JP2004531248A - 新規エロンガーゼ遺伝子およびδ9−高度不飽和脂肪酸の生産方法 - Google Patents

新規エロンガーゼ遺伝子およびδ9−高度不飽和脂肪酸の生産方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、配列番号1の配列を有する新規エロンガーゼ遺伝子またはその誘導体、この配列またはその誘導体を含有する遺伝子構築物、ならびにその使用に関する。本発明の核酸配列は、γリノレン酸(C18:3 d6, 9, 12)は伸長せずに、αリノレン酸(C18:3 d9, 12, 15)を2炭素原子以上伸長するポリペプチドをコードする。加えて、本発明は、配列番号1の配列を有するエロンガーゼ遺伝子またはその誘導体を含有するベクターまたは生物に関する。本発明はさらに、上記エロンガーゼ配列を含有しかつ油(特に、高含量の不飽和脂肪酸を含む油)を多量に産生する生物を用いた、高度不飽和脂肪酸(=PUFA)の生産方法に関する。さらに、本発明は、少なくとも2個の二重結合がある高度不飽和C20またはC22脂肪酸を高含量で含む油および/または脂肪酸組成物、および/または、上記高度不飽和脂肪酸を高含量で含むトリアシルグリセロール組成物に関する。

Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、配列番号1の配列を有する新規エロンガーゼ遺伝子もしくはその誘導体、上記配列もしくはその誘導体を含む遺伝子構築物、ならびにその使用に関するものである。本発明の核酸配列は、γ-リノレン酸(C18:3 d6, 9, 12)は伸長しないが、α-リノレン酸(C18:3 d9, 12, 15)を2炭素原子以上伸長させるポリペプチドをコードする。本発明はまた、配列番号1を有するエロンガーゼ遺伝子またはその誘導体を含有するベクターまたは生物にも関する。
【0002】
さらに、本発明は、エロンガーゼ遺伝子を含み、かつ、大量の油、特に、高含量の不飽和脂肪酸を含む油を産生する生物を用いて、高度不飽和脂肪酸(=PUFA)を生産する方法に関する。加えて、本発明は、少なくとも2個の二重結合がある高度不飽和C20-およびC22-脂肪酸をより高い含量で含む油および/または脂肪酸組成物、および/または、高度不飽和脂肪酸をより高い含量で含むトリアシルグリセロール組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
細胞の天然の代謝過程で生じるいくつかの産物および副産物は、食品、飼料、化粧品、医薬品産業を含めて、様々な産業において使用されている。まとめて「ファインケミカル」(fine chemical)と呼ばれているこうした分子には、さらに脂質と脂肪酸が含まれ、そのうちの代表的な分子クラスの1つが、高度不飽和脂肪酸である。例えば、高度不飽和脂肪酸(PUFA)は、小児用配合物にその栄養価を高める目的で添加される。また、PUFAはヒトの血中コレステロールレベルを下げるように作用し、したがって心臓病の予防に有用である。ファインケミカルおよび高度不飽和脂肪酸(PUFA)は、例えば、魚のような動物源から単離したり、微生物を用いて生産したりすることができ、微生物の場合には、微生物のラージスケール発酵により、1以上の所望分子を多量に産生、および蓄積または分泌させることができる。
【0004】
PUFAの生産に特に有用な微生物は、ハプト藻イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)、海洋性ケイ藻(Phaeodactylum tricornutum)またはクリプトコジニウム属(Crypthecodinium)のような藻類;スチロニキア属(Stylonychia)またはコルピディウム属(Colpidium)のような繊毛虫;糸状菌モルティエレラ属(Mortierella)、疫病菌エントモフトラ属(Entomophthora)、ケカビ属(Mucor)またはヤブレツボカビ属(Thraustochytria)/シゾキトリウム属(Schizochytria)種のような真菌がある。PUFAをはじめとする一連の望ましい化合物を産生する各種微生物の多数の突然変異株が、菌株選別によって数多く開発されてきた。しかし、ある種の分子の生産が向上した菌株の選択には時間と手間がかかる。
【0005】
代替法として、ファインケミカルの生産は、前記PUFAを産生するように開発された植物のラージスケール生産により、最も好都合に実施することができる。この目的に特によく適合する植物は、多量の脂質化合物を含有する脂肪種子植物、例えば、アブラナ、キャノーラ、アマニ、ダイズ、ヒマワリ、ルリヂサ、マツヨイグサなどである。しかし、本発明の詳細な説明で述べるように、油または脂質と脂肪酸を含むその他の作物もよく適合する。通常の植物品種改良により、一連の望ましい脂質と脂肪酸、補因子と酵素を産生する多数の突然変異植物が開発されてきた。しかし、特定の分子の生産について改良された新規植物変種を選択するには時間と労力がかかり、そしてC20-、またはより長い炭素鎖をもつ脂肪酸の場合のように、その化合物が、対応する油脂植物中にもともと存在しない場合には不可能でさえある。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、油、脂肪酸、脂質、脂質誘導化合物の改変(最も好ましくは、高度不飽和脂肪酸の生産)に使用することができる、配列番号1に記載するような新規核酸分子を提供する。
【0007】
一般に、様々なファインケミカルのラージスケール生産のために工場で使用されるものは、モルティエレラ属(Mortierella)、エントモフトラ属(Entomophthora)、ケカビ属(Mucor)、クリプトコジニウム属(Crypthecodinium)、その他の藻類や真菌のような微生物、ならびに植物(特に脂肪種子植物)である。
【0008】
クローニングベクターおよびクローニング技術が、WO 98/01572に開示されるような上記微生物および繊毛虫、またはFalciatoreら, 1999, Marine Biotechnology 1(3):239-251; Dunahayら, 1995, Genetic transformation of diatoms, J. Phycol. 31:10004-1012 およびそこに引用される文献に記載される藻類および関連生物(例えば、Phaeodactylum tricornutum)に利用可能であるとすれば、本発明による核酸分子をこれらの生物の遺伝子操作に使用して、それらを1種以上のファインケミカルのより良好な、またはより効率的な生産体にすることができる。このファインケミカルの生産または生産効率の向上は、本発明遺伝子の操作の直接的結果により、またはこの操作の間接的結果によりもたらされる。
【0009】
コケ類と藻類は、相当量の高度不飽和脂肪酸、例えば、アラキドン酸(ARA)、および/またはエイコサペンタエン酸(EPA)、および/またはドコサヘキサエン酸(DHA)を産生する唯一知られた植物系である。したがって、ハプト藻イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)のような藻類に由来する核酸分子は、宿主、特に上記のような微生物、ならびに、例えば、アブラナ、キャノーラ、アマニ、ダイズ、ヒマワリ、ルリヂサといった脂肪種子植物のような植物において、脂質およびPUFA産生系を改変するのに特に適している。さらに、藻類イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)に由来する核酸は、対応する生物におけるPUFA前駆体分子の生合成を改変するのに有用な他の生物種において、そのようなDNA配列および酵素を同定するために使用することができる。
【0010】
藻類イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)は、DNA配列およびポリペプチドレベルで他の藻類に対して高度の相同性を有しており、他の藻類または生物から進化するプローブによるDNA分子の異種スクリーニングの使用を可能にすることから、異種スクリーニングまたは第三の生物種における遺伝子機能の機能に関する解釈(annotation)および予測に適したコンセンサス配列を誘導することができる。従って、これらの機能を同定できること、例えば、酵素の基質特異性を予測できることは非常に重要でありうる。さらに、これらの核酸分子は、他の藻類をマッピングするための、またはPCRプライマーを誘導するための基準配列としても役立ちうる。
【0011】
これらの新規核酸分子は、本明細書中でPUFA特異的エロンガーゼ(PSE)と呼ばれるタンパク質をコードすることができる。これらのPSEは、例えば、脂質またはPUFAのような脂肪酸の生合成に必要とされる化合物の代謝(例えば、生合成もしくは分解)に関与する機能、あるいは1種以上の脂質/脂肪酸化合物の細胞内または細胞外への膜貫通輸送を補助する機能を果たすことができる。
【0012】
本出願では、これら配列の1つの機能について詳細に開示する。本発明者らは、γ−リノレン酸(C18:3 d6, 9, 12)を伸長することなく、α-リノレン酸(C18:3 d9, 12, 15)から、長鎖の不飽和脂肪酸を生産するのに適した高度に特異的なエロンガーゼ活性をコードする機能的に活性の遺伝子を初めて単離した。従って、本発明者らは、本明細書において、ω-3脂肪酸またはΔ9脱飽和長鎖高度不飽和脂肪酸を2炭素原子以上伸長させる酵素活性を示す遺伝子またはタンパク質をASE(「α−リノレン酸特異的エロンガーゼ」)と呼ぶことにする。他の刊行物および特許は、これまでに、α−リノレン酸(ALA)に特異的であるが、基質としてγ−リノレン酸(GLA)を受容しない、機能的に活性なASE遺伝子を開示することができなかった。たとえ公知の特許出願がいくつかあるにしても、それらは短鎖または中等度鎖の飽和脂肪酸の伸長を示すものであった(WO 98/46776およびUS 5,475,099)。WO 00/12720は、様々な生物由来の各種ASEを記載しているが、記載された遺伝子はいずれも、ALAに対する特異性およびGLAからの識別を示さなかった。WO 00/12720において、ASEをコードすることが明らかにされた遺伝子はすべて、基質としてGLAを受容するため、これらの酵素は、本発明に開示するようなΔ9脱飽和脂肪酸ではなく、Δ6脱飽和長鎖高度不飽和脂肪酸の伸長を引き起こす。
【0013】
本発明で開示するASEに特有の性質は、これにより得られる産物が、GLAの伸長によって生じる産物などの不要なPUFA分子を含まず、所望の産物に限られるため、重要である。
【0014】
WO 99/64616、WO 98/46763、WO 98/46764およびWO 98/46765は、トランスジェニック植物によるPUFAの生産を開示して、数種の供給源からの対応するΔ12-、Δ5-またはΔ6-デサチュラーゼ活性のクローニングおよび機能的発現を示しているが、ASEをコードする遺伝子またはα−リノレン酸特異的Δ6-デサチュラーゼ遺伝子も、ALAからのエイコサペンタエン酸および関連する前駆体の生産に必要な機能的活性も、示していない。
【0015】
PUFAを生産するには、高度不飽和脂肪酸(好ましくは、C18-脂肪酸など)をエロンガーゼの酵素活性により2炭素原子以上伸長させる必要がある。本発明による核酸配列は、脂肪酸中に少なくとも2個の、好ましくは、3個の二重結合があるC18:3 d6, 9, 12脂肪酸を2炭素原子以上伸長させる能力を有する、植物由来の最初のエロンガーゼをコードするものである。1ラウンドの伸長後、この酵素活性はC20-脂肪酸をもたらし、2ラウンド、3ラウンドおよび4ラウンドの伸長後には、C22-、C24-またはC26-脂肪酸をもたらす。本発明のエロンガーゼを用いて、より長鎖のPUFAを合成することもできる。本発明によるエロンガーゼの活性は、脂肪酸分子中に少なくとも2個の二重結合がある(好ましくは、脂肪酸分子中に3個または4個の二重結合、特に好ましくは3個の二重結合がある)C20-脂肪酸、および/またはC22-脂肪酸をもたらすものが好ましい。伸長により得られる好ましい脂肪酸分子は、Δ9-位置に二重結合を有する脂肪酸である。本発明の酵素による伸長反応を行った後、更なる脱飽和ステップを実施してもよい。従って、エロンガーゼ活性の産物および実施しうる更なる脱飽和の産物は、より高度に脱飽和された好ましいPUFA類、例えば、ドコサジエン酸、アラキドン酸、ω6-エイコサトリエン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ω3-エイコサトリエン酸、ω3-エイコサテトラエン酸、ドコサペンタエン酸、またはドコサヘキサエン酸である。特に好ましい脂肪酸は、α-リノレン酸(C18:3 d9, 12,15)の伸長産物ステアリドン酸である。本発明による酵素活性の基質は、好ましくは、Δ9-位置に最初の二重結合を有するΔ9脱飽和脂肪酸であり、例えば、アキシラレン酸(axillarenic acid)、ヴェルノール酸(C18, Δ9cis, 12-13epoxy)、共役リノール酸(C18, Δ9cis, 11trans)、ステロール酸(C18, Δ9-アセチレン性)、α-パリナリン酸(parinaric acid)(C18, Δ9cis, 11trans, 13trans)、パルミトレイン酸(C18, Δ9cis)、リノール酸、またはα-リノレン酸である。好ましい基質は、リノール酸および/またはα−リノレン酸である。脂肪酸中に少なくとも2個の二重結合がある脂肪酸は、本発明の酵素活性により、遊離脂肪酸、アシル-CoA-脂肪酸、脂肪酸のアルキルエステルの形で、またはエステル(例えば、リン脂質、糖脂質、スフィンゴ脂質、ホスホグリセリド、モノアシルグリセリド、ジアシルグリセリド、またはトリアシルグリセリド)の形で、好ましくは、遊離脂肪酸またはアシル-CoA-脂肪酸の形で伸長させることができる。
【0016】
植物および植物形質転換体において使用しうるクローニングベクター、例えば、Plant Molecular Biology and Biotechnology (CRC Press, Boca Raton, Florida), chapter 6/7, pp. 71-119 (1993); F.F. White, Vectors for Gene Transfer in Higher Plants, in: Transgenic Plants, Vol. 1, Engineering and Utilization, Kung & R. Wu編, Academic Press, 1993, 15-38; B. Jenesら, Techniques for Gene Transfer, in: Transgenic Plants, Vol. 1, Engineering and Utilization, Kung & R. Wu編, Academic Press,(1993), 128-143; Potrykus, Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Molec. Biol. 42 (1991), 205-225) に発表および引用されているクローニングベクターを利用することができれば、本発明の核酸分子を多様な植物の遺伝子操作に用いて、それらの植物を、PUFAなどの1種以上の脂質誘導産物のより良好な、より効率的な生産体とすることができる。こうしたPUFAなどの脂質誘導産物の生産または生産効率の向上は、本発明の遺伝子操作の直接的結果または間接的結果によってもたらされる。
【0017】
本発明によるASEタンパク質の改変が、その改変されたタンパク質のため、脂肪種子植物または微生物からのファインケミカルの収率、生産および/または生産効率に直接的に影響を及ぼしうる多数の作用機構が存在する。ASEタンパク質または遺伝子の数または活性を増大させ、その結果として、より多量のこれらの化合物を新規に生産させることができるが、上記活性および生合成能は対応する遺伝子の導入前にはこれらの生物に備わっていない。
【0018】
ASE遺伝子を生物または細胞に導入すると、最終産物へ向かう生合成の流れが増大するだけでなく、対応するトリアシルグリセロール組成物も増加するかまたは新規に生成される。同様に、1種以上のファインケミカル(例えば、脂肪酸、極性および中性脂質)の生合成に必要な栄養素の輸送に関与する他の遺伝子の数または活性を増大させ、その結果として、細胞または貯蔵コンパートメント内のこれらの前駆体、補因子または中間体化合物の濃度を高めてもよく、こうして、以下で述べるように、細胞のPUFA産生能を増加させる。ファインケミカルとしては脂肪酸と脂質それ自体が好ましいが、これらの化合物の生合成に関与する1種以上のASEの活性を最適化したり、その数を増加させたり、あるいはこれらの化合物の分解に関与する1種以上のASEの活性を低下させたりすることで、植物または微生物からの脂肪酸分子および脂質分子の収率、生産および/または生産効率を増加させることができる。
【0019】
さらに、本発明によるASE遺伝子の突然変異誘発は、1種以上の望ましいファインケミカルの生産に直接または間接的に影響を及ぼす、改変された活性を有するASEタンパク質をもたらす可能性がある。例えば、本発明によるASE遺伝子の数または活性を増大させて、細胞の通常の代謝老廃物または副産物(目的とするファインケミカルの過剰生産のため、その量が増加しうる)を、それらが細胞内で他の分子またはプロセスを破壊する(その結果、細胞の生存能を低下させる)前、あるいはファインケミカルの生合成経路を妨害する(それゆえに、目的のファインケミカルの収率、生産もしくは生産効率を低下させる)前に、効率的に排出するようにすることができる。さらに、目的のファインケミカルの比較的多い細胞内含量は、それ自体で細胞にとって毒性となることもあり、また、アロステリック調節のような酵素フィードバック機構を妨げることもある。例えば、PUFA経路の下流にある他の酵素または解毒酵素の活性または数を増大させることにより、それは、トリアシルグリセロール画分へのPUFAの配分を増加させ、種子細胞の生存能を高め、ひいては培養下の細胞の良好な発達へ導くか、または目的のファインケミカルを産生する種子をもたらす。また、種々の脂質分子および脂肪酸分子が対応する量で産生されるように、本発明によるASE遺伝子を操作することができる。これは細胞膜の脂質組成に重大な影響を及ぼし、新たに合成されたPUFAの存在に加えて新規な油をもたらす。それぞれのタイプの脂質は異なる物理的特性を示すので、膜の脂質組成の変化は膜の流動性を有意に変更しうる。膜の流動性の変化は膜を経由する分子の輸送および細胞の完全性に影響を与え、これらの両方がファインケミカルの生産に重大な影響を及ぼす。さらに、植物では、こうした変化が非生物的および生物的ストレス状況に対する耐性のような他の形質にも影響を及ぼすことがある。
【0020】
生物的および非生物的ストレス耐性は、非常に多様な植物に遺伝させることが望ましい一般的形質であり、そのような植物として、トウモロコシ、コムギ、ライムギ、オートムギ、ライコムギ、イネ、オオムギ、ダイズ、ラッカセイ、ワタ、アブラナおよびキャノーラ、イモノキ属、コショウ、ヒマワリおよびセンジュギク、ナス科植物(例:ジャガイモ、タバコ、ナス、およびトマト)、ソラマメ属(Vicia species)、エンドウ、アルファルファ、低木植物(コーヒー、カカオ、チャ)、ヤナギ属(Salix species)、樹木(ギネアアブラヤシ、ココナツ)、ならびに、多年生植物および家畜のかいば作物が挙げられる。本発明の別の実施形態として、これらの作物は遺伝子操作のための好適な標的植物でもある。本発明に従う特に好ましい植物は脂肪種子植物であり、例えば、ダイズ、ラッカセイ、アブラナ、キャノーラ、ヒマワリ、サフラワー、樹木(ギネアアブラヤシ、ココナツ)、またはトウモロコシ、コムギ、ライムギ、オートムギ、ライコムギ、イネ、オオムギ、アルファルファ、低木植物(コーヒー、カカオ、チャ)などの作物がある。
【0021】
別の実施形態において、単離された核酸分子はタンパク質またはその一部をコードし、その際、該タンパク質またはその一部分は、ASE活性を保持するように、配列番号2のアミノ酸配列に対して十分な相同性を有するアミノ酸配列を含む。好ましくは、該核酸分子によりコードされるタンパク質またはその一部分は、PUFAもしくは植物の細胞膜の構築に必要な化合物の代謝に関与するか、または細胞膜を介した分子の輸送に関与する能力を保持する。一つの実施形態において、該核酸分子によりコードされるタンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、80%または90%、最も好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の相同性を有する。別の好ましい実施形態においては、該タンパク質は、全長イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)タンパク質であり、これは、配列番号2の完全なアミノ酸配列(これは配列番号1に示したオープンリーディングフレームに由来する)と実質的に相同である。
【0022】
従って、本発明の一態様は、ASEタンパク質またはその生物学的に活性な部分をコードするヌクレオチド配列、ならびに、ASEをコードする核酸(例えば、DNAまたはmRNA)を検出もしくは増幅するためのプライマーまたはハイブリダイゼーションプローブとして適する核酸断片を含む、単離された核酸分子(例えば、cDNA)に関する。特に好ましい実施形態では、核酸分子は配列番号1に示したヌクレオチド配列、前記配列の誘導体、それらのコード領域、または相補体もしくは酵素的に活性な部分のうちの1つを含む。他の特に好ましい実施形態では、本発明の単離された核酸分子は、配列番号1に示したヌクレオチド配列、またはその誘導体もしくはその一部分とハイブリダイズするヌクレオチド配列、あるいは、これらに対して少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、80%または90%、より一層好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の相同性を有するヌクレオチド配列を含む。他の好ましい実施形態において、単離された核酸分子は配列番号2に示したアミノ酸配列をコードする。本発明のASE遺伝子は、本明細書に記載するASE活性のうちの少なくとも1つをもつことが好ましい。
【0023】
別の好ましい実施形態において、単離された核酸分子は、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)に由来するものであり、配列番号2のアミノ酸配列の1つに対して少なくとも約50%またはそれ以上の相同性を有し、かつ植物の細胞膜の構築に必要な化合物の代謝またはこれらの膜を介した分子の輸送に関与することができるか、あるいは表2に示した活性の少なくとも1つを有する、生物学的に活性なドメインを含むタンパク質(例えば、ASE融合タンパク質)をコードする。該核酸分子はまた、異種ポリペプチドをコードする異種核酸配列または調節領域も包含する。
【0024】
別の実施形態において、単離された核酸分子は、長さが少なくとも15ヌクレオチドであって、ストリンジェント条件下で配列番号1のヌクレオチド配列からなる核酸分子とハイブリダイズするものである。単離された核酸分子は、好ましくは、天然に存在する核酸分子に相当する。さらに好ましくは、単離された核酸分子は、天然に存在するイソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)由来のASE、またはその生物学的に活性な部分をコードする。
【0025】
本発明の別の態様は、本発明によるヌクレオチド分子を含むベクター(例えば、組換え発現ベクター)、ならびに、これらのベクターが導入されている宿主細胞、特に、微生物、植物細胞、植物組織、植物器官、または完全な植物体に関する。一つの実施形態において、このような宿主細胞は、ファインケミカル化合物(特に、PUFA)を蓄える能力を有する細胞であり、従って、採取した材料から所望の化合物を単離することができる。その後、化合物(油、脂質、トリアシルグリセリド、脂肪酸)またはASEを、培地からまたは宿主細胞(植物の場合には、ファインケミカルを含有および貯蔵する細胞、最も好ましくは、種皮、塊茎などの貯蔵組織の細胞、表皮細胞および種子細胞)から単離することができる。
【0026】
本発明のさらに別の態様は、配列番号1に示す、単離されたASE遺伝子またはその一部分(例えば、生物学的に活性な部分)に関する。好ましい実施形態では、単離されたASEまたはその一部分は、微生物もしくは植物細胞の細胞膜の構築に必要な化合物の代謝、またはその細胞膜を介した分子の輸送に関与し得るものである。別の好ましい実施形態では、単離されたASEまたはその一部分は、配列番号2のアミノ酸配列に対して十分な相同性を有し、それによって、該タンパク質またはその一部分は、微生物もしくは植物細胞の細胞膜の構築に必要な化合物の代謝、またはこれら細胞膜を介した分子の輸送に関与する能力を保持する。
【0027】
従って、別の好ましい実施形態では、藻類イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)を用いて、本発明で開示した核酸に基づく相同的組換えにより、コケ遺伝子の機能を明らかにすることができる。
【0028】
本発明のさらにまた別の態様は、単離されたASE遺伝子またはその一部分(例えば、生物学的に活性な部分)に関する。好ましい実施形態では、単離されたASEまたはその一部は、微生物もしくは植物細胞の細胞膜の構築に必要な化合物の代謝、またはその細胞膜を介した分子の輸送に関与し得るものである。別の好ましい実施形態では、単離されたASEまたはその一部分は、配列番号2のアミノ酸配列に対して十分な相同性を有し、これによって、該タンパク質またはその一部分は、微生物もしくは植物細胞の細胞膜の構築に必要な化合物の代謝、または細胞膜を介した分子の輸送に関与する能力を保持する。
【0029】
本発明はまた、ASEの単離された調製物を提供する。好ましい実施形態において、ASE遺伝子は、配列番号2の完全なアミノ酸配列(これは配列番号1に示したオープンリーディングフレームによりコードされる)と実質的に相同である単離された完全長のタンパク質に関する。別の実施形態では、該タンパク質は配列番号2の完全なアミノ酸配列に対して少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、80%または90%、最も好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の相同性を有する。他の実施形態では、単離されたASEは、配列番号2のアミノ酸配列のうちの1つに対して少なくとも約50%の相同性を有し、かつ微生物もしくは植物細胞中の脂肪酸の構築に必要な化合物の代謝、または細胞膜を介した分子の輸送に関与する能力を有するか、あるいは1以上のPUFA伸長活性を有する(したがって、脱飽和され、少なくとも2つ二重結合位置を有するC18-炭素鎖の伸長を意味する)アミノ酸配列を含む。
【0030】
あるいはまた、単離されたASEは、配列番号1のヌクレオチド配列と、例えばストリンジェント条件下で、ハイブリダイズするか、またはこれに対して少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、80%または90%、最も好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の相同性を有するヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を含むことができる。ASEの好ましい形態はまた、本明細書に記載するASE活性のうちの1つ以上をもつことが好適である。
【0031】
