JP2005001953A - 合わせガラス及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】メルトフローレートが15g/10分以上の樹脂を含む樹脂組成物を2枚の透明基材に挟持させ、仮圧着を行った後に、又は仮圧着を行いながら、前記樹脂組成物を加熱硬化させて中間膜を形成する工程を有する合わせガラスの製造方法であって、前記仮圧着時における樹脂組成物の温度を、前記樹脂の溶融温度(JIS K 6924−2)をTm(℃)としたとき、Tm−15〜Tm(℃)の範囲内とする合わせガラスの製造方法である。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、合わせガラス、特に自動車、航空機等のウインドウ用ガラス、建築物の窓ガラス等に用いる合わせガラス及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車、航空機等のウインドウ用ガラス、建築物の窓ガラス等には、従来から合わせガラスが広く用いられている。合わせガラスは、通常2枚の透明基材の間に樹脂膜(中間膜)が挟持されており、衝撃等に対して高い安全性を有することから、上記のような用途で安全ガラスとして使用されている。
【0003】
合わせガラスは、外部から衝撃が加えられた場合に、ガラスの部分は破損するが、透明基材間の中間膜は、容易には破損されないため、破損したガラスは中間膜に貼着されたままで、ガラスの破片が周囲に飛散することはほとんどない。
【0004】
合わせガラスが、上記のような安全ガラスとしての機能を発揮するには、透明基材と中間膜の接着力をある範囲に調整することが必要である。透明基材と中間膜との接着力が小さい場合は、外部からの衝撃により破損した透明基材が中間膜から剥がれて飛散しやすく、一方、接着力が大きい場合は透明基材と中間膜が衝撃と同時に共に破損して、破片が飛散してしまう。
【0005】
ところで、合わせガラスを、熱可塑性のエチレン−酢酸ビニル(EVA)を中間膜として使用して製造する場合、従来においては、EVAを含む樹脂組成物を2枚の透明基材に挟持させた状態で真空袋に投入し、脱気しながら加熱して仮圧着を行った後、又は仮圧着を行いながら、オートクレーブでEVAを本架橋するという方法で行われている(例えば、特許文献1参照。)。そして、一般的に使用されている低MFRタイプ(MFRが15g/10分以下)の中間膜の仮圧着は、中間膜温度が溶融温度(JIS K 6924−2)(Tm)以上になるまで加熱しながら脱気するという条件で行われている。
【0006】
このような合わせガラスの製造方法を、MFRが15g/10分以上の樹脂に適用し、仮圧着する場合、溶融温度(JIS K 6924−2)(Tm)以上で行うと、溶融した樹脂が合わせガラスの縁部よりはみ出し、後工程でトリミング処理が必要になったり、また、合わせガラス自身の端部に加工歪みが残り、透視不良や施工時に割れが発生したりするという問題があった。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−35349号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の事情に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、
本発明の目的は、MFRが15g/10分以上の樹脂を中間膜として使用した合わせガラスにおいて、加工歪みが少なく優れた透視性を有する合わせガラスを提供することにある。
本発明の別の目的は、MFRが15g/10分以上の樹脂を中間膜として使用した場合であっても、加工歪みが少なく優れた透視性を有する合わせガラスを製造可能な合わせガラスの製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、合わせガラスにおいてMFRが15g/10分以上の樹脂を中間膜に用いた場合であっても、仮圧着時の温度を所定の範囲内に設定することにより加工歪みの発生が少ない合わせガラスが得られることを見出し、本発明を想到するに至った。
なお、字義からは、本発明の合わせガラス は、「合わせ透明基材」と呼ぶべきであるが、「合わせガラス」の語は、材質をいうものではなく、2枚の透明基材に中間膜を挟持してなるものを呼ぶものとして「合わせガラス」の語を用いる。
上記課題を解決する手段は以下の通りである。即ち、
本発明の合わせガラスは、メルトフローレートが15g/10分以上の樹脂を含む樹脂組成物を2枚の透明基材に挟持させ、前記樹脂の溶融温度(JIS K6924−2)をTm(℃)としたとき、Tm−15〜Tm(℃)の範囲内の温度で仮圧着を行った後に、又は該温度範囲内の温度で仮圧着を行いながら、前記樹脂組成物を加熱硬化させて中間膜を形成して得られることを特徴としている。
また、本発明の合わせガラスの製造方法は、メルトフローレートが15g/10分以上の樹脂を含む樹脂組成物を2枚の透明基材に挟持させ、仮圧着を行った後に、又は仮圧着を行いながら、前記樹脂組成物を加熱硬化させて中間膜を形成する工程を有する合わせガラスの製造方法であって、前記仮圧着時における樹脂組成物の温度を、前記樹脂の溶融温度(JIS K 6924−2)をTm(℃)としたとき、Tm−15〜Tm(℃)の範囲内とすることを特徴としている。
