカル重合開始剤を加えて一括仕込みによる反応により乳化重合を行う方法のほか、連続滴下、分割添加などの方法により反応系に上記重合成分や、ラジカル重合開始剤を反応系に供給する方法が挙げられる。
有機高分子化合物である場合の粒子(B)を得るためのモノマー(モノマー(L))としてはエチレン性不飽和モノマーの1種または2種以上のものを組み合わせて用いることが出来、具体的には、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド系モノマー、シアン化ビニル類等が挙げられ、(メタ)アクリル酸エステルの例としては、アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレン(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシプロピレン(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレン(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジエチレン
グリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。プロピレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシプロピレン(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール等が挙げられる。エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレートの具体例としては、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。(メタ)アクリルアミド系モノマー類としては、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミドなどがあり、シアン化ビニル類としては、例えば(メタ)アクリロニトリルなどがある。また上記以外の具体例としては、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、ブタジエン等のジエン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n−酪酸ビニル、安息香酸ビニル、p−t−ブチル安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類、酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル等のカルボン酸イソプロペニルエステル類、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類、スチレン、メチルスチレンなどのスチレン誘導体、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物、酢酸アリル、安息香酸アリル等のアリルエステル類、アリルエチルエーテル、アリルグリシジルエーテル、アリルフェニルエーテル等のアリルエーテル類、さらにγ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、パーフルオロメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピロメチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、トリメチロルプロパントリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2,3−シクロヘキセンオキサイド、(メタ)アクリル酸アリル、メタクリル酸アシッドホスホオキシエチル、メタクリル酸3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピル、メチルプロパンスルホン酸アクリルアミド、ジビニルベンゼン、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸、ブテントリカルボン酸、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノメチル等のカルボン酸基含有モノマー、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アクリルスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリルとはメタアクリル(またはメタクリル)またはアクリルを簡便に表記したものである。
本発明に用いる高分子エマルジョンを用いて得られる塗工層の成膜性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸、ブテントリカルボン酸、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノメチル等のカルボン酸基含有モノマー、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アクリルスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマーなどのアニオン基含有モノマーを用いることは好ましく、特にアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のカルボン酸基
含有モノマーを用いることは好ましい。
有機高分子化合物である場合の粒子(B)のガラス転移点は、成膜性の観点から−50〜150℃が好ましく、一般的には得られる記録媒体への柔軟性付与の観点から−50〜30℃が好ましい。ただし、本発明の塗工液をインクジェット用記録媒体製造に使用する場合に、得られるインクジェット用記録媒体のインク吸収性を重視する場合には30〜130℃が好ましく、得られるインクジェット用記録媒体の柔軟性とインク吸収層の透明性を重視する場合にはは−50〜30℃が好ましい。
有機高分子化合物である場合の粒子(B)の数平均粒子径は、塗工層の成膜性と高分子エマルジョンの製造効率などの観点から3〜150nmのものが好ましく用いられ、10〜100nmのものがさらに好ましい。ただし、本発明の塗工液をインクジェット用記録媒体製造に使用する場合には、インク吸収層の透明性、発色性と高分子エマルジョンの製造効率などの観点から、3〜100nmのものが好ましく用いられ、さらに好ましくは5〜70nmであり、最も好ましくは10〜50nmである。ここで言う数平均粒子径とは、動的光散乱法により測定される数平均粒子径である。
コア部を形成する粒子(B)が無機微粒子である場合、粒子(B)としては例えば軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、乾式シリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト系アルミナ、水酸化アルミニウム、ゼオライト、水酸化マグネシウム、その他にジルコニウム、チタン、タンタル、ニオブ、スズ、タングステンなどの金属酸化物、アルミニウム、バナジウム、ジルコニウム、タングステンなどの金属リン酸塩などが挙げられ、該無機質の一部を他の元素に置換した物や、有機物で修飾することにより表面を改質した物も用いることができる。これら無機微粒子のうち1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を使用することもできるが、特に、粒子(B)としてコロイダルシリカ、乾式シリカを使用することは好ましい。コロイダルシリカ、乾式シリカを使用することにより、得られる記録媒体に印刷したとき良好な画質が得られることから好ましい。コロイダルシリカとしては特に限定されず、通常のアニオン性のコロイダルシリカ、アルミニウムイオン等の多価金属化合物を反応するなどの方法で得られるカチオン性コロイダルシリカが用いられる。乾式シリカとしては特に限定されないが、四塩化ケイ素を水素および酸素で燃焼して合成される気相法シリカが好ましく用いられる。乾式法シリカはそのまま用いても良いし、表面をシランカップリング剤他で修飾した物でも良い。
また、本発明の塗工液をインクジェット用記録媒体製造に使用する場合、粒子(B)としてアルミナゾル、擬ベーマイト系アルミナ微粒子を使用することは好ましい。アルミナゾル、擬ベーマイト系アルミナ微粒子を使用することにより、容易にカチオン性の高分子エマルジョンを得ることができ、得られるインクジェット用記録媒体に印刷したときの画質が向上し、画像に耐水性を付与することができる。
該コア部を形成する粒子(B)は、一次粒子のまま用いてもよいし、二次粒子を形成した状態で用いることもできる。また、コア部を形成する粒子(B)の粒子径は、平滑な表面を持つ記録媒体を得るため、好ましくは、数平均粒子径が500nm以下のものが用いられ、より好ましくは100nm以下のものが用いられ、更に好ましくは50nm以下のものが用いられる。さらには、本発明の塗工液をインクジェット用記録媒体製造に使用する場合、印刷後の印刷部の光学濃度(色濃度)を高くし、銀塩写真にも似た光沢を得る目的においては一次粒子の数平均粒子径が100nm以下のコア部を形成する粒子(B)が好ましく用いられ、より好ましくは50nm以下のものが用いられる。コア部を形成する粒子(B)の粒子径の下限は、生産性の観点からおよそ3nm以上の数平均粒子径であることが望ましい。
本発明において、得られる塗工層の表面光沢、インクジェットプリンターを用いて印刷した際の発色性などの観点から親水性バインダーを塗工液に含有させることは好ましい。