ASEポリペプチド、またはその生物学的に活性な部分は、非ASEポリペプチドと機能的に連結させて融合タンパク質を形成させることができる。好ましい実施形態では、この融合タンパク質はASE単独の活性とは異なる活性を有する。他の好ましい実施形態では、この融合タンパク質は、微生物もしくは植物中の脂質と脂肪酸、補因子と酵素の合成に必要な化合物の代謝、または植物の細胞膜を介した分子の輸送に関与する。特に好ましい実施形態では、宿主細胞へのこの融合タンパク質の組込みによって、該細胞からの所望の化合物の生産をモジュレートする。好ましい実施形態では、こうした融合タンパク質はまた、Δ4-、Δ5-またはΔ8-デサチュラーゼ活性を単独でまたは組合せで含む。特に、WO 00/34439に記載されたミドリムシ(Euglena gracilis)由来のΔ8-デサチュラーゼ、および米国特許第6,051,754号(M. alpina)、GB9814034.6(C. elegans)に記載されたΔ5-デサチュラーゼ遺伝子、または米国特許第5,850,026号に記載されたΔ12-およびΔ15-デサチュラーゼ遺伝子は、本発明のASE遺伝子との共発現に好適な遺伝子である。引用した特許のうち、本発明で記載したASE遺伝子との共発現を開示するものは1つもない。
【0032】
本発明の別の態様は、ファインケミカルの生産方法に関する。この方法は、ファインケミカルが産生されるように、本発明のASE核酸分子の発現を指令するベクターを含有する適当な微生物、または植物細胞、植物組織、植物器官もしくは完全な植物体を培養することを含んでなる。好ましい実施形態において、この方法はさらに、上記ベクターを含む細胞を取得するステップを含み、このステップでは、ASE核酸の発現を指令するベクターを用いて細胞を形質転換する。別の好ましい実施形態では、この方法はさらに、培養物からファインケミカルを取得するステップを含む。特に好ましい実施形態では、該細胞は、ファエオダクチラム属(Phaedodaktylum)のような藻類、コルピディウム(Colpidium)またはスチロニキア属(Stylonichia)のような繊毛虫、モルティエレラ属(Mortierella)またはヤブレツボカビ属(Thraustochitrium)もしくはシゾキトリウム属(Schizochytrium)のような真菌、または前記のような脂肪種子植物に由来するものである。
【0033】
本発明の別の態様は、微生物からの分子の生産をモジュレートする方法に関する。この方法は、細胞に、ASE活性またはASE核酸の発現をモジュレートする物質を接触させて、細胞に関連した活性が、上記物質の非存在下での該活性と比較して改変されるようにすることを含んでなる。好ましい実施形態では、脂質と脂肪酸、補因子と酵素のための1以上の代謝経路、または細胞膜を介した化合物の輸送について、細胞をモジュレートすることにより、この微生物による所望のファインケミカルの生産高または生産率を向上させる。ASE活性をモジュレートする物質は、ASE活性またはASE核酸の発現を刺激する物質でよい。ASE活性またはASE核酸の発現を刺激する物質の例としては、とりわけ、小分子、活性ASE、および細胞に導入されているASEをコードする核酸がある。ASE活性または発現を阻害する物質の例としては、小分子およびアンチセンスASE核酸分子が挙げられる。
【0034】
本発明の別の態様は、細胞からの所望の化合物の生産高をモジュレートする方法に関し、この方法は、細胞に野生型または変異型ASE遺伝子(別個のプラスミド上に保持されるか、宿主細胞のゲノムに組み込まれる)を導入することを含んでなる。ゲノムへの組込みの場合には、その組込みは、ランダムであってもよいし、天然の遺伝子を導入用のコピーで置換して、該細胞からの所望の化合物の生産をモジュレートするように組換えにより行ってもよいし、あるいは、遺伝子が機能的な発現単位(遺伝子の発現を促進する少なくとも1つの配列と、機能的に転写された遺伝子のポリアデニル化を促進する少なくとも1つの配列とを含む)に機能的に連結されるように遺伝子イントロンを用いることにより行ってもよい。
【0035】
好ましい実施形態においては、生産高(収率)が改変される。別の実施形態では、不要な妨害化合物は減少させながら、所望のファインケミカルを増加させる。特に好ましい実施形態では、所望のファインケミカルは脂質または脂肪酸、補因子または酵素である。特に好ましい実施形態では、このファインケミカルは高度不飽和脂肪酸である。より好ましくは、アラキドン酸(ARA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、またはドコサヘキサエン酸(DHA)から選択される。
【0036】
本発明の詳細な説明
本発明は、藻類イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)における脂質と脂肪酸、PUFA補因子および酵素の代謝、あるいは、膜を介した親油性化合物の輸送に関与するASE核酸およびASEタンパク質分子を提供する。本発明の分子は、微生物、例えば、コルピディウム属(Copidium)またはスチロニキア属(Stylonichia)のような繊毛虫;モルティエレラ属(Mortierella)またはヤブレツボカビ属(Thraustochitrium)もしくはシゾキトリウム属(Schizochytrium)のような真菌;ファエオダクチラム属(Phaeodaktylum)のような藻類;および/または植物、例えば、トウモロコシ、コムギ、ライムギ、オートムギ、ライコムギ、イネ、オオムギ、ダイズ、ラッカセイ、ワタ、アブラナ、キャノーラおよびカブのようなアブラナ属の種、アマニ、コショウ、ヒマワリ、ルリヂサ、マツヨイグサおよびマンジュギク、ジャガイモ、タバコ、ナスおよびトマトのようなナス科の植物、ソラマメ属の種、エンドウ、イモノキ属、アルファルファ、低木植物(コーヒー、カカオ、チャ)、ヤナギ属の種、樹木(ギネアアブラヤシ、ココナツ)ならびに、多年生草および飼料穀物などに由来するファインケミカルの生産を直接モジュレートする(例えば、脂肪酸生合成タンパク質の過剰発現または最適化が、改変された生物由来の脂肪酸の収率、生産および/または生産効率に直接影響を及ぼす場合)のに使用するか、あるいは、間接的に影響を及ぼすこともでき、間接的影響によっても、所望の化合物の収率、生産および/または生産効率を高めたり、不要な化合物を減少させたりすることができる(例えば、脂質と脂肪酸、補因子と酵素の代謝のモジュレーションによって、細胞内の所望化合物の収率、生産および/または生産効率を改変するか、もしくはその組成を改変して、これにより、1種以上のファインケミカルの生産に影響を与える場合)。以下に本発明の態様について、さらに詳しく説明する。
【0037】
I.ファインケミカルおよびPUFA
「ファインケミカル」という用語は、当技術分野では認識されており、生物によって生産された分子であって、例えば、限定するものではないが、製薬業、農工業、食品および化粧品産業などの様々な産業界で用いられている分子を包含する。これらの化合物は、脂質、脂肪酸、補因子および酵素など(例えば、Biotechnology 第6巻、Rehmら編:VCH Weinheim 中のKuninaka, A.(1996)Nucleotides and related compounds, pp. 561-612、およびそこに引用された参照文献に記載されている)、脂質、飽和および不飽和脂肪酸(例えば、アラキドン酸)、ビタミンおよび補因子(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, Vol. A27, Vitamins, pp. 443-613(1996):VCH Weinheimおよびそこに引用された参照文献;ならびに、Ong, A.S., Niki, E., & Packer, L.(1995)Nutrition, Lipids, Health and Disease Proceedings of the UNESCO/Confederation of Scientific and Technological Associations in Malaysia and the Society for Free Radical Research - Asia、1994年9月1〜3日、マレーシア、ペナンで開催、AOCS Press(1995))、ならびに、Gutcho(1983)により、Chemicals by Fermentation, Noyes Data Corporation, ISBN:0818805086およびそこに引用された参照文献に記載された酵素およびその他のあらゆる化学物質を包含する。これらファインケミカルのうちいくつかの代謝および使用について、以下にさらに詳しく説明する。
【0038】
各種前駆体分子と生合成酵素との組合せにより、膜組成に重大な影響を与える様々な脂肪酸分子が生産される。PUFAは、トリアシルグリセロールだけではなく、膜脂質にも組み込まれると想定することができる。
【0039】
膜合成は、二分子膜の一部として、脂質を含む多数の構成要素が関与する、十分に特性化がなされた工程である。従って、PUFAのような新規の脂肪酸の生産により、細胞または生物内に膜機能の新たな特性を生み出すことができる。
【0040】
細胞膜は、細胞において多様な機能を果たしている。最も重要なのは、膜が、周囲の環境から細胞の内容物を識別し、これによって、細胞に一体性を賦与することである。膜はまた、有害または不要な化合物の流入に対する、あるいは、所望の化合物の流出に対する障壁としての役割も果たしている。
【0041】
膜の関与、および関連する機構についてさらに詳しくは、下記を参照にされたい:Bamberg, E.ら(1993)Charge transport of ion pumps on lipid bilayer membranes, Q. Rev. Biophys. 26:1-25;Gennis, R.B.(1989)Pores, Channels and Transporters, in: Biomembranes, Molecular Structure and Function, Springer: Heidelberg, pp. 270-322;およびNikaido, H.およびSaier, H.(1992)Transport proteins in bacteria:common themes in their design, Science 258:936-942、ならびに、これら参照文献に含まれる引用文献。
【0042】
脂質合成は、2つの部分、すなわち、脂肪酸の合成およびそれらのsn-グリセロール-3-リン酸への結合と、極性頭部基(head group)の付加または修飾とに分けることができる。膜に用いられる典型的な脂質としては、リン脂質、糖脂質、スフィンゴ脂質およびホスホグリセリドが挙げられる。脂肪酸合成は、アセチル-CoAの、アセチル-CoAカルボキシラーゼによるマロニル-CoAへの変換、もしくはアセチルトランスアシラーゼによるアセチル-ACPへの変換のいずれかで開始する。縮合反応の後、これら2つの生成物分子が一緒になって、さらなる中間体を形成し、これを縮合、還元および脱水の連続的反応により変換することによって、所望の鎖長を有する飽和脂肪酸分子が得られる。これら分子からの不飽和脂肪酸の生産は、分子状酸素を用いて好気的に、あるいは、嫌気的に、のいずれかで、特定のデサチュラーゼにより触媒される(微生物における脂肪酸合成については、F.C. Neidhardtら(1996)E. coli and Salmonella. ASM Press:Washington, D.C., p. 612-636、およびそこに含まれる参照文献;Lengelerら(編)(1999)Biology of Procaryotes. Thieme:Stuttgart, New York、およびそこに含まれる参照文献、ならびに、Magnuson, K.ら(1993)Microbiological Reviews 57:522-542、およびそこに含まれる参照文献を参照されたい)。
【0043】
本発明によるPUFA生合成法に好ましい前駆体として、リノール酸およびリノレン酸がある。これらのC18-炭素脂肪酸は、エイコサ鎖およびドコサ鎖タイプの脂肪酸を得るために、C20またはC22まで伸長させなければならない。Δ6-またはΔ8-、Δ5-およびΔ4-デサチュラーゼ活性を有する酵素などの様々なデサチュラーゼにより、エイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸、ならびに、その他の各種長鎖PUFAを得ることができ、これらは、抽出した後、食品および飼料用途など、多様な目的に用いることができる。
【0044】
長鎖PUFAを生産するためには、前述のように、高度不飽和C18-脂肪酸を本発明のエロンガーゼの酵素活性により、2炭素原子以上伸長させる必要がある。本発明に従う核酸配列は、最初の植物エロンガーゼをコードし、このエロンガーゼは、γ-リノレン酸(C18:3 d 6, 9,12)は伸長しないが、α-リノレン酸(C18:3 d9, 12,15)を2炭素原子以上伸長させる能力を有する。
【0045】
さらに、脂肪酸は、様々な修飾を受けた後、トリアシルグリセロール貯蔵脂質に輸送され、そこに組み込まれねばならない。脂質合成におけるもう1つの重要な段階は、例えば、グリセロールリン酸アシルトランスフェラーゼによる、極性頭部基への脂肪酸の転移である(Frentzen, 1998, Lipid, 100(4-5):161-166を参照)。
【0046】
植物の脂肪酸生合成、脱飽和、脂質代謝およびリポ酸化合物の膜輸送、β酸化、脂肪酸修飾および補因子、トリアシルグリセロール貯蔵および集合についての出版物(そこで引用される参照文献も含む)については、次の論文を参照されたい:Kinney, 1997, Genetic Engineering, JK Setlow編, 19:149-166;OhlroggeおよびBrowse, 1995, Plant Cell 7:957-970;ShanklinおよびCahoon, 1998, Annu, Rev. Plant Physiol. Plant Mol. Biol. 49:611-641;Voelker, 1996, Genetic Engineering, JK Setlow編, 18:111-13;Gerhardt, 1992, Prog. Lipid R. 31:397-417;Guhnemann-Schafer & Kindl. 1995, Biochim. Biophys Acta 1256:181-186;Kunauら、1995、Prog. Lipid Res. 34:267-342;Stymneら、1993, Biochemistry and Molecular Biology of Membrane and Storage Lipids of Plants, MurataおよびSomerville編, Rockville, Amecican Society of Plant Physiologists, 150-158, Murphy & Ross 1998, Plant Journal. 13(1):1-16。
【0047】
ビタミンや、補因子および「機能性食品」(nutraceuticals)、例えばPUFAは、細菌など、高等動物以外の生物により容易に合成される分子群であるが、高等動物は合成する能力を失ったため、摂取しなければならない分子群、あるいは、高等動物がそれ自身で十分な程度まで産生することができないため、補助的に摂取しなければならない分子群を意味する。これら分子を生産することができる生物(例えば、細菌など)における上記分子の生合成については、かなり特性づけられている(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, “Vitamins”, Vol. A27, p. 443-613, VCH:Weinheim, 1996;Michal, G.(1999)Biochemical Pathways:An Atlas of Biochemistry and Molecular Biology, John Wiley & Sons;Ong, A.S., Niki, E., & Packer, L.(1995)”Nutrition, Lipids, Health and Disease” Proceedings of UNESCO/Confederation of Scientific and Technological Associations in Malaysia and the Society for Free Radical Research Asia、1994年9月1〜3日に、マレーシア、ペナンで開催、AOCS Press, Champaign, IL X, 374 pp)。
【0048】
前記分子は、それ自体が生物活性物質であるか、あるいは、多様な代謝経路における電子担体または中間体として作用しうる生物活性物質の前駆体である。上記化合物は、その栄養的価値以外にも、着色剤、酸化防止剤および触媒もしくはその他の処理加工用補助剤として重要な工業的価値を有する(上記化合物の構造、活性および工業用途についての詳細は、例えば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, “Vitamins”, Vol. A27, p. 443-613, VCH:Weinheim, 1996を参照のこと)。高度不飽和脂肪酸は、例えば、冠動脈性心疾患、炎症機構、小児の栄養などの場合に、様々な機能および健康促進効果を有する。関連出版物および参照文献(そこに引用されている文献を含む)については、下記を参照されたい:Simopoulos, 1999, Am. J. Clin. Nutr. 70(3rd Suppl.):560-569, Takahataら、Biosc. Biotechnol. Biochem, 1998, 62(11):2079-2085, WillichおよびWinther, 1995, Deutsche Medizinische Wochenschrift 120(7):229以下参照。
【0049】
II.本発明のエレメントおよび方法
本発明は、少なくとも部分的に、本明細書でASE核酸およびタンパク質分子と称する新しい分子の発見に基づくものであり、該分子は、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)における細胞膜の生産に影響を及ぼし、例えば、このような膜を介した分子の移動に影響を与える。一実施形態では、ASE分子は、微生物および植物における細胞膜の構築に必要な化合物の代謝に関与したり、あるいは、これら膜を介した分子の輸送に間接的に影響したりする。好ましい実施形態では、膜成分の生産および膜輸送を調節する、本発明のASE分子の活性は、この生物による所望のファインケミカルの生産に影響を与える。特に好ましい実施形態では、本発明に従うASE分子の活性をモジュレートすることにより、本発明のASEが調節する微生物または植物の代謝経路の収率、生産および/または生産効率が、モジュレートされ、膜を介した化合物の輸送効率が改変され、これによって、微生物および植物による所望のファインケミカルの収率、生産および/または生産効率を直接的または間接的のいずれかでモジュレートするようにする。
【0050】
ASEまたはASEポリペプチドという用語は、微生物および植物における細胞膜の構築に必要な化合物の代謝、またはこれらの膜を介した分子の輸送に関与するタンパク質を意味する。ASEの例として、配列番号1に示したものか、またはその誘導体が挙げられる。ASE遺伝子またはASE核酸配列という用語は、ASEをコードする核酸配列を含み、これは、コード領域と、対応する5’-および3’-非翻訳配列領域とからなる。ASE遺伝子の例として、配列番号1に示した配列およびそれらの誘導体が挙げられる。生産および生産性という用語は、当業界では認識されており、所定期間内に、所定発酵容量において形成される発酵産物(例えば、所望のファインケミカル)の濃度(例えば、産物のkg/時/リットル)を包含する。生産効率という用語は、特定レベルの生産を達成するのに要する時間(例えば、細胞が、ファインケミカルの特定の処理量を達成するのに要する時間)を意味する。収率または製品/炭素収率という用語は、当業界では認識されており、炭素源が製品(すなわち、ファインケミカル)に変換される効率を意味する。これは、通常、炭素源1kg当たりの製品のkg数として表される。化合物の収率または生産が増加すると、得られる分子、すなわち、一定期間にわたる所与量の培養物において回収される上記化合物の有用な分子の量が増加する。生合成または生合成経路という用語は、当業界では認識されており、例えば、多段階でかつ強度の調節を受ける工程などにおける、中間化合物からの細胞による、化合物、好ましくは、有機化合物の合成を意味する。分解もしくは分解経路という用語は、当業界では認識されており、例えば、多段階でかつ強度の調節を受ける工程などにおける、細胞による、分解産物(一般には、さらに小さいまたは少ない複合体分子)への、化合物、好ましくは、有機化合物の切断を意味する。代謝という用語は、当業界では認識されており、生物において起こる生化学反応のすべてを包含する。特定の化合物の代謝(例えば、脂肪酸の代謝)は、従って、この化合物に関連する、細胞内での該化合物の生合成、修飾および分解経路のすべてを包含する。
【0051】
別の実施形態では、本発明に従うASE分子は、微生物または植物におけるファインケミカルのような所望の分子の生産をモジュレートすることができる。本発明のASEの改変によって、この改変タンパク質を組み込んだ微生物株または植物株からのファインケミカルの収率、生産および/または生産効率に直接影響を与える多数の作用機構が存在する。細胞内で、または細胞からの、ファインケミカル分子の輸送に関与するASEの数または活性を増加させることにより、膜を介して輸送される上記化合物の量を増加させ、これから、該化合物を容易に回収および相互に変換することができる。さらに、脂肪酸および脂質は、それ自体が望ましいファインケミカルであり、これら化合物の生合成に関与する本発明の1種以上のASEの活性を最適化する、もしくはその数を増加する、あるいは、上記化合物の分解に関与する1種以上のASEの活性を低下させることにより、微生物または植物からの脂肪酸および脂質分子の収率、生産および/または生産効率を高めることができる。
【0052】
本発明に従うASE遺伝子の突然変異誘発によって、活性が改変されたASEをもたらすことができ、この改変された活性は、微生物または植物からの1種以上の所望のファインケミカルの生産に間接的に影響する。例えば、老廃物の輸送に関与する本発明のASEは、これまでより数が多い、もしくは活性が高いため、細胞の正常代謝老廃物(その量は、所望のファインケミカルの過剰生産により恐らく増加している)が、細胞内の分子を損なう(これにより、細胞の生存能力が低下する)、あるいは、ファインケミカルの生合成経路を妨害する(これにより、所望のファインケミカルの収率、生産または生産効率を低下させる)前に、該老廃物を効率的に膜外に輸送することができる。所望のファインケミカルの細胞内量が比較的多い場合には、それ自体で細胞に有毒となる恐れがあるため、上記化合物を細胞から送り出すことができる輸送体の活性または数の増加によって、培養中の細胞の生存能力を高め、ひいては、所望のファインケミカルを生産する培養中の細胞数を増加させることができる。また、本発明のASEを操作して、対応する量の様々な脂質分子および脂肪酸分子を生産することも可能である。これは、細胞膜の脂質組成に重大な影響を与える。脂質は、種類によって、異なる物理的特性を有することから、膜の脂質組成の改変により、膜の流動性を有意に改変することができる。膜流動性の改変により、膜を介した分子の輸送および細胞の完全性に影響を与えることができ、それらの各々が、ラージスケール発酵培養における微生物および植物からのファインケミカルの生産に重大な影響を及ぼす。植物の膜は、高温および低温、塩分、渇水に対する耐性、ならびに、細菌や真菌のような病原体に対する耐性などの特定の特性を賦与する。従って、膜化合物をモジュレートすることは、植物が、前述のストレスパラメーターの下で生存する能力に重大な影響を与えうる。これは、シグナル化カスケードの変化を介して起こる、または、改変された膜組成(例えば、Chapman, 1998, Trends in Plant Science, 3(11):419-426を参照)を介して直接起こるかのいずれかであり、これはまた、シグナル化カスケード(Wang 1999, Plant Physiology, 120:645-651を参照)またはWO 95/18222に開示されているように、低温の耐性に影響を与えうる。
【0053】
本発明の単離された核酸配列は、実施例に記載されているように、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)株のゲノム内に含まれる。単離されたイソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)ASE cDNAのヌクレオチド配列およびイソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)ASEの推定上のアミノ酸配列を配列番号1および2にそれぞれ示す。
【0054】
他の既知のエロンガーゼ遺伝子およびベクタープライマーに由来する変性オリゴヌクレオチドを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応により、配列番号1に示した核酸分子の断片を単離した。断片の一部をさらに増幅した後、これを用いて、機能的に活性のASE遺伝子を示す十分な配列情報を含む全長cDNAを単離した。1つのクローンは、既知エロンガーゼ遺伝子に対して弱い相同性を示す完全なASE遺伝子を含んでいた。酵母におけるオープンリーディングフレームの発現から、予想外にも、ASE遺伝子の特異的活性が明らかになった。上記酵素は、実施例に示すように、Δ9-脂肪酸を伸長させる。
【0055】
本発明はまた、配列番号2のアミノ酸配列と実質的に相同のアミノ酸配列を有するタンパク質に関する。本明細書で用いる「選択されたアミノ酸配列と実質的に相同のアミノ酸配列を有するタンパク質」は、選択されたアミノ酸配列、例えば、選択された完全アミノ酸配列に対して少なくとも約50%の相同性を有する。また、選択されたアミノ酸配列と実質的に相同のアミノ酸配列を有するタンパク質は、選択されたアミノ酸配列に対して少なくとも約50〜60%、好ましくは、少なくとも約60〜70%、さらに好ましくは、少なくとも約70〜80%、80〜90%または90〜95%、ならびに、最も好ましくは、少なくとも96%、97%、98%、99%以上の相同性を有するものでよい。
【0056】
本発明のASE、またはそれらの生物学的に活性な部分もしくは断片は、微生物または植物における細胞膜の構築に必要な化合物の代謝、もしくはこれらの膜を介した分子の輸送に関与することができるか、あるいは、C18-PUFAの伸長に要する1種以上の活性を有するため、C22-またはC24-PUFAおよび近縁のPUFAが得られる。
【0057】
本発明の様々な実施形態について以下の項でさらに詳しく説明する。
【0058】
A.単離された核酸分子
