JP2005097754A - 熱可塑性繊維、布帛および繊維製品 - Google Patents

熱可塑性繊維、布帛および繊維製品 Download PDF

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Abstract

【課題】
発色性を大きく低下させることなく、紫外線と近赤外線を遮蔽することにより、日焼け防止と共に肌や衣服内温度の上昇を抑制することのできる熱可塑性繊維、布帛または繊維製品を提供することにある。
【解決手段】
赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末を0.5〜5重量%含有することを特徴とする熱可塑性繊維、および該熱可塑性繊維を少なくとも一部に用いた布帛において、赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末を0.01〜5重量%含有または付着させたことを特徴とする布帛、または上記布帛を用いた繊維製品。
【選択図】なし

Description

本発明は、紫外線を遮蔽し、発色性に優れているだけでなく、遮熱性に優れた衣料品に関するものであり、スポーツウエアーなどの衣料品や傘地、テント地などの資材用途に用いることにより省エネや快適性を与えるものである。
近年、環境問題、エネルギー問題が声高に叫ばれており、省エネルギーに関する技術が進んできている。例えば、自動車や住宅の窓ガラスには遮熱コーティングにより赤外線が遮蔽され、冷房効率を上げている。同様な要望は衣料品、資材用途においてもあり、例えば、特許文献1に提案されている繊維は芯鞘構造をとっており、芯部に熱可塑性繊維との屈折率差が大きく(PET 1.5〜1.7、ポリカプラミド 1.55、酸化チタン 2.5〜2.9)さらに可視〜近赤外領域において分光反射スペクトルの反射率は90%を越える高い反射率を有している酸化チタンを多量に添加させて、可視〜近赤外領域の光を反射することによって遮蔽している。一方、鞘部において酸化チタンを含まないポリマーを用いることによって発色性を改善している。この繊維を例えばポロシャツに用いた場合、太陽光による輻射熱(可視〜近赤外領域)を遮ることによって衣服内の温度上昇を抑制することが期待できる。しかしながら、添加されている酸化チタンは赤外線領域で反射していると同時に可視光領域においても反射しているために白っぽく見える、いわゆるダル化を生じるため、鮮明な発色性を発現させることはできず、鞘側に酸化チタンを含まないポリマーを配置したとしても淡色での鮮やかな発色は極めて困難である。また、芯鞘構造を取っているため、2種のポリマーを供給できる紡糸機を用いなければならず、口金構造が複雑であり、異形断面やフィラメント数の変更などユーザーニーズに対応しにくいという問題を有している。
特許文献2には、酸化亜鉛または酸化亜鉛を主体とするセラミック粉末がポリエステル繊維、ポリアミド繊維等に対して1〜40重量%含有させることにより、熱線を遮蔽することが提案されている。熱可塑性繊維と酸化亜鉛の屈折率差は比較的小さいため、透明性や鮮明な発色性を大きく低下させることがない。しかし、特許文献2に用いられている酸化亜鉛は近赤外領域での分光反射スペクトルが90%を越える高い反射率を有しているものの、熱可塑性繊維と酸化亜鉛の屈折率差(酸化亜鉛1.9〜2.0)が比較的小さいことから反射による寄与は小さく、熱線遮蔽は限定的な効果となる。また、同様に散乱による効果も期待できない。
一方、自動車や窓ガラスの遮熱コーティングに用いられているスズ含有酸化インジウム(ITO)やアンチモン含有酸化スズ(ATO)やさらに特許文献3に記載されているようにアルミニウム等の金属または金属イオンをドーピングした導電性酸化亜鉛を繊維製品に適用することにより、近赤外領域の光を吸収することが提案されている。しかしながらこれらの物質は着色しているいるために発色性、鮮明性が低下すること、さらにコストが高いために費用対効果が得られにくいことが問題であった。
また、酸化亜鉛粒子は、従来より紫外線遮蔽効果が知られており、近年、特許文献4や特許文献5において抗菌作用を狙っての添加が提案されている。
特開平11−217732号公報 特公平7−68647号公報 特開2000−154419号公報 特開平7−197309号公報 特開2003−73922号公報
本発明の目的は、発色性を維持しながら赤外領域の光を遮蔽することにより輻射による温度上昇を抑制し、衣服内等の環境を改善するための熱可塑性繊維、布帛および衣料品を提供することである。
上記の目的を達成するため、本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、
(1)赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末を0.5〜5重量%含有することを特徴とする熱可塑性繊維。
(2)赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末の波長500nmにおける分光反射率が90%以上であり、波長2400nmにおける分光反射率が70%以下であることを特徴とする(1)記載の熱可塑性繊維。
(3)赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末が前記熱可塑性繊維中に一次粒子径が0.01〜0.1μmで分散し、二次粒子の粒径が1μmを越える前記赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末の粒子数の割合が0.1%以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の熱可塑性繊維。
