JP2004523540A - 形質転換成長因子β(TGF−β)阻害剤としての2−アミノ−4−(ピリジン−2−イル)−チアゾール誘導体 - Google Patents
形質転換成長因子β(TGF−β)阻害剤としての2−アミノ−4−(ピリジン−2−イル)−チアゾール誘導体 Download PDFInfo
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Abstract
Description
【発明の詳細な記載】
【0001】
本発明は新規チアゾール誘導体、その製造法、治療、特に、形質転換成長因子β(TGF−β)の過剰発現により特徴付けられる障害の治療および予防におけるその使用に関する。
【0002】
TGF−βは、アクチビン/インヒビン、骨形成蛋白(BMP)およびTGF−βを含むTGF−βスーパーファミリーに属している多機能サイトカインである。TGF−βの3つのイソフォーム(TGF−β1、TGF−β2およびTGF−β3)が哺乳類において同定されており、これらの各々は、異なる染色体の別個の遺伝子によりコードされる(D.A. Lawrence, Eur. Cytokine. Netw., 1996, 7(3), 363)。TGF−βは、細胞周期を調節し、増殖応答を制御し、または細胞接着、移動および細胞間伝達を媒介する細胞外マトリックス蛋白に関係している、遺伝子の発現を最終的に誘発する細胞内シグナリング経路を開始させる。TGF−βは、細胞増殖および分化、細胞外マトリックス形成、造血および免疫調節のモジュレーションを含む多面的効果を有する(RobertsおよびSpoon, Handbook of Experimental Pharmacology, 1990, 95, 419-458)。
【0003】
種々の細胞表面蛋白および受容体は、活性TGF−βリガンドがその受容体に結合することにより開始されるシグナルを変換することが知られている。TGF−βシグナリング経路が開始されることにより、TGF−βリガンドはII型膜受容体の細胞外ドメインに結合する(Massague, Ann. Rev. Biochem., 1998, 67, 753.)。ついで、結合II型受容体は、I型(Alk5)受容体を、多重結合膜複合体に補充し、ついで、活性II型受容体キナーゼは、I型受容体キナーゼをリン酸化し、活性化する。I型受容体キナーゼの機能は、受容体結合共転写因子、Smad−2またはSmad−3をリン酸化することであり、その結果これは細胞質中に放出され、Smad−4に結合する。PAI−1遺伝子は、上記した細胞経路の結果として、TGF−βにより活性化される。
【0004】
TGF−βの過剰発現により特徴付けられる障害の治療および/または予防に対する一のアプローチは、TGF−βシグナル伝達を阻害することである。例えば、優勢ネガティブTGF−βII型受容体の過剰発現によるTGF−βII型受容体の阻害は、ラットモデルにおいて、肝臓線維症および機能不全を防止すること(Proc. Natl. Acad. Sci, 1999, 96(5), 2345))および確定した肝臓線維症の進行を防止すること(Hepatology, 2000, 32, 247)が知られている。
【0005】
TGF−βの病的過剰発現は、重症の病原性症状の進行を最終的に誘発する多くの望ましくない効果に関連していることが知られている(G.C. Blobeら、N. Engl. J. Med., 2000, 1350)。特に、TGF−βの病的過剰発現は、細胞外マトリックス(ECM)の過剰な蓄積、細胞増殖および免疫抑制を引き起こし得る。ECMの過剰蓄積は、線維症、例えば腫瘍線維症、放射線誘発線維症、肝臓、腎臓、肺、腸、心臓、膵臓、腹膜または他の臓器の線維症を誘発することが知られている。線維症は、肝硬変、特発性肺線維症、球体硬化症および肥厚性瘢痕を誘発し得る。
多くの他の病状は、TGF−βにより制御される遺伝子の発現の変化に付随することが知られており、これらは癌の進行、骨機能異常および炎症性障害を含む。
【0006】
TGF−β細胞内経路を阻害することができる化合物の開発は、上記した症状の予防および/または治療に効果がある望ましい手段と思われる。TGF−β細胞内経路および/またはTGF−βの発現を阻害することができる化合物は、線維症の症状の進行を誘発する徴候の障害の治療において用いることができる。例えば、本発明の化合物は、種々の肝臓関連症状、例えばB型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、アルコール誘発肝炎、ヘモクロマトーシスおよび原発性胆汁性肝硬変症に関連する線維症の治療において有用であり得る。
【0007】
本発明の化合物はチアゾール誘導体である。他のチアゾール化合物は、以前に、別の医薬用途において用いられることが記載されている。PCT特許出願WO96/03392(Searle & Co)は、炎症および炎症関連障害の治療のための一連の置換チアゾール化合物を開示している。WO93/15071(SmithKline Beecham Intercredit N.V.)は、胃酸分泌阻害剤として用いることができる一連のチアゾリル−ピリジン誘導体を開示している。この型の化合物は、胃腸障害、例えば、胃潰瘍および十二指腸潰瘍、嚥下性肺炎およびゾリンジャー−エリソン症候群の治療に有用であり得る。米国特許第5,232,921号(Biziereら)は、ムスカリン性コリン受容体に対してアフィニティーを有する2−アルキルアミノチアゾールを開示している。上記した特許出願は本発明のチアゾール化合物を記載しているものではない。
【0008】
PCT特許出願WO00/12947(Scios Inc.)には、キナーゼp38−αおよび/またはTGF−βの活性の増大に付随する種々の障害を治療するための一連のキナゾリン誘導体の使用が記載されている。これに記載されている化合物は、両方の蛋白の活性を阻害することが示されており、したがって、p38−αおよびTGF−βの両方に対する活性の増大が必要とされる症状の治療に特に有用である。
【0009】
この度、以下に記載するある種の置換チアゾール化合物が、TGF−βの過剰発現により特徴付けられる障害の治療または予防に有用であることを見出した。特に、本発明の化合物は、I型TGF−β(Alk5)受容体レベルで作用するTGF−β阻害剤である。
【0010】
本発明の一の態様により、式(I):
【化1】
[式中、
R1は、H、ハロ(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ)、−CN、−CF3、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシから選択され;
nは0、1、2、3、4または5から選択され;
R2は同じであっても異なっていてもよく、ハロ(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ)、−CN、−CF3、OCF3、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシから選択され;
XはCHまたはNであり;
XがCHである場合、X1はNであり、XがNである場合、X1はCHである]
で示される化合物およびその塩ならびに溶媒和物(以下、「本発明の化合物」という)を提供する。
【0011】
また、本発明は、式(I)で示される化合物の医薬上許容される塩を範囲に含む。式(I)で示される化合物の適当な医薬上許容される塩は、酸塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩およびテトラアルキルアンモニウム塩等、または適当な酸、例えば酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸およびコハク酸のような有機カルボン酸;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、メタンスルホン酸およびp−トルエンスルホン酸のような有機スルホン酸、および塩酸、硫酸、リン酸およびスルファミン酸等のような無機酸とのモノもしくはジ塩基塩を含む。
また、本発明は、式(I)で示される化合物の溶媒和物、例えば水和物にも関する。
