JP2005053710A - カーボンナノチューブの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】均一な電子放出、低い電圧での駆動および長寿命化を達成することができ、しかも電界電子放出が可能なような十分なカーボンナノチューブ間隔を得ることができる電子放出素子用のカーボンナノチューブの製造方法を提供する。
【解決手段】基板2 に触媒金属粒子を担持させ、該触媒粒子を核として基板上に化学蒸着法によりカーボンナノチューブ5 を成長させる。基板2 はカーボン繊維4 からなる通気性シートで構成されている。基板への触媒金属粒子の担持を、触媒金属の超微粒子を含む液を用いて行うのが好ましい。カーボンナノチューブを成長させた後、基板裏面に通気阻止膜を設けることが好ましい。
【選択図】 図1
【解決手段】基板2 に触媒金属粒子を担持させ、該触媒粒子を核として基板上に化学蒸着法によりカーボンナノチューブ5 を成長させる。基板2 はカーボン繊維4 からなる通気性シートで構成されている。基板への触媒金属粒子の担持を、触媒金属の超微粒子を含む液を用いて行うのが好ましい。カーボンナノチューブを成長させた後、基板裏面に通気阻止膜を設けることが好ましい。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カーボンナノチューブの製造方法に関する。カーボンナノチューブは、カーボン原子が網目状に結合してできた極微細な単層または多層の筒(チューブ)状の物質である。カーボンナノチューブを用いた電子放出素子は、フィールドエミッション型フラットパネルディスプレイ(FED)や、X線源、電子線リソグラフィー、表示・照明器具、ガス分解装置、殺菌・消毒装置などに応用される。
【従来の技術】
カーボンナノチューブは、シリコンやモリブデンで作られたスピント型エミッターやダイヤモンド薄膜などの従来の電子放出素材に比べて、電流密度、駆動電圧、頑健さ、寿命などの特性において総合的に優れており、FED用電子源として現在最も有望視されている。これは、カーボンナノチューブが大きなアスペクト比(長さと直径の比)と鋭い先端とを持ち、化学的に安定で機械的にも強靱であり、しかも、高温での安定性に優れているなど、電界放出素子の材料として有利な物理化学的性質を備えているからである。
カーボンナノチューブの作製方法として、2本の炭素電極間のギャップを1mm程度に保った状態で、ヘリウム中で安定な直流アーク放電を持続させることにより、陽極の炭素電極の直径とほぼ同じ径をもつ円柱状の堆積物を陰極先端に形成する方法がある。この円柱状の堆積物を構成する内側の芯は、堆積物柱の長さ方向にのびた繊維状の組織である柱状グラファイトを持ち、柱状グラファイトはカーボンナノチューブの集合体である。この柱状グラファイトを含むペーストをスクリーン印刷により基板面に所定のパターンに形成すれば、電子放出部が形成できる(特許文献1参照)。こうして形成したFEDパネルでは、一本一本のカーボンナノチューブの向きおよび高さがバラバラであるため、電界を掛けた際に一本一本のカーボンナノチューブにかかる電界が不均一となり、結果として電界放出が不均一となり、表示画面が粗くかつ輝度が不十分であるという問題があった。
スクリーン印刷法に代えて、シリコンやガラスの基板に触媒金属の薄膜をパターニングしておき、それを種結晶としてCVD法によりブラシ状にカーボンナノチューブを成長させ、これを電子放出素子に適用しようとする試みも行われている。しかし、CVD法により成長したブラシ状カーボンナノチューブは互いに絡まり合いつつ横に曲がりながら成長するため、1本1本のカーボンナノチューブが高さの不揃いなものとなり、そのようなカーボンナノチューブを用いた電子放出素子では、多数のチューブ先端を等しく電気的に利用することができず、電子の均一な放出が不可能である。