本発明に用いる親水性バインダーとしては、例えばゼラチンまたはゼラチン誘導体、ポリビニルピロリドン、プルラン、ポリビニルアルコールまたはその誘導体、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、ポリアクリル酸およびその塩、寒天、κ- カラギーナン、λ- カラギーナン、ι- カラギーナン、キサンテンガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、アラビアゴム、プルラン、例えば特開平7- 195826号公報および同7- 9757号公報に記載のポリアルキレンオキサイド系共重合性ポリマー、水溶性ポリビニルブチラール、あるいは、例えば特開昭62- 245260号公報に記載のカルボキシル基やスルホン酸基を有するビニルモノマーの単独またはこれらのビニルモノマー単位を繰り返して有する共重合体等のポリマーを挙げることができる。これらの親水性バインダーは単独で使用しても良く、2種以上を併用しても良い。
好ましい親水性バインダーは、ポリビニルアルコールまたはその誘導体、ゼラチンまたはゼラチン誘導体であり、特に好ましくはポリビニルアルコールである。
本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールは平均重合度が300〜4000のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1000以上のものが塗工時の増粘性が良好であることや、得られる塗工層の膜強度が良好であることなどから好ましい。また、ポリビニルアルコールのケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜100%のものが特に好ましい。
ポリビニルアルコールを用いる場合、後述の微粒子(C)として乾式シリカを用いることが特に好ましい。ポリビニルアルコールは、その構造単位に水酸基を有するが、この水酸基とシリカ微粒子表面のシラノール基とが水素結合を形成して、シリカ微粒子の二次粒子を鎖単位とする三次元網目構造を形成しやすくする。上記三次元網目構造の形成によって、空隙率の高い多孔質構造を形成しインク吸収性の良好な塗工層を得ることができる。さらに、塗工直後の冷却による増粘性もポリビニルアルコールの水酸基とシリカ微粒子表面のシラノール基とが水素結合を形成することにより良好となる。
前記親水性バインダーと前記微粒子(C )の比率は、質量比で1:15〜1:1であり、好ましくは1:10〜1:2の範囲である。
本発明のインクジェット用記録媒体は、塗工層の高い空隙率を保持し得ると言った観点から、前記親水性バインダーが硬膜剤により硬膜されていることが好ましい。
硬膜剤は、一般的には前記親水性バインダーと反応し得る基を有する化合物あるいは親水性バインダーが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、親水性バインダーの種類に応じて適宜選択して用いられる。
硬膜剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬膜剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4- ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6- ジグリシジルシクロヘキサン、N,N- ジグリシジルー4- グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬膜剤(2,4- ジクロロ- 4- ヒドロキシ- 1,3,5- s- トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5- トリスアクリロイル- ヘキサヒドロ- s- トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、ホウ酸およびその塩、ホウ砂、アルミ明礬等が挙げられる。
特に好ましい親水性バインダーとしてポリビニルアルコールを使用する場合には、塗工層の塗膜強度の観点から、ホウ酸およびその塩および/またはエポキシ系硬膜剤から選ばれる少なくとも1種の硬膜剤を使用するのが好ましく、塗工直後の塗工液増粘性(ゲル化
)の観点も加味すればホウ酸および/またはホウ砂がもっとも好ましい。
上記硬膜剤の使用量は親水性バインダーの種類、硬膜剤の種類、無機微粒子の種類や親水性バインダーに対する比率等により変化するが、概ね親水性バインダー1g当たり1〜200mg,好ましくは5〜100mgである。
上記親水性バインダーとしてゼラチンを用いる場合には、ゼラチンの硬膜剤として知られている下記化合物を用いることができる。例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタールアルデヒド等のアルデヒド系化合物、ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン系化合物、ビス(2- クロロエチル尿素)- 2- ヒドロキシ- 4,6- ジクロロ- 1,3,5- トリアジン、2,4- ジクロロ- 6- S- トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物、ジビニルスルホン酸、1,3- ビニルスルホニル- 2- プロパノール、N,N’- エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、1,3,5- トリアクリロイル- ヘキサヒドロ- S- トリアジン等の活性ビニル化合物、ジメチロ- ル尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN- メチロール化合物、1,6- ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物、例えば米国特許第3017280号明細書、同第2983611号明細書等に記載のアジリジン系化合物、例えば米国特許第3100704号明細書等に記載のカルボキシイミド系化合物、グリセロールトリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物、1,6- ヘキサメチレン- N,N’- ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物、ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物、2,3- ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物、クロム明ばん、カリ明ばん、硫酸ジルコニウム、酢酸クロム等である。尚、上記硬膜剤は、一種単独でも、2種以上を組み合わせてもよい。
上記硬膜剤は、硬膜剤を水および/または有機溶剤に溶解して使用することが塗工液の調整のしやすさ、安定性などの観点から好ましい。硬膜剤溶液中の硬膜剤の濃度としては、硬膜剤溶液の全質量に対して、0.05〜20質量%が好ましく、1〜10質量%が特に好ましい。硬膜剤溶液を構成する溶媒としては、一般に水が使用され、該水と混和性を有する有機溶媒を含む水系混合溶媒であってもよい。上記有機溶剤としては、硬膜剤が溶解するものであれば任意に使用することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、グリセリン等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル;トルエン等の芳香族溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル、およびジクロロメタン等のハロゲン化炭素系溶剤等を挙げることができる。
高分子化合物(A)を重合する際、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアルコール誘導体の共存下に重合することは、最終的に得られる記録媒体の塗工層の成膜性、成膜強度の観点から好ましい。
本発明の高分子化合物(A)の重合に用いるポリビニルアルコールおよび/またはポリビニルアルコール誘導体は、ポリビニルアルコールとしては一般に完全ケン化型ポリビニルアルコールと呼ばれるケン化度96%〜100%のポリビニルアルコール、一般に部分ケン化型ポリビニルアルコールと呼ばれるケン化度76%〜95%のポリビニルアルコール等が挙げられ、ポリビニルアルコール誘導体としてはシラノール変性ポリビニルアルコール、カチオン変成ポリビニルアルコール、メルカプト基含有ポリビニルアルコール、ケト基含有ポリビニルアルコール等が挙げられる。ポリビニルアルコールおよび/またはポリビニルアルコール誘導体は1種でも良いし複数の種類を混合して用いても良い。該ポリビニルアルコールおよびポリビニルアルコール誘導体の重合度は特に限定されないが、重合度300〜4000のものが好ましく用いられる。
主モノマー(M)と副モノマー(N)、ポリビニルアルコールおよび/またはポリビニルアルコール誘導体の使用割合は、得られる高分子化合物(A)が温度応答性を呈する範囲の中で決められ、高分子化合物(A)中のポリビニルアルコールまたはポリビニルアル
コール誘導体の含有率は、最終的に得られる記録媒体の塗工膜の耐水性の観点から、0.1〜50質量%が好ましく用いられ、更に好ましくは0.5〜20質量%である。
ポリビニルアルコールまたはポリビニルアルコール誘導体の共存下に重合することによって得られた高分子化合物(A)を含む高分子エマルジョンを用いる場合、最終的に得られる記録媒体の塗工層の成膜性、成膜強度の観点から、塗工液にポリビニルアルコールまたはポリビニルアルコール誘導体を架橋し得る架橋剤を添加するのが好ましい。
架橋剤としては、架橋反応が迅速である点から、ホウ素化合物が好ましく、例えば、ホウ砂、ホウ酸、ホウ酸塩(例えば、オルトホウ酸塩、InBO3 、ScBO3 、YBO3 、LaBO3 、Mg3 (BO3 2 、Co3 (BO3 2 、二ホウ酸塩(例えば、Mg2 2 5 、Co2 2 5 )、メタホウ酸塩(例えば、LiBO2 、Ca(BO2 2 、NaBO2 、KBO2 )、四ホウ酸塩(例えば、Na2 4 7 ・10H2 O)、五ホウ酸塩(例えば、KB5 8 ・4H2 O、Ca2 6 11・7H2 O、CsB5 5 )、グリオキザール、メラミン・ホルムアルデヒド(例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン)、メチロール尿素、レゾール樹脂、ポリイソシアネート、エポキシ樹脂等を挙げることができる。中でも、速やかに架橋反応を起こす点で、ホウ砂、ホウ酸、ホウ酸塩が好ましい。