【0012】
好ましくは、R1は、ピリジン環のC(3)またはC(6)位に位置し、H、ハロ(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ)、−CN、−CF3、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシから選択される。より好ましくは、R1はHであるか、またはC1−4アルキルである。別に、R1は、より好ましくはHである。
好ましくは、nは0である。
【0013】
本発明は、上記したような好ましい基の組合せを有する化合物を含むことは理解できるだろう。
TGF−βの過剰発現に特徴付けられる障害の治療または予防において有用な薬剤として特に対象となる式(I)で示される化合物は:
4−(ピリジン−2−イル)−5−キノリン−4−イル−1,3−チアゾール−2−アミン;
5−([1,5]ナフチリジン−2−イル)−4−ピリジン−2−イル−1,3−チアゾール−2−アミン;および
4−(6−メチル−ピリジン−2−イル)−5−([1,5]ナフチリジン−2−イル)−1,3−チアゾール−2−アミン,
およびその塩ならびに溶媒和物である。
【0014】
式(I)で示される化合物およびその塩ならびに溶媒和物は、後に記載する方法により調製することができ、これは本発明のさらなる一の態様を構成する。本発明のさらなる態様において、式(B)および(G)で示される中間体化合物の調製方法を提供する。
【0015】
XがCHであり、X1がNである式(I)で示される4−キノリニル化合物は、有利には、下記スキーム1に記載の一般方法に従って調製することができる:
【化2】
【0016】
XがNであり、X1がCHである式(I)で示される[1、5]ナフチリジンは、有利には、下記スキーム2の一般方法に従って調製することができる:
【化3】
【0017】
略語表
EtOH エタノール
KHMDS カリウムビス(トリメチルシリル)アミド
THF テトラヒドロフラン
【0018】
式(I)で示される4−キノリニル化合物を調製するための本発明の一般方法は:
(i)適当な塩基、例えば、カリウムビス(トリメチルシリル)アミドまたはナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドを、式(A)で示される置換ピリジンまたはキノリンに、好ましくは、0〜−75℃で、より好ましくは−30〜−60℃で、最も好ましくは−50℃で、適当な溶媒、例えばTHFの存在下で添加すること;
(ii)適当なモノ置換ピリジルエステル、R1(C5H3N)CO2Et(ここに、R1は上記と同意義である)を反応混合物に、好ましくは0〜−75℃、より好ましくは−30〜−60℃で、最も好ましくは−50℃で、適当な溶媒、例えばTHFの存在下で添加すること;
(iii)得られたケトン(B)を、適当なハロゲン化剤、好ましくは臭素化剤、例えばBr2または重合体支持ピリジニウムペルブロマイドで、好ましくは0〜75℃、より好ましくは20〜60℃、最も好ましくは室温で、適当な溶媒、例えばTHFの存在下でハロゲン化すること;および
(iv)適当な溶媒、例えばエタノール中で、チオ尿素を添加し、混合物を加熱還流すること、
を含む。
【0019】
式(A)で示される化合物は、当該分野で公知の方法(例えば、R.H.F. ManskeおよびM. Kulka, Org. React., 1953, 7, 59;Songら、J. Heterocycl. Chem., 1993, 30, 17)と類似の方法により調製することができる。
6−メチル−3−アミノピリジン(E)は、当該分野で公知の方法、例えば、A.W. Hofmann, Ber. Dtsch. Ges., 1881, 14, 2725に記載の方法により調製することができる。
2−メチル−[1,5]ナフチリジン(F)は、当該分野で公知の方法、例えば、Chem. Pharm. Bull., 1971, 19(9), 1857に記載の方法により調製することができる。
【0020】
上記した工程(ii)に記載したようなモノ置換ピリジルエステル、R3(C5H3N)CO2Et(ここに、R3は上記と同意義である)は当該分野で公知の方法と類似の方法で調製することができる。例えば、R3がC(6)−OMeである場合、Fingerら、J. Org. Chem., 1962, 27, 3965;R3がC(3)−OMeである場合、Dejardinら、Bull. Chim. Soc. Fr., 1979, 289;R3がC(5)−Brである場合、ChambersおよびMarfat, Synth. Commun., 1997, 27(3), 515;およびR3がC(4)−CNである場合、HeinischおよびLotsch, Heterocycles, 1987, 26(3), 731。
【0021】
本発明の化合物がTGF−β1型(Alk5)受容体を阻害することによりSmad−2またはSmad−3蛋白のリン酸化を阻害することが見出された。
したがって、本発明の化合物は、本明細書に記載のアッセイにおいて試験され、TGF−βの過剰発現により特徴付けられる障害の治療および予防において可能性ある治療的有用性があることが見出された。
かくして、ヒトまたは獣医学において、特に、TGF−βの過剰発現により特徴付けられる障害の治療または予防において、医薬として用いるための式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩または溶媒和物を提供する。
【0022】
本明細書において言及する治療は、予防ならびに確定した症状の治療を範囲に含むことは理解できるだろう。さらに、本明細書で言及するTGF−βの過剰発現により特徴付けられる障害の治療または予防は、線維症、特に肝臓および腎臓の線維症、癌の進行、骨機能異常および炎症性障害および瘢痕化のようなTGF−β関連疾患の治療または予防を含む。
本発明に従って治療され得る他の病的症状は、上記した序文で論じられている。本発明の化合物は、特に、線維症およびそれに関連する症状の治療に適している。
【0023】
本発明の化合物は、肝臓疾患に対する例えば抗ウイルス剤のような他の治療剤、または腎臓疾患に対するACE阻害剤またはアンギオテンシン受容体アンタゴニストと組み合わせて投与することができる。
【0024】
本発明の他の態様により、TGF−βの過剰発現により特徴付けられる障害、特に線維症の治療および/または予防のための医薬の製造における式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物の使用を提供する。
【0025】
さらなる態様において、TGF−βの過剰発現により特徴付けられる障害、特に線維症を患っているヒトまたは動物の治療方法であって、該ヒトまたは動物対象に、有効量の式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を投与することを特徴とする方法を提供する。
【0026】
本発明の化合物はいずれかの慣用的な方法で投与するために処方されてもよく、したがって、本発明は、式(I)で示される化合物、またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を、1つまたはそれ以上の医薬上許容される希釈剤または担体と混合して含む、治療において用いるための医薬組成物も範囲に含む。
本発明は成分を混合して含む該医薬組成物の製造方法を提供する。
例えば、本発明の化合物は、経口、舌下、非経口、局所および直腸投与で処方することができる。
【0027】