また、従来のカーボンナノチューブ製造方法では、基板は一般に原料ガス流れ方向に配置され、金属触媒は基板面に蒸着膜として形成されているため、電界電子放出が可能なような十分なカーボンナノチューブ間隔を得ることができない。
さらに、基板面に成長させたカーボンナノチューブは基板との結合が強固でなく、その結果電気的な接触抵抗が増し、低い電圧での駆動が困難である。
【特許文献1】
特開平11−162383号公報。
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記のような実状に鑑み、均一な電子放出、低い電圧での駆動および長寿命化を達成することができ、しかも電界電子放出が可能なような十分なカーボンナノチューブ間隔を得ることができる電子放出素子用のカーボンナノチューブの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、基板に触媒金属粒子を担持させ、該触媒粒子を核として基板上に化学蒸着法によりカーボンナノチューブを成長させるに当たり、基板がカーボン繊維または金属繊維からなる通気性シートで構成されていることを特徴とする、カーボンナノチューブの製造方法である。
請求項2の発明は、基板への触媒金属粒子の担持を、触媒金属の超微粒子を含む液を用いて行う、請求項1記載のカーボンナノチューブの製造方法である。
請求項3の発明は、カーボンナノチューブを成長させた後、基板裏面に通気阻止膜を設ける、請求項1または2記載のカーボンナノチューブの製造方法である。
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施形態について説明をする。
請求項1の発明において、基板を構成する通気性シートは、カーボン繊維または金属繊維からなる。カーボン繊維は、ポリアクリロニトリル、ピッチ等を原料とした繊維を不活性雰囲気中で1000〜1500℃で焼成、炭化することにより得られる。カーボン繊維からなるシートはこのような繊維を材料として成形したシートであり、市販品を用いることができる。金属繊維は、鋼、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、タングステン、モリブデン等からなる。金属繊維からなるシートはこのような繊維を材料として成形したシートであり、市販品を用いることができる。繊維の直径は数μm〜数十μmであり、通気性シートからなる基板の開口率は好ましくは20〜80%であり、厚さは好ましくは0.1〜1mmである。
触媒金属は、鉄、コバルト、ニッケルなどであり、例えば鉄カルボニル錯体(ペンタカルボニル鉄等)のような錯体の形態、金属アルコキシド(Fe(OEt)3等)の形態等で供給されてもよい。金属錯体や金属アルコキシドは溶液で供給されてもよい。溶媒はアセトン、アルコール等であってよい。溶液中の金属錯体や金属アルコキシドの濃度は例えば1〜5重量%であってよい。例えば浸漬法や塗布法により、カーボン繊維または金属繊維に触媒金属粒子からなる薄膜が形成される。薄膜の厚みは、厚過ぎると加熱による金属粒子化が困難になるので、好ましくは1〜100nmである。
次いでこの薄膜を好ましくは減圧下または非酸化雰囲気中で好ましくは650〜800℃に加熱すると、直径1〜50nm程度の金属触媒粒子が形成される。触媒金属粒子からなる薄膜上に化学蒸着法によりカーボンナノチューブを成長させる工程では、原料ガスは通常はアセチレン(C2H2)ガスであるが、メタンガス、エタンガスのような他の脂肪族炭化水素ガスであってもよい。アセチレンの場合、多層構造で太さ12〜38nmのカーボンナノチューブが基板面にブラシ毛状に形成される。原料ガスはヘリウムやアルゴン、キセノンのような不活性ガスで希釈された状態で原料ガス供給管を経て反応ゾーンに供給してもよい。
ガス供給は連続的に行っても断続的に行ってもよい。化学蒸着法の操作条件は、好ましくは、大気圧下で、温度650〜800℃、好ましくは700〜750℃、時間1〜10分である。
