JP2005126304A - 工具用部材及び工具 - Google Patents

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英喜 加藤
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Abstract

【課題】 熱的、化学的に過酷な切削な切削加工条件でも、耐摩耗性等の良好な性能を発揮する工具用部材及び工具を提供すること。
【解決手段】 切削インサート(1)は、略直方体の形状であり、窒化珪素からなる略直方体の基体(3)の表面に、被覆層(5)が形成されたものである。この基体(3)の表面のうち、厚み方向の両側の表面(すくい面)以外の表面、即ち四方の側面(逃げ面)は、窒化珪素粒子が針状に成長した焼結肌となっている。つまり、基体(3)の側面の表面組織は、主として長尺の針状となった窒化珪素粒子により構成されている。そのため、この針状の窒化珪素粒子の存在により、基体(3)の表面の凹凸が深くなり、表面の面粗さRzは2μm以上となっている。被覆層(5)は、基体(3)の表面全体を覆うように、2〜10μmの厚みで形成されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、例えばスローアウェイチップ、エンドミル、ドリル等の工具に用いられる工具用部材及びその工具用部材を用いた工具に関する。
従来より、スローアウェイチップ(切削インサート)やドリル等の工具として、窒化珪素からなる基体の表面に、Al23やTiCからなる被覆層を複数層設けたセラミック工具(窒化珪素工具)が知られている(引用文献1、2参照)。
この被覆層は、耐摩耗性や耐熱性を向上させる目的で設けられるものであるが、引用文献1、2の技術では、熱による残留応力によって生じる内部歪を十分に解消できないという問題があった。
つまり、この種の窒化珪素工具は、製造時或いは使用時に高い温度となるので、被覆層を構成する各層間の熱膨張係数又は窒化珪素の基体と各層との熱膨張係数の差によって、特に高温の状態から常温の状態に変化する際に、各層に大きな残留応力が加わることがあり、それによって内部歪が生じることがあった。そして、その内部歪が大きな時には、場合によっては、層の剥離等の不具合が発生するという問題があった。
この対策として、基体の表面にAlON層を設け、さらに中間層として、AlON、TiC、TiN、及びTiCNを設けた後、最外層にTiNを被覆するという層構成が提案されている。これは、被覆層の密着性を維持しつつ、耐摩耗性を向上させる目的でなされたものである(引用文献3参照)。
特公平3−49681号公報 (第1頁) 特開平6−246511号公報 (第2頁) 特開平10−212183号公報 (第2頁、第2図)
しかしながら、近年では、更なる省力化や高能率加工の要求が著しく、特に熱的、化学的に安定な性能を発揮する切削工具が望まれている。
そのため、従来からの方法である被覆層を厚くする手法を採用することにより、若干は改善されていたが、窒化珪素基体の場合、基体と被覆層の間の熱膨張係数の差や、基体と被覆層の化学的親和性が乏しいという特性があるため、密着性が低いという問題があった。つまり、従来の窒化珪素工具では、熱的、化学的に過酷な切削条件では、満足のいく性能が得られなかった。
特に、被覆層を膜厚を厚くする場合(特に膜厚が10μm以上の場合)には、残留応力の影響で、密着性が低下し、最悪の場合、被覆層が剥離してしまうという問題があった。
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、特に熱的、化学的に過酷な切削加工条件でも、耐摩耗性等の良好な性能を発揮する工具用部材及び工具を提供することにある。
(1)請求項1の発明は、窒化珪素を主成分とする基体の表面に、被覆層を有する工具用部材において、前記基体の表面組織は窒化珪素粒子が針状に成長した焼結肌を有し、前記被覆層の厚みが2〜10μmであることを特徴とする工具用部材を要旨とする。
本発明では、基体の表面組織が、窒化珪素粒子が針状に成長した焼結肌であり、その表面には深い凹凸が無数に形成されているので、2〜10μmの厚みのある被覆層が強固に基体表面に密着している。