前記樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル樹脂を使用することが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の合わせガラスは、メルトフローレートが15g/10分以上の樹脂を含む樹脂組成物を2枚の透明基材に挟持させ、前記樹脂の溶融温度(JIS K6924−2)をTm(℃)としたとき、Tm−15〜Tm(℃)の範囲内の温度で仮圧着を行った後に、又は該温度範囲内の温度で仮圧着を行いながら、前記樹脂組成物を加熱硬化させて中間膜を形成して得られることを特徴としている。
また、本発明の合わせガラスの製造方法は、メルトフローレートが15g/10分以上の樹脂を含む樹脂組成物を2枚の透明基材に挟持させ、仮圧着を行った後に、又は仮圧着を行いながら、前記樹脂組成物を加熱硬化させて中間膜を形成する工程を有する合わせガラスの製造方法であって、前記仮圧着時における前記樹脂組成物の温度を、前記樹脂の溶融温度(JIS K 6924−2)をTm(℃)としたとき、Tm−15〜Tm(℃)の範囲内とすることを特徴としている。
以下、先ず、本発明の合わせガラスについて説明する。
【0011】
<合わせガラス>
[樹脂組成物]
(樹脂)
前記樹脂としては、本発明においては、MFRが15g/10分以上の樹脂を使用する。該MFRが15〜50g/10分の樹脂を用いることが好ましく、15〜30g/10分の樹脂を使用することがさらに好ましい。
また、本発明は、MFRが15g/10分以上の樹脂を対象にしており、MFRが15g/10分未満の樹脂は、本発明の目的を逸脱してしまう。
【0012】
このような本発明において使用する樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル樹脂(以下、「EVA」という場合がある。)、ウレタン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、エチレン−エチルアクリレート樹脂等、従来から合わせガラスの中間膜として用いられている樹脂が挙げられ、中でも、エチレン−酢酸ビニル樹脂が好ましい。
【0013】
本発明において、樹脂としてEVAを使用する場合、EVA中の酢酸ビニルの含有量は、20〜50質量%であることが好ましく、26〜40質量%であることがより好ましい。酢酸ビニルの含有量を、20〜50質量%とすることにより、中間膜の透明性が十分で、耐貫通性、貯蔵性を良好にすることができる。
【0014】
[架橋剤]
本発明においては、樹脂組成物中のエチレン−酢酸ビニル樹脂を硬化させるための架橋剤として、有機過酸化物又は光開始剤を用いることが好ましい。有機過酸化物としては、樹脂の加工温度・貯蔵安定性の観点から例えば、ベンゾイルパーオキサイド系硬化剤、tert−ヘキシルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ジ−n−オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、スクシニックアシドパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、4−メチルベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、m−トルオイル+ベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキサシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサネート、2,2−ビス(4,4−ジ−tert−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、tert−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシマレイックアシド、tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、tert−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、等が挙げられる。
【0015】
特に好ましいのは、ベンゾイルパーオキサイド系硬膜剤、ジ−n−オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、スクシニックアシドパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、4−メチルベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、m−トルオイル+ベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキサシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサネート、2,2−ビス(4,4−ジ−tert−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、tert−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネートである。
上記ベンゾイルパーオキサイド系硬化剤としては、70℃以上の温度で分解してラジカルを発生するものであればいずれも使用可能であるが、半減期10時間の分解温度が50℃以上のものが好ましく、調製条件、成膜温度、硬化(貼り合わせ)温度、被着体の耐熱性、貯蔵安定性を考慮して適宜選択できる。
【0016】
