JP2005314613A - セルロースアシレートフィルム、該フイルムを用いた光学フィルム及び画像表示装置 - Google Patents

セルロースアシレートフィルム、該フイルムを用いた光学フィルム及び画像表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】硬度と耐脆性を両立でき、耐湿性及び耐久性に優れたセルロースアシレートフィルムを提供して、膜厚が80μm以下の薄膜でも、耐湿性、引裂き強度、耐折強度に優れたセルロースアシレートフィルム、更にはそれを用いて得られる光学フィルム(偏光フィルム、光学補償フィルム等)、画像表示装置及びハロゲン化銀写真感光材料を得る。
【解決手段】 セルロースアシレート、並びに、末端にカルボキシ基を有する多分岐状ポリエステル高分子であって、該カルボキシ基の少なくとも一部が−COOR1基及び−CON(R2)(R3)基から選ばれる少なくとも1種の極性基(ここで、R1は炭化水素基を示す。R2及びR3は各々水素原子又は炭化水素基を示し、R2とR3が環を形成しても良い。)で修飾されている多分岐状ポリエステル高分子(PB)の少なくとも1種を含有することを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
【選択図】 なし

Description

本発明は、セルロースアシレートフィルム、並びに該セルロースアシレートフィルムを用いた光学フィルム、画像表示装置及びハロゲン化銀写真感光材料に関する。更に詳細には、硬度と耐脆性を両立でき、耐湿性および耐久性に優れたセルロースアシレートフィルム、及び液晶表示装置等に用いられる偏光板保護フィルム、位相差フィルム、視野拡大フィルム、プラズマディスプレイに用いられる反射防止フィルムなどの各種機能性光学フィルムやハロゲン化銀写真感光材料の支持体フィルムに関する。さらに、本発明は、有機ELディスプレイ等に適用される各種機能フィルムを構成する光学フィルムに関する。
セルロースアシレートフィルムは、透明で、優れた物理的、機械的性質を有し、且つ温度湿度変化に対する寸法変化が少なく、従来からハロゲン化銀感光材料フィルム用支持体、製図トレーシングフィルム、電気絶縁材料などの広い分野で使用され、最近では液晶画像表示装置の偏光板用保護フィルムとして使用されている。
しかし、従来提案されているセルロースアシレートフィルムをそのまま用いたのでは、引裂強度、耐折強度が低く、特に低湿度の状態下では、非常に脆くなり裂け易い欠点があった。このため、これらを改良するために、セルロースアシレートの溶液流延製膜方法を用い、セルロースアシレート溶液に重要な(実質的に必須の)添加剤として可塑剤を使用する。可塑剤としては、トリフェニルホスフェート(TPP)のようなリン酸エステル可塑剤およびジメチルフタレート(DMP)のような芳香族カルボン酸エステル可塑剤が代表的である(非特許文献1)。
また、光学フィルムとして重要となる光学的異方性を軽減する可塑剤として、クエン酸エステル(特許文献1)、アルカンポリオールと脂肪族モノカルボン酸或は芳香族モノカルボン酸とのエステル化合物(特許文献2等)、グリセリンの低級脂肪酸エステル(特許文献3等)等の脂肪族エステル化合物も開示されている。然し、これらは透湿性の改良効果が十分でなく、又保留性の劣化も見られた。
更には、これらの脂肪族系エステル類の耐湿性、保留性を改良するものとして、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオールのジアリールエステル(特許文献4)、芳香族環又はシクロヘキサン環を分子内に3個以上含有するクエン酸エステル(特許文献5)、アルカンポリオールと芳香族環又はシクロヘキサン環含有のモノカルボン酸とのエステル(特許文献6)等が提案されている。しかしながら、これらの支持体でも、長期保存下の膜強度安定性、フィルムの着色等が十分でなかった。
一方、近年、液晶画像表示装置は高精細化がますます進み、偏光板用保護フィルムとして優れた光透過性、光学的な無配向性、偏光素子との良好な接着性、優れた平面性、紫外線吸収性、帯電防止性等の性能の向上や、耐久性化が求められている。また、CRTに代わって注目を集めている液晶表示装置に用いることのできる光学的に異方性を有する光学補償フィルムは、液晶表示装置は異方性をもつ液晶材料を使用するために斜めから見ると表示性能が低下するという視野角の問題があり、更なる性能向上が望まれている。
光学補償フィルムとしては、液晶性化合物の配向形態を固定化して得られる異方性材料が最近の主流であるが、その製造方法は従来セルロースエステルフィルムを支持体とし、その上に液晶性化合物を溶剤塗布している為、セルロースエステルフィルム中の添加剤がブリード現象によって液晶性化合物中に混入してしまい、液晶性化合物の配向を乱してしまったり、白濁させたりしてしまうなどの問題点を軽減若しくは解消することが望まれていた。
特に、近年の表示装置の開発は、表示部の大版化または携帯電話等のモバイル表示装置の多用途への普及等が急速に進展しており、光学フィルムの薄層化、光学フィルムへのより一層の寸度安定性や耐久性が望まれている。
丸澤他、プラスチック材料講座17「繊維素系樹脂」、121頁、日刊工業新聞社(昭和45年)発行 特開平11−92574号公報 特開2001−247717号公報 特開2000−63560号公報 特開2003−96236号公報 特開2003−12822号公報 特開2003−12823号公報
従って、本発明の目的は、硬度と耐脆性を両立でき、耐湿性および耐久性に優れたセルロースアシレートフィルムを提供することにある。
本発明の他の目的は、膜厚が80μm以下の薄膜でも、耐湿性、引裂き強度、耐折強度に優れたセルロースアシレートフィルムを提供することである。
さらに本発明の他の目的は、優れた特性を有する前記セルロースアセシレートフィルムを用いて得られる光学フィルム(偏光フィルム、光学補償フィルムなど)、画像表示装置、及びハロゲン化銀写真感光材料を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解消するために鋭意検討した結果、末端に−COOR1基及び−CON(R2)(R3)基から選ばれる少なくとも1種の極性基を有するポリエステル型の多分岐状化合物を含有させたセルロースアシレートフィルムが上記目的を達成しうることを知見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、下記構成のセルロースアシレートフィルム、その製造方法、光学フィルム(偏光フィルム、光学補償フィルム、反射防止フィルム等)、画像表示装置(液晶表示装置など)、ハロゲン化銀写真感光材料などが提供され、本発明の前記目的が達成される。
(1)セルロースアシレート、並びに、末端にカルボキシ基を有する多分岐状ポリエステル高分子であって、該カルボキシ基の少なくとも一部が−COOR1基及び/又は−CON(R2)(R3)基から選ばれる少なくとも1種の極性基(ここで、R1は炭化水素基を示す。R2及びR3は各々水素原子又は炭化水素基を示し、更にR2とR3が環を形成してもよい。)で修飾されている多分岐状ポリエステル高分子(PB)の少なくとも1種を含有することを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
(2)上記多分岐状化合物(PB)が、カルボキシル官能基(a)を1個以上有する開始化合物と、ヒドロキシル官能基(b)を有し且つカルボキシル官能基(c)を少なくとも2個有する分岐連鎖延長化合物との重縮合反応により得られた、該開始化合物から誘導された中心単位と、該分岐連鎖延長化合物から誘導された分岐連鎖延長単位とを含む第一乃至第六世代からなる多分岐状ポリエステル化合物であり、更に該多分岐状ポリエステル化合物の分岐枝末端のカルボキシル基の少なくとも一部が−COOR1基及び−CON(R2)(R3)基から選ばれる少なくとも1種の極性基に置換されてなり、
上記重縮合反応は、上記開始化合物の上記カルボキシル官能基(a)と上記分岐連鎖延長化合物の上記ヒドロキシル官能基(b)との反応から開始し、次に該カルボキシル官能基(b)と上記ヒドロキシル官能基(c)との反応に続く、該開始化合物の該カルボキシル官能基(a)を開始点とした重縮合反応であることを特徴とする、上記(1)に記載のセルロースアシレートフィルム。
(3)上記分岐連鎖延長化合物から誘導された分岐連鎖延長単位が、脂環式環及び芳香族環から選択される少なくとも1種の環状構造を含有することを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載のセルロースアシレートフィルム。
(4)前記セルロースアシレートは、その水酸基への置換度が、下記式(IIIa)〜(IIIc)の全てを満足するセルロースアシレートであることを特徴とする上記(1)乃至(3)記載のセルロースアシレートフィルム。
(IIIa) 2.6≦SA’+SB’≦3.0
(IIIb) 2.0≦SA’≦3.0
(IIIc) 0≦SB’≦0.8
ここでSA’はアセチル基の置換度、SB’は炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。
(5)上記セルロースアシレート及び上記多分岐状化合物(PB)の少なくとも1種を含有するセルロースアシレート組成物を、溶液流延方法により製膜してなることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(6)上記セルロースアシレートフィルムが、セルロースアシレートを実質的に非塩素系の溶剤に溶解してセルロースアシレート溶液を調製する溶液調製工程、得られたセルロースアシレート溶液からセルロースアシレートフィルムを製膜する製膜工程、及び、セルロースアシレートフィルムを延伸する延伸工程により製造されたフィルムであることを特徴とする上記(1)乃至(5)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(7)更に、微粒子を含有してなることを特徴とする上記(1)乃至(6)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(8)上記のセルロースアシレートフィルムが、長さ100〜5000m及び幅0.7m以上の長尺品であって、フィルムの膜厚が10〜120μmで、その膜厚変動幅が±3%以内であり且つ幅方向のカールが−7/m〜+7/mであることを特徴とする上記(1)乃至(7)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(9)80℃、90%RHの条件下に48時間静置した場合の質量変化が、0〜5%であることを特徴とする上記(1)乃至(8)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(10)上記セルロースアシレート及び上記高分岐状化合物(PB)の少なくとも1種を含有するセルロースアシレート組成物を、溶液流延方法により製膜することを特徴とする上記(1)乃至(9)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
(11)セルロースアシレートを実質的に非塩素系の溶剤に溶解してセルロースアシレート溶液を調製する溶液調製工程、得られたセルロースアシレート溶液からセルロースアシレートフィルムを製膜する製膜工程、及び、セルロースアシレートフィルムを延伸する延伸工程を行うことを特徴とする上記(10)記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
(12)上記(1)乃至(11)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを使用した光学フィルム。
(13)上記(1)乃至(11)のいずれかに記載のセルロースアセレートフィルムを用いた光学用偏光フィルム。
(14)上記(1)乃至(11)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた画像表示素材。
(15)上記(1)乃至(11)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた光学補償フィルム。
(16)上記(1)乃至(11)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム、上記(12)記載の光学フィルム、上記(13)記載の光学用偏光フィルム、上記(14)記載の画像表示素材及び上記(15)記載の光学補償フィルムのいずれかを用いた画像表示装置。
(17)TN、STN、IPS、VAおよびOCBのいずれかのモードの透過型、反射型または半透過型の液晶表示装置であることを特徴とする上記(16)に記載の画像表示装置。
(18)膜厚が30〜250μmである上記(1)乃至(11)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを使用したハロゲン化銀写真感光材料用支持体。
本発明に従い、セルロースアシレートフィルムに、特定の高分岐状化合物(PB)の少なくとも1種を含有させることにより、耐膜脆性及び膜の耐湿特性(透湿性、耐湿熱性)が改善されることが見出された。また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、膜柔軟性や耐久性が低下することなく耐膜脆性や耐湿特性を改善することができ、更には光学的異方性が軽減される。
これらの有効な効果は、上記高分岐状化合物が少量の使用量でも十分な効果を奏すること、上記高分岐状化合物(PB)が有機溶媒への溶解性が良好でセルロースアシレート分子と相溶し両分子間の相互作用が十分に行われること、放射状で対称性良好な分子であることから分子自身の極性の等方性があること等によりセルロースアシレート分子間の強固な相互作用を緩和すること等により発現されると推定される。
更には、本発明の多分岐状ポリエステル高分子(PB)の分岐鎖を構成する繰り返し単位が、脂環式環、アリール環の環状構造から選ばれる少なくとも1種の環構造を含有するものから成るものとすることで、フィルムの耐湿性、耐脆性が一層好ましいものとなることが見出された。
以下、本発明のセルロースアシレートフィルムとその製造方法について、さらに詳細に説明する。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、セルロースアシレート、及び末端にヒドロキシル基を有するポリエステル型の高分岐状化合物(PB)の少なくとも1種を含有してなることを特徴とする。
具体的には、本発明のセルロースアシレートフィルムは、上記セルロースアシレート及び上記高分岐状化合物(PB)の少なくとも1種を含有するセルロースアシレート組成物を、溶液流延方法により製膜してなるものが好ましく、更に好ましくは、セルロースアシレートを実質的に非塩素系の溶剤に溶解してセルロースアシレート溶液を調製する溶液調製工程、得られたセルロースアシレート溶液からセルロースアシレートフィルムを製膜する製膜工程、及び、セルロースアシレートフィルムを延伸する延伸工程により製造されたフィルムである。
また、本発明のセルロールアシレートフィルムは、その厚さが20〜120μmであるのが好ましく、更に好ましくは30〜100μmであり、最も好ましくは30〜80μmである。また、用途がハロゲン化銀写真感光材料である場合には、膜厚は30〜250μmとするのが好ましい。
また、膜厚の変動幅は、±3%以内であるのが好ましく、更に好ましくは±2.5%以内、最も好ましくは±1.5%以内である。この変動内において、支持体厚みの光学特性に実質上の影響を及ぼさない良好なものとなる。
膜厚変動幅を±3%以内とするには、(1)セルロースアシレートの低分子量化、(2)該セルロースアシレートを主成分とする組成物を有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を流延する際の濃度及び粘度の調節、(3)乾燥する際の膜表面の乾燥温度、乾燥風を用いる場合のその風量、風向等の調節等が有効である。溶解、流延および乾燥については[透明支持体の製造方法]において記載する。
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、長さ100〜5000mで幅0.7〜2mの長尺ロール形態であることが好ましい。このような形態とすることにより、反射防止フィルム、偏光板保護フィルムおよび画像表示装置を薄く軽量化したり、透過率を高めてコントラストや表示輝度を改善する等の良好な光学特性が安定して得られる、長尺で幅広なフィルムを皺等の問題を生じることなくハンドリング性よく取り扱うことができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、長さ100〜5000m及び幅0.7m以上の長尺品であって、フィルムの膜厚が10〜120μmで、その膜厚変動幅が±3%以内であり且つ幅方向のカールが−7/m〜+7/mであるのが特に好ましい。カールについては後述する。
[セルロースアシレート]
まず、本発明において用いられる上記セルロースアシレートについて説明する。
本発明に用いられるセルロースアシレートの原料セルロースとしては、綿花リンタ、木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)、ケナフ等があり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。本発明においてはこれらのセルロースからエステル化してセルロースアシレートを作製するが、特に好ましい前述のセルロースがそのまま利用できる訳ではなく、これらの原料を精製して用いる。
上述の原料であるセルロースから製造されるセルロースアシレートについて記載する。
上記セルロースアシレートは、セルロースの水酸基への置換度が下記式(IIIa)〜(IIIc)の全てを満足するのが好ましい。
(IIIa):2.6≦SA'+SB' ≦3.0
(IIIb):2.0≦SA' ≦3.0
(IIIc): 0≦SB' ≦0.8
ここで、SA'はセルロースの水酸基の水素原子を置換しているアセチル基の置換度、またSB'はセルロースの水酸基の水素原子を置換している炭素原子数3〜22のアシル基の置換度を表す。なお、SAはセルロースの水酸基の水素原子を置換しているアセチル基を表し、SBはセルロースの水酸基の水素原子を置換している炭素原子数3〜22のアシル基を表す。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部又は全部をアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位及び6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(各位それぞれ100%のエステル化は置換度1)を意味する。本発明では、SAとSBの置換度の総和(SA'+SB')は、より好ましくは2.7〜2.96であり、特に好ましくは2.80〜2.95である。また、SBの置換度(SB')は0〜0.8であり、特には0〜0.6である。さらにSBはその28%以上が6位水酸基の置換基であるのが好ましく、より好ましくは30%以上が6位水酸基の置換基であり、31%以上がさらに好ましく、特には32%以上が6位水酸基の置換基であることも好ましい。また更に、セルロースアシレートの6位のSAとSBの置換度の総和が0.8以上であり、さらには0.85以上であり、特には0.90以上であるセルロースアシレートも好ましいものとして挙げることができる。これらのセルロースアシレートにより溶解性の好ましい溶液が作製でき、特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。
本発明に用いられるセルロースアシレートの炭素数3〜22のアシル基(SB)は、脂肪族基でもアリール基でもよく、特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの具体的なアシル基、及びセルロースアシレートの合成方法は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行 発明協会)の9ページに詳細に記載されている。
また、上記セルロースアシレートとしては、セルロースの低級脂肪酸エステルがさらに好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。炭素原子数は、2(セルロースアセテート)、3(セルロースプロピオネート)または4(セルロースブチレート)であることが好ましい。セルロースエステルとしてはセルロースアセテートが好ましく、その例としては、ジアセチルセルロースおよびトリアセチルセルロースなどが挙げられる。セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いることも好ましい。
上述のセルロースの水酸基に置換するアシル置換基が、実質的にアセチル基/プロピオニル基/ブタノイル基の少なくとも2種類からなる場合においては、その全置換度が2.50〜3.00の場合にセルロースアシレートフィルムの光学異方性が低下できるので、このような組成とするのが特に好ましい。より好ましいアシル置換度は2.60〜3.00であり、更に好ましくは2.65〜3.00である。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、フィルムを構成するポリマー成分が実質的に前記の定義を有するセルロースアシレートからなることが好ましい。「実質的に」とは、全ポリマー成分の55質量%以上(好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上)を意味する。
