JP2005264392A - 合成繊維布帛処理剤、該合成繊維布帛処理剤を用いた機能性合成繊維布帛の製造方法および機能性合成繊維布帛 - Google Patents
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Abstract
【課題】 CD誘導体を強固に合成繊維布帛に固着でき、その耐久性にも優れた合成繊維布帛が得られる合成繊維布帛処理剤、該合成繊維布帛処理剤を用いた機能性合成繊維布帛の製造方法、およびCD誘導体が強固に固着し、その耐久性にも優れた機能性合成繊維布帛を提供すること。
【解決手段】 分子量が900〜500000のシクロデキストリン誘導体と有機溶媒とを含有する合成繊維布帛処理剤。水に対する溶解性が0.001〜100g/100mL(25℃)のシクロデキストリン誘導体と有機溶媒とを含有する合成繊維布帛処理剤。反応基を有するシクロデキストリン誘導体とポリイソシアネートとを含む合成繊維布帛処理剤。
【選択図】 なし
【解決手段】 分子量が900〜500000のシクロデキストリン誘導体と有機溶媒とを含有する合成繊維布帛処理剤。水に対する溶解性が0.001〜100g/100mL(25℃)のシクロデキストリン誘導体と有機溶媒とを含有する合成繊維布帛処理剤。反応基を有するシクロデキストリン誘導体とポリイソシアネートとを含む合成繊維布帛処理剤。
【選択図】 なし
Description
本発明は、シクロデキストリン誘導体を含む合成繊維布帛処理剤、該合成繊維布帛処理剤を用いた機能性合成繊維布帛の製造方法、および各種の機能が付与された機能性合成繊維布帛に関する。
シクロデキストリン(以下、CDと略記する)は、馬鈴薯やトウモロコシ澱粉から酵素反応等によって得られる、複数のブドウ糖分子が環状に連なったオリゴ糖であり、天然に存在している物質である。CDは、その環状構造の内部に疎水性の分子を取り込んで包接化合物を形成する性質(包接能)がある。すなわち、ある特定物質を吸着・捕獲し、さらにその吸着・捕獲した特定物質を放出・除去する性質を持つ化合物としてよく知られている。CDは、環状構造の大きさや包接能の大きさという観点から区別すると、6量体であるα−CD(内径:0.45nm)、7量体であるβ−CD(内径:0.70nm)、8量体であるγ−CD(内径:0.85nm)などの種類がある。
現在、CDの水酸基を化学修飾したCD誘導体として、様々なものが提案されている。CD誘導体は、溶媒の可溶性という観点から区別すると、水溶性のものと水難溶性のものがある。また、CD誘導体は、架橋剤との反応性という観点から区別すると、架橋剤と反応する反応基を有する反応性のものと、反応基を有さない非反応性のものに分けられる。
これらのCDやCD誘導体は、どのような特定物質を包接させるかの違いにより使い分けされている。
現在、CDの水酸基を化学修飾したCD誘導体として、様々なものが提案されている。CD誘導体は、溶媒の可溶性という観点から区別すると、水溶性のものと水難溶性のものがある。また、CD誘導体は、架橋剤との反応性という観点から区別すると、架橋剤と反応する反応基を有する反応性のものと、反応基を有さない非反応性のものに分けられる。
これらのCDやCD誘導体は、どのような特定物質を包接させるかの違いにより使い分けされている。
CDやCD誘導体は、上述のような包接能により、たとえば「臭いの素」であるメチルメルカプタン、トリメチルアミン、イソ吉草酸等を吸着・捕獲することができる。そのため、CDやCD誘導体を含有するものには消臭機能があると考えられる。
その中で、繊維布帛は、繊維や糸の織り込み等の状態にもよるが、通常、広い表面積を持つものが多い。したがって、CDやCD誘導体を含有させた繊維布帛は、包接能を持つCDやCD誘導体が広い表面積の各処に含まれることになるので、特定物質を効率よく吸着・捕獲する機能を有すると考えられ、食品や化粧品など種々の業界での応用展開が期待できる。このような機能性繊維布帛は、特に、繊維布帛にCDやCD誘導体が耐久性(耐洗濯性等)のある状態で固着されていれば、「臭いの素」を吸着させた後、水洗いや洗濯等によりその「臭いの素」をCDやCD誘導体内から放出・除去させることが可能であり、消臭・防臭性能が復活する繊維布帛などが考えられる。
その中で、繊維布帛は、繊維や糸の織り込み等の状態にもよるが、通常、広い表面積を持つものが多い。したがって、CDやCD誘導体を含有させた繊維布帛は、包接能を持つCDやCD誘導体が広い表面積の各処に含まれることになるので、特定物質を効率よく吸着・捕獲する機能を有すると考えられ、食品や化粧品など種々の業界での応用展開が期待できる。このような機能性繊維布帛は、特に、繊維布帛にCDやCD誘導体が耐久性(耐洗濯性等)のある状態で固着されていれば、「臭いの素」を吸着させた後、水洗いや洗濯等によりその「臭いの素」をCDやCD誘導体内から放出・除去させることが可能であり、消臭・防臭性能が復活する繊維布帛などが考えられる。
繊維布帛にCD誘導体を耐久性(耐洗濯性等)のある状態で固着する方法として、例えば特許文献1,2等には、繊維布帛に、モノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリン等のCD誘導体を、共有結合により固着する方法が記載されている。これは、繊維布帛として親水性であるセルロース系の繊維布帛を用い、CD誘導体として、水溶性であり反応性であるものを用いることにより、該セルロース系繊維布帛の表面のOH基とCD誘導体の反応基とを共有結合させることにより、耐久性のある固着を実現したものである。
特開平08−067702号公報
特開2002−065839号公報
しかし、このような方法は、合成繊維布帛に適用することが困難である。すなわち、合成繊維は一般に疎水性であり、セルロース系繊維布帛のように表面にOH基が存在しないかあるいはほとんど存在しないため、水溶性のCD誘導体を固着させようとしても固着しにくく、たとえば消臭等の機能性が付与されにくいという問題がある。またその固着も強固なものではなく、水洗や洗濯等により容易に流出してしまうなど、機能の耐久性がないという問題もある。そのため、度重なることに繊維布帛にCD誘導体の固着処理を施す必要があるなどの問題も生じる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、CD誘導体を強固に合成繊維布帛に固着でき、その耐久性にも優れた機能性合成繊維布帛が得られる合成繊維布帛処理剤、該合成繊維布帛処理剤を用いた機能性合成繊維布帛の製造方法、およびCD誘導体が強固に固着し、その耐久性にも優れた機能性合成繊維布帛を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明は、以下の態様を有する。
本発明の第1の態様は、分子量が900〜500000のシクロデキストリン誘導体と、有機溶媒とを含有することを特徴とする合成繊維布帛処理剤である。
本発明の第2の態様は、水に対する溶解性が0.001〜100g/100mL(25℃)のシクロデキストリン誘導体と、有機溶媒とを含有することを特徴とする合成繊維布帛処理剤である。
本発明の第3の態様は、反応基を有するシクロデキストリン誘導体と、ポリイソシアネートとを含むことを特徴とする合成繊維布帛処理剤である。
本発明の第1の態様は、分子量が900〜500000のシクロデキストリン誘導体と、有機溶媒とを含有することを特徴とする合成繊維布帛処理剤である。
本発明の第2の態様は、水に対する溶解性が0.001〜100g/100mL(25℃)のシクロデキストリン誘導体と、有機溶媒とを含有することを特徴とする合成繊維布帛処理剤である。
本発明の第3の態様は、反応基を有するシクロデキストリン誘導体と、ポリイソシアネートとを含むことを特徴とする合成繊維布帛処理剤である。
