以下、本発明の実施形態例を図面に従って説明し、併せて前述のタイプAの転写ローラの欠点を図面に即してより具体的に明らかにする。
図1は、画像形成装置の一例であるカラープリンタ1を示しており、このカラープリンタ1は、図示されないカラー画像読み取り装置あるいはパーソナルコンピュータ等から出力されるカラー画像情報に応じて潜像形成ならびに可視像処理し、可視像処理された画像を重畳転写することにより2色以上のカラー画像を形成する。
図1において、カラープリンタ1は、駆動プーリ6及び従動プーリ7に掛け回されたベルト状の感光体8を備え、この感光体8は、駆動プーリ6により図示矢印方向に移動することができる。なお、符号50は感光体8のテンションローラを示している。
感光体8の周囲には、電子写真プロセスを実行するための帯電装置9、書込装置10、現像装置11、中間転写装置16及びクリーニング装置22がそれぞれ配置されている。
書込装置10は、図示されないカラー画像読み取り装置あるいはパーソナルコンピュータ等から得られるカラー画像情報を光信号に変換して原稿画像に対応した光書込を行うようになっており、図示されないレーザ光源、ポリゴンミラー10a、fθレンズ10b及び反射鏡10cを備えている。書込装置10では、レーザ光源からのレーザビームを回転するポリゴンミラー10aを介してレーザビームを走査し、fθレンズ10b及び反射鏡10cにより感光体8にレーザビームを導いて静電潜像を形成する。
現像装置11は、カラー画像情報に含まれる色分解色と補色関係にあるシアン、マゼンタ、イエローの各現像剤、この場合にはトナーを収容している現像器(便宜上、同じ符号11aを用いる)が、円筒部材からなる支持部材7bの周方向に沿って配置され、支持部材7bが選択的に回転されることにより、感光体8に対して選択された色の現像器を対向させることができるリボルバー形式が採用されている。支持部材7bは、感光体8と対向する位置の周壁が除かれており、いずれかの現像器が露呈してトナーを感光体8上の静電潜像に供給できるようになっている。感光体8に対向している現像器は、図示されない駆動部からの駆動力の伝達が行われることにより、感光体8へのトナーの供給を行うことができ、トナーの色切り換えに際しては、駆動力の伝達が解除されるようになっている。
上記のリボルバー形式の現像装置11に加えて、その現像装置11の近傍には、黒現像剤を収容した黒現像器12が配置されている。黒現像器12は、偏心カム40によって選択的に感光体8に対して接離することができる。現像装置11及び黒現像器12は、感光体8に担持されている静電潜像を可視像処理することによりトナー像を形成する。
中間転写装置16は、現像装置11及び黒現像器12により可視像処理されたトナー像を順次転写(これを一次転写という)し、全てのトナー像が転写された後に記録媒体への一括転写(これを二次転写という)する機能を有している。
このため、中間転写装置16は、駆動プーリ14及び従動プーリ15に掛け回された中間転写ベルト17より成る中間転写体を備えており、この中間転写ベルト17は、感光体8と当接して図示矢印方向に移動するようになっている。中間転写ベルト17をはさんで感光体8の駆動プーリ6と対向する位置には転写電極18が設けられており、感光体8上のトナー像を中間転写ベルト17に静電転写することができるようになっている。
中間転写ベルト17の移動方向において、感光体8との転写位置を通過した位置には、中間転写ベルト17をはさんで、駆動プーリ14と対向して、転写電極の一例である転写ローラ26が、また、中間転写ベルト17の移動方向において、感光体8との転写位置の前方位置には、中間転写ベルト17に当接可能なブレード部材32を備えたベルトクリーニング装置35がそれぞれ配置されている。
転写ローラ26は、中間転写ベルト17上に重ね転写された画像を、紙又はプラスチックシートなどのシート材より成る記録媒体Pに転写するために用いられ、導電性金属からなる軸26aとこの軸26a上に形成された弾性外層26bを有している。かかる転写ローラ26は、二次転写前は中間転写ベルト17から離間され、二次転写の間中間転写ベルト17に接触するよう、接離装置25により作動される。そして、中間転写ベルト17と転写ローラ外層26b間の転写ニップに記録媒体Pが挟まれる。
