以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態において同一又は同様の要素には、同一の符号を付して説明を省略する。
図1は、第1実施形態に係る運転傾向推定装置の概略構成図である。まず、図1に示すように、本実施形態に係る運転傾向推定装置1は、車両情報取得部(車両情報取得手段)10と、演算部(演算手段)20と、運転傾向推定部(運転傾向推定手段)30と、記憶部40とを備えている。
車両情報取得部10は、自車両の速度又は自車両に加わる加速度のうち少なくとも一方を検出するものである。具体的に車両情報取得部10は、自車両の速度として、車両前後方向の速度、及び角速度を検出するものである。また、車両情報取得部10は、自車両に加わる加速度として、車両前後方向の加減速度、及び角加速度を検出するものである。
演算部20は、車両情報取得部10により取得された車速又は加速度から、ジャークを求めるものである。ここで、ジャークは、加速度の変化率を示すものであり、車速を2回微分又は加速度を1回微分することによって得られるものである。
運転傾向推定部30は、演算部20にて求められたジャークに基づいて運転者の運転傾向を推定するものである。すなわち、運転傾向推定部30は、例えば、現在の運転が過去の運転に比べて荒い傾向にあることや比較的丁寧であることなどを推定するものである。
具体的に運転傾向推定部30は、運転傾向を推定するにあたり、ジャークに基づいて運転円滑度、すなわち走行の滑らかさを求め、その後、運転円滑度から運転傾向を推定するものである。まず、走行が滑らかでない場合、走行が滑らかである場合に比べて、ジャーク、すなわち加速度の変化率は、大きくなる傾向にある。このため、運転傾向推定部30は、ジャークから運転の滑らかさ、すなわち運転円滑度を求めることとなる。
また、運転傾向推定部30は、過去等に推定された運転円滑度と、現在の運転円滑度とを比較することにより、運転傾向を推定するものである。すなわち、運転傾向推定部30は、現在の走行の滑らかさを示す度合いと、過去等の走行の滑らかさを示す度合いとを比較して、現在の運転が過去等の運転に比べて荒い傾向にあるなどを推定することとなる。
なお、上記の運転円滑度は、記憶部40に記憶されることとなる。すなわち、記憶部40は、運転傾向推定部30が算出した運転円滑度を記憶していくものである。また、記憶部40は、運転傾向推定部30が新たに運転円滑度を算出すると、その毎に運転円滑度を記憶していくものである。
次に、図2を参照して、速度、加速度及びジャークの関係について説明する。図2は、運転者がブレーキ操作したときの速度、減速度及びジャークの一例を示す説明図であり、(a)は速度を示し、(b)は減速度を示し、(c)はジャークを示している。なお、図2において、実線は滑らかなブレーキ操作における速度、減速度及びジャークを示し、破線は滑らかでないときのブレーキ操作における速度、減速度及びジャークを示している。
まず、車両が速度「V1」で走行している状態で運転者がブレーキ操作を行ったとする。このとき、運転者のブレーキ操作が滑らかである場合、図2(a)の実線に示すように、速度は比較的緩やかに減少する。また、速度「0」に至る直前についても停止時の衝撃が少ないように、急激な減速は為されない。
ところが、運転者がブレーキ操作を苦手とする場合や、疲労により精細欠いている場合、図2(a)の破線に示すように、ブレーキのかけ始めのタイミングが遅れると共に、ブレーキのかけ始めにおいて速度は、実線で示した例よりも急激に低下している。また、速度「0」に至る直前についても停止時の衝撃が比較的大きくなってしまう。すなわち、停止直前において速度は急激に低下する。
このときの減速度は、図2(b)に示すようになる。すなわち、運転者のブレーキ操作が滑らかである場合、図2(b)の実線に示すように、減速度は値「a1」まで上昇する。そして、減速度は値「a1」で安定する。その後、減速度は緩やかに低下していく。
一方、運転者のブレーキ操作が滑らかでない場合、図2(b)の破線に示すように、減速度は値「a1」を超えて値「a2」まで上昇する。その後、減速度は安定することなく、徐々に減少していく。ところが、停止直前には再度減速度は値「a1」付近まで上昇し、その後、「0」となる。
そして、上記場合のジャークは図2(c)のようになる。すなわち、運転者のブレーキ操作が滑らかである場合、図2(c)の実線に示すように、一旦ジャークは値「j1」まで上昇する。そしてジャークは「0」に戻る。さらにその後、ジャークは値「j2」まで低下し、低下後に上昇して再度「0」に戻る。
一方、運転者のブレーキ操作が滑らかでない場合、図2(c)の破線に示すように、ジャークは値「j1」よりも大きい値「j3」に至る。その後、ジャークは一旦「0」に戻るものの、すぐに値「j2」に達する。そして、ジャークは、多少の増減をしながら推移し、停止直前の急激な変化の後に「0」に至ることとなる。このように、運転が滑らかでない場合、滑らかである場合に比べて、ジャークは大きくふらつくこととなる。
また、速度、減速度及びジャークについてブレーキ操作が滑らかな場合と、滑らかでない場合とで比較すると、速度や減速度に比べジャークは一層顕著な相違を示しているといえる。このため、速度や減速度により運転の滑らかさを判断するよりも、ジャークにより運転の滑らかさを判断することの方が容易且つ正確に行えることとなる。
さらに、ジャークについては、図3に示す場合において運転の滑らかさの判断を一層正確に行えるようになっている。図3は、運転者がブレーキ操作をした後にアクセル操作したときの車両の速度、加速度及びジャークの一例を示す説明図であり、(a)は速度を示し、(b)は加速度を示し、(c)はジャークを示している。
まず、車両が速度「V1」で走行している状態で運転者がブレーキ操作を行う。このとき、図3(a)に示すように、速度は時刻t1において値「V2」まで減少する。そして、この直後に、運転者がアクセル操作を行ったとすると、速度は再度値「V1」に戻る。
また、このときの加速度は、図3(b)に示すようになる。すなわち、図3(b)に示すように、加速度は値「−a1」から「−a2」まで下がり、その後「−a2」で安定する。そして、時刻t1において加速度は値「−a2」から値「a2」まで急激な上昇を示す。その後、加速度は値「a2」で安定した後、最終的に値「a1」に至る。
また、このときのジャークは、図3(c)に示すようになる。すなわち、ジャークは値「j1」まで低下し、その後、時刻t1において「j2」という高い値を示す。そして、ジャークは再度値「j1」まで低下したの値に「0」に戻ることとなる。
