JP2004354528A - 感光性樹脂組成物、積層体およびフレキシブル配線板 - Google Patents
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Abstract
【課題】フレキシブル配線板の絶縁層を形成した場合に、現像性および可とう性に優れる感光性樹脂組成物を提供すること。また、現像性および可とう性に優れる積層体を提供すること。また、可とう性に優れるフレキシブル配線板を提供すること。
【解決手段】本発明の感光性樹脂組成物は、フレキシブル配線板の絶縁層を形成するために用いる感光性樹脂組成物であって、前記感光性樹脂組成物は、一分子中にアクリロイル基またはメタクリロイル基と、カルボキシル基とを有するアクリル系樹脂を含むことを特徴とする。 本発明の積層体1は、上記に記載の感光性樹脂組成物で構成される層2と、キャリアフィルム3とを積層してなることを特徴とする。
本発明のフレキシブル配線板は、上記に記載の感光性樹脂組成物で構成される絶縁層と、前記絶縁層の少なくとも一方の面側に形成された導体回路とを有することを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明の感光性樹脂組成物は、フレキシブル配線板の絶縁層を形成するために用いる感光性樹脂組成物であって、前記感光性樹脂組成物は、一分子中にアクリロイル基またはメタクリロイル基と、カルボキシル基とを有するアクリル系樹脂を含むことを特徴とする。 本発明の積層体1は、上記に記載の感光性樹脂組成物で構成される層2と、キャリアフィルム3とを積層してなることを特徴とする。
本発明のフレキシブル配線板は、上記に記載の感光性樹脂組成物で構成される絶縁層と、前記絶縁層の少なくとも一方の面側に形成された導体回路とを有することを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、感光性樹脂組成物、積層体およびフレキシブル配線板に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子機器の高密度化に伴い、これに用いられるプリント配線板の多層化が進んでおり、フレキシブル配線板も多層構造のものが多用されている。
【0003】
このような背景より、近年多層配線板では、新しい積層技術としてビルドアップ法が採用されている。ビルドアップ法とは、樹脂のみで構成される絶縁層と導体とを積み重ねながら、単層間で層間接続をする方法である。
【0004】
この多層配線板の各層間の配線は、ビアホールで接続する方法が用いられている。ビアホールを形成する方法としては、レーザーによる方法と、感光性樹脂を用いて露光・現像による方法とに大別される。
【0005】
感光性樹脂を用いて露光・現像によりビアホールを形成する方法は、露光および現像工程のみで一括してビアホールの形成が可能な点および既存設備を流用できる点より、レーザーでビアホールを形成する方法に比べ低コスト化が期待できる(例えば特許文献1参照)。
【0006】
フレキシブル配線板の絶縁層として、例えば(A)ジオール化合物、アクリル酸誘導体及びポリイソシアネート化合物を反応させて得られるエチレン性不飽和結合を有するウレタン化合物を含む光重合性不飽和化合物、(B)バインダーポリマー、(C)光重合開始剤並びに(D)ブロック化イソシアネート化合物を含有する感光性樹脂組成物が提案されている(例えば特許文献2参照)。
しかし、これらの感光性樹脂をフレキシブル配線板の絶縁層に用いる場合、優れた現像性および可とう性が要求されるため、そのいずれを両立する感光性樹脂は得られなかった。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−219590号公報
【特許文献2】
特開2000−241969号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、フレキシブル配線板の絶縁層を形成した場合に、現像性および可とう性に優れる感光性樹脂組成物を提供することである。
また、本発明の目的は、現像性および可とう性に優れる積層体を提供することである。
また、本発明の目的は、可とう性に優れるフレキシブル配線板を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(8)に記載の本発明により達成される。
(1)フレキシブル配線板の絶縁層を形成するために用いる感光性樹脂組成物であって、前記感光性樹脂組成物は、一分子中にアクリロイル基またはメタクリロイル基と、カルボキシル基とを有するアクリル系樹脂を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
(2)さらに前記感光性樹脂とは異なる樹脂を含むものである上記(1)に記載の感光性樹脂組成物。
(3)さらに希釈剤を含むものである上記(1)または(2)に記載の感光性樹脂組成物。
(4)前記希釈剤は、一分子中に光官能基および熱官能基を有する多官能モノマーまたは一分子中に2個以上の光官能基を有する多官能モノマーである上記(3)に記載の感光性樹脂組成物。
(5)前記感光性樹脂とは異なる樹脂の含有量は、前記感光性樹脂100重量部に対して5〜50重量部である上記(2)ないし(4)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
(6)前記希釈剤の含有量は、前記感光性樹脂100重量部に対して10〜100重量部である上記(3)ないし(5)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
(7)上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物で構成される層と、キャリアフィルムとを積層してなることを特徴とする積層体。
(8)上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物で構成される絶縁層と、前記絶縁層の少なくとも一方の面側に形成された導体回路とを有することを特徴とするフレキシブル配線板。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の感光性樹脂組成物、積層体およびフレキシブル配線板について詳細に説明する。
本発明の感光性樹脂組成物は、フレキシブル配線板の絶縁層を形成するために用いる感光性樹脂組成物であって、前記感光性樹脂組成物は、一分子中にアクリロイル基またはメタクリロイル基と、カルボキシル基とを有するアクリル系樹脂を含むことを特徴とするものである。
本発明の積層体は、上記に記載の感光性樹脂組成物で構成される層と、キャリアフィルムとを積層してなることを特徴とするものである。
本発明のフレキシブル配線板は、上記に記載の感光性樹脂組成物で構成される絶縁層と、前記絶縁層の少なくとも一方の面側に形成された導体回路とを有することを特徴とするものである。
【0011】
以下、感光性樹脂組成物について説明する。
本発明の感光性樹脂組成物は、フレキシブル配線板の絶縁層を形成するものである。従来、フレキシブル配線板の絶縁層には、ポリイミド、ポリエステル等の非感光性の樹脂が用いられていた。しかし、このような樹脂は、可とう性は有するが、微細な回路パターンの形成が困難であった。
一方、フレキシブル配線板の絶縁層用として提案されている従来の感光性樹脂組成物では、可とう性が不十分であった。
これに対して、本願発明では、微細な回路パターンおよび可とう性に優れ、フレキシブル配線板の絶縁層に適用可能な感光性樹脂組成物を提供するものである。
【0012】
本発明の感光性樹脂組成物は、一分子中にアクリロイル基またはメタクリロイル基とカルボキシル基とを有するアクリル系樹脂(アクリル系共重合体)を含む。これにより、光照射により、該感光性樹脂が反応して現像特性を発現することができる。
【0013】
前記一分子中にアクリロイル基またはメタクリロイル基とカルボキシル基とを有するアクリル系樹脂としては、例えばシクロヘキサン環、イソホロン環、イソボルニル環等の脂環構造の側鎖にアクリロイル基またはメタクリロイル基とカルボキシル基とを有するアクリル系樹脂、アクリル酸、メタクリル酸等の一個以上の重合性不飽和結合を有する一塩基酸と、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル等の不飽和化合物との共重合体等が挙げられる。これらの中でも脂環構造の側鎖にアクリロイル基またはメタクリロイル基とカルボキシル基とを有するアクリル系樹脂が好ましい。これにより、アルカリ現像性と可とう性の両方に優れる。さらに、タックフリー性にも優れる。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物では、さらに前記感光性樹脂とは異なる樹脂を含むことが好ましい。これにより、耐熱性を向上することができる。
前記感光性樹脂とは異なる樹脂としては、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂およびレゾール型フェノール樹脂等のフェノール樹脂、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂およびビスフェノールA−エピクロルヒドリン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂等のトリアジン環を有する樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、シアネートエステル樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの中でもエポキシ樹脂(特に液状エポキシ樹脂)が好ましい。これにより、感光性樹脂組成物の耐熱性の向上に加え、絶縁性も向上することができる。絶縁性を向上できる理由は、前記エポキシ樹脂のエポキシ基が感光性樹脂組成物中に残留する未反応のカルボキシル基を低減することができるからである。未反応のカルボキシル基が残留すると、絶縁性の低下、加熱により揮発分を生じ耐熱性が低下することになる。
【0015】
前記感光性樹脂と異なる樹脂の含有量は、特に限定されないが、前記感光性樹脂100重量部に対して5〜50重量部が好ましく、特に15〜35重量部が好ましい。含有量が前記下限値未満であると絶縁性を向上する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えると可とう性を向上する効果が低下する場合がある。
【0016】
本発明の感光性樹脂組成物では、さらに希釈剤を含むことが好ましい。これにより、感光性樹脂組成物を希釈し、被塗物に塗布し、乾燥させて製膜する際の作業性を向上することができる。
