JP2004507448A - 狭窄症関連疾患を抑制するcd−18結合抗体 - Google Patents
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Abstract
本発明は、CD18を含有する白血球細胞表面抗原(例えばCD18およびCD11形の両方を含むMac−1のような細胞表面抗原)のCD18サブユニットに特異的に結合する分子(例えばモノクローナル抗体またはそれらの部分)が、血管の狭窄および再狭窄損傷、およびそのような損傷に関連する症状および障害を抑制し、防止し、そして軽減するために使用できるという知見に基づく。
Description
【0001】
(技術分野)
発明の背景
本発明は一般に、狭窄および再狭窄ならびに狭窄および再狭窄に関連する症状および障害を抑制し、防止し、そして軽減する組成物および方法に関する。
【0002】
外科的およびカテーテルが媒介する血管介入に比較的共通する合併症は、血管部分の狭窄および再狭窄である。例えば動脈狭窄は、冠状動脈バイパス術後の冠状動脈内のような血管移植部位で、またはその付近で起こり得る。再狭窄は経皮経管的冠状動脈形成術および他のバルーン血管形成術の長期効力を限定する主要な合併症である。同様に、動血管内にステントを留置すると留置部位に狭窄を誘導し得る。
【0003】
血管狭窄症は平滑筋細胞の狭窄部位への移動、その部位での平滑筋の増殖、またはその両方を伴う。しかし平滑筋細胞の移動および増殖を誘導し、または持続する原因である因子(1つまたは複数)は、未だに確実には知られていない。血小板および白血球(例えば好中球)の局所的蓄積は、血管の損傷部位で起こり、損傷の発生後すぐに始まり、そして少なくともその後数日は続くことが知られている。少なくともヒトでは白血球活性化が再狭窄に関係しているが、他の研究者により炎症を抑制する薬剤(例えばグルココルチコイド)の投与はヒトにおける再狭窄を抑制できないことが判明した(Pepine et al.,1990,Circulation 81:1753−1761;Peitersma et al.,1995,Circulation 91:1320−1325;Mickelson et al.,1996,J.Amer.Coll.Cardiol.28:345−353;Inoue et al.,1996,J.Amer Coll.Cardiol.28:1127−1133)。炎症を抑制する薬剤が大変必要とされているにもかかわらず、狭窄および再狭窄症状を防止し、抑制し、または軽減するために比較的広く効力のある薬剤を同定することは困難で、そしてわずかな薬剤が記載されただけであった。
【0004】
Mac−1と呼ばれる(CD11b/CD18またはαMβ2としても知られている)白血球細胞−表面抗原とそのリガンドの1つ(例えばICAM−1またはICAM−2)との間の結合を阻害することができる抗体は、血管の治癒を強化し、そして損傷後の血管の狭窄および再狭窄を減らすことが知られている(国際公開第98/42360号明細書)。しかし以前に他の研究者によれば、Mac−1のCD18部分に特異的に結合するモノクローナル抗体は、再狭窄の防止、抑制または軽減に効果的ではなく、そしてそのような抗体は再狭窄の症状を実際に悪化させるかもしれないと教示した(Guzman et al.,1995,Coron.Art.Dis.6:693−701)。白血球細胞−表面抗原のCD18部分に特異的に結合すると仮定されたモノクローナル抗体(60.3およびR15.7と命名)の効果について解説した他の研究者は、そのような抗体がヒトにおいて狭窄症および関連する症状および障害の発生または進行に影響するならばどのような効果を有するのかを調査しなかった(Kling et al.,1992,Arterioscler.Thromb.12:997−1007;Kling et al.,1995,Circ.Res.77:1121−1128;Golino et al.,1997,Thromb.Haemost.77:783−788)。実際には、他の研究者によりこれらの実験に使用したウサギのモデルでは、ヒトでの抗−狭窄的効力は示されないことが証明された。ヒトの狭窄症の霊長類モデルを使用して得た結果は、ヒトで得た結果とより一層一致していた。例えば例として、ヘパリンはヒトおよび他の霊長類において再狭窄症を防止するためには効果的ではないが、実験用の哺乳動物を含む他の実験系においては再狭窄症を抑制または防止することが示された。
【0005】
本発明は狭窄および再狭窄的損傷およびそれらに付随する症状を抑制し、防止し、そして軽減するために効力のある薬剤の長い間の必要性を満たすものである。
【0006】
発明の簡単な要約
本発明は、ヒトの血管の狭窄症(すなわち再狭窄症を含む)を抑制する方法に関する。この方法は、CD18を含んで成る哺乳動物(例えばヒト)のタンパク質の少なくともCD18部分と特異的に結合する抗−CD18抗体をヒトに投与することを含んで成る。これにより血管内の狭窄症が抑制される。
【0007】
この方法では、抗−CD18抗体は例えば実質的にタンパク質のCD18部分にのみ特異的に結合する抗体、モノクローナル抗体1B4と同じかまたは類似するエピトープ特異性を有する抗体、またはモノクローナル抗体1B4であることができる。
この方法の1態様では、抗−CD18抗体はCD18を含んで成る霊長類タンパク質の少なくともCD18部分と特異的に結合する。
【0008】
抗−CD18抗体と結合する哺乳動物タンパク質は、例えばMac−1、LFA−1、p150,95およびCD11d/CD18の1つのような白血球細胞−表面抗原であることができる。Mac−1が好適である。1つの観点では、抗−CD18抗体と抗原との結合がICAM−1、ICAM−2、ICAM−3、C3bi、第X因子、フィブリンおよびフィブリノーゲン(すなわちMac−1に関するICAM−1、C3bi、第X因子、フィブリンおよびフィブリノーゲン)のような抗原の天然のリガンドとの抗原の結合を阻害する。抗−CD18抗体とタンパク質との結合は、タンパク質の天然の(natural)リガンドとのタンパク質の結合に通常関係している1以上の機能を調節することができる。例としてこの機能は、白血球と血管内皮との結合、白血球の血管内皮を通る移動、白血球の内膜血管組織への浸潤、血管組織中の白血球から走化性因子の放出、血管組織中の白血球から増殖因子の放出、白血球の結合に付随する血管組織から走化性因子の放出、および白血球の結合に付随する血管組織から増殖因子の放出から成る群から選択される。白血球は例えば好中球であることができる。
【0009】
1つの観点では本方法は、血管内皮が外傷的に混乱した血管の狭窄症を抑制するために使用する。例えば血管は、移植した血管、中で血管形成バルーンが膨張した血管、レーザー血管形成術が行われた部位を含んで成る血管、押し潰された損傷を経験した血管、および中にステントが留置された血管の1つであることができる。もちろん、血管はアテローム硬化症の血管および動脈硬化症の血管のように血管内皮が外傷的には悪化しなかった血管であることもできる。血管は例えば冠状血管または大脳血管であることができる。
【0010】
本方法で使用する抗−CD18抗体は、例えば全抗体、抗体フラグメント(例えばFv、Fab、Fab’またはF(abN)2フラグメントの1つ)、キメラ抗体、ヒト化抗体または完全にヒト抗体であることができる。
【0011】
本方法に従い抗−CD18抗体は、抗−CD18抗体を血管に提供することにより(血管内皮が外傷的に混乱(perturbing)する前に、そのような外傷的混乱中に、または血管内皮が外傷的に混乱した後に)ヒトに投与することができる。この混乱は例えば、血管形成術の介入(例えばバルーン血管形成介入または血管内の血管ステントの留置)を含んで成ることができる。
【0012】
実質的に同じ方法を使用して、ヒトの血管中で既往の、または発症中の狭窄を軽減することができる。
【0013】
本発明はさらに、ヒトの血管の狭窄を評価するためのキットに関する。このキットは、検出可能な標識(例えばガンマ放射線源)を有する抗−CD18抗体およびヒトの血管中の抗−CD18抗体の検出を記載する使用説明書を含んで成る。
【0014】
本発明はヒトの血管中の狭窄を抑制または軽減する別の方法を含む。この方法は、抗−CD18抗体と特異的に結合する白血球をヒトの血液から除去することを含んで成る。これにより血管中の狭窄が抑制、または軽減される。
【0015】
また本発明に含まれるのは、CD18を含有する細胞表面タンパク質を有する白血球とヒトの血管内皮との相互作用を阻害する方法である。この方法は白血球を抗−CD18抗体と接触させることを含んで成る。これにより白血球と血管内皮との相互作用が阻害される。白血球は例えばリンパ球、単球、顆粒球、好中球、T細胞および好塩基球から成る群から選択することができる。阻害される相互作用は例えば、白血球と血管内皮との結合または血管内皮を通る白血球の移動であることができる。
【0016】
さらに本発明は、ヒトから得た血液中の血管狭窄に関係する白血球の存在を評価する方法を含む。この方法は、
a)血液を抗−CD18抗体と接触させ、そして
b)血液中の抗−CD18抗体と白血球との結合を検出する、
ことを含んで成る。血液中の抗−CD18抗体と白血球との結合は、血液中に血管狭窄と関係する白血球が存在することの指標である。血液中の抗−CD18抗体と白血球との結合は定性的に評価するか、あるいは定量する(例えばヒトの血液中の抗−CD18抗体と白血球との結合を、
i)血管狭窄症に罹患しているか、または
ii)血管狭窄症に罹患していない、
いずれかのヒトから得た対照血液中の白血球との抗−CD18抗体の結合と比較する)ことにより評価することができる。
【0017】
さらに本発明は、ヒトから得た血液中に血管狭窄症に関連する白血球の存在を評価するためのキットを含む。このキットは、
i)抗−CD18抗体および
ii)少なくとも1つの
a)ヒトの血液中の白血球の存在を定量すること、
b)血管狭窄症に罹患しているヒトの血液中の白血球含量、および
c)血管狭窄症に罹患していないヒトの血液中の白血球含量
を記載する使用説明書を含んで成る。
【0018】
別の観点では、本発明はヒトの血管の狭窄に関連する障害を抑制する方法に関する。この方法は、CD18を含んで成る哺乳動物タンパク質の少なくともCD18部分と特異的に結合する抗−CD18抗体をヒトに投与することを含んで成る。これにより血管の狭窄が抑制され、そしてこれにより障害が抑制される。
【0019】
さらに別の観点では、本発明はヒトの血管中の狭窄症に関連する障害を軽減する方法に関する。この方法はCD18を含んで成る哺乳動物タンパク質の少なくともCD18部分と特異的に結合する抗−CD18抗体をヒトに投与することを含んで成る。それにより血管の狭窄が軽減され、そしてこれにより障害が軽減される。
【0020】
発明の詳細な説明
本発明は従来技術での技法(例えばGuzman et al.,1995,Coron.Art.Dis.6:693−701)とは対照的に、Mac−1白血球細胞表面抗原のCD18サブユニットと特異的に結合する分子が、血管(例えば動脈)の狭窄または再狭窄的損傷およびそのような損傷に付随する症状(例えば虚血)および障害(例えば血管移植拒絶)を抑制し、防止し、そして軽減するために使用できるという知見に基づく。CD−18結合抗体はCD11bと複合化する時(すなわちMac−1抗原中で)、CD11aと複合化する時(すなわちLFA−1抗原中で)、およびCD11dと複合化する時(すなわちp150,95抗原中で)、CD18と結合することができると認識されている。
【0021】
本発明は、Mac−1、LFA−1、p150,95およびCD11d/CD18と命名されたヒトの白血球細胞−表面抗原に見いだされるような哺乳動物(好ましくは霊長類、そしてより好ましくはヒト)のCD18タンパク質と特異的に結合する抗体またはそれらの機能的フラグメントに関する。本明細書で使用するように、「抗−CD18抗体」とは、全抗体およびそのような全抗体のフラグメントを集合的および個別に指すために使用し、ここで抗体またはフラグメントはCD18タンパク質との特異的結合を現す。1つの態様では、抗−CD18抗体はCD18タンパク質に特異的に結合するが、抗原Mac−1、LFA−1、p150,95およびCD11d/CD18の他の成分と特異的に結合しない(例えば、抗−CD18抗体はこれら抗原の任意のCD11サブユニットとは特異的に結合しない)。CD18と特異的に結合する実質的に任意の抗体を使用することができるが、抗−CD18抗体はCD18がCD11サブユニット(例えば、CD11a、CD11b、CD11cおよびCD11dの1つ)のような白血球細胞表面抗原中の他のタンパク質と複合化できるかどうかにかかわらず特異的に結合するものであることが好ましい。
【0022】
1つの態様では抗−CD18抗体は、単離された哺乳動物(例えばヒト)のCD18タンパク質または単離されたCD18−含有タンパク質(例えば白血球細胞表面抗原)に対して生成される。もちろん抗−CD18抗体は、そうではなくて組換え哺乳動物CD18またはそれらの部分(例えば、CD18タンパク質上に通常は露出されているエピトープを含んで成るポリペプチド、特にタンパク質が白血球膜中のCD11サブユニットと複合化する時、通常は露出されるもの)に対して生成することもできる。抗−CD18抗体はさらに哺乳動物のCD18を発現する宿主細胞(例えば好中球のようなヒト白血球またはCD18を発現するように形質転換された細菌細胞)に対して生成することができる。本明細書で使用するように、標的に対して抗体を「生成する」ことは、既知の方法を使用して行うことができる。標的に対して抗体を生成するために使用する方法の例は、標的を脊椎動物(例えばウサギ、ハムスター、マウス、カンガルー、ヤギ、ヒツジ、ブタまたはウシ)の身体(例えば血流中)に提供し、脊椎動物から免疫細胞を単離し、抗−CD18抗体を生産する1以上の免疫細胞を選択し、そしてその細胞(1つまたは複数)から抗−CD18抗体を得ることを含む。別の例としては、標的を、表面に露出された抗体または抗体のフラグメントを有し、そして露出された抗体またはフラグメントをコードする核酸を含むか、または核酸に関連し得る粒子(細胞、ファージ、ベクター等)のライブラリー(例えばM13ファージライブラリーのような糸状ファージライブラリー)と合わせ、標的と結合する1以上の粒子を選択し、粒子内に含まれるか、または関係する核酸を得、そして得られた核酸を使用して抗−CD18抗体を生成するかまたは設計することである。
【0023】
好適な態様では、抗体はヒトのCD18タンパク質またはそれらの部分と特異的に結合し、そして特に好適な態様では、抗体は自然に存在するか、または内因性のヒトCD18タンパク質に特異性を有する。哺乳動物CD18タンパク質に特徴的な1以上の機能を阻害することができる抗−CD18抗体が本発明に包含される。これらの機能の例には、白血球と内皮細胞との結合、白血球とそれらの表面にICAM−1タンパク質を有する細胞との結合、白血球とそれらの表面にICAM−2タンパク質を有する細胞との結合を媒介すること、白血球の血管内皮を通る移動を媒介すること、白血球の病んだまたは傷害を受けたまたは炎症した組織への移動を媒介すること、および走化性または増殖調節物質(例えば増殖因子およびケモカイン)の白血球および白血球が結合する細胞からの放出を媒介することを含む。例えば1つの観点では、抗−CD18抗体はCD18とICAM−1またはICAM−2のような天然のリガンドとの相互作用を阻害する(すなわち頻度または強度を下げるか、または防止する)。
【0024】
抗−CD18抗体が結合するCD18のエピトープは、重要ではない。1つの態様では、抗−CD18抗体はモノクローナル抗体1B4が結合する同じエピトープに結合する。モノクローナル抗体1B4は、例えば欧州特許出願公開第0438312号明細書に記載されている。好ましくは抗−CD18抗体はすでに知られている抗−CD18抗体(例えば抗体R15.7および60.3)が結合するエピトープ(1つまたは複数)とは異なるCD18のエピトープと結合するか、あるいは抗−CD18抗体が既知の抗−CD18抗体と同じCD18のエピトープに結合する時、既知の抗体よりも高い親和性で結合する。
【0025】
本発明の抗−CD18抗体はヒトのCD18により媒介される機能を阻害することができ、白血球の傷害を受けたまたは炎症した組織(外科的またはバルーン血管形成術のようなカテーテルが媒介する介入にかけられた血管組織のような)への再集合を含む。抗体は対応する身体部位での流体中の抗体濃度に一般的に関連する程度まで、そのような機能を阻害することができる。さらなる抗体が実質的により高い阻害効果を持たない上の抗体濃度が存在すると認識されている。低い濃度では、抗体の阻害効果は日常的な実験を使用して当業者により予想され得る様式で抗体の濃度に伴い変動するだろう。使用することができる本明細書に記載する抗−CD18抗体の効果的濃度には、例えばミリリットルあたり1000、500、200、100、50、20、10、5、2または1マイクログラムを含む。抗−CD18抗体の送達が局所的に投与される場合(例えば、関節の滑液のような分離した身体成分内)は、全身的に投与する場合(例えば血流を介する全身投与)よりも低濃度の抗体を使用することができる。
【0026】
本発明のさらなる態様では、抗−CD18抗体はCD18とそれらのリガンド(例えばICAM−1またはICAM−2)との結合を、好ましくはミリリットルあたり約50、20、10、5、2、1または(好ましくは)0.5マイクログラム未満のIC50で阻害することができる。本発明のさらなる態様では、抗−CD18抗体はCD18と少なくとも約10−7、10−8、または(好ましくは)10−9モルの親和性で結合する。
【0027】
CD18と特異的に結合するヒト化したモノクローナル抗体は本明細書に記載するように生成され、そして1B4と命名する。好適な態様では、本発明の抗体はヒトのCD18に結合し、そして本明細書に記載する1B4と同じかまたは類似するエピトープ特異性を有する。1B4モノクローナル抗体と同じかまたは類似するエピトープ特異性を持つ抗体は、当該技術分野で知られている技法を使用して同定することができる。例えば1B4と同じかまたは類似するエピトープ特異性を持つ抗体は、それらが1B4モノクローナル抗体とヒトのCD18(例えば、1以上のMac−1、LFA−1、p150,95およびCD11d/CD18細胞−表面抗原を持つ白血球のようなヒトのCD18を持つ細胞)との結合を拮抗する能力により、それらが1B4のヒトCD18への結合を阻害する能力により、あるいはレセプターのキメラを使用して(例えばRucker et al.1996,Cell 87:437−446に記載されているように)同定することができる。これらのまたは他の適当な技法を使用して、本発明の抗体と同じかまたは類似するエピトープ特異性を持つ抗体を同定することができる。本発明はまた、1B4および少なくとも1つの他の抗体と同じかまたは類似するエピトープ特異性を持つ二重特異性抗体またはそれらの機能的フラグメント(例えばF(ab’)2)に関する(例えば米国特許第5,141,736号明細書(Iwasa et al.)、米国特許第4,444,878号、同第5,292,668号、同第5,523,210号明細書(すべてPaulusへの)、および米国特許第5,496,549号明細書(Yamazaki et al.)を参照にされたい)。
【0028】
本発明の抗−CD18抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体であることができる。さらに本明細書に記載する抗−CD18抗体を利用する方法は、全抗−CD18抗体、全抗−CD18抗体のCD18抗原−結合フラグメント、モノクローナル抗体1B4、1B4と同じかまたは類似するエピトープ特異性を持つ抗体(すなわち全抗体およびCD18−結合抗原フラグメント)、およびこれらの組み合わせであると考えられる。これらの抗体およびフラグメントは、場合によりCD18と特異的に結合しない抗体または抗体フラグメントと組み合わせて使用することができる。
【0029】
本明細書に記載する抗−CD18抗体は、本明細書に記載するように治療、診断、防止、予後および調査的応用に使用することができる。本発明は抗−CD18抗体(例えばモノクローナル抗体1B4、またはそれらのCD18−結合フラグメント)を、治療(予防を含む)または診断(例えば本明細書に記載する特定の疾患または症状)において使用するために、ならびにそのような抗体を本明細書に記載する疾患または症状の処置、防止または診断に使用するための薬剤の製造に使用するために包含する。
【0030】
免疫感作抗原の調製およびポリクローナルおよびモノクローナル抗体の生産は本明細書に記載するように、あるいは他の適当な技法を使用して行うことができる。様々な方法が記載された(例えば、Kohler et al.,Nature,256:495−497(1975)およびEur.J.Immunol.6:511−519(1976);Milstein et al.,Nature 266:550−552(1977);Koprowski et al.,米国特許第4,172,124号明細書;Harlow,E. and D.Lane,1988,Antibodies:ア ラボラトリーマニュアル(A Laboratory Manual)、(コールドスプリングハーバーラボラトリー:コールドスプリングハーバー、ニューヨーク);分子生物学における現在の技法(Current Protocols In Molecular Bio logy)、第2巻、(補追27、’94年夏)、Ausubel,F.M.et al.編集、(ジョン ウィリー アンド サンズ(John Wiley & Sons:ニューヨーク、NY)、第11章、(1991)を参照にされたい)。一般にハイブリドーマは適当な不死化細胞系(例えばSP2/0のようなミエローマ細胞系)と抗体生産細胞とを融合することにより生産することができる。好ましくは脾臓または1以上のリンパ節から得た抗体生産細胞は、目的の抗原を単独または他の抗原と組み合わせて(例えばアジュバントと組み合わせて、または表面に抗原を露出した細胞として)提供した動物から得ることができる。融合細胞(すなわちハイブリドーマ)は、選択的な培養条件を使用して単離することができ、そして限界希釈によりクローン化する。所望の結合特性を持つ抗体を生産する細胞は、適切なアッセイにより選択することができる(例えばCD18−結合抗体を検出するためにELISAを使用して)。
【0031】
ヒトまたは人工的な抗体を含めCD18に結合する抗体を生産または単離する他の適当な方法を使用することができ、それらには例えばライブラリーから組換え抗体(例えば単鎖FvまたはFab)を選択する方法、またはヒトまたは人工的抗体のレパートリーを生産することができるトランスジェニック動物(例えばマウス)の免疫感作に依存する方法(例えばJakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551−2555(1993);Jakobovits et al.,Nature,362:255−258(1993);Lonberg et al.,米国特許第5,545,806号明細書;Surani et al.,米国特許第5,545,807号明細書を参照にされたい)を含む。例として抗−CD18抗体はCD18またはそれらの画分を、場合によりアジュバントと混合して、またはキメラタンパク質内に包含して、アブジェニックス社(Abgenix,Inc.、フリーモント、カリフォルニア州)から入手可能なマウスのXenomouse(商標)種のような、マウス抗体遺伝子発現が抑制され、そして機能的にヒトの抗体遺伝子発現と置き換えられた遺伝子操作されたマウスに提供し、そして次いで抗−CD18抗体をマウスから単離することにより生成することができる。
【0032】
異なる種に由来する部分を含んで成る単鎖抗体、およびキメラ、ヒト化、ヒトまたは霊長類化(CDR−移植)抗体ならびにキメラまたはCDR−移植単鎖抗体等も本発明および用語「抗体」に包含される。これら抗体の種々の部分は、通例の技法により化学的に一緒に連結することができ、あるいは遺伝子工学的技法を使用して連続するタンパク質として調製することができる。例えばキメラ、ヒトまたはヒト化された鎖をコードする核酸を発現させて連続するタンパク質を生成することができる。例えば、Cabilly et al.、米国特許第4,816,567号明細書;Cabilly et al.、欧州特許第0,125,023号明細書;Boss et al.、米国特許第4,816,397号明細書;Boss et al.、欧州特許第0,120,694号明細書;Neuberger,M.S.et al.、国際公開第86/01533号明細書;Neuberger,M.S.et al.、欧州特許第0,194,276号明細書;Winter、米国特許第5,225,539号明細書;Winter、欧州特許第0,239,400号明細書;およびQueen et al.、米国特許第5,585089号、同第5,698,761号および同第5,698,762号明細書を参照にされたい。また霊長類化した抗体に関してはNewman,R.et al.、BioTechnology,10:1455−1460(1992)を、そして単鎖抗体に関してはLadner et al.、米国特許第4,946,778号明細書およびBird,R.E.et al.,Science,242:423−426(1988))を参照にされたい。
【0033】
さらにキメラ、ヒト化、霊長類化、ヒト(すなわち完全にヒト)または単鎖抗体のフラグメントを含む抗体の機能的フラグメントも生成することができる。前述の抗体の機能的フラグメントは、それらが由来する完全長の抗体の少なくとも1つの結合機能および/または調節機能を保持する。好適な機能的フラグメントは、対応する完全長の抗体の抗原−結合機能を保持する(例えば、哺乳動物のCD18に結合する能力を保持する)。特に好適な機能的フラグメントは、白血球と内膜との結合を調節する能力または白血球の内皮を渡る移動のような哺乳動物のCD18に特徴的な1以上の機能を阻害する能力を保持する。例えば1つの態様では、機能的フラグメントはヒトの白血球(例えば好中球)と自然にICAM−1またはICAM−2を含んで成る組織(例えば内皮)との結合を阻害することができる。別の態様では、機能的フラグメントは血管内バルーン血管形成術的介入の部位で好中球の内膜血管組織への滲出を抑制することができる。機能的フラグメントが調節することができる他の活動は幾つかの態様において、白血球のトラフィッキング(trafficking)、T細胞活性化、炎症メディエーターの放出および白血球のデグラニュレーション(degranulation)を含む。
【0034】
例えば哺乳動物のCD18またはそれらの部分に結合することができるFv、Fab、Fab’およびF(abN)2抗体フラグメントを含む抗−CD18抗体フラグメントは、本発明に包含される。そのようなフラグメントは全抗−CD18抗体の酵素的開裂により、または例えば組換え法により生成することができる。例えばパパインまたはペプシン開裂は、それぞれFabまたはF(ab’)2フラグメントを生成することができる。抗体も1以上の終止コドンが天然の終止部位の上流に導入された抗体遺伝子を使用して、種々の短縮化された形態で生成することができる。例えばF(ab’)2重鎖部分をコードするキメラ遺伝子は、重鎖のCH1ドメインおよびヒンジ領域をコードするDNA配列を含むように設計することができる。
【0035】
例としてキメラ抗−CD18抗体(全抗−CD18抗体のフラグメントを含む)は、キメラ抗体またはフラグメントをコードする様式で連結されたヒト(例えばヒトの定常領域)および非−ヒト(例えばマウスの相補性−決定領域:CDR)セグメントのDNAセグメントを含んで成るDNAを合成し、そして次いでDNAを転写し、そして翻訳して連続するポリペプチド鎖を生成することにより調製することができる。
【0036】
本明細書で使用する用語「ヒト化免疫グロブリン」および「ヒト化抗体」とは、異なる動物起源の免疫グロブリンの部分を含んで成る免疫グロブリン、または免疫グロブリンの部分を称し、ここで少なくとも1つの部分がヒト起源である。したがって本発明は、哺乳動物のCD18(例えばヒトのCD18またはカニクイザルCD18)に特異的に結合するヒト化免疫グロブリンに関する。このヒト化抗体は、非ヒト(例えば齧歯類)起源の抗原結合領域およびヒト起源(例えばヒトを枠組み領域、または1以上のヒトの定常領域またはそれらの部分)の免疫グロブリンの少なくとも1つの部分を含んで成る。例えばヒト化抗体は、通例の技法(すなわち合成抗体を生成するために)により化学的に一緒に連結されるか、または組換え(すなわち「遺伝子操作」)法を使用して連続するポリペプチドとして調製された必要な抗−CD18特異性を現す非ヒト(例えばマウス)起源の免疫グロブリンに由来する1以上の部分、ヒト起源の1以上の免疫グロブリン部分を含んで成ることができる。本発明のヒト化免疫グロブリンの例は、非ヒト起源のCDRを含んで成る1以上の免疫グロブリン鎖(例えば、非ヒト起源の抗体に由来する1以上のCDR)およびヒトの軽鎖、ヒトの重鎖またはそれらの幾つかのハイブリッドに由来する枠組み領域を含む免疫グロブリンである(すなわち、枠組みに変化が有るかまたは無いCDR−移植抗体)。
【0037】
1つの態様では、ヒト化抗−CD18抗体はヒトのCD18と結合するために1B4モノクローナル抗体と競合することができる。好適な態様では、ヒト化免疫グロブリン(a)の抗原−結合領域は1B4モノクローナル抗体に由来する(例えば1B4軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3、および1B4重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3を含んで成るヒト化免疫グロブリンにおけるような)。
【0038】
ヒト化抗−CD18抗体は、所望のヒト化された鎖をコードする遺伝子(例えばcDNA)を調製するために合成核酸、組換え核酸またはその両方を使用して生成することができる。例えばヒト化された可変領域をコードする核酸(例えばDNA)配列は、以前にヒト化された可変領域に由来するDNA鋳型のようなヒトまたはヒト化された鎖をコードするDNA配列を改変するための、PCR突然変異誘発法を使用して構成することができる(例えばKamman,M.,et al.,Nucl. Acids Res.,17:5404(1989);Sato,K.,et al.,Cancer Research,53:851−856(1993);Daugherty,B.L.et al.,Nucleic Acids Res.,19(9):2471−2476(1991);およびLewis,A.P.,and J.S.Crowe,Gene,101:297−302(1991)を参照にされたい)。これらのまたは他の適当な方法を使用して、変異体も容易に生成することができる。1つの態様では、クローン化された可変領域を突然変異させることができ、そして所望の特異性を持つ変異体をコードする配列を選択することができる(例えばファージライブラリーから;Krebber et al.,U.S.5,514,548;1993年4月1日に公開されたHoogenboom et al.,国際公開第93/06213号明細書;1997年3月6日に公開されたKnappik et al.,国際公開第97/08320号明細書を参照にされたい)。本内容で使用する「遺伝子」とは、CD18に特異的に結合する全抗−CD18抗体またはそれらのフラグメントをコードする発現可能な核酸構築物を意味する。そのような遺伝子は一般に、翻訳開始部位および翻訳終止コドンを含む。遺伝子がDNAである場合、遺伝子は転写開始部位も含むべきであり、そしてさらに当該技術分野では既知のポリ−アデノシン領域を含むことができる。
【0039】
抗−イディオタイプ抗体も提供される。抗−イディオタイプ抗体は別の抗体の抗原−結合部位に付随する抗原決定基を認識する。抗−イディオタイプ抗体は、例えば米国特許第4,699,880号明細書に記載されているような第2抗体を生成するために使用された動物と同じ種の、そして好ましくは同じ血統(strain)の動物を免疫感作することにより第2抗体に対して調製することができる。
【0040】
本発明は本明細書に記載する1B4ハイブリドーマ細胞系、そのハイブリドーマ細胞系により生産された抗−CD18モノクローナル抗体、およびそれらのCD18−結合フラグメントにも関する。この細胞系および抗−CD18抗体を生産する他のハイブリドーマは、モノクローナル抗体の生産を越えた用途を有する。例えば細胞系は他の細胞系(ヒトのミエローマ、マウスのミエローマ、ヒト−マウスヘテロミエローマ、またはヒトのリンパ芽球細胞のような、これら任意の細胞系を作成することができ、あるいは既知の方法を使用して選択した薬剤に感受性になるように選択する)と融合して、さらなるハイブリドーマを生成することができる。これらのさらなるハイブリドーマを使用して、モノクローナル抗体をコードする遺伝子をインビトロまたはインビボのいずれかで細胞群または組織に移すことができる。
【0041】
さらに抗−CD18抗体生産細胞系は、1以上の抗−CD18抗体鎖をコードする核酸の供給源として使用することができ、そしてこれら核酸を単離し、発現させ(例えば適当な技法(例えばCabilly et al.、米国特許第4,816,567号明細書;Winter、米国特許第5,225,539号明細書を参照にされたい)を使用して他の細胞に移して)、または操作することができる(例えばキメラ抗−CD18抗体をコードする核酸を得るために他の抗体をコードする核酸の部分と合わせて)。例えば再配列した抗−CD18抗体の軽および重鎖を含んで成るクローンを単離することができ(例えばPCRにより)、あるいはcDNAライブラリーを細胞系から単離したmRNAから調製することができ、そして抗−CD18免疫グロブリン鎖をコードするcDNAクローンを単離することができる。このように抗−CD18抗体の重鎖、軽鎖または両方をコードする核酸を得、そして特異的な免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはこれらのいずれかの変異体を生産するための組換えDNA法に従い(例えばヒト化免疫グロブリンを生産するために)、種々の宿主細胞中またはインビトロの翻訳系で使用することができる。