ここで、従来技術のように車両が危険状態であることを加速度の閾値より判断するとする。このとき、危険挙動検知のための閾値が値「a0」及び「−a0」に設定されていた場合、図3(b)に示す例では危険挙動と検知されないこととなる。ところが、実際に運転者及び同乗者には、「2×a2」分の衝撃が加わることとなる。
ところが、閾値が値「a0」及び「−a0」に設定されている場合において、速度が「0」の状態から、「2×a2」分の衝撃が加わったときには危険挙動と検知される。すなわち、従来では、同じだけの衝撃が加わるにも関わらず、危険挙動と検知される場合とされない場合とが存在し、運転傾向の推定精度を低下させる要因となっていた。
そこで、本実施形態では、ジャークに基づく処理を行うようにしている。例えば、図3(c)に示すように、ジャークは時刻t1において値「j2」という高い値を示す。また、速度が「0」である状態から「2×a2」分の衝撃が加わった場合も、同様にジャークは、値「j2」を示す。このように、ジャークの値は同じとなり、上記の如く同じ衝撃が加わったにも関わらず得られる結果が異なるという事態が生じないようになっている。
このため、本実施形態にように、ジャークに基づいて運転傾向を推定することにより、推定精度の向上を図ることができる。
次に、運転傾向推定装置1の詳細な動作について説明する。まず、車両情報取得部10が車両の速度及び加速度の少なくとも一方を取得する。そして、図4に示す処理が実行される。図4は、第1実施形態に係る運転傾向推定装置1の動作の一例を示すフローチャートである。なお、上記では速度及び加速度のいずれかからジャークを求める例を説明したが、図4に示す例ではジャークを加速度の1回微分により求めず、速度の2回微分により求めるものとする。
まず、演算部20は、車両情報取得部10により取得した車速を2回微分してジャークを算出する(ST10)。その後、演算部20は、算出したジャークの値を2乗する(ST11)。
ここで、演算部20は、ジャークの値を2乗することにより、大きな値のジャークについて強調するようにし、小さな値のジャークについて目立たないようにしている。これにより、後の運転傾向の推定を行いやすくしている。なお、ステップST11では、2乗しているが、3乗や4乗などであってもよい。すなわち、ジャークの値をべき乗していればよい。
その後、演算部20は、ジャークの値を一時記憶する(ST12)。そして、演算部20は、一時記憶したジャークの値の個数がm個(mは2以上の整数)以上であるか否かを判断する(ST13)。
ここで、一時記憶したジャークの値の個数がm個以上でないと判断した場合(ST13:NO)、処理はステップST10に戻る。すなわち、再度ジャークの算出及び記憶を行うこととなる。一方、一時記憶したジャークの値の個数がm個以上であると判断した場合(ST13:YES)、演算部20は過去m個分のジャークの値について移動平均値を求める(ST14)。すなわち、演算部20は、移動平均値を求めることにより、ノイズの影響により特異となった値の影響を少なくするようにしている。その後、演算部20は、求めた移動平均値を運転傾向推定部30に送信する。
運転傾向推定部30は、受信した移動平均値の値を過去分に加算し、且つ記憶部40に記憶させる(ST15)。すなわち、運転傾向推定部30は、過去に移動平均値が算出されていた場合には、過去の移動平均値に現在求めた移動平均値を加算して記憶部40に記憶させ、過去に移動平均値が求められていない場合には加算することなくその値を記憶部40に記憶させる。
その後、運転傾向推定部30は、運転終了か否かを判断する(ST16)。このとき、運転傾向推定部30は例えばイグニッションスイッチがオフされたかなどを認識して運転終了か否かを判断する。運転終了でないと判断した場合(ST16:NO)、処理はステップST10に戻り、再度ジャークの算出及び記憶が行われることとなる。
一方、運転終了であると判断した場合(ST16:YES)、運転傾向推定部30は、ステップST15において順次加算した値の平均値を算出する(ST17)。このとき、運転傾向推定部30は、運転時間で除することで平均値を求めてもよいし、加算した移動平均値のデータ数で除して平均値を求めるようにしてもよい。なお、この平均値が、現在の運転者の運転円滑度となる。より具体的にステップST17において求めた平均値は、今回の運転開始から今回の運転終了までの期間全体の運転円滑度を示すものである。
その後、運転傾向推定部30は、過去の運転回数nが所定値以上であるか否かを判断する(ST18)。所定値以上でないと判断した場合(ST18:NO)、運転傾向推定部30は、まず、過去の運転円滑度にn/(n+1)を掛ける(ST19)。次に、運転傾向推定部30は、現在の運転円滑度に1/(n+1)を掛け、ステップST19にて求めた値と足しあわせる(ST20)。これにより、運転傾向推定部30は過去から現在にかけての運転円滑度を算出することとなる。そして、運転傾向推定部30はステップST20にて求めた新たな全体の運転円滑度を記憶部40に記録する(ST21)。
一方、所定値以上であると判断した場合(ST18:YES)、運転傾向推定部30は、まず、過去の運転円滑度に(N−1)/Nを掛ける(ST22)。ここで、「N」は「n」より小さい正の整数である。次に、運転傾向推定部30は、現在の運転円滑度に1/Nを掛け、ステップST22にて求めた値と足しあわせる(ST23)。これにより、運転傾向推定部30は過去から現在にかけて全体の運転円滑度を算出することとなる。そして、運転傾向推定部30はステップST20にて求めた新たな運転円滑度を記憶部40に記録する(ST21)。
ここで、運転回数nに対して「N」という制限を設ける理由は、できるだけ最近の情報から全体の運転円滑度を求めるためである。すなわち、あまりに古い情報は運転傾向の推定に役に立たない場合があるため、そのような情報を除去すべく、「N」という制限を設けるようにしている。このように、上記ステップST18〜ST23の処理においては、運転円滑度の算出に際して、できるだけ新しいデータを用い、後に行う推定精度の向上を図るようにしている。
そして、運転傾向推定部30は、以上の処理を経た後に、ステップST21で記録した新たな運転円滑度と、ステップST17にて求めた現在の運転円滑度とを比較して、運転傾向を推定する(ST24)。ここで、新たな運転円滑度は、n+1回分(又はN回分)の走行によるそれぞれの運転円滑度の平均的な値となる。すなわち、運転者が通常の走行を行ったときの滑らかさに近いものとなる。このため、ステップST21で記録した新たな運転円滑度と、ステップST17にて求めた現在の運転円滑度とを比較することにより、運転傾向推定部30は、現在の運転が通常時に比べて、どのくらい異なっているか等を推定することが可能となる。