ベルトクリーニング装置35は、トナー像の一括転写後に中間転写ベルト17上の残留トナーを掻き取ることで除去する。
クリーニング装置22は、感光体8に当接可能なブレード部材19を備えており、各色のトナーにより可視像処理されたトナー像が感光体8から中間転写ベルト17に転写された後、感光体8上に残留しているトナーを掻き取ることで除去する。
中間転写ベルト17に重畳転写されたトナー像が一括転写される記録媒体Pは、給紙装置21から繰り出されるようになっている。この給紙装置21は、カラープリンタ1の本体内に装備されている給紙カセット21aと、この給紙カセット21a内に収容されている記録媒体Pを1枚ずつ繰り出すことができる給送ローラ21bと、給紙カセット21aから一括転写に至る記録媒体Pの搬送路に沿って複数個所で搬送路をはさんで対向する一対の搬送ローラ21cと、中間転写ベルト17に達する前に給送タイミングを設定するレジストローラ21dとを備えている。給紙カセット21aから繰り出される記録媒体Pは、一対の搬送ローラ21cによりレジストローラ21dまで持ち来され、レジストローラ21dにより給送タイミングを設定されて中間転写ベルト17と転写ローラ26とが接触するニップ(二次転写部)に搬送される。
一括転写工程を経た記録媒体は、その進行方向前方に配置されている定着装置27を通り、このとき未定着トナー像が定着される。定着装置27は、記録媒体の搬送路をはさんで対向する加熱ローラ29及び加圧ローラ28で構成され、記録媒体Pのトナー像担持面を加熱ローラ29に押圧させてトナー像を融着させる。給紙カセット21aから繰り出される記録媒体Pは、中間転写ベルト17側を、画像が転写される面とされるので、定着装置27から排出された場合に頁順で排出される。
上記のクリーニング装置22及びベルトクリーニング装置35は、感光体8及び中間転写ベルト17への当接タイミングが予め決められており、そのタイミングにあった時点で感光体8あるいは中間転写ベルト17に当接して残留トナーを掻き取ることができるようになっている。この場合の当接時期として、感光体8側では1色のトナー像が中間転写ベルト17に転写された後であり、また中間転写ベルト17側では一括転写あるいは単一色のみの場合の転写が終了した後である。
なお、図1中、符号13は除電ランプからなるイレーサであり、クリーニング工程後の感光体8に残留している電荷を除電することにより所定の残留電位に維持するようになっている。また、符号20は給紙装置21の給送ローラ21bにより搬送される記録媒体Pの搬送路をはさんで対向する一対の搬送ガイトを示している。定着装置27から排出される記録媒体は、定着装置27の後方に位置する排出ローラ対を介して排出トレイ31に向け排出される。
図1に示したカラープリンタ1では、使用されている部材の保守点検あるいは交換の際に便宜を図るために、感光体8、中間転写ベルト17、ベルトクリーニング装置35、搬送ローラ対21cの一方、及び搬送ガイド20の一方が、中間転写ベルト17の従動プーリ15の回転軸を支点として揺動可能なユニット4として構成されている。また給紙カセット21aから繰り出される記録媒体Pが最初に対向する搬送ローラ21cの他方及び搬送ガイド20の他方は、給紙カセット21aの近傍に位置する支点軸2によりプリンタ1の本体フレーム5に対して揺動可能に支持されているプリンタ前側フレーム3に装備されている。ユニット4及びプリンタ前側フレーム3は、図1に示すように、感光体8が現像装置11及び黒現像器12と対向でき、しかも記録媒体Pの搬送経路を構成できる位置と、上記の対向関係及び搬送経路を開放することができる位置とに揺動変位することができ、各部材の保守点検や交換あるいは搬送経路中で詰っている記録媒体の取り出しが行えるようになっている。