経口投与用の錠剤およびカプセルは、慣用的な賦形剤、例えば結合剤、例えば、シロップ、アカシア、ゼラチン、ソルビトール、トラガカント、でんぷんの粘漿剤またはポリビニルピロリドン;充填剤、例えば、ラクトース、微結晶セルロース、糖、とうもろこしでんぷん、リン酸カルシウムまたはソルビトール;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ポリエチレングリコールまたはシリカ;崩壊剤、例えば、ポテトスターチ、クロスカルメロースナトリウムまたはスターチグリコール酸ナトリウム;または湿潤剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムを含んでいてもよい。経口液体製剤は、例えば、水性または油性懸濁液、溶液、乳液、シロップまたはエリキシルの形態であってもよく、または、使用前に水または他の適当なビヒクルで復元する乾燥生成物として調製することができる。かかる液体製剤は、慣用的な添加剤、例えば懸濁化剤、ソルビトールシロップ、メチルセルロース、グルコース/糖シロップ、ゼラチン、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲルまたは硬化食用油;乳濁化剤、例えば、レシチン、ソルビタンモノオレアートまたはアカシア;非水性ビヒクル(食用油を含んでいてもよい)、例えば、アーモンド油、ヤシ油、油性エステル、プロピレングリコールまたはエチルアルコール;または保存剤、例えば、メチルまたはプロピルp−ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸を含んでいてもよい。また、製剤は、必要に応じて、緩衝塩、フレーバー、着色剤および/または甘味剤(例えば、マンニトール)を含んでいてもよい。
【0028】
舌下投与に関しては、組成物は、慣用的な方法で、錠剤またはロゼンジの形態にすることができる。
また、化合物は、例えば、ココアバターまたは他のグリセライドのような慣用的な坐剤基剤を含有する坐剤として処方することもできる。
【0029】
また、本発明の化合物は、ボーラス注射または持続性注射による非経口投与用に処方することができ、例えば、アンプル、バイアル、少量の注射または予備充填シリンジのような単位剤形、または、付加的な保存剤と一緒に複数回投与容器に調製することができる。組成物は、水性または非水性ビヒクル中の溶液、懸濁液またはエマルジョンの形態であってもよく、処方剤、例えば、酸化防止剤、緩衝剤、抗菌剤および/または毒性調節剤を含んでいてもよい。別法として、活性成分は、使用前に、適当なビヒクル、例えば滅菌発熱物質不含水で復元するための粉末の形態であってもよい。乾燥固体製剤は、滅菌粉末を、無菌状態で、別個の滅菌容器に充填することにより、または、滅菌溶液を、無菌状態で各々の容器に充填し、凍結乾燥することにより調製することができる。
【0030】
本発明で用いる局所投与は、吸入による投与を含む。局所投与用の製剤の種々の型の例としては、軟膏、クリーム、ローション、粉末、ペッサリー、スプレー、エアロゾル、吸入で用いるためのカプセルもしくはカートリッジまたは滴剤(例えば、目または鼻の滴剤)が挙げられる。
【0031】
例えば、軟膏およびクリームは、適当な増粘剤および/またはゲル化剤および/または溶媒を添加した水性または油性基剤と一緒に処方できる。かくして、かかる基剤は、例えば、水および/または液体パラフィンまたはラッカセイ油もしくはヒマシ油のような植物油のような油またはポリエチレングリコールのような溶媒を含む。用いることができる増粘剤は、ソフトパラフィン、ステアリン酸アルミニウム、セトステアリルアルコール、ポリエチレングリコール、微結晶ワックスおよびベースワックスを含む。
【0032】
ローションは、水性または油性基剤と一緒に処方することができ、一般的には、1つまたはそれ以上の乳濁化剤、安定化剤、分散剤、懸濁化剤または増粘剤も含むだろう。
外用粉末は、いずれの適当な粉末基剤、例えば、タルク、ラクトースまたはスターチの補助を用いて形成することができる。滴剤は、1つまたはそれ以上の分散剤、溶解剤または懸濁化剤も含む、水性または非水性基剤と一緒に処方することができる。
【0033】
スプレー組成物は、例えば、適当な推進剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適当な気体を用いることで、加圧パックから供給される水溶液もしくは懸濁液またはエアロゾルとして処方することができる。
吸入で用いるためのゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、本発明の化合物および適当な粉末基剤、例えばラクトースまたはでんぷんの粉末混合物を含んで処方することができる。
【0034】
本発明の化合物は、有利には、例えば、体重1kg当たり0.01〜100mg、適当には、体重1kg当たり0.05〜25mgの量で、1日1回またはそれ以上の回数で、経口投与することができる。もちろん的確な投与量は、患者の年齢および症状、選択される特定の投与経路に依存し、完全に投与する主治医の判断による。
【0035】
以下の実施例は本発明を説明するものであって限定するものではない。
【0036】
中間体
1−ピリジン−2−イル−2−キノリン−4−イル−エタノン
乾燥THF(100ml)中のレピジン(9.54g)の溶液に、アルゴン雰囲気下−50℃で、トルエン(147ml、1.1当量)中の0.5Mのビス−(トリメチルシリル)アミドカリウムの溶液を加えた。溶液をこの温度で30分間撹拌し、ついで、乾燥THF(60ml)中のピコリン酸エチル(11.04g)の溶液を加え、反応混合物を室温に一晩加温した。溶媒を減圧下で濃縮し、固体をジエチルエーテルで沈殿させた。ついで、褐色固体を飽和NH4Cl溶液中に注ぎ、水相を酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して、標題化合物を橙色油(12.83g)として得た。
TLC SiO2 CH2Cl2/MeOH 98/2 Rf0.24
MS(API):249(MH+)
【0037】
2−メチル−[1,5]ナフチリジン
濃硫酸(14ml)、m−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム(11.30g)、ホウ酸(1.55g、0.039mol)および硫酸鉄五水和物(0.90g、3.23mmol)の混合物を室温で撹拌した。グリセロール(8.0ml)を、ついで、3−アミノ−6−メチル−ピリジン(2.79g、0.025mol)および水(14ml)を加えた。得られた混合物を18時間135℃に、撹拌しながら加熱した。反応混合物を室温に冷却し、4Nの水酸化ナトリウムを用いて塩基性化し、得られた混合物を酢酸エチル(×4)を用いて抽出した。抽出物を合し、ついで、シリカゲル(20ml)に予備吸収させ、酢酸エチル(ニート)で溶出するBiotageクロマトグラフィー(90gシリカゲルカートリッジを使用)に付した。適当なフラクションを合し、ついで、蒸発させて、標題化合物(2.01g、55%)を淡褐色結晶性固体として得た。
LC−MS(A4109272) 反応時間2.06分 M/Z 145=MH+
【0038】
2−[1,5]ナフチリジン−2−イル−1−ピリジン−2−イル−エタノン
無水THF(30ml)中の2−メチル−[1,5]ナフチリジン、(0.50g、3.46mmol)およびピコリン酸エチル(0.52g、3.47mmol)の、撹拌、冷却(−78℃)溶液に、ヘキサメチルジメチルシルアジドカリウム(0.5Mのトルエン中の溶液)(13.9ml、6.94mmol)を10分間で滴下した。この混合物を−78℃で1時間撹拌し、ついで、室温で20時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液(100ml)を反応混合物に撹拌しながら加え、得られた混合物を酢酸エチルおよび水間で分配した。水相を分離し、酢酸エチル(×3)で抽出した。抽出物および有機相を合し、水で洗浄し、最終的に乾燥し、蒸発させて、標題化合物(0.86g)を橙黄色固体として得た。
[APCIMS]m/z250(MH+)
【0039】
1−(6−メチル−ピリジン−2−イル)−2−[1,5]ナフチリジン−2−イル−エタノン
2−メチル−[1,5]ナフチリジン(4.34g、30.1mmol)およびメチル−6−メチルピコリネート(1.1当量、5g、33.11mmol)を中間体2に記載のようにカップリングさせ、標題化合物を橙色固体(6g)として得た。
[APCIMS]m/z264(MH+)
【0040】
実施例
実施例1:4−(ピリジン−2−イル)−5−キノリン−4−イル−1,3−チアゾール−2−アミン