例えば、現在の運転円滑度がステップST21で記録した新たな運転円滑度よりも大きい場合には、今回の運転が以前の運転よりも荒かったことを示すこととなる。一方、現在の運転円滑度がステップST21で記録した新たな運転円滑度よりも小さい場合には、今回の運転が以前の運転よりも比較的丁寧であったことを示すこととなる。そして、運転傾向推定装置1は、以上の推定を行った後に、処理を終了することとなる。
このようにして、第1実施形態に係る運転傾向推定装置1によれば、ジャークに基づいて運転傾向を推定するので、例えば、加速度値が小さいものであったとしても、その小さい値付近で変化していれば、変化を適格にとらえることができる。このため、従来では加速度が閾値を超えない範囲で変化していた場合、その変化をとらえることができず、どのような走行状態であったか推定することができなかったが、本発明では加速度自体が小さくとも変化を適格にとらえることができる。従って、運転傾向の推定について精度の向上を図ることができる。
また、求めたジャークの値をべき乗している。このため、大きな値のジャークについて強調するようにし、小さな値のジャークについて目立たないようにすることができる。さらに、べき乗して得られた値の移動平均値を算出している。このため、ノイズの影響により特異となった値の影響を少なくするようにしている。そして、その移動平均値に基づいて、運転者の運転傾向を推定している。このため、べき乗により推定を行いやすくし、移動平均によりノイズの影響を少なくしたうえで推定を行うこととなり、運転傾向の推定精度を向上させることができる。
次に、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態に係る運転傾向推定装置2は、第1実施形態のものと同様であるが、処理内容が第1実施形態のものと一部異なっている。
以下、第2実施形態に係る運転傾向推定装置2について説明する。図5は、第2実施形態に係る運転傾向推定装置2の詳細な動作の一例を示すフローチャートである。
同図に示すように、第2実施形態では第1実施形態の処理に加えてジャークを微分する処理(ST31)が追加されている。
具体的に説明すると、まず、演算部20は、車両情報取得部10により取得した車速を2回微分してジャークを算出する(ST30)。その後、演算部20は、算出したジャークを微分する(ST31)。以下のステップST32〜ST45の処理は、図4に示したステップST11〜ST24と同様であるため、説明を省略する。
以上のように、第2実施形態ではジャークを微分するようにしている。ここで、例えば第1実施形態では、運転が滑らかである場合であっても、滑らかで且つ加減速を強めに運転した場合には、運転円滑度が全体的に高めの値となってしまう。
すなわち、運転円滑度は運転の滑らかさを表すものであることから、今回の運転自体が滑らかである場合、運転円滑度は本来小さい値となるべきである。ところが、第1実施形態では、運転として滑らかである場合であっても、加減速が強めであると、運転円滑度が大きくなってしまう。そこで、第2実施形態では、ジャークを微分することにより、運転自体が滑らかな場合、加減速度によらず運転円滑度を小さくするようにしている。
図6は、図5に示したステップST31の説明図であり、(a)は速度を示し、(b)は加速度を示し、(c)はジャークを示し、(d)はジャークの微分値を示している。まず、A地点を出発した車両がB地点を通過する場合、ある運転者はゆっくりと加速しながらB地点を通過するが、他の運転者は多少早めに加速しながらB地点を通過する。しかし、いずれの場合も運転自体は滑らかとなる場合がある。
例えば、図6(a)に示す例の場合、速度の上昇度が異なるものの、速度が滑らかに上昇しており、双方共に滑らかな走行となっている。なお、このときの双方の速度は時刻の2乗に比例しているものとする。
次に、加速度を図6(b)に示す。上記の如く速度が時刻の2乗に比例している場合、加速度は比例的なものとなる。そして、図6(c)に示すように、加速度が比例的なものであるとジャークは一定の値となる。また、ジャークが一定の値となることから、図6(d)に示すように、ジャークの微分値は「0」という値となる。
このように、図6に示す例では、加速度に違いがある場合であっても、ジャークの微分値は「0」で同じ値となっている。特に、加速度が大きい方については、ジャークの値が「0」となることから、運転自体が滑らかであれば運転円滑度を小さくすることができるようになっている。このように、ジャークの微分値を求めることで、運転の滑らかさを適格にとらえることができることとなる。
なお、上記では加速時を例に説明したが、減速時や旋回時等であっても、同様に運転自体が滑らかであれば運転円滑度を小さくすることができる。
このようにして、第2実施形態に係る運転傾向推定装置2によれば、運転傾向の推定について精度の向上を図ることができ、運転傾向の推定精度を向上させることができる。
また、ジャークの微分値に基づいて運転円滑度を求めるようにしているので、運転自体が滑らかであれば運転円滑度を小さくすることができる。従って、一層適格に運転円滑度を求めることができる。
次に、本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態に係る運転傾向推定装置3は、第2実施形態のものと同様であるが、処理内容が第2実施形態のものと一部異なっている。
以下、第3実施形態に係る運転傾向推定装置3について説明する。まず、第3実施形態に係る運転傾向推定装置3では、車両走行開始から終了までの期間についてジャークを求めるようにしておらず、当該期間のうち一部についてジャークを求めるようにしている。
例えば、運転者の運転傾向として、昼と夜とで相違を求めたい場合には、昼の一定期間及び夜の一定期間についてのみジャークを求めるようにすればよい。また、昼及び夜に限らず、周囲が明るい場合の一定期間及び暗い場合の一定期間についてのみジャークを求めるようにしてもよい。
このように、第3実施形態では、推定する運転傾向の内容に応じて、車両走行開始から走行終了までの期間のうち、必要となる期間のジャークを求めるようにしている。
以下、フローチャートを参照して具体的に説明する。図7は、第3実施形態に係る運転傾向推定装置3の詳細な動作の一例を示すフローチャートである。なお、図7では、運転者の疲労具合による運転傾向を推定するために、運転開始後の所定期間及び運転終了直前の所定期間について、ジャークを求めるものとする。
まず、同図に示すステップST50〜ST56の処理は、図5に示したステップST30〜ST36の処理と同様である。すなわち、ジャークを求めて微分値を求めた後に、微分値を2乗する。そして、これを繰り返してm個以上の値を記憶した後に、移動平均値を求めて、これを加算していく。
