JP2005271817A - 車両の挙動制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 車両の挙動制御装置に関し、ドライブフィーリングを損なわないようにして、車両の安定性を確保することができるようにする。
【解決手段】 車両に設けられて該車両の左右輪を個別に制動しうる制動手段と、該車両のエンジンの出力を調整しうるエンジン出力調整手段37と、該車両のステア特性に対応したパラメータの値を検出するステア特性検出手段12と、ステア特性検出手段12で検出されたパラメータ値に基づいて、該車両のステア特性が第1の状態以上に不安定になったら該制動手段を作動させ、該車両のステア特性が第1の状態よりも不安定な第2の状態以上に不安定になったら該制動手段の作動に加えて該エンジン出力調整手段37によりエンジン出力を低下させるステア特性制御手段とを備える。
【選択図】 図1

Description

本発明は、車両の運動状態に応じた制動制御と運転者による制動操作とを両立させながら車両の安定性を確保する、車両の挙動制御装置に関する。
車両の旋回時の姿勢を制御する技術として、旋回時に特定の車輪に制動力を加えることによって、アンダステアやオーバステアといった車両のステア特性を改善するように制御し、旋回時の車両の旋回方向に対する姿勢を修正して車両の安定した走行を実現する技術が開発されており、左右輪に各々異なる大きさの制動力を付与して車両にヨー方向のモーメントを発生させることで車両の姿勢を安定させる、ヨーモーメント制御が知られている。
例えば、旋回時において車両のオーバステアが強い場合には、車両が旋回内側に回頭し過ぎ、走行経路も旋回内側に入り過ぎてスピンのおそれを招いてしまう。そこで、旋回外輪に制動力を加えることにより車両に復元方向のヨーモーメントを発生させ、車両の旋回内側への過剰な回頭を抑制し走行経路が旋回内側に入り過ぎてしまうのを抑制する(すなわち、オーバステアを抑制する)ようになっている。この場合、旋回外輪のうち前輪のみに制動力を加えれば、車両を過剰に減速することなく円滑に効率よくオーバステアを抑制できる。
また、旋回時において車両のアンダステアが強い場合には、車両が旋回内側に回頭しにくく走行経路も旋回外側に膨らみドリフトアウトのおそれを招いてしまう。そこで、旋回内輪に制動力を加えることにより車両に回頭方向のヨーモーメントを発生させ、走行経路が旋回外側に膨らむのを抑制する(すなわち、アンダステアを抑制する)ようになっている。この場合、旋回内輪のうち後輪のみに制動力を加えれば、車両を過剰に減速することなく円滑に効率よくアンダステアを抑制できる。
一方、車両の旋回時の姿勢を制御する別の技術として、旋回時にエンジン出力を抑制して車両の挙動を安定化させるエンジン出力制御が知られている。
例えば、特許文献1には、車両の旋回挙動に基づいて演算された目標減速度Gxtが基準値Gxt0未満の場合にはエンジン出力トルクを低減させるべくスロットルバルブの開度を制御してエンジンの出力を制御し、基準値Gxt0以上の場合には各車輪を制動して車両を減速させる構成が記載されている。このようにエンジン出力トルクを絞ることによって、車両のドリフトアウト状態を低減し、車両の挙動を安定化させることができるようになっている。
また、車両の旋回時における安定性を向上させるために、上述のヨーモーメント制御とエンジン出力制御とを組み合わせて実施するように構成された技術も知られている。例えば特許文献2には、制御目標ヨーレイトTrψが実ヨーレイトψよりも大きいときには、旋回内輪に制動力を付与するヨーモーメント制御を行うとともにエンジン出力を低下させるエンジン出力制御を行い、制御目標ヨーレイトTrψが実ヨーレイトψよりも小さいときに旋回外輪に制動力を付与するヨーモーメント制御を行う構成が記載されている。このような構成によって、制御目標ヨーレイトTrψが実ヨーレイトψよりも大きく不安定な状態になると、車速を低下させることで遠心力を小さくすることができ、また、左右輪の制動力差によって車両モーメント(ヨーモーメント)を発生させてドリフトアウトを回避することができるようになっている。
特開2001−82200号公報 特開2001−88671号公報
このように、ヨーモーメント制御とエンジン出力制御とを実施することで、例えばドライバによって緊急回避操作がなされて車両の安定性が急激に変化したような場合や、ドライバがパニック状態に陥り、アクセルペダルの踏み込みを戻せない状況であっても、車両の安定性を確保することができる。
しかし、特許文献2に記載の技術のように、ヨーモーメント制御とエンジン出力制御とを同時に実施する構成では、例えば、制御目標ヨーレイトTrψが実ヨーレイトψを僅かに超えている程度の場合や車両の挙動の変化が大きくない場合には、ドライバが車両の姿勢を十分制御できる場合であってもエンジン出力制御によって過大に減速されてしまう。特に、ヨーモーメント制御が車輪へ制動力を付与する制御であるのに対して、エンジン出力制御はエンジンの出力トルクを抑制する制御であるため、これらの制御が同時に実施されることによって、車輪を止めようとする制動力によってだけでなく車両の推進力自体が抑えられて車両が急激に減速することになり、ドライバの加速意思や車速維持の意思が反映されにくくなって、ドライビングフィーリングを著しく損なうおそれがある。
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、ドライブフィーリングを損なわないようにして、車両の安定性を確保することができるようにした、車両の挙動制御装置を提供することを目的とする。