THF(50ml)中の1−ピリジン−2−イル−2−キノリン−4−イル−エタノン(12.8g)の溶液に、ポリマー支持ピリジニウムペルブロマイド(Aldrich、1当量)を加え、懸濁液を一晩撹拌した。樹脂を濾過により除去し、濾液を直接チオ尿素(1当量)に加え、樹脂を数回エタノールで洗浄した。濾液を4時間加熱還流し、冷却して濃縮した。残渣をEtOAc中に溶解し、炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した。有機相を乾燥し、濃縮し、CH2Cl2/MeOH 98:2+1%Et3Nで溶出するシリカのクロマトグラフィーにより精製した。得られた固体を再結晶(iPrOH)して、標題化合物を淡黄色固体(8.2g)として得た。
融点228℃
TLC SiO2 CH2Cl2/MeOH90/10+Et3N Rf0.37
[APCIMS]m/z305(MH+)
【0041】
実施例2:5−([1,5]ナフチリジン−2−イル)−4−ピリジン−2−イル−1,3−チアゾール−2−アミン
ジオキサン(15ml)中の2−[1,5]ナフチリジン−2−イル−1−ピリジン−2−イル−エタノン(0.20g、0.80mmol)を臭素(0.050ml、0.97mmol)で処理した。得られた橙色懸濁液を室温で1時間撹拌し、ついで、チオ尿素(0.066g、0.88mmol)を加え、得られた混合物を4時間撹拌しながら78℃に加熱した。反応物を室温まで冷却し、ついで、アンモニア水溶液(0.88M)(2ml)を撹拌しながら加えた。得られた混合物をシリカゲル(〜10ml)上で蒸発させ、酢酸エチル中の5%のメタノールで溶出するBiotageクロマトグラフィー(90gのシリカゲルカートリッジ)に付した。適当なフラクションを合し、ついで、蒸発させて、粗生成物を褐色ガムとして得た。このガムを酢酸エチルから結晶化させて、標題化合物(0.11g、45%)を金色結晶として得た。
[APCIMS]m/z305(MH+)
1H NMR: (DMSO-d6): δ 8.87 (1H, dd, CH), 8.53 (1H, ddd, CH), 8.28 (1H, br.d, CH), 8.08 (1H, d, CH), 7.94 (1H, ddd, CH), 7.80 (1H, br.d, CH), 7.72 (1H, dd, CH), 7.56 (2H, br.s, -NH2), 7.50 (1H, d, CH), 7.44 (1H, ddd, CH)
【0042】
実施例3:4−(6−メチル−ピリジン−2−イル)−5−([1,5]ナフチリジン−2−イル)−1,3−チアゾール−2−アミン
1−(6−メチル−ピリジン−2−イル)−2−([1,5]−ナフチリジン−2−イル)−エタノン(131mg、0.5mmol)を、実施例1に記載のように、ポリマー支持ピリジニウムペルブロマイド(450mg、0.5mmol)と、ついで、チオ尿素(76mg、1mmol)と反応させ、標題化合物を黄色結晶(27mg、17%)として得た。
融点:188℃
[APCIMS]320(MH+)
【0043】
生物学的データ
実施例1〜3の化合物を、インビトロで、下記の生物学的アッセイを用いて試験した。全ての化合物は、アッセイ1において、5μMのIC50値、アッセイ2において1μMのIC50を有する。
【0044】
アッセイ
アッセイ1
TGF−βシグナリングを阻害するための本発明の化合物の可能性は、例えば、以下のインビトロアッセイを用いて示すことができる。
アッセイは、ルシフェラーゼ(ホタル)受容体遺伝子に結合したPAI−1プロモーター(強力なTGF−β応答プロモーター)で安定にトランスフェクトされたHepG2細胞において行った。化合物をTGF−βに曝した細胞におけるルシフェラーゼ活性を阻害する能力で選択した。加えて、TGF−β応答プロモーターにより操作されず、毒性対照として用いられる第2のルシフェラーゼ(レニラ(Renilla))遺伝子で細胞をトランスフェクトした。
(96ウェル)マイクロプレートを、マルチドロップ装置を用いて、200μlの血清含有培地中、ウェルあたり35000細胞の濃度で、安定なトランスフェクト細胞系で播種する。これらのプレートを細胞インキュベータ中に置く。
18〜24時間後(2日目)、細胞インキュベーション処理を開始する。細胞をTGF−βおよび50nM〜10μM(1%のDMSOの最終濃度)の範囲の濃度で、候補化合物(TGF−β阻害剤)と一緒にインキュベートする。試験に用いたTGF−β(rhTGFβ−1)の最終濃度は1ng/mLである。細胞を、TGF−βを添加する15〜30分前に候補化合物と共にインキュベートする。試験反応の最終値は150μlである。各々のウェルは1つだけの候補化合物を含み、そのPAI−1プロモーターに対する効果を測定する。
カラム11および12は対照として用いる。カラム11は8ウェルを含み、細胞をTGF−βの存在下、候補化合物無しでインキュベートする。カラム11を、(阻害活性を定量するための)試験ウェルで測定した値と比較できる、「参考TGF−β誘発ホタルルシフェラーゼ値」を測定するために用いる。ウェルA12〜D12において、細胞をTGF−β不含培地で増殖させる。これらの状況で得られたホタルルシフェラーゼ値は、「基礎ホタルルシフェラーゼ活性」の代表的なものである。ウェルE12〜H12において、細胞を、TGF−βおよび500μMのCPO(シクロペンテノン、Sigma)、細胞毒性化合物の存在下でインキュベートする。減少したホタルおよびレニラルシフェラーゼ活性(カラム11において得られたものの約50%)により、毒性を明らかにする。
12〜18時間後(3日目)、ルシフェラーゼ定量化処理を開始する。以下の反応をDual Luciferaseアッセイキット(Promega)から得た試薬を用いて行う。細胞を洗浄し、10μlの受動溶解緩衝液(passive lysis buffer)(Promega)で溶解させる。撹拌(15〜30分)に続いて、プレートのルシフェラーゼ活性を、デュアルインジェクター照度計(BMG lumistar)で読み取る。このために、50μlのルシフェラーゼアッセイ試薬および50μlの「Stop & Glo」緩衝液を、順次、両方のルシフェラーゼの活性を定量するために注入する。測定で得られたデータを、適当なソフトウェアを用いて、処理し、分析する。ウェルA11〜H11(カラム11、TGF−β 単独)で得られた平均ルシフェラーゼ活性値を100%とみなし、ウェルA12〜D12(培地のみ中の細胞)で得られた値を基底レベル(0%)とする。試験した各々の化合物に関して、濃度応答曲線を、図解して測定できるIC50値で構成する。
【0045】
アッセイ2
キナーゼAlk5受容体を阻害するための本発明の化合物の可能性は、例えば、以下のインビトロアッセイを用いて示すことができる。
Alk5のキナーゼドメインを、バキュロウイルス/Sf9細胞系において、クローン化し、発現させた。蛋白(アミノ酸162〜503)を、C末端で6−Hisタグ化した。Ni2+カラムを用いて、アフィニティークロマトグラフィーにより精製した後、自己リン酸化を試験した。酵素を50mM、pH7.4のトリス;100mMのNaCl;5mMのMgCl2;5mMのMnCl2;10mMのDTTを含有する培地中でインキュベートした。酵素を化合物(試験において最終的に0.1%のDMSO)で、37℃で10分間プレインキュベートした。反応を3μMのATP(0.5μCiガンマ−33P−ATP)を添加することにより開始させた。37℃で15分後、反応をSDS−PAGE試料緩衝液(50mMのトリス−HCl、pH6.9、2.5%のグリセロール、1%のSDS、5%のβ−メルカプトエタノール)を添加することにより停止させた。試料を5分間95℃で煮沸し、12%のSDS−PAGE上で泳動を行った。乾燥ゲルを、一晩、リン酸スクリーンに曝露した。Alk5自動リン酸化をSTORM(Molecular Dynamics)を用いて定量した。
【0001】
本発明は新規チアゾール誘導体、その製造法、治療、特に、形質転換成長因子β(TGF−β)の過剰発現により特徴付けられる障害の治療および予防におけるその使用に関する。
【0002】