使用可能なベンゾイルパーオキサイド系硬化剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエート、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。ベンゾイルパーオキサイド系硬化剤は1種でも2種以上を組み合わせて使用してもよく、その配合量は、エチレン−酢酸ビニル樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部であることが好ましい。また、上記で例示したもの以外のパーオキサイドと混合して用いることも可能である。
【0017】
また、光開始剤としては、公知のどのような光開始剤でも使用することができるが、配合後の貯蔵安定性の良いものが望ましい。このような光開始剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系、ベンジルジメチルケタ−ルなどのベンゾイン系、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、イソプロピルチオキサントン、2−4−ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン系、その他特殊なものとしては、メチルフェニルグリオキシレ−トなどが使用できる。特に好ましくは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾフェノン等が挙げられる。これら光開始剤は、必要に応じて、4−ジメチルアミノ安息香酸のごとき安息香酸系又は、第3級アミン系などの公知慣用の光重合促進剤の1種または2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。また、光開始剤のみの1種単独または2種以上の混合で使用することができる。
また、光開始剤の配合量は、エチレン−酢酸ビニル樹脂100質量部に対して0.5〜5.0質量部であることが好ましい。
【0018】
[官能性モノマー]
また更に、本発明においては、中間膜の種々の物性(機械的強度、接着性、透明性等の光学的特性、耐熱性、耐光性、架橋速度等)の改良又は調整、特に、機械的強度の改良のため、官能性モノマーを添加することが好ましい。1〜3個の官能基を有する官能性モノマーとしては、アクリロキシ基、メタクリロキシ基又はアリル基を有する化合物が挙げられる。
【0019】
該当する化合物としては、アクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体、例えばそのエステルやアミドが最も一般的である。この場合、エステル残基としては、メチル、エチル、ドデシル、ステアリル、ラウリルのようなアルキル基の他に、シクロヘキシル基、テトラヒドロフルフリル基、アミノエチル基、2−ヒドロエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。また、アクリル酸又はメタクリル酸とエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多官能アルコールとのエステルも同様に用いられる。アミドとしては、アクリルアミドが代表的である。また、アリル基含有化合物としては、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合物が、エチレン−酢酸ビニル樹脂100質量部に対し、0.1〜50質量部、好ましくは0.5〜30質量部添加して用いられる。0.1質量部未満であると前記機械的強度向上という改良効果を低下させることがあり、50質量部を超えると接着剤の調製時の作業性や製膜製を低下させることがある。配合量を0.1〜50質量部とすることにより、中間膜の物性(機械的強度、接着性、光学特性、耐熱性、耐光性等)が十分に発現するとともに、樹脂組成物の調製時の作業性や中間膜の成膜性が良好となり好ましい。
【0020】
アクリル酸又はメタクリル酸のエステルのエステル残基の例としては、メチル基、エチル基、ドデシル基、ステアリル基、ラウリル基等の直鎖状のアルキル基、シクロヘキシル基、テトラヒドロフルフリル基、アミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル基等を挙げることができる。
【0021】
また、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール1分子とアクリル酸又はメタクリル酸1分子又は2分子以上とがエステル化したエステルを挙げることもできる。
【0022】
本発明においては、前記官能性モノマーの中でも、特に、3官能モノマーを用いることが好ましい。3官能モノマーと、本発明に係るエチレン−酢酸ビニル樹脂とを併用することにより、透明性が向上し好ましい。該3官能モノマーとしては、トリメチロールプロパンメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルシアヌレート、等が挙げられ、中でも特に、トリメチロールプロパンメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルシアヌレートが好ましい。
【0023】
[紫外線吸収剤]
更に、本発明においては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を配合することが好ましい。上記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、公知のベンゾフェノン系紫外線吸収剤を用いることができるが、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン等が好ましく挙げられる。なお、上記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の配合量は、樹脂100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。