また、本発明の第4の態様は、第1または第2の態様に記載の合成繊維布帛処理剤に合成繊維布帛を接液する工程と、
合成繊維布帛処理剤に接液した合成繊維布帛に熱処理を施すことにより、合成繊維布帛処理剤中のシクロデキストリン誘導体を、合成繊維布帛の合成繊維表面および/または内部に固着する工程とを有することを特徴とする機能性合成繊維布帛の製造方法である。
本発明の第5の態様は、第3の態様に記載の合成繊維布帛処理剤に合成繊維布帛を接液する工程と、
該合成繊維布帛処理剤に接液した合成繊維布帛に、合成繊維布帛処理剤中のシクロデキストリン誘導体とポリイソシアネートとの反応を促進する反応促進処理を施す工程と、
該反応促進処理を施した合成繊維布帛に熱処理を施し、合成繊維布帛処理剤中のシクロデキストリン誘導体とポリイソシアネートとの反応生成物(I)を、合成繊維布帛の合成繊維表面および/または内部に固着する工程とを有することを特徴とする機能性合成繊維布帛の製造方法である。
合成繊維布帛処理剤に接液した合成繊維布帛に熱処理を施すことにより、合成繊維布帛処理剤中のシクロデキストリン誘導体を、合成繊維布帛の合成繊維表面および/または内部に固着する工程とを有することを特徴とする機能性合成繊維布帛の製造方法である。
本発明の第5の態様は、第3の態様に記載の合成繊維布帛処理剤に合成繊維布帛を接液する工程と、
該合成繊維布帛処理剤に接液した合成繊維布帛に、合成繊維布帛処理剤中のシクロデキストリン誘導体とポリイソシアネートとの反応を促進する反応促進処理を施す工程と、
該反応促進処理を施した合成繊維布帛に熱処理を施し、合成繊維布帛処理剤中のシクロデキストリン誘導体とポリイソシアネートとの反応生成物(I)を、合成繊維布帛の合成繊維表面および/または内部に固着する工程とを有することを特徴とする機能性合成繊維布帛の製造方法である。
さらに、本発明の第6の態様は、分子量が900〜500000のCD誘導体、または水に対する溶解性が0.001〜100g/100mL(25℃)のCD誘導体が、合成繊維表面および/または内部に固着されていることを特徴とする機能性合成繊維布帛である。
本発明の第7の態様は、CD誘導体とポリイソシアネートとの反応生成物(I)が、合成繊維表面および/または内部に固着されていることを特徴とする機能性合成繊維布帛である。
前記第7の態様に記載の機能性合成繊維布帛は、さらに、ポリイソシアネートと合成繊維との反応生成物(II)、および/またはシクロデキストリン誘導体とポリイソシアネートと合成繊維との反応生成物(III)が、合成繊維表面および/または内部に固着されていることが好ましい。
本発明の第7の態様は、CD誘導体とポリイソシアネートとの反応生成物(I)が、合成繊維表面および/または内部に固着されていることを特徴とする機能性合成繊維布帛である。
前記第7の態様に記載の機能性合成繊維布帛は、さらに、ポリイソシアネートと合成繊維との反応生成物(II)、および/またはシクロデキストリン誘導体とポリイソシアネートと合成繊維との反応生成物(III)が、合成繊維表面および/または内部に固着されていることが好ましい。
なお、本発明において、「機能性合成繊維布帛」とは、その合成繊維表面および/または内部に、CD誘導体またはCD誘導体とポリイソシアネートとの反応生成物が固着されていることにより、消臭機能等の各種機能が付与された合成繊維布帛を意味する。
本発明により、CD誘導体を合成繊維布帛に強固に固着でき、その耐久性にも優れた機能性合成繊維布帛が得られる合成繊維布帛処理剤、該合成繊維処理剤を用いた機能性合成繊維布帛の製造方法および機能性合成繊維布帛を提供できる。
本発明においては、合繊繊維布帛にCD誘導体が強固に固着されているので、その包接能により、ある特定物質を吸着・捕獲でき、しかもその後、水洗いや洗濯等により該特定物質を放出・除去できる。つまり、CD誘導体が、耐久性(耐洗濯性等)のある状態で固着されることで、種々の特定物質、例えば該合成繊維布帛あるいはそれを用いた繊維製品に付着する「臭いの素」等を低減化する機能を有し、さらに、水洗、洗濯等の簡便な操作によりその機能を回復することができる。また、CD誘導体の固着処理を何度も施す必要がない。
したがって、本発明の機能性合成繊維布帛は、たとえば、CD誘導体に吸着・捕獲され、放出・除去される特定物質がヨウ素であれば、抗菌機能をもった合成繊維布帛として、病院・介護用の寝具類として展開が可能である。また、特定物質が、漢方抽出エキス等であれば、皮膚炎等に対する緩和機能を持った被覆保護材として展開できる。さらに、特定物質がビタミンE等のビタミン類であれば、抗酸化機能をもった合成繊維布帛として、肌着、手袋、靴下などの皮膚に直接触れる繊維製品への用途の展開ができる。
本発明においては、合繊繊維布帛にCD誘導体が強固に固着されているので、その包接能により、ある特定物質を吸着・捕獲でき、しかもその後、水洗いや洗濯等により該特定物質を放出・除去できる。つまり、CD誘導体が、耐久性(耐洗濯性等)のある状態で固着されることで、種々の特定物質、例えば該合成繊維布帛あるいはそれを用いた繊維製品に付着する「臭いの素」等を低減化する機能を有し、さらに、水洗、洗濯等の簡便な操作によりその機能を回復することができる。また、CD誘導体の固着処理を何度も施す必要がない。
したがって、本発明の機能性合成繊維布帛は、たとえば、CD誘導体に吸着・捕獲され、放出・除去される特定物質がヨウ素であれば、抗菌機能をもった合成繊維布帛として、病院・介護用の寝具類として展開が可能である。また、特定物質が、漢方抽出エキス等であれば、皮膚炎等に対する緩和機能を持った被覆保護材として展開できる。さらに、特定物質がビタミンE等のビタミン類であれば、抗酸化機能をもった合成繊維布帛として、肌着、手袋、靴下などの皮膚に直接触れる繊維製品への用途の展開ができる。
以下、本発明についてより詳細に説明する。
本発明において、CD誘導体は、CDおよび/またはCDに化学修飾を施したものを意味し、例えばCDの水酸基の一部または全部を、アルキル化、ヒドロキシアルキル化、アセチル化等の反応により置換等を行ったものが挙げられる。
CD誘導体としては、特に限定されず、例えばα-CD誘導体、β-CD誘導体、γ-CD誘導体等が利用でき、CDの環状構造や包接能の大きさ、能力の違い等を考慮して適宜決定すればよい。これらのCD誘導体は、1種類を単独でもちいてもよく、2種以上が混在しているものであってもよい。例えば一つの機能(メチルメルカプタンの消臭性等)を集中して付与したい場合には、一種類のCD誘導体のみを選択するのが好ましい。
本発明において、CD誘導体は、CDおよび/またはCDに化学修飾を施したものを意味し、例えばCDの水酸基の一部または全部を、アルキル化、ヒドロキシアルキル化、アセチル化等の反応により置換等を行ったものが挙げられる。
CD誘導体としては、特に限定されず、例えばα-CD誘導体、β-CD誘導体、γ-CD誘導体等が利用でき、CDの環状構造や包接能の大きさ、能力の違い等を考慮して適宜決定すればよい。これらのCD誘導体は、1種類を単独でもちいてもよく、2種以上が混在しているものであってもよい。例えば一つの機能(メチルメルカプタンの消臭性等)を集中して付与したい場合には、一種類のCD誘導体のみを選択するのが好ましい。
[第1の態様の合成繊維布帛処理剤]
第1の態様において用いられるCD誘導体は、分子量が900〜500000であればよい。分子量が900未満であると、耐久性に乏しく、たとえば、水洗をすることで、繊維布帛の表面または内部から簡単に、流れ出てしまうことがある。また、500000を超えると、有機溶媒により、膨潤された繊維布帛の表面または内部に入り込める大きさを超えてしまうこともある。CD誘導体の分子量は、さらに好ましくは1100〜400000の範囲である。