上記目標を達成するため、本発明の車両の挙動制御装置(請求項1)は、車両に設けられて該車両の左右輪を個別に制動しうる制動手段と、該車両のエンジンの出力を調整しうるエンジン出力調整手段と、該車両のステア特性に対応したパラメータの値を検出するステア特性検出手段と、該ステア特性検出手段で検出されたパラメータ値に基づいて、該車両のステア特性が第1の状態以上に不安定になったら、該制動手段を作動させ、該車両のステア特性が第1の状態よりも不安定な第2の状態以上に不安定になったら、該制動手段の作動に加えて該エンジン出力調整手段によりエンジン出力を低下させるステア特性制御手段とを備えたことを特徴としている。
なお、ヨーモーメント制御においては、オーバステアやアンダステアといったステア特性の状態及びその傾向の大きさに応じて各車輪の制動力が個別に設定されることが好ましい。
また、該ステア特性制御手段は、該ステア特性検出手段で検出されたパラメータ値が該第1の状態として予め設定された第1閾値以上であることを検出すると、該制動手段を作動させ、該ステア特性検出手段で検出されたパラメータ値が該第2の状態として予め設定された第1閾値よりも大きい第2閾値以上であることを検出すると、該制動手段を作動させるとともに、該エンジン出力調整手段によりエンジン出力を低下させることが好ましい(請求項2)。
また、該ステア特性検出手段は、該ステア特性に対応したパラメータの値として該車両のヨーレイト偏差を算出し、該ステア特性制御手段は、該ヨーレイト偏差の絶対値と該第1閾値又は該第2閾値との比較を行うことが好ましい(請求項3)。
また、該ステア特性がアンダステア又はオーバステアの何れであるかを判定するOS・US判定手段を備え、該ステア特性制御手段は、該OS・US判定手段の判定結果に基づいて、該ステア特性がアンダステアの場合には、該第1の状態よりも不安定かつ該第2の状態よりも安定な第3の状態以上に不安定になったら、該制動手段の作動に加えて該エンジン出力調整手段によりエンジン出力を低下させることが好ましい(請求項4)。
本発明の車両の挙動制御装置(請求項1)によれば、ステア特性の状態に応じて、制動手段によるステア特性制御とエンジン出力調整手段によるエンジン制御とを独立して実施することができ、ステア特性制御を行うべきステア特性の状態とエンジン制御を行うべきステア特性の状態とを個別に設定することができる。また、ステア特性制御手段は、車両のステア特性が第1の状態よりも不安定な第2の状態以上に不安定になるまでの間はエンジン出力を低下させないため、車両の挙動の乱れが小さいときやドライバが車両の姿勢を制御できるときに必要以上に減速することがなく、ドライブフィーリングを向上させることができる。
また、本発明の車両の挙動制御装置(請求項2)によれば、該車両のステア特性を予め設定された第1閾値及び第2閾値との比較によって判定するため、正確に車両の挙動を制御することができる。
また、本発明の車両の挙動制御装置(請求項3)によれば、安定した旋回を行うための理論上のヨーレイト(目標ヨーレイトYt)と実際のヨーレイト(実ヨーレイトYr)との偏差を算出することで、車両を安定化させるために必要な(すなわち、不足している、または過剰な)ヨーレイトを的確に把握することができる。また、ヨーレイト偏差を用いることで、オーバステアやアンダステアといった車両のステア特性を的確に把握することができ、回頭制御や復元制御を容易に実行することができる。
また、本発明の車両の挙動制御装置(請求項4)によれば、車両のステア特性がアンダステアの場合には、エンジン制御によって車両を減速させて前輪の横力を大きくすることができ、アンダステア傾向を弱め易くすることができる。また、車両のステア特性がアンダステアの場合には、オーバステア時よりもエンジン制御を実施しやすく設定されているため、ヨーモーメント制御の効果を強化することができる。
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図4は本発明の一実施形態にかかる車両の挙動制御装置を示すものであり、図1はその挙動制御にかかる制御ブロック図、図2は本装置を備えた車両の制動システムの全体構成を示すシステム構成図、図3は本装置による挙動制御を説明するフローチャートであり(a)はヨーモーメント制動制御にかかるフロー、(b)はエンジン出力抑制制御にかかるフロー、図4は本装置を備えた車両の右旋回時における挙動制御を模式的に説明する図であり、(a)はオーバステア時の制動制御を示す図、(b)はアンダステア時の制動制御を示す図である。
本車両の挙動制御装置には、図2に示すような車両の制動システムが利用される。この車両の制動システムは、図2に示すように、ブレーキぺダル1と、ブレーキぺダル1の踏込みに連動して作動するマスタシリンダ2と、マスタシリンダ2の状態に応じて、あるいは制動用コントローラ(ブレーキECU)3からの指令に応じてブレーキ液リザーバ4から各制動輪(前輪の左右輪及び後輪の左右輪)5FL,5FR,5RL,5RRのホイールブレーキ(以下、ブレーキという)10のホイールシリンダに供給するブレーキ液圧を制御するハイドロリックユニット6とをそなえている。なお、ここでは、ハイドロリックユニット6等の液圧調整系と各制動輪のホイールブレーキ10等から制動機構(制動手段)が構成されるものとする。
一方、エンジン8の出力を制御するエンジンECU7が設けられ、ブレーキECU3とのCAN通信により、車両の状態に応じたエンジン8の出力の制御を実施するようになっている。ここでは、エンジン8の吸気系及び燃料噴射系等からエンジン出力調整機構(エンジン出力調整手段)が構成されるものとする。
本実施形態においては、車両の挙動を安定化させる挙動制御として、車両に働くヨーモーメントが過大にならないような制御(ヨーモーメント制御)を実施するようになっている。このヨーモーメント制御では、ヨーモーメント制動制御と、エンジン出力抑制制御との二つの制御態様を用いて車両の減速制御が行われる。
