最初に、固体高分子電解質形の燃料電池の基本的な発電原理を概説すると共に、加湿原料ガスによって電解質膜の乾燥を防止する目的を理解するため、電解質膜の保水管理の必要性を説明する。
燃料電池は、水素ガス等の燃料ガスをアノードに、空気等の酸化剤ガスをカソードに供給することによりこれらを電気化学的に反応させて電気と熱を同時に生成するものである。
電解質膜としては水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜が利用され、この電解質膜の両面に配置された多孔質の触媒反応層は、白金系の金属触媒を担持したカーボン粉末を主成分としており、アノードの触媒反応層において下記の(1)式の反応が発生し、カソードの触媒反応層において下記の(2)式の反応が発生し、燃料電池全体として下記の(3)式の反応が発生する。
H2 → 2H++ 2e− (1)
1/2O2+ 2H+ + 2e− → H2O (2)
H2 + 1/2O2 → H2O (3)
即ち、(1)式の反応で生成した水素イオンを、電解質膜を介してアノードからカソードに輸送させると共に、外部回路を介してアノードからカソードに電子を移動させ、カソードでは酸素ガスおよび水素イオン並びに電子が(3)式のように反応して水を生成すると共に、触媒反応による反応熱を得ることができる。
このように電解質膜には水素イオンを選択的に輸送する機能が必要であり、電解質膜に保水させることによって、電解質膜に含まれる水を移動経路として、アノードからカソードに水素イオンを輸送できるイオン伝導性が発現すると考えられている。
従って、水素イオン輸送能確保のため、電解質膜を保水させることが必須であり、電解質膜の乾燥化を防止して電解質膜の保水管理を適切に行うことは、電解質膜の基本性能にかかわる重要な技術事項である。
次に、既存の高分子電解質形の燃料電池の構成につき図面を参照して説明する。
図1に電解質接合体(MEA;Membrane-Electrode Assembly)を備えた固体高分子電解質形の燃料電池の断面図が示されている。
水素イオン伝導性を備えたパーフルオロカーボンスルフォン酸からなる高分子電解質膜11の両面に、この電解質膜11を挟むようにアノード14aおよびカソード14cが配置されている。なお、参照番号の添え字aは水素ガス等の燃料ガス関与側のアノード14aに関連するものを示しており、添え字cは空気等の酸化剤ガス関与側のカソード14cに関連するものを示している。
アノード14aおよびカソード14cは共に二層膜構造を有しており、電解質膜11と接触する第一層膜は、多孔質カーボンに白金等の貴金属を担持した触媒と水素イオン伝導性を有する高分子電解質との混合物からなるアノード14aの触媒反応層12a(以下、触媒反応層12aという)およびカソード14cの触媒反応層12c(以下、触媒反応層12cという)であり、これらの触媒反応層12a、12cの外面に密着して積層する第二層膜は、通気性と電気伝導性を兼ね備えたアノード14aのガス拡散層13a(以下、ガス拡散層13aという)およびカソード14cのガス拡散層13c(以下、ガス拡散層13cという)である。
なお、MEA17は、電解質膜11およびアノード14a並びにカソード14cで構成されており、このMEA17は機械的に固定されると共に、互いに隣接するMEA17同士が電気的に直列に接続される。
また、アノード14aの外面に接触してアノード14aに対する導電性セパレータ板16a(以下、導電性セパレータ板16aという)が配置され、カソード14cの外面に接触してカソード14cに対する導電性セパレータ板16c(以下、導電性セパレータ板16cという)が配置されている。
また、アノード14aおよびカソード14cに反応ガスを供給して、反応後の反応生成ガスや反応に寄与しなかった余剰の反応ガスを運び去る溝(深さ:0.5mm)からなるアノード14aに対する燃料ガス流路18a(以下、ガス流路18aという)およびカソード14cに対する酸化剤ガス流路18c(以下、ガス流路18cという)が導電性セパレータ板16a、16cのMEA17との接触面に形成されている。
こうしてMEA17とセパレータ板16aと16cからなる燃料電池セル(単セル)20が形成される。
なお、燃料電池21の内部には、例えば燃料電池セル20が60セル程度積層されており、より具体的には、一方の燃料電池セル20の導電性セパレータ板16aの外面と、他方の燃料電池セル20の導電性セパレータ板16cの外面とが互いに向き合って接触して隣接するように燃料電池セル20は積層される。
また、導電性セパレータ板16aとこれに隣接する導電性セパレータ16cの接触面には、導電性セパレータ板16aに形成された溝(深さ:0.5mm)19aと、導電性セパレータ板16cに形成された溝(深さ:0.5mm)19cとからなる冷却水通路19が設けられている。
こうして冷却水通路19の内部を流れる冷却水によって導電性セパレータ板16a、16cの温度調整を行い、これらの導電性セパレータ16a、16cを介してMEA17の温度調整を可能にしている。
なお、導電性セパレータ板16a、16cとしては、例えば、20cm×32cm×1.3mmの外寸で、フェノール樹脂を含浸させた黒鉛板が用いられる。
また一方、MEA17の外周部のアノード側主面およびカソード側主面にそれぞれ、環状のゴム製のアノード14aの側のMEAガスケット15a(以下、MEAガスケット15aという)およびカソード14cの側のMEAガスケット15c(以下、MEAガスケット15cという)が設けられ、導電性セパレータ板16a、16cとMEA17の間を、MEAガスケット15a、15cによって封止させる。こうして、MEAガスケット15a、15cによってガス流路18a、18cを流れるガスのガス混合やガスリークが防止される。更には、MEAガスケット15a、15cの外側には冷却水通流用および燃料ガス通流用並びに酸化剤ガス通流用のマニホールド穴(図示せず)が形成されている。
以上のような燃料電池を使用した燃料電池発電装置のガス供給系の構成および動作について図面を参照しながら説明する。図2は、燃料電池発電装置の基本構成を示すブロック図である。
最初に、図1および図2を用いて、本発明の燃料電池発電装置100の基本構成を説明する。
燃料電池発電装置100は主として、燃料生成器23に原料ガスを供給するための原料ガス供給手段22、燃料生成器23に水を供給するための第二の水供給手段75、原料ガス供給手段22から供給された原料ガスおよび第二の水供給手段75から供給された水から改質反応によって水素リッチな燃料ガスを生成する燃料生成器23、加湿器23に酸化剤ガス(空気)を供給するための空気供給手段としてのブロア28、加湿器24に水を供給するための第一の水供給手段74、ブロア28から供給された空気を、燃料生成器23から供給された熱および第一の水供給手段74から供給された水によって加湿させる加湿器34、燃料生成器23からアノード14aに供給された燃料ガスおよび加湿器24からカソード14cに供給された加湿酸化剤ガスを使って発電しおよび熱を生成する燃料電池21、原料ガス供給手段22および第一、第二の水供給手段74、75並びに燃料生成器23並びにブロア28並びに燃料電池21の適切な制御を制御する制御部27、燃料電池21で生成された電力を取り出す回路部25およびこの回路部25の電圧(発電電圧)を測定する測定部26等から構成されている。更に、燃料電池発電装置100には、後ほど詳しく説明する第一の切り替え弁29および第一、第二、第三の遮断弁30、31、32が設けられ、制御部27によって制御されている。なお、図2中の点線は制御信号を示している。
次に、燃料電池発電装置の通常運転時(発電時)のガス供給の動作について説明する。
原料ガス供給手段22のガス清浄部22pにおいて原料ガスに含有する燃料電池の性能劣化物質を除去して原料ガスを清浄化させたうえで、原料ガス供給配管63を介して清浄化原料ガスが燃料生成器23に供給される。なおここでは、原料ガスにメタンガス、エタンガス、プロパンガスおよびブタンガスを含有する都市ガス13Aを使用するため、ガス清浄部22pで都市ガス13Aに含まれる付臭剤のターシャリブチルメルカプタン(TBM)およびジメチルサルファイド(DMS)並びにテトラヒドロチオフィン(THT)等の不純物が吸着除去される。
また一方、第二の水供給手段75(例えば、水供給ポンプ)から燃料生成器23の内部に水が供給される。
こうして原料ガスと水蒸気から燃料生成器23の改質部23eにおいて改質反応によって水素ガスリッチな燃料ガス(改質ガス)が生成される。燃料生成器23から送出される燃料ガスは、第一の切り替え弁29によって燃料ガス供給配管61とアノード側入口21aを連通させたうえで、燃料ガス供給配管61を介して燃料電池21のアノード側入口21aに供給され、アノード14aにおいて(1)式の反応に利用される。なお、第一の切り替え弁29は、アノード側入口21aと燃料生成器23の間の燃料ガス供給配管61の途中に配置されている。