ホウ酸またはその塩の使用量は、塗工液中の他の成分、例えば無機微粒子やポリビニルアルコールまたはポリビニルアルコール誘導体の濃度、pH等により広範な中から選ばれるが、ポリビニルアルコールに対して概ね1〜60質量%であるのが好ましく、また5〜40質量%が更に好ましい。
また、前記ポリビニルアルコールまたはポリビニルアルコール誘導体以外にもポリビニルアセタール、セルロース系樹脂(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂であるポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリビニルエーテル、アミド基またはアミド結合を有する樹脂であるポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類などの水溶性樹脂を用いることもできるが、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアルコール誘導体がもっとも好ましく用いられる。
本発明に用いる高分子エマルジョンを架橋し得る架橋剤を記録媒体用塗工液に含有させることは記録媒体の塗工層の塗膜強度および耐水性の観点から好ましい。
特に、塗工前の塗工液中では架橋反応は進行せず、塗工後架橋反応が進行することが工業的に望ましい。該反応としてカルボニル基とヒドラジン基またはセミカルバジド基との反応が好ましい。即ち、カルボニル基をもつ高分子エマルジョンを重合し、ヒドラジン基および/またはセミカルバジド基を有するヒドラジン誘導体を架橋剤として用いることが好ましい。
カルボニル基は高分子化合物(A)に含有させることもできるし、粒子(B)に含有させることもできる。カルボニル基を含有する高分子化合物(A)は例えば、主モノマー(M)と、カルボニル基を含有するモノマーを含む副モノマー(N)とを共重合させて得られる。主モノマー(M)、カルボニル基を含有するモノマーを含む副モノマー(N)は各々1種または2種以上のものを組み合わせて用いることも出来る。主モノマー(M)とカルボニル基含有モノマーを含む副モノマー(N)との共重合割合は、得られる共重合高分子化合物が感温点を境にして親水性と疎水性が可逆的に変化する温度応答性を呈する範囲の中で決められる。
高分子化合物(A)中のカルボニル基含有モノマー単位の含有率は、成膜性の観点から0.01〜50質量%が好ましく、更に好ましくは0.1〜20質量%である。
カルボニル基を含有する粒子(B)は例えば、粒子(B)が有機高分子化合物よりなる
場合には、前述の有機高分子化合物である場合の粒子(B)を得るためのモノマーとカルボニル基を含有するモノマーとを共重合して得られる。前述の有機高分子化合物である場合の粒子(B)を得るためのモノマーとカルボニル基を含有するモノマーは各々1種または2種以上のものを組み合わせて用いることも出来る。粒子(B)中のカルボニル基含有モノマー単位の含有率は、成膜性の観点から0.01〜50質量%が好ましく、更に好ましくは0.1〜20質量%である。
カルボニル基含有モノマーとしては、モノマー中にケト基またはアルド基を含む構造を有するものであれば特に制限されないが、アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、アクリルオキシアルキルプロパナール類、メタクリルオキシアルキルプロパナール類、ダイアセトンアクリレート、ダイアセトンメタクリレート、アセトニトリルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、ブタンジオールアクリレートアセチルアセテート等が例示される。
本発明に用いる高分子エマルジョンがカルボニル基を含有する場合、記録媒体製造に使用する塗工液に、架橋剤として少なくとも2個のヒドラジン基および/またはセミカルバジド基を有するヒドラジン誘導体を用いることが、得られる塗膜の耐水性や強度などの観点から好ましい。該ヒドラジン誘導体を、本発明に用いる高分子エマルジョンを含有する塗工液に添加、混合し、塗布、乾燥することによりカルボニル基部位がヒドラジン誘導体によって架橋された分子構造を持つ化合物を含有する塗工層を得ることができる。ヒドラジン誘導体としては少なくとも2個のヒドラジン基および/またはセミカルバジド基を有する化合物で有れば特に限定されないが、これらの内、ヒドラジン基を有する化合物としてはカルボヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸ヒドラジド、エチレン−1,2−ジヒドラジン、プロピレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,4−ジヒドラジン、水加ヒドラジンなどが例示され、セミカルバジド基を有する化合物としてはポリイソシアネート化合物と該ヒドラジン化合物の反応により得られる生成物が例示される。該ヒドラジン誘導体としては、セミカルバジド基を有する化合物が、得られる記録媒体の耐水性が高く好ましい。該ヒドラジン誘導体の含有量は特に限定されないが得られた高分子エマルジョン中のカルボニル基含有モノマー単位に対して0.01〜10倍モル量が好ましく用いられる。
本発明に用いる高分子エマルジョンにエチルアルコールなどのアルコール類を添加することで感温点を低下させることが出来る。即ち、感温点が室温あるいは外気温以上である場合、アルコール類を添加することで室温あるいは外気温以下の温度で高分子化合物(A)をエマルジョンの状態に保つことが出来、高分子化合物(A)を含む高分子エマルジョンの輸送および貯蔵を極めて容易に且つ経済的に行うことが出来、好ましい。アルコール類としては、例えば、エチルアルコール、メチルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ペンチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等が挙げられるが、効果の面からメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールが好ましく用いられる。これらアルコール類は単独で用いることもでき、二種類以上を組み合わせて用いることもできる。アルコール類の添加量はエタノールの場合、高分子エマルジョン中の水100質量部に対し通常5質量部乃至200質量部添加することが好ましい。
本発明の塗工液において微粒子(C)を含有させることは、得られる記録媒体のインク吸収性の観点から好ましい。微粒子(C)は有機化合物であっても良く、無機化合物であっても良い。
上記塗工液における微粒子(C)と高分子化合物(A)の比率は、得られる記録媒体の
インク吸収性と成膜性の観点から、乾燥質量比で100:5〜100:60であり、好ましくは100:10〜100:40である。
微粒子(C)が有機化合物である場合、例えば、水性媒体中でのラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などによって得られる従来公知のポリ(メタ)アクリレート系、ポリビニルアセテート系、酢酸ビニル−アクリル系、エチレン酢ビ系、シリコーン系、ポリブタジエン系、スチレンブタジエン系、NBR系、ポリ塩化ビニル系、塩素化ポリプロピレン系、ポリエチレン系、ポリスチレン系、塩化ビニリデン系、ポリスチレン−(メタ)アクリレート系、スチレン−無水マレイン酸系等の共重合体、三次元架橋樹脂などが挙げられ、シリコーン変性アクリル系、フッ素−アクリル系、アクリルシリコーン、エポキシ−アクリル系等の変性共重合体も含まれ、これらの一種または二種以上を含有することができる。ここで、(メタ)アクリレート系とはメタアクリレート系(またはメタクリレート系)またはアクリレート系を簡便に表記したものである。特に、ポリ(メタ)アクリレート系(アクリル系高分子化合物)または/およびポリスチレン−(メタ)アクリレート系(スチレン−アクリル系高分子化合物)に分類される有機高分子化合物が、最終的に得られるインク吸収層の透明性や耐光黄変性、得られる記録媒体の保存性などの観点から、好ましく用いられる。
有機高分子化合物である場合の微粒子(C)は高分子エマルジョンとして得られることが好ましく、広く知られている高分子エマルジョンの製造技術を用いることによって得られ、具体的には、水性溶媒に前述の界面活性剤を溶解し、後述するモノマー成分を加えて乳化させ、ラジカル重合開始剤を加えて一括仕込みによる反応により乳化重合を行う方法のほか、連続滴下、分割添加などの方法により反応系に上記重合成分や、ラジカル重合開始剤を反応系に供給する方法が挙げられる。
有機高分子化合物である場合の微粒子(C)を得るためのモノマーとしてはエチレン性不飽和モノマーの1種または2種以上のものを組み合わせて用いることが出来、具体的には、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド系モノマー、シアン化ビニル類等が挙げられ、(メタ)アクリル酸エステルの例としては、アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレン(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシプロピレン(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレン(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。プロピレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシプロピレン(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール等が挙げられる。エチレン
オキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレートの具体例としては、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。(メタ)アクリルアミド系モノマー類としては、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミドなどがあり、シアン化ビニル類としては、例えば(メタ)アクリロニトリルなどがある。また上記以外の具体例としては、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、ブタジエン等のジエン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n−酪酸ビニル、安息香酸ビニル、p−t−ブチル安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類、酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル等のカルボン酸イソプロペニルエステル類、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類、スチレン、メチルスチレンなどのスチレン誘導体、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物、酢酸アリル、安息香酸アリル等のアリルエステル類、アリルエチルエーテル、アリルグリシジルエーテル、アリルフェニルエーテル等のアリルエーテル類、さらにγ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、パーフルオロメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピロメチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、トリメチロルプロパントリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2,3−シクロヘキセンオキサイド、(メタ)アクリル酸アリル、メタクリル酸アシッドホスホオキシエチル、メタクリル酸3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピル、メチルプロパンスルホン酸アクリルアミド、ジビニルベンゼン等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリルとはメタアクリル(またはメタクリル)またはアクリルを簡便に表記したものである。
有機高分子化合物である場合の微粒子(C)のガラス転移点は、成膜性の観点から−50〜150℃が好ましく、一般的には得られる記録媒体への柔軟性付与の観点から−50〜30℃が好ましい。ただし、本発明の塗工液をインクジェット用記録媒体製造に使用する場合は、得られるインクジェット用記録媒体のインク吸収性を重視する場合には30〜130℃が好ましく、得られるインクジェット用記録媒体の柔軟性とインク吸収層の透明性を重視する場合には−50〜30℃が好ましい。
微粒子(C)が無機化合物である場合、例えば軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、乾式シリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト系アルミナ、水酸化アルミニウム、ゼオライト、水酸化マグネシウム、その他にジルコニウム、チタン、タンタル、ニオブ、スズ、タングステンなどの金属酸化物、アルミニウム、バナジウム、ジルコニウム、タングステンなどの金属リン酸塩などが挙げられ、該無機化合物の一部を他の元素に置換した物や、有機物で修飾することにより表面を改質した物も用いることができる。これら無機微粒子のうち1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を使用することもできる。
特に微粒子(C)としてコロイダルシリカ、乾式シリカを使用することは好ましい。コロイダルシリカ、乾式シリカを使用することにより、得られる記録媒体に印刷したときの
画質が向上し、光沢を付与することができる。コロイダルシリカとしては特に限定されず、通常のアニオン性のコロイダルシリカ、アルミニウムイオン等の多価金属化合物を反応するなどの方法で得られるカチオン性コロイダルシリカが用いられる。乾式シリカとしては特に限定されないが、四塩化ケイ素を水素および酸素で燃焼して合成される気相法シリカが好ましく用いられる。乾式法シリカはそのまま用いても良いし、表面をシランカップリング剤他で修飾した物でも良い。
また、インクジェット用記録媒体製造においては、微粒子(C)としてアルミナゾル、擬ベーマイト系アルミナ微粒子を使用することは好ましい。アルミナゾル、擬ベーマイト系アルミナ微粒子を使用することにより、得られるインクジェット用記録媒体に印刷したときの画質が向上し、画像の耐水性を付与することができる。
本発明に用いる微粒子(C)は、一次粒子のまま用いてもよいし、二次粒子を形成した状態で用いることもできる。また、微粒子(C)の粒子径はいかなるものも用いることができるが、平滑な表面を持つ記録媒体を得るため、通常、数平均粒子径が10μm以下のものが用いられ、好ましくは1μm以下のものが用いられる。さらには、インクジェット用記録媒体の製造に際しては、印刷後の印刷部の光学濃度(色濃度)を高くし、銀塩写真にも似た光沢を得る目的においては一次粒子の数平均粒子径が200nm以下の微粒子(C)が好ましく用いられ、より好ましくは数平均粒子径が100nm以下のものが用いられ、さらに好ましくは50nm以下のものが用いられる。
微粒子(C)の粒子径の下限は、微粒子(C)の製造効率の観点からおよそ3nm以上の数平均粒子径であることが望ましい。ここで言う数平均粒子径とは、動的光散乱法により測定される数平均粒子径である。
さらに、微粒子(C)として、金属源として金属酸化物および/またはその前駆体を用い、金属源とテンプレートと水を混合反応させ複合体を製造する工程を経て製造された多孔性物質を使用することは得られる塗工層のインク吸収性の観点から好ましい。さらに、微粒子(C)として、金属源として金属酸化物および/またはその前駆体を用い、(ア)金属源とテンプレートと水を混合反応させ複合体を製造する工程と、(イ)該複合体からテンプレートを除去する工程と、を経て製造され、動的光散乱法によって測定される数平均粒子径DLから求めた換算比表面積SLとBET法による窒素吸着比表面積SBとの差(SB−SL)が250m2 /g以上の多孔性物質を使用することは得られる塗工層のインク吸収性の観点から特に好ましい。ここで「多孔性」とは、窒素吸着法で求めた細孔分布において細孔を有することを意味する。動的光散乱法によって測定される平均粒子径DLから計算される換算比表面積SL(m2 /g)は、粒子が球状であると仮定し、SL=6×103 /(密度(g /cm3 )×DL(nm))により求められる。この値と、BET法による窒素吸着比表面積SBとの差(SB−SL)が250m2 /g以上であるということは、粒子がきわめて多孔性であることを示しており、該多孔性物質をインクジェット用記録媒体製造に使用することはインク吸収性の観点から特に好ましい。
該多孔性物質の粒子径は、平滑な表面を持つ記録媒体を得るため、通常、DLが10μm以下のものが用いられ、好ましくは1μm以下のものが用いられる。さらには、インクジェット用記録媒体の製造に際しては、印刷後の印刷部の光学濃度(色濃度)を高くし、銀塩写真にも似た光沢を得る目的においてはDLが300nm以下の微粒子(C)が好ましく用いられ、より好ましくは150nm以下のものが用いられる。
該多孔性物質の粒子径の下限は、該多孔性物質の製造効率の観点からおよそ10nm以上の数平均粒子径であることが望ましい。
該多孔性物質の合成で用いられる金属源は金属酸化物および/またはその前駆体であり、金属種としては、ケイ素、2族のマグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属、亜鉛、3族のアルミニウム、ガリウム、希土類等、4族のチタン、ジルコニウム等、5族のリン、バナジウム、7族のマンガン、テルル等、8族の鉄、コバルト等が挙げられる。前
駆体としては、これら金属の硝酸塩、塩酸塩等の無機塩、酢酸塩、ナフテン酸塩等の有機酸塩、アルキルアルミニウム等の有機金属塩、アルコキシド、水酸化物が挙げられるが、後述する合成方法によって合成できるものであればこれに限定されるものではない。
金属としてケイ素を選んだ場合、金属源として好ましくはテトラエトキシシラン等のアルコキシドや活性シリカを用いることができる。該活性シリカは、水ガラスから有機溶剤で抽出したり、水ガラスをイオン交換したりするなどして調製することができる。原料として安価な水ガラスを使用することは工業的利用の観点から好ましい。特に、水ガラスをH+型カチオン交換体と接触させて調製する場合、Na含有量が少なく、安価である3号水ガラスを用いるのが工業的に好ましい。カチオン交換体としては、たとえばスルホン化ポリスチレンジビニルベンゼン系の強酸***換樹脂(例えばローム&ハース社製、アンバーライトIR−120B:商品名)等が好ましい。
金属としてアルミニウムを選んだ場合、金属源として好ましくはアルミン酸アルカリ、具体的にはアルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸リチウム、アルミン酸第一アンモニウム、アルミン酸グアニジンなどを用いることができる。
該テンプレートとしては、金属源となる化合物と相互作用を持つものが用いられ、非イオン性界面活性剤を用いる場合、該多孔性物質を製造する上で、後述するテンプレート除去工程において水または水と有機溶剤の混合溶媒を用い容易にテンプレートを除去でき好ましい。