CD誘導体としては、上記分子量の範囲内のものであれば特に限定されず、水溶性のものであっても水難溶性のものであってもよい。また、架橋剤と反応する反応基を有する反応性のものであっても、反応基を有さない非反応性のものであってもよい。
分子量が900〜500000のCD誘導体としては、トリアセチル−α−CD、トリアセチル−β−CD、トリアセチル−γ−CD等が挙げられる。
これらの中でも、本発明の効果に優れる点で、水難溶性のCD誘導体が好ましく、後述する本発明の第2の態様において用いられる水に対する溶解性が0.001〜100g/100mL(25℃)のCD誘導体がより好ましい。例えば分子内に水酸基をまったく持たないCD誘導体がより好ましい。このようなCD誘導体としては、例えば、トリアセチル−α−CD、トリアセチル−β−CD、トリアセチル−γ−CD等が挙げられる。
第1の態様において用いられるCD誘導体は、分子量が900〜500000であればよい。分子量が900未満であると、耐久性に乏しく、たとえば、水洗をすることで、繊維布帛の表面または内部から簡単に、流れ出てしまうことがある。また、500000を超えると、有機溶媒により、膨潤された繊維布帛の表面または内部に入り込める大きさを超えてしまうこともある。CD誘導体の分子量は、さらに好ましくは1100〜400000の範囲である。
CD誘導体としては、上記分子量の範囲内のものであれば特に限定されず、水溶性のものであっても水難溶性のものであってもよい。また、架橋剤と反応する反応基を有する反応性のものであっても、反応基を有さない非反応性のものであってもよい。
分子量が900〜500000のCD誘導体としては、トリアセチル−α−CD、トリアセチル−β−CD、トリアセチル−γ−CD等が挙げられる。
これらの中でも、本発明の効果に優れる点で、水難溶性のCD誘導体が好ましく、後述する本発明の第2の態様において用いられる水に対する溶解性が0.001〜100g/100mL(25℃)のCD誘導体がより好ましい。例えば分子内に水酸基をまったく持たないCD誘導体がより好ましい。このようなCD誘導体としては、例えば、トリアセチル−α−CD、トリアセチル−β−CD、トリアセチル−γ−CD等が挙げられる。
有機溶媒としては、合成繊維を膨潤できるものであれば特に限定されず、例えばN,N’−ジメチルホルムアミド(以下DMFと表記する)、ジメチルスルホキシド(以下DMSOと表記する)、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン等の有機溶媒が挙げられる。これらの中でも、DMF、DMSOが好ましい。有機溶媒は、1種単独であっても2種以上の混合物であってもよい。
第1の態様の合成繊維布帛処理剤は、CD誘導体が有機溶媒に溶解した状態、分散した状態、エマルジョン、コロイド等のいかなる形態であってもよい。
第1の態様の合成繊維布帛処理剤は、CD誘導体および有機溶媒以外に、水を含んでいてもかまわないが、本発明の効果の点で、水が極力含まれていないことが好ましい。
第1の態様の合成繊維布帛処理剤中、CD誘導体は、使用する有機溶媒にもよるが、固形分に換算すると、合成繊維布帛処理剤の総質量に対し、0.5〜30質量%の濃度で含まれていることが好ましい。CD誘導体が0.5質量%未満であると固着の効率が悪く、30質量%を超えると濃度に応じた効果はなく、また、たとえば合成繊維布帛がいわゆる糊付け状態となって柔軟性・ドレープ性の風合いを阻害することがある。
第1の態様の合成繊維布帛処理剤により上記目的が達成される理由としては、以下のことが考えられる。すなわち、合成繊維布帛処理剤を合成繊維布帛に接液させた際に、疎水性繊維である合成繊維布帛が有機溶媒により膨潤し、合成繊維の表面および/または内部に隙間が生じる。そして、分子量が900〜500000の範囲のCD誘導体であれば、その隙間に入り込める。つまり、CD誘導体が合成繊維の表面および/または内部に物理的に格納される。そして、有機溶媒を飛散、洗い出した後、膨潤した合成繊維が収縮することで、CD誘導体が、耐久性のある状態で固着されると考えられる。
[第2の態様の合成繊維布帛処理剤]
第2の態様において用いられるCD誘導体は、水に対する溶解性が0.001〜100g/100mL(25℃)のものである。水に対する溶解性が、0.001/100ml(25℃)未満であると、有機溶剤に残留するわずかの水分であっても処理液として調製することが難しくなる場合がある。また、水に対する溶解性が100g/100ml(25℃)を超えると、耐久性に乏しく、たとえば、水洗をすることで、合成繊維布帛の表面または内部から簡単に、流れ出てしまうことがある。CD誘導体の、水に対する溶解性は、より好ましくは0.005〜50g/100ml(25℃)の範囲である。
CD誘導体としては、上記溶解性を有するものであれば特に限定されず、架橋剤と反応する反応基を有する反応性のものであっても、反応基を有さない非反応性のものであってもよい。
水に対する溶解性が0.001〜100g/100mL(25℃)のCD誘導体としては、トリアセチル−α−CD、トリアセチル−β−CD、トリアセチル−γ−CD等が挙げられる。
これらの中でも、本発明の効果に優れる点で、上述した本発明の第1の態様において用いられる、分子量が900〜500000のCD誘導体がより好ましく、例えばトリアセチル−α−CD、トリアセチル−β−CD、トリアセチル−γ−CD等が挙げられる。
第2の態様において用いられるCD誘導体は、水に対する溶解性が0.001〜100g/100mL(25℃)のものである。水に対する溶解性が、0.001/100ml(25℃)未満であると、有機溶剤に残留するわずかの水分であっても処理液として調製することが難しくなる場合がある。また、水に対する溶解性が100g/100ml(25℃)を超えると、耐久性に乏しく、たとえば、水洗をすることで、合成繊維布帛の表面または内部から簡単に、流れ出てしまうことがある。CD誘導体の、水に対する溶解性は、より好ましくは0.005〜50g/100ml(25℃)の範囲である。
CD誘導体としては、上記溶解性を有するものであれば特に限定されず、架橋剤と反応する反応基を有する反応性のものであっても、反応基を有さない非反応性のものであってもよい。
水に対する溶解性が0.001〜100g/100mL(25℃)のCD誘導体としては、トリアセチル−α−CD、トリアセチル−β−CD、トリアセチル−γ−CD等が挙げられる。
これらの中でも、本発明の効果に優れる点で、上述した本発明の第1の態様において用いられる、分子量が900〜500000のCD誘導体がより好ましく、例えばトリアセチル−α−CD、トリアセチル−β−CD、トリアセチル−γ−CD等が挙げられる。
有機溶媒としては、上記第1の態様において述べた有機溶媒と同様のものが使用できる。
第2の態様の合成繊維布帛処理剤は、CD誘導体が有機溶媒に溶解した状態、分散した状態、エマルジョン、コロイド等のいかなる形態であってもよい。
第2の態様の合成繊維布帛処理剤中、CD誘導体は、使用する有機溶媒にもよるが、固形分に換算すると、合成繊維布帛処理剤の総質量に対し、0.5〜30質量%の濃度で含まれていることが好ましい。CD誘導体が0.5質量%未満であると固着の効率が悪く、30質量%を超えると濃度に応じた効果は期待できない。
第2の態様の合成繊維布帛処理剤は、CD誘導体および有機溶媒以外に、水を含んでいてもかまわないが、本発明の効果の点で、水が極力含まれていないことが好ましい。
第2の態様の合成繊維布帛処理剤により上記目的が達成される理由としては、以下のことが考えられる。すなわち、第2の態様の合成繊維布帛処理剤により、上記と同様、合成繊維布帛が膨潤し、CD誘導体が繊維の表面および/または内部に格納されやすくなる。さらに、合成繊維は、疎水性であるためその表面にOH基のような親水基を持たないことと、水難溶性CDも親水基を持たないことで、合成繊維とCD誘導体との間で疎水性相互作用による固定化もある。そのため、上記の有機溶媒の膨潤性との併用によって、耐久性のある固着がされるものと推察される。つまり、疎水性のCDであるため、繊維表面を水洗や洗濯等したとしても流れ出ることが少ないものと考えられる。