また、燃料電池21に供給された燃料ガスのうち、燃料電池21で発電反応に利用されなかったものはアノード側出口21bから送出されアノード排気配管47を介して開栓状態の第一の遮断弁30を通って燃料電池21の外部に導かれる。
なお、第一の遮断弁30は、アノード側出口21bと水除去部33の間のアノード排気配管47の途中に配置されている。外部に導かれた残余の燃料ガスは、アノード排気配管47の途中の第二の逆止弁48(第二の逆止弁48は流れを許す方向)を通過すると共に、第一の逆止弁41によって第一の連結配管64の方向への逆流を防止される。そして、残余の燃料ガスは、アノード排気配管47に配置された水除去部33によって水を除去された後、燃料生成器23の燃焼部(図示せず)に送られて、燃焼部の内部で燃焼される。なお、この燃焼によって発生する熱は、改質反応のような吸熱反応用の熱として利用される。
一方、酸化剤ガス供給手段としてのブロア28から酸化剤ガス供給配管62を介して加湿器24に供給された酸化剤ガス(空気)は、加湿器24において加湿処理された後、開栓状態の第二の遮断弁31を通って酸化剤ガス供給配管62を介して燃料電池21のカソード側入口21cに供給され、カソード14cにおいて(2)式の反応に利用される。なお、第二の遮断弁31は、加湿器24とカソード側入口21cの間の酸化剤ガス供給配管62の途中に配置されている。
加湿に必要な水は、第一の水供給手段74(例えば、水供給ポンプ)から加湿器24の内部に補給され、加湿に必要な熱は、図2中に二重線で示された燃料生成器23から加湿器24に供給されている。燃料電池21に供給された加湿酸化剤ガスのうち、燃料電池21で発電反応に利用されなかったものはカソード側出口21dから開栓状態の第三の遮断弁32を通って燃料電池21の外部に導かれ、残余の酸化剤ガスはカソード排気配管60を介して再び加湿器24へ還流されて、還流酸化剤ガス中に含まれる水および熱を加湿器24の内部においてブロア28から送られる新気の酸化剤ガスに与える。なお、第三の遮断弁32は、カソード側出口21dと加湿器24の間のカソード排気配管60の途中に配置されている。また加湿部24として、イオン交換膜を用いた全熱交換加湿器34と温水加湿器35が併用されている。
なおここで、原料ガス供給手段22およびブロア28並びに第一、第二の水供給手段74、75並びに燃料生成器23並びに燃料電池21の動作並びに第一の切り替え弁29の切り替え動作並びに第一、第二、第三の遮断弁30、31、32の開閉動作は、各種機器の検知信号(例えば、温度信号)に基づいて制御部27によって制御されて、適切なDSS運転が実施されている。
こうして、アノード14aの出力端子72a(以下、出力端子72aという)およびカソード14cの出力端子72c(以下、出力端子72cという)に回路部25が接続されて、回路部25に燃料電池21の内部で生成された電力が取り出されて、回路部25の発電電圧が測定部26にてモニタされている。
ここで、燃料生成器23の内部には、メタンガス等の原料ガスを、水蒸気を用いて改質する改質部23eの他、改質部23eから送出された燃料ガス中に含有される一酸化炭素ガス(COガス)の一部を変成反応によって除去するCO変成部23fと、CO変成部23fから送出された燃料ガス中のCOガス濃度を10ppm以下に低下させ得るCO除去部23gが備えられている。COガス濃度を所定濃度レベル以下に低減させて、燃料電池21の動作温度域においてCOガスによってアノード14aに含まれる白金の被毒を防ぎ、その触媒活性の劣化が回避され得る。勿論、アノード14aに白金−ルテニウム等、耐COガス性を有する触媒を使用して触媒材料の面でもCOガス被毒の対策を講じている。
メタンガスを原料ガスの例として燃料生成器23の内部の反応変遷をより具体的に説明すると、次のような反応が行われる。
改質部23eにおいて、(4)式に示した水蒸気改質反応によって水素ガス(約90%)とCOガス(約10%)が生成される。
CH4 + H2O → CO + 3H2 (4)
続いてCO変成部23fにおいて、このCOガスは二酸化炭素に酸化され、その濃度が約5000ppmまで減少させられる((5)式参照)。変成部23fの下流側のCO除去部23gにおいてもCOガスを酸化によって排除できるが、CO除去部23gは、COガスの他、有用な水素ガスまでも酸化させるため、CO変成部23fにおいて可能な限りCOガス濃度を低下させる方が望ましい。
CO + H2O → CO2 + H2 (5)
変成部23fで除去しきれなかった残留するCOガスは、CO除去部23gで酸化して除去されその濃度を約10ppm以下まで低下させられる((6)式参照)。こうして、燃料電池21に用いられる燃料ガスとして使用に耐え得るCOガス濃度レベルに到達できる。因みに、燃料生成器23の全反応式を(7)式に示しておく。
CO + 1/2O2 → CO2 (6)
CH4 + 2H2O → CO2 + 4H2 (7)
次に、燃料電池発電装置100の起動開始時の動作について説明する。
燃料生成器23(改質部23e)の温度が700℃以下であれば、燃料生成器23(改質部23e)において(4)式の改質反応が発生されない。このため起動開始時においては、燃料ガスから送出されるガスはアノード側入口21aに導かれることなく、第一の切り替え弁29の切り替え動作によって燃料ガス供給配管61をアノード排気配管47に、第一の連結配管64とこの途中に設けられた第一の逆止弁41を介して連通させて、燃料生成器23から送出されたガスを第一の逆止弁41(第一の逆止弁は流れを許す方向)を通してアノード排気配管47に導く。その後、このガスは第二の逆止弁48によってアノード側出口21bの方向への逆流を防止されて、水除去部33にて水除去された後、燃料生成器23の燃焼器に供給されて燃焼器の内部で燃焼させられる。これによって、燃料生成器23(改質部23e)の昇温を速やかに行えて、起動開始から発電までの時間を短縮できる。
更に、燃料電池発電装置100の起動停止時の動作について説明する。
燃料電池発電装置100の起動停止時には、第一の切り替え弁29を動作させて燃料ガス供給配管61をアノード排気配管47に連通させ、燃料ガス供給配管61とアノード側入口21aを遮断する。また、第一、第二、第三の遮断弁30、31、32をそれぞれ閉じる。これによって起動停止後、燃料ガスを燃料電池21のアノード14aに封入でき、かつ酸化剤ガスを燃料電池21のカソード14cに封入できる。
(実施の形態1)
通常運転時(発電時)および起動開始時並びに運転停止時について燃料電池発電装置の基本構成のガス供給系の動作を概説したが、停止期間および発電期間を有して停止と発電を頻繁に交互に反復する燃料電池発電装置(例えば、家庭用の燃料電池発電装置)においては、燃料電池の停止期間から発電期間までの間の移行期間に燃料電池の内部を加湿した原料ガスの雰囲気に曝すことによって、燃料電池の停止時における電解質膜の乾燥化や長期保管でもたらされる酸素ガス混入に起因する燃料電池の局所燃焼という燃料電池の起動および停止の反復動作に関する技術的な課題を解消することができる。
なおここで、原料ガスの加湿とは、原料ガスの露点を燃料電池の稼働温度以上になるように、原料ガスの雰囲気を維持させることをいう。
以下、燃料電池の内部を、上記の移行期間に加湿原料ガスで曝すことを特徴とする燃料電池発電装置のガス供給系の構成例および動作例を説明する。
図3は、実施の形態1に係る燃料電池発電装置の構成を示したブロック図であり、図4Aおよび図4Bは、図3の燃料電池発電装置のガス供給動作を説明するフローチャート図である。
燃料電池21、第一の水供給手段74、第二の水供給手段75、原料ガス供給手段22、燃料生成器23、加湿器24、インピーダンス測定器73、回路部25、測定部26および制御部27の構成については基本構成(図1および図2参照)にて説明したものと同様である。
但し、実施の形態1は、加湿原料ガスの燃料電池21への導入配管および切り替え弁並びに遮断弁並びにマスフローメータ等の制御部27の入力センサを以下のようにした点で基本構成と相違しており、ここでは配管および切り替え弁並びに遮断弁並びにマスフローメータ等の入力センサの変更点を中心に説明する。
図3において、燃料生成器23の出口直後の燃料ガス供給配管61の途中にガス流量を測定するためのアノード14aのマスフローメータ70a(以下、マスフローメータ70aという)が配置されている。なお、マスフローメータ70aの下流側であって燃料電池21のアノード側入口21aの上流側の第一の切り替え弁29は、燃料生成器23から延びてアノード側入口21aに連通する燃料ガス供給配管61の途中に配置される。
また、第一の切り替え弁29は、図2と同様に第一の逆止弁41を配置された第一の連結配管64を介してアノード排気配管47と連通される。なお、第一の連結配管64およびアノード排気配管47の接続部位の位置は、水除去部33と第二の逆止弁48の間にある。