その後、運転傾向推定部30は、推定したい傾向の期間を満たしているか否かを判断する(ST57)。すなわち、図7に示す例の場合、車両走行開始から所定期間経過したか否かを判断することとなる。期間を満たしていないと判断した場合(ST57:NO)、処理はステップST50に戻る。
一方、期間を満たしていると判断した場合(ST57:YES)、運転傾向推定部30は、ステップST56において順次加算した値の平均値を算出する(ST58)。そして、運転傾向推定部30は、推定したい傾向の開始時期か否かを判断する(ST59)。すなわち、図7に示す例の場合、車両走行終了前の所定期間になったか否かを判断することとなる。このとき、走行終了については、例えはナビゲーション装置から目的地の情報を取得し、その目的地到達までの予測時刻等から求めるようにすればよい。
ここで、開始時期でないと判断した場合(ST59:NO)、開始時期と判断されるまで、この処理を繰り返すこととなる。一方、開始時期であると判断した場合(ST59:YES)、処理はステップST50に戻ることとなる。すなわち、ジャークを求めていくこととなる。
そして、走行が終了した後には、図5に示したステップST39〜45と同様の処理が行われて、運転傾向が推定されることとなる。
このように、第3実施形態では、一例として運転開始後の所定期間及び運転終了直前の所定期間について、ジャークを求めるようにしている。このため、運転者の疲労具合について運転傾向を推定することが可能となる。例えば、運転開始後の所定期間については、過去の運転円滑度と何ら変わりがない運転をしていたが、運転終了前の所定期間についてはかなり運転が雑になったなどを、推定することができる。
なお、第3実施形態では、運転開始後の所定期間と運転終了前の所定期間とのそれぞれの運転円滑度を比較して、疲労具合を推定してもよく、運転開始後の所定期間と過去等の運転円滑度を比較する一方で、運転終了前の所定期間と過去等の運転円滑度とを比較し、これら両者の比較結果を再度比較して、疲労具合を推定するようにしてもよい。
このようにして、第3実施形態に係る運転傾向推定装置3によれば、運転傾向の推定について精度の向上を図ることができ、運転傾向の推定精度を向上させることができる。
また、ジャークの微分値に基づいて運転円滑度を求めるようにしているので、一層適格に運転円滑度を求めることができる。
また、推定する運転傾向の内容に応じて、車両走行開始から走行終了までの期間のうち、必要となる期間のジャークを求めるようにしている。このため、必要となる期間によっては、例えば、昼と夜や、運転開始後と運転終了直前など、より詳細な運転傾向を推定することができる。
なお、本実施形態は、必要となる期間を微小なものとすることにより、運転者の局所的な挙動の乱れを正確に検出することができる。この場合、例えば、ナビゲーション装置の地図情報に基づいて運転操作を誤りやすい地点を特定し、車両がその地点に差し掛かった場合に、ジャークを求めるようにすると、一層適格に局所的な挙動の乱れを検出することができる。
次に、本発明の第4実施形態を説明する。第4実施形態に係る運転傾向推定装置は、第2実施形態のものと同様であるが、新たに自車両の運転状況を推定する構成を備える点で第2実施形態のものと異なっている。また、第4実施形態に係る運転傾向推定装置は、処理内容が第2実施形態のものと一部異なっている。
以下、第4実施形態に係る運転傾向推定装置について説明する。まず、第4実施形態に係る運転傾向推定装置4では、自車両の運転状況毎に運転傾向を推定するようになっている。ここで、自車両の運転状況とは、車両周囲環境及び自車両の走行情報の少なくとも一方をいうものであり、例えば加速中、高速道路を走行中などをいうものである。このため、第4実施形態に係る運転傾向推定装置では、例えば自車両が加速中であるときのみの運転傾向や、高速道路を走行しているときのみの運転傾向を推定することが可能となっている。
図8は、第4実施形態に係る運転傾向推定装置の概略構成図である。同図に示すように、運転傾向推定装置4は、新たにペダル操作情報取得部50、ナビゲーションシステム60、及び運転状況推定部(運転状況推定手段)70を備えている。
ペダル操作情報取得部50は、アクセルペダル及びブレーキペダルの少なくとも一方に対して、運転者が行ったペダル操作を検出するものである。また、ペダル操作情報取得部50は、運転状況推定部70に接続されており、検出したペダル操作の情報を該推定部70に送信するものである。なお、以下の説明においてペダル操作情報取得部50は、アクセルペダル及びブレーキペダルへの双方の操作を検出するものとして説明する。
ナビゲーションシステム60は、自車位置及び目的地までの誘導経路を表示部にて乗員に情報提示するものであり、少なくとも自車両が走行している道路種別、走行している道路の車線数、及び走行している道路の形状を検出する機能を有するものである。また、ナビゲーションシステム60は、運転状況推定部70に接続されており、検出した道路種別、車線数、及び道路形状の情報を該推定部70に送信するものである。
運転状況推定部70は、ペダル操作情報取得部50からのペダル操作の情報に基づいて、自車両の運転状況を推定するものである。具体的に運転状況推定部70は、ペダル操作情報取得部50からのペダル操作の情報に基づいて以下のように運転状況を推定する。
すなわち、運転状況推定部70は、ペダル操作情報取得部50からのペダル操作の情報に基づき、運転者がブレーキペダルを操作していることを検出した場合、自車両の運転状況を「減速」と判断する。また、運転状況推定部70は、ペダル操作情報取得部50からのペダル操作の情報に基づき、運転者がブレーキペダルを操作していないことを検出したとしても、アクセルペダルを操作していないことを検出した場合、自車両の運転状況を「減速」と判断する。
一方、運転状況推定部70は、ペダル操作情報取得部50からのペダル操作の情報に基づき、運転者がブレーキペダルを操作していないことを検出し、アクセルペダルを操作していることを検出した場合、自車両の運転状況を「加速」と判断する。
さらに、運転状況推定部70は、ナビゲーションシステム60からの道路種別、車線数及び道路形状の情報に基づいて、自車両の運転状況を推定する構成となっている。具体的に運転状況推定部70は、ナビゲーションシステム60から、高速道路を走行中である情報を入力すると、自車両の運転状況を「高速道路」と判断する。