TGF−βは、アクチビン/インヒビン、骨形成蛋白(BMP)およびTGF−βを含むTGF−βスーパーファミリーに属している多機能サイトカインである。TGF−βの3つのイソフォーム(TGF−β1、TGF−β2およびTGF−β3)が哺乳類において同定されており、これらの各々は、異なる染色体の別個の遺伝子によりコードされる(D.A. Lawrence, Eur. Cytokine. Netw., 1996, 7(3), 363)。TGF−βは、細胞周期を調節し、増殖応答を制御し、または細胞接着、移動および細胞間伝達を媒介する細胞外マトリックス蛋白に関係している、遺伝子の発現を最終的に誘発する細胞内シグナリング経路を開始させる。TGF−βは、細胞増殖および分化、細胞外マトリックス形成、造血および免疫調節のモジュレーションを含む多面的効果を有する(RobertsおよびSpoon, Handbook of Experimental Pharmacology, 1990, 95, 419-458)。
【0003】
種々の細胞表面蛋白および受容体は、活性TGF−βリガンドがその受容体に結合することにより開始されるシグナルを変換することが知られている。TGF−βシグナリング経路が開始されることにより、TGF−βリガンドはII型膜受容体の細胞外ドメインに結合する(Massague, Ann. Rev. Biochem., 1998, 67, 753.)。ついで、結合II型受容体は、I型(Alk5)受容体を、多重結合膜複合体に補充し、ついで、活性II型受容体キナーゼは、I型受容体キナーゼをリン酸化し、活性化する。I型受容体キナーゼの機能は、受容体結合共転写因子、Smad−2またはSmad−3をリン酸化することであり、その結果これは細胞質中に放出され、Smad−4に結合する。PAI−1遺伝子は、上記した細胞経路の結果として、TGF−βにより活性化される。
【0004】
TGF−βの過剰発現により特徴付けられる障害の治療および/または予防に対する一のアプローチは、TGF−βシグナル伝達を阻害することである。例えば、優勢ネガティブTGF−βII型受容体の過剰発現によるTGF−βII型受容体の阻害は、ラットモデルにおいて、肝臓線維症および機能不全を防止すること(Proc. Natl. Acad. Sci, 1999, 96(5), 2345))および確定した肝臓線維症の進行を防止すること(Hepatology, 2000, 32, 247)が知られている。
【0005】
TGF−βの病的過剰発現は、重症の病原性症状の進行を最終的に誘発する多くの望ましくない効果に関連していることが知られている(G.C. Blobeら、N. Engl. J. Med., 2000, 1350)。特に、TGF−βの病的過剰発現は、細胞外マトリックス(ECM)の過剰な蓄積、細胞増殖および免疫抑制を引き起こし得る。ECMの過剰蓄積は、線維症、例えば腫瘍線維症、放射線誘発線維症、肝臓、腎臓、肺、腸、心臓、膵臓、腹膜または他の臓器の線維症を誘発することが知られている。線維症は、肝硬変、特発性肺線維症、球体硬化症および肥厚性瘢痕を誘発し得る。
多くの他の病状は、TGF−βにより制御される遺伝子の発現の変化に付随することが知られており、これらは癌の進行、骨機能異常および炎症性障害を含む。
【0006】
TGF−β細胞内経路を阻害することができる化合物の開発は、上記した症状の予防および/または治療に効果がある望ましい手段と思われる。TGF−β細胞内経路および/またはTGF−βの発現を阻害することができる化合物は、線維症の症状の進行を誘発する徴候の障害の治療において用いることができる。例えば、本発明の化合物は、種々の肝臓関連症状、例えばB型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、アルコール誘発肝炎、ヘモクロマトーシスおよび原発性胆汁性肝硬変症に関連する線維症の治療において有用であり得る。
【0007】
本発明の化合物はチアゾール誘導体である。他のチアゾール化合物は、以前に、別の医薬用途において用いられることが記載されている。PCT特許出願WO96/03392(Searle & Co)は、炎症および炎症関連障害の治療のための一連の置換チアゾール化合物を開示している。WO93/15071(SmithKline Beecham Intercredit N.V.)は、胃酸分泌阻害剤として用いることができる一連のチアゾリル−ピリジン誘導体を開示している。この型の化合物は、胃腸障害、例えば、胃潰瘍および十二指腸潰瘍、嚥下性肺炎およびゾリンジャー−エリソン症候群の治療に有用であり得る。米国特許第5,232,921号(Biziereら)は、ムスカリン性コリン受容体に対してアフィニティーを有する2−アルキルアミノチアゾールを開示している。上記した特許出願は本発明のチアゾール化合物を記載しているものではない。
【0008】
PCT特許出願WO00/12947(Scios Inc.)には、キナーゼp38−αおよび/またはTGF−βの活性の増大に付随する種々の障害を治療するための一連のキナゾリン誘導体の使用が記載されている。これに記載されている化合物は、両方の蛋白の活性を阻害することが示されており、したがって、p38−αおよびTGF−βの両方に対する活性の増大が必要とされる症状の治療に特に有用である。
【0009】
この度、以下に記載するある種の置換チアゾール化合物が、TGF−βの過剰発現により特徴付けられる障害の治療または予防に有用であることを見出した。特に、本発明の化合物は、I型TGF−β(Alk5)受容体レベルで作用するTGF−β阻害剤である。
【0010】
本発明の一の態様により、式(I):
【化1】
[式中、
R1は、H、ハロ(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ)、−CN、−CF3、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシから選択され;
nは0、1、2、3、4または5から選択され;
R2は同じであっても異なっていてもよく、ハロ(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ)、−CN、−CF3、OCF3、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシから選択され;
XはCHまたはNであり;
XがCHである場合、X1はNであり、XがNである場合、X1はCHである]
で示される化合物およびその塩ならびに溶媒和物(以下、「本発明の化合物」という)を提供する。
【0011】
また、本発明は、式(I)で示される化合物の医薬上許容される塩を範囲に含む。式(I)で示される化合物の適当な医薬上許容される塩は、酸塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩およびテトラアルキルアンモニウム塩等、または適当な酸、例えば酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸およびコハク酸のような有機カルボン酸;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、メタンスルホン酸およびp−トルエンスルホン酸のような有機スルホン酸、および塩酸、硫酸、リン酸およびスルファミン酸等のような無機酸とのモノもしくはジ塩基塩を含む。
また、本発明は、式(I)で示される化合物の溶媒和物、例えば水和物にも関する。
【0012】
好ましくは、R1は、ピリジン環のC(3)またはC(6)位に位置し、H、ハロ(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ)、−CN、−CF3、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシから選択される。より好ましくは、R1はHであるか、またはC1−4アルキルである。別に、R1は、より好ましくはHである。
好ましくは、nは0である。
【0013】
本発明は、上記したような好ましい基の組合せを有する化合物を含むことは理解できるだろう。
TGF−βの過剰発現に特徴付けられる障害の治療または予防において有用な薬剤として特に対象となる式(I)で示される化合物は:
4−(ピリジン−2−イル)−5−キノリン−4−イル−1,3−チアゾール−2−アミン;
5−([1,5]ナフチリジン−2−イル)−4−ピリジン−2−イル−1,3−チアゾール−2−アミン;および
4−(6−メチル−ピリジン−2−イル)−5−([1,5]ナフチリジン−2−イル)−1,3−チアゾール−2−アミン,
およびその塩ならびに溶媒和物である。
