JP4761105B2 - 生分解性ポリエステルの高効率橋かけ方法 - Google Patents

生分解性ポリエステルの高効率橋かけ方法 Download PDF

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本発明は、生分解性ポリエステルの高効率橋かけ方法とその橋かけ体に関する。より詳しくは、本発明は、生分解性ポリエステルの生分解性を損なうことなく、用途に応じて物性を改善することのできる、高効率橋かけ方法とその橋かけ体に関する。
日本国内で使用されているプラスチックは年間約1,400万トンに達し、そのおよそ60%にあたる約840万トンは廃棄プラスチックとして処理されている。この廃棄プラスチックは、通常、焼却と埋立てによる方法により処分されているが、プラスチック廃棄に関しては、種々の社会問題が懸念されている。例えば、焼却処理においては、熱や排出ガスによる地球温暖化や環境ホルモンとして有害なダイオキシン発生による食物・人体への影響が懸念されている一方、埋設処理においては、廃棄プラスチックが生分解することなく長い期間土壌中に滞留し、劣化とともに可塑剤等の添加物を流出する恐れがあり、また廃棄埋設処理地の確保等の問題も存在する。
これらの問題に対して、使用後に、環境に負荷を与えることなく容易に処理することができるプラスチック材料が求められている。デンプンやポリ乳酸等の生分解性高分子は、汎用の石油合成系高分子と比較して燃焼に伴う発熱量が小さく、また土壌中の微生物による分解・消化によりコンポスト化廃棄処理できる資源循環型の材料であることから、今後の用途開発が期待されている環境に優しい材料である。とりわけ、生分解性脂肪族ポリエステルは、強度などの物性において、石油合成系高分子に匹敵する特性を有することから、近年、注目を浴びている材料である。しかしながら、生分解性脂肪族ポリエステルは加工性や耐熱性が低いため、現在のところ実用化が遅れている。したがって、用途に必要とされる所望の特性を達成することができる生分解性脂肪族ポリエステルの改質方法に対する必要性が存在する。
プラスチックの有用な改質技術の一つとして、放射線処理により分子鎖間を橋かけし、耐熱性などの物性を改善する方法がある。ラジアルタイヤの加工性向上や、耐熱性電線の被覆材、発泡体の加工製造などに、放射線処理による橋かけ技術が使用されている。これらの材料には天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンなどが用いられている。特にポリエチレンやポリプロピレンを橋かけする技術は、耐熱性改善を主な目的として行われている。しかしながら、高分子単独での橋かけ改質技術においては、材料の種類や形態に依存するが、一般に、橋かけ反応が起こるのに大線量の照射を必要とする。
これに対し、本発明者らにより、生分解性高分子に橋かけ反応を促進させる多官能性モノマーを添加した場合に、比較的低線量の放射線照射により橋かけすることができる、耐熱性改善方法が開発されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、約3重量%の多官能性モノマーを添加し、室温において放射線照射する方法である。しかしながら、この方法によれば、多官能性モノマーとホモポリマーとが橋かけし、部分的に非生分解性となる場合があり、自然環境への残留や生体内環境中の使用を考慮すると用途によっては好ましくない。とりわけ、橋かけ材料をフィルム、容器、筐体などの構造体や部品などのプラスチック製品に応用し、使用後に土壌中に埋設するか又は炭酸ガスと水に分解するコンポスト化廃棄処理する場合、また、骨や腱を再生する足場の基材などの再生医療材料に応用し、生体内で吸収させることで生体組織細胞を再生させる場合は、特にすぐれた生分解性が必要となる。
したがって、元の材料の生分解性を損なうことなく、用途に応じて物性を改善することのできる、生分解性脂肪族ポリエステルの改質方法に対する必要性が存在し、従来の生分解性高分子を多官能性モノマーの存在下で橋かけする方法において、多官能性モノマーの量を減少することが必要である。
特開2003−313214号公報