また、運転状況推定部70は、高速道路を走行中でない旨の情報を入力すると、ナビゲーションシステム60から自車両が単車線道路を走行中であるか、複数車線道路を走行中であるかを示す情報を入力する。そして、単車線道路を走行中である旨の情報を入力した場合には、自車両の運転状況を「単車線」と判断し、複数車線道路を走行中である旨の情報を入力した場合には、自車両の運転状況を「複数車線」と判断する。
また、運転状況推定部70は、ナビゲーションシステム60からの道路形状の情報に基づいて、自車両が直線道路を走行中であるか、カーブ区間を走行中であるかを示す情報を入力する。そして、直線道路を走行中である旨の情報を入力した場合には、自車両の運転状況を「直線」と判断し、カーブ区間を走行中である旨の情報を入力した場合には、自車両の運転状況を「カーブ」と判断する。
さらに、運転状況推定部70は、例えば車両情報取得部10に接続されており、車両情報取得部10からの車速の情報によって、自車両の運転情報を推定する構成となっている。具体的に運転状況推定部70は、自車両が0km/hからの加速中である発進状態であることを検出した場合、自車両の運転状況を「発進」と判断する。一方、運転状況推定部70は、0km/hまでの減速中である停止状態であることを検出した場合、自車両の運転状況を「停止」と判断する。
また、以上のような構成を有する運転状況推定部70は、運転傾向推定部30に接続されており、求めた自車両の運転状況の情報を運転傾向推定部30に送信するようになっている。
次に、第4実施形態に係る運転傾向推定装置4の詳細な動作について説明する。図9は、第4実施形態に係る運転傾向推定装置4の動作の一例を示すフローチャートである。
まず、ナビゲーションシステム60は自車両が走行している道路の種別、車線数及び形状を検出する(ST60)。次に、ペダル操作情報取得部50は運転者のペダル操作を検出する(ST61)。そして、これらは運転状況推定部70に検出した情報を送信する。
送信後、運転状況推定部70は、車速の情報を入力し、道路の情報、ペダル操作の情報、及び車速の情報に基づいて、自車両の運転状況を推定する(ST62)。図10は、自車両の運転状況の説明図である。同図に示すように、運転状況は、ペダル操作の観点から「加速」及び「減速」の2つのうちいずれかが推定され、車速の観点から「発進」及び「停止」の2つのうちから推定される。また、運転状況は、道路情報の観点から、「高速道路」、「複数車線」及び「単車線」の3つのうちいずれかが推定され、さらに、「直線」及び「カーブ」のいずれかが推定される。
例えば、運転状況推定部70は、自車両が加速中であって、高速道路のカーブ区間を走行中であると判断した場合には、自車両の運転状況を図10の符号aと推定する。また、その加速が0km/hからの発進である場合には、自車両の運転状況を図10の符号bと推定する。
そして、運転傾向推定部30は、ステップST63〜ST68において、図4に示したステップST10〜ST14と同様の処理を実行し、推定された運転状況について運転円滑度を求めていくこととなる。すなわち、運転傾向推定部30は、まず、ジャークを求め、次に、推定した運転状況についてジャークを加算していき、その後、移動平均値を求めていくこととなる。
そして、上記処理の後に、運転傾向推定部30は、求めた移動平均値を加算する(ST69)。すなわち、運転傾向推定部30は、移動平均値を、特定された運転状況毎に分別して加算することとなる。なお、ここでは、移動平均値を求めない処理を実行するようにしてもよい。その場合、運転傾向推定部30は、ジャークを運転状況毎に分別して加算することとなる。
その後、運転傾向推定部30は、運転状況が変化したか否かを判断する(ST70)。運転状況が変化していないと判断した場合(ST70:NO)、処理はステップST63に戻り、再度ジャーク及び移動平均値を求めていくこととなる。一方、運転状況が変化していると判断した場合(ST70:YES)、運転傾向推定部30は運転終了か否かを判断する(ST71)。
運転終了でないと判断した場合(ST71:NO)、処理はステップST60に戻ることとなる。すなわち、運転状況の推定から行っていくこととなる。そして、新たな運転状況についてジャークを求めて移動平均値を加算していくこととなる。
一方、運転終了であると判断した場合(ST71:YES)、運転傾向推定部30は、ステップST69において順次加算した値の平均値を算出する(ST72)。このとき、運転傾向推定部30は、運転状況毎に平均値を算出する。これにより、運転傾向推定部30は、運転状況毎の運転円滑度を求めることとなる。
その後、運転傾向推定部30は、ステップST73〜ST78において、図4に示したステップST18〜ST24と同様の処理を運転状況毎に行っていく。すなわち、運転状況毎に、過去の運転回数が所定値以上であるか否かを判断し、判断結果に応じた計算式により新たな運転円滑度を求める。そして、運転傾向推定部30は、新たな運転円滑度と、ステップST72にて求めた現在の運転円滑度とを、運転状況毎に比較し、運転傾向を推定する(ST78)。その後、処理は終了する。
このように、第4実施形態では、自車両の運転状況毎に運転傾向を推定するようにしている。このため、場面毎の運転傾向、例えば高速道路や加速時における運転傾向を推定することが可能となっている。
このようにして、第4実施形態に係る運転傾向推定装置4によれば、運転傾向の推定について精度の向上を図ることができ、運転傾向の推定精度を向上させることができる。
また、ジャークの微分値に基づいて運転円滑度を求めるようにしているので、一層適格に運転円滑度を求めることができる。
また、求めたジャークの移動平均値(又はジャーク)を自車両の運転状況毎に分別し、各運転傾向を推定するようにしている。このため、場面毎の運転傾向、例えば高速道路や加速時における運転傾向を推定することが可能となる。従って、より詳細な運転傾向を推定することができる。
また、アクセルペダル及びブレーキペダルの少なくとも一方に対して行うペダル操作に基づいて、自車両の運転状況を判断している。このため、加速時及び減速時の少なくとも一方について運転傾向を推定することが可能となる。このため、減速は雑な運転であるなど、詳細な運転傾向を推定することができる。
さらに、運転者が危険を感じて挙動を乱す場合、同時にブレーキ操作することから、減速中であることが多い。このため、本実施形態のように、ブレーキペダル操作に基づいて、自車両の運転状況を推定することで、減速中と判断することができ、上記のような挙動を乱す場合の運転傾向の推定にも役立てることができる。
また、自車両が走行している道路の情報に基づいて、前記自車両の運転状況を判断している。このため、例えば、一般道での運転は雑であるが、高速道路では丁寧であるなど、詳細な運転傾向を推定することができる。