カーボンナノチューブ成長の化学蒸着反応ゾーンにおいて、基板は原料ガスの流れ方向に対し実質的に垂直方向に配向するのが好ましい。基板を通気性シートで構成されているので、原料ガスはこれを通過することができる。基板を原料ガスの流れ方向に対し実質的に垂直方向に配向することにより、原料ガスの反応率を向上させ、未反応量を減らすことができる。また、化学蒸着反応ゾーンにおいて複数枚の基板を原料ガスの流路に所定間隔で配列するのが好ましい。このように基板を原料ガスの流路に複数枚配列することにより、原料ガスの反応率を向上させ、未反応量を減らすことができる。
請求項2の発明において、基板に触媒金属の超微粒子を担持させるには、例えば、触媒金属の超微粒子を含む液を基板にスプレーや刷毛で塗布し、次いで基板を乾燥、必要であれば加熱する方法や、触媒金属の超微粒子を含む液もしくはその希釈液に撹拌下に基板を浸漬し、次いで基板を乾燥、必要であれば加熱する方法が採用できる。超微粒子の粒径は好ましくは1〜10nmである。浸漬時間は例えば10〜30秒であってよく、乾燥温度は例えば100〜150℃であってよい。触媒金属の超微粒子を含む液の代表的な例は磁性流体である。磁性流体は、鉄などの磁性体超微粒子(粒径は通常10nm以下)を界面活性剤を用いて水や炭化水素などの媒体に分散させたもの(濃度は通常1重量%程度)で、例えば、マグネタイト(Fe3O4)の超微粒子にオレイン酸を吸着させ、この疎水基を外側に向けて、超微粒子を炭化水素中に分散させたものである。触媒金属の超微粒子を含む液、例えば磁性流体を希釈するための媒体は、例えば水、アセトン等の有機溶媒であってよい。
請求項3の発明において、カーボンナノチューブを成長させた後、基板裏面、すなわち基板のカーボンナノチューブ非生成面に通気阻止膜を形成するには、例えば、基板裏面に銅等の導電性金属の蒸着処理、テフロン(登録商標)等の合成樹脂膜形成処理、酸化膜形成処理、またはこれらの組み合わせを施すことが好ましい。カーボンナノチューブを成長させた後、基板裏面に通気阻止膜を形成したものは、電界電子放出素子として好適に用いられる。金属蒸着により基板の電気抵抗率を向上することができる。
カーボンナノチューブの長さは好ましくは1〜10μm、直径は好ましくは20〜30nm、カーボンナノチューブ相互間の間隔は好ましくは100〜150nmである。
つぎに、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
実施例1
開口率60%のカーボン繊維シートで構成された厚さ0.4mmの円板状の基板に、鉄超微粒子を含む磁性流体(シグマハイケミカル社製「M−300」)を溶媒(数%の界面活性剤入りの水:アセトン=50:50)で1重量%に希釈した液をスプレー法により塗布し、次いで乾燥した。こうして、基板のカーボン繊維に粒径10nmの鉄超微粒子を付着させた。
図1に示す、触媒粒子を核として薄膜上に化学蒸着法によりカーボンナノチューブを成長させるカーボンナノチューブ形成装置において、円筒状の反応管(1) 内に、鉄超微粒子を付着したカーボン繊維製の複数枚の円板状基板(2) を、反応管(1) の長さ方向、すなわち原料ガスの流れ方向に対し実質的に垂直方向に配向し、かつ流れ方向に互いに所定間隔で配列した。原料ガスはアセチレンガスで、これをヘリウムガスで希釈した状態で(アセチレンガス:ヘリウムガス=1:9)、反応管(1) に連続的に流量30ml/minで供給し、基板(2) を厚さ方向に通過させた。同時に基板(2) をコイルヒータ(3) によって加熱した。
化学蒸着法の操作条件は、大気圧下で、温度730℃、時間5分とした。
この操作により、図3に示すように、基板(2) を構成するカーボン繊維(4) に付着した鉄超微粒子を核としてブラシ状カーボンナノチューブ(5) が生成し、徐々に成長した。成長したカーボンナノチューブは、太さ約20nmの多層構造であり、長さは約10μmであった。