[第3の態様の合成繊維布帛処理剤]
第2の態様において用いられるCD誘導体は、その分子内に、反応基を有するものである。ここで、「反応基」とは、ポリイソシアネートとの反応性を有する基である。反応基としては、例えば水酸基、アミノ基等が挙げられる。
反応基を有するCD誘導体としては、例えば、α−CD、β−CD、γ−CD等の未修飾ののCDの他に、2−ヒドロキシプロピル−α(またはβまたはγ)−CDやアセチル−α(またはβまたはγ)−CDやメチル−α(またはβまたはγ)−CDなどが挙げられる。
第2の態様において用いられるCD誘導体は、その分子内に、反応基を有するものである。ここで、「反応基」とは、ポリイソシアネートとの反応性を有する基である。反応基としては、例えば水酸基、アミノ基等が挙げられる。
反応基を有するCD誘導体としては、例えば、α−CD、β−CD、γ−CD等の未修飾ののCDの他に、2−ヒドロキシプロピル−α(またはβまたはγ)−CDやアセチル−α(またはβまたはγ)−CDやメチル−α(またはβまたはγ)−CDなどが挙げられる。
ポリイソシアネートは、その分子内に複数個のイソシアネート基を有している化合物であり、一般的に架橋剤として用いられているポリイソシアネートが利用できる。
ポリイソシアネートとしては、たとえば、4,4’−メチレンビス(シクロへキシルイソシアネート)、トルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2,5−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、キシリレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート等のジイソシアネート;1−メチルベンゼン−2,4,6−トリイソシアネート、ナフタリン−1,3,7−トリイソシアネート、ビフェニル−2,4,4’−トリイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート等のトリイソシアネートなどが挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、たとえば、4,4’−メチレンビス(シクロへキシルイソシアネート)、トルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2,5−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、キシリレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート等のジイソシアネート;1−メチルベンゼン−2,4,6−トリイソシアネート、ナフタリン−1,3,7−トリイソシアネート、ビフェニル−2,4,4’−トリイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート等のトリイソシアネートなどが挙げられる。
本態様の合成繊維布帛処理剤を用いて合成繊維布帛を処理した場合、合成繊維布帛上で、CD誘導体とポリイソシアネートとが反応して反応生成物(I)を形成し、反応、固定化される。すなわち、CD誘導体は、CD誘導体とポリイソシアネートとの反応生成物(I)の形態で、合成繊維の表面および/または内部に固着される。つまり、本態様の合成繊維布帛処理剤を用いる場合、上記第1および第2の態様のように有機溶剤を含んでいなくとも、充分強固に固着し、その耐久性にも優れた機能性合成繊維布帛が得られる。
ここで、「CD誘導体とポリイソシアネートとの反応生成物(I)」は、複数のCD誘導体が、ジイソシアネート等のポリイソシアネートを介して鎖状に結合したポリマーの形態であってもよく、また、網目状、3次元構造のように複雑に結合した架橋構造の形態であってもよい。
ここで、「CD誘導体とポリイソシアネートとの反応生成物(I)」は、複数のCD誘導体が、ジイソシアネート等のポリイソシアネートを介して鎖状に結合したポリマーの形態であってもよく、また、網目状、3次元構造のように複雑に結合した架橋構造の形態であってもよい。
したがって、本態様の合成繊維布帛処理剤は、上述した第1の態様および第2の態様のように有機溶媒を含有していても、していなくともよく、例えば溶媒に溶解した状態、分散した状態、エマルジョン、コロイド等の形態であってもよい。
また、たとえば親水化処理されたポリエステル繊維やポリアミド繊維などのように、アミノ基、水酸基等の反応基を有する合成繊維の場合、本態様の合成繊維布帛処理剤を用いて合成繊維布帛を処理することにより、合成繊維布帛上で、該合成繊維の反応基とポリイソシアネートとを反応させ、鎖状のポリマーの形態とすることができる。また、該合成繊維の反応基およびCD誘導体の反応基とポリイソシアネートとを反応させ、鎖状のポリマーまたは架橋構造の形態とすることができる。すなわち、合成繊維表面および/または内部に、上記反応生成物(I)に加えて、さらに、ポリイソシアネートと合成繊維との反応生成物(II)、および/またはCD誘導体とポリイソシアネートと合成繊維との反応生成物(III)を固着させることができる。この場合、本発明の効果がさらに優れたものとなる。
[第4の態様の機能性合成繊維布帛の製造方法]
本態様の製造方法は、上記第1または第2の態様の合成繊維布帛処理剤を用いる機能性合成繊維布帛の製造方法であり、以下の工程を有する。
・第1または第2の態様の合成繊維布帛処理剤に合成繊維布帛を接液する工程(接液工程)
・合成繊維布帛処理剤に接液した合成繊維布帛に熱処理を施すことにより、合成繊維布帛処理剤中のCD誘導体を、合成繊維布帛の合成繊維表面および/または内部に固着する工程(固定化工程)
本態様の製造方法は、上記第1または第2の態様の合成繊維布帛処理剤を用いる機能性合成繊維布帛の製造方法であり、以下の工程を有する。
・第1または第2の態様の合成繊維布帛処理剤に合成繊維布帛を接液する工程(接液工程)
・合成繊維布帛処理剤に接液した合成繊維布帛に熱処理を施すことにより、合成繊維布帛処理剤中のCD誘導体を、合成繊維布帛の合成繊維表面および/または内部に固着する工程(固定化工程)
[接液工程]
接液工程で用いられる合成繊維布帛を構成する合成繊維としては、ナイロン、アクリル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリトリメチレンテレフタレート等の合成繊維、あるいはこれらの合成繊維から選択される複数種からなる混紡繊維や複合繊維等が挙げられる。本発明は、疎水性繊維である合成繊維の布帛に対して効果的であり、なかでも、表面等に水酸基を持たない合成繊維布帛、たとえば、ナイロン等のポリアミド繊維やポリエステル繊維、あるいはこれらの繊維を含む混紡繊維や複合繊維からなる布帛に対して効果的であり、ポリエステル繊維が特に好ましい。
合成繊維布帛の形態は、特に限定されず、織物、編物、不織布等が挙げられる。またそれらに精練、染色、抗菌加工、SR加工、防炎加工、帯電防止加工等が施されたものであってもよい。また、衣類、肌着等の縫製品や手袋、靴下、寝具(シーツ、カバー、布団側地等)の製品に加工したものであってもよいし、加工する前のものであってもよい。
接液工程で用いられる合成繊維布帛を構成する合成繊維としては、ナイロン、アクリル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリトリメチレンテレフタレート等の合成繊維、あるいはこれらの合成繊維から選択される複数種からなる混紡繊維や複合繊維等が挙げられる。本発明は、疎水性繊維である合成繊維の布帛に対して効果的であり、なかでも、表面等に水酸基を持たない合成繊維布帛、たとえば、ナイロン等のポリアミド繊維やポリエステル繊維、あるいはこれらの繊維を含む混紡繊維や複合繊維からなる布帛に対して効果的であり、ポリエステル繊維が特に好ましい。