【0042】
ヒトまたはヒト化抗−CD18抗体、またはそれらの重または軽鎖のような変異体をコードする核酸は、原核または真核ベクター(例えばプラスミドまたはウイルスベクターのような発現ベクター)に提供され、そして宿主細胞(例えば形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーションまたは細胞の感染により)に導入され得る。既知の発現制御要素(例えばプロモーター、ターミネーター領域、転写調節領域等)をベクターに含めることができ、または宿主細胞中での抗体または鎖の発現を助長するために宿主細胞のゲノムに組み込むことができる。宿主細胞中でのコードされた鎖(1つまたは複数)の生産は、当該技術分野で知られているように発現に適する条件に細胞を維持することにより達成できる(例えばインデューサーの存在下、適当な塩、増殖因子、抗生物質、栄養補充物が補充された適当な培地等)。所望によりコードされたタンパク質は、宿主細胞または宿主細胞が核酸を発現する培地または組織から回収および/または単離することができる。この生産法には例えば国際公開第92/03918号明細書に記載されているように、トランスジェニック動物の宿主細胞中で抗−CD18抗体またはそれらの鎖の発現を包含する。
【0043】
本明細書で記載するように、本発明の抗−CD18抗体はCD18とそれらのリガンドとの結合を遮断(阻害)することができる。このようにCD18/リガンド結合の阻害は、そのような結合に関係する1以上の機能を阻害するために使用することができる。以下に記載するように種々の方法を使用してリガンドとCD18の結合を阻害を評価することができ、そしてこれらの方法はすなわち、CD18/リガンド結合に関係する機能の阻害を評価するために使用することができる。
結合アッセイ
本明細書で使用するように、「哺乳動物のCD18」とは自然に存在するかまたは内因性の哺乳動物のCD18タンパク質、および自然に存在するかまたは内因性の対応する哺乳動物のCD18タンパク質と同じアミノ酸配列を有するタンパク質(例えば組換えタンパク質)を称する。したがって本明細書で定義するように、この用語には成熟CD18タンパク質、ホモ多量体CD18タンパク質、少なくとも1つのCD18ポリペプチドを含んで成るヘテロメリック(heteromeric)タンパク質(例えば白血球細胞表面抗原Mac−1、LFA−1、p150,95およびCD11d/CD18、その各々が{異なる}CD11サブユニットおよびCD18サブユニットを含んで成る)、これらタンパク質の多形または対立遺伝子変異体、およびこれらタンパク質の他のアイソフォーム(例えば、交互スプライシングまたは他の細胞プロセスにより生成される)を含む。前述のタンパク質の翻訳後に修飾された形態およびそのように修飾されていない形態の両方を含む(例えばグリコシル化および非グリコシル化CD18タンパク質およびCD18−含有ヘテロマー)。哺乳動物のCD18タンパク質は天然の供給源から単離するか、または組換えもしくは他の合成法により生成することができる。自然に存在するまたは内因性の哺乳動物のCD18タンパク質は、成熟CD18、多形もしくは対立遺伝子変異体、および哺乳動物内(例えばヒトおよび非ヒト霊長類)で自然に生じる他のアイソフォーム、およびCD18を含んで成るヘテロメリックタンパク質(例えばMac−1、LFA−1、p150,95およびCD11d/CD18のような白血球細胞表面抗原)のような野生型タンパク質を含む。そのようなタンパク質は例えば哺乳動物のCD18を自然に生産する供給源から回収または単離することができる。自然に存在するかまたは内因性の対応する哺乳動物CD18と同じアミノ酸配列を有するこれらのタンパク質および哺乳動物のCD18タンパク質は、対応する哺乳動物の名前により呼ばれている。例えば対応する哺乳動物がヒトである場合、このタンパク質はヒトCD18タンパク質と命名されている(例えば適当な宿主細胞中で生産された組換えヒトCD18)。
【0044】
哺乳動物CD18タンパク質の「機能的変異体」には、機能的フラグメント、機能的突然変異体タンパク質、および機能的融合タンパク質(例えば突然変異誘発法または組換え法により生産されたもの)を含む。一般に哺乳動物CD18タンパク質のフラグメントまたは部分は、成熟哺乳動物CD18タンパク質に対してアミノ酸残基(すなわち1以上のアミノ酸残基)の欠失(すなわち1以上の欠失)を有するものを含む(アミノ−末端、カルボキシル−末端または内部の欠失のような)。成熟哺乳動物CD18タンパク質に対して連続アミノ酸のみが欠失しているか、または非連続アミノ酸が欠失しているフラグメントまたは部分も想定する。
【0045】
一般に哺乳動物CD18タンパク質の突然変異体には、付加、欠失、置換により、またはこれらの幾つかの組み合わせの、または1以上の連続または非連続アミノ酸残基の差異による哺乳動物CD18タンパク質の天然のまたは人工的な変異体を含む。そのような突然変異は、哺乳動物種間のCD18アミノ酸配列相同性により評価されるような保存または非保存領域であることができる。
【0046】
一般に融合タンパク質は、天然に見いだされる哺乳動物CD18中には存在しない第2部分にペプチド結合を介して連結された哺乳動物CD18(例えばヒトCD18)またはそれらの変異体を第1部分として含んで成るポリペプチドを包含する。すなわち第2部分はアミノ酸、オリゴペプチドまたはポリペプチドであることができる。第1部分は融合タンパク質に対してアミノ−末端の位置、カルボキシル−末端の位置または内部位置であることができる。1つの態様では、融合タンパク質は第1部分として親和性リガンド(例えば酵素、抗原、エピトープタグ)を含んで成り、そして第2部分はリンカー配列およびヒトCD18またはそれらの部分を含んで成る。さらなる(第3または4)部分も存在することができる。
【0047】
哺乳動物CD18タンパク質の「機能的」フラグメント、部分、突然変異体または融合タンパク質とは、本明細書で記載するように哺乳動物CD18タンパク質の少なくとも1つの特徴的機能を有する単離された、組換えの、またはその両方のポリペプチドを称する。好適な機能的変異体は、リガンド(例えばICAM−1およびICAM−2の1つまたは両方)に結合することができ、そして本明細書ではCD18の「リガンド結合変異体」と称する。
【0048】
1つの態様では、哺乳動物CD18の機能的変異体は対応する哺乳動物CD18(例えばGenBank 寄託番号NM 000211に記載されているヒトCD18、または別の霊長類CD18)と少なくとも約85%の配列同一性を、好ましくは該哺乳動物CD18と少なくとも約90%の配列同一性を、そしてより好ましくは少なくとも約95%の配列同一性を共有する。別の態様では、機能的な融合タンパク質は対応する哺乳動物CD18と少なくとも約85%の配列同一性を、好ましくは哺乳動物CD18と少なくとも約90%の配列同一性を、そしてより好ましくは少なくとも約95%の配列同一性を共有する第1部分を含んで成る。配列同一性は、Blastx プログラム(バージョン1.4)のような適当なプログラムを使用して、NCBIウェッブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)で説明されるデフォルトパラメーターのような適当なパラメーターを使用して決定することができる。1つの態様では、Blastx調査に関するパラメーターは、スコアリングマトリックスBLOSUM62、W=3である。別の態様では機能的変異体は、自然に存在する核酸分子とは異なるが遺伝子暗号の縮重により哺乳動物CD18またはそれらの部分もしくは機能的変異体をコードする配列を有する核酸を含んで成る。
【0049】
単離された、または組換えの哺乳動物CD18タンパク質またはそれらの機能的変異体を含んで成る組成物を、結合に適する条件下に維持することができる。そのような条件下で、タンパク質を抗体または抗体フラグメントと接触させ、そして結合を直接的または間接的に検出する。1つの態様では、CD18を自然に発現する細胞または哺乳動物CD18またはそれらの変異体をコードする組換え核酸配列を含んで成る細胞を使用する。細胞はレセプターの発現に適する条件下で維持する。結合に適する条件下で(例えば適当な結合バッファー中)、細胞を抗体またはフラグメントと接触させ、そして結合を標準的な技法により検出する。
【0050】
CD18タンパク質または変異体と抗体または抗体フラグメントとの結合の程度は、適当な対照に対して決定することができる。対照との比較は、例えば抗体またはフラグメントの不存在を含むバックグラウンド条件下でCD18結合をアッセイすることを含んで成ることができ、あるいはCD18と第2抗体(例えばモノクローナル抗体1B4のようなCD18について既知の親和性を有する第2抗体)の結合に対して、CD18と抗体/フラグメントの結合を比較することを含んで成ることができる。CD18タンパク質を含んで成る細胞画分(例えば膜画分)またはCD18を含んで成る合成の組成物(例えばリポソーム)を、結合アッセイで全細胞の代わりに使用することができる。
【0051】
1つの態様では、抗体またはフラグメントをCD18との結合能力を測定する前に適当な標識(例えば蛍光標識、アイソトープ標識、抗原もしくはエピトープ標識、酵素標識)で標識し、そして結合は標識を検出することにより測定する。別の態様では、結合した抗体はCD18結合能が評価される抗体またはフラグメントと特異的に反応する標識した第2抗体を使用して検出する。結合の特異性は、例えば幾つかの既知の方法に従い、競合物として標識もしくは非標識抗体またはリガンドを使用して競合もしくは置換により評価することができる。
【0052】
結合阻害アッセイも、抗体またはフラグメントが抗−CD18抗体であるかどうかを評価するために使用することができる。これらのアッセイでは、抗−CD18抗体の結合が別の化合物とCD18との結合を阻害する。別の化合物は例えば、既知の特異性の抗−CD18抗体またはCD18の既知のリガンド(例えばICAM−1およびICAM−2、またはこれらのいずれかを持つ細胞)またはCD18の機能的変異体であることができる。例えば結合アッセイでは、CD18の既知のリガンド(例えばモノクローナル抗体1B4)の結合をCD18の未知の、または推定されるリガンドの結合と比較するように行うことができる。既知のリガンド/CD18結合の程度の減少は、未知のまたは推定されるリガンドがCD18に特異的に結合することを示す。単離された、もしくは組換え哺乳動物CD18またはそれらの機能的変異体を含んで成る組成物は、リガンドおよび抗体と同時またはいずれかの順序で連続して接触させることができる。
【0053】
抗−CD18抗体の存在を同定する他の方法を使用することができ、そして当該技術分野で知られている多数の抗体−エピトープ結合アッセイを含む。あるいはCD18と既知のもしくは推定される抗−CD18抗体との間の結合は、既知のもしくは推定される抗−CD18抗体の存在および不存在下で、CD18とそれらの天然のリガンド(例えばICAM−1、ICAM−2、またはこれらのいずれかをその表面に発現する細胞)との間の結合に関係する生物学的機能を評価することにより選択的に評価することができる。例として、好中球が内皮細胞表面(例えば血管形成術を施した血管の管腔表面)に結合する能力は、既知のもしくは推定される抗−CD18抗体の存在および不存在下で評価することができ、そして好中球のその場所への結合の阻害は、既知のもしくは推定される抗−CD18抗体がCD18に結合することを示す。
走化性または細胞性刺激に関するアッセイ
走化性アッセイは、抗−CD18抗体がリガンドと哺乳動物CD18またはそれらの機能的変異体との結合を遮断する能力を評価するために使用することができる。そのようなアッセイは、抗−CD18抗体がリガンドと哺乳動物CD18との結合に関係する機能を阻害する能力を評価するためにも使用することができる。これらのアッセイは、化合物により誘導されるインビトロまたはインビボでの細胞の機能的移動に基づく。走化性は、例えば96−ウェルの走化性プレートを使用するアッセイで、あるいは走化性を評価するための他の当該技術分野で既知の方法を使用して評価することができる。例えばインビトロの経内皮(transendothelial)走化性アッセイの使用は、Springer et al.により記載されている(Springer et al.、1994年9月15日に公開された国際公開第94/20142号明細書、その内容は引用により本明細書に編入する;またBerman et al.,Immunol.Invest.17:625−677(1988)も参照にされたい)。内皮を渡ってコラーゲンゲルへの移動も記載された(Kavanaugh et al.,J.Immumol.,146:4149−4156(1991))。例えばマウスL1.2pre−B細胞または走化性が可能な他の適当な宿主細胞の安定なトランスフェクション体を走化性アッセイに使用することができる。
【0054】
一般に、走化性アッセイでは適当な細胞(白血球(例えばリンパ球、好酸球、好塩基球)のような)がバリアーの第1の表面から反対側の第2の表面に向かって、高レベルの化合物に向かうバリアー(例えば内皮、フィルター)中への、またはそれを通る方向性のある運動もしくは移動を監視する。膜またはフィルターは都合の良いバリアーを提供するので、適当な細胞がフィルターの第1の表面から反対側の第2の表面に向かって、高レベルの化合物に向かうフィルター中への、またはそれを通る方向性のある運動または移動が監視される。アッセイの中には膜をICAM−1、フィブロネクチンまたはコラーゲンのような接着し易い物質で被覆するものもある。そのようなアッセイは白血球の「ホーミング」のインビトロの近似を提供する。
【0055】
例えば第1チャンバーから微孔性の膜中へ、またはそれを通って試験する抗体を含有し、そして膜により第1チャンバーから別れている第2チャンバーへの細胞の適当な容器中(手段を含有する)での移動の阻害を検出または測定することができる。化合物に反応した特異的な移動を監視するために、例えばニトロセルロース、ポリカーボネートを含む適当な孔サイズを有する適当な膜が選択される。例えば約3〜8ミクロン、そして好ましくは約5〜8ミクロンの孔サイズを使用することができる。孔サイズはフィルター上で均一であるか、または適当な孔サイズの範囲内であることができる。
【0056】
移動および移動の阻害を評価するために、フィルター中への移動距離、フィルターの第2面に付いているフィルターを渡った細胞の数、第2チャンバー中に蓄積された細胞の数またはその両方を標準技法(例えば顕微鏡)を使用して測定することができる。1つの態様では、細胞は検出可能な標識(例えば放射性同位体、蛍光標識、抗原またはエピトープ標識)を用いて標識し、そして移動は抗−CD18抗体の存在および不存在下で、適当な方法を使用して(例えば放射性、蛍光、イムノアッセイを検出することにより)、フィルターの膜に付いている標識の存在、第2チャンバー中の存在またはその両方を測定することにより評価する。抗−CD18抗体により誘導されるか、または遅れる移動の程度は、適当な対照に対して測定することができる(例えば抗体の不存在下で測定されるバックグラウンドの移動と比較して、第2化合物(すなわち標準)により誘導される移動の程度と比較して、抗体により誘導される非−トランスフェクト細胞の移動と比較して)。
【0057】
T細胞、単球または哺乳動物CD18を発現している細胞に有用である1つの態様では、経内皮移動を監視することができる。この態様では、内皮細胞層を通る通過(transmigration)を評価する。この細胞層を調製するために内皮細胞は、内皮細胞を付着し易くするためにコラーゲン、フィブロネクチンまたは他の細胞外マトリックスタンパク質のような物質で場合により被覆した微孔性フィルターまたは膜上で培養することができる。好ましくは内皮細胞はコンフルエントな単層が形成されるまで培養する。単層形成のために種々の哺乳動物の内皮細胞を利用することができ、それらには例えば静脈、動脈またはヒトの臍帯静脈内皮細胞(クローンテックス(Clonetics)社、サンディエゴ、カリフォルニア州)のような微小血管内皮を含む。特定の哺乳動物レセプターに応答する走化性をアッセイするために、同じ哺乳動物の内皮細胞が好適である:しかしヘテロロガスな哺乳動物種または属に由来する内皮細胞も使用することができる。
【0058】
一般にこのアッセイは、フィルターの第1の表面から反対側のフィルターの第2の表面に向かって、化合物のレベルが増す方に向かう細胞の膜またはフィルター中への、またはそれを通る方向性のある移動を検出することにより行われ、ここでフィルターは第1表面上に内皮細胞層を含む。方向性の移動は第1表面に隣接した領域から生じ、膜中へ、またはそれを通ってフィルターの反対側上にある化合物に向かう。第2表面に隣接する領域に存在する化合物の濃度は、第1表面に隣接する領域内より高い。
【0059】
そのような移動で抗−CD18抗体の効果を試験するために使用する1つの態様では、移動することができ、しかも哺乳動物CD18を発現する細胞を含んで成る組成物を第1チャンバーに配置する。第1チャンバー中の細胞に走化性を誘導することができる1以上のリガンドまたは促進因子(promoter)を含んで成る組成物(誘引機能を有する)を、第2チャンバーに配置する。好ましくは細胞を第1チャンバーに配置する直前に、または細胞の配置と同時に、試験する抗−CD18抗体を含んで成る組成物を好ましくは第1チャンバー内に配置する。このアッセイで哺乳動物CD18を含有するタンパク質に結合し、そしてリガンドまたは促進因子により哺乳動物CD18を発現している細胞の走化性の誘導を阻害する抗−CD18抗体は、CD18を含有するタンパク質が誘導する機能のインヒビターである(例えば刺激機能のインヒビター)。抗−CD18抗体の存在下でリガンドまたは促進因子により誘導される移動の程度における減少は、阻害活性の指標である。別の結合実験(上記を参照にされたい)を行って、阻害が抗体のCD18を含有するタンパク質への結合の結果であるか、または異なるメカニズムを介して起こるのかを決定することができた。
【0060】
組織に化合物(例えばケモカインまたは抗体)を注入することに反応して、組織中への、組織を通る、または組織内の白血球浸潤を監視するインビボアッセイを以下に記載する(炎症のモデルを参照にされたい)。これらのインビボホーミングのモデルは、炎症の部位への移出(emigration)および走化性により細胞がリガンドまたは促進因子に応答する能力を測定し、そして抗−CD18抗体がこの移出を阻害または遮断する能力を評価する。
【0061】
記載した方法に加えて、抗体またはフラグメントのCD18の刺激機能に及ぼす効果は、レセプターを含有する適当な宿主細胞を使用して活性なレセプターにより誘導される細胞性の応答を監視することにより評価することができる。
哺乳動物 CD18 機能のさらなるリガンド、インヒビターおよび/または促進因子の同定
本明細書に記載する抗−CD18抗体の結合および機能を評価するために使用することができる上記のアッセイは、哺乳動物CD18またはそれらの機能的変異体に結合するさらなるリガンドまたは他の物質、ならびに哺乳動物CD18機能のインヒビターおよび/または促進因子を同定するために適合させることができる。例えば抗−CD18抗体の結合特異性(例えばモノクローナル抗体1B4)と同じかまたは類似の特異性を有する作用物質は、抗体を含む競合アッセイを使用して同定することができる。このように本発明はまた、哺乳動物CD18タンパク質に結合するリガンドまたは他の物質、ならびにCD18およびCD18を含有するタンパク質機能のインヒビター(例えばアンタゴニスト)または促進因子(例えばアゴニスト)を同定する方法も包含する。1つの態様では、哺乳動物CD18タンパク質またはそれらの機能的変異体を有する細胞(例えば白血球、該細胞中に導入された該核酸によりコードされる哺乳動物CD18タンパク質または機能的変異体を発現するように操作された細胞系または適当な宿主細胞)をこのアッセイに使用して、CD18またはCD18を含有するタンパク質に結合するリガンドまたは他の物質の効力を同定し、そして評価する。そのような細胞も、発現したタンパク質またはポリペプチドの(あるいはもちろん、細胞が自然に発現するCD18の)機能を評価するために有用である。
【0062】
本発明に従い、CD18またはCD18を含有するタンパク質に結合するリガンドまたは他の物質、およびそのようなタンパク質の機能のインヒビターおよび促進因子を、適当なアッセイで同定し、そしてさらに治療的効果を評価することができる。レセプター機能のインヒビターを使用してCD18またはCD18を含有するタンパク質活性を阻害(低下または防止)することができ、そしてリガンドおよび/または促進因子を使用して、示される場合は正常なCD18またはCD18を含有するタンパク質機能を誘導(誘起または強化)することができる。これらのインヒビターは、自己免疫疾患および移植拒絶を含む炎症性疾患を処置する方法に使用することができ、この方法はCD18またはCD18を含有するタンパク質機能のインヒビターを個体(例えば哺乳動物)に投与することを含んで成る。本明細書に記載するように同定されたリガンドおよび/または促進因子は、タンパク質機能の新規リガンドまたは促進因子を個体に投与することによりCD18またはCD18を含有するタンパク質機能の刺激法に使用することができ、例えば感染性疾患およびガンの処置において有用である白血球機能を選択的に刺激するための新規取り組みを提供する。
【0063】
本明細書で使用するように、哺乳動物CD18タンパク質の「リガンド」とは天然のリガンドおよび天然のリガンドの合成の形態、組換え体またはその両方を含め、哺乳動物CD18タンパク質と結合する特定の種類の物質を称する。哺乳動物CD18−陽性細胞に親和性を有する感染源も哺乳動物CD18タンパク質に結合することができる。好適な態様では、哺乳動物CD18タンパク質のリガンド結合は高い親和性で起こる。
【0064】
本明細書で使用するように、「インヒビター」は哺乳動物CD18タンパク質に特徴的な少なくとも1つの機能(例えばヒトCD18:例えば走化性の刺激、エキソサイトーシスまたは白血球による炎症メディエータの放出)を阻害(低下または防止)する物質である。用語インヒビターは、CD18またはCD18を含有するタンパク質に結合するアンタゴニストを含む物質(例えば、抗体、天然のリガンドの突然変異体、低分子量有機分子、リガンド結合の他の競合インヒビター)、およびCD18またはCD18を含有するタンパク質機能をそれらに結合せずに阻害する物質(例えば抗−イディオタイプ抗体)を称する。
【0065】
本明細書で使用するように、「促進因子」は哺乳動物CD18タンパク質に特徴的な少なくとも1つの機能を促進(誘導し、引き起こし、強化し、または増加する)する物質である(例えばヒトCD18:例えば走化性の刺激、エキソサイトーシスまたは白血球による炎症メディエータの放出)。用語促進因子は、CD18またはCD18を含有するタンパク質に結合するアゴニストを含む物質(例えば、抗体、他の種に由来する天然のリガンドの相同体)、およびCD18またはCD18を含有するタンパク質機能をそれらに結合せずに促進する物質(例えば会合タンパク質の活性化による)を称する。好適な態様では、アゴニストは天然のリガンドの相同体以外である。
【0066】
このように本発明は、例えばリガンド、インヒビター、促進因子および哺乳動物CD18レセプターまたはそれらの機能的変異体に結合する他の物質を含む、哺乳動物CD18タンパク質と結合する作用物質を検出または同定する方法にも関する。この方法に従い、試験する作用物質、本明細書に記載する抗−CD18抗体(例えば1B4、1B4と同じかまたは類似するエピトープ特異性を有する抗体、およびそれらのCD18−結合フラグメント)、および哺乳動物CD18タンパク質、CD18を含有するタンパク質、またはそれらのリガンド結合変異体を含んで成る組成物を、抗−CD18抗体がタンパク質に結合するために適する条件下で合わせ、そして抗体とタンパク質との結合を本明細書に記載する方法または他の適当な方法に従い直接的または間接的に評価する。適当な対照(例えば試験する作用物質の不存在下)に比べて、形成された複合体の量が低下すれば、作用物質が該レセプターまたは変異体に結合することを示す。タンパク質を含んで成る組成物は、タンパク質を持つ、または含んで成る細胞の膜画分であることができる。抗−CD18抗体を放射性同位体、スピン標識、抗原またはエピトープ標識、酵素標識、蛍光基または化学発光基を用いて標識することができる。
【0067】
上記のアッセイは、単独で、あるいは各々または他の適当な方法を組み合わせて使用して、哺乳動物CD18タンパク質に結合するリガンドまたは他の物質、および哺乳動物CD18タンパク質または変異体のインヒビターまたは促進因子を同定することができる。本発明のインビトロ法を高処理量スクリーニングに適用させ、ここで多数のサンプルを処理することができる(例えば96−ウェル形式)。高処理量スクリーニングに適当なレベルで哺乳動物CD18(例えばヒトCD18)を発現している細胞を使用することができ、すなわちこれらの細胞は哺乳動物CD18タンパク質のレセプターに結合するリガンドまたは他の物質、およびインヒビターまたは促進因子を同定および/または単離するために大変価値がある。CD18またはCD18を含有するタンパク質の発現は、種々の方法で監視することができる。例えば発現はそのようなタンパク質に結合する本発明の抗体を使用して監視することができる。また市販されている抗体を使用して、CD18を含んで成る抗原−またはエピトープ−標識した融合タンパク質(例えばFLAG標識レセプター)を検出することができ、そして所望のレベルで発現している細胞を選択できる。
【0068】
哺乳動物CD18タンパク質またはそれらの機能的変異体をコードする核酸を発現系に組み込んで、CD18タンパク質またはCD18を含有するタンパク質を生成することができる。哺乳動物CD18タンパク質または変異体をコードする組換え核酸を含んで成る構築物で安定に、または一時的にトランスフェクトされた細胞中で、あるいはレセプターを含有する細胞画分中(例えば、トランスフェクトされた細胞に由来する膜画分、タンパク質を取り込んだリポソーム)で発現されるタンパク質のような単離された、組換えの、またはその両方のCD18タンパク質、CD18を含有するタンパク質、またはこれら1つの変異体は、CD18機能に関する試験に使用することができる。所望によりタンパク質はさらに精製することができる。CD18機能の試験は、インビトロまたはインビボで行うことができる。
【0069】
単離された、組換えの、またはその両方のヒトCD18のような哺乳動物CD18タンパク質、CD18を含有するタンパク質またはこれらの1つの機能的変異体は、本発明の方法に使用することができ、ここで化合物の効果が本明細書に記載するレセプター機能を監視することにより、または他の適当な技法を使用して評価される。例えば安定なまたは一過性のトランスフェクション体(例えばバキュロウイルスが感染したSf9細胞、マウスL1.2pre−B細胞の安定なトランスフェクション体)を結合アッセイに使用することができる。例えば走化性アッセイには、Jurkat 細胞または走化性となることができる他の適当な細胞の安定なトランスフェクション体(例えばマウスL1.2pre−B細胞)を使用することができる。
【0070】
本発明の方法に従い、化合物は個別にスクリーニングされることができ、または1以上の化合物を本明細書の方法に従い同時に試験することができる。化合物の混合物を試験する場合、記載する工程により選択される化合物を(適当に)分離し、そして適当な方法(例えばPCR、シークエンシング、クロマトグラフィー、質量分析)により同定することができる。試験サンプル中の1以上の化合物(例えばリガンド、インヒビター、促進因子)の存在も、これらの方法に従い決定することができる。
【0071】
組み合わせ化学合成または他の方法により生成される化合物の大きな組み合わせライブラリー(例えば有機化合物、組換えまたは合成ペプチド、「ペプトイド(peptoids)」、核酸)を試験することができる(例えばZuckerman,R.N.et al.,J.Med.Chem.,37:2678−2685(1994)およびそこに引用されている技術文献を参照にされたい;またOhlmeyer,M.H.J.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:10922−10926(1993)および標識した化合物に関してDeWitt,S.H.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6909−6913(1993);Rutter,W.J.et al.米国特許第5,010,175号明細書;Huebener,V.D.et al.,米国特許第5,182,366号明細書;およびGeysen,H.M.、米国特許第4,833,092号明細書を参照にされたい)。本方法により組み合わせライブラリーから選択される化合物が独自の標識を持つ場合、クロマトグラフィー法による個々の化合物の同定が可能である。
【0072】
1つの態様では、ファージ展示法を使用する。例えば哺乳動物CD18タンパク質、CD18を含有するタンパク質またはこれらの1つの機能的変異体、抗−CD18抗体、およびポリペプチドを展示するファージ(例えば単一ファージ、またはライブラリーのような複数または多様(multiplicity)なファージ)を、抗体がCD18を含有するタンパク質/変異体と結合するために適当な条件下で混合することができる(例えば適当な結合バッファー中で)。抗体と競合し、そしてタンパク質と結合することができるファージは標準的な技法または他の適当な方法を使用して検出または選択することができる。結合したファージは適当な溶出バッファーを使用してレセプターから離すことができる。例えばイオン強度またはpHの変化によりファージの放出を導くことができる。あるいは溶出バッファーは放出成分を含んで成ることができ、または成分は化合物(例えば結合を競合的に阻害するリガンド、インヒビターおよび/または促進因子のような展示するペプチドとCD18を含有するタンパク質/変異体との結合を破壊することができる1以上の化合物)との結合が破壊するように設計することができる。場合により選択工程を繰り返すことができ、または他の選択工程を使用してタンパク質/変異体と結合するファージをさらに濃縮することができる。展示されたポリペプチドを特性決定することができる(例えばファージDNAをシークエンシングすることにより)。同定されたポリペプチドを生成し、そしてさらに結合について、そしてインヒビターまたは促進因子の機能について試験することができる。安定性が増大し、または他の所望の特性を有するそのようなペプチドの同族体を生成することができる。
【0073】
1つの態様では、無作為の配列の核酸によりコードされるアミノ−末端ペプチドを持つコートタンパク質を含んで成る融合タンパク質を発現し、そして展示するファージを生成することができる。CD18を含有するタンパク質/変異体を発現する適当な宿主細胞および抗−CD18抗体をファージと合わせ、結合したファージを選択し、回収し、そして特性決定する。(Gタンパク質共役レセプターと使用されるファージ展示法を検討しているDoorbar and Winter,J.Mol.Biol.244:361(1994)、および1997年3月6日に公開された国際公開第97/08320号明細書(Morphosys)を参照にされたい)。
【0074】
哺乳動物CD18タンパク質に結合する有力なリガンドまたは他の物質、またはそのインヒビター、促進因子またはその両方の他の供給源には、限定するわけではないが、ICAM−1、ICAM−2、ICAM−3、C3bi、第X因子、フィブリンおよびフィブリノーゲンの自然に存在する、合成の、または組換え変異体を含む既知のCD18リガンドの変異体、他の誘引物質またはケモカインのような物質、それらの変異体、低分子量有機分子、他のインヒビターおよび/または促進因子(例えば抗−CD18抗体、アンタゴニスト、アゴニスト)、インヒビターおよび/または促進因子(例えばアンタゴニストまたはアゴニスト)、およびCD18機能を阻害することができる適当なレセプターペプチドまたは同族体のような哺乳動物CD18の可溶性部分を含む。
炎症のモデル
治療薬としてインビボで抗−CD18抗体の効果を評価するために使用することができる炎症のインビボモデルが利用可能である。例えば哺乳動物のCD18と反応性のケモカインおよび抗体またはそれらのフラグメントの、ウサギ、マウス、ラット、モルモットまたはアカゲザル(好ましくはカニクイザルのような霊長類)のような適当な動物への皮内注射で白血球の浸潤を監視することができる(例えばVan Damme,J.et al.,J.Exp.Med.,176:59−65(1992);Zachariae,C.O.C.et al.,J.Exp.Med.,171:2177−2182(1990):Jose,P.J.et al.,J.Exp.Med.,179:881−887(1994)を参照にされたい)。1つの態様では、皮膚の生検を白血球の浸潤について組織学的に評価する(例えば好酸球、顆粒球)。別の態様では、走化性および管外遊出が可能な標識した細胞(例えば111Inで標識した哺乳動物CD18を発現している安定にトランスフェクトされた細胞)を動物に投与する。例えば評価する抗−CD18抗体は、リガンドまたはアゴニストを試験動物に投与する前、同時または後のいずれかに投与することができる。インヒビターの不存在下での浸潤の程度と比べて、抗体の存在下での浸潤の程度の減少は、阻害の指標である。
診断、治療および予防法
Mac−1白血球細胞−表面抗原(およびLFA−1、p150,95およびCD11d/CD18のような他のCD18を含有するタンパク質)のCD18サブユニットに特異的に結合する分子が、白血球と血管内皮との相互作用を阻害することが見いだされた。そのような分子により阻害される相互作用には
・白血球と血管内皮との結合
・血管内皮を通る白血球の移動
・内膜血管組織への白血球の浸潤
・血管組織中の白血球から走化性因子の放出