アノード出口側21bから燃料生成器23に延びるアノード排気配管47の途中に第二の切り替え弁42が配置され、この第二の切り替え弁42の下流側であって水除去部33の上流側には、第一の遮断弁30および第二の逆止弁48がこの順番に、アノード排気配管47の途中に配置されている。
更に、加湿器24からカソード側入口21cに延びる酸化剤ガス供給配管62の途中には、第二の遮断弁31および第三の切り替え弁43がこの順番に設けられ、カソード側出口21dから加湿器21に延びるカソード排気配管60の途中には 第四の切り替え弁44および第三の遮断弁32がこの順番に設けられている。
加えて、第三の切り替え弁43は、第一の循環配管45を介してアノード排気配管47の途中と連結され、第四の切り替え弁44は、第二の循環配管46を介して第二の切り替え弁42と連結されている。なお、第一の循環配管45およびアノード排気配管47の接続部位の位置は、水除去部33と第二の逆止弁48の間にある。
また、燃料電池21の内部の温度を検知する温度検知手段(Pt抵抗体の熱電対が望ましい)71は、図3に示すように燃料電池21のほぼ中央付近に配置され、燃料電池セル20中のカソード14cの導電性セパレータ板16cの内部に埋め込まれている(図1参照)。
また、後ほど詳しく説明する燃料電池21の電解質膜11の膜抵抗(導電率)を求めるため、出力端子72a、72cに接続するインピーダンス測定器73が設けられている。
なお、出力端子72a、72cに回路部25が接続されて、回路部25において燃料電池21の内部で生成された電力が取り出されて、回路部25の電圧(発電電圧)が測定部26でモニタされる。
ここで、マスフローメータ70aの出力信号、温度検知手段71の出力信号(測定部26を介して)および出力端子72a、72cの出力信号(インピーダンス測定器73を介して)は、制御部27に入力される。こうして、マスフローメータ70aの出力信号に基づき原料ガスの流量が制御部27によってモニタされ、温度検知手段71の出力信号を測定部26で処理された処理信号に基づき燃料電池21の内部温度が制御部27によってモニタされ、出力端子72a、72cの出力信号をインピーダンス測定器73で処理された処理信号に基づき電解質膜11の膜抵抗が制御部27によってモニタされている。また、制御部27によって以下に説明する第一、第二、第三、第四の切り替え弁29、42、43、44の切り替え動作および第一、第二、第三の遮蔽弁30、31、32の開閉動作は制御されている。
以下、燃料電池発電装置の停止保管動作および起動開始動作並びに発電開始可否の確認動作並びに発電動作に分けて、燃料ガスおよび酸化剤ガスの供給の動作を、図3のブロック図および図4A、図4Bのフローチャート図を参照しながら詳細に説明する。
〔燃料電池発電装置の停止保管動作〕
燃料電池発電装置100の停止後、燃料電池21の内部を原料ガスによって充填封止の状態に保って燃料電池発電装置100を長期保管させる。ここで、燃料電池発電装置100の停止保管のため、切り替え弁および遮断弁を次のように動作させる(ステップS401)。
第二の切り替え弁42に接続する第一の遮断弁30および第三の切り替え弁43に接続する第二の遮断弁31並びに第四の切り替え弁44に接続する第三の遮断弁32をそれぞれ閉める。
この状態で、第一の切り替え弁29を動作させて燃料ガス供給配管61をアノード排気配管47と連通させる一方、燃料ガス供給配管61をアノード側入口21aと遮断させる。また、第二の切り替え弁42を動作させてアノード側出口21bを第一の遮断弁30と連通させる一方、アノード側出口21bを第二の循環配管46と遮断させる。更に、第三の切り替え弁43を動作させてカソード側入口21cを第二の遮断弁31と連通させる一方、カソード側入口21cを第一の循環配管45と遮断させる。更にまた、第四の切り替え弁44を動作させてカソード側出口21dを第三の遮断弁32と連通させる一方、カソード側出口21dを第二の循環配管46と遮断させる。
こうして燃料電池21の内部に燃料ガスおよび酸化剤ガスを確実に封入することができる。なお、燃料電池21の内部は燃料電池稼働温度(70℃)以下で維持されており、通常は室温(約20℃〜30℃)近くに保たれている。
〔燃料電池発電装置の起動開始動作〕
後ほど説明する加湿原料ガスによって燃料電池21の内部をパージ処理させるため、最初に燃料電池21の触媒に悪影響を及ぼさないような原料ガスの選定および原料ガスの清浄化処置を行う(ステップS402)。
具体的には、燃料電池21の白金触媒を表面に吸着して、水素過電圧を上昇させることを防止する目的で、原料ガス中の不純物の除去、とりわけイオウ成分の除去は必要不可欠な清浄化処理である。また原料ガス自体の選択として、燃料電池21の白金触媒の活性阻害等をもたらさないガスを選定することが必要であり、この観点からメタンガス、プロパンガス、ブタンガスおよびエタンガス(またはこれらの混合ガス)の何れかのガスを使用することが望ましい。
次に、燃料電池21の内部を、稼働温度(70℃)まで昇温する(ステップS403)。
具体的な昇温方法として、例えば、ヒータ(図示せず)または燃料電池発電装置100のコージェネレーション給湯器(図示せず)の貯蔵温水を使用する。なお、燃料電池21の内部温度は、温度検知手段71の検知信号に基づいて制御部27によってモニタされ、燃料電池21の適切な昇温動作が制御される。
ここで、燃料電池21の内部温度が稼働温度(70℃)以上に達している否かを判定して(ステップS404)、昇温不足であれば(S404においてNo)、S403の昇温動作を継続させ、70℃以上に到達すれば(S404においてYes)、次のステップに進む。
続いて、燃料生成器23の内部を予備加熱させるため、切り替え弁および遮断弁を以下のように動作させる(ステップS405)。
第二の切り替え弁42に接続する第一の遮断弁30および第三の切り替え弁43に接続する第二の遮断弁31並びに第四の切り替え弁44に接続する第三の遮断弁32をそれぞれ閉める。
この状態で、第一の切り替え弁29を動作させて燃料ガス供給配管61をアノード排気配管47と連通させる一方、燃料ガス供給配管61をアノード側入口21aと遮断させる。また、第二の切り替え弁42を動作させてアノード側出口21bを第一の遮断弁30と連通させる一方、アノード側出口21bを第二の循環配管46と遮断させる。更に、第三の切り替え弁43を動作させてカソード側入口21cを第二の遮断弁31と連通させる一方、カソード側入口21cを第一の循環配管45と遮断させる。更にまた、第四の切り替え弁44を動作させてカソード側出口21dを第三の遮断弁32と連通させる一方、カソード側出口21dを第二の循環配管46と遮断させる。
こうして燃料生成器23から送出され燃料ガス供給配管61を流れるガスを、第一の連結配管64(第一の逆止弁41は流れを許す方向)およびアノード排気配管47を通って燃料生成器23の燃焼部に還流させ燃焼部の内部で燃焼させる。
これによって、所定温度範囲(燃料生成器23(改質部23e)において原料ガスおよび水蒸気からCOガスを発生させることなく、しかも原料ガスの炭素析出をさせない温度範囲)まで燃料生成器23を予備加熱させる(ステップS406)。
具体的な燃料生成器23の昇温温度の範囲として、次のような理由によって300℃以下である。もっとも効率的に原料ガスを加熱して加湿させる点から昇温温度の範囲は、好ましくは250℃以上である。
燃料生成器23の温度が700℃を超えると、燃料生成器23(改質部23e)の改質反応によって原料ガスと水蒸気から水素ガスが生成し、このような水素ガスによって燃料電池21の内部をパージ処理した場合、発電開始とともに水素ガスによって燃料電池21の内部で局所燃焼が発生する可能性がある。
燃料生成器23(改質部23e)の温度が700℃以下では、改質反応によって水素ガスは発生しないものの、500℃以上、700℃以下の温度の範囲内では燃料生成器23(改質部23e)において原料ガスを炭化させて原料ガスから炭素析出させる可能性があり、燃料生成器23(改質部23e)の温度を500℃以上の温度に保っておくことも好ましくない。加えて、燃料生成器23(改質部23e)の温度が300℃以下であれば、燃料生成器23(改質部23e)においてMEA17の触媒毒作用を有する一酸化炭素ガスが原料ガスおよび水蒸気から発生することがない。
以上の理由により燃料生成器23(改質部23e)の温度を300℃以下に保って、この温度範囲で加湿させた原料ガスをパージ処理用ガスとして使用することが好適である。
なお、燃料生成器23(改質部23e)の温度は、改質温度測定部(図示せず)の検知信号に基づいて制御部27によってモニタされて、燃料生成器23(改質部23e)の適切な昇温動作が図られる。
ここで、燃料生成器23(改質部23e)の温度が250℃〜300℃の範囲まで昇温したか否かを判定して(ステップS407)、昇温不足であれば(S407においてNo)、S406の燃料生成器23の予備加熱動作を継続させ、250℃〜300℃の範囲まで昇温したら(S407においてYes)、次のステップに進む。