ヨーモーメント制動制御は、各車輪への制動力を調節する制動制御である。すなわち、車両の挙動に応じた目標ヨーレイトと実際に車両に働く実ヨーレイトとの偏差(ヨーレイト偏差)から車両のアンダステア(以下USという)又はオーバステア(以下OSという)の状態を判定し、車両の回頭・復元に必要なヨーモーメント量を求めて、それに応じた制動力を制御対象輪に個別に(少なくとも車両の左右輪に個別に)付与することで車両のヨー運動を制御するものである。
また、エンジン出力抑制制御は、車両の挙動に応じた目標ヨーレイトと実際に車両に働く実ヨーレイトとの偏差に応じて、エンジン出力を低減させて車両を減速させ、車両の挙動の安定化を図るものである。これらの具体的な制御態様については後述する。
なお、本実施形態では、これらのヨーモーメント量に応じたヨーモーメント制御とブレーキペダル1の踏込み量に応じた制動制御(ドライバ制御)との両方の制動制御を統合した制動制御を行うことができるようになっている。
図2に示すように(図2には前輪の左右輪ブレーキについてのみ示す)、ハイドロリックユニット6にはヨーモーメント制動制御時、差圧弁68の上流と下流とで所定の圧力差が生じるように差圧弁68が作動する。車両の挙動制御モードでブレーキペダル1が踏み込まれていない時には、インライン吸入弁61が閉鎖され、アウトライン吸入弁62が開放されるため、ブレーキ液リザーバ4内のブレーキ液がアウトライン64,アウトライン吸入弁62及びポンプ65を通じて導入され、ポンプ65により加圧されるとともに液圧保持弁66及び減圧弁67により圧力調整されて各輪のブレーキ10に供給される。車両の挙動制御モードでありブレーキペダル1が踏み込まれている時には、インライン吸入弁61が開放され、アウトライン吸入弁62が閉鎖されるため、マスタシリンダ2内のブレーキ液がインライン63,インライン吸入弁61及びポンプ65を通じて導入され、ポンプ65により加圧されるとともに液圧保持弁66及び減圧弁67により圧力調整されて各輪のブレーキ10に供給される。
なお、この車両の挙動制御時にドライバによる制動制御(ドライバ制御)がなされた場合には、液圧センサ14で検知されたマスタシリンダ内のブレーキ液の圧力情報に基づいて、液圧保持弁66及び減圧弁67の圧力調整がなされるようになっている。また、インライン63とアウトライン64とはインライン吸入弁61及びアウトライン吸入弁62の下流で合流しており、この合流部分の下流にポンプ65が配置され、ポンプ65の下流には、各制動輪5FL,5FR,5RL,5RR毎に液圧保持弁66及び減圧弁67が装備されている。
通常制動時には、インライン吸入弁61及びアウトライン吸入弁62は閉鎖されて、差圧弁68,液圧保持弁66は開放されて、減圧弁67は閉鎖される。これにより、マスタシリンダ2内の圧力(即ち、ブレーキ踏力)に応じたブレーキ液圧がインライン63,差圧弁68,液圧保持弁66を通じて各輪のブレーキ10に供給される。また、ABS(アンチロックブレーキシステム又はアンチスキッドブレーキシステム)の作動時には、液圧保持弁66及び減圧弁67を通じてブレーキ踏力に応じたブレーキ液圧が車輪のロックを生じないように適宜調整される。このようなハイドロリックユニット6のインライン吸入弁61,アウトライン吸入弁62,ポンプ65,及び各制動輪の液圧保持弁66,減圧弁67,差圧弁68は、ブレーキECU3により制御される。
ブレーキECU3には、ステアリングホイール(ハンドル)に付設されたハンドル角センサ11からハンドル角信号が、車体に設置されたヨーレイトセンサ(ステア特性検出手段)12から車体のヨーレイト信号が、マスタシリンダ液圧センサ14からマスタシリンダ液圧信号が、各輪の車輪速センサ15から車輪速信号が、ブレーキスイッチ16からブレーキぺダル踏込信号が、車体に設置された前後・横加速度センサ17から前後加速度信号,横加速度信号が、それぞれ入力されるようになっている。
ブレーキECU3は、図1に示すような各機能要素、つまり、車両の運動状態(挙動)に関する種々の情報を入力されこれらの入力情報を適宜処理して車両の理論上の運動状態を算出する車両運動状態入力部23と、アクセル操作やブレーキ操作といったドライバの運転状態に関する種々の情報を入力されこれらの入力情報を適宜処理して算出するドライバ運転状態入力部24と、車両の不安定な挙動を安定化させるためにヨーモーメントに応じた制御を行うヨーモーメント制御演算部21と、このヨーモーメント制御演算部21によって設定される制動制御量に基づいて車両の各車輪の制動力を制御するブレーキ制御部22とを備えている。
なお、ブレーキECU3には、その他の制御手段として、車両旋回時の旋回半径と走行路面の摩擦係数とを演算して車両の速度を自動的に減速させる自動減速制御部等が併せて備えられているが、ここではその他の制御部についての説明を省略する。
また、エンジン8の出力を制御するエンジンECU7には、エンジン8への燃料噴射量や吸気量等を設定する出力制御部71が備えられている。
次に、ブレーキECU3の各機能要素について説明する。