本発明の一態様は、ASEポリペプチドまたはその生物学的に活性の部分をコードする単離された核酸分子、ならびに、ASEコード化核酸(例えば、ASE DNA)の同定または増幅用のハイブリダイゼーションプローブもしくはプライマーとして使用するのに十分な核酸断片に関する。本明細書で用いる「核酸分子」という用語は、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)およびRNA分子(例えば、mRNA)ならびに、ヌクレオチド類似体を用いて作製されるDNAまたはRNAの類似体を意味する。この用語はまた、遺伝子のコード領域の3’および5’末端の両方に位置する非翻訳配列、すなわち、上記コード領域の5’末端から上流に位置する少なくとも約500、好ましくは、少なくとも約400、より好ましくは、少なくとも約350、300、250、200、150、さらに好ましくは、少なくとも約100ヌクレオチドの配列、および上記遺伝子のコード領域の3’末端から下流に位置する少なくとも約1,000、好ましくは、少なくとも約500、より好ましくは、少なくとも約400、300、250、200、150、さらに好ましくは、100、80、60、40または20ヌクレオチドの配列も包含する。核酸分子は、一本鎖または二本鎖のいずれでもよいが、好ましくは、二本鎖DNAである。「単離された」核酸分子とは、核酸の天然源に存在する他の核酸分子から分離されたものである。好ましくは、「単離された」核酸は、該核酸が由来する生物のゲノムDNAにおいて該核酸と天然では隣接する配列(すなわち、核酸の5’および3’末端に位置する配列)を含まない。例えば、様々な実施形態では、単離されたASE核酸分子は、核酸が由来する細胞(例えば、Isochrysis galbana細胞)のゲノムDNAにおいて、該核酸ともともと隣接している、約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kbまたは0.1kbより小さいヌクレオチドを含んでいてもよい。さらには、cDNA分子のような「単離された」核酸分子は、組換え技法により生産される場合には、その他の細胞物質または培地を、あるいは、化学的に合成される場合には、化学的前駆体もしくはその他の化学物質を実質的に含まない。「細胞物質を実質的に含まない」という表現には、タンパク質、多糖類など、その他の物質(本明細書では、『汚染物質』とも呼ばれる)を約30%(乾燥重量)以上含まない、より好ましくは、汚染物質を約20%以上、さらに好ましくは、約10%以上、最も好ましくは、約5%以上含まない核酸分子の調製物が包含される。
【0059】
本発明の一実施形態は、γ-リノレン酸(C18:3 d6, 9, 12)は伸長せずに、α-リノレン酸(C18:3 d9, 12, 15)を2炭素原子以上伸長させるポリペプチドをコードする植物に由来する単離された核酸である。
【0060】
本発明の別の実施形態は、γ-リノレン酸(C18:3 d6, 9, 12)は伸長せずに、α-リノレン酸(C18:3 d9, 12, 15)を2炭素原子以上伸長させるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸であって、
a)配列番号1に示した核酸配列、
b)配列番号2に示したポリペプチドをコードする核酸配列、
c)配列番号1に示した配列の誘導体であって、配列番号2に示したアミノ酸配列をコードする配列に対して少なくとも50%の相同性を有するポリペプチドをコードしかつエロンガーゼとして機能する上記配列の誘導体、
からなる群より選択される、上記核酸である。
【0061】
本発明に従う前記核酸は、PUFAを合成することができる繊毛虫、真菌、藻類、植物または渦(双)鞭毛虫のような生物、好ましくは、植物、特に好ましくは、イソクリシス(Isochrysis)属、最も好ましくは、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)に由来する。
【0062】
本発明の一態様は、ASEポリペプチドもしくはその生物学的に活性な部分をコードする単離された核酸分子、ならびに、ASEコード核酸(例えば、ASE DNA)を同定または増幅するハイブリダイゼーションプローブまたはプライマーとして使用するのに十分な核酸断片に関連する。本明細書で用いられる用語「核酸分子」は、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)およびRNA分子(例えば、mRNA)、ならびに、ヌクレオチド類似体により作製されるDNAまたはRNA類似体を包含するものとする。この用語はさらに、上記遺伝子のコード領域の3’および5’末端の両方に位置する非翻訳配列、すなわち、コード領域の5’末端から上流にある少なくとも約100ヌクレオチドの配列と、コード遺伝子領域の3’末端から下流にある少なくとも約20ヌクレオチドの配列とを包含する。この核酸分子は、一本鎖または二本鎖のいずれでもよいが、好ましくは、二本鎖DNAである。「単離された」核酸分子とは、天然の核酸源に存在するその他の核酸分子から分離されたものである。「単離された」核酸分子は、この核酸が誘導される生物のゲノムDNA内で、該核酸と本来隣接する配列(すなわち、該核酸の5’および3’末端に位置する配列)を含まないのが好ましい。例えば、様々な実施形態では、単離されたASE核酸分子は、核酸が誘導される細胞(例えば、Isochrysis galbana細胞)のゲノムDNA内で本来隣接する、約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5 kbまたは0.1 kbより小さいヌクレオチド配列を含んでいてもよい。さらに、cDNAのような「単離された」核酸分子は、それが、組換え法により産生される場合には、他の細胞材料もしくは培地を実質的に含まないか、あるいは、それが化学的に合成されたものであれば、化学的前駆体もしくはその他の化学物質を実質的に含まないと考えられる。実質的に含まないとは、意味する。
【0063】
本発明に従う核酸分子、例えば、配列番号1のヌクレオチド配列もしくはその部分を含む核酸配列は、分子生物学の標準的技法、ならびに、本明細書に記載する配列情報を用いて、単離することができる。例えば、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)ASE cDNAは、配列番号1の全部または一部をハイブリダイゼーションプローブとして用い、標準的ハイブリダイゼーション技法(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual第2版、Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbo, NY, 1989に記載されているものなど)により、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)ライブラリーから単離することができる。さらに、配列番号1の配列の全部または一部を含む核酸分子は、ポリメラーゼ連鎖反応により単離することができ、その際、この配列またはその一部、特に、ヒスチジンボックス(His-box)モチーフ周辺の領域に基づいて設計したオリゴヌクレオチドプライマー(Shanklinら(1994)Biochemistry 33, 12787-12794を参照)を用いて、単離することができる(例えば、配列番号1の配列の全部または一部を含む核酸分子は、配列番号1の同じ配列に基づいて設計したオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応により単離することができる)。例えば、mRNAは細胞から単離することができ(例えば、Chirgwinら(1979)Biochemistry 18:5294-5299によるグアニジウムチオシアネート抽出法による)、また、cDNAは逆転写酵素(例えば、メリーランド州ベセスダのGibco/BRLから入手可能なモロニーMLV逆転写酵素;または、フロリダ州セントピーターズバーグのSeikagaku America, Inc.から入手可能なAMV逆転写酵素)を用いて作製することができる。ポリメラーゼ連鎖反応を用いた増幅用の合成オリゴヌクレオチドプライマーは、配列番号1に示したヌクレオチド配列の1つに基づいて設計することができる。本発明の核酸は、標準的PCR増幅法に従い、cDNAを用いて、あるいは、鋳型としてのゲノムDNAおよび適当なオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、増幅することができる。このようにして増幅した核酸は、適当なベクターにクローニングした後、DNA配列分析により特性決定することができる。さらに、ASEヌクレオチド配列に対応するオリゴヌクレオチドは、例えば、自動DNA合成装置を用いて、標準的合成方法により作製することができる。
【0064】
配列番号1に示したcDNAは、ASE(すなわち、「コード領域」)をコードする配列、さらには、5’-非翻訳配列および3’-非翻訳配列情報をコードする配列を包含する。この他にも、上記核酸は、配列番号1に示した配列のいずれかのコード領域だけを含む場合もあれば、ゲノムDNAから単離した完全なゲノム断片を含む場合もある。
【0065】
配列番号2は、配列番号1に示した核酸分子Ig ASE1のヌクレオチド配列のコード領域の翻訳産物である。
【0066】
別の好ましい実施形態では、本発明に従う単離された核酸分子は、配列番号1に示すヌクレオチド配列のうち1配列の相補体である核酸分子、またはその一部分を含む。配列番号1に示すヌクレオチド配列の1つに相補的な核酸は、それが、配列番号1に示したヌクレオチド配列の1つとハイブリダイズして、安定な二本鎖を形成できるように、配列番号1に示したヌクレオチドの配列の1つに対し十分な相補性を有するものである。
【0067】
配列番号1の配列を有する新規エロンガーゼ核酸配列の相同体とは、例えば、配列番号1に示したヌクレオチド配列と、少なくとも約50〜60%、好ましくは約60〜70%、さらに好ましくは少なくとも約70〜80%、80〜90%、または90〜95%、またさらに好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%以上の相同性を有する対立遺伝子変異体、あるいは、その相同体、誘導体または類似体もしくは一部分を意味する。さらに好ましい実施形態では、本発明の単離された核酸分子は、例えば、ストリンジェントな条件下で、配列番号1に示すヌクレオチド配列もしくはその一部分の1つとハイブリダイズするヌクレオチド配列を包含する。対立遺伝子変異体は、特に、配列番号1に示した配列からのヌクレオチドの欠失、挿入または置換によって得ることができる機能的変異体を包含するが、ここでは、合成して得られたタンパク質の酵素活性を、1個以上の遺伝子の挿入のために有利に保持することを目的とする。エロンガーゼの酵素活性を保持するタンパク質とは、配列番号2によりコードされたタンパク質と比較して、本来の酵素活性の少なくとも10%、好ましくは20%、特に好ましくは30%、最も好ましくは40%を有するタンパク質を意味する。
【0068】
配列番号1の相同体とは、例えば、コードおよび非コードDNA配列の細菌、真菌または植物の相同体、トランケート型配列、一本鎖DNAまたはRNAも意味する。
【0069】
配列番号1の相同体はまた、例えば、プロモーター変異体のような誘導体も意味する。前記ヌクレオチド配列の上流にあるプロモーターは、1以上のヌクレオチド置換、挿入および/または欠失により修飾することができるが、その際、プロモーターの機能性または活性は損なわれない。さらに、プロモーターの活性を、その配列の改変により増加するか、あるいは、さらに活性の高いプロモーター(異種生物由来のものでもよい)によってこれらのプロモーターを完全に置換することも可能である。
【0070】
さらに、本発明の核酸分子は、配列番号1に示した1配列のコード領域の一部分、例えば、プローブまたはプライマーとして用いることができる断片、またはASEの生物学的に活性な部分をコードする断片を包含するだけの場合もある。イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)由来のASE遺伝子のクローニングから決定されるヌクレオチド配列によって、プローブおよびプライマーの作製が可能になり、これらは、他の細胞型および生物におけるASE相同体、ならびに、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)または近縁の種由来のASE相同体を同定および/またはクローニングするために設計される。プローブ/プライマーは、典型的には、実質的に精製されたオリゴヌクレオチドを包含する。このオリゴヌクレオチドは、典型的に、配列番号1に示したうちの1配列のセンス鎖、もしくは、配列番号1の1配列のアンチセンス鎖の少なくとも約12、好ましくは約16、さらに好ましくは25、40、50または75個の連続したヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列の領域、またはそれらの天然の突然変異体を包含する。配列番号1のヌクレオチド配列に基づくプライマーをPCR反応で用いることにより、ASE相同体をクローニングすることができる。ASEヌクレオチド配列に基づくプローブを用いて、同一または同種タンパク質をコードする転写産物もしくはゲノム配列を検出することができる。好ましい実施形態では、上記プローブは、さらに、そこに結合した標識基も含み、例えば、この標識基は、放射性同位体、蛍光化合物、酵素または酵素補因子でよい。これらのプローブは、細胞サンプル中のASEコード核酸のレベルを測定することにより、例えば、ASE mRNAレベルを検出することにより、またはゲノムASE遺伝子が突然変異を起こしているかまたは欠失されているかを決定することにより、ASEを誤って発現する細胞を同定するための、ゲノムマーカー試験キットの一部として用いることができる。
【0071】
一実施形態では、本発明の核酸分子は、タンパク質もしくはその一部分が微生物または植物内で細胞膜の構築に必要な化合物の代謝、またはこれら膜を介した分子の輸送に関与する能力を保持するのに十分な、配列番号2のアミノ酸配列との相同性を有するアミノ酸配列を含む上記タンパク質もしくはその一部分をコードする。本明細書で用いる用語「十分な相同性」とは、そのアミノ酸配列が配列番号2と同一であるかまたは同等である最小数のアミノ酸残基(例えば、配列番号2の配列の1つに含まれるアミノ酸残基のような、類似した側鎖を有するアミノ酸残基)を有し、これによって、微生物もしくは植物内で細胞膜の構築に必要な化合物の代謝、またはこれらの膜を介した分子の輸送に関与できるタンパク質またはその一部分を意味する。本明細書に記載するように、膜成分代謝経路または膜輸送系のタンパク質成分は、1種以上のファインケミカルの生産および分泌に役立つことができる。これら活性の例も本明細書に記載する。従って、「ASEの機能」は、1種以上のファインケミカルの収率、生産および/または生産効率に直接的もしくは間接的に貢献している。この触媒活性のASE基質特異性の例を表2に示す。
【0072】
別の実施形態では、本発明に従う核酸の誘導体は、配列番号2の完全アミノ酸配列と、少なくとも約50〜60%、好ましくは少なくとも約60〜70%、さらに好ましくは少なくとも約70〜80%、約80〜90%または90〜95%、最も好ましくは少なくとも約96%、97%、98%、99%以上の相同性を有するタンパク質をコードする。
【0073】
本発明のASE核酸分子によってコードされるタンパク質部分は、好ましくはASEのうちの1つの生物学的に活性な部分である。本明細書で用いる用語「ASEの生物学的に活性な部分」とは、微生物または植物における細胞膜の構築に必要な化合物の代謝、またはこれらの膜を介した分子の輸送に関与するか、あるいは、表2に記載した活性を有する、ASEの一部分、例えば、ドメイン/モチーフを包含するものとする。ASEまたはその生物学的に活性な部分が、微生物または植物における細胞膜の構築に必要な化合物の代謝、またはこれらの膜を介した分子の輸送に関与できるか否かを決定するためには、酵素活性のアッセイを実施することができる。これらのアッセイ方法は、実施例の項の実施例8で詳しく説明するが、当業者には公知である。
【0074】
ASEの生物学的に活性な部分をコードするその他の核酸断片は、配列番号2に示した上記配列のうち1配列の一部分を単離し、ASEまたはペプチドのコード化部分を発現させた(例えば、in vitroでの組換え発現による)後、ASEまたはペプチドのコード化部分の活性を確認することにより作製することができる。
【0075】
さらに、本発明は、遺伝子コードの縮重によって、配列番号1に示すヌクレオチド配列(およびその部分)の1つとは異なり、配列番号1に示すヌクレオチド配列によってコードされたものと同じASEをコードする核酸分子も包含する。別の実施形態では、本発明に従う単離された核酸分子は、配列番号2に示したアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する。別の実施形態では、本発明に従う核酸分子は、配列番号2のアミノ酸配列(配列番号1に示すオープンリーディングフレームによってコードされる)と実質的に相同である、全長イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)タンパク質をコードする。
【0076】
配列番号1に示したイソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)ASEヌクレオチド配列以外にも、当業者であれば、集団(例えば、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)集団)内に、ASEのアミノ酸配列の変化を引き起こすDNA配列多型が存在することを認識するだろう。ASE遺伝子におけるこのような遺伝的多型は、自然突然変異により、集団内の個体間に存在しうる。本明細書で用いる用語「遺伝子」および「組換え遺伝子」とは、ASE、好ましくは、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)ASEをコードするオープンリーディングフレームを有する核酸分子を意味する。このような自然突然変異は、典型的に、ASE遺伝子のヌクレオチド配列に1〜5%の分散を生じさせる。このようなヌクレオチド変異、ならびに、その結果起こったASE中のアミノ酸多型はすべて、自然突然変異の結果であり、ASEの機能活性を改変せず、これらも本発明の範囲に含まれるものとする。
【0077】
本発明のイソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)ASE cDNAの自然変異体および非イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)相同体に対応する核酸分子は、本明細書に開示したイソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)ASE核酸に対するその相同性に基づき、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で標準的ハイブリダイゼーション法に従って、ハイブリダイゼーションプローブとしてイソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)cDNAもしくはその一部分を用いて、単離することができる。従って、別の実施形態では、本発明に従う単離された核酸分子は、少なくとも15ヌクレオチドの長さであり、ストリンジェントな条件下で配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸分子とハイブリダイズする。別の実施形態では、核酸は、25、50、100、250以上のヌクレオチドの長さである。本明細書で用いる用語「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」とは、互いに少なくとも60%の相同性を有するヌクレオチド配列が、典型的には、互いにハイブリダイズしたままの状態で残っているハイブリダイゼーションおよび洗浄条件を表すものとする。好ましくは、このような条件は、互いに少なくとも約65%、さらに好ましくは少なくとも約70%、さらにまた好ましくは少なくとも約75%以上の相同性を有する配列が、典型的には、互いにハイブリダイズされたままの状態で残っているような条件である。このようなストリンジェントな条件は、当業者には公知であり、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons. N.Y.(1989)、6.3.1-6.3.6にみいだすことができる。限定するものではないが、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の好ましい例は、約45℃で、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でハイブリダイズさせた後、50〜65℃で、0.2×SSC、0.1% SDS中で1回以上洗浄する段階からなる。好ましくは、ストリンジェントな条件下で配列番号1の配列とハイブリダイズする本発明の単離された核酸分子は、天然に存在する核酸分子に相当する。本明細書で用いる「天然に存在する」核酸分子とは、天然に存在するヌクレオチド配列(例えば、天然タンパク質をコードするもの)を有するRNAまたはDNA分子を意味する。一実施形態では、核酸は、天然のイソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)ASEをコードする。
【0078】
集団に存在しうるASE配列の天然に存在する変異体の他に、当業者であれば、さらに、突然変異による変化を、配列番号1のヌクレオチド配列に導入することによって、ASEの機能的能力を改変することなく、コードされたASEのアミノ酸配列に変化を起こすことができることがわかるであろう。例えば、「非必須」アミノ酸残基にアミノ酸置換を起こすヌクレオチド置換を、配列番号1の配列に生じさせることができる。「非必須」アミノ酸残基は、ASEの活性を改変することなく、ASE(配列番号2)のうちの1つの野生型配列から改変することができる残基であるのに対し、「必須」アミノ酸残基は、ASE活性に必要な残基である。しかし、その他のアミノ酸残基(例えば、ASE活性を有するドメインに、保存されていないもの、または半保存しかされていないもの)は、活性に必須ではないと考えられることから、恐らく、ASE活性を変えずに、改変することができるであろう。
【0079】
従って、本発明のさらに別の態様は、ASE活性に必須ではない、改変されたアミノ酸残基を含むASEをコードする核酸分子に関する。このようなASEは、アミノ酸配列に関して、配列番号2に含まれる配列とは異なるが、本明細書に記載したASE活性の少なくとも1つは保持している。一実施形態では、単離された核酸分子は、タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、該タンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも約50%の相同性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)における細胞膜の構築に必要な化合物の代謝、もしくはこれらの膜を介した分子の輸送に関与することができるか、あるいは、表2に記載した1以上の活性を有する。好ましくは、上記核酸分子によりコードされるタンパク質は、配列番号2の配列の1つと少なくとも約50〜60%の相同性を有し、さらに好ましくは、配列番号2の配列の1つと少なくとも約60〜70%の相同性を有し、さらにまた好ましくは、配列番号2の配列の1つと少なくとも約70〜80%、80〜90%、90〜95%の相同性を有し、最も好ましくは、配列番号2の配列の1つと少なくとも約96%、97%、98%もしくは99%の相同性を有する。
【0080】
2つのアミノ酸配列(例えば、配列番号2の配列の1つと、それらの変異形態の1つ)間または2つの核酸間の相同性%を決定するためには、最適な比較(例えば、一方のタンパク質または核酸の配列にギャップを導入することにより、他方のタンパク質または核酸との最適なアラインメントを達成するなど)が可能なように、両配列を重ねて表記する。次に、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置に存在するアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。一方の配列(例えば、配列番号2の配列の1つ)内の位置に、他方の配列(例えば、配列番号2から選択された形態の突然変異形態)内の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドが存在する場合、該分子は、この位置で相同である(すなわち、本明細書で用いるアミノ酸または核酸「相同性」は、アミノ酸または核酸「同一性」に相当する)。両配列間の相同性%は、両配列が共有する同一位置の数の関数である(すなわち、相同性%=同一位置の数/位置の総数×100)。
【0081】
配列番号2のタンパク質配列と相同であるASEをコードする、単離された核酸分子は、配列番号1のヌクレオチド配列に1以上のヌクレオチド置換、付加または欠失を導入し、これにより、1以上のアミノ酸置換、付加または欠失を、コードされたタンパク質に導入させて、作製することができる。突然変異は、部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介突然変異誘発のような標準的技法により、配列番号1の配列またはその誘導体の1つに導入することができる。保存的アミノ酸置換は、1つ以上の推定上の非必須アミノ酸残基で実施するのが好ましい。「保存的アミノ酸置換」では、上記アミノ酸残基を、類似側鎖を有するアミノ酸残基で置換する。類似側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β-分枝側鎖(例えば、トリオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を包含する。従って、ASEにおける推定上の非必須アミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基で置換するのが好ましい。これ以外にも、別の実施形態では、例えば、飽和突然変異誘発により、ASEコード配列の全部または一部分にわたって、ランダムに突然変異を導入した後、得られた突然変異体を、本明細書に記載したASE活性についてスクリーニングすることによって、ASE活性を保持する突然変異体を同定することができる。配列番号1の配列の1つに突然変異誘発を起こした後、コードされたタンパク質を組換えにより発現させ、例えば、本明細書に記載するアッセイ(実施例を参照)を用いて、該タンパク質の活性を決定することができる。
【0082】
酵素をコードする遺伝子配列の方向性をもつ進化および突然変異誘発を実施するのに知られている技法としてさらに、遺伝子シャッフリング(Stemmer, PNAS 1994, 91:10747-10751, WO 97/20078およびWO 98/13487)がある。遺伝子シャッフリングは、遺伝子断片の組合せ方法であり、誤りがちのPCRと組み合わせることにより、得られる配列およびコードされた酵素活性の遺伝的多様性を増大することができる。このような手法の前提は、好適なスクリーニングシステムである。エロンガーゼの場合には、MALDI-TOFにより促進されるハイスループット代謝物測定、ガスクロマトグラフィー−質量分析法、薄層クロマトグラフィーまたは液体クロマトグラフィー−質量分析法、あるいは、その他の好適な組合せもしくは方法を用いて、疎水画分における新規の化合物または生成物の出現をモニタリングすることができる。
【0083】
前記ASEをコードする核酸分子の他に、本発明のさらに別の態様は、γ-リノレン酸(C18:3 d6, 9,12)は伸長しないが、α-リノレン酸(C18:3 d9, 12,15)を2炭素原子以上伸長させるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子に対して「アンチセンス」である単離された核酸に関し、この核酸は、下記のものからなる群より選択される:
a)配列番号1に示した核酸配列、
b)配列番号2に示したポリペプチドをコードする核酸配列、
c)配列番号1に示した配列の誘導体であって、配列番号2に示したアミノ酸配列をコードする配列に対して少なくとも約50%の相同性を有するポリペプチドをコードし、かつ、エロンガーゼとして作用する上記配列の誘導体。
【0084】
「アンチセンス」核酸分子は、タンパク質をコードする「センス」核酸に相補的なヌクレオチド配列、例えば、二重鎖cDNA分子のコード鎖に相補的な、あるいは、mRNA配列に相補的なヌクレオチド配列を包含する。従って、アンチセンス核酸は、センス核酸との水素結合を形成することができる。このアンチセンス核酸は、完全なASEコード配列鎖、またはその一部分だけに相補的であってもよい。一実施形態では、アンチセンス核酸分子は、ASEをコードするヌクレオチド配列のコード鎖の「コード領域」に対して、アンチセンスである。「コード領域」という用語は、アミノ酸残基に翻訳されるコドンを含むヌクレオチド配列の領域(例えば、停止コドン、すなわち、停止コドンの直前のコドンで開始および停止する全コード領域)を意味する。さらに別の実施形態では、アンチセンス核酸分子は、ASEをコードするヌクレオチド配列のコード鎖の「非コード領域」に対してアンチセンスである。「非コード領域」という用語は、コード領域と隣接し、かつ、アミノ酸に翻訳されない5’および3’配列(従って、5’-および3’-非翻訳領域とも呼ばれる)を意味する。また、アンチセンス断片とアンチセンス断片の一部分とをセンス配向に結合する逆方向反復法を用いることも可能であり、その際、両者は、アダプター配列または除去可能なイントロンのいずれかによって連結される(Abstract Book of the 6th Intern. Congr. Of Plant Mol Biol. ISPMB, Quebec June 18-24, 2000, Abstract No. S20-9、Greenら)。
【0085】
本明細書に開示するASEをコードするコード鎖配列(例えば、配列番号1に示した配列)を仮定すれば、本発明のアンチセンス核酸は、ワトソン−クリック塩基対合の法則に従って設計することができる。アンチセンス核酸分子は、ASE mRNAの全コード領域に相補的であってもよいが、ASE mRNAのコード領域または非コード領域の一部分だけに「アンチセンス」であるオリゴヌクレオチドの方が好ましい。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ASE mRNAの翻訳開始部位周辺の領域に相補的である。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、長さが、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45または50以上のヌクレオチドのものでよい。本発明のアンチセンス核酸は、化学的合成および酵素の結合反応を用いて、当業者には公知の方法により構築することができる。例えば、アンチセンス核酸(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)は、天然のヌクレオチドまたは様々な修飾ヌクレオチドを用いて、化学的に合成することができる。この修飾ヌクレオチドは、分子の生物学的安定性を高める、あるいは、アンチセンス核酸とセンス核酸との間に形成された二重らせんの物理的安定性を高めるものであり、例えば、ホスホロチオエート誘導体や、アクリジン−置換ヌクレオチドを用いることができる。アンチセンス核酸を生成するのに用いることができる修飾ヌクレオチドの例として、下記のものを挙げることができる:5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β-D-ガラクトシルクエオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルクエオシン、5’-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンチルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、クエオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)wおよび2,6-ジアミノプリン。あるいは、核酸をアンチセンス配向にサブクローニングした発現ベクターを用いて、アンチセンス核酸を生物学的に産生させることができる(すなわち、挿入した核酸から転写されるRNAは、目的とする標的核酸に対してアンチセンス配向にあり、これについては、以下の項でさらに詳しく説明する)。
【0086】
本発明のアンチセンス核酸分子は、典型的には、細胞に投与するか、またはin situで産生することにより、これら分子が、ASEをコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNAとハイブリダイズするかまたは結合し、その結果、例えば、転写および/または翻訳を阻害することにより、当該タンパク質の発現を阻害するようにする。ハイブリダイゼーションは、安定な二重らせんを形成する通常のヌクレオチドの相補性により、あるいは、例えば、DNA二重らせんと結合するアンチセンス核酸分子の場合には、二重らせんの大きな間隙内での特異的相互作用によって行われる。例えば、上記アンチセンス核酸分子をペプチドまたは抗体に結合させ、それらを細胞表面受容体または抗原に結合させることにより、該アンチセンス分子が、受容体または選択された細胞表面で発現する抗原と特異的に結合するように、該アンチセンス分子を修飾することもできる。また、本明細書に記載するベクターを用いて、上記細胞にアンチセンス核酸分子を送達することも可能である。上記アンチセンス分子の十分な細胞内濃度を達成するためには、該アンチセンス核酸分子が、強力な原核性、ウイルス性または真核性プロモーター(植物プロモーターを含む)の制御下にあるベクター構築物が好ましい。
【0087】
別の実施形態では、本発明のアンチセンス核酸分子はアノマー核酸分子である。アノマー核酸分子は、相補的RNAと特異的な二本鎖ハイブリッドを形成するが、その鎖は、通常のユニットとは対照的に、互いに平行である(Gaultierら(1987)Nucleic Acids Res. 15:6625-6641)。アンチセンス核酸分子はまた、2’-o-メチルリボヌクレオチド(Inoueら(1987)Nucleic Acids Res. 15:6131-6148)またはキメラRNA-DNA類似体(Inoueら(1987)FEBS Lett. 215:327-330)を包含しうる。
【0088】
さらに別の実施形態では、本発明のアンチセンス核酸はリボザイムである。リボザイムは、それに対し相補的な領域を有する一本鎖核酸(mRNAなど)を切断することができるリボヌクレアーゼ活性を有する触媒性RNA分子である。従って、リボザイム(例えば、ハンマーヘッド型リボザイム(HaselhoffおよびGerlach(1988)Nature 334:585-591))をASE mRNA転写物の触媒切断に用いて、ASE mRNAの翻訳を阻害することができる。ASEをコードする核酸に対する特異性を有するリボザイムは、本明細書において配列番号1に示したASE cDNAのヌクレオチド配列に基づき、あるいは、本発明に教示する方法に従って単離される異種配列に基づいて設計することができる。例えば、テトラヒメナ-L-19-IVS RNAの誘導体を構築することができ、その際、活性部位のヌクレオチド配列は、ASEをコードするmRNAにおいて切断しようとするヌクレオチド配列と相補的である。例えば、Cechら、米国特許第4,987,071号およびCechら、米国特許第5,116,742号を参照されたい。この他に、ASE mRNAを用いて、RNA分子のプールの中から、特異的リボヌクレアーゼ活性を有する触媒性RNAを選択することができる。例えば、Bartel, D.およびSzostak, J.W.(1993)Science 261:1411-1418を参照されたい。
【0089】
この他に、ASEヌクレオチド配列の調節領域(例えば、ASEプロモーターおよび/またはエンハンサー)に相補的なヌクレオチド配列を指令して、三重らせん構造を形成させ、これによって、標的細胞におけるASE遺伝子の転写を阻止させることにより、ASE遺伝子発現を阻害することができる。概要については、Helene, C.(1991)Anticancer Drug Res. 6(6) 569-84;Helene, C.ら(1992)Ann. N. Y. Acad. Sci. 660:27-36;およびMaher. L.J.(1992)Bioassays 14(12):807-815を参照されたい。
【0090】
B.遺伝子構築物
本発明の別の実施形態は、新規遺伝子構築物であって、該構築物は、γ-リノレン酸(C18:3 d6, 9,12)は伸長せずに、α-リノレン酸(C18:3 d9, 12,15)を2炭素原子以上伸長させるポリペプチドをコードする、植物由来の単離された核酸、あるいは、1以上の調節シグナルに機能的に連結して、有利に遺伝子発現を高める配列番号1の遺伝子配列、その相同体、誘導体または類似体を含んでなる。これら調節配列の例として、インデューサーまたはリプレッサーに結合し、これによって、核酸の発現を調節する配列がある。これら新規の調節配列以外にも、実際の構造遺伝子の前に、これらの配列の自然調節がまだ存在する可能性もあり、必要であれば、遺伝子的に改変され、自然調節がオフに切り替えられ、遺伝子の発現が増強されるようにする。しかし、遺伝子構築物は、これより単純な構造を有するものであってもよい。すなわち、配列番号1の配列またはその相同体の前には、追加調節シグナルを挿入していないため、その調節を有する天然プロモーターは欠失されていない。これに代わり、天然調節配列を突然変異させることにより、調節がそれ以上起きないようにし、遺伝子発現を増強する。上記遺伝子構築物はさらに、プロモーターに機能的に連結され、核酸配列の発現を高めることができる1以上のいわゆるエンハンサー配列を含有すれば有利である。また、DNA配列の3’末端で、有利な追加配列(例えば、さらに別の調節エレメントまたはターミネーター)を挿入することも可能である。エロンガーゼ遺伝子は、遺伝子構築物において1以上のコピーで存在することができる。生物にさらに別の遺伝子を挿入する場合には、挿入しようとする別の遺伝子が上記遺伝子構築物に存在するのが有利である。
【0091】
上記新規の方法に有利な調節配列は、例えば、下記のようなプロモーター:cos-、tac-、trp-、tet-、trp-tet-、lpp-、lac-、lpp-lac-、lacIq-、T7-、T5-、T3-、gal-、trc-、ara-、SP6-、λ-PR-またはλ-PL-プロモーターに存在し、グラム陰性菌で用いるのが有利である。さらに有利な調節配列は、例えば、下記のプロモーターに存在する:グラム陽性プロモーターamyおよびSPO2;酵母もしくは真菌プロモーターADC1、MFα、AC、P-60、CYC1、GAPDH、TEF、rp28、ADH;または植物プロモーターCaMV/35S[Franckら、Cell 21(1980)285-294]、PRP1[Wardら、Plant. Mol. Biol. 22(1993)]、SSU、OCS、lib4、usp、STLS1、B33、nos、または、ユビキチンもしくはファセオリンプロモーター。本発明では、下記のような誘導プロモーターも有利である:例えば、EP-A-0 388 186(ベンゼンスルホンアミド誘導性)、Plant J. 2、1992:397-404(Gatzら、テトラサイクリン−誘導性)、EP-A-0 335 528(アブシジン酸誘導性)またはWO 93/21334(エタノールまたはシクロヘキセノール誘導性)に記載されている各種プロモーター。その他の有用な植物プロモーターとして、細胞質ゾルのFBPaseプロモーターまたはジャガイモのST-LSIプロモーター(Stockhausら、EMBO J. 8, 1989, 2445)、ダイズ(Glysine max)のホスホリボシルピロホスヘートアミドトランスフェラーゼプロモーター(GenBank登録番号U87999)または、EP-A-0 249 676に記載されたノード特異的プロモーターがある。特に有利なプロモーターは、脂肪酸生合成に関与する組織で発現を可能にするプロモーターである。非常に有利なものは、usp-、LEB4-、ファセオリンまたはナピンプロモーターなどの種子特異的プロモーターである。これ以外の特に有利なプロモーターは、単子葉植物または双子葉植物に用いることができる種子特異的プロモーターであり、米国特許第5,608,152号(アブラナ由来のナピンプロモーター)、WO 98/45461(シロイヌナズナ由来のファセオリンプロモーター)、米国特許第5,504,200号(インゲンマメ由来のファセオリンプロモーター)、WO 91/13980(アブラナ由来のBce4-プロモーター)、Baeumleinら、Plant J., 2, 2, 1992:233-239(マメ科由来のLEB4プロモーター)に記載されているが、これらのプロモーターは、双子葉植物に有用である。下記のプロモーターは、例えば、単子葉植物に有用である:オオムギ由来のlpt-2またはlpt-1プロモーター(WO 95/15389およびWO 95/23230)、オオムギ由来のホルデインプロモーター、ならびに、WO 99/16890に記載されたその他の有用なプロモーター。
【0092】
原則として、新規の方法には、前記のような調節配列を有するすべての天然プロモーターを使用することができる。また、さらに、合成プロモーターを用いることも可能であり、有利である。
【0093】
前述のように、遺伝子構築物は、生物に導入しようとする別の遺伝子を含んでいてもよい。その酵素活性によって、調節に介入するインデューサー、リプレッサーまたは酵素の遺伝子、あるいは、生合成経路に関与する1以上または全ての遺伝子のような調節遺伝子を宿主生物に挿入し、そこで発現させることが可能であり、しかも有利である。これらの遺伝子は、異種または同種いずれの供給源に由来するものでよい。挿入された遺伝子は、それ自身のプロモーターを持っているか、あるいは、配列番号1の配列のプロモーターまたはその相同体の制御下においてもよい。
【0094】
存在するその他の遺伝子を発現させるためには、上記遺伝子構築物に、発現を増強する3’-および/または5’-末端調節配列をさらに含有させれば有利であり、これらは、選択した宿主生物および遺伝子に応じて、最適な発現を達成すべく選択される。
【0095】
前述のように、これらの調節配列は、遺伝子およびタンパク質発現の特異的発現を可能にすることを目的とする。宿主生物によっては、これは、例えば、遺伝子が誘導後に初めて発現または過剰発現するか、あるいは、直ちに発現および/または過剰発現することを意味する場合もある。
【0096】
さらに、調節配列または調節因子は、好ましくは、導入された遺伝子の発現に有利な作用を及ぼし、これによって発現を増強することができる。このように、プロモーターおよび/またはエンハンサーのような強力な転写シグナルを用いて、調節エレメントを転写レベルで有利に増強することが可能である。しかし、例えば、mRNA安定性を高めることにより、翻訳を増強することも可能である。
【0097】
加えて、本発明の遺伝子構築物は、様々な生合成経路の追加遺伝子、例えば、ビタミン類、カロチノイド類、単糖、オリゴ糖もしくは多糖のような糖類の合成遺伝子、または、脂肪酸生合成遺伝子を含んでいるのが好ましく、さらに好ましくは、この遺伝子構築物は、デサチュラーゼ、ヒドロキシラーゼ、アシル-ACP-チオエステラーゼ、エロンガーゼ、アセチレナーゼ、シンテサーゼまたはレダクターゼなどの脂肪酸生合成遺伝子を含み、このような遺伝子として、例えば、Δ19-、Δ17-、Δ15-、Δ12-、Δ9-、Δ8-、Δ6-、Δ5-、Δ4-デサチュラーゼ、ヒドロキシラーゼ、エロンガーゼ、Δ12-アセチレナーゼ、アシル-ACP-チオエステラーゼ、β-ケトアシル-ACP-シンターゼ、またはβ-ケトアシル-ACPレダクターゼが挙げられる。好ましくは、上記遺伝子構築物は、Δ19-、Δ17-、Δ15-、Δ12-、Δ9-、Δ8-、Δ6-、Δ5-、Δ4-デサチュラーゼ、ヒドロキシラーゼ、エロンガーゼ、Δ12-アセチレナーゼ、アシル-ACP-チオエステラーゼ、β-ケトアシル-ACP-シンターゼ、またはβ-ケトアシル-ACPレダクターゼからなる群より選択される脂肪酸生合成遺伝子を含む。
【0098】
C.組換え発現ベクターおよび宿主細胞
本発明のさらに別の態様は、ASE(またはその一部分)をコードする核酸を含む、ベクター、好ましくは発現ベクターに関する。本明細書で用いられる用語「ベクター」とは、別の核酸に結合し、これを輸送することができる核酸分子を意味する。ベクターの一タイプとして、「プラスミド」があり、これは、環状の二本鎖DNAループを意味し、そこに、別のDNAセグメントを連結することができる。ベクターのさらに別のタイプは、ウイルスベクターであり、別のDNAセグメントを該ウイルスゲノムに連結することができる。特定のベクターは、それらが導入された宿主細胞中で自律複製が可能である(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクター、ならびに、エピソーム性哺乳動物ベクター)。その他のベクター(例えば、非エピソーム性哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に、宿主細胞のゲノムに組み込まれるため、宿主ゲノムと一緒に複製される。さらに、特定のベクターは、それらが機能的に連結される遺伝子の発現を指令することができる。本明細書では、このようなベクターを「発現ベクター」と呼ぶ。一般に、組換えDNA技法に有用な発現ベクターは、プラスミドの形態をしていることが多い。本明細書では、「プラスミド」および「ベクター」は、置き換え可能に用いることができる。というのは、プラスミドは、ほとんどの場合、ベクターの形態で用いられるものであるからである。しかし、本発明は、同様の機能を有するウイルスベクター(例えば、複製能欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ近縁ウイルス)のような他の形態の発現ベクターも包含するものとする。
【0099】
本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞において核酸を発現するのに適した形態をした、少なくとも1つの本発明の核酸、または少なくとも1つの本発明の遺伝子構築物を含む。すなわち、上記組換え発現ベクターは、発現に用いようとする宿主細胞に基づいて選択され、かつ、発現させようとする核酸配列に機能的に連結した1以上の調節配列を包含する。組換え発現ベクターにおいて、「機能的に連結した」とは、目的とするヌクレオチド配列が、調節配列に結合し、これによって、ヌクレオチド配列の発現が可能になり、相互に融合することにより、両配列が、それぞれに特有とみなされる意図した機能を果たすようにすることを意味する(例えば、ベクターを宿主細胞に導入する場合には、in vitro転写/翻訳系または宿主細胞において機能を果たす)。用語「調節配列」は、プロモーター、エンハンサーおよびその他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を包含するものとする。このような調節配列は、例えば、Goeddel:Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185, Academic Press、カリフォルニア州サンディエゴ(1990)に記載されている。また、下記文献も参照されたい:GruberおよびCrosby、Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology, CRC Press, Boca Raton、Florida編:GlickおよびThompson、第7章、89-108(その中の参照文献も含む)。調節配列は、多種の宿主細胞におけるヌクレオチド配列の構成的発現を制御するもの、ならびに、特定の条件下で、特定の宿主細胞でしか、ヌクレオチド配列の直接発現を制御しないものを包含する。当業者であれば、発現ベクターの設計は、形質転換しようとする宿主細胞の選択、所望するタンパク質の発現レベルなどの因子によって違ってくることがわかるだろう。本発明の発現ベクターを宿主細胞に導入することにより、本明細書に記載した核酸(例えば、ASE、変異型ASE、融合タンパク質など)によりコードされる、融合タンパク質もしくは融合ペプチドなどのタンパク質またはペプチドを生産することができる。
【0100】
本発明の組換え発現ベクターは、原核または真核生物細胞においてASEを発現させるために設計することができる。例えば、ASE遺伝子は、C.グルタミクム(C. glutamicum)のような細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを用いる)、酵母およびその他の真菌細胞(Romanos, M. A.ら、(1992)”Foreign gene expression in yeast:a review”, Yeast 8:423-488;van den Hondel, C.A.M.J.J.ら(1991)”Heterologous gene expression in filamentous fungi”:More Gene Manipulations in Fungi, J.W. Bennet & L.L. Lasure編, p. 396-428:Academic Press:San Diego;およびvan den Hondel, C.A.M.J.J.およびPunt, P. J.(1991)”Gene transfer systems and vector development for filamentous fungi:Applied Molecular Genetics of Fungi, Peberdy, J.F.ら、編、p. 1-28、Cambridge University Press:Cambridge)、藻類(Falciatoreら、1999、Marine Biotechnology. 1, 3:239-251)、下記タイプの繊毛虫:全毛亜綱(Holotrichia)、周毛亜綱(Peritrichia)、旋毛亜綱(Spirotrichia)、吸滴虫綱(Suctoria)、テトラヒメナ属(Tetrahymena)、ゾウリムシ属(Paramecium)、コルピディウム属(Colpidium)、グラウコマ属(Glaucoma)、フクロミズケムシ属(Platyophrya)、ポトマカス(Potomacus)、シュードコニレンバス属(ASEudocohnilembus)、ユープロテス属(Euprotes)、エンゲルマニエラ属(Engelmaniella)およびスチロニキア属(Stylonichia)、特に、スチロニキア・レムネ(Stylonychia lemnae)属の繊毛虫、ならびに、多細胞植物の細胞(Schmidt, R.およびWillmitzer, L.(1988)”High efficiency Agrobacterium tumefacians-mediated transformation of Arabidopsis thaliana leaf and cotyledon explants” Plant Cell Rep.:583-586;Plant Molecular Biology and Biotechnology, C Press, Boca Raton、Florida、第6/7章、p.71-119(1993);F.F. White, B. Jenesら、Techniques for Gene Transfer:Transgenic Plants, Vol. 1, Engineering and Utilization, KungおよびR. Wu編, Academic Press(1993)、128-43;Potrykus, Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Molec. Biol. 42(1991)、205-225(およびその中の参照文献)を参照)または哺乳動物細胞において、ベクターを用い、WO 98/01572に記載されているような形質転換方法に従って、発現させることができる。適した宿主細胞については、Goeddel, Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185, Academic Press、カリフォルニア州サンディエゴ(1990)にさらに詳しく記載されている。この他に、例えば、T7プロモーター調節配列およびT7ポリメラーゼを用いて、組換え発現ベクターをin vitroで転写および翻訳させることもできる。
【0101】
原核生物におけるタンパク質の発現は、ほとんどの場合、融合タンパク質または非融合タンパク質の発現を指令する構成または誘導プロモーターを含むベクターを用いて、実施されている。融合ベクターは、多数のアミノ酸を、そこにコードされているタンパク質に、通常は組換えタンパク質のアミノ末端に付加するが、C末端に付加することもあれば、タンパク質中の適した領域内に融合することもある。このような融合ベクターは、典型的には、3つの目的、すなわち、1)組換えタンパク質の発現を増強すること;2)組換えタンパク質の溶解性を高めること;3)アフィニティー精製においてリガンドとして作用することにより、組換えタンパク質の精製を容易にすること、を果たす。融合発現ベクターの場合には、タンパク質加水分解による切断部位は、融合単位と組換えタンパク質の連結部位で、導入されることが多く、これにより、融合タンパク質の精製後に、組換えタンパク質を融合単位から分離することができる。これら酵素とそれらのコグネート認識配列は、第Xa因子、トロンビンおよびエンテロキナーゼを包含する。
【0102】
典型的な融合発現ベクターとしては、pGEX(Pharmacia Biotech Inc; Smith, D. B.およびJohnson, K. S. (1988)Gene 67:31-40)、pMAL(New England Biolabs、マサチューセッツ州バーバーリー)およびpRIT5(Pharmacia、ニュージャージー州ピスカタウェイ)が挙げられ、これらのベクターは、それぞれグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトース-E-結合タンパク質またはプロテインAを、組換え標的タンパク質に融合させる。一実施形態では、エロンガーゼASEのコード配列をpGEX発現ベクターにクローニングすることにより、融合タンパク質をコードするベクターを作製する。ここで、該融合タンパク質は、N末端からC末端まで、GST-トロンビン切断部位-X-タンパク質を含む。融合タンパク質は、グルタチオン−アガロース樹脂を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。GSTと融合していない組換えASEは、トロンビンを用いて融合タンパク質を切断することによって回収することができる。
【0103】
好適な誘導非融合大腸菌発現ベクターの例として、pTrc(Amannら(1988)Gene 69:301-315)およびpET 11d(Studierら、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185, Academic Press、カリフォルニア州サンディエゴ(1990)60-89)が挙げられる。pTrcベクター由来の標的遺伝子発現は、ハイブリッドtrp-lac融合プロモーターからの宿主RNAポリメラーゼによる転写に基づいて起こる。pET 11dベクターからの標的遺伝子発現は、T7-gn10-lac融合プロモーターからの転写に基づいて起こり、この転写は、共発現したウイルスRNAポリメラーゼ(T7 gn1)によって媒介される。上記ウイルスポリメラーゼは、lacUV 5プロモーターの転写制御下でT7 gn1遺伝子を保有する常在性λプロファージから、宿主株BL21(DE3)またはHMS174(DE3)により提供される。