燃料生成器23の予備加熱の後、燃料生成器23の内部を、原料ガス供給手段22から供給される原料ガスの露点を燃料電池21の稼働温度(70℃)以上に維持できるよう原料ガスを加湿処理できる状態に移行させる(ステップS408)。既に燃料生成器23は300℃近傍まで昇温されており、加湿に要する水は第二の水供給手段75から燃料生成器23に供給できるため、これらの熱と水によって燃料生成器23の内部で原料ガスを加湿させることが可能である。
続いて、加湿原料ガス供給のため、切り替え弁および遮断弁を以下のように動作させる(ステップS409)。
第二の切り替え弁42に接続する第一の遮断弁30および第三の切り替え弁43に接続する第二の遮断弁31並びに第四の切り替え弁44に接続する第三の遮断弁32をそれぞれ閉める。
この状態で、第一の切り替え弁29を動作させて燃料ガス供給配管61をアノード排気配管47と遮断させる一方、燃料ガス供給配管61をアノード側入口21aと連通させる。また、第二の切り替え弁42を動作させてアノード側出口21bを第一の遮断弁30と遮断させる一方、アノード側出口21bを第二の循環配管46と連通させる。更には、第三の切り替え弁43を動作させてカソード側入口21cを第二の遮断弁31と遮断させる一方、カソード側入口21cを第一の循環配管45と連通させる。更にまた、第四の切り替え弁44を動作させてカソード側出口21dを第三の遮断弁32と遮断させる一方、カソード側出口21dを第二の循環配管46と連通させる。
上記の弁動作を行った後、燃料生成器23から送出された加湿原料ガスは次のようにして燃料電池21の内部を加湿させて外部に導かれて、燃料電池21の内部を加湿原料ガスの雰囲気に置換するというパージ処理が行われる(ステップS410)。
原料ガス供給手段22から供給される原料ガスはガス清浄部22pにおいて清浄化された後、原料ガス供給配管63を介して燃料生成器23に送られて、燃料生成器23の内部で加湿される。その後、加湿原料ガスは、燃料生成器23から送出され、燃料ガス供給配管61を介して燃料電池21のアノード側入口21aから燃料電池21の内部に流入して、アノード14aが加湿原料ガスの雰囲気に曝された後、加湿原料ガスはアノード側出口21dから送出されて燃料電池21の外部に流出する。続いて加湿原料ガスは、第二の切り替え弁42によって第二の循環配管46の方向に向きを切り替えて、この第二の循環配管46を通過し、第四の切り替え弁44によって燃料電池カソード側出口21dの方向に向きを切り替えて再び燃料電池21の内部に再流入する。こうしてカソード14cが加湿原料ガスの雰囲気に曝されて、原料ガスはカソード側入口21cから送出されて燃料電池21の外部に再流出する。
その後、原料ガスは、第三の切り替え弁43によって向きを切り替えて第一の循環配管45の方向に流れて、アノード排気配管47に到達する。アノード排気配管47に到達した原料ガスは、第一、第二の逆止弁41、48によって逆流を防止されて、水除去部33の方向に導かれてこの水除去部33において加湿原料ガスから水除去された後、燃料生成器23の燃焼部に送られる。
すなわち加湿原料ガスは、図3中の太い点線のように燃料電池21のアノード側入口21aおよびアノード側出口21b並びにカソード側出口21d並びにカソード側入口21cの順番に通過して燃料電池21の周囲を環状に流れてアノード排気配管47に至る。燃焼部に供給された燃料ガスは、燃焼部の内部で燃焼され、この燃焼で生成した熱は燃料生成器23の加熱に利用される。
加湿原料ガスのトータル供給量は、燃料電池21の内部空間のガス充填可能容積の少なくとも3倍以上必要であり、例えば、ガス充填可能容積が約1.0Lであれば、加湿原料ガスの流量1.5L/分でもって約5分間、これを燃料電池21の内部に供給すれば良く、このトータル供給量はマスフローメータ70aの出力信号に基づいて制御部27によってモニタされている。
こうして燃料電池21の停止期間から発電期間までの間の移行期間に燃料電池21の内部を加湿原料ガスに曝すことができ、停止保管中に乾燥した燃料電池21の電解質膜11を加湿できると共に、仮に停止保管中に燃料電池21の内部に酸素ガスが混入した場合、この酸素ガスによってもたらされる燃料ガスとの局所燃焼を未然に防止できる。
更に、燃料電池21の停止期間から発電期間までの間の移行期間に、燃料電池21の内部に加湿原料ガスを導くようにしたため、燃料電池21の内部を長期間、加湿原料ガスの雰囲気で曝すことがなく、燃料電池の電極の撥水性が損なわれない。
加えて、アノード14aに燃料電池21の停止保管中に混入した酸素ガスが万一残留すると、ルテニウム溶出をきたして触媒機能が失われるため、アノード14aを経てからカソード14cに導くという加湿原料ガスの導入経路を採用して酸化劣化され易いアノード14aの酸素ガスを優先的に排除する原料ガスの供給法は、触媒劣化防止の観点から理にかなっている。
また、図3の太い点線を付して示した単一の加湿原料ガス供給経路によってアノード14aとカソード14cの両方を加湿処理させることができ、ガス供給配管を簡素化できる。
燃料電池21の内部に充分、加湿原料ガスを供給した後、切り替え弁および遮断弁を以下のように動作させて(ステップS411)、燃料電池発電装置100の燃料生成器23の加熱促進を図って、燃料生成器23(改質部23e)の内部温度を(4)式の改質反応可能な温度(約700℃以上)まで速やかに昇温させる。
第二の切り替え弁42に接続する第一の遮断弁30および第三の切り替え弁43に接続する第二の遮断弁31並びに第四の切り替え弁44に接続する第三の遮断弁32をそれぞれ閉める。
この状態で、第一の切り替え弁29を動作させて燃料ガス供給配管61をアノード排気配管47と連通させる一方、燃料ガス供給配管61をアノード側入口21aと遮断させる。また、第二の切り替え弁42を動作させてアノード側出口21bを第一の遮断弁30と連通させる一方、アノード側出口21bを第二の循環配管46と遮断させる。更に、第三の切り替え弁43を動作させてカソード側入口21cを第二の遮断弁31と連通させる一方、カソード側入口21cを第一の循環配管45と遮断させる。更にまた、第四の切り替え弁44を動作させてカソード側出口21dを第三の遮断弁32と連通させる一方、カソード側出口21dを第二の循環配管46と遮断させる。
こうして燃料生成器23から燃料ガス供給配管61に送出されるガスを、第一の連結配管64(第一の逆止弁41は流れを許す方向)およびアノード排気配管47を通って燃料生成器23の燃焼部に還流させ燃焼部の内部で燃焼させる。これによって、所定温度範囲(改質反応によって原料ガスと水蒸気から水素ガスが生成する温度範囲;700℃以上)まで燃料生成器23を加熱させる(ステップS412)。
ここで、燃料生成器23(改質部23e)の温度が700℃以上に昇温したか否かを判定して(ステップS413)、昇温不足であれば(S413においてNo)、S412の加熱動作を継続させ、700℃以上に到達したら(S413においてYes)、次のステップに進む。
〔燃料電池発電装置の発電開始可否の確認動作〕
燃料生成器23の内部を700℃以上に昇温させた後、燃料電池21の内部温度の確認および燃料電池21の電解質膜11の導電率の確認を行って、燃料電池発電装置100の発電を開始して良いか否かを判定する。
第一の確認動作として、燃料電池21の内部温度が稼働温度(70℃)以上であるか否かを判定して(ステップS414)、昇温不足であれば(S414においてNo)、S404の昇温動作を再実行させて、70℃以上に昇温したら(S414においてYes)、次にステップに進む。
第二の確認動作として、燃料電池21の電解質膜11の導電率を求めてこの導電率:σ=1.93×10−2Scm−1以上か否かを判定して(ステップS416)、σ=1.93×10−2Scm−1未満であれば(S416においてNo)、電解質膜11の加湿不足であると判断してS409およびS410の動作を再実行させ(ステップS417)、σ=1.93×10−2Scm−1以上であれば(S416においてYes)、次のステップに進む。
ここで、図面を参照して電解質膜の導電率の算出法および電解質膜の導電率と相対湿度の関係を説明する。
図5において、横軸に実抵抗成分Z’をとり、縦軸にリアクタンス成分Z''をとって、燃料電池21(電極面積:144cm2)に印加する交流電流の周波数を0.1Hz〜1kHzの範囲で可変させて測定した燃料電池21の交流インピーダンスプロファイル図が示されている(交流法によるインピーダンス測定)。図5によれば、交流インピーダンスプロファイルは周波数1kHzの交流電流において横軸(Z’)と交差するため、周波数1kHzの交流電流におけるインピーダンスが電解質膜11の抵抗Rsを示すと推定される。即ち、図5は、交流インピーダンスを測定した所謂コールコールプロット(Cole−Cole plot)の模式図であり、この場合、半円と横軸の交点のうちの抵抗値の小さいもの(図5に示されたRs)が電解質膜11の膜抵抗を意味する。