図2は、二次転写部の部分拡大図である。ここに示した中間転写ベルト17はカーボンブラックなどが分散されたETFE,PVDFからなる単層であり、100mm/secで移動する。上記単層の膜厚は150ミクロン、表面抵抗率は1×107Ω/□乃至1×1010Ω/□で、表面抵抗率はJISK6911の抵抗率に準拠して求めたものである。中間転写ベルト17を支持する駆動プーリ14は薄いゴム層を有するローラから構成され、その直径は30cm、表面抵抗率は1×1010Ω/□以下であり、転写ローラ26の対向電極として用いられる。駆動プーリ14の表面の摩擦係数は、中間転写ベルト17のスリップを防止するために中間転写ベルト17よりも高く設定されている。
転写ローラ26は、導電性の軸26aと、イオン剤が添加された発泡体(例えばウレタン発泡体)より成る外層26bから構成され、その外層26bは、アスカーC硬度30°、体積抵抗率1×107Ωcm〜1×1010Ωcm、直径17mmである。この体積抵抗率はJISK6911の抵抗率に準拠して求めたものである。中間転写ベルト17と転写ローラ26間の接触荷重は500gf、中間転写ベルト17と転写ローラ26の接触幅(ニップ)Nは3mmある。
図に簡略化して示した接離装置25は、転写ローラ26を中間転写ベルト17から離間させ、または転写ローラ26へ近づけ接触させるために用いられるものであって、従来より公知のものである。
定電流電源42は、マイクロコンピュータ24を備えた制御装置23により制御され、転写ローラ26の軸26aにバイアスを印加する。
図2に示すように、トナー像を担持した中間転写ベルト17と転写ローラ26との間を記録媒体Pが通過するとき、定電流IPが定電流電源42から転写ローラ26と記録媒体Pが接触する位置へ流れる。これにより、中間転写ベルト17上の重ね合せトナー像が記録媒体Pの表面に二次転写される。
上述のように、本例の画像形成装置においては、イオン剤が添加された部材、すなわち外層26bを有する転写ローラ26より成る転写電極が用いられ、かかる転写ローラ26が、記録媒体Pを介して、トナー像を担持する像担持体の一例である中間転写ベルト17の表面に接触して、その中間転写ベルト17から記録媒体Pへトナー像を転写させるように構成されている。このようにイオン剤の添加された転写電極、すなわち転写ローラ26をタイプBの転写電極ないしは転写ローラと呼ぶ。
ここで、先にも説明したように、従来の画像形成装置においては前述のタイプAの転写ローラが用いられていたが、かかる転写ローラは、図4を参照して後にも説明するように、その転写ローラに印加される電圧の変動に応じて、当該転写ローラの抵抗値が大きく変化し、これによって記録媒体へのトナー像の転写不良が発生し、その画質が劣化する欠点を免れなかった。この欠点を除去すべく、イオン剤の添加された各種態様の転写ローラ、すなわちタイプBの転写ローラが従来より提案されているが、従来の提案に係るタイプBの転写ローラは、環境の変化に伴って当該転写ローラの電気抵抗が大きく変動したり、或いは低いコストで大量に生産することが困難であるという問題があった。
本例の画像形成装置においては、タイプBの転写ローラ26を用いているので、この転写ローラ26に印加される電圧値の変動に伴う当該転写ローラ26の抵抗の変化を効果的に抑えることができる。しかも、転写ローラ26に電流を供給する電源として、定電流電源42を用い、制御装置23によって、電源42からの電流の出力を目標の値に制御しているので、たとえ環境、特に湿度が大きく変動したとしても、電源42からの電流出力値は一定に維持される。従って、特開平8−220900号公報、同8−328351号公報又は同8−63021号公報に開示されている大量生産に向かない高価な転写ローラ以外の転写ローラ、すなわち環境の変化に影響されやすいタイプBの転写ローラを用いても、高品質な画像を形成することができる。勿論、上記公開公報に開示されたタイプBの転写ローラを用いることも可能である。
