制限エンドヌクレアーゼは、今や分子生物学の主要な道具のひとつである。これらは天然では広範な微生物、eubacteria及びarchaebacteria[Roberts及びMacelis,Nucl.Acid Res.20:2167−2180(1992)]の両方に産生するが、精製すると配列−特異的方法でDNAを小さなフラグメントに切断するために使用し得る。多くの種類の制限酵素を大規模に使用し得ることにより、DNA分子を成分遺伝子に特定的に識別し且つ細分し得る。
制限エンドヌクレアーゼは制限−修飾(RM)系の一成分であり、40年にわたり広く研究されてきた[Luria及びHuman,J.Bacteriol.64:557−569,(1952);Bertani及びWeigle,J.Bacteriol.65:113−121,(1953)]。通常この系は第二成分の修飾メチラーゼを含んでいる[Arber及びLinn,Ann.Rev.Biochem.,38:467−500,(1969);Boyer,Ann.Rev.Microbiol.25:153−176,(1971)]。自然界ではRM系は、細胞内に入る外来DNAを破壊する“バクテリア免疫系”として作用すると考えられている[Smith,PAABS REVISTA 5:313−318,(1976)]。しかしながら、個々の微生物は7つもの異なったRM系を含むことが公知であり、この明白な冗長性はこれらの系が他の機能も同様に提供することを示唆している[Steinら,J.Bacteriol.174:4899−4906,(1992)]。
微生物に於いて、制限エンドヌクレアーゼは特異的認識配列に関して入ってくるDNAを精査し、DNA分子内で二重鎖を切断する[Meselson,Ann.Rev.Biochem.41:447−466,(1972)]。修飾メチラーゼはその制限相手の作用に対して微生物自身のDNAを保護するように作用する。メチラーゼはその対応するエンドヌクレアーゼと同一DNA配列を識別且つ結合するが、切断するかわりに制限配列内で特定残基をメチル化し、これによりエンドヌクレアーゼによる(endonucleolytic)結合または切断を妨害する[Smith,Science 205:455−462,(1979)]。このようにして、微生物宿主DNAは、細胞内で制限エンドヌクレアーゼによる切断に対して完全に耐性となる。
“RM系”という用語は当初、成分が遺伝子的に定義された系のみに適用されていた。しかしながら、現在、この用語は微生物から単離した任意の部位−特異的エンドヌクレアーゼを指すようになった。多くの場合、修飾メチラーゼ成分の存在は厳密な証拠なく仮定されている[Roberts,CRC Crit.Rev.Biochem.4:123−164,(1976)]。
多くの制限酵素が種々の微生物から単離されることが明らかになったとき、Smith及びNathans[J.Mol.Biol.81:419−423,(1973)]は、今日では少し変形されている学名命名法を案出した。制限酵素は、それが単離された属及び種を略称する3つの文字の名称で名付けられる。必要により、4つの文字を追加して株を示す(Hindなど)。系の名前の後のローマ数字は、同一起源由来の多くの酵素と異なることを示している。接頭文字R及びMは、各々制限エンドヌクレアーゼまたは修飾メチラーゼを指すが、通常含まれない。3文字の名称を接頭文字なしに使用する際、これはエンドヌクレアーゼを指すと理解される。
制限エンドヌクレアーゼ、及びDNAメチラーゼは幾分、遺伝子工学に関してそれほど重要な試薬ではなくなってきている。生物工学の分野が成長及び発達するにつれて、これらの酵素を多量に産生するための商業的動機が高まって来た。しかしながら、これらの天然の微生物から制限酵素を大量生産するのは、幾つかの理由から困難である。第1に、多くの微生物が数種のRM系を産生するので、異なる産物を生物化学的に分離するのは問題がある。第2に、多くの制限系以外に、微生物は制限酵素調製物から生物化学的に分離するのが困難なDNA結合タンパク質及び他のヌクレアーゼも産生し得る。第3に、微生物により産生された特定の酵素量は非常にまちまちで、生長条件に依存して変動し得る。最後に、数種の微生物は、生長させるのが困難、高価または危険でさえある。これらの問題を解決するために及び制限酵素を複製可能に多量に得るために、遺伝子工学方法を微生物の高度に産生可能な株を作り出すために適用した。
RM系のクローニングは最初に1970年代に始まったが、以来、努力にも拘わらず多くの問題を包含している。個々のクローニングプロジェクトに固有の問題とは、重要な遺伝子を識別及び単離することである。幾つかのRM系はプラスミド由来であり、これらの場合メチラーゼ及びエンドヌクレアーゼ遺伝子の両方をコードするDNAを単離し、これらを新しいベクターの上に転移させるのは比較的容易である[EcoRV:Bougueleretら,Nucl.Acid Rec.12:3659−3676,(1984);PaeR7:Theriault及びRoy,Gene 19:355−359,(1982);Gingeras及びBrooks,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:402−406,(1983);PvuII:Blumenthalら,J.Bactriol.164:501−509,(1985)]。
しかしながら、非常に多くのRM系はコードされたプラスミドではない。これらは主に、染色体DNAが制限エンドヌクレアーゼまたは他の手段を使用してクローン化可能な大きさの小さな断片に切断する“ショットガン”法によりクローン化されてきた。これらの断片をクローニングベクター上にen masse連結し、各遺伝子が多数回現れる“ライブラリー”を産生する好適な微生物宿主に形質転換する。産生された数千ものの中から重要な遺伝子を保持するこれらのクローンを識別する選択方法を発見するのは困難である。
系の従来の特性により影響を受けたRM系をクローン化するのに成功裏に使用した第1の選択方法は、バクテリオファージの使用を含んでいた。ファージの攻撃に暴露された時、RM系を保持する細胞は生存したが、RM系を発現しないものは生存しなかった[HhaII:Mannら,Gene 3:97−112,(1978):PstI:Walderら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1503−1507,(1981)]。意外にも、この方法は全てはうまく行かなかった。クローン化RM系は選択的に生存物を与えるようには常に発現されない。さらに、細胞中に多くのRM系が存在する場合、特定のRM系をターゲットできなくても、クローン化したいであろう。さらにRM系以外の他のクローン化機能は細胞をファージの攻撃から守り、選択後生存できるようにし得る[Mannら,略;Howardら,Nucl.Acids Res.14:7939−7951,(1986);Slatkoら,Nucl.Acids Res.15:9781−9796,(1987)]。