本発明で用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で好ましくは200〜700、より好ましくは230〜550、更に好ましくは230〜350であり、特に好ましくは粘度平均重合度240〜320である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。更に特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
また、本発明で用いられるセルロースアシレートの分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜5.0であることが好ましく、1.0〜3.0であることがさらに好ましく、1.0〜2.0であることが最も好ましい。
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため、低分子成分を除去することが有用である。
これらのセルロースアシレートの原料綿や合成方法は、前記の公技番号 2001−1745の7頁〜12頁に詳細に記載されている。
上記セルロースアシレートは、置換基、置換度、重合度、分子量分布など前述した範囲であれば、単一あるいは異なる2種類以上のセルロースアシレートを混合して用いることができる。
[本発明の多分岐状化合物(PB)]
次に、本発明において用いられる多分岐状化合物(PB)について説明する。
本発明において用いられる多分岐状化合物(PB)は、ポリエステルの化学的構造を有し、樹枝状高分子(ハイパーブランチポリマー)又はデンドリマー(ギリシャ語のデンドロン=樹枝から)である高度に『枝分れした』巨大分子、即ち、多分岐高分子であり、更に、該分岐枝の末端のカルボキシル基の少なくとも一部が、−COOR1基及び−CON(R2)(R3)基から選ばれる少なくとも1種の極性基で終結している多分岐状高分子である。
その分子構造は、好ましくは2価以上6価以内の多価性である中心単位の周りに、同心円層において特定された構造(即ち、エステル構造)に従って分岐した連鎖延長単位が結合された構造であり、十分に特定された化学構造と立体化学を有する対称性良好な化合物である。そして、分岐枝の末端に有するカルボキシ基の少なくとも一部が、−COOR1基及び−CON(R2)(R3)から選ばれる少なくとも1種の極性基((ここで、R1は炭化水素基を示し、R2及びR3は各々水素原子又は炭化水素基を示す)で修飾されているポリエステル型の多分岐状化合物である。
上記多分岐状化合物(PB)は、分子中の分岐枝末端の極性基として−COOR1基及び/又は−CON(R2)(R3)から選ばれる極性基である分岐枝を少なくとも一部含有することを特徴とする。該極性基である分岐枝は、分子中の全分岐枝数の20%以上100%以下が好ましく、より好ましくは50%以上100%以下、特に好ましくは60%以上100%以下である。
本発明においては、特に、−COOR1基を末端とする分岐枝を含有することが好ましい。その割合は上記した比率とするのが好ましい。
上記の内容に調節することで、フィルムの透湿性及び光学特性がより一層良好となる。
上記の極性基におけるR1、R2及びR3の炭素数は、各々炭素数1〜32であることが好ましい。また、炭化水素基としては、脂肪族基、アリール基又は複素環基が挙げられる。脂肪族基としては、炭素数1〜32の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ナノデシル基、エイコサニル基、ヘネイコサニル基、ドコサニル基等)、炭素数2〜32の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基(例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、エイコセニル基、ドコセニル基、ブタジエニル基、ペンタジエニル基、ヘキサジエニル基、オクタジエニル基等)、炭素数2〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルキニル基(例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ヘキシニル基、オクタニル基、デカニル基、ドデカニル基等)、炭素数5〜22の脂環式炭化水素基(脂環式炭化水素基としては、単環式、多環式、架橋環式の脂肪族環状炭化水素基が挙げられる。その具体例としては、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、シクロヘプテン、シクロへプタジエン、シクロオクタン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、シクロソナン、シクロソネン、シクロデカン、シクロデセン、シクロデカンジエン、シクロデカトリエン、シクロウンデカン、シクロドデカン、ビシクロヘプタン、ビシクロヘキサン、ビシクロヘキセン、トリシクロヘキセン、ノルカラン、ノルピナン、ノルボルナン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、トリシクロヘプタン、トリシクロヘプテン、デカリン、アダマンタン等の環構造炭化水素等)が挙げられる。
これらの中で、炭素数1〜18の直鎖状、炭素原子数3〜18の分岐状、並びに炭素原子数5〜16の環状の脂肪族基がより好ましい。
かかる脂肪族基は置換基を有していてもよく、その導入し得る置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。
非金属原子団の具体的な例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、−OH基、−OR11、−SR11、−COR11、−COOR11、−OCOR11、−SO211、−NHCONHR11、−N(R12)COR11、−N(R12)SO211、−N(R13)(R14)、−CON(R13)(R14)、−SO2N(R13)(R14)、−P(=O)(R15)(R16)、−OP(=O)(R15)(R16)、−Si(R17)(R18)(R19)、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数2〜18のアルキニル基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素基、炭素数6〜18のアリール基(アリール環としては、ベンゼン、ナフタレン、ジヒドロナフタレン、インデン、フルオレン、アセナフチレン、アセナフテン、ビフェニレン等)、酸素原子、硫黄原子、窒素原子のいずれかを少なくとも1個含有する単環式若しくは多環式の環構造を有する複素環基(複素環基としては、例えば、フラニル基、テトラヒドロフラニル基、ピラニル基、ピロイル基、クロメニル基、フェノキサチイニル基、インダゾイル基、ピラゾイル基、ピリジイル基、ピラジニル基、ピリミデイニル基、インドイル基、イソインドイル基、キノニイル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基等)等が挙げられる。
前記のアルケニル基、アルキニル基、脂環式炭化水素基、アリール基、複素環基は、更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記の脂肪族基に導入し得る基として例示したものと同様のものが挙げられる。
前記R11は、炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数6〜18のアリール基、又は複素環基を表す。R11における脂肪族基は前記Rで表される脂肪族基と同義である。R11におけるアリール基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したアリール基と同様のものが挙げられる。かかるアリール基は、更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。R12は、水素原子又はR11基と同様のものを表す。
前記R13及びR14は、各々独立に、水素原子、又はR11と同様のものを表し、R13とR14とは互いに結合して、N原子を含有する5員又は6員の環を形成してもよい。
前記R15及びR16は、各々独立に、炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数6〜14のアリール基、又は−OR11を表す。R15及びR16における脂肪族基は前記Rで表される脂肪族基と同義である。R15及びR16におけるアリール基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したアリール基と同様のものが挙げられる。かかるアリール基は更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。但し、かかる極性置換基において、R15及びR16の双方が−OHで表されることはない。
前記R17、R18及びR19は、各々独立に、炭素数1〜22の炭化水素基又は−OR20を表すが、これらの置換基の内少なくとも1つは炭化水素基を表す。炭化水素基は前記Rで示される脂肪族基及びアリール基と同様のものを表し、−OR20は前記−OR11と同様の内容を表す。
上記極性基におけるR1、R2、R3が表すアリール基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したアリール基と同様のものが挙げられる。また、かかるアリール基は更に置換基を有していてもよく、その導入し得る置換基としては、前記脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
上記極性基におけるR1、R2、R3が表す複素環基としては、前記脂肪族基に導入し得る置換基として例示した複素環基と同様のものが挙げられる。また、かかる複素環基は更に置換基を有していてもよく、その導入し得る置換基としては、前記脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
そして、上記多分岐状化合物(PB)は、カルボキシル官能基(a)を1個以上有する開始化合物と、アルコール性ヒドロキシル官能基(b)を有し且つカルボキシル官能基(c)を少なくとも2個有する分岐連鎖延長化合物との重縮合反応により得られた、該開始化合物から誘導された中心単位と、該分岐連鎖延長化合物から誘導された分岐連鎖延長単位とを含む第一乃至第六世代からなる多分岐状ポリエステル化合物であり、更に該多分岐状ポリエステル化合物の分岐枝末端のカルボキシル基の少なくとも一部が−COOR1基及び/又は−CON(R2)(R3)基から選ばれる少なくとも1種の極性基に置換されてなり、
上記重縮合反応は、上記開始化合物の上記カルボキシル官能基(a)と上記分岐連鎖延長化合物の上記アルコール性ヒドロキシル官能基(b)との反応から開始し、次に該カルボキシル官能基(b)と上記アルコール性ヒドロキシル官能基(c)との反応に続く、該開始化合物の該カルボキシル官能基(a)を開始点とした重縮合反応であり、第一世代乃至第六世代からなるものがより好ましい。特に第二世代乃至第四世代からなるものが好ましく挙げられる。具体的には、例えば下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2005314613
式(1)中、Zは、m個の分岐枝を結合する中心部形成の有機残基を表す。Lは、一個の酸素原子、並びに2個のカルボニル結合とを結合する有機残基を表す。Y1及びY2は、各々−OH、−OR1、又は−N(R2)(R3)を表す。但し、Y1及びY2の何れもが−OHを表すことはない。nは1〜6の範囲の数字、mは2〜12の整数を表す。
Zはm個の分岐枝を結合する中心部形成の有機残基を表し、その分子量が1000以下のものであれば特に限定されるものではない。
有機残基としては、炭素数2〜32の脂肪族残基、炭素数6〜18の芳香環残基、酸素原子、窒素原子、硫黄原子から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を含有する複素環残基、アザクリプタント構造残基、クラウンエーテル構造残基、ポルフィリン構造残基、窒素原子、ケイ素原子或はリン原子を中心原子として−CO−結合とを連結基を介して構成される有機残基、或は前記した芳香環残基、複素環残基、アザクリプタント構造残基、クラウンエーテル構造残基、ポルフィリン構造残基から選ばれる有機残基と−CO−結合を連結基を介してなる有機残基等が挙げられる。
ここで記載の有機残基は置換基を有しても良く、具体的には上記のR1に記載のものと同様のものが挙げられる。但し、−OH基、−SH基、−COOH、−NH2、−NH(R)を除く。
上記の連結基としては、炭素原子−炭素原子結合(一重結合又は二重結合)、炭素原子−複素原子結合(複素原子としては例えば、酸素原子、イオウ原子、窒素原子、ケイ素原子等)、複素原子−複素原子結合等から構成される原子団の任意の組み合わせで構成される。連結基として具体的には、以下のものが挙げられる。
Figure 2005314613
連結基の具体例中、z1、z2は同じでも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、ハロゲン原子、臭素原子、ヨウ素原子)又は炭素数1〜6の置換されてもよいアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、トリフロロメチル基、メトキシエチル基、シアノエチル基、クロロエチル基等)を表し、z3は、水素原子又は炭素数1〜12の置換されてもよい炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ベンジル基、フェネチル基、フェニル基、クロロフェニル基、メトキシフェニル基、アセチルフェニル基、トリフロロフェニル基等)を表し、z4、z5は、同じでも異なってもよく、炭素数1〜12の置換されてもよい炭化水素基(具体的には前記j3と同一の内容を表す)を表す。
一般式(1)のLは、一個の酸素原子、並びに2個のカルボニル結合とを結合する有機残基を表す。有機残基としては、炭素数2〜32の脂肪族残基、炭素数6〜18のアリール残基、総原子原子数(水素原子を除く)5から18の酸素原子、窒素原子、硫黄原子から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を含有する複素環残基が挙げられる。
脂肪族残基としては、炭素数2〜32の直鎖状若しくは分岐状のアルカン残基(例えば、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ナノデカン、エイコサン、ヘネイコサン、ドコサン、トリアコンタン等)、炭素数3〜32の直鎖状若しくは分岐状のアルケン残基(例えば、プロペン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ヘキサデセン、オクタデセン、エイコセン、ドコセン、ブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン、オクタジエンオクタトリエン等)、炭素数4〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルキン残基(例えば、ブチン、ヘキシン、オクチン、デカニン、ドデカニン等)、炭素数5〜22の脂環式炭化水素残基(脂環式炭化水素残基としては、単環式、多環式、架橋環式の脂肪族環状炭化水素残基が挙げられる。その具体例としては、前記の特定の極性基でのRで例示の環構造と同様のもの)が挙げられる。
炭素数6〜18のアリール残基のアリール環としては、ベンゼン、ナフタレン、ジヒドロナフタレン、インデン、フルオレン、アセナフチレン、アセナフテン、等が挙げられる。
酸素原子、硫黄原子、窒素原子のいずれかを少なくとも1個含有する単環式若しくは多環式の環構造を有する複素環残基の複素環としては、例えば、フラン、テトラヒドロフラン、ピラン、チオピラン、ピロール、インドール、イソインドール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン、ピロリジン、ピロリン、イミダゾリン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン、トリアジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、ベンゾチアゾール、カルバゾール、モルホリン、チオフェン、ベンゾチオフェン、キサンテン等が挙げられる。
前記のアルカン残基、アルケン残基、アルキン残基、脂環式炭化水素残基、アリール残基、複素環残基は、更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記の特定の極性基Rに置換すると置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
一般式(1)中の分岐連鎖延長単位のLで示される有機残基は、脂環式環及び/又はアリール環から選ばれる少なくとも1種の環構造残基を含有することが好ましい。上記の有機残基は、更に直接若しくは連結基を介して結合していても良い。連結基としては、上記の中心部(Z)で記載した連結基と同様のものが例示される。
好ましくは、アルカン残基と脂環式環残基、アルカン残基とアリール残基の組み合わせである。これらの有機残基は直接結合でもよいし、上記に例示した連結基と同様の連結基を介して結合しても良い。連結基の総原子数(水素原子を除く)は1個乃至50個の範囲が好ましい。このような態様によって、本発明の多分岐化合物(PB)のガラス転移点が室温以上180℃以下の範囲に調整され膜の硬度や耐脆性を低下させない。
一般式(1)のY1及びY2は、各々−OH、−OR1、又は−N(R2)(R3)を表す。但し、Y1及びY2がともに−OHとなることは無い。
−OR1の場合は分岐枝の末端構造が「−COOR1」であり、−N(R2)(R3)の場合には分岐枝の末端構造が「−CON(R2)(R3)」であることを表す。
1は前記の「−COOR1」のR1と同一の記号を、R2及びR3は前記の「−CON(R2)(R3)」のR2及びR3とそれぞれ同一の記号を表す。
(中心単位を形成する開始化合物)
上記開始化合物は、モノ、ジまたはポリカルボキシル化化合物であるのが好ましい。該開始化合物における中心部分としては、上記のZで示されるものが挙げられる。これらは特に限定されるものではない。
特に好ましい開始化合物としては、該分子中にカルボキシル基が2乃至6個を含有するものが挙げられる。
(分岐連鎖延長化合物)
上記分岐連鎖延長化合物は、ヒドロキシル官能基(b)を有し且つカルボキシル官能基(c)を少なくとも2個有する化合物であり、好ましくはヒドロキシル官能基(b)と2個のカルボキシル官能基(c)を有する分岐連鎖延長単位(L)で構成されるオキシジカルボン酸が挙げられる。
(多分岐状化合物(PB))
本発明で用いられる上記多分岐状化合物(PB)は、上述のように末端カルボキシル基の一部が、エステル置換(即ち、−COOR1基)、及び/又はアミド置換(即ち、−CON(R2)(R3)基)されている。
末端カルボキシル基を上記の置換基とする場合、上記の開始化合物と連鎖延長化合物とから縮重合反応で得られた多分岐分子の末端カルボキシル基を、従来公知のエステル化反応で−COOR1基を形成することが出来る。
例えば、末端カルボキシ基の多分岐高分子化合物とアルコール化合物との脱水縮合反応(脱水剤としてジシクロヘキシルカルボジイミドを用いる反応、触媒としてp−トルエンスルホン酸、テトラブチルスズ等を用いる反応)、末端カルボキシ基の多分岐高分子化合物から相当するカルボン酸ハライドとしアルコール化合物との置換反応、相当するカルボン酸塩と脂肪族炭化水素ハロゲン化化合物との置換反応(触媒としてヨウ化カリウム)等が挙げられる。
具体的には、例えば、S.Patai、「The chemistry of carboxylic acids and esters」(INTERSCIENCE-PUBLISHERS、1969年刊)、日本化学会編「新実験化学講座14巻、有機化合物の合成と反応(II)」pp1000、(丸善(株)、1977年刊)等に記載の化学反応を用いることが出来る。
多分岐分子の末端カルボキシル基を、従来公知のアミド化反応で−CON(R2)(R3)基を形成することが出来る。例えば、アミノ化合物との脱水縮合反応(脱水剤としてジシクロヘキシルカルボジイミドを用いる反応等)、多分岐高分子化合物からの相当するカルボン酸ハライドとアミノ化合物との置換反応等が挙げられる。具体的には、例えば上記の「新実験化学講座14巻」等に記載の方法が挙げられる。
このような多分岐状ポリエステル化合物は、E.Malmstrom、et al.、Macromolecules 28、1698(1995)、S.W.Hahn、et al.、Macromolecules 31、6417(1998)、特開平6−100670号公報明細書、特表2002−506477号公報明細書等に記載の方法に準じて合成することが出来る。
上記高分岐状化合物は、重縮合サイクルによって調製されたる分子であるのが好ましく、各サイクルは中心単位又はポリマーの反応性官能基の全てと連鎖延長分子の1当量とを反応させることを含む。サイクルの数(n)により「第n世代」の多分岐分子と称される。第1世代乃至第4世代のもが好ましい。
また、上記本発明の多分岐状化合物は、分岐枝の末端の特定の極性基数が6〜128個を有するものが好ましく、更には6〜64個を有するものが好ましい。
質量平均分子量は、一般に約1,000〜約25,000であり、好ましくは約1500〜約10,000である。
