JP2005290032A - 長距離秩序を有するメソ孔を含む階層的多孔質体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】狭い細孔径分布から成るメソ細孔に加えて、精密に制御されたマクロ細孔を併せ持つ無機系多孔質体を製造する方法が開示されている。鋳型成分として両親媒性物質をゾル−ゲル反応触媒成分を含む水溶液に溶かし、それに加水分解性の官能基を有する無機低分子化合物を添加して得られる出発溶液から、マクロ細孔となる溶媒リッチ相を含むゲルをゾル−ゲル法によって作製し、ついで乾燥によって溶媒を除去し、さらに熱分解などにより鋳型成分を除去する。
【選択図】 図1
Description
有機系の材質で構成されたカラムは、低強度のために耐圧性が低い、溶媒により膨潤・収縮してしまう、加熱殺菌が不可能である等の難点がある。従って、特に高温での操作によって生産性を上げようとする場合、こうした難点がない無機系のもの、特にシリカゲルが、汎用されている。
一般にシリカゲル等の無機質多孔体は、液相反応であるゾル−ゲル法によって作製される。ゾル−ゲル法とは、よく知られているように、加水分解性の官能基を有する無機低分子化合物を出発物質とし、ゾル−ゲル反応、すなわち、加水分解とその後の重合(重縮合)反応により、最終的に無機低分子化合物から酸化物の凝集体や重合体を得る方法一般のことを指す。出発物質となる無機低分子化合物としては、金属アルコキシドが最もよく知られており、このほか、金属塩化物、カルボキシル基やβ−ジケトンのような加水分解性の官能基を持つ金属塩もしくは配位化合物、さらには金属アミン類等が挙げられる。
多孔質材料を各種担体等として利用する場合には、孔の表面に担持されて機能を発現する物質の大きさに依存した、最適の中心細孔径とできるだけ狭い細孔径分布とが必要である。従って、ゾル−ゲル法によって得られる多孔質体についても、ゲル合成時の反応条件を制御することによって、細孔サイズを制御する試みがなされてきた(特許文献1)。
特に、近年多くの研究者によって界面活性剤やブロック共重合体などいわゆる両親媒性物質(より厳密には、両親媒性物質が自己組織化して形成された分子集合体)を鋳型成分として共存させてゾル−ゲル法による多孔質体を合成することにより、ナノメートル領域の細孔構造を高い精度で制御することができると報告されている。
また、アミド系の共存物質を用いたり、ケイ素アルコキシドからシリカゲルを製造する場合には塩基性触媒のもとでゾル−ゲル反応を行うことにより、平均細孔径を大きくできることが知られているが、これらの材料はせいぜい中心細孔径20ナノメートル以下の細孔のみを持ち、しかもおもに細孔径の小さい側へ広がった分布を示す。
かくして、本発明に従えば、下記の各工程を含むことを特徴とする、長距離秩序性ならびに形状および細孔径分布の制御されたメソ細孔に加えて、制御された細孔径分布を有するマクロ細孔を併せ持つ、無機系および有機無機ハイブリッド系多孔質体の製造方法が提供される。
(i) ゾル−ゲル反応触媒成分を含有する水溶液に、鋳型成分として両親媒性物質を溶かして均一溶液を調製する工程、
(ii) 該均一溶液に、両親媒性物質が自己組織化して形成された分子集合体が溶液中で安定化される溶媒組成あるいは添加成分を用いて溶液あるいは分散液を調製する工程、
(iii) 該溶液あるいは分散液に、加水分解性の官能基を有する無機低分子化合物を添加しゾル−ゲル反応を行わせて、溶媒に富む溶媒リッチ相と、ゾル−ゲル反応により前記無機低分子化合物から生成した無機酸化物重合体であって、前記両親媒性物質から成る鋳型成分の表面上に固着した無機酸化物重合体に富む骨格相とから成る、連続した3次元網目構造の湿潤ゲルを形成する工程、
(iv) 該湿潤ゲルを乾燥して前記溶媒リッチ相から溶媒を蒸発除去することによりマクロ細孔を形成する工程、および
(v) 乾燥後のゲルから熱分解または抽出により前記鋳型成分を除去することにより前記骨格相内にメソ細孔を形成する工程。