前記希釈剤としては、例えば光重合性モノマーまたは有機溶剤を挙げることができる。前記希釈剤として用いることができる光重合性モノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレートなどの単官能アクリレート化合物等を挙げることができる。
【0017】
前記希釈剤として用いることができる有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、メタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、石油エーテル、石油ナフサなどの石油系溶剤、セロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトールなどのカルビトール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテートなどの酢酸エステル類などを挙げることができる。
【0018】
さらに好ましい希釈剤としては、例えば一分子中に光官能基および熱官能基を有する多官能モノマー、一分子中に2個以上の光官能基を有する多官能モノマー等が挙げられる。これにより、上述の作業性を向上する効果に加え、可とう性をより向上することができる。
さらに、感光性樹脂として前記一分子中にアクリロイル基またはメタクリロイル基とカルボキシル基とを有するアクリル系樹脂を用いた場合には、特に感光性樹脂組成物の光反応性を向上することもできる。
【0019】
前記一分子中に光官能基および熱官能基を有する多官能モノマーとしては、例えば1分子中に少なくとも1個の水酸基を有するアクリレートまたはメタクリレート化合物等が挙げられる。具体的にはヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ブタンジオールモノアクリレート、グリセロールメタクリレート、フェノキシヒドロキシプロピルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、グリセロールジメタクリレート等が挙げられる。
また、一分子中に少なくとも1個のグリシジル基を有するアクリレートまたはメタクリレート化合物等が挙げられる。具体的には、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
【0020】
前記一分子中に2個以上の光官能基を有する多官能モノマーとしては、例えば一分子中に2個以上のアクリロイル基またはメタクリロイル基を有する光多官能モノマーが挙げられる。具体的にはトリエチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、グリコールメタクリレートアクリレート、グリセロールエポキシトリアクリレート、トリメチロプロパントリアクリレート、ペンタエリストールテトラアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロプロパントリメタクリレート、下記式(I)で示される2官能ウレタンアクリレート樹脂等が挙げられる。
【化1】
これらの中でも式(I)で示される2官能ウレタンアクリレート樹脂が好ましい。これにより、特に可とう性を向上することができる。
前記2官能ウレタンアクリレート樹脂は、その分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有し、かつ分子中に少なくとも1個以上のウレタン結合を有するものであり、そのようなものとしては、例えば、アルコール性水酸基を2個以上有する化合物とジイソシアネート化合物とアルコール性水酸基を有する(メタ)アクリレートとを反応して得られる化合物や、ジイソシアネート化合物とアルコール性水酸基を有する(メタ)アクリレートとを反応して得られる化合物が挙げられる。
さらに、前記一分子中に光官能基および熱官能基を有する多官能モノマーと一分子中に2個以上の光官能基を有する光多官能モノマーとを併用することもできる。
【0021】
前記希釈剤の含有量は、特に限定されないが、前記感光性樹脂100重量部に対して10〜100重量部が好ましく、特に30〜70重量部が好ましい。含有量が前記下限値未満であると可とう性を向上する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えると現像性(特にアルカリ現像性)を向上する効果が低下する場合がある。
【0022】
本発明の感光性樹脂組成物では、さらに光重合開始剤を含むことが好ましい。これにより、光の照射により感光性樹脂の反応を容易にすることができる。
前記光重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類、4―フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン等のアセトフェノン類、チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン等のチオキサンソン類、エチルアントラキノン、ブチルアントラキノン等のアルキルアントラキノン類等を挙げることができる。これらは単独、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。
【0023】
前記光重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、前記感光性樹脂100重量部に対して0.1〜30重量部が好ましく、特に1〜20重量部が好ましい。含有量が前記下限値未満であると感光性樹脂の反応を開始する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えると感光性樹脂の反応を制御するのが困難となる場合がある。
【0024】
前記感光性樹脂組成物は、特に限定されないが、実質的にゴム成分を含まないものであることが好ましい。ゴム成分は現像性を低下させる要因となるからである。
前記ゴム成分とは、例えばエポキシ基含有不飽和化合物、アミド基含有不飽和化合物、水酸基含有不飽和化合物、カルボキシル基含有不飽和化合物等の官能基含有不飽和化合物と、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の一分子中に少なくとも2個の不飽和結合を有する架橋性モノマーと、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエンとの架橋ゴム状共重合体が挙げられる。前記ゴム成分の分子量は、例えば重量平均分子量10万以上である。
前記ゴム成分を実質的に含まないとは、例えばゴム成分の含有量が前記感光性樹脂組成物全体の5重量%以下の場合等である。
【0025】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて紫外線吸収剤、熱重合防止剤、可塑剤、硬化促進剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0026】
本発明の感光性樹脂組成物の硬化反応後におけるJIS K 7060に規定するバーコル硬度は、特に限定されないが、60以下が好ましく、特に55以下が好ましく、最も50〜5が好ましい。バーコル硬度が、前記範囲内であると、かかる感光性樹脂組成物を用いて絶縁層を形成したフレキシブル配線板の可とう性(柔軟性)に特に優れる。
【0027】
前記バーコル硬度が前記範囲内であると、絶縁層の可とう性に優れるのは下記の理由であると考えられる。
絶縁層を形成する感光性樹脂組成物の硬化物は、光照射によって硬化するため、光照射された表面の架橋密度が高くなり、表面硬度が高くなる傾向がある。
しかし、表面硬度の高い絶縁層を有するフレキシブル配線板を屈曲させた場合、特に架橋密度の高い絶縁層の表面部分が十分な伸び特性を示すことができなくなる。したがって、その部分によりクラック等が生じ、フレキシブル配線板が十分な可とう性を示すことができない。
これに対して、本願発明では、感光性樹脂組成物の硬化反応後におけるバーコル硬度が特定の値となる感光性樹脂組成物をフレキシブル配線板の絶縁層に用いるので、絶縁層の表面も十分な柔軟性を有している。したがって、フレキシブル配線板全体として可とう性を示すことができる。
【0028】
表面硬度の測定方法に関しては、バーコル硬度計を用いてJIS K 7060に準じて測定することができる
前記硬化反応後とは、感光性樹脂組成物が十分に硬化反応していることを意味し、例えば反応率が90%以上をいう。
前記硬化反応後の感光性樹脂組成物のバーコル硬度を測定する方法としては、具体的に感光性樹脂組成物を1J/cm2で露光後、180℃で2時間熱処理を行なって得られた硬化物をJIS K 7060に準じて測定することができる。
また、前記反応率は、例えば示差走査型熱量計(DSC)を用いて測定した未反応の感光性樹脂組成物の発熱ピークの発熱量を基準として、反応後の感光性樹脂組成物の発熱ピークの発熱量を測定することにより評価することができる。
【0029】
次に、積層体について説明する。
図1は、本発明の積層体の一例を模式的に示す断面図である。
積層体1は、感光性樹脂組成物で構成される層2と、キャリアフィルム3とを積層してなる。
感光性樹脂組成物で構成される層2の厚さは、特に限定されないが、5〜100μmが好ましく、特に10〜80μmが好ましい。感光性樹脂組成物で構成される層の厚さが前記下限値未満であると絶縁信頼性を向上する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えると可とう性を向上する効果が低下する場合がある。
【0030】
キャリアフィルム3は、感光性樹脂組成物で構成される層2から適度な強度で剥離容易であることが好ましい。具体的には、ポリエステルフィルム、芳香族ポリイミド、ポリエチレン等が挙げられる。これらキャリアフィルムの中でもポリエステルフィルムが最も好ましい。これにより、感光性樹脂組成物で構成される層2から適度な強度で剥離することが特に容易となる。また、希釈剤に対する安定性にも優れている。さらに、希釈剤に溶解している感光性樹脂組成物成分がキャリアフィルムにマイグレーションするのを防止することもできる。
キャリアフィルム3の厚さは、特に限定されないが、10〜200μmが好ましく、特に20〜100μmが好ましい。
【0031】
感光性樹脂組成物で構成される層2をキャリアフィルム3に積層する方法としては、例えば前記感光性樹脂組成物を溶剤等に溶解してキャリアフィルム3に塗布する方法等が挙げられる。前記塗布する方法としては、例えばロールコーターを用いる方法、スプレーにより噴霧する方法、デッィピングにより浸漬する方法等が挙げられる。これらの中でもロールコーターを用いる方法が好ましい。これにより、所定の厚さを有する積層体1を安定して生産できる。
【0032】