制御部27によって制御されるインピーダンス測定器73(図3参照)に接続された燃料電池21の出力端子72a、72cに対して、インピーダンス測定器73から測定用交流電圧(1kHz)を印加する。これによって得られる燃料電池21の電解質膜11の交流インピーダンスに基づいて電解質膜11の導電率は推定され得る。具体的には、燃料電池セル20を、例えば10セル毎に交流電圧(1kHz)を印加して交流インピーダンスを測定して、この測定値と電解質膜11の膜厚および面積から電解質膜11の導電率を算出している。
このような算出法で得られた導電率がσ=1.93×10−2Scm−1以上であれば、図6に基づいて次のような理由で燃料電池21は、発電開始可能な状態であると判定できる。
図6は、電解質膜11の温度を80℃に保った場合、横軸に高分子電解質膜(米国DuPont社のNafion112の電解質膜であって膜厚は50μm)の相対湿度をとり、縦軸に電解質膜の導電率をとって両者の相関関係を示すものであって、電解質膜の相対湿度に電解質膜の導電率がどのように依存するかを説明するためのものである。
図6によれば、電解質膜を乾燥させるに伴って電解質膜の導電率がゼロに漸近する一方(相対湿度:20%近傍)、電解質膜の湿度が増せば、導電率も単調に増加するという傾向が観察される。ここで、電解質膜の性能上、充分に保水された相対湿度を50%以上とみなすと、この相対湿度に対応する導電率は、σ=1.93×10−2Scm−1である。
よって、このように電解質膜の導電率(例えば、Nafion112の電解質膜においてはσ=1.93×10−2Scm−1)を電解質膜の保水状態を求める簡易的な指標として使用することができ、導電率に基づいて燃料電池21の発電開始の可否を予測し得ると言える。
こうして停止期間および発電期間を有する燃料電池の発電開始時期を燃料電池の温度に基づく判定に加え、燃料電池セルの電解質膜の導電率に基づく判定を実施するため、電解質膜の保水状態を的確に予測できて燃料電池発電装置の発電開始時期の判断の信頼性が向上させることができる。
〔燃料電池発電装置の発電動作〕
上記の確認動作の数値が所定値に到達した後(具体的には燃料電池21の温度が70℃以上、電解質膜の導電率σ=1.93×10−2Scm−1以上)、切り替え弁および遮断弁を以下のように動作させて燃料電池21を発電させる(ステップS418およびステップS419)。
第二の切り替え弁42に接続する第一の遮断弁30および第三の切り替え弁43に接続する第二の遮断弁31並びに第四の切り替え弁44に接続する第三の遮断弁32をすべて開栓する。
この状態で第一の切り替え弁29を動作させて燃料ガス供給配管61をアノード排気配管47と遮断させる一方、燃料ガス供給配管61をアノード側入口21aと連通させる。また、第二の切り替え弁42を動作させてアノード側出口21bを第一の遮断弁30と連通させる一方、アノード側出口21bを第二の循環配管46と遮断させる。そして、第三の切り替え弁43を動作させてカソード側入口21cを第二の遮断弁31と連通させる一方、カソード側入口21cを第一の循環配管45と遮断させる。更に、第四の切り替え弁44を動作させてカソード側出口21dを第三の遮断弁32と連通させる一方、カソード側出口21dを第二の循環配管46と遮断させる。
このような切り替え弁および遮断弁の動作によって燃料ガス供給配管61を介して燃料生成器23から送出される水素ガスリッチな燃料ガスを燃料電池21のアノード側入口21aに導入すると共に、アノード側出口21bから送出され、アノード14aで消費されなかった残余の燃料ガスを、アノード排気配管47を介して燃料電池21の燃料生成器23に還流させる。
一方、酸化剤ガス供給配管62を介して加湿器23から送出される加湿空気(加湿酸化剤ガス)を燃料電池21のカソード側入口21cに導入すると共に、カソード側出口21dから送出され、カソード14cで消費されなかった残余の酸化剤ガスを、カソード排気配管60を介して燃料電池21の加湿器24に還流させる。
こうして燃料ガスをアノード14aに供給し、酸化剤ガスをカソード14cに供給して、燃料電池21の内部にて水素イオンと電子を生成させて、出力端子72a、72cを介して回路部25に電流を取り出すことができ、測定部26において発電電圧がモニタされる。
(実施の形態2)
以下、燃料電池21の内部を、停止期間から発電期間までの間の移行期間に加湿原料ガスで曝すようにした燃料電池発電装置100のガス供給系の他の構成例を説明する。
図7は、実施の形態2に係る燃料電池発電装置の構成を示したブロック図である。
燃料電池21、第一の水供給手段74、第二の水供給手段75、原料ガス供給手段22、燃料生成器23、加湿器24、インピーダンス測定器73、回路部25、測定部26および制御部27の構成については実施の形態1にて説明したものと同様である。
但し、実施の形態2は、加湿原料ガスの燃料電池21への導入配管および切り替え弁並びに遮断弁並びにマスフローメータの配置を以下のように変更した点で実施の形態1(図3)と相違しており、ここでは配管および切り替え弁並びに遮断弁並びにマスフローメータの変更点を中心に説明する。
図3に示された第三の切り替え弁43とアノード排気配管47を繋ぐ第一の循環配管45を取り除く。また、ガス清浄部22pの出口直後に第六の切り替え弁54を配置して、これによって清浄化原料ガスを加湿器24(原料ガス分岐配管51)に送出する場合と燃料生成器23に送出する場合の切り替え動作を行う。加えて、加湿部24の内部を通って、第三の切り替え弁43と第六の切り替え弁54とを連通させる原料ガス分岐配管51が設けられている。更に、第一の切り替え弁29の下流側であって燃料電池21のアノード側入口21aの上流側を繋ぐ燃料ガス供給配管61の途中に、第五の切り替え弁52を追加すると共に、この第五の切り替え弁52とアノード排気配管47を繋ぐ第二の連結配管53を設けている。なお、第二の連結配管53とアノード排気配管47との接続部位の位置は、第二の逆止弁48と水除去部33の間にある。また、マスフローメータ70a(図3参照)を取り除いて、ガス流量を測定するためのカソード14cのマスフローメータ70c(以下、マスフローメータ70cという)を加湿器24と第三の切り替え弁43の間であって原料ガス分岐配管51の途中に配置する。
以下、停止保管動作および起動開始動作並びに発電開始可否の確認動作並びに発電動作に分けて、燃料ガスおよび酸化剤ガスの供給動作を図7のブロック図および図8A、図8Bのフローチャート図を参照しながら詳細に説明する。
〔燃料電池発電装置の停止保管動作〕
燃料電池発電装置の停止後、燃料電池21の内部を原料ガスによって充填封止の状態に保って長期保管する。ここで、燃料電池発電装置100の停止保管のため、切り替え弁および遮断弁を次のように動作させる(ステップS801)。
第二の切り替え弁42に接続する第一の遮断弁30および第三の切り替え弁43に接続する第二の遮断弁31並びに第四の切り替え弁44に接続する第三の遮断弁32をそれぞれ閉める。
この状態で、第一の切り替え弁29を動作させて燃料ガス供給配管61を第5の切り替え弁52と連通させる一方、燃料ガス供給配管61をアノード排気配管47と遮断させる。また、第二の切り替え弁42を動作させてアノード側出口21bを第一の遮断弁30と連通させる一方、アノード側出口21bを第二の循環配管46と遮断させる。更に、第三の切り替え弁43を動作させてカソード側入口21cを第二の遮断弁31と連通させる一方、カソード側入口21cを原料ガス分岐配管51と遮断させる。また、第四の切り替え弁44を動作させてカソード側出口21dと第三の遮断弁32を連通させる一方、カソード側出口21dと第二の循環配管46を遮断させる。加えて、第5の切り替え弁52を動作させてアノード側入口21aを第一の切り替え弁29と連通させる一方、アノード側入口21aをアノード排気配管27と遮断させる。
こうして燃料電池21の内部に燃料ガスおよび酸化剤ガスを確実に封入することができる。なお、燃料電池21の内部の温度は通常、室温(約20℃〜30℃)近くになっており、これは燃料電池稼働温度(70℃)よりも低く保たれる。
〔燃料電池発電装置の起動開始動作〕
最初に、燃料電池21の触媒に悪影響を及ぼさないような原料ガスの選定および原料ガスの清浄化の処置を行う(ステップS802)。原料ガス清浄化の方法および原料ガス選択の内容は実施の形態1と同様である。
次に、燃料電池21の内部を、稼働温度(70℃)まで昇温する(ステップS803)。なお、燃料電池21の内部の昇温方法は、実施の形態1で説明したものと同じである。
ここで、燃料電池21の内部温度が稼働温度(70℃)以上にまで到達しているか否かを判定して(ステップS804)、昇温不足であれば(S804においてNo)、S803の昇温動作を継続させ、70℃以上に到達すれば(S804においてYes)、次のステップに進む。