・血管組織中の白血球から増殖因子の放出
・血管組織から、白血球の結合に付随する走化性因子の放出、および
・血管組織から、白血球の結合に付随する増殖因子の放出
を含む。
【0075】
このようにCD18を含有するタンパク質(特にCD18を含有する白血球細胞表面抗原を含む)の相互作用を阻害するためにCD18に特異的に結合する分子を、このような白血球−血管内皮相互作用を阻害、防止または逆転させるために使用することができる。
【0076】
本発明はこのように、哺乳動物の血管中の狭窄(再狭窄を含む)を抑制し、さらに防止する方法を含む。この方法は哺乳動物に、CD18を含んで成る哺乳動物の少なくともCD18タンパク質部分に特異的に結合する抗−CD18抗体を投与することを含んで成る。これにより哺乳動物の血管の狭窄が抑制される。実質的に同じ方法を使用して、哺乳動物の血管内の既往の狭窄および関連する障害を軽減することができる。例えばこの方法を使用してヒトの冠状および脳血管の狭窄または再狭窄を抑制または防止することができ、あるいはそのような血管内の既往の狭窄を軽減することができる。そのような狭窄に関連する症状および障害も同様に抑制、防止または軽減することができる。狭窄および再狭窄に付随する症状には、例えば狭窄した部位から上流または下流に位置する組織中の短期−および長期−の虚血、ならびに付随する疼痛および組織壊死を含む。狭窄に関係する障害の例には、狭窄の存在によりもたらされ得る障害(例えば心筋梗塞)および狭窄が単なる障害の症状である障害(例えば高コレステロール血症および付随するアテローム硬化症)の両方を含む。
【0077】
本明細書に記載する方法を使用して抑制し、防止し、または軽減することができる狭窄には、外科的、血管形成的または血管内皮を混乱される他の意図的な介入を含む。そのような介入の例には、例えば血管撮影法、血管形成術(例えば、バルーン、アテレクトミー、レーザー血管形成術またはロタブレーション(rotablation)およびステント留置を含む、または含まない他の適当な方法)、動脈内膜切除術、冠状動脈バイパス術、ステント留置(例えば血管内ステント、冠状ステント)、他の血管介入法(例えば血管外科医術、血管移植、末梢ステントの散開(deployment))、補綴バルブまたは管の挿入(例えば自己、非−自己または合成血管移植)、臓器、組織または細胞の移植、および静脈内近接照射療法を含む。特別な観点では、この方法を使用して経皮経管的冠状動脈形成術(PTCA)のような冠状動脈介入術、あるいはステントの留置を含む血管介入術(例えばPTCAに続いて1以上の冠状動脈を含む血管内ステントの留置)後に起こる狭窄または再狭窄を抑制、防止、または軽減するために使用することができる。
【0078】
本明細書に記載する方法を使用して抑制、防止または軽減することができる狭窄症を導き得る種類の血管内皮の混乱には、例えば血管内皮の露出、血管組織層の他の血管組織層からの切開(例えば内皮、内膜、弾性層等)、血管の内膜組織層の破壊、および血管組織層の意図的な切開(例えば切断(cutting)血管形成バルーンを使用する)を含む。
【0079】
種々の既知の方法を使用して患者の血管傷害を診断することができる。そのような方法の例には、血管の特定領域を通って流れる染料のX−線透視検査、臨床的判断に基づく疼痛のような症状の存在、または身体検査により示される兆候を含む。あるいは傷害は上で検討した外科的または他の意図的な血管介入の1つを行うと生じるか、あるいは患者の血管の混乱(例えばアテローム硬化症)に伴うことが知られている疾患または障害の診断後に生じると思われる。
【0080】
これらの狭窄を抑制し、そして軽減する方法で使用することができる抗−CD18抗体(1つまたは複数)は、本明細書に記載する実質的に任意の抗−CD18抗体であることができる。例えば抗体はモノクローナル抗体1B4または1B4と同じエピトープ特異性を表す抗体(すなわち1B4が結合するCD18の同じエピトープと特異的結合する)であることができる。このように1つの態様では、使用する抗体は実質的CD18を含有するタンパク質のCD18部分にのみ特異的に結合する(例えば実質的にMac−1白血球細胞−表面抗原のCD18サブユニットにのみ結合する)。
【0081】
特定の操作理論に拘束されないが、抗−CD18抗体とCD18を含有するタンパク質との結合はタンパク質の天然のリガンドとタンパク質との結合を阻害すると考えられる(例えばMac−1とICAM−1との結合が阻害され得る)。CD18を含有するタンパク質とそれらの天然のリガンドとの結合の阻害は、通常、そのような結合に付随する生理学的効果(例えば白血球の血管内皮への付着)を抑制する。生理学的効果が狭窄に関係する時、狭窄は生理学的効果を阻害することにより抑制、防止または軽減される。すなわち、抗−CD18抗体の狭窄およびそれらに付随する症状および障害に及ぼす阻害/防止/軽減効果は、白血球の細胞表面CD18含有タンパク質と血管細胞の表面上の、血管細胞の周囲の細胞外マトリックス中、またはその両方のレセプター分子との間の結合により媒介される、白血球と内皮および内膜血管組織細胞との間の相互作用の阻害に起因し得る。
【0082】
抗−CD18抗体による好中球と血管細胞(特に血管内皮細胞)との間の相互作用の阻害が、そのような抗体を投与することに起因し得る有意な程度の抗−狭窄効果の原因であると考えられる。それでもなおCD18を含有するタンパク質は、リンパ球、単球、顆粒球、T細胞および好塩基球を含む他の白血球の細胞表面上に生じると認識されている。CD18を含有するタンパク質と結合することにより、抗−CD18抗体はこれらの細胞の狭窄症に関連する症状および障害への貢献を阻害することができ、そしてさらにこれらの細胞の狭窄症自体への貢献も阻害できる。
【0083】
本明細書に記載する方法の操作性はその操作性を説明するために示された理論に依存しないが、以下は真実であると考えられる。インテグリンはCD18を含む種類の白血球の細胞表面タンパク質であると認識されている。各インテグリンはCD11アイソタイプ(すなわちCD11a、CD11b、CD11cおよびCD11dの1つ)単量体およびCD18単量体から成るヘテロ二量体である。インテグリンは他の細胞の細胞−表面タンパク質および細胞外マトリックスのタンパク質と特異的に結合する。インテグリンが特異的に結合すると知られているタンパク質には、ICAM−1、ICAM−2、ICAM−3、C3bi、第X因子、フィブリンおよびフィブリノーゲンを含む。例えばMac−1抗原(CD11b/CD18)は、ICAM−1、C3bi、第X因子、フィブリンおよびフィブリノーゲンに特異的に結合することが知られている。抗−CD18抗体とインテグリンとの結合は、インテグリンと1以上のこれらの因子との間の結合を阻害することができ、その幾つかは血管の細胞外マトリックスおよび血管細胞の表面上(血管内皮細胞を含む)で起こる。インテグリンと1以上のこれらのリガンドの結合が白血球と血管組織との結合を促進する限り、血管組織を通るまたはその中への白血球の浸潤、白血球または血管細胞のいずれかからの走化性(誘引物質またはケモリペラント)因子または増殖因子の放出、あるいは狭窄症に関連する他の症状は、そのような結合の阻害がそのような症状を軽減し、抑制し、さらに逆転する。
【0084】
本明細書に記載する抗−CD18抗体は、狭窄の処置後に再狭窄が再発するかまたは再発する危機にある血管を含む、狭窄が生じる実質的に任意の哺乳動物の血管中の狭窄を処置するために使用することができる(例えば、通常のまたは切断バルーン血管形成術を使用する経皮経管的冠状動脈形成術の後の冠状動脈で)。哺乳動物の血管は好ましくはヒトの血管、特にヒトまたはヒト化抗体(例えばモノクローナル抗体1B4)が使用される時のヒトの血管である。
【0085】
狭窄(および再狭窄)がよく起こる血管には、外科的または血管形成術的介入により、または外傷的傷害(押し潰される(crushing)種類の傷を含む)によるような血管内皮が外傷的に混乱した血管を含む。外傷的に混乱した内皮を有する血管の例には、互いに移植した血管(すなわち、移植する切片の起源および宿主の同一性(1つまたは複数)にかかわらず、移植された管切片および移植される切片の両方を含む)、外科的に穿刺または切り込みを入れられた血管、中で血管形成バルーンまたは他の膨張手段が膨張した血管、血管の一部または血管中のプラークまたは他の障害物を除去するためにレーザー血管形成術を施した部分を含んで成る血管、ステントが留置された血管等を含む。
【0086】
狭窄は内皮への外傷的傷害を経験しなかった血管でも起こることが知られているが、ここでは内皮の漸進的悪化または分解が起こり、しばしば内膜の肥厚化、細胞、脂質、ミネラルまたは他の細胞外材料または両方の蓄積が伴う。血管内皮の漸進的分解を導く疾患の例には、アテローム硬化症および動脈硬化を含む。アテローム硬化症は少なくとも一部は血管内皮の傷害部位への白血球の局在化に起因し、続いてプラーク形成、そして最終的に狭窄すると考えられ、本明細書に記載する防止および治療法は狭窄が起こる前に、あるいは疾患の大変早い段階でアテローム硬化症を抑制または防止するために使用することができる。さらにそれらの治療法は、例えばアテローム硬化症のプラークの収縮または消散を誘導することにより、および血管内皮の傷害部位への白血球の局在化を阻害することにより既往のアテローム硬化症を軽減するために使用することができる。すなわち狭窄の「抑制、防止または軽減」には、この障害のさらに比較的早期の段階(切迫した狭窄症が起こるはるか以前に)で、アテローム硬化症の抑制、防止または軽減を含む。
【0087】
本明細書に記載する治療および防止法は、狭窄(または再狭窄)が起こる実質的に任意の血管の狭窄を抑制、防止または軽減するために使用することができ、この方法には白血球と血管組織との相互作用に無関係であると思われる大動脈根および大動脈弁狭窄症のような先天的な狭窄症に必ずしも応用できるとは限らないと理解される。例えば本明細書に記載する方法は、冠状および脳血管の狭窄症を処置し、防止し、または抑制するために使用することができる。
【0088】
本明細書に記載する治療的および防止的方法に使用する抗−CD18抗体は、本開示に記載する任意の種類の抗−CD18抗体であることができる。例えば全抗体を使用することができる(例えば、ヒトCD18に特異的に結合する単離されたマウス抗体)。あるいは抗−CD18抗体は、Fv、Fab、Fab’またはF(abN)2フラグメントのような全抗体のフラグメントであることができる。抗−CD18抗体はヒトから、非ヒト哺乳動物から、非ヒト脊椎動物から、ランダムまたは合成抗体のライブラリーから単離された抗体であることができる。さらに抗−CD18抗体は異なる起源から得たセグメントを含んで成る抗体であることができる(すなわちキメラ抗体)。例として、抗体はCD18に特異的に結合するマウス抗体と同じ領域のアミノ酸配列を有する相補性決定領域を有することができ;同じ抗体は1以上のヒト抗体またはコンセンサスなヒト抗体配列に由来するアミノ酸配列を有する非−相補性決定領域(構造的、枠組または定常領域とも言われる)を有することができる。この抗体はヒト化抗体の例でもある(すなわち、抗体の少なくとも一部は非ヒト起源に由来するが、抗体の少なくとも他の部分はそのアミノ酸配列という意味でヒト抗体により一層近い抗体となるように修飾された抗体)。本明細書に記載した方法または当該技術分野で既知の、または今後開発される方法を使用して、ヒト化される抗−CD18抗体は本開示で記載する任意の方法に使用することができる。
【0089】
本明細書に記載する方法に従い抗−CD18抗体を哺乳動物に投与するために使用する経路および方法は、重要ではない。必要なすべてのことは、抗−CD18抗体が非−変性状態で作用すべき血管の細胞(1つまたは複数)または組織(1つまたは複数)に、あるいは血管の細胞(1つまたは複数)または組織(1つまたは複数)と接触し得る白血球に提供されることである。すなわち抗−CD18抗体を血管組織(例えば血管内膜組織または血管内皮組織)に、組織への注射により、または組織を外科的に露出した後に組織に局所的に適用することにより直接提供することができる。あるいは、そして好ましくは抗−CD18抗体は、抗−CD18抗体を血流に提供することにより哺乳動物に投与することができ、そこから抗体はCD18を含有するタンパク質に血流中に存在する白血球の表面で結合することができる。抗−CD18抗体をリンパへ、脾臓へ、胸腺へ、または哺乳動物中で白血球を見いだすことができる他の部位への投与も使用することができる。
【0090】
可能な場合は、抗−CD18抗体の哺乳動物の血流への提供は好ましくは血管内皮の破壊前に行う(例えば哺乳動物の血管中の外科的または血管形成的介入の前)。しかし抗−CD18抗体は、血管内皮の破壊時に、またはさらにそれらのかなり後でも、特に軽減される狭窄障害が進行中の障害であるか、処置前のかなりの期間に検出できない障害である時(例えばアテローム硬化症)でも哺乳動物に投与することができる。すなわち抗−CD18抗体は、血管組織の傷害前、最中または後に投与することができる。
【0091】
哺乳動物の血中の抗−CD18抗体濃度は、CD18を含有する白血球細胞表面抗原の実質的にすべて、または少なくとも大部分の画分(すなわち、50%、60%、70%、80%、90%または95%以上)が、少なくとも1つの抗体のコピーで占有されていることを維持するために十分なレベルで維持することが有利である。これは哺乳動物に抗−CD18抗体の多用量を投与することにより、または抗体の徐放性組成物を投与することにより達成することができる。抗体含量および投与時期は、日常的な実験により経験的に決定することができる。抗−CD18抗体の半減期(すなわち機能的な寿命)は、投与される哺乳動物により通常生成される抗体に抗−CD18抗体が似ているほど、長くなるだろう。すなわち哺乳動物がヒトである時、投与する必要がある抗−CD18抗体の量、ならびに必要な投与頻度を下げるためにヒトまたはヒト化抗体を使用することが好ましい。
【0092】
典型的には、効果的な量は成人1日あたり約0.01ミリグラムから1日あたり約100ミリグラムの範囲であることができる。好ましくは投薬範囲は1日あたり約1ミリグラムから1日あたり約100ミリグラムの範囲である。抗体およびそれらの抗原−結合フラグメント、特にヒト、ヒト化およびキメラ抗体および抗原−結合フラグメントは、他の種類の治療薬よりも低い頻度で投与できることが多い。例えば抗体の効果的量は、1キログラムの体重あたり約0.01ミリグラムから1キログラムの体重あたり約5〜10ミリグラムの範囲で、毎日、毎週、隔週または毎月投与することができる。
【0093】
本明細書に記載する1以上の抗−CD18抗体を、抗体(1つまたは複数)および狭窄を抑制、防止または軽減するための1以上の抗体の投与を記載する使用説明書(instruction material)を含むキットの状態で包装することができる。この使用説明書はさらに、例えば抗−CD18抗体(1つまたは複数)を含んで成る医薬組成物に関して関連する投薬および投与情報を含むことができる。
【0094】
本明細書に記載する抗−CD18抗体は、CD18を含有するタンパク質を持つ(すなわちそれらの表面上または細胞外の溶媒が接近できる位置に現す)細胞および組織を検出するために使用することができる。抗−CD18抗体は、細胞および組織構造が自然に存在する方向から人工的に再配置されたサンプル(例えば細胞のホモジネート)中に、CD18を含有するタンパク質を検出するためにも使用することができる。細胞、組織または体液(例えば血液)サンプル中のCD18を含有するタンパク質の検出は、そのようなタンパク質を持つ細胞(例えば白血球)の存在を示すことができる。抗−CD18抗体は、抗体(および抗体が結合し得るタンパク質、細胞または組織)の検出を容易にするために、例えば蛍光、着色、酵素または放射性標識(例えばガンマ線を放射する放射性核種のようなガンマ照射線源)を用いて標識することができる。
【0095】
CD18を含有するタンパク質を持つ細胞の存在は、特にサンプルが採取された個体に関して通常よりも高いレベルで、あるいは狭窄症または狭窄症に関連する障害に罹患していない、発症中の、または発症すると前以て診断された患者で自然に起こるレベルより高いか、その範囲のレベルで、サンプルを採取した個体がそのような障害を発症すると前以て診断し、発症しているか、または現在罹患していることを示すことができる。医療現場の人に都合が良いように、このキットの成分(すなわち1以上の抗−CD18抗体および使用説明書)は、個体から得たサンプル中にCD18を含有するタンパク質の存在を評価するキットの状態で包装することができる。
【0096】
本明細書に記載する抗−CD18抗体は、調査応用を含む様々な応用に有用である。1つの態様では、抗体を適当な標識(例えば蛍光標識、化学発光標識、同位体標識、抗原またはエピトープ標識または酵素標識)で標識する。例えば標識はCD18タンパク質、CD18を含有するタンパク質、それらの天然の変異体またはそれらの部分を単離および/または精製し、そしてCD18構造(例えば立体配置)および機能を研究するために使用することができる。
【0097】
さらに本発明の種々の抗体を使用してCD18を検出するか、または例えばT細胞(例えばCD26+細胞、CD45RO+細胞)、好中球、好酸球上、あるいはレセプター遺伝子でトランスフェクトした細胞上のタンパク質発現を測定することができる。このように、診断または調査目的で抗体はセルソーティング(例えばフローサイトメトリー、蛍光活性化セルソーティング)のような応用に用途を有する。
【0098】
典型的には診断アッセイには、抗−CD18抗体とCD18またはCD18を含有するタンパク質との結合から生じる複合体の形成を検出する必要がある。診断目的には、抗体(1つまたは複数)は標識するか、または非標識であることができる。例えば抗体は直接標識することができる。限定するわけではないが、放射性核種、フルオロホア、酵素、酵素基質、酵素のコファクター、酵素インヒビターおよびリガンド(例えばビオチン、ハプテン)を含め種々の標識を使用することができる。当業者には多数の適切なイムノアッセイが知られている(例えば米国特許第3,817,827号;同第3,850,752号;同第3,901,654号および同第4,098,876号明細書を参照にされたい)。非標識である時、抗−CD18抗体は例えば凝集アッセイのように適当な手段を使用して検出することができる。非標識抗−CD18抗体は、抗−CD18抗体と特異的に結合する(例えば抗−イディオタイプ抗体または非標識免疫グロブリンに特異的な他の抗体)標識抗体(例えば第2抗体)のような抗体を検出するために使用することができる1以上の適当な試薬、あるいは他の適当な試薬(例えば標識プロテインA)と組み合わせて使用することができる。
【0099】
1つの態様では、本明細書に記載する抗−CD18抗体は酵素イムノアッセイに使用することができ、ここで主題の抗体またはそれと特異的に結合する抗体を酵素に連結する。哺乳動物のCD18タンパク質を含んで成る生物サンプルが抗体(1つまたは複数)と合わせられる時、抗−CD18抗体とCD18タンパク質との間で結合が起こる。1つの態様では、ヒト血液のような哺乳動物のCD18タンパク質を発現している細胞を含有するサンプルと抗体と合わせ、そして抗体とヒトCD18タンパク質を持つ細胞との間に結合が起こる(すなわちエピトープを含んで成る細胞が抗−CD18抗体に認識される)。これらの結合した細胞は非結合試薬と分けることができ、そして抗体に結合した細胞の存在は、例えばサンプルを、酵素が作用した時に色または他の検出可能な変化を生じる酵素の基質と接触させることにより測定することができる。別の態様では、主題の抗体は非標識であることができ、そして手段の抗体を認識する第2の標識した抗体を加えることができる。
【0100】
生物サンプル中に哺乳動物のCD18タンパク質の存在を検出するために有用なキットも、本開示の観点で調製することができる。そのようなキットは、抗−CD18抗体および抗体とCD18との間の複合体の存在を検出するために適する1以上の補助的な試薬を含む。抗体は凍結乾燥状態で、単独または他のエピトープと特異的に結合するさらなる抗体と組合わせて提供することができる。標識または非標識であることができる抗体は、付属の材料(例えばTris、リン酸および炭酸バッファーのようなバッファー、安定化剤、賦形剤、殺生物剤、不活性タンパク質{例えばウシ血清アルブミン}、またはこれら幾つかの組み合わせ)と共にキットに含むことができる。例えば抗体は付属の材料との凍結乾燥混合物として提供することができ、または付属の材料は使用者が合わせるように別に提供することができる。一般にこれらの付属材料は、活性な抗体の量に基づき約5重量%未満で存在し、そして抗体濃度に基づき、少なくとも約0.001重量%未満で存在し得る。キットに第2抗体が含まれる時、第2抗体は抗−CD18抗体と特異的に結合することができ、第2抗体はキット中に例えば別のバイアルまたは容器中で提供され得る。第2抗体が存在するならば、それを標識することができ、そして上記の抗体配合物に類似する様式で配合することができる。
【0101】
同様に、本発明は細胞による哺乳動物CD18またはCD18の部分の発現を検出および/または定量する方法に関する。この方法に従い、細胞またはそれらの画分(例えば膜画分)を含んで成る組成物を抗−CD18抗体(例えばモノクローナル抗体1B4)と、抗体とタンパク質との結合に適する条件下で接触させ、そして結合を監視する。抗体の検出は抗体とCD18との間の複合体の形成の指標であり、タンパク質の存在を示す。抗体と細胞との結合は、例えば「結合アッセイ」の見出しの元で上記のように測定することができる。この方法を使用して個体から得た細胞上のCD18の発現を検出することができる(例えば血液、唾液または他の体液のようなサンプル中の)。T細胞または単球の表面上のCD18の発現レベルも、例えばフローサイトメトリーにより測定することができ、そして発現のレベル(例えば染色強度)を、疾患の疑い、進行または危険性と相関させることができる。
【0102】
本明細書に記載する抗−CD18抗体の別の用途は、哺乳動物の血液から抗−CD18抗体と特異的に結合する白血球を除去することである。個体の血流からそのような細胞を除去する(または少なくとも数を減らす)ことにより、個体の血管中の狭窄および関連する症状および障害を抑制、防止または軽減することができる。例として、抗−CD18抗体を固体支持体に固定し、そして個体から得た血液を支持体と接触させた後(ここでCD18タンパク質を持つ細胞は支持体に結合する)、個体の血流に血液を戻すことができる。
投与モデル
本明細書に記載する1以上の抗−CD18抗体は、単独または別の薬剤もしくは試薬と(事前に、同時に、または後に)組み合わせて、適切な経路により個体に投与することができる。例えば本発明の抗体は別のモノクローナルまたはポリクローナル抗体と(例えば限定するわけではないが細胞表面免疫グロブリンレセプターおよびセレクチンを含む他の白血球細胞表面抗原に結合する抗体と組み合わせて)、または予防的もしくは治療的処置に使用する市販のガンマグロブリンおよび免疫グロブリン生成物のような既存の血漿生成物と組み合わせて使用することができる。抗−CD18抗体は、抗生物質および/または抗微生物剤と一緒に与えられる別個に投与される組成物として使用することができる。抗−CD18抗体は抗−ウイルス剤、免疫抑制剤(例えばシクロスポリンAのようなカルシニューリンインヒビター;プレドニゾンまたはメチルプレドニゾロンのようなグルココルチコイド;およびアザチオプリンまたはマイコフェノール酸のような核酸合成インヒビター)、インターフェロンおよびTh2−生産サイトカインのようなサイトカイン、および副腎皮質刺激ホルモンのようなホルモンと組み合わせて投与することもできる。
【0103】
効果的な量の抗体またはフラグメント(すなわち1以上の抗体またはフラグメント)を投与する。効果的な量は、CD18機能の阻害に十分な量となるような所望の治療(予防を含む)効果を投与の条件下で達成するために十分な量であり、そしてこれによりヒトにおける狭窄症または狭窄症に関係する症状または障害を抑制、防止または軽減する。
【0104】
種々の投与経路が可能であり、それには必ずしも限定する必要はないが、処置する疾患または症状に応じて経口、食事、局所、非経口(例えば静脈内、動脈内、筋肉内、皮下注射)、吸入(例えば気管内、眼内、鼻内または経口吸入、点鼻)、眼内を含む。他の適当な投与法には、再充填可能または生分解性デバイスおよび緩効性ポリマーデバイスを含むこともできる。本発明の医薬組成物は他の薬剤との併用療法の一部として投与することもできる。
【0105】
投与すべき抗−CD18抗体の製剤は、選択した投与経路および製剤(例えば溶液、乳液、カプセル)に従い変動するだろう。投与すべき抗−CD18抗体を含んで成る適切な医薬組成物は、生理学的に許容される賦形剤またはキャリアー中に調製することができる。抗体の混合物を使用することもできる。溶液または乳液に適当なキャリアーは、例えば塩水および緩衝化媒質を含む水性またはアルコール性/水溶液、乳液または懸濁液を含む。好適な賦形剤は、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸化リンゲルまたは固定油を含む。様々な適切な水性キャリアーが当業者には知られており、それらには水、緩衝水、緩衝塩水、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)、デキストロース溶液およびグリシンを含む。静脈内賦形剤は種々の添加剤、保存剤または流体、栄養または電解質補充物を含むことができる(一般に、レミングトンの製薬科学(Remington’s Pharmaceutical Science)、第16版、Mack、編集、1980を参照にされたい)。組成物は生理学的条件に近づけることが必要である時、pH調整剤および緩衝化剤および毒性調整剤のような場合により医薬的に許容される補助物質、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムおよび乳酸ナトリウムを含むことができる。本発明の抗−CD18抗体フラグメントは保存用に凍結乾燥させ、そして技術的に既知の凍結乾燥および再構成技法に従い、使用前に適当なキャリアー中で再構成することができる。選択した媒質中の有効成分(1つまたは複数)の最適濃度は、当業者に周知な手法に従い経験的に決定することができ、そして最終的には所望する医薬製剤に依存するだろう。吸入には、抗体またはフラグメントを可溶化し、そして投与に適するディスペンサー(例えば噴霧器、ネブライザーまたは加圧型エアゾールディスペンサー)に充填することができる。
【0106】
冠詞“a”および“an”は、本明細書では1以上(すなわち少なくとも1)の名詞の文法的目的語を指すために使用する。例として「要素(an element)」は1以上の要素を意味する。
【0107】
これから本発明を以下の実施例を参照にして記載する。この実施例は具体的説明の目的でのみ与え、そして本発明は実施例により限定されることはないが、ここに提供する教示の結果として明白なすべての変更態様を包含する。
【0108】
【実施例】
この実施例で与える実験において、カニクイザルの再狭窄モデルでヒトCD18と特異的に結合するマウスモノクローナル抗−CD18抗体の使用を評価した。
【0109】
カニクイザルは体重に基づき、IgG2aアイソタイプ対照(S−S.1)として無関係なマウスモノクローナル抗体(mAb)および抗−ヒトCD18mAb(1B4)のいずれかの処置を受ける群に無作為に分けた。動物には1−日目にmAbの負荷用量を静脈内に投与し(IV)、続いて1〜13日まで毎日SC注射を行った。1日目にすべての動物が再狭窄症のモデルとして両肢にバルーン血管形成術が誘導する腸骨大動脈内皮露出を行い、続いて静脈内ステントを留置した。動物は試験期間の終わりに安楽死させ、潅流固定を可能とし、そして腸骨大動脈および他の組織サンプルを集めた(表Aを参照にされたい)。
【0110】
処置の効力はステント留置および実験の終了時に定量的な血管形成の使用、および腸骨大動脈組織の免疫組織学的および形態計測的評価により評価した。血液サンプルは血清mAbレベル(薬物動態学)、白血球mAb結合(薬力学)、抗−mAbアンチグロビン応答(免疫原性)、ならびに血液学および血清化学(安全性)をアッセイするために周期的に集めた。安全性は試験期間中、注入中のバイタルサインおよび体重、臨床的所見および注射部位の所見を記録することによりさらに評価した。他の組織は正当な理由が生じるまで評価しなかった(表Bを参照にされたい)。
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】
【0113】
a=第3サンプルまで優先順位を決定する。100μLアリコートとして凍結(−70℃)。
b=第1サンプルとして優先順位を決定する。
c=集めた第2サンプルまで優先順位を決定する。ミクロテイナー(microtainer)を使用する。
d=第4サンプルまで優先順位を決定する。1つのアリコートとして残りの血清を凍結(−70℃)。
特に記載しない限り、手順(バイタルサイン、血管形成およびNx)は処置の前に行った。
略号:Abs=抗体;BL=ベースライン;BW=体重;Hem=血液学;IMG=免疫原性;mAb=モノクローナル抗体;Nx=安楽死、潅流および組織回収;PD=薬力学;PK=薬物動態学;前/後=注入前および後;SC=血清化学;X=実施した。
疾患モデル
アテローム硬化症は脂質濃度が高い繊維−炎症プラークが冠状血管壁に蓄積し、管腔を塞ぎ、そして狭め(「狭窄し」)、これにより心臓組織への酸素を含む血液供給が制限され、そして急性の心筋疼痛および/または梗塞をもたらす疾患である。障害が起きた冠状血管に取り組む現在の医学的プラクティスには、経皮径管的冠状動脈形成術(PCTA)を介するバルーンカテーテルを用いた血管の機械的拡張、しばしばそれに続いて管腔の直径を維持するために血管内ステントの留置が関与する(1)。かなりの数の患者では、後期(より遅い)再狭窄ではこの手法の効果が制限される(2)。新内膜(neointimal)過形成、血管平滑筋細胞(VSMC)増殖および浸潤性白血球が再狭窄の領域を特徴付ける。このプロセスに関与する可能なメカニズムには、血小板凝集(血栓症)、内皮細胞活性化およびVSMC増殖および移動が関与する。アテローム硬化症および/または再狭窄症の様々な動物モデルがマウス、ラット、ウサギ、ブタおよび非ヒト霊長類(カニクイザルおよびヒヒ)のような種で開発された。この実験で使用する新内膜過形成、バルーン血管形成術が誘導する内皮の露出、それに続くステントの留置のモデルは、以前にウサギで使用され、再狭窄症に関与する幾つかのメカニズムを解明した(4)。
試験材料
1B4は、ヒト、非ヒト霊長類およびウサギの好中球上のCD18を認識するマウスIgG2a mAbである。1B4は抗体を生産する市販されている細胞系を使用して生成した(ATCC寄託番号 TIB10164)。S−S.1は、ヒトジの赤血球細胞S−S.1に対するマウスIgG2a mAbである。S−S.1は抗体を生産する市販されている細胞系を使用して生成し(ATCC寄託番号 TIB111)、そして無関係なアイソタイプが合った対照抗体として使用する。
用量および投薬処方
用量および投薬処方は、それらが少なくとも14日を通して白血球上のCD18の連続飽和を維持するために必要とされる用量より過剰な、頂点と谷の血清mAb濃度をもたらすと思われるので選択した。中和サル抗−マウスmAbアンチグロブリン(MAMA)応答がこれらの動物で発生し、そしてこれらの応答が血清または細胞に結合したmAbレベル、そしてすなわちPK、PDおよび/または効力終点に影響を及ぼし得ると考えられる。
バイタルサインの監視
これらのmAbは多くの他の抗体のように、初期注入中のサイトカインの放出、または沈殿ADCC(抗体−依存的な細胞性細胞傷害性)または補体が媒介する細胞溶解に関係する「第1−用量効果」を誘導する可能を有する。これらの効果は、通常は生命を脅かさない低血圧および気管支収縮のような一過性の悪い生理学的変化をもたらし得る。バイタルサインを監視することによりそのような変化の検出が可能である。
試験系
マウス抗−ヒトCD18 mAbもカニクイザルCD18に結合する。
動物数
この実験に使用した動物の数は、結果を評価するために十分な数であった。ウサギのモデルでは以前に4匹の動物/群で効力の検出が可能であったが(4)、サルでは血管傷害およびそれに対する応答においてより大きな程度の変動の可能性から、この実験では5匹の動物/群を使用することが適当であると考えた。
【0114】
この実施例で与えるこの実験で使用した試験動物および製剤は、これから以下に記載する。
特性決定
mAb溶液は使用前に生化学的に特性決定した(表Cを参照にされたい)。
安定性
試験物のサンプルは、投薬が完了した試験部位から回収し、そして生化学的に特性決定した。元の特性決定に対してサンプル中の有意な変化は検出されなかった。
用量の配合法
使用する日(1または複数)に、凍結したmAb溶液の適当数のバイアルを室温とし、そして必要に応じて賦形剤(塩水)で適当な容量に希釈して、すべての動物にIV(60ccのシリンジ中の30mL)またはSC(3ccのシリンジで3mL)投与するために均一な全容量を提供した。解凍日をバイアル(1または複数)に記録した。未使用(解凍、開いた)のバルクなmAb溶液は後日(1または複数)使用するために冷蔵(2〜8℃)した。
用量配合サンプル
用量配合サンプルは回収しなかった。
廃棄
残った希釈した用量配合物は捨てた。
【0115】
【表3】
【0116】
この実施例に与える実験で使用した試験系をこれから記載する。
動物
種:マカカ ファスシクラリス(Macaca fascicularis)
一般名:カニクイザル
動物数:15
年齢および性別:若い−成体のオス
処置開始時の体重:〜4kg
起源および選択
動物は試験施設により認可された供給源から得た。動物は試験時に利用可能なものから選択し、そして獣医師により良好な健康状態であると測定された。すべての動物が隔離期間を完了し、そして各動物を独自の番号により識別した。この実験で使用したすべての動物は実験の終了時に安楽死させた。
動物の世話