つまり、本発明の工具用部材は、被覆層との密着性が高く、よって被覆層の厚みを十分に確保した場合でも、製造時や使用時等に剥離が発生することなく、使用時おける逃げ面摩耗量も少なく、耐摩耗性及び耐熱性に優れている。
従って、従来みられていた様な厚膜被覆による密着性の低下を招くことがなく、また、使用時に耐摩耗性を維持できるため、熱的及び機械的に高負荷のかかる切削加工の条件においても、安定した性能を発揮し、長寿命の切削加工が可能になるという顕著な効果を奏する。
尚、ここで、被覆層の材料としては、通常、耐摩耗性や耐熱性を向上させる目的で、例えば請求項6に示す材料を採用することができる(以下同様)。
また、針状に成長した窒化珪素粒子とは、針状の形状の窒化珪素結晶である(以下同様)。更に、前記被覆層の厚みは、平均の厚みである(以下同様)。
(2)請求項2の発明は、前記基体の表面組織の焼結肌の面粗さRzが2μm以上であることを特徴とする前記請求項1に記載の工具用部材を要旨とする。
本発明の工具用部材は、基体の表面組織の焼結肌の面粗さRzが2μm以上であり、その表面には十分に深い凹凸が無数に形成されているので、基体と被覆層との密着性が高い。よって、耐摩耗性が高く、熱的及び機械的に高負荷のかかる切削加工の条件においても、安定した性能を発揮し、長寿命の切削加工が可能になる。
(3)請求項3の発明は、窒化珪素を主成分とする基体の表面に、被覆層を有する工具用部材において、前記基体の表面組織は窒化珪素粒子が針状に成長した焼結肌を有し、前記針状に成長した窒化珪素粒子の平均アスペクト比が5以上であることを特徴とする工具用部材を要旨とする。
本発明では、基体の表面組織が、窒化珪素粒子が針状に成長した焼結肌であり、しかも、針状の窒化珪素粒子の平均アスペクト比が5以上であるので、被覆層が強固に基体表面に密着している。
つまり、本発明の工具用部材では、その基体の表面組織は、長尺の窒化珪素粒子が組み合わされた構造をしているので、その表面に多数の深い凹凸や隙間が形成されている。よって、表面組織上に形成された被覆層の材料は、表面組織内に入り込んだ状態となり、基体と被覆層との密着性が高くなる。そのため、被覆層の厚みを十分に確保した場合でも、製造時や使用時等に剥離が発生することなく、使用時おける逃げ面摩耗量も少なく、耐摩耗性及び耐熱性に優れている。
従って、従来みられていた様な厚膜被覆による密着性の低下を招くことない。また、使用時に耐摩耗性を維持できるため、熱的及び機械的に高負荷のかかる切削加工の条件においても、安定した性能を発揮し、長寿命の切削加工が可能になるという顕著な効果を奏する。
尚、平均アスペクト比とは、針状の窒化珪素粒子の長手方向(軸方向)の長さAと短手方向(軸方向と垂直)の長さ(B)との比A/Bの平均値である。
また、アスペクト比を求める場合には、例えば顕微鏡にて得られる所定の視野の範囲における所定個の針状の窒化珪素粒子の寸法を測定し、その寸法から個々の針状の窒化珪素粒子のアスペクト比を求め、その平均を算出すればよい。
(4)請求項4の発明は、前記被覆層の厚みが10μm以上であることを特徴とする前記請求項3に記載の工具用部材を要旨とする。
本発明の工具用部材は、被覆層の厚みが10μm以上と十分の厚みを備えているので、耐摩耗性や耐熱性に優れている。
(5)請求項5の発明は、窒化珪素を主成分とする基体の表面に、被覆層を有する工具用部材において、前記基体の表面組織は窒化珪素粒子が針状に成長した焼結肌を有し、前記被覆層の材料が前記基体の表面組織に含浸して前記被覆層の材料及び前記針状に成長した窒化珪素粒子からなる複合材料層を形成していることを特徴とする工具用部材を要旨とする。
本発明では、基体の表面組織が、窒化珪素粒子が針状に成長した焼結肌であり、しかも、被覆層の材料が基材の表面組織に含浸して複合材料層を形成しているので、被覆層が強固に基体表面に密着している。
つまり、本発明の工具用部材では、基体と被覆層との間に複合材料層が形成されているので、基体と被覆層との密着性が高い。よって被覆層の厚みを十分に確保した場合でも、製造時や使用時等に剥離が発生することなく、使用時おける逃げ面摩耗量も少なく、耐摩耗性及び耐熱性に優れている。