このように本例の画像形成装置においては、タイプBの転写ローラ26を用い、かつその転写ローラ26への電流の供給のために定電流電源42を用いることにより、高価で特殊、且つ安定した品質での大量生産が望めない転写ローラの使用や、不安定な電圧制御に頼ることなく、安定した電荷付与を確実にすることができ、さらにこの転写システムにより、製品の品質のばらつき(転写ローラの抵抗)や使用中の電源の出力変動による出力電圧の変動や環境特性の変動を制御することができる。その結果、良好な転写画像を得ることができる。
なお、転写ローラ26と記録媒体Pが接触する接触部を流れる電流の制御目標値は記録媒体の種類(サイズ、材質)、画像形成モードなどに応じて選択されるが、その値は、例えば10μA乃至80μA程度である。
以上のように、本例の画像形成装置は、トナー像を担持する像担持体と、イオン剤が添加された部材から構成され、上記像担持体に接触し、該像担持体から記録媒体へトナー像を転写させる転写電極の一例である転写ローラ26と、その転写電極に電流を供給する電源42と、当該電源42からの電流出力を目標の電流値に制御する制御手段の一例である制御装置23とを有している。
図1及び図2に示した例では、上記像担持体が中間転写ベルト17より成る中間転写体によって構成されているが、当該像担持体が感光体であってもよい。後者の画像形成装置には、中間転写体は設けられず、感光体上に形成されたトナー像が上記構成の転写電極によって、記録媒体に直に転写される。この場合も、前述の各作用効果をそのまま奏することができる。
また上述した例では、タイプBの転写電極を用いたが、転写電極を構成する部材に、イオン剤のほかに、導電性微粉子を分散した転写電極を用いることもできる。このような転写電極をタイプCと呼ぶことにする。例えば、転写ローラ26の外層26Bを、基材のゴムにイオン剤のほかに導電性微粒子を分散させた発泡体を用いるのである。
上述のタイプCの転写電極を用いた場合、その電極を構成する部材が、導電性微粒子よりもイオン剤による電気特性を強く有するように構成することが望ましく、これによって転写電極に印加される電圧の変動による当該転写電極の抵抗の変動を少なく抑え、高品質な画像を得ることが可能となる。このように、タイプCの転写ローラ26の電気特性に与える影響は、導電性微粒子よりもイオン剤がより強く影響されることが望ましく、タイプCの転写ローラ26は導電性微粒子の電圧依存性よりもややイオン剤の環境依存性に傾斜した電気特性を有するものであることが有利である。これは、イオン剤と導電性微粒子の配合比率で調整することができる。
ところで、図1及び図2に示した画像形成装置は、中間転写ベルト17上のカラートナー像を記録媒体Pに転写してカラー記録画像を得るものであるが、この転写のために前述のタイプAの転写ローラを用いると、先に説明したように、中間転写ベルト17上の高付着量部分のトナーと低付着量部分のトナーを共に効率よく記録媒体上に転写することが困難となる。本発明者は、その原因について各種実験を通して検討したところ、次の事実を明らかにすることができた。
先ず、適正な転写効率は電荷密度(供給電流)に依存する。一方、中間転写ベルト上の1つの画像の中で、トナーの付着量が少ない部分と多い部分の電気抵抗は異なり、中間転写ベルトと転写ローラとの間の電気抵抗がこれらの部分で互いに異なることになる。従って、トナーの付着量の少ない部分と多い部分とを流れる電流の値は相違し、転写ローラから中間転写ベルトに供給される電圧の値が部分的に大きく変動する。
このため、それ自身の電気抵抗が、印加電圧の大きさによって大きく変動するタイプAの転写ローラを用いると、その転写ローラの電気抵抗が部分的に大きく変動する。従って、1つの画像の中で、転写ローラによって中間転写ベルトに供給される電流値が部分的に変動し、その結果、最適な転写効率を得るための電荷密度が1つの画像の中で著しく相違し、像再現性、特に、トナーの付着量が少ない部分と多い部分の両者の高い転写効率を共に得ることが困難となる。
上述した事実を本発明者の行った実験を通してより具体的に明らかにする。