これに対して、両親媒性物質を鋳型成分として共存させてゾル−ゲル法による多孔体を合成する従来の方法に従えば、既述のように、得られる多孔体はメソ細孔のみを有するものであった。これは、従来の方法においては、鋳型成分の表面で局所的に早期に酸化物重合体が形成されて沈澱し系から分離してしまうからであると考えられる。また分子集合体を安定化させる成分を加えずに作製される、相分離を伴うゾル−ゲル反応による多孔体は、整ったマクロ細孔は有するものの、大きさの揃ったメソ細孔は無定形であり、長距離にわたる秩序や細孔形状の制御がなされたものではなかった。
なお、本発明において用いられる「マクロ細孔」および「メソ細孔」という語は、よく知られたIUPACによる提唱に従って定義されるものとする。すなわち、マクロ細孔とは直径が50ナノメートル(nm)以上の細孔を指称し、また、メソ細孔とは、マクロ細孔とミクロ細孔(直径2ナノメートル以下)との中間、すなわち、直径が2〜50ナノメートルの範囲にある細孔を指称し、本発明によって得られる多孔質体は、一般に、直径が2〜10ナノメートル程度のメソ細孔を中心として狭い細孔分布を有する。
本発明に従いシリカやシロキサン重合体から成りメソ細孔とマクロ細孔とを併せ持つ多孔質体を製造するには、ゾル−ゲル反応工程を少なくともその反応初期において酸性領域で行い、且つ、該ゾル−ゲル反応において触媒成分を含有する水の量が反応系中のシリカ1.0g(無水シリカ換算重量として)に対して1.0〜50.0gの範囲にあるように反応条件を調整することが必要であり、これによって、ゾル−ゲル転移と相分離が同時に起こり、溶媒リッチ相と骨格相とから成るゲルが生成する。
更に詳述すれば、両親媒性物質を鋳型としてゾル−ゲル反応によりシリカを主成分とする多孔質体を製造する場合、酸性、中性、塩基性いずれの触媒条件においても鋳型成分による大きさの揃ったメソ孔を得ることができることは従来より知られているが、本発明に従い溶媒リッチ相と骨格相に分離したゲルを作製するためには、均質な加水分解およびゲル形成を起こすことが容易な酸性領域での反応が必要である。あるいは反応溶液内部からの均質な反応によって、反応初期に酸性であった液性を徐々に塩基性に変化させて(例えば、反応溶液中に尿素を添加しておき、この尿素が徐々に加水分解してアンモニアを発生するようにする)均質な加水分解とゲル形成を誘起しても良い。すなわち、ゾル−ゲル反応は、加水分解による結合部位(重縮合反応部位:代表的には水酸基)の生成と、該結合部位を介する重縮合反応によるゲル形成とから成るものであるが、酸性領域では加水分解反応が促進されて多くの重縮合反応部位が形成され、この多くの部位を介して均質に重縮合反応(ゲル形成)が起こるものと考えられる。これに対して、ゾル−ゲル反応初期から塩基性であると重縮合反応の方が促進されて不均質なゲル形成が誘起されてしまう。ゾル−ゲル反応の触媒成分としては、塩酸、硝酸、硫酸等の鉱酸および酢酸、クエン酸などの有機酸、またはアンモニア、アミン類などの弱塩基類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強塩基類を挙げることができるが、液性の調整が重要な因子であるのでこれらの物質に限定されない。
以上のようにして、本発明においては、ゾル−ゲル転移と相分離とが実質的に同時に起こるようにゾル−ゲル反応工程を調整することにより、溶媒(水)に富む溶媒リッチ相と酸化物重合体に富む骨格相とから成るゲルが生成され、この生成は、沈澱を生じることなく溶液が白濁することによって確認される。この生成物は、粉末や沈殿ではなく一塊の固体として固化するので、その強度を増すために暫く熟成し(必要に応じて僅かに加温する)、これを乾燥および熱分解(または抽出)に供することにより目的の多孔質体が得られる。
溶媒リッチ相は、マクロ細孔に対応する直径を有する3次元網目状に連続した相であり、このことは、後述のように乾燥によって溶媒を除去した後の構造体を電子顕微鏡によって観察することにより確認できる(図1参照)。
骨格相は、ゾル−ゲル反応により無機低分子化合物から生成した無機酸化物重合体あるいは有機無機ハイブリッド重合体に富み、やはり連続した3次元網目構造の相である。この相は、鋳型成分となる両親媒性物質(厳密には、両親媒性物質が自己組織化して形成された分子集合体)の表面に固着して形成されているものであり、このことは、後に鋳型成分(両親媒性化合物)を除去すると、該骨格相の内部に細孔(メソ細孔)が形成されていることからも確認できる(図2参照)。すなわち、酸化物重合体は、表面に水酸基を有し、この部分が両親媒性物質のプロトン受容部分と強く引力相互作用することによって、鋳型成分が溶液中で形成する自己組織化構造をゲル網目の中に転写することができる。