また、自車両が0km/hからの加速中である発進状態か、又は0km/hまでの減速中である停止状態かに基づいて、前記自車両の運転状況を判断している。このため、例えば、発進時の運転は雑であるが、停止時の運転は丁寧であるなど、詳細な運転傾向を推定することができる。
次に、本発明の第5実施形態を説明する。第5実施形態に係る運転傾向推定装置は、第4実施形態のものと同様であるが、新たに自車両の運転者の運転技量を推定する構成を備える点で第4実施形態のものと異なっている。また、第5実施形態に係る運転傾向推定装置は、処理内容が第4実施形態のものと一部異なっている。
以下、第5実施形態に係る運転傾向推定装置について説明する。まず、第5実施形態に係る運転傾向推定装置では、運転者の運転技量を推定するようになっている。ここで、運転技量とは、例えば単独事故や対車事故などを回避する事故回避技量、及び車両運転時における注意力や判断力などの運転適正を含むものである。
図11は、第5実施形態に係る運転傾向推定装置の概略構成図である。同図に示すように、運転傾向推定装置5は、新たに運転技量推定部(運転技量推定手段)80を備えている。
運転技量推定部80は、運転傾向推定部30にて求められた運転円滑度に基づいて、運転者の運転技量を推定するものである。また、具体的に運転技量推定部80は、図12及び図13に示すマップを記憶しており、これらのマップに基づいて運転技量を推定するものである。
図12は、運転状況と重要技量との対応関係を示すマップである。同図に示すように、各運転状況には、重要となる運転の技量が設定されている。例えば、単車線の直線道路を加速中である場合、重要な運転の技量は「前方状況認識力」となる。すなわち、単車線の直線道路を加速中である場合において、減速に関する技術や側方を視認する技術等は前方の状況を認識する技術に比べて重要ではない。このため、上記場合においては、「前方状況認識力」が重要技量とされている。
また、例えば、複数車線の直線道路を減速中である場合、重要な運転の技量は「先行車及び信号予測力」となっている。他の運転状況についても上記と同様に重要技量が決定されている。
図13は、重要技量と運転技量との対応関係を示すマップである。まず、運転技量の1つである事故回避技量について説明する。同図に示すように、事故回避技量のうちの単独事故についてみると、「走行速度までの速度コントロール」「曲率推定」「突発事象予測」及び「アグレッシブ度合い」が事故回避に必要な技量とされている。例えば、「曲率推定」が不得意な運転者は、カーブ区間においてカーブをはみ出す可能性が高く、単独事故を起こしやすい。また、「突発事象予測」が不得意な運転者は、障害物が車両前方に飛び出してきた場合など、必要以上に驚くなどしてしまって、ハンドル操作を誤り、単独事故を起こしやすい。
このように、図13に示すマップでは、単独事故の項目について事故回避に必要とされる重要技量が対応付けられている。また、対人事故や対車事故についても同様に、事故回避に必要とされる重要技量が対応付けられている。さらに、運転適正の各項目についても同様であり、注意力、判断力、決断力、緻密性、動作の安定性のそれぞれについて重要技量が対応付けられている。
なお、図13に示す重要技量である「余裕具合」及び「急ぎ具合」については、補正値として用いられる。すなわち、余裕をもって運転している場合には事故等の可能性が低くなり、急いでいる場合には事故等の可能性が高まることから、これらの余裕具合及び急ぎ具合を補正値として利用されるようになっている。注意力等についても同様である。
次に、運転技量推定部80が運転技量を推定する際の動作を説明する。図14は、運転技量推定部80が運転技量を推定する動作の一例を示すフローチャートである。なお、図14に示す処理は、第4実施形態と同様にして運転状況毎の運転円滑度が求められた後に実行されるものである。
まず、運転技量推定部80は、運転状況に対応した重要技量を数値化する(ST80)。この数値化処理を図12を参照して説明する。端的に運転技量推定部80は、運転円滑度に予め定められた係数を掛けることで、重要技量を数値化する。例えば、単車線の直線道路を加速中である場合、運転円滑度が「α」であって、係数が「β」であるとすると、運転技量推定部80は、「曲率推定」の値として、「α×β」という値を求めることとなる。また、運転技量推定部80は、他の運転状況についても、予め定められた係数を運転円滑度に掛けることで、重要技量を数値化する。
再度、図14を参照する。数値化の後、運転技量推定部80は、事故回避技量毎に重量技量の数値を加算する(ST81)。その後、運転技量推定部80は、運転適正毎に重量技量の数値を加算する(ST82)。
これら加算処理を図13を参照して説明する。例えば、単独事故については、「走行速度までの速度コントロール」「曲率推定」「突発事象予測」及び「アグレッシブ度合い」のそれぞれの数値を加算することとなる。そして、得られた値が、単独事故回避する運転者の技量を示すものとなる。従って、運転者の運転技量が特定されたこととなる。また、対人及び対車事故並びに運転適正についても同様にして数値を加算し、運転技量を特定する。
さらに、加算処理に際しては、「余裕具合」及び「急ぎ具合」に基づいて補正値を加算するようにしてもよい。この場合、加算処理は以下のようになる。すなわち、図14に示す処理は、運転円滑度が求められた後に実行されるため、運転傾向推定部30は、運転円滑度から運転傾向を求めることができる。故に、運転技量推定部80は、運転傾向推定部30からの運転傾向の情報から、運転の雑さや丁寧さを求め、雑さや丁寧さに基づいて「余裕具合」及び「急ぎ具合」を決定する。そして、それに応じた補正値を加算することとなる。
再度、図14を参照する。上記の如く、加算処理により運転者の技量を特定した後、運転技量推定部80は、運転者の不得手な技量を特定する(ST83)。例えば、運転技量推定部80は、運転技量のうち、対人事故の回避が苦手であると特定したり、判断力に欠けると特定したりする。
その後、運転技量推定部80は、情報提示処理を実行する(ST84)。すなわち、運転技量推定部80は、上記の如く特定した運転者の不得手な技量に基づいた情報提示を行うように提示情報を生成する。これにより、情報提示装置等は、例えば、運転者が判断力に欠ける場合には、十字路等の進入の際に、進入して良い旨の情報を提示する。このように、情報提示装置等は、運転をサポートする情報を提示することとなる。なお、ナビゲーションシステム60を情報提示装置として用いるようにしてもよい。
このようにして、第5実施形態に係る運転傾向推定装置5によれば、運転傾向の推定について精度の向上を図ることができ、運転傾向の推定精度を向上させることができる。