続いて、第一の水供給手段74から加湿器24に供給される水および燃料生成器23から加湿器24に供与される熱を使用して、原料ガスを加湿器24の内部で加湿処理できる状態に移行させる(ステップS805)。
具体的には、原料ガスの加湿に温水が必要であるが、加湿器24においては熱源としての燃焼器がないため、加湿器24の外部から適宜、熱を受け取ることを要する。実施の形態2においては、図7に二重線によって燃料生成器23から加湿器24の熱供給ラインが示されているように、燃料生成器23の燃焼器で発生する熱を加湿器24に与えることで加湿器24の昇温を図っている。
続いて、加湿原料ガスを燃料電池21の内部に供給するため、各種の遮断弁および切り替え弁を以下のように動作させる(ステップS806)。
第二の切り替え弁42に接続する第一の遮断弁30および第三の切り替え弁43に接続する第二の遮断弁31並びに第四の切り替え弁44に接続する第三の遮断弁32をそれぞれ閉める。
この状態で、第二の切り替え弁42を動作させてアノード側出口21bを第一の遮断弁30と遮断させる一方、アノード側出口21bと第二の循環配管46を連通させる。また、第三の切り替え弁43を動作させてカソード側入口21cを原料ガス分岐配管51と連通させる一方、カソード側入口21cを遮断弁31と遮断させる。更に、第四の切り替え弁44を動作させてカソード側出口21dを第二の遮断弁31と遮断させる一方、カソード側出口21dを第二の循環配管46と連通させる。加えて、第五の切り替え弁52を動作させてアノード側入口21aを第一の切り替え弁29と遮断させる一方、アノード側入口21aをアノード排気配管47と連通させる。更には、第六の切り替え弁54を動作させてガス清浄部22pと原料ガス分岐配管51を連通させる一方、ガス清浄部22pを燃料生成器23と遮断させる。
こうして清浄化原料ガスは、以下のような経路で燃料電池21の内部に供給され(ステップS807)、燃料電池21の内部を加湿原料ガスの雰囲気に置換するというパージ処理が行われる。
原料ガス供給手段22から供給され、ガス清浄部22pで清浄化された原料ガスは、原料ガス供給配管63を通って第六の切り替え弁54によって原料ガス分岐配管51の方向に向けられ、原料ガス分岐配管51を介して加湿器24に流入して、加湿器24の内部(正確には温水加湿器)で加湿される。続いて加湿原料ガスは、第三の切り替え弁43によって燃料電池21のカソード側入口21cの方向に向きを切り替えて燃料電池21の内部に流入する。こうしてカソード14cを加湿原料ガスの雰囲気に曝して、この加湿原料ガスはカソード側出口21dから外部に流出する。
加湿原料ガスはその後、第四の切り替え弁44によって第二の循環配管46の方向に向きを切り替えて燃料電池21の一辺に沿って原料ガスは第二の循環配管46を通過して、第二の切り替え弁42によって燃料電池21のアノード側出口21bの方向に向きを切り替えて燃料電池21の内部に再流入する。こうしてアノード14aを加湿原料ガスの雰囲気に曝して、この加湿原料ガスはアノード側入口21aから外部に再流出する。
再流出後の加湿原料ガスは、第五の切り替え弁52によって第二の連結配管53の方向に向きを切り替えて、この第二の連結配管53を通ってアノード排気配管47に到達する。アノード排気配管47に到達した原料ガスは、第一、第二の逆止弁41、48によって逆流を防止されて、水除去部33の方向に導かれてこの水除去部33において加湿原料ガスから水除去された後、燃料生成器23の燃焼部に送られ、燃焼器の内部で燃焼させられる。
すなわち加湿原料ガスは、図7中の太い点線のように燃料電池21のカソード側入口21cおよびカソード側出口21d並びにアノード側出口21b並びにアノード側入口21aの順番に通過して燃料電池21の周囲をコノ字状に流れてアノード排気配管47に至る。加湿原料ガスのトータル供給量は、燃料電池21の内部空間のガス充填可能容積の少なくとも3倍以上必要であり、例えば、ガス充填可能容積が約1.0Lであれば、加湿原料ガスの流量1.5L/分でもって約5分間、これを燃料電池21の内部に供給すれば良く、このトータル供給量はマスフローメータ70cの出力信号に基づいて制御部27によってモニタされる。
こうして燃料電池21の停止期間から発電期間までの間の移行期間に燃料電池21の内部を加湿原料ガスで曝すことができて、停止保管中に乾燥した燃料電池21の電解質膜11を加湿できると共に、仮に停止保管中に燃料電池21の内部に酸素ガスが混入した場合、この酸素ガスによってもたらされる燃料ガスとの局所燃焼を未然に防止できる。
また、燃料電池21の停止期間から発電期間までの間の移行期間に、燃料電池21の内部に加湿原料ガスを導くようにしたため、燃料電池21の内部を長期間、加湿原料ガスの雰囲気で曝すことがなく、燃料電池21の電極の撥水性が損なわれない。
加えて、図7の太い点線で示すように単一の経路によってアノード14aとカソード14cの両方を加湿処理させることができ、ガス供給配管を簡素化できる。
燃料電池21の内部に充分、加湿原料ガスを供給した後、燃料生成器23の加熱のため、切り替え弁および遮断弁を次のように動作させる(ステップS808)。
第二の切り替え弁42に接続する第一の遮断弁30および第三の切り替え弁43に接続する第二の遮断弁31並びに第四の切り替え弁44に接続する第三の遮断弁32をそれぞれ閉める。
この状態で、第一の切り替え弁29を動作させて燃料ガス供給配管61をアノード排気配管47と連通させる一方、燃料ガス供給配管61を第五の切り替え弁52と遮断させる。また、第二の切り替え弁42を動作させてアノード側出口21bを第一の遮断弁30と連通させる一方、アノード側出口21bを第二の循環配管46と遮断させる。更に、第三の切り替え弁43を動作させてカソード側入口21cを第二の遮断弁31と連通させる一方、カソード側入口21cを原料ガス分岐配管51と遮断させる。加えて、第四の切り替え弁44を動作させてカソード側出口21dを第三の遮断弁32と連通させる一方、カソード側出口21dを第二の循環配管46と遮断させる。また、第五の切り替え弁52を動作させてアノード側入口21aを第一の切り替え弁29と連通させる一方、アノード側入口21aをアノード排気配管47と遮断させる。
更に、第六の切り替え弁54を動作させてガス清浄部22pを燃料生成器23と連通させる一方、ガス清浄部22pを原料ガス分岐配管51と遮断させる。
上記の弁動作を行った後、燃料生成器23から送出されるガスを、第一の切り替え弁29で切り替えられて、第一の連結配管64およびアノード排気配管47を通って(第一の逆止弁41は流れを許す方向)、水除去部33で水除去された後、燃料生成器23に還流させてこの燃料生成器23の燃焼部で燃焼できるため、燃料生成器23の速やかに加熱できて(ステップS809)、燃料生成器23(改質部23e)の内部温度を(4)式の改質反応可能な温度(約700℃以上)まで昇温させることができる。
ここで、燃料生成器23の温度が700℃以上に昇温したか否かを判定して(ステップS810)、昇温不足であれば(S810においてNo)、S809の加熱動作を継続させ、700℃以上に到達したら(S810においてYes)、次のステップに進む。
〔燃料電池発電装置の発電開始可否の確認動作〕
燃料生成器23を700℃以上に昇温させた後、燃料電池21の内部温度の確認および燃料電池21の電解質膜11の導電率の確認を行って、燃料電池発電装置100の発電を開始して良いか否かを判定する。
第一の確認動作として、燃料電池21の内部温度が稼働温度(70℃)以上であるか否かを判定して(ステップS811)、昇温不足であれば(S811においてNo)、S803の昇温動作を再実行させて(ステップS812)、70℃以上に昇温したら(S811においてYes)、次にステップに進む。
第二の確認動作として、燃料電池21の電解質膜11の導電率を求めてこの導電率:σ=1.93×10−2Scm−1以上か否かを判定して(ステップS813)、σ=1.93×10−2Scm−1未満であれば(S813においてNo)、電解質膜11の加湿不足であると判断してS806およびS807の動作を再実行させ(ステップS814)、σ=1.93×10−2Scm−1以上であれば(S813においてYes)、次のステップに進む。なお、電解質膜の導電率の測定法および電解質膜の導電率と相対湿度の関係については、実施の形態1において説明したものと同様である。
こうして停止期間および発電期間を有する燃料電池の発電開始時期を燃料電池の温度に基づく判定に加え、燃料電池セルの電解質膜の導電率に基づく判定を実施するため、電解質膜の保水状態を的確に予測できて燃料電池発電装置の発電開始時期の判断の信頼性が向上させることができる。
〔燃料電池発電装置の発電動作〕