車両運動状態入力部23では、前後・横加速度センサ17から入力される前後加速度信号によって車体に発生する実前後加速度Gx及び横加速度信号によって車体に発生する実横加速度Gy、ハンドル角センサ11から入力されるハンドル角情報によってハンドル角θh、ヨーレイトセンサ12からのヨーレイト信号によって車体に発生する実ヨーレイトYrを、それぞれ認識し、ヨーモーメント制御演算部21へ出力するようになっている。また、ここでは、車体速Vb,ハンドル角速度ωh及び実舵角δが算出されるようになっている。車体速Vbは、通常は車輪速センサ15からの車輪速信号に基づいて算出されるが、車輪にスリップが生じると、それまで得られた車輪速信号に基づく車体速に、前後・横加速度センサ17から得られる実前後加速度Gxの時間積分値が加算されて算出される(この場合、推定車体速となる)。また、ハンドル角速度ωh及び実舵角δは、ハンドル角センサ11からのハンドル角情報に基づいて算出される。なお、ハンドル角θhがドライバによって操舵されたステアリングホイールのニュートラル位置に対する角度を表すのに対して、実舵角δは操舵輪のニュートラル位置に対する角度を表すものである。
ドライバ運転状態入力部24では、ブレーキスイッチ16からのブレーキペダル踏込信号によってブレーキペダル1が踏み込まれているか否かを判定する。また、ドライバによるブレーキペダル1の踏込み量PRDRが、マスタシリンダ液圧センサ14から入力されるマスタシリンダ液圧情報に基づいて算出されるようになっている。
ヨーモーメント制御演算部21は、規範とする線形二輪モデルを用いて車両が安定走行を行うために目標とすべきヨーレイトを算出する目標ヨーレイト算出部31,車両に実際に生じるヨーレイトと目標ヨーレイトとの偏差を算出するヨーレイト偏差算出部32,車両を安定させるための回頭,復元に必要なヨーモーメントを算出する目標ヨーモーメント算出部33,目標ヨーモーメントの符号からオーバステアとアンダステアとのいずれかの状態を判定するオーバステア・アンダステア判定部(OS・US判定手段)34,ヨーモーメントの大きさに応じた制動制御(ヨーモーメント制動制御)の開始・終了を判定するヨーモーメント制動制御判定部36及びエンジンの出力を制御するエンジン出力抑制制御の開始・終了を判定するエンジン出力抑制制御判定部(エンジン出力調整手段)37を備えて構成されている。
目標ヨーレイト算出部31は、車両が安定走行を行うために目標とすべき目標ヨーレイトYtを算出する。ここでは、車両運動状態入力部23によって算出された車体速Vbと実舵角δとが入力され、これらのパラメータとスタビリティファクタAとから、規範とする線形二輪モデルを用いて目標ヨーレイトYtが求められるようになっている。
後述するヨーモーメント制動制御判定部36においてヨーモーメント制動制御の開始判定がなされてヨーモーメント制動制御が行われている場合、以下の式1に従って、目標ヨーレイトYt(この場合、Yt1)が算出される。
Figure 2005271817
また、ヨーモーメント制御が行われていない場合には、以下の式2に従って、目標ヨーレイトYt(この場合、Yt2)が算出される。
Figure 2005271817
ヨーレイト偏差算出部32は、目標ヨーレイト算出部31で算出された目標ヨーレイトYt(すなわち、Yt1,Yt2のいずれかの値)と、車両運動状態入力部26から入力された実ヨーレイトYrとの偏差、すなわちヨーレイト偏差Ydevを算出する。ここでは、以下の式3に従ってヨーレイト偏差が演算される。
dev=Yt−Yr ・・・(式3)
dev:ヨーレイト偏差
t:目標ヨーレイト
r:実ヨーレイト
なお、ここで演算されたヨーレイト偏差Ydevは、車両の旋回方向に関わらずアンダステア側(回頭制御側)を正、オーバステア側(復元制御側)を負で符号を統一するために、右旋回時にはそのままの値を、左旋回時には符号を反転させた値をヨーレイト偏差Ydevとして、これ以後の制御判断に用いるようになっている。また、ここで演算されたヨーレイト偏差Ydevは、ステア特性に対応するステア特性値として、ヨーモーメント制動制御判定部36及びエンジン出力抑制制御判定部37へ出力されるとともに、目標ヨーモーメント算出部33へ出力される。
目標ヨーモーメント算出部33は、ヨーレイト偏差算出部32で算出されたヨーレイト偏差Ydevに基づいて目標ヨーモーメントYMdを算出する。なお、ここで求められた目標ヨーモーメントYMdは、オーバステア・アンダステア判定部34,ヨーモーメント制動制御判定部36及びエンジン出力抑制制御判定部37へ出力される。
オーバステア・アンダステア判定部34は、目標ヨーモーメント算出部33から入力される目標ヨーモーメントYMd値の正負に基づいて、車両のステア特性がオーバステア(以下、単にOSとも記載する)傾向、又はアンダステア(以下、単にUSとも記載する)傾向のどちらであるかを判定する。つまり、目標ヨーモーメントYMd値が正の場合にはアンダステア傾向にあると判定し、目標モーメントYMd値が負の場合にはオーバステア状態にあると判定するようになっている。なお、ここで判定された車両のOS、又はUSの状態は、ヨーモーメント制動制御判定部36及びエンジン出力抑制制御判定部37へ出力されるとともに、ブレーキ制御部22へも出力される。
ヨーモーメント制動制御判定部36は、車体に発生するヨーモーメントの大きさを制御するヨーモーメント制動制御の開始判定部及び終了判定部を備えており、ヨーモーメント制動制御を開始,終了するか否かをそれぞれ判定するようになっている。これらの判定は、所定の開始条件及び所定の終了条件が成立するか否かで判定されるようになっており、所定の開始条件が成立すると、ブレーキ制御部22においてヨーモーメント制動制御が実施されるようになっている。また、所定の終了条件が成立すると、ブレーキ制御部22においてヨーモーメント制動制御を終了するようになっている。
ヨーモーメント制動制御の開始条件は、(1)車体速Vbが基準値(予め設定された低速値)V1以上であること、(2)OS時には、ヨーレイト偏差Ydevが基準値(予め設定された閾値としての基準ヨーレイト)Yostに補正ゲインKを乗じた値(負の値)以下であること、又は、US時には、ヨーレイト偏差Ydevが基準値(予め設定された閾値としての基準ヨーレイト)Yustに補正ゲインKを乗じた値以上であること、である。これらの条件がすべて成立すると、ヨーモーメント制動制御が開始される。