合成繊維布帛の形態は、特に限定されず、織物、編物、不織布等が挙げられる。またそれらに精練、染色、抗菌加工、SR加工、防炎加工、帯電防止加工等が施されたものであってもよい。また、衣類、肌着等の縫製品や手袋、靴下、寝具(シーツ、カバー、布団側地等)の製品に加工したものであってもよいし、加工する前のものであってもよい。
合成繊維布帛処理剤に合成繊維布帛を接液する方法としては、浸漬処理法やパディング法などがあり、特に限定されるものでない。たとえば、パディング法では、合成繊維布帛に合成繊維布帛処理剤を接液させた後、必要に応じて合成繊維布帛を絞り、合成繊維布帛処理剤の付着量を調整する。さらに、80〜120℃で、1〜20分間、加熱乾燥(乾熱処理)する。なお、この条件の乾熱処理段階では、CD誘導体は固着しにくい。
[固定化工程]
次に、加熱乾燥した合成繊維布帛の合成繊維表面および/または内部にCD誘導体を固着させる。この工程では、上記接液工程で加熱乾燥した合成繊維布帛を130〜180℃にて、0.5〜30分間加熱する加熱固着処理を行う。
この加熱固着処理によって、CD誘導体は合成繊維布帛の表面および/または内部に固着され、分子量が900〜500000のCD誘導体、または水に対する溶解性が0.001〜100g/100mL(25℃)の水難溶性のCD誘導体が、耐久性(耐洗濯性など)のある状態で固着された機能性合成繊維布帛、すなわち本発明の第6の態様の機能性合成繊維布帛が得られる。
次に、加熱乾燥した合成繊維布帛の合成繊維表面および/または内部にCD誘導体を固着させる。この工程では、上記接液工程で加熱乾燥した合成繊維布帛を130〜180℃にて、0.5〜30分間加熱する加熱固着処理を行う。
この加熱固着処理によって、CD誘導体は合成繊維布帛の表面および/または内部に固着され、分子量が900〜500000のCD誘導体、または水に対する溶解性が0.001〜100g/100mL(25℃)の水難溶性のCD誘導体が、耐久性(耐洗濯性など)のある状態で固着された機能性合成繊維布帛、すなわち本発明の第6の態様の機能性合成繊維布帛が得られる。
[第5の態様の合成繊維布帛の製造方法]
本態様の製造方法は、上記第3の態様の合成繊維布帛処理剤を用いる機能性合成繊維布帛の製造方法であり、以下の工程を有する。
・第3の態様の合成繊維布帛処理剤に合成繊維布帛を接液する工程(接液工程)
・合成繊維布帛処理剤に接液した合成繊維布帛に、合成繊維布帛処理剤中のCD誘導体とポリイソシアネートとの反応を促進する反応促進処理を施す工程(反応促進工程)
・反応促進処理を施した合成繊維布帛に熱処理を施し、合成繊維布帛処理剤中のCD誘導体とポリイソシアネートとの反応生成物(I)を、合成繊維布帛の合成繊維表面および/または内部に固着する工程(固定化工程)
本態様の製造方法は、上記第3の態様の合成繊維布帛処理剤を用いる機能性合成繊維布帛の製造方法であり、以下の工程を有する。
・第3の態様の合成繊維布帛処理剤に合成繊維布帛を接液する工程(接液工程)
・合成繊維布帛処理剤に接液した合成繊維布帛に、合成繊維布帛処理剤中のCD誘導体とポリイソシアネートとの反応を促進する反応促進処理を施す工程(反応促進工程)
・反応促進処理を施した合成繊維布帛に熱処理を施し、合成繊維布帛処理剤中のCD誘導体とポリイソシアネートとの反応生成物(I)を、合成繊維布帛の合成繊維表面および/または内部に固着する工程(固定化工程)
[接液工程]
接液工程は、上記第4の態様における接液工程と同様にして行うことができる。
接液工程は、上記第4の態様における接液工程と同様にして行うことができる。
[反応促進工程]
次いで、合成繊維布帛処理剤に接液した合成繊維布帛に、合成繊維布帛処理剤中のシクロデキストリン誘導体とポリイソシアネートとの反応を促進する反応促進処理を行う。
反応促進処理方法としては、浸漬処理法やコールドバッチ法などがあり、特に限定されるものではない。たとえば、合成繊維布帛に合成繊維布帛処理剤を接液させた後、必用に応じて繊維布帛を絞り、さらに、20〜80℃で、1〜72時間、保温(反応促進処理)する。
この反応促進処理は、密閉状態で行うことが好ましい。反応促進処理を密閉状態で行うことにより、固定化効率を上げることができて好ましい。さらに、密閉状態とすることにより、空気中の水分がポリイソシアネートと反応するのを防ぐことができる。また、例えば反応促進処理を行う際に、マイグレーションや乾燥ムラの発生を緩和できる。この緩和効果は、特に、合成繊維処理剤が有機溶媒を含有する場合に有効である。
密閉状態とする方法としては、例えば、ポリ塩化ビニリデンフィルム(例えばサランラップ(登録商標、旭化成(株)製))等のプラスチックフィルム等で合成繊維布帛を包み、エージングルームに入れるなどの方法がある。もちろん、サンプルレベルであれば、恒温室内でデシケーターに格納してもよい。
次いで、合成繊維布帛処理剤に接液した合成繊維布帛に、合成繊維布帛処理剤中のシクロデキストリン誘導体とポリイソシアネートとの反応を促進する反応促進処理を行う。
反応促進処理方法としては、浸漬処理法やコールドバッチ法などがあり、特に限定されるものではない。たとえば、合成繊維布帛に合成繊維布帛処理剤を接液させた後、必用に応じて繊維布帛を絞り、さらに、20〜80℃で、1〜72時間、保温(反応促進処理)する。
この反応促進処理は、密閉状態で行うことが好ましい。反応促進処理を密閉状態で行うことにより、固定化効率を上げることができて好ましい。さらに、密閉状態とすることにより、空気中の水分がポリイソシアネートと反応するのを防ぐことができる。また、例えば反応促進処理を行う際に、マイグレーションや乾燥ムラの発生を緩和できる。この緩和効果は、特に、合成繊維処理剤が有機溶媒を含有する場合に有効である。
密閉状態とする方法としては、例えば、ポリ塩化ビニリデンフィルム(例えばサランラップ(登録商標、旭化成(株)製))等のプラスチックフィルム等で合成繊維布帛を包み、エージングルームに入れるなどの方法がある。もちろん、サンプルレベルであれば、恒温室内でデシケーターに格納してもよい。
この反応促進処理を行った後、80〜120℃で、1〜20分間、加熱乾燥(乾熱処理)する工程があると好ましい。なお、この条件の反応促進・乾熱処理段階では、CD誘導体は固着しにくい。
[固定化工程]
次いで、反応促進処理した合成繊維布帛に、CD誘導体とポリイソシアネートとの反応生成物(I)を固着させる。固着は、上記第4の態様における固定化工程と同様にして行うことができ、例えば130〜180℃にて、0.5〜30分間、加熱固着する。
この加熱固着処理によって、CD誘導体は合成繊維布帛の表面および/または内部に固着され、CD誘導体とポリイソシアネートとの反応生成物(I)が耐久性(耐洗濯性など)のある状態で固着された機能性合成繊維布帛、すなわち本発明の第7の態様の機能性合成繊維布帛が得られる。
次いで、反応促進処理した合成繊維布帛に、CD誘導体とポリイソシアネートとの反応生成物(I)を固着させる。固着は、上記第4の態様における固定化工程と同様にして行うことができ、例えば130〜180℃にて、0.5〜30分間、加熱固着する。
この加熱固着処理によって、CD誘導体は合成繊維布帛の表面および/または内部に固着され、CD誘導体とポリイソシアネートとの反応生成物(I)が耐久性(耐洗濯性など)のある状態で固着された機能性合成繊維布帛、すなわち本発明の第7の態様の機能性合成繊維布帛が得られる。