具体的に積層体1を製造する方法としては、例えば感光性樹脂組成物を溶剤に溶解したものをキャリアフィルム3に1〜100μm程度の厚さで塗布し、その塗布層を例えば80〜200℃で20秒〜30分乾燥し、好ましくは残留溶媒量が全体の0.5重量%以下とする。これにより、感光性樹脂組成物で構成される層2がキャリアフィルム3上に積層された積層体1を得ることができる。
【0033】
次に、フレキシブル配線板について説明する。
図2は、本発明の(多層)フレキシブル配線板の一例を模式的に示す断面図である。
フレキシブル配線板10は、4層の多層部5と、多層部5の最外層(図中上下側)に設けられた外層回路(導体回路)6とを有している。
多層部5は、内層回路(導体回路)51と、内層回路51を被覆する絶縁層52と、内層回路51と外層回路6または内層回路51同士を接続する導体ポスト7とを有している。
導体回路は、例えば表面を粗化処理した圧延銅板にドライフィルムレジストを用い露光・現像し、導体回路形成に必要なめっきレジストを形成した後、圧延銅板を電解めっき用リードとして、金層を電解めっきにより形成し、さらに電解銅めっきすることにより回路を形成することができる。
【0034】
また、導体ポスト7と内層回路51との間には、両者を接着する接着剤層53が設けられている。
接着剤層53は、例えば導体回路が形成された面に真空ラミネータ、真空プレス等で用いてラミネートされる。ラミネートは、例えば60℃〜200℃、特に70℃〜150℃することができる。
絶縁層52は、上述した感光性樹脂組成物で構成されているので可とう性に優れている。そのため、フレキシブル配線板10の可とう性も優れている。
【0035】
導体ポスト7は、絶縁層52を貫通する孔内に設けられ、その一端が外層回路6と接続されている。
導体ポスト7の他端側は、絶縁層52の外層回路6と反対側の面よりも突出している突起状端子71を有している。これにより、回路の接続を確実に行なうことができ、接続信頼性をより向上することができる。
導体ポスト7の他端側は、内層回路51と接続されている。
【0036】
本実施の形態では、4層の多層部を有していたが、本発明はこれに限定されず、2層、3層でも良く、さらにフレキシブル性を有する限り5層以上であっても構わない。
本実施の形態では、導体ポスト7は、絶縁層52の一方の面を突出するような突起状端子71を有していたが、本発明はこれに限定されない。
【0037】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
積層体の製造
(実施例1)
▲1▼樹脂溶液の調製
感光性樹脂組成物としてアクリロイル基とカルボキシル基を有するアクリル系共重合樹脂▲1▼(ダイセルUCB(株)製、サイクロマーP(ACA−200M))100重量部(樹脂固形分)と、前記感光性樹脂と異なる樹脂としてエポキシ樹脂▲1▼(ダイセル(株)製、セロキサイド2081、エポキシ当量200)25重量部と、希釈剤として2官能ウレタンアクリレート(新中村化学工業(株)製、UA−170TX)50重量部とを1−メトキシ−2−プロパノール35重量部に添加し、ディスパーザー(5000rpm)で約10分間攪拌した。その後、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール(チバ・ガイギー社製、イルガキュア651)6重量部を溶解して樹脂溶液を得た。
【0038】
▲2▼積層体の製造
上述の樹脂溶液をキャリアフィルムとしてポリエステル(王子製紙(株)社製、RL−07、厚さ38μm)ロールコーターで、厚さが25μmになるように塗布した。その後、70℃で2分、80℃で2分、100℃で2分乾燥を行い、感光性樹脂組成物で構成される層と、キャリアフィルムとを積層してなる積層体を得た。
【0039】
(実施例2)
樹脂ワニスの配合を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
感光性樹脂組成物としてアクリロイル基とカルボキシル基を有するアクリル共重合樹脂▲1▼(ダイセルUCB(株)製、サイクロマーP(ACA−200M))100重量部(樹脂固形分)と、前記感光性樹脂と異なる樹脂としてエポキシ樹脂▲1▼(ダイセル(株)製、セロキサイド2081、エポキシ当量200)30重量部と、希釈剤として2官能ウレタンアクリレート(新中村化学工業(株)製、UA−170TX)60重量部とを1−メトキシ−2−プロパノール35重量部に添加し、ディスパーザー(5000rpm)で約10分間攪拌した。その後、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール(チバ・ガイギー社製、イルガキュア651)6重量部を溶解して樹脂溶液を得た。
【0040】
(実施例3)
感光性樹脂と異なる樹脂の添加量を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
感光性樹脂と異なる樹脂(エポキシ樹脂▲1▼)の添加量を40重量部とした。
【0041】
(実施例4)
感光性樹脂と異なる樹脂の添加量を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
感光性樹脂と異なる樹脂(エポキシ樹脂▲1▼)の添加量を10重量部とした。
【0042】
(実施例5)
樹脂ワニスの配合を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
感光性樹脂組成物としてアクリロイル基とカルボキシル基を有するアクリル共重合樹脂▲1▼(ダイセルUCB(株)製、サイクロマーP(ACA−200M))100重量部(樹脂固形分)と、前記感光性樹脂と異なる樹脂としてエポキシ樹脂▲2▼(大日本インキ化学工業(株)製、EPICLON N−865、エポキシ当量190)23重量部と、希釈剤として2官能ウレタンアクリレート(新中村化学工業(株)製、UA−170TX)50重量部とを1−メトキシ−2−プロパノール35重量部に添加し、ディスパーザー(5000rpm)で約10分間攪拌した。その後、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール(チバ・ガイギー社製、イルガキュア651)6重量部を溶解して樹脂溶液を得た。
【0043】
(実施例6)
感光性樹脂と異なる樹脂を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
感光性樹脂と異なる樹脂としてフェノール樹脂(昭和高分子(株)製、ショウノールBKS−316)25重量部を用いた。
【0044】
(実施例7)
希釈剤の添加量を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
希釈剤(2官能ウレタンアクリレート)の添加量を25重量部とした。
【0045】
(実施例8)
希釈剤の添加量を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
希釈剤(2官能ウレタンアクリレート)の添加量を80重量部とした。
【0046】
(実施例9)
希釈剤を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
希釈剤として単官能アクリレートであるステアリルメタクリレート(新中村化学工業(株)製、NKエステルS)50重量部用いた。
【0047】
(実施例10)
感光性樹脂として、下記の方法で得られたアクリル共重合体を用いた以外は、実施例1と同様にした。
冷却管と攪拌機を備えたフラスコに2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1gおよび3−メトキシプロピオン酸メチル130gを仕込んだ。引き続きイソプレン5g、メタクリル酸35g、メタクリル酸メチル65gを仕込み、窒素置換した後、ゆるやかに攪拌を始めた。溶液の温度を80℃に上昇させ、この温度を4時間保持し、メタクリロイル基とカルボキシル基とを有するアクリル共重合樹脂▲2▼の樹脂ワニスを得た。
【0048】
(実施例11)
樹脂ワニスの配合を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
感光性樹脂組成物としてアクリロイル基とカルボキシル基を有するアクリル共重合樹脂▲1▼(ダイセルUCB(株)製、サイクロマーP(ACA−200M))100重量部(樹脂固形分)と、前記感光性樹脂と異なる樹脂としてエポキシ樹脂▲1▼(ダイセル(株)製、セロキサイド2081、エポキシ当量200)25重量部と、希釈剤として2官能ウレタンアクリレート(新中村化学工業(株)製、UA−170TX)40重量部、グリシジルメタクリレート/ブタジエン/アクリロニトリル/ジビニルベンゼン(6/68/20/6重量比)系エポキシ基含有架橋ゴム状共重合体5重量部とを1−メトキシ−2−プロパノール35重量部に添加し、ディスパーザー(5000rpm)で約10分間攪拌した。その後、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール(チバ・ガイギー社製、イルガキュア651)6重量部を溶解して樹脂溶液を得た。
【0049】
(実施例12)
感光性樹脂組成物で構成される層の厚さを以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
樹脂溶液をポリエステルフィルム(王子製紙(株)社製、RL−07、厚さ38μm)にロールコーターで、厚さが85μmになるように塗布した。
【0050】
(実施例13)
感光性樹脂組成物で構成される層の厚さを以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
樹脂溶液をポリエステルフィルム(王子製紙(株)社製、RL−07、厚さ38μm)にロールコーターで、厚さが8μmになるように塗布した。
【0051】
(比較例1)
感光性樹脂として下記の方法で得られたメタクリロイル基含有フェノールノボラック樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にした。
フェノールノボラック(大日本インキ化学工業(株)製、フェノライトTD−2090−60M)の不揮発分70%であるMEK溶液600g(OH約4当量)を2lのフラスコ中に投入し、これにトリブチルアミン1g、およびハイドロキノン0.2gを添加し、110℃に加温した。その中へ、グリシジルメタクリレート284g(2モル)を30分間で滴下した後、110℃で5時間攪拌反応させることにより、不揮発分約80%メタクリロイル基含有フェノールノボラック樹脂(メタクリロイル基変性率50%)を得た。
【0052】
(比較例2)
樹脂ワニスとして、下記の方法で得られたポリイミド樹脂ワニスを用いた以外は、実施例1と同様にした。