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、生分解性ポリエステルの高効率橋かけ方法であって、生分解性ポリエステルの生分解性を損なうことなく、用途に応じて物性を改善することのできる、高効率橋かけ方法を提供すること、またその方法により橋かけされた橋かけ体を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の生分解性ポリエステルの高効率橋かけ方法は、1分子内に2以上の二重結合を有する多官能性モノマーを、少なくとも1種の生分解性ポリエステルに混練する工程と、前記混練物を前記生分解性ポリエステルのガラス転移温度以上で熱分解温度以下の温度に加熱しながら、放射線を照射する工程とを含むことを特徴とする。
これにより、生分解性ポリエステルの生分解性を損なうことなく、用途に応じて物性を改善することのできる、高効率橋かけ方法を提供することができる。
また、本発明の生分解性ポリエステルの高効率橋かけ方法は、1分子内に2以上の二重結合を有する多官能性モノマーを、少なくとも1種の生分解性ポリエステルに混練する工程と、前記混練物を加熱加圧下で成形したあと、急冷する工程と、前記成形した混練物を、前記生分解性ポリエステルのガラス転移温度以上で熱分解温度以下の温度に加熱しながら、放射線を照射する工程とを含むことを特徴とする。
これにより、生分解性ポリエステルの生分解性を損なうことなく、用途に応じて物性を改善することのできる高効率橋かけ方法であって、ポリエステル材料を所望の形態に成形できる方法を提供することができる。
本発明の生分解性ポリエステルの高効率橋かけ法では、放射線がγ線又は電子線であり、その線量が5〜50kGyであることが好ましい。
これにより、生分解性ポリエステルの橋かけに必要な照射線量を低減することができる。
本発明の生分解性ポリエステルの高効率橋かけ法では、放射線がγ線又は電子線であり、その線量が10kGyであることが好ましい。
これにより、生分解性ポリエステルの橋かけに必要な照射線量を低減することができる。
本発明の生分解性ポリエステルの高効率橋かけ法では、多官能性モノマーを0.1〜3重量%の濃度で混練することが好ましい。
これにより、多官能性モノマーの濃度を低減して、得られる橋かけ材料を高い生分解性を要する用途に応用することができる。
本発明の生分解性ポリエステルの高効率橋かけ法では、生分解性ポリエステルがポリ乳酸であることが好ましい。
これにより、得られる橋かけ材料を、大量に製造、廃棄される汎用プラスチック製品全般の代替材料として、又は、骨や腱などを再生する足場の基材などの再生医療材料として好適に使用することができる。
本発明の生分解性ポリエステルの高効率橋かけ法では、多官能性モノマーがトリアリルイソシアヌレート又はトリアリルシアヌレートであることが好ましい。
これにより、低いモノマー濃度でかつ低い線量で、高いゲル分率の橋かけ材料を得ることができる。
本発明によれば、生分解性ポリエステルの高効率橋かけ方法であって、生分解性ポリエステルの生分解性を損なうことなく、用途に応じて物性を改善することのできる、高効率橋かけ方法を提供すること、またその方法により橋かけされた橋かけ体を提供することができる。
以下、本発明の生分解性ポリエステルの高効率橋かけ方法について説明する。
ここで、本明細書中における「高効率」とは、低いモノマー濃度でかつ低い線量で、高い橋かけ度(ゲル分率)が得られることをいうものとする。
[生分解性ポリエステル]
本発明において使用することができる生分解性ポリエステルは、生分解性脂肪族ポリエステルであり、特に限定はないが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート・アジペート)共重合体、ポリ(ブチレンサクシネート・カーボネート)共重合体、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)とその共重合体、ポリ(ブチレンサクシネート・テレフタレート)共重合体等が挙げられる。これらは複数種をブレンドして用いてもよく、デンプン、セルロースなどの他の生分解性高分子とブレンドして用いてもよい。