本態様においては、たとえば親水化処理されたポリエステル繊維やポリアミド繊維などのように、アミノ基、水酸基等の反応基を有する合成繊維の場合、合成繊維布帛上で、該合成繊維の反応基とポリイソシアネートとの反応を生じさせることができる。また、該合成繊維の反応基およびCD誘導体の反応基とポリイソシアネートとを反応させることができる。すなわち、本発明の第7の態様の機能性合成繊維布帛において、その合成繊維表面および/または内部に、上記反応生成物(I)に加えて、さらに、ポリイソシアネートと合成繊維との反応生成物(II)、および/またはCD誘導体とポリイソシアネートと合成繊維との反応生成物(III)が固着された機能性合成繊維布帛を得ることができる。
以下に本発明を実施例、比較例により説明するが、本発明の内容はこれらによって限定されるものではない。
以下の各実施例および比較例において、CD誘導体を固着させる固定化処理を行った繊維布帛を作成し、各例で作製した繊維布帛について、以下の評価を行った。
以下の各実施例および比較例において、CD誘導体を固着させる固定化処理を行った繊維布帛を作成し、各例で作製した繊維布帛について、以下の評価を行った。
(評価項目および評価方法)
[1]CD誘導体の固着量の評価
(1−1)質量増加分
CD誘導体を繊維布帛に固着させる固定化処理(CD固定化処理)を行った繊維布帛におけるCD誘導体の固着量の評価基準の1つとして、CD固定化処理を行っていない繊維布帛(未CD固定化処理布帛)と、CD固定化処理を行った繊維布帛(CD固定化処理布帛)の質量を測定し、未CD固定化処理布帛に対するCD固定化処理布帛の質量増加分(質量%)を求めた。
(1−2)p-クロロフェノール吸着量
以下の各実施例および比較例においては、CD誘導体としてp-クロロフェノールを包接(吸着)するものを使用したので、CD固定化処理を行った繊維布帛におけるCD誘導体の固着量の評価基準の1つとして、p−クロロフェノール吸着量を用いた。
すなわち、未CD固定化処理布帛およびCD固定化処理布帛について、該繊維布帛にp-クロロフェノール水溶液(2mM)を接液させてp-クロロフェノールを吸着させ、そのp−クロロフェノール吸着量を下記の手順で測定した。
[1]CD誘導体の固着量の評価
(1−1)質量増加分
CD誘導体を繊維布帛に固着させる固定化処理(CD固定化処理)を行った繊維布帛におけるCD誘導体の固着量の評価基準の1つとして、CD固定化処理を行っていない繊維布帛(未CD固定化処理布帛)と、CD固定化処理を行った繊維布帛(CD固定化処理布帛)の質量を測定し、未CD固定化処理布帛に対するCD固定化処理布帛の質量増加分(質量%)を求めた。
(1−2)p-クロロフェノール吸着量
以下の各実施例および比較例においては、CD誘導体としてp-クロロフェノールを包接(吸着)するものを使用したので、CD固定化処理を行った繊維布帛におけるCD誘導体の固着量の評価基準の1つとして、p−クロロフェノール吸着量を用いた。
すなわち、未CD固定化処理布帛およびCD固定化処理布帛について、該繊維布帛にp-クロロフェノール水溶液(2mM)を接液させてp-クロロフェノールを吸着させ、そのp−クロロフェノール吸着量を下記の手順で測定した。
・使用する試薬
p-クロロフェノール水溶液(2mM)
p-クロロフェノール水溶液(2mM)
・測定方法
手順(1)
繊維布帛1gを精量し、ガラスフィルターつきカラムに充填する。
手順(2)
カラム上部よりp-クロロフェノール溶液5mlを通過させ、その濾液(濾液(1))を回収する。
手順(3)
カラム上部よりイオン交換水5mlを通過させ、布帛を洗浄し、その濾液(濾液(2))を回収する。
ここで、濾液(1)および濾液(2)中には、未吸着のp−クロロフェノールが含まれている。
手順(4)
濾液(1)と濾液(2)を合せ、これにイオン交換水を加えて全体の容量を10mlとし、これを濾液(3)とする。
手順(5)
濾液(3)の吸光度を分光光度計で測定し、その値から、下記の計算式により、繊維布帛1gに吸着されたp−クロロフェノール量を算出する。なお、吸光度の測定波長は、p-クロロフェノール由来の280nmとした。
計算式: X=k×(A0−A)
式中、各記号は以下の意味を有する。
X:p−クロロフェノール吸着量(mM)
k:濃度係数
A0:未CD固定化処理布帛での濾液(3)の吸光度
A:CD固定化処理布帛での濾液(3)の吸光度
手順(1)
繊維布帛1gを精量し、ガラスフィルターつきカラムに充填する。
手順(2)
カラム上部よりp-クロロフェノール溶液5mlを通過させ、その濾液(濾液(1))を回収する。
手順(3)
カラム上部よりイオン交換水5mlを通過させ、布帛を洗浄し、その濾液(濾液(2))を回収する。
ここで、濾液(1)および濾液(2)中には、未吸着のp−クロロフェノールが含まれている。
手順(4)
濾液(1)と濾液(2)を合せ、これにイオン交換水を加えて全体の容量を10mlとし、これを濾液(3)とする。
手順(5)
濾液(3)の吸光度を分光光度計で測定し、その値から、下記の計算式により、繊維布帛1gに吸着されたp−クロロフェノール量を算出する。なお、吸光度の測定波長は、p-クロロフェノール由来の280nmとした。
計算式: X=k×(A0−A)
式中、各記号は以下の意味を有する。
X:p−クロロフェノール吸着量(mM)
k:濃度係数
A0:未CD固定化処理布帛での濾液(3)の吸光度
A:CD固定化処理布帛での濾液(3)の吸光度
[2]耐久性の評価
上記CD固定化処理布帛(CD固定化後、水洗)について、JIS L 0217−103法に準じた洗濯条件で1回、3回、5回の洗濯を行い、各洗濯回数後のCD固定化処理布帛におけるCD誘導体の固着の耐久性を、上記と同様にして各CD固定化処理布帛の質量増加分(質量%)とp−クロロフェノール吸着量を測定することにより評価した。
上記CD固定化処理布帛(CD固定化後、水洗)について、JIS L 0217−103法に準じた洗濯条件で1回、3回、5回の洗濯を行い、各洗濯回数後のCD固定化処理布帛におけるCD誘導体の固着の耐久性を、上記と同様にして各CD固定化処理布帛の質量増加分(質量%)とp−クロロフェノール吸着量を測定することにより評価した。
実施例1
合成繊維布帛処理剤として、トリアセチル−β−シクロデキストリン(分子量2018)のDMSO溶液(10質量%)を調製した。
該合成繊維布帛処理剤に、ポリエステル繊維布帛(目付け108g/m2、たて糸密度51本/cm、よこ糸密度35本/cm)を浸せきし、マングルにて(ピックアップ率110%)絞り、105℃で10分間、乾燥した。さらにこの後、150℃で5分間固定化(キュアリング)処理した。固定化処理後、固定化されなかったCD誘導体や溶媒を除くため、水洗を2分間行い、合成繊維布帛を得た。
得られた合成繊維布帛について、上記のようにして[耐久性の評価]を行った。その結果を表1,2に示す。表1は質量増加分、表2はp−クロロフェノール吸着量である。
合成繊維布帛処理剤として、トリアセチル−β−シクロデキストリン(分子量2018)のDMSO溶液(10質量%)を調製した。
該合成繊維布帛処理剤に、ポリエステル繊維布帛(目付け108g/m2、たて糸密度51本/cm、よこ糸密度35本/cm)を浸せきし、マングルにて(ピックアップ率110%)絞り、105℃で10分間、乾燥した。さらにこの後、150℃で5分間固定化(キュアリング)処理した。固定化処理後、固定化されなかったCD誘導体や溶媒を除くため、水洗を2分間行い、合成繊維布帛を得た。
得られた合成繊維布帛について、上記のようにして[耐久性の評価]を行った。その結果を表1,2に示す。表1は質量増加分、表2はp−クロロフェノール吸着量である。
実施例2
実施例1における合成繊維布帛処理剤の使用溶媒をDMSOからDMFに変更した以外は、実施例1と同じ操作により合成繊維布帛を得、同様の評価を行った。その結果を表1,2に示す。