平均の枝分れ度(DB)は、1分子当たりの分枝基の数平均率、すなわち末端基、分枝基および線状基の総数に対する末端基+分枝基の割合として文 献に定義されている。理想的なデンドロン(dendron)およびデンドリマーについては、枝分れ度は1である。理想的な線状ポリマーについては、枝分れ度は0に近い。枝分れ度は、ハウカー(Hawker)C.J.,;リー(Lee),R.;フレチェット(Frechet),J.M.J.,J.Am. Chem. Soc.,1991,113,4583 において定義されているように、数学的に以下のように表される:
Figure 2005314613
上記多分岐状化合物の枝分れ度は、デンドリマー(理想的な場合、1の枝分れ度を有する)から0.25の範囲である。より典型的には0.25〜0.80の枝分れ度を有するような多分岐状化合物は容易に製造することができ、デンドリマーと比べて比較的安価である。要するに、多分岐分子が放射状に拡がった形態を形成していることが好ましい。
上記多分岐状化合物の具体例としては、後述する実施例の欄で具体的に記載した化合物などが挙げられる。
上記高分岐状化合物の使用量は、上記セルロースアシレート100質量部に対して0.1〜30質量部とするのが、面状にムラの無い耐膜脆性、耐湿特性の点から好ましく、1.0〜20質量部とするのが更に好ましい。
[微粒子]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、上記セルロースアシレートと上記高分岐状化合物とを含むセルロースアシレート組成物を用いて形成されるが、該セルロースアシレート組成物は更に微粒子を含有するのが好ましい。すなわち、本発明のセルロースアシレートフィルムは、更に微粒子を含有するのが好ましい。
以下、微粒子について説明する。
本発明においては、フィルムの機械的強度と寸法安定性の向上、及び耐湿性を向上させるために疎水性の微粒子を含有することが好ましい。
微粒子の1次平均粒子径は、ヘイズを低く抑えるという観点から、好ましくは1〜100nmであり、より好ましくは3〜100nmであり、更に好ましくは3〜80nmであり、特に好ましくは5〜60nmであり、最も好ましくは、5〜50nmである。微粒子の1次平均粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡で粒子を平均粒径で求められる。
微粒子の見掛け比重は、70g/リットル以上が好ましく、更に好ましくは、90〜200g/リットルであり、特に好ましくは、100〜200g/リットルである。
微粒子の添加量は、セルロースアシレート100質量部に対して0.005〜1.5質量部、特に0.01〜0.8質量部とするのが好ましい。
微粒子の好ましい具体例は、無機化合物としては、ケイ素を含む化合物、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくはケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルロースアシレートフィルムのヘイズ上昇を抑制できるので、二酸化ケイ素が特に好ましく用いられる。
上記微粒子は、表面処理された微粒子が好ましい。ドープ中及び製膜後のフィルム中での凝集が抑制されて微粒子として安定に分散されるのに優れる。
分散表面処理に用いる有機化合物の例には、従来公知の金属酸化物や無機顔料等の無機フィラー類の表面改質剤を用いることが出来る。例えば、「顔料分散安定化と表面処理技術・評価」第一章(技術情報協会、2001年刊行)等に記載されている。
具体的には、該微粒子表面と親和性を有する極性基を有する有機化合物、カップリング化合物が挙げられる。微粒子表面と親和性を有する極性基としては、カルボキシ基、ホスホノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、環状酸無水物基、アミノ基等が挙げられ、分子中に少なくとも1種を含有する化合物が好ましい。例えば、長鎖脂肪族カルボン酸(例えばステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸等)、ポリオール化合物(例えばペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ECH変性グリセロール等)、ホスホノ基含有化合物(例えばEO(エチレンオキサイド)変性リン酸等)、アルカノールアミン(エチレンジアミンEO付加体(5モル)等)が挙げられる。
カップリング化合物としては、従来公知の有機金属化合物が挙げられ、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤等が含まれる。シランカップリング剤が最も好ましい。具体的には、例えば山下普三、金子東助「架橋剤ハンドブック」(大成社、1981年刊)記載のカップリング化合物が挙げられる。
これらの表面処理は、2種類以上を併用することもできる。
本発明で使用される微粒子の形状は、特に限定されないが米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状、不定形状が好ましい。微粒子は単独で用いてもよいが、2種類以上を併用して用いることもできる。
有機化合物としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。シリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、トスパール105、トスパール108、トスパール120、トスパール145、トスパール3120及びトスパール240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
(微粒子分散)
本発明に好ましくは供される微粒子は、製膜後のフィルム中に均一に分散されることが好ましい。
微粒子は、以下のような態様等微粒子分散物を調製した後にドープ液に導入されることが好ましい。
(1)溶剤と微粒子を撹拌混合した後、分散機で微粒子分散液とし、ドープ液に加えて撹拌する。
(2)溶剤と微粒子を撹拌混合した後、分散機で微粒子分散液とし、別に溶剤に少量のセルロースアシレートを加え、撹拌溶解する。これに前記微粒子分散液を加えて撹拌して得られる微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
(3)溶剤に少量のセルロースアシレートを加えて撹拌溶解し、これに微粒子を加えて分散機で分散して微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
更に、微粒子分散物の調製には、微粒子とともに分散剤を用いて湿式分散することが好ましい。
(分散剤)
上記微粒子を安定した所定の微粒子として用いるため分散剤を併用することが好ましい。分散剤としては、該微粒子表面と親和性を有する極性基を有する低分子化合物、または高分子化合物であることが好ましい。
かかる極性基としては、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基、オキシホスホノ基、−P(=O)(R21)(OH)基、−O−P(=O)(R21)(OH)基、アミド基(−CONHR22、−SO2NHR22)、環状酸無水物含有基、アミノ基、四級アンモニウム基等が挙げられる。
ここで、R21は炭素数1〜18の炭化水素基又は−OR30基(R30は炭素数1〜18の炭化水素基を表す)を表す(R21又はR30の表す炭化水素基は、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、クロロエチル基、メトキシエチル基、シアノエチル基、ベンジル基、メチルベンジル基、フェネチル基、シクロヘキシル基等)。R22は、水素原子又は前記R21と同一の内容を表す。
上記極性基において、解離性プロトンを有する基はその塩であってもよい。また、上記アミノ基、四級アンモニウム基は、一級アミノ基、二級アミノ基又は三級アミノ基のいずれでもよく、三級アミノ基または四級アンモニウム基であることがさらに好ましい。二級アミノ基、三級アミノ基または四級アンモニウム基の窒素原子に結合する基は、炭素原子数が1〜18の脂肪族基(上記R21の基と同一の内容のもの等)であることが好ましい。また、三級アミノ基は、窒素原子を含有する環形成のアミノ基(例えば、ピペリジン環、モルホリン環、ピペラジン環、ピリジン環等)であってもよく、更に四級アンモニウム基はこれら環状アミノ基の四級アモニウム基であってもよい。特に炭素原子数が1〜6のアルキル基であることがさらに好ましい。
四級アンモニウム基の対イオンは、ハライドイオン、PF6イオン、SbF6イオン、BF4イオン、B(R23)4イオン(R23は、炭化水素基を表し、例えばブチル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基、ブチルフェニル基等)、スルホン酸イオン等が好ましい。
上記分散剤の極性基としては、pKaが7以下のアニオン性基或はこれらの解離基の塩が好ましい。特に、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基、オキシホスホノ基、又はこれらの解離基の塩が好ましい。
具体的には、下記の一般式(B)、(C)に示される化合物が挙げられる。
一般式(B) (R24−B1−O)z−P(=O)−(OM1y
一般式(C) R25−B2−X
式(B)及び(C)中、R24とR25は炭素数4〜40の置換、無置換のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基及びアリル基を表し、M1は水素原子、アルカリ金属、アンモニア、有機アミンである。また、B1、B2は2価の連結基を表し、Xはカルボン酸(又はその塩)、スルホン酸(又はその塩)、硫酸エステル(又はその塩)を表す。zは1又は2の整数であり、yは(3−z)の整数を表す。
24とR25の好ましい例としては、炭素数4〜40の置換、無置換のアルキル基(例えば、ブチル、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコサニル、ドコサニル、ミリシル、など)、炭素数4〜40の置換、無置換のアルケニル基(例えば、2−ヘキセニル、9−デセニル、オレイルなど)、炭素数4〜40の置換、無置換のアリル基(例えば、フェニル、ナフチル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ジイソプロピルフェニル、トリイソプロピルフェニル、ブチルフェニル、ジブチルフェニル、トリ−ブチルフェニル、イソペンチルフェニル、オクチルフェニル、イソオクチルフェニル、イソノニルフェニル、ジイソノニルフェニル、ドデシルフェニル、イソペンタデシルフェニル、など)などを表す。
これらの中でも更に好ましいのは、アルキルとしては、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ドコサニル、アルケニルとしてはオレイル、アリル基としてはフェニル、ナフチル、トリメチルフェニル、ジイソプロピルフェニル、トリイソプロピルフェニル、ジブチルフェニル、トリブチルフェニル、イソオクチルフェニル、イソノニルフェニル、ジイソノニルフェニル、ドデシルフイソペンタデシルフェニルである。
1、B2の2価の連結基について記述する。炭素数1〜10のアルキレン、ポリ(重合度1〜50)オキシエチレン、ポリ(重合度1〜50)オキシプロピレン、ポリ(重合度1〜50)オキシグリセリン、でありこれらの混合したものでも良い。これらで好ましい連結基は、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ポリ(重合度1〜25)オキシエチレン、ポリ(重合度1〜25)オキシプロピレン、ポリ(重合度1〜15)オキシグリセリンである。
Xは、カルボン酸(又はその塩)、スルホン酸(又はその塩)、硫酸エステル(又はその塩)である。塩としては好ましくはNa、K、アンモニウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン及びトリエタノールアミンである。
以下に、本発明において好ましく用いられる分散剤の具体例を記載するが、これらに限定されるものではない。
Figure 2005314613
本発明に用いられる分散剤は、上記した極性基を含有する高分子分散剤であることが好ましい。
高分子分散剤の質量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、GPC法で測定されたポリスチレン換算値として、1×103以上であることが好ましい。より好ましいMwは2×103〜1×106であり、更に好ましくは3×103〜1×105、特に好ましくは5×103〜8×104である。
この範囲のものが、微粒子が微粒子として分散されやすく、かつ凝集物や沈殿物を生じない安定な分散物が得られる。
高分子分散剤中の極性基は、高分子鎖の重合体主鎖の末端或いは重合体形成単位の側鎖置換基(以降、側鎖と略称する場合もある)として含有される。極性基は重合体主鎖の末端及び/または側鎖に結合していることが好ましくい。
側鎖に極性基を導入する方法としては、例えば極性基含有モノマー(例えば(メタ)アクリル酸、マレイン酸、部分エステル化マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、2−ホスホノオキシエチル(メタ)アクリレート、2,3ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−N,Nジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメルアンモニウム・PF6イオン塩、水酸基含有不飽和化合物と環状酸無水物(マレイン酸無水物、グルタル酸無水物、フタル酸無水物等)との付加物等)を重合させる方法、高分子反応の利用を利用する方法(例えば、水酸基、アミノ基、エポキシ基等と酸無水物、ハロゲン置換酸化合物との反応、イソシアナート基、カルボキシ基等と水酸基、アミノ基等を含有の酸化合物との反応等)等によって合成できる。
極性基含有の重合体成分の具体例としては、例えば特開平11−153703号公報明細書中の段落番号[0024]〜[0041]記載の内容等が挙げられる。
また、側鎖に極性基を有する高分子分散剤において、極性基含有の重合単位の組成は、全重合単位のうちの0.5〜90質量%の範囲であり、好ましくは1〜80質量%、特に好ましくは5〜60質量%である。
一方、末端に極性基を導入する手法としては、極性基含有の連鎖移動剤(例えばチオグリコール酸等)の存在下で重合反応を行う手法、極性基含有の重合開始剤(例えば和光純薬工業性V−501)を用いて重合反応を行う手法、或いはハロゲン原子、水酸基、アミノ基等の反応性基を含有の連鎖移動剤や重合開始剤で重合反応後に高分子反応により導入する手法等によって合成できる。
好ましくは分散剤全重合単位のうちの1〜70質量%であり、より好ましくは5〜50質量%である。
上記分散剤は、極性基含有の重合成分を含有する重合成分以外の他の重合成分との共重合体であってもよい。この他の重合成分としては、極性基含有の重合成分に相当するモノマーと共重合可能なモノマーであれば特に限定はされないが、分散安定性、形成皮膜の強度等種々の観点から選択される。好ましい例としては、メタアクリレート類、アクリレート類、カルボン酸ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド及びその誘導体類、スチレン及びその誘導体類、アクリロニトリル等が挙げられる。
分散剤中の他の重合性成分の割合は、全重合体成分中の5〜99.5質量%が好ましく、より好ましくは30〜85質量%である。
上記分散剤の重合形態は特に制限はなく、ブロック共重合体またはランダム共重合体の何れであっても良い。
更には、アニオン性基含有の重合成分を含有する重合体ブロック(ブロックA)とアニオン性基含有の重合成分を含有しない重合体ブロック(ブロックB)から構成されるAB型ブロック、ABA型ブロック、又はグラフト型のブロック共重合体が好ましい。このように分散剤がブロック共重合体であることにより、無機微粒子の分散性とその分散物の安定性(分散安定性)の向上、及びドープ組成物を製膜した場合の膜中での分散せいが良好となり、膜中での凝集化の無いフィルム表面の凹凸形状が所定の状態に制御される。
分散剤の使用量は、微粒子100質量部に対して、1〜100質量部の範囲であることが好ましく、3〜50質量部の範囲であることがより好ましく、5〜40質量部であることが最も好ましい。また、分散剤は2種類以上を併用してもよい。
(分散媒体)
本発明において、微粒子の湿式分散に供する分散媒体は、後述するドープに用いる有機溶媒から適宜選択して用いることができる。好ましくは、低級アルコール類(例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等)、ケトン類(メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)が挙げられる。これらの溶媒以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースアシレートの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
分散媒体は、微粒子及び分散剤を含む全分散用組成物が3〜50質量%となる割合で用いることが好ましい。更には、5〜30質量%が好ましい。この範囲において、分散が容易に進行し、得られる分散物は作業性良好な粘度の範囲となる。
(微粒子の超微粒子化)
上記微粒子は、平均粒子径100nm以下の微粒子分散物とすることにより、該組成物の液の安定性が向上し、このドープ組成物から製膜されたセルロースアシレートフィルムは、微粒子が硬フィルム中で超微粒子状態で均一に分散されて存在し、光学特性が均一で透明なフィルムが達成される。フィルム中で存在する微粒子の大きさは、平均粒径5〜100nmの範囲が好ましく、特に10〜80nmが最も好ましい。
更には、500nm以上の平均粒子径の大粒子が含まれないことが好ましく、300nm以上の平均粒子径の大粒子が含まれないことが特に好ましい。これにより、光学的欠陥のないヘイズ値の小さい透光性良好なフィルムであり、且つ表面が上記した特定の凹凸形状を形成できる。
上記微粒子を上記の範囲の粗大粒子を含まない超微粒子の大きさに湿式分散するには、メディアレス分散若しくはメディア分散のいずれでも良い。
メディアレス分散機としては超音波型、遠心型、高圧型など従来公知のものがあり利用できる。高圧分散装置は、例えば管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が9.8MPa以上であることが好ましい。更に好ましくは19.6MPa以上である。またその際、最高到達速度が100m/sec以上に達するもの、伝熱速度が420kJ/hr以上に達するものが好ましい。高圧分散装置にはMicrofluidics Corporation社製超高圧ホモジナイザ(商品名マイクロフルイダイザ)あるいはナノマイザ社製ナノマイザがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモジナイザ、三和機械(株)社製UHN−01等が挙げられる。
メディア分散湿式分散用の分散機としては、従来公知のものが挙げられる。具体的には、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライター、コロイドミル、ダイノミル等が含まれる。サンドグラインダーミルおよび高速インペラーミルが特に好ましい。具体的には、生産性と微細化/単分散化等の分散性能の観点で、スーパーアペックスミル(アペックス社製)が好適に用いられる。
上記分散機と共に用いるメディアとしては、その平均粒径が0.5mm未満であり、好ましくは0.3mm以下であり、より好ましくは0.05〜0.2mmである。
また、湿式分散に用いられるメディアとしては、ビーズが好ましい。具体的には、ジルコニアビーズ、ガラスビーズ、セラミックビーズ、スチールビーズ等が挙げられ、分散中におけるビーズの破壊等を生じ難い等の耐久性と超微粒子化の上から0.05〜0.2mmのジルコニアビーズが特に好ましい。
分散物中の微粒子の一次粒子の質量平均径は3〜200nmであることが好ましく、より好ましくは3〜150nm、さらに好ましくは3〜100nm、特に好ましくは5〜80nmである。
特に、本発明における湿式分散物中の分散微粒子は、分散時において微粒子の比表面積を過度に大きくしないために微粒子を一次粒径以上に実質的に維持することが好ましい。
更には、湿式分散物中の分散微粒子中には、500nm以上の平均粒子径の大粒子が含まれないことが好ましく、300nm以上の平均粒子径の大粒子が含まれないことが特に好ましい。
ここで、一次粒径以上に維持するためには、使用するビーズを上記の範囲内のビーズ径とすることで分散時のビーズによる破壊力を抑制し、微粒子の破壊を抑制しながら、微分散性と分散微粒子の単分散性を向上させることができると推測される。また、更なるビーズの小径化によりベッセル内にある総ビーズ数を多くすることができて衝突確率を増加させ、分散時間を短縮することが可能となると推測される。分散時間を短縮すると、その分更に粒子の破壊を抑制でき、耐候性をより向上させることができると推測される。
また、メディア分散の周速としては、分散微粒子を微分散化できる範囲内で周速が低いほうが好ましい。周速が低い方が分散時のメディアによる破壊力を抑制することができ、微粒子の破壊を抑制しながら、微分散性と分散微粒子の単分散性を向上させることができると推測される。
更には、分散物中の分散粒子がその平均粒径、および粒子径の単分散性が上記した範囲を満足する上で、分散物中の粗大凝集物を除去するためにビーズとの分離処理において精密濾過されるように濾材を配置することも好ましい。精密濾過するための濾材は濾過粒子サイズ0.1〜25μmが好ましい。精密濾過は濾過粒子サイズを変えながら繰り返し行うことも好ましい。精密濾過するための濾材のタイプは上記性能を有していれば特に限定されないが例えばフィラメント型、フェルト型、メッシュ型が挙げられる。分散物を精密濾過するための濾材の材質は上記性能を有しており、かつ塗布液に悪影響を及ばさなければ特に限定はされないが例えばステンレス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等が挙げられる。