非イオン性界面活性剤としては、構造式HO( C2 4 O) a−( C3 6 O) b −(C2 4 O)c H(但し、a 、cは10〜110を、bは30〜70をしめす)で示されるもの、または構造式R( OCH2 CH2 ) n OH(但し、Rは炭素数12〜20のアルキル基を、nは2〜30を示す)で示されるものが好ましい。具体的には、「プルロニックP103」、「プルロニックP123」、「プルロニックP85」(旭電化工業(株)製、界面活性剤:商品名)等やポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等を挙げることができる。
該多孔性物質の細孔径を変化させるために、有機助剤として、炭素数6〜20の芳香族炭化水素、炭素数5〜20の脂環式炭化水素、炭素数3〜16の脂肪族炭化水素およびこれらのアミンならびにハロゲン置換体、たとえば、トルエン、トリメチルベンゼン、トリイソプロピルベンゼン等を加えることができる。
以下に、該多孔性物質の製造方法を説明する。
金属源とテンプレートの反応は、たとえば、金属源を溶媒に溶解または分散したものと、テンプレートを溶媒に溶解または分散したものを撹拌混合したのち行わせることができるが、これに限定されるものではない。溶媒としては、水または水と有機溶剤の混合溶媒のいずれを用いてもよいが、有機溶剤としては、アルコール類が好ましい。アルコール類としては、エタノールやメタノール等の低級アルコールが好ましい。
これらの反応に用いられる原材料の組成は、テンプレートと金属源、溶媒により異なるが、凝集や沈殿等が生じ、粒子径が大きくならない範囲を選ぶことが必要である。また、粒子の凝集や沈殿を防ぐためにNaOH等のアルカリや低分子ポリビニルアルコール等の安定化剤を加えてもよい。
例えば、金属源として活性シリカを、テンプレートとして「プルロニックP103」を、溶媒として水を用いる場合は、次のような組成を用いることができる。P103/SiO2 の質量比として、好ましくは0.01〜30、より好ましくは0.1〜5の範囲が用いられる。有機助剤/P103の質量比は、好ましくは0.02〜100、より好ましくは0.05〜35である。反応時の水/P103の質量比としては、好ましくは10〜1000、より好ましくは20〜500の範囲が用いられる。安定化剤として、NaOHをNaOH/SiO2 の質量比として1×10-4〜0.15の範囲で加えてもよい。
該多孔性物質が、ケイ素とアルミニウムを含む場合、Al/Siの元素比として好ましくは0.003〜0.1であり、より好ましくは0.005〜0.05である。
反応は常温でも容易に進行するが、必要に応じて100℃までの加温下で行うこともできる。反応時間としては0.5〜100時間、好ましくは3〜50時間の範囲が用いられる。反応時のpHは好ましくは2〜13、より好ましくは4〜12の範囲で、pHの制御のためにNaOHなどのアルカリや塩酸、硫酸などの酸を加えてもよい。
該複合体を製造した後にアルミン酸アルカリ共存下で40〜95℃に加熱し、変性する工程を行うこともできる。複合体がケイ素を含む場合、この工程をおこなうことで、酸性にしたりカチオン性物質を添加したりしても安定で、長期間の保存にも耐えるゾルを製造することができる。用いるアルミン酸アルカリとしては、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸リチウム、アルミン酸第一アンモニウム、アルミン酸グアニジンなどを用いることができるが、アルミン酸ナトリウムが好ましい。該変性工程は、複合体からテンプレートを除去する前でも後でもかまわない。
以下に、テンプレート除去前の場合を例に変性方法を説明する。複合体を製造した後、その反応溶液にアルミン酸アルカリ溶液を添加する。添加は、0〜80℃、好ましくは5〜40℃で撹拌しながら行う。添加するアルミン酸アルカリの濃度は特に限定されないが、1〜20質量%で用いるのが好ましい。添加する量は、Al/Siの元素比として好ましくは0.003〜0.1であり、より好ましくは0.005〜0.05である。添加後、40〜95℃で加熱するのが好ましく、60〜80℃で加熱するのがより好ましい。40℃以下の加熱は、ゾルを作成した際に、酸性にしたときにゲル化しやすく、十分な安定性が得られない。
次に、テンプレートの除去方法について説明する。得られた反応溶液にアルコール等の溶剤を加え限外ろ過装置などを用いて複合体からテンプレートを除去する事により多孔性物質が得られる。この際、粒子の凝集を防ぐためにNaOH等のアルカリや低分子ポリビニルアルコール等の安定化剤を加えてもよい。除去に用いる溶剤は、テンプレートを溶解するものであればよく、取り扱いが簡単で溶解力の高いアルコール類が好ましい。アルコール類としては、メタノール、エタノール等の低級アルコールが好ましい。除去温度は、用いる溶剤やテンプレートにより異なるが、20〜80℃が好ましい。除去されたテンプレートは溶剤を除くことで再利用することができる。また、得られた複合体を、ろ過等により濾別し、水洗、乾燥し、ついで含有しているテンプレートを超臨界流体やアルコール等の溶剤と接触させる、または焼成等の方法で除去することにより、多孔性物質を得てもよい。焼成温度は、テンプレートが消失する温度以上、概ね500℃以上で行う。焼成時間は、温度との関係で適宜設定されるが、30分〜6時間程度である。除去方法としては、溶剤と複合体を撹拌混合する方法や、複合体をカラム等に詰め溶剤を流通させる等の方法を取ることができる。
本発明の塗工液は、高分子化合物(A)の感温点を超える温度にて調製、使用することが好ましい。即ち、該塗工液は該感温点を超える温度では、比較的低粘度であるが、該塗工液を該感温点以下の温度に冷却することによって該塗工液は急激に増粘(またはゲル化)する。
キャスト法により塗工層表面に高い光沢を与える場合、本発明の塗工液を、支持体上に塗工した後、該塗工層が湿潤状態において該塗工層を加熱された鏡面仕上げの固体表面に圧着する工程を経ることによって高い光沢の表面を持ち、微小クラックのない、あるいは微小クラックの極めて少ない、高い解像度の画像を与えることができる記録媒体を製造できる。
さらに、本発明の塗工液を支持体上に塗工した後、該塗工層を後述の冷却方法を用いて冷却する工程を経た後、該塗工層が湿潤状態において該塗工層を加熱された鏡面仕上げの
固体表面に圧着する工程を経ることによって、より高い生産性で前述の良好な記録媒体を製造できる。
本発明において塗工層を冷却させる方法としては、自然冷却、冷風機、送風機、冷凍機等の公知の手段を用いることができる。送風機、冷風機が好ましく用いられ、風の温度は本発明に用いる高分子化合物(A)の感温点によって異なるが、該感温点以下の温度が好ましく、感温点よりも5℃以上低い温度がより好ましく、感温点よりも10℃以上低い温度がさらに好ましい。自然冷却を行う場合は、感温点を環境温度よりも5℃以上高く設定することが好ましい。
本発明の製造方法を用いた場合、得られる塗工層の空隙率が高く、インク吸収性が良好となり、インクジェット用記録媒体として用いる場合に特に有用である。この理由は明確ではないが、塗工液中で高分子化合物(A)が疎水化されていることで高分子エマルジョンを形成しているため、高分子エマルジョン粒子等がインク吸収に有効な微小空隙中に侵入することがなく、良好なインク吸収性を発現できるのであろうと推測している。
本発明の塗工液に使用する溶剤は特に限定されないがアルコール、ケトン、エステル等の水溶性溶剤および/または水が好ましく使用される。更に、該塗工液中には必要に応じて顔料分散剤、増粘剤、流動調整剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、着色剤等を配合することができる。
本発明に用いる高分子エマルジョンの樹脂固形分の、塗工層中の含有量は、本発明に用いる高分子エマルジョンが含有される各々の塗工層において、成膜性および塗工液の、冷却時の増粘性の観点から、該塗工層の固形分の1質量%以上が好ましく、塗工層のインク吸収性の観点から60質量%以下含有することが好ましく、2〜30質量%含有することが特に好ましい。
本発明において、インクジェット用記録媒体製造に際しては、インク吸収層の少なくとも1層がカチオン性ポリマー(D)を含有することが好ましい。カチオン性ポリマー(D)を含有することにより印字部の耐水性が向上する。該カチオン性ポリマー(D)としてはカチオン性を示すものであれば特に限定されないが、第一アミン、第二アミン、第三アミン置換基およびこれらの塩、第4級アンモニウム塩置換基の少なくとも1種を含むものが好ましく用いられる。例えばジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合物、アルキルアミン重合物、ポリアミンジシアン重合物、ポリアリルアミン塩酸塩などが上げられる。該カチオン性ポリマー(D)の分子量は特に限定されないが重量平均分子量1,000〜200,000の物が好ましく用いられる。
カチオン性ポリマー(D)の使用量は特に限定されないが、高分子エマルジョンの樹脂固形分100質量部に対して、塗膜の耐水性の観点から0.1〜200質量部が好ましく、10〜100質量部がより好ましく用いられる。さらに、太陽光または蛍光灯の光に印刷物を曝しておいた場合に生じる退色の度合いの観点から、4級アンモニウム置換基のみを持つカチオン性ポリマー(D)の使用が好ましい。
本発明において、インクジェット用記録媒体製造に際しては、塗工層の少なくとも1層が紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、一重項酸素クエンチャー、酸化防止剤等の1種あるいは2種以上を含有することが好ましい。該物質を含有することにより印字部の耐光性が向上する。紫外線吸収剤としては特に限定されないがベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛等が好ましく用いられる。ヒンダードアミン系光安定剤としては特に限定されないがピペリジン環のN原子がN−R(Rは水素原子、アルキル基、ベンジル基、アリル基、アセチル基、アルコキシル基、シクロヘキシル基、ベンジルオキシ基等)であるものが好ましく用いられる。一重項酸素クエンチャーとしては特に限定されないがアニリン誘導体、有機ニッケル系、スピロクロマン系
