JP2005126603A - 生分解性を有する耐熱性架橋物およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 生分解性脂肪族ポリエステル100重量%にアリル基を有するモノマー1.2〜5重量%を混練し、この混練物を所要形状に成形した後、電離性放射線を照射して橋架け反応を生じさせて、上記生分解性脂肪族ポリエステルのゲル分率が75%以上95%以下に架橋させている。
【選択図】 なし
Description
生分解性高分子は、石油合成高分子に比べて、燃焼に伴う熱量が少なく自然環境での分解再合成のサイクルが保たれる等、生態系を含む地球環境に悪影響を与えない。その中でも、強度や加工性の点で、石油合成高分子に匹敵する特性をもつ脂肪族ポリエステル系の樹脂は、近年注目を浴びてきた素材である。特に、ポリ乳酸は、植物から供給されるデンプンから作られ、近年の大量生産によるコストダウンで他の生分解性高分子に比べて非常に安価になりつつある点から、現在その応用について多くの検討がなされている。
かつ、160℃と比較的高い融点に達するまでは溶融しないポリ乳酸の結晶部分が、大きな塊状を示さない微結晶であり、通常の結晶化度では結晶部分だけで全体の強度を支えるような構造になりにくいることも激しいヤング率変化の一因ではあるが、非結晶の部分が自由に動くようになる温度であるガラス転移点前後でその変化が起こることから、非結晶部分が60℃以上で殆ど分子間の相互作用を失うことに大きな原因があると言える。
なお、生分解性ポリマーについての耐熱性改善については、ポリ乳酸では放射線を照射しただけでは分解のみが生じ、有効な架橋が得られないことが知られている。
また、生分解性ポリマーに多官能性モノマーを添加する場合、通常、全体の5重量%以上の高濃度で添加されるが、高濃度に多官能性モノマーが添加された生分解性材料に放射線を照射しても100%反応させることは難しく、未反応モノマーがモノマーに残留して架橋効率が悪くなり、加熱により容易に変形し、耐熱性が悪くなる問題がある。
一般に、生分解性材料はその99%以上が微生物の働きにより分解されるものとして分類されるため、多官能性モノマーを用いる架橋技術を生分解性材料について適用する場合には、多官能性モノマ一の濃度によっては生分解性材料の範疇から外れることとなる。
即ち、特許文献1では、生分解性ポリマーにトリアリルイソシアヌレート等のフリーラジカルスカベンジャーを添加することで、加熱成形および放射線減菌した後の重量平均分子量低下が初期の30%以下に抑制される組成物が提供されている。
特許文献2では、生体内で利用されるコラーゲン、ゼラチン、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等の高分子にトリアリルイソシアヌレート等の多官能性トリアジン化合物を含有させ、放射線を照射することで減菌可能とした医用材料が提供されている。
特許文献1および2の組成物は、生分解ポリマーの熱成形時の熱履歴および放射線照射による減菌過程での生分解性ポリマーの分子量低下を抑制するため、多官能性モノマーを添加している。
しかしながら、トリアリルイソシアヌレートの添加量が0.2重量%であると、γ線を20kGy照射しても、本発明者の追試によれば、橋架け反応作用は殆ど発生せず、よって、ゲル分率は3%未満であり、よって、殆ど架橋構造とはならず、耐熱性を付与することはできない。
特許文献2では、生分解性ポリマーにトリアリルイソシアヌレート等からなる多官能性トリアジン化合物を0.01重量%から添加されることが記載され、実施例ではポリ乳酸にトリアリルイソシアヌレートを1重量%を添加し、25kGyで照射し、ゲル分率を67%としていることが開示されている。しかしながら、ゲル分率67%では、ポリ乳酸のガラス転移温度の60℃付近を越えた高温雰囲気下においては変形が生じやすく形状保持力が弱く、耐熱性が劣る点は改善されていない。
ゲル分率(%)=(ゲル分乾燥重量)/(初期乾燥重量)×100
特に、上記生分解性脂肪族ポリエステルとしてポリ乳酸を用い、上記アリル基を有するモノマーとしてトリアリルイソシアヌレートあるいはトリシアヌレートを用いることが好ましい。
上記のように、融点近傍の高温下において、伸び率を小さく抗張力を大として、変形しにくくしているため、高温時において形状保持力を備え、耐熱性を高めることができるため、工業上や実用品上において汎用しえるものとなる。
この電離性放射線としてγ線、エックス線、β線或いはα線などが使用できるが、工業的生産にはコバルト−60によるγ線照射や電子加速器による電子線が好ましい。
ついで、上記成形品に電離性放射線を照射して橋架け反応を発生させている。
この場合、生分解性材料にその融点以上の温度でアリル基を有するモノマーと化学開始剤とを加え、よく混練し、均一に混ぜた後、この混合物からなる成形品を、化学開始剤が熱分解する温度まで上げている。
本発明に使用することができる化学開始剤は、熱分解により過酸化ラジカルを生成する過酸化ジクミル、過酸化プロピオニトリル、過酸化ペンソイル、過酸化ジーt−ブチル、過酸化ジアシル、過酸化ベラルゴニル、過酸化ミリストイル、過安息香酸−t−ブチル、2,2’−アゾビスイソブチルニトリルなどの過酸化物触媒又はモノマーの重合を開始する触媒であればいずれでもよい.橋かけは、放射線照射の場合と同様、空気を除いた不活性雰蹄気下や真空下で行うのが好ましい。
実施形態の生分解性を有する耐熱性架橋物、ポリ乳酸100重量%にTAIC(トリアリルイソシアヌレート)を1.2〜5重量%で配合している。