(4)赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末の表面が無機酸化物で被覆されていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の熱可塑性繊維。
(5)赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末の表面が無機酸化物で被覆され、さらにシリコーン化合物で表面処理されていることを特徴とする請求項4記載の熱可塑性繊維。
(6)(1)〜(5)に記載の熱可塑性繊維を少なくとも一部に用いた布帛であって、赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末を該布帛全体に対して0.01〜5重量%含有していることを特徴とする布帛。
(7)(1)〜(5)に記載の熱可塑性繊維を少なくとも一部に用いてなり、赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末をさらに付着した布帛であって、該赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末が該布帛全体に対して0.01〜5重量%であることを特徴とする布帛。
(8)(6)または(7)いずれかに記載の布帛を用いていることを特徴とする繊維製品。
本発明の熱可塑性繊維または布帛や繊維製品は、発色性を維持しながら従来から知られている紫外線遮蔽効果とともに、近赤外線を遮蔽して輻射による肌や衣服内温度の上昇を抑制し、例えば衣料品に用いた場合、着用快適性を向上させることができる。
本発明の熱可塑性繊維は、赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末を0.5〜5重量%含有している。
すなわち、本発明に用いる赤外線吸収性を有する酸化亜鉛は紫外線吸収性を有し、比較的屈折率が低く、白色であるため、繊維中に分散していても染色した際に発色性を阻害しないという特徴に加え、赤外線を吸収するという特徴を有するため繊維製品に含有したとき、輻射による加熱を抑制するという効果が得られる。例えば、衣料品に用いた場合、衣服内の温度上昇を抑制し、傘地やタープのテント地に用いた場合、日差しによる暑さを緩和させることが可能となる。
ここで赤外線を吸収するとはセルに粉体を充填して測定した場合の分光反射スペクトルによって測定可能である。図1に本発明に用いる赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粒子の分光反射スペクトルを示す。200〜2400nmの測定領域において、200nm〜380nmの領域で強い紫外線吸収が存在し、380〜1100nmにおいては高い反射を示す。さらに、1100nm〜2400nmにおいては長波長になるに従い、反射が減少し、吸収されていることがわかる。上記波長範囲は赤外線領域であり、紫外線、可視光線に比べてエネルギーとしては小さいが、熱的作用が大きく熱線と呼ばれている。熱可塑性繊維中に赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末が存在する場合、両者の屈折率差が小さいため、分光反射スペクトルでの反射ではなく吸収により、効率的に遮蔽できるのである。
比較として、特許文献2図1には酸化亜鉛の分光反射スペクトルが記載(ただし、横軸波長の単位はnmの誤記と思われる)されているが、本発明の酸化亜鉛粉末と異なり、近赤外領域において高い分光反射率を有していることがわかる。このような近赤外領域において高い分光反射率を有する酸化亜鉛粒子を用いた場合では、遮蔽効果が小さく、本発明のように輻射による加熱を抑制することは困難である。一方、本発明は、上記のような分光反射スペクトルを有するため、従来では得ることができなかった程、効果的に輻射による加熱を抑制できる。
赤外線領域での吸収メカニズムは電子分布の疎密の振動であるプラズマ振動により赤外線領域の電磁波は通過できずに全反射されるが、反射を繰り返すうちに熱として吸収されて減衰しているものと推定している。一方、赤外線吸収性を有さない酸化亜鉛粒子ではこのメカニズムにより赤外線を吸収することがない。本発明では、赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粒子を選定して使用することが必要である。
赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末は、製法や、ドーピング、コーティング等の制約を受けないが、繊維中に分散させる場合、繊維の強度特性のため、粒子径は小さい方が好ましく、製糸性から平均粒径1μ以下であることがより好ましい。また、ドーピングやコーティングを行うときには着色しない方が好ましく、一般にドーピングした場合、着色すること、さらにコストアップすることからドーピングしない方がより好ましい。前述のごとく製法に制限はないが、後述のように繊維の透明性を高める観点からも粒子径が小さい方がより好ましく、湿式法や蓚酸亜鉛の熱分解を利用する製法が好ましく用いられる。ただし、他の製法においても粉砕方法、分級等により得られるのであれば、制限されるものではない。
酸化亜鉛粉末の繊維中含有量として、繊維の強度特性からすると少ない方が好ましいが、紫外線や赤外線の吸収性能としては多い方が好ましく、このバランスから0.5〜5重量%である必要がある。これ以上多量に含有させた場合、繊維の透明性、発色性が低下するばかりか、繊維の強度特性が低下してしまい好ましくない。一方、含有量が0.5%を下回る場合には繊維による赤外線吸収の効果が期待できないため、好ましくない。