より広く成功している第2の方法では、メチラーゼ遺伝子の発現を選択し、形質転換時、クローン化されたメチラーゼ遺伝子を含み且つ発現するライブラリー内の任意のプラスミドはその同種の認識部位をメチル化する。ライブラリーが好適な特異性のエンドヌクレアーゼにより切断されて順に選択される場合、修飾プラスミドは切断されずに、第2の形質転換段階時にも生存可能なままでなければならない。メチラーゼ遺伝子を含まない他のプラスミドはエンドヌクレアーゼにより切断されて、より低い効率で形質転換しなければならない[Kissら,Nucl.Acids Res.13:6403−6421,(1985);Lunnenら, Gene,74:25−32,(1988)]。このように研究されて来た全てのRM系に於いて、制限エンドヌクレアーゼ及び修飾メチラーゼ遺伝子は互いに非常に近接している[Wilson,Nucl.Acid Res.19:2539−2566,(1991)]ので、メチラーゼ選択は完全RM系を産生することもある。他の場合では、選択によりメチラーゼ遺伝子のみが産生することもある。しかしながら、第2段階でエンドヌクレアーゼ遺伝子を含むより大きいかまたは隣接フラグメントをクローン化することも可能であった(Kissら,略)。
好適な選択方法を知見する以外に、RM系をクローン化しようとする際に他の多くの問題点が発生した。例えばある系では、エンドヌクレアーゼ遺伝子を修飾により予め保護していない宿主細胞に導入する際に問題が発生した。両方の遺伝子を共通のDNAフラグメントに一緒に導入する場合、例えばエンドヌクレアーゼが非常に早くまたは非常に多量に産生される場合、メチラーゼはエンドヌクレアーゼの作用から宿主ゲノムを好適に保護し得ない。エンドヌクレアーゼ遺伝子が導入される前にエンドヌクレアーゼ遺伝子の活性に対して細胞を保護するために、異なるベクター上に別個に2つの遺伝子をクローン化することが案出されてきた(Howardら,略)。ベクターの賢明な選択は、クローンの安定性並びにエンドヌクレアーゼの十分な産生にも重要である[Brooksら,Nucl.Acids Res.19:841−850,(1991)]。
E.coli中のRM系をクローニングするもう一つの障害は、異種のメチラーゼ類をクローン化し且つ発現させる試みの際に現れた。E.coliは、異種チトシン及び/またはアデニンメチル化を含む外来DNAを制限する種々の系を持つ[Raleigh及びWilson,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:9070−9074,.(1986);Noyer−Weidnerら,Mol.Gen.Genet.205:469−475,(1986);Waite−Reesら,J.Bacteriol.173:5207−5219,(1991)]。これらの系は、種々のメチラーゼ遺伝子をクローン化し、遺伝子的に印をつけたE.coli株中でこれらを発現させる試みのときだけに現出した。この問題は、時折、これらの系を欠くE.coli変異体を産生させることにより克服できた。RM系をクローニングするときにも問題が残っているが、より多くの系が研究されるにつれて、より良いクローニング方法が開発されている。
グラム陽性細菌Bacillus globigii由来のBglIIは、識別及び特徴付けすべき第1のRM系のひとつであった[Wilson及びYoung,Schlessinger(編集),Microbiology−1976,American Society for Microbiology,p.305−357,(1976)]。名称が包含するように同一種から単離されたもうひとつのRM系、即ちBglIが存在する。BglI及びBglII系の両方は従来法に於いて、未改変バクテリオファージによる感染に対してバクテリアを保護するように挙動する。研究者らは、酵素が似たような分子量及びイオン特性を持つため、生化学的手段によりR.BglIIからR.BglIを分離することが非常に困難であることを知見した[Pirrotta,Nucl.Acids Res.3:1747−1760,(1976)]ので、遺伝子方法を使用した。B.globigiiを、標準法により突然変異誘発し、個々の単離物を非常に関連した株のBacillus subtilis上で増幅させた未改変ファージを使用する低レベルのファージ制限に関してスクリーニングした。各々R.BglIまたはR.BglIIのみを産生するB.globigii RUB561及びRUB562と名付けられた2つの変異株をこの方法で産生させた[Duncanら,J.Bacteriol.134:338−344,(1978)]。変異株はBglI及びBglIIの両方に関するメチラーゼを保持していた。本出願人は、ファージ制限に関するスクリーニングと組み合わせた突然変異誘発を使用することは、RM系成分の分離及び精製に関して一般的に適用し得る方法であると考えた。しかしながら、以後、RM系の発見は異種バクテリア内の遺伝子系の開発よりもずっと速度が速く、この方法は他のRM系に適用できなかった。それにも拘わらず、2つのB.globigii株はBglI及びBglIIエンドヌクレアーゼの産生に広く使用されてきた。さらに、両方の株は以下に記載の如くBglII RM系のクローニングにも重要であることが証明された。
BglII制限エンドヌクレアーゼ及び修飾メチラーゼ遺伝子のクローニング
[注:実施例1で使用する標準法の詳細は、本セクションの最後に含まれる]
1.クローニングベクター構築:使用したクローニングベクターは、以下の如く3つのBglIIリンカーの挿入によりpBR322から誘導したpAMB3であった。
pBR322 10μgを、50μlの反応容積中、PvuII(エンドヌクレアーゼはNew England Biolabsから入手し、供給された緩衝液を使用して推薦条件下で反応を実施した)10単位で37℃2時間消化させた。反応混合物10μlを、供給されたリガーゼ緩衝液(50mM Tris pH 7.8,10mM MgCl2,10mM DTT,1mM ATP,25μg/ml ウシ血清アルブミン)中の2μg非ホスホリル化BglIIリンカー(dCAGATCTG;New England Biolabs)、40単位 T4 DNAリガーゼ(New England Biolabs)及び20単位 SspIを含む100μl 連結反応混合物に添加した。混合物を室温で一晩インキュベートした。次いで等容量のクロロホルムで一回抽出した。連結混合物をCaCl2法を使用してE.coli RR1細胞に形質転換し、細胞をアンピシリンを含むLB寒天プレート(1リットルのLB培地は、10g トリプトン,5g 酵母抽出物,10g NaCl,1g デキストロース,1g MgCl2を含み、NaOHでpHを7.2に調節した。LB寒天は、1.5%寒天を添加したLB培地である)上に載置した。プラスミドDNAをアルカリ溶解ミニプレプ方法を使用して個々の形質転換体から単離し、BglIIで消化させ、次いでリンカーを含むプラスミドに関してスクリーニングするためにアガロースゲル上の電気泳動により分析した。この構築物をpB2066と名付けた。