従って、従来みられていた様な厚膜被覆による密着性の低下を招くことない。また、使用時に耐摩耗性を維持できるため、熱的及び機械的に高負荷のかかる切削加工の条件においても、安定した性能を発揮し、長寿命の切削加工が可能になるという顕著な効果を奏する。
尚、複合材料層とは、基材と被覆層との境界部分において、針状の窒化珪素粒子の平均アスペクト比が5以上(好ましくは6以上)であり、窒化珪素粒子の割合が30〜70%の範囲にあり、基材の材料と被覆層の材料とが実質的に一体となっている層のことである。
(6)請求項6の発明は、前記被覆層が、Al及び/又はTiの酸化物、窒化物、炭化物、硼化物、及びそれらの相互固溶体の少なくとも1種からなる単層又は複数層からなることを特徴とする前記請求項1〜5のいずれかに記載の工具用部材を要旨とする。
本発明は、被覆層を構成する好適な材料を例示したものである。つまり、Al及び/又はTiの酸化物、Al及び/又はTiの窒化物、Al及び/又はTiの炭化物、Al及び/又はTiの硼化物、或いは、それらの材料が固溶した相互固溶体が挙げられる。
例えば、この被覆層を構成する材料としては、Al23、TiC、TiN、AlON、TiCN、TiB2、TiAlNなどが挙げられる。
(7)請求項7の発明は、前記被覆層が、化学蒸着により形成されたものであることを特徴とする前記請求項1〜6のいずれかに記載の工具用部材を要旨とする。
本発明は、好適な被覆層を例示したものである。つまり、いわゆる熱CVD法により形成される被覆層は、多数の深い凹凸を有する基体の表面組織の隙間に十分に被覆層の材料が入り込んで、基体と被覆層とを強固に接合することができる。
(8)請求項8の発明は、前記請求項1〜7のいずれかに記載の工具用部材を用いたことを特徴とする工具を要旨とする。
本発明は、上述した工具用部材を用いた切削工具等の工具を例示したものである。この工具としては、例えば切削インサート、エンドミル、ドリル等があげられる。
尚、前記被覆層を構成する材料は、硬質材料と称される。
次に、本発明の最良の形態の例(実施例)について説明する。
ここでは、ホルダに着脱可能に装着される表面被覆窒化珪素工具であるスローアウェイチップ(切削インサート)を例に挙げて説明する。
a)まず、本実施例の切削インサートの構成を説明する。
図1に一部破断して示す様に、本実施例の切削インサート1は、略直方体の形状(例えばISO規格のSNMN120408)であり、窒化珪素(Si34)からなる略直方体の基体3の表面に、被覆層5が形成されたものである。尚、この切削インサート1は、通常、ホルダー7の角部に図示しない固定具等を用いて固定されて切削に用いられる。
前記基体(母材)3は、例えばSi34;96重量%、Al23;1重量%、MgO;0.5重量%、Yb23;2重量%の窒化珪素質焼結体であり、その結晶粒径は平均1μm以下(例えば0.5μm)である。
この基体3の表面のうち、厚み方向の両側(すくい面側)は、厚み方向の寸法精度を確保するために、研磨により例えば面粗さRz:1μm以下に加工されている。一方、すくい面以外の表面、即ち四方の側面(逃げ面)は、窒化珪素粒子が針状に成長した焼結肌となっている。
つまり、基体3の側面の表面組織は、主として長尺の針状となった窒化珪素粒子、即ち窒化珪素粒子が針状に結晶成長したもの(以下針状窒化珪素粒子とも記す)により構成されている。そのため、この針状窒化珪素粒子の存在により、基体3の表面の凹凸が深くなっており、表面の面粗さRzは2μm以上となっている。
前記被覆層5は、基体3の表面全体を覆うように、2〜10μmの厚みで形成されている。この被覆層5は、例えばTiC層等からなる単層(或いはAl23層−TiC層−TiN層からなる複数層)などにより構成されている。
この様に、本実施例の切削インサート1は、基体3のすくい面側のみを研磨し、その他の表面は窒化珪素粒子が針状になった焼結肌として、基体3の表面全体に被覆層5を形成したものであるので、後述する実験例に示されている様に、被覆層5との密着性が高い。よって、被覆層5の厚みを十分に確保した場合でも、製造時や使用時等に被覆層5の剥離が発生することなく、使用時おける逃げ面摩耗量も少なく、耐摩耗性及び耐熱性に優れている。