【0014】
式(I)で示される化合物およびその塩ならびに溶媒和物は、後に記載する方法により調製することができ、これは本発明のさらなる一の態様を構成する。本発明のさらなる態様において、式(B)および(G)で示される中間体化合物の調製方法を提供する。
【0015】
XがCHであり、X1がNである式(I)で示される4−キノリニル化合物は、有利には、下記スキーム1に記載の一般方法に従って調製することができる:
【化2】
【0016】
XがNであり、X1がCHである式(I)で示される[1、5]ナフチリジンは、有利には、下記スキーム2の一般方法に従って調製することができる:
【化3】
【0017】
略語表
EtOH エタノール
KHMDS カリウムビス(トリメチルシリル)アミド
THF テトラヒドロフラン
【0018】
式(I)で示される4−キノリニル化合物を調製するための本発明の一般方法は:
(i)適当な塩基、例えば、カリウムビス(トリメチルシリル)アミドまたはナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドを、式(A)で示される置換ピリジンまたはキノリンに、好ましくは、0〜−75℃で、より好ましくは−30〜−60℃で、最も好ましくは−50℃で、適当な溶媒、例えばTHFの存在下で添加すること;
(ii)適当なモノ置換ピリジルエステル、R1(C5H3N)CO2Et(ここに、R1は上記と同意義である)を反応混合物に、好ましくは0〜−75℃、より好ましくは−30〜−60℃で、最も好ましくは−50℃で、適当な溶媒、例えばTHFの存在下で添加すること;
(iii)得られたケトン(B)を、適当なハロゲン化剤、好ましくは臭素化剤、例えばBr2または重合体支持ピリジニウムペルブロマイドで、好ましくは0〜75℃、より好ましくは20〜60℃、最も好ましくは室温で、適当な溶媒、例えばTHFの存在下でハロゲン化すること;および
(iv)適当な溶媒、例えばエタノール中で、チオ尿素を添加し、混合物を加熱還流すること、
を含む。
【0019】
式(A)で示される化合物は、当該分野で公知の方法(例えば、R.H.F. ManskeおよびM. Kulka, Org. React., 1953, 7, 59;Songら、J. Heterocycl. Chem., 1993, 30, 17)と類似の方法により調製することができる。
6−メチル−3−アミノピリジン(E)は、当該分野で公知の方法、例えば、A.W. Hofmann, Ber. Dtsch. Ges., 1881, 14, 2725に記載の方法により調製することができる。
2−メチル−[1,5]ナフチリジン(F)は、当該分野で公知の方法、例えば、Chem. Pharm. Bull., 1971, 19(9), 1857に記載の方法により調製することができる。
【0020】
上記した工程(ii)に記載したようなモノ置換ピリジルエステル、R3(C5H3N)CO2Et(ここに、R3は上記と同意義である)は当該分野で公知の方法と類似の方法で調製することができる。例えば、R3がC(6)−OMeである場合、Fingerら、J. Org. Chem., 1962, 27, 3965;R3がC(3)−OMeである場合、Dejardinら、Bull. Chim. Soc. Fr., 1979, 289;R3がC(5)−Brである場合、ChambersおよびMarfat, Synth. Commun., 1997, 27(3), 515;およびR3がC(4)−CNである場合、HeinischおよびLotsch, Heterocycles, 1987, 26(3), 731。
【0021】
本発明の化合物がTGF−β1型(Alk5)受容体を阻害することによりSmad−2またはSmad−3蛋白のリン酸化を阻害することが見出された。
したがって、本発明の化合物は、本明細書に記載のアッセイにおいて試験され、TGF−βの過剰発現により特徴付けられる障害の治療および予防において可能性ある治療的有用性があることが見出された。
かくして、ヒトまたは獣医学において、特に、TGF−βの過剰発現により特徴付けられる障害の治療または予防において、医薬として用いるための式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩または溶媒和物を提供する。
【0022】
本明細書において言及する治療は、予防ならびに確定した症状の治療を範囲に含むことは理解できるだろう。さらに、本明細書で言及するTGF−βの過剰発現により特徴付けられる障害の治療または予防は、線維症、特に肝臓および腎臓の線維症、癌の進行、骨機能異常および炎症性障害および瘢痕化のようなTGF−β関連疾患の治療または予防を含む。
本発明に従って治療され得る他の病的症状は、上記した序文で論じられている。本発明の化合物は、特に、線維症およびそれに関連する症状の治療に適している。
【0023】
本発明の化合物は、肝臓疾患に対する例えば抗ウイルス剤のような他の治療剤、または腎臓疾患に対するACE阻害剤またはアンギオテンシン受容体アンタゴニストと組み合わせて投与することができる。
【0024】
本発明の他の態様により、TGF−βの過剰発現により特徴付けられる障害、特に線維症の治療および/または予防のための医薬の製造における式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物の使用を提供する。
【0025】
さらなる態様において、TGF−βの過剰発現により特徴付けられる障害、特に線維症を患っているヒトまたは動物の治療方法であって、該ヒトまたは動物対象に、有効量の式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を投与することを特徴とする方法を提供する。
【0026】
本発明の化合物はいずれかの慣用的な方法で投与するために処方されてもよく、したがって、本発明は、式(I)で示される化合物、またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を、1つまたはそれ以上の医薬上許容される希釈剤または担体と混合して含む、治療において用いるための医薬組成物も範囲に含む。
本発明は成分を混合して含む該医薬組成物の製造方法を提供する。
例えば、本発明の化合物は、経口、舌下、非経口、局所および直腸投与で処方することができる。
【0027】
経口投与用の錠剤およびカプセルは、慣用的な賦形剤、例えば結合剤、例えば、シロップ、アカシア、ゼラチン、ソルビトール、トラガカント、でんぷんの粘漿剤またはポリビニルピロリドン;充填剤、例えば、ラクトース、微結晶セルロース、糖、とうもろこしでんぷん、リン酸カルシウムまたはソルビトール;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ポリエチレングリコールまたはシリカ;崩壊剤、例えば、ポテトスターチ、クロスカルメロースナトリウムまたはスターチグリコール酸ナトリウム;または湿潤剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムを含んでいてもよい。経口液体製剤は、例えば、水性または油性懸濁液、溶液、乳液、シロップまたはエリキシルの形態であってもよく、または、使用前に水または他の適当なビヒクルで復元する乾燥生成物として調製することができる。かかる液体製剤は、慣用的な添加剤、例えば懸濁化剤、ソルビトールシロップ、メチルセルロース、グルコース/糖シロップ、ゼラチン、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲルまたは硬化食用油;乳濁化剤、例えば、レシチン、ソルビタンモノオレアートまたはアカシア;非水性ビヒクル(食用油を含んでいてもよい)、例えば、アーモンド油、ヤシ油、油性エステル、プロピレングリコールまたはエチルアルコール;または保存剤、例えば、メチルまたはプロピルp−ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸を含んでいてもよい。また、製剤は、必要に応じて、緩衝塩、フレーバー、着色剤および/または甘味剤(例えば、マンニトール)を含んでいてもよい。
【0028】
舌下投与に関しては、組成物は、慣用的な方法で、錠剤またはロゼンジの形態にすることができる。