【0104】
原核生物で有用なその他のベクターは、当業者には公知であり、このようなベクターは、例えば、下記のものに存在する:大腸菌pLG338、pACYC184、pBR322のようなpBRシリーズ、pUC18またはpUC19のようなpUCシリーズ、M113mpシリーズ、pKC30、pRep4、pHS1、pHS2、pPLc236、pMBL24、pLG200、pUR290、pIN-III113-B1、λgt11またはpBdCI;ストレプトミセス属pIJ101、pIJ364、pIJ702またはpIJ361;バチルス属pUB110、pC194またはpBD214、コリネバクテリウム属pSA77またはpAJ667。
【0105】
組換えタンパク質の発現を最大限にする戦略は、組換えタンパク質をタンパク質分解により切断する能力が損なわれている宿主細菌においてタンパク質を発現させるというものである(Gottesman, S.、Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press、カリフォルニア州サンディエゴ(1990)119-128)。さらに別の戦略によれば、発現ベクターに挿入しようとする核酸の核酸配列を改変することにより、各アミノ酸の個々のコドンが、C.グルタミクム(C. glutamicum)のように、発現のために選択した細菌において優先的に用いられるようにする(Wadaら(1992)Nucleic Acids Res. 20:2111-2118)。本発明のこのような核酸配列の改変は、標準的DNA合成方法により実施される。
【0106】
さらに別の実施形態では、ASE発現ベクターは酵母発現ベクターである。酵母菌サッカロミセス・セレビシエ(S. cerevisiae)における発現のためのベクターの例として、pYeASec1(Baldariら、(1987)Embo J.6:229-234)、pMFa(KurjanおよびHerskowitz、(1982)Cell 30:933-943)、pJRY88(Schultzら(1987)Gene 54:113-123)およびpYES2(Invitrogen Corporation、カリフォルニア州サンディエゴ)が挙げられる。糸状菌のようなその他の真菌で用いるのに適したベクターを構築するためのベクターおよび方法として、下記に詳しく記載されたものが挙げられる:van den Hondel, C.A.M.J.J. & Punt, P.J.(1991)”Gene transfer systems and vector development for filamentous fungi:Applied Molecular Genetics of fungi, J.F. Peberdyら編、p. 1-28、Cambridge University Press:ケンブリッジ、もしくは:More Gene Manipulations in Fungi(J.W. Bennet & L.L. Lasure編、p. 396-428:Academic Press:サンディエゴ)。さらに有用な酵母ベクターとして、例えば、2μM、pAG-1、YEp6、YEp13またはpEMLYe23が挙げられる。
【0107】
上記以外に、本発明のASEは、バキュロウイルス発現ベクターを用いて、昆虫細胞で発現させてもよい。培養した昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)においてタンパク質を発現させるのに使用可能なバキュロウイルスベクターとしては、pAcシリーズ(Smithら(1983)Mol. Cell Biol. 3:2156-2165)およびpVLシリーズ(LucklowおよびSummers(1989)Virology 170:31-39)が挙げられる。
【0108】
前記ベクターは、考えられる有用なベクターのほんの一部を挙げたものにすぎない。その他のプラスミドは、当業者には公知であり、例えば、下記に記載されている:Cloning Vectors(Pouwels, P.H.ら編、Elsevier, Amsterdam-New York-Oxford, 1985, ISBN 0 444 904018)。
【0109】
別の実施形態では、本発明の核酸は、哺乳動物発現ベクターを用いて、哺乳動物細胞において発現させる。哺乳動物発現ベクターの例として、pCDM8(Seed, B.(1987)Nature 329:840)およびpMT2PC(Kaufmanら(1987)EMBO J. 6:187-195)が挙げられる。哺乳動物細胞に用いる場合には、発現ベクターの制御機能は、ウイルス調節エレメントにより賦与されることが多い。通常用いられるプロモーターは、例えば、ポリオーマウイルス、アデノウイルス2、サイトメガロウイルスおよびシミアンウイルス40に由来するものである。原核および真核細胞に適したその他の発現系については、下記の文献を参照されたい:Sambrook, J., Fritsch, E.F.およびManiatis, T., Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版の第16および17章、Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor、ニューヨーク州、1989)。
【0110】
別の実施形態では、組換え哺乳動物発現ベクターは、好ましくは特定の細胞型において、核酸の発現を指令することができる(例えば、組織特異的調節エレメントを用いて核酸を発現する)。組織特異的調節エレメントは、当業者には公知である。好適な組織特異的プロモーターの非限定的な例として、下記のものが挙げられる:アルブミンプロモーター(肝特異的;Pinkertら(1987)Gene Dev. 1:268-277)、リンパ球特異的プロモーター(CalameおよびEaton(1988)Adv. Immunol. 43:235-275)、特に、T-細胞受容体のプロモーター(WinotoおよびBaltimore(1989)EMBO J. 8:729-733)およびイムノグロブリン(Banerjiら(1983)Cell 33:729-740;QueenおよびBaltimore(1983)Cell 33:741-748)、ニューロン特異的プロモーター(例えば、神経フィラメントプロモーター;ByrneおよびRuddle(1989)PNAS 86:5473-5477)、膵特異的プロモーター(Edlundら(1985)Science 230:912-916)および乳腺特異的プロモーター(例えば、乳清プロモーター;米国特許第4, 873, 316号および欧州特許出願公開番号264,166)。また、発生調節プロモーター、例えば、マウスhoxプロモーター(KesselおよびGruss(1990)Science 249:374-379)およびフェトプロテインプロモーター(CampesおよびTilghman(1989)Genes Dev. 3:537-546)も含まれる。
【0111】
別の実施形態では、本発明のASEは、単細胞植物細胞(藻類など)(Falciatoreら、1999、Marine Biotechnology 1(3):239-251およびそこで引用される参照文献を参照)、ならびに、それより高等の植物(例えば、穀物のような種子植物)由来の植物細胞において発現させることができる。植物発現ベクターの例として、下記の文献に詳しく記載されているものが挙げられる:Becker, D., Kemper, E., Schell, J.およびMasterson, R.(1992)”New plant binary vectors with selectable markers located proximal to the left border”, Plant Mol. Biol. 20:1195-1197;ならびに、Bevan, M.W.(1984)”Binary Agrobacterium vectors for plant transformation”, Nucl. Acids Res. 12:8711-8721;Vectors for Gene Transfer in Higher Plants:Transgenic Plants、第1巻、Engineering and Utilization、KungおよびR. Wu編、Academic Press, 1993, pp. 15-38。
【0112】
植物発現カセットは、好ましくは、植物細胞における遺伝子発現を駆動することができ、かつ、機能的に連結された調節配列を含み、これによって、各配列は、転写終結、例えば、ポリアデニル化シグナルなどの機能を果たすことができる。好ましいポリアデニル化シグナルは、オクトピンシンターゼとして知られる、Ti プラスミドpTiACH5の遺伝子3(Gielenら、EMBO J. 3(1984)835以下参照)、またはその機能的同等物のようなアグロバクテリウムツメファシエンスT-DNAに由来するものであるが、その他、植物において機能的に活性なターミネーターもすべて適している。
【0113】
非常に多くの場合、植物遺伝子発現は、転写レベルに限定されないことから、植物発現カセットは、翻訳エンハンサー(例えば、オーバードライブ配列)のような機能的に連結された別の配列を含むのが好ましい。このオーバードライブ配列は、タバコモザイクウイルス由来の5’-非翻訳リーダー配列を含み、この配列が、タンパク質/RNA比を高める(Gallieら、1987、Nucl. Acids Research 15:8693-8711)。
【0114】
植物遺伝子発現は、適したプロモーターに機能的に連結させて、このプロモーターが、細胞または組織特異的に、適正なタイミングで、遺伝子発現をもたらすようにしなければならない。好ましいものとして、構成的発現を駆動するプロモーター(Benfeyら、EMBO J. 8(1989)2195-2202)、例えば、35S CaMV(Franckら、Cell 21(1980)285-294)、19S CaMV(米国特許第5,352,605号およびWO 84/02913も参照)のような植物ウイルス由来のプロモーター、または、米国特許第4,962,028号に記載されているRubisco小サブユニット由来のプロモーターのような植物プロモーターがある。この他にも、ベータ・ブルガリス(Beta vulgaris)由来の1153塩基対断片(Plant Mol Biol, 1999, 39:463-475)のようなVATPase-遺伝子プロモーターを用いて、ASE遺伝子発現を単独で、またはその他のPUFA生合成遺伝子と一緒に駆動することができる。
【0115】
植物遺伝子発現カセットにおける機能的連結に用いるのに好ましいその他の配列は、ターゲッティング配列であり、これは、遺伝子産物を、その適切な細胞小器官、例えば、液胞、核、アミロプラスト、葉緑体および有色体のようなあらゆる種類の色素体、細胞外空間、ミトコンドリア、小胞体、油体、ペロキシソームおよびその他の植物細胞小器官に、指令するのに必要である(詳しくは、Kermode、Crit. Rev. Plant Sci. 15, 4(1996)285-423およびそこに引用された参照文献を参照)。
【0116】
植物遺伝子発現はまた、化学的に誘導可能なプロモーター(詳しくは、Gatz 1997, Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Mol. Biol., 48:89-108を参照)を介して促進することも可能である。遺伝子発現が、適正なタイミングで特異的に起こるようにしたい場合には、化学的に誘導可能なプロモーターが特に適している。このようなプロモーターの例として、サリチル酸誘導プロモーター(WO 95/19443)、テトラサイクリン−誘導プロモーター(Gatzら(1992)Plant J. 2, 397-404)およびエタノール誘導性プロモーター(WO 93/21334)が挙げられる。
【0117】
また、生物または非生物的ストレス条件に応答するプロモーターも好適なプロモーターであり、例えば、病原体誘導性PRP1遺伝子プロモーター(Wardら、Plant. Mol. Biol. 22(1993)361-366)、トマト由来の熱誘導性hsp80プロモーター(米国特許第5,187,267号)、ジャガイモ由来の低温誘導性αアミラーゼプロモーター(WO 96/12814)または損傷誘導性pinIIプロモーター(EP-A-0 375 091)が挙げられる。
【0118】
特に、脂質および油生合成が行われる組織および器官や、内乳および発生過程にある胚の細胞のような種子細胞において、遺伝子発現をもたらすプロモーターが好ましい。好適なプロモーターとして、下記を挙げることができる:アブラナ由来のナピン(napin)遺伝子プロモーター(米国特許第5,608,152号)、ソラマメ由来のUSPプロモーター(Baeumleinら、Mol Gen Genet, 1991, 225(3):459-67)、シロイヌナズナ由来のオレオシンプロモーター(WO 98/45461)、インゲンマメ由来のファセオリンプロモーター(米国特許第5,504,200号)、アブラナ由来のBce4プロモーター(WO 91/13980)またはレグミンB4プロモーター(LeB4;Baeumleinら、1992、Plant Journal, 2(2):233-9)、ならびに、トウモロコシ、オオムギ、コムギ、ライムギ、コメなどの単子葉植物に種子特異的発現をもたらすプロモーター。好適なプロモーターとして、オオムギ由来のlpt2もしくはlpt1遺伝子プロモーター(WO 95/15389およびWO 95/23230)、または、WO 99/16890に記載されたプロモーター(オオムギホルデイン遺伝子、コメグルテリン遺伝子、コメオリジン(oryzin)遺伝子、コメプロラミン遺伝子、コムギグリアジン遺伝子、コムギグルテリン遺伝子、トウモロコシゼイン遺伝子、オートムギグルテリン遺伝子、モロコシカジリン遺伝子、およびライムギセカリン遺伝子に由来するプロモーター)がある。
【0119】
また、色素体特異的遺伝子発現を起こすプロモーターも特に適している。というのは、色素体は、脂質生合成の前駆体、およびいくつかの最終産物が合成される細胞小器官だからである。ウイルスRNAポリメラーゼプロモーターのような好適なプロモーターは、WO 95/16783およびWO 97/06250に、また、シロイヌナズナ由来のclpPプロモーターについては、WO 99/46394に記載されている。
【0120】
本発明はさらに、アンチセンス配向で発現ベクターにクローニングした、本発明のDNA分子を包含する組換え発現ベクターを提供する。すなわち、PSE mRNAに対して「アンチセンス」のRNA分子の発現(DNA分子の転写により発現される)が可能になるように、DNA分子を調節配列に機能的に連結する。調節配列は、アンチセンス配向でクローニングされた核酸に機能的に連結され、かつ、様々な細胞型においてアンチセンスRNA分子の連続的発現を指令するもの、例えば、ウイルスプロモーターおよび/またはエンハンサーを選択するか、あるいは、アンチセンスRNAの構成的、組織特異的もしくは細胞型特異的発現を指令する調節配列を選択することができる。アンチセンス発現ベクターは、アンチセンス核酸が、非常に効率的な調節領域の制御下で生産される、組換えプラスミド、ファージミドまたは弱毒化ウイルスの形態で存在することができ、該領域の活性は、ベクターが導入された細胞型により決定することができる。アンチセンス遺伝子を用いた遺伝子発現の調節について詳しくは、Weintraub, H.ら、Antisense-RNA as a molecular tool for genetic analysis, Reviews - Trends in Genetics、第1巻(1)1986およびMolら、1990, FEBS Letters 268:427-430を参照されたい。
【0121】
本発明のさらに別の態様は、本発明の組換え発現ベクターが導入された宿主細胞に関する。「宿主細胞」および「組換え宿主細胞」という用語は、本明細書では置き換え可能に用いる。これらの用語が、特定の対象細胞だけを指すものではなく、この細胞の子孫または潜在的子孫も意味することは理解されよう。特定の改変は、突然変異または環境影響により、後の世代で起こる可能性もあるため、この子孫は、必ずしも母細胞と同じわけではないが、本明細書で用いる用語が意味する範囲に含まれる。
【0122】
宿主細胞は、原核または真核生物いずれの細胞でもよい。例えば、ASEは、C.グルタミクム(C. glutamicum)のような細菌細胞、昆虫細胞、真菌細胞または哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)またはCOS細胞など)、藻類、繊毛虫、植物細胞、真核、またはC.グルタミクム(C. glutamicum)のようなその他の微生物において発現させることができる。その他の好適な宿主細胞は、当業者には公知である。
【0123】
ベクターDNAは、通常の形質転換またはトランスフェクション方法により、原核または真核生物細胞に導入することができる。本明細書で用いる「形質転換」および「トランスフェクション」、接合および形質導入は、宿主細胞に外来核酸(例えば、DNA)を導入するための、当業界で認識される様々な方法を意味し、例えば、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈殿、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、自然受容能、化学的媒介導入、またはエレクトロポレーションなどが挙げられる。植物細胞を含む、宿主細胞の形質転換またはトランスフェクションに適した方法は、下記の文献にみいだすことができる:Sambrookら(Molecular Cloning:A Laboratory Manual.、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor、ニューヨーク州、1989)およびその他の研究室マニュアル、例えば、Methods in Molecular Biology, 1995、第44巻、Agrobacterium protocols、GartlandおよびDavey編、Humana Press、ニュージャージー州トトワ。
【0124】
哺乳動物細胞の安定トランスフェクションについては、用いられる発現ベクターおよびトランスフェクション方法によっては、小さい画分の細胞しか、外来DNAをそのゲノムに組み込めないことが知られている。これらの組込み体(integrants)を同定および選択するためには、一般に、選択マーカーをコードする遺伝子(例えば、抗生物質に対する耐性)を、目的とする遺伝子と一緒に宿主細胞に導入する。好ましい選択マーカーは、ヒグロマイシンおよびメトトレキセートのような薬剤に耐性を賦与するもの、あるいは、植物では、イミダゾリノン、スルホニル尿素、グリホセート(glyphosate)またはグルホシネート(glufosinate)のような除草剤に対する耐性を賦与するものを包含する。選択マーカーをコードする核酸を、ASEをコードするのと同じベクター上で宿主細胞に導入する、あるいは、別のベクター上で導入することもできる。導入した核酸により安定してトランスフェクションされた細胞は、例えば、薬剤選択(例えば、選択マーカーを組み込んだ細胞は生存するのに対し、他の細胞は死滅する)によって同定することができる。
【0125】
相同的な組換え微生物を生産するためには、ASE遺伝子の少なくとも一部分を含むベクターを作製する。その際、この遺伝子に、欠失、付加または置換を導入することにより、ASE遺伝子を改変する、例えば、該遺伝子を機能的に破壊しておく。好ましくは、このASE遺伝子は、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)ASE遺伝子であるが、近縁の植物、あるいは、藻類、哺乳動物、真菌もしくは昆虫由来の相同体であってもよい。好ましい実施形態では、相同的組換え時に、内在性ASE遺伝子が機能的に破壊されるようにベクター(すなわち、機能タンパク質をそれ以上コードしない:ノックアウトベクターともよばれる)を設計する。これ以外にも、相同的組換え時に、内在性ASE遺伝子を突然変異させる、あるいは、改変するが、依然として機能タンパク質をコードする(例えば、上流調節領域を改変することにより、内在性ASEの発現を改変する)ように、ベクターを設計することもできる。相同的組換えによって点突然変異を発生させるためには、キメラ形成法としても知られ、Cole-Straussら、1999、Nucleic Acids Research 27(5):1323-1330およびKmiec, Gene Therapy, 1999, American Scientist, 87(3):240-247に記載されている、DNA-RNAハイブリッドを用いることもできる。
【0126】
相同的組換え用のベクターでは、ASE遺伝子の改変部分には、ASE遺伝子の別の核酸が、その5’および3’末端に隣接しているため、ベクター上に存在する外因性ASE遺伝子と、微生物または植物中の内在性ASE遺伝子との間で、相同的組換えが可能である。隣接する別のASE核酸は、内在性遺伝子との相同的組換えを達成するのに十分な長さを有する。典型的には、数百塩基対からキロベースの隣接DNA(5’および3’末端の両方で)が、ベクターに含まれる(相同的組換えベクターについては、例えば、Thomas, K. R.およびCapecchi, M. R.(1987)Cell 51:503を、また、cDNAに基づくイソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)における組換えに関しては、Streppら、1998、PNAS, 95(8):4368-4373を参照のこと)。上記ベクターは、微生物または植物細胞に導入し(例えば、アグロバクテリウム媒介による遺伝子導入、パーティクルガンによる形質転換、ポリエチレングリコールまたはその他の適用可能な方法により行う)、次に、導入されたASE遺伝子が、内在性ASE遺伝子で相同的に組換えられている細胞を、当業者には公知の方法を用いて選択する。植物細胞の場合には、Ottら、J. Mol. Biol. 1996, 263:359-360に記載されたAHAS遺伝子が、マーカー遺伝子発現およびイミダゾリノンまたはススホニル尿素タイプの除草剤に対する耐性に、特に好適である。
【0127】
別の実施形態では、導入された遺伝子の調節発現を可能にする選択された系を含む、微生物のような組換え生物を産生することができる。例えば、Lac-オペロンの制御下に置いたベクターにASE遺伝子を含有させることにより、IPTGの存在下でのみASE遺伝子の発現が可能となる。このような調節系は、当業者には公知である。「組換え生物」とは、本発明の核酸配列、遺伝子構築物またはベクターを、細胞内またはゲノム内部の「天然」ではない場所、もしくは「天然」であるが、天然ではない様式で改変された場所に含む生物、すなわち、コード配列および/または調節配列が改変されている生物を意味する。「改変された」とは、天然配列と比較して、単一のヌクレオチドまたは1以上のコドン、好ましくは1以上のコドン、さらに好ましくは1〜6のコドンが改変されていることを意味する。
【0128】
培養中の原核または真核宿主細胞などの、本発明の宿主細胞を用いて、ASEを生産する(すなわち、発現させる)ことができる。植物では、エレクトロポレーションまたはアグロバクテリウム媒介の遺伝子導入により、発育中の花にDNAを直接導入することからなる、さらに別の方法を用いることができる。従って、本発明はさらに、本発明の宿主細胞を用いてASEを生産する方法を提供する。一実施形態では、この方法は、本発明の宿主細胞(そこに、ASEをコードする組換え発現ベクターが導入されているか、または、そのゲノムに、野生型もしくは改変型ASEが導入されている)を適当な培地で培養し、ASEを生産することからなる。別の実施形態では、この方法は、培地または宿主細胞からASEを単離することをさらに含む。
【0129】
本発明の核酸を取り込むのに一般的に適した宿主細胞、本発明の新規な遺伝子産物、または本発明のベクターは、いずれの原核または真核生物であってもよい。有利に用いられる宿主生物は、細菌、真菌、酵母などの生物、動物細胞または植物細胞である。これ以外に有利な生物は、動物、あるいは、好ましくは、植物またはそれらの一部分である。真菌、酵母または植物を用いるのが好ましいが、特に、多量の脂質化合物を含有する脂肪種子植物などの植物、例えば、アブラナ、マツヨイグサ、キャノーラ、ラッカセイ、アマニ、ダイズ、ベニバナ、ヒマワリ、ルリヂサ;あるいは、トウモロコシ、コムギ、ライムギ、オートムギ、ライコムギ、コメ、オオムギ、ワタ、イモノキ属、コショウ、マンジュギクなどの植物;ジャガイモ、タバコ、ナスおよびトマトなどのナス科植物;ソラマメ属種、エンドウ、アルファルファ、低木植物(コーヒー、カカオ、チャ)、ヤナギ属種、樹木(ギネアアブラヤシ、ココナツ)ならびに、多年生草および飼料穀物が非常に好ましい。本発明において、特に好ましい植物は、ダイズ、ラッカセイ、アブラナ、キャノーラ、ヒマワリ、ベニバナ、樹木(ギネアアブラヤシ、ココナツ)などの脂肪種子植物である。
【0130】
D.単離された ASE
本発明のさらに別の態様は、単離されたASEおよびその生物学的に活性な部分に関する。「単離された」または「精製された」タンパク質もしくはその生物学的に活性な部分とは、組換えDNA方法により生産された場合には細胞材料を実質的に含まず、また、化学的に合成された場合には化学的前駆体またはその他の化学物質を実質的に含まない。「細胞材料を実質的に含まない」という表現は、タンパク質が、それが天然にもしくは組換えにより生産される細胞の細胞成分から分離されたASE調製物を意味する。一実施形態では、「細胞材料を本質的に含まない」という表現は、非ASE(本明細書では、「汚染タンパク質」とも呼ぶ)の含有率が、約30%(乾量に基づく)より少ない、さらに好ましくは約20%より少ない、さらにまた好ましくは約10%より少ない、最も好ましくは約5%より少ないASE調製物を意味する。ASEまたはその生物学的に活性な部分が、組換え方法によって生産される場合には、これも、培地を実質的に含まない、すなわち、培地の量が、タンパク質調製物の量の約20%より少ない、さらに好ましくは約10%より少ない、最も好ましくは約5%より少ない。「化学的前駆体またはその他の化学物質を実質的に含まない」という表現は、タンパク質が、その合成に関与する化学的前駆体またはその他の化学物質から分離されたASE調製物を意味する。一実施形態では、「化学的前駆体またはその他の化学物質を実質的に含まない」という表現は、化学的前駆体または非ASE化学物質の含有率が、約30%(乾量に基づく)より少ない、さらに好ましくは約20%より少ない、さらにまた好ましくは約10%より少ない、最も好ましくは約5%より少ないASE調製物を意味する。好ましい実施形態では、単離されたタンパク質またはその生物学的に活性な部分は、ASEが由来する同じ生物からの汚染タンパク質を含まない。典型的には、このようなタンパク質は、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)以外の植物、あるいは、C. グルタミクム(C. glutamicum)または繊毛虫、藻類もしくは真菌のような微生物における、例えば、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)ASEの組換え発現により生産される。
【0131】