本発明の目的である繊維製品の発色性を維持しながら赤外線吸収を高効率に行うためには、酸化亜鉛粉末の波長500nmにおける分光反射率が90%以上であり、波長2400nmにおける分光反射率が70%以下であることが好ましい。
すなわち、500nmを中心とした可視領域において分光反射率が90%以上と極めて高い場合、熱可塑性繊維と酸化亜鉛との屈折率差が小さいことと相まって、透明性や発色鮮明性に優れた熱可塑性繊維、布帛、繊維製品とすることができる。一方、2400nmを中心とした近赤外領域において分光反射率が70%以下であるということは、近赤外領域を吸収により遮蔽していることを意味し、輻射熱が遮蔽されていることを実感することができるようにするためには、酸化亜鉛の添加率にも依存するものの分光反射率が70%以下であることが好ましい。
また、傾向として粒子径が小さいほど波長500nmにおける分光反射率は高く、波長2400nmにおける分光反射率は低下する傾向にあるため、上記分光反射特性を得るためには粒径を小さくすることが必要である。特に1次粒子径が0.1μmを下回るような超微粒子酸化亜鉛粉末を用いることにより、酸化亜鉛粉末の波長500nmにおける分光反射率が95%以上であり、波長2400nmにおける分光反射率が60%以下とすることが可能となり、上記と同様な理由のためより好ましい。
前述のごとく、酸化亜鉛粉末の粒径を小さくすることにより、製糸時の操業性安定、繊維の強度特性維持、可視光領域での透明性と赤外領域での高い吸収を得られることを説明したが、さらに発色性の維持のために粒子径が小さいことが好ましい。すなわち、光の波長よりも小さい粒子による散乱はレイリー散乱によって表されるが、散乱の大きさは粒径の六乗に比例することから、散乱を小さくする重要な要因である。したがって、熱可塑性繊維中の前記酸化亜鉛粉末の一次粒子径が0.01〜0.1μm、該酸化亜鉛粉末の二次粒子の粒径が1μmを越える粒子数の割合が0.1%以下であることが好ましい。
酸化亜鉛は優れた紫外線吸収性能を持つ一方、この紫外線吸収による光活性触媒作用があることが知られており、特に粒子径が小さくなるとその作用も強くなる。光活性触媒作用によって消臭作用や抗菌性が得られる一方、熱可塑性繊維のポリマーも劣化させてしまい、強度低下や着色等が生じる。したがって、実用強度を維持し、優れた発色性を維持するためには、酸化亜鉛粉末はシリカやアルミナなどの無機酸化物で被覆されていることがより好ましい。これにより光触媒活性を完全になくすことができる。また、同時に二次凝集を抑制し、ポリマー中での分散性向上に寄与する。ここで、無機酸化物被膜の膜厚は3nm程度の極薄膜により効果がある。
前述のように一次粒子を微粒子化していくと繊維中に分散させる際、凝集が問題となってくる。凝集により二次粒子が大きくなると、いくら一次粒子を小さくしても透明性が低下してくる。したがって、熱可塑性繊維中に酸化亜鉛粉末を分散させる場合、酸化亜鉛粉末の表面を疎水化しているほうが、分散性に優れ、凝集を抑制できるために好ましい。さらに疎水化によって酸やアルカリ耐性化を進めることとなり好ましい。すなわち、布帛を精練やアルカリ減量処理を行うに当たって、酸化亜鉛は酸・アルカリと反応を起こしやすく、溶出しやすいため、繊維中に分散させている酸化亜鉛粉末が染色加工によって溶出することを防ぐためにも好ましい。
ここで、疎水化の方法としては、特に限定されるものではないが、シリコーン化合物での表面処理などが上げられる。例えば、シリコーン化合物としてはジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルプロピルポリシロキサン、プロピルハイドロジェンポリシロキサン、パーフルオロジメチルポリシロキサン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。添加率としては酸化亜鉛粉末に対して0.1〜30重量%が好ましい。
また、シリコーン化合物による表面処理は、無機酸化物による被膜を形成した後に行うことがより好ましい。
前述のように熱可塑性繊維に赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末を0.5〜5重量%分散させることにより、紫外線吸収だけでなく、赤外線遮蔽効果が得られ、輻射を遮ることによって衣服内温度の上昇が抑制される。
輻射による衣服内の温度上昇を抑制する効果を布帛として発現させるためには、前述の赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末を0.5〜5重量%含有する熱可塑性繊維を少なくとも一部に用いた布帛とする。さらに布帛重量に対して、赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末を0.01〜5重量%含んでいる必要がある。すなわち、特に2重織物のように多層構造となっている布帛においては、太陽に当たる面に赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末を0.5〜5重量%分散させた熱可塑性繊維を配置することがより好ましい。
また、赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末を含有する熱可塑性繊維を布帛の少なくとも一部として用いるとともに、該布帛の表面に赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末を後加工により付着させることによって布帛重量に対する赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末を0.01〜5重量%としても同様の効果が得られる。後加工により赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末を布帛に付着させることによって、効率的に太陽に当たる面に配置できるため、コスト的に有利である。また、粒子径を微細にすることによって、布帛の発色性低下を抑制でき、バインダーの適切な使用と合わせて風合いの粗硬化を抑制させることが可能となる。