また、化合物は、例えば、ココアバターまたは他のグリセライドのような慣用的な坐剤基剤を含有する坐剤として処方することもできる。
【0029】
また、本発明の化合物は、ボーラス注射または持続性注射による非経口投与用に処方することができ、例えば、アンプル、バイアル、少量の注射または予備充填シリンジのような単位剤形、または、付加的な保存剤と一緒に複数回投与容器に調製することができる。組成物は、水性または非水性ビヒクル中の溶液、懸濁液またはエマルジョンの形態であってもよく、処方剤、例えば、酸化防止剤、緩衝剤、抗菌剤および/または毒性調節剤を含んでいてもよい。別法として、活性成分は、使用前に、適当なビヒクル、例えば滅菌発熱物質不含水で復元するための粉末の形態であってもよい。乾燥固体製剤は、滅菌粉末を、無菌状態で、別個の滅菌容器に充填することにより、または、滅菌溶液を、無菌状態で各々の容器に充填し、凍結乾燥することにより調製することができる。
【0030】
本発明で用いる局所投与は、吸入による投与を含む。局所投与用の製剤の種々の型の例としては、軟膏、クリーム、ローション、粉末、ペッサリー、スプレー、エアロゾル、吸入で用いるためのカプセルもしくはカートリッジまたは滴剤(例えば、目または鼻の滴剤)が挙げられる。
【0031】
例えば、軟膏およびクリームは、適当な増粘剤および/またはゲル化剤および/または溶媒を添加した水性または油性基剤と一緒に処方できる。かくして、かかる基剤は、例えば、水および/または液体パラフィンまたはラッカセイ油もしくはヒマシ油のような植物油のような油またはポリエチレングリコールのような溶媒を含む。用いることができる増粘剤は、ソフトパラフィン、ステアリン酸アルミニウム、セトステアリルアルコール、ポリエチレングリコール、微結晶ワックスおよびベースワックスを含む。
【0032】
ローションは、水性または油性基剤と一緒に処方することができ、一般的には、1つまたはそれ以上の乳濁化剤、安定化剤、分散剤、懸濁化剤または増粘剤も含むだろう。
外用粉末は、いずれの適当な粉末基剤、例えば、タルク、ラクトースまたはスターチの補助を用いて形成することができる。滴剤は、1つまたはそれ以上の分散剤、溶解剤または懸濁化剤も含む、水性または非水性基剤と一緒に処方することができる。
【0033】
スプレー組成物は、例えば、適当な推進剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適当な気体を用いることで、加圧パックから供給される水溶液もしくは懸濁液またはエアロゾルとして処方することができる。
吸入で用いるためのゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、本発明の化合物および適当な粉末基剤、例えばラクトースまたはでんぷんの粉末混合物を含んで処方することができる。
【0034】
本発明の化合物は、有利には、例えば、体重1kg当たり0.01〜100mg、適当には、体重1kg当たり0.05〜25mgの量で、1日1回またはそれ以上の回数で、経口投与することができる。もちろん的確な投与量は、患者の年齢および症状、選択される特定の投与経路に依存し、完全に投与する主治医の判断による。
【0035】
以下の実施例は本発明を説明するものであって限定するものではない。
【0036】
中間体
1−ピリジン−2−イル−2−キノリン−4−イル−エタノン
乾燥THF(100ml)中のレピジン(9.54g)の溶液に、アルゴン雰囲気下−50℃で、トルエン(147ml、1.1当量)中の0.5Mのビス−(トリメチルシリル)アミドカリウムの溶液を加えた。溶液をこの温度で30分間撹拌し、ついで、乾燥THF(60ml)中のピコリン酸エチル(11.04g)の溶液を加え、反応混合物を室温に一晩加温した。溶媒を減圧下で濃縮し、固体をジエチルエーテルで沈殿させた。ついで、褐色固体を飽和NH4Cl溶液中に注ぎ、水相を酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して、標題化合物を橙色油(12.83g)として得た。
TLC SiO2 CH2Cl2/MeOH 98/2 Rf0.24
MS(API):249(MH+)
【0037】
2−メチル−[1,5]ナフチリジン
濃硫酸(14ml)、m−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム(11.30g)、ホウ酸(1.55g、0.039mol)および硫酸鉄五水和物(0.90g、3.23mmol)の混合物を室温で撹拌した。グリセロール(8.0ml)を、ついで、3−アミノ−6−メチル−ピリジン(2.79g、0.025mol)および水(14ml)を加えた。得られた混合物を18時間135℃に、撹拌しながら加熱した。反応混合物を室温に冷却し、4Nの水酸化ナトリウムを用いて塩基性化し、得られた混合物を酢酸エチル(×4)を用いて抽出した。抽出物を合し、ついで、シリカゲル(20ml)に予備吸収させ、酢酸エチル(ニート)で溶出するBiotageクロマトグラフィー(90gシリカゲルカートリッジを使用)に付した。適当なフラクションを合し、ついで、蒸発させて、標題化合物(2.01g、55%)を淡褐色結晶性固体として得た。
LC−MS(A4109272) 反応時間2.06分 M/Z 145=MH+
【0038】
2−[1,5]ナフチリジン−2−イル−1−ピリジン−2−イル−エタノン
無水THF(30ml)中の2−メチル−[1,5]ナフチリジン、(0.50g、3.46mmol)およびピコリン酸エチル(0.52g、3.47mmol)の、撹拌、冷却(−78℃)溶液に、ヘキサメチルジメチルシルアジドカリウム(0.5Mのトルエン中の溶液)(13.9ml、6.94mmol)を10分間で滴下した。この混合物を−78℃で1時間撹拌し、ついで、室温で20時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液(100ml)を反応混合物に撹拌しながら加え、得られた混合物を酢酸エチルおよび水間で分配した。水相を分離し、酢酸エチル(×3)で抽出した。抽出物および有機相を合し、水で洗浄し、最終的に乾燥し、蒸発させて、標題化合物(0.86g)を橙黄色固体として得た。
[APCIMS]m/z250(MH+)
【0039】
1−(6−メチル−ピリジン−2−イル)−2−[1,5]ナフチリジン−2−イル−エタノン
2−メチル−[1,5]ナフチリジン(4.34g、30.1mmol)およびメチル−6−メチルピコリネート(1.1当量、5g、33.11mmol)を中間体2に記載のようにカップリングさせ、標題化合物を橙色固体(6g)として得た。
[APCIMS]m/z264(MH+)
【0040】
実施例
実施例1:4−(ピリジン−2−イル)−5−キノリン−4−イル−1,3−チアゾール−2−アミン
THF(50ml)中の1−ピリジン−2−イル−2−キノリン−4−イル−エタノン(12.8g)の溶液に、ポリマー支持ピリジニウムペルブロマイド(Aldrich、1当量)を加え、懸濁液を一晩撹拌した。樹脂を濾過により除去し、濾液を直接チオ尿素(1当量)に加え、樹脂を数回エタノールで洗浄した。濾液を4時間加熱還流し、冷却して濃縮した。残渣をEtOAc中に溶解し、炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した。有機相を乾燥し、濃縮し、CH2Cl2/MeOH 98:2+1%Et3Nで溶出するシリカのクロマトグラフィーにより精製した。得られた固体を再結晶(iPrOH)して、標題化合物を淡黄色固体(8.2g)として得た。
融点228℃
TLC SiO2 CH2Cl2/MeOH90/10+Et3N Rf0.37
[APCIMS]m/z305(MH+)
【0041】
実施例2:5−([1,5]ナフチリジン−2−イル)−4−ピリジン−2−イル−1,3−チアゾール−2−アミン