上記の確認動作の数値が所定値に到達した後(具体的には燃料電池21の温度が70℃以上、電解質膜の導電率σ=1.93×10−2Scm−1以上)、切り替え弁および遮断弁を以下のように動作させて燃料電池21を発電させる(ステップS815およびステップS816)。
第二の切り替え弁42に接続する第一の遮断弁30および第三の切り替え弁43に接続する第二の遮断弁31並びに第四の切り替え弁44に接続する第三の遮断弁32をすべて開栓する。
この状態で第一の切り替え弁29を動作させて燃料ガス供給配管61をアノード排気配管47と遮断させる一方、燃料ガス供給配管61を第五の切り替え弁52と連通させる。また、第二の切り替え弁42を動作させてアノード側出口21bを第一の遮断弁30と連通させる一方、アノード側出口21bを第二の循環配管46と遮断させる。また、第三の切り替え弁43を動作させてカソード側入口21cを第二の遮断弁31と連通させる一方、カソード側入口21cを原料ガス分岐配管51と遮断させる。更に、第四の切り替え弁44を動作させてカソード側出口21dを第三の遮断弁32と連通させる一方、カソード側出口21dを第二の循環配管46と遮断させる。加えて、第五の切り替え弁52を動作させてアノード側入口21aを第一の切り替え弁29と連通させる一方、アノード側入口21aをアノード排気配管47と遮断させる。更に、第六の切り替え弁54を動作させてガス清浄部22pを燃料生成器23と連通させる一方、ガス清浄部22pを原料ガス分岐配管51と遮断させる。
こうして切り替え弁および遮断弁の動作によって燃料ガス供給配管61を介して燃料生成器23から水素ガスリッチな燃料ガスを燃料電池21のアノード側入口21aに導入すると共に、アノード側出口21bから送出され、アノード14aで消費されなかった残余の燃料ガスを、アノード排気配管47を介して燃料電池21の燃料生成器23に還流させる。
一方、酸化剤ガス供給配管62を介して加湿器23から送出された加湿空気(酸化剤ガス)を燃料電池21のカソード側入口21cに導入すると共に、カソード側出口21dから送出され、カソード14cで消費されなかった残余の酸化剤ガスを、カソード排気配管60を介して燃料電池21の加湿器24に還流させる。
これによって燃料ガスをアノード14aに供給し、酸化剤ガスをカソード14cに供給して、燃料電池21の内部にて水素イオンと電子を生成させて、出力端子72a、72cを介して回路部25に電流を取り出すことができ、測定部26において発電電圧がモニタされる。
(実施の形態3)
以下、燃料電池21の内部を、停止期間から発電期間までの間の移行期間に加湿原料ガスで曝すことを特徴とする燃料電池発電装置のガス供給系の他の構成例を説明する。
図9は、実施の形態3に係る燃料電池発電装置の構成を示したブロック図である。燃料電池21、第一の水供給手段74、第二の水供給手段75、原料ガス供給手段22、燃料生成器23、加湿器24、インピーダンス測定器73、回路部25、測定部26および制御部27の構成については実施の形態1にて説明したものと同様である。
実施の形態3は、加湿原料ガスの燃料電池21への導入配管および切り替え弁並びに遮断弁並びにマスフローメータの配置を変更した点で実施の形態1と相違しており、ここでは実施の形態1に対して導入配管および切り替え弁並びに遮断弁並びにマスフローメータの変更点を中心に説明する。
実施の形態1(図3)において使用された第二、第四の切り替え弁42、44および第一、第二の循環配管45、46を取り除く。また、ガス清浄部22pの出口直後に分流弁55が配置され、この分流弁55によって加湿器23の方向に流れる原料ガスの流量と燃料生成器23の方向に流れる原料ガスの流量の比率を決めることができる。加えて、加湿部24の内部を通って、第三の切り替え弁43と分流弁55とを連通させる原料ガス分岐配管51が設けられている。更に、またマスフローメータ70aに加えて、マスフローメータ70cが加湿器24と第三の切り替え弁43の間であって原料ガス分岐配管51の途中に設けられている。
以下、停止保管動作および起動開始動作並びに発電開始可否の確認動作並びに発電動作に分けて、燃料ガスおよび酸化剤ガスの供給動作を図9のブロック図および図10A、図10Bのフローチャート図を参照しながら詳細に説明していく。
〔燃料電池発電装置の停止保管動作〕
燃料電池発電装置100の停止後、燃料電池21の内部を原料ガスによって充填封止の状態に保って長期保管する。ここで、燃料電池発電装置100の停止保管のため、切り替え弁および遮断弁を次のように動作させる(ステップS1001)。
アノード側出口21bに接続する第一の遮断弁30および第三の切り替え弁43に接続する第二の遮断弁31並びにカソード側出口21dに接続する第三の遮断弁32をそれぞれ閉める。
この状態で、第一の切り替え弁29を動作させて燃料ガス供給配管61をアノード排気配管47と連通させる一方、燃料ガス供給配管61をアノード側入口21aと遮断させる。また、第三の切り替え弁43を動作させてカソード側入口21cを第二の遮断弁31と連通させる一方、カソード側入口21cを原料ガス分岐配管51と遮断させる。
こうして燃料電池21の内部に燃料ガスおよび酸化剤ガスを確実に封入することができる。なお、燃料電池21の内部は燃料電池稼働温度(70℃)以下で維持されており、室温(約20℃〜30℃)近くに保たれている。
〔燃料電池発電装置の起動開始動作〕
燃料電池21の触媒に悪影響を及ぼさないような原料ガスの選定および原料ガスの清浄化処置を行う(ステップS1002)。原料ガス清浄化の方法および原料ガス選択の内容は実施の形態1と同様である。
続いて、燃料電池21の内部を稼働温度(70℃)まで昇温する(ステップS1003)。なお、燃料電池21の内部の昇温方法は、実施の形態1で説明したものと同じである。
ここで、燃料電池21の内部温度が稼働温度(70℃)以上にまで到達しているか否かを判定して(ステップS1004)、昇温不足であれば(S1004においてNo)、S1003の昇温動作を継続させ、70℃以上に到達すれば(S1004においてYes)、次のステップに進む。
次に、燃料生成器23の内部を予備加熱させるため、切り替え弁および遮断弁を以下のように動作させる(ステップS1005)。
アノード側出口21bに接続する第一の遮断弁30および第三の切り替え弁43に接続する第二の遮断弁31並びにカソード側出口21dに接続する第三の遮断弁32をそれぞれ閉める。
この状態で、第一の切り替え弁29を動作させて燃料ガス供給配管61をアノード排気配管47と連通させる一方、燃料ガス供給配管61をアノード側入口21aと遮断させる。また、第三の切り替え弁43を動作させてカソード側入口21cを第二の遮断弁31と連通させる一方、カソード側入口21cを原料ガス分岐配管51と遮断させる。更に、分流弁55を動作させて原料ガス供給配管63を流れる原料ガスを全量、燃料生成器23に導くように、原料ガス供給配管63を流れる原料ガス流量に対する燃料ガス供給配管61を流れる原料ガス流量の分流比率を1に設定する。
こうして燃料生成器23から送出されるガスを、第一の切り替え弁29の切り替え動作によって第一の連結配管64を通過させ(第一の逆止弁41は流れを許す方向)、アノード排気配管47を介して、第二の逆止弁48によって逆流を防いで燃料生成器23の燃焼部に還流させて燃焼部で燃焼させて、燃料生成器23を予備加熱させる(ステップS1006)。
燃料生成器23の予備加熱の昇温温度範囲については、実施の形態1で説明したものと同じ(燃料生成器23(改質部23e)の温度を250℃〜300℃の範囲に昇温)である。
ここで、燃料生成器23(改質部23e)の温度が250℃〜300℃の範囲まで昇温したか否かを判定して(ステップS1007)、昇温不足であれば(S1007においてNo)、S1006の燃料生成器23の予備加熱動作を継続させ、250℃〜300℃の範囲まで昇温したら(S1007においてYes)、次のステップに進む。
燃料生成器23の予備加熱の後、燃料生成器23および加湿器24において原料ガス供給手段22から供給される原料ガスの露点を燃料電池21の稼働温度(70℃)以上に維持できるよう原料ガスを加湿処理できる状態に移行させる(ステップS1008)。燃料生成器23は300℃近傍まで昇温されており、加湿に必要な水は第二の水供給手段75から燃料生成器23に供給され、これによって原料ガスを燃料生成器23の内部で加湿できる。同時に、第一の水供給手段74から加湿器24の内部に供給される水および燃料生成器23から加湿器24に供給される熱によって原料ガスを加湿器24の内部で加湿できる。
続いて、加湿原料ガス供給のため、切り替え弁および遮断弁を以下のように動作させる(ステップS1009)。
第二の切り替え弁42に接続する第一の遮断弁30および第四の切り替え弁44に接続する第三の遮断弁32をそれぞれ開く。