実験の第2ラウンドでは、非ホスホリル化BglIIリンカーを、上記方法の反復によりpB2066のSspI部位に挿入した。pAMB2と名付けたこの新しい構築物は、2つのBglIIリンカーを含んでいた。
別の実験では、pBR322 4μgをDraI 40単位で消化させた。37℃で30分後、反応を停止し、フェノール/クロロホルム抽出法を用いてDNAを精製した。再懸濁したDNAを、ホスホリル化BglIIリンカー(d(pCAGATCTG);New England Biolabs)を使用したこと、及び制限エンドヌクレアーゼを連結反応に添加しなかったことを除いて上記の如く過剰量のBglIIリンカーに連結した。16℃で2時間連結後、反応混合物をフェノール、次いでクロロホルム抽出し、エタノール沈殿させた。次いで精製DNAをBglIIで消化させて過剰に連結したリンカーを除去した。エンドヌクレアーゼを加熱失活し、反応を16℃で1時間、再連結した。クロロホルム抽出後、反応混合物を使用してCaCl2法でE.coli RR1細胞を形質転換し、載置した細胞をアンピシリン−耐性コロニーに関して選択した。アルカリ溶解法により個々の形質転換体から単離したプラスミドをBglIIで消化させ、正しい構築物をスクリーニングするためにアガロースゲル電気泳動により分析した。pB3232と名付けたこの構築物は、アンピシリン耐性遺伝子の外の19bp DraIフラグメントの代わりにBglIIリンカーを有していたが、アンピシリン耐性遺伝子内にDraI部位も持ち、遺伝子は完全且つ機能的なままであった。
ベクターpAMB3を以下の方法によりpAMB2及びpB3232を組み合わせて製造した。pAMB2 10μgを単一150μl反応液中、PstI及びNdeI各々20単位で消化させ、pB3232 10μgを並行反応中、PstI、NdeI及びBamHI各々20単位で消化させた。消化したDNAを0.7% アガロースゲル(IBI,分子グレード)上で電気泳動し、pAMB2由来の3051bp PstI−NdeIフラグメント及びpB3232由来の1312bp NdeI−PstIフラグメントを単離した。各フラグメント2μgを連結混合物中で混和した。室温で一晩連結し、クロロホルム抽出後、連結混合物をCaCl2法を用いてE.coli RR1細胞を形質転換するために使用した。形質転換体をアンピシリン及びテトラサイクリンを両方含むLB寒天プレート上で選択し、個々の単離物由来のプラスミドをBglIIで消化させ、次いで正しい構築物を調査するために電気泳動により分析した。pAMB3プラスミドは図3に示されている。
2.ゲノムDNA精製:メチラーゼ選択ライブラリー用のDNAをBacillus globigii株RUB561から精製した。B.globigii RUB561を、一晩培養した培地10mlを使用してLB培地500mlに接種し、振盪しながら37℃で飽和するまで生長させた。JA−17ローターのついたBeckman J2−21遠心分離機中、5000rpmで10分間遠心分離することにより細胞を収穫した。細胞ペレットを全部で100ml Tris−EDTA 緩衝液(100mM Tris pH8.0,100mM EDTA)中で再懸濁させることにより洗浄し、次いで前記の如く再遠心分離した。ペレットを全部で10ml Tris−EDTA緩衝液中に再懸濁させ、プールした。遠心分離ボトルを追加の10ml Tris−EDTA緩衝液で洗浄し、プールに加えた。リゾチーム(Sigma)を終濃度0.125mg/mlで添加し、懸濁液を緩やかに転倒することにより混合し、少なくとも30分間37℃でインキュベートした。次いで懸濁液をpH 9.0でTris−EDTA緩衝液の等容量で希釈し、SDSを終濃度1%で添加し、懸濁液を50℃で15分間インキュベートし、完全に溶解させた。
プロテイナーゼK(Boehringer Mannheim GmbH)を終濃度0.05mg/mlで添加し、37℃で1〜2時間インキュベーションを継続した。SDSをTE緩衝液(10mM Tris,pH8.0,1mM EDTA)に対する透析で除去し、透析物をTE1容量で希釈した。固体CsClを1g/mlになるまで添加し、臭化エチジウムを100μg/mlになるまで添加した。溶液をBeckman Ti70ローター中、44,000rpmで48時間、超遠心分離にかけ、DNAバンドをシリンジで抽出し、臭化エチジウムをイソアミルアルコールで抽出除去した。CsClを上記の如く透析除去し、透析物をフェノール、次いでクロロホルムで抽出し、溶液を上記の如くTEに対して最後に透析した。最終収量は、500ml 飽和培地からB.globigii RUB561 DNAが200μgであった。
3.ゲノム及びベクターDNA消化:BglII RM系をクローニングしようと試みる間、ライブラリーを多くの制限消化物から作成した。PstIは消化して1個のクローンを産生するので、その操作の詳細のみを記載する。
B.globigii RUB561 DNA 5μgを、標準条件下、過剰量のPstIを使用して完全に切断し、反応液をフェノールで1回抽出した。DNAを95% エタノールを2容量添加して沈殿させた。
pAMB3 DNA 5μgをPstIで37℃で90分間、消化させた。仔ウシ腸ホスファターゼ(Boehringer Mannheim GmbH)22単位を添加し、反応を37℃でさらに30分間継続した。B.globigii DNAと同様の方法で反応をフェノール抽出し、次いでエタノール沈殿させた。
4.DNA連結:PstI−消化ベクター(pAMB3)及び挿入物(B.globigii RUB561 染色体DNA)を、推奨された連結緩衝液中に400ng 挿入DNA、100ng ベクターDNA及び20単位 T4 DNAリガーゼを含む100μl 反応液中で室温で一晩一緒に連結した。次いで、連結混合物をMillipore VS フィルター上でH2Oに対して室温で30分間透析した。フィルターを追加の100μl H2Oで洗浄し、洗浄液を連結混合物と混和した。
5.一次細胞ライブラリー構築:E.coli RR1細胞を標準法を使用してエレクトロポレーション用に製造した。段階4からの透析した連結混合物5μlをE.coli RR1細胞にエレクトロポレーションした。形質転換細胞をテトラサイクリンを含む大きな(150mm)LB寒天プレート上に塗布した。37℃で一晩インキュベーション後、全部で約12,000個の形質転換体がプレート4枚から得られた。プレートをLB上に重ね、一次細胞ライブラリーを形成するためにコロニーをプールした。