試験施設は実験動物の世話の評価および認可に関する協会(Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care(AAALAC))により認可され、そして米国農務省(USDA)により、動物保護法(Aminal Welfare Act)、USDA規制および国立調査審議会(USDA regulation and National Reaearch Council:NRC)のガイドラインに従い実験動物での調査を行うことを認められた(3、4、5)。本明細書に記載する動物の活動は試験施設の研究用の動物の世話および使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee:IACUC)により見直され、そして認められた。
【0117】
動物管理、食事、水および環境条件は、NRCのガイドライン(17)および試験施設の標準操作手順(SOPs)に従い行った。
【0118】
この実施例に与える実験で使用した材料および方法をこれから記載する。
無作為化
実験に適当であると思われる動物は、体重により処置群に無作為化し、そして各群内で連続する独自の確認番号を割り当てた。動物が処置を受けるために割り当てられる順序は、手法的な片寄りを最小にするために確認番号に基づき群間を回るようにした。
身体的拘束に対する順化
動物は身体的拘束のロープおよびカラー法に順化し、そして処置の開始前に霊長類の椅子に拘束した。
鎮静化
動物は、取り扱い、血液採取または他の技術的手法を行い易くするために、必要に応じて鎮静させた(実行するためにケタミンHCl、5〜10mg/kg、IM)。
絶食
すべての食料は鎮静化または安楽死前、一晩は与えなかった。水は自由に与えた。
用量の算出
用量は1−日目の体重に基づき算出した。用量は処置期間を通じて維持した。
投薬
すべての処置は、イン−ラインまたはシリンジ−チップの低タンパク質−結合フィルターを使用して投与した。動物を霊長類の椅子に拘束している間、末梢静脈におかれた皮下カテーテルを介して、臨床用の注入ポンプを使用してIV処置を投与した。
採血
血液サンプルは鎮静化させた動物から、大腿部静脈の直接的な静脈穿刺を介して集めた。採血は可能な時には左と右の大腿部静脈間で交互に行った。局所的な血管の外傷および出血が最少となるようにかなりの注意を払った。採血が困難な場合は個々のサンプルを回収しない事を許容し、局所的な血管外傷を誘導する可能性が示唆された(例えば血腫形成、動脈穿刺)。
併用療法
許容された獣医学的プラクティスによる併用療法は、獣医師により必要と見なされた場合に利用した。
動物の観察
体重はほぼ毎週記録した(表Bを参照にされたい)。瀕死および死亡に関するカゴからの観察を1日2回行った。
臨床所見
処置に関連する効果を示すための臨床所見は、1−日目の処置前の始め、および処置から1時間後に行い、そしてその後毎日行った。SC処置の日には、臨床所見は処置前に行った。
注射部位の所見
SC注射部位(肩甲骨間領域)は1日目の注射前の始めに観察し、そしてその後は毎日行った。この部位は腫れおよび/または紅斑について主観的に採点した(0=なし、1=軽度、2=中度、3=顕著)。
注入中のバイタルサインの監視
IV処置中、悪い反応の兆候についてバイタルサイン(心拍、呼吸速度、直腸温度および間接的血圧)を断続的に監視した。これらのパラメーターに関する代表的値を、注入前、注入中に10分間隔で、そして終了時に記録した。
【0119】
悪い反応が起こった場合、処置を一時停止するか、または中断することができた。試験施設の獣医師は、実験指示者および/または実験のスポンサーの代表者に相談して、適切な治療があるならばそれを決定した。
血管形成術およびステント留置手法
抗凝固療法
動物はアスピリン(〜40mg、経口)を毎日受容して抗凝固機能を提供し、そして3−日に始まるステント血栓症を最少にした。
抗生物療法
動物は、血管形成術の前1日に、ベンザチン/プロカイン/ペニシリンG(42,000IU/Kg、IM)の単回の予防的注射を受けた。
麻酔
動物に前−麻酔を行い(ケタミンHCl、10mg/Kg、IM;アトロピン SO4、0.04mg/kg、IM)、次いで挿管し、そしてイソフルラン吸入剤麻酔ガスで麻酔を維持した。
準備
動物は背もたれの状態で手術台に配置した。膀胱にカテーテルを挿入して尿の蓄積を防いだ。血管に接近する部位をクリップで挟み、そして無菌手術の準備をした。カテーテルを末梢静脈に配置して、流体を投与し易くした(乳酸化リンゲル溶液、5〜10mL/kg/時間)。
ヘパリン処理
ヘパリン(100U/kg、IV、初期に)は血管形成術前に投与して抗凝固を提供した。活性化凝血時間(ACT)を周期的に監視し、そして血管形成術の間にACT値>250秒を維持するために必要なヘパリンをさらに投与した。
器具使用
右頸動脈を外科的に露出し、そして6Fr皮下血管挿入シース(例えばCP−07711、アロウインターナショナル(ARROW International、リーディング、ペンシルベニア州 19605)を配置して静脈内にカテーテルを配置し易くした。
【0120】
透視装置のガイダンスを使用して、6Frゲージのカテーテルを遠位腹大動脈が右および左腸骨動脈に二股に別れるレベルに進めた。放射線不透過性の0.014インチのガイドワイヤ(例えば22225M,アドバンスト カルジオバスキュラーシステムズ(Advanced Cardiovascular Systems)社、テメキューラ、カリフォルニア州 92591)を使用して、ガイドカテーテルまたは必要ならば他のカテーテルが進行し易くした。必要ならば放射線不透過性のコントラスト媒質(例えばOmnipaqu(商標)、イソヘキソール注射、コニメド(Nycomed)、プリンセトン、ニュージャージ州 75039)を使用して透視装置を使い易くした。
血管撮影のビデオテープ録画
定量的な血管形成に関して測定し易くするために、各動物について透視装置法をビデオテープに録画した。実験番号、実験日、動物番号および手順を確認する情報もビデオテープに録画した。
血管形成術前の血管撮影
血管形成術の前に、ニトログリセリン(50μg、IA)を投与して、動脈拡大を誘導した。放射線不透過性のコントラスト媒質を投与して血管撮影をし易くした。
バルーン血管形成術を介する内皮の露出
血管に対して適当なサイズのバルーンを有するn80cm、3Fr Fogarty バルーン血栓切除カテーテル(例えば120803F、バクスターヘルスケア(Baxter Healthcare)社、イルバイン、カリフォルニア州 92714)を、ガイドカテーテルを介して大動脈の二肢に対して〜4cm遠位のレベルまで右腸骨大動脈に進めた。次いでバルーンを0.6ccの空気で膨張させ、そして内皮を露出し易くするために大動脈の〜3cm区分にわたり膨張したまま引いた。バルーン血管形成は3回行った。この手順は次いで、反対側(左)の腸骨大動脈で繰り返し、そしてバルーン血栓切除カテーテルを引き出した。場合により、左腸骨大動脈を最初に露出し、続いて右を行った。
ステント留置
バルーン−膨張性の7−mmステント(例えば15−mm長のステントの半分(例えばCS15−030、Palmaz−Schatz(商標)クラウンバルーン−膨張性ステント、コルディス(Cordis)社、マイアミ、フロリダ州 33102))を具備する適当なサイズの拡大カテーテル(SLX(商標)コーティングを含むNinja(商標)PTCA拡大カテーテル、コルディス(Cordis)社、マイアミ、フロリダ州 33102)を、右腸骨大動脈に内皮露出の中点のレベルまで進めた。1.1〜1.2のバルーン/ステント:大動脈の比率(典型的には2.5,3.0または3.5mmカテーテルについては6Atm)を提供するために十分にステントを膨張するために必要な膨張圧までバルーンを膨張させた。バルーンを収縮させ、そしてカテーテルを引き出した。この手順を反対側(左)の腸骨大動脈で繰り返した。場合により、左腸骨大動脈に最初にステントを留置し、続いて右を行った。
血管形成術後の血管撮影
第2ステントの配置からおよそ10分後、ニトログリセリン(50μg、IA)を投与して、両大動脈の定量的血管撮影のために動脈拡大を誘導した。放射線不透過性のコントラスト媒質を投与して血管撮影をし易くした。
回収
血管導入器シースを取り出し、そして頸動脈を連結した。切開を適当な縫合糸で閉じた。動物を麻酔から回復させ、そしてそれらのカゴに戻した。
痛覚脱失法
動物は手順の完了後にブプレノルフィン(0.01mg/kg、IM)の単回注射を受けた。
血管形成の追跡
麻酔
安楽死および動脈組織の回収前に(VIII.L節を参照にされたい)、動物に前−麻酔をかけ(ケタミンHCl、10mg/kg、IM:アプロチンSO4 0.04mg/kg、IM)、次いで挿管し、そしてイソフルラン吸入麻酔ガスで麻酔を維持した。
準備
動物は背もたれの状態で手術台に配置した。カテーテルを末梢静脈に配置した。切開部位をクリップで挟み、そして洗浄し;厳密な無菌はこの最終手術では必要ではなかった。
カテーテルの配置
ヘパリン(150U/kg、IV)を投与した。必要ならば放射線不透過性のコントラスト媒質を投与して透視し易くした。左頸動脈を外科的に露出し、そして6Fr皮下血管挿入器シースを配置した。透視装置の案内を使用して、6Frゲージのカテーテルを遠位腹大動脈が右および左腸骨動脈に二股に別れるレベルに進めた。ニトログリセリン(50μg、IA)を投与した。放射線不透過性のコントラスト媒質を投与して血管撮影をし易くした。透視法は各動物についてビデオテープに記録し、定量的な血管形成を測定し易くした。
【0121】
大動脈組織の回収は以下のように行った。
安楽死
動物は血管形成術の追跡のためにすでに麻酔をかけていた(VIII.K.1節を参照にされたい)。動物は米国動物獣医学協会(AVMA)のガイドライン(6)に従い、深い麻酔(ペントバルビタールナトリウム、35mg/kg、IV)により安楽死させ、続いて放血させた。
潅流
中心線開腹切開を行い、そしてカニューレを下行腹大動脈に配置し、そして分岐のレベルまで進めた。腸骨大動脈に100mLの乳酸化リンゲル溶液を流し、続いて0.4%パラホルムアルデヒド(PFA)を〜5分間、100mmHg圧で潅流した。
大動脈組織の切除
右および左腸骨大動脈は別個に摘出し、近位末端を識別し(例えば結びにより)、そして0.4%PFAに浸した。
限定的な粗い検死
動物は、外部身体および腹部および胸部腔の評価として定めた限定的な検死を受けた。
限定的な器官/組織採取
特定した器官および組織からの代表的サンプル(表Dを参照にされたい)を採取し、そして10%の中性−緩衝化ホルマリンで組織病理学的評価のために固定するか、または包埋し、そして免疫組織学用にOCT中で凍結した。
a=目はデビッドソンの固定液に固定した。
b=すべての細胞計数は絶対値のみで報告した。他の細胞型(例えば前駆体細胞)が観察されれば計数した。他の形態学的特徴(例えばRBC染色特性)が存在すれば記載した。【0122】
サンプル処理は以下のように行った。
血液サンプル
血液学
血液サンプルは血液分析機を使用して分析した(表Eを参照にされたい)。血液スメアの特異形態は手動の顕微鏡で行った。
血清化学
血清サンプルは化学分析機を使用して分析した(表Fを参照にされたい)。
a=計算値
b=細胞計数は、絶対値でのみ報告した。他の他の細胞型(例えば前駆体細胞)が観察されれば計数した。他の形態学的特徴(例えばRBC染色特性)が存在すれば記載した。
a=計算値
さらなる分析用のサンプル
薬力学アッセイ用の血液サンプルおよび薬物動態学および免疫原性アッセイ用の血清サンプルを得た。
薬物動態学
血清治療剤1B4モノクローナル抗体(mAb)レベルは、マウスIgGに対する酵素−結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により測定した。簡単に説明すると、96ウェルプレート(NUNC#4−39454)は100μlのヤギ−抗−マウスIgG+IgM抗体(ジャクソン イムノリサーチ#115−005−068)を用いて、40℃で炭酸バッファーpH9.3中にて一晩、2.5μg/mlで被覆した。プレートは続いて3回、PBS0.5%Tween−20で洗浄し、そして300μlのPBS/1%BSAで37℃にて60分間ブロッキングした。PBS−Tweenでさらに3回洗浄した後、血清サンプルをPBS/1%BSAで1:100に希釈し、そして100μlのアリコートをプレート中の二連のウェルに加えた。抗体標準(MOPC−21、シグマ(Sigma))を50ng/mlに希釈し、そして100μlのアリコートをプレートに加えた。続いてすべてのサンプルはプレートをわたって2倍に希釈し、そして室温で2時間インキューベーションした。プレートは続いて再度PBS/0.5%Tween−20で洗浄し、そして100μlのペルオキシダーゼ−結合ヤギ抗−マウスIgG+IgM(ジャクソン イムノリサーチ(Jackson Immunoresearch)#115−035−068)を375ng/mlの濃度で加え、そして室温で2時間インキューベーションした。さらにPBS−Tweenで洗浄した後、プレートをOPD(シグマ)でクエン酸バッファーpH5.0中で発色させ、そして96ウェル蛍光プレートリーダー(ダイナテック(Dynatech)MR4000)で492nmで分析した。抗体標準の希釈を使用して標準曲線を作成し、そして血清抗体濃度を標準曲線から自動的に導き、そして希釈因子データはBiolinx2.22ソフトウェアを使用して提供した。
薬力学
標的の飽和
適当な白血球サブセット(好中球および単球)上の1B4標的(CD18)の飽和を、フローサイトメトリーアッセイにより測定した。
1B4 (抗 −CD18) を持つ循環している白血球の飽和の測定
血液は1B4の投与前および後に特定した間隔で試験動物からヘパリン中に集めた。全血のサンプルは過剰飽和量の1B4で(スパイク)または無しで染色した。血液サンプルはバッファー中で洗浄し、そしてFITC結合ヤギ−抗−マウスIgGで染色した。FITC−標識ビーズを用いたフローサイトメトリーの毎日の標準化後、FITCに対する均等な日ごとの感度を確実とするために、血液を塩化アンモニウム溶解液で溶解し、そしてリンパ球、単球および顆粒球群の蛍光を測定した。1B4投与による好中球または単球上のいずれかのCD18の飽和の程度は、1B4を加えなかったサンプルの平均チャンネル蛍光(mean channel fluorescence:MCF)と1B4の加えたスパイクを有するサンプルとの間の差異により決定した。実際に、インビボに送達された1B4で被覆されていない細胞表面上の遊離CD18は、外から加えた1B4により染色され、そしてスパイクしなかったサンプルの平均チャンネル蛍光はスパイクしたサンプルの平均チャンネル蛍光よりもぼんやりしていた。染色強度における差異は、細胞表面上の遊離(非飽和)CD18の反映であった。
循環している白血球の S−S.1 (無関係なアイソタイプ対照抗体)を用いた飽和の測定
S−S.1は、結合に無関係なマウス抗体である。白血球抗原とこのmAbとの「飽和」の可能性を測定するためのアッセイは上記のように行い、陽性(細胞染色)の結果は見られそうもなく、そして期間中の非スパイクとスパイクサンプルとの間に平均チャンネル蛍光における差異は一貫して無いと考えられた。
末梢血白血球の力学
白血球力学に及ぼすmAb投与の効果(トラフィッキング、辺縁趨向/脱辺縁趨向)は、処置前に比べて循環中の白血球数を評価することにより間接的に確認した。白血球の接着および/または走化性の阻害は、正常なトラフィッキングを防止し、そして循環する細胞数を上昇させると期待される。日常的な血液学分析を行って末梢血白血球の総数、ならびに好中球、リンパ球および単球の数を測定した。
免疫原性
1B4 ( CD18 )に対する抗体応答の測定
血清サンプルを特定した時期に回収し、そして実験が完了するまで凍結保存した。抗−1B4抗体は2つのアッセイを使用して検出した。
【0123】
第1アッセイは抗−イディオタイプおよび抗−アイソタイプ抗体の両方を検出するために計画した。このアッセイは1B4でマイクロタイタープレートを被覆し、そして未使用タンパク質の結合部位をBSAで遮断することにより行った。次いで血清を適当に希釈し、そして幾つかの希釈物をプレートの2連のウェルに加えた。血清中の抗体を37℃で2時間結合させ、そして次いでウェルを振盪し、そしてTween20を含むPBSで3回洗浄した。サル抗−1B4抗体はHRP−結合ヤギ抗−ヒトIgG(マウスのタンパク質に対して吸着)を用いて検出した。2時間後、非結合検出抗体はPBS Tweenでプレートを3回洗浄することにより洗い出した。結合した複合体は、黄色を生成するためにo−フェニレンジアミンを添加することにより検出した。色はELISAプレートリーダー上で490nmで読んだ。力価は、市販のHRP−結合ヤギ抗−マウスIgG(ヒト血清タンパク質に対して吸着)の特別な希釈により生成された光学密度に等しい光学密度を生じる血清の希釈の逆数を計算することにより決定した。
【0124】
第2アッセイは、マウスIgG2aに対する応答に比べて1B4イディオタイプと反応する応答の比率を評価するために使用した。これは競合的ELISAであり、ここでピーク抗体反応の血清を希釈して0.6−1.0の間の光学密度を生成した。希釈血清は上記のように1B4で被覆したELISAプレートの3連ウェルに加えた。血清は単独で、5μgの市販されているマウスIgG2aと混合して、または5μgの1B4と混合して加えた。ELISAは上記のように行い、そしてプレート上の1B4に結合したサルの抗体を、上記のようにHRP−抗−ヒトIgGを使用して検出した。マウスIgG2aまたは1B4でスパイクした血清により生成した光学密度と、非競合血清により生成されたシグナルの光学密度を比較することにより、1B4で処置した動物に生じた抗−1B4抗体の特異性を評価することが可能であった。
S−S.1 (無関係なアイソタイプ対照抗体)に対する抗体応答の測定
抗−S−S.1抗体は、上記の2種類のアッセイを使用して検出した。
定量的な血管撮影の計算:
偏りの制御
血管形成術およびステント留置時に、血管撮影測定を行った。この測定は非−ブラインド様式(non−blinded fashion)を採用して、各大動脈の直径を測定し、そして適当なサイズのバルーン拡大カテーテルおよびのステントの拡大ための膨張圧力を選択し、すなわち望ましいバルーン/ステント:大動脈比率を提供した。この非−ブラインド測定はまた追跡にも使用する。治療効果(1つまたは複数)を評価する目的で、記録したビデオ画像はより大きなビデオスクリーンで再生し、そして無関係な観察者によりブラインド様式で評価した。
血管撮影測定
ブラインド血管撮影測定は、デジタルカリパスを用いて中央−ステント領域で透視画像をビデオスクリーンから直接測定することにより行った。両腸骨大動脈について、以下のパラメーターを測定した(mmで):
血管形成術/ステント留置
実際のガイドカテーテル o.d.(実際の測定)(a)
観察されたガイドカテーテル o.d.(拡大された画像としてビデオスクリーン上で観察される)(b)
血管形成術前の管腔 i.d.(x)
血管形成術後にステントが膨張したバルーン o.d.(y)
血管形成術後/ステント管腔中のステント i.d.(x’)
追跡
実際の追跡ガイドカテーテル o.d.(c)
観察された追跡ガイドカテーテル o.d.(d)
ステント管腔中の追跡 i.d.(x”)
再狭窄の計算
以下の計算を行った:
血管形成/ステント留置
倍率補正因子1(MCF1)=[b]÷[a]
バルーン/ステント:大動脈率=[y:x]=理想的には1.1〜1.2
急性管腔増大(ALG;mmで)=[(x’)(MCF1)]−[(x)(MCF1)]
追跡
倍率補正因子2(MF2)=[d]÷[c]
後期管腔減少(LLL;mmで)=[(x’)(MCF1)]−[(x”)(MCF2)]
大動脈組織分析
偏りの制御
大動脈組織サンプルは、群または動物番号を示さない寄託または確認番号に無作為に割り当てた。処置の効果(1つまたは複数)に関する大動脈組織サンプルを評価する人(1または複数)は、サンプルの同一性に対して分からなかった。
組織処理
ステント留置をしていない(バルーン傷害)近位および遠位大動物区分は、ステントを留置した区分から離し、各々の近位末端を確認し、そして印を付けた。ステントを留置した大動脈区分はメタクリレート中に包埋し、そして多数の5mm断面をタングステンカーバイドナイフで切断した。ステント留置をしていない大動脈区分はパラフィンに包埋して抗原性を保存したが、正当な理由が生じるまでさらに処理することはなかった。
【0125】
ステント留置区分は、verHoeffの組織エラスチン染色、ヘマトキシリンおよびエオシン(H+E)、そしてBrdUrdを取り込んだ細胞、または平滑筋、内皮細胞および炎症細胞のような細胞型に関する種々の免疫細胞化学マーカーで染色した。
新内膜過形成の評価
ステント内の断面新内膜(内部弾性膜[IEL]の管腔側上)および中心(IELのアブルミナル(abluminal)側上)の領域(mm2)を、コンピューターを用いたデジタル面積測定を使用して組織形態計測的に測定した(3)。サンプル採取の誤差を最小とするために、3種のエラスチン染色したステント内断面(それぞれが右および左腸骨大動脈の近位、中央および遠位部分に由来する)を、形態計測的に分析した。右また左大動脈に関する複合値を、各大動脈について3回の測定値の平均で表した。
【0126】
各断片は、各ステント圧縮材(8−12/断面)に関係する深いステントが誘導した大動脈の傷害について評価し(0−3)、そして各断面に関する傷害の深さの採点の平均を算出した(19)。これらの値を使用して、初期の傷害が群全体に相当するかどうかを評価した。
統計分析
処置および対照群の間のT−試験による効力データの分析を行い、そしてこれらの値を報告する。
【0127】
この実施例で与える実験の結果をこれから記載する。
安全性
注入中にバイタルサインに関して処置に関連する効果は無かった。この実験中に体重および臨床所見に関して処置に関連する効果は無かった。1以上の動物で個々の注射部位は、副作用とは考えられない軽度の一時的な紅斑が示された。カテーテルの切開に付随する副作用は無かった(すなわち創傷治癒の減損は無く、そして細菌感染を示すものも無かった)。臨床的病理パラメーターに及ぼす悪影響は無かった。予想とおり、血清グロブリンレベルが処置および対照動物で上昇した。白血球計数は1B4投与により影響を受けた(以下を参照にされたい)。検死では処置に関係する著しい損傷は無かった。
薬物動態学
対照mAbに対する血清mAbレベル(平均±標準偏差)は、図1に与える。
【0128】
1B4の投与で血管形成術およびステント留置(1日)に血清濃度>50μg/mLを、そして8日間は維持血清濃度>1μg/mLをもたらした。1−日から13日までの連続投与にかかわらず、15日までに1B4レベルはほとんど検出できなかった。
薬力学
白血球を標的とする飽和
対照mAbに関する白血球を標的とする飽和(平均±標準偏差)を、図2に与える。
【0129】
1B4の投与により、IV注入の直後に1−日目で好中球および単球CD18の急速な飽和、そして8日間は標的飽和の維持がもたらされた。15日までに、白血球上の利用可能なCD18結合部位(不飽和標的)はベースラインレベルに戻った。
抹消血白血球の力学
対照mAbに関する抹消血の白血球計数(平均±標準偏差)を、図3に与える。
【0130】
1B4の投与は、顕著な白血球溶解、好中球溶解および単球溶解により示されるCD18の飽和により改変した白血球力学を8日目にもたらした。測定はされていないが、これらの細胞計数はより早い時期にも上昇したと思われる。
免疫原性
対照mAbに関する抗−mAb抗体力価(平均±標準偏差)を、図4に与える。
【0131】
抗−グロブリン応答は、わずか8日目に検出したすべての動物で生じた。これらの応答のほとんどが抗−アイソタイプ(定常領域に対する)というよりはむしろ抗−イディオタイプ(可変領域、特に相補性決定領域に対する)であった。8日から15日の有力な中和化抗−イディオタイプ抗体の急速な上昇は、循環しているmAbレベルの損失、白血球を標的とする飽和の損失および末梢血白血球数のベースライン(正常)レベルへの回復に対応した。これらの観察は、抗−mAb抗体の治療用mAb抗体への結合、そして活性の防止(中和化)と一致する。さらにこれらの観察は、治療用mAbの効果的な血清/白血球レベルが8日間を通してのみ維持されたことを示唆していた。
効力
定量的血管撮影法
対照mAbに関するブラインド定量血管撮影の結果(平均±標準偏差)を、図5に与える。
【0132】
1B4の投与は、腸骨大動脈の中央−ステント領域で測定した時、後期管腔損失(LLL)(p=0.06)を減少させ、そして指数(LLL/ALG)(p<0.05)を有意に減少させる傾向にあった。
組織形態計測的分析
対照mAbに関するブラインド組織形態計測的分析結果(平均±標準偏差)を、図6に与える。
【0133】
重篤な採点では、群間でステントが誘導する大動脈に対する傷の程度において群間に差異が示されず、すなわち群間の差異は処置に起因し、傷の程度が異なるのではない。
【0134】
1B4の投与は、腸骨大動脈のバルーンのみ(内膜領域についてp=0.02、I:M比についてp=0.01)、そしてバルーン+ステント(内膜領域およびI:M比の両方についてp<0.01)の区分内の新内膜過形成を抑制した。CD18は主に好中球に存在し、そして単核細胞(単球およびリンパ球)上での程度は低いので、このデータはバルーン−のみおよびバルーン+ステントの新内膜過形成の両方に好中球が重要な(恐らく優勢な)原因であることを示唆している。CD18を発現する他の細胞(すなわち単核細胞)がいずれかの損傷を持つ新内膜過形成の原因となる可能性も排除しない。抗−CD18阻害によるバルーン−のみおよびバルーン+ステントでの新内膜過形成の効果的減少の観察は、ヒトのバルーン−のみおよびバルーン+ステント(ステント内)での再狭窄に関係し得る。
【0135】
新内膜過形成に及ぼすCD18の遮断効果を図7で具体的に説明する。
【0136】
この実施例で引用する参考文献は以下を含み、実施例で示した番号を付す。
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本明細書に引用する各特許、特許出願および公報は、引用により全部、本明細書に編入する。
【0137】
本発明を具体的な態様を参照にして記載したが、当業者により本発明の精神および範囲から逸脱することなく本発明の他の態様および変更を考案され得ることは明らかである。前述の特許請求の範囲はそのような態様および均等な変更態様を包む。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験動物から得た血清中のELISAにより評価したモノクローナル抗体濃度を表すグラフである。
【図2】図2Aおよび2Bから成り、抗−CD18抗体(三角)の存在下または対照モノクローナル抗体(丸)の存在下で、白血球を標的とする飽和の程度を表す一対のグラフである。図2Aは好中球の標的部位の飽和の程度を表し、そして図2Bは単球の標的部位の飽和の程度を表す。
【図3】図3A、3B、3Cおよび3Dから成り、モノクローナル抗体1B4(三角)または対照モノクローナル抗体(SS1;丸)が投与された動物中の白血球計数を表す4つのグラフである。総白血球細胞計数は図3Aに示し;総好中球計数は図3Bに示し;総リンパ球計数は図3Cに示し;総単球計数は図3Dに示す。
【図4】モノクローナル抗体1B4(三角)または対照モノクローナル抗体(丸)が投与された動物中の平均抗−モノクローナル抗体力価を示すグラフである。
【図5】図5A、5Bおよび5Cから成り、本明細書の実施例に記載するような試験動物におけるブラインドの定量的な血管形成術の結果を表す。図5Aはモノクローナル抗体1B4(三角)または対照モノクローナル抗体(丸)が投与された動物において、時間の関数としての管腔の直径を表すグラフである。図5Bおよび5Cは、モノクローナル抗体1B4または対照モノクローナル抗体が投与された動物において、後期の管腔損失とLLL/ALG指数の間の差異を表す棒グラフである。
【図6】図6Aおよび6Bから成り、モノクローナル抗体1B4または対照モノクローナル抗体のいずれかが投与され、そしてバルーン血管形成術(「バルーンのみ」)またはバルーン血管形成術および管内皮ステント留置の両方(「バルーンおよびステント」)を受けた動物から得た血管の内膜領域(mm2:図6A)および内膜:中膜の比の組織形態計測分析の結果を表す一対の棒グラフである。
【図7】図7Aおよび7Bから成り、モノクローナル抗体1B4または対照モノクローナル抗体のいずれかが投与された動物から得た血管間の差異を表す一対の画像である。
(技術分野)
発明の背景
本発明は一般に、狭窄および再狭窄ならびに狭窄および再狭窄に関連する症状および障害を抑制し、防止し、そして軽減する組成物および方法に関する。
【0002】
外科的およびカテーテルが媒介する血管介入に比較的共通する合併症は、血管部分の狭窄および再狭窄である。例えば動脈狭窄は、冠状動脈バイパス術後の冠状動脈内のような血管移植部位で、またはその付近で起こり得る。再狭窄は経皮経管的冠状動脈形成術および他のバルーン血管形成術の長期効力を限定する主要な合併症である。同様に、動血管内にステントを留置すると留置部位に狭窄を誘導し得る。
【0003】
血管狭窄症は平滑筋細胞の狭窄部位への移動、その部位での平滑筋の増殖、またはその両方を伴う。しかし平滑筋細胞の移動および増殖を誘導し、または持続する原因である因子(1つまたは複数)は、未だに確実には知られていない。血小板および白血球(例えば好中球)の局所的蓄積は、血管の損傷部位で起こり、損傷の発生後すぐに始まり、そして少なくともその後数日は続くことが知られている。少なくともヒトでは白血球活性化が再狭窄に関係しているが、他の研究者により炎症を抑制する薬剤(例えばグルココルチコイド)の投与はヒトにおける再狭窄を抑制できないことが判明した(Pepine et al.,1990,Circulation 81:1753−1761;Peitersma et al.,1995,Circulation 91:1320−1325;Mickelson et al.,1996,J.Amer.Coll.Cardiol.28:345−353;Inoue et al.,1996,J.Amer Coll.Cardiol.28:1127−1133)。炎症を抑制する薬剤が大変必要とされているにもかかわらず、狭窄および再狭窄症状を防止し、抑制し、または軽減するために比較的広く効力のある薬剤を同定することは困難で、そしてわずかな薬剤が記載されただけであった。
【0004】
Mac−1と呼ばれる(CD11b/CD18またはαMβ2としても知られている)白血球細胞−表面抗原とそのリガンドの1つ(例えばICAM−1またはICAM−2)との間の結合を阻害することができる抗体は、血管の治癒を強化し、そして損傷後の血管の狭窄および再狭窄を減らすことが知られている(国際公開第98/42360号明細書)。しかし以前に他の研究者によれば、Mac−1のCD18部分に特異的に結合するモノクローナル抗体は、再狭窄の防止、抑制または軽減に効果的ではなく、そしてそのような抗体は再狭窄の症状を実際に悪化させるかもしれないと教示した(Guzman et al.,1995,Coron.Art.Dis.6:693−701)。白血球細胞−表面抗原のCD18部分に特異的に結合すると仮定されたモノクローナル抗体(60.3およびR15.7と命名)の効果について解説した他の研究者は、そのような抗体がヒトにおいて狭窄症および関連する症状および障害の発生または進行に影響するならばどのような効果を有するのかを調査しなかった(Kling et al.,1992,Arterioscler.Thromb.12:997−1007;Kling et al.,1995,Circ.Res.77:1121−1128;Golino et al.,1997,Thromb.Haemost.77:783−788)。実際には、他の研究者によりこれらの実験に使用したウサギのモデルでは、ヒトでの抗−狭窄的効力は示されないことが証明された。ヒトの狭窄症の霊長類モデルを使用して得た結果は、ヒトで得た結果とより一層一致していた。例えば例として、ヘパリンはヒトおよび他の霊長類において再狭窄症を防止するためには効果的ではないが、実験用の哺乳動物を含む他の実験系においては再狭窄症を抑制または防止することが示された。
【0005】
本発明は狭窄および再狭窄的損傷およびそれらに付随する症状を抑制し、防止し、そして軽減するために効力のある薬剤の長い間の必要性を満たすものである。
【0006】
発明の簡単な要約
本発明は、ヒトの血管の狭窄症(すなわち再狭窄症を含む)を抑制する方法に関する。この方法は、CD18を含んで成る哺乳動物(例えばヒト)のタンパク質の少なくともCD18部分と特異的に結合する抗−CD18抗体をヒトに投与することを含んで成る。これにより血管内の狭窄症が抑制される。
【0007】
この方法では、抗−CD18抗体は例えば実質的にタンパク質のCD18部分にのみ特異的に結合する抗体、モノクローナル抗体1B4と同じかまたは類似するエピトープ特異性を有する抗体、またはモノクローナル抗体1B4であることができる。
この方法の1態様では、抗−CD18抗体はCD18を含んで成る霊長類タンパク質の少なくともCD18部分と特異的に結合する。
【0008】
抗−CD18抗体と結合する哺乳動物タンパク質は、例えばMac−1、LFA−1、p150,95およびCD11d/CD18の1つのような白血球細胞−表面抗原であることができる。Mac−1が好適である。1つの観点では、抗−CD18抗体と抗原との結合がICAM−1、ICAM−2、ICAM−3、C3bi、第X因子、フィブリンおよびフィブリノーゲン(すなわちMac−1に関するICAM−1、C3bi、第X因子、フィブリンおよびフィブリノーゲン)のような抗原の天然のリガンドとの抗原の結合を阻害する。抗−CD18抗体とタンパク質との結合は、タンパク質の天然の(natural)リガンドとのタンパク質の結合に通常関係している1以上の機能を調節することができる。例としてこの機能は、白血球と血管内皮との結合、白血球の血管内皮を通る移動、白血球の内膜血管組織への浸潤、血管組織中の白血球から走化性因子の放出、血管組織中の白血球から増殖因子の放出、白血球の結合に付随する血管組織から走化性因子の放出、および白血球の結合に付随する血管組織から増殖因子の放出から成る群から選択される。白血球は例えば好中球であることができる。