また、本発明においては、本発明の所望の効果を損なわない範囲で種々添加剤を用いることもできる。以下に用いることができる添加剤について説明する。
本発明のセルロースアシレートフィルムには、フィルム自身の耐光性向上、或は偏光板、画像表示装置の液晶化合物、有機EL化合物等の画像表示部材の劣化防止のために、更に紫外線防止剤を添加することが好ましい。
紫外線吸収剤としては、液晶の劣化防止の点より波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な画像表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものを用いることが好ましい。
例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などがあげられるが、これらに限定されない。
紫外線吸収剤としての具体例を下記に列記するが、本発明はこれらに限定されない。
2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)、(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、(2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2−(2′−ヒドロキシ−4′−へキシルオキシフェニル)−4,6−ジフェニルトリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルサリシレート、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン、2′−エチルへキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3−(3′,4′−メチレンジオキシフェニル)−2−アクリレート等が挙げられる。
特開平6−148430号公報に記載の紫外線吸収剤も好ましく用いることが出来る。
本発明において、紫外線吸収剤の使用量は、セルロースエステル100質量部に対し好ましくは0.1〜5.0質量部、より好ましくは0.5〜2.0質量部、さらに好ましくは0.8〜2.0質量部である。
また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジンなどのヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイトなどの燐系加工安定剤を併用してもよい。これらの添加量は、セルロースアシレート100質量部に対し0.0001〜2.0質量部が好ましく、0.001〜1.0質量部が更に好ましい。
また、上記のような紫外線吸収性基を含有する高分子紫外線吸収化合物であってもよい。
特に、波長370nmでの透過率が、20質量%以下であることが望ましく、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。紫外線吸収剤は2種以上用いてもよい。紫外線吸収剤のドープへの添加方法は、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶媒に溶解してから添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースエステル中にデゾルバやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
更に、上記セルロースアシレート組成物には、各調製工程において用途に応じた他の種々の添加剤(例えば、マット剤、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン等)、光学異方性コントロール剤、本発明の化合物以外の可塑剤、剥離剤、帯電防止剤、赤外吸収剤等)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。
これらの添加剤を添加する時期はドープ作製工程において何れで添加してもよいが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開平2001−151902号公報などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。さらにこれらの詳細は、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。これらの添加剤の使用量は、全セルロールアシレート組成物中、0.001〜20質量%の範囲で適宜用いられることが好ましい。
[有機溶媒]
次に、前記セルロースアシレート組成物において前記セルロースアシレートを溶解する有機溶媒について記述する。
用いる有機溶媒としては、従来公知の有機溶媒が挙げられ、例えば溶解度パラメーターで17〜22の範囲ものが好ましい。低級脂肪族炭化水素の塩化物、低級脂肪族アルコール、炭素原子数3から12までのケトン、炭素原子数3〜12のエステル、炭素原子数3〜12のエーテル、炭素原子数5〜8の脂肪族炭化水素類、炭素数6〜12の芳香族炭化水素類、フルオロアルコール類(例えば、特開平8−143709号公報明細書中の段落番号[0020]、同11−60807号公報明細書中の段落番号[0037]等に記載の化合物)等が挙げられる。
エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。具体的には、例えば前記の公技番号2001−1745の12頁〜16頁に詳細の化合物が挙げられる。
特に、本発明では、溶媒は2種類以上の有機溶媒を混合して用いることが好ましく、特に好ましい有機溶媒は、互いに異なる3種類以上の混合溶媒であって、第1の溶媒が炭素原子数3〜4個のケトンおよび炭素原子数3〜4個のエステル或いはその混合液であり、第2の溶媒が炭素原子数5〜7個のケトン類またはアセト酢酸エステルから選ばれ、第3の溶媒として沸点30〜170℃のアルコールまたは沸点30〜170℃の炭化水素から選ばれることが好ましい。
特に、酢酸エステルを20〜90質量%、ケトン類を5〜60質量%、アルコール類を5〜30質量%の混合比で用いることがセルロースアシレートの溶解性の点から好ましい。
また、ハロゲン化炭化水素を含まない非ハロゲン系有機溶媒系が特に好ましい。
技術的には、メチレンクロリドのようなハロゲン化炭化水素は問題なく使用できるが、地球環境や作業環境の観点では、有機溶媒はハロゲン化炭化水素を実質的に含まないことが好ましい。「実質的に含まない」とは、有機溶媒中のハロゲン化炭化水素の割合が5質量%未満(好ましくは2質量%未満)であることを意味する。また、製造したセルロースアシレートフィルムから、メチレンクロリドのようなハロゲン化炭化水素が全く検出されないことが好ましい。
本発明に使用する有機溶媒は具体的には、例えば特開2002−146043号明細書の段落番号〔0021〕〜〔0025〕、特開2002−146045号明細書の段落番号〔0016〕〜〔0021〕等に記載の溶媒系の例が挙げられる。
有機溶剤の使用量は、セルロースアシレートが有機溶媒100質量部に対して10〜30質量部溶解されるような量用いることが好ましいが、より好ましくは13〜27質量部溶解される量であり、特には15〜25質量部溶解される量である。これらの濃度とする方法は、溶解する段階で所定の濃度になるように調製してもよく、また予め低濃度溶液(例えば9〜14質量部)として作製した後に後述する濃縮工程で所定の高濃度溶液に調整してもよい。さらに、予め高濃度のセルロースアシレート溶液として後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度のセルロースアシレート溶液としてもよく、いずれの方法で本発明のセルロースアシレート溶液濃度になるように実施されれば特に問題ない。
また、本発明においてセルロースアシレート組成物の溶液は、その溶液の粘度と動的貯蔵弾性率が特定の範囲であることが好ましい。試料溶液1mLをレオメーター(CLS 500)に直径4cm/2°のSteel Cone(共にTA Instrumennts社製)を用いて測定する。測定条件はOscillation Step/Temperature Rampで40℃〜−10℃の範囲を2℃/分で可変して測定し、40℃の静的非ニュートン粘度n*(Pa・sec)及び−5℃の貯蔵弾性率G'(Pa)を求める。尚、試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始する。本発明では、40℃での粘度が1〜300Pa・secであり、かつ−5℃での動的貯蔵弾性率が1万〜100万Paであることが好ましい。より好ましくは、40℃での粘度が1〜200Pa・secであり、かつ−5℃での動的貯蔵弾性率が3万〜50万Paである。
[製造方法]
次に、本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法について述べる。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、上記セルロースアシレート及び上記高分岐状化合物(PB)の少なくとも1種を含有するセルロースアシレート組成物を、溶液流延方法により製膜することにより得られる。
更に詳細には、セルロースアシレートを実質的に非塩素系の溶剤に溶解してセルロースアシレート溶液を調製する溶液調製工程、得られたセルロースアシレート溶液からセルロースアシレートフィルムを製膜する製膜工程、及び、セルロースアシレートフィルムを延伸する延伸工程を行うことにより製造することができる。更に、上記の有機溶媒が実質的に非塩素系の溶剤を用いる態様が好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムを製造する方法及び設備は、セルロースアシレートフィルム製造に供するドラム方法若しくはバンド方法と称される、従来公知の溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。
以下、更に詳述する。
溶液調製工程は、特に限定されず、室温溶解法でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301号、特開昭61−106628号、特開昭58−127737号、特開平9−95544号、特開平10−95854号、特開平10−45950号、特開2000−53784号、特開平11−322946号、特開平11−322947号、特開平2−276830号、特開2000−273239号、特開平11−71463号、特開平04−259511号、特開2000−273184号、特開平11−323017号、特開平11−302388号などの各公報にセルロースアシレート溶液の調製法が記載されている。以前記載したこれらのセルロースアシレート組成物の有機溶媒への溶解方法は、本発明においても適宜本発明の範囲であればこれらの技術を適用できるものである。これらの詳細は、特に非塩素系溶媒系については前記の公技番号2001−1745号のp.22−25に詳細に記載されている方法で実施される。さらに本発明においてセルロースアシレート組成物のドープ溶液は、溶液濃縮,濾過が通常実施され、同様に前記の公技番号2001−1745号のp.25に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
次に、製膜工程を説明する。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート組成物溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。
流延工程で用いる金属支持体は、その表面が算術平均粗さ(Ra)が0.015μm以下で、十点平均粗さ(Rz)が0.05μm以下であることが好ましい。より好ましくは、算術平均粗さ(Ra)が0.001〜0.01μmで、十点平均粗さ(Rz)が 0.001 〜0.02μmである。更に好ましくは、(Ra)/(Rz)比が0.15以上である。このように、金属支持体の表面粗さを所定の範囲とすることで、製膜後のフィルムの表面形状を後述する好ましい範囲内に制御できる。
得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。ハロゲン化銀写真感光材料や電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらの各製造工程については、前記の公技番号 2001−1745の25頁〜30頁に詳細に記載され、流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離、延伸などに分類される。
ここで、本発明においては流延部の空間温度は特に限定されないが、−50〜+50℃であることが好ましい。更には−30〜+40℃であることが好ましい。特に低温での空間温度により流延されたセルロースアシレート溶液は、支持体の上で瞬時に冷却されゲル強度アップすることでその有機溶媒を含んだフィルムを保持することができる。これにより、セルロースアシレートから有機溶媒を蒸発させることなく、支持体から短時間で剥ぎ取りことが可能となり、高速流延が達成できるものである。なお、空間を冷却する手段としては通常の空気でもよいし窒素やアルゴン、ヘリウムなどでもよく特に限定されない。またその場合の湿度は0〜70%RHが好ましく、さらには0〜50%RHが好ましい。また、本発明ではセルロースアシレート溶液を流延する流延部の支持体の温度が−50〜+130℃であり、好ましくは−30〜+25℃である。流延部を本発明の温度に保つためには、流延部に冷却した気体を導入して達成してもよく、あるいは冷却装置を流延部に配置して空間を冷却してもよい。この時、水が付着しないように注意することが重要であり、乾燥した気体を利用するなどの方法で実施できる。
流延する際には、1種類のセルロースアシレート溶液を単層流延してもよいし、2種類以上のセルロースアシレート溶液を同時及び又は逐次共流延してもよい。
前記のような二層以上の複数のセルロースアシレート溶液を共流延する方法としては、例えば、支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させる方法(例えば、特開平11−198285号公報記載の方法)、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延する方法(特開平6−134933号公報記載の方法)、高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出す方法(特開昭56−162617号公報記載の方法)等が挙げられる。本発明ではこれらに限定されるものではない。
得られたフィルムを支持体(バンド、ドラム)から剥ぎ取り、更に乾燥させる。乾燥工程における乾燥温度は40〜250℃、特に70〜180℃が好ましい。
更に残留溶媒を除去するために、50〜160℃で乾燥させ、その場合逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることが好ましい。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載されている。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することができる。使用する溶媒によって乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組み合わせに応じて適宜選ぶことができる。最終仕上がりフィルムの残留溶媒量は2質量%以下、更に0.4質量%以下であることが、寸度安定性良好なフィルムを得る上で好ましい。これらの乾燥工程の具体的な方法は、例えば、前述の発明協会公開技報に記載の従来公知の方法及び装置のいずれを用いてもよく、特に限定されるものではない。
(延伸工程)
前記延伸工程は、以下のようにして行うことができる。
流延工程において流延方向(縦方向)等の一方向のみの1軸延伸、或いは流延方向及び他の方向(横方向)の2軸延伸等が行われることが好ましい。
作製されたセルロースアシレートフィルムは、フィルムの機械的強度、更には光学特性(レターデーション値)を調整することができる。延伸倍率は、3乃至100%であることが好ましい。
下記(1)及び/又は(2)の延伸方法を採用した場合には、フィルムの平面性、膜の強度、光学特性等を所定の範囲内に調整できる。
(1)3乃至40%、より好ましくは7乃至38%、さらに好ましくは15乃至35%の延伸倍率で幅方向に延伸する。これに引き続き、長手方向に0.4%以上5%以下、より好ましくは0.7%以上4%以下、さらに好ましくは1%以上3.5%以下膨張させながら20〜160℃で処理する。
(2)延伸中に表裏に温度差を付与する。流延時に基板(バンドあるいはドラム)に接触していた面の温度を、その反対面より2℃以上20℃以下、より好ましくは3℃以上15℃以下、より好ましくは4℃以上12℃以下高くする。
このような方法により、延伸工程でのフィルム内に添加した添加剤(可塑剤、超微粒子、紫外線吸収剤等)の偏在化が解消されることで、得られてフィルムの光学特性が均質化されるとともに機械的特性が向上する。
[セルロースアシレートフィルムの特性]
[フィルム表面の性状]
本発明のセルロースアシレートフィルムの表面は、JISB0601−1994に基づく該膜の表面凹凸の算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以下、及び最大高さ(Ry)が 0.5μm以下であることが好ましい。より好ましくは、算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以下、及び最大高さ(Ry)が 0.2μm以下である。膜表面の凹と凸の形状は、原子間力顕微鏡(AFM)により評価することができる。
80μm未満の膜厚からなるフィルムの機械的特性を下記の範囲内に保持する主要組成物である微粒子を含有した本発明のフィルムの表面状態を上記の凹凸の大きさ内とすることで、後述するフィルム表面への密着性付与、配向膜の塗設において、フィルム全面が安定して均一に処理され、処理ムラや塗布ムラ等による光学的な欠陥が解消される。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、その動摩擦係数が0.4以下であることが好ましく、0.3以下であることが特に好ましい。動摩擦係数が大きいと搬送ロールとの間で強く擦られる結果支持体から発塵しやすくなり、フィルム上への異物付着が多くなり、光学フィルムとしての点欠陥や塗布スジの頻度が許容値を超えてしまう場合があるので上記範囲内とするのが好ましい。動摩擦係数は5mmφの鋼球を用いる鋼球法により測定することができる。
また、本発明のセルロースアシレートフィルムの表面抵抗率は、1.2×1012Ω/□以下であることが各種用途に使用時に異物の付着が抑えられることから好ましく、1.0×1012Ω/□以下であることがより好ましく、0.8×1012Ω/□以以下であることが特に好ましい。
表面抵抗は、四探針法により測定することができる。
[フィルム光学的特性]
(ヘイズ)
本発明のセルロースアシレートフィルムのヘイズは0.01〜2.0%が好ましい。より好ましくは0.05〜1.5%であり、0.1〜1.0%である。この範囲において、光学フィルムとして重要なフィルムの透明性が充分に確保できる。ヘイズの測定は、本発明のセルロースアシレートフィルム試料40mm×80mmを、25℃,60%RHでヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)でJIS K−6714に従って測定出来る。
(フィルムのレターデーションの波長依存性)
本発明のセルロースアシレートフィルムの幅方向のレターデーションReと膜厚方向のレターデーションRthが波長400nmと波長700nmでの各測定値の差が小さいことが好ましい。具体的には下記の式(A)、(B)に示されるように、レターデーションReの波長400nmと波長700nmでの各測定値の差|10|nmが好ましい。と同時に、レターデーションRthの波長400nmと波長700nmでの各測定値の|35|nmが好ましい。
このような波長によるRth及びReの変化が抑えられることで、波長分散性がゼロに近づく。これにより光学フィルムとして波長の変化による色味の変化が著しく抑制できる。
式(A):Re(λ)=(nx−ny)×d
式(B):Rth(λ)={(nx+ny)/2−nz}×d
[式中、Re(λ)は波長λnmにおける正面レターデーション値(単位:nm)、Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。またnxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さである。]
尚、Rth、及びReの各測定は、(25℃/60%RH)で2時間調湿後に各測定波長(400nm、700nm)で行った。
[フィルムの機械的特性]
(カール)
本発明のセルロースアシレートフィルムの幅方向のカール値は−7/m〜+7/mであることが好ましい。表面処理、ラビング処理の実施や配向層、光学異方性層の設置などを長尺で広幅のフィルムに行う際に、幅方向のカール値が前述の範囲外であると、フィルムのハンドリングに支障をきたし、フィルムの切断が起きることがある。また、フィルムのエッジや中央部などで、フィルムが搬送ロールと強く接触するために発塵しやすくなり、フィルム上への異物付着が多くなり、光学補償シートの点欠陥や塗布スジの頻度が許容値を超える場合がある。又、光学異方性層を設置するときに発生しやすい色斑故障を低減できるほか、偏光膜貼り合せ時に気泡が入ることを防ぐことができて好ましい。