つぎに、基板(2) の裏面、すなわち基板(2) のカーボンナノチューブ非生成面に銅の蒸着処理を施して厚さ約1μmの銅蒸着膜(6) を形成し、さらにその上にテフロン(登録商標)樹脂膜形成処理を施して厚さ約10μmのテフロン(登録商標)皮膜(7) を形成した。こうして電界電子放出素子を作製した。
カーボンナノチューブを電子放出素子とするFEDの構造を図4に模式的に示す。同図において、(41)(42)は上下一対のガラス板であり、下側のガラス板(42)の上面にカソード電極(43)が設けられ、カソード電極(43)の上面にエミッターとなる多数のカーボンナノチューブからなる放電素子(44)が形成されている。カソード電極(43)の上面には絶縁体層(47)を介して厚さ0.1mmのゲート電極(48)が放電素子(44)を囲うように設けられている。また、上側のガラス板(41)の下面には、透明膜からなるアノード電極(45)が貼り付けられ、アノード電極(45)の下面には蛍光材層(46)が設けられている。この構成全体が密閉容器内に配置され容器は10−6Torrオーダーの真空度に吸引されて封止されている。カソード電極(43)とゲート電極(48)の間にゲート電圧が印加され、カソード電極(43)とアノード電極(45)の間にはアノード電圧が印加される。その結果、多数のカーボンナノチューブからなる放電素子(44)の先端から電子が放出され、ゲート電極(48)の間を通過して上行し、蛍光材層(46)を経てアノード電極(45)に受けられる。こうして構成されたFEDにおいて、5wの電力で500cd/m2の輝度が得られた。
実施例2
この実施例では、図2に示す、触媒粒子を核として薄膜上に化学蒸着法によりカーボンナノチューブを成長させるカーボンナノチューブ形成装置において、反応管(11)は角筒状であって、基板(12)は正方形である。この角筒状反応管(11)内に4枚の隣接基板(12)からなる複数の基板群を、反応管(11)の長さ方向、すなわち原料ガスの流れ方向に対し実質的に垂直方向に配向し、かつ流れ方向に互いに所定間隔で配列した。原料ガスはアセチレンガスで、これをヘリウムガスで希釈した状態で(アセチレンガス:ヘリウムガス=1:9)、反応管(11)に連続的に流量30ml/minで供給し、基板(12)を厚さ方向に通過させた。同時に基板(12)をコイルヒータ(13)によって加熱した。反応管(11)を出た混合ガス(アセチレンガス:ヘリウムガス1:9)を水中バブリングし、未反応アセチレンガスを水に捕集した後、ヘリウムガスを乾燥し、このヘリウムガスでアセチレンガスを希釈し、混合バスを反応管(11)に再び供給した(図2中の鎖線参照)。その他の構成は実施例1のものと同じである。
【発明の効果】
本発明によると、基板はカーボン繊維または金属繊維からなる通気性シートで構成されているので、カーボンナノチューブは繊維上のみに成長する。したがって、繊維の粗さを整えることによりカーボンナノチューブの相互間隔を電界電子放出が可能なような十分な大きさにすることができる。
また、原料ガスは基板の内部を通過できるのでカーボンナノチューブにむらがなく、カーボンナノチューブの成長高さを均一に揃えることができ、その結果、構築したFEDにおいて均一な電子放出、低い電圧での駆動および長寿命化を達成することができる。
さらに、カーボン繊維または金属繊維の採用により基板の導電性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のカーボンナノチューブ製造装置を概略的に示す斜視図である。
【図2】実施例2のカーボンナノチューブ製造装置を概略的に示す斜視図である。
【図3】カーボン繊維からなる通気性シートで構成された基板を示す垂直断面図である。
【図4】カーボンナノチューブを電子放出素子とするFEDの構造を模式的に示す垂直断面図である。