なお、本実施形態においては、基準値Yostと基準値Yustとは、絶対値が同一の値として設定されている。つまりここでは、車両のステア特性の状態がアンダステアの場合にはヨーレイト偏差Ydevが正の値として検出され、オーバステアの場合には負の値として検出されるようになっているため、何れの場合においてもヨーレイト偏差Ydevの大きさが基準値を超えた場合に、ヨーモーメント制動制御を開始しうるようになっている。
また、本実施形態においては、ヨーモーメント制動制御判定部36におけるヨーモーメント制動制御の開始条件(2)において、以下の(式4),(式5)に記載の関係が成り立つように、ヨーレイトの第1所定値(第1閾値)Yr1が設定されている。
OS時:Yr1=K・Yost ・・・(式4)
US時:Yr1=K・Yust ・・・(式5)
上記の開始条件(2)は、ヨーレイト偏差の大きさ|Ydev|が上記の第1所定値Yr1以上であること、と言い換えることができる。つまり、ヨーモーメント制動制御判定部36は、車両のステア特性(ヨーレイト偏差の大きさ)が第1の状態(第1所定値)以上に不安定になったら、制動手段(ブレーキ制御部22)を作動させるステア特性制御手段としての機能を備えていることになる。
また、ヨーモーメント制動制御の終了条件は、(1)車体速Vbが基準値(予め設定された低速値)V2(ただし、V2<V1)未満であること、(2)ヨーレイト偏差Ydevが基準値Yehm未満で所定時間Tehm以上継続すること、である。これらの条件のいずれかが成立すると、ヨーモーメント制動制御が終了される。
ブレーキ制御部22は、オーバステア・アンダステア判定部34,ヨーモーメント制動制御判定部36における判定結果に基づいて、実質的なヨーモーメント制動制御、すなわち、各制動輪5のホイールブレーキ10の制動力を制御するようになっている。
このブレーキ制御部22におけるヨーモーメント制動制御では、車両のステア特性に応じて、異なる車輪へ制動力を付与するようになっている。まず、車両のステア特性がOSの場合には、旋回外輪側の車輪へ制動力を付与するように機能する。また、車両のステア特性がUSの場合には、旋回内輪側の車輪へ制動力を付与するように機能する。なお、本実施形態において、OS時には旋回外輪側の前輪に制動力が付与されるとともに旋回内輪側の後輪に制動力が働いている場合には、その制動力を減少させるようになっている。また、US時には旋回内輪側の後輪に制動力が付与されるようになっている。
このヨーモーメント制御において車輪に付与される制御量の大きさは、目標ヨーモーメント算出部33で算出された目標ヨーモーメントYMdに基づいて、以下の式6によってブレーキ液圧勾配(増減圧勾配)PRymcとして算出されるようになっている。
Figure 2005271817
なお、ここでは、制御量として制動力自体(絶対的な制動力の大きさ)ではなく、制動力増減値が設定されるようになっている。これは、本制御が所定の周期で行われるものであり、前回の制御周期での制動力に対して、制動力をどれだけ増減させるかを設定するようになっているためである。また、ここでは、制動力としてブレーキ液圧に換えて増減圧勾配(制御用増減圧量)PRymcとして設定する。
エンジン出力抑制制御判定部37は、エンジン8の出力の大きさを制御するエンジン出力抑制制御を開始,終了するか否かをそれぞれ判定するようになっている。これらの判定は、所定の開始条件及び所定の終了条件が成立するか否かで判定されるようになっており、所定の開始条件が成立すると、エンジンECU7においてエンジン出力抑制制御が実施されるようになっている。また、所定の終了条件が成立すると、エンジンECU7においてエンジン出力抑制制御を終了するようになっている。
エンジン出力抑制制御の開始条件は、(1)車体速Vbが基準値(予め設定された低速値)V1以上であること、(2)OS時には、ヨーレイト偏差Ydevが第2の基準値(予め設定された閾値としての基準ヨーレイト)Yosteに補正ゲインKを乗じた値(負の値)以下であること、又は、US時には、ヨーレイト偏差Ydevが第2の基準値(予め設定された閾値としての基準ヨーレイト)Yusteに補正ゲインKを乗じた値以上であること、である。これらの条件がすべて成立すると、エンジン出力抑制制御が開始される。
このエンジン出力抑制制御にかかる第2の基準値Yoste,Yusteは、それぞれ、ヨーモーメント制動制御にかかる基準値Yost,Yustよりも大きい値、つまり、車両のステア特性がより不安定な状態に対応する値として設定されている。これにより、エンジン出力抑制制御は、ヨーモーメント制動制御よりも車両のステア特性が不安定な状態でなければ制御が開始しないようになっている。
また、本実施形態においては、OS時の第2の基準値YosteとUS時の第2の基準値Yusteとが同一の値に設定されている。
また、本実施形態においては、エンジン出力抑制制御判定部37におけるエンジン出力抑制制御の開始条件(2)において、以下の(式7),(式8)に記載の関係が成り立つように、ヨーレイトの第2所定値(第2閾値)Yr2が設定されている。
OS時:Yr2=K・Yoste ・・・(式7)
US時:Yr2=K・Yuste ・・・(式8)
上記の開始条件(2)は、ヨーレイト偏差の大きさ|Ydev|が上記の第2所定値Yr2以上であること、と言い換えることができる。つまり、エンジン出力抑制制御判定部37は、車両のステア特性(ヨーレイト偏差の大きさ)が第2の状態(第2所定値)以上に不安定になったら、制動手段(ブレーキ制御部22)の作動に加えて、エンジン出力調整手段によりエンジン出力を低下させるステア特性制御手段としての機能を備えていることになる。