また、ジャークの微分値に基づいて運転円滑度を求めるようにしているので、一層適格に運転円滑度を求めることができる。
また、より詳細な運転傾向を推定することができ、挙動を乱す場合の運転傾向の推定にも役立てることができる。
さらに、推定された自車両の運転状況毎に技量に関する値を求め、求めた値から運転者の運転技量を推定するようにしている。このため、運転者の不得手な技量に基づいた情報提示をすることが可能となる。例えば、運転者が判断力に欠ける場合には、十字路等の進入の際に、進入して良い旨の情報を提示する。従って、運転者に有益な情報を提示可能となり、利便性を向上させることができる。
次に、本発明の第6実施形態を説明する。第6実施形態に係る運転傾向推定装置は、第5実施形態のものと同様であるが、自車両の運転状況として車両の走行モードを推定する点で第5実施形態のものと異なっている。また、自車両の運転状況の推定方法についても第5実施形態のものと異なっている。
図15は、第6実施形態に係る運転傾向推定装置の概略構成図である。同図に示すように、運転傾向推定装置6は、新たに先行車両情報取得部90を備えている。先行車両情報取得部90は、先行車の存在を検出し、先行車が存在する場合にはその先行車と自車両との相対速度及び車間距離を検出するものである。また、先行車両情報取得部90は、運転状況推定部70に接続され、検出した先行車の有無の情報並びに先行車と自車両との相対速度及び車間距離の情報を該推定部70に送信するものである。
また、本実施形態に係る運転状況推定部70は、先行車の有無、並びに相対速度及び車間距離の情報に基づいて、自車両の運転状況(走行モード)を推定するようになっている。例えば運転状況推定部70は、図16に示すマップを記憶しており、このマップに基づいて運転状況を推定する構成となっている。
図16は、相対速度及び車間距離と走行モードとの対応関係の一例を示すマップである。同図に示すように、運転状況推定部70は、先行車の有無、並びに相対速度及び車間距離の情報に基づいて、自車両の運転状況が「単独走行モード」「車間距離追従型モード」「速度追従型モード」のいずれに属するかを推定するようになっている。
ここで、「単独走行モード」とは、自車両が単独で走行しているときのモードである。従って、運転状況推定部70は、先行車両情報取得部90からの情報に基づいて判断した結果、先行車が存在しない場合、又は先行車が存在するが極端に遠方に存在している場合には、「単独走行モード」と推定するようになっている。
また、「車間距離追従型モード」とは、運転者が自車両と先行車との車間距離を基準にして、先行車に追従走行しているときのモードである。ここで、自車両が車間距離を基準に先行車に追従する場合、自車両と先行車との車間距離が小さくなるという傾向にある。このため、運転状況推定部70は、先行車両情報取得部90からの情報に基づいて判断した結果、車間距離が狭い場合には、「車間距離追従型モード」と推定するようになっている。
また、車間距離が狭いことから、運転者は先行車の速度変化に敏感に反応することとなり易い。また、敏感に反応することから、車速が急激に変化し易い。このため、これらの場合にも、運転状況推定部70は、「車間距離追従型モード」と推定するようになっている。
また、「車速追従型モード」とは、運転者が自車両と先行車との相対速度を基準にして、先行車に追従走行しているときのモードである。ここで、自車両が相対速度を基準に先行車に追従する場合、自車両と先行車との車間距離が広くなるという傾向にある。このため、運転状況推定部70は、先行車両情報取得部90からの情報に基づいて判断した結果、車間距離が広い場合には、「車速追従型モード」と推定するようになっている。
また、車間距離が広いことから、運転者は先行車の速度変化に緩やかに反応することとなる。また、緩やかに反応することから、車速が緩やかに変化し易くなる。このため、これらの場合にも、運転状況推定部70は、「車速追従型モード」と推定するようになっている。
次に、運転傾向推定装置6の詳細な動作について説明する。まず、先行車両情報取得部90は、先行車の有無、相対速度及び車間距離を検出し、検出した情報を運転状況推定部70に送信する。そして、運転状況推定部70は、図17に示す処理を実行する。
図17は、第6実施形態に係る運転傾向推定装置6の動作の一例を示すフローチャートである。同図に示すように、運転状況推定部70は、先行車が存在するか否かを判断する(ST90)。先行車両が存在しないと判断した場合(ST90:NO)、運転状況推定部70は、「単独走行モード」であると推定する(ST91)。
一方、先行車両が存在すると判断した場合(ST90:YES)、運転状況推定部70は、車間距離が極端に狭い否かを判断する(ST92)。そして、車間距離が極端に狭いと判断した場合(ST92:YES)、運転状況推定部70は、「車間距離追従型モード」であると推定する(ST93)。
一方、車間距離が極端に狭いわけでないと判断した場合(ST92:NO)、運転状況推定部70は、相対速度の変化幅が小さいか否かを判断する(ST94)。相対速度の変化幅が小さいと判断した場合(ST94:YES)、運転状況推定部70は、「車間距離追従型モード」であると推定する(ST93)。
一方、相対速度の変化幅が小さいわけでないと判断した場合(ST94:NO)、運転状況推定部70は、車間距離の変化幅が小さいか否かを判断する(ST95)。車間距離の変化幅が小さいと判断した場合(ST95:YES)、運転状況推定部70は、「車間距離追従型モード」であると推定する(ST93)。
一方、車間距離の変化幅が小さいわけでないと判断した場合(ST95:NO)、運転状況推定部70は、車間距離が極端に広いか否かを判断する(ST96)。車間距離が極端に広いと判断した場合(ST96:YES)、運転状況推定部70は、「単独走行モード」であると推定する(ST91)。また、車間距離が極端に広いわけでないと判断した場合(ST96:NO)、運転状況推定部70は、「速度追従型モード」であると推定する(ST97)。
そして、以上のように走行モードが推定されると、運転状況推定部70は、自車両の運転状況(走行モード)の情報を運転傾向推定部30に送信する。これにより、運転傾向推定部30は、図9に示したステップST63〜ST78に示した処理と同様の処理を、自車両の運転状況毎に実行して、それぞれの運転傾向を推定することとなる(ST98)。また、運転技量推定部80は、求められた運転円滑度に基づいて運転技量を推定することとなる。
なお、上記ステップST92〜ST96の判断処理は、予め定められた閾値により行うようにするとよい。