布帛重量に対する、赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末の含有量としては、布帛の厚さや、目付、空隙率等にも依存するが、0.01〜5重量%である必要があり、0.01重量%未満では、赤外線吸収の効果を期待できなく、5重量%を越える量を含有している場合、効果が飽和に近くなり、コスト高となる一方、発色性の低下や強度低下、風合いの粗硬化という悪影響が現れてくるため、好ましくない。
布帛表面に付着させる後加工の方法としては、赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末とバインダーを分散させた液体をパット・キュア・ドライ法やコーティング法等を用いて布帛に付着させることができる。
ここで、バインダーとは、酸化亜鉛粉末を布帛に付着させる役目の樹脂で、特に限定はしないが風合いや、洗濯耐久性などからして、アクリル系、ポリウレタン系、シリコーン系、フッ素系、メラミン系、グリオキザール系樹脂などを用いればよい。
本発明において酸化亜鉛粉末を布帛表面上に付着させるには、酸化亜鉛粉末の分散液とバインダー分散液を混合し加工液とする。この加工液に布帛を含浸させた後、マングルロールなどで一定量に絞り、ドライーキュア工程を経るか、あるいは、この加工液を適当な粘度に調整して、ナイフコータやグラビアロールコータ、捺染などで塗布した後、200℃以下の温度で固着させるなどの方法が挙げられる。
上記のような後加工により酸化亜鉛粉末を布帛表面に付着させる場合には、バインダーや、溶剤、分散剤等を最適化することにより、撥水剤、柔軟剤、UV遮蔽剤、親水剤、防汚加工剤等の製品として必要な後加工材と一緒に組み合わせることができる。
上記のように布帛重量に対して赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末を0.01〜5重量%含有または付着させた布帛を用いている繊維製品は、発色性低下を抑制しながら赤外線遮蔽性能を発現することができる。すなわち、例えば衣料品として用いた場合、繊維中または繊維表面に粒子が存在しながら発色性低下を抑制し、さらに紫外線吸収および赤外線遮蔽性能を発現することによって、日焼けと共に衣服内の温度上昇を抑制して着用快適性が向上する。また、テント地や傘などの資材用途に用いた場合、衣料品と同様に発色性を維持しながら、日焼けと温度上昇を抑制させることが可能となる。
ここで、繊維内部または繊維表面に分布している赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末により、赤外線が遮蔽され、吸収された場合、布帛の温度が上昇し、例えば衣服内の温度が上昇するのではないかと考えられるが、繊維の表面積は極めて広いため、速やかに放熱し、赤外線が直接肌を加熱するのに比べて、明らかに皮膚温度の上昇を抑制することができるのである。
本発明の熱可塑性繊維は、長繊維または短繊維に限定されず、例えばポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリプロピレン系繊維、セルロース系繊維等を単独で、もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。この中でも強度と風合いからポリエステル系繊維とポリアミド系繊維がより好ましい。ここで、ポリエステルとは、80%以上のエチレンテレフタレート単位を含有するポリエチレンテレフタレート系重合体が好ましい。このエチレンテレフタレートには、共重合成分として例えばアジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタリンジカルボン酸等の二塩基酸類、オキシ安息香酸等のオキシ酸類及びジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の1種または2種以上を共重合することができる。これらポリエステルに酸化チタン等の艶消し剤、カオリナイト等の微細孔形成剤、帯電防止剤等が少量添加されていても良い。
またポリアミドとしてはいわゆる炭化水素基が主鎖にアミド結合を介して連結された高分子量体であって、その種類は特に制限されないが、好ましくは、染色性、洗濯堅牢性、機械特性に優れる点から主としてポリカプラミドまたはポリヘキサメチレンアジパミドからなるポリアミドであることが好ましい。ここで言う主としてとは、カプラミド単位、またはヘキサメチレンアジパミド単位として80モル%以上であることを言い、さらに好ましくは90モル%以上であることが好ましい。その他の成分としては、特に制限はないが、例えば、ポリドデカノアミド、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンアゼラミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリヘキサメチレンドデカノアミド、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリヘキサメチレンテレフタラミド、ポリヘキサメチレンイソフタラミド等を構成するモノマーである、アミノカルボン酸、ジカルボン酸、ジアミンなどの単位が挙げられる。さらに必要に応じて光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、末端基調節剤、染色性向上剤等が添加されていてもよい。