従って、従来みられていた様な厚膜被覆による密着性の低下を招くことない。また、使用時に耐摩耗性を維持できるため、熱的及び機械的に高負荷のかかる切削加工の条件においても、安定した性能を発揮し、長寿命の切削加工が可能になる。
b)次に、本実施例の切削インサート1の製造方法を説明する。尚、ここでは、後述する実験例に供する試料の製造方法として説明する。
まず、基体3の製造方法を説明する。
原料粉末としては、主成分として、平均粒径0.5μmのα型窒化珪素粉末(酸素量:1.0重量%)と、焼結助剤として、平均粒径1μm以下のAl23、MgO、Y23、ZrO2、Yb23の各種粉末とを使用する。
そして、下記表1に示す組成となる様に、各種原料粉末を秤量し、アルコールを溶媒として、ボールミルにて、湿式混合粉砕を24時間行った。
次に、乾燥後、プレス助剤としてパラフィンを添加し、1ton/cm2以上の圧力で、コールドプレスすることにより、基体3となる成形体を得た。
次に、脱脂処理後、この成形体を、窒素ガス雰囲気下にて、下記表1の焼成条件、例えば1800〜1900℃の温度で、4時間焼成することにより、理論密度比99%以上の緻密な焼結体を得た。また、必要に応じて、1600℃×2時間、1000気圧(窒素ガス)中でHIP処理を行う。
そして、この様にして得られた焼成体を、ISO規格のSNMN120408の形状にすくい面のみ研磨加工した。
次に、作成した基体を、周知のCVD装置にセットした。そして、このCVD装置を用い、化学気相蒸着法(熱CVD法)により被覆層5を形成した。
具体的には、下記表2に示す条件で、TiC層、TiN層、Al23層の被覆層5を形成した。この被覆層の厚みは、CVDを実施する時間により調節した。
尚、実験例に供する試料としては、下記表3に示す様に、TiC層、TiN層、又はAl23層の各層単独、及びTiC層−TiN層−Al23層の複数層を有する切削インサート1を製造した。
これにより、上述した実施例の切削インサート1(従って実験に供する試料の切削インサート)を完成した。
(実験例1)
次に、本発明の効果を確認した実験例1について説明する。
本実験例では、下記表3に示す様に、前記実施例1の製造方法にて製造した本発明(請求項1)の範囲の試料(試料No.1〜9)、即ち基体のすくい面側のみを表面研磨したものを用いた。また、本発明の範囲外の比較例として、前記実施例1の製造方法にて基体を製造し、SNGN120408の形状に全面研磨加工し、その後同様に被覆層を形成した試料(試料No.10〜14)を製造した。
そして、これらの試料に対して、下記に示す条件にて、切削加工試験を行い、耐摩耗性を評価した。具体的には、逃げ面摩耗を測定した。その結果を下記表3に記す。尚、各試料の基体を製造した際に、その側面(逃げ面側)の表面粗さ(面粗さ)Rzも測定した。その結果も下記表3に記す。
<切削加工条件>
・被削材 ;JIS FC200(普通鋳鉄)
・切削速度 ;100m/min
・送り速度 ;0.1mm/rev
・切込み深さ;1.0mm
・切削時間 ;60min
・刃先処理 ;0.2mm×25度
・乾式
この表3から明らかな様に、試料No.1〜9の本発明品は、すくい面のみを研磨し、その他の表面は窒化珪素粒子が針状になった焼結肌として、基体表面全体に被覆層を形成したものであるので、基体の側面の面粗さRz(すくい面以外)は、2.1μm以上である。よって、被覆層の厚みが2〜10μmである場合でも、剥離が発生することなく、逃げ面摩耗量も、0.10mm以下と少なく、耐摩耗性に優れていることが分かる。
これに対して、比較例のものは、基体の表面全体を研磨し、その表面に被覆層を形成したものであるので、面粗さRzは0.9μm以下と小さい。よって、3.5μm以上の被覆層を形成した場合には、剥離が生ずるか大きな逃げ面摩耗が発生し、好ましくない。
つまり、この表3から、本発明品は、全面研磨加工した比較例品に比べて、優れた密着性を有するので、高い耐摩耗性を備えていることが分かる。
(実験例2)
この実験例は、製造直後の本発明品及び比較例品に対して、基体の表面組織及び基体と被覆層との接合状態を調べたものである。