【符号の説明】
(1):反応管
(2):円板状基板
(3):コイルヒータ
(4):カーボン繊維
(5):カーボンナノチューブ
(6):銅蒸着膜
(7):テフロン(登録商標)皮膜
(11):反応管
(12):基板
(13):コイルヒータ
本発明は、カーボンナノチューブの製造方法に関する。カーボンナノチューブは、カーボン原子が網目状に結合してできた極微細な単層または多層の筒(チューブ)状の物質である。カーボンナノチューブを用いた電子放出素子は、フィールドエミッション型フラットパネルディスプレイ(FED)や、X線源、電子線リソグラフィー、表示・照明器具、ガス分解装置、殺菌・消毒装置などに応用される。
【従来の技術】
カーボンナノチューブは、シリコンやモリブデンで作られたスピント型エミッターやダイヤモンド薄膜などの従来の電子放出素材に比べて、電流密度、駆動電圧、頑健さ、寿命などの特性において総合的に優れており、FED用電子源として現在最も有望視されている。これは、カーボンナノチューブが大きなアスペクト比(長さと直径の比)と鋭い先端とを持ち、化学的に安定で機械的にも強靱であり、しかも、高温での安定性に優れているなど、電界放出素子の材料として有利な物理化学的性質を備えているからである。
カーボンナノチューブの作製方法として、2本の炭素電極間のギャップを1mm程度に保った状態で、ヘリウム中で安定な直流アーク放電を持続させることにより、陽極の炭素電極の直径とほぼ同じ径をもつ円柱状の堆積物を陰極先端に形成する方法がある。この円柱状の堆積物を構成する内側の芯は、堆積物柱の長さ方向にのびた繊維状の組織である柱状グラファイトを持ち、柱状グラファイトはカーボンナノチューブの集合体である。この柱状グラファイトを含むペーストをスクリーン印刷により基板面に所定のパターンに形成すれば、電子放出部が形成できる(特許文献1参照)。こうして形成したFEDパネルでは、一本一本のカーボンナノチューブの向きおよび高さがバラバラであるため、電界を掛けた際に一本一本のカーボンナノチューブにかかる電界が不均一となり、結果として電界放出が不均一となり、表示画面が粗くかつ輝度が不十分であるという問題があった。
スクリーン印刷法に代えて、シリコンやガラスの基板に触媒金属の薄膜をパターニングしておき、それを種結晶としてCVD法によりブラシ状にカーボンナノチューブを成長させ、これを電子放出素子に適用しようとする試みも行われている。しかし、CVD法により成長したブラシ状カーボンナノチューブは互いに絡まり合いつつ横に曲がりながら成長するため、1本1本のカーボンナノチューブが高さの不揃いなものとなり、そのようなカーボンナノチューブを用いた電子放出素子では、多数のチューブ先端を等しく電気的に利用することができず、電子の均一な放出が不可能である。
また、従来のカーボンナノチューブ製造方法では、基板は一般に原料ガス流れ方向に配置され、金属触媒は基板面に蒸着膜として形成されているため、電界電子放出が可能なような十分なカーボンナノチューブ間隔を得ることができない。
さらに、基板面に成長させたカーボンナノチューブは基板との結合が強固でなく、その結果電気的な接触抵抗が増し、低い電圧での駆動が困難である。
【特許文献1】
特開平11−162383号公報。
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記のような実状に鑑み、均一な電子放出、低い電圧での駆動および長寿命化を達成することができ、しかも電界電子放出が可能なような十分なカーボンナノチューブ間隔を得ることができる電子放出素子用のカーボンナノチューブの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、基板に触媒金属粒子を担持させ、該触媒粒子を核として基板上に化学蒸着法によりカーボンナノチューブを成長させるに当たり、基板がカーボン繊維または金属繊維からなる通気性シートで構成されていることを特徴とする、カーボンナノチューブの製造方法である。