【0024】
[接着促進剤]
本発明においては、更に、接着促進剤を添加することが好ましい。
接着促進剤は、樹脂組成物の接着性を向上させるために添加することができ、従来公知のものを用いることが可能であるが、例えば、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトシキエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エトキシシクロヘキシル)エチル−トリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が好ましく挙げられる。
【0025】
なお、上記接着促進剤は、単独で使用しても、2種以上組み合わせて用いてもよく、その配合量は、樹脂100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。
【0026】
[光安定剤]
また、本発明においては、耐光性の向上のために、光安定剤を添加することができる。光安定剤としてはヒンダードアミン系と呼ばれる光安定剤を用いることが好ましく、例えば、LA−52、LA−57、LA−62、LA−63LA―63p、LA−67、LA−68(いずれも旭電化(株)製)、Tinuvin744、Tinuvin 770、Tinuvin 765、Tinuvin144、Tinuvin 622LD、CHIMASSORB 944LD(いずれもチバ・ガイギー社製)、UV−3034(B.F.グッドリッチ社製)等を挙げることができる。なお、上記光安定剤は、単独で使用しても、2種以上組み合わせて用いてもよく、その配合量は、樹脂100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。
【0027】
[その他の添加剤]
以上の添加剤のほか、本発明には、老化防止剤、タッキファイアー(松脂成分)、染料、加工助剤等を本発明の効果に支障をきたさない範囲で用いてもよい。
【0028】
前記老化防止剤としては、例えばN,Ν’−ヘキサン−1,6−ジイルビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド〕等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤、ラクトン系熱安定剤、ビタミンE系熱安定剤、イオウ系熱安定剤等が挙げられる。
【0029】
<透明基材>
本発明の合わせガラスに用いる透明基材は、特に限定されないが、例えば無機ガラス板、無着色透明ガラス板、或いは剛性の高い有機高分子板を用いてもよい。剛性の高い有機高分子板としては、ポリカーボネート板、アクリル板等が挙げられる。貼着時の加熱温度等を鑑みると無機ガラス板、無着色透明ガラス板が好ましい。
【0030】
本発明の合わせガラスの層構成としては、例えば、透明基材−中間膜−透明基材、透明基材−中間膜−ポリカーボネート−中間膜−透明基材とすることができる。
【0031】
<合わせガラスの製造方法>
本発明の合わせガラスの製造方法は、上述のMFRが15g/10分以上の樹脂を含む樹脂組成物の各成分をロールミル等にて十分に混和し、例えば、通常の押出成形、カレンダー成形等により成形して得たシート、又は樹脂組成物を溶剤に溶解させ、この溶液を適当な塗布機(コーター)で適当な支持体上に塗布、乾燥して得た塗膜状のシート等を2枚の透明基材間に挟み込み、真空脱気により中間膜と透明基材との間の空気を脱気し、加熱下で仮圧着する。このときの温度は、前記樹脂の溶融温度(JIS K 6924−2)をTm(℃)としたとき、Tm−15〜Tm(℃)の範囲内とする。更に、オートクレーブ中で加圧加熱処理して、樹脂層を架橋硬化させることにより中間膜を形成することができるが、上記樹脂組成物の硬化温度を120℃以下、特に70〜120℃、とりわけ80〜110℃とすることが好ましい。硬化温度を120℃以下とすることにより、反りや剥離が発生を低減することができる。なお、上記加圧加熱硬化処理は、仮圧着を行いながら実行してもよい。
【0032】
本発明の合わせガラスの製造方法においては、仮圧着時の温度を上記範囲内とすることにより、MFRが15g/10分以上の樹脂を用いた場合であっても、加工歪みの発生が少ない合わせガラスを得ることができる。
【0033】
本発明においては、仮圧着時における温度を、Tm−15〜Tm(℃)としているが、より好ましくは、Tm−15〜Tm−5(℃)である。仮圧着時の温度がTm−15(℃)未満であると、十分に仮圧着することができず、Tm(℃)を超えると、ガラスの縁部から樹脂がはみ出し、端部が歪み透視不良や端部剥離が発生する。また、特に、仮圧着時の温度をTm−15〜Tm−5(℃)とすると、板厚偏差が1%未満となり好ましい。
【0034】
また、仮圧着時に、端部が均一に溶融されるには、前記温度とするための昇温速度としては、10℃/分以下とすることが好ましく、2〜7℃/分とすることがより好ましく、5℃/分以下とすることがさらに好ましい。
【0035】
以上示した仮圧着は、樹脂組成物を挟持した2枚の透明基材を真空脱気、加熱することにより行ったが、本発明はそれに限定されず、例えば、真空脱気を行いながら加熱硬化させることにより仮圧着を行ってもよい。
【0036】
前記加圧加熱処理における、加圧の圧力としては、5×105Pa程度とすることが好ましい。
【0037】