もちろん、該繊維の繊維形状、例えば、繊度、フィラメント数、断面形状、染着性、光沢に限定されることはない。また、本発明の繊維を用いて、紡績糸、短繊維と長繊維との複合糸、仮撚加工糸、エアー交絡糸、捲縮加工糸などのような種々の糸を形成することができる。
熱可塑性繊維中に赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末を分散させる方法としては従来から実施されている重合時添加や熱可塑性樹脂への混練等により可能であり、特に制限はない。ただし、糸強度の低下や製糸性の悪化を防ぐために二次凝集を抑制することが好ましい。また、赤外線吸収性を有する酸化亜鉛と同時に透明性を阻害しない程度に酸化チタンを添加したり、吸湿性を付与する物質(たとえば吸湿ポリマー)を同時に分散させることも好ましく行われる。
なお、熱可塑性繊維内に赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末を分散させた繊維を紡糸する方法としては公知の方法を採用することにより、繊維を得ることができる。例えば、酸化亜鉛粉末が5〜40重量%となるようにナイロン6と二軸押出混練機で265〜275℃で溶融混練してマスターチップを得る。このマスターチップとナイロン6を酸化亜鉛粉末重量として0.5〜5重量%となるようにチップブレンドしする。このチップブレンドポリマーを用いて紡糸温度265〜280℃とし、丸型や異型の吐出孔を有する紡糸口金から吐出し、冷却、給油、引取りを行い、引き続き延伸した後、140〜170℃で熱処理してから3500〜5000m/分で巻き取り、ポリアミドマルチフィラメントを巻き取る方法が挙げられる。
また、他の例としてポリエステル高配向未延伸糸を得る方法としては、酸化亜鉛粉末が5〜40重量%となるように、たとえば極限粘度η0.65程度のポリエチレンテレフタレート(以下PET)と二軸押出混練機で溶融混練してマスターチップを得る。このマスターチップを酸化亜鉛粉末重量として0.5〜5重量%となるように押し出し混練機(シリンダー温度285℃)入り口部分でPETチップとマスターチップを供給・混練して、紡糸温度290℃付近とし、丸型や異型の吐出孔を有する紡糸口金から吐出し、冷却、給油、1GD速度3000〜4000m/minにて引取り、2GDも同速に設定して、5%程度のリラックスをかけながらワインダーに巻き取りることで達成しうる。
さらに上記高配向未延伸糸を仮撚する一例としては、既存の仮撚機(スピンドル仮撚機、3軸ツイスター、ベルトニップいずれでも可能)を用いて、加工速度300〜1000m/min、延伸倍率は、高配向未延伸糸の伸度により変わるがおおむね1.2〜2.0倍の範囲で、残留伸度が18〜35%(PET)、25〜40%(ナイロン)となるように設定し、ヒーター温度180〜230℃(PET)、160〜200℃(ナイロン)の条件にて仮撚加工を行い、巻き取る前にインターレースノズルにより交絡を付与し、集束性を向上させて巻き取ることで得られる。
また、本発明における布帛とは、繊維により構成された平面を有する構造物であり、織物、編物、不織布やこれらの複合素材であっても問題ない。布帛を得る方法としても織編物、不織布等それぞれの公知の方法を採用することにより得られる。例えば、本発明のポリアミドマルチフィラメントを経糸・緯糸に用い、平織、綾織、朱子織およびその変化織り、さらに2重織、パイル織物を製織し、通常の染色工程である精練、中間セット、染色、ファイナルセットを行う方法が挙げられる。
さらにまた、繊維製品とは上記布帛を用いた製品であり、アウターウエアー、インナーウエアー、帽子等の衣料品からテント地、傘地などの資材品を含んでいる。これら繊維製品においてもそれぞれ公知の製造方法を採用することで得ることができる。ただし、赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末がより多く存在する面を太陽光の照射する面に採用することが遮熱性にとって効率的である。
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。
なお、実施例および比較例における各測定値は、次の方法で得たものである。
A.粉末の分光反射率
円形平坦面の片側が開放している円柱形状のセルに最初に標準品(ゼロ点合わせ用)として硫酸バリウム(標準試薬)を入れ、ガラス平板等で十分に圧着し、表面を平滑に整える。硫酸バリウムでブランクスキャンしてから、サンプルの分光反射スペクトルを測定した。測定装置としてはSHIMADZU(島津)製 UV−3100Sを用いた。
B.一次粒子直径測定
一次粒子の直径は以下のようにして求める。すなわち、粒子をエタノール等の溶媒に溶かした後、支持膜の上に均一に広げて溶媒を飛ばした後、透過電子顕微鏡(以下、TEM)を用いて撮影し、写真を画像処理ソフト(WINROOF)を用いて一次粒子の円換算による直径を求めた。この時、一次粒子直径測定のためには撮影した粒子の内、粒子全体が映っているものの内、無作為抽出した100以上の粒子を用いた。
C.繊維中の二次粒子直径測定
繊維中の二次粒子の直径は以下のようにして求める。すなわち、ミクロトームを用いて、繊維軸と垂直方向に約0.1μmの断面薄膜を切り出し、TEMによる繊維横断面写真を撮影し、無作為に抽出した写真5枚について現れている粒子について画像処理ソフト(WINROOF)を用いて粒子の円換算による直径を求めた。
D.98%硫酸相対粘度(ηr)
(a)試料を秤量し、98重量%濃硫酸に試料濃度(C)が1g/100mlとなるように溶解する。
(b)(a)項の溶液をオストワルド粘度計にて25℃での落下秒数(T1)を測定する。
(c)試料を溶解していない98重量%濃硫酸の25℃での落下秒数(T2)を(2)項と同様に測定する。