カール値は、アメリカ国家規格協会の規定する測定方法(ANSI/ASCPH1.29−1985)に従い測定することができる。
(フィルムの寸度変化)
本発明のセルロースアシレートフィルムの寸度安定性は、60℃、90%RHの条件下に24時間静置した場合(高湿)の寸度変化率および90℃、5%RHの条件下に24時間静置した場合(高温)の寸度変化率がいずれも0.5%以下であることが好ましい。より好ましくは0.3%以下であり、さらにのぞましくは0.15%以下である。
具体的な測定方法としては、セルロースアシレートフィルム試料30mm×120mmを2枚用意し、25℃、60%RHで24時間調湿し、自動ピンゲージ(新東科学(株))にて、両端に6mmφの穴を100mmの間隔で開け、パンチ間隔の原寸(L0)とした。1枚の試料を60℃、90%RHにて24時間処理した後のパンチ間隔の寸法(L1)を測定、もう1枚の試料を90℃、5%RHにて24時間処理した後のパンチ間隔の寸法(L2)を測定した。すべての間隔の測定において最小目盛り1/1000mmまで測定した。60℃、90%RH(高湿)の寸度変化率={|L0−L1|/L0}×100、90℃、5%RH(高温)の寸度変化率={|L0−L2|/L0}×100、として寸度変化率を求めた。
(引裂き強度)
上記透明支持体は、前記のとおり膜厚が20〜80μmであり、そのJISK7128−2:1998の引裂き試験方法(エルメンドルフ引裂き法)に基づく引裂き強度が、2g以上であるのが、前記の膜厚においても膜の強度が充分に保持できる点で好ましい。より好ましくは、5〜25gであり、更に好ましくは6〜25gである。また60μm換算では、8g以上が好ましく、より好ましく8〜15gである。
具体的には、試料片50mm×64mmを、25℃、65%RHの条件下に2時間調湿した後に軽荷重引裂き強度試験機を用いて測定できる。
特に、上記カール及び上記引裂き強度は、所定の製造工程を終了して得られる上記透明支持体が長さ100〜5000mで幅0.7以上の長尺品である場合に、上述の範囲内とするのが好ましい。
(引掻き強度)
また、引掻き強度は1g以上であることが好ましく、5g以上であることがより好ましく、10g以上であることが特に好ましい。この範囲とすることにより、フィルム表面の耐傷性、ハンドリング性が問題なく保持される。
引掻き強度は、円錐頂角が90度で先端の半径が0.25mのサファイヤ針を用いて支持体表面を引掻き、引掻き跡が目視にて確認できる荷重(g)をもって評価することができる。
(フィルムの保留性)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、を、80℃/90RHの条件下に48時間静置した場合のフィルムの質量変化が0〜5%であるのが好ましく、「80±5℃/90±10%RH」の条件下に48時間静置した場合のフィルムの質量変化が0〜2%であることが更に好ましい。
〈保留性の評価方法〉
試料を10cm×10cmのサイズに断裁し、23℃、55%RHの雰囲気下で24時間放置後の質量を測定して、80±5℃、90±10%RHの条件下で48時間放置した。処理後の試料の表面を軽く拭き、23℃、55%RHで1日放置後の質量を測定して、以下の方法で保留性を算出する。
保留性(質量%)={(放置前の質量−放置後の質量)/放置前の質量}×100
[フィルムの吸湿膨張係数]
本発明のセルロースアシレートフィルムの吸湿膨張係数は30×10-5/%RH以下とすることが好ましい。吸湿膨張係数は、15×10-5/%RH以下とすることが好ましく、10×10-5/%RH以下であることがさらに好ましい。また、吸湿膨張係数は小さい方が好ましいが、通常は、1.0×10-5/%RH以上の値である。吸湿膨張係数は、一定温度下において相対湿度を変化させた時の試料の長さの変化量を示す。
この吸湿膨張係数を調節することで、セルロースアシレートフィルムの耐久性が良好となり、ひいては偏光板保護フィルムの耐久性が良好となり、或は光学補償フィルムの支持体に用いた場合の光学補償機能を維持したまま、額縁状の透過率上昇すなわち歪みによる光漏れを防止することができる。
吸湿膨張係数の測定方法について以下に示す。作製したセルロースアシレートフィルムから幅5mm、長さ20mmの試料を切り出し、片方の端を固定して25℃、20%RH(R0)の雰囲気下にぶら下げる。他方の端に0.5gの重りをぶら下げて、10分間放置し長さ(L0)を測定する。次に、温度は25℃のまま、湿度を80%RH(R1)にして、長さ(L1)を測定する。吸湿膨張係数は下式により算出する。測定は同一試料につき10サンプル行い、平均値を採用する。
吸湿膨張係数[/%RH]={(L1−L0)/L0}/(R1−R0
作製したセルロースアシレートフィルムの吸湿による寸度変化を小さくするには、本発明の親水性樹脂粒子が非膨潤性親水性コロイド樹脂粒子であり、該親水性樹脂粒子を添加することにより可能となる。粒子径が揃った単分散性の超微粒子(平均粒子径:2〜100nm)がセルロースアシレートフィルム内に均一に分散し、且つ分散安定用樹脂分子がセルロースアシレート分子と相互作用して充分に固定されていることにより、環境(湿度、温度)が変化しても安定した良好な作用効果を発現するものと思われる。さらに可塑剤を添加することも好ましい。又、セルロースアシレートフィルム中の残留溶剤量を少なくして自由体積を小さくすることが挙げられる。具体的には、セルロースアシレートフィルムに対する残留溶剤量が、前記[フィルムの機械的特性]に記載の範囲となることが好ましい。
[フィルムの透湿度及び含水量]
本発明のセルロースアシレートフィルムの透湿度は、JIS規格JISZ0208、B条件(温度40℃、湿度90%RH)において、2〜150g/m2・24hであることが好ましい。10〜120g/m2・24hであることがより好ましく、10〜100g/m2・24hであることが特に好ましい。150g/m2・24hを越えると、フィルムのRe値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超える傾向が強くなってしまう。また、セルロースアシレートフィルムに光学異方性層を積層させた光学補償シートとした場合も、Re値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.3nm/%RHを超える傾向が強くなってしまい好ましくない。この光学補償シートや偏光板が液晶表示装置に組み込まれた場合、色味の変化や視野角の低下を引き起こす場合があり、この点でも好ましくない。
また、セルロースアシレートフィルムの透湿度が2g/m2・24h未満では、偏光膜の両面などに貼り付けて偏光板を作製する場合に、セルロースアシレートフィルムにより接着剤の乾燥が妨げられ、接着不良を生じる場合があるので好ましくない。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4 共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムの含水量は、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーとの接着性を損なわないために、膜厚のいかんに関わらず、30℃85%RH下で0.3〜12g/m2であることが好ましい。0.5〜5g/m2であることがより好ましい。12g/m2より大きいとレターデーションの湿度変化による依存性も大きくなりすぎる場合があり好ましくない。
[密着性付与の方法]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、各種用途において、該フィルム上に設ける各種機能性層との接着を達成するために、表面活性化処理をしたのち、直接セルロースアシレートフィルム上に機能層を塗布して接着力を得る方法と、一旦何がしかの表面処理をした後、あるいは表面処理なしで、下塗層(接着層)を設けこの上に機能層を塗布する方法とのいずれかの方法で処理を行うことができる。これらの下塗層についての詳細は、前記の公技番号 2001−1745の32頁に記載されている。また本発明のセルロースアシレートフィルムの機能性層についても各種の機能層が前記の公技番号 2001−1745の32頁〜45頁に詳細に記載されている。
場合により表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、配向膜層、偏光膜、下塗層、バック層等)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸又はアルカリ処理を用いることができる。これらについては、詳細が前記の公技番号 2001−1745の30頁〜32頁に詳細に記載されている。
(鹸化処理)
これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアシレートフィルムの表面処理としては有効である。
アルカリ鹸化処理は、フィルムを浸漬する、鹸化液をフィルム表面に塗布する或はスプレーする等で行う。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法及びE型塗布法を挙げることができる。
アルカリ鹸化処理液は、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられ、水酸化イオンの規定濃度は、0.1〜3.0(モル/Kg)の範囲にあることが好ましい。更に、アルカリ処理液として、フィルムに対する濡れ性が良好な溶媒(例、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、メタノール、エタノール等)、界面活性剤、湿潤剤(例えば、ジオール類、グリセリン等)を含有することで、鹸化液の透明支持体に対する濡れ性、鹸化液の経時安定性等が良好となる。好ましいアルカリ液の液温は25〜70℃、特に好ましくは30〜60℃である。
アルカリ液に浸漬した後は、フィルムの中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗したり、希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和することが好ましい。
具体的には、例えば、特開2002−82226号公報、WO02/46809号公報に内容の記載が挙げられる。
表面処理後のフィルムの水との接触角は20〜55度が好ましい。より好ましくは25〜45度である。又、表面エネルギーは、55mN/m以上であることが好ましく、55〜75mN/mであることがさらに好ましい。
フィルムの表面エネルギーは、「ぬれの基礎と応用」(リアライズ社、1989.12.10発行)に記載のように接触角法、湿潤熱法、および吸着法により求めることができる。接触角法を用いることが好ましい。
具体的には、表面エネルギーが既知である2種の溶液をフィルムに滴下し、液滴の表面と支持体表面との交点において、液滴に引いた接線と支持体表面のなす角で、液滴を含む方の角を接触角と定義し、計算により支持体の表面エネルギーを算出する。
偏光膜の保護フィルムは、通常、水に対する接触角が20度〜50度、より好ましくは30度〜50度の範囲で透明支持体の親水化された表面を偏光膜と接着させて使用する。
親水化された表面は、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光膜との接着性を改良するのに有効である。
[光学フィルム]
次に、本発明のセルロースアシレートフィルムの用途について説明する。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、光学フィルム、光学用偏光フィルム、反射防止フィルム、画像表示素材、光学補償フィルム、画像表示装置及びハロゲン化銀写真感光材料用支持体等に用いることができる。
すなわち、本発明の光学フィルム、光学用偏光フィルム、反射防止フィルム、画像表示素材、光学補償フィルム及び画像表示装置は、上述の本発明のセルロースアシレートフィルムを使用したことを特徴とする。
以下に、本発明のセルロースアシレートフィルムの用途について詳述する。
(偏光板保護フィルム)
本発明のセルロースアシレートフィルムを光学フィルムに用いる場合、特に偏光板保護フィルムとして有用である。すなわち、本発明の光学フィルムは特に偏光板保護フィルム用として有用である。偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、特開平6−118232号に記載されているような易接着加工を施してもよい。
保護フィルム処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明の光学フィルムを適用した偏光板保護フィルムはどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムには、透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられる(後述する)ため、該偏光板保護フィルムをこの部分に用いることが得に好ましい。
[用途(光学補償フィルム)]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な用途で用いることができ、液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いると特に効果がある。なお、光学補償フィルムとは、一般に液晶表示装置に用いられ、位相差を補償する光学材料のことを指し、位相差板、光学補償シートなどと同義である。光学補償シートは複屈折性を有し、液晶表示装置の表示画面の着色を取り除いたり、視野角特性を改善したりする目的で用いられる。
したがって本発明のセルロースアシレートフィルムを液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いる場合、併用する光学異方性層のReおよびRthは|Re|≧10nmかつ|Rth|≧30nmであることが好ましく、この範囲であればどのような光学異方性層でも良い。本発明のセルロースアシレートフィルムが使用される液晶表示装置の液晶セルの光学性能や駆動方式に制限されず、光学補償フィルムとして要求される、どのような光学異方性層も併用することができる。併用される光学異方性層としては、液晶性化合物を含有する組成物から形成しても良いし、複屈折を持つポリマーフィルムから形成しても良い。前記液晶性化合物としては、ディスコティック液晶性化合物または棒状液晶性化合物が好ましい。
(ディスコティック液晶性化合物)
本発明に使用可能なディスコティック液晶性化合物の例には、様々な文献(C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,page 111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al. ,Angew. Chem. Soc. Chem. Comm., page 1794(1985);J.Zhang et al., J. Am. Chem. Soc., vol.1 16, page 2655(1994))に記載の化合物が含まれる。
光学異方性層において、ディスコティック液晶性分子は配向状態で固定されているのが好ましく、重合反応により固定されているのが最も好ましい。ディスコティック液晶性分子の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。ディスコティック液晶性分子を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。重合性基を有するディスコティック液晶性分子について、特開2001−4387号公報に開示されている。
(棒状液晶性化合物)
本発明において、使用可能な棒状液晶性化合物の例には、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が含まれる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。
光学異方性層において、棒状液晶性分子は配向状態で固定されているのが好ましく、重合反応により固定されているのが最も好ましい。本発明に使用可能な重合性棒状液晶性化合物の例には、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許4683327号、同5622648号、同5770107号、世界特許(WO)95/22586号、同95/24455号、同97/00600号、同98/23580号、同98/52905号、特開平1−272551号、同6−16616号、同7−110469号、同11−80081号、および特開2001−328973号などに記載の化合物が含まれる。
(ポリマーフィルムからなる光学異方性層)
上記した様に、光学異方性層はポリマーフィルムから形成してもよい。ポリマーフィルムは、光学異方性を発現し得るポリマーから形成する。そのようなポリマーの例には、ポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー)、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステルおよびセルロースエステル(例、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート)が含まれる。また、これらのポリマーの共重合体あるいはポリマー混合物を用いてもよい。
ポリマーフィルムの光学異方性は、延伸により得ることが好ましい。延伸は一軸延伸または二軸延伸であることが好ましい。具体的には、2つ以上のロールの周速差を利用した縦一軸延伸、またはポリマーフィルムの両サイドを掴んで幅方向に延伸するテンター延伸、これらを組み合わせての二軸延伸が好ましい。なお、二枚以上のポリマーフィルムを用いて、二枚以上のフィルム全体の光学的性質が前記の条件を満足してもよい。ポリマーフィルムは、複屈折のムラを少なくするためにソルベントキャスト法により製造することが好ましい。ポリマーフィルムの厚さは、20〜500μmであることが好ましく、40〜100μmであることが最も好ましい。
(一般的な液晶表示装置の構成)
セルロースアシレートフィルムを光学補償フィルムとして用いる場合は、偏光素子の透過軸と、セルロースアシレートフィルムからなる光学補償フィルムの遅相軸とをどのような角度で配置しても構わない。液晶表示装置は、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償シートを配置した構成を有している。
液晶セルの液晶層は、通常は、二枚の基板の間にスペーサを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セルには、さらにガスバリア層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層(下塗り層)を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板は、一般に50μm〜2mmの厚さを有する。
(液晶表示装置の種類)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることにより液晶表示装置などの画像表示装置に用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In-Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti-ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。本発明のセルロースアシレートフィルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。
(TNモード液晶表示装置)
TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献の記載が挙げられる。TNモードの黒表示における液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
(OCBモード液晶表示装置)
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている装置がが液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend) 液晶モードとも呼ばれる。
OCBモードの液晶セルもTNモード同様、黒表示においては、液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
(VAモード液晶表示装置)
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモード)の液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が挙げられる。
(IPSモード液晶表示装置)
IPSモードの液晶セルでは、液晶分子を基板に対して常に水平面内で回転させるモードで、電界無印加時には電極の長手方向に対して若干の角度を持つように配向されている。電界を印加すると電界方向に液晶分子は向きを変える。液晶セルを挟持する偏光板を所定角度に配置することで光透過率を変えることが可能となる。液晶分子としては、誘電率異方性Δεが正のネマチック液晶を用いる。液晶層の厚み(ギャップ)は、2.8μm超4.5μm未満とする。これは、レターデーションΔn・dは0.25μm超0.32μm未満の時、可視光の範囲内で波長依存性が殆どない透過率特性が得られる。偏光板の組み合わせにより、液晶分子がラビング方向から電界方向に45°回転したとき最大透過率を得ることができる。尚、液晶層の厚み(ギャップ)はポリマビーズで制御している。もちろんガラスビーズヤファイバー、樹脂製の柱状スペーサでも同様のギャップを得ることができる。また液晶分子は、ネマチック液晶であれば、特に限定したものではない。誘電率異方性Δεは、その値が大きいほうが、駆動電圧が低減でき、屈折率異方性Δnは小さいほうが液晶層の厚み(ギャップ)を厚くでき、液晶の封入時間が短縮され、かつギャップばらつきを少なくすることができる。