温度計、攪拌機、原料投入口、乾燥窒素ガス導入管を備えた四つ口のセパラブルフラスコ中に、ジアミン成分として1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン146.16g(0.5モル)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)525g、トルエン131gに縣濁させ、酸成分として4,4’−オキシジフタル酸二無水物155.11g(0.50モル)を氷水浴中5分間かけて紛状のままゆっくり添加した後、2時間攪拌をつづけた。
攪拌の間、乾燥窒素ガスを流しておき、反応系を20℃に維持した。次いで、乾燥窒素ガス導入管を外して、代わりにディーンスターク還流冷却管を取り付け、氷水浴からオイルバスにし、150℃で加熱した。この際、イミド化に伴い発生する水をトルエンとの共沸により系外へ除去した。2.0時間加熱還流したところで反応を終了し、ポリイミドの樹脂ワニスを得た。
【0053】
各実施例および比較例により得られた積層体について、次の評価を行った。評価項目を内容と共に示す。結果を表1に示す。
▲1▼バーコル硬度
バーコル硬度の測定ついては、ポリエステルフィルム(王子製紙(株)社製、RL−07、厚さ38μm)上に感光性樹脂組成物で構成される層の厚さを2mmとなるようにした後、高圧水銀灯露光装置を用い照射量1J/cm2で露光した後、180℃で2時間熱処理を行なった硬化物をJIS K 7060に準じて測定した。
【0054】
▲2▼可とう性
積層体の感光性樹脂組成物で構成される層を高圧水銀灯露光装置で照射量1J/cm2で露光した後、180℃で2時間熱処理を行なった。熱処理後の積層体からポリエステルフィルムを剥離し、180度折り曲げ試験を行い、感光性樹脂組成物で構成される層が破断するまでの回数を評価した。
【0055】
▲3▼タックの有無
感光性樹脂組成物で構成される層のタックの有無を、手による触感で評価した。各符号は、以下の通りである。
◎:タック無し
○:タック若干有るが、実用上問題なし
△:タック若干有り、実用上使用不可
×:タック有り
【0056】
▲4▼耐熱性
耐熱性を示差熱量分析(TG−DTA)を用いて、5%重量減少する温度で評価した。なお積層体の感光性樹脂組成物で構成される層を高圧水銀灯露光装置で照射量1J/cm2で露光した後、180℃で2時間熱処理を行なったものより、感光性樹脂組成物で構成される層を剥離してサンプルとした。
【0057】
【表1】
【0058】
表1から明らかなように、実施例1〜13は、可とう性に優れていた。
また、実施例1、2、4、5および12〜13は、特にタックの発生も無く、作業性に優れていることが示された。
また、実施例1〜3、5、7および12〜13は、さらに耐熱性にも優れていた。
【0059】
次に、多層フレキシブル配線板の実施例および比較例について説明する。
(実施例1A〜13A)
▲1▼接着剤ワニスの調製
クレゾールノボラック樹脂(PR−HF−3、住友デュレズ(株)製,OH基当量106)106gと、ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂(RE−810NM、日本化薬(株)製、エポキシ当量225)35gと、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(XD−1000L、日本化薬(株)製、エポキシ当量248)210gとを、メチルエチルケトン104gに溶解し、接着剤ワニスを得た。
【0060】
▲2▼多層フレキシブル配線板の製造
a 導体回路の製造
表面を粗化処理した圧延銅板(金属板201、古川電気工業製、EFTEC−64T、厚さ150μm)に、ドライフィルムレジスト(旭化成製、AQ−2058)をロールラミネートし、所定のネガフィルムを用いて露光・現像し、導体回路形成に必要なめっきレジストを形成した。
次に、圧延銅板を電解めっき用リードとして、金層を電解めっきにより形成し、さらに電解銅めっきすることにより銅回路を形成して、外層回路(導体回路)6を得た。外層回路(導体回路)6は、線幅/線間/厚み=20μm/20μm/10μmとした。
【0061】
b 第1のフレキシブル配線板部材5Aの製造
次に、実施例1〜13で得られた積層体をそれぞれ真空ラミネートにより、導体回路の配線パターンの凹凸を埋め込みながら成形し、所定の円型パターン(φ50μm)を載置して、高圧水銀灯露光装置を用い照射量200mJ/cm2で露光した。
次いで、0.5%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液により2Kg/m2のスプレー圧で現像し、φ50μmのビアホールを形成した。次に、全面に1J/cm2の後露光をして、180℃で2時間熱処理を行なった。その後、圧延銅板および導体回路を電解めっき用リードとして、電解銅めっきを行ってビアホールを銅で充填し、銅ポストを形成した。ここで、銅ポストの直径が45μmとなるように電解銅めっきの時間を調整した。次に、銅ポストの表面に、Sn−Pb共晶半田被膜を電解めっきによって5μmの厚みで形成して、突起状端子を有する導体ポストを得た。なお、Sn−Pb共晶半田被膜の先端表面の絶縁層表面から突出している高さは、12μmであった。最後に銅箔を全面エッチングにより除去し、第1のフレキシブル配線板部材5Aを得た。
【0062】
c 第2のフレキシブル配線板部材5Bの製造
上述の導体回路に対して、バーコートにより、上述の接着剤ワニスを塗布した後、80℃で20分乾燥し、20μm厚さの接着剤層53を形成した。
次に、接着剤層53が形成された導体回路と、上述の第1のフレキシブル配線板部材5Aとを、予め形成されている位置決めマークを画像認識装置により読み取り、両者を位置合わせし、250℃、0.5MPa、1分間の条件で熱圧着した。これによりコアとなる第2のフレキシブル配線板部材5Bを得た。
【0063】
d 多層フレキシブル配線板の製造
第1のフレキシブル配線板部材5Aの絶縁層側の表面に、バーコートにより、接着剤ワニスを塗布した後、80℃で20分乾燥し、厚さ20μmの接着剤層を形成した。
次に第2のフレキシブル配線板部材5Bの両側に、前述の接着剤層が形成された第1のフレキシブル配線板部材5Aを予め形成されている位置決めマークを画像認識装置により読み取り、両者を位置合わせし、250℃、0.5MPa、1分間の条件で熱圧着した。これにより第1のフレキシブル配線板部材/第2のフレキシブル配線板部材/第1のフレキシブル配線板部材を図2のように積層した多層フレキシブル配線板10を得た。
【0064】
(比較例1Aおよび2A)
使用する積層体として、比較例1および2で得られた積層体を用いた以外は、実施例1Aと同様にした。
【0065】
各実施例および比較例により得られた多層フレキシブル配線板について、次の評価を行った。評価項目を内容と共に示す。結果を表2に示す。
▲1▼可とう性
多層フレキシブル配線板の180度折り曲げ試験を行い、多層プリント配線板が破断するまでの回数を評価した。
【0066】
▲2▼解像性
第1のフレキシブル配線板部材の製造において、0.5%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液による現像後のビアホール(φ50μm)の形成の有無を目視で評価した。各符号は、以下の通りである。
◎:現像時間120秒後、顕微鏡観察で樹脂残渣なし。
○:現像時間360秒後、顕微鏡観察で樹脂残渣なし。
△:現像時間360秒後、顕微鏡観察で樹脂残渣あり。
×:形成せず。
【0067】
▲3▼絶縁性
絶縁性は、導体間の絶縁抵抗値をデジタル絶縁抵抗値で評価した。各符号は、以下の通りである。
◎:絶縁抵抗値1012Ωを超える
○:絶縁抵抗値1010〜1012Ω
△:絶縁抵抗値108〜1010Ω
×:絶縁抵抗値108未満
【0068】
▲4▼絶縁信頼性
絶縁信頼性は、温度85℃、湿度85%の雰囲気下で100時間放置後の導体間の絶縁抵抗値をデジタル絶縁抵抗値で評価した。各符号は以下の通りである。
◎:絶縁抵抗値1011Ωを超える
○:絶縁抵抗値109〜1011Ω
△:絶縁抵抗値107〜109Ω
×:絶縁抵抗値107未満
【0069】
【表2】
【0070】
比較例1は、可とう性に劣っていた。また、比較例2は、可とう性には優れているが、現像性が不十分であった。
これに対して表2から明らかなように、実施例1A〜13Aは、可とう性および現像性の双方に優れていた。
また、実施例1A〜3A、5A、7A、8A、11Aおよび12Aは、さらに絶縁性および絶縁信頼性にも優れていた。
【0071】
【発明の効果】
本発明によれば、フレキシブル配線板の絶縁層を形成した場合に、可とう性および現像性の双方に優れる感光性樹脂組成物を得ることができる。
また、感光性樹脂組成物に感光性樹脂とは異なる樹脂を含んだ場合、特に感光性樹脂組成物の耐熱性を向上することができる。
また、希釈剤として、一分子中に光官能基および熱官能基を有する多官能モノマーまたは一分子中に2個以上の光官能基を有する多官能モノマーを用いた場合、特に可とう性および現像性が優れる。
また、本発明によれば、可とう性および現像性の双方に優れる積層体を得ることができる。
また、本発明によれば、可とう性に優れるフレキシブル配線板を得ることができる。
また、積層体の感光性樹脂組成物で構成される層を特定の厚さとした場合、さらに絶縁性および絶縁信頼性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層体の一例を示す断面図である。
【図2】本発明のフレキシブル配線板の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 積層体
2 感光性樹脂組成物で構成される層
3 キャリアフィルム
10 フレキシブル配線板
5 多層部
51 内層回路
52 絶縁層
5A 第1のフレキシブル配線板部材
5B 第2のフレキシブル配線板部材
53 接着剤層
6 外層回路
7 導体ポスト
71 突起状端子
【発明の属する技術分野】
本発明は、感光性樹脂組成物、積層体およびフレキシブル配線板に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子機器の高密度化に伴い、これに用いられるプリント配線板の多層化が進んでおり、フレキシブル配線板も多層構造のものが多用されている。
【0003】
このような背景より、近年多層配線板では、新しい積層技術としてビルドアップ法が採用されている。ビルドアップ法とは、樹脂のみで構成される絶縁層と導体とを積み重ねながら、単層間で層間接続をする方法である。
【0004】
この多層配線板の各層間の配線は、ビアホールで接続する方法が用いられている。ビアホールを形成する方法としては、レーザーによる方法と、感光性樹脂を用いて露光・現像による方法とに大別される。
【0005】