この状態で、第一の切り替え弁29を動作させてアノード側入口21aを燃料ガス供給配管61と連通させる一方、アノード側入口21aをアノード排気配管47と遮断させる。また、第三の切り替え弁43を動作させてカソード側入口21cを原料ガス分岐配管51と連通させる一方、カソード側入口21cを遮断弁31と遮断させる。更に、分流弁55を動作させて、ガス清浄部22pから送出される清浄化原料ガスを加湿器23と燃料生成器23の両方にほぼ均等に導き得るように分流比率を0.5に設定する。
こうして、ガス清浄部22pから送出された加湿原料ガスは以下のようにして燃料電池21の内部を加湿させて外部に導かれて、燃料電池21の内部を加湿原料ガスの雰囲気に置換するというパージ処理が行われる(ステップS1010)。
ガス清浄部22pで清浄化され原料ガス供給配管63を介して送出される原料ガスは、原料ガス分岐配管51を流れる第一の原料ガスと燃料ガス供給配管61を流れる第二の原料ガスにほぼ均等(分流比率:0.5)に分流される。
第一の原料ガスにおいては、ガス清浄部22pから原料ガス供給配管63を介して送出される清浄化原料ガスは、分流弁55で分流され、原料ガス分岐配管51を通って加湿器24に導かれ、加湿器24において加湿される。その後、加湿原料ガスは、第三の切り替え弁43によって燃料電池21のカソード側入口21cに向きを切り替えて原料ガス分岐配管51を介してカソード14cに供給される。これによって燃料電池21のカソード14cを加湿原料ガスの雰囲気に曝した後、加湿原料ガスはカソード側出口21dから外部に流出する。流出後の加湿原料ガスは、カソード排気配管60を通って加湿部24に戻り、この加湿部24にて処理された後、適宜希釈されて大気に排出される。
第二の原料ガスにおいては、ガス清浄部22pから原料ガス供給配管63を介して送出される清浄化原料ガスが分流弁55で分流されて、燃料生成器23に導かれ、燃料生成器23の内部で加湿される。その後、燃料生成器23から送出される加湿原料ガスは、第一の切り替え弁29によって燃料電池のアノード側入口21aに向きを切り替えて燃料ガス供給配管61を介して燃料電池21のアノード14aに供給される。これによってアノード14aを加湿原料ガスの雰囲気に曝した後、加湿原料ガスはアノード出口21bから燃料電池21の外部に流出する。流出後の加湿原料ガスは、アノード排気配管47を通って水除去部33にて水除去された後、燃料生成器23の燃焼部に戻され燃焼部で燃焼されて燃料生成器23の加熱に利用される。
ここで、加湿原料ガスのトータル供給量は、燃料電池21の内部空間のガス充填可能容積の少なくとも3倍以上必要であり、例えば、ガス充填可能容積が約1.0Lであれば、加湿原料ガスの流量1.5L/分でもって約5分間、これを燃料電池21の内部に供給すれば良く、このトータル供給量はマスフローメータ70aおよびマスフローメータ70cの出力信号に基づいて制御部27でモニタされる。
こうして燃料電池21の停止期間から発電期間までの間の移行期間に燃料電池21の内部を加湿原料ガスで曝すことができて、停止保管中に乾燥した燃料電池21の電解質膜11を加湿できると共に、仮に停止保管中に燃料電池の内部に酸素ガスが混入した場合、この酸素ガスによってもたらされる燃料ガスとの局所燃焼を未然に防止できる。また、燃料電池21の停止期間から発電期間までの間の移行期間に、燃料電池21の内部に加湿原料ガスを導くようにしたため、燃料電池21の内部を長期間、加湿原料ガスの雰囲気で曝すことがなく、燃料電池の電極の撥水性が損なわれない。加えて、第一の原料ガスと第二の原料ガスは互いに混合することなく別個独立して、燃料電池21のカソード14cに第一の原料ガスを通過させ、燃料電池21のアノード14aに第二の原料ガスを通過させるように構成したため、アノード14aおよびカソード14cの両方を確実に加湿処理できる。
燃料電池21の内部に充分、加湿原料ガスを供給した後、燃料生成器23を加熱させるため、切り替え弁および遮断弁を次のように動作させる(ステップS1011)。
アノード側出口21bに接続する第一の遮断弁30および第三の切り替え弁43に接続する第二の遮断弁31並びにカソード側出口21dに接続する第三の遮断弁32をそれぞれ閉める。
この状態で、第一の切り替え弁29を動作させて燃料ガス供給配管61をアノード排気配管47と連通させる一方、燃料ガス供給配管61をアノード側入口21aと遮断させる。また、第三の切り替え弁43を動作させてカソード側入口21cを第二の遮断弁31と連通させる一方、カソード側入口21cを原料ガス分岐配管51と遮断させる。分流弁55を動作させて原料ガス供給配管63を流れる原料ガスを全量、燃料生成器23に導くように、原料ガス供給配管63を流れる原料ガス流量に対する燃料ガス供給配管61を流れる原料ガス流量の分流比率を1に設定する。
こうして燃料生成器23から送出されるガスを、第一の切り替え弁29の切り替え動作によって第一の連結配管64を通過させ(第一の逆止弁41は流れを許す方向)、アノード排気配管47を介して、第二の逆止弁48によってアノード側出口21bの方向への逆流を防いで燃料生成器23の燃焼部に還流させて燃焼部で燃焼させて、燃料生成器23を加熱させる(ステップS1012)。
ここで、燃料生成器23の温度が700℃以上に昇温したか否かを判定して(ステップS1013)、昇温不足であれば(S1013においてNo)、S1012の加熱動作を継続させ、700℃以上に到達したら(S1013においてYes)、次のステップに進む。
〔燃料電池発電装置の発電開始可否の確認動作〕
燃料生成器23の昇温完了の後、燃料電池21の内部温度の確認および燃料電池21の電解質膜11の導電率の確認を行って、燃料電池発電装置100の発電を開始して良いか否かを判定する。
第一の確認動作として、燃料電池21の内部温度が稼働温度(70℃)以上であるか否かを判定して(ステップS1014)、昇温不足であれば(S1014においてNo)、ステップS1003の昇温動作を再実行させて(ステップS1015)、70℃以上に昇温したら(S1014においてYes)、次にステップに進む。
第二の確認動作として、燃料電池21の電解質膜11の導電率を測定してこの導電率:σ=1.93×10−2Scm−1以上か否かを判定して(ステップS1016)、σ=1.93×10−2Scm−1未満であれば(S1016においてNo)、電解質膜11の加湿不足であると判断してS1009およびS1010の動作を再実行させ(ステップS1017)、σ=1.93×10−2Scm−1以上であれば(S1017においてYes)、次のステップに進む。
なお、電解質膜の導電率の測定法および電解質膜の導電率と相対湿度の関係については、実施の形態1において説明したものと同様である。
こうして停止期間および発電期間を有する燃料電池の発電開始時期を燃料電池の温度に基づく判定に加え、燃料電池セルの電解質膜の導電率に基づく判定を実施するため、電解質膜の保水状態を的確に予測できて燃料電池発電装置の発電開始時期の判断の信頼性が向上させることができる。
〔燃料電池発電装置の発電動作〕
上記の確認動作が所定値に到達した後(具体的には燃料電池21の内部温度が70℃以上、電解質膜の導電率σ=1.93×10−2Scm−1以上)、切り替え弁および遮断弁を以下のように動作させて燃料電池21を発電させる(ステップS1018およびステップS1019)。
アノード側出口21bに接続する第一の遮断弁30および第三の切り替え弁43に接続する第二の遮断弁31並びにカソード側出口21dに接続する第三の遮断弁32をすべて開栓する。
この状態で、第一の切り替え弁29を動作させて燃料ガス供給配管61をアノード排気配管47と遮断させる一方、燃料ガス供給配管61をアノード側入口21aと連通させる。また、第三の切り替え弁43を動作させてカソード側入口21cを第二の遮断弁31と連通させる一方、カソード側入口21cを原料ガス分岐配管51と遮断させる。加えて、分流弁55を動作させて原料ガス供給配管63を流れる原料ガスを全量、燃料生成器23に導くように、原料ガス供給配管63を流れる原料ガス流量に対する燃料ガス供給配管61を流れる原料ガス流量の分流比率を1に設定する。
こうした切り替え弁および遮断弁の動作によって燃料ガス供給配管61を介して燃料生成器23から送出された水素ガスリッチな燃料ガスを燃料電池21のアノード側入口21aに導入すると共に、アノード側出口21bから送出され、アノード14aで消費されなかった残余の燃料ガスを、アノード排気配管47を介して燃料電池21の燃料生成器23に還流させる。また、酸化剤ガス供給配管62を介して加湿器23から加湿空気(酸化剤ガス)を燃料電池21のカソード側入口21cに導入すると共に、カソード側出口21dから送出され、カソード14cで消費されなかった残余の酸化剤ガスを、カソード排気配管60を介して燃料電池21の加湿器24に還流させる。
これによって燃料ガスをアノード14aに供給し、酸化剤ガスをカソード14cに供給して、燃料電池21の内部にて水素イオンと電子を生成させて、出力端子72a、72cを介して回路部25に電流を取り出すことができ、測定部26において発電電圧がモニタされる。