(その他の液晶表示装置)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al., SID 98 Digest 1089 (1998))に記載がある。
(ハードコートフイルム、防眩フィルム、反射防止フィルム)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、またハードコートフイルム、防眩フィルム、反射防止フィルムへの適用が好ましく実施できる。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、本発明のセルロースアシレートフィルムの片面または両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れかあるいは全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしては、以下のような態様が挙げられる。
反射防止膜は、一般に、防汚性層でもある低屈折率層、及び低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(即ち、高屈折率層、中屈折率層)とを透明基体である上記セルロースアシレートフィルム上に設けて成る。
屈折率の異なる無機化合物(金属酸化物等)の透明薄膜を積層させた多層膜として、化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、金属アルコキシド等の金属化合物のゾルゲル方法でコロイド状金属酸化物粒子皮膜を形成後に後処理(紫外線照射:特開平9−157855号公報、プラズマ処理:特開2002−327310号公報)して薄膜を形成する方法が挙げられる。
一方、生産性が高い反射防止膜として、無機粒子をマトリックスに分散されてなる薄膜を積層塗布してなる反射防止膜が各種提案されている。
上述したような塗布による反射防止フィルムに最上層表面が微細な凹凸の形状を有する防眩性を付与した反射防止層から成る反射防止フィルムも挙げられる。
[塗布型反射防止フィルムの層構成]
基体上に少なくとも中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層(最外層)の順序の層構成から成る反射防止膜は、以下の関係を満足する屈折率を有する様に設計される。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
また、透明支持体と中屈折率層の間に、ハードコート層を設けてもよい。更には、中屈折率ハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層からなってもよい。
例えば、特開平8−122504号公報、同8−110401号公報、同10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等が挙げられる。 又、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層としたもの(例、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等)等が挙げられる。
反射防止膜のヘイズは、5%以下あることが好ましく、3%以下がさらに好ましい。又膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
[高屈折率層および中屈折率層]
反射防止膜の高い屈折率を有する層は、平均粒径100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子及びマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化性膜から成る。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
特に好ましくは、Co、Zr、ALから選ばれる少なくとも1つの元素を含有する二酸化チタンを主成分とする無機微粒子(以降、「特定の酸化物」と称することもある)が挙げられる。 特に、好ましい元素はCoである。Tiに対する、Co、Al、Zrの総含有量は、Tiに対し0.05〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.2〜7質量%、特に好ましくは0.3〜5質量%、最も好ましくは0.5〜3質量%である。
Co、Al、Zrは、二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の内部、あるいはまた、表面に存在する。二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の内部に存在することがより好ましく、内部と表面の両方に存在することが最も好ましい。これらの特定の金属元素は、酸化物として存在しても良い。
又、他の好ましい無機粒子として、チタン元素と酸化物が屈折率1.95以上となる金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素(以下、「Met」とも略称する)との複合酸化物の粒子で、かつ該複合酸化物はCoイオン、Zrイオン、及びAlイオンから選ばれる金属イオンの少なくとも1種がドープされてなる無機微粒子(「特定の複酸化物」と称することもある)が挙げられる。ここで、該酸化物の屈折率が1.95以上となる金属酸化物の金属元素としては、Ta、Zr、In、Nd、Sb,Sn、及びBiが好ましい。特には、Ta、Zr、Sn、Biが好ましい。複合酸化物にドープされる金属イオンの含有量は、複合酸化物を構成する全金属[Ti+Met]量に対して、25質量%を越えない範囲で含有することが屈折率維持の観点から好ましい。より好ましくは0.05〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜5質量%、最も好ましくは0.3〜3質量%である。
ドープした金属イオンは、金属イオン、金属原子の何れのもので存在してもよく、複合酸化物の表面から内部まで適宜に存在する。表面と内部との両方に存在することが好ましい。
このような超微粒子とするには、粒子表面が表面処理剤で処理されること(例えば、シランカップリング剤等:特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908、アニオン性化合物或は有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とすること(:特開2001−166104、米国特許2003/0202137A1号公報等)、特定の分散剤併用(例、特開平11−153703号公報、特許番号US6210858B1、特開2002−2776069号公報等)等挙げられる。
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。
更に、ラジカル重合性及び/又はカチオン重合性の重合性基を少なくとも2個以上含有の多官能性化合物含有組成物、加水分解性基を含有の有機金属化合物及びその部分縮合体組成物から選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。例えば、特開2000−47004号公報、同2001−315242号公報、同2001−31871号公報、同2001−296401号公報等に記載の化合物が挙げられる。
また、金属アルコキドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載されている。
高屈折率層の屈折率は、−般に1.70〜2.20である。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。
[低屈折率層]
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層して成る。低屈折率層の屈折率は1.20〜1.55である。好ましくは1.30〜1.50である。
耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、従来公知のシリコーンの導入、フッ素の導入等から成る薄膜層の手段を適用できる。
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47である。また、含フッ素化合物はフッ素原子を35〜80質量%の範囲で含む架橋性若しくは重合性の官能基を含む化合物が好ましい。
例えば、特開平9−222503号公報明細書段落番号[0018]〜[0026]、同11−38202号公報明細書段落番号[0019]〜[0030]、特開2001-40284号公報明細書段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報、特開2004−45462号公報明細書等に記載の化合物が挙げられる。
シリコーン化合物としてはポリシロキサン構造を有する化合物であり、高分子鎖中に硬化性官能基あるいは重合性官能基を含有して、膜中で橋かけ構造をを有するものが好ましい。例えば、反応性シリコーン(例、サイラプレーン(チッソ(株)製等)、両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)等が挙げられる。
架橋又は重合性基を有する含フッ素及び/又はシロキサンのポリマーの架橋又は重合反応は、重合開始剤、増感剤等を含有する最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時または塗布後に光照射や加熱することにより実施することが好ましい。
また、シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化するゾルゲル硬化膜も好ましい。
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物またはその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、同58−147483号公報、同58−147484号公報、特開平9−157582号公報、同11−106704号公報記載等記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ「パーフルオロアルキルエーテル」基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、同2001−48590号公報、同2002−53804号公報記載の化合物等)等が挙げられる。
低屈折率層は、上記以外の添加剤として充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1〜150nmの低屈折率無機化合物を含有することが好ましい。
特に、上記低屈折率層はその屈折率上昇をより一層少なくするために、中空の無機微粒子を用いることが好ましい。中空の無機微粒子は屈折率が1.17〜1.40、好ましくは1.17〜1.37である。ここでの屈折率は粒子全体として屈折率を表し、中空の無機微粒子を形成している外殻のみの屈折率を表すものではない。
この時、粒子内の空腔の半径をa、粒子外殻の半径をbとすると、下記式(D)で表される空隙率w(%)は以下の通り計算される。
式(D) : w=(4πa3/3)/(4πb3/3)×100
空隙率は、好ましくは10〜60%、さらに好ましくは20〜60%である。
中空の無機微粒子をより低屈折率に、より空隙率を大きくしようとすると、外殻の厚みが薄くなり、粒子の強度が弱くなるため、耐擦傷性の観点から1.17未満とはできない。
該低屈折率層中の中空の無機微粒子の平均粒径は、該低屈折率層の厚みの30%以上100%以下であり、好ましくは35%以上80%以下である。即ち、低屈折率層の厚みが100nmであれば、無機微粒子の粒径は30nm以上100nm以下であり、好ましくは35nm以上80nm以下、更に好ましくは、40nm以上60nm以下である。
なお、これら中空の無機微粒子の屈折率はアッベ屈折率計(アタゴ(株)製)にて測定をおこなうことができる。
他の添加剤としては、特開平11−3820公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等)、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有することができる。
低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されても良い。安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
低屈折率層の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、60〜120nmであることがさらに好ましい。
[反射防止フィルムの他の層]
さらに、ハードコート層、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
(ハードコート層)
ハードコート層は、反射防止フィルムに物理強度を付与するために、透明支持体の表面に設ける。特に、透明支持体と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。
ハードコート層は、光及び/又は熱の硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。
硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、又加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。
これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したと同様のものが挙げられる。
ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、WO0/46617号公報等記載のものが挙げられる。
高屈折率層はハードコート層を兼ねることができる。このような場合、高屈折率層で記載した手法を用いて微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。
ハードコート層は、平均粒径0.2〜10μmの粒子を含有させて防眩機能(アンチグレア機能)を付与した防眩層(後述)を兼ねることもできる。
ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmである。
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。又、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
(前方散乱層)
前方散乱層は、液晶表示装置に適用した場合の、上下左右方向に視角を傾斜させたときの視野角改良効果を付与するために設ける。上記ハードコート層中に屈折率の異なる微粒子を分散することで、ハードコート機能と兼ねることもできる。
例えば、前方散乱係数を特定化した特開11−38208号公報、透明樹脂と微粒子の相対屈折率を特定範囲とした特開2000−199809号公報、ヘイズ値を40%以上と規定した特開2002−107512号公報等が挙げられる。
反射防止フィルムの各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート、マイクログラビア法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。
(アンチグレア機能)
反射防止膜は、外光を散乱させるアンチグレア機能を有していてもよい。アンチグレア機能は、反射防止膜の表面に凹凸を形成することにより得られる。反射防止膜がアンチグレア機能を有する場合、反射防止膜のヘイズは、3〜30%であることが好ましく、5〜20%であることがさらに好ましく、7〜20%であることが最も好ましい。
反射防止膜表面に凹凸を形成する方法は、これらの表面形状を充分に保持できる方法であればいずれの方法でも適用できる。
例えば、低屈折率層中に微粒子を使用して膜表面に凹凸を形成する方法(例えば、特開2000−271878号公報等)、低屈折率層の下層(高屈折率層、中屈折率層又はハードコート層)に比較的大きな粒子(粒径0.05〜2μm)を少量(0.1〜50質量%)添加して表面凹凸膜を形成し、その上にこれらの形状を維持して低屈折率層を設ける方法(例えば、特開2000−281410号公報、同2000−95893号公報、同2001−100004号公報、同2001−281407号公報等)、最上層(防汚性層)を塗設後の表面に物理的に凹凸形状を転写する方法(例えば、エンボス加工方法として、特開昭63−278839号公報、特開平11−183710号公報、特開2000−275401号公報等記載)等が挙げられる。
(透明基板)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、光学的異方性がゼロに近く、優れた透明性を持っていることから、液晶表示装置の液晶セルガラス基板の代替、すなわち駆動液晶を封入する透明基板としても用いることにより画像表示装置として用いることができる。
液晶を封入する透明基板はガスバリア性に優れる必要があることから、必要に応じて本発明のセルロースアシレートフィルムの表面にガスバリア層を設けてもよい。ガスバリア層の形態や材質は特に限定されないが、本発明のセルロースアシレートフィルムの少なくとも片面にSiO2等を蒸着したり、あるいは塩化ビニリデン系ポリマーやビニルアルコール系ポリマーなど相対的にガスバリア性の高いポリマーのコート層を設ける方法が考えられ、これらを適宜使用できる。
また液晶を封入する透明基板として用いるには、電圧印加によって液晶を駆動するための透明電極を設けてもよい。透明電極としては特に限定されないが、本発明のセルロースアシレートフィルムの少なくとも片面に、金属膜、金属酸化物膜などを積層することによって透明電極を設けることができる。中でも透明性、導電性、機械的特性の点から、金属酸化物膜が好ましく、なかでも酸化スズを主として酸化亜鉛を2〜15%含む酸化インジウムの薄膜が好ましく使用できる。これら技術の詳細は例えば、特開2001−125079や特開2000−227603などに公開されている。
以下に本発明の実施例を例示するが、本発明の内容はこれらに限定されるものではない。
<多分岐状化合物の合成>
多分岐状化合物(PB)の合成例1:多分岐状化合物(PB−1)
1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸0.1モルををフラスコに仕込み、攪拌下に窒素置換しながら温度120℃に加温した。これに、5−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン−1,3−ジカルボン酸0.9モル及びメタンスルホン酸1.2gを投入し、発生する水を除去しながら温度140℃で2時間反応させた。更に、減圧度15mmHgで減圧しながら30分間反応させた。次に、シクロヘキシルメタノール1.2モルを加えて3時間反応した。反応物を冷却し、メチレンクロライドに溶解してアルカリ水で洗浄、1%塩酸水溶液で洗浄した後十分に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。メチレンクロライドを留去して下記多分岐状化合物(PB−1)を得た。
Figure 2005314613
多分岐状化合物(PB)の合成例2:多分岐状化合物(PB―2)
1,3,5−ベンゼントリカルボン酸0.1モルをフラスコに仕込み、攪拌下に窒素置換しながら温度120℃に加温した。これに、5−(2−ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサンー1,3−ジカルボン酸0.8モル及びp−トルエンスルホン酸0.01モルを投入し、発生する水を除去しながら温度140℃で2時間反応させた。更に、減圧度15mmHgで減圧しながら1時間反応させた。次に、反応物を冷却し、チオニルクロライド2.0モルを加えて4時間反応した後、反応物から残ったチオニルクライドを留去した。30質量%となるようにアセトンを加えた後、温度0℃に冷却し、エタノール2.0モルとトリエチルアミン1.5モルを同時に30分間で滴下しさらに4時間反応した。反応物を水中に投入し、メチレンクロライドで抽出してアルカリ水で十分に洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。メチレンクロライドを留去して下記多分岐状化合物(PB−2)を得た。
Figure 2005314613
多分岐状化合物(PB)の合成例3〜8:多分岐状化合物(PB―3)〜(PB―9)
多分岐状化合物(PB)の合成例2において、連鎖停止化合物のエタノールの代わりに、下記表1の置換基に相当するアルコール若しくはアミン化合物を用いた他は高分岐状化合物(PB)の合成例2と同様にして各化合物を合成した。
Figure 2005314613
多分岐状化合物(PB)の合成例10〜15:多分岐状化合物(PB−10)〜(PB−15)