また、エンジン出力抑制制御の終了条件は、(1)車体速Vbが基準値(予め設定された低速値)V2(ただし、V2<V1)未満であること、(2)ヨーレイト偏差Ydevが基準値Yehm未満で所定時間Tehm以上継続すること、である。これらの条件のいずれかが成立すると、エンジン出力抑制制御が終了される。つまり、エンジン出力抑制制御の終了条件は、ヨーモーメント制動制御の終了条件と同一になっており、これらの終了条件が成立した時には、車両のステア特性が安定した状態になったものとして各制動制御を終了するようになっている。換言すると、車両のステア特性の状態が上記の終了条件を満たすまでは、ヨーモーメント制動制御及びエンジン出力抑制制御の両制動制御を実施して、車両の安定性を確保している。
上述の通り、ヨーモーメント制動制御判定部36及びエンジン出力抑制制御判定部37は、ヨーレイト偏差算出部32で算出されたヨーレイト偏差Ydevに基づいて、各々が独立して、ヨーモーメント制動制御,エンジン出力抑制制御の開始判定を行うようになっている。したがって、まず、ヨーレイト偏差の絶対値|Ydev|が予め設定されている第1所定値Yr1(第1閾値)以上である場合には、ヨーモーメント制動制御判定部36においてヨーレイト制動制御の開始条件が成立すると、ヨーモーメント制動制御が実施される。
また、ヨーレイト偏差の絶対値|Ydev|が第1所定値Yr1よりも大きな値として予め設定されている第2所定値Yr2(第2閾値)以上である場合には、エンジン出力抑制制御判定部37においてエンジン出力抑制制御の開始条件が成立すると、上記のヨーモーメント制動制御に加えて、エンジン出力抑制制御が実施されることになる。
本発明の一実施形態にかかる車両の挙動制御装置は上述のように構成されているので、例えば図3(a)、(b)に示すように制御が実施される。図3(a)に示すフローは、ヨーモーメント制動制御判定部36において判定されるフローであり、図3(b)に示すフローは、エンジン出力抑制制御判定部37において判定されるフローである。これらのフローは各々独立して実行されている。
まず、ヨーモーメント制動制御判定部36では、図3(a)に示すフローに従って判定制御が実施される。ステップA10では、ヨーレイト偏差算出部32で算出されたヨーレイト偏差の絶対値|Ydev|が、第1所定値Yr1以上であるか否かが判定される。ここで、|Ydev|≧Yr1の場合にはステップA20へ進み、|Ydev|<Yr1の場合にはそのままこのフローを終了する。
ステップA20では、車体速Vbが基準値V1以上であるかが判定される。Vb≧V1の場合にはステップA30へ進み、ヨーモーメント制動制御を開始して、このフローを終了する。また、Vb<V1の場合には、そのままこのフローを終了する。
一方、エンジン出力抑制制御判定部37では、図3(b)に示すフローに従って判定制御が実施される。ステップB10では、ヨーレイト偏差の絶対値|Ydev|が、第2所定値Yr2よりも大きいか否かが判定される。なお、第2所定値Yr2は、第1所定値Yr1よりも大きい値(すなわち、第1所定値よりも不安定なステア特性の状態に対応する値)として設定されている。ここで、|Ydev|≧Yr2の場合には、ステップB20へ進み、|Ydev|<Yr2の場合には、そのままこのフローを終了する。
ステップB20では、車体速Vbが基準値V1以上であるかが判定される。Vb≧V1の場合にはステップB30へ進み、エンジン出力抑制制御を開始して、このフローを終了する。また、Vb<V1の場合には、そのままこのフローを終了する。
つまり、図3(a)、(b)に示すフローによって、車体速Vbが基準値V1以上であるとき、|Ydev|≧Yr2の場合には、ヨーモーメント制動制御とエンジン出力抑制制御とがともに開始されるが、Yr1<|Ydev|≦Yr2の場合には、ヨーモーメント制動制御のみが開始されることになる。また、ヨーモーメント制動制御のみが開始された後に、ヨーモーメント制動制御のみでは車両のステア特性を十分に安定化することができず、|Ydev|>Yr2になってしまったときには、その時点でエンジン出力抑制制御が開始されることになる。
本発明の一実施形態にかかる車両の挙動制御装置の上述の制御による、車両の挙動について、図4を用いて説明する。
まず、車両の旋回時には、目標ヨーレイト算出部31において、車体速Vbと実舵角δとに基づいて目標ヨーレイトYtが算出され、ヨーレイト偏差算出手段32において目標ヨーレイトYtと実ヨーレイトYrとに基づいてヨーレイト偏差Ydevが算出される。このように、安定した旋回を行うための理論上のヨーレイト(目標ヨーレイトYt)と実際のヨーレイト(実ヨーレイトYr)との偏差を算出することで、車両を安定化させるために必要な(すなわち、不足している、又は過剰な)ヨーレイトを的確に把握することができる。
次に、目標ヨーモーメント算出部33においてヨーレイト偏差Ydevに基づいて目標ヨーモーメントYMdが算出される。この目標ヨーモーメントYMdがYMd≧0の場合には車両のステア特性がアンダステア(US)傾向にあると判定され、YMd<0の場合にはオーバステア(OS)傾向にあると判定される。また、ヨーモーメント制動制御判定部36及びエンジン出力抑制制御判定部37では、ヨーレイト偏差の絶対値と第1所定値Yr1,第2所定値Yr2との比較がなされる。