、スピロインダン系が好ましく用いられる。酸化防止剤としては特に限定されないがフェノール系、ハイドロキノン系、有機イオウ系、リン系、アミン系が好ましく用いられる。該物質の使用量は、該物質を含有するインク吸収層において、該インク吸収層100質量部に対して0.0001〜20質量部が好ましい。
本発明において、インクジェット用記録媒体製造に際しては、インク吸収層の少なくとも1層がアルカリ土類金属化合物を含有することが好ましい。アルカリ土類金属化合物を含有することにより耐光性が向上する。アルカリ土類金属化合物としてはマグネシウム、カルシウム、バリウムの酸化物、ハロゲン化物、水酸化物が好ましく用いられる。アルカリ土類金属化合物をインク吸収層に含有させる方法は特に限定されない。塗工液に添加しても良いし、インク吸収層を形成後、該インク吸収層にアルカリ土類金属化合物の水溶液を含侵させても良い。アルカリ土類金属化合物の含有量は、アルカリ土類金属化合物を含有するインク吸収層において、該インク吸収層中の固形分100質量部に対して酸化物換算で0.5〜20質量部が好ましい。
本発明において、塗工層にチオシアン酸化合物を含むことは、耐オゾン性および耐光性を向上することができ好ましい。上記チオシアン酸化合物としては、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸亜鉛、チオシアン酸カルシウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸ナトリウム,チオシアン酸マグネシウム、チオシアン酸アルミニウム、チオシアン酸リチウム、チオシアン酸銀、チオシアン酸クロロメチル、チオシアン酸コバルト、チオシアン酸銅、チオシアン酸鉛、チオシアン酸バリウム、チオシアン酸ベンジル等が挙げられ、耐オゾン性および耐光性をさらに向上させる点で、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸亜鉛、チオシアン酸カルシウムが好ましく、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸亜鉛が特に好ましい。
上記のチオシアン酸化合物の含有量としては、塗工層の全固形分に対して0.3〜10質量%が好ましく、0.5〜8質量%がさらに好ましい。上記含有量が0.3〜10質量%の範囲内にあると、耐オゾン性、耐水性、および経時ニジミ(印字部分が長時間経る事によって滲みを生じてしまう現象)を抑制する等の点で好ましい。また、上記チオシアン酸化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の記録媒体は、前記インク吸収層の塗工量が、固形分換算で5〜50g/m2 であることが好ましく、10〜40g/m2 であることが更に好ましい。塗工量が10g/m2 未満では、インク吸収層を設けなかった場合に比して染料の発色性の点で効果が小さく、40g/m2 超では、インク吸収層の粉落ちが発生するおそれがある。尚、塗工層全体の厚みとしては、5〜50μmが好ましく、10〜40μmが更に好ましい。
本発明において用いられる支持体としては、透明な支持体も不透明な支持体も用いることができる。透明な支持体としては、従来公知のものがいずれも使用でき、例えばポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、セロハン、セルロイド等のフィルムもしくは板およびガラス板等が挙げられる。このような透明な支持体はその厚さが約10〜200μm程度のものであることが好ましい。不透明な支持体としては、紙、塗工紙、合成紙、樹脂被覆紙、顔料入り不透明フィルム、発泡フィルム等の従来公知のものがいずれも使用できる。光沢、平滑性の点から合成紙、樹脂被覆紙、各種フィルムがより好ましいが、手触り感、高級感から写真用支持体に類似の樹脂被覆紙がさらに好ましい。
本発明において好ましく用いられる、樹脂被覆紙を構成する原紙は、一般に用いられている紙が使用できるが、より好ましくは例えば写真用支持体に用いられているような平滑な原紙が好ましい。原紙を構成するパルプとしては天然パルプ、再生パルプ、合成パルプ等を1種もしくは2種以上混合して用いられる。この原紙には一般に製紙で用いられているサイズ剤、紙力増強剤、填料、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料等の添加剤が配合される
。さらに、表面サイズ剤、表面紙力剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、染料、アンカー剤等が表面塗布されていてもよい。
樹脂被覆紙の樹脂としては、ポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂や熱や紫外線あるいは電子線などで硬化する樹脂を用いることができる。ポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテンなどのオレフィンのホモポリマーまたはエチレン- プロピレン共重合体などのオレフィンの2つ以上からなる共重合体およびこれらの混合物であり、各種の密度、溶融粘度指数(メルトインデックス)のものを単独にあるいはそれらを混合して使用できる。
また、樹脂被覆紙の樹脂中には、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウムなどの白色顔料、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩、イルガノックス1010、イルガノックス1076などの酸化防止剤、コバルトブルー、群青、セシリアンブルー、フタロシアニンブルーなどのブルーの顔料や染料、コバルトバイオレット、ファストバイオレット、マンガン紫などのマゼンタの顔料や染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤などの各種の添加剤を適宜組み合わせて加えるのが好ましい。
本発明において好ましく用いられる支持体である樹脂被覆紙は、走行する原紙上にポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂の場合は、加熱溶融した樹脂を流延する、いわゆる押出コーティング法等により製造され、その両面が樹脂により被覆される。また、熱や紫外線あるいは電子線などにより硬化する樹脂の場合は、グラビアコーター、ブレードコーターなど一般に用いられるコーターにより樹脂を塗布した後、熱風乾燥や紫外線あるいは電子線照射などにより、樹脂を硬化させて被覆する。また、樹脂を原紙に被覆する前に、原紙にコロナ放電処理、火炎処理などの活性化処理を施すことが好ましい。支持体のインク吸収層が塗布される面(表面)は、その用途に応じて光沢面、マット面などを有し、特に光沢面が優位に用いられる。裏面に樹脂を被覆する必要はないが、カール防止の点から樹脂被覆したほうが好ましい。裏面は通常無光沢面であり、表面あるいは必要に応じて表裏両面にもコロナ放電処理、火炎処理などの活性処理を施すことができる。また、被覆樹脂層の厚さとしては、5〜50μmの厚さが好ましく、表面または表裏両面にコーティングされる。
ただし、キャスト法を用いる場合においては、支持体は、透気性を有するものであれば特に限定されず透明であっても不透明であっても良い。本発明においては、例えば上質紙、印画紙原紙、画用紙、画彩紙、アート紙、コート紙、キャスト紙、クラフト紙等の紙類や、不織布などが適宜用途に応じて使用することができる。操業性の点から、好ましい透気度は1,000秒以下であり、塗工性の点から、ステキヒトサイズ度は5秒以上であることが望ましい。
本発明による製造装置は、本発明に用いる高分子エマルジョンを少なくとも含有する塗工液を、該高分子エマルジョンの感温点を超える温度で支持体上に塗工させる手段と、塗工後速やかに塗工層を感温点以下の温度まで冷却する手段と、塗工層を乾燥する手段を含んでなる製造装置であることが好ましい。
支持体上に塗工させる手段としては各種ブレードコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、バーコーター、ロッドブレードコーター、カーテンフローコーター、ゲートロールコーター、ショートドウェルコーター、エクストルージョンダイコーター、サイズプレス、スプレーなどの各種装置をオンマシンまたはオフマシンで用いることができる。
支持体上に複数の塗工層を形成させる場合において、同時多層塗工を行うことは可能である。同時多層塗工は、例えば、エクストルージョンダイコーター、カーテンフローコーターを用いた塗工方法により行うことができる。複数の塗工層が混合ないし合一すること
を避ける目的ではエクストルージョンダイコーターがより好ましい。エクストルージョンダイコーターを用いる場合、同時に吐出される複数の塗布液は、エクストルージョンダイコーターの吐出口附近、即ち、支持体上に移る直前に積層形成され、その状態で支持体上に多層塗工される。該同時多層塗工を行う際、複数の塗工液の混合を回避するために、バリアー層液(中間層液)を塗工層と塗工層の間に介在させて同時塗工することもできる。該バリアー層液は、上下の塗工層と混合しにくいものであれば用いることができるが、チキソトロピー性を有する液体が好ましく用いられる。好ましく用いられる液体としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロ- ス、メチルセルロ- ス、ヒドロキシエチルメチルセルロ- ス、ポリビニルピロリドン、ゼラチン等のポリマーの水溶液が挙げられる。