【0009】
1つの観点では本方法は、血管内皮が外傷的に混乱した血管の狭窄症を抑制するために使用する。例えば血管は、移植した血管、中で血管形成バルーンが膨張した血管、レーザー血管形成術が行われた部位を含んで成る血管、押し潰された損傷を経験した血管、および中にステントが留置された血管の1つであることができる。もちろん、血管はアテローム硬化症の血管および動脈硬化症の血管のように血管内皮が外傷的には悪化しなかった血管であることもできる。血管は例えば冠状血管または大脳血管であることができる。
【0010】
本方法で使用する抗−CD18抗体は、例えば全抗体、抗体フラグメント(例えばFv、Fab、Fab’またはF(abN)2フラグメントの1つ)、キメラ抗体、ヒト化抗体または完全にヒト抗体であることができる。
【0011】
本方法に従い抗−CD18抗体は、抗−CD18抗体を血管に提供することにより(血管内皮が外傷的に混乱(perturbing)する前に、そのような外傷的混乱中に、または血管内皮が外傷的に混乱した後に)ヒトに投与することができる。この混乱は例えば、血管形成術の介入(例えばバルーン血管形成介入または血管内の血管ステントの留置)を含んで成ることができる。
【0012】
実質的に同じ方法を使用して、ヒトの血管中で既往の、または発症中の狭窄を軽減することができる。
【0013】
本発明はさらに、ヒトの血管の狭窄を評価するためのキットに関する。このキットは、検出可能な標識(例えばガンマ放射線源)を有する抗−CD18抗体およびヒトの血管中の抗−CD18抗体の検出を記載する使用説明書を含んで成る。
【0014】
本発明はヒトの血管中の狭窄を抑制または軽減する別の方法を含む。この方法は、抗−CD18抗体と特異的に結合する白血球をヒトの血液から除去することを含んで成る。これにより血管中の狭窄が抑制、または軽減される。
【0015】
また本発明に含まれるのは、CD18を含有する細胞表面タンパク質を有する白血球とヒトの血管内皮との相互作用を阻害する方法である。この方法は白血球を抗−CD18抗体と接触させることを含んで成る。これにより白血球と血管内皮との相互作用が阻害される。白血球は例えばリンパ球、単球、顆粒球、好中球、T細胞および好塩基球から成る群から選択することができる。阻害される相互作用は例えば、白血球と血管内皮との結合または血管内皮を通る白血球の移動であることができる。
【0016】
さらに本発明は、ヒトから得た血液中の血管狭窄に関係する白血球の存在を評価する方法を含む。この方法は、
a)血液を抗−CD18抗体と接触させ、そして
b)血液中の抗−CD18抗体と白血球との結合を検出する、
ことを含んで成る。血液中の抗−CD18抗体と白血球との結合は、血液中に血管狭窄と関係する白血球が存在することの指標である。血液中の抗−CD18抗体と白血球との結合は定性的に評価するか、あるいは定量する(例えばヒトの血液中の抗−CD18抗体と白血球との結合を、
i)血管狭窄症に罹患しているか、または
ii)血管狭窄症に罹患していない、
いずれかのヒトから得た対照血液中の白血球との抗−CD18抗体の結合と比較する)ことにより評価することができる。
【0017】
さらに本発明は、ヒトから得た血液中に血管狭窄症に関連する白血球の存在を評価するためのキットを含む。このキットは、
i)抗−CD18抗体および
ii)少なくとも1つの
a)ヒトの血液中の白血球の存在を定量すること、
b)血管狭窄症に罹患しているヒトの血液中の白血球含量、および
c)血管狭窄症に罹患していないヒトの血液中の白血球含量
を記載する使用説明書を含んで成る。
【0018】
別の観点では、本発明はヒトの血管の狭窄に関連する障害を抑制する方法に関する。この方法は、CD18を含んで成る哺乳動物タンパク質の少なくともCD18部分と特異的に結合する抗−CD18抗体をヒトに投与することを含んで成る。これにより血管の狭窄が抑制され、そしてこれにより障害が抑制される。
【0019】
さらに別の観点では、本発明はヒトの血管中の狭窄症に関連する障害を軽減する方法に関する。この方法はCD18を含んで成る哺乳動物タンパク質の少なくともCD18部分と特異的に結合する抗−CD18抗体をヒトに投与することを含んで成る。それにより血管の狭窄が軽減され、そしてこれにより障害が軽減される。
【0020】
発明の詳細な説明
本発明は従来技術での技法(例えばGuzman et al.,1995,Coron.Art.Dis.6:693−701)とは対照的に、Mac−1白血球細胞表面抗原のCD18サブユニットと特異的に結合する分子が、血管(例えば動脈)の狭窄または再狭窄的損傷およびそのような損傷に付随する症状(例えば虚血)および障害(例えば血管移植拒絶)を抑制し、防止し、そして軽減するために使用できるという知見に基づく。CD−18結合抗体はCD11bと複合化する時(すなわちMac−1抗原中で)、CD11aと複合化する時(すなわちLFA−1抗原中で)、およびCD11dと複合化する時(すなわちp150,95抗原中で)、CD18と結合することができると認識されている。
【0021】
本発明は、Mac−1、LFA−1、p150,95およびCD11d/CD18と命名されたヒトの白血球細胞−表面抗原に見いだされるような哺乳動物(好ましくは霊長類、そしてより好ましくはヒト)のCD18タンパク質と特異的に結合する抗体またはそれらの機能的フラグメントに関する。本明細書で使用するように、「抗−CD18抗体」とは、全抗体およびそのような全抗体のフラグメントを集合的および個別に指すために使用し、ここで抗体またはフラグメントはCD18タンパク質との特異的結合を現す。1つの態様では、抗−CD18抗体はCD18タンパク質に特異的に結合するが、抗原Mac−1、LFA−1、p150,95およびCD11d/CD18の他の成分と特異的に結合しない(例えば、抗−CD18抗体はこれら抗原の任意のCD11サブユニットとは特異的に結合しない)。CD18と特異的に結合する実質的に任意の抗体を使用することができるが、抗−CD18抗体はCD18がCD11サブユニット(例えば、CD11a、CD11b、CD11cおよびCD11dの1つ)のような白血球細胞表面抗原中の他のタンパク質と複合化できるかどうかにかかわらず特異的に結合するものであることが好ましい。
【0022】
1つの態様では抗−CD18抗体は、単離された哺乳動物(例えばヒト)のCD18タンパク質または単離されたCD18−含有タンパク質(例えば白血球細胞表面抗原)に対して生成される。もちろん抗−CD18抗体は、そうではなくて組換え哺乳動物CD18またはそれらの部分(例えば、CD18タンパク質上に通常は露出されているエピトープを含んで成るポリペプチド、特にタンパク質が白血球膜中のCD11サブユニットと複合化する時、通常は露出されるもの)に対して生成することもできる。抗−CD18抗体はさらに哺乳動物のCD18を発現する宿主細胞(例えば好中球のようなヒト白血球またはCD18を発現するように形質転換された細菌細胞)に対して生成することができる。本明細書で使用するように、標的に対して抗体を「生成する」ことは、既知の方法を使用して行うことができる。標的に対して抗体を生成するために使用する方法の例は、標的を脊椎動物(例えばウサギ、ハムスター、マウス、カンガルー、ヤギ、ヒツジ、ブタまたはウシ)の身体(例えば血流中)に提供し、脊椎動物から免疫細胞を単離し、抗−CD18抗体を生産する1以上の免疫細胞を選択し、そしてその細胞(1つまたは複数)から抗−CD18抗体を得ることを含む。別の例としては、標的を、表面に露出された抗体または抗体のフラグメントを有し、そして露出された抗体またはフラグメントをコードする核酸を含むか、または核酸に関連し得る粒子(細胞、ファージ、ベクター等)のライブラリー(例えばM13ファージライブラリーのような糸状ファージライブラリー)と合わせ、標的と結合する1以上の粒子を選択し、粒子内に含まれるか、または関係する核酸を得、そして得られた核酸を使用して抗−CD18抗体を生成するかまたは設計することである。
【0023】
好適な態様では、抗体はヒトのCD18タンパク質またはそれらの部分と特異的に結合し、そして特に好適な態様では、抗体は自然に存在するか、または内因性のヒトCD18タンパク質に特異性を有する。哺乳動物CD18タンパク質に特徴的な1以上の機能を阻害することができる抗−CD18抗体が本発明に包含される。これらの機能の例には、白血球と内皮細胞との結合、白血球とそれらの表面にICAM−1タンパク質を有する細胞との結合、白血球とそれらの表面にICAM−2タンパク質を有する細胞との結合を媒介すること、白血球の血管内皮を通る移動を媒介すること、白血球の病んだまたは傷害を受けたまたは炎症した組織への移動を媒介すること、および走化性または増殖調節物質(例えば増殖因子およびケモカイン)の白血球および白血球が結合する細胞からの放出を媒介することを含む。例えば1つの観点では、抗−CD18抗体はCD18とICAM−1またはICAM−2のような天然のリガンドとの相互作用を阻害する(すなわち頻度または強度を下げるか、または防止する)。
【0024】
抗−CD18抗体が結合するCD18のエピトープは、重要ではない。1つの態様では、抗−CD18抗体はモノクローナル抗体1B4が結合する同じエピトープに結合する。モノクローナル抗体1B4は、例えば欧州特許出願公開第0438312号明細書に記載されている。好ましくは抗−CD18抗体はすでに知られている抗−CD18抗体(例えば抗体R15.7および60.3)が結合するエピトープ(1つまたは複数)とは異なるCD18のエピトープと結合するか、あるいは抗−CD18抗体が既知の抗−CD18抗体と同じCD18のエピトープに結合する時、既知の抗体よりも高い親和性で結合する。
【0025】
本発明の抗−CD18抗体はヒトのCD18により媒介される機能を阻害することができ、白血球の傷害を受けたまたは炎症した組織(外科的またはバルーン血管形成術のようなカテーテルが媒介する介入にかけられた血管組織のような)への再集合を含む。抗体は対応する身体部位での流体中の抗体濃度に一般的に関連する程度まで、そのような機能を阻害することができる。さらなる抗体が実質的により高い阻害効果を持たない上の抗体濃度が存在すると認識されている。低い濃度では、抗体の阻害効果は日常的な実験を使用して当業者により予想され得る様式で抗体の濃度に伴い変動するだろう。使用することができる本明細書に記載する抗−CD18抗体の効果的濃度には、例えばミリリットルあたり1000、500、200、100、50、20、10、5、2または1マイクログラムを含む。抗−CD18抗体の送達が局所的に投与される場合(例えば、関節の滑液のような分離した身体成分内)は、全身的に投与する場合(例えば血流を介する全身投与)よりも低濃度の抗体を使用することができる。
【0026】
本発明のさらなる態様では、抗−CD18抗体はCD18とそれらのリガンド(例えばICAM−1またはICAM−2)との結合を、好ましくはミリリットルあたり約50、20、10、5、2、1または(好ましくは)0.5マイクログラム未満のIC50で阻害することができる。本発明のさらなる態様では、抗−CD18抗体はCD18と少なくとも約10−7、10−8、または(好ましくは)10−9モルの親和性で結合する。
【0027】
CD18と特異的に結合するヒト化したモノクローナル抗体は本明細書に記載するように生成され、そして1B4と命名する。好適な態様では、本発明の抗体はヒトのCD18に結合し、そして本明細書に記載する1B4と同じかまたは類似するエピトープ特異性を有する。1B4モノクローナル抗体と同じかまたは類似するエピトープ特異性を持つ抗体は、当該技術分野で知られている技法を使用して同定することができる。例えば1B4と同じかまたは類似するエピトープ特異性を持つ抗体は、それらが1B4モノクローナル抗体とヒトのCD18(例えば、1以上のMac−1、LFA−1、p150,95およびCD11d/CD18細胞−表面抗原を持つ白血球のようなヒトのCD18を持つ細胞)との結合を拮抗する能力により、それらが1B4のヒトCD18への結合を阻害する能力により、あるいはレセプターのキメラを使用して(例えばRucker et al.1996,Cell 87:437−446に記載されているように)同定することができる。これらのまたは他の適当な技法を使用して、本発明の抗体と同じかまたは類似するエピトープ特異性を持つ抗体を同定することができる。本発明はまた、1B4および少なくとも1つの他の抗体と同じかまたは類似するエピトープ特異性を持つ二重特異性抗体またはそれらの機能的フラグメント(例えばF(ab’)2)に関する(例えば米国特許第5,141,736号明細書(Iwasa et al.)、米国特許第4,444,878号、同第5,292,668号、同第5,523,210号明細書(すべてPaulusへの)、および米国特許第5,496,549号明細書(Yamazaki et al.)を参照にされたい)。
【0028】
本発明の抗−CD18抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体であることができる。さらに本明細書に記載する抗−CD18抗体を利用する方法は、全抗−CD18抗体、全抗−CD18抗体のCD18抗原−結合フラグメント、モノクローナル抗体1B4、1B4と同じかまたは類似するエピトープ特異性を持つ抗体(すなわち全抗体およびCD18−結合抗原フラグメント)、およびこれらの組み合わせであると考えられる。これらの抗体およびフラグメントは、場合によりCD18と特異的に結合しない抗体または抗体フラグメントと組み合わせて使用することができる。
【0029】
本明細書に記載する抗−CD18抗体は、本明細書に記載するように治療、診断、防止、予後および調査的応用に使用することができる。本発明は抗−CD18抗体(例えばモノクローナル抗体1B4、またはそれらのCD18−結合フラグメント)を、治療(予防を含む)または診断(例えば本明細書に記載する特定の疾患または症状)において使用するために、ならびにそのような抗体を本明細書に記載する疾患または症状の処置、防止または診断に使用するための薬剤の製造に使用するために包含する。
【0030】
免疫感作抗原の調製およびポリクローナルおよびモノクローナル抗体の生産は本明細書に記載するように、あるいは他の適当な技法を使用して行うことができる。様々な方法が記載された(例えば、Kohler et al.,Nature,256:495−497(1975)およびEur.J.Immunol.6:511−519(1976);Milstein et al.,Nature 266:550−552(1977);Koprowski et al.,米国特許第4,172,124号明細書;Harlow,E. and D.Lane,1988,Antibodies:ア ラボラトリーマニュアル(A Laboratory Manual)、(コールドスプリングハーバーラボラトリー:コールドスプリングハーバー、ニューヨーク);分子生物学における現在の技法(Current Protocols In Molecular Bio logy)、第2巻、(補追27、’94年夏)、Ausubel,F.M.et al.編集、(ジョン ウィリー アンド サンズ(John Wiley & Sons:ニューヨーク、NY)、第11章、(1991)を参照にされたい)。一般にハイブリドーマは適当な不死化細胞系(例えばSP2/0のようなミエローマ細胞系)と抗体生産細胞とを融合することにより生産することができる。好ましくは脾臓または1以上のリンパ節から得た抗体生産細胞は、目的の抗原を単独または他の抗原と組み合わせて(例えばアジュバントと組み合わせて、または表面に抗原を露出した細胞として)提供した動物から得ることができる。融合細胞(すなわちハイブリドーマ)は、選択的な培養条件を使用して単離することができ、そして限界希釈によりクローン化する。所望の結合特性を持つ抗体を生産する細胞は、適切なアッセイにより選択することができる(例えばCD18−結合抗体を検出するためにELISAを使用して)。
【0031】
ヒトまたは人工的な抗体を含めCD18に結合する抗体を生産または単離する他の適当な方法を使用することができ、それらには例えばライブラリーから組換え抗体(例えば単鎖FvまたはFab)を選択する方法、またはヒトまたは人工的抗体のレパートリーを生産することができるトランスジェニック動物(例えばマウス)の免疫感作に依存する方法(例えばJakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551−2555(1993);Jakobovits et al.,Nature,362:255−258(1993);Lonberg et al.,米国特許第5,545,806号明細書;Surani et al.,米国特許第5,545,807号明細書を参照にされたい)を含む。例として抗−CD18抗体はCD18またはそれらの画分を、場合によりアジュバントと混合して、またはキメラタンパク質内に包含して、アブジェニックス社(Abgenix,Inc.、フリーモント、カリフォルニア州)から入手可能なマウスのXenomouse(商標)種のような、マウス抗体遺伝子発現が抑制され、そして機能的にヒトの抗体遺伝子発現と置き換えられた遺伝子操作されたマウスに提供し、そして次いで抗−CD18抗体をマウスから単離することにより生成することができる。
【0032】
異なる種に由来する部分を含んで成る単鎖抗体、およびキメラ、ヒト化、ヒトまたは霊長類化(CDR−移植)抗体ならびにキメラまたはCDR−移植単鎖抗体等も本発明および用語「抗体」に包含される。これら抗体の種々の部分は、通例の技法により化学的に一緒に連結することができ、あるいは遺伝子工学的技法を使用して連続するタンパク質として調製することができる。例えばキメラ、ヒトまたはヒト化された鎖をコードする核酸を発現させて連続するタンパク質を生成することができる。例えば、Cabilly et al.、米国特許第4,816,567号明細書;Cabilly et al.、欧州特許第0,125,023号明細書;Boss et al.、米国特許第4,816,397号明細書;Boss et al.、欧州特許第0,120,694号明細書;Neuberger,M.S.et al.、国際公開第86/01533号明細書;Neuberger,M.S.et al.、欧州特許第0,194,276号明細書;Winter、米国特許第5,225,539号明細書;Winter、欧州特許第0,239,400号明細書;およびQueen et al.、米国特許第5,585089号、同第5,698,761号および同第5,698,762号明細書を参照にされたい。また霊長類化した抗体に関してはNewman,R.et al.、BioTechnology,10:1455−1460(1992)を、そして単鎖抗体に関してはLadner et al.、米国特許第4,946,778号明細書およびBird,R.E.et al.,Science,242:423−426(1988))を参照にされたい。
【0033】
さらにキメラ、ヒト化、霊長類化、ヒト(すなわち完全にヒト)または単鎖抗体のフラグメントを含む抗体の機能的フラグメントも生成することができる。前述の抗体の機能的フラグメントは、それらが由来する完全長の抗体の少なくとも1つの結合機能および/または調節機能を保持する。好適な機能的フラグメントは、対応する完全長の抗体の抗原−結合機能を保持する(例えば、哺乳動物のCD18に結合する能力を保持する)。特に好適な機能的フラグメントは、白血球と内膜との結合を調節する能力または白血球の内皮を渡る移動のような哺乳動物のCD18に特徴的な1以上の機能を阻害する能力を保持する。例えば1つの態様では、機能的フラグメントはヒトの白血球(例えば好中球)と自然にICAM−1またはICAM−2を含んで成る組織(例えば内皮)との結合を阻害することができる。別の態様では、機能的フラグメントは血管内バルーン血管形成術的介入の部位で好中球の内膜血管組織への滲出を抑制することができる。機能的フラグメントが調節することができる他の活動は幾つかの態様において、白血球のトラフィッキング(trafficking)、T細胞活性化、炎症メディエーターの放出および白血球のデグラニュレーション(degranulation)を含む。
【0034】
例えば哺乳動物のCD18またはそれらの部分に結合することができるFv、Fab、Fab’およびF(abN)2抗体フラグメントを含む抗−CD18抗体フラグメントは、本発明に包含される。そのようなフラグメントは全抗−CD18抗体の酵素的開裂により、または例えば組換え法により生成することができる。例えばパパインまたはペプシン開裂は、それぞれFabまたはF(ab’)2フラグメントを生成することができる。抗体も1以上の終止コドンが天然の終止部位の上流に導入された抗体遺伝子を使用して、種々の短縮化された形態で生成することができる。例えばF(ab’)2重鎖部分をコードするキメラ遺伝子は、重鎖のCH1ドメインおよびヒンジ領域をコードするDNA配列を含むように設計することができる。
【0035】
例としてキメラ抗−CD18抗体(全抗−CD18抗体のフラグメントを含む)は、キメラ抗体またはフラグメントをコードする様式で連結されたヒト(例えばヒトの定常領域)および非−ヒト(例えばマウスの相補性−決定領域:CDR)セグメントのDNAセグメントを含んで成るDNAを合成し、そして次いでDNAを転写し、そして翻訳して連続するポリペプチド鎖を生成することにより調製することができる。
【0036】
本明細書で使用する用語「ヒト化免疫グロブリン」および「ヒト化抗体」とは、異なる動物起源の免疫グロブリンの部分を含んで成る免疫グロブリン、または免疫グロブリンの部分を称し、ここで少なくとも1つの部分がヒト起源である。したがって本発明は、哺乳動物のCD18(例えばヒトのCD18またはカニクイザルCD18)に特異的に結合するヒト化免疫グロブリンに関する。このヒト化抗体は、非ヒト(例えば齧歯類)起源の抗原結合領域およびヒト起源(例えばヒトを枠組み領域、または1以上のヒトの定常領域またはそれらの部分)の免疫グロブリンの少なくとも1つの部分を含んで成る。例えばヒト化抗体は、通例の技法(すなわち合成抗体を生成するために)により化学的に一緒に連結されるか、または組換え(すなわち「遺伝子操作」)法を使用して連続するポリペプチドとして調製された必要な抗−CD18特異性を現す非ヒト(例えばマウス)起源の免疫グロブリンに由来する1以上の部分、ヒト起源の1以上の免疫グロブリン部分を含んで成ることができる。本発明のヒト化免疫グロブリンの例は、非ヒト起源のCDRを含んで成る1以上の免疫グロブリン鎖(例えば、非ヒト起源の抗体に由来する1以上のCDR)およびヒトの軽鎖、ヒトの重鎖またはそれらの幾つかのハイブリッドに由来する枠組み領域を含む免疫グロブリンである(すなわち、枠組みに変化が有るかまたは無いCDR−移植抗体)。
【0037】
1つの態様では、ヒト化抗−CD18抗体はヒトのCD18と結合するために1B4モノクローナル抗体と競合することができる。好適な態様では、ヒト化免疫グロブリン(a)の抗原−結合領域は1B4モノクローナル抗体に由来する(例えば1B4軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3、および1B4重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3を含んで成るヒト化免疫グロブリンにおけるような)。
【0038】
ヒト化抗−CD18抗体は、所望のヒト化された鎖をコードする遺伝子(例えばcDNA)を調製するために合成核酸、組換え核酸またはその両方を使用して生成することができる。例えばヒト化された可変領域をコードする核酸(例えばDNA)配列は、以前にヒト化された可変領域に由来するDNA鋳型のようなヒトまたはヒト化された鎖をコードするDNA配列を改変するための、PCR突然変異誘発法を使用して構成することができる(例えばKamman,M.,et al.,Nucl. Acids Res.,17:5404(1989);Sato,K.,et al.,Cancer Research,53:851−856(1993);Daugherty,B.L.et al.,Nucleic Acids Res.,19(9):2471−2476(1991);およびLewis,A.P.,and J.S.Crowe,Gene,101:297−302(1991)を参照にされたい)。これらのまたは他の適当な方法を使用して、変異体も容易に生成することができる。1つの態様では、クローン化された可変領域を突然変異させることができ、そして所望の特異性を持つ変異体をコードする配列を選択することができる(例えばファージライブラリーから;Krebber et al.,U.S.5,514,548;1993年4月1日に公開されたHoogenboom et al.,国際公開第93/06213号明細書;1997年3月6日に公開されたKnappik et al.,国際公開第97/08320号明細書を参照にされたい)。本内容で使用する「遺伝子」とは、CD18に特異的に結合する全抗−CD18抗体またはそれらのフラグメントをコードする発現可能な核酸構築物を意味する。そのような遺伝子は一般に、翻訳開始部位および翻訳終止コドンを含む。遺伝子がDNAである場合、遺伝子は転写開始部位も含むべきであり、そしてさらに当該技術分野では既知のポリ−アデノシン領域を含むことができる。
【0039】
抗−イディオタイプ抗体も提供される。抗−イディオタイプ抗体は別の抗体の抗原−結合部位に付随する抗原決定基を認識する。抗−イディオタイプ抗体は、例えば米国特許第4,699,880号明細書に記載されているような第2抗体を生成するために使用された動物と同じ種の、そして好ましくは同じ血統(strain)の動物を免疫感作することにより第2抗体に対して調製することができる。
【0040】
本発明は本明細書に記載する1B4ハイブリドーマ細胞系、そのハイブリドーマ細胞系により生産された抗−CD18モノクローナル抗体、およびそれらのCD18−結合フラグメントにも関する。この細胞系および抗−CD18抗体を生産する他のハイブリドーマは、モノクローナル抗体の生産を越えた用途を有する。例えば細胞系は他の細胞系(ヒトのミエローマ、マウスのミエローマ、ヒト−マウスヘテロミエローマ、またはヒトのリンパ芽球細胞のような、これら任意の細胞系を作成することができ、あるいは既知の方法を使用して選択した薬剤に感受性になるように選択する)と融合して、さらなるハイブリドーマを生成することができる。これらのさらなるハイブリドーマを使用して、モノクローナル抗体をコードする遺伝子をインビトロまたはインビボのいずれかで細胞群または組織に移すことができる。
【0041】
さらに抗−CD18抗体生産細胞系は、1以上の抗−CD18抗体鎖をコードする核酸の供給源として使用することができ、そしてこれら核酸を単離し、発現させ(例えば適当な技法(例えばCabilly et al.、米国特許第4,816,567号明細書;Winter、米国特許第5,225,539号明細書を参照にされたい)を使用して他の細胞に移して)、または操作することができる(例えばキメラ抗−CD18抗体をコードする核酸を得るために他の抗体をコードする核酸の部分と合わせて)。例えば再配列した抗−CD18抗体の軽および重鎖を含んで成るクローンを単離することができ(例えばPCRにより)、あるいはcDNAライブラリーを細胞系から単離したmRNAから調製することができ、そして抗−CD18免疫グロブリン鎖をコードするcDNAクローンを単離することができる。このように抗−CD18抗体の重鎖、軽鎖または両方をコードする核酸を得、そして特異的な免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはこれらのいずれかの変異体を生産するための組換えDNA法に従い(例えばヒト化免疫グロブリンを生産するために)、種々の宿主細胞中またはインビトロの翻訳系で使用することができる。
【0042】
ヒトまたはヒト化抗−CD18抗体、またはそれらの重または軽鎖のような変異体をコードする核酸は、原核または真核ベクター(例えばプラスミドまたはウイルスベクターのような発現ベクター)に提供され、そして宿主細胞(例えば形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーションまたは細胞の感染により)に導入され得る。既知の発現制御要素(例えばプロモーター、ターミネーター領域、転写調節領域等)をベクターに含めることができ、または宿主細胞中での抗体または鎖の発現を助長するために宿主細胞のゲノムに組み込むことができる。宿主細胞中でのコードされた鎖(1つまたは複数)の生産は、当該技術分野で知られているように発現に適する条件に細胞を維持することにより達成できる(例えばインデューサーの存在下、適当な塩、増殖因子、抗生物質、栄養補充物が補充された適当な培地等)。所望によりコードされたタンパク質は、宿主細胞または宿主細胞が核酸を発現する培地または組織から回収および/または単離することができる。この生産法には例えば国際公開第92/03918号明細書に記載されているように、トランスジェニック動物の宿主細胞中で抗−CD18抗体またはそれらの鎖の発現を包含する。
【0043】
本明細書で記載するように、本発明の抗−CD18抗体はCD18とそれらのリガンドとの結合を遮断(阻害)することができる。このようにCD18/リガンド結合の阻害は、そのような結合に関係する1以上の機能を阻害するために使用することができる。以下に記載するように種々の方法を使用してリガンドとCD18の結合を阻害を評価することができ、そしてこれらの方法はすなわち、CD18/リガンド結合に関係する機能の阻害を評価するために使用することができる。
結合アッセイ
本明細書で使用するように、「哺乳動物のCD18」とは自然に存在するかまたは内因性の哺乳動物のCD18タンパク質、および自然に存在するかまたは内因性の対応する哺乳動物のCD18タンパク質と同じアミノ酸配列を有するタンパク質(例えば組換えタンパク質)を称する。したがって本明細書で定義するように、この用語には成熟CD18タンパク質、ホモ多量体CD18タンパク質、少なくとも1つのCD18ポリペプチドを含んで成るヘテロメリック(heteromeric)タンパク質(例えば白血球細胞表面抗原Mac−1、LFA−1、p150,95およびCD11d/CD18、その各々が{異なる}CD11サブユニットおよびCD18サブユニットを含んで成る)、これらタンパク質の多形または対立遺伝子変異体、およびこれらタンパク質の他のアイソフォーム(例えば、交互スプライシングまたは他の細胞プロセスにより生成される)を含む。前述のタンパク質の翻訳後に修飾された形態およびそのように修飾されていない形態の両方を含む(例えばグリコシル化および非グリコシル化CD18タンパク質およびCD18−含有ヘテロマー)。哺乳動物のCD18タンパク質は天然の供給源から単離するか、または組換えもしくは他の合成法により生成することができる。自然に存在するまたは内因性の哺乳動物のCD18タンパク質は、成熟CD18、多形もしくは対立遺伝子変異体、および哺乳動物内(例えばヒトおよび非ヒト霊長類)で自然に生じる他のアイソフォーム、およびCD18を含んで成るヘテロメリックタンパク質(例えばMac−1、LFA−1、p150,95およびCD11d/CD18のような白血球細胞表面抗原)のような野生型タンパク質を含む。そのようなタンパク質は例えば哺乳動物のCD18を自然に生産する供給源から回収または単離することができる。自然に存在するかまたは内因性の対応する哺乳動物CD18と同じアミノ酸配列を有するこれらのタンパク質および哺乳動物のCD18タンパク質は、対応する哺乳動物の名前により呼ばれている。例えば対応する哺乳動物がヒトである場合、このタンパク質はヒトCD18タンパク質と命名されている(例えば適当な宿主細胞中で生産された組換えヒトCD18)。
【0044】
哺乳動物CD18タンパク質の「機能的変異体」には、機能的フラグメント、機能的突然変異体タンパク質、および機能的融合タンパク質(例えば突然変異誘発法または組換え法により生産されたもの)を含む。一般に哺乳動物CD18タンパク質のフラグメントまたは部分は、成熟哺乳動物CD18タンパク質に対してアミノ酸残基(すなわち1以上のアミノ酸残基)の欠失(すなわち1以上の欠失)を有するものを含む(アミノ−末端、カルボキシル−末端または内部の欠失のような)。成熟哺乳動物CD18タンパク質に対して連続アミノ酸のみが欠失しているか、または非連続アミノ酸が欠失しているフラグメントまたは部分も想定する。
【0045】
一般に哺乳動物CD18タンパク質の突然変異体には、付加、欠失、置換により、またはこれらの幾つかの組み合わせの、または1以上の連続または非連続アミノ酸残基の差異による哺乳動物CD18タンパク質の天然のまたは人工的な変異体を含む。そのような突然変異は、哺乳動物種間のCD18アミノ酸配列相同性により評価されるような保存または非保存領域であることができる。
【0046】
一般に融合タンパク質は、天然に見いだされる哺乳動物CD18中には存在しない第2部分にペプチド結合を介して連結された哺乳動物CD18(例えばヒトCD18)またはそれらの変異体を第1部分として含んで成るポリペプチドを包含する。すなわち第2部分はアミノ酸、オリゴペプチドまたはポリペプチドであることができる。第1部分は融合タンパク質に対してアミノ−末端の位置、カルボキシル−末端の位置または内部位置であることができる。1つの態様では、融合タンパク質は第1部分として親和性リガンド(例えば酵素、抗原、エピトープタグ)を含んで成り、そして第2部分はリンカー配列およびヒトCD18またはそれらの部分を含んで成る。さらなる(第3または4)部分も存在することができる。
【0047】
哺乳動物CD18タンパク質の「機能的」フラグメント、部分、突然変異体または融合タンパク質とは、本明細書で記載するように哺乳動物CD18タンパク質の少なくとも1つの特徴的機能を有する単離された、組換えの、またはその両方のポリペプチドを称する。好適な機能的変異体は、リガンド(例えばICAM−1およびICAM−2の1つまたは両方)に結合することができ、そして本明細書ではCD18の「リガンド結合変異体」と称する。
【0048】