本発明において使用することができる生分解性ポリエステルは、好ましくは、ポリ乳酸である。ポリ乳酸は、カーボンニュートラルである植物由来のプラスチックであるため、地球環境における生態系に及ぼす影響が極めて少なく、また生体適合性が良いことから、大量に製造、廃棄される汎用プラスチック製品全般の代替材料として、又は、骨や腱などを再生する足場の基材などの再生医療材料として好適に使用することができる。ポリ乳酸は、分子構造ユニットがL体、D体、又は混合体であってもよく、これらを単独あるいは2種類以上を混合したものを用いてもよい。
[多官能性モノマー]
本発明において使用することができる多官能性モノマーは、1分子内2以上の二重結合を有するモノマーである。このようなモノマーを使用することにより、このモノマーを含む生分解性ポリエステル混練物に放射線を照射した場合に生分解性ポリエステルの橋かけ効率を向上させることができる。
多官能性モノマーは、特に限定はないが、1,6ヘキサンジオールジアクリレートなどのアクリル系モノマー、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどのメタクリル系モノマー、アリル系モノマーなどが挙げられる。
多官能性モノマーは、非常に低濃度かつ低線量で高い橋かけ度が得られることから、アリル系モノマーが好ましい。アリル系モノマーとしては、特に限定はないが、トリアリルイソシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメタアリルシアヌレート、ジアリルアミン、トリアリルアミン、アリルアセテート、アリルベンゾエート、アリルジプロピルイソシアヌレート、アリルオクチルオキサレート、アリルプロピルフタレート、ビチルアリルマレート、ジアリルアジペート、ジアリルカーボネート、ジアリルフマレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルマロネート、ジアリルプロピルイソシアヌレート、ジアリルセパセート、ジアリルサクシネート、ジアリルテレフタレート、ジアリルタトレート、ジメタアリルフタレート、エチルアリルマレート、メチルアリルフマレート、メチルメタアリルマレート、ジアクリルクロレンテート、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。好ましいアリル系モノマーは、トリアリルイソシアヌレート(以下、TAICと記す)であり、加熱によってTAICに構造変換しうることから、トリアリルシアヌレート(以下、TACと記す)も実質的に橋かけ効果は同じである。
多官能性モノマーは、生分解性ポリエステルと多官能性モノマーの全体重量基準で、0.1〜3重量%、好ましくは、0.1〜1重量%、最も好ましくは、1重量%の濃度で使用する。
[放射線]
本発明において使用することができる放射線は、特に限定はないが、α線、β線、γ線、エックス線などの電離性放射線、又は紫外線が挙げられる。
橋かけ反応を開始させるためには、有機酸化物、アゾ化合物などのラジカル開始剤を添加したり、又は加熱したりしてもよいが、これらの方法によると、未反応多官能性モノマーの残留が危惧され、橋かけ反応を完了させる目的のためには放射線を使用するのが望ましく、電離性放射線が好ましい。
電離性放射線は、工業的生産のためコバルト−60からのγ線又は加速器による電子線が好ましい。電子加速器は、被照射試料の厚さを透過するエネルギーを有する電子線を発生できるものであればよく、被照射試料の厚さが1mm以上で厚い場合は、加速電圧1MeV以上の中エネルギー〜高エネルギーの電子加速器が好ましく、被照射試料の厚さが1mm未満で薄い場合は、1MeV以下の低エネルギー電子加速器であってもよい。
[混練工程]
本発明においては、混練工程により、生分解性ポリエステルに多官能性モノマーを混練する。この工程により、生分解性ポリエステルと多官能性モノマーを均一に分散・混合させることができ、橋かけを効率よく行うことができる。混練は、当技術分野において既知のいずれかの手段により行うことができるが、好ましくは、温度保持機能を有するミキサーを使用する。
混練温度は、特に限定はないが、生分解性ポリエステルが軟化する温度が好ましい。生分解性ポリエステルが軟化する温度で混練することにより、多官能性モノマーとの分散・混合の程度を高めることができる。
本発明の一の好ましい態様においては、生分解性ポリエステルと多官能性モノマーとを予め良く混合し、混合物を生分解性ポリエステルが軟化する温度まで加熱したミキサー内で溶融ブレンドするか、軟化する温度まで加熱した生分解性ポリエステルに多官能性モノマーを添加して、溶融ブレンドする。