図4(a)に示すように、車両のステア特性がオーバステアの場合において、A地点でヨーレイト偏差の絶対値|Ydev|が第1所定値Yr1以上であると判定された場合、ヨーモーメント制動制御判定部36においてヨーモーメント制動制御の開始判定(Vb≧V1か否か)が実施され、ヨーモーメント制動制御の開始条件が成立すると、ヨーモーメント制動制御が開始される。つまり、旋回外輪の前輪5FLに制動力が付与されるとともに、旋回内輪の後輪5RRに制動力が働いている時にはその制動力が減少するように制御される。このような制動力の付与によって車両に復元方向へのモーメントが働き、B地点においてヨーモーメント制動制御の終了条件が成立して、ヨーモーメント制動制御が終了する。
また、C地点でヨーレイト偏差の絶対値|Ydev|が第1所定値Yr1以上であると判定され、ヨーモーメント制動制御が開始された後、D地点でさらにヨーレイト偏差の絶対値|Ydev|が第2所定値Yr2以上であると判定された場合、エンジン出力抑制制御部37においてエンジン出力抑制制御の開始判定が実施され、エンジン出力抑制制御の開始条件(Vb≧V1か否か)が成立すると、エンジン出力抑制制御も開始される。つまり、上述のヨーモーメント制動制御に加えて、エンジンの出力が抑制される。これにより、車両に復元方向へのヨーモーメントが働き、かつ車両の推進力が抑制され、E地点においてヨーモーメント制動制御及びエンジン出力抑制制御の終了条件が成立して、各々の制御が終了する。
したがって、A地点からB地点間、C地点からD地点間のように、ヨーレイト偏差の絶対値|Ydev|が第1所定値Yr1以上で第2所定値Yr2未満の場合、すなわち、車両の挙動の乱れが小さいときやドライバが車両の姿勢を制御できるときには、エンジン出力抑制制御が開始されずヨーモーメント制動制御のみが開始されて、車両が必要以上に減速しないため、ドライバの違和感を低減させることができる。また、ヨーレイト偏差の絶対値|Ydev|が第2所定値Yr2以上となるD地点からE地点間のように、車両の挙動の乱れが大きいときやドライバが車両の姿勢を制御できないときには、ヨーモーメント制動制御に加えてエンジン出力抑制制御によってエンジン出力を抑え、車両を安定させることができる。
また、図4(b)に示すように、車両のステア特性がアンダステアの場合、ヨーモーメント制動制御として、旋回内輪の後輪5RRに制動力が付与されるように制御されること以外は同様の制御が行われる。
F地点でヨーレイト偏差の絶対値|Ydev|が第1所定値Yr1以上であると判定された場合、ヨーモーメント制動制御判定部36においてヨーモーメント制動制御の開始判定(Vb≧V1か否か)が実施され、ヨーモーメント制動制御の開始条件が成立すると、ヨーモーメント制動制御が開始され、旋回内輪の後輪5RRに制動力が付与されるように制御される。このような制動力の付与によって車両に回頭方向へのモーメントが働き、G地点においてヨーモーメント制動制御の終了条件が成立して、ヨーモーメント制動制御が終了する。
また、H地点でヨーレイト偏差の絶対値|Ydev|が第1所定値Yr1以上であると判定されて、ヨーモーメント制動制御が開始された後、I地点でさらにヨーレイト偏差の絶対値|Ydev|が第2所定値Yr2以上であると判定された場合、エンジン出力抑制制御部37においてエンジン出力抑制制御の開始判定が実施され、エンジン出力抑制制御の開始条件(Vb≧V1か否か)が成立すると、エンジン出力抑制制御も開始される。つまり、上述のヨーモーメント制動制御に加えて、エンジンの出力が抑制される。これにより、車両に回頭方向へのヨーモーメントが働き、かつ車両の推進力が抑制され、J地点においてヨーモーメント制動制御及びエンジン出力抑制制御の終了条件が成立して、各々の制御が終了する。
したがって、F地点からG地点間、H地点からI地点間のように、ヨーレイト偏差の絶対値|Ydev|が第1所定値Yr1以上で第2所定値Yr2未満の場合、すなわち、車両の挙動の乱れが小さいときやドライバが車両の姿勢を制御できるときには、エンジン出力抑制制御が開始されずヨーモーメント制動制御のみが開始されて必要以上に減速することがないため、ドライバの違和感を低減させることができる。また、ヨーレイト偏差の絶対値|Ydev|が第2所定値Yr2以上となるI地点からJ地点間のように、車両の挙動の乱れが大きいときやドライバが車両の姿勢を制御できないときには、ヨーモーメント制動制御に加えてエンジン出力抑制制御によってエンジン出力を抑え、車両を安定させることができる。
このように、本車両の挙動制御装置によれば、ヨーレイト偏差の絶対値の大きさに応じて、ヨーモーメント制動制御の開始判定、及びエンジン出力抑制制御の開始判定を行うかを指示して、各制動制御の開始を制御しているため、エンジン出力抑制制御による過剰な減速感などのドライバへの違和感を抑えながら、車両の安定性を確保することができる。
また、ヨーモーメント制動制御の開始条件とエンジン出力抑制制御の開始条件とが別個に設定されているため、ステア特性の状態に応じてそれぞれの制動制御を独立して開始することができる。
また、本実施形態においては、車両のステア特性に対応するステア特性値を算出して、ステア特性値と第1所定値,第2所定値との比較によって制御を行っているため、車両のステア特性に応じた正確な制御を実施することができる。特に、このステア特性値として、安定した旋回を行うための理論上のヨーレイト(目標ヨーレイトYt)と実際のヨーレイト(実ヨーレイトYr)との偏差(ヨーレイト偏差Ydev)を用いているため、アンダステアやオーバステアといった車両のステア特性を的確に把握することができ、車両を安定化させるために必要な(すなわち、不足している、または過剰な)ヨーレイトを的確に把握することができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、上述の実施形態においては、エンジン出力抑制制御の開始条件にかかる第2の基準値について、OS時の基準ヨーレイトYosteとUS時の基準ヨーレイトYusteとが同一の値に設定されているが、異なる値に設定してもよい。例えば、US時の基準ヨーレイトYusteをOS時の基準ヨーレイトYosteよりも小さく設定するとともに、US時とOS時との判定にかかる第2所定値を、新たに第3閾値として別個に設け、US時の第2所定値(つまり、第3閾値)をOS時の第2所定値(つまり、第2閾値)よりも小さく設定する。このような構成することで、US時にはOS時よりもエンジン出力抑制制御が実施されやすくすることができる。