請求項2の発明は、基板への触媒金属粒子の担持を、触媒金属の超微粒子を含む液を用いて行う、請求項1記載のカーボンナノチューブの製造方法である。
請求項3の発明は、カーボンナノチューブを成長させた後、基板裏面に通気阻止膜を設ける、請求項1または2記載のカーボンナノチューブの製造方法である。
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施形態について説明をする。
請求項1の発明において、基板を構成する通気性シートは、カーボン繊維または金属繊維からなる。カーボン繊維は、ポリアクリロニトリル、ピッチ等を原料とした繊維を不活性雰囲気中で1000〜1500℃で焼成、炭化することにより得られる。カーボン繊維からなるシートはこのような繊維を材料として成形したシートであり、市販品を用いることができる。金属繊維は、鋼、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、タングステン、モリブデン等からなる。金属繊維からなるシートはこのような繊維を材料として成形したシートであり、市販品を用いることができる。繊維の直径は数μm〜数十μmであり、通気性シートからなる基板の開口率は好ましくは20〜80%であり、厚さは好ましくは0.1〜1mmである。
触媒金属は、鉄、コバルト、ニッケルなどであり、例えば鉄カルボニル錯体(ペンタカルボニル鉄等)のような錯体の形態、金属アルコキシド(Fe(OEt)3等)の形態等で供給されてもよい。金属錯体や金属アルコキシドは溶液で供給されてもよい。溶媒はアセトン、アルコール等であってよい。溶液中の金属錯体や金属アルコキシドの濃度は例えば1〜5重量%であってよい。例えば浸漬法や塗布法により、カーボン繊維または金属繊維に触媒金属粒子からなる薄膜が形成される。薄膜の厚みは、厚過ぎると加熱による金属粒子化が困難になるので、好ましくは1〜100nmである。
次いでこの薄膜を好ましくは減圧下または非酸化雰囲気中で好ましくは650〜800℃に加熱すると、直径1〜50nm程度の金属触媒粒子が形成される。触媒金属粒子からなる薄膜上に化学蒸着法によりカーボンナノチューブを成長させる工程では、原料ガスは通常はアセチレン(C2H2)ガスであるが、メタンガス、エタンガスのような他の脂肪族炭化水素ガスであってもよい。アセチレンの場合、多層構造で太さ12〜38nmのカーボンナノチューブが基板面にブラシ毛状に形成される。原料ガスはヘリウムやアルゴン、キセノンのような不活性ガスで希釈された状態で原料ガス供給管を経て反応ゾーンに供給してもよい。
ガス供給は連続的に行っても断続的に行ってもよい。化学蒸着法の操作条件は、好ましくは、大気圧下で、温度650〜800℃、好ましくは700〜750℃、時間1〜10分である。
カーボンナノチューブ成長の化学蒸着反応ゾーンにおいて、基板は原料ガスの流れ方向に対し実質的に垂直方向に配向するのが好ましい。基板を通気性シートで構成されているので、原料ガスはこれを通過することができる。基板を原料ガスの流れ方向に対し実質的に垂直方向に配向することにより、原料ガスの反応率を向上させ、未反応量を減らすことができる。また、化学蒸着反応ゾーンにおいて複数枚の基板を原料ガスの流路に所定間隔で配列するのが好ましい。このように基板を原料ガスの流路に複数枚配列することにより、原料ガスの反応率を向上させ、未反応量を減らすことができる。