感光性樹脂を用いて露光・現像によりビアホールを形成する方法は、露光および現像工程のみで一括してビアホールの形成が可能な点および既存設備を流用できる点より、レーザーでビアホールを形成する方法に比べ低コスト化が期待できる(例えば特許文献1参照)。
【0006】
フレキシブル配線板の絶縁層として、例えば(A)ジオール化合物、アクリル酸誘導体及びポリイソシアネート化合物を反応させて得られるエチレン性不飽和結合を有するウレタン化合物を含む光重合性不飽和化合物、(B)バインダーポリマー、(C)光重合開始剤並びに(D)ブロック化イソシアネート化合物を含有する感光性樹脂組成物が提案されている(例えば特許文献2参照)。
しかし、これらの感光性樹脂をフレキシブル配線板の絶縁層に用いる場合、優れた現像性および可とう性が要求されるため、そのいずれを両立する感光性樹脂は得られなかった。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−219590号公報
【特許文献2】
特開2000−241969号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、フレキシブル配線板の絶縁層を形成した場合に、現像性および可とう性に優れる感光性樹脂組成物を提供することである。
また、本発明の目的は、現像性および可とう性に優れる積層体を提供することである。
また、本発明の目的は、可とう性に優れるフレキシブル配線板を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(8)に記載の本発明により達成される。
(1)フレキシブル配線板の絶縁層を形成するために用いる感光性樹脂組成物であって、前記感光性樹脂組成物は、一分子中にアクリロイル基またはメタクリロイル基と、カルボキシル基とを有するアクリル系樹脂を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
(2)さらに前記感光性樹脂とは異なる樹脂を含むものである上記(1)に記載の感光性樹脂組成物。
(3)さらに希釈剤を含むものである上記(1)または(2)に記載の感光性樹脂組成物。
(4)前記希釈剤は、一分子中に光官能基および熱官能基を有する多官能モノマーまたは一分子中に2個以上の光官能基を有する多官能モノマーである上記(3)に記載の感光性樹脂組成物。
(5)前記感光性樹脂とは異なる樹脂の含有量は、前記感光性樹脂100重量部に対して5〜50重量部である上記(2)ないし(4)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
(6)前記希釈剤の含有量は、前記感光性樹脂100重量部に対して10〜100重量部である上記(3)ないし(5)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
(7)上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物で構成される層と、キャリアフィルムとを積層してなることを特徴とする積層体。
(8)上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物で構成される絶縁層と、前記絶縁層の少なくとも一方の面側に形成された導体回路とを有することを特徴とするフレキシブル配線板。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の感光性樹脂組成物、積層体およびフレキシブル配線板について詳細に説明する。
本発明の感光性樹脂組成物は、フレキシブル配線板の絶縁層を形成するために用いる感光性樹脂組成物であって、前記感光性樹脂組成物は、一分子中にアクリロイル基またはメタクリロイル基と、カルボキシル基とを有するアクリル系樹脂を含むことを特徴とするものである。
本発明の積層体は、上記に記載の感光性樹脂組成物で構成される層と、キャリアフィルムとを積層してなることを特徴とするものである。
本発明のフレキシブル配線板は、上記に記載の感光性樹脂組成物で構成される絶縁層と、前記絶縁層の少なくとも一方の面側に形成された導体回路とを有することを特徴とするものである。
【0011】
以下、感光性樹脂組成物について説明する。
本発明の感光性樹脂組成物は、フレキシブル配線板の絶縁層を形成するものである。従来、フレキシブル配線板の絶縁層には、ポリイミド、ポリエステル等の非感光性の樹脂が用いられていた。しかし、このような樹脂は、可とう性は有するが、微細な回路パターンの形成が困難であった。
一方、フレキシブル配線板の絶縁層用として提案されている従来の感光性樹脂組成物では、可とう性が不十分であった。
これに対して、本願発明では、微細な回路パターンおよび可とう性に優れ、フレキシブル配線板の絶縁層に適用可能な感光性樹脂組成物を提供するものである。
【0012】
本発明の感光性樹脂組成物は、一分子中にアクリロイル基またはメタクリロイル基とカルボキシル基とを有するアクリル系樹脂(アクリル系共重合体)を含む。これにより、光照射により、該感光性樹脂が反応して現像特性を発現することができる。
【0013】
前記一分子中にアクリロイル基またはメタクリロイル基とカルボキシル基とを有するアクリル系樹脂としては、例えばシクロヘキサン環、イソホロン環、イソボルニル環等の脂環構造の側鎖にアクリロイル基またはメタクリロイル基とカルボキシル基とを有するアクリル系樹脂、アクリル酸、メタクリル酸等の一個以上の重合性不飽和結合を有する一塩基酸と、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル等の不飽和化合物との共重合体等が挙げられる。これらの中でも脂環構造の側鎖にアクリロイル基またはメタクリロイル基とカルボキシル基とを有するアクリル系樹脂が好ましい。これにより、アルカリ現像性と可とう性の両方に優れる。さらに、タックフリー性にも優れる。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物では、さらに前記感光性樹脂とは異なる樹脂を含むことが好ましい。これにより、耐熱性を向上することができる。
前記感光性樹脂とは異なる樹脂としては、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂およびレゾール型フェノール樹脂等のフェノール樹脂、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂およびビスフェノールA−エピクロルヒドリン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂等のトリアジン環を有する樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、シアネートエステル樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの中でもエポキシ樹脂(特に液状エポキシ樹脂)が好ましい。これにより、感光性樹脂組成物の耐熱性の向上に加え、絶縁性も向上することができる。絶縁性を向上できる理由は、前記エポキシ樹脂のエポキシ基が感光性樹脂組成物中に残留する未反応のカルボキシル基を低減することができるからである。未反応のカルボキシル基が残留すると、絶縁性の低下、加熱により揮発分を生じ耐熱性が低下することになる。
【0015】
前記感光性樹脂と異なる樹脂の含有量は、特に限定されないが、前記感光性樹脂100重量部に対して5〜50重量部が好ましく、特に15〜35重量部が好ましい。含有量が前記下限値未満であると絶縁性を向上する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えると可とう性を向上する効果が低下する場合がある。
【0016】
本発明の感光性樹脂組成物では、さらに希釈剤を含むことが好ましい。これにより、感光性樹脂組成物を希釈し、被塗物に塗布し、乾燥させて製膜する際の作業性を向上することができる。
前記希釈剤としては、例えば光重合性モノマーまたは有機溶剤を挙げることができる。前記希釈剤として用いることができる光重合性モノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレートなどの単官能アクリレート化合物等を挙げることができる。
【0017】
前記希釈剤として用いることができる有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、メタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、石油エーテル、石油ナフサなどの石油系溶剤、セロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトールなどのカルビトール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテートなどの酢酸エステル類などを挙げることができる。
【0018】
さらに好ましい希釈剤としては、例えば一分子中に光官能基および熱官能基を有する多官能モノマー、一分子中に2個以上の光官能基を有する多官能モノマー等が挙げられる。これにより、上述の作業性を向上する効果に加え、可とう性をより向上することができる。
さらに、感光性樹脂として前記一分子中にアクリロイル基またはメタクリロイル基とカルボキシル基とを有するアクリル系樹脂を用いた場合には、特に感光性樹脂組成物の光反応性を向上することもできる。
【0019】
前記一分子中に光官能基および熱官能基を有する多官能モノマーとしては、例えば1分子中に少なくとも1個の水酸基を有するアクリレートまたはメタクリレート化合物等が挙げられる。具体的にはヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ブタンジオールモノアクリレート、グリセロールメタクリレート、フェノキシヒドロキシプロピルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、グリセロールジメタクリレート等が挙げられる。
また、一分子中に少なくとも1個のグリシジル基を有するアクリレートまたはメタクリレート化合物等が挙げられる。具体的には、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
【0020】
前記一分子中に2個以上の光官能基を有する多官能モノマーとしては、例えば一分子中に2個以上のアクリロイル基またはメタクリロイル基を有する光多官能モノマーが挙げられる。具体的にはトリエチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、グリコールメタクリレートアクリレート、グリセロールエポキシトリアクリレート、トリメチロプロパントリアクリレート、ペンタエリストールテトラアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロプロパントリメタクリレート、下記式(I)で示される2官能ウレタンアクリレート樹脂等が挙げられる。