図3は、タイプA,B及びCの転写ローラ26に印加される電圧を測定するため測定装置を示す。この装置を用いて、転写ローラ26へ印加される電圧を以下のように測定した。
まず図3で示すように、金属板43上に転写ローラ26を載置し、このローラ26の両端にそれぞれF=500gfの荷重を与える。次に、電源42Aから、軸26aに所定の出力を印加し、軸26aと外側層26bの表面の間の電圧を電流計44で測定する。
図4は、図3に示したタイプA,B及びCの転写ローラの電気抵抗と、そのローラへの印加電圧Vaとの関係を示す。図4に示すように、タイプAの転写ローラは、印加電圧Vaの増加に伴って電気抵抗が著しく低下する電圧−抵抗特性を有する。一方、タイプBの転写ローラは、印加電圧の増加に対し電気抵抗がほぼ一定となる電圧−抵抗特性を有する。更に、タイプCの転写ローラは、タイプAとBの中間の電圧−抵抗特性を有する。
図5及び図6は、それぞれ、タイプA,Bの転写ローラの転写効率ηと供給電流Ipの関係を示す。図1に示したカラープリンタに、タイプA,Bの転写ローラをそれぞれ装着し転写効率を評価した。
転写率は以下の式より算出する。
η(%)=Ap/AI×100
Ap;二次転写後の記録媒体P上のトナー付着量
AI;二次転写前の中間転写ベルト17上のトナー付着量
実験例では、トナー付着率10%の1色モードとトナー付着率400%のフルカラーモードにおける二次転写後の記録媒体P上の転写率を評価し、この際の望ましい転写率は90%以上を基準とした。
次に、トナー付着率は以下の式より算出する。
γ(%)=Au/Ap×100
Ap;べた現像後の中間転写ベルト17上のトナー付着量
Au;実使用時における現像後の中間転写ベルト17上のトナー付着量
図5は、タイプAの転写ローラを用いたときの結果であり、この図から判るように、トナー付着率10%の場合の転写率特性はT1で、転写率90%以上の望ましい転写電流の範囲はレンジD1であり、トナー付着率400%の場合の転写率特性はT2で、転写率90%以上の望ましい転写電流の範囲はレンジD2である。
この実験より、本発明者は、トナーの付着量により大きく相違する上記レンジD1と上記レンジD2の存在を確認すると共に、双方のレンジをともに満足する転写電流範囲W1(実験機における最適な制御目標電流)が極めて狭いことを見出した。
通常、上記のような非常に狭い範囲内で転写電流Ipを精密に制御することは極めて難しく、仮にこのような超高精度が要求される制御を行うならば、非常に高価な電源と制御システムが必要となり、安価な汎用プリンタで使用する電源としてははなはだ実用的ではない。このような理由によって、タイプAの転写ローラを用いた場合、中間転写ベルト上の付着量の多い部分のトナーと、少ない部分のトナーを共に安定して効率よく記録媒体中に転写することが困難となっていたのである。
一方、図6は、タイプBの転写ローラを用いたときの結果を示しており、トナー付着率10%の場合の転写率特性はT3で、転写率が90%以上の好ましい転写電流の範囲はレンジD3であり、トナー付着率400%の場合の転写率特性はT4で、転写率90%以上の好ましい転写電流の範囲はレンジD4となった。
上記レンジD3と上記レンジD4の双方を満足する転写電流の範囲W2は、図4の範囲のW1に比べて極めて広く、この実験例では、その余裕度が10倍に達した。
本例の画像形成装置では、上述の如き結果の得られるタイプBの転写ローラ26が用いられている。タイプBの転写ローラ26の抵抗は供給電圧に依存せず、それによって、転写に望ましい電荷密度(供給電流)のレンジを極めて広く得ることが可能となると考えられ、その結果として、特に中間転写ベルト上のトナー付着量の少量な部分とトナー付着量の多い部分における、色の再現性が従来に比べて著しく改善され、安定した転写特性と低コストの転写部材で作動可能なカラー転写システムの提供を実現できる。
また、図示しないが、タイプCの転写ローラは、温度30℃、湿度90%の環境で望ましい転写電流の範囲としてW3(4μA)、温度10℃、湿度15%の環境で望ましい転写電流の範囲としてW4(1μA)が得られた。従って、転写電極として、タイプBの転写ローラの他に、タイプCの転写ローラを用いても上述したところと同様の優れた作用効果を奏することができる。