(d)試料の98%硫酸相対粘度(ηr)を下式により算出する。測定温度は25℃とする。
(ηr)=(T1/T2)+{1.891×(1.000−C)}。
E.極限粘度[η]
オルソクロロフェノール(以下OCPと略記する)に試料ポリマを溶解し、温度25℃においてオストワルド粘度計を用いて複数点の相対粘度ηrを求め、それを無限希釈度に外挿して求めた。
F.熱線遮蔽性評価
赤外線ランプ(250W、東芝製)から50cm離れた位置に縦横20×20cmの金属製の枠に静置状態で固定したサンプルを置き、金属の枠との間に断熱材を挟んで黒画用紙を貼り、さらにサーモカメラを配置した。したがって、赤外線ランプからの照射で、織物を通過した光によって黒画用紙が加熱され、反対側に配置したサーモトレーサー(DP−ID TH3100シリーズ、NEC製)によって画用紙の表面温度を測定し、測定領域中での最高温度を赤外線ランプ照射前と赤外線照射してから3分後の差をΔTとした。
F.パンティーストッキングの熱線遮蔽着用評価
パンティーストッキングを着用の上、被験者はいすに座ってもらい、膝頭から90cmの位置から赤外線ランプ(250W、東芝製)を照射し、膝からスネにかけての皮膚温度をサーモトレーサー(DP−ID TH3100シリーズ、NEC製)によって測定し、測定領域内の最高温度について赤外線ランプ照射前と照射後の温度差をΔTpとした。なお、パンティーストッキングは編地の目が粗いため、サーモトレーサーで捉えている温度は皮膚の温度に等しい。
[実施例1]
赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末としてナノマックス FP−101(昭和電工(株)製)を使用した。これは、酸化亜鉛微粒子の表面を微粒子重量に対して18.1重量%の割合でシリカ被膜を形成し(膜厚2〜3nm)、さらに微粒子重量に対して6.9重量%の割合でジメチルポリシロキサンによる疎水化処理(膜厚3〜4nm)を行っている。
上記酸化亜鉛微粒子の波長500nmにおける分光反射率は98%、波長2400nmにおける分光反射率は56%であった。なお、図1に上記酸化亜鉛粉末の分光反射スペクトルを示した。また、酸化亜鉛粉末の一次粒子径は0.02〜0.07μmに分布していた。各水準の添加粒子物性および表面処理に関して表1にまとめた。
上記酸化亜鉛粉末が20重量%となるようにポリカプラミド(以下ナイロン6)チップ(ηr=2.7)と二軸押出混練機で270℃で溶融混練してマスターチップを得た。この上記マスターチップと上記ナイロン6を酸化亜鉛粉末重量として0.5%となるようにチップブレンドした。
このチップブレンドポリマーを用いて紡糸温度270℃とし、丸型の吐出孔を有する紡糸口金から吐出し、冷却、給油、引取りを行い、引き続き、伸度が44%になるように延伸した後、155℃で熱処理してから4000m/分で巻き取り、78デシテックス68フィラメントのポリアミドマルチフィラメントを巻き取った。
糸断面中の酸化亜鉛粉末の二次粒子の粒径は0.03〜0.3μmに分布しており、1μmを越える粗粒は存在しなかった。
このポリアミドマルチフィラメントを経糸・緯糸に用い、経糸密度180本/2.34cm、緯糸密度96本/2.34cmにて平織物を製織し、通常の染色工程である精練、中間セット(170℃)、液流染色機による染色(染色温度90℃)、ファイナルセット(130℃)を行った。仕上がりにおいて経糸密度190本/2.34cm、緯糸密度100本/2.34cmであった。各水準の熱可塑性繊維に添加されている粒子、構成ポリマー、およびそれを用いて仕上げた布帛と特性等を表2にまとめた。
[実施例2]
このマスターチップとポリカプラミドチップを酸化亜鉛粉末重量として1.0%となるようにチップブレンドした以外は、実施例1と同条件にて紡糸を行い、同繊度、同フィラメントのポリアミドマルチフィラメントを得て、同条件にて同様な平織物を得た。
なお、糸断面中の酸化亜鉛粉末の二次粒子の粒径は0.03〜0.3μmに分布しており、1μmを越える粗粒は存在しなかった。
[実施例3]
このマスターチップとポリカプラミドチップを酸化亜鉛粉末重量として3.0重量%となるようにチップブレンドした以外は、実施例1と同条件にて紡糸を行い、同繊度、同フィラメントのポリアミドマルチフィラメントを得て、同条件にて同様な平織物を得た。
なお、糸断面中の酸化亜鉛粉末の二次粒子の粒径は0.03〜0.3μmに分布しており、1μmを越える粗粒は存在しなかった。
[実施例4]
実施例1と同じ酸化亜鉛粉末と極限粘度η0.65〜0.66の添加粒子を含まないポリエチレンテレフタレート(以下PET)を用いて二軸押出混練機で溶融混練して20重量%のマスターチップを予め得た。酸化亜鉛粉末重量として0.5重量%となるように上記PETチップとマスターチップを押し出し混練機(シリンダー温度285℃)にて混練して、紡糸温度290℃とし、丸型の吐出孔を有する紡糸口金から吐出し、冷却、給油、1GD速度3000m/minにて引取り、2GD速度3000m/minとし、3015m/minにて巻き取り、156デシテックス、36フィラメントである切断伸度188%の高配向未延伸糸(以下、POY)を得た。
糸断面中の酸化亜鉛粉末の二次粒子の粒径は0.03〜0.3μmに分布しており、1μmを越える粗粒は存在しなかった。
上記POYを仮撚機(村田機械 MACH−33H)を用いて、加工速度600m/min、延伸倍率1.86倍、ヒーター温度220℃の条件にて仮撚加工を行い、巻き取る前にインターレースノズルにより交絡を付与し、集束性を向上させた84デシテックス−36フィラメントの仮撚加工糸を得た。
この仮撚加工糸を経糸・緯糸に用い、経糸密度90本/2.34cm、緯糸密度78本/2.34cmにて平織物を製織し、通常の染色工程である精練、中間セット(180℃)、液流染色機による染色(染色温度130℃)、ファイナルセット(160℃)を行った。仕上がりにおいて経糸密度96本/2.34cm、緯糸密度85本/2.34cmであった。