実施例1における合成繊維布帛処理剤の使用溶媒をDMSOからDMFに変更した以外は、実施例1と同じ操作により合成繊維布帛を得、同様の評価を行った。その結果を表1,2に示す。
比較例1
β−シクロデキストリン(5g)をDMSO(45g)に溶解した溶液に、4,4’−メチレンビス(シクロへキシルイソシアネート)(5g)を加え、65℃で48時間保温し反応させ、β−シクロデキストリンポリマーの反応液を得た。さらに、反応液をアセトンとイオン交換水で洗浄し、未反応のβ−シクロデキストリンおよびイソシアネートを除去し、白色粉末のβ−シクロデキストリンポリマー(分子量1000000)を得た。
次いで、実施例2におけるトリアセチル−β−シクロデキストリンを上記β−シクロデキストリンポリマー(分子量1000000)に変更した以外は、実施例2と同じ操作により合成繊維布帛を得、同様の評価を行った。その結果を表1,2に示す。
β−シクロデキストリン(5g)をDMSO(45g)に溶解した溶液に、4,4’−メチレンビス(シクロへキシルイソシアネート)(5g)を加え、65℃で48時間保温し反応させ、β−シクロデキストリンポリマーの反応液を得た。さらに、反応液をアセトンとイオン交換水で洗浄し、未反応のβ−シクロデキストリンおよびイソシアネートを除去し、白色粉末のβ−シクロデキストリンポリマー(分子量1000000)を得た。
次いで、実施例2におけるトリアセチル−β−シクロデキストリンを上記β−シクロデキストリンポリマー(分子量1000000)に変更した以外は、実施例2と同じ操作により合成繊維布帛を得、同様の評価を行った。その結果を表1,2に示す。
表1,2の結果から、分子量が2018のCD誘導体を用いた実施例1,2の合成繊維布帛は、CD誘導体が強固に合成繊維に固着しており、その耐久性にも優れていたことがわかる。
これに対し、分子量が1000000のCD誘導体を用いた比較例1の合成繊維布帛は、水洗後、ほとんどCD誘導体が存在していなかった。
これに対し、分子量が1000000のCD誘導体を用いた比較例1の合成繊維布帛は、水洗後、ほとんどCD誘導体が存在していなかった。
実施例3
合成繊維布帛処理剤として、トリアセチル−β−シクロデキストリン(溶解度0.007g/100ml水(25℃))のDMSO溶液(10質量%)を調製した。
該合成繊維布帛処理剤に、ポリエステル繊維布帛(目付け108g/m2、たて糸密度51本/cm、よこ糸密度35本/cm)を浸せきし、マングルにて(ピックアップ率110%)絞り、105℃で10分間、乾燥した。さらにこの後、150℃で5分間固定化(キュアリング)処理した。固定化処理後、固定化されなかったCD誘導体や溶媒を除くため、水洗を2分間行い、合成繊維布帛を得た。
得られた合成繊維布帛について、上記のようにして[耐久性の評価]を行った。その結果を表3,4に示す。表3は質量増加分、表4はp−クロロフェノール吸着量である。
合成繊維布帛処理剤として、トリアセチル−β−シクロデキストリン(溶解度0.007g/100ml水(25℃))のDMSO溶液(10質量%)を調製した。
該合成繊維布帛処理剤に、ポリエステル繊維布帛(目付け108g/m2、たて糸密度51本/cm、よこ糸密度35本/cm)を浸せきし、マングルにて(ピックアップ率110%)絞り、105℃で10分間、乾燥した。さらにこの後、150℃で5分間固定化(キュアリング)処理した。固定化処理後、固定化されなかったCD誘導体や溶媒を除くため、水洗を2分間行い、合成繊維布帛を得た。
得られた合成繊維布帛について、上記のようにして[耐久性の評価]を行った。その結果を表3,4に示す。表3は質量増加分、表4はp−クロロフェノール吸着量である。
実施例4
実施例3における合成繊維布帛処理剤の使用溶媒をDMSOからDMFに変更した以外は、実施例3と同じ操作により合成繊維布帛を得、同様の評価を行った。その結果を表3,4に示す。
実施例3における合成繊維布帛処理剤の使用溶媒をDMSOからDMFに変更した以外は、実施例3と同じ操作により合成繊維布帛を得、同様の評価を行った。その結果を表3,4に示す。
比較例2
実施例3における合成繊維布帛処理剤を、トリアセチル−β−シクロデキストリン(溶解度0.007g/100ml水(25℃))のDMSO溶液(10質量%)から、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(溶解度200g以上/100ml水(25℃))のDMF溶液(10質量%)に変更した以外は、実施例3と同じ操作により合成繊維布帛を得、同様の評価を行った。その結果を表3,4に示す。
実施例3における合成繊維布帛処理剤を、トリアセチル−β−シクロデキストリン(溶解度0.007g/100ml水(25℃))のDMSO溶液(10質量%)から、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(溶解度200g以上/100ml水(25℃))のDMF溶液(10質量%)に変更した以外は、実施例3と同じ操作により合成繊維布帛を得、同様の評価を行った。その結果を表3,4に示す。
比較例3
比較例2における合成繊維布帛処理剤の使用溶媒をDMFからDMF/水(50/50)混合溶液に変更した以外は、比較例2と同じ操作により合成繊維布帛を得、同様の評価を行った。その結果を表3,4に示す。
比較例2における合成繊維布帛処理剤の使用溶媒をDMFからDMF/水(50/50)混合溶液に変更した以外は、比較例2と同じ操作により合成繊維布帛を得、同様の評価を行った。その結果を表3,4に示す。
比較例4
繊維布帛処理剤として、トリアセチル−β−シクロデキストリン(溶解度0.007g/100ml水(25℃))のDMF溶液(10質量%)を調製した。
該繊維布帛処理剤に、レーヨン繊維布帛(目付け77.5g/m2、たて糸密度36本/cm、よこ糸密度23本/cm)を浸せきし、マングルにて(ピックアップ率80%)絞り、105℃で10分間、乾燥した。さらにこの後、150℃で5分間固定化(キュアリング)処理した。固定化処理後、固定化されなかったCD誘導体や溶媒を除くため、水洗を2分間行い、レーヨン繊維布帛を得た。
得られたレーヨン繊維布帛について、上記のようにして[耐久性の評価]を行った。その結果を表3,4に示す。表3は質量増加分、表4はp−クロロフェノール吸着量である。
繊維布帛処理剤として、トリアセチル−β−シクロデキストリン(溶解度0.007g/100ml水(25℃))のDMF溶液(10質量%)を調製した。
該繊維布帛処理剤に、レーヨン繊維布帛(目付け77.5g/m2、たて糸密度36本/cm、よこ糸密度23本/cm)を浸せきし、マングルにて(ピックアップ率80%)絞り、105℃で10分間、乾燥した。さらにこの後、150℃で5分間固定化(キュアリング)処理した。固定化処理後、固定化されなかったCD誘導体や溶媒を除くため、水洗を2分間行い、レーヨン繊維布帛を得た。
得られたレーヨン繊維布帛について、上記のようにして[耐久性の評価]を行った。その結果を表3,4に示す。表3は質量増加分、表4はp−クロロフェノール吸着量である。
表3,4の結果から、水難溶性のCD誘導体を用いた実施例3,4の合成繊維布帛は、CD誘導体が強固に合成繊維に固着しており、その耐久性にも優れていたことがわかる。
これに対し、水溶性のCD誘導体を用いた比較例2,3の合成繊維布帛は、水洗後、ほとんどCD誘導体が存在せず、洗濯後には、ほぼ完全に失われていた。
また、親水性繊維である半合成繊維の布帛を用いた比較例4のレーヨン繊維布帛は、水洗後はある程度固着していたものの、洗濯によりそのほとんどが失われており、耐久性が悪かった。
これに対し、水溶性のCD誘導体を用いた比較例2,3の合成繊維布帛は、水洗後、ほとんどCD誘導体が存在せず、洗濯後には、ほぼ完全に失われていた。