以上のように、本例の画像形成装置は、互いに異なる色のトナー像をその上に重ねた状態で、当該トナー像を担持する中間転写体より成る像担持体と、イオン剤が添加された部材から構成され、上記像担持体に接触し、その接触部間に記録媒体Pを通過させ、この記録媒体P上に、上述の重ねられたトナー像を、上記像担持体から記録媒体Pへ転写させる転写ローラ26より成る転写電極と、該転写電極に電流を供給する電源42とを有しており、かかる構成により、像担持体表面に付着したトナーの量が多い部分のトナーも、またこれが少ない部分のトナーも効率よく記録媒体上に二次転写することができ、高品質な画像を得ることができる。
そして、この場合も、転写電極を構成する部材に、イオン剤のほかに導電性微粒子が分散されていてもよく、その際、転写電極を構成する部材が、導電性微粒子よりも前記イオン剤による電気特性を強く有していることが好ましい。
さらに、この場合にも、前述のように、電源42からの電流出力を目標の電流値に制御する制御手段を設けることによって、環境の影響を受けることなく、高品質な画像を形成できる。
また、本発明者は、先の実験で得られた望ましい転写電流の範囲と、転写特性及び転写ローラの抵抗の関係を評価した。つまりどのような電気特性の転写ローラが先の実験で得られた望ましい転写電流を得られるか実験したわけである。
先ず、タイプA,B及びCの転写ローラの軸26aと外側層26bの表面の間の電圧Vaを、図3に示す測定装置で測定し、上記それぞれの転写ローラの電気抵抗をオームの法則より算出した。実験により得られた転写ローラの転写特性と電気抵抗、及び転写電流レンジを表1に示す。
次に、下記の式を使い、各転写ローラの軸から表面間の電圧抵抗を印加電圧の関係で示した。
△R(Va)=logR(Va)−logR(10×Va)
この式は、転写ローラの電圧抵抗が印加電圧にどの程度依存することを示すものである。通常、画像形成を使用される印加電圧Vaは10〜100Vであるため、実験は10,25,50,100Vの電圧を印加したときの各転写ローラの電気抵抗logR(Va)と電圧依存性△R(Va)を上記式より算出した。
また、表1のWは、図4乃至図6で示した望ましい転写電流範囲レンジW1,W2,W3を示す。また、表1のTは目視による転写特性を示し、ランク4が最高の転写特性(高品質)で、ランク1が最低の転写特性(低品質)である。さらに、表1の「コンディションH」は温度30℃、湿度90%、「コンディションL」は温度10℃、湿度15%の実験環境を示す。
実験によれば、タイプBの転写ローラは、トナー付着量が少量の場合から多量の場合までをカバーする極めて広い範囲内で優れた転写特性を有していることをあらためて確認することができる。
特に、この実験により、上記ΔR(Va)が0.5以下の特性を有する転写ローラ(タイプB又はC)が広い範囲で優れた転写特性を満足し得るということができる。すなわち、転写電極への印加電圧をVa、該転写電極を構成する材料の電気抵抗の電圧依存性をlogR(Va)−logR(10×Va)としたとき、その電圧依存性が0.5以下であることが有利である。
また、上記実験により、ΔR(Va)が0.3以下であると特に有利であることが判る。すなわち、転写電極を構成する上記材料の電気抵抗の電圧依存性が0.3以下であることが望ましい。
ところで、図1及び図2に示したカラー画像形成装置のように、中間転写体を有する画像形成装置においては、転写ローラ26を中間転写ベルト17に対して接離させる必要がある。このため、図1及び図2に示した画像形成装置は、前述のように、転写ローラ26より成る転写電極が、中間転写ベルト17より成る像担持体に対して接離自在に構成され、その転写電極を像担持体に対して接離自在とする接離装置25を有している。ところが、この形式の画像形成装置に、タイプAの転写ローラを用いると、先に説明したように、記録媒体の先端部への画像転写不良が発生するおそれがある。