このようにして、第6実施形態に係る運転傾向推定装置6によれば、運転傾向の推定について精度の向上を図ることができ、運転傾向の推定精度を向上させることができる。
また、ジャークの微分値に基づいて運転円滑度を求めるようにしているので、一層適格に運転円滑度を求めることができる。
また、より詳細な運転傾向を推定することができ、挙動を乱す場合の運転傾向の推定にも役立てることができる。また、運転者に有益な情報を提示可能となり、利便性を向上させることができる。
さらに、自車両の運転状況を、先行車と自車両との相対速度及び車間距離に基づいて判断しているため、自車両の走行モードを推定することができる。そして、走行モードを推定することにより、普段、運転者がどのような走行を好むかを判断でき、運転者の好みに応じて、より詳細な運転傾向を推定することができる。
なお、第7実施形態ではナビゲーションシステム60を備えるため、先行車両情報取得部90に加え、該システム60からの情報に基づいて運転状況を推定するようにしても良い。
次に、本発明の第7実施形態を説明する。第7実施形態に係る運転傾向推定装置は、第6実施形態のものと同様であるが、自車両の運転状況として渋滞モードを推定できる点で第6実施形態のものと異なっている。
図18は、第7実施形態に係る運転傾向推定装置7の動作の一例を示すフローチャートである。同図に示すように、第7実施形態に係る運転傾向推定装置7では、図17に示した処理に加え、新たにステップST100,ST101,ST105の処理が追加されたものとなっている。
すなわち、まず、運転状況推定部70は、VICS情報を入力し、自車両が渋滞箇所を走行中であるか否かを判断する(ST100)。ここで、渋滞を走行中であると判断した場合(ST100:YES)、運転状況推定部70は、「渋滞モード」であると推定する(ST101)。
一方、渋滞箇所を走行中でないと判断した場合(ST100:NO)、運転状況推定部70は、図17に示したステップST90と同様に、先行車の存在を判断し(ST102)、先行車が存在する場合には(ST102:YES)、図17に示したステップST92,ST94,ST95と同様の処理を実行する(ST104,ST107,ST108)。
そして、ステップST104,ST107,ST108において「YES」と判断された場合、運転状況推定部70は、車速が低いか否かを判断する(ST105)。ここで、車速が低いと判断した場合(ST105:YES)、運転状況推定部70は、「渋滞モード」であると推定する(ST101)。一方、車速が低くないと判断した場合(ST105:NO)、図17に示した処理と同様に、運転状況推定部70は、「車間距離追従型モード」であると推定する(ST106)。また、他の走行モードについても図17と同様の処理により推定される。
そして、上記のようにして、走行モードが推定されると、運転状況推定部70は、自車両の運転状況(走行モード)の情報を運転傾向推定部30に送信する。これにより、運転傾向推定部30は、図9に示したステップST63〜ST78に示した処理と同様の処理を、自車両の運転状況毎に実行して、それぞれの運転傾向を推定することとなる(ST111)。また、運転技量推定部80は、求められた運転円滑度に基づいて運転技量を推定することとなる。
ここで、本実施形態において運転傾向推定部30は運転傾向を推定するものであるが、渋滞時については運転傾向を推定しないようにすることもできる。この場合、処理負担の軽減を図ることができる。また、本実施形態において運転技量推定部80は、渋滞時の運転技量を推定しないようになっている。すなわち、上記では運転円滑度を「α」とし、係数を「β」とした場合、各運転状況について「α×β」という値を求める例を説明したが、本実施形態では、各運転状況のうち、自車両が渋滞箇所を走行中であるときの運転状況を除いて、上記「α×β」という値相当のものを求めることとなる。そして、このような値から、渋滞時を除く各運転状況について運転技量を推定することとなる。
このようにして、第7実施形態に係る運転傾向推定装置7によれば、運転傾向の推定について精度の向上を図ることができ、運転傾向の推定精度を向上させることができる。
また、ジャークの微分値に基づいて運転円滑度を求めるようにしているので、一層適格に運転円滑度を求めることができる。
また、より詳細な運転傾向を推定することができ、挙動を乱す場合の運転傾向の推定にも役立てることができる。
さらに、自車両が渋滞箇所を走行中であるか否かに基づいて自車両の運転状況を判断している。このため、通常、運転者がいらだつ渋滞時における運転傾向を推定することができる。また、渋滞時に車両は速度が低いことから、渋滞時の運転傾向を求める重要度が低いと判断して、運転傾向を推定せず、処理負荷の軽減を図ることができる。
また、自車両が渋滞箇所を走行しているときの運転状況を除いたうえで、各運転状況毎に運転技量を求めるようにしている。このため、通常、運転者がいらだつ渋滞時における運転技能を推定することができる。また、渋滞時に車両は速度が低いことから、渋滞時の運転技能を求める重要度が低いと判断して、運転技能を推定せず、処理負荷の軽減を図ることができる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、各実施形態を組み合わせてもよい。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
例えば、上記実施形態では、運転状況として図10に示すものを例に説明したが、これに限らず、例えば、図19に示すものであってもよい。すなわち、「加速」「減速」「発進」「停止」に代えて、「発進右折」「発進左折」「交差点右折」「交差点左折」「発進・停止」「道なり走行」としてもよい。また、図19に示すように、「高速道路」を除くようにしてもよい。
さらに、運転状況を図19のようにした場合、運転技量推定部80には、図20及び図21のようなマップを記憶させておくとよい。すなわち、図20に示すように、図19の「発進右折」「発進左折」「交差点右折」「交差点左折」「発進・停止」「道なり走行」及び「複数車線」「単車線」それぞれに対応して、「将来状況推定」「周囲状況認識」などの重要技量を設定したマップを記憶しておくとよい。また、図21に示すように、例えば事故回避技量のうち必要とされる重要技量を「将来状況推定」「周囲状況認識」などの各重要技量に対応付けたマップを記憶しておくとよい。
また、上記実施形態において、車速0km/hが続く停車、駐車及び信号待ちの間については、運転円滑度の算出の支障とならないように、ジャークを求めないようにするようにしてもよい。これにより、一層適格に運転円滑度を求めることができ、運転傾向の推定、及び運転技量の推定を正確に行うことができる。