本発明の別の好ましい態様においては、生分解性ポリエステルが溶解するクロロホルム等のような溶媒に、生分解性ポリエステルと多官能性モノマーとを溶解・分散して混合する。
混練後に得られる混練物は、加熱等により軟化させて所望の形状に成形してもよい。
[成形工程]
上記の混練工程についで、場合により、成形工程において、混練物を加熱加圧下で成形したあと、急冷する。これにより、ポリエステル材料を所望の形態に成形することができる。
成形は当技術分野において既知のいずれかの手段により行うことができる。成形の際の加熱加圧条件は、特に限定はなく、生分解性ポリエステル及び多官能性モノマーの性質と、成形条件とに依存して適宜決定することができる。
急冷は、例えば、水冷、氷冷、風冷などの当技術分野において既知のいずれかの手段により行うことができる。成形したあと混練物を再結晶化温度以下に急冷することにより、非結晶部分を保持することができ、橋かけ効率を高めることができる。
本発明の一態様においては、ポリ乳酸とトリアリルイソシアヌレートの混練物を、ポリ乳酸の融点である160℃〜200℃の温度で加圧してフィルム状に成形したあと、60℃以下に水冷する。
[放射線照射工程]
上記の混練工程、又は場合により成形工程についで、放射線照射工程により、所定の温度に加熱しながら混練物に放射線を照射する。多官能性モノマーを含む生分解性ポリエステル混練物に放射線を照射することにより、橋かけを行うことができる。また、所定の温度で放射線照射することにより、従来の方法と比較して、低いモノマー濃度でかつ低い線量で、高い橋かけ度を達成することができる。
照射温度は、特に限定はないが、生分解性ポリエステルのガラス転移温度以上で熱分解温度以下であることが好ましい。ガラス転移温度以上の温度では、生分解性ポリエステルのミクロブラウン運動が活発であり、橋かけが起こりやすいことから望ましく、融点より高い温度では、生分解性ポリエステルの構造形態自体が変化し、非結晶状態が多くなる場合は望ましいが、ポリ乳酸の場合は熱分解しやすいことから望ましくない。熱分解温度以上の高い温度ではポリエステル自体が分解してしまうので望ましくない。
照射温度は、具体的には、生分解性ポリエステルの種類に依存して決定することができる。
生分解性ポリエステルとしてポリ乳酸(ガラス転移温度:60℃、再結晶化温度:100℃)を用いる場合、照射温度は、特に限定はないが、25℃〜170℃であり、好ましくは、70℃〜100℃であり、最も好ましくは、70℃である。放射線による高分子の改質では、一般に、高分子中の非結晶部分で橋かけ反応が起こりやすい。再結晶化温度付近の温度では、ポリ乳酸の非結晶部分の結晶化が進行し、多官能性モノマーと反応し得る部分が少なくなる。したがって、高い橋かけ度を達成するためには、照射温度が再結晶化温度以下であることが好ましい。
ポリカプロラクトン(ガラス転移温度:−65℃、融点:60℃)を用いる場合、照射温度は、特に限定はないが、−65℃〜60℃であり、好ましくは、45℃〜60℃であり、最も好ましくは、融点以上の温度でポリカプロラクトンを溶融することを前提に45℃である。
ポリブチレンサクシネート(ガラス転移温度:−32℃、熱変形温度:95℃、融点:115℃)を用いる場合、照射温度は、特に限定はないが、−32℃〜120℃であり、好ましくは、25℃〜120℃であり、最も好ましくは、95〜120℃である。
照射線量は、特に限定はないが、1〜200kGyであり、好ましくは、5〜50kGyであり、最も好ましくは、10kGyである。本発明においては、従来の方法において少なくとも50kGy必要としていた線量を、50kGy以下に低減することができることから有意である。また、線量が200kGyを超えると、ポリ乳酸などの放射線分解型のポリエステルが分解することから好ましくない。
照射の際、周囲雰囲気中の酸素による橋かけへの影響は殆どないが、橋かけ密度の低下を抑制するため、被照射試料を含む照射領域を、例えば、ポリエステルフィルムなどの適する手段で真空シールしてから照射するのが望ましい。
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1−4)