6.一次プラスミドライブラリー単離:標準Triton溶解方法を使用して、プラスミドを一次細胞ライブラリーから単離した。超遠心分離後、精製DNAを約0.1mg/mlの終濃度になるように、1ml TEの終容量に再懸濁した。
7.プラスミドライブラリーの選択:一次ライブラリーDNA約2μgを、100μl反応容積中、37℃でBglIIエンドヌクレアーゼ48単位で消化させた。90分消化後、仔ウシ腸ホスファターゼ22単位及び追加の32単位のBglIIを添加し、さらに60分間インキュベーションを継続した。DNAを記載の如く精製し、15μl TE中に再懸濁させた。再懸濁したDNAで、完全消化及び脱ホスホリル化反応を繰り返した。処理したプラスミドDNAを上記の如くH2Oに対して透析した。
8.形質転換:約5ng DNAを含む、1:100に希釈した透析サンプル5μlを使用して、エレクトロポレーションによりE.coli RR1細胞40μlを形質転換した。形質転換細胞をテトラサイクリンを含むLB寒天プレート上に載置した。37℃で一晩インキュベーション後、プレート1枚当たり平均して8つの形質転換体が選択ライブラリーDNA5ngから得られ、未選択ライブラリーDNAと匹敵する量のプレート1枚当たり約8300個が得られた。従って選択倍率は約1000倍であった。
9.生存するプラスミドの分析:選択後生存する形質転換体16個を液体培地上で生長させ、そのプラスミドDNAを標準ミニプレプ方法を使用して単離した。プラスミドを各々PstI及びBglIIを用いる並行反応で消化させ、アガロースゲル電気泳動により分析した。16個のプラスミドの内15個は7.5kb PstI挿入物を含んでおり、BglII切断に対して完全に耐性であった。残り1個のプラスミドは全く挿入物を含んでおらず、BglII切断に対して耐性ではなかった。耐性クローンのうち1個をさらなる物性評価のために選択し、そのプラスミドをpMB05と名付ける(図4A)。
bglIIM遺伝子を保持すると考えられている7.5kb PstI挿入物をBglII−耐性クローンの1つから除去し、そのBglII部位が完全であるかどうかを評価するためにベクターを再連結させた。約1μgのクローンDNAをPstI 20単位で消化させ、ベクターを1ml容積中で一晩、再連結させた。約0.5μgのDNAをCaCl2法を使用してE.coli細胞に形質転換し、形質転換体DNAをアルカリ溶解ミニプレプ方法により単離した。次いでプラスミドを上記の如くPstI及びBglIIで並行反応で消化させ、アガロースゲル電気泳動により分析した。試験した全てのプラスミドが7.5kb挿入物を欠失し且つBglIIにより完全に消化されており、これがBglII消化に対する耐性を与える7.5kb挿入物中にコードされた機能であったことが確認できた。
10.メチラーゼ−産生宿主の構築:pMB05の広範囲にわたる制限マップを作成し(図4A)、欠失及びTn5挿入突然変異誘発により好適なbglIIM部位を決定した。高レベルのメチラーゼ発現をもつbglIIMクローンを構築するために、pMB05挿入物を高コピー数pUC−誘導ベクターにトランスファーし、非必須DNAの2領域を挿入物から欠失させた。
pMB05 DNA 20μgを容量500μl中PstI 80単位で37℃3時間消化させた。消化フラグメントを0.7% アガロースゲル上の電気泳動により分離し、7.5kb挿入物をDEAEペーパー溶離プロトコルを用いてゲルから単離した。単離フラグメントを、PstI−切断し次いで脱ホスホリル化pIJ2926ベクターDNAに連結した。連結混合物を、RbCl法によりコンピテントにしたE.coli ED8767細胞[Raleighら,Nucl.Acids Res.16:1563−1575,(1988)]に形質転換し、プラスミドをアルカリ溶解法を用いて単離し、ベクター内の挿入物の方向を制限消化物から決定した。この構築物をpMB261と名付けた(図4B)。
pMB261ミニプレプDNA 1μgを50μl反応液中、EcoRV 20単位で消化させた。50μl消化物(0.25μg DNAを含む)のうちの12.5μlを600μl連結反応中で希釈した。連結混合物をフェノールで1回抽出し、クロロホルムで1回抽出し、2容量のエタノールを添加してDNAを沈殿させ、次いで−20℃で一晩凍結させた。DNAをCaCl2法を使用してコンピテントE.coli RR1細胞に形質転換し、プラスミドを6つの形質転換体から単離し、好適な制限パターンに関してチェックした。この新規構築物をpMB263と名付けた(図4C)。
pMB263ミニプレプDNA 4μgを100μl容量中、NdeIで完全に消化させた。フェノール及びクロロホルム抽出、エタノール沈殿後、再懸濁させたDNA 1μgを500μl反応液中で室温で一晩連結させた。連結反応をクロロホルムで1回抽出し、CaCl2法でコンピテントとしたE.coli ED8767細胞を形質転換するのに使用した。9つの形質転換体由来のプラスミドを単離し、好適な制限パターンに関してチェックした。この新規構築物をpMBN2と名付けた(図4D)。
E.coli K802細胞をコンピテントとし、標準法を使用してpMBN2により電気泳動的に形質転換した。個々の形質転換コロニーをアンピシリン耐性に関して選択し、プラスミドをミニプレプ法により単離し、その制限プロフィールをチェックした。E.coli K802(pMBN2)をエンドヌクレアーゼ遺伝子をクローニングするための宿主として使用した。
11.B.globigii RUB562 DNAの精製及び分析:B.globigii RUB562由来のDNAを段階2に記載のRUB561 DNAと同様の方法で精製した。
サザンブロットハイブリダイゼーション分析[Maniatisら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor,NY(1982)]から、bglIIMを取り囲む領域中、株RUB561及びRUB562の間に明らかな染色体の差はないことが明らかになった。
12.bglIIRの配置:bglIIRの配置及び方向を、エンドヌクレアーゼタンパク質のアミノ末端配列から誘導した縮退オリゴヌクレオチドプローブを使用して決定した。
この目的のために、BglIIエンドヌクレアーゼを標準タンパク質精製法を使用してB.globigii RUB562細胞から殆ど均一になるように精製した。精製タンパク質の最初の16アミノ酸残基のタンパク質配列を、Applied Biosystems 470A 気相シーケンサーで逐次分解により決定し、Met Lys Ile Asp Ile Thr Asp Tyr Asn His Ala Asp Glu Ile Leu Asn(配列番号1)であることが判明した。タンパク質配列に基づいて、コンプレキシティ(complexity)256の21−塩基アンチセンスオリゴヌクレオチドプローブ:(ATYTCRTCNGCRTGRTCRTAR;配列番号2)及びコンプレキシティ36の17−塩基のセンスプローブ:(ATGAARATHGAYATHAC;配列番号3)(但し、R=AまたはG、Y=CまたはT、H=AまたはCまたはT、N=AまたはCまたはGまたはTである)を合成した。