具体的には、本発明品である前記試料No.2の試料を、すくい面と垂直に切断し、その表面を研磨した。そして、その表面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察した。その写真を図2に示す。尚、図2は5000倍に拡大した断面組織の写真(SEM写真)である。
また、比較例品である前記試料No.10の試料を、同様に、すくい面と垂直に切断し、その表面を研磨した。そして、その表面を走査型電子顕微鏡にて観察した。その写真を図3に示す。尚、図3は5000倍に拡大した断面組織の写真である。
図2及び図3から、本発明品は、主として針状の窒化珪素粒子により深い凹凸のある表面組織が構成され、基体に被覆層が密着していることが分かる。
それに対して、比較例品は、基体表面が平坦であり、基体表面と被覆層との間にクラックが発生していることが分かる。
次に、実施例2について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略する。
本実施例2の切削インサートは、前記実施例1とその構成及び製造方法は、大部分が共通しているが、下記の点が大きく異なる。
a)まず、本実施例の切削インサートの特徴的な構成ついて説明する。
本実施例2の切削インサートは、基体の表面組織に存在する針状の窒化珪素粒子の形状が、前記実施例1より長尺であり、その平均アスペクト比は5以上である。つまり、針状の窒化珪素粒子の長手方向(軸方向)の長さは、単手方向(軸と垂直方法)の長さの5倍以上である。
従って、基体(詳しくは研磨されない側面)の表面組織は、長尺の窒化珪素粒子が多く突出して重なり合った形状となっており、そのため、窒化珪素粒子の間には多くの隙間が存在している。
よって、基体表面を被覆する被覆層の材料は、被覆層の形成の際に、窒化珪素粒子間の隙間に深く入り込んで、基体と被覆層とが強固に接合している。また、本実施例では、被覆層の厚みは、10μm以上と十分な厚みを確保している。
つまり、本実施例では、基体と被覆層とが強固に接合しているので、後述する実験例に示す様に、基体表面に被覆層を厚く形成しても、剥離等が生じない。よって、前記実施例1よりも高い密着性を備えており、高い耐摩耗性及び耐熱性を備えている。また、使用時に耐摩耗性を維持できるため、熱的及び機械的に高負荷のかかる切削加工の条件においても、安定した性能を発揮し、一層長寿命の切削加工が可能になる。
特に、平均アスペクト比が大きな場合(例えば6以上)には、窒化珪素粒子間の隙間が大きいので、被覆層の材料が窒化珪素粒子間の隙間に深く入り込んで、その部分にて複合材料層を形成する。つまり、切削インサートの基体(側面)の表面組織は複合材料層となる。その場合には、一層密着性が高いので、本実施例の効果が一層顕著となる。
b)次に、本実施例の切削インサートの製造方法について説明する。
本実施例では、前記実施例1と同様に、前記表1に示す条件にて基体No.2の基体を製造するとともに、その基体に対して、下記表4に示す熱処理を行った。
具体的には、窒素ガス雰囲気中で、1900℃にて、所定時間、基体を加熱する処理を行った。これにより、基体の表面組織を形成する窒素珪素粒子は成長し、平均アスペクト比が5以上の長尺の結晶となる。
そして、この様にして得られた焼成体を、ISO規格のSNMN120408の形状に、すくい面のみ研磨加工した。
次に、この基体を、CVD装置にセットし、熱CVD法により、基体の表面全体に、厚み10μm以上の被覆層を形成し、本実施例の切削インサートを得た。
(実験例3)
次に、本発明の効果を確認した実験例3について説明する。
本実験例3では、下記表4に示す様に、前記実施例2の製造方法にて製造した本発明(請求項3及び5)の範囲の試料(試料No.15〜21、23〜25)、即ち基体の表面組織の窒化珪素粒子の平均アスペクト比が5以上となるように熱処理を行ったものに加え、本発明の範囲外の比較例として、熱処理を行わない試料(試料No.22)も製造した。
そして、これらの試料に対して、下記に示す条件にて、前記実験例1と同様に切削加工試験を行い、耐摩耗性を評価した。その結果を下記表4に記す。
尚、平均アスペクト比は、基体表面の500倍の5視野のSEM写真における窒化珪素粒子の寸法を測定することにより求めた。
<切削加工条件>
・被削材 ;JIS FC200(普通鋳鉄)
・切削速度 ;100m/min