ゾル−ゲル反応の生成物(ゲル)が固化した後、適当な熟成時間を経た後、乾燥によって溶媒を除去すると、溶媒リッチ相の占めていた空間が連続貫通したマクロ細孔となる。次いで両親媒性物質から成る鋳型成分を熱分解あるいは抽出除去すると、鋳型成分の自己組織化した構造によって形成されたナノメートル領域の大きさの揃った細孔(メソ細孔)が得られる。
まず両親媒性物質であるエチレンオキシド−プロピレンオキシド−エチレンオキシドブロック共重合体(EO20-PO70-EO20、平均分子量5800、アルドリッチ)1.90gを0.1mol/L硝酸水溶液5.76gに溶解し、トリメチルベンゼン0.20gを加えた後、得られた均一溶液にビス(トリメトキシシリル)エタン2.15gを攪拌下で加えて加水分解反応を行った。この場合、触媒成分を含有する水の量は、シリカ1.0g当たり12.0gである。数分攪拌したのち、得られた透明溶液を密閉容器に移し、60℃の恒温漕中に保持したところ約60分後に溶液の白濁に引き続いて固化した。
固化した試料をさらに数時間熟成させ、ついで60℃において溶媒を蒸発させて除去し、そののち100℃/hの昇温速度で350℃まで加熱してこの温度で5時間保持した後、室温まで冷却した。これによって、ケイ素原子をエチレン鎖が架橋した構造をもつ有機無機ハイブリッドよりなる多孔質体を得た。
まず両親媒性物質であるエチレンオキシド−プロピレンオキシド−エチレンオキシドブロック共重合体(EO20-PO70-EO20、平均分子量5800、アルドリッチ)1.90gを0.1mol/L硝酸水溶液5.76gに溶解し、トリメチルベンゼン0.25gを加えた後、得られた均一溶液にビス(トリメトキシシリル)エタン2.15gを攪拌下で加えて加水分解反応を行った。この場合、触媒成分を含有する水の量は、シリカ1.0g当たり12.0gである。数分攪拌したのち、得られた透明溶液を密閉容器に移し、55℃の恒温漕中に保持したところ約50分後に溶液の白濁に引き続いて固化した。
固化した試料をさらに数時間熟成させ、ついで60℃において溶媒を蒸発させて除去し、そののち100℃/hの昇温速度で350℃まで加熱してこの温度で5時間保持した後、室温まで冷却した。これによって、ケイ素原子をエチレン鎖が架橋した構造をもつ有機無機ハイブリッドよりなる多孔質体を得た。
この試料の電界放射型走査電子顕微鏡像には、マクロ細孔を形成するゲル骨格の断面に、大きさの均一な2次元六方配列状に並んだメソ細孔と、大きさは揃っているが破断面内には一見してそれと分かる秩序の認められない構造を持ったメソ孔とが、一定の広さの領域をもって交じり合った状態で観察された(図8)。さらにこの試料の粉末X線回折を測定したところ、約10nmに相当する秩序の高い周期配列を示す回折プロファイルが得られた(図9)が、既に報告されている3次元六方対称構造のメソ孔をもつ物質の粉末X線回折との比較により、この試料には2次元六方対称構造と3次元六方対称構造が共存していることが分かった。
このことから、本試料のゲル骨格の内部には、直径約6nmのメソ細孔と約4nmの厚さのゲルの壁とが交互に長距離(典型的に100nm以上)に渡って配列し、全体の配列は2次元六方対称性を有する構造と、同等の細孔径をもつが3次元六方対称性を有する構造とが共存することがわかった。この結果は上述の電界放射型走査電子顕微鏡像の与える情報と良く整合し、本試料が細孔分布の制御されたマクロ細孔と、2種類の異なった長距離秩序をもつ大きさの均一なメソ孔を併せ持っていることが証明された。
まず両親媒性物質であるエチレンオキシド−プロピレンオキシド−エチレンオキシドブロック共重合体(EO20-PO70-EO20、平均分子量5800、アルドリッチ)1.90gを0.1mol/L硝酸水溶液5.76gに溶解し、トリメチルベンゼン0.25gを加えた後、得られた均一溶液にビス(トリメトキシシリル)エタン2.15gを攪拌下で加えて加水分解反応を行った。この場合、触媒成分を含有する水の量は、シリカ1.0g当たり12.0gである。数分攪拌したのち、得られた透明溶液を密閉容器に移し、35℃の恒温漕中に保持したところ約70分後に溶液の白濁に引き続いて固化した。