1つの態様では、哺乳動物CD18の機能的変異体は対応する哺乳動物CD18(例えばGenBank 寄託番号NM 000211に記載されているヒトCD18、または別の霊長類CD18)と少なくとも約85%の配列同一性を、好ましくは該哺乳動物CD18と少なくとも約90%の配列同一性を、そしてより好ましくは少なくとも約95%の配列同一性を共有する。別の態様では、機能的な融合タンパク質は対応する哺乳動物CD18と少なくとも約85%の配列同一性を、好ましくは哺乳動物CD18と少なくとも約90%の配列同一性を、そしてより好ましくは少なくとも約95%の配列同一性を共有する第1部分を含んで成る。配列同一性は、Blastx プログラム(バージョン1.4)のような適当なプログラムを使用して、NCBIウェッブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)で説明されるデフォルトパラメーターのような適当なパラメーターを使用して決定することができる。1つの態様では、Blastx調査に関するパラメーターは、スコアリングマトリックスBLOSUM62、W=3である。別の態様では機能的変異体は、自然に存在する核酸分子とは異なるが遺伝子暗号の縮重により哺乳動物CD18またはそれらの部分もしくは機能的変異体をコードする配列を有する核酸を含んで成る。
【0049】
単離された、または組換えの哺乳動物CD18タンパク質またはそれらの機能的変異体を含んで成る組成物を、結合に適する条件下に維持することができる。そのような条件下で、タンパク質を抗体または抗体フラグメントと接触させ、そして結合を直接的または間接的に検出する。1つの態様では、CD18を自然に発現する細胞または哺乳動物CD18またはそれらの変異体をコードする組換え核酸配列を含んで成る細胞を使用する。細胞はレセプターの発現に適する条件下で維持する。結合に適する条件下で(例えば適当な結合バッファー中)、細胞を抗体またはフラグメントと接触させ、そして結合を標準的な技法により検出する。
【0050】
CD18タンパク質または変異体と抗体または抗体フラグメントとの結合の程度は、適当な対照に対して決定することができる。対照との比較は、例えば抗体またはフラグメントの不存在を含むバックグラウンド条件下でCD18結合をアッセイすることを含んで成ることができ、あるいはCD18と第2抗体(例えばモノクローナル抗体1B4のようなCD18について既知の親和性を有する第2抗体)の結合に対して、CD18と抗体/フラグメントの結合を比較することを含んで成ることができる。CD18タンパク質を含んで成る細胞画分(例えば膜画分)またはCD18を含んで成る合成の組成物(例えばリポソーム)を、結合アッセイで全細胞の代わりに使用することができる。
【0051】
1つの態様では、抗体またはフラグメントをCD18との結合能力を測定する前に適当な標識(例えば蛍光標識、アイソトープ標識、抗原もしくはエピトープ標識、酵素標識)で標識し、そして結合は標識を検出することにより測定する。別の態様では、結合した抗体はCD18結合能が評価される抗体またはフラグメントと特異的に反応する標識した第2抗体を使用して検出する。結合の特異性は、例えば幾つかの既知の方法に従い、競合物として標識もしくは非標識抗体またはリガンドを使用して競合もしくは置換により評価することができる。
【0052】
結合阻害アッセイも、抗体またはフラグメントが抗−CD18抗体であるかどうかを評価するために使用することができる。これらのアッセイでは、抗−CD18抗体の結合が別の化合物とCD18との結合を阻害する。別の化合物は例えば、既知の特異性の抗−CD18抗体またはCD18の既知のリガンド(例えばICAM−1およびICAM−2、またはこれらのいずれかを持つ細胞)またはCD18の機能的変異体であることができる。例えば結合アッセイでは、CD18の既知のリガンド(例えばモノクローナル抗体1B4)の結合をCD18の未知の、または推定されるリガンドの結合と比較するように行うことができる。既知のリガンド/CD18結合の程度の減少は、未知のまたは推定されるリガンドがCD18に特異的に結合することを示す。単離された、もしくは組換え哺乳動物CD18またはそれらの機能的変異体を含んで成る組成物は、リガンドおよび抗体と同時またはいずれかの順序で連続して接触させることができる。
【0053】
抗−CD18抗体の存在を同定する他の方法を使用することができ、そして当該技術分野で知られている多数の抗体−エピトープ結合アッセイを含む。あるいはCD18と既知のもしくは推定される抗−CD18抗体との間の結合は、既知のもしくは推定される抗−CD18抗体の存在および不存在下で、CD18とそれらの天然のリガンド(例えばICAM−1、ICAM−2、またはこれらのいずれかをその表面に発現する細胞)との間の結合に関係する生物学的機能を評価することにより選択的に評価することができる。例として、好中球が内皮細胞表面(例えば血管形成術を施した血管の管腔表面)に結合する能力は、既知のもしくは推定される抗−CD18抗体の存在および不存在下で評価することができ、そして好中球のその場所への結合の阻害は、既知のもしくは推定される抗−CD18抗体がCD18に結合することを示す。
走化性または細胞性刺激に関するアッセイ
走化性アッセイは、抗−CD18抗体がリガンドと哺乳動物CD18またはそれらの機能的変異体との結合を遮断する能力を評価するために使用することができる。そのようなアッセイは、抗−CD18抗体がリガンドと哺乳動物CD18との結合に関係する機能を阻害する能力を評価するためにも使用することができる。これらのアッセイは、化合物により誘導されるインビトロまたはインビボでの細胞の機能的移動に基づく。走化性は、例えば96−ウェルの走化性プレートを使用するアッセイで、あるいは走化性を評価するための他の当該技術分野で既知の方法を使用して評価することができる。例えばインビトロの経内皮(transendothelial)走化性アッセイの使用は、Springer et al.により記載されている(Springer et al.、1994年9月15日に公開された国際公開第94/20142号明細書、その内容は引用により本明細書に編入する;またBerman et al.,Immunol.Invest.17:625−677(1988)も参照にされたい)。内皮を渡ってコラーゲンゲルへの移動も記載された(Kavanaugh et al.,J.Immumol.,146:4149−4156(1991))。例えばマウスL1.2pre−B細胞または走化性が可能な他の適当な宿主細胞の安定なトランスフェクション体を走化性アッセイに使用することができる。
【0054】
一般に、走化性アッセイでは適当な細胞(白血球(例えばリンパ球、好酸球、好塩基球)のような)がバリアーの第1の表面から反対側の第2の表面に向かって、高レベルの化合物に向かうバリアー(例えば内皮、フィルター)中への、またはそれを通る方向性のある運動もしくは移動を監視する。膜またはフィルターは都合の良いバリアーを提供するので、適当な細胞がフィルターの第1の表面から反対側の第2の表面に向かって、高レベルの化合物に向かうフィルター中への、またはそれを通る方向性のある運動または移動が監視される。アッセイの中には膜をICAM−1、フィブロネクチンまたはコラーゲンのような接着し易い物質で被覆するものもある。そのようなアッセイは白血球の「ホーミング」のインビトロの近似を提供する。
【0055】
例えば第1チャンバーから微孔性の膜中へ、またはそれを通って試験する抗体を含有し、そして膜により第1チャンバーから別れている第2チャンバーへの細胞の適当な容器中(手段を含有する)での移動の阻害を検出または測定することができる。化合物に反応した特異的な移動を監視するために、例えばニトロセルロース、ポリカーボネートを含む適当な孔サイズを有する適当な膜が選択される。例えば約3〜8ミクロン、そして好ましくは約5〜8ミクロンの孔サイズを使用することができる。孔サイズはフィルター上で均一であるか、または適当な孔サイズの範囲内であることができる。
【0056】
移動および移動の阻害を評価するために、フィルター中への移動距離、フィルターの第2面に付いているフィルターを渡った細胞の数、第2チャンバー中に蓄積された細胞の数またはその両方を標準技法(例えば顕微鏡)を使用して測定することができる。1つの態様では、細胞は検出可能な標識(例えば放射性同位体、蛍光標識、抗原またはエピトープ標識)を用いて標識し、そして移動は抗−CD18抗体の存在および不存在下で、適当な方法を使用して(例えば放射性、蛍光、イムノアッセイを検出することにより)、フィルターの膜に付いている標識の存在、第2チャンバー中の存在またはその両方を測定することにより評価する。抗−CD18抗体により誘導されるか、または遅れる移動の程度は、適当な対照に対して測定することができる(例えば抗体の不存在下で測定されるバックグラウンドの移動と比較して、第2化合物(すなわち標準)により誘導される移動の程度と比較して、抗体により誘導される非−トランスフェクト細胞の移動と比較して)。
【0057】
T細胞、単球または哺乳動物CD18を発現している細胞に有用である1つの態様では、経内皮移動を監視することができる。この態様では、内皮細胞層を通る通過(transmigration)を評価する。この細胞層を調製するために内皮細胞は、内皮細胞を付着し易くするためにコラーゲン、フィブロネクチンまたは他の細胞外マトリックスタンパク質のような物質で場合により被覆した微孔性フィルターまたは膜上で培養することができる。好ましくは内皮細胞はコンフルエントな単層が形成されるまで培養する。単層形成のために種々の哺乳動物の内皮細胞を利用することができ、それらには例えば静脈、動脈またはヒトの臍帯静脈内皮細胞(クローンテックス(Clonetics)社、サンディエゴ、カリフォルニア州)のような微小血管内皮を含む。特定の哺乳動物レセプターに応答する走化性をアッセイするために、同じ哺乳動物の内皮細胞が好適である:しかしヘテロロガスな哺乳動物種または属に由来する内皮細胞も使用することができる。
【0058】
一般にこのアッセイは、フィルターの第1の表面から反対側のフィルターの第2の表面に向かって、化合物のレベルが増す方に向かう細胞の膜またはフィルター中への、またはそれを通る方向性のある移動を検出することにより行われ、ここでフィルターは第1表面上に内皮細胞層を含む。方向性の移動は第1表面に隣接した領域から生じ、膜中へ、またはそれを通ってフィルターの反対側上にある化合物に向かう。第2表面に隣接する領域に存在する化合物の濃度は、第1表面に隣接する領域内より高い。
【0059】
そのような移動で抗−CD18抗体の効果を試験するために使用する1つの態様では、移動することができ、しかも哺乳動物CD18を発現する細胞を含んで成る組成物を第1チャンバーに配置する。第1チャンバー中の細胞に走化性を誘導することができる1以上のリガンドまたは促進因子(promoter)を含んで成る組成物(誘引機能を有する)を、第2チャンバーに配置する。好ましくは細胞を第1チャンバーに配置する直前に、または細胞の配置と同時に、試験する抗−CD18抗体を含んで成る組成物を好ましくは第1チャンバー内に配置する。このアッセイで哺乳動物CD18を含有するタンパク質に結合し、そしてリガンドまたは促進因子により哺乳動物CD18を発現している細胞の走化性の誘導を阻害する抗−CD18抗体は、CD18を含有するタンパク質が誘導する機能のインヒビターである(例えば刺激機能のインヒビター)。抗−CD18抗体の存在下でリガンドまたは促進因子により誘導される移動の程度における減少は、阻害活性の指標である。別の結合実験(上記を参照にされたい)を行って、阻害が抗体のCD18を含有するタンパク質への結合の結果であるか、または異なるメカニズムを介して起こるのかを決定することができた。
【0060】
組織に化合物(例えばケモカインまたは抗体)を注入することに反応して、組織中への、組織を通る、または組織内の白血球浸潤を監視するインビボアッセイを以下に記載する(炎症のモデルを参照にされたい)。これらのインビボホーミングのモデルは、炎症の部位への移出(emigration)および走化性により細胞がリガンドまたは促進因子に応答する能力を測定し、そして抗−CD18抗体がこの移出を阻害または遮断する能力を評価する。
【0061】
記載した方法に加えて、抗体またはフラグメントのCD18の刺激機能に及ぼす効果は、レセプターを含有する適当な宿主細胞を使用して活性なレセプターにより誘導される細胞性の応答を監視することにより評価することができる。
哺乳動物 CD18 機能のさらなるリガンド、インヒビターおよび/または促進因子の同定
本明細書に記載する抗−CD18抗体の結合および機能を評価するために使用することができる上記のアッセイは、哺乳動物CD18またはそれらの機能的変異体に結合するさらなるリガンドまたは他の物質、ならびに哺乳動物CD18機能のインヒビターおよび/または促進因子を同定するために適合させることができる。例えば抗−CD18抗体の結合特異性(例えばモノクローナル抗体1B4)と同じかまたは類似の特異性を有する作用物質は、抗体を含む競合アッセイを使用して同定することができる。このように本発明はまた、哺乳動物CD18タンパク質に結合するリガンドまたは他の物質、ならびにCD18およびCD18を含有するタンパク質機能のインヒビター(例えばアンタゴニスト)または促進因子(例えばアゴニスト)を同定する方法も包含する。1つの態様では、哺乳動物CD18タンパク質またはそれらの機能的変異体を有する細胞(例えば白血球、該細胞中に導入された該核酸によりコードされる哺乳動物CD18タンパク質または機能的変異体を発現するように操作された細胞系または適当な宿主細胞)をこのアッセイに使用して、CD18またはCD18を含有するタンパク質に結合するリガンドまたは他の物質の効力を同定し、そして評価する。そのような細胞も、発現したタンパク質またはポリペプチドの(あるいはもちろん、細胞が自然に発現するCD18の)機能を評価するために有用である。
【0062】
本発明に従い、CD18またはCD18を含有するタンパク質に結合するリガンドまたは他の物質、およびそのようなタンパク質の機能のインヒビターおよび促進因子を、適当なアッセイで同定し、そしてさらに治療的効果を評価することができる。レセプター機能のインヒビターを使用してCD18またはCD18を含有するタンパク質活性を阻害(低下または防止)することができ、そしてリガンドおよび/または促進因子を使用して、示される場合は正常なCD18またはCD18を含有するタンパク質機能を誘導(誘起または強化)することができる。これらのインヒビターは、自己免疫疾患および移植拒絶を含む炎症性疾患を処置する方法に使用することができ、この方法はCD18またはCD18を含有するタンパク質機能のインヒビターを個体(例えば哺乳動物)に投与することを含んで成る。本明細書に記載するように同定されたリガンドおよび/または促進因子は、タンパク質機能の新規リガンドまたは促進因子を個体に投与することによりCD18またはCD18を含有するタンパク質機能の刺激法に使用することができ、例えば感染性疾患およびガンの処置において有用である白血球機能を選択的に刺激するための新規取り組みを提供する。
【0063】
本明細書で使用するように、哺乳動物CD18タンパク質の「リガンド」とは天然のリガンドおよび天然のリガンドの合成の形態、組換え体またはその両方を含め、哺乳動物CD18タンパク質と結合する特定の種類の物質を称する。哺乳動物CD18−陽性細胞に親和性を有する感染源も哺乳動物CD18タンパク質に結合することができる。好適な態様では、哺乳動物CD18タンパク質のリガンド結合は高い親和性で起こる。
【0064】
本明細書で使用するように、「インヒビター」は哺乳動物CD18タンパク質に特徴的な少なくとも1つの機能(例えばヒトCD18:例えば走化性の刺激、エキソサイトーシスまたは白血球による炎症メディエータの放出)を阻害(低下または防止)する物質である。用語インヒビターは、CD18またはCD18を含有するタンパク質に結合するアンタゴニストを含む物質(例えば、抗体、天然のリガンドの突然変異体、低分子量有機分子、リガンド結合の他の競合インヒビター)、およびCD18またはCD18を含有するタンパク質機能をそれらに結合せずに阻害する物質(例えば抗−イディオタイプ抗体)を称する。
【0065】
本明細書で使用するように、「促進因子」は哺乳動物CD18タンパク質に特徴的な少なくとも1つの機能を促進(誘導し、引き起こし、強化し、または増加する)する物質である(例えばヒトCD18:例えば走化性の刺激、エキソサイトーシスまたは白血球による炎症メディエータの放出)。用語促進因子は、CD18またはCD18を含有するタンパク質に結合するアゴニストを含む物質(例えば、抗体、他の種に由来する天然のリガンドの相同体)、およびCD18またはCD18を含有するタンパク質機能をそれらに結合せずに促進する物質(例えば会合タンパク質の活性化による)を称する。好適な態様では、アゴニストは天然のリガンドの相同体以外である。
【0066】
このように本発明は、例えばリガンド、インヒビター、促進因子および哺乳動物CD18レセプターまたはそれらの機能的変異体に結合する他の物質を含む、哺乳動物CD18タンパク質と結合する作用物質を検出または同定する方法にも関する。この方法に従い、試験する作用物質、本明細書に記載する抗−CD18抗体(例えば1B4、1B4と同じかまたは類似するエピトープ特異性を有する抗体、およびそれらのCD18−結合フラグメント)、および哺乳動物CD18タンパク質、CD18を含有するタンパク質、またはそれらのリガンド結合変異体を含んで成る組成物を、抗−CD18抗体がタンパク質に結合するために適する条件下で合わせ、そして抗体とタンパク質との結合を本明細書に記載する方法または他の適当な方法に従い直接的または間接的に評価する。適当な対照(例えば試験する作用物質の不存在下)に比べて、形成された複合体の量が低下すれば、作用物質が該レセプターまたは変異体に結合することを示す。タンパク質を含んで成る組成物は、タンパク質を持つ、または含んで成る細胞の膜画分であることができる。抗−CD18抗体を放射性同位体、スピン標識、抗原またはエピトープ標識、酵素標識、蛍光基または化学発光基を用いて標識することができる。
【0067】
上記のアッセイは、単独で、あるいは各々または他の適当な方法を組み合わせて使用して、哺乳動物CD18タンパク質に結合するリガンドまたは他の物質、および哺乳動物CD18タンパク質または変異体のインヒビターまたは促進因子を同定することができる。本発明のインビトロ法を高処理量スクリーニングに適用させ、ここで多数のサンプルを処理することができる(例えば96−ウェル形式)。高処理量スクリーニングに適当なレベルで哺乳動物CD18(例えばヒトCD18)を発現している細胞を使用することができ、すなわちこれらの細胞は哺乳動物CD18タンパク質のレセプターに結合するリガンドまたは他の物質、およびインヒビターまたは促進因子を同定および/または単離するために大変価値がある。CD18またはCD18を含有するタンパク質の発現は、種々の方法で監視することができる。例えば発現はそのようなタンパク質に結合する本発明の抗体を使用して監視することができる。また市販されている抗体を使用して、CD18を含んで成る抗原−またはエピトープ−標識した融合タンパク質(例えばFLAG標識レセプター)を検出することができ、そして所望のレベルで発現している細胞を選択できる。
【0068】
哺乳動物CD18タンパク質またはそれらの機能的変異体をコードする核酸を発現系に組み込んで、CD18タンパク質またはCD18を含有するタンパク質を生成することができる。哺乳動物CD18タンパク質または変異体をコードする組換え核酸を含んで成る構築物で安定に、または一時的にトランスフェクトされた細胞中で、あるいはレセプターを含有する細胞画分中(例えば、トランスフェクトされた細胞に由来する膜画分、タンパク質を取り込んだリポソーム)で発現されるタンパク質のような単離された、組換えの、またはその両方のCD18タンパク質、CD18を含有するタンパク質、またはこれら1つの変異体は、CD18機能に関する試験に使用することができる。所望によりタンパク質はさらに精製することができる。CD18機能の試験は、インビトロまたはインビボで行うことができる。
【0069】
単離された、組換えの、またはその両方のヒトCD18のような哺乳動物CD18タンパク質、CD18を含有するタンパク質またはこれらの1つの機能的変異体は、本発明の方法に使用することができ、ここで化合物の効果が本明細書に記載するレセプター機能を監視することにより、または他の適当な技法を使用して評価される。例えば安定なまたは一過性のトランスフェクション体(例えばバキュロウイルスが感染したSf9細胞、マウスL1.2pre−B細胞の安定なトランスフェクション体)を結合アッセイに使用することができる。例えば走化性アッセイには、Jurkat 細胞または走化性となることができる他の適当な細胞の安定なトランスフェクション体(例えばマウスL1.2pre−B細胞)を使用することができる。
【0070】
本発明の方法に従い、化合物は個別にスクリーニングされることができ、または1以上の化合物を本明細書の方法に従い同時に試験することができる。化合物の混合物を試験する場合、記載する工程により選択される化合物を(適当に)分離し、そして適当な方法(例えばPCR、シークエンシング、クロマトグラフィー、質量分析)により同定することができる。試験サンプル中の1以上の化合物(例えばリガンド、インヒビター、促進因子)の存在も、これらの方法に従い決定することができる。
【0071】
組み合わせ化学合成または他の方法により生成される化合物の大きな組み合わせライブラリー(例えば有機化合物、組換えまたは合成ペプチド、「ペプトイド(peptoids)」、核酸)を試験することができる(例えばZuckerman,R.N.et al.,J.Med.Chem.,37:2678−2685(1994)およびそこに引用されている技術文献を参照にされたい;またOhlmeyer,M.H.J.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:10922−10926(1993)および標識した化合物に関してDeWitt,S.H.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6909−6913(1993);Rutter,W.J.et al.米国特許第5,010,175号明細書;Huebener,V.D.et al.,米国特許第5,182,366号明細書;およびGeysen,H.M.、米国特許第4,833,092号明細書を参照にされたい)。本方法により組み合わせライブラリーから選択される化合物が独自の標識を持つ場合、クロマトグラフィー法による個々の化合物の同定が可能である。
【0072】
1つの態様では、ファージ展示法を使用する。例えば哺乳動物CD18タンパク質、CD18を含有するタンパク質またはこれらの1つの機能的変異体、抗−CD18抗体、およびポリペプチドを展示するファージ(例えば単一ファージ、またはライブラリーのような複数または多様(multiplicity)なファージ)を、抗体がCD18を含有するタンパク質/変異体と結合するために適当な条件下で混合することができる(例えば適当な結合バッファー中で)。抗体と競合し、そしてタンパク質と結合することができるファージは標準的な技法または他の適当な方法を使用して検出または選択することができる。結合したファージは適当な溶出バッファーを使用してレセプターから離すことができる。例えばイオン強度またはpHの変化によりファージの放出を導くことができる。あるいは溶出バッファーは放出成分を含んで成ることができ、または成分は化合物(例えば結合を競合的に阻害するリガンド、インヒビターおよび/または促進因子のような展示するペプチドとCD18を含有するタンパク質/変異体との結合を破壊することができる1以上の化合物)との結合が破壊するように設計することができる。場合により選択工程を繰り返すことができ、または他の選択工程を使用してタンパク質/変異体と結合するファージをさらに濃縮することができる。展示されたポリペプチドを特性決定することができる(例えばファージDNAをシークエンシングすることにより)。同定されたポリペプチドを生成し、そしてさらに結合について、そしてインヒビターまたは促進因子の機能について試験することができる。安定性が増大し、または他の所望の特性を有するそのようなペプチドの同族体を生成することができる。
【0073】
1つの態様では、無作為の配列の核酸によりコードされるアミノ−末端ペプチドを持つコートタンパク質を含んで成る融合タンパク質を発現し、そして展示するファージを生成することができる。CD18を含有するタンパク質/変異体を発現する適当な宿主細胞および抗−CD18抗体をファージと合わせ、結合したファージを選択し、回収し、そして特性決定する。(Gタンパク質共役レセプターと使用されるファージ展示法を検討しているDoorbar and Winter,J.Mol.Biol.244:361(1994)、および1997年3月6日に公開された国際公開第97/08320号明細書(Morphosys)を参照にされたい)。
【0074】
哺乳動物CD18タンパク質に結合する有力なリガンドまたは他の物質、またはそのインヒビター、促進因子またはその両方の他の供給源には、限定するわけではないが、ICAM−1、ICAM−2、ICAM−3、C3bi、第X因子、フィブリンおよびフィブリノーゲンの自然に存在する、合成の、または組換え変異体を含む既知のCD18リガンドの変異体、他の誘引物質またはケモカインのような物質、それらの変異体、低分子量有機分子、他のインヒビターおよび/または促進因子(例えば抗−CD18抗体、アンタゴニスト、アゴニスト)、インヒビターおよび/または促進因子(例えばアンタゴニストまたはアゴニスト)、およびCD18機能を阻害することができる適当なレセプターペプチドまたは同族体のような哺乳動物CD18の可溶性部分を含む。
炎症のモデル
治療薬としてインビボで抗−CD18抗体の効果を評価するために使用することができる炎症のインビボモデルが利用可能である。例えば哺乳動物のCD18と反応性のケモカインおよび抗体またはそれらのフラグメントの、ウサギ、マウス、ラット、モルモットまたはアカゲザル(好ましくはカニクイザルのような霊長類)のような適当な動物への皮内注射で白血球の浸潤を監視することができる(例えばVan Damme,J.et al.,J.Exp.Med.,176:59−65(1992);Zachariae,C.O.C.et al.,J.Exp.Med.,171:2177−2182(1990):Jose,P.J.et al.,J.Exp.Med.,179:881−887(1994)を参照にされたい)。1つの態様では、皮膚の生検を白血球の浸潤について組織学的に評価する(例えば好酸球、顆粒球)。別の態様では、走化性および管外遊出が可能な標識した細胞(例えば111Inで標識した哺乳動物CD18を発現している安定にトランスフェクトされた細胞)を動物に投与する。例えば評価する抗−CD18抗体は、リガンドまたはアゴニストを試験動物に投与する前、同時または後のいずれかに投与することができる。インヒビターの不存在下での浸潤の程度と比べて、抗体の存在下での浸潤の程度の減少は、阻害の指標である。
診断、治療および予防法
Mac−1白血球細胞−表面抗原(およびLFA−1、p150,95およびCD11d/CD18のような他のCD18を含有するタンパク質)のCD18サブユニットに特異的に結合する分子が、白血球と血管内皮との相互作用を阻害することが見いだされた。そのような分子により阻害される相互作用には
・白血球と血管内皮との結合
・血管内皮を通る白血球の移動
・内膜血管組織への白血球の浸潤
・血管組織中の白血球から走化性因子の放出
・血管組織中の白血球から増殖因子の放出
・血管組織から、白血球の結合に付随する走化性因子の放出、および
・血管組織から、白血球の結合に付随する増殖因子の放出
を含む。
【0075】
このようにCD18を含有するタンパク質(特にCD18を含有する白血球細胞表面抗原を含む)の相互作用を阻害するためにCD18に特異的に結合する分子を、このような白血球−血管内皮相互作用を阻害、防止または逆転させるために使用することができる。
【0076】
本発明はこのように、哺乳動物の血管中の狭窄(再狭窄を含む)を抑制し、さらに防止する方法を含む。この方法は哺乳動物に、CD18を含んで成る哺乳動物の少なくともCD18タンパク質部分に特異的に結合する抗−CD18抗体を投与することを含んで成る。これにより哺乳動物の血管の狭窄が抑制される。実質的に同じ方法を使用して、哺乳動物の血管内の既往の狭窄および関連する障害を軽減することができる。例えばこの方法を使用してヒトの冠状および脳血管の狭窄または再狭窄を抑制または防止することができ、あるいはそのような血管内の既往の狭窄を軽減することができる。そのような狭窄に関連する症状および障害も同様に抑制、防止または軽減することができる。狭窄および再狭窄に付随する症状には、例えば狭窄した部位から上流または下流に位置する組織中の短期−および長期−の虚血、ならびに付随する疼痛および組織壊死を含む。狭窄に関係する障害の例には、狭窄の存在によりもたらされ得る障害(例えば心筋梗塞)および狭窄が単なる障害の症状である障害(例えば高コレステロール血症および付随するアテローム硬化症)の両方を含む。
【0077】
本明細書に記載する方法を使用して抑制し、防止し、または軽減することができる狭窄には、外科的、血管形成的または血管内皮を混乱される他の意図的な介入を含む。そのような介入の例には、例えば血管撮影法、血管形成術(例えば、バルーン、アテレクトミー、レーザー血管形成術またはロタブレーション(rotablation)およびステント留置を含む、または含まない他の適当な方法)、動脈内膜切除術、冠状動脈バイパス術、ステント留置(例えば血管内ステント、冠状ステント)、他の血管介入法(例えば血管外科医術、血管移植、末梢ステントの散開(deployment))、補綴バルブまたは管の挿入(例えば自己、非−自己または合成血管移植)、臓器、組織または細胞の移植、および静脈内近接照射療法を含む。特別な観点では、この方法を使用して経皮経管的冠状動脈形成術(PTCA)のような冠状動脈介入術、あるいはステントの留置を含む血管介入術(例えばPTCAに続いて1以上の冠状動脈を含む血管内ステントの留置)後に起こる狭窄または再狭窄を抑制、防止、または軽減するために使用することができる。
【0078】
本明細書に記載する方法を使用して抑制、防止または軽減することができる狭窄症を導き得る種類の血管内皮の混乱には、例えば血管内皮の露出、血管組織層の他の血管組織層からの切開(例えば内皮、内膜、弾性層等)、血管の内膜組織層の破壊、および血管組織層の意図的な切開(例えば切断(cutting)血管形成バルーンを使用する)を含む。
【0079】
種々の既知の方法を使用して患者の血管傷害を診断することができる。そのような方法の例には、血管の特定領域を通って流れる染料のX−線透視検査、臨床的判断に基づく疼痛のような症状の存在、または身体検査により示される兆候を含む。あるいは傷害は上で検討した外科的または他の意図的な血管介入の1つを行うと生じるか、あるいは患者の血管の混乱(例えばアテローム硬化症)に伴うことが知られている疾患または障害の診断後に生じると思われる。
【0080】
これらの狭窄を抑制し、そして軽減する方法で使用することができる抗−CD18抗体(1つまたは複数)は、本明細書に記載する実質的に任意の抗−CD18抗体であることができる。例えば抗体はモノクローナル抗体1B4または1B4と同じエピトープ特異性を表す抗体(すなわち1B4が結合するCD18の同じエピトープと特異的結合する)であることができる。このように1つの態様では、使用する抗体は実質的CD18を含有するタンパク質のCD18部分にのみ特異的に結合する(例えば実質的にMac−1白血球細胞−表面抗原のCD18サブユニットにのみ結合する)。
【0081】
特定の操作理論に拘束されないが、抗−CD18抗体とCD18を含有するタンパク質との結合はタンパク質の天然のリガンドとタンパク質との結合を阻害すると考えられる(例えばMac−1とICAM−1との結合が阻害され得る)。CD18を含有するタンパク質とそれらの天然のリガンドとの結合の阻害は、通常、そのような結合に付随する生理学的効果(例えば白血球の血管内皮への付着)を抑制する。生理学的効果が狭窄に関係する時、狭窄は生理学的効果を阻害することにより抑制、防止または軽減される。すなわち、抗−CD18抗体の狭窄およびそれらに付随する症状および障害に及ぼす阻害/防止/軽減効果は、白血球の細胞表面CD18含有タンパク質と血管細胞の表面上の、血管細胞の周囲の細胞外マトリックス中、またはその両方のレセプター分子との間の結合により媒介される、白血球と内皮および内膜血管組織細胞との間の相互作用の阻害に起因し得る。
【0082】
抗−CD18抗体による好中球と血管細胞(特に血管内皮細胞)との間の相互作用の阻害が、そのような抗体を投与することに起因し得る有意な程度の抗−狭窄効果の原因であると考えられる。それでもなおCD18を含有するタンパク質は、リンパ球、単球、顆粒球、T細胞および好塩基球を含む他の白血球の細胞表面上に生じると認識されている。CD18を含有するタンパク質と結合することにより、抗−CD18抗体はこれらの細胞の狭窄症に関連する症状および障害への貢献を阻害することができ、そしてさらにこれらの細胞の狭窄症自体への貢献も阻害できる。
【0083】