つまり、エンジン出力抑制制御によって車両が減速すると、車体前方への荷重移動が発生し、前輪の横力(コーナリングフォース)が増加し、後輪の横力が減少する。そのため、車両のステア特性がUS時には車両の前輪が滑りにくくなり、ステア特性のUS傾向が弱められることになる。一方、車両のステア特性がOS時には車両の後輪が滑りやすくなり、ステア特性のOS傾向が強められることになる。したがって、US時にはOS時よりもエンジン出力抑制制御の開始条件にかかる基準ヨーレイトを小さくして、エンジン出力抑制制御を開始しやすくすることで、効果的に車両のステア特性を安定させることができる。
また、上述の実施形態において、エンジン出力抑制制御のエンジン出力の抑制量については、予め設定された抑制基準量を用いてもよいし、車両のステア特性や運転状態に応じたものとすることもできる。
また、上述の実施形態においては、ヨーモーメント制動制御及びエンジン出力抑制制御の各々の制御の開始条件として、ヨーレイト偏差の大きさ及び車体速を判定するようになっているが、ヨーレイト偏差の大きさのみによって判定してもよいし、或いはさらに別の条件を付加して設定してもよい。
本発明の一実施形態にかかる車両の挙動制御装置における制御ブロック図である。 本発明の一実施形態にかかる車両の挙動制御装置を備えた車両の制動システムの全体構成を示すシステム構成図である。 本発明の一実施形態にかかる車両の挙動制御装置による、ヨーモーメント制御を説明する制御フロー図であり、(a)はヨーモーメント制動制御にかかるフロー、(b)はエンジン出力抑制制御にかかるフローである。 本発明の一実施形態にかかる車両の挙動制御装置を備えた車両の右旋回時における挙動制御を模式的に説明する図であり、(a)はオーバステア時の制動制御を示す図、(b)はアンダステア時の制動制御を示す図である。
符号の説明
1 ブレーキぺダル
2 マスタシリンダ
3 制動用コントローラ(ブレーキECU)
4 ブレーキ液リザーバ
5FL,5FR,5RL,5RR 制動輪
6 ハイドロリックユニット
7 エンジンECU
8 エンジン
10 ホイールブレーキ
11 ハンドル角センサ
12 ヨーレイトセンサ(ステア特性検出手段)
14 マスタシリンダ液圧センサ
15 車輪速センサ
16 ブレーキスイッチ
17 前後・横加速度センサ
21 ヨーモーメント制御演算部
22 ブレーキ制御部
23 車両運動状態入力部
24 ドライバ運転状態入力部
31 目標ヨーレイト算出部
32 ヨーレイト偏差算出部
33 目標ヨーモーメント算出部
34 OS・US判定部(OS・US判定手段)
36 ヨーモーメント制動制御判定部
37 エンジン出力抑制制御判定部
61 インライン吸入弁
62 アウトライン吸入弁
63 インライン
64 アウトライン
65 ポンプ
66 液圧保持弁
67 減圧弁
68 差圧弁
71 出力制御部

Claims (4)

  1. 車両に設けられて該車両の左右輪を個別に制動しうる制動手段と、
    該車両のエンジンの出力を調整しうるエンジン出力調整手段と、
    該車両のステア特性に対応したパラメータの値を検出するステア特性検出手段と、
    該ステア特性検出手段で検出されたパラメータ値に基づいて、該車両のステア特性が第1の状態以上に不安定になったら、該制動手段を作動させ、該車両のステア特性が第1の状態よりも不安定な第2の状態以上に不安定になったら、該制動手段の作動に加えて該エンジン出力調整手段によりエンジン出力を低下させるステア特性制御手段と
    を備えたことを特徴とする、車両の挙動制御装置。
  2. 該ステア特性制御手段は、該ステア特性検出手段で検出されたパラメータ値が該第1の状態として予め設定された第1閾値以上であることを検出すると、該制動手段を作動させ、該ステア特性検出手段で検出されたパラメータ値が該第2の状態として予め設定された第1閾値よりも大きい第2閾値以上であることを検出すると、該制動手段を作動させるとともに、該エンジン出力調整手段によりエンジン出力を低下させる
    ことを特徴とする、請求項1記載の車両の挙動制御装置。
  3. 該ステア特性検出手段は、該ステア特性に対応したパラメータの値として該車両のヨーレイト偏差を算出し、
    該ステア特性制御手段は、該ヨーレイト偏差の絶対値と該第1閾値及び該第2閾値との比較を行う
    ことを特徴とする、請求項2記載の車両の挙動制御装置。
  4. 該ステア特性がアンダステア又はオーバステアの何れであるかを判定するOS・US判定手段を備え、
    該ステア特性制御手段は、該OS・US判定手段の判定結果に基づいて、該ステア特性がアンダステアの場合には、該第1の状態よりも不安定かつ該第2の状態よりも安定な第3の状態以上に不安定になったら、該制動手段の作動に加えて該エンジン出力調整手段によりエンジン出力を低下させる
    ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の挙動制御装置。
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