本発明の単離されたASEまたはその一部分は、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)における細胞膜の構築に関わる化合物の代謝、あるいは、これら膜を介した分子の輸送に関与しているか、もしくは、表2に示した1以上の活性を有している。好ましい実施形態では、上記タンパク質またはその一部分は、これらが、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)における細胞膜の構築に必要な化合物の代謝、あるいは、これら膜を介した分子の輸送に関与する能力を保持する上で、配列番号2のアミノ酸配列と十分な相同性を有するアミノ酸配列を含む。上記タンパク質の一部分は、好ましくは、本明細書に記載されている生物学的に活性な部分である。別の好ましい実施形態では、本発明のASEは、配列番号2に示す1つのアミノ酸配列を有する。別の好ましい実施形態では、上記ASEは、例えば、ストリンジェントな条件下で、配列番号1のヌクレオチド配列とハイブリダイズするヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を有する。さらに別の好ましい実施形態では、上記ASEは、配列番号2のアミノ酸配列の1つと、少なくとも約50〜60%、好ましくは少なくとも約60〜70%、より好ましくは少なくとも約70〜80%、80〜90%、90%〜95%、さらに好ましくは少なくとも約96%、97%、98%、99%以上の相同性を有するヌクレオチド配列によりコードされたアミノ酸配列を有する。また、本発明の好ましいASEは、本明細書に記載したASE活性の少なくとも1つを有するのが好ましい。例えば、本発明の好ましいASEは、例えば、ストリンジェントな条件下で、配列番号1のヌクレオチド配列とハイブリダイズし、かつ、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)における細胞膜の構築に必要な化合物の代謝、あるいは、これら膜を介した分子の輸送に関与するか、もしくは、表2に示した1種以上の活性を有する、ヌクレオチド配列によりコードされたアミノ酸配列を含む。
【0132】
別の実施形態では、ASEは、配列番号2に示すアミノ酸配列と実質的に相同であり、配列番号2の配列のうち1配列のタンパク質の機能的活性を保持するが、それらのアミノ酸配列は、前記の第I項で詳しく記載したように、自然突然変異または突然変異誘発のために異なっている。従って、別の実施形態では、上記ASEは、配列番号2の完全アミノ酸配列と、少なくとも約50〜60%、好ましくは少なくとも約60〜70%、さらに好ましくは少なくとも約70〜80%、80〜90%、90%〜95%、最も好ましくは少なくとも約96%、97%、98%、99%以上の相同性を有し、かつ、本明細書に記載したASE活性の少なくとも1種を有するアミノ酸配列を含むタンパク質である。別の実施形態では、本発明は、配列番号2の完全アミノ酸配列と実質的に相同的な、完全なイソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)タンパク質に関する。
【0133】
ASEの生物学的に活性な部分とは、ASEのアミノ酸配列、例えば、配列番号2に示すアミノ酸配列から誘導されたアミノ酸配列、または、ASEと相同なタンパク質のアミノ酸配列を含むペプチドを意味し、このようなペプチドは、ASEと相同な全長タンパク質の全長アミノ酸配列より少ないアミノ酸を含み、かつASEの少なくとも1種の活性を呈示する。典型的には、生物学的に活性な部分(ペプチド、例えば、長さが、例えば、5、10、15、20、30、35、36、37、38、39、40、50、100以上のアミノ酸であるペプチド)は、ASEの少なくとも1種の活性を有するドメインまたはモチーフを含む。さらに、これ以外にも、上記タンパク質の他の領域が欠失した、生物学的に活性な部分を組換え方法により生産し、前記活性の1以上に関して評価することができる。好ましくは、ASEの生物学的に活性な部分は、生物学的活性を有する1以上の選択されたドメイン/モチーフまたはそれらの一部分を含む。
【0134】
ASEは、組換えDNA方法により生産されるのが好ましい。例えば、タンパク質をコードする核酸分子を発現ベクターにクローニングした(前記のように行う)後、発現ベクターを宿主細胞に導入し(前記のように行う)、ASEを宿主細胞で発現させる。次に、適切な精製スキームにより、標準的タンパク質精製法を用いて、その細胞からASEを単離することができる。組換え発現に代わる方法として、標準的ペプチド合成法により、ASE、ポリペプチド、またはペプチドを化学的に合成することができる。さらに、例えば、本発明のASEまたはその断片を用いて、標準的技法により作製することができる抗ASE抗体を用いて、天然ASEを細胞(例えば、内皮細胞)から単離することができる。
【0135】
本発明は、ASEキメラタンパク質またはASE融合タンパク質も提供する。本明細書で用いるASE「キメラタンパク質」または「融合タンパク質」は、非ASEポリペプチドと機能的に結合されたASEポリペプチドを包含する。「ASEポリペプチド」とは、ASEに対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味するのに対し、「非ASE ポリペプチド」は、ASE と実質的に相同でないタンパク質(例えば、ASE とは異なり、かつ、同じまたは別の生物に由来するタンパク質)に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味する。融合タンパク質の範囲内で、「機能的に結合された」という用語は、ASE ポリペプチドと非ASE ポリペプチドが、互いに融合し、これによって、両配列が、使用した配列に特有とみなされる推定機能を果たす、という意味である。非ASE ポリペプチドは、ASE ポリペプチドのN末端またはC末端に融合することができる。例えば、一実施形態では、融合タンパク質は、ASE 配列がGST配列のC末端に融合したGST- ASE 融合タンパク質である。これらの融合タンパク質は、組換えASE の精製を促進することができる。別の実施形態では、融合タンパク質は、そのN末端で、異種シグナル配列を有するASE である。特定の宿主細胞(例えば、哺乳動物細胞)では、異種シグナル配列を用いることにより、ASEの発現および/または分泌を高めることができる。
【0136】
本発明のASEキメラタンパク質または融合タンパク質は標準的組換えDNA法により生産される。例えば、様々なポリペプチド配列をコードするDNA断片は、通常の技法を用いて、フレーム内で互いに連結させる。このような技法には、例えば、平滑末端または付着末端を用いた連結、制限酵素切断による適切な末端の賦与、必要に応じた付着末端の充填、アルカリホスファターゼを用いた処理による不要な連結の除去、ならびに、酵素連結などがある。別の実施形態では、融合遺伝子は、自動DNA合成装置などの通常の技法により、合成することができる。この他にも、アンカープライマーを用いて、遺伝子断片のPCR増幅を実施することができる。このアンカープライマーは、連続する遺伝子断片の間に、相補的突出部を形成した後、これをアニールしてから、再増幅することにより、キメラ遺伝子配列を産生する(例えば、Current Protocols in Molecular Biology、Ausubelら編、John Wiley & Sons:1992を参照)。さらに、融合単位(例えば、GSTポリペプチド)をすでにコードする多数の発現ベクターが市販されている。ASE をコードする核酸をこのような発現ベクターにクローニングすることにより、融合単位をフレーム内でASEに連結させることができる。
【0137】
ASE相同体は、ASEの突然変異誘発、例えば、個別の点突然変異、または切断により産生することができる。本明細書で用いる「相同体」とは、ASE 活性のアゴニストまたはアンタゴニストとして作用するASE の変異型を意味する。ASE アゴニストは、ASE と同じ生物学的活性、もしくはそれらの活性のサブセットを実質的に保持することができる。ASE アンタゴニストは、例えば、ASEを含む細胞膜成分代謝カスケードの下流または上流メンバーとの競合的結合により、あるいは、細胞膜を介した化合物の輸送を媒介するASEと結合し、これによってトランスロケーションが起こるのを阻止することにより、天然に存在するASE形態の1種以上の活性を阻害することができる。
【0138】
別の実施形態では、ASE相同体は、ASEアゴニストまたはアンタゴニスト活性に関して、ASEの突然変異体、例えば、切断型突然変異体のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることにより、同定することができる。一実施形態では、コンビナトリアル突然変異誘発により核酸レベルでASE変異体の多様性ライブラリーを産生した後、これを多様性遺伝子ライブラリーによりコードする。ASE変異型の多様性ライブラリーは、例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物を遺伝子配列に酵素連結することにより、潜在的ASE配列の縮重セットを個々のポリペプチドとして、あるいは、このASE配列セットを含むさらに大きな融合タンパク質のセット(例えば、ファージディスプレイのための)として、発現させることができる。縮重オリゴヌクレオチド配列から潜在的ASE相同体のライブラリーを産生するのに用いることができる様々な方法がある。縮重遺伝子配列の化学的合成を自動DNA合成装置において実施した後、合成遺伝子を、適した発現ベクターに連結することができる。遺伝子の縮重セットを用いることにより、潜在的ASE配列の所望のセットをコードする全配列を混合物中に提供することができる。縮重オリゴヌクレオチドの合成方法は、当業者には公知である(例えば、Narang, S.A.(1983)Tetrahedron 39:3;Itakuraら(1984)Annu. Rev. Biochem. 53:323;Itakuraら(1984)Science 198:1056;Ikeら(1983)Nucleic Acids Res.11:477を参照)。
【0139】
さらに、ASE断片のライブラリーを用いて、ASE断片の多様性集団を産生し、ASEの相同体のスクリーニングおよび後の選択に使用することができる。一実施形態では、ニッキングが1分子につき約1回しか発生しない条件下で、ヌクレアーゼでASEコード配列の二本鎖PCR断片を処理して、二本鎖DNAを変性し、上記DNAを再生して二本鎖DNA(様々なニック産物からのセンス/アンチセンス対を含む)を形成し、再形成された二重らせんから一本鎖部分をSIヌクレアーゼ処理により除去した後、得られた断片ライブラリーを発現ベクターと連結することにより、コード配列の断片のライブラリーを産生することができる。この方法により、様々な大きさのASEのN末端、C末端および内部断片をコードする発現ライブラリーを誘導することができる。
【0140】
点突然変異または切断により産生されたコンビナトリアルライブラリー中の遺伝子産物をスクリーニングする技法、ならびに、選択した特性を有する遺伝子産物についてcDNAライブラリーをスクリーニングする技法は、当業者には複数知られている。これらの技法は、ASE相同体のコンビナトリアル突然変異誘発により、産生した遺伝子ライブラリーの高速スクリーニングに適応させることができる。ハイスループット分析に適した、大きな遺伝子ライブラリーをスクリーニングするのに、最も広範に用いられる技法は、典型的には、遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクターにクローニングし、得られたベクターライブラリーで適切な細胞を形質転換した後、所望の活性の検出により、産物が検出された遺伝子をコードするベクターの単離を容易にする条件下で、コンビナトリアル遺伝子を発現することを含んでなる。逐次全体突然変異誘発(REM:recursive ensemble mutagenese)、すなわち、ライブラリーにおける機能的突然変異体の頻度を増加させる新規の技法を、スクリーニングアッセイと組み合わせて用いることにより、ASE相同体を同定することができる(ArkinおよびYourvan(1992)PNAS 89:7811-7815;Delgraveら(1993)Protein Engineering 6(3):327-331)。
【0141】
別の実施形態では、細胞に基づくアッセイを用いて、当業者には公知のさらに別の方法により、多様性ASEライブラリーを分析することも可能である。
【0142】
E.本発明の使用および方法
本明細書に記載する核酸分子、タンパク質、タンパク質相同体、融合タンパク質、プライマー、ベクターおよび宿主細胞は、以下に挙げる方法の1つ以上に用いることができる:イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)および関連する生物の同定;イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)に関連する生物のゲノムのマッピング;目的とするイソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)配列の同定および局在化;進化研究;当該機能に必要なASE領域の決定;ASE活性のモジュレーション;1以上の細胞膜成分の代謝のモジュレーション;1以上の化合物の膜透過輸送のモジュレーション;ならびに、PUFAを含むファインケミカルのような所望の化合物の細胞による生産のモジュレーション。
【0143】
本発明のASE核酸分子には、多様な用途がある。まず、上記核酸分子は、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)、またはこれらに近縁の系統として、生物を同定するのに用いることができる。また、上記核酸分子を用いて、微生物の混合集団におけるイソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)もしくはこれらの近縁系統の存在を確認することができる。本発明は、多数のイソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)遺伝子の核酸配列を提供する。イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)に特有な該生物の遺伝子の領域を覆うプローブを用いて、ストリンジェントな条件下で、微生物の均質または混合集団の培養物の抽出ゲノムDNAをプロービングすることにより、この生物が存在するか否かを確認することができる。イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)自体は高度不飽和酸の商業的生産のために用いられていないが、コケ以外に、その全脂質の数%以上をPUFAとして産生することが知られている植物は、藻類だけである。
【0144】
さらに、本発明の核酸およびタンパク質分子は、ゲノムの特定領域についてのマーカーとして働くことができる。これは、ゲノムのマッピングに有用であるだけではなく、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)タンパク質の機能研究にも適している。例えば、特定のイソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)のDNA結合タンパク質が結合するゲノム領域を同定するためには、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)ゲノムを消化し、得られた断片をDNA結合タンパク質と一緒にインキュベートすることができる。このタンパク質と結合するものは、さらに、本発明の核酸分子、好ましくは、容易に検出可能な標識を用いて、プロービングすることができる。このような核酸分子とゲノム断片との結合により、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)のゲノムマップでの断片の局在化が可能になり、これを様々な酵素で繰り返し実施すれば、タンパク質が結合する核酸配列の迅速な決定が容易に行われる。さらに、本発明の核酸分子は、これら核酸分子が、関連する藻類(イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)など)のゲノムマップ構築用のマーカーとして働くのに、近縁種の配列と十分な相同性を有することができる。
【0145】
本発明のASE核酸分子は、進化研究、ならびに、タンパク質構造の研究にも有用である。本発明の分子が関与する代謝および輸送工程は、非常に多様な原核および真核生物細胞によって使用されている。本発明の核酸分子の配列と、他の生物由来の類似酵素をコードする配列とを比較することにより、該生物の進化上の近縁度を評価することができる。同様に、このような比較により、配列の領域が保存されているもの、保存されてないものの決定が可能になり、酵素機能に必須のタンパク質の領域を決定する上で役立つと思われる。このタイプの決定は、タンパク質工学研究に有用であり、タンパク質が、突然変異誘発に関して、その機能を欠失せずに、どれくらい許容できるのかを知ることができる。
【0146】
本発明のASE核酸分子の操作により、野生型ASEとは機能が異なるASEの生産が可能になる。これらタンパク質の効率または活性を高める;これらを通常より多数、細胞に存在させる;あるいは、それらの効率または活性を低下させることが可能である。「効率または活性が高められる」とは、例えば、上記酵素が、本来の酵素より、高い選択性および/または活性、好ましくは、少なくとも10%高い活性、特に好ましくは、少なくとも20%高い活性、極めて好ましくは、少なくとも30%高い活性を有することを意味する。
【0147】
本発明のASEの改変が、このような改変タンパク質を組み込んだファインケミカルの収率、生産および/または生産効率に直接影響を与え得る多数の機構が存在する。ラージスケールでの繊毛虫、藻類または真菌の培養物からのファインケミカル化合物の回収は、細胞が所望の化合物を分泌すれば、有意に改善される。なぜならば、このような化合物は、培地から容易に単離することができるからである(培養細胞のバイオマスからの抽出とは対照的に)。あるいは、好都合に、細胞が、一種の濃縮機構を備えた専門化細胞小器官中にin vivoで化合物を貯蔵すれば、精製を改善することができる。また、ASEを発現する植物では、輸送が増加すると、植物組織および植物器官内での配分が改善されると考えられる。細胞からファインケミカルを膜外へ輸送する輸送体分子の数または活性が増加すると、生産されるファインケミカル(細胞外培地に存在する)の量を増加させることができ、これによって、回収および精製が大幅に容易になり、また、植物の場合には、配分がより効率的になる。反対に、1以上のファインケミカルを効率的に過剰生産するためには、好適な生合成経路用の補因子、前駆体分子および中間体量の増加が必要である。炭素源(すなわち、糖)、窒素源(すなわち、アミノ酸、アンモニウム塩)、リン酸塩および硫黄などの栄養素の膜内への輸送に関与する輸送体タンパク質の数および/または活性が増加すると、生合成工程での栄養素供給に関するあらゆる制限事項が排除されるため、ファインケミカルの生産を改善することができる。PUFAのような脂肪酸や、PUFAを含む脂質は、それ自体が望ましいファインケミカルである。従って、これら化合物の生合成に関与する本発明の1以上のASEの活性を最適化する、またはその数を増加する、あるいは、これら化合物の分解に関与する1以上のASEの活性を低下させることにより、繊毛虫、藻類、植物、真菌、酵母またはその他の微生物における脂肪酸および脂質分子の収率、生産および/または生産効率を高めることができる。
【0148】
本発明に従う1以上のASE遺伝子の操作によって、活性が改変されたASEを得ることもでき、この改変された活性は、藻類、植物、繊毛虫または真菌に由来する1以上の所望のファインケミカルの生産に間接的に影響を与える。例えば、代謝の正常な化学的工程により、様々な老廃物(例えば、過酸化水素およびその他の反応性酸素種)が生産され、これら老廃物は、上記代謝工程を活発に妨害しうる(例えば、パーオキシナイトライトは、チロシン側鎖を硝化し、これによって、活性部位にチロシンを含むいくつかの酵素を不活性化することが知られている(Groves, J.T.(1999)Curr. Opin. Chem. Biol. 3(2);226-235)。これらの老廃物は、通常***されるが、ラージスケールでの発酵生産に用いられる細胞は、1以上のファインケミカルを過剰生産すべく最適化されていることから、野生型細胞が通常生産するのより多くの老廃物を生産する。本発明に従うASEの1種以上の活性を最適化することにより、細胞の生存能力を高めると同時に、効率的な代謝活性を維持し、これによって、PUFAのような所望の産物の生産を改善することが可能になる。また、所望のファインケミカルが細胞内に多量に存在すると、実際に細胞に対して有毒となる恐れがあるため、該細胞がこれら化合物を分泌する能力を高めることにより、細胞の生存能力を高めることができる。
【0149】
さらに、本発明のASEを操作して、様々な脂質および脂肪酸分子の相対量を改変することもできる。このことにより、細胞膜の脂質組成に重大な影響を及ぼしうる。脂質は種類に応じて、それぞれ異なる物理的特性を有するため、膜の脂質組成の改変は、膜の流動性を有意に改変することができる。膜の流動性における変化は、膜を介した分子の輸送に影響を与え、これによって、既に説明したように、老廃物や、生産されたファインケミカルの膜外への輸送、または必要な栄養素の膜内への輸送を改変することができる。このような膜の流動性の変化はまた、細胞の完全性にも重大な影響を及ぼし、比較的弱い膜を有する細胞は、非生物性および生物性ストレス状態を被りやすくなり、これによって、細胞は損傷もしくは死滅することもある。膜構築用の脂肪酸および脂質の生産に関与し、得られた膜が、ファインケミカルの生産に用いられる培養物を占める環境状態を被りやすい膜組成になるようなASEの場合には、このASEを操作することによって、より高い比率の細胞が、生存および増殖できるようにしなければならない。生産細胞の数が多いほど、培養物からのファインケミカルの収率、生産または生産効率が高くなるはずである。
【0150】
ファインケミカルの収率を高くすることを目的とする、ASEに対する上記突然変異誘発戦略は、制限的と解釈すべきではなく、これら戦略の変種は、当業者には容易に明らかであろう。このような戦略を用いて、かつ、本明細書に開示した機構を組込み、本発明の核酸分子およびタンパク質分子を用いることにより、突然変異したASE核酸およびタンパク質分子を発現する、藻類、繊毛虫、植物、動物、真菌もしくは、C. glutamicumなどその他の微生物を産生し、これによって、所望の化合物の収率、生産および/または生産効率を高くすることができる。この所望の化合物は、藻類、繊毛虫、植物、動物または真菌由来のあらゆる天然産物でよく、生合成経路の最終産物、ならびに、天然に存在する代謝経路の中間体、さらには、これら細胞の代謝では天然に存在しないが、本発明の細胞により生産される分子も包含される。
【0151】
本発明の別の実施形態は、PUFAの生産方法であり、この方法は、γ-リノレン酸(C18:3 d6, 9, 12)は伸長せずに、α-リノレン酸(C18:3 d9, 12 ,15)を2炭素原子以上伸長させるポリペプチドをコードする、本発明の核酸、本発明の遺伝子構築物、または本発明のベクターを含有する生物を、PUFAが該生物において産生される条件下で生育させることを含んでなる。好ましくは、上記方法は、γ-リノレン酸(C18:3 d6, 9, 12)は伸長せずに、α-リノレン酸(C18:3 d9, 12, 15)を2炭素原子以上伸長させるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、生物を生育させることを含んでなり、上記ヌクレオチド配列は、
a)配列番号1に示した核酸配列、
b)配列番号2に示したポリペプチドをコードする核酸配列、
c)配列番号1に示した配列の誘導体であって、配列番号2に示したアミノ酸配列をコードする配列に対して少なくとも50%の相同性を有するポリペプチドをコードしかつエロンガーゼとして機能する上記配列の誘導体、
からなる群より選択される。
【0152】
さらに好ましくは、上記核酸配列は、植物、好ましくは、イソクリシス属に由来する。用いられる配列は、Δ9-脂肪酸を伸長させるポリペプチドをコードする。
【0153】
この方法により生産されるPUFAは、好ましくは、脂肪酸分子中に少なくとも2個の二重結合、好ましくは、3個以上の二重結合があるC20-またはC22-脂肪酸分子である。
【0154】
本発明のPUFAの生産方法に有用な生物は、グラム陽性菌もしくはグラム陰性菌のような細菌、または好ましくは、藍藻類;コルピディウム属(Colpidium)またはスチロニキア属(Stylonichia)のような繊毛虫;モルティエレラ属(Mortierella)またはヤブレツボカビ属(Thraustochitrium)もしくはシゾキトリウム属(Schizochytrium)のような真菌;ファエオダクチラム属(Phaedodaktylum)のような藻類などの微生物;および/またはトウモロコシ、コムギ、ライムギ、オートムギ、ライコムギ、イネ、オオムギ、ダイズ、ラッカセイ、ワタ、アブラナ、キャノーラおよびカブのようなアブラナ属の種、アマニ、コショウ、ヒマワリ、ルリヂサ、マツヨイグサおよびマンジュギク、ジャガイモ、タバコ、ナスおよびトマトのようなナス科の植物、ソラマメ属の種、エンドウ、イモノキ属、アルファルファ、低木植物(コーヒー、カカオ、チャ)、ヤナギ属の種、樹木(ギネアアブラヤシ、ココナツ)ならびに、多年生草および飼料穀物、例えば、コケまたはその他の植物などの植物であり、その際、脂肪酸生合成タンパク質の過剰発現または最適化が、改変された生物由来の脂肪酸の収率、生産および/または生産効率に直接影響を及ぼす。
【0155】
本発明の方法では、PUFAは油、脂質または遊離脂肪酸の形態で生産することができる。この方法で生産したPUFAは、生物を生育させた培養物、または野生由来のいずれかから生物を回収した後、回収した材料を有機溶剤で破砕および/または抽出することにより、単離することができる。上記溶剤から、PUFAの含有率がより高い脂質、リン脂質、スフィンゴ脂質、糖脂質、トリアシルグリセリドおよび/または遊離脂肪酸を含む油を単離することができる。より高いPUFA含有率とは、本発明のエロンガーゼをコードする追加核酸を含まないもとの生物と比較して、少なくとも1%、好ましくは10%、特に好ましくは20%、最も好ましくは40%多くPUFAを含むことを意味する。
【0156】
前記の方法以外にも、Cahoonら(1999)PNAS 96(22):12935-12940、ならびに、Browseら(1986)Analytic Biochemistry 152:141-145に記載されているように、植物材料から植物脂質を抽出するのが好ましい。定量および定性脂質または脂肪酸分析については、下記に記載されている:Christie, William W., Advances in Lipid Methodology, Ayr/スコットランド:Oily Press(Oily Press Lipid Library;2);Christie, William W., Gas Choromatography and Lipids. A Practical Guide - Ayr, Scotland:Oily Press, 1989, Repr. 1992, IX, 307 p.(Oily Press Lipid Library;1);”Progress in Lipid Research, Oxford:Pergamon Press, 1(1952)-16(1977)題名:Progress in the Chemistry of Fats and Other Lipids。