塗工層を乾燥させる手段としては、熱風乾燥機、蒸気加熱乾燥機、遠赤外線乾燥機等の公知の乾燥手段を用いることができる。熱風乾燥機が好ましく用いられ、ドラムドライヤー、エアキャップドライヤー、エアホイルドライヤー、エアコンベアドライヤーおよびこれらの組み合わせが挙げられる。乾燥温度はドライヤーの種類によって様々に変化するが、ドライヤー内部の温度は50〜200℃、好ましくは100〜150℃である。
また、原紙の厚さに関しては、紙を抄造中または抄造後カレンダー等にて圧力を印加して圧縮するなどした表面平滑性の良いものが好ましく、その坪量は30〜450g/m2 が好ましい。
キャスト法としては、ウェットキャスト法(直接法)、ゲル化キャスト法(凝固法)、リウェットキャスト法(再湿潤法)がある。直接法とは、塗工液を塗設後、未乾燥の状態(湿潤状態)で加熱された鏡面仕上げの固体表面に圧着し乾燥する方法であり、凝固法とは塗工層組成物を酸溶液、アルカリ溶液等により凝固させ、加熱された鏡面仕上げの固体表面に圧着する方法である。尚、凝固法には、赤外線を該組成物に照射して表面を凝固させる熱凝固法も含まれる。再湿潤法とは、塗工液を塗設乾燥後、水を主体とする液にて該塗工層組成物を再湿潤させ、加熱された鏡面仕上げの固体表面に圧着し乾燥する方法である。本発明では、必要に応じていずれのキャスト法を用いてもよいが、得られる塗工層内部の均質性およびインク吸収性の面内均質性などの観点から直接法あるいは再湿潤法が好ましく、生産性の観点も合わせれば直接法がもっとも好ましい。
塗工層が湿潤状態において該塗工層を加熱された鏡面仕上げの固体表面に圧着する手段における、鏡面仕上げされた固体の材質としては、例えばステンレス鋼等の金属、ガラス、ポリアクリル、ポリエチレンテレフタレート、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられるが、ステンレス鋼等の金属が表面の平滑性の観点で現状最も優れており好ましく用いられ、好ましい形状は円筒形、平面等であるが、円筒形が好ましく用いられる。
本発明における支持体には帯電防止性、搬送性、カール防止性などのために、各種のバックコート層を塗設することができる。バックコート層には無機帯電防止剤、有機帯電防止剤、ラテックス、硬化剤、顔料、界面活性剤などを適宜組み合わせて含有せしめることができる。
本発明の記録媒体は、水溶性染料、油溶性染料、水性顔料、油性顔料などを含有するインク組成物を用いた記録に有用である。該記録の方式としては、例えばインク組成物の微小液滴を吐出して記録媒体表面にインク組成物を付着させて印刷を行うインクジェット記録方式、加熱によりインク組成物を発色させることによって印刷を行う感熱記録方式、グラビア印刷、オフセット印刷、その他印刷等による各種印刷方式、ペンなどの筆記用具による記録方式などが挙げられ、特に本発明の記録媒体はインクジェット記録方式による印刷に好ましく用いられる。更に、本発明に用いる高分子エマルジョン、本発明に用いる高分子エマルジョンの製造方法、および本発明の記録媒体用塗工液、本発明の記録媒体の製造方法も上記記録方式による記録、印刷に好ましい記録媒体を製造する際に有用であり、特にインクジェット用記録媒体の製造に有用である。
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
以下の実施例及び比較例において、「部」および「%」は、「質量部」および「質量%」を表わす。
動的光散乱法による数平均粒子径は大塚電子(株)製ELS―800を用い測定した。平均細孔直径、細孔容積、比表面積は、カンタクロム社製オートソーブ−1を用い、窒素により測定した。細孔径分布はBJH法により算出した。比表面積はBET法により求めた。
本発明に用いる高分子エマルジョン中の高分子化合物(A)の感温点は、重合温度以上の温度を保ちながら水溶媒にて高分子化合物(A)の濃度を5質量%に調整した高分子エマルジョンの温度を徐々に低下させて該エマルジョンの粘度を測定し、得られた温度−粘度曲線が急激に変化する転移点を高分子化合物(A)の感温点として求めた。
使用した塗工液の40℃および25℃における粘度を、B型粘度計を用いて測定し、その結果を表1に示した。
インク吸収性および画像解像度の評価は市販インクジェットプリンター(セイコー・エプソン製PM−900C)を用いて印刷を行ったものを用い、官能的に評価した。その評価結果は10段階評価で行い、極めて良好な結果を10、良好な結果を8、やや良好な結果を6、やや劣る結果を4、劣る結果を2、極めて劣る結果を1とした。
塗工層表面の光沢度は、蛍光灯の映り込みを見て官能的に評価した。その評価結果は10段階評価で行い、極めて良好な結果を10、良好な結果を8、やや良好な結果を6、やや劣る結果を4、劣る結果を2、極めて劣る結果を1とした。
(調製例1)
攪拌器、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取りつけた反応容器に、水200部を投入し反応容器内を80℃にした。次に「コータミン86W」(花王(株)製、カチオン性界面活性剤:商品名)の25%水溶液20部、「エマルゲン1135S−70」(花王(株)製、非イオン性界面活性剤:商品名)の70%水溶液15部及びN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩の70%水溶液2部および2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩基酸塩の5%水溶液0.5部を該反応器内に添加した。その5分後から、水400部にN−イソプロピルアクリルアミド90部、2−ヒドロキシメタクリル酸エチル3部、コータミン86Wの25%水溶液15部および2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩基酸塩の5%水溶液0.5部を溶解した液とスチレン3部、メタクリル酸メチル10部とを各々該反応容器内に添加開始し、6時間かけて添加を終了させた。添加中及び添加終了後1時間、反応容器内液温を80℃に保った後、50℃まで冷却し、エタノールの60%水溶液500部を徐々に該反応容器内に添加した。エタノール水溶液の添加終了後室温まで冷却することによって、数平均粒子径が200nmのエマルジョンを形成した高分子化合物1を得た。その感温点を測定したところ27℃であった。
(調製例2)
攪拌器、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取りつけた反応容器に、水212部及び「アデカリアソープSE1025N」の25%水溶液1部を投入し、反応容器内を80℃とした。次に、アクリル酸2部、ダイアセトンアクリルアミド2部、メタクリル酸メチル48部、アクリル酸ブチル5部、2−ヒドロキシメタクリル酸エチル1部を混合し、該モノマー混合液に、「アデカリアソープSE1025N」の25%水溶液10部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液10部の混合液をホモジナイザーによりプレ乳化液とし、滴下槽より反応容器中へ2時間かけて添加した。添加中及び添加が終了してからさらに1時間、反応容器中の温度を80℃に保った。この段階でのエマルジョンの数平均粒子径は10nmであった。引き続き、過硫酸アンモニウムの2%水溶液10部、N−イソプロピルアクリルアミド115部、メタクリルアミド20部、メタクリル酸メチル5部、メタクリル酸2部
、水600部の混合液を滴下槽より該反応容器内に添加開始し、5時間かけて添加を終了させた。添加中及び添加終了後1時間、反応容器内液温を80℃に保った後、50℃まで冷却し、エタノールの60%水溶液780部を徐々に該反応容器内に添加した。エタノール水溶液の添加終了後室温まで冷却することによって、数平均粒子径が120nmのエマルジョンを形成した高分子化合物2を得た。その感温点を測定したところ35℃であった。
(調製例3)
攪拌器、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取りつけた反応容器に、水45部を投入し反応容器内を80℃にした。次にコータミン86Wの28%水溶液0.4部、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩の70%水溶液0.4部および2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩基酸塩の5%水溶液0.5部を添加した。その5分後に、メタクリル酸メチル16部、アクリル酸ブチル5部、コータミン86Wの28%水溶液1部、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩基酸塩の5%水溶液1部と水10部をホモジナイザーによりプレ乳化液としたものと、N−イソプロピルアクリルアミド22部、アクリル酸2部を水160部に溶解した液とを反応容器に各々添加を開始し、5時間かけて添加を終了させた。添加中及び添加終了後1時間、反応容器内液温を80℃に保った後、室温まで冷却した。数平均粒子径が250nmのエマルジョンを形成した高分子化合物3を得た。その感温点を測定したところ8℃であった。
(調製例4)
攪拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取りつけた反応容器に、水600部及びコータミン86Wの28%水溶液40部、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩の70%水溶液6部を投入し、反応容器内を80℃とした。次に、ダイアセトンアクリルアミド4部、スチレン128部、メタクリル酸メチル80部、メタクリル酸ブチル66部を混合した添加液(1)と、水100部にコータミン86Wの28%水溶液9部、エマルゲン1135S−70の70%水溶液1部、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩基酸塩の5%水溶液45部、アミノエチルメタクリレート塩化メチル4級塩の70%水溶液6部を溶解した添加液(2)とを各々滴下槽より反応容器中へ4時間かけて添加した。添加中及び添加が終了してからさらに1時間、反応容器中の温度を80℃に保った後、室温まで冷却した。数平均粒子径40nmのエマルジョンを形成した高分子化合物4を得た。その感温点の測定を試みたが、感温点と判断される変化は生じなかった。