これらの縮退エンドヌクレアーゼ−特異的ハイブリダイゼーションプローブ(Howardら,前掲)を用いるpMB05プラスミドのサザンブロットハイブリダイゼーション分析により、エンドヌクレアーゼ遺伝子の5’末端をpMB05挿入物内の1.1kb PstI−NdeIフラグメント上に配置した。さらに、pBR322 PstI時計方向及び反時計方向プライマーと一緒に上記センス及びアンチセンスプライマーを使用するPCR実験を、bglIIRの方向を決定するためにpMB05上で実施した。この実験結果から、クローン化PstIフラグメントが完全遺伝子を含まなくてはならないようにbglIIRが配置且つ配向されていることが明白になった。
13.bglIIRのクローニング:bglIIRを、pACYC177中の7.5kb サイズ選択したB.globigii RUB562 DNA PstIフラグメントのプラスミドライブラリーからクローン化した。
B.globigii RUB562 ゲノムDNA 25μgを容積400μl中、PstIで37℃4.5時間消化させた。消化したDNAを0.7% アガロースゲル上の電気泳動により分離し、約6.5〜8.5kbのサイズのフラグメントをDEAEペーパー溶離により単離した。サイズ選択したDNAを15μl TE(終濃度約80μg/ml)中に再懸濁させた。
pACYC177ベクターDNA5μgをPstIで37℃で1.5時間消化させた。仔ウシ腸−ホスファターゼ及び追加のPstIをこの時点で添加し、さらに60分間インキュベーションを継続した。消化したDNAを精製し、20μl TE中に再懸濁させた。
サイズ選択したRUB562 PstIフラグメント約0.6μgを、53μl反応容積中、T4 DNA リガーゼ400単位でPstI−消化及び脱ホスホリル化pACYC177 0.2μgに連結した。連結混合物50ngを使用して、CaCl2法を用いるコンピテントE.coli K802(pMBN2)を形質転換した。形質転換体をカルベニシリン及びカナマイシンの両方の耐性に関して選択した。
14.エンドヌクレアーゼ−産生クローンの識別:サイズ選択ライブラリーの形質転換体から、50コロニーの11セットをカルベニシリン及びカナマイシンを補ったLB寒天プレート上に二重に拾い出した。各セットの1プレートからコロニーを5ml LBに集め、プールし、遠心分離して収穫し、次いで0.8ml超音波緩衝液(100mM NaCl,50mM Tris pH 8.0,10mM β−メルカプトエタノール)中に再懸濁させた。10μl 0.5M EDTA及び25μl 10mg/mlリゾチームを細胞の各チューブに添加し、チューブを−70℃で凍結させた。融解後、細胞抽出物をHeat Systems W−225R ソニケーター(Ultrasonics,Inc.)中で15分間超音波処理し、10分間遠心分離して細胞破片を除去した。各粗な抽出物の1μl及び7μlをそれぞれ、BglII用に推薦された緩衝液中、単一BglII部位を含むBamHI−直線化pBR3232 DNA上でR.BglII活性に関して、37℃で1時間分析した。R.BglII活性は、分析した粗な抽出物の11個のプールの内9個に知見された。
陽性プレートの1個から個々のコロニーをカルベニシリン及びカナマイシンを補った5ml LB上で一晩生長させ、抽出物を製造し、上記の如くR.BglII活性に関して分析した。分析した11個の粗な抽出物の内2個がR.BglII活性を示した。さらなる実験から、両方のクローンが細胞1グラム当たり約100,000単位のR.BglII活性を発現し、B.globigii RUB562細胞の約3倍の過剰発現であることが判明した。bglIIR及びbglIIMを含むpACYC17プラスミドをpMRB1と名付けた(図6A)。
15.bglIIM及びbglIIRのヌクレオチド配列決定:標準制限マッピング法を使用して、bglIIR及びbglIIMを3.0kb PstI−HincIIフラグメントにマップした(図6B)。領域を標準法により幾つかの断片にサブクローン化し、ヌクレオチド配列をDNAポリメラーゼIクレノウフラグメント(New England Biolabs)及び/またはCircumVent シークエンシング法(New England Biolabs)を用いるジデオキシ法[Sangerら,Proc. Natl. Acad. Sci.USA 74:5463−5467,(1977);Sanger及びCoulson,FEBS Letters 87:107−110,(1978)]により完全領域に関して製造した。bglIIM及びbglIIRをコードする3188bp領域のヌクレオチド配列を配列番号4に示す。
16.過剰発現するメチラーゼ構築物の製造:その発現を増加させるために、bglIIMをpSYX19にクローン化した(図5)。
pSYX19 1.6μgを総容量50μl中BamHI 60単位で消化させた。37℃で90分間、消化を実施した。仔ウシ腸ホスファターゼ10単位を添加し、反応をさらに37℃で30分インキュベートした。消化したDNAを精製し、10μl TE中に再懸濁させた。
1μg pMBN2を総容量50μl中、HincII 30単位で37℃で1時間消化させた。消化したDNAを上記の如く精製し、10μl TE中に再懸濁させ、総容量50μl中T4 DNAリガーゼ400単位で再連結させた。連結を16℃で一晩実施した。E.coli ED8767細胞を連結したDNA2ngでエレクトロポレーションし、細胞をカルベニシリンを含むLB寒天プレート上に載置した。プラスミドをアルカリ溶解ミニプレプ法を使用して形質転換体から単離し、最初にNdeI、次いでHincIIでタンデム反応中で消化させ、アガロースゲル上の電気泳動により分析した。所望のHincII欠失をもつ形質転換体のひとつ由来のプラスミドをTriton溶解法を使用して精製し、これをpBM1と名付けた(図4E)。
pBM1 5μgを総容量50μl中、NdeI 60単位で37℃1時間消化させた。消化したDNAを上記の如く精製し、20μl TE中に再懸濁させた。再懸濁したDNAを50μl 反応容積中、推薦された緩衝液中のDNAポリメラーゼIクレノウフラグメント10単位並びにdATP、dCTP、dGTP及びdTTP各0.3mMで処理し、その末端を充填した。反応を25℃で30分、次いで65℃で5分インキュベートした。この反応混合物10μlを、1μg ホスホリル化BamHIリンカー(d(pCGGATCCG);New England Biolabs)及びT4 DNAリガーゼ1200単位を含む連結反応混合物100μlに添加した。連結を16℃で一晩実施した。E.coli ED8767細胞を消化したDNA約5ngでエレクトロポレーションし、細胞をカルベニシリンを含むLB寒天上に載置した。プラスミドをアルカリ溶解ミニプレプ法を使用して形質転換体から単離し、BamHIで消化させ、次いでアガロースゲル上の電気泳動により分析した。所望のBamHIリンカーのついた形質転換体のひとつからのプラスミドをTriton溶解法を用いて単離し、これをpBM1−Bamと名付けた(図4F)。