【0157】
本発明の方法により生産されるPUFAは、好ましくは、脂肪酸分子中に少なくとも2個の二重結合、好ましくは、3〜4個の二重結合、特に好ましくは、3個の二重結合があるC20-またはC22-脂肪酸分子である。このようなC20-またはC22-脂肪酸分子は、油、脂質または遊離脂肪酸の形態で、生物から単離することができる。有用な生物は、例えば、前述した生物である。好ましい生物は、トランスジェニック植物である。
【0158】
本発明の実施形態は、前記方法により生産される油、脂質もしくは脂肪酸またはそれらの画分であり、特に好ましくは、トランスジェニック植物に由来するPUFAを含む油、脂質または脂肪酸組成物である。
【0159】
本発明のさらに別の実施形態は、飼料、食物、化粧品または医薬品における上記油、脂質または脂肪酸組成物の使用である。
【0160】
本発明の別の実施形態は、前述した本発明の核酸配列によりコードされるポリペプチドと特異的に相互作用し、かつ、当業者には公知の方法により生産されるモノクローナルまたはポリクローナル抗体である。
【0161】
本発明のさらに別の実施形態は、本発明のヌクレオチド配列、特許請求された遺伝子構築物、特許請求されたベクターまたは前記の抗体を含む、キットに関する。このキットは、例えば、タンパク質、核酸配列の同定に用いることができる。
【0162】
ファインケミカルの収率を高くすることを目的とする、ASEに対する上記突然変異誘発戦略は、制限的と解釈すべきではなく、これら戦略の変法は、当業者には容易に明らかであろう。このような戦略を用いて、かつ、本明細書に開示した機構を組み込み、本発明の核酸分子およびタンパク質分子を用いることにより、突然変異したASE核酸およびタンパク質分子を発現する藻類、繊毛虫、植物、真菌もしくは、C. glutamicumなどその他の微生物を作製し、これによって、所望の化合物の収率、生産および/または生産効率を高めることができる。この所望の化合物は、藻類、繊毛虫、植物または真菌もしくは、C. glutamicum由来のあらゆる天然産物でよく、生合成経路の最終産物、ならびに、天然に存在する代謝経路の中間体、さらには、このような細胞の代謝では天然に存在しないが、本発明の細胞により生産される分子も包含される。
【0163】
以下に示す実施例により、本発明をさらに詳しく説明するが、これらを制限的なものと解釈すべきではない。本明細書に引用する参照文献、特許出願、特許および公開特許出願のすべての内容は、本明細書に参照として組み込むものとする。
【実施例】
【0164】
実施例1:一般的方法
a )クローニング方法および一般的方法
例えば、制限切断、アガロースゲル電気泳動、DNA断片の精製、ニトロセルロースおよびナイロン膜への核酸の転写、DNA断片の連結、大腸菌および酵母細胞の形質転換、細菌の増殖、ならびに、組換えDNAの配列分析などのクローニング方法は、Sambrookら(1989)(Cold Spring Harbor Laboratory Press:ISBN 0-87969-309-6)またはKaiser, MichaelisおよびMitchell(1994)、”Methods in Yeast Genetics”(Cold Spring Harbor Laboratory Press:ISBN 0-87969-451-3)に記載されているように実施した。クロレラ(Chlorella)またはケイ藻(Phaeodactylum)などの藻類の形質転換および培養は、El-Sheekh(1999)、Biologia Plantarum 42:209-216;Aptら(1996)Molecular and General Genetics 252(5):872-9]によって記載されているように実施する。
【0165】
b )化学物質
本明細書に特に記載のない限り、用いられる化学物質は、Fluka(Neu-Ulm)、Merck(Darmstadt)、Roth(Karlsruhe)、Serva(Heidelberg)およびSigma(Deisenhofen)から、p.a.品質のものを取得した。溶液は、Milli-Q水システム水精製工場(Millipore、Eschborn)から得た発熱物質を含まない精製水(本書では以後H2Oと称する)を用いて、調製した。制限エンドヌクレアーゼ、DNA修飾酵素および分子生物学キットは、AGS(Heidelberg)、Amersham(Brunschweig)、Biometra(Gottingen)、Boehringer(Mannheim)、Genomed(Bad Oeynhausen)、New England Biolabs(Schwalbach/Taunus)、Novagen(Madison, Wisconsin, USA)、Perkin-Elmer(Weiterstadt)、Pharmacia(Freiburg)、Qiagen(Hilden)およびStratagene(Amsterdam, Netherlands)の各社から取得した。特に記載のない限り、これらは、製造者の指示に従って使用した。
【0166】
c )藻類材料
この実験のために、Culture Collection of Algae and Protozoa、Center for Coastal and Marine Sciences、Dunstaffnage marine Laboratory(Oban, Argyll;英国)から、取得したハプト藻イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)種CCAP 971/1を用いた。
【0167】
藻類の培養
Guillard, R.R.L. [1975;Culture of phytoplankton for feeding marine invertebrates. In: Smith, W.L.およびChanley, M.H.(編)Culture of marine invertebrate animals, NY Plenum Press, pp. 29-60]によって記載されているように、10%有機媒質を含むf/2培地を用いてイソクリシス・ガルバナを培養した。ガラス容器において、温度:14℃、および光度:30マイクロアインシュタインの連続的照明の下で、100rpmで振盪しながら、イソクリシス・ガルバナを培養した。
【0168】
上記f/2培地は、次のものからなる:
995.5 mlの人工海水:
1mlのNaNO3(75g/l)、
1mlのNaH2PO4(5g/l)、
1mlの微量元素溶液、
1mlのTris/Cl (pH 8.0)、
0.5 mlのf/2ビタミン溶液、
【0169】
微量元素溶液:
Na2EDTA(4.36g/l)、
FeCl3(3.15g/l)、
【0170】
主要微量元素:
CuSO4(10g/l)、
ZnSO4(22g/l)、
CoCl2(10g/l)、
MnCl2(18g/l)、
NaMoO4(6.3g/l)、
【0171】
f/2ビタミン溶液:
ビオチン:10 mg/l、
チアミン200 mg/l、
ビタミンB12 0.1 mg/l、
【0172】
有機媒質:
酢酸ナトリウム(1g/l)、
グルコース(6g/l)、
コハク酸ナトリウム(3g/l)、
バクト−トリプトン(4g/l)、
酵母エキス(2g/l)
【0173】
実施例2:藻類からの DNA の単離
全DNAの単離のために、ろ過によって回収した新鮮重量が1グラムの材料の調製(working-up)を実施したが、これについて以下に詳しく説明する。
【0174】
CTABバッファー:
2%(w/v)臭化N-アセチル-N,N,N-トリメチルアンモニウム(CTAB);
100 mM Tris-HCl、pH 8.0;
1.4 M NaCl;
20 mM EDTA
【0175】
N-ラウリルサルコシンバッファー:
10%(w/v)N-ラウリルサルコシン;
100 mM Tris-HCl、pH 8.0;
20 mM EDTA
【0176】
液体窒素下において、珪砂を含む乳鉢内で、材料を均質化することにより、微粉を取得し、これを2mlエッペンドルフ容器に移した。次に、凍結した材料を1mlの分解バッファー層(1ml CTABバッファー、100 ml N-ラウリルサルコシンバッファー、20 ml βメルカプトエタノールおよび10 ml プロテイナーゼK溶液、10 mg/ml)で覆い、連続的に振盪しながら、60℃で1時間インキュベートした。得られたホモジネートを2つのエッペンドルフ容器(2ml)に分配し、等量のクロロホルム/イソアミルアルコール(24:1)を用いて、振盪しながら2回抽出した。相分離のために、それぞれについて、8000 x gおよび室温で、遠心分離を15分実施した。次に、DNAを70℃で30分沈殿させた。沈殿したDNAを4℃および10,000gで30分沈降させた後、100 mlのTEバッファー中で再懸濁させた(Sambrookら、1989、Cold Spring Harbor Laboratory Press:ISBN 0-87969-309-6)。さらに精製するため、DNAをNaCl(1.2 M最終濃度)で処理した後、2倍量の無水エタノールを用いて、70℃で30分再度沈殿させた。70%エタノールを用いた洗浄段階の後、DNAを乾燥させてから、50 mlのH2O+DNase不含RNase(50 mg/ml最終濃度)中に取り上げた。DNAを4℃で一晩溶解させた後、RNase消化を37℃で1時間実施した。こうして得られたDNAを4℃で保存した。
【0177】
実施例3:藻類からの全 RNA およびポリ (A)+RNA の単離
転写物を調べるため、全RNAおよびポリ(A)+RNAを単離した。
藻類の培養物を3,000gで5分間の遠心分離により回収した。得られたペレットを直ちに液体窒素(−70℃)で凍結した。液体窒素下の乳鉢内で、乳棒を用いて、藻類材料(1g)を均質化した。2倍容量のバッファー(TriPure(商標)単離試薬(Roche))中で、材料を均質になるまで破砕した。その後、製造業者のプロトコルに従って、全RNAを単離した。
Amersham Pharmacia mRNA単離キットを用いて、製造業者のプロトコルの指示に従い、ポリ(A)+RNAの単離を実施した。
RNAまたはポリ(A)+RNAの濃度を決定した後、1/10容量の3 M 酢酸ナトリウム(pH 4.6)と2容量のエタノールを添加することにより、RNAを沈降させ、−70℃で保存した。
【0178】
実施例4: cDNA ライブラリーの構築
Stratagene製のcDNA合成キットを用いて、製造業者のプロトコルに従い、二本鎖cDNAを合成した。次に、これをcDNA合成キットからセファシルS-400スピンカラム(Sephacyl S-400 Spun Column)(Amersham Pharmacia)を通過させることにより、アダプターやより小さな分子を除去した。カラムから溶離したcDNAをフェノール抽出、続いてエタノール沈殿に付し、Uni-Zapベクターのアームに連結させた後、レディートゥゴー・ラムダパッキングキット(Ready-To-Go Lambda Packing Kit)(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて、製造業者の指示に従い、λファージにパッキングした。1x106 pfuのライブラリーを取得したが、挿入片の大部分は0.4〜2kbの範囲であった。
【0179】
実施例5: ASE1 遺伝子の同定および cDNA クローン Ig ASE1 の分析
既知エロンガーゼ配列(M. alpina、S. cerevisiae(Elo1、Elo2、Elo3)、C. elegans(F56H11.4、F41H10.8)に由来する)のアラインメントから、共通のモチーフMYXYYFLをオリゴヌクレオチド設計のために選択した。
【0180】
リバース相補体オリゴ:
5’-A(A/G)(A/G)AA(A/G)TA(A/G)TAIII(G/A)TACAT-3’(I=デオキシイノシン)
を合成し、鋳型としてイソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)cDNAライブラリーを用いたユニバーサルT3プロモータープライマー(5’-AATTAACCCTCACTAAAGGG-3’)によるタッチダウン(touchdown)PCRに、上記オリゴを使用した。
【0181】
PCR条件は次の通りである:
94℃で3分(1サイクル)、
94℃で15秒、52℃で30秒、72℃で45秒(4サイクル)、
94℃で15秒、52℃で30秒(サイクル毎に1℃ずつ下げる)、72℃で45秒(10サイクル)、
94℃で15秒、42℃で30秒、72℃で45秒(25サイクル)、
72℃で6分(1サイクル)。
【0182】
約650bpのPCR産物をクローニングおよび配列決定したところ、推定したアミノ酸配列が、推定上のエロンガーゼ配列翻訳物とアラインメントすることがわかった。遺伝子特異的(センス)プライマー:5’-ACTCGAAGCTCTTCACATGG-3’を合成し、これを、下記の条件で、ユニバーサルM13フォワードプライマー(5’-GTAAAACGACGGCAAGT-3’)を用いたライブラリーPCR反応に使用した:
94℃で3分(1サイクル)、
94℃で15秒、55℃で30秒、72℃で (10サイクル)、
94℃で15秒、55℃で30秒、72℃で1分33秒(サイクル毎に3秒ずつ増加)(20サイクル)、
72℃で6分(1サイクル)。
【0183】
約850bpのPCR産物をクローニングおよび配列決定した。2つのPCR産物の配列を重ね合わせると、これらは最終的に、単一遺伝子に由来することが確認された。
【0184】
実施例6に記載したcDNAライブラリーから単離したcDNAクローンを用いて、標準的方法、特に、ABI PRISM Big Dye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit(Perkin-Elmer, Weiterstadt, Germany)を用いた連鎖終結反応法により、DNAの配列決定を実施した。cDNAライブラリーからプラスミドを回収した後、in vivo除去に続き、寒天プレート上でのDH10Bの再形質転換により、配列決定を実施した(材料およびプロトコルについての詳細:Stratagene, Amsterdam, Netherlands)。
【0185】
アンピシリンを含有するルリア−ブロス培地[Sambrookら(1989)(Cold Spring Harbor Laboratory Press:ISBN 0-87969-309-6)を参照]中で一晩生育させた大腸菌培養物から、プラスミドDNAを調製した。
【0186】
下記のヌクレオチド配列を有する配列決定用プライマーを用いた:
5’-CAGGAAACAGCTATGACC-3’
5’-CTAAAGGGAACAAAAGCTG-3’
5’-TGTAAAACGACGGCCAGT-3’
【0187】
上記cDNAの完全ヌクレオチド配列は、約1,064 bpから構成された。これは、263アミノ酸をコードする789 bpのオープンリーディングフレームを含んでいた。該タンパク質配列は、酵母において鎖長が中程度の脂肪酸の伸長に必要なエロンガーゼなどの既知遺伝子と、低い同一性または類似性しか共有しない(TokeおよびMartin, 1996, Isolation and characterization of a gene affecting fatty acid elongation in Saccharomyces cerevisiae. Journal of Biological Chemistry 271, 18413-18422)。
【表1】
Figure 2004531248
表に示す値は、DNAMAN(Lynnon Biosoft)を用いて、対ごとの(ペアワイズ)アラインメントにより得られた同一性%である。用いたパラメーター:Matrix:BLOSUM、アラインメント方法:最適K-tuple:2、ギャップオープン:10、ギャップペナルティー:4、ギャップ延長:0.1;1=ELOVL4;2=Helo1;3=Elo1;4=Elo2;5=Elo3。
【0188】
上記配列は、ヒトELOVL(文献1、配列1)、ヒトHelo1(文献1、配列2)、M. alpina(Glelo、文献3)、C. elegans(文献4)、マウスElov14(文献1)、酵母(文献5および6の配列3、4、5)から取得した:
1.Zhangら、Nature Gen. 27:89-93(2001)
2.Leonardら、Biochem. J. 350:765-770(2000)
3.Parker-Barnesら、Proc. Natl. Sci. USA 97:8284-8289(2000)
4.Beaudoinら、Proc. Natl. Sci. USA 97:6421-6426(2000)
5.TokeおよびMartin、J. Biol. Chem. Chemistry 271: 18413-18422(1996)
6.Ohら、J. Biol. Chem. 272:17373-17384(1997)。
【0189】
Ig ASE1遺伝子、モルティエレラおよびマウス相同体の対ごとのアラインメントを図1および2に示す。
【0190】
アラインメントには、下記のパラメーターを用いた:
対ごとのアラインメント:
K-tuple:1、
対角線の数:3、
重量マトリックス(タンパク質):PAM 250
固定ペナルティー:10
フローティングペナルティー:10
ウィンドウサイズ:5
ギャップペナルティー:5
【0191】
実施例6:ハイブリダイゼーションによる遺伝子の同定
遺伝子配列を用いて、cDNAライブラリーまたはゲノムライブラリーから、相同または異種遺伝子を同定することができる。
【0192】
相同遺伝子(例えば、相同性の全長cDNAクローン)は、例えば、cDNAライブラリーを用いた核酸ハイブリダイゼーションにより単離することができる。目的とする遺伝子の存在量に応じて、100,000から1,000,000個の組換えバクテリオファージを培養し、ナイロン膜に移す。アルカリによる変性の後、例えば、UV架橋によりDNAを膜の上に固定化する。高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイゼーションを実施する。イオン強度が1 M NaCl、温度68℃の水溶液中でハイブリダイゼーションおよび洗浄を実施する。例えば、放射性(32P)ニック転写を用いた標識付け(High Prime, Roche、ドイツ、マンハイム)により、ハイブリダイゼーションプローブを産生する。オートラジオグラフィーによりシグナルを検出する。
【0193】
低ストリンジェンシーハイブリダイゼーションおよび洗浄条件を用いて、前記方法と同様に、近縁ではあるが、同一ではない、部分的に相同または異種の遺伝子を同定することができる。水性ハイブリダイゼーションのために、イオン強度を通常1 M NaClに維持し、温度を68℃から42℃へと徐々に下げる。
【0194】
(例えば)10〜20アミノ酸からなる個々のドメインでしか相同性を示さない遺伝子配列の単離は、合成、放射性同位元素標識オリゴヌクレオチドプローブを用いて、実施することができる。放射性同位元素標識オリゴヌクレオチドは、T4ポリヌクレオチドキナーゼで、2つの相補的オリゴヌクレオチドの5’末端をリン酸化することにより、産生する。相補的オリゴヌクレオチドをアニールし、互いに連結させることにより、コンカテマーを産生する。次に、二本鎖コンカテマーを例えば、ニック転写により、放射性同位元素標識する。ハイブリダイゼーションは、通常、オリゴヌクレオチド高濃縮物を用いて、低ストリンジェンシー条件下で実施する。
【0195】
オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション溶液:
6×SSC
0.01 M リン酸ナトリウム
1mM EDTA(pH 8)
0.5% SDS
100μg/ml変性サケ***DNA
0.1%無脂肪粉ミルク
ハイブリダイゼーションの間、温度を、推定されるオリゴヌクレオチドTmより5〜10℃低い温度または室温まで段階的に下げた後、洗浄段階およびオートラジオグラフィーを実施する。洗浄は、極めて低いストリンジェンシーで実施され、例えば、4×SSCを用いて、3回実施する。さらに詳しくは、下記に記載されている:Sambrook, J.ら(1989)“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”, Cold Spring Harbor Laboratoy Press、もしくはAusubel, F.M.ら(1994)”Current Protocols in Molecular Biology”, John Wiley & Sons。
【0196】
実施例7:植物形質転換用のプラスミド
植物形質転換には、pGPTV(Beckerら、1992、Plant Mol. Biol. 20:1195-1197)またはpBinARのようなバイナリーベクターを用いることができる(HofgenおよびWillmitzer, Plant Science 66(1990)221-230)。バイナリーベクターは、センスまたはアンチセンス配向のcDNAをT-DNAに連結することにより、構築することができる。cDNAの5’側にある植物プロモーターは、cDNAの転写を活性化する。ポリアデニル化配列は、cDNAの3’側に位置する。
【0197】
組織特異的発現は、組織特異的プロモーターを用いて達成することができる。例えば、種子特異的発現は、cDNAの5’側のDC3またはLeB4またはUSPプロモーターをクローニングすることにより達成することができる。その他のどんな種子特異的プロモーターエレメントを用いてもよい。全植物における構成的発現には、CaMV-35Sプロモーターを用いることができる。
【0198】
発現されたタンパク質は、例えば、色素体、ミトコンドリアまたは小胞体用のシグナルペプチドを用いて、細胞小器官にターゲッティングすることができる(Kermode, Crit. Rev. Plant Sci. 15, 4(1996)285-423)。シグナルペプチドをフレーム内でcDNAの5’側にクローニングすることにより、融合タンパク質の細胞下局在を達成する。
【0199】
実施例8:アグロバクテリウムの形質転換
アグロバクテリウム媒介による植物形質転換は、例えば、アグロバクテリウム株C58C1 pGV2260(Deblaereら、1984, Nucl. Acids Res. 13, 4777-4788)またはGV3101(pMP90)(KonczおよびSchell, Mol. Gen. Genet. 204(1986)383-396)もしくはLBA4404(Clontech)を用いて、実施することができる。形質転換は、標準的形質転換方法(Deblaereら、Nucl. Acids. Tes. 13(1984), 4777-4788)により実施することができる。
【0200】
実施例9:植物の形質転換
アグロバクテリウム媒介による植物形質転換は、標準的形質転換および再生方法を用いて、実施することができる(Gelvin, Stanton B., Schilperoort, Robert A., Plant Molecular Biology Manual、第2版、Dordrecht:Kluwer Academic Publ., 1995, ISBN 0-7923-2731-4;Glick, Bernard R., Thompson, John E., Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology, Boca Raton:CRC Press, 1993, 360 pp. ISBN 0-8493-5164-2)。
【0201】
例えば、子葉または胚軸(hypocotyledon)形質転換(Moloneyら、Plant Cell Report 8(1989)238-242;De Blockら、Plant Physiol. 91(1989)694-701)によって、アブラナを形質転換することができる。アグロバクテリウムおよび植物を選択するための抗体の使用は、形質転換に用いるバイナリーベクターおよびアグロバクテリウム株に応じて違ってくる。アブラナの選択は、通常、選択植物マーカーとしてカナマイシンを用いて実施する。
【0202】
アマ(flax)へのアグロバクテリウム媒介による遺伝子導入は、例えば、Mlynarovaら(1994)Plant Cell Report 13:282-285により記載された技法を用いて、実施することができる。
【0203】
ダイズの形質転換は、例えば、EP 0424 047、米国特許第322,783号(Pioneer Hi-Bred International)またはEP 0397 687、米国特許第5,376,543号、米国特許第5,169,770号(トレド大学)に記載された技法を用いて、実施することができる。
【0204】
粒子ボンバードメント、ポリエチレン−グリコール媒介DNA取込みを用いた、あるいは、シリコンカーボネートファイバー技法による植物形質転換については、例えば、FreelingおよびWalbot (“The maize handbook”(1993)ISBN 3-540-97826-7, Springer Verlag New York)により記載されている。
【0205】
実施例 10 in vivo 突然変異誘発
微生物のin vivo突然変異誘発は、大腸菌またはその他の微生物(例えば、バチルス属、もしくはサッカロミセス・セレビシエのような酵母)を用いて、プラスミドDNA(またはその他のベクターDNA)を継代し、そこで、それらの遺伝情報の完全性を保持する能力を損傷させることにより、実施することができる。典型的なミューテーター株は、DNA修復系用の遺伝子に突然変異を有する(例えば、mutHLS、mutD、mutTなど;参照として、Rupp, W.D.(1996)DNA repair mechanism:Escherichia coli and Salmonella, p. 2277-2294, ASM:ワシントンを参照)。これらの株は、当業者には公知である。これらの株の使用については、例えば、Greener, A.およびCallahan, M.(1994)Strategies 7:32-34に説明されている。突然変異したDNA分子の植物への導入は、微生物における選択および試験の後、実施するのが好ましい。本明細書の実施例の節にある様々な実施例に従い、トランスジェニック植物を産生する。
【0206】
実施例 11 :形質転換した生物における組換え遺伝子産物の発現の評価
形質転換した宿主生物における組換え遺伝子産物の活性を、転写および/または翻訳レベルで測定した。
遺伝子の転写レベル(これは、当該遺伝子産物の翻訳に使用可能なmRNAの量を示す)を決定するのに有用な方法は、ノーザンブロットを実施することである(参照として、例えば、Ausubelら(1988)Current Protocols in Molecular Biology, Wiley:ニューヨーク、または前記の実施例の項を参照)。この方法では、目的とする遺伝子と結合するように設計されたプライマーを、検出可能な標識(通常、放射能または化学発光)で標識付し、これによって、生物の培養物から全RNAを抽出し、これをゲル上に泳動させ、安定マトリックスに移行させた後、このプローブと一緒にインキュベートする。上記プローブの結合および結合量が、上記遺伝子のmRNAの存在および量を示す。この情報から、形質転換した遺伝子の転写度がわかる。全細胞RNAは、細胞、組織または器官から、複数の方法によって調製することができ、これら方法はすべて、当業者には公知であり、例えば、Bormann, E.R.ら(1992, Mol. Microbiol. 6:317-326)の方法がある。
【0207】