ポリ乳酸(微粉末状の三井化学製ポリ乳酸レイシアH−100)を40g秤量し、ラボプラストミル((株)東洋精機)により180℃で融解させ、アリル系モノマーの1種であるTAICをポリ乳酸に対して1重量%添加し、10分間溶融状態で混練した。その混合物を細かくペレット状に切断して、ガラスアンプル管に入れ、真空ラインを用いて、10-3Paになるまで減圧して封管した。アンプル管をブロックヒータで所定温度に加熱し、温度を保持しながら、コバルト−60を線源としたγ線を、それぞれ、5kGy、10kGy、20kGy、30kGy、50kGy照射し、橋かけ反応を行った。照射時の所定温度は、25℃(室温)、70℃、100℃、170℃とし、それぞれ実施例1〜4とした。
(実施例5−6)
TAICの濃度を0.5重量%、1.0重量%、1.5重量%、2.0重量%、3.0重量%とし、照射時温度を70℃、100℃とした以外は、上記の実施例1−4と同様にして橋かけ反応を行った。照射時温度70℃、100℃をそれぞれ実施例5、6とした。
(比較例1−2)
TAICを混合しないで、照射時の温度を25℃、70℃にした以外は、上記の実施例1−4と同様にして橋かけ反応を行った。照射時温度25℃、70℃をそれぞれ比較例1、2とした。
(実施例7)
上記の実施例1−4と同様にポリ乳酸とTAICを混合した後、同じ温度(180℃)で加熱加圧プレス機を用いて成形し、直ちに急冷してポリ乳酸の非結晶状態を保持した0.5mm厚のシートを作成した。シートは、温度制御ができる照射容器で、70℃に加熱し、窒素雰囲気中、温度を保持しながら、コッククロフトワルトン型電子加速器(加速電圧2MeV、電流0.1mA)を用いて、それぞれ、13.4kGy、26.8kGy、40.2kGy、67kGyの電子線を照射し、橋かけ反応を行った。
(実施例8−9)
TAICの濃度を0.5重量%、1.0重量%、2.0重量%、3.0重量%とし、照射線量を26.8kGy、67kGyとした以外は実施例7と同様にして橋かけ反応を行った。照射線量26.8kGy、67kGyを、それぞれ実施例8、9とした。
(比較例3−4)
TAICを混合しないで、照射時の温度を25℃、70℃とした以外は、実施例7と同様にして橋かけ反応を行った。照射時温度25℃、70℃をそれぞれ比較例3、4とした。
(実施例及び比較例の評価)
各実施例及び比較例により得られた橋かけ材料について、下記のゲル分率評価(1)とシートの力学的性質評価(2)を行った。
橋かけ度の目安となるゲル分率は次のようにして求めた。
(1)ゲル分率評価
得られた橋かけ材料の所定量を正確に測定し、200メッシュのステンレス製の金網で包んだ。次いで、これをクロロホルム溶媒中で48時間浸漬又は24時間煮沸することにより、橋かけしていない溶解成分(ゾル分)をクロロホルム溶媒側に移行させ、橋かけした不溶解成分(ゲル分)のみを金網中に残存させた。付着しているゾル分を除去するため、ゲルの入った金網を冷クロロホルムで洗浄し、更に多量のメタノールで洗浄した。次いで、50℃の真空乾燥器中で24時間以上恒量になるまで乾燥した。ゲル分率は次式により求められる。
ゲル分率(%)=(ゲル分乾燥重量)/(初期乾燥重量)×100
上記方法で得られたゲル分率を図1、2、3、4に示す。図1は実施例1−4及び比較例1−2の結果を、図2は実施例5−6の結果を、図3は実施例7の結果を、図4は実施例8の結果を示している。
図1に示すように、比較例1−2では、γ線照射時の温度と線量に関わらず、ゲル分率が得られず、橋かけしなかった。実施例1のγ線照射時の温度が室温である25℃の場合は、30kGyまで照射しても橋かけせず、50kGy照射すると、ゲル分率が42%までしか上がらなかった。実施例2のガラス転移温度近傍である70℃の場合は、室温時と比べて5kGyという低線量で、ゲル分率が急激に約45%と増加し、10kGyでゲル分率が70%に到達した。更に高い線量である20kGy、30kGy、50kGyと照射すると、ゲル分率が約80%になり、非常に効率良く橋かけし、透明性を保持した。実施例3の結晶化温度である100℃の場合は、室温時と比較すると橋かけしやすいが、70℃と比較すると橋かけしづらく、5kGyでゲル分率が約29%、10kGyで約42%、20kGyで約48%となり、白濁していた。また、実施例4の融点以上である170℃の場合、どの線量でもゲル分率が得られず、橋かけしなかった。