【化1】
これらの中でも式(I)で示される2官能ウレタンアクリレート樹脂が好ましい。これにより、特に可とう性を向上することができる。
前記2官能ウレタンアクリレート樹脂は、その分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有し、かつ分子中に少なくとも1個以上のウレタン結合を有するものであり、そのようなものとしては、例えば、アルコール性水酸基を2個以上有する化合物とジイソシアネート化合物とアルコール性水酸基を有する(メタ)アクリレートとを反応して得られる化合物や、ジイソシアネート化合物とアルコール性水酸基を有する(メタ)アクリレートとを反応して得られる化合物が挙げられる。
さらに、前記一分子中に光官能基および熱官能基を有する多官能モノマーと一分子中に2個以上の光官能基を有する光多官能モノマーとを併用することもできる。
【0021】
前記希釈剤の含有量は、特に限定されないが、前記感光性樹脂100重量部に対して10〜100重量部が好ましく、特に30〜70重量部が好ましい。含有量が前記下限値未満であると可とう性を向上する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えると現像性(特にアルカリ現像性)を向上する効果が低下する場合がある。
【0022】
本発明の感光性樹脂組成物では、さらに光重合開始剤を含むことが好ましい。これにより、光の照射により感光性樹脂の反応を容易にすることができる。
前記光重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類、4―フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン等のアセトフェノン類、チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン等のチオキサンソン類、エチルアントラキノン、ブチルアントラキノン等のアルキルアントラキノン類等を挙げることができる。これらは単独、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。
【0023】
前記光重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、前記感光性樹脂100重量部に対して0.1〜30重量部が好ましく、特に1〜20重量部が好ましい。含有量が前記下限値未満であると感光性樹脂の反応を開始する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えると感光性樹脂の反応を制御するのが困難となる場合がある。
【0024】
前記感光性樹脂組成物は、特に限定されないが、実質的にゴム成分を含まないものであることが好ましい。ゴム成分は現像性を低下させる要因となるからである。
前記ゴム成分とは、例えばエポキシ基含有不飽和化合物、アミド基含有不飽和化合物、水酸基含有不飽和化合物、カルボキシル基含有不飽和化合物等の官能基含有不飽和化合物と、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の一分子中に少なくとも2個の不飽和結合を有する架橋性モノマーと、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエンとの架橋ゴム状共重合体が挙げられる。前記ゴム成分の分子量は、例えば重量平均分子量10万以上である。
前記ゴム成分を実質的に含まないとは、例えばゴム成分の含有量が前記感光性樹脂組成物全体の5重量%以下の場合等である。
【0025】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて紫外線吸収剤、熱重合防止剤、可塑剤、硬化促進剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0026】
本発明の感光性樹脂組成物の硬化反応後におけるJIS K 7060に規定するバーコル硬度は、特に限定されないが、60以下が好ましく、特に55以下が好ましく、最も50〜5が好ましい。バーコル硬度が、前記範囲内であると、かかる感光性樹脂組成物を用いて絶縁層を形成したフレキシブル配線板の可とう性(柔軟性)に特に優れる。
【0027】
前記バーコル硬度が前記範囲内であると、絶縁層の可とう性に優れるのは下記の理由であると考えられる。
絶縁層を形成する感光性樹脂組成物の硬化物は、光照射によって硬化するため、光照射された表面の架橋密度が高くなり、表面硬度が高くなる傾向がある。
しかし、表面硬度の高い絶縁層を有するフレキシブル配線板を屈曲させた場合、特に架橋密度の高い絶縁層の表面部分が十分な伸び特性を示すことができなくなる。したがって、その部分によりクラック等が生じ、フレキシブル配線板が十分な可とう性を示すことができない。
これに対して、本願発明では、感光性樹脂組成物の硬化反応後におけるバーコル硬度が特定の値となる感光性樹脂組成物をフレキシブル配線板の絶縁層に用いるので、絶縁層の表面も十分な柔軟性を有している。したがって、フレキシブル配線板全体として可とう性を示すことができる。
【0028】
表面硬度の測定方法に関しては、バーコル硬度計を用いてJIS K 7060に準じて測定することができる
前記硬化反応後とは、感光性樹脂組成物が十分に硬化反応していることを意味し、例えば反応率が90%以上をいう。
前記硬化反応後の感光性樹脂組成物のバーコル硬度を測定する方法としては、具体的に感光性樹脂組成物を1J/cm2で露光後、180℃で2時間熱処理を行なって得られた硬化物をJIS K 7060に準じて測定することができる。
また、前記反応率は、例えば示差走査型熱量計(DSC)を用いて測定した未反応の感光性樹脂組成物の発熱ピークの発熱量を基準として、反応後の感光性樹脂組成物の発熱ピークの発熱量を測定することにより評価することができる。
【0029】
次に、積層体について説明する。
図1は、本発明の積層体の一例を模式的に示す断面図である。
積層体1は、感光性樹脂組成物で構成される層2と、キャリアフィルム3とを積層してなる。
感光性樹脂組成物で構成される層2の厚さは、特に限定されないが、5〜100μmが好ましく、特に10〜80μmが好ましい。感光性樹脂組成物で構成される層の厚さが前記下限値未満であると絶縁信頼性を向上する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えると可とう性を向上する効果が低下する場合がある。
【0030】
キャリアフィルム3は、感光性樹脂組成物で構成される層2から適度な強度で剥離容易であることが好ましい。具体的には、ポリエステルフィルム、芳香族ポリイミド、ポリエチレン等が挙げられる。これらキャリアフィルムの中でもポリエステルフィルムが最も好ましい。これにより、感光性樹脂組成物で構成される層2から適度な強度で剥離することが特に容易となる。また、希釈剤に対する安定性にも優れている。さらに、希釈剤に溶解している感光性樹脂組成物成分がキャリアフィルムにマイグレーションするのを防止することもできる。
キャリアフィルム3の厚さは、特に限定されないが、10〜200μmが好ましく、特に20〜100μmが好ましい。
【0031】
感光性樹脂組成物で構成される層2をキャリアフィルム3に積層する方法としては、例えば前記感光性樹脂組成物を溶剤等に溶解してキャリアフィルム3に塗布する方法等が挙げられる。前記塗布する方法としては、例えばロールコーターを用いる方法、スプレーにより噴霧する方法、デッィピングにより浸漬する方法等が挙げられる。これらの中でもロールコーターを用いる方法が好ましい。これにより、所定の厚さを有する積層体1を安定して生産できる。
【0032】
具体的に積層体1を製造する方法としては、例えば感光性樹脂組成物を溶剤に溶解したものをキャリアフィルム3に1〜100μm程度の厚さで塗布し、その塗布層を例えば80〜200℃で20秒〜30分乾燥し、好ましくは残留溶媒量が全体の0.5重量%以下とする。これにより、感光性樹脂組成物で構成される層2がキャリアフィルム3上に積層された積層体1を得ることができる。
【0033】
次に、フレキシブル配線板について説明する。
図2は、本発明の(多層)フレキシブル配線板の一例を模式的に示す断面図である。
フレキシブル配線板10は、4層の多層部5と、多層部5の最外層(図中上下側)に設けられた外層回路(導体回路)6とを有している。
多層部5は、内層回路(導体回路)51と、内層回路51を被覆する絶縁層52と、内層回路51と外層回路6または内層回路51同士を接続する導体ポスト7とを有している。
導体回路は、例えば表面を粗化処理した圧延銅板にドライフィルムレジストを用い露光・現像し、導体回路形成に必要なめっきレジストを形成した後、圧延銅板を電解めっき用リードとして、金層を電解めっきにより形成し、さらに電解銅めっきすることにより回路を形成することができる。
【0034】
また、導体ポスト7と内層回路51との間には、両者を接着する接着剤層53が設けられている。
接着剤層53は、例えば導体回路が形成された面に真空ラミネータ、真空プレス等で用いてラミネートされる。ラミネートは、例えば60℃〜200℃、特に70℃〜150℃することができる。
絶縁層52は、上述した感光性樹脂組成物で構成されているので可とう性に優れている。そのため、フレキシブル配線板10の可とう性も優れている。
【0035】
導体ポスト7は、絶縁層52を貫通する孔内に設けられ、その一端が外層回路6と接続されている。
導体ポスト7の他端側は、絶縁層52の外層回路6と反対側の面よりも突出している突起状端子71を有している。これにより、回路の接続を確実に行なうことができ、接続信頼性をより向上することができる。
導体ポスト7の他端側は、内層回路51と接続されている。
【0036】
本実施の形態では、4層の多層部を有していたが、本発明はこれに限定されず、2層、3層でも良く、さらにフレキシブル性を有する限り5層以上であっても構わない。
本実施の形態では、導体ポスト7は、絶縁層52の一方の面を突出するような突起状端子71を有していたが、本発明はこれに限定されない。
【0037】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
積層体の製造
(実施例1)
▲1▼樹脂溶液の調製