本明細書に記載する方法の操作性はその操作性を説明するために示された理論に依存しないが、以下は真実であると考えられる。インテグリンはCD18を含む種類の白血球の細胞表面タンパク質であると認識されている。各インテグリンはCD11アイソタイプ(すなわちCD11a、CD11b、CD11cおよびCD11dの1つ)単量体およびCD18単量体から成るヘテロ二量体である。インテグリンは他の細胞の細胞−表面タンパク質および細胞外マトリックスのタンパク質と特異的に結合する。インテグリンが特異的に結合すると知られているタンパク質には、ICAM−1、ICAM−2、ICAM−3、C3bi、第X因子、フィブリンおよびフィブリノーゲンを含む。例えばMac−1抗原(CD11b/CD18)は、ICAM−1、C3bi、第X因子、フィブリンおよびフィブリノーゲンに特異的に結合することが知られている。抗−CD18抗体とインテグリンとの結合は、インテグリンと1以上のこれらの因子との間の結合を阻害することができ、その幾つかは血管の細胞外マトリックスおよび血管細胞の表面上(血管内皮細胞を含む)で起こる。インテグリンと1以上のこれらのリガンドの結合が白血球と血管組織との結合を促進する限り、血管組織を通るまたはその中への白血球の浸潤、白血球または血管細胞のいずれかからの走化性(誘引物質またはケモリペラント)因子または増殖因子の放出、あるいは狭窄症に関連する他の症状は、そのような結合の阻害がそのような症状を軽減し、抑制し、さらに逆転する。
【0084】
本明細書に記載する抗−CD18抗体は、狭窄の処置後に再狭窄が再発するかまたは再発する危機にある血管を含む、狭窄が生じる実質的に任意の哺乳動物の血管中の狭窄を処置するために使用することができる(例えば、通常のまたは切断バルーン血管形成術を使用する経皮経管的冠状動脈形成術の後の冠状動脈で)。哺乳動物の血管は好ましくはヒトの血管、特にヒトまたはヒト化抗体(例えばモノクローナル抗体1B4)が使用される時のヒトの血管である。
【0085】
狭窄(および再狭窄)がよく起こる血管には、外科的または血管形成術的介入により、または外傷的傷害(押し潰される(crushing)種類の傷を含む)によるような血管内皮が外傷的に混乱した血管を含む。外傷的に混乱した内皮を有する血管の例には、互いに移植した血管(すなわち、移植する切片の起源および宿主の同一性(1つまたは複数)にかかわらず、移植された管切片および移植される切片の両方を含む)、外科的に穿刺または切り込みを入れられた血管、中で血管形成バルーンまたは他の膨張手段が膨張した血管、血管の一部または血管中のプラークまたは他の障害物を除去するためにレーザー血管形成術を施した部分を含んで成る血管、ステントが留置された血管等を含む。
【0086】
狭窄は内皮への外傷的傷害を経験しなかった血管でも起こることが知られているが、ここでは内皮の漸進的悪化または分解が起こり、しばしば内膜の肥厚化、細胞、脂質、ミネラルまたは他の細胞外材料または両方の蓄積が伴う。血管内皮の漸進的分解を導く疾患の例には、アテローム硬化症および動脈硬化を含む。アテローム硬化症は少なくとも一部は血管内皮の傷害部位への白血球の局在化に起因し、続いてプラーク形成、そして最終的に狭窄すると考えられ、本明細書に記載する防止および治療法は狭窄が起こる前に、あるいは疾患の大変早い段階でアテローム硬化症を抑制または防止するために使用することができる。さらにそれらの治療法は、例えばアテローム硬化症のプラークの収縮または消散を誘導することにより、および血管内皮の傷害部位への白血球の局在化を阻害することにより既往のアテローム硬化症を軽減するために使用することができる。すなわち狭窄の「抑制、防止または軽減」には、この障害のさらに比較的早期の段階(切迫した狭窄症が起こるはるか以前に)で、アテローム硬化症の抑制、防止または軽減を含む。
【0087】
本明細書に記載する治療および防止法は、狭窄(または再狭窄)が起こる実質的に任意の血管の狭窄を抑制、防止または軽減するために使用することができ、この方法には白血球と血管組織との相互作用に無関係であると思われる大動脈根および大動脈弁狭窄症のような先天的な狭窄症に必ずしも応用できるとは限らないと理解される。例えば本明細書に記載する方法は、冠状および脳血管の狭窄症を処置し、防止し、または抑制するために使用することができる。
【0088】
本明細書に記載する治療的および防止的方法に使用する抗−CD18抗体は、本開示に記載する任意の種類の抗−CD18抗体であることができる。例えば全抗体を使用することができる(例えば、ヒトCD18に特異的に結合する単離されたマウス抗体)。あるいは抗−CD18抗体は、Fv、Fab、Fab’またはF(abN)2フラグメントのような全抗体のフラグメントであることができる。抗−CD18抗体はヒトから、非ヒト哺乳動物から、非ヒト脊椎動物から、ランダムまたは合成抗体のライブラリーから単離された抗体であることができる。さらに抗−CD18抗体は異なる起源から得たセグメントを含んで成る抗体であることができる(すなわちキメラ抗体)。例として、抗体はCD18に特異的に結合するマウス抗体と同じ領域のアミノ酸配列を有する相補性決定領域を有することができ;同じ抗体は1以上のヒト抗体またはコンセンサスなヒト抗体配列に由来するアミノ酸配列を有する非−相補性決定領域(構造的、枠組または定常領域とも言われる)を有することができる。この抗体はヒト化抗体の例でもある(すなわち、抗体の少なくとも一部は非ヒト起源に由来するが、抗体の少なくとも他の部分はそのアミノ酸配列という意味でヒト抗体により一層近い抗体となるように修飾された抗体)。本明細書に記載した方法または当該技術分野で既知の、または今後開発される方法を使用して、ヒト化される抗−CD18抗体は本開示で記載する任意の方法に使用することができる。
【0089】
本明細書に記載する方法に従い抗−CD18抗体を哺乳動物に投与するために使用する経路および方法は、重要ではない。必要なすべてのことは、抗−CD18抗体が非−変性状態で作用すべき血管の細胞(1つまたは複数)または組織(1つまたは複数)に、あるいは血管の細胞(1つまたは複数)または組織(1つまたは複数)と接触し得る白血球に提供されることである。すなわち抗−CD18抗体を血管組織(例えば血管内膜組織または血管内皮組織)に、組織への注射により、または組織を外科的に露出した後に組織に局所的に適用することにより直接提供することができる。あるいは、そして好ましくは抗−CD18抗体は、抗−CD18抗体を血流に提供することにより哺乳動物に投与することができ、そこから抗体はCD18を含有するタンパク質に血流中に存在する白血球の表面で結合することができる。抗−CD18抗体をリンパへ、脾臓へ、胸腺へ、または哺乳動物中で白血球を見いだすことができる他の部位への投与も使用することができる。
【0090】
可能な場合は、抗−CD18抗体の哺乳動物の血流への提供は好ましくは血管内皮の破壊前に行う(例えば哺乳動物の血管中の外科的または血管形成的介入の前)。しかし抗−CD18抗体は、血管内皮の破壊時に、またはさらにそれらのかなり後でも、特に軽減される狭窄障害が進行中の障害であるか、処置前のかなりの期間に検出できない障害である時(例えばアテローム硬化症)でも哺乳動物に投与することができる。すなわち抗−CD18抗体は、血管組織の傷害前、最中または後に投与することができる。
【0091】
哺乳動物の血中の抗−CD18抗体濃度は、CD18を含有する白血球細胞表面抗原の実質的にすべて、または少なくとも大部分の画分(すなわち、50%、60%、70%、80%、90%または95%以上)が、少なくとも1つの抗体のコピーで占有されていることを維持するために十分なレベルで維持することが有利である。これは哺乳動物に抗−CD18抗体の多用量を投与することにより、または抗体の徐放性組成物を投与することにより達成することができる。抗体含量および投与時期は、日常的な実験により経験的に決定することができる。抗−CD18抗体の半減期(すなわち機能的な寿命)は、投与される哺乳動物により通常生成される抗体に抗−CD18抗体が似ているほど、長くなるだろう。すなわち哺乳動物がヒトである時、投与する必要がある抗−CD18抗体の量、ならびに必要な投与頻度を下げるためにヒトまたはヒト化抗体を使用することが好ましい。
【0092】
典型的には、効果的な量は成人1日あたり約0.01ミリグラムから1日あたり約100ミリグラムの範囲であることができる。好ましくは投薬範囲は1日あたり約1ミリグラムから1日あたり約100ミリグラムの範囲である。抗体およびそれらの抗原−結合フラグメント、特にヒト、ヒト化およびキメラ抗体および抗原−結合フラグメントは、他の種類の治療薬よりも低い頻度で投与できることが多い。例えば抗体の効果的量は、1キログラムの体重あたり約0.01ミリグラムから1キログラムの体重あたり約5〜10ミリグラムの範囲で、毎日、毎週、隔週または毎月投与することができる。
【0093】
本明細書に記載する1以上の抗−CD18抗体を、抗体(1つまたは複数)および狭窄を抑制、防止または軽減するための1以上の抗体の投与を記載する使用説明書(instruction material)を含むキットの状態で包装することができる。この使用説明書はさらに、例えば抗−CD18抗体(1つまたは複数)を含んで成る医薬組成物に関して関連する投薬および投与情報を含むことができる。
【0094】
本明細書に記載する抗−CD18抗体は、CD18を含有するタンパク質を持つ(すなわちそれらの表面上または細胞外の溶媒が接近できる位置に現す)細胞および組織を検出するために使用することができる。抗−CD18抗体は、細胞および組織構造が自然に存在する方向から人工的に再配置されたサンプル(例えば細胞のホモジネート)中に、CD18を含有するタンパク質を検出するためにも使用することができる。細胞、組織または体液(例えば血液)サンプル中のCD18を含有するタンパク質の検出は、そのようなタンパク質を持つ細胞(例えば白血球)の存在を示すことができる。抗−CD18抗体は、抗体(および抗体が結合し得るタンパク質、細胞または組織)の検出を容易にするために、例えば蛍光、着色、酵素または放射性標識(例えばガンマ線を放射する放射性核種のようなガンマ照射線源)を用いて標識することができる。
【0095】
CD18を含有するタンパク質を持つ細胞の存在は、特にサンプルが採取された個体に関して通常よりも高いレベルで、あるいは狭窄症または狭窄症に関連する障害に罹患していない、発症中の、または発症すると前以て診断された患者で自然に起こるレベルより高いか、その範囲のレベルで、サンプルを採取した個体がそのような障害を発症すると前以て診断し、発症しているか、または現在罹患していることを示すことができる。医療現場の人に都合が良いように、このキットの成分(すなわち1以上の抗−CD18抗体および使用説明書)は、個体から得たサンプル中にCD18を含有するタンパク質の存在を評価するキットの状態で包装することができる。
【0096】
本明細書に記載する抗−CD18抗体は、調査応用を含む様々な応用に有用である。1つの態様では、抗体を適当な標識(例えば蛍光標識、化学発光標識、同位体標識、抗原またはエピトープ標識または酵素標識)で標識する。例えば標識はCD18タンパク質、CD18を含有するタンパク質、それらの天然の変異体またはそれらの部分を単離および/または精製し、そしてCD18構造(例えば立体配置)および機能を研究するために使用することができる。
【0097】
さらに本発明の種々の抗体を使用してCD18を検出するか、または例えばT細胞(例えばCD26+細胞、CD45RO+細胞)、好中球、好酸球上、あるいはレセプター遺伝子でトランスフェクトした細胞上のタンパク質発現を測定することができる。このように、診断または調査目的で抗体はセルソーティング(例えばフローサイトメトリー、蛍光活性化セルソーティング)のような応用に用途を有する。
【0098】
典型的には診断アッセイには、抗−CD18抗体とCD18またはCD18を含有するタンパク質との結合から生じる複合体の形成を検出する必要がある。診断目的には、抗体(1つまたは複数)は標識するか、または非標識であることができる。例えば抗体は直接標識することができる。限定するわけではないが、放射性核種、フルオロホア、酵素、酵素基質、酵素のコファクター、酵素インヒビターおよびリガンド(例えばビオチン、ハプテン)を含め種々の標識を使用することができる。当業者には多数の適切なイムノアッセイが知られている(例えば米国特許第3,817,827号;同第3,850,752号;同第3,901,654号および同第4,098,876号明細書を参照にされたい)。非標識である時、抗−CD18抗体は例えば凝集アッセイのように適当な手段を使用して検出することができる。非標識抗−CD18抗体は、抗−CD18抗体と特異的に結合する(例えば抗−イディオタイプ抗体または非標識免疫グロブリンに特異的な他の抗体)標識抗体(例えば第2抗体)のような抗体を検出するために使用することができる1以上の適当な試薬、あるいは他の適当な試薬(例えば標識プロテインA)と組み合わせて使用することができる。
【0099】
1つの態様では、本明細書に記載する抗−CD18抗体は酵素イムノアッセイに使用することができ、ここで主題の抗体またはそれと特異的に結合する抗体を酵素に連結する。哺乳動物のCD18タンパク質を含んで成る生物サンプルが抗体(1つまたは複数)と合わせられる時、抗−CD18抗体とCD18タンパク質との間で結合が起こる。1つの態様では、ヒト血液のような哺乳動物のCD18タンパク質を発現している細胞を含有するサンプルと抗体と合わせ、そして抗体とヒトCD18タンパク質を持つ細胞との間に結合が起こる(すなわちエピトープを含んで成る細胞が抗−CD18抗体に認識される)。これらの結合した細胞は非結合試薬と分けることができ、そして抗体に結合した細胞の存在は、例えばサンプルを、酵素が作用した時に色または他の検出可能な変化を生じる酵素の基質と接触させることにより測定することができる。別の態様では、主題の抗体は非標識であることができ、そして手段の抗体を認識する第2の標識した抗体を加えることができる。
【0100】
生物サンプル中に哺乳動物のCD18タンパク質の存在を検出するために有用なキットも、本開示の観点で調製することができる。そのようなキットは、抗−CD18抗体および抗体とCD18との間の複合体の存在を検出するために適する1以上の補助的な試薬を含む。抗体は凍結乾燥状態で、単独または他のエピトープと特異的に結合するさらなる抗体と組合わせて提供することができる。標識または非標識であることができる抗体は、付属の材料(例えばTris、リン酸および炭酸バッファーのようなバッファー、安定化剤、賦形剤、殺生物剤、不活性タンパク質{例えばウシ血清アルブミン}、またはこれら幾つかの組み合わせ)と共にキットに含むことができる。例えば抗体は付属の材料との凍結乾燥混合物として提供することができ、または付属の材料は使用者が合わせるように別に提供することができる。一般にこれらの付属材料は、活性な抗体の量に基づき約5重量%未満で存在し、そして抗体濃度に基づき、少なくとも約0.001重量%未満で存在し得る。キットに第2抗体が含まれる時、第2抗体は抗−CD18抗体と特異的に結合することができ、第2抗体はキット中に例えば別のバイアルまたは容器中で提供され得る。第2抗体が存在するならば、それを標識することができ、そして上記の抗体配合物に類似する様式で配合することができる。
【0101】
同様に、本発明は細胞による哺乳動物CD18またはCD18の部分の発現を検出および/または定量する方法に関する。この方法に従い、細胞またはそれらの画分(例えば膜画分)を含んで成る組成物を抗−CD18抗体(例えばモノクローナル抗体1B4)と、抗体とタンパク質との結合に適する条件下で接触させ、そして結合を監視する。抗体の検出は抗体とCD18との間の複合体の形成の指標であり、タンパク質の存在を示す。抗体と細胞との結合は、例えば「結合アッセイ」の見出しの元で上記のように測定することができる。この方法を使用して個体から得た細胞上のCD18の発現を検出することができる(例えば血液、唾液または他の体液のようなサンプル中の)。T細胞または単球の表面上のCD18の発現レベルも、例えばフローサイトメトリーにより測定することができ、そして発現のレベル(例えば染色強度)を、疾患の疑い、進行または危険性と相関させることができる。
【0102】
本明細書に記載する抗−CD18抗体の別の用途は、哺乳動物の血液から抗−CD18抗体と特異的に結合する白血球を除去することである。個体の血流からそのような細胞を除去する(または少なくとも数を減らす)ことにより、個体の血管中の狭窄および関連する症状および障害を抑制、防止または軽減することができる。例として、抗−CD18抗体を固体支持体に固定し、そして個体から得た血液を支持体と接触させた後(ここでCD18タンパク質を持つ細胞は支持体に結合する)、個体の血流に血液を戻すことができる。
投与モデル
本明細書に記載する1以上の抗−CD18抗体は、単独または別の薬剤もしくは試薬と(事前に、同時に、または後に)組み合わせて、適切な経路により個体に投与することができる。例えば本発明の抗体は別のモノクローナルまたはポリクローナル抗体と(例えば限定するわけではないが細胞表面免疫グロブリンレセプターおよびセレクチンを含む他の白血球細胞表面抗原に結合する抗体と組み合わせて)、または予防的もしくは治療的処置に使用する市販のガンマグロブリンおよび免疫グロブリン生成物のような既存の血漿生成物と組み合わせて使用することができる。抗−CD18抗体は、抗生物質および/または抗微生物剤と一緒に与えられる別個に投与される組成物として使用することができる。抗−CD18抗体は抗−ウイルス剤、免疫抑制剤(例えばシクロスポリンAのようなカルシニューリンインヒビター;プレドニゾンまたはメチルプレドニゾロンのようなグルココルチコイド;およびアザチオプリンまたはマイコフェノール酸のような核酸合成インヒビター)、インターフェロンおよびTh2−生産サイトカインのようなサイトカイン、および副腎皮質刺激ホルモンのようなホルモンと組み合わせて投与することもできる。
【0103】
効果的な量の抗体またはフラグメント(すなわち1以上の抗体またはフラグメント)を投与する。効果的な量は、CD18機能の阻害に十分な量となるような所望の治療(予防を含む)効果を投与の条件下で達成するために十分な量であり、そしてこれによりヒトにおける狭窄症または狭窄症に関係する症状または障害を抑制、防止または軽減する。
【0104】
種々の投与経路が可能であり、それには必ずしも限定する必要はないが、処置する疾患または症状に応じて経口、食事、局所、非経口(例えば静脈内、動脈内、筋肉内、皮下注射)、吸入(例えば気管内、眼内、鼻内または経口吸入、点鼻)、眼内を含む。他の適当な投与法には、再充填可能または生分解性デバイスおよび緩効性ポリマーデバイスを含むこともできる。本発明の医薬組成物は他の薬剤との併用療法の一部として投与することもできる。
【0105】
投与すべき抗−CD18抗体の製剤は、選択した投与経路および製剤(例えば溶液、乳液、カプセル)に従い変動するだろう。投与すべき抗−CD18抗体を含んで成る適切な医薬組成物は、生理学的に許容される賦形剤またはキャリアー中に調製することができる。抗体の混合物を使用することもできる。溶液または乳液に適当なキャリアーは、例えば塩水および緩衝化媒質を含む水性またはアルコール性/水溶液、乳液または懸濁液を含む。好適な賦形剤は、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸化リンゲルまたは固定油を含む。様々な適切な水性キャリアーが当業者には知られており、それらには水、緩衝水、緩衝塩水、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)、デキストロース溶液およびグリシンを含む。静脈内賦形剤は種々の添加剤、保存剤または流体、栄養または電解質補充物を含むことができる(一般に、レミングトンの製薬科学(Remington’s Pharmaceutical Science)、第16版、Mack、編集、1980を参照にされたい)。組成物は生理学的条件に近づけることが必要である時、pH調整剤および緩衝化剤および毒性調整剤のような場合により医薬的に許容される補助物質、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムおよび乳酸ナトリウムを含むことができる。本発明の抗−CD18抗体フラグメントは保存用に凍結乾燥させ、そして技術的に既知の凍結乾燥および再構成技法に従い、使用前に適当なキャリアー中で再構成することができる。選択した媒質中の有効成分(1つまたは複数)の最適濃度は、当業者に周知な手法に従い経験的に決定することができ、そして最終的には所望する医薬製剤に依存するだろう。吸入には、抗体またはフラグメントを可溶化し、そして投与に適するディスペンサー(例えば噴霧器、ネブライザーまたは加圧型エアゾールディスペンサー)に充填することができる。
【0106】
冠詞“a”および“an”は、本明細書では1以上(すなわち少なくとも1)の名詞の文法的目的語を指すために使用する。例として「要素(an element)」は1以上の要素を意味する。
【0107】
これから本発明を以下の実施例を参照にして記載する。この実施例は具体的説明の目的でのみ与え、そして本発明は実施例により限定されることはないが、ここに提供する教示の結果として明白なすべての変更態様を包含する。
【0108】
【実施例】
この実施例で与える実験において、カニクイザルの再狭窄モデルでヒトCD18と特異的に結合するマウスモノクローナル抗−CD18抗体の使用を評価した。
【0109】
カニクイザルは体重に基づき、IgG2aアイソタイプ対照(S−S.1)として無関係なマウスモノクローナル抗体(mAb)および抗−ヒトCD18mAb(1B4)のいずれかの処置を受ける群に無作為に分けた。動物には1−日目にmAbの負荷用量を静脈内に投与し(IV)、続いて1〜13日まで毎日SC注射を行った。1日目にすべての動物が再狭窄症のモデルとして両肢にバルーン血管形成術が誘導する腸骨大動脈内皮露出を行い、続いて静脈内ステントを留置した。動物は試験期間の終わりに安楽死させ、潅流固定を可能とし、そして腸骨大動脈および他の組織サンプルを集めた(表Aを参照にされたい)。
【0110】
処置の効力はステント留置および実験の終了時に定量的な血管形成の使用、および腸骨大動脈組織の免疫組織学的および形態計測的評価により評価した。血液サンプルは血清mAbレベル(薬物動態学)、白血球mAb結合(薬力学)、抗−mAbアンチグロビン応答(免疫原性)、ならびに血液学および血清化学(安全性)をアッセイするために周期的に集めた。安全性は試験期間中、注入中のバイタルサインおよび体重、臨床的所見および注射部位の所見を記録することによりさらに評価した。他の組織は正当な理由が生じるまで評価しなかった(表Bを参照にされたい)。
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】
【0113】
a=第3サンプルまで優先順位を決定する。100μLアリコートとして凍結(−70℃)。
b=第1サンプルとして優先順位を決定する。
c=集めた第2サンプルまで優先順位を決定する。ミクロテイナー(microtainer)を使用する。
d=第4サンプルまで優先順位を決定する。1つのアリコートとして残りの血清を凍結(−70℃)。
特に記載しない限り、手順(バイタルサイン、血管形成およびNx)は処置の前に行った。
略号:Abs=抗体;BL=ベースライン;BW=体重;Hem=血液学;IMG=免疫原性;mAb=モノクローナル抗体;Nx=安楽死、潅流および組織回収;PD=薬力学;PK=薬物動態学;前/後=注入前および後;SC=血清化学;X=実施した。
疾患モデル
アテローム硬化症は脂質濃度が高い繊維−炎症プラークが冠状血管壁に蓄積し、管腔を塞ぎ、そして狭め(「狭窄し」)、これにより心臓組織への酸素を含む血液供給が制限され、そして急性の心筋疼痛および/または梗塞をもたらす疾患である。障害が起きた冠状血管に取り組む現在の医学的プラクティスには、経皮径管的冠状動脈形成術(PCTA)を介するバルーンカテーテルを用いた血管の機械的拡張、しばしばそれに続いて管腔の直径を維持するために血管内ステントの留置が関与する(1)。かなりの数の患者では、後期(より遅い)再狭窄ではこの手法の効果が制限される(2)。新内膜(neointimal)過形成、血管平滑筋細胞(VSMC)増殖および浸潤性白血球が再狭窄の領域を特徴付ける。このプロセスに関与する可能なメカニズムには、血小板凝集(血栓症)、内皮細胞活性化およびVSMC増殖および移動が関与する。アテローム硬化症および/または再狭窄症の様々な動物モデルがマウス、ラット、ウサギ、ブタおよび非ヒト霊長類(カニクイザルおよびヒヒ)のような種で開発された。この実験で使用する新内膜過形成、バルーン血管形成術が誘導する内皮の露出、それに続くステントの留置のモデルは、以前にウサギで使用され、再狭窄症に関与する幾つかのメカニズムを解明した(4)。
試験材料
1B4は、ヒト、非ヒト霊長類およびウサギの好中球上のCD18を認識するマウスIgG2a mAbである。1B4は抗体を生産する市販されている細胞系を使用して生成した(ATCC寄託番号 TIB10164)。S−S.1は、ヒトジの赤血球細胞S−S.1に対するマウスIgG2a mAbである。S−S.1は抗体を生産する市販されている細胞系を使用して生成し(ATCC寄託番号 TIB111)、そして無関係なアイソタイプが合った対照抗体として使用する。
用量および投薬処方
用量および投薬処方は、それらが少なくとも14日を通して白血球上のCD18の連続飽和を維持するために必要とされる用量より過剰な、頂点と谷の血清mAb濃度をもたらすと思われるので選択した。中和サル抗−マウスmAbアンチグロブリン(MAMA)応答がこれらの動物で発生し、そしてこれらの応答が血清または細胞に結合したmAbレベル、そしてすなわちPK、PDおよび/または効力終点に影響を及ぼし得ると考えられる。
バイタルサインの監視
これらのmAbは多くの他の抗体のように、初期注入中のサイトカインの放出、または沈殿ADCC(抗体−依存的な細胞性細胞傷害性)または補体が媒介する細胞溶解に関係する「第1−用量効果」を誘導する可能を有する。これらの効果は、通常は生命を脅かさない低血圧および気管支収縮のような一過性の悪い生理学的変化をもたらし得る。バイタルサインを監視することによりそのような変化の検出が可能である。
試験系
マウス抗−ヒトCD18 mAbもカニクイザルCD18に結合する。
動物数
この実験に使用した動物の数は、結果を評価するために十分な数であった。ウサギのモデルでは以前に4匹の動物/群で効力の検出が可能であったが(4)、サルでは血管傷害およびそれに対する応答においてより大きな程度の変動の可能性から、この実験では5匹の動物/群を使用することが適当であると考えた。
【0114】
この実施例で与えるこの実験で使用した試験動物および製剤は、これから以下に記載する。
特性決定
mAb溶液は使用前に生化学的に特性決定した(表Cを参照にされたい)。
安定性
試験物のサンプルは、投薬が完了した試験部位から回収し、そして生化学的に特性決定した。元の特性決定に対してサンプル中の有意な変化は検出されなかった。
用量の配合法
使用する日(1または複数)に、凍結したmAb溶液の適当数のバイアルを室温とし、そして必要に応じて賦形剤(塩水)で適当な容量に希釈して、すべての動物にIV(60ccのシリンジ中の30mL)またはSC(3ccのシリンジで3mL)投与するために均一な全容量を提供した。解凍日をバイアル(1または複数)に記録した。未使用(解凍、開いた)のバルクなmAb溶液は後日(1または複数)使用するために冷蔵(2〜8℃)した。
用量配合サンプル
用量配合サンプルは回収しなかった。
廃棄
残った希釈した用量配合物は捨てた。
【0115】
【表3】
【0116】
この実施例に与える実験で使用した試験系をこれから記載する。
動物
種:マカカ ファスシクラリス(Macaca fascicularis)
一般名:カニクイザル
動物数:15
年齢および性別:若い−成体のオス
処置開始時の体重:〜4kg
起源および選択
動物は試験施設により認可された供給源から得た。動物は試験時に利用可能なものから選択し、そして獣医師により良好な健康状態であると測定された。すべての動物が隔離期間を完了し、そして各動物を独自の番号により識別した。この実験で使用したすべての動物は実験の終了時に安楽死させた。
動物の世話
試験施設は実験動物の世話の評価および認可に関する協会(Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care(AAALAC))により認可され、そして米国農務省(USDA)により、動物保護法(Aminal Welfare Act)、USDA規制および国立調査審議会(USDA regulation and National Reaearch Council:NRC)のガイドラインに従い実験動物での調査を行うことを認められた(3、4、5)。本明細書に記載する動物の活動は試験施設の研究用の動物の世話および使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee:IACUC)により見直され、そして認められた。
【0117】
動物管理、食事、水および環境条件は、NRCのガイドライン(17)および試験施設の標準操作手順(SOPs)に従い行った。
【0118】
この実施例に与える実験で使用した材料および方法をこれから記載する。
無作為化
実験に適当であると思われる動物は、体重により処置群に無作為化し、そして各群内で連続する独自の確認番号を割り当てた。動物が処置を受けるために割り当てられる順序は、手法的な片寄りを最小にするために確認番号に基づき群間を回るようにした。
身体的拘束に対する順化
動物は身体的拘束のロープおよびカラー法に順化し、そして処置の開始前に霊長類の椅子に拘束した。
鎮静化
動物は、取り扱い、血液採取または他の技術的手法を行い易くするために、必要に応じて鎮静させた(実行するためにケタミンHCl、5〜10mg/kg、IM)。
絶食
すべての食料は鎮静化または安楽死前、一晩は与えなかった。水は自由に与えた。
用量の算出
用量は1−日目の体重に基づき算出した。用量は処置期間を通じて維持した。
投薬
すべての処置は、イン−ラインまたはシリンジ−チップの低タンパク質−結合フィルターを使用して投与した。動物を霊長類の椅子に拘束している間、末梢静脈におかれた皮下カテーテルを介して、臨床用の注入ポンプを使用してIV処置を投与した。
採血
血液サンプルは鎮静化させた動物から、大腿部静脈の直接的な静脈穿刺を介して集めた。採血は可能な時には左と右の大腿部静脈間で交互に行った。局所的な血管の外傷および出血が最少となるようにかなりの注意を払った。採血が困難な場合は個々のサンプルを回収しない事を許容し、局所的な血管外傷を誘導する可能性が示唆された(例えば血腫形成、動脈穿刺)。
併用療法
許容された獣医学的プラクティスによる併用療法は、獣医師により必要と見なされた場合に利用した。
動物の観察
体重はほぼ毎週記録した(表Bを参照にされたい)。瀕死および死亡に関するカゴからの観察を1日2回行った。
臨床所見
処置に関連する効果を示すための臨床所見は、1−日目の処置前の始め、および処置から1時間後に行い、そしてその後毎日行った。SC処置の日には、臨床所見は処置前に行った。
注射部位の所見
SC注射部位(肩甲骨間領域)は1日目の注射前の始めに観察し、そしてその後は毎日行った。この部位は腫れおよび/または紅斑について主観的に採点した(0=なし、1=軽度、2=中度、3=顕著)。
注入中のバイタルサインの監視
IV処置中、悪い反応の兆候についてバイタルサイン(心拍、呼吸速度、直腸温度および間接的血圧)を断続的に監視した。これらのパラメーターに関する代表的値を、注入前、注入中に10分間隔で、そして終了時に記録した。
【0119】
悪い反応が起こった場合、処置を一時停止するか、または中断することができた。試験施設の獣医師は、実験指示者および/または実験のスポンサーの代表者に相談して、適切な治療があるならばそれを決定した。
血管形成術およびステント留置手法
抗凝固療法
動物はアスピリン(〜40mg、経口)を毎日受容して抗凝固機能を提供し、そして3−日に始まるステント血栓症を最少にした。
抗生物療法
動物は、血管形成術の前1日に、ベンザチン/プロカイン/ペニシリンG(42,000IU/Kg、IM)の単回の予防的注射を受けた。
麻酔
動物に前−麻酔を行い(ケタミンHCl、10mg/Kg、IM;アトロピン SO4、0.04mg/kg、IM)、次いで挿管し、そしてイソフルラン吸入剤麻酔ガスで麻酔を維持した。
準備
動物は背もたれの状態で手術台に配置した。膀胱にカテーテルを挿入して尿の蓄積を防いだ。血管に接近する部位をクリップで挟み、そして無菌手術の準備をした。カテーテルを末梢静脈に配置して、流体を投与し易くした(乳酸化リンゲル溶液、5〜10mL/kg/時間)。
ヘパリン処理
ヘパリン(100U/kg、IV、初期に)は血管形成術前に投与して抗凝固を提供した。活性化凝血時間(ACT)を周期的に監視し、そして血管形成術の間にACT値>250秒を維持するために必要なヘパリンをさらに投与した。
器具使用
右頸動脈を外科的に露出し、そして6Fr皮下血管挿入シース(例えばCP−07711、アロウインターナショナル(ARROW International、リーディング、ペンシルベニア州 19605)を配置して静脈内にカテーテルを配置し易くした。
【0120】
透視装置のガイダンスを使用して、6Frゲージのカテーテルを遠位腹大動脈が右および左腸骨動脈に二股に別れるレベルに進めた。放射線不透過性の0.014インチのガイドワイヤ(例えば22225M,アドバンスト カルジオバスキュラーシステムズ(Advanced Cardiovascular Systems)社、テメキューラ、カリフォルニア州 92591)を使用して、ガイドカテーテルまたは必要ならば他のカテーテルが進行し易くした。必要ならば放射線不透過性のコントラスト媒質(例えばOmnipaqu(商標)、イソヘキソール注射、コニメド(Nycomed)、プリンセトン、ニュージャージ州 75039)を使用して透視装置を使い易くした。
血管撮影のビデオテープ録画
定量的な血管形成に関して測定し易くするために、各動物について透視装置法をビデオテープに録画した。実験番号、実験日、動物番号および手順を確認する情報もビデオテープに録画した。
血管形成術前の血管撮影
血管形成術の前に、ニトログリセリン(50μg、IA)を投与して、動脈拡大を誘導した。放射線不透過性のコントラスト媒質を投与して血管撮影をし易くした。
バルーン血管形成術を介する内皮の露出