請求項2の発明において、基板に触媒金属の超微粒子を担持させるには、例えば、触媒金属の超微粒子を含む液を基板にスプレーや刷毛で塗布し、次いで基板を乾燥、必要であれば加熱する方法や、触媒金属の超微粒子を含む液もしくはその希釈液に撹拌下に基板を浸漬し、次いで基板を乾燥、必要であれば加熱する方法が採用できる。超微粒子の粒径は好ましくは1〜10nmである。浸漬時間は例えば10〜30秒であってよく、乾燥温度は例えば100〜150℃であってよい。触媒金属の超微粒子を含む液の代表的な例は磁性流体である。磁性流体は、鉄などの磁性体超微粒子(粒径は通常10nm以下)を界面活性剤を用いて水や炭化水素などの媒体に分散させたもの(濃度は通常1重量%程度)で、例えば、マグネタイト(Fe3O4)の超微粒子にオレイン酸を吸着させ、この疎水基を外側に向けて、超微粒子を炭化水素中に分散させたものである。触媒金属の超微粒子を含む液、例えば磁性流体を希釈するための媒体は、例えば水、アセトン等の有機溶媒であってよい。
請求項3の発明において、カーボンナノチューブを成長させた後、基板裏面、すなわち基板のカーボンナノチューブ非生成面に通気阻止膜を形成するには、例えば、基板裏面に銅等の導電性金属の蒸着処理、テフロン(登録商標)等の合成樹脂膜形成処理、酸化膜形成処理、またはこれらの組み合わせを施すことが好ましい。カーボンナノチューブを成長させた後、基板裏面に通気阻止膜を形成したものは、電界電子放出素子として好適に用いられる。金属蒸着により基板の電気抵抗率を向上することができる。
カーボンナノチューブの長さは好ましくは1〜10μm、直径は好ましくは20〜30nm、カーボンナノチューブ相互間の間隔は好ましくは100〜150nmである。
つぎに、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
実施例1
開口率60%のカーボン繊維シートで構成された厚さ0.4mmの円板状の基板に、鉄超微粒子を含む磁性流体(シグマハイケミカル社製「M−300」)を溶媒(数%の界面活性剤入りの水:アセトン=50:50)で1重量%に希釈した液をスプレー法により塗布し、次いで乾燥した。こうして、基板のカーボン繊維に粒径10nmの鉄超微粒子を付着させた。
図1に示す、触媒粒子を核として薄膜上に化学蒸着法によりカーボンナノチューブを成長させるカーボンナノチューブ形成装置において、円筒状の反応管(1) 内に、鉄超微粒子を付着したカーボン繊維製の複数枚の円板状基板(2) を、反応管(1) の長さ方向、すなわち原料ガスの流れ方向に対し実質的に垂直方向に配向し、かつ流れ方向に互いに所定間隔で配列した。原料ガスはアセチレンガスで、これをヘリウムガスで希釈した状態で(アセチレンガス:ヘリウムガス=1:9)、反応管(1) に連続的に流量30ml/minで供給し、基板(2) を厚さ方向に通過させた。同時に基板(2) をコイルヒータ(3) によって加熱した。
化学蒸着法の操作条件は、大気圧下で、温度730℃、時間5分とした。
この操作により、図3に示すように、基板(2) を構成するカーボン繊維(4) に付着した鉄超微粒子を核としてブラシ状カーボンナノチューブ(5) が生成し、徐々に成長した。成長したカーボンナノチューブは、太さ約20nmの多層構造であり、長さは約10μmであった。
つぎに、基板(2) の裏面、すなわち基板(2) のカーボンナノチューブ非生成面に銅の蒸着処理を施して厚さ約1μmの銅蒸着膜(6) を形成し、さらにその上にテフロン(登録商標)樹脂膜形成処理を施して厚さ約10μmのテフロン(登録商標)皮膜(7) を形成した。こうして電界電子放出素子を作製した。
カーボンナノチューブを電子放出素子とするFEDの構造を図4に模式的に示す。同図において、(41)(42)は上下一対のガラス板であり、下側のガラス板(42)の上面にカソード電極(43)が設けられ、カソード電極(43)の上面にエミッターとなる多数のカーボンナノチューブからなる放電素子(44)が形成されている。カソード電極(43)の上面には絶縁体層(47)を介して厚さ0.1mmのゲート電極(48)が放電素子(44)を囲うように設けられている。また、上側のガラス板(41)の下面には、透明膜からなるアノード電極(45)が貼り付けられ、アノード電極(45)の下面には蛍光材層(46)が設けられている。この構成全体が密閉容器内に配置され容器は10−6Torrオーダーの真空度に吸引されて封止されている。カソード電極(43)とゲート電極(48)の間にゲート電圧が印加され、カソード電極(43)とアノード電極(45)の間にはアノード電圧が印加される。その結果、多数のカーボンナノチューブからなる放電素子(44)の先端から電子が放出され、ゲート電極(48)の間を通過して上行し、蛍光材層(46)を経てアノード電極(45)に受けられる。こうして構成されたFEDにおいて、5wの電力で500cd/m2の輝度が得られた。