固化した試料をさらに数時間熟成させ、ついで60℃において溶媒を蒸発させて除去し、そののち100℃/hの昇温速度で350℃まで加熱してこの温度で5時間保持した後、室温まで冷却した。これによって、ケイ素原子をエチレン鎖が架橋した構造をもつ有機無機ハイブリッドよりなる多孔質体を得た。
得られた多孔質体中には中心孔径0.1μm(=100nm)程度の揃った貫通孔と太さ約0.1μmのゲル骨格が3次元網目状に絡み合った構造で存在していることが電子顕微鏡および水銀圧入測定によって確かめられた。そして、その貫通孔の内壁に直径5.5nm付近に分布の中心を持つ細孔が多数存在し、300m2/g以上の比表面積を有していることが、窒素吸着測定によって確かめられた。その細孔分布を図10に示す。このゲルには実施例2で述べたのと同様なメソ孔が存在することが同様な方法で、確かめられた。したがって反応温度を変えることにより、細孔径分布の狭いマクロ孔の直径と気孔率だけを変化させて、メソ孔は同様の構造をもつ、多孔質体を作製することができた。
まず両親媒性物質であるエチレンオキシド−プロピレンオキシド−エチレンオキシドブロック共重合体(EO20-PO70-EO20、平均分子量5800、アルドリッチ)1.90gを0.1mol/L硝酸水溶液5.76gに溶解し、両親媒性物質の分子集合体を安定させる役割を持つ添加物を加えることなく、ビス(トリメトキシシリル)エタン2.15gを攪拌下で加えて加水分解反応を行った。この場合、触媒成分を含有する水の量は、シリカ1.0g当たり12.0gである。数分攪拌したのち、得られた透明溶液を密閉容器に移し、60℃の恒温漕中に保持したところ約60分後に溶液の透明度は特に変化することなく固化した。
固化した試料をさらに数時間熟成させ、ついで60℃において溶媒を蒸発させて除去し、そののち100℃/hの昇温速度で350℃まで加熱してこの温度で5時間保持した後、室温まで冷却した。これによって、ケイ素原子をエチレン鎖が架橋した構造をもつ有機無機ハイブリッドよりなる多孔質体を得た。
得られた多孔質体中には電子顕微鏡で確認できる100nm以上の不均一構造は存在しなかった。しかしゲル骨格中には直径5nm付近に分布の中心を持つ細孔が多数存在し、300m2/g以上の比表面積を有していることが、窒素吸着測定によって確かめられた。その細孔分布を図11に示す。この試料の粉末X線回折を測定したところ、約9nmに相当する他の試料に比べて秩序の低い構造に対応する回折プロファイルが得られた(図12)。
このことから、トリメチルベンゼンを用いずに作製した本試料の内部には、直径約5nmのメソ細孔と約4nmの厚さのゲルの壁とが、長距離秩序をもたない無定形状態で分布していることがわかった。
まず両親媒性物質であるエチレンオキシド−プロピレンオキシド−エチレンオキシドブロック共重合体(EO20-PO70-EO20、平均分子量5800、アルドリッチ)4.00gを1.0mol/L硝酸水溶液10.0gに溶解し、トリメチルベンゼン0.85gを加えた後、得られた均一溶液にテトラメトキシシラン5.15gを攪拌下で加えて加水分解反応を行った。この場合、触媒成分を含有する水の量は、シリカ1.0g当たり5.0gである。数分攪拌したのち、得られた透明溶液を密閉容器に移し、40℃の恒温漕中に保持したところ約120分後に溶液の白濁に引き続いて固化した。
固化した試料をさらに数時間熟成させ、ついで60℃において溶媒を蒸発させて除去し、そののち100℃/hの昇温速度で600℃まで加熱してこの温度で5時間保持した後、室温まで冷却した。これによって、純粋なシリカよりなる多孔質体を得た。
加水分解の際に加えるトリメチルベンゼンの量を0.45g、0.65gおよび0.90gに変化させたほかは実施例5と同様にして反応溶液を調製し、ゲル化、熟成、乾燥、熱処理を行って、純粋なシリカよりなる多孔質体を得た。