血管に対して適当なサイズのバルーンを有するn80cm、3Fr Fogarty バルーン血栓切除カテーテル(例えば120803F、バクスターヘルスケア(Baxter Healthcare)社、イルバイン、カリフォルニア州 92714)を、ガイドカテーテルを介して大動脈の二肢に対して〜4cm遠位のレベルまで右腸骨大動脈に進めた。次いでバルーンを0.6ccの空気で膨張させ、そして内皮を露出し易くするために大動脈の〜3cm区分にわたり膨張したまま引いた。バルーン血管形成は3回行った。この手順は次いで、反対側(左)の腸骨大動脈で繰り返し、そしてバルーン血栓切除カテーテルを引き出した。場合により、左腸骨大動脈を最初に露出し、続いて右を行った。
ステント留置
バルーン−膨張性の7−mmステント(例えば15−mm長のステントの半分(例えばCS15−030、Palmaz−Schatz(商標)クラウンバルーン−膨張性ステント、コルディス(Cordis)社、マイアミ、フロリダ州 33102))を具備する適当なサイズの拡大カテーテル(SLX(商標)コーティングを含むNinja(商標)PTCA拡大カテーテル、コルディス(Cordis)社、マイアミ、フロリダ州 33102)を、右腸骨大動脈に内皮露出の中点のレベルまで進めた。1.1〜1.2のバルーン/ステント:大動脈の比率(典型的には2.5,3.0または3.5mmカテーテルについては6Atm)を提供するために十分にステントを膨張するために必要な膨張圧までバルーンを膨張させた。バルーンを収縮させ、そしてカテーテルを引き出した。この手順を反対側(左)の腸骨大動脈で繰り返した。場合により、左腸骨大動脈に最初にステントを留置し、続いて右を行った。
血管形成術後の血管撮影
第2ステントの配置からおよそ10分後、ニトログリセリン(50μg、IA)を投与して、両大動脈の定量的血管撮影のために動脈拡大を誘導した。放射線不透過性のコントラスト媒質を投与して血管撮影をし易くした。
回収
血管導入器シースを取り出し、そして頸動脈を連結した。切開を適当な縫合糸で閉じた。動物を麻酔から回復させ、そしてそれらのカゴに戻した。
痛覚脱失法
動物は手順の完了後にブプレノルフィン(0.01mg/kg、IM)の単回注射を受けた。
血管形成の追跡
麻酔
安楽死および動脈組織の回収前に(VIII.L節を参照にされたい)、動物に前−麻酔をかけ(ケタミンHCl、10mg/kg、IM:アプロチンSO4 0.04mg/kg、IM)、次いで挿管し、そしてイソフルラン吸入麻酔ガスで麻酔を維持した。
準備
動物は背もたれの状態で手術台に配置した。カテーテルを末梢静脈に配置した。切開部位をクリップで挟み、そして洗浄し;厳密な無菌はこの最終手術では必要ではなかった。
カテーテルの配置
ヘパリン(150U/kg、IV)を投与した。必要ならば放射線不透過性のコントラスト媒質を投与して透視し易くした。左頸動脈を外科的に露出し、そして6Fr皮下血管挿入器シースを配置した。透視装置の案内を使用して、6Frゲージのカテーテルを遠位腹大動脈が右および左腸骨動脈に二股に別れるレベルに進めた。ニトログリセリン(50μg、IA)を投与した。放射線不透過性のコントラスト媒質を投与して血管撮影をし易くした。透視法は各動物についてビデオテープに記録し、定量的な血管形成を測定し易くした。
【0121】
大動脈組織の回収は以下のように行った。
安楽死
動物は血管形成術の追跡のためにすでに麻酔をかけていた(VIII.K.1節を参照にされたい)。動物は米国動物獣医学協会(AVMA)のガイドライン(6)に従い、深い麻酔(ペントバルビタールナトリウム、35mg/kg、IV)により安楽死させ、続いて放血させた。
潅流
中心線開腹切開を行い、そしてカニューレを下行腹大動脈に配置し、そして分岐のレベルまで進めた。腸骨大動脈に100mLの乳酸化リンゲル溶液を流し、続いて0.4%パラホルムアルデヒド(PFA)を〜5分間、100mmHg圧で潅流した。
大動脈組織の切除
右および左腸骨大動脈は別個に摘出し、近位末端を識別し(例えば結びにより)、そして0.4%PFAに浸した。
限定的な粗い検死
動物は、外部身体および腹部および胸部腔の評価として定めた限定的な検死を受けた。
限定的な器官/組織採取
特定した器官および組織からの代表的サンプル(表Dを参照にされたい)を採取し、そして10%の中性−緩衝化ホルマリンで組織病理学的評価のために固定するか、または包埋し、そして免疫組織学用にOCT中で凍結した。
a=目はデビッドソンの固定液に固定した。
b=すべての細胞計数は絶対値のみで報告した。他の細胞型(例えば前駆体細胞)が観察されれば計数した。他の形態学的特徴(例えばRBC染色特性)が存在すれば記載した。【0122】
サンプル処理は以下のように行った。
血液サンプル
血液学
血液サンプルは血液分析機を使用して分析した(表Eを参照にされたい)。血液スメアの特異形態は手動の顕微鏡で行った。
血清化学
血清サンプルは化学分析機を使用して分析した(表Fを参照にされたい)。
a=計算値
b=細胞計数は、絶対値でのみ報告した。他の他の細胞型(例えば前駆体細胞)が観察されれば計数した。他の形態学的特徴(例えばRBC染色特性)が存在すれば記載した。
a=計算値
さらなる分析用のサンプル
薬力学アッセイ用の血液サンプルおよび薬物動態学および免疫原性アッセイ用の血清サンプルを得た。
薬物動態学
血清治療剤1B4モノクローナル抗体(mAb)レベルは、マウスIgGに対する酵素−結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により測定した。簡単に説明すると、96ウェルプレート(NUNC#4−39454)は100μlのヤギ−抗−マウスIgG+IgM抗体(ジャクソン イムノリサーチ#115−005−068)を用いて、40℃で炭酸バッファーpH9.3中にて一晩、2.5μg/mlで被覆した。プレートは続いて3回、PBS0.5%Tween−20で洗浄し、そして300μlのPBS/1%BSAで37℃にて60分間ブロッキングした。PBS−Tweenでさらに3回洗浄した後、血清サンプルをPBS/1%BSAで1:100に希釈し、そして100μlのアリコートをプレート中の二連のウェルに加えた。抗体標準(MOPC−21、シグマ(Sigma))を50ng/mlに希釈し、そして100μlのアリコートをプレートに加えた。続いてすべてのサンプルはプレートをわたって2倍に希釈し、そして室温で2時間インキューベーションした。プレートは続いて再度PBS/0.5%Tween−20で洗浄し、そして100μlのペルオキシダーゼ−結合ヤギ抗−マウスIgG+IgM(ジャクソン イムノリサーチ(Jackson Immunoresearch)#115−035−068)を375ng/mlの濃度で加え、そして室温で2時間インキューベーションした。さらにPBS−Tweenで洗浄した後、プレートをOPD(シグマ)でクエン酸バッファーpH5.0中で発色させ、そして96ウェル蛍光プレートリーダー(ダイナテック(Dynatech)MR4000)で492nmで分析した。抗体標準の希釈を使用して標準曲線を作成し、そして血清抗体濃度を標準曲線から自動的に導き、そして希釈因子データはBiolinx2.22ソフトウェアを使用して提供した。
薬力学
標的の飽和
適当な白血球サブセット(好中球および単球)上の1B4標的(CD18)の飽和を、フローサイトメトリーアッセイにより測定した。
1B4 (抗 −CD18) を持つ循環している白血球の飽和の測定
血液は1B4の投与前および後に特定した間隔で試験動物からヘパリン中に集めた。全血のサンプルは過剰飽和量の1B4で(スパイク)または無しで染色した。血液サンプルはバッファー中で洗浄し、そしてFITC結合ヤギ−抗−マウスIgGで染色した。FITC−標識ビーズを用いたフローサイトメトリーの毎日の標準化後、FITCに対する均等な日ごとの感度を確実とするために、血液を塩化アンモニウム溶解液で溶解し、そしてリンパ球、単球および顆粒球群の蛍光を測定した。1B4投与による好中球または単球上のいずれかのCD18の飽和の程度は、1B4を加えなかったサンプルの平均チャンネル蛍光(mean channel fluorescence:MCF)と1B4の加えたスパイクを有するサンプルとの間の差異により決定した。実際に、インビボに送達された1B4で被覆されていない細胞表面上の遊離CD18は、外から加えた1B4により染色され、そしてスパイクしなかったサンプルの平均チャンネル蛍光はスパイクしたサンプルの平均チャンネル蛍光よりもぼんやりしていた。染色強度における差異は、細胞表面上の遊離(非飽和)CD18の反映であった。
循環している白血球の S−S.1 (無関係なアイソタイプ対照抗体)を用いた飽和の測定
S−S.1は、結合に無関係なマウス抗体である。白血球抗原とこのmAbとの「飽和」の可能性を測定するためのアッセイは上記のように行い、陽性(細胞染色)の結果は見られそうもなく、そして期間中の非スパイクとスパイクサンプルとの間に平均チャンネル蛍光における差異は一貫して無いと考えられた。
末梢血白血球の力学
白血球力学に及ぼすmAb投与の効果(トラフィッキング、辺縁趨向/脱辺縁趨向)は、処置前に比べて循環中の白血球数を評価することにより間接的に確認した。白血球の接着および/または走化性の阻害は、正常なトラフィッキングを防止し、そして循環する細胞数を上昇させると期待される。日常的な血液学分析を行って末梢血白血球の総数、ならびに好中球、リンパ球および単球の数を測定した。
免疫原性
1B4 ( CD18 )に対する抗体応答の測定
血清サンプルを特定した時期に回収し、そして実験が完了するまで凍結保存した。抗−1B4抗体は2つのアッセイを使用して検出した。
【0123】
第1アッセイは抗−イディオタイプおよび抗−アイソタイプ抗体の両方を検出するために計画した。このアッセイは1B4でマイクロタイタープレートを被覆し、そして未使用タンパク質の結合部位をBSAで遮断することにより行った。次いで血清を適当に希釈し、そして幾つかの希釈物をプレートの2連のウェルに加えた。血清中の抗体を37℃で2時間結合させ、そして次いでウェルを振盪し、そしてTween20を含むPBSで3回洗浄した。サル抗−1B4抗体はHRP−結合ヤギ抗−ヒトIgG(マウスのタンパク質に対して吸着)を用いて検出した。2時間後、非結合検出抗体はPBS Tweenでプレートを3回洗浄することにより洗い出した。結合した複合体は、黄色を生成するためにo−フェニレンジアミンを添加することにより検出した。色はELISAプレートリーダー上で490nmで読んだ。力価は、市販のHRP−結合ヤギ抗−マウスIgG(ヒト血清タンパク質に対して吸着)の特別な希釈により生成された光学密度に等しい光学密度を生じる血清の希釈の逆数を計算することにより決定した。
【0124】
第2アッセイは、マウスIgG2aに対する応答に比べて1B4イディオタイプと反応する応答の比率を評価するために使用した。これは競合的ELISAであり、ここでピーク抗体反応の血清を希釈して0.6−1.0の間の光学密度を生成した。希釈血清は上記のように1B4で被覆したELISAプレートの3連ウェルに加えた。血清は単独で、5μgの市販されているマウスIgG2aと混合して、または5μgの1B4と混合して加えた。ELISAは上記のように行い、そしてプレート上の1B4に結合したサルの抗体を、上記のようにHRP−抗−ヒトIgGを使用して検出した。マウスIgG2aまたは1B4でスパイクした血清により生成した光学密度と、非競合血清により生成されたシグナルの光学密度を比較することにより、1B4で処置した動物に生じた抗−1B4抗体の特異性を評価することが可能であった。
S−S.1 (無関係なアイソタイプ対照抗体)に対する抗体応答の測定
抗−S−S.1抗体は、上記の2種類のアッセイを使用して検出した。
定量的な血管撮影の計算:
偏りの制御
血管形成術およびステント留置時に、血管撮影測定を行った。この測定は非−ブラインド様式(non−blinded fashion)を採用して、各大動脈の直径を測定し、そして適当なサイズのバルーン拡大カテーテルおよびのステントの拡大ための膨張圧力を選択し、すなわち望ましいバルーン/ステント:大動脈比率を提供した。この非−ブラインド測定はまた追跡にも使用する。治療効果(1つまたは複数)を評価する目的で、記録したビデオ画像はより大きなビデオスクリーンで再生し、そして無関係な観察者によりブラインド様式で評価した。
血管撮影測定
ブラインド血管撮影測定は、デジタルカリパスを用いて中央−ステント領域で透視画像をビデオスクリーンから直接測定することにより行った。両腸骨大動脈について、以下のパラメーターを測定した(mmで):
血管形成術/ステント留置
実際のガイドカテーテル o.d.(実際の測定)(a)
観察されたガイドカテーテル o.d.(拡大された画像としてビデオスクリーン上で観察される)(b)
血管形成術前の管腔 i.d.(x)
血管形成術後にステントが膨張したバルーン o.d.(y)
血管形成術後/ステント管腔中のステント i.d.(x’)
追跡
実際の追跡ガイドカテーテル o.d.(c)
観察された追跡ガイドカテーテル o.d.(d)
ステント管腔中の追跡 i.d.(x”)
再狭窄の計算
以下の計算を行った:
血管形成/ステント留置
倍率補正因子1(MCF1)=[b]÷[a]
バルーン/ステント:大動脈率=[y:x]=理想的には1.1〜1.2
急性管腔増大(ALG;mmで)=[(x’)(MCF1)]−[(x)(MCF1)]
追跡
倍率補正因子2(MF2)=[d]÷[c]
後期管腔減少(LLL;mmで)=[(x’)(MCF1)]−[(x”)(MCF2)]
大動脈組織分析
偏りの制御
大動脈組織サンプルは、群または動物番号を示さない寄託または確認番号に無作為に割り当てた。処置の効果(1つまたは複数)に関する大動脈組織サンプルを評価する人(1または複数)は、サンプルの同一性に対して分からなかった。
組織処理
ステント留置をしていない(バルーン傷害)近位および遠位大動物区分は、ステントを留置した区分から離し、各々の近位末端を確認し、そして印を付けた。ステントを留置した大動脈区分はメタクリレート中に包埋し、そして多数の5mm断面をタングステンカーバイドナイフで切断した。ステント留置をしていない大動脈区分はパラフィンに包埋して抗原性を保存したが、正当な理由が生じるまでさらに処理することはなかった。
【0125】
ステント留置区分は、verHoeffの組織エラスチン染色、ヘマトキシリンおよびエオシン(H+E)、そしてBrdUrdを取り込んだ細胞、または平滑筋、内皮細胞および炎症細胞のような細胞型に関する種々の免疫細胞化学マーカーで染色した。
新内膜過形成の評価
ステント内の断面新内膜(内部弾性膜[IEL]の管腔側上)および中心(IELのアブルミナル(abluminal)側上)の領域(mm2)を、コンピューターを用いたデジタル面積測定を使用して組織形態計測的に測定した(3)。サンプル採取の誤差を最小とするために、3種のエラスチン染色したステント内断面(それぞれが右および左腸骨大動脈の近位、中央および遠位部分に由来する)を、形態計測的に分析した。右また左大動脈に関する複合値を、各大動脈について3回の測定値の平均で表した。
【0126】
各断片は、各ステント圧縮材(8−12/断面)に関係する深いステントが誘導した大動脈の傷害について評価し(0−3)、そして各断面に関する傷害の深さの採点の平均を算出した(19)。これらの値を使用して、初期の傷害が群全体に相当するかどうかを評価した。
統計分析
処置および対照群の間のT−試験による効力データの分析を行い、そしてこれらの値を報告する。
【0127】
この実施例で与える実験の結果をこれから記載する。
安全性
注入中にバイタルサインに関して処置に関連する効果は無かった。この実験中に体重および臨床所見に関して処置に関連する効果は無かった。1以上の動物で個々の注射部位は、副作用とは考えられない軽度の一時的な紅斑が示された。カテーテルの切開に付随する副作用は無かった(すなわち創傷治癒の減損は無く、そして細菌感染を示すものも無かった)。臨床的病理パラメーターに及ぼす悪影響は無かった。予想とおり、血清グロブリンレベルが処置および対照動物で上昇した。白血球計数は1B4投与により影響を受けた(以下を参照にされたい)。検死では処置に関係する著しい損傷は無かった。
薬物動態学
対照mAbに対する血清mAbレベル(平均±標準偏差)は、図1に与える。
【0128】
1B4の投与で血管形成術およびステント留置(1日)に血清濃度>50μg/mLを、そして8日間は維持血清濃度>1μg/mLをもたらした。1−日から13日までの連続投与にかかわらず、15日までに1B4レベルはほとんど検出できなかった。
薬力学
白血球を標的とする飽和
対照mAbに関する白血球を標的とする飽和(平均±標準偏差)を、図2に与える。
【0129】
1B4の投与により、IV注入の直後に1−日目で好中球および単球CD18の急速な飽和、そして8日間は標的飽和の維持がもたらされた。15日までに、白血球上の利用可能なCD18結合部位(不飽和標的)はベースラインレベルに戻った。
抹消血白血球の力学
対照mAbに関する抹消血の白血球計数(平均±標準偏差)を、図3に与える。
【0130】
1B4の投与は、顕著な白血球溶解、好中球溶解および単球溶解により示されるCD18の飽和により改変した白血球力学を8日目にもたらした。測定はされていないが、これらの細胞計数はより早い時期にも上昇したと思われる。
免疫原性
対照mAbに関する抗−mAb抗体力価(平均±標準偏差)を、図4に与える。
【0131】
抗−グロブリン応答は、わずか8日目に検出したすべての動物で生じた。これらの応答のほとんどが抗−アイソタイプ(定常領域に対する)というよりはむしろ抗−イディオタイプ(可変領域、特に相補性決定領域に対する)であった。8日から15日の有力な中和化抗−イディオタイプ抗体の急速な上昇は、循環しているmAbレベルの損失、白血球を標的とする飽和の損失および末梢血白血球数のベースライン(正常)レベルへの回復に対応した。これらの観察は、抗−mAb抗体の治療用mAb抗体への結合、そして活性の防止(中和化)と一致する。さらにこれらの観察は、治療用mAbの効果的な血清/白血球レベルが8日間を通してのみ維持されたことを示唆していた。
効力
定量的血管撮影法
対照mAbに関するブラインド定量血管撮影の結果(平均±標準偏差)を、図5に与える。
【0132】
1B4の投与は、腸骨大動脈の中央−ステント領域で測定した時、後期管腔損失(LLL)(p=0.06)を減少させ、そして指数(LLL/ALG)(p<0.05)を有意に減少させる傾向にあった。
組織形態計測的分析
対照mAbに関するブラインド組織形態計測的分析結果(平均±標準偏差)を、図6に与える。
【0133】
重篤な採点では、群間でステントが誘導する大動脈に対する傷の程度において群間に差異が示されず、すなわち群間の差異は処置に起因し、傷の程度が異なるのではない。
【0134】
1B4の投与は、腸骨大動脈のバルーンのみ(内膜領域についてp=0.02、I:M比についてp=0.01)、そしてバルーン+ステント(内膜領域およびI:M比の両方についてp<0.01)の区分内の新内膜過形成を抑制した。CD18は主に好中球に存在し、そして単核細胞(単球およびリンパ球)上での程度は低いので、このデータはバルーン−のみおよびバルーン+ステントの新内膜過形成の両方に好中球が重要な(恐らく優勢な)原因であることを示唆している。CD18を発現する他の細胞(すなわち単核細胞)がいずれかの損傷を持つ新内膜過形成の原因となる可能性も排除しない。抗−CD18阻害によるバルーン−のみおよびバルーン+ステントでの新内膜過形成の効果的減少の観察は、ヒトのバルーン−のみおよびバルーン+ステント(ステント内)での再狭窄に関係し得る。
【0135】
新内膜過形成に及ぼすCD18の遮断効果を図7で具体的に説明する。
【0136】
この実施例で引用する参考文献は以下を含み、実施例で示した番号を付す。
1.連邦規則集(CFR)。タイトル21;パート58;グッド ラボラトリー プラクティス レギュレーション:ファイナル ロー(Good Laboratory Practice Regulations:Final Rule)。ワシントン(DC)、連邦登記所。1978年12月22日(1993年4月1日改定)。
2.Holmes DR,Vlietstra RE,Smith HC,Vetrovec GW,Kent KM,Cowley MJ,Faxon DP,Gruntzig AR,Kelsey SF,Detre KM,van Randen MJ,Mock MB.経皮経管的冠状動脈形成術(PTCA)後の再狭窄症:国立心臓、肺および血液研究所のPCTS登録からの報告(Retenosis after percutaneous transluminal angioplasty(PTCA):a report from the PCTS registry from the National Heart,Lung and Blood Institute.Am.J.Cardiol.1984;53:77C−81C.
3.Serruys PW,Luitjen HE,Beatt KJ,Geuskens R,de Feyter PJ,van den Brand M,Reiber JH,ten Katen HJ,van Es GA,Hugenholtz PG.成功裏の冠状血管形成術後の再狭窄症の発生:342名の一貫した患者を対象とした1、2、3および4カ月目の定量的な血管形成実験(Incidence of restenosis after successful coronary angioplasty:a time−related phenomenon:a quantitative angioplastic study in 342 consecutive patients at 1,2,3 and 4 months.)。Circulation 1988;77:361−371.
4.Rogers C,Edelman ER,Simon DI.β2−白血球インテグリンMac−1(CD11b/CD18)に対するmAbは、ウサギにおける血管形成術またはステントの移植後の内膜肥厚化を減少する(A mAb to the β2−leukocyte integrin Mac−1(CD11b/CD18) reduces intimal thickening after angioplasty or stent implantation in rabbits)。Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1998:95:10134−10139.
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13.Golino P,Ambrosio G,Ragni M,Cirillo P,Esposito N,Willerson JT,Rothlein R,Petrucci L,Condprelli M,Chiariello M,Buja LM.白血球および血小板の付着の阻害が、動脈傷害後の新内膜過形成を減少する(Inhibition of leukocyte and platelet adhesion reduces neointimal hyperplasia after arterial injury.)。Tromb.Haemostasis 1997;77;783−8.
14.Guzuman LA,Forudi F’,Villa AE,Topol EJ.ウサギのアテローム硬化症モデルにおけるバルーン血管形成後の新内膜形成における白血球の役割(Role of leukocytes in neointimal formation after ballon angioplasty in rabbit atherosclerotic model)。Cor.Art.Dis.1995;6:693−701.
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18.米国獣医師協会。安楽死に関する米国獣医師協会(AVMA)パネルの報告(American Veterinary Medical Association.Report of the American Veterinary Association(AVMA) panel on euthanasia)。J.Am.Vet.Med.Assoc.1993;202:229−249.
19.Schwartz RS,et al.,冠状動脈の傷害に対する再狭窄症および比例的な新内膜応答:ブタのモデルにおける結果(Restenosis and Proportional Neointimal Response to Coronary Artery Injury:Results in Porcine Model.)。J.Am.Coll.Cardiol.1992;19:267−274.
本明細書に引用する各特許、特許出願および公報は、引用により全部、本明細書に編入する。
【0137】
本発明を具体的な態様を参照にして記載したが、当業者により本発明の精神および範囲から逸脱することなく本発明の他の態様および変更を考案され得ることは明らかである。前述の特許請求の範囲はそのような態様および均等な変更態様を包む。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験動物から得た血清中のELISAにより評価したモノクローナル抗体濃度を表すグラフである。
【図2】図2Aおよび2Bから成り、抗−CD18抗体(三角)の存在下または対照モノクローナル抗体(丸)の存在下で、白血球を標的とする飽和の程度を表す一対のグラフである。図2Aは好中球の標的部位の飽和の程度を表し、そして図2Bは単球の標的部位の飽和の程度を表す。
【図3】図3A、3B、3Cおよび3Dから成り、モノクローナル抗体1B4(三角)または対照モノクローナル抗体(SS1;丸)が投与された動物中の白血球計数を表す4つのグラフである。総白血球細胞計数は図3Aに示し;総好中球計数は図3Bに示し;総リンパ球計数は図3Cに示し;総単球計数は図3Dに示す。
【図4】モノクローナル抗体1B4(三角)または対照モノクローナル抗体(丸)が投与された動物中の平均抗−モノクローナル抗体力価を示すグラフである。
【図5】図5A、5Bおよび5Cから成り、本明細書の実施例に記載するような試験動物におけるブラインドの定量的な血管形成術の結果を表す。図5Aはモノクローナル抗体1B4(三角)または対照モノクローナル抗体(丸)が投与された動物において、時間の関数としての管腔の直径を表すグラフである。図5Bおよび5Cは、モノクローナル抗体1B4または対照モノクローナル抗体が投与された動物において、後期の管腔損失とLLL/ALG指数の間の差異を表す棒グラフである。
【図6】図6Aおよび6Bから成り、モノクローナル抗体1B4または対照モノクローナル抗体のいずれかが投与され、そしてバルーン血管形成術(「バルーンのみ」)またはバルーン血管形成術および管内皮ステント留置の両方(「バルーンおよびステント」)を受けた動物から得た血管の内膜領域(mm2:図6A)および内膜:中膜の比の組織形態計測分析の結果を表す一対の棒グラフである。
【図7】図7Aおよび7Bから成り、モノクローナル抗体1B4または対照モノクローナル抗体のいずれかが投与された動物から得た血管間の差異を表す一対の画像である。
Claims (48)
- ヒトの血管の狭窄を抑制する方法であって、CD18を含んで成る哺乳動物タンパク質の少なくともCD18部分と特異的に結合する抗−CD18抗体をヒトに投与することを含んで成り、それにより血管の狭窄が抑制される上記方法。
- 抗−CD18抗体が実質的にタンパク質の抗−CD18部分にのみ特異的に結合する、請求項1に記載の方法。
- 抗−CD18抗体がモノクローナル抗体1B4と同じかまたは類似するエピトープ特異性を有する請求項1に記載の方法。
- 抗−CD18抗体がモノクローナル抗体1B4である、請求項1に記載の方法。
- 抗−CD18抗体が、CD18を含んで成る霊長類タンパク質の少なくともCD18部分と特異的に結合する、請求項1に記載の方法。
- タンパク質が白血球の細胞−表面抗原である、請求項1に記載の方法。
- 抗原がMac−1、LFA−1、p150,95およびCD11d/CD18から成る群から選択される、請求項6に記載の方法。
- 抗原がMac−1である、請求項7に記載の方法。
- 抗−CD18抗体と抗原との結合が、抗原の天然のリガンドと抗原の結合を阻害する、請求項6に記載の方法。
- リガンドがICAM−1、ICAM−2、ICAM−3、C3bi、第X因子、フィブリンおよびフィブリノーゲンから成る群から選択される、請求項9に記載の方法。
- リガンドがICAM−1、C3bi、第X因子、フィブリンおよびフィブリノーゲンから成る群から選択される、請求項10に記載の方法。
- 抗−CD18抗体とタンパク質との結合が、タンパク質の天然のリガンドとタンパク質の結合に通常関係している少なくとも1つの機能を調節する、請求項1に記載の方法。
- 機能が、白血球と血管内皮との結合、白血球の血管内皮を通る移動、白血球の内膜血管組織への浸潤、血管組織中の白血球から走化性因子の放出、血管組織中の白血球から増殖因子の放出、白血球の結合に付随する血管組織から走化性因子の放出、および白血球の結合に付随する血管組織から増殖因子の放出から成る群から選択される、請求項12に記載の方法。
- 白血球が好中球である、請求項13に記載の方法。
- 血管は血管内皮が外傷的に混乱した血管である、請求項1に記載の方法。
- 血管が、移植した血管、中で血管形成バルーンが膨張した血管、レーザー血管形成術が行われた部位を含んで成る血管、押し潰された傷害を受けた血管、および中にステントが留置された血管から成る群から選択される、請求項15に記載の方法。
- 血管は血管内皮が外傷的には悪化しなかった血管である、請求項1に記載の方法。
- 血管がアテローム硬化症の血管および動脈硬化症の血管から成る群から選択される、請求項17に記載の方法。
- 血管が、冠状血管および大脳血管から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
- 抗−CD18抗体が全抗体である、請求項1に記載の方法。
- 抗−CD18抗体が抗体フラグメントである、請求項1に記載の方法。
- 抗体フラグメントがFv、Fab、Fab’およびF(abN)2フラグメントから成る群から選択される、請求項21に記載の方法。
- 抗−CD18抗体がキメラ抗体である、請求項1に記載の方法。
- 抗−CD18抗体がヒト化抗体である、請求項1に記載の方法。
- 抗−CD18抗体がヒト抗体である、請求項1に記載の方法。
- 抗−CD18抗体が、抗−CD18抗体を血管に供給することによりヒトに投与される、請求項1に記載の方法。
- 抗−CD18抗体は、血管の内皮が外傷的に混乱する前に血管に提供される、請求項26に記載の方法。
- 抗−CD18抗体は、血管の内皮が外傷的に混乱した後に血管に提供される、請求項26に記載の方法。
- 狭窄がヒトに行った血管形成術の介入後の再狭窄である、請求項1に記載の方法。
- 介入がバルーン血管形成介入である、請求項29に記載の方法。
- 介入が血管内の血管ステントの留置である、請求項29に記載の方法。
- 哺乳動物タンパク質がヒトのタンパク質である、請求項1に記載の方法。
- 抗体を血管に投与することを含んで成るヒトの血管の狭窄を軽減する方法であって、抗体がCD18を含んで成る哺乳動物タンパク質の少なくともCD18部分と特異的に結合し、それにより狭窄が軽減される上記方法。
- 検出可能な標識を有する抗−CD18抗体、およびヒトの血管中の抗−CD18抗体の検出を記載する使用説明書を含んで成る、ヒトの血管の狭窄を評価するためのキット。
- 検出可能な標識がガンマ放射線源である、請求項34に記載のキット。
- 抗−CD18抗体と特異的に結合する白血球をヒトの血液から除去することを含んで成り、これにより血管中の狭窄が抑制される、ヒトの血管の狭窄を抑制する方法。
- 抗−CD18抗体と特異的に結合する白血球をヒトの血液から除去することを含んで成り、これにより血管中の狭窄が軽減される、ヒトの血管の狭窄を軽減する方法。
- 白血球を抗−CD18抗体と接触させることを含んで成り、これにより白血球と血管内皮との相互作用が阻害される、ヒトにおいてCD−18を含有する細胞表面タンパク質を有する白血球と血管内皮との相互作用を阻害する方法。
- 白血球が、リンパ球、単球、顆粒球、好中球、T細胞および好塩基球から成る群から選択される、請求項38に記載の方法。
- 白血球が好中球である、請求項39に記載の方法。
- 白血球と血管内皮との相互作用が、白血球と血管内皮との結合である、請求項38に記載の方法。
- 白血球と血管内皮との相互作用が、血管内皮を通る白血球の移動である、請求項38に記載の方法。
- ヒトから得た血液中の血管狭窄に関係する白血球の存在を評価する方法であって、
血液を抗−CD18抗体と接触させ、そして
血液中の抗−CD18抗体と白血球との結合を検出する、
ことを含んで成り、
ここで抗−CD18抗体と血液中の白血球との結合は血液中の血管狭窄と関係する白血球の存在の指標である、上記方法。 - 抗−CD18抗体と血液中の白血球との結合が定量される、請求項43に記載の方法。
- 抗−CD18抗体とヒトの血液中の白血球との結合が、血管狭窄症に罹患しているヒトおよび血管狭窄症に罹患していないヒトから成る群から選択されるヒトから得た対照血液中の白血球と抗−CD18抗体との結合と比較される、請求項43に記載の方法。
- ヒトから得た血液中の血管狭窄に関連する白血球の存在を評価するためのキットであって、
i)抗−CD18抗体および
ii)少なくとも
a)ヒトの血液中の白血球の存在を定量すること、
b)血管狭窄症に罹患しているヒトの血液中の白血球含量、および
c)血管狭窄症に罹患していないヒトの血液中の白血球含量
の1つを記載する使用説明書、
を含んで成る上記キット。 - ヒトの血管中の狭窄に関連する障害を抑制する方法であって、CD18を含んで成る哺乳動物タンパク質の少なくともCD18部分と特異的に結合する抗−CD18抗体をヒトに投与することを含んで成り、それにより血管中の狭窄が抑制され、そしてこれにより障害が抑制される上記方法。
- ヒトの血管中の狭窄に関連する障害を軽減する方法であって、CD18を含んで成る哺乳動物タンパク質の少なくともCD18部分と特異的に結合する抗−CD18抗体をヒトに投与することを含んで成り、それにより血管中の狭窄が軽減され、そしてこれにより障害が軽減される上記方法。
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