pBM1−Bam 10μgを総容量150μl中、BamHI 160単位で消化させた。消化を37℃で60分間実施した。消化したプラスミドのフラグメントを0.5%アガロースゲル上の電気泳動により分離した。1.8kb DNAバンドを切り出し、製造業者の説明書に従ってPrep−a−Gene DNA Purification Matrix Kit(Bio−Rad Laboratories)を用いて精製した。DNAをPrep−a−Gene Elution Bufferの終容量75μlに再懸濁させた。
BamHI−消化pSYX19 0.1μgを反応容量50μl中のT4 DNAリガーゼ400単位でbglIIMフラグメント0.75μgに16℃で18時間連結した。連結をクロロホルム等容量で一回抽出して停止し、H2Oで透析した。
E.coli ED8767細胞を連結混合物10μlでエレクトロポレーションし、カナマイシンを含むLB寒天上に細胞を載置した。37℃で一晩インキュベーション後、得られた形質転換体12個をカナマイシンを含むLBブイヨンの5ml培地上で生長させ、そのプラスミドDNAをアルカリ溶解ミニプレプ法を使用して単離した。プラスミドDNAを正しい制限フラグメントに関してチェックした。1つのコロニーをin vivoでλvirファージ(New England Biolabs Culture Collection)DNAをメチラートする能力に関して試験した。この新しい構築物をpSYXBglMと名付けた(図4G)。
17.誘導可能なエンドヌクレアーゼ構築物の製造:エンドヌクレアーゼ遺伝子を過剰発現させるために、発現ベクターpAGR3(図7)を使用した。bglIIRをpBglR1.8Bと呼称される存在するクローンからPCRにより増幅した(図6C)。BspHI及びBsmHI部位を反応で使用したオリゴヌクレオチドプライマー中に作成した。プライマー1は、bglIIRの翻訳開始を含む配列を含み、下線をつけたBspHI部位:5’ GGA GAC ACT CTC ATG AAG ATT G 3’(配列番号5)を作り出すために元の配列の変化した2塩基を含んでいた。プライマー2は、bglIIR由来の停止コドンの直後に配列を含んでおり、下線をつけたBamHI部位:5’ TGT TTA TAT GGA TCC TCA CTC AC 3’(配列番号6)を作成するために元の配列の変化した2塩基を含んでいた。これらの2つのプライマー間の0.8kbフラグメントを、(16.6mM (NH4)SO4,67mM Tris−HCl pH 8.8,6.7mM MgCl2,10mM β−メルカプトエタノール,187μM 各dNTP,100μg/ml BSA)中の2.5単位Taqポリメラーゼ(Bethesda Research Laboratories)、10ng pBglR1.8B 鋳型、及び0.25mM 各プライマーと、PCR反応中、93℃で1.5分、60℃で1.5分、及び72℃で1.5分、30サイクル増幅した。サンプルを第1のサイクル前に93℃で5分間インキュベートし、最終サイクル後72℃で3分間インキュベートした。
次いで、PCR産物をフェノール、次いでクロロホルムで各1回ずつ抽出し、ドライアイス−エタノール浴中エタノールで12分間沈殿させ、遠心分離により収集し、次いで10μl TE中に再懸濁させることにより消化用に精製した。再懸濁させたDNA(約3μg)を50μl反応容積中、50単位BamHI及び12.5単位BspHIで37℃で60分間消化させた。消化したDNAを0.7%アガロースゲル上の電気泳動により分離し、正しいバンドを切り出し、製造業者の説明書に従ってBio−Rad Prep−a−Geneキットを使用してDNAを精製し、次いで30μl Prep−a−Gene Elution Buffer中に再懸濁させた。
消化したPCR産物をNcoI−及びBamHI−消化及び脱ホスホリル化pAGR3 DNAに連結し、連結混合物をpSYXBglMプラスミドを含むE.coli ER2206細胞にエレクトロポレーションした。形質転換細胞をカルベニシリン、カナマイシン及びテトラサイクリンを含むLB寒天プレート上で選択した。プラスミドをアルカリ溶解法を使用して単離し、制限エンドヌクレアーゼで消化させ、アガロースゲル電気泳動を使用して分析した。正しい配置をもつプラスミドを含むクローンを粗な抽出物中でエンドヌクレアーゼ活性に関して試験した。この新規エンドヌクレアーゼ−発現プラスミドをpAGRBglR2と名付けた(図6E)。
新規クローンを最適生長及び発現条件に関して試験した。クローンをカルベニシリン、カナマイシン及びテトラサイクリンを含むLB上で30℃で後期対数増殖期(Klett−Summerson photoelectric colorimeter中で100の読取値)まで生長させ、0.5mM IPTGで誘発させ、次いでさらに30℃で20時間生長させて収穫すると、最適結果が得られた。これらの条件下で、R.BglIIの収量は細胞1グラム当たり1,200,000単位であり、B.globigii RUB562細胞の40倍の過剰発現であった。さらに物性分析及び最適化用に選択したクローンの単離物は株NEB#731であった。NEB#731のサンプルは、1993年2月23日にMeryland州、RockvilleのAmerican Type Culture Collectionに寄託され、寄託番号No.69247を受けた。NEB#731の粗な細胞抽出物から産生されたBglII制限エンドヌクレアーゼ活性の滴定を図8に示す。
18.発酵:好適な抗生物質を含むLB1リットルに接種するのに単一コロニーを使用し、培地を最終密度109細胞/mlになるまで30℃で一晩生長させた。一晩培養した培地を使用して、pH7.1の同一培地100リットルを入れた発酵器に接種するのに使用した。発酵器の培地をKlett=100になるまで30℃で生長させ、0.3mM IPTGで誘発し、30℃で一晩生長させた。細胞をSharples遠心分離機で16,000rpmで連続収穫した。最終収量は細胞758グラムであった。
19.R.BglII精製:細胞約400グラムを、50mM NaClを含む緩衝液A(20mM Tris−HCl pH7.1,0.1mM EDTA,10mM β−メルカプトエタノール)約1200mlに再懸濁させ、Manton−Gaulin 15M ラボホモジナイザー(12,000psiで約4回またはOD595及びOD260レベルオフになるまで)で破壊した。破片をSharples 遠心分離機で40分間遠心分離して除去した。固体NaClを上清に終濃度400mMで添加し、ポリエチレングリコール(PEG)を7.5%になるまで添加した(30分で撹拌しながら添加した)。PEGをBeckman遠心分離機で4000rpmで20分間回転させることにより沈殿させ、ペレットを廃棄した。