図2に示すように、照射時の温度とTAIC濃度の関係では、γ線の照射線量を10kGyと一定にして行った結果、実施例5の70℃の場合は、TAIC濃度が1重量%までにゲル分率が70%に達し、それ以上の濃度でもゲル分率がほぼ55〜69%になり、透明性を保持していた。また、実施例6の100℃の場合は、図1と同様にどの濃度でも70℃の時よりゲル分率が低くなる傾向が見られ、白濁していた。100℃で再結晶化が進み、ポリ乳酸とTAICが混ざりにくくなるため、濃度が濃くなるにつれ、ゲル分率が増加する傾向が見られた。
図3に示すように、比較例3、4の25℃、70℃では電子線照射しても線量に関わらず、ゲル分率が得られず、橋かけしなかった。実施例7の70℃で照射した場合、急激に橋かけして、13.4kGyでゲル分率が約47%になり、26.8kGyで約66%、40.2kGy以上ではゲル分率が約70%に到達し、透明性は保持していた。
図4に示すように、電子線の照射線量を26.8kGyに一定にした実施例8の場合、TAICの濃度が増加するにつれて、ゲル分率も増加する傾向が見られた。
(2)シートの力学的性質評価
実施例7−9及び比較例2、3で作成したシートをJIS規格1(1/2)号ダンベル型に打ち抜き、TOYO BALDWIN社製TENSILONを用いて、引張速度を2mm/minで、標線間距離を25mmでの条件で測定した。5回測定した平均値を測定値にした。
上記の方法で得た破断伸度の結果を表1及び引張強度の結果を表2に示す。
Figure 0004761105
Figure 0004761105
上記の力学的性質の結果を、未照射の試料を100%としたときの変化率としてそれぞれ図5、6に示す。実施例7−9で作成した70℃の温度で照射したシートは、比較例3−4と比較して、40kGyまで未照射試料より破断伸度では約20〜80%向上し、引張強度で約20%向上した。
本発明の高効率橋かけした生分解性ポリエステル材料は、フィルム、容器、筐体などの構造体や部品などのプラスチック製品が利用される分野において、使用後の廃棄処理問題の解決を図るため、土壌中及びコンポスト化により炭酸ガスと水に分解する生分解性製品あるいは部品として利用されるものや、骨や腱などを再生する足場の基材などに使用される再生医療材料分野において、使用前の加熱滅菌に耐え得る耐熱性などを有する高分子製の生体吸収性再生医療用材料として利用されるものへの応用が期待できる。特に、本発明のポリ乳酸材料は、植物由来プラスチックであるため、農業用マルチフィルムや包装材等の汎用プラスチック製品の代替品としても適用可能である。
本発明の実施例1〜4及び比較例1〜2についてのγ線照射時温度の違いによる線量とゲル分率の関係を示すグラフである。 本発明の実施例5〜6についてのγ線照射時温度70℃、10kGy照射におけるTAIC濃度とゲル分率の関係を示すグラフである。 本発明の実施例7についての電子線照射時温度70℃における線量とゲル分率の関係を示すグラフである。 本発明の実施例8〜9についての電子線照射時温度70、100℃、26.8kGy照射におけるTAIC濃度とゲル分率の関係を示すグラフである。 本発明の実施例7〜9及び比較例3〜4についての電子線照射したポリ乳酸シートの照射線量とシートの破断伸度の関係を示すグラフである。 本発明の実施例7〜9及び比較例3〜4についての電子線照射したポリ乳酸シートの照射線量とシートの引張強度の関係を示すグラフである。

Claims (2)

  1. ポリ乳酸に、トリアリルイソシアヌレート又はトリアリルシアヌレートを0.5〜3重量%の含有量となるように添加して混練する工程と、
    ポリ乳酸とトリアリルイソシアヌレート又はトリアリルシアヌレートとの混練物に対して、70℃にて、5〜50kGyの線量でγ線又は電子線を照射する工程と、
    を含み、引張速度2mm/min、標線間距離25mmで測定した場合に、破断伸度が2.72%以上3.69%以下、引張強度が65.7MPa以上71.2MPa以下である橋かけ材料を製造する方法。
  2. γ線又は電子線の照射線量が10kGyである、請求項1に記載の方法。
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