なお、合わせガラスの透明基材表面には、金属及び/又は金属酸化物からなる透明の導電層を設けてもよい。
【0038】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0039】
[実施例1〜11、比較例1〜3]
以下に示す配合成分をロールミルにて55℃で混練して樹脂組成物を調製し、得られた組成物を2枚のPETフィルムの間に挟んで70℃、10分の条件でプレス成形し、放冷後、PETフィルムを剥がして厚さ0.4mmのシートを得た。以上の工程を4回繰り返し行い4枚のシートを得た。
(樹脂組成物成分)
エチレン−酢酸ビニル樹脂 100質量部
(750R、東ソー(株)製、溶融温度(Tm):66℃、酢酸ビニル含有量:32%、MFR:30g/10分)
ベンゾイルパーオキサイド(ナイパーFF、日本油脂(株)製) 3.0質量部
トリアリルイソシアヌレート(TAIC、日本化成(株)製) 2.0質量部
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤 0.1質量部
(スミソルブ130、住友化学工業(株)製)
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 1.0質量部
(KBM503、信越化学工業(株)製)
リン酸エステルポリマー 0.001質量部
(LTP−2、川研ファインケミカル(株)製)
【0040】
次に、洗浄乾燥した300mm×300mm×2.8mmの2枚のガラス板の間に上記シート4枚を挟み、これをゴム袋に入れて真空ポンプを稼動させて真空脱気し、各実施例及び比較例毎に表1〜2に示す炉内温度のオーブンに投入し仮圧着を行った。次いで、表1〜2に示す時間後、真空ポンプを停止しサンプルを取り出した。このときの中間膜の温度は表1〜2に示す通りであった。さらに、サンプルの4つの頂点近傍(頂点より中心へ25mmの位置)の厚み、及び中心部近傍(サンプルの一辺中央から100mmの位置)4点の厚みを測定した。そして、各頂点近傍の4箇所の厚みの平均と中心部近傍の4箇所の厚みの平均とを求めた。更に、これをオートクレーブに入れ、圧力4.9×105Pa、温度100℃の条件で30分間加圧加熱処理して、合わせガラスを得た。
【0041】
[評価]
(1)エッジ状態
得られた合わせガラスの縁部の中間膜のはみ出し状態を目視評価した。はみ出しがなかった場合を「良好」、はみ出しがあったが場合を「はみ出し」、シールしなかった場合を「シールせず」として評価した。評価結果を表1〜2に示す。
(2)シボ残存率
シボ残り度と面積の積によりシボ残存率を算出した。シボ残り度は、ヘイズ値60以上を1、同40〜60を2/3、同20〜40を1/3、同0〜20を0の4段階評価した。サンプル全体の面積を10として、評価水準毎に面積を求めた。なお、シボ残存率は下記式により求められる。
シボ残存率=1×S1+2/3×S2/3+1/3×S1/3+0×S0
算出結果を表1〜2に示す。シボ残存率は5以下が好ましく、6以上であると加圧加熱後もエアが残る可能性がある。
(3)中央膜温度
仮圧着後にオーブンから取り出した合わせガラスの中間膜に、熱電対をその先端が中心部に位置するように刺し込み、中間膜の中央部の温度を測定した。測定結果を表1〜2に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
表1〜2より、実施例1〜10では、板厚偏差及びシボ残存率が小さく加工歪みが少ない合わせガラスを製造することができたことが分かる。特に、Tm−15〜Tm−5℃の範囲内の実施例1〜3、実施例4〜5、及び実施例9は、エッジ状態が良好であり、かつ板厚偏差が0.1%以内であり、加工歪みが少ない合わせガラスを製造することができた。
これに対し、比較例1〜4では、仮圧着できなかったか、あるいはエッジ状態が不良で実用的な合わせガラスを製造することができなかった。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、MFRが15g/10分以上の樹脂を中間膜として使用した場合であっても、加工歪みが少なく優れた透視性を有する合わせガラスを製造可能な合わせガラスの製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、MFRが15g/10分以上の樹脂を中間膜として使用した合わせガラスにおいて、加工歪みが少なく優れた透視性を有する合わせガラスを提供することができる。
Claims (3)
- メルトフローレートが15g/10分以上の樹脂を含む樹脂組成物を2枚の透明基材に挟持させ、前記樹脂の溶融温度(JIS K 6924−2)をTm(℃)としたとき、Tm−15〜Tm(℃)の範囲内の温度で仮圧着を行った後に、又は該温度範囲内の温度で仮圧着を行いながら、前記樹脂組成物を加熱硬化させて中間膜を形成して得られることを特徴とする合わせガラス。
- メルトフローレートが15g/10分以上の樹脂を含む樹脂組成物を2枚の透明基材に挟持させ、仮圧着を行った後に、又は仮圧着を行いながら、前記樹脂組成物を加熱硬化させて中間膜を形成する工程を有する合わせガラスの製造方法であって、
前記仮圧着時における樹脂組成物の温度を、前記樹脂の溶融温度(JIS K6924−2)をTm(℃)としたとき、Tm−15〜Tm(℃)の範囲内とすることを特徴とする合わせガラスの製造方法。 - 前記樹脂が、エチレン−酢酸ビニル樹脂であることを特徴とする請求項2に記載の合わせガラスの製造方法。
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