上清を緩衝液Aで終濃度150mM NaClになるまで希釈し、伝導度メーターでモニターした。サンプルを150mM NaClを含む緩衝液Aで平衡化させた5cm×13cmのヘパリン−セファロースカラム(Pharmacia LKB Biotechnologies)上に載置した。カラムを150mM NaClを含む緩衝液A 約500mlで洗浄した。タンパク質を緩衝液A中、150mM〜1200mM NaClの勾配液2000mlで溶離させ、画分24mlを集めた。R.BglII活性は0.6と0.85M NaClの間に溶離した。この時点及び精製する間、活性を基質として1μlλDNA(New England Biolabs)、1μlカラム画分及び標準緩衝液条件を使用するアッセイにより測定し、37℃で2分間インキュベートした。
活性画分をプールし、150mM NaClを含む緩衝液A 4リットルで一晩透析した。透析物を150mM NaClを含む緩衝液Aで平衡化させた1.5cm×34cmの第2のヘパリン−セファロースカラム(Pharmacia LKB)上に載置した。カラムを150mM NaClを含む緩衝液Aの2カラム容積で洗浄した。タンパク質を緩衝液A中150mM〜1200mM NaClの勾配液1000mlで溶離させ、画分12mlを集めた。上記の如くアッセイしたR.BglIIエンドヌクレアーゼ活性は、0.4と0.65M NaClの間に溶離した。
活性画分をプールし、ウシ胎児血清アルブミンを終濃度100μg/mlで添加し、溶液を貯蔵緩衝液(50mM KCl,10mM Tris pH 7.4,0.1mM EDTA,1mM DTT,50% グリセロール)で一晩透析し、容積を減少させた。
透析物をSepadex G−75サイジングカラム(2.5cm×114cm)に載置し、カラムに緩衝液B(50mM KCl,10mM Tris pH 7.4,0.1mM EDTA,1mM DTT,10% グリセロール)を流速4.5ml/時で流した。R.BglIIは容積60mlで溶離し、活性画分をプールし、ウシ血清アルブミンを終濃度200mg/mlで添加し、酵素を貯蔵緩衝液で再透析した。
この精製方法を使用して、R.BglII 1.2×106単位を得た。収率は16%であった。
この精製法により得られたBglII制限エンドヌクレアーゼは実質的に純粋で、非特異的エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼを含んでいなかった。BglII制限エンドヌクレアーゼ製剤の純度を以下の標準法によりチェックした。
1)連結:λDNAが15倍過剰発現した後、産生したDNAフラグメントの95%以上はT4 DNAリガーゼに連結できた(16℃で1−2mM の5’末端濃度)。これらの連結フラグメントのうち95%は再切断可能であった。
2)延長消化:λ DNA 1μg及び酵素400単位を含む50μl反応液を16時間インキュベーション後、1時間インキュベートした酵素1単位を含む反応液と同一パターンのバンドが生じた。
3)エキソヌクレアーゼ活性:超音波処理した[3H]DNA(105cpm/mg)1μgを含む50μl反応液中、酵素3,000単位で37℃で4時間インキュベーション後、放射能0.1%未満が放出された。
4)エンドヌクレアーゼ汚染:1μgφ X174 RFI DNAを含む50μl反応液中、酵素80単位で37℃で4時間インキュベーション後、DNAの10%がRFIIに転換した。全ての試験を以下の反応緩衝液[50mM NaCl,10mM Tris−HCl,10mM MgCl2,1mM DTT(pH 7.9,25℃)]中で実施した。
標準法の説明
1.抗生物質の培地への添加:液体培地及び寒天プレートの両方に、必要により所定濃度の以下の抗生物質:アンピシリン(50μg/ml);カルベニシリン(50μg/ml);テトラサイクリン(10μg/ml);カナマイシン(50μg/ml)を添加した。
2.制限エンドヌクレアーゼ消化後のDNA精製:制限消化反応を等容量のフェノールで1回及び等容量のクロロホルムで1回抽出した。95%エタノール2容量を添加し、混合物をドライアイス−エタノール浴中で10分インキュンベートし、DNAを沈殿させる。DNAをエッペンドルフミクロ遠心分離機中で4℃で10分間遠心分離することにより集め、上清をデカンテーションし、DNAペレットを好適な容量のTE緩衝液に再懸濁させる。
3.CaCl 2 を用いるコンピテントE.coli細胞の製造:E.coli細胞を後期対数増殖期(Klett=100)まで液体培地中で生長させ、次いで遠心分離により収穫することにより形質転換用に製造する。細胞を50mM CaCl2の半分の容量で洗浄し、前述の如く収穫し、最終的に元の50mM CaCl2の1/50容量中に再懸濁させる。
4.コンピテントカルシウム−処理E.coli細胞の形質転換:DNAと200μl細胞と混合し、次いで氷上で20分間インキュベートすることにより細胞を形質転換する。細胞を42℃で2分間インキュベーションすることにより熱ショックを与える。LB培地を添加し、細胞を37℃で1時間インキュンベートし、好適な(複数の)抗生物質を含む寒天プレート上に散布する。
5.アルカリ溶解“ニミプレプ”法によるプラスミド単離:5mlの一晩培養した培地からの細胞をBeckman JA−17ローター中、5000rpmで10分間遠心分離することにより収穫し、100μl氷冷GET緩衝液(50mM グルコース,10mM EDTA,25mM Tris−HCl pH 8.0,4mg/ml リゾチーム)中に再懸濁させる。室温で5分間インキュベーション後、新しく調製した溶液(0.2N NaOH,1% SDS)200μlを添加する。溶液を転倒することにより緩やかに混合し、氷上で5分間インキュンベートする。氷酢酸でpH 4.8に調節した5M 酢酸カリウム溶液150μlを溶解物に添加する。細胞溶解物を混合し、氷上で5分間インキュンベートし、エッペンドルフ遠心分離機で4℃で5分間遠心分離する。上清をフェノール:クロロホルム1:1の等容量で1回洗浄し、混合し、エッペンドルフ遠心分離機で2分間回転させる。95%エタノール2容量を最上層に添加し、混合物を室温で5分間インキュンベートし、DNAをエッペンドルフ遠心分離機中5分間遠心分離して集める。ペレットを70%エタノール1mlで洗浄し、上記の如く再遠心分離する。上清をデカンテーションし、DNAペレットを風乾または真空デシケーター中で乾燥させ、乾燥ペレットを20μg/ml RNaseを含む50μl TE中に再懸濁させる。