・送り速度 ;0.1mm/rev
・切込み深さ;1.0mm
・切削時間 ;120min
・刃先処理 ;0.2mm×25度
・乾式
この表4から明らかな様に、試料No.15〜21、23〜25の本発明品は、十分な熱処理を行って平均アスペクト比を6以上とするとともに、被覆膜を3.5μm以上としているので、逃げ面摩耗量が0.32mm以下と少なく、耐摩耗性に優れていることが分かる。
特に、試料No.15〜21、23の本発明品は、被覆層の厚みが10μm以上であるので、逃げ面摩耗量が0.18mm以下と少なく、一層耐摩耗性に優れていることが分かる。
これに対して、比較例のものは、前記熱処理を施していないので、平均アスペクト比が3と小さく、被覆層の厚みを10μmとした場合には、剥離が発生し、好ましくない。
つまり、この表4から、本発明品は、比較例品に比べて、優れた密着性を有するので、高い耐摩耗性を備えていることが分かる。
(実験例4)
この実験例は、本発明品として、基体の表面組織を調べたものである。
具体的には、本発明品である前記試料No.15の試料について、焼結後に基体の表面を走査型電子顕微鏡にて観察した。その写真を図4に示す。尚、図4は500倍に拡大した写真である。
また、前記試料No.15の試料を、すくい面と垂直に切断し、その表面を研磨した。そして、その表面を走査型電子顕微鏡にて観察した。その写真を図5に示す。尚、図5は1000倍に拡大した組織の写真である。
図4から、本発明品は、その基体の表面が長尺の窒化珪素粒子により構成されていることが分かる。また、図5から、本発明品は、長尺の窒化珪素粒子の隙間に被覆層の材料が侵入して複合材料層を形成していることが分かる。
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
例えば、前記実施例では、基体の厚み方向の両面(すくい面)は、厚み方向の寸法精度を高めるために研磨されているが、この研磨を省略して、すいく面側も焼結肌とすることも可能である。
実施例1の切削インサートをホルダに取り付けた状態を破断して示す説明図である。 実施例1の切削インサートの断面の組織を示すSEM写真である。 比較例の切削インサートの断面の組織を示すSEM写真である。 実施例2の切削インサートの基体の表面の組織を示すSEM写真である。 実施例2の切削インサートの断面の組織を示すSEM写真である。
符号の説明
1…切削インサート 3…基体
5…被覆層 7…ホルダ

Claims (8)

  1. 窒化珪素を主成分とする基体の表面に、被覆層を有する工具用部材において、
    前記基体の表面組織は窒化珪素粒子が針状に成長した焼結肌を有し、前記被覆層の厚みが2〜10μmであることを特徴とする工具用部材。
  2. 前記基体の表面組織の焼結肌の面粗さRzが2μm以上であることを特徴とする前記請求項1に記載の工具用部材。
  3. 窒化珪素を主成分とする基体の表面に、被覆層を有する工具用部材において、
    前記基体の表面組織は窒化珪素粒子が針状に成長した焼結肌を有し、前記針状に成長した窒化珪素粒子の平均アスペクト比が5以上であることを特徴とする工具用部材。
  4. 前記被覆層の厚みが10μm以上であることを特徴とする前記請求項3に記載の工具用部材。
  5. 窒化珪素を主成分とする基体の表面に、被覆層を有する工具用部材において、
    前記基体の表面組織は、窒化珪素粒子が針状に成長した焼結肌を有し、前記被覆層の材料が前記基体の表面組織に含浸して前記被覆層の材料及び前記針状に成長した窒化珪素粒子からなる複合材料層を形成していることを特徴とする工具用部材。
  6. 前記被覆層が、Al及び/又はTiの酸化物、窒化物、炭化物、硼化物、及びそれらの相互固溶体の少なくとも1種からなる単層又は複数層からなることを特徴とする前記請求項1〜5のいずれかに記載の工具用部材。
  7. 前記被覆層が、化学蒸着により形成されたものであることを特徴とする前記請求項1〜6のいずれかに記載の工具用部材。
  8. 前記請求項1〜7のいずれかに記載の工具用部材を用いたことを特徴とする工具。
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