本発明者は、その原因について検討したところ、転写ローラが中間転写ベルトに当接したとき、これらが接触する転写ニップ部で転写ローラの一部が圧縮変形し、この圧縮変形した部分の電気抵抗が低下することに基因していることを明らかにすることができた。上記電気抵抗の低下は、タイプAの転写ローラの分散された導電性微粒子間の距離が縮まり、電子が移動しやすくなるためと考えられ、その結果、転写ローラから中間転写ベルトに供給される電流が著しく上昇し、これによって画像転写不良が発生するのである。
但し、上昇した電流は、定電流電源を使用すれば、所定時間後に正常な状態に復帰するが、電流が上昇する期間に相当する記録媒体の先端に転写抜けが発生する。
これに対し、図1及び図2に示した画像形成装置では、タイプB又はCの転写ローラ26を用いているため、上述した不具合の発生を効果的に抑えることができる。
上述した事実を本発明者の行った実験を通して明らかにする。
図7は、タイプAとBの転写ローラの供給電流Ipのタイミングチャートであり、この例では、中間転写ベルトの周速度は100mm/secであり、供給電流は0.01秒毎に検出され、電源42からの電流出力値は目標値20μAに制御装置23で制御される。つまり、電流制御の間隔は0.01秒で、電流出力値の制御タイミングは記録媒体Pが1mm進む毎に行われる。
図7のLaは、タイプAの転写ローラが中間転写ベルトに接触した後の転写ローラから、転写ローラと中間転写ベルトの接触部へ流れる電流の変動を示している。タイプAの転写ローラを使用した場合、流れる電流値は、転写ローラが中間転写ベルトに接触した後、著しく上昇し、最初の電流出力制御期間内で100μAに達する。制御装置23は最初の電流制御期間後、電流を検知する時点で、上昇した電流値を制御目標値へ復帰させるため、電源42からの電流出力値を制御するが、上昇した電流値は、過度の電流上昇のため、第2の電流制御期間内で制御目標値へ復帰できない。それによって、画像転写不良がおきる。図7に示した例では、0.05秒後に上昇した電流が制御目標電流値に復帰し、記録媒体Pの先端から5mm、上記0.05秒に相当する距離の範囲内の位置の記録媒体P上に転写抜けが発生する。
通常、上記短期間内で転写電流を精密に制御することは極めて難しく、上記短期間内で転写電流を精密に制御するためには極めて高価な電源が必要となり実用的ではない。
一方、図7のLbはタイプBの転写ローラが中間転写ベルトに接触した後の転写ローラから転写ローラと中間転写ベルトの接触部へ流れる電流の変動を示している。タイプBの転写ローラを使用した場合、流れる電流値は、転写ローラの接離にかかわらずほぼ一定である。これは、タイプBの転写ローラの電気抵抗が転写ローラの圧縮と変形によってほとんど変化しないためだと考えられる。
尚、図7の例では転写電極としてタイプBの転写ローラを用いたが、タイプCの転写ローラを用いてもよい。
上述のように、タイプB,Cの転写ローラ26を用いることによって、転写ローラの圧縮変形によって起きる電気抵抗の変動の影響をなくし、安定した転写特性を維持できる画像形成装置を構成することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態例を説明したが、本発明の技術思想を利用するものであれば、すべて本発明に含まれるものであり、本発明は上記実施形態例に限定されないことは言うまでもない。例えば、感光体はベルト以外にドラム形状でもよく、また中間転写体は、ベルト以外に、ドラム、ローラなど各種形態を使用できる。さらに、転写電極としても、転写ローラ以外に、ブラシ、ブレード、ベルトなど各種形態を利用できる。転写ローラの外層を構成する材料は、EPDM、シリコーン、又はその他の材料からなる弾性ゴム又は中実ゴムに各種金属イオン塩、界面活性剤を添加したものでも良い。上記実施形態例で説明した転写ローラの各種の電気特性(体積抵抗率)、硬度、接触荷重、構造(単層、2層など)はこの実施形態例に限定されず、画像形成条件を満足するものであれば適宜選択しえるものである。