6.エレクトロポレーションによるE.coli細胞の形質転換:1リットルのLB培地にE.coli細胞の一晩培養した培地を1:500で接種する。培地が中間対数増殖期(Klett=65)に到達したら、細胞をJA−14ローターのついたBeckman J2−21遠心分離機中、4000rpmで15分間遠心分離することにより収穫する。上清をデカンテーションし、細胞を1リットルの滅菌H2O中に4℃で再懸濁させる。細胞を上記の如く収穫し、0.5リットルの滅菌H2Oに4℃で再懸濁させる。細胞を上記の如く収穫し、10%グリセロールを含む20ml滅菌H2O中で4℃で3回再懸濁させる。細胞を上記の如く収穫し、最後に10%グリセロールを含む2ml滅菌H2O中で4℃で再懸濁させる。この時点までの細胞密度は、少なくとも3×1010細胞/mlでなければならない。このようにして製造した細胞はすぐに使用し得るが、−70℃で無期限に貯蔵でき、使用直前に氷上で融解する。
細胞をDNA(1−40ml容積)と40μl細胞と一緒に混合し、次いで氷上で1分間インキュンベートすることによりエレクトロポレーションする。25μFD静電容量及び2.5kVパルスで200Ω抵抗に設定したBio−Rad Gene Pulser装置で混合物に電流をかける。エレクトロポレーションした細胞を1ml LB中に再懸濁させ、37℃で1時間インキュンベートし、好適な抗生物質を含む寒天プレート上に散布する。
7.Triton溶解によるプラスミド単離方法:細胞を、JA−17ローターをつけたBeckman J2−21遠心分離機中で5000rpmで15分間遠心分離することにより液体培地から収穫し、培地1リットル当たり8ml Tris−蔗糖緩衝液(50mM Tris pH 8.0,25%蔗糖)中に再懸濁させる。細胞をプールし、このプールに培地1リットル当たり0.8ml 0.5M EDTA pH8.0、0.8ml 10mg/ml リゾチーム及び5.6ml Toriton緩衝液(62.5mM EDTA,1% Triton X−100,50mM Tris−HCl pH 8.0)を添加する。成分を緩やかに転倒することにより混合し、氷上で30分間インキュベートし、上記と同一ローター中16,000rpmで45分間遠心分離して細胞破片を分離する。1.1g/ml CaClを上清に添加し、臭化エチジウムを100μg/mlになるまで添加する。混合物をTi70ローターのついたBeckman L8−55超遠心分離機中で44,000rpmで48時間(または55,000rpmで24時間、その後44,000rpmで1時間)回転させる。遠心分離後、DNAバンドをCsCl勾配液からシリンジで除去し、H2O 2容量で希釈し、DNAを95%エタノール2容量を添加することにより得られた溶液から沈殿させ、−20℃で少なくとも30分間凍結させる。DNAをJA−17ローターのついたBeckman J2−21遠心分離機中、12,000rpmで20分間回転させることにより集め、上清をデカンテーションし、ペレットを1−2ml TEに再懸濁させる。DNA溶液をフェノール等容量で1回抽出し、次いでクロロホルム等容量で抽出する。LiClを0.2M 濃度で添加し、次いで95% エタノール2容量を添加する。DNAを−70℃で一晩凍結することにより2度沈殿させ、上記の如く集める。最終DNAペレットを0.5ml TEに再懸濁させる。
8.アガロースからのDNAのペーパー溶離:ワットマンクロマトグラフィーペーパーDE81を2.5M NaCl中に数時間浸漬させ、H2Oで数分間洗浄し、乾燥させる。
アガロースゲル電気泳動によりフラグメントを分離後、精製すべきDNAバンドの隣のゲルにウエルを切り込み、上記の如く製造したDEAEペーパーをウエルに挿入する。ウエルに緩衝液を満たし、所望のバンドが切断ウエルに移動するようにゲルを90°の角度で回転させ、バンドが移動するまでは浸水させないようにする。
洗浄装置は、1.5mlエッペンドルフチューブ内部に配置された底に穴のついた0.5mlエッペンドルフチューブからなる。調製チューブ内で、液体にペーパーを浸し、遠心分離により底の穴を通して液体を排水することにより、DEAEペーパーを150μl低塩緩衝液(0.1M NaCl,10mM Tris pH 8.0,1mM EDTA)で2回洗浄する。これを75μl高塩緩衝液(1.0M NaCl,10mM Tris pH 8.0,1mM EDTA)中で4回実施する。高塩洗浄液をプールし、フェノール:クロロホルム1:1の等容量で1回及びクロロホルムで1回抽出する。95%エタノールを2容量以上添加することによりDNAを沈殿させ、ドライアイス−エタノール浴中で15分間凍結させ、次いで4℃で10分間遠心分離する。上清を注意深く除去し、ペレットを乾燥させ、好適な容量のTE中に再懸濁させる。
9.RbClを使用するコンピテントE.coli細胞の製造:E.coli細胞を液体培地中、中間対数増殖期(Klett=60〜80)になるまで生長させ、氷上で凍結させ、次いでBeckman JA−14ローター中、4000rpmで5分間遠心分離して収穫する。細胞を1/5容量のTFB I(30mM 酢酸カリウム,100mM RbCl,10mM CaCl2,50mM MnCl2,15% グリセロール,0.2M 酢酸によりpH 5.8としたもの)中に再懸濁させ、凍結させ、上記の如く収穫する。細胞を元の容量の1/50のTFB II(10mM MOPS,75mM CaCl2,10mM RbCl,15% グリセロール,KOHでpH6.5にしたもの)に再懸濁させ、使用前に上記の如く氷上で15〜60分間凍結させる。
CaCl2で処理した細胞に関して記載された同一形質転換プロトコルをRbClで処理した細胞に関して実施する。
10.メチル化のファージアッセイ:0.04% マルトース及び好適な抗生物質を含んだ富裕ブロス(1リットル当たり富裕ブロスは以下のものを含む:10g トリプトン;5g 酵母抽出物;5g NaCl;1N NaOHでpHを7.0に調節)を形質転換体の一晩培養した培地に1:100で接種する。新規培地を37℃で振盪しながら中間対数増殖期まで生長させ、細胞を遠心分離(4000rpm5分)により収穫し、1mM SM(100mM NaCl,8mM MgSO4・7H2O,50mM Tris−HCl pH 7.5,0.01% ゼラチン)中に再懸濁させる。λvirファージを感染の多重度10になるように添加し、細胞を37℃で20分間インキュベートして、ファージを吸着させる。インキュベーション後、0.04% マルトースを含む富裕ブロスを添加して容積を20mlに戻し、培地を37℃で一晩生長させる。翌日、クロロホルム200μlを培地に添加し、細胞破片を遠心分離し、次いで0.45μmフィルター(Schleicher及びSchuell)を通して濾過して除去する。ファージDNAをフェノール、次いでクロロホルムとの抽出により澄んだ上清1mlから単離し、−70℃でエタノール沈殿させ、遠心分離(Beckman JA−17ローター中、12000rpm、20分)し、次いで20μg/ml RNaseを含む100μl TE中にペレットを再懸濁させる。