実施例2
この実施例では、図2に示す、触媒粒子を核として薄膜上に化学蒸着法によりカーボンナノチューブを成長させるカーボンナノチューブ形成装置において、反応管(11)は角筒状であって、基板(12)は正方形である。この角筒状反応管(11)内に4枚の隣接基板(12)からなる複数の基板群を、反応管(11)の長さ方向、すなわち原料ガスの流れ方向に対し実質的に垂直方向に配向し、かつ流れ方向に互いに所定間隔で配列した。原料ガスはアセチレンガスで、これをヘリウムガスで希釈した状態で(アセチレンガス:ヘリウムガス=1:9)、反応管(11)に連続的に流量30ml/minで供給し、基板(12)を厚さ方向に通過させた。同時に基板(12)をコイルヒータ(13)によって加熱した。反応管(11)を出た混合ガス(アセチレンガス:ヘリウムガス1:9)を水中バブリングし、未反応アセチレンガスを水に捕集した後、ヘリウムガスを乾燥し、このヘリウムガスでアセチレンガスを希釈し、混合バスを反応管(11)に再び供給した(図2中の鎖線参照)。その他の構成は実施例1のものと同じである。
【発明の効果】
本発明によると、基板はカーボン繊維または金属繊維からなる通気性シートで構成されているので、カーボンナノチューブは繊維上のみに成長する。したがって、繊維の粗さを整えることによりカーボンナノチューブの相互間隔を電界電子放出が可能なような十分な大きさにすることができる。
また、原料ガスは基板の内部を通過できるのでカーボンナノチューブにむらがなく、カーボンナノチューブの成長高さを均一に揃えることができ、その結果、構築したFEDにおいて均一な電子放出、低い電圧での駆動および長寿命化を達成することができる。
さらに、カーボン繊維または金属繊維の採用により基板の導電性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のカーボンナノチューブ製造装置を概略的に示す斜視図である。
【図2】実施例2のカーボンナノチューブ製造装置を概略的に示す斜視図である。
【図3】カーボン繊維からなる通気性シートで構成された基板を示す垂直断面図である。
【図4】カーボンナノチューブを電子放出素子とするFEDの構造を模式的に示す垂直断面図である。
【符号の説明】
(1):反応管
(2):円板状基板
(3):コイルヒータ
(4):カーボン繊維
(5):カーボンナノチューブ
(6):銅蒸着膜
(7):テフロン(登録商標)皮膜
(11):反応管
(12):基板
(13):コイルヒータ
Claims (3)
- 基板に触媒金属粒子を担持させ、該触媒粒子を核として基板上に化学蒸着法によりカーボンナノチューブを成長させるに当たり、基板がカーボン繊維または金属繊維からなる通気性シートで構成されていることを特徴とする、カーボンナノチューブの製造方法。
- 基板への触媒金属粒子の担持を、触媒金属の超微粒子を含む液を用いて行う、請求項1記載のカーボンナノチューブの製造方法。
- カーボンナノチューブを成長させた後、基板裏面に通気阻止膜を設ける、請求項1または2記載のカーボンナノチューブの製造方法。
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2003
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