高分岐状化合物(PB)の合成例1と同様の方法で、下記表2に記載の開始化合物(ポリカルボン酸)0.1モル、及び連鎖延長剤を用いて各多分岐状化合物を合成した。
Figure 2005314613
実施例1、比較例1 及び比較例2
{セルロースアシレートフィルムの製造}
<微粒子分散液(RL−1)の調製>
下記の組成からなる混合物及びビーズ径0.2mmのジルコニアビーズを、ダイノミル分散機で投入し湿式分散して体積平均粒径55nmになるよう分散を行った。得られた分散物を200メッシュのナイロン布でビーズを分離して、微粒子分散液(RL−1)を調製した。
得られた分散物の分散粒子径は、走査型電子顕微鏡で測定した。また、分散物の粒度分布を測定した(レーザー解析・散乱粒子径分布測定装置LA−920.堀場製作所製)結果、粒径300nm以上の粒子は0%であった。
(組成)
疎水性シリカ(「AEROSIL(登録商標)972(メチル基変性体、一次粒径16nm: 日本アエロジル(株)) 2.20質量部
置換度2.85(6位置換度0.90)のセルローストリアセテート
2.00質量部
下記構造の分散助剤(B) 0.22質量部
メチレンクロライド 78.70質量部
メタノール 14.20質量部
1−ブタノール 2.86質量部
Figure 2005314613
<セルロースアシレート溶液の調製>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱撹拌して、セルロースアシレート溶液を調製した。
(セルロースアシレート溶液の組成物)
置換度2.85(6位置換度0.90)のセルローストリアセテート 100質量部
下記構造の可塑剤(K−1) 3.5質量部
下記構造の可塑剤(K−2) 3.5質量部
高分岐状化合物(PB−1) 5.0質量部
下記構造のUV剤(UV−1) 1.0質量部
下記構造のUV剤(UV−2) 1.0質量部
メチレンクロライド 300質量部
メタノール 54質量部
1−ブタノール 11質量部
Figure 2005314613
<溶液調製工程>
セルロースアシレート溶液464質量部に微粒子分散物10.5質量部を加えて十分に攪拌混合し室温(25℃)にて3時間放置し、得られた不均一なゲル状溶液を−70℃にて6時間冷却した後、50℃に加温・攪拌してセルロースアシレートが完全に溶解したドープを得た。
次に得られたドープを50℃にて、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)で濾過し、さらに絶対濾過精度0.0025mmの濾紙(ポール社製、FH025)にてフィルター濾過及び脱泡を行ってドープを調製した。
<製膜工程>
次に得られたドープを50℃にて、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)で濾過し、さらに絶対濾過精度0.0025mmの濾紙(ポール社製、FH025)にてフィルター濾過及び脱泡を行ってドープを調製した。得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。
流延バンドとしては、ステンレススチールからなり、幅2m、長さ56m(面積112m2)からなるものを用いた。この流延バンドの中心線平均粗さ(Ra)は0.004μmで、最大高さ(Ry)は0.06μmであり、又十点平均粗さ(Rz)は0.008μmであった。中心線平均粗さ(Ra)、最大高さ(Ry)、十点平均粗さ(Rz)の各測定は、JIS B 0601に規定によった。
流延されたドープは、流延直後の1秒間は風速0.5m/s以下で乾燥し、それ以降は風速15m/sで乾燥した。乾燥風の温度は50℃であった。
バンド上での膜面温度が40℃となってから、1分乾燥し、剥ぎ取った後、乾燥風の温度は120℃であり、このときのフィルムの幅方向の温度分布は5℃以下であり、乾燥の平均風速は5m/s、伝熱係数の平均値は25kcal/m2・Hr・℃であり、フィルムの幅方向分布はいずれも5%以内であった。また乾燥ゾーン中におけるピンテンター担持部分は遮風装置により乾燥熱風が直接当らないようにした。
<延伸工程>
残留溶剤量が15質量%のフィルムの状態で、130℃の条件で、テンターを用いて25%の延伸倍率で横延伸し、延伸後の幅のまま50℃で30秒間保持した後クリップを外して巻取りを行った。剥ぎ取りより巻取りまでの間で蒸発した溶剤のトータル量の97%であった。乾燥したフィルムは、さらにローラーで搬送しつつ乾燥させる乾燥工程において145℃の乾燥風により乾燥した後、湿度、温度を調整して巻取り時の残留溶剤量0.36質量%、水分量0.7質量%で巻取り、厚さ80μmのセルロースアシレートフィルム(CA−1)を製造した。膜厚の変動幅は±2.2%であった。幅方向のカール値は-0.2/mであった。また、フィルムの表面凹凸形状は以下のようになった。
Ra:0.002μm、Ry:0.088μm、Sm:0.18μm
(比較例1)
実施例1において、高分岐状化合物(PB−1)を除いた他は実施例1と同様にして、残留溶剤量0.37質量%、水分量0.6質量%で、厚さ80μmのセルロースアシレートフィルム(CAR−1)を製造した。
(比較例2)
実施例1において、高分岐状化合物(PB−1)の代わりに下記の多エステル化合物を同量用いた他は実施例1と同様にして、残留溶剤量0.37質量%、水分量0.6質量%で、厚さ80μmのセルロースアシレートフィルム(CAR−1)を製造した。
Figure 2005314613
<偏光子の作製>
PVAフィルムをヨウ素2.0g/L、ヨウ化カリウム4.0g/Lの水溶液に25℃にて240秒浸漬し、さらにホウ酸10g/Lの水溶液に25℃にて60秒浸漬後、テンター延伸機に導入し、5.3倍に延伸し、以降幅を一定に保ち、収縮させながら80℃雰囲気で乾燥させた後テンターから離脱して巻き取った。延伸開始前のPVAフィルムの含水率は31%で、乾燥後の含水率は1.5%であった。
左右のテンタークリップの搬送速度差は、0.05%未満であった。テンター出口におけるシワ、フィルム変形は観察されなかった。
得られた偏光子の550nmにおける透過率43.7%、偏光度は99.97%であった。
<偏光板(H)の作製>
上記の各製膜したセルロースアシレートフィルムを、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度40℃に昇温した後に、下記に示す組成のアルカリ溶液(S−1)をロッドコーターを用いて塗布量10cc/m2で塗布し、110℃に加熱した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に8秒滞留させた後に、同じくロッドコーターを用いて純水を3.5cc/m2塗布した。この時のフィルム温度は40℃であった。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に70℃の乾燥ゾーンに5秒間滞留させて乾燥した。
(アルカリ溶液(S−1)組成)
水酸化カリウム 8.55質量部
水 23.24質量部
イソプロパノール 54.20質量部
界面活性剤(K−1:C1429O(CH2CH2O)20H) 1.0質量部
プロピレングリコール 13.0質量部
消泡剤サーフィノールDF110D(日信化学工業(株)製) 0.015質量部
乾燥後それぞれのセルロースアシレートフィルムのアルカリ鹸化処理した側にポリビニルアルコール系粘着剤を約30μmの厚みに塗布し、上記偏光子の両側に貼り合わせ、さらに80℃で乾燥して偏光板(H−1;実施例1)、(HR−1;比較例1)及び(HR−2;比較例2)を作成した。
<結果>
上記の得られたセルロースアシレートフィルム及び偏光板の性能試験を行った。その結果を表3に示す。
表3記載の評価項目の評価方法は以下の通りにして行った。
1)ヘイズ
セルロースアシレートフィルムのヘイズは、日本電色工業(株)製、1001DP型を用いて、90℃/80%の高温高湿下で500時間保管しその後で調べた。
2)レターデーションの波長分散依存性
(25℃/60%RH)の条件に2時間放置して調湿した後、測定波長400nmと測定波長700nmでそれぞれReとRthを求めた。以下のようにして、ΔRe及びΔRthを算出した。
・ΔRe(nm)= |Re(400) − Re(700)|
・ΔRth(nm)=|ΔRth(400) − Rth(700)|
3)透湿度
前記した方法で、(60℃/95%RH)の条件で測定し、フィルム膜厚80μmに換算した。
4)引裂き強度
セルロースアシレートフィルムの引裂き強度は、東洋精機製作所製軽過重引裂き強度試験器を用い、ISO6383/2−1983に従って引裂きに要する過重を評価した。90℃/80%の高温高湿下で500時間保管しその後で調べた。試料サイズは50mm×64mm、25℃60%RHで2時間調整した後に実施した。
尚、評価は、以下の基準に従った。
◎ 過重600g/mm以上、
○ 過重400g/mm以上、
△ 過重200g/mm以上、
× 過重150g/mm以下
5)折れ曲げ性
ISO8776に準じて、東洋精機製耐折試験機を用いて測定した。測定は1水準につき試料の長手方向、幅方向でそれぞれ10回行い、その平均値を求めた。これを試料の厚みから次式を用いて100μm厚みの値に換算した。
100μm換算の耐折強度(回)=実測耐折強度(回)×(厚み(μm)/100)4
評価は、以下の基準に従った。
◎ 400回以上、
○ 200回以上、
△ 100回以上、
× 80回以下
6)フィルムの耐久性(異物・汚れ)
試料フィルムを(50℃/80%RH)の条件下に125時間曝した後で調べた。そのフィルムから全幅で長手方向に1mの長さに切り出し、この試料にシャーカステン上で光を透過させながらルーペで異物・汚れの有無及び大きさを観察し、下記グレードで評価した。
◎:50μm以上の大きさの異物、汚れはなく、50μm未満のものが10個未満観察された。
○:50μm以上の大きさの異物、汚れはなく、50μm未満のものが、10〜30個観察された。
△:50μm以上の大きさの異物、汚れが1〜10個未満、50μm以下のものが31〜50個観察された。
×:50μm以上の大きさの異物、汚れが10個以上、50μm以下のものが51個以上観察された。
7)アルカリ処理後面状
試料フィルムを、1モル/L水酸化ナトリウム液中に40℃で2分間放置した。その後、水洗して70℃で10分間乾燥した。フィルム表面の状態を、目視で下記三段階に評価した。
○:変化が見られない
△:全面が少し白くなったが、透明である
×:全面が白く変化して不透明である
8)偏光板の保存性
偏光板について先ず平行透過率と直行透過率を測定し、下記式にしたがって偏光度を算出した。その後各々の偏光板を60℃90%の条件下で580時間の強制劣化後、再度平行透過率と直行透過率を測定し、下記式に従って偏光度を算出した。偏光度変化量を下記式により求めた。
偏光度P=((H0−H90)/(H0+H90))1/2×100
偏光度変化量=P0−P580
0 :平行透過率、 H90 :直行透過率、
0 :強制劣化前の偏光度、
500:強制劣化580時間後の偏光度
○:偏光度変化率10%未満
△:偏光度変化率10%以上25%未満
×:偏光度変化率25%以上。
9)偏光板の耐久性
偏光板から150mm×150mmの大きさの試料を2枚切り出し、(50℃/80%RH)の条件下に150時間曝し、クロスニコルにより偏光板の縁に発生する白抜けの面積を全体の面積に対する面積比として観察して、下記のグレードで評価した。
◎:白抜け部分が全くなかった。
○:白抜けが全体の面積に対して2%未満。
○〜△:白抜け部分が全体の面積に対して2%以上6%未満。
△:白抜け部分が全体の面積に対して5%以上10%未満。
×:白抜け部分が全体の面積に対して10%以上あった。
Figure 2005314613
実施例1のフィルムは、高温高湿下保存後の試料においてもヘイズ、引裂き強度及び面状(異物、汚れ等の発生の有無)ともに良好であった。又、フィルムの折れ曲げ性も良好で優れた耐脆性を示した。更に、偏光板作製工程でのアルカリ鹸化処理後のフィルム表面の面状が良好で作製した偏光板の高温・高湿下で保存後の試料は経時前の変わらない良好な性能を示した。
一方、比較例1は、高温高湿下で保存後の各特性が低下した。又、偏光板も経時によって偏光性の変化、白抜け発生等の低下を生じた。比較例2も高温高湿下で保存後の各特性が低下し、実用に供し得るものではなかった。
以上の様に、本発明の態様のみが良好な性能を示した。
実施例102〜109
実施例1において、セルロースアシレート組成物中の高分岐状化合物(PB−1)の代わりに、表4記載の各化合物を用いた他は実施例1と同様にして膜厚80μmの各セルロースアシレートフィルム及び偏光板を製膜した。得られたフィルム(CA−2)〜(CA−9)の残留溶剤量0.33〜0.38質量%、水分量0.4〜0.7質量%の範囲であった。膜厚の変動幅は±2.2%〜±2.4幅方向のカール値は−0.3〜+0.6mであった。
また、各フィルムの表面凹凸形状は以下の様な範囲内であった。
Ra:0.0025〜0.0045μm、
Ry:0.08〜0.09μm、
Sm:0.18〜0.22μm
得られたフィルム(CA)及び偏光板(H)の各々の性能を実施例1と同様にして評価した結果、いずれも実施例1と同等の良好な結果が得られた。
Figure 2005314613
実施例2
<微粒子分散液の調製>
下記の組成からなる溶液を調製し、アトライターにて体積平均粒径80nmになるよう分散を行った。得られた分散物の粒度分布は、粒径500nm以上の粒子は0%であった。
(微粒子分散物(RL−2)組成)
疎水性シリカ(商品名「AEROSIL972」メチル基変性体、一次粒径16nm:日本アエロジル(株)) 2.20質量部
置換度2.70のセルロースアセテートプロピオネート(アセテート/プロピオネート比1/0.4) 2.00質量部
モノドデシルフォスフェート(微粒子化分散助剤) 0.22質量部
ビフェニルジフェニルフォスフェート 0.20質量部
酢酸メチル 71.0質量部
メタノール 6.2質量部
アセトン 6.1質量部
エタノール 6.1質量部
1−ブタノール 6.1質量部
<セルロースアシレート溶液の調製>
下記内容の組成物を攪拌溶解して、セルロースアシレート溶液を調製した。
(組成物)
置換度2.70のセルロースアセテートプロピオネート(アセテート/プロピ オネート比1/0.4) 100質量部
下記の可塑剤(K−3) 2.5質量部
下記の可塑剤(K−4) 2.5質量部
高分岐状化合物(PB−2) 8.0質量部
下記のUV剤(UV−3) 0.5質量部
下記のUV剤(UV−4) 0.3質量部
酢酸メチル 290質量部
メタノール 25質量部
アセトン 25質量部
エタノール 25質量部
1−ブタノール 25質量部
Figure 2005314613
下記に示す組成物を加熱撹拌して、レターデーション調整剤溶液を調製した。
(レターデーション調整剤溶液の組成物)
2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン 12質量部
2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン 4質量部
メチレンクロライド 82.2質量部
メタノール 14.8質量部
1−ブタノール 3.0質量部
セルロースアシレート溶液474質量部に微粒子分散液15.3質量部を添加して充分に攪拌した後、レターデーション調整剤溶液22質量部を添加し、十分に撹拌して更に室温(25℃)にて3時間放置し、得られた不均一なゲル状溶液を、−70℃にて6時間冷却した後、50℃に加温・攪拌して完全に溶解したドープを得た。
次に得られたドープを50℃にて、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)で濾過し、さらに絶対濾過精度0.0025mmの濾紙(ポール社製、FH025)にてフィルター濾過及び脱泡を行ってドープを調製した。
ドラムはハードクロム鍍金を施しその表面は中心線平均粗さ(Ra)が0.010μm、最大高さ(Ry)が0.60μmであり、又十点平均粗さ(Rz)は0.016μmとした、直径200mm、幅2500mmのものを用いた。
流延方法は実施例1記載のバンド流延と同様の条件で行った。ドラム面上での膜面温度が40℃となってから、1分乾燥し、残留溶剤量が50質量%のフィルムを剥ぎ取った後、140℃の乾燥風で、残留溶剤量が40質量%のフィルムを、テンターを用いて幅方向に17%延伸し、延伸後の幅のまま130℃で30秒間保持した。この後、130℃の乾燥風で20分間乾燥し、残留溶剤量が0.25質量%のセルロースアシレートフィルム(CA−10)を、厚さ60μm、長さ1000m、幅1.34mの巻きロール形態で製造した。得られた長尺ロールのセルロースアシレートフィルム(CA−10)の膜厚変動幅は 2.5%で、カール値は0.3/mであり、フィルムの表面凹凸形状は以下のようになった。
Ra:0.002μm、Ry:0.082μm、Sm:0.20μm
得られたフィルムの特性を実施例1と同様にして評価した。その結果を、表5に示す。
得られたセルロースアシレートフィルム(CA−10)の波長550nmにおけるレターデーション値(Re)は5nm、波長550nmにおけるレターデーション値(Rth)は48nmであった。
レターデーション値は、エリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用い、波長550nmにおけるReレターデーション値(Re550)およびRthレターデーション値(Rth550)を測定した。
(比較例3)
実施例2において、セルロースアシレート組成物中の高分岐状化合物(PB−2)の代わりに、下記構造の多エステル化合物を同量用いた他は実施例2と同様にしてセルロースアシレートフィルム(CAR−3)を製膜した。
Figure 2005314613
<アルカリ鹸化処理>
得られた各フィルム試料の片面について、以下のアルカリ鹸化処理を行った。
フィルムの上に、100℃の熱風を衝突させ、45℃まで加熱した後に、25℃に保温した下記内容のアルカリ溶液(S−2)をロッドコーターを用いて10cc/m2 塗布し、8秒間経過後、再びロッドコーターを用いて純水を5cc/m2 塗布した。この時のフィルム温度は45℃であった。次いで、エクストルージョン型コーターを用いて1000cc/m2 の純水を塗布し、水洗を行い、5秒間経過後に100m/秒の風をエアナイフより水塗布面に衝突させた。このエクストルージョンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを2回繰り返した後に80℃の乾燥ゾーンに10秒間滞留させて乾燥した。
(アルカリ溶液(S−2)組成)
水酸化ナトリウム 4.0質量部
水 62.0質量部
n−プロパノール 33.0質量部
エチレングリコール 8.5質量部
界面活性剤(K−2:エチレンジアミンエチレンオキシド付加物) 1.0質量部
消泡剤サーフィノール104(日信化学工業(株)製) 0.01質量部
得られた各フィルムを実施例1と同様にして各性能を評価した。その結果を表5に示す。
Figure 2005314613
実施例2のセルロースアシレートフィルム(CA−10)は、実施例1と同等の良好な性能を示した。比較例3のセルロースアシレートフィルム(CAR−3)は、高湿条件での経時後の性能が低下した。
また、本発明の実施例2のセルロースアシレートフィルム(CA−10)は、1平方メートルの面内おいて水との接触角は32度であり、面内のバラツキが見られない均一な処理であった。面状もフィルム全面において異物や濁りの発生は認められなかった。
<配向膜の形成>
この親水化表面処理した各フィルム上に、下記の組成の配向膜塗布液をロッドコーターで28ml/m2の塗布量で塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。
次に、親水化表面処理した各フィルムの長手方向にラビング処理を実施した。
(配向膜塗布液)
下記変性ポリビニルアルコール 20質量部
クエン酸 0.06質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
水 360質量部
メタノール 120質量部
Figure 2005314613
<配向膜の密着性の評価法>
配向膜層表面に、JIS K−5400の碁盤目テープ法に準拠し、規定のカッターナイフ、カッターガイドを用いて1mm×1mmのクロスハッチ(升目)を100個入れ、温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間放置した後、規定のセロハン粘着テープをはりつけ消しゴムでこすって塗膜に付着する。テープを付着後2分後に塗面に直角方向に引き剥がしたときに配向膜が透明支持体から剥がれた升目の数を計測することで評価した。
◎:100升において剥がれが全く認められなかったもの
○:100升において剥がれが認められたものが2升以内のもの
△:100升において剥がれが認められたものが10〜3升のもの
×:100升において剥がれが認められたものが10升をこえたもの
<光学異方性層の形成>
下記の組成のディスコティック液晶塗布液(DA−1)を#4のワイヤーバーコーターで塗布し、125℃の高温槽中で3分間加熱し、ディスコティック液晶を配向させた後、高圧水銀灯を用いてUVを500mJ/cm2照射し、室温まで放冷して、表6に記載の各光学補償シートを作成した。各フィルムの光学異方性層の厚さは、各々1.6μmであった。
(ディスコティック液晶塗布液(DA−1))
下記のディスコティック液晶DLC−A 9.1質量部
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)) 0.9質量部
セルロースアセテートブチレート(CAB551−0.2 イーストマンケミカル)
0.2質量部
セルロースアセテートブチレート(CAB531−1 イ−ストマンケミカル)
0.05質量部
下記構造の含フッ素化合物 1.3質量部
イルガキュアー907、 3.0質量部