感光性樹脂組成物としてアクリロイル基とカルボキシル基を有するアクリル系共重合樹脂▲1▼(ダイセルUCB(株)製、サイクロマーP(ACA−200M))100重量部(樹脂固形分)と、前記感光性樹脂と異なる樹脂としてエポキシ樹脂▲1▼(ダイセル(株)製、セロキサイド2081、エポキシ当量200)25重量部と、希釈剤として2官能ウレタンアクリレート(新中村化学工業(株)製、UA−170TX)50重量部とを1−メトキシ−2−プロパノール35重量部に添加し、ディスパーザー(5000rpm)で約10分間攪拌した。その後、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール(チバ・ガイギー社製、イルガキュア651)6重量部を溶解して樹脂溶液を得た。
【0038】
▲2▼積層体の製造
上述の樹脂溶液をキャリアフィルムとしてポリエステル(王子製紙(株)社製、RL−07、厚さ38μm)ロールコーターで、厚さが25μmになるように塗布した。その後、70℃で2分、80℃で2分、100℃で2分乾燥を行い、感光性樹脂組成物で構成される層と、キャリアフィルムとを積層してなる積層体を得た。
【0039】
(実施例2)
樹脂ワニスの配合を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
感光性樹脂組成物としてアクリロイル基とカルボキシル基を有するアクリル共重合樹脂▲1▼(ダイセルUCB(株)製、サイクロマーP(ACA−200M))100重量部(樹脂固形分)と、前記感光性樹脂と異なる樹脂としてエポキシ樹脂▲1▼(ダイセル(株)製、セロキサイド2081、エポキシ当量200)30重量部と、希釈剤として2官能ウレタンアクリレート(新中村化学工業(株)製、UA−170TX)60重量部とを1−メトキシ−2−プロパノール35重量部に添加し、ディスパーザー(5000rpm)で約10分間攪拌した。その後、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール(チバ・ガイギー社製、イルガキュア651)6重量部を溶解して樹脂溶液を得た。
【0040】
(実施例3)
感光性樹脂と異なる樹脂の添加量を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
感光性樹脂と異なる樹脂(エポキシ樹脂▲1▼)の添加量を40重量部とした。
【0041】
(実施例4)
感光性樹脂と異なる樹脂の添加量を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
感光性樹脂と異なる樹脂(エポキシ樹脂▲1▼)の添加量を10重量部とした。
【0042】
(実施例5)
樹脂ワニスの配合を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
感光性樹脂組成物としてアクリロイル基とカルボキシル基を有するアクリル共重合樹脂▲1▼(ダイセルUCB(株)製、サイクロマーP(ACA−200M))100重量部(樹脂固形分)と、前記感光性樹脂と異なる樹脂としてエポキシ樹脂▲2▼(大日本インキ化学工業(株)製、EPICLON N−865、エポキシ当量190)23重量部と、希釈剤として2官能ウレタンアクリレート(新中村化学工業(株)製、UA−170TX)50重量部とを1−メトキシ−2−プロパノール35重量部に添加し、ディスパーザー(5000rpm)で約10分間攪拌した。その後、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール(チバ・ガイギー社製、イルガキュア651)6重量部を溶解して樹脂溶液を得た。
【0043】
(実施例6)
感光性樹脂と異なる樹脂を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
感光性樹脂と異なる樹脂としてフェノール樹脂(昭和高分子(株)製、ショウノールBKS−316)25重量部を用いた。
【0044】
(実施例7)
希釈剤の添加量を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
希釈剤(2官能ウレタンアクリレート)の添加量を25重量部とした。
【0045】
(実施例8)
希釈剤の添加量を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
希釈剤(2官能ウレタンアクリレート)の添加量を80重量部とした。
【0046】
(実施例9)
希釈剤を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
希釈剤として単官能アクリレートであるステアリルメタクリレート(新中村化学工業(株)製、NKエステルS)50重量部用いた。
【0047】
(実施例10)
感光性樹脂として、下記の方法で得られたアクリル共重合体を用いた以外は、実施例1と同様にした。
冷却管と攪拌機を備えたフラスコに2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1gおよび3−メトキシプロピオン酸メチル130gを仕込んだ。引き続きイソプレン5g、メタクリル酸35g、メタクリル酸メチル65gを仕込み、窒素置換した後、ゆるやかに攪拌を始めた。溶液の温度を80℃に上昇させ、この温度を4時間保持し、メタクリロイル基とカルボキシル基とを有するアクリル共重合樹脂▲2▼の樹脂ワニスを得た。
【0048】
(実施例11)
樹脂ワニスの配合を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
感光性樹脂組成物としてアクリロイル基とカルボキシル基を有するアクリル共重合樹脂▲1▼(ダイセルUCB(株)製、サイクロマーP(ACA−200M))100重量部(樹脂固形分)と、前記感光性樹脂と異なる樹脂としてエポキシ樹脂▲1▼(ダイセル(株)製、セロキサイド2081、エポキシ当量200)25重量部と、希釈剤として2官能ウレタンアクリレート(新中村化学工業(株)製、UA−170TX)40重量部、グリシジルメタクリレート/ブタジエン/アクリロニトリル/ジビニルベンゼン(6/68/20/6重量比)系エポキシ基含有架橋ゴム状共重合体5重量部とを1−メトキシ−2−プロパノール35重量部に添加し、ディスパーザー(5000rpm)で約10分間攪拌した。その後、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール(チバ・ガイギー社製、イルガキュア651)6重量部を溶解して樹脂溶液を得た。
【0049】
(実施例12)
感光性樹脂組成物で構成される層の厚さを以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
樹脂溶液をポリエステルフィルム(王子製紙(株)社製、RL−07、厚さ38μm)にロールコーターで、厚さが85μmになるように塗布した。
【0050】
(実施例13)
感光性樹脂組成物で構成される層の厚さを以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
樹脂溶液をポリエステルフィルム(王子製紙(株)社製、RL−07、厚さ38μm)にロールコーターで、厚さが8μmになるように塗布した。
【0051】
(比較例1)
感光性樹脂として下記の方法で得られたメタクリロイル基含有フェノールノボラック樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にした。
フェノールノボラック(大日本インキ化学工業(株)製、フェノライトTD−2090−60M)の不揮発分70%であるMEK溶液600g(OH約4当量)を2lのフラスコ中に投入し、これにトリブチルアミン1g、およびハイドロキノン0.2gを添加し、110℃に加温した。その中へ、グリシジルメタクリレート284g(2モル)を30分間で滴下した後、110℃で5時間攪拌反応させることにより、不揮発分約80%メタクリロイル基含有フェノールノボラック樹脂(メタクリロイル基変性率50%)を得た。
【0052】
(比較例2)
樹脂ワニスとして、下記の方法で得られたポリイミド樹脂ワニスを用いた以外は、実施例1と同様にした。
温度計、攪拌機、原料投入口、乾燥窒素ガス導入管を備えた四つ口のセパラブルフラスコ中に、ジアミン成分として1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン146.16g(0.5モル)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)525g、トルエン131gに縣濁させ、酸成分として4,4’−オキシジフタル酸二無水物155.11g(0.50モル)を氷水浴中5分間かけて紛状のままゆっくり添加した後、2時間攪拌をつづけた。
攪拌の間、乾燥窒素ガスを流しておき、反応系を20℃に維持した。次いで、乾燥窒素ガス導入管を外して、代わりにディーンスターク還流冷却管を取り付け、氷水浴からオイルバスにし、150℃で加熱した。この際、イミド化に伴い発生する水をトルエンとの共沸により系外へ除去した。2.0時間加熱還流したところで反応を終了し、ポリイミドの樹脂ワニスを得た。
【0053】
各実施例および比較例により得られた積層体について、次の評価を行った。評価項目を内容と共に示す。結果を表1に示す。
▲1▼バーコル硬度
バーコル硬度の測定ついては、ポリエステルフィルム(王子製紙(株)社製、RL−07、厚さ38μm)上に感光性樹脂組成物で構成される層の厚さを2mmとなるようにした後、高圧水銀灯露光装置を用い照射量1J/cm2で露光した後、180℃で2時間熱処理を行なった硬化物をJIS K 7060に準じて測定した。
【0054】
▲2▼可とう性
積層体の感光性樹脂組成物で構成される層を高圧水銀灯露光装置で照射量1J/cm2で露光した後、180℃で2時間熱処理を行なった。熱処理後の積層体からポリエステルフィルムを剥離し、180度折り曲げ試験を行い、感光性樹脂組成物で構成される層が破断するまでの回数を評価した。
【0055】
▲3▼タックの有無
感光性樹脂組成物で構成される層のタックの有無を、手による触感で評価した。各符号は、以下の通りである。
◎:タック無し
○:タック若干有るが、実用上問題なし
△:タック若干有り、実用上使用不可
×:タック有り
【0056】
▲4▼耐熱性
耐熱性を示差熱量分析(TG−DTA)を用いて、5%重量減少する温度で評価した。なお積層体の感光性樹脂組成物で構成される層を高圧水銀灯露光装置で照射量1J/cm2で露光した後、180℃で2時間熱処理を行なったものより、感光性樹脂組成物で構成される層を剥離してサンプルとした。
【0057】
【表1】
【0058】
表1から明らかなように、実施例1〜13は、可とう性に優れていた。
また、実施例1、2、4、5および12〜13は、特にタックの発生も無く、作業性に優れていることが示された。
また、実施例1〜3、5、7および12〜13は、さらに耐熱性にも優れていた。
【0059】