[実施例5]
実施例4に用いたPET仮撚加工糸を経糸・緯糸に用い、実施例4と同じ染色・仕上げ工程を通して同じ密度に仕上げた。
赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末として実施例1の粒子にジメチルポリシロキサンによる疎水化処理を行わなかったほかは全く同様の粒子を用い、これをヘキサメタ燐酸ナトリウムを分散剤として、湿式分散機にかけて微粒化し分散した。この分散液のヘキサメタ燐酸ナトリウム(分散剤)の添加量は5%で、酸化亜鉛粉末の添加量は20%であった。この加工剤を加工液Aとした。
上記酸化亜鉛微粒子の波長500nmにおける分光反射率は98%、波長2400nmにおける分光反射率は56%であった。また、酸化亜鉛粉末の一次粒子径は0.02〜0.07μmに分布していた。
次に下記組成の処理液に上記PET織物を浸漬後、マングルで絞り(絞り率80%)、130℃×2分で乾燥後、ピンテンターで180℃×30秒間乾熱処理を行い機能性付与加工布Aを得た。この時の無機物の付着量は繊維布帛に対して0.8重量%、アクリル樹脂(T−23M、共栄社化学製)は0.5重量%であった。
処理液配合(水分散体)
加工液A(濃度20%) 50g/l
アクリル系バインダー(濃度45%) 15g/l
[実施例6]
実施例1と同じマスターチップおよびナイロン6を用いて酸化亜鉛粉末重量として0.5重量%となるようにチップブレンドした。
このチップブレンドポリマーを用いてを紡糸温度270℃とし、正方形に比べて各辺が内側にくびれた曲線からなる吐出孔を有する紡糸口金から吐出し、冷却、給油、引取りを行い、引き続き、伸度が44%になるように延伸した後、155℃で熱処理してから4000m/分で巻き取り、表1の実施例5に示す9デシテックス5フィラメントで、断面形状が正方形のポリアミドマルチフィラメントを巻き取った。
糸断面中の酸化亜鉛粉末の二次粒子の粒径は0.03〜0.3μmに分布しており、1μmを越える粗粒は存在しなかった。
これら延伸糸をカバリング用糸に用い、東レデュポン社製“ライクラ”((登録商標)、178Cタイプ、繊度20dtexを芯糸とし、カバリングドラフト2.9倍に設定し、それぞれS撚およびZ撚方向に撚数2200t/mにてシングルカバリング糸(SCY)を製造した。
これらSCYをS撚、Z撚を交互に編機の給糸口に供給してレッグ部に用いたパンティーストッキングを編成し(永田精機(株)製 MODEL P−482(針数400本))、定法にてプリセット、染色、仕上げ及び型板セットしてパンティーストッキング製品とした。
[比較例1]
実施例1に用いたナイロン6チップのみを用いて、酸化亜鉛粒子を添加せずに実施例1と同様な紡糸条件で表1の比較例1に示す78デシテックス68フィラメントのポリアミドマルチフィラメントを巻き取った。
このポリアミドマルチフィラメントを経糸・緯糸に用い、実施例1と同じ密度で製織し、同様な染色工程を通して同密度に仕上げた。
[比較例2]
実施例1に用いたマスターチップとナイロン6チップをブレンドチップして、酸化亜鉛粉末重量として6.0重量%とした。
このチップブレンドポリマーを用いて実施例1と同様な紡糸条件で表1の比較例2に示す78デシテックス68フィラメントのポリアミドマルチフィラメントを巻き取った。しかしながら、この紡糸工程においては、口金パックの濾過圧の上昇が実施例1〜3に比べて3倍早く、口金パック交換周期が短くなり、さらに実施例1〜3では見られなかった単糸毛羽が1割のドラムで発生した。
そのため、上記ポリアミドマルチフィラメントを経糸・緯糸に用い、実施例1と同じ密度で製織しする際、製経時の糸が実施例1〜3の5倍発生した。その後、実施例1と同様な染色工程を通して同密度に仕上げた。
糸断面中の酸化亜鉛粉末の二次粒子の粒径は0.03〜1.2μmに分布しており、1μmを越える粗粒は0.12%存在した。
[比較例3]
重合時に酸化チタン粉末(富士チタン工業(株)製TA−500)をスラリー添加し、フルダルチップを得た(酸化チタン添加量1.8重量%、ηr=2.2)。このチップを用いて実施例1と同様な紡糸条件により、表1の比較例3に示す78デシテックス68フィラメントのポリアミドマルチフィラメントを巻き取った。
このポリアミドマルチフィラメントを経糸・緯糸に用い、実施例1と同じ密度で製織し、同様な染色工程を通して同密度に仕上げた。
[比較例4]
実施例5において後加工を施す前のPET仮撚糸平織りを比較例4として用いた。
[比較例5]
実施例1に用いたナイロン6チップのみを用いて、酸化亜鉛粒子を添加せずに実施例6と同様な紡糸条件で表1の比較例1に示す9デシテックス5フィラメントで、断面形状が正方形のポリアミドマルチフィラメントを巻き取った。
このポリアミドマルチフィラメントをカバリング糸として用いて、実施例6と同様なパンティーストッキングを得た。
実施例1〜3および比較例1〜3の織物を用い、市販の型紙を用いてウィンドブレーカーを縫製し、繊維製品評価の専門家3名により評価を行った。まず、織物の発色性については比較例が最も鮮明性に優れているが、ややぎらついた光沢を有していた。これに対して実施例の織物を用いた場合においては、実施例1の織物を用いた場合には比較例1の織物を用いた場合に比べるとやや鮮明性が低下しているものの優れたレベルであり、マイルドな光沢で高級感を有していた。実施例2の織物を用いた場合にも実施例1の織物を用いた場合に次ぐレベルで発色性としては優れ、マイルドな光沢となっていた。実施例3の織物を用いた場合には他の上記サンプルに比べると鮮明性は劣るもののレベルとしては高く、光沢も最もマイルドであった。一方、比較例2の織物を用いた場合はいわゆるセミダルレベルのダル感を有しており、鮮明性は劣っていた。また、比較例3の織物を用いた場合にはパステル調の色彩となり、鮮明性という意味では最も劣っていた。