(調製例5)
あらかじめH+型にしておいたカチオン交換樹脂(ローム&ハース社製、アンバーライトIR−120B:商品名)100gを水100gに分散したなかに、3号水ガラス(SiO2=29質量%、Na2O=9.5質量%)33.3gを水66.7gで希釈した溶液を加える。これを、十分撹拌した後、カチオン交換樹脂を濾別し活性シリカ水溶液200gを得た。この活性シリカ水溶液のSiO2は5.0質量%であった。
5gの旭電化社製プルロニックP103を水1360gに溶解させ、35℃湯浴中で撹拌しながら、上記の活性シリカ水溶液60gを添加した。さらに、0.015mol/lのNaOH水溶液を20ml加える。この混合物のpHは7.5であった。この混合物を35℃で15分撹拌後、80℃で静置し24時間反応させた。この溶液から限外ろ過装置を用いて非イオン界面活性剤を除去し、透明なシリカの分散液を得た。この分散液にN−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシランを前記シリカに対し5質量%となる様加え、超音波分散機にて分散することでシリカ濃度20質量%の透明な多孔性物質(MPS)の分散液を得た。この分散液の動的光散乱法によって測定される平均粒子径は60nmで換算比表面積は45m2 /gであった。該分散液を、105℃で乾燥した
試料のBJH法による平均細孔直径は8nm、細孔容積は1.21ml/g、BET法による窒素吸着比表面積は720m2 /gであり、換算比表面積との差は675m2 /gであった。
[実施例1]
乾式シリカ(日本アエロジル(株)製、A300:商品名、以下、A300と記す)に固形分18質量%となるように水を加え、超音波分散機を使用して分散させた後、カチオン性ポリマー(旭電化工業(株)製、アデカカチオエースDM−20A:商品名)20質量%水溶液を、乾式シリカ/カチオン性ポリマー=100/5(乾燥質量比)となるよう添加した後、再度超音波分散機を使用して分散させた。該分散液に、調製例1で得られた高分子化合物1を、A300/高分子化合物1=100/25(乾燥質量比)となる割合で50℃にて添加、混合し塗工液を作成した。
表面に親水化処理を施したポリエチレンテレフタレート製シート(厚さ100μm)に、50℃に加温したバーコーターを用い、前記50℃の塗工液を塗布し、該塗工膜に速やかに送風を開始した。このとき塗工膜は塗工後速やかにゲル化し均質な膜厚と平滑な表面を保持できた。30秒送風した後、続けて60℃の温風を塗工膜表面に送風、乾燥し、厚さ約25μmのインク吸収層を設けた記録媒体を得た。この記録媒体の評価結果を表1に示した。
[実施例2]
印画紙用バライタ紙に、50℃に加温したバーコーターを用い、実施例1と全く同様にして調整した50℃の塗工液を塗布し、続けて該塗工層が湿潤状態にあるうちに、100℃に加熱した鏡面ロールに圧着し、乾燥してキャスト紙を得た。ただし、鏡面ロールに圧着する直前に、塗工層上に剥離剤(ノプコートSYC)0.5%溶液を乗せ、鏡面ロールと塗工層の界面に巻き込まれる以外の剥離剤は回収した。この記録媒体の塗工層の厚さは約20μmであった。その記録媒体の評価結果を表1に示した。
[実施例3]
A300に固形分18質量%となるように水を加え、超音波分散機を使用して分散させた。該分散液に、調製例2で得られた高分子化合物2を、A300/高分子化合物2=100/25(乾燥質量比)となる割合で50℃にて添加、混合し塗工液を作成した。
印画紙用バライタ紙に、50℃に加温したバーコーターを用い、上記50℃の塗工液を塗布し、続けて該塗工層が湿潤状態にあるうちに、100℃に加熱した鏡面ロールに圧着し、乾燥してキャスト紙を得た。ただし、鏡面ロールに圧着する直前に、塗工層上に剥離剤(ノプコートSYC)0.5%溶液を乗せ、鏡面ロールと塗工層の界面に巻き込まれる以外の剥離剤は回収した。この記録媒体の塗工層の厚さは約20μmであった。その記録媒体の評価結果を表1に示した。
[実施例4]
調製例5で得られた多孔性物質(MPS)分散液に、調製例1で得られた高分子化合物1を、MPS/高分子化合物1=100/25(乾燥質量比)となる割合で50℃にて添加、混合し塗工液を作成した。
印画紙用バライタ紙に、50℃に加温したバーコーターを用い、前記50℃の塗工液を塗布し、続けて該塗工層が湿潤状態にあるうちに、100℃に加熱した鏡面ロールに圧着し、乾燥してキャスト紙を得た。ただし、鏡面ロールに圧着する直前に、塗工層上に剥離剤(ノプコートSYC)0.5%溶液を乗せ、鏡面ロールと塗工層の界面に巻き込まれる以外の剥離剤は回収した。この記録媒体の塗工層の厚さは約20μmであった。その記録媒体の評価結果を表1に示した。
[比較例1]
実施例1の高分子化合物1の代わりに調整例3で得られた高分子化合物3を用いる以外は実施例1と同様の方法で記録媒体を得た。ただし、塗工膜に送風しても増粘せず、均質な塗工膜厚を保持することができなかった。さらに、得られた記録媒体の表面にはクラックが多く発生し、記録媒体の塗工層の厚さは一定ではなかった。この記録媒体の評価結果を表1に示した。
[比較例2]
実施例2の高分子化合物1の代わりに調整例3で得られた高分子化合物3を用いる以外は実施例2と同様の方法で記録媒体を得た。ただし、得られた記録媒体の表面にはクラックが多く発生した。この記録媒体の塗工層の厚さは約20μmであった。この記録媒体の評価結果を表1に示した。
[比較例3]
実施例2の高分子化合物1の代わりに調整例4で得られた高分子化合物4を用いる以外は実施例2と同様の方法で記録媒体を得た。ただし、鏡面ロールに圧着する直前において、均質な塗工膜厚を保持することができず、さらに、得られた記録媒体の表面からは粉落ちが多く発生し、記録媒体の塗工層の厚さは明確に測定することが出来なかった。この記録媒体の評価結果を表1に示した。
[比較例4]
乾式シリカ(日本アエロジル(株)製、A300:商品名、以下、A300と記す)に固形分18質量%となるように水を加え、超音波分散機を使用して分散させた後、カチオン性ポリマー(旭電化工業(株)製、アデカカチオエースDM−20A:商品名)20質量%水溶液を、乾式シリカ/カチオン性ポリマー=100/5(乾燥質量比)となるよう添加した後、再度超音波分散機を使用して分散させた。該分散液に、A300/ホウ酸/ホウ砂=100/3/0.5(乾燥質量比)となる割合でホウ酸およびホウ砂を加え混合した後、60℃に加熱し、PVA203((株)クラレ製ポリビニルアルコール、クラレポバールPVA203:商品名)10%水溶液およびPVA235((株)クラレ製ポリビニルアルコール、クラレポバールPVA235:商品名)5%水溶液を、A300/PVA203/PVA235=100/1/18(乾燥質量比)となる割合で添加、混合し塗工液を作成した。
表面に親水化処理を施したポリエチレンテレフタレート製シート(厚さ100μm)に、50℃に加温したバーコーターを用い、前記50℃の塗工液を塗布し、該塗工膜に速やかに送風を開始した。このとき塗工膜は増粘せず、均質な膜厚を保持できなかった。30秒送風した後、続けて60℃の温風を塗工膜表面に送風、乾燥し記録媒体を得た。この記録媒体の塗工層の厚みは均質ではなく、10〜30μm程度であった。この記録媒体の評価結果を表1に示した。
Figure 2005290309
本発明をもちいれば、インク組成物を記録媒体に付着させる方法により行う印刷、記録に使用される紙、シート、フィルム、布等を支持体とした高い表面光沢を有する記録媒体を効率よく製造することが可能となり、更に、インク吸収性、表面光沢、画質に優れたインクジェット用記録媒体を効率よく製造することも可能となり、産業上の利用価値は甚だ大きなものである。

Claims (8)

  1. 40℃における粘度が20mPa・s以上300mPa・s以下であり、25℃における粘度が10000mPa・s以上であることを特徴とする記録媒体製造用塗工液。
  2. 一定の温度(感温点)以下の温度領域では親水性を示し、感温点を超える温度領域では疎水性を示す高分子化合物(A)を含む高分子エマルジョンを含有することを特徴とする請求項1に記載の記録媒体製造用塗工液。
  3. 無機微粒子を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の記録媒体製造用塗工液。
  4. 前記無機微粒子が、金属酸化物および/またはその前駆体(金属源)とテンプレートと水を混合反応させて製造された複合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の記録媒体製造用塗工液。
  5. 前記記録媒体が、インクジェット用記録媒体である請求項1〜4のいずれか1項に記載の記録媒体製造用塗工液。
  6. 支持体上に1層以上の塗工層を設けた記録媒体の製造方法であって、該塗工層の少なくとも1層の形成方法が、請求項1〜5のいずれか1項に記載の記録媒体製造用塗工液を塗工した後、該塗工層を湿潤状態において加熱された鏡面仕上げの固体表面に圧着し、該塗工層表面に光沢を付与することを特徴とする記録媒体の製造方法。
  7. 支持体上に1層以上の塗工層を設けた記録媒体であって、該塗工層の少なくとも1層が、請求項1〜5のいずれか1項に記載の記録媒体製造用塗工液を塗工して製造されたことを特徴とする記録媒体。
  8. 請求項6に記載の記録媒体の製造方法によって製造された記録媒体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006002259A (ja) * 2004-06-15 2006-01-05 Oji Paper Co Ltd キャスト塗工シートの製造方法及びキャスト塗工シート
JP2017149869A (ja) * 2016-02-25 2017-08-31 旭化成株式会社 水系組成物、水系塗料、塗膜、及び塗装製品

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