得られた多孔質体中にはいずれのトリメチルベンゼン添加量においても中心孔径2μm(=2000nm)程度の揃った貫通孔と太さ約1μmのゲル骨格が3次元網目状に絡み合った構造で存在していることが電子顕微鏡観察(図17)によって確かめられた。そして、その貫通孔の内壁に、トリメチルベンゼン添加量が0.45g,0.65gおよび0.90gの場合直径それぞれ 5, 5.5, および 7nm付近に分布の中心を持つ細孔が多数存在し、いずれも300m2/g以上の比表面積を有していることが、窒素吸着測定によって確かめられた。
これに対してトリメチルベンゼンをまったく加えない場合は、細孔径は4nmであった。これらの試料の細孔分布を図18に示す。トリメチルベンゼン添加量が0.65gである試料の電界放射型走査電子顕微鏡像には、マクロ細孔を形成するゲル骨格の断面に、大きさの均一な2次元六方配列状にならんだメソ細孔が観察された(図19)。さらにこの試料の粉末X線回折を測定したところ、約9nmに相当する秩序の高い周期配列を示す回折プロファイルが得られた(図20)。このことから、本試料のゲル骨格の内部には、直径約5.5nmのメソ細孔と約3.5nmの厚さのゲルの壁とが交互に長距離(典型的に100nm以上)に渡って配列し、全体の配列は2次元六方対称性を有することがわかった。
この結果は上述の電界放射型走査電子顕微鏡像の与える情報と良く整合し、本試料が細孔分布の制御されたマクロ細孔と、長距離秩序をもつ大きさの揃ったメソ孔を併せ持っていることが証明された。トリメチルベンゼンを加えない場合には粉末X線回折プロファイルは幅広く、窒素吸着法によるデータも併せて、他の試料に比べて細孔径の分布も広いことがわかった。
まず両親媒性物質であるエチレンオキシド−プロピレンオキシド−エチレンオキシドブロック共重合体(EO20-PO70-EO20、平均分子量5800、アルドリッチ)0.90gを0.1mol/L硝酸水溶液15.18g(試料A)あるいは30.36g(試料B)に溶解し、両親媒性物質の分子集合体を安定させる役割を持つ添加物を加えることなく、ビス(トリメトキシシリル)メタン1.873gを攪拌下で加えて加水分解反応を行った。この場合、触媒成分を含有する水の量は、シリカ1.0g当たり17gおよび34gである。数分攪拌したのち、得られた透明溶液を密閉容器に移し、60℃の恒温漕中に保持したところ約120分後に溶液の白濁に引き続いて固化した。
固化した試料をさらに数時間熟成させ、ついで60℃において溶媒を蒸発させて除去し、そののち100℃/hの昇温速度で350℃まで加熱してこの温度で5時間保持した後、室温まで冷却した。これによって、ケイ素原子をエチレン鎖が架橋した構造をもつ有機無機ハイブリッドよりなる多孔質体を得た。
Claims (3)
- メソ細孔に加えてマクロ細孔を併せ持つ無機系多孔質体を製造する方法であって、
(i) ゾル−ゲル反応触媒成分を含有する水溶液に、鋳型成分として両親媒性物質を溶かし、必要に応じて両親媒性物質の分子集合体を安定化させる添加成分を加えて、均一溶液を調製する工程、
(ii) 該均一溶液に、加水分解性の官能基を有する無機低分子化合物を添加しゾル−ゲル反応を行わせて、溶媒に富む溶媒リッチ相と、ゾル−ゲル反応により前記無機低分子化合物から生成した無機酸化物重合体であって、前記両親媒性物質から成る鋳型成分の表面上に固着した無機酸化物重合体に富む骨格相とから成る、連続した3次元網目構造のゲルを形成する工程、
(iii) 該ゲルを乾燥して前記溶媒リッチ相から溶媒を蒸発除去することによりマクロ細孔を形成する工程、および
(iv) 乾燥後のゲルから熱分解または抽出により前記鋳型成分を除去することにより前記骨格相内にメソ細孔を形成する工程、
を含むことを特徴とする方法。 - 無機酸化物重合体が、シリカおよび/または有機官能基含有シロキサン重合体であることを特徴とする請求項1に記載の無機系多孔質体の製造方法。
- ゾル−ゲル反応工程(ii)を少なくともその反応初期において酸性領域で行ない、且つ、該ゾル−ゲル反応において触媒成分を含有する水の量が反応系中のシリカ1.0g(無水シリカ換算重量として)に対して1.0g〜50.0gの範囲にあるようにすることを特徴とする請求項2に記載の無機系多孔質体の製造方法。
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