ジオキサン(15ml)中の2−[1,5]ナフチリジン−2−イル−1−ピリジン−2−イル−エタノン(0.20g、0.80mmol)を臭素(0.050ml、0.97mmol)で処理した。得られた橙色懸濁液を室温で1時間撹拌し、ついで、チオ尿素(0.066g、0.88mmol)を加え、得られた混合物を4時間撹拌しながら78℃に加熱した。反応物を室温まで冷却し、ついで、アンモニア水溶液(0.88M)(2ml)を撹拌しながら加えた。得られた混合物をシリカゲル(〜10ml)上で蒸発させ、酢酸エチル中の5%のメタノールで溶出するBiotageクロマトグラフィー(90gのシリカゲルカートリッジ)に付した。適当なフラクションを合し、ついで、蒸発させて、粗生成物を褐色ガムとして得た。このガムを酢酸エチルから結晶化させて、標題化合物(0.11g、45%)を金色結晶として得た。
[APCIMS]m/z305(MH+)
1H NMR: (DMSO-d6): δ 8.87 (1H, dd, CH), 8.53 (1H, ddd, CH), 8.28 (1H, br.d, CH), 8.08 (1H, d, CH), 7.94 (1H, ddd, CH), 7.80 (1H, br.d, CH), 7.72 (1H, dd, CH), 7.56 (2H, br.s, -NH2), 7.50 (1H, d, CH), 7.44 (1H, ddd, CH)
【0042】
実施例3:4−(6−メチル−ピリジン−2−イル)−5−([1,5]ナフチリジン−2−イル)−1,3−チアゾール−2−アミン
1−(6−メチル−ピリジン−2−イル)−2−([1,5]−ナフチリジン−2−イル)−エタノン(131mg、0.5mmol)を、実施例1に記載のように、ポリマー支持ピリジニウムペルブロマイド(450mg、0.5mmol)と、ついで、チオ尿素(76mg、1mmol)と反応させ、標題化合物を黄色結晶(27mg、17%)として得た。
融点:188℃
[APCIMS]320(MH+)
【0043】
生物学的データ
実施例1〜3の化合物を、インビトロで、下記の生物学的アッセイを用いて試験した。全ての化合物は、アッセイ1において、5μMのIC50値、アッセイ2において1μMのIC50を有する。
【0044】
アッセイ
アッセイ1
TGF−βシグナリングを阻害するための本発明の化合物の可能性は、例えば、以下のインビトロアッセイを用いて示すことができる。
アッセイは、ルシフェラーゼ(ホタル)受容体遺伝子に結合したPAI−1プロモーター(強力なTGF−β応答プロモーター)で安定にトランスフェクトされたHepG2細胞において行った。化合物をTGF−βに曝した細胞におけるルシフェラーゼ活性を阻害する能力で選択した。加えて、TGF−β応答プロモーターにより操作されず、毒性対照として用いられる第2のルシフェラーゼ(レニラ(Renilla))遺伝子で細胞をトランスフェクトした。
(96ウェル)マイクロプレートを、マルチドロップ装置を用いて、200μlの血清含有培地中、ウェルあたり35000細胞の濃度で、安定なトランスフェクト細胞系で播種する。これらのプレートを細胞インキュベータ中に置く。
18〜24時間後(2日目)、細胞インキュベーション処理を開始する。細胞をTGF−βおよび50nM〜10μM(1%のDMSOの最終濃度)の範囲の濃度で、候補化合物(TGF−β阻害剤)と一緒にインキュベートする。試験に用いたTGF−β(rhTGFβ−1)の最終濃度は1ng/mLである。細胞を、TGF−βを添加する15〜30分前に候補化合物と共にインキュベートする。試験反応の最終値は150μlである。各々のウェルは1つだけの候補化合物を含み、そのPAI−1プロモーターに対する効果を測定する。
カラム11および12は対照として用いる。カラム11は8ウェルを含み、細胞をTGF−βの存在下、候補化合物無しでインキュベートする。カラム11を、(阻害活性を定量するための)試験ウェルで測定した値と比較できる、「参考TGF−β誘発ホタルルシフェラーゼ値」を測定するために用いる。ウェルA12〜D12において、細胞をTGF−β不含培地で増殖させる。これらの状況で得られたホタルルシフェラーゼ値は、「基礎ホタルルシフェラーゼ活性」の代表的なものである。ウェルE12〜H12において、細胞を、TGF−βおよび500μMのCPO(シクロペンテノン、Sigma)、細胞毒性化合物の存在下でインキュベートする。減少したホタルおよびレニラルシフェラーゼ活性(カラム11において得られたものの約50%)により、毒性を明らかにする。
12〜18時間後(3日目)、ルシフェラーゼ定量化処理を開始する。以下の反応をDual Luciferaseアッセイキット(Promega)から得た試薬を用いて行う。細胞を洗浄し、10μlの受動溶解緩衝液(passive lysis buffer)(Promega)で溶解させる。撹拌(15〜30分)に続いて、プレートのルシフェラーゼ活性を、デュアルインジェクター照度計(BMG lumistar)で読み取る。このために、50μlのルシフェラーゼアッセイ試薬および50μlの「Stop & Glo」緩衝液を、順次、両方のルシフェラーゼの活性を定量するために注入する。測定で得られたデータを、適当なソフトウェアを用いて、処理し、分析する。ウェルA11〜H11(カラム11、TGF−β 単独)で得られた平均ルシフェラーゼ活性値を100%とみなし、ウェルA12〜D12(培地のみ中の細胞)で得られた値を基底レベル(0%)とする。試験した各々の化合物に関して、濃度応答曲線を、図解して測定できるIC50値で構成する。
【0045】
アッセイ2
キナーゼAlk5受容体を阻害するための本発明の化合物の可能性は、例えば、以下のインビトロアッセイを用いて示すことができる。
Alk5のキナーゼドメインを、バキュロウイルス/Sf9細胞系において、クローン化し、発現させた。蛋白(アミノ酸162〜503)を、C末端で6−Hisタグ化した。Ni2+カラムを用いて、アフィニティークロマトグラフィーにより精製した後、自己リン酸化を試験した。酵素を50mM、pH7.4のトリス;100mMのNaCl;5mMのMgCl2;5mMのMnCl2;10mMのDTTを含有する培地中でインキュベートした。酵素を化合物(試験において最終的に0.1%のDMSO)で、37℃で10分間プレインキュベートした。反応を3μMのATP(0.5μCiガンマ−33P−ATP)を添加することにより開始させた。37℃で15分後、反応をSDS−PAGE試料緩衝液(50mMのトリス−HCl、pH6.9、2.5%のグリセロール、1%のSDS、5%のβ−メルカプトエタノール)を添加することにより停止させた。試料を5分間95℃で煮沸し、12%のSDS−PAGE上で泳動を行った。乾燥ゲルを、一晩、リン酸スクリーンに曝露した。Alk5自動リン酸化をSTORM(Molecular Dynamics)を用いて定量した。
Claims (11)
- R1がピリジン環のC(3)またはC(6)位に位置し、H、ハロ、−CN、−CF3、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシから選択される請求項1記載の式(I)で示される化合物。
- R1がHまたはC1−4アルキルである請求項2記載の式(I)で示される化合物。
- nが0または1である請求項1〜3いずれか1項記載の式(I)で示される化合物。
- 4−(ピリジン−2−イル)−5−キノリン−4−イル−1,3−チアゾール−2−アミン;
5−([1,5]ナフチリジン−2−イル)−4−ピリジン−2−イル−1,3−チアゾール−2−アミン;および
4−(6−メチル−ピリジン−2−イル)−5−([1,5]ナフチリジン−2−イル)−1,3−チアゾール−2−アミン、
から選択される請求項1記載の式(I)で示される化合物またはその塩もしくは溶媒和物。 - 請求項1〜5いずれか1項記載の式(I)で示される化合物を、医薬上許容される希釈剤または担体と一緒に含んでなる医薬組成物。
- 医薬として用いるための請求項1〜5いずれか1項記載の式(I)で示される化合物。
- TGF−βの過剰発現により特徴付けられる障害の治療および/または予防のための医薬の製造における請求項1〜5いずれか1項記載の化合物の使用。
- TGF−βの過剰発現により特徴付けられる障害を患っているヒトまたは動物対象の治療方法であって、該ヒトまたは動物対象に有効量の請求項1〜5いずれか1項記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を投与することを含む方法。
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