次に上記織物を用いて熱線遮蔽性評価を実施した。比較例1の織物を用いた場合では赤外線ランプによりすみやかに昇温し、3分後の測定領域内最高温度ΔTは、8.3℃と最も高かった。一方、実施例1〜3および比較例2、3の織物を用いた場合では、添加粒子により近赤外線が遮蔽され、ΔTは比較例1に比べて低い値となった。実際に皮膚の上に直接ウィンドブレーカーを着用した上で、同じ赤外線ランプを背中に当てて皮膚温度の上昇について官能評価を実施したところ、比較例1の織物を用いた場合にのみジリジリとした暑さが感じられたのに対して、実施例1〜3および比較例2、3の織物を用いた場合では、温度が暑く感じ始める時間も遅くなり、同じ時間内ではジリジリとした暑さまでは感じられなかった。
さらに風合い評価熟練者3名による風合い評価を実施したところ、比較例1の織物を用いた場合ではナイロン特有のヌメリ感が感じられるのに対して、実施例1〜3および比較例2、3の織物を用いた場合では、さらっとした触感があり、特に実施例3、比較例2、3の織物を用いた場合にて強く感じられ、同時に接触冷感も比較的強く感じられた。
実施例4、5および比較例4の織物を用いて傘を作成し、実施例1〜3および比較例1〜3と同様に評価を行った。まず織物の発色性については、やや実施例5がほかの水準に及ばないものの、いずれも鮮明な発色性を有していた。
次に上記織物を用いて熱線遮蔽性評価を実施した。比較例4では赤外線ランプによりすみやかに昇温し、3分後の測定領域内最高温度ΔTは、7.9℃と最も高かった。一方、実施例4、5では、添加または付着粒子により近赤外線が遮蔽され、ΔTは比較例4に比べて低い値となった。実際に傘を差した状態で上方から赤外線ランプを照射して官能評価を実施したところ、比較例4のみジリジリとした暑さを頬に感じたのに対して、実施例4、5では、温度が暑く感じ始める時間も遅くなり、同じ時間内ではジリジリとした暑さまでは感じられなかった。
実施例6および比較例5を用いて繊維製品評価の専門家3名により評価を行った。まず発色性については、比較例5に比べて実施例6はやや白っぽく、透明性や発色の鮮明性に関してやや劣るものの、商品としてのレベルは高かった。またつま先の切り返しのないパンティーストッキングを用いてつま先のペティキュアの見え方を女性5名に評価してもらったところ、見え方に差がないとの評価であった。
パンティーストッキングの熱線遮蔽着用評価を実施したところ、比較例5ではΔTpが2.1℃と高かったのに対して、実施例6では1.2℃と温度上昇が抑制されており、被験者の官能評価としても暑くなり始めが1分近く差があり、比較例5ではジリジリと暑く感じられたのに対して実施例6ではそこまで至らなかった。
Figure 2005097754
Figure 2005097754
実施例1に添加した酸化亜鉛粉末の分光反射スペクトルである。

Claims (8)

  1. 赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末を0.5〜5重量%含有することを特徴とする熱可塑性繊維。
  2. 前記赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末の波長500nmにおける分光反射率が90%以上であり、波長2400nmにおける分光反射率が70%以下であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性繊維。
  3. 前記赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末が前記熱可塑性繊維中に一次粒子径が0.01〜0.1μmで分散し、二次粒子の粒径が1μmを越える前記赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末の粒子数の割合が0.1%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性繊維。
  4. 前記赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末の表面が無機酸化物で被覆されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性繊維。
  5. 前記赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末の表面が無機酸化物で被覆され、さらにシリコーン化合物で表面処理されていることを特徴とする請求項4記載の熱可塑性繊維。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性繊維を少なくとも一部に用いた布帛であって、赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末を該布帛全体に対して0.01〜5重量%含有していることを特徴とする布帛。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性繊維を少なくとも一部に用いてなり、赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末をさらに付着した布帛であって、該赤外線吸収性を有する酸化亜鉛粉末が布帛全体に対して0.01〜5重量%であることを特徴とする布帛。
  8. 請求項6または7に記載の布帛を用いてなることを特徴とする繊維製品。
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