カヤキュアーDETX(日本化薬(株)製) 0.1質量部
メチルエチルケトン 29.6質量部
Figure 2005314613
<光学補償シートの性能評価法>
(密着性)
下記表6記載の光学補償シート(KS−1)及び(KSR−1)を、アクリル系接着剤を用いてガラス板に貼りつけ、80℃/90%RHの条件下で15時間保存した。アクリル系接着剤は液晶表示装置の組み立てに、ガラス板は液晶セルに用いられるものと同じである。ガラス板から光学補償シートを垂直方向に剥がして、剥離残りが生じた部分を調べることで、密着性を評価した。
◎ :全く発生しない(10人が評価し、1人も認識できないレベル)
○ :わずかに発生する(10人が評価し、1〜3人が認識するレベル)
△ :弱く発生する(10人が評価し、3〜5人が認識するレベル)
× :強く発生する(10人が評価し、6人以上が認識するレベル)
(透過光ムラ)
各光学補償シートを、クロスニコルス配置した2枚の偏光板の間に挟み、透過光のムラを目視で観察し官能評価を行った。
○ :全く発生しない(10人が評価し、1人も認識できないレベル)
△ :弱く発生する(10人が評価し、1〜5人が認識するレベル)
× :強く発生する(10人が評価し、6人以上が認識するレベル)
これらの結果を表7に示す。本発明の光学補償シート(KS−1)は密着性が充分であり、且つ透過光ムラが見られない極めて良好なものであった。
<偏光板の作製>
上記の光学補償フィルムにおいて、光学補償層を有する側とは反対側の表面を実施例2の条件でアルカリ鹸化処理した。
実施例1で作製した偏光板(H−1)の一方の面を上記と同様にしてアルカリ鹸化処理し、この処理した表面にポリビニルアルコール系接着剤を用いて、鹸化処理した光学補償フィルムのセルロースアシレート面を貼り合わせて、偏光板(SHB)を作製した。対応表を表6に示す。
偏光板の保存性、耐久性の評価を実施例1と同様に行った。結果を表7に示す。
Figure 2005314613
<液晶表示装置の作成>
TN型液晶セルで20インチの液晶表示装置(TH−20TA3型、松下電器(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに上記に作製した各偏光板を、実施例2で作製した光学補償シートが液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸と、バックライト側の偏光板の透過軸とは、Oモードとなるように配置した。
(描画画像のムラ評価)
このようにして作製した液晶表示装置について、測定機(EZ-Contrast 160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)時の画像ムラを目視で観察した。その結果を表7に示す。
○ :全く発生しない(10人が評価し、1人も認識できないレベル)
△ :弱く発生する(10人が評価し、1〜5人が認識するレベル)
× :強く発生する(10人が評価し、6人以上が認識するレベル)
(描画画像の黒表示均一性)
液晶表示装置の液晶セルに、白表示電圧2V、黒表示電圧6Vを印加し、測定機(EZ-Contrast 160D、ELDIM社製)を用いて、正面からの方位角方向45度、極角方向70度における黒表示時の光漏れ性を調べ、下記の基準で評価した。
◎:全く気にならない
○:変化はあるが殆ど気にならない
△:変化は気になるが、許容できる
×:変化が気になる
(描画画像の色味ムラ評価)
このようにして作製した液晶表示装置について、測定機(EZ-Contrast 160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)時の色味変化を目視で観察した。その結果を表7に示す。
◎:全く認められない(10人が評価し、1人も認識できないレベル)
○:僅かに認められる(10人が評価し、1〜2人が認識するレベル)
△:弱く認められる(10人が評価し、3〜5人が認識するレベル)
×:強く発生する(10人が評価し、6人以上が認識するレベル)
(描画画像のコントラスト及び視野角)
液晶表示装置の液晶セルに、白表示電圧2V、黒表示電圧6Vを印加し、測定機(EZ-Contrast 160D、ELDIM社製)を用いて、正面コントラスト比を測定した。さらに左右方向(セルのラビング方向と直交方向)の視野角(コントラスト比が10以上となる角度範囲)を調べた。その結果を表7に示す。
Figure 2005314613
上記の通り、上記の本発明の方法によるセルロースアシレートフィルム(KS−1)が偏光板となるように設置したものは、高湿保存後でも何れも画面全面が曇りの無い鮮明で高い輝度の画像であり且つコントラスト及び視野角の優れた描画画像が得られた。一方、比較用フィルム(KSR−1)は、画面全面にわたりムラが見られ実用に供するには問題となるものであった。
以上の目視観察結果より、本発明のセルロースアシレートフィルムを用いたものは、良好な光学特性を有し、且つそれを付設した液晶画像装置は優れた描画性を有することが示された。
実施例202〜204
実施例2において、高分岐状化合物(PB)の代わりに下記表8の各化合物を用いた他は実施例2と同様にして、支持体フィルム、及び光学補償シートを作製した。得られた各フィルムの性能は実施例2と同等以上であり、良好なものであった。
Figure 2005314613
実施例3
{セルロースアシレートフィルムの作製}
<セルロースアセテート溶液の調製>
表9に示す組成のセルロースアセテート原液溶液(元ドープ液)調製した。溶解はミキシングタンクに原料を投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解した。
Figure 2005314613
Figure 2005314613
<レターデーション調整剤溶液の調製>
下記構造レターデーション調整剤16質量部、酢酸メチル70.3質量部、メタノール5.5質量部、アセトン5.5質量部、n−ブタノール2.7質量部を別のミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション調整剤溶液を調製した。
Figure 2005314613
<内層用及び外層用セルロースアセテートドープ溶液の調製>
下記表10に示す組成物を、元ドープ液にレターデーション剤溶液、更に微粒子分散液(RL−1)の順序で攪拌下にミキシングタンクに投入、攪拌、混合し、内層用、外層用セルロースアセテートドープ液を調製した。セルロースアセテート100質量部に対するレターデーション調整剤及び微粒子分散物の各添加量は、表10に示す。
得られたドープを50℃にて、絶対濾過精度0.01mmのフィルター(東洋濾紙(株)製、#63)および絶対濾過精度0.0025mmのフィルター(ポール社製、FH025)にてろ過した。
Figure 2005314613
3層共流延ダイを用いて、ろ過したドープを内層用ドープが内側に外層用ドープが両外側になるように配置してバンド流延機を用いて重層流延した。バンド流延機は実施例1と同様のものを用いた。内層厚み48μm、両外層厚みが6μmとなるようにドープ吐出量を調整し、流延・乾燥の条件は実施例1と同様にし、テンターを用いての延伸倍率を16%で横延伸し、延伸後の幅のまま130℃で30秒間保持し、長さ3000m、幅1.2mの巻きロール形態のセルロースアシレートフィルム(CA−17)を作製した。Reは21nm、Rthは73nmであった。
<セルロースアシレートフィルムの特性>
得られたセルロースアシレートフィルムの各特性を評価した。その結果を表11に示す。
また、得られたセルロースアシレートフィルムを用いて実施例2と同様にして偏光板を作成した。得られた偏光板について実施例2と同様にして評価した。その結果を表11に示す。
Figure 2005314613
<セルロースアシレートフィルムのケン化処理>
上記のセルロースアシレートフィルム(CA−17)の内面側表面上に、1.0モル/リットルの水酸化カリウム溶液(溶剤:イソプロピルアルコール/プロピレングリコール/水=75/13/12質量%)を#6バーで塗布し、40℃で10秒間加熱した後、濡れたままの塗布面に#1.6バーで水を塗布し、すぐに25℃の洗浄水500cc/m2をノズルから吹き付け、エアナイフでフィルム表面の洗浄水を吹き飛ばす処理を三回連続して行い、100℃の温風で乾燥して、表面が鹸化されたセルロースアシレートフィルムを作製した。
<配向膜の形成>
鹸化処理済セルロースアシレートフィルムの片面に、下記処方の配向膜塗布液を、#14のワイヤーバーコーターで塗布し、60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で160秒乾燥して、配向膜を設けた長尺ロール状のセルロースアシレートフィルムを作製した。次に、上述の配向膜を設けた長尺ロール状のセルロースアシレートフィルムの遅相軸方向となす角度が45゜となる方向にラビング処理を実施した。
(配向膜塗布液処方)
下記の変性ポリビニルアルコール 19質量部
下記構造の酸化合物A 0.06質量部
水 360質量部
メタノール 120質量部
グルタルアルデヒド 1質量部
Figure 2005314613
<光学補償シートの作製>
上述の長尺ロール状セルロースアセテートフイルムの配向膜上に、実施例2の光学異方性層用塗布液を実施例2と同様にして塗設して、光学異方性層を有する光学補償シートを作製した。
得られたシートの性能を実施例2と同様にして調べた所、実施例2の光学補償シートと同等の良好な性能が得られた。
<偏光板保護フィルムの作製>
<反射防止フィルムの作製>
光拡散層を構成する透光性樹脂は、紫外線硬化型樹脂(日本化薬製PETA、屈折率1.51)を50部とし、硬化開始剤(チバガイギー社製、イルガキュアー184)を2重量部、第1の透光性微粒子としては、アクリル−スチレンビーズ(総研化学製、粒径3.5μm、屈折率1.55)を5重量部、第2の透光性微粒子としては、スチレンビーズ(総研化学製、粒径3.5μm、屈折率1.60)を5.2重量部、シランカップリング剤KBM−5103(信越化学工業製)を10質量部、下記のフッ素系ポリマー(f1)を0.03質量部、これらをトルエン50重量部と混合して塗工液として調整したものを、実施例1の偏光板(H−1)の片面側上に、乾燥膜厚6.0μmになるようにグラビアコーターで塗工、溶剤乾燥後、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量300mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させた。
Figure 2005314613
上記の光拡散層上に、下記処方の低屈折率層塗布液を攪拌、調製し、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過した後にグラビアコーターで塗布し、80℃で5分乾燥後、120℃で10分間加熱してポリマーを架橋させ、厚さ0.1μmの低屈折率層を形成し、偏光板保護フィルム(反射防止フィルム付き偏光板)を作製した。
(低屈折率層塗布液処方)
屈折率1.42の熱架橋性含フッ素ポリマー(JTA113、固形分濃度6%、JSR(株)製)130質量部、シリカゾル(シリカ、MEK−ST、平均粒径15nm、固形分濃度30%、日産化学(株)製)5質量部、中空シリカ(CS60−IPA、平均粒径60nm、シェル層厚10nm、屈折率 1.31、イソプロパノール20質量%分散液、触媒化成(株)製)15質量部、上記のゾル液a 6質量部、メチルエチルケトン50質量部、およびシクロヘキサノン60質量部を添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液(LL−2)を調製した。
<ゾル液aの調製>
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器、メチルエチルケトン120部、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM5103、信越化学工業(株)製)100部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート3部を加え混合したのち、イオン交換水30部を加え、60℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ゾル液aを得た。質量平均分子量は1600であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
<偏光板(SHB)の作製>
この偏光板保護フィルムと、上記の通り作製した光学異方性層を有する光学補償シートとを液温度が55℃の1.5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液中に1分間浸漬してセルロースアシレートフィルム表面を鹸化した後、希硫酸および水で十分洗浄し、乾燥後それぞれのセルロースアシレートフィルム表面側にポリビニルアルコール系粘着剤を約15μmの厚みに塗布し、上記フィルム同志を貼り合わせさらに80℃で乾燥して偏光板(H−2)を作製した。
<ベンド配向液晶セルの作製>
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。得られた二枚のガラス基板をラビング方向が平行となる配置で向かい合わせ、セルギャップを6μmに設定した。セルギャップにΔn(波長550nm)が0.1396の液晶性化合物(ZLI1132、メルク社製)を注入し、ベンド配向液晶セルを作製した。
<OCBモード透過型液晶表示装置の作製>
作製したベンド配向セルを挟むように、作製した偏光板(H−2)の光学異方性層上にアクリル系粘着剤をつけ、液晶セルのラビング方向と光学補償シートのラビング方向とが反平行となる様にして貼り合せ、ベンド配向モードの透過型液晶表示装置を作製した。
この液晶表示装置の液晶セルに、白表示電圧2V、黒表示電圧6Vを印加し、測定機(EZ-Contrast 160D、ELDIM社製)を用いて、正面コントラスト比を測定した。さらに左右方向(セルのラビング方向と直交方向)の視野角(コントラスト比が10以上となる角度範囲)を調べた。
本発明の液晶表示装置は黒表示均一性及び色味均一性が良好で、良好な正面コントラストと広い視野角を有している。加えて、防眩性良好な表面に曇りや異物のない優れた表示品位の液晶表示装置であることが確認された。
実施例4〜5
実施例3においてOCBモード透過型液晶表示装置の代わりに下記の液晶表示装置を用いて、実施例3と同様に表示画像を評価した。
(VAモード液晶表示装置)
VAモードで22インチの液晶表示装置:TH22−LH10型(松下電器(株)製)に設けられている視認側の偏光板の代わりに本発明の偏光板(SHB−2)の光学異方性層が液晶セル側となるようにアクリル系粘着剤を介して、観察者側に一枚貼り付けた。
(IPSモード液晶表示装置)
IPSモードで20インチの液晶表示装置:W20−lc3000型(日立製作所(株)製)に設けられている視認側の保護フィルムの代わりに本発明の偏光板(SHB−2)の光学異方性層が液晶セル側となるようにアクリル系粘着剤を介して、視認側に一枚貼り付けた。
上記のVAモード、及びIPSモードの各液晶表示装置の表示画像の性能は何れも良好なものであった。
実施例6
実施例2のセルロースアシレートフィルム(CA−10)上に、特開2001−166104号公報明細書の実施例1記載の反射防止膜を同様にして設けた。この反射防止膜つきフィルムを用いた他は、実施例2と同様にして視認側偏光板を作製し、液晶表示装置に取り付けた。表示画像は実施例2と同等であり、且つ外光の写り込みのない鮮明なものであった。
実施例7
本発明の実施例1において、セルロースアシレートフィルムの厚さを100μmとする以外は、実施例1と全く同様にして本発明のフィルムを作製した。得られたフィルムの一方に、特開平4−73736号の実施例1の(バック層組成)第一層及び第2層を付与し、カチオン系ポリマーを導電性層とするバック層を作製した。更に、得られたバック層を付与したフィルムベースの反対の面に、特開平11−38568号の実施例1の試料105を塗布し、ハロゲン化銀カラー写真感光材料を作製した。得られたカラーフイルムは優れた映像が得られかつその取り扱い性においても問題のないものであった。

Claims (16)

  1. セルロースアシレート、並びに、末端にカルボキシ基を有する多分岐状ポリエステル高分子であって、該カルボキシ基の少なくとも一部が−COOR1基及び−CON(R2)(R3)基から選ばれる少なくとも1種の極性基(ここで、R1は炭化水素基を示す。R2及びR3は各々水素原子又は炭化水素基を示し、R2とR3が環を形成しても良い。)で修飾されている多分岐状ポリエステル高分子(PB)の少なくとも1種を含有することを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
  2. 上記多分岐状化合物(PB)が、カルボキシル官能基(a)を1個以上有する開始化合物と、ヒドロキシル官能基(b)を有し且つカルボキシル官能基(c)を少なくとも2個有する分岐連鎖延長化合物との重縮合反応により得られた、該開始化合物から誘導された中心単位と、該分岐連鎖延長化合物から誘導された分岐連鎖延長単位とを含む第一乃至第六世代からなる多分岐状ポリエステル化合物であり、更に該多分岐状ポリエステル化合物の分岐枝末端のカルボキシル基の少なくとも一部が−COOR1基及び/又は−CON(R2)(R3)基から選ばれる少なくとも1種の極性基に置換されてなり、
    上記重縮合反応は、上記開始化合物の上記カルボキシル官能基(a)と上記分岐連鎖延長化合物の上記ヒドロキシル官能基(b)との反応から開始し、次に該カルボキシル官能基(b)と上記ヒドロキシル官能基(c)との反応に続く、該開始化合物の該カルボキシル官能基(a)を開始点とした重縮合反応であることを特徴とする、請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム。
  3. 分岐連鎖延長化合物から誘導された分岐連鎖延長単位が、脂環式環及び芳香族環から選択される少なくとも一種の環状構造を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のセルロースアシレートフィルム。
  4. 上記セルロースアシレートは、その水酸基への置換度が、下記式(IIIa)〜(IIIc)の全てを満足するセルロースアシレートであることを特徴とする請求項1乃至3記載のセルロースアシレートフィルム。
    (IIIa) 2.6≦SA’+SB’≦3.0
    (IIIb) 2.0≦SA’≦3.0
    (IIIc) 0≦SB’≦0.8
    ここでSA’はアセチル基の置換度、SB’は炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。
  5. 上記セルロースアシレート及び上記多分岐状化合物(PB)の少なくとも1種を含有するセルロースアシレート組成物を、溶液流延方法により製膜してなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
  6. 上記セルロースアシレートフィルムが、セルロースアシレートを実質的に非塩素系の溶剤に溶解してセルロースアシレート溶液を調製する溶液調製工程、得られたセルロースアシレート溶液からセルロースアシレートフィルムを製膜する製膜工程、及び、セルロースアシレートフィルムを延伸する延伸工程により製造されたフィルムであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
  7. 更に、微粒子を含有してなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
  8. 上記のセルロースアシレートフィルムが、長さ100〜5000m及び幅0.7m以上の長尺品であって、フィルムの膜厚が10〜120μmで、その膜厚変動幅が±3%以内であり且つ幅方向のカールが−7/m〜+7/mであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
  9. 80℃及び90%RHの条件下に48時間静置した場合の質量変化が、0〜5%であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
  10. 請求項1乃至9のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを使用した光学フィルム。
  11. 請求項1乃至9のいずれかに記載のセルロースアセレートフィルムを用いた光学用偏光フィルム。
  12. 請求項1乃至9のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた画像表示素材。
  13. 請求項1乃至9のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた光学補償フィルム。
  14. 請求項1乃至9のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム、請求項10記載の光学フィルム、請求項11記載の光学用偏光フィルム、請求項12記載の画像表示素材及び請求項13記載の光学補償フィルムのいずれかを用いた画像表示装置。
  15. TN、STN、IPS、VAおよびOCBのいずれかのモードの透過型、反射型または半透過型の液晶表示装置であることを特徴とする請求項17に記載の画像表示装置。
  16. 膜厚が30〜250μmである請求項1乃至9のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを使用したハロゲン化銀写真感光材料用支持体。
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