このmRNAにより翻訳されたタンパク質の存在または相対量を評価するために、ウェスタンブロットのような標準的方法を用いることができる(例えば、Ausubelら(1988)Current Protocols in Molecular Biology, Wiley:ニューヨークを参照)。この方法では、全細胞タンパク質を抽出し、ゲル電気泳動により分離し、ニトロセルロースのようなマトリックスに移した後、所望のタンパク質と特異的に結合する抗体のようなプローブと一緒にインキュベートする。このプローブには、一般に、容易に検出が可能な化学発光または比色分析標識でタグ付けする。観察された標識の存在および量は、細胞に存在する所望の突然変異タンパク質の存在および量を示す。
【0208】
実施例 12 :所望の産物の生産に対する組換えタンパク質の影響の分析
所望の化合物(脂肪酸など)の生産に対する植物、真菌、藻類、繊毛虫における遺伝子改変の影響は、適した条件(前述したものなど)下で、改変微生物または植物を生育させ、所望の産物(すなわち、脂質または脂肪酸)の生産増加について培地および/または細胞成分を分析することにより、評価することができる。これらの分析方法は、当業者には公知であり、分光学、薄層クロマトグラフィー、各種染色方法、酵素および微生物学的方法、ならびに、高性能液体クロマトグラフィーのような分析クロマトグラフィーが挙げられる(例えば、Ullman, Encyclopedia of Industrial Chemistry, Vol. A2, P. 89-90およびp. 443-613, VCH Weinheim(1985);Fallon, A.ら(1987)”Applications of HPLC in Biochemistry”:Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, 第17巻;Rehmら(1993)Biotechnology、第3巻、第III章、”Product recovery and purification”, 第469-714頁, VCH Weinheim;Belter, P.A.ら(1988)Bioseparations:downstream processing for Biotechnology, John Wiely and Sons;Kennedy, J.F.、ならびに、Cabral, J.M.S.(1992)Recovery processes for biological materials, John Wiely and Sons;Shaeiwitz, J.A.およびHenry, J.D. (1988)Biochemical separations:Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, vol. B3;第11章、第1-27頁、VCH Weinheim;ならびに、Dechow, F.J.(1989)Separation and purification techniques in biotechnology, Noyes Publications
)。
【0209】
前記の方法の他に、Cahoonら(1999)PNAS USA 96(22):12935-12940、ならびに、Browseら(1986)Analytic Biochemistry 152:141-145に記載されているように、植物材料から植物脂質を抽出する。定量および定性脂質または脂肪酸分析については、下記に記載されている:Christie, William W., Advances in Lipid Methodology, Ayr/スコットランド:Oily Press(Oily Press Lipid Library;2);Christie, William W., Gas Choromatography and Lipids. A Practical Guide - Ayr, Scotland:Oily Press, 1989, Repr. 1992, IX, 第307頁(Oily Press Lipid Library;1);”Progress in Lipid Research, Oxford:Pergamon Press, 1(1952)-16(1977)題名:Progress in the Chemistry of Fats and Other Lipids。
【0210】
発酵の最終産物を測定する以外に、所望の化合物を生産するのに用いられる代謝経路の他の成分(中間体および副産物など)を分析することにより、化合物の全体生産効率を決定することも可能である。分析方法としては、培地の栄養素レベル(例えば、糖、炭水化物、窒素源、リン酸イオンおよびその他のイオン)の測定、バイオマス組成および成長測定、生合成経路の通常の代謝物の生産の分析、ならびに、発酵中に発生したガスの測定などが挙げられる。これら測定の標準的方法については、下記に概要が記載されている:Applied Microbial Physiology;A Practical Approach, P.M. Rhodes およびP.F. Stanbury編、IRL Press, pp. 131-163および165-192(ISBN:0199635773)ならびに、そこに引用されている参照文献。
【0211】
一例は、脂肪酸の分析である(略語:FAME、脂肪酸メチルエステル;GC-MS、気液クロマトグラフィー/質量分析法;TAG、トリアシルグリセロール;TLC、薄層クロマトグラフィー)。
【0212】
脂肪酸産物の存在の決定的な証拠は、標準的分析方法:GC、GC-MSまたはTLCに従い、組換え生物を分析することにより獲得することができ、これらの方法は、Christieにより、またその引用参照文献に、多種が記載されている(1997:Advances on Lipid Methodology、第4版:Christie, Oily Press, Dundee, 119-169;1998, gas chromatography/mass spectrometry methods, Lipids 33:343-353)。
【0213】
分析しようとする材料は、音波破砕、ガラスミルでの磨砕、液体窒素および粉砕、あるいは、その他の適用可能な方法により破砕することができる。破砕後、材料を遠心分離しなければならない。沈降物を蒸留水中に再懸濁させ、100℃で10分加熱し、氷冷して再遠心分離させた後、2%ジメトキシプロパンを含むメタノール中の0.5 M硫酸において90℃で1時間抽出する。これにより、加水分解された油および脂質化合物が得られ、これは、メチル基転移脂質をもたらす。これらの脂肪酸メチルエステルを石油エーテルで抽出し、最終的に、毛管カラム(Chrompack, WCOT Fused Silica, CP-Wax-52 CB, 25 m、0.32 mm)を用いて、170〜240℃の温度勾配で20分および240℃で5分のGC分析を実施する。得られた脂肪酸メチルエステルの正体は、使用可能な形態の市販の標準溶液(すなわち、Sigma)を用いて、決定しなければならない。
【0214】
使用できる標準溶液がない脂肪酸については、誘導体化の後、GC分析を実施することにより、その分子の正体を証明しなければならない。例えば、三重結合を有する脂肪酸の局在化は、4,4-ジメトキシオキサゾリン誘導体(Christie, 1998, 前記参照)を用いた誘導体化の後GC-MSにより証明しなければならない。
【0215】
実施例 13 :異種微生物系における発現構築物
株、生育条件およびプラスミド
大腸菌株XL1 Blue MRF’ kan(Stratagene)を用いて、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)由来の新規のエロンガーゼIg ASE1をサブクローニングする。この遺伝子を機能的に発現するため、サッカロミセス・セレビシエ菌株INVSc 1(Invitrogen Co.)を用いた。ルリア−ベルティニブロス(LB、Duchefa、オランダ、ハールレム)において、大腸菌を37℃で増殖させた。必要であれば、アンピシリン(100 mg/リットル)を添加し、1.5%(w/v)の寒天(Difco)を含有させて、固体LB培地を得る。サッカロミセス・セレビシエ菌を、YPG培地、またはウラシルを含まない完全最少培地(CMdum;Ausubel, F.M., Brent, R., Kingston, R.E., Moore, D.D., Seidman, J.G., Smith, J.A., Struhl, K., Albright, L.B., Coen, D.M.およびVarki, A.(1995)Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons、ニューヨーク)のいずれかにおいて、2%(w/v)のラフィノースまたはグルコースのいずれかを添加して、30℃で増殖させた。固体培地を得るために、2%(w/v)のBacto(商標)寒天(Difco)を含有させた。クローニングおよび発現に用いるプラスミドは、pUC18(Pharmacia)およびpYES2(Invitrogen Co.)であった。
【0216】
実施例 14 :酵母におけるイソクリシス・ガルバナ( Isochrysis galbana )由来の ALA-PUFA 特異的エロンガーゼ( ASE 遺伝子)のクローニングおよび発現
a)クローニング方法
酵母における発現のために、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)遺伝子Ig ASE1をまず修飾することにより、制限部位と、高度に効率的な翻訳のための酵母コンセンサス配列を作製した(Kozak, M., 1986)。点突然変異は、真核生物リボソームによる翻訳をモジュレートするAUG開始コドンに隣接する配列を画定する(Cell 44, 283-292)。その開始コドンに隣接する部位を導入した。オープンリーディングフレームを増幅するために、5’および3’末端に相補的なプライマー対を合成した。
【0217】
フォワードプライマー:5’-GGTACCATGGCCCTCGCAAACGA-3’
リバースプライマー:5’-TAGGACATCCACAATCCAT-3’
Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)および下記の温度プログラムを用いたサーモサイクラー(Biometra)中で、鋳型としてプラスミドDNAを用いてPCR反応を実施した:96℃で3分の後、96℃で30秒、55℃で30秒および72℃で3分を25サイクル、そして72℃で10分を1サイクルの後、4℃で停止。
【0218】
約800 bpの適正サイズの増幅DNA断片をアガロースTBEゲル電気泳動により確認した。QIAquickゲル抽出キット(QIAGEN)を用いて、増幅DNAをゲルから抽出した後、シュアクローン連結キット(Sure Clone Ligation Kit)(Pharmacia)を用いて、ベクターpCR 21(Invitrogen)のT/A-部位に連結させた。大腸菌XL1 Blue MRF’ kanの形質転換の後、24個のアンピシリン耐性形質転換体を用いて、DNAミニプレップ(Riggs, M.G.およびMcLachlan, A.(1986)A simplified screening procedure for large numbers of plasmid mini-preparation. BioTechniques 4, 310-313)を実施し、陽性クローンをBamHI制限分析により同定した。ABI PRISM Big Dye Terminator Cycle Sequencing Reasy Reaction Kit(Perkin-Elmer、Weiterstadt)を用いた再配列決定により、クローン化PCR産物の配列を確認した。
【0219】
pCR-ASE1のプラスミド-DNAをKpnI/SacIでさらに制限し、得られたDNA断片を脱リン酸化酵母−大腸菌シャトルベクターpYES2の同じ制限部位に連結させることにより、pY2ASE1を得た。大腸菌の形質転換および形質転換体からのDNAミニプレップを実施した後、ベクター内のDNA断片の配向を調べた。1個のクローンを増殖させて、Nucleobond(登録商標)AX 500 プラスミドDNA抽出キット(Macherey-Nagel、ゾーリンゲン)を用いて、DNAマキシプレップを実施した。
【0220】
改変PEG/酢酸リチウムプロトコル(Ausubelら、1995)を用いて、サッカロミセス・セレビシエINVSc1をpY2ASE1およびpYES2で形質転換した。2%グルコースを含むCMdum寒天プレート上での選択後、さらなる培養および機能発現のために4個のpY2ASE1形質転換体と1個のpYES2形質転換体を選択した。
【0221】
b)酵母におけるエロンガーゼ活性の機能的発現
前培養物:
2%(w/v)ラフィノースを含む20 mlのCMdum液体培地にトランスジェニック酵母クローン(pY2ASE1a-d、pYES2)を接種し、600 nm(OD600)での光学濃度が1.5〜2に達するまで、30℃および200 rpmで3日間培養した。
【0222】
主培養物:
発現のために、2%ラフィノースと1%(v/v)Tergitol NP-40を含む20 mlのCMdum液体培地に、試験しようとする脂肪酸を補充して、最終濃度を0.003%(w/v)とした。この培地に、上記前培養物を0.05のOD600まで接種した。2%(w/v)ガラクトースを用いて、0.2のOD600で16時間発現を誘導したところ、その直後に、該培養物は0.8〜1.2のOD600に到達した。
【0223】
c)脂肪酸分析
全脂肪酸を酵母培養物から抽出し、ガスクロマトグラフィーにより分析した。このため、5 mlの培養物の細胞を遠心分離(1,000×g、10分、4℃)により回収し、100 mM NaHCO3、pH 8.0で1回洗浄して、残留培地および脂肪酸を除去した。脂肪酸メチルエステル(FAME)を調製するために、細胞ペレットを、1 Nメタノール性H2SO4および2%(v/v)ジメトキシプロパンで、80℃にて1時間処理した。このFAMEを2mlの石油エーテルで2回抽出し、100 mM NaHCO3、pH 8.0で1回洗浄し、蒸留水で1回洗浄した後、Na2SO4で乾燥した。アルゴン流の下で、有機溶剤を蒸発させ、上記FAMEを50μlの石油エーテルに溶解させた。フレームイオン化検出器を備えたヒューレットパッカード6850ガスクロマトグラフ内のZEBRON ZB-Wax毛管カラム(30m、0.32 mm、0.25μm;Phenomenex)上で、上記サンプルを分離した。オーブン温度は、20℃/分の昇温速度で、70℃(1分間保持する)から200℃まで、次に、5℃/分の速度で、250℃(5分間保持する)まで、最後に、5℃/分の速度で、260℃までプログラムした。窒素をキャリアーガス(70℃で4.5 ml/分)として用いた。脂肪酸は、FAME標準物(SIGMA)の保持時間との比較により同定した。
【0224】
トランスジェニック酵母株の脂肪酸パターンを表2に示す。
【表2】
Figure 2004531248
表2の説明:
pY2ASE1を含むトランスジェニック酵母に供給した様々な基質の脂肪酸伸長。伸長用の基質として供給した外因性脂肪酸は星印[*]で示す。示した値は、GCおよびFIDにより同定された全脂肪酸メチルエステルのモル%として表す。伸長された基質の場合には、これを変換率%としても表す。ASE1トランスジーンの発現は、ガラクトースの添加により誘導された。Δ9位置に二重結合を有するC18基質だけが、ASE1オープンリーディングフレームにより伸長された。すべての値は、3回の別個の実験の平均を示す。
【0225】
pY2ASE1で形質転換し、様々な外因性脂肪酸(ALA、GLA、LA)の存在下で生育させた酵母の全脂質から調製したFAMEのGC分析を実施し、これらの脂肪酸パターンを表2にモル%で示す。GLAの添加では、伸長産物であるジ−ホモ−GLA(20:3 d8, 11, 14)は一切産生されないが、ALAは伸長されてC20:3 d11, 14, 17を産生し、また、LAは伸長されてC20:2 d11, 14を産生する。
【0226】
pY2ASE1で形質転換し、かつ外因性基質を供給したトランスジェニック酵母クローンは、ガスクロマトグラムにおいて別のピークを示す(図3A〜Dに星印[*]で示す)が、これは、供給/添加した脂肪酸としての保持時間の比較により確認された。ガスクロマトグラフィー/質量分光法は、その正体を確認するために、補助的に役立てることができる。
【0227】
図3A〜Dは、主に、表2に示すデータのGCグラフを示す。図3A〜Dの説明:
pY2ASE1を含むトランスジェニック酵母から抽出した脂肪酸メチルエステルのGCクロマトグラム。酵母培養物を外因性脂肪酸の存在(星印で示す)または非存在下で生育させた。外因性脂肪酸(ナトリウム塩の形態)は、LA(リノール酸;18:2 Δ9, 12;18:2 n-6、図3B参照)、ALA(α−リノレン酸;18:3 Δ9, 12, 15;18:3 n-3、図3A参照)、GLA(γ−リノレン酸;18:3 Δ6, 9, 12;18:3 n-6、図3C参照)、または基質なし(図3D)である。図3Bは、ガラクトースの添加により誘導されるASE1 ORFの発現を示す。24時間後、酵母細胞を遠心分離により回収し、洗浄して外因性基質を除去してから、メチル化した。標準的方法を用いて、脂肪酸メチルエステルを分離および検出した後、既知標準品の共泳動によりピークを確認した。Ig ASE1が、Δ9-C18-PUFA特異的伸長活性をコードすることは明らかである。同定された産物から、Ig ASE1のヌクレオチド配列が藻類イソクリシス・ガルバナ(Isochrysisi galbana)由来のΔ9-選択的C18脂肪酸エロンガーゼをコードし、その結果、トランスジェニック酵母において新規の脂肪酸が形成されることがわかった。
【0228】
数種のその他の脂肪酸を用いた供給実験を実施して、このエロンガーゼの基質選択性をさらに詳細に確認することができる。
【0229】
実施例 15 :形質転換生物からの所望の産物の一般的な精製
植物材料または真菌、藻類、繊毛虫から、または前記培養物の上清からの所望の産物の回収は、当業者には公知の各種方法により、実施することができる。所望の産物が細胞から分泌されない場合には、低速遠心分離により、培養物から細胞を回収し、機械力または音波破砕などの標準的技法により、細胞を溶解させことができる。植物の器官を他の組織または器官から機械的に分離することができる。ホモゲナイズの後、遠心分離により、細胞破壊屑を除去し、可溶性タンパク質を含む上清画分を残して、所望の化合物をさらに精製する。産物が所望の細胞から分泌される場合には、低速遠心分離により、培養物から細胞を除去し、上清画分を残して、さらなる精製を実施する。
【0230】
各精製方法から得た上清画分を、適当な樹脂を含むクロマトグラフィーに付す。その際、所望の分子は、クロマトグラフィー樹脂に残るのに対し、サンプル中の不純物の多くは残らないか、あるいは、樹脂上に不純物は残るが、サンプルは残らないかのいずれかである。これらのクロマトグラフィー段階は、必要に応じて、同じまたは異なるクロマトグラフィー樹脂のいずれかを用いて繰り返すことができる。当業者であれば、好適なクロマトグラフィー樹脂の選択や、精製しようとする特定の分子の最も効果的な使用について、熟知している。精製された産物は、ろ過または限外ろ過により濃縮し、産物の安定性が最も高い温度で保存することができる。
【0231】
非常に多様な単離方法が当業者には知られており、前述した精製方法は、制限を意図するものではない。これらの精製方法は、例えば、Bailey, J.E. & Ollis, D.F.、Biochemical Engineering Fundamentals, McGraw-Hill:ニューヨーク(1986)に記載されている。
【0232】
単離した化合物の正体(素性)および純度は、当業者には公知の標準的技法により評価することができる。このような技法として、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、分光法、染色法、薄層クロマトグラフィー、NIRS、酵素アッセイまたは微生物法が挙げられる。これらの分析方法については、下記を参照されたい:Patekら(1994)Appl. Environ. Microbiol. 60:133-140;Malakhovaら(1996)Biotekhnologiya 11:27-32;ならびに、Schmidtら(1998)Bioprocess Engineer. 19:67-70. Ulmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry(1996)vol. A27, VCH: Weinheim, p. 89-90, p. 521-540, p. 540-547, p. 559-566, p. 575-581およびp.581-587;Michal, G(1999)Biochemical Pathways:An Atlas of Biochemistry and Molecular Biology, John Wiley and Sons;Fallon, A.ら(1987)Applications of HPLC in Biochemistry:Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, Vol. 17。
【0233】
均等物
当業者であれば、通常の実験を行うだけで、本明細書中にこれまで述べてきた本発明の特定の実施形態についての多数の均等物を知っているか、あるいは、確認することができる。これらの均等物は、本発明の特許請求の範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0234】
【図1】イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)エロンガーゼとモルティエレラ・アルピナ (Mortierella alpina) エロンガーゼとの対ごとの(ペアワイズ)アラインメントを示す。
【図2】Ig ASE1のポリペプチドとマウスとの対ごとのアラインメントを示す。
【図3A】αリノレン酸の存在下でIg ASE1遺伝子産物を発現する酵母から単離した脂肪酸メチルエステルのHPLCクロマトグラムを示す。
【図3B】リノール酸の存在下でIg ASE1遺伝子産物を発現する酵母から単離した脂肪酸メチルエステルのHPLCクロマトグラムを示す。
【図3C】γリノレン酸の存在下でIg ASE1遺伝子産物を発現する酵母から単離した脂肪酸メチルエステルのHPLCクロマトグラムを示す。
【図3D】基質の非存在下でIg ASE1遺伝子産物を発現する酵母から単離した脂肪酸メチルエステルのHPLCクロマトグラムを示す。

Claims (25)

  1. γ-リノレン酸(C18:3 d6, 9, 12)は伸長せずに、α-リノレン酸(C18:3 d9, 12, 15)を2炭素原子以上伸長させるポリペプチドをコードする植物由来の単離された核酸。
  2. γ-リノレン酸(C18:3 d6, 9, 12)は伸長せずに、α-リノレン酸(C18:3 d9, 12, 15)を2炭素原子以上伸長させるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸であって、該配列が、
    a)配列番号1に示した核酸配列、
    b)配列番号2に示したポリペプチドをコードする核酸配列、
    c)配列番号1に示した配列の誘導体であって、配列番号2に示したアミノ酸配列をコードする配列に対して少なくとも50%の相同性を有するポリペプチドをコードしかつエロンガーゼとして機能する上記配列の誘導体、
    からなる群より選択される、上記核酸。
  3. 前記配列が植物に由来するものである、請求項2に記載の単離された核酸。
  4. 前記配列がイソクリシス(Isochrysis)属に由来するものである、請求項2または3に記載の単離された核酸。
  5. 前記配列によりコードされたポリペプチドがΔ9-脂肪酸を伸長させる、請求項1または2に記載の単離された核酸。
  6. 請求項2〜4のいずれか1項に記載の単離された核酸によりコードされるアミノ酸配列。
  7. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の配列番号1の配列を有する単離された核酸を含む遺伝子構築物であって、該核酸が、1以上の調節シグナルに機能的に連結している、上記遺伝子構築物。
  8. さらに別の脂肪酸生合成遺伝子を含む、請求項7に記載の遺伝子構築物。
  9. 前記別の脂肪酸生合成遺伝子が、Δ19-、Δ17-、Δ15-、Δ12-、Δ9-、Δ8-、Δ6-、Δ5-、Δ4-デサチュラーゼ、ヒドロキシラーゼ、エロンガーゼ、Δ12-アセチレナーゼ、アシル-ACP-チオエステラーゼ、β-ケトアシル-ACP-シンターゼ、またはβ-ケトアシル-ACP-レダクターゼからなる群より選択される、請求項7または8に記載の遺伝子構築物。
  10. 請求項1または2に記載の核酸、または請求項7〜9のいずれか1項に記載の遺伝子構築物を含有するベクター。
  11. 請求項1または2に記載の少なくとも1つの核酸、請求項7〜9のいずれか1項に記載の遺伝子構築物、または請求項10に記載のベクターを含有する生物。
  12. 前記生物が微生物、動物または植物である、請求項11に記載の生物。
  13. 前記生物がトランスジェニック植物である、請求項11または12に記載の生物。
  14. γ-リノレン酸(C18:3 d6, 9, 12)は伸長せずに、α-リノレン酸(C18:3 d9, 12, 15)を2炭素原子以上伸長させるポリペプチドをコードする、請求項1または2に記載の核酸、請求項7〜9のいずれか1項に記載の遺伝子構築物、または請求項10に記載のベクターを含有する生物を、高度不飽和脂肪酸(PUFA)を該生物において産生させる条件下で生育させることを含んでなる、高度不飽和脂肪酸(PUFA)の生産方法。
  15. 前記方法により生産されるPUFAが、脂肪酸分子中に少なくとも2個の二重結合があるC20-またはC22-脂肪酸分子である、請求項14に記載の方法。
  16. C20-またはC22-脂肪酸分子を油、脂質または遊離脂肪酸の形態で前記生物から単離する、請求項14に記載の方法。
  17. 前記生物が微生物、動物または植物である、請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
  18. 前記生物がトランスジェニック植物である、請求項14〜17のいずれか1項に記載の方法。
  19. 前記C18-脂肪酸が分子中に3個の二重結合をもつ脂肪酸である、請求項14〜18のいずれか1項に記載の方法。
  20. 請求項14〜19のいずれか1項に記載の方法により生産される油、脂質もしくは脂肪酸、またはその画分。
  21. 請求項1または2に記載のヌクレオチド配列、請求項7〜9のいずれか1項に記載の遺伝子構築物、または請求項10に記載のベクターを含有するトランスジェニック植物に由来する、PUFAを含む油、脂質または脂肪酸組成物。
  22. 飼料、食物、化粧品または医薬品における請求項20または21に記載の油、脂質または脂肪酸組成物の使用。
  23. 請求項1または2に記載のヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドと特異的に相互作用する抗体。
  24. 請求項1または2に記載のヌクレオチド配列と相補的であるアンチセンスヌクレオチド配列。
  25. 請求項1または2に記載のヌクレオチド配列、請求項7〜9のいずれか1項に記載の遺伝子構築物、請求項10に記載のベクターまたは請求項22に記載の抗体を含んでなるキット。
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