次に、多層フレキシブル配線板の実施例および比較例について説明する。
(実施例1A〜13A)
▲1▼接着剤ワニスの調製
クレゾールノボラック樹脂(PR−HF−3、住友デュレズ(株)製,OH基当量106)106gと、ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂(RE−810NM、日本化薬(株)製、エポキシ当量225)35gと、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(XD−1000L、日本化薬(株)製、エポキシ当量248)210gとを、メチルエチルケトン104gに溶解し、接着剤ワニスを得た。
【0060】
▲2▼多層フレキシブル配線板の製造
a 導体回路の製造
表面を粗化処理した圧延銅板(金属板201、古川電気工業製、EFTEC−64T、厚さ150μm)に、ドライフィルムレジスト(旭化成製、AQ−2058)をロールラミネートし、所定のネガフィルムを用いて露光・現像し、導体回路形成に必要なめっきレジストを形成した。
次に、圧延銅板を電解めっき用リードとして、金層を電解めっきにより形成し、さらに電解銅めっきすることにより銅回路を形成して、外層回路(導体回路)6を得た。外層回路(導体回路)6は、線幅/線間/厚み=20μm/20μm/10μmとした。
【0061】
b 第1のフレキシブル配線板部材5Aの製造
次に、実施例1〜13で得られた積層体をそれぞれ真空ラミネートにより、導体回路の配線パターンの凹凸を埋め込みながら成形し、所定の円型パターン(φ50μm)を載置して、高圧水銀灯露光装置を用い照射量200mJ/cm2で露光した。
次いで、0.5%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液により2Kg/m2のスプレー圧で現像し、φ50μmのビアホールを形成した。次に、全面に1J/cm2の後露光をして、180℃で2時間熱処理を行なった。その後、圧延銅板および導体回路を電解めっき用リードとして、電解銅めっきを行ってビアホールを銅で充填し、銅ポストを形成した。ここで、銅ポストの直径が45μmとなるように電解銅めっきの時間を調整した。次に、銅ポストの表面に、Sn−Pb共晶半田被膜を電解めっきによって5μmの厚みで形成して、突起状端子を有する導体ポストを得た。なお、Sn−Pb共晶半田被膜の先端表面の絶縁層表面から突出している高さは、12μmであった。最後に銅箔を全面エッチングにより除去し、第1のフレキシブル配線板部材5Aを得た。
【0062】
c 第2のフレキシブル配線板部材5Bの製造
上述の導体回路に対して、バーコートにより、上述の接着剤ワニスを塗布した後、80℃で20分乾燥し、20μm厚さの接着剤層53を形成した。
次に、接着剤層53が形成された導体回路と、上述の第1のフレキシブル配線板部材5Aとを、予め形成されている位置決めマークを画像認識装置により読み取り、両者を位置合わせし、250℃、0.5MPa、1分間の条件で熱圧着した。これによりコアとなる第2のフレキシブル配線板部材5Bを得た。
【0063】
d 多層フレキシブル配線板の製造
第1のフレキシブル配線板部材5Aの絶縁層側の表面に、バーコートにより、接着剤ワニスを塗布した後、80℃で20分乾燥し、厚さ20μmの接着剤層を形成した。
次に第2のフレキシブル配線板部材5Bの両側に、前述の接着剤層が形成された第1のフレキシブル配線板部材5Aを予め形成されている位置決めマークを画像認識装置により読み取り、両者を位置合わせし、250℃、0.5MPa、1分間の条件で熱圧着した。これにより第1のフレキシブル配線板部材/第2のフレキシブル配線板部材/第1のフレキシブル配線板部材を図2のように積層した多層フレキシブル配線板10を得た。
【0064】
(比較例1Aおよび2A)
使用する積層体として、比較例1および2で得られた積層体を用いた以外は、実施例1Aと同様にした。
【0065】
各実施例および比較例により得られた多層フレキシブル配線板について、次の評価を行った。評価項目を内容と共に示す。結果を表2に示す。
▲1▼可とう性
多層フレキシブル配線板の180度折り曲げ試験を行い、多層プリント配線板が破断するまでの回数を評価した。
【0066】
▲2▼解像性
第1のフレキシブル配線板部材の製造において、0.5%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液による現像後のビアホール(φ50μm)の形成の有無を目視で評価した。各符号は、以下の通りである。
◎:現像時間120秒後、顕微鏡観察で樹脂残渣なし。
○:現像時間360秒後、顕微鏡観察で樹脂残渣なし。
△:現像時間360秒後、顕微鏡観察で樹脂残渣あり。
×:形成せず。
【0067】
▲3▼絶縁性
絶縁性は、導体間の絶縁抵抗値をデジタル絶縁抵抗値で評価した。各符号は、以下の通りである。
◎:絶縁抵抗値1012Ωを超える
○:絶縁抵抗値1010〜1012Ω
△:絶縁抵抗値108〜1010Ω
×:絶縁抵抗値108未満
【0068】
▲4▼絶縁信頼性
絶縁信頼性は、温度85℃、湿度85%の雰囲気下で100時間放置後の導体間の絶縁抵抗値をデジタル絶縁抵抗値で評価した。各符号は以下の通りである。
◎:絶縁抵抗値1011Ωを超える
○:絶縁抵抗値109〜1011Ω
△:絶縁抵抗値107〜109Ω
×:絶縁抵抗値107未満
【0069】
【表2】
【0070】
比較例1は、可とう性に劣っていた。また、比較例2は、可とう性には優れているが、現像性が不十分であった。
これに対して表2から明らかなように、実施例1A〜13Aは、可とう性および現像性の双方に優れていた。
また、実施例1A〜3A、5A、7A、8A、11Aおよび12Aは、さらに絶縁性および絶縁信頼性にも優れていた。
【0071】
【発明の効果】
本発明によれば、フレキシブル配線板の絶縁層を形成した場合に、可とう性および現像性の双方に優れる感光性樹脂組成物を得ることができる。
また、感光性樹脂組成物に感光性樹脂とは異なる樹脂を含んだ場合、特に感光性樹脂組成物の耐熱性を向上することができる。
また、希釈剤として、一分子中に光官能基および熱官能基を有する多官能モノマーまたは一分子中に2個以上の光官能基を有する多官能モノマーを用いた場合、特に可とう性および現像性が優れる。
また、本発明によれば、可とう性および現像性の双方に優れる積層体を得ることができる。
また、本発明によれば、可とう性に優れるフレキシブル配線板を得ることができる。
また、積層体の感光性樹脂組成物で構成される層を特定の厚さとした場合、さらに絶縁性および絶縁信頼性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層体の一例を示す断面図である。
【図2】本発明のフレキシブル配線板の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 積層体
2 感光性樹脂組成物で構成される層
3 キャリアフィルム
10 フレキシブル配線板
5 多層部
51 内層回路
52 絶縁層
5A 第1のフレキシブル配線板部材
5B 第2のフレキシブル配線板部材
53 接着剤層
6 外層回路
7 導体ポスト
71 突起状端子
Claims (8)
- フレキシブル配線板の絶縁層を形成するために用いる感光性樹脂組成物であって、
前記感光性樹脂組成物は、一分子中にアクリロイル基またはメタクリロイル基と、カルボキシル基とを有するアクリル系樹脂を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。 - さらに前記感光性樹脂とは異なる樹脂を含むものである請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
- さらに希釈剤を含むものである請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
- 前記希釈剤は、一分子中に光官能基および熱官能基を有する多官能モノマーまたは一分子中に2個以上の光官能基を有する多官能モノマーである請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
- 前記感光性樹脂とは異なる樹脂の含有量は、前記感光性樹脂100重量部に対して5〜50重量部である請求項2ないし4のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
- 前記希釈剤の含有量は、前記感光性樹脂100重量部に対して10〜100重量部である請求項3ないし5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
- 請求項1ないし6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物で構成される層と、キャリアフィルムとを積層してなることを特徴とする積層体。
- 請求項1ないし6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物で構成される絶縁層と、前記絶縁層の少なくとも一方の面側に形成された導体回路とを有することを特徴とするフレキシブル配線板。
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---|---|---|---|
JP2003149842A JP2004354528A (ja) | 2003-05-27 | 2003-05-27 | 感光性樹脂組成物、積層体およびフレキシブル配線板 |
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013167825A (ja) * | 2012-02-16 | 2013-08-29 | Fujifilm Corp | パターン形成方法、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物及びレジスト膜、並びにこれらを用いた電子デバイスの製造方法及び電子デバイス |
JP2015007759A (ja) * | 2013-05-28 | 2015-01-15 | 株式会社タムラ製作所 | 感光性樹脂組成物 |
JP2015092228A (ja) * | 2013-09-30 | 2015-05-14 | 株式会社タムラ製作所 | 感光性樹脂組成物 |
JP2015092229A (ja) * | 2013-09-30 | 2015-05-14 | 株式会社タムラ製作所 | 感光性樹脂組成物 |
-
2003
- 2003-05-27 JP JP2003149842A patent/JP2004354528A/ja active Pending
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