また、親水性繊維である半合成繊維の布帛を用いた比較例4のレーヨン繊維布帛は、水洗後はある程度固着していたものの、洗濯によりそのほとんどが失われており、耐久性が悪かった。
実施例5
β−シクロデキストリンのDMSO溶液(10質量%)50gに4,4’−メチレンビス(シクロへキシルイソシアネート)5gを加えて繊維布帛処理剤を調製した。
該合成繊維布帛処理剤に、ポリエステル繊維布帛(目付け108g/m2、たて糸密度51本/cm、よこ糸密度35本/cm)を浸せきし、マングルにて(ピックアップ率110%)絞り、密閉状態にした後、65℃で48時間保温することにより、β−シクロデキストリンと4,4’−メチレンビス(シクロへキシルイソシアネート)との反応を促進した。この後、布帛を取り出し、105℃で10分間、乾燥した。さらにこの後、150℃で20分間固定化(キュアリング)処理した。固定化処理後、固定化されなかったCD誘導体や溶媒を除くため、水洗を2分間行い、合成繊維布帛を得た。
得られた合成繊維布帛について、上記のようにして[耐久性の評価]を行った。その結果を表5,6に示す。表5は質量増加分、表6はp−クロロフェノール吸着量である。
β−シクロデキストリンのDMSO溶液(10質量%)50gに4,4’−メチレンビス(シクロへキシルイソシアネート)5gを加えて繊維布帛処理剤を調製した。
該合成繊維布帛処理剤に、ポリエステル繊維布帛(目付け108g/m2、たて糸密度51本/cm、よこ糸密度35本/cm)を浸せきし、マングルにて(ピックアップ率110%)絞り、密閉状態にした後、65℃で48時間保温することにより、β−シクロデキストリンと4,4’−メチレンビス(シクロへキシルイソシアネート)との反応を促進した。この後、布帛を取り出し、105℃で10分間、乾燥した。さらにこの後、150℃で20分間固定化(キュアリング)処理した。固定化処理後、固定化されなかったCD誘導体や溶媒を除くため、水洗を2分間行い、合成繊維布帛を得た。
得られた合成繊維布帛について、上記のようにして[耐久性の評価]を行った。その結果を表5,6に示す。表5は質量増加分、表6はp−クロロフェノール吸着量である。
比較例5
実施例5おける合成繊維布帛処理剤を、4,4’−メチレンビス(シクロへキシルイソシアネート)を加えず、β−シクロデキストリンのDMSO溶液(10質量%)とした以外は、実施例5と同じ操作により合成繊維布帛を得、同様の評価を行った。その結果を表5,6に示す。
実施例5おける合成繊維布帛処理剤を、4,4’−メチレンビス(シクロへキシルイソシアネート)を加えず、β−シクロデキストリンのDMSO溶液(10質量%)とした以外は、実施例5と同じ操作により合成繊維布帛を得、同様の評価を行った。その結果を表5,6に示す。
比較例6
実施例5において、密閉状態にした後、65℃で48時間保温する反応促進処理に代えて、65℃で5分間保温する処理(熱処理時間が短く、反応促進にならない処理)を行った以外は、実施例5と同じ操作により合成繊維布帛を得、同様の評価を行った。その結果を表5,6に示す。
実施例5において、密閉状態にした後、65℃で48時間保温する反応促進処理に代えて、65℃で5分間保温する処理(熱処理時間が短く、反応促進にならない処理)を行った以外は、実施例5と同じ操作により合成繊維布帛を得、同様の評価を行った。その結果を表5,6に示す。
表5,6の結果から、反応促進処理を行い、β−シクロデキストリンとポリイソシアネートとを反応させた実施例5の合成繊維布帛は、水洗後の質量増加分およびp−クロロフェノール吸着量が高く、洗濯3回後においてもそれらの値にほとんど変化が見られなかった。このことから、実施例5の合成繊維布帛は、β−シクロデキストリンとポリイソシアネートとの反応生成物が強固に合成繊維に固着しており、その耐久性も非常に優れていることがわかる。
これに対し、β−シクロデキストリンしか用いなかった比較例5、反応促進処理を行わなかった比較例6の合成繊維布帛は、水洗後および洗濯後において、質量増加が少なく、p−クロロフェノールの吸着も少なかった。
これに対し、β−シクロデキストリンしか用いなかった比較例5、反応促進処理を行わなかった比較例6の合成繊維布帛は、水洗後および洗濯後において、質量増加が少なく、p−クロロフェノールの吸着も少なかった。
Claims (8)
- 分子量が900〜500000のシクロデキストリン誘導体と、有機溶媒とを含有することを特徴とする合成繊維布帛処理剤。
- 水に対する溶解性が0.001〜100g/100mL(25℃)のシクロデキストリン誘導体と、有機溶媒とを含有することを特徴とする合成繊維布帛処理剤。
- 反応基を有するシクロデキストリン誘導体と、ポリイソシアネートとを含むことを特徴とする合成繊維布帛処理剤。
- 請求項1または2に記載の合成繊維布帛処理剤に合成繊維布帛を接液する工程と、
合成繊維布帛処理剤に接液した合成繊維布帛に熱処理を施すことにより、合成繊維布帛処理剤中のシクロデキストリン誘導体を、合成繊維布帛の合成繊維表面および/または内部に固着する工程とを有することを特徴とする機能性合成繊維布帛の製造方法。 - 請求項3に記載の合成繊維布帛処理剤に合成繊維布帛を接液する工程と、
該合成繊維布帛処理剤に接液した合成繊維布帛に、合成繊維布帛処理剤中のシクロデキストリン誘導体とポリイソシアネートとの反応を促進する反応促進処理を施す工程と、
該反応促進処理を施した合成繊維布帛に熱処理を施し、合成繊維布帛処理剤中のシクロデキストリン誘導体とポリイソシアネートとの反応生成物(I)を、合成繊維布帛の合成繊維表面および/または内部に固着する工程とを有することを特徴とする機能性合成繊維布帛の製造方法。 - 分子量が900〜500000のシクロデキストリン誘導体、または水に対する溶解性が0.001〜100g/100mL(25℃)のシクロデキストリン誘導体が、合成繊維表面および/または内部に固着されていることを特徴とする機能性合成繊維布帛。
- シクロデキストリン誘導体とポリイソシアネートとの反応生成物(I)が、合成繊維表面および/または内部に固着されていることを特徴とする機能性合成繊維布帛。
- さらに、ポリイソシアネートと合成繊維との反応生成物(II)、および/またはシクロデキストリン誘導体とポリイソシアネートと合成繊維との反応生成物(III)が、合成繊維表面および/または内部に固着されていることを特徴とする請求項7に記載の機能性合成繊維布帛。
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JP2004080842A JP2005264392A (ja) | 2004-03-19 | 2004-03-19 | 合成繊維布帛処理剤、該合成繊維布帛処理剤を用いた機能性合成繊維布帛の製造方法および機能性合成繊維布帛 |
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---|---|---|---|---|
JP2009013547A (ja) * | 2007-07-09 | 2009-01-22 | Japan Science & Technology Agency | 機能性布帛処理剤及びこれを用いた機能性布帛の製造方法、並びに機能性布帛 |
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CN103349460A (zh) * | 2013-06-14 | 2013-10-16 | 屠晓明 | 可机洗蚕丝被的制作方法 |
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-
2004
- 2004-03-19 JP JP2004080842A patent/JP2005264392A/ja active Pending
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