上記ポリ乳酸を溶解した状態でTAICを添加して混練し、この混合物を180℃で加圧加熱成形(熱プレス)した後、約100℃/分で急冷して常温として所要厚さのシートとして成形している。
該シートを空気を除いた不活性雰囲気中で、加圧電圧2MeV、電流値1mAで電子線を20〜100kGyで照射し、TAICによりポリ乳酸の分子の架橋(橋架け)を進行させ、架橋終了状態で、ゲル分率を75%〜95%としている。
脂肪族ポリエステルとして、微粉末状のポリ乳酸(三井化学製 レイシアH−100J)を使用した。ポリ乳酸を略閉鎖型混練機ラボプラストミルにて、180℃で融解させ、透明になるまで十分溶融混練した中に、アリル系モノマーの1種であるTAIC(日本化成株式会社製)をポリ乳酸に対して1.2重量%添加し、回転数20rpmで10分間良く練って混合した。
その後、この混練物を180℃熱プレスにて1mm厚のシートを作製した。
上記シートを、空気を除いた不活性雰囲気下で電子加速器(加速電圧2MeV 電流量1mA)により電子線を20kGy〜100kGy照射し、得られた放射線架橋物を実施例1とした。
TAICの混合した濃度を1.5重量%、2重量%、3重量%、5重量%としたこと以外は実施例1と同様にした。
電子線照射量を0kGy〜10kGyとしたこと以外は、実施例1〜5と同様にして、それぞれ比較例1〜5とした。
(比較例6)
またTAICを混合しなかったことと、電子線照射量を0〜100kGyとしたこと以外は、実施例1と同様にして比較例6とした。
(比較例7、8)
TAICの混合した濃度を0.5重量%、1.0重量%としたこと以外は比較例6と同様にした。
各実施例および比較例について、(1)ゲル分率、および(2)高温引張試験の評価を行った。結果をそれぞれ図1、図2に示す。
各シートの所定量を200メッシュのステンレス金網に包み、クロロホルム液の中で48時間煮沸したのちに、クロロホルムに溶解したゾル分を除いて残ったゲル分を得る。50℃24時間で乾燥してゲル中のクロロホルムを除去してゲル分の乾燥重量を測定し、以下の式でゲル分率を計算する。
ゲル分率(%)=(ゲル分乾燥重量)/(初期乾燥重量)×100
幅1cm長さ10cmの長方形に、サンプルを成型したのちに、180℃恒温槽内でチャック間2cm、引張速度10mm/分にて引っ張り、破断強度と破断伸びを測定した。測定はサンプルが該恒温槽内で同温度に達したあとに行った。
破断強度(kg/cm2)=破断時の引張強度/(サンプル厚み×サンプル幅)
破断伸び(%)=(破断時のチャック間距離−2cm)/2cm×100
各実施例および比較例の電子線の照射量と、ゲル分率と、モノマー濃度の関係を図1に示す。
また、比較例1〜5ではTAIC濃度が1.2重量%以上でも、放射線照射量が10
kGy程度ではゲル分率が12〜67%であった。
実施例1〜5では、ゲル分率はいずれのTAIC濃度でも、電子線の照射量が30〜50kGyで最大となり、ゲル分率は75%を越え、実施例4、5では95%に達していた。また、照射量を20kGyとすると、ピークの約8割〜9割の効果であることがわかった。さらに、実施例1、2、3では照射量が増えると、徐々にゲル分率は減少していき、グラフには例示しないが、150kGyでピーク時のゲル分率の6〜5割、200kGyではもはや5割り以下の3割程度まで低下した。
まず、比較例1〜5のうち、電子線を照射しない0kGyとした比較例6は、融点160℃を越える180℃ではすべて溶融して柔らかくなって伸び、抗張力を発生することなく切れた。図3では破断伸びは便宜上グラフ外に無限大と表示したが、実際は測定不能であった。
本発明の目的が高温時の変形性を改善することにあることを考えると、伸びが小さく抗張力が大きいことが重要といえる。抗張力はゲル分率と同様に20kGyで高くなるが、ピークは30〜50kGyで100kGy以上では低下した。
Claims (7)
- 全重量の95重量%以上99重量%以下が生分解性脂肪族ポリエステルからなり、該生分解脂肪族ポリエステルのゲル分率(ゲル分乾燥重量/初期乾燥重量)が75%以上95%以下となる架橋構造としていることを特徴とする生分解性を有する耐熱性架橋物.
- 上記生分解性脂肪族ポリエステル100重量%に対して、アリル基を有するモノマーが1.2〜5重量%配合されている請求項1に記載の生分解性を有する耐熱性架橋物。
- 上記生分解性脂肪族ポリエステルはポリ乳酸で、上記アリル基を有するモノマーはトリアリルイソシアヌレートあるいはトリアリルシアヌレートからなる請求項1または請求項2に記載の生分解性を有する耐熱性架橋物。
- 融点が150℃〜200℃、融点近傍の高温下における抗張力20〜100g/mm2で且つ伸び率が100〜30%である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の生分解性を有する耐熱性架橋物。
- 生分解性脂肪族ポリエステル100重量%にアリル基を有するモノマー1.2〜3重量%を混練し、この混練物を所要形状に成形した後、電離性放射線を照射して橋架け反応を生じさせて、上記生分解性脂肪族ポリエステルのゲル分率が75%以上95%以下に架橋させていることを特徴とする生分解性を有する耐熱性架橋物の製造方法。
- 上記電離性放射線の照射量を20kGy以上100kGy以下としている請求項5に記載の生分解を有する耐熱性架橋物の製造方法。
- 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の耐熱性架橋物を製造している請求項5または請求項6に記載の生分解を有する耐熱性架橋物の製造方法。
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