JP2004353106A - 印刷用塗被紙とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高光沢性と嵩高性や不透明性とを両立しかつ印刷特性に優れ、しかも高速塗工性に優れた印刷用塗被紙を提供する。
【解決手段】粒径が0.5〜1.3μm、ガラス転移温度が100℃以上、空隙率が55%以上の中空有機顔料を、顔料100重量部中4〜10重量部配合した顔料と接着剤を主成分とする塗被層を原紙の両面に有し、表面平滑化処理を行って成る。
【解決手段】粒径が0.5〜1.3μm、ガラス転移温度が100℃以上、空隙率が55%以上の中空有機顔料を、顔料100重量部中4〜10重量部配合した顔料と接着剤を主成分とする塗被層を原紙の両面に有し、表面平滑化処理を行って成る。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高光沢性と嵩高性や不透明性とを両立しかつ印刷特性に優れた印刷用塗被紙とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、写真媒体を主とした印刷物において、ビジュアル的な高級感に対する要求が厳しくなっている。すなわち、高光沢性、高不透明度、網点再現性等の印刷特性になどに対する品質要求が厳しくなってきている。
【0003】
従来の写真印刷用塗被紙としては、クレーリッチに代表される光沢性を向上する顔料処方設計、及びスーパーカレンダーにおけるニップ圧アップによる高光沢化が行われていたが、その結果紙厚、不透明度の低下を来たし、裏側から透けて見える裏抜けが発生するという問題があり、高光沢性と嵩高性や不透明性を両立できなかった。また、その改善策としては、嵩高剤の使用、米坪アップ、原料配合変更等が余儀なくされ、コスト高要因となっていた。
【0004】
このような問題に対して、塗被液中に粒径が0.8〜1.3μmで、ガラス転移温度が100℃以上の中空有機顔料を顔料100重量部中5〜20重量部配合し、これを塗被、乾燥した後、低温でスーパーカレンダー仕上げして成り、粒径の大きい中空有機顔料を配合することで、加熱カレンダー処理により塗被層表面の構造を緻密にすることなく、低温のスーパーカレンダー処理にて中空有機顔料を変形させて光沢性を向上し、強光沢を有する塗被紙を製造することが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、原紙の両面に、顔料と接着剤を主成分とする塗被剤を塗工・乾燥して平滑化処理する両面印刷用塗被紙の製造方法において、片面の塗被層に、粒径が0.1〜1.3μm、ガラス転移温度が40℃以上の中空有機顔料を3〜30重量%含有せしめ、所定条件でグロスカレンダー処理を行うことにより、緊度が1.05g/cm3 以下で、片面の光沢度が75%以上になるようにすることが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
また、原紙の両面に、顔料と接着剤を主成分とする塗被層を設けてなり、その塗被層中の顔料100重量部中に、所定の性状のカオリンを60重量部以上含み、さらに好適には平均粒径0.5〜1.5μmの中空有機顔料を1〜10重量部含むことにより、嵩高な構造を保ちながら高光沢を得、またインクの受理性の向上を図ることも知られている(特許文献3参照。)。
【0007】
また、原紙の表裏面の少なくとも一方の面に、顔料を含む塗工液を塗工し、乾燥し、スーパーカレンダー処理した光沢紙において、顔料が、0.5〜1.5μmの中空有機顔料を3〜20重量部含み、かつ基紙の機械パルプ繊維の割合を10重量%以上としたものも知られている(特許文献4参照。)。
【0008】
【特許文献1】
特開平6−192996号公報
【0009】
【特許文献2】
特開平9−119090号公報
【0010】
【特許文献3】
特開2000−226791号公報
【0011】
【特許文献4】
特開2002−220795号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、本発明者が、粒径が0.5〜1.3μmで、ガラス転移温度が100℃以上、空隙率が50%の中空有機顔料を、顔料100重量部中10重量部含有せしめた顔料と接着剤を主成分とする塗被液を、通常の塗工に採用されているように、固形分濃度が60%で、粘度がB型粘度計の60rpm測定濃度で500〜1500cpsとなるように調製し、この塗被液を原紙の両面に塗工・乾燥し、例えばロール温度70℃、処理速度600m/分、ニップ圧を線圧250kg/cm、11ニップでスーパーカレンダー処理を行ったところ、75°光沢度が75%以上、不透明度が90%以上の高光沢度、高不透明度の塗被紙を得ることが困難で、実生産上では不可能であり、さらに1000m/分以上の高速で塗工を行ったところ、高光沢度、高不透明度、網点再現性等の印刷特性が十分に得られないということが判明した。
【0013】
一方、上記特許文献1〜4には、1000m/分以上の高速にて塗工を行った場合にも十分にかつ安定して効果を発揮できるような顔料の組成や、塗工性や乾燥性を実現するための塗被液の物性については開示されていない。
【0014】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、高光沢性と嵩高性や不透明性とを両立しかつ印刷特性に優れ、また高速塗工性にも優れた印刷用塗被紙とその製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の印刷用塗被紙は、粒径が0.5〜1.3μm、ガラス転移温度が100℃以上、空隙率が55%以上の中空有機顔料を、顔料100重量部中4〜10重量部配合した顔料と接着剤を主成分とする塗被層を原紙の両面に有し、表面平滑化処理を行って成るものである。
【0016】
この構成によれば、所望の嵩高性を保持できるような条件でかつ実生産に有効な600m/分以上の速度でスーパーカレンダー処理などの表面平滑化処理を行っても、粒径及び配合量が適切でかつ空隙率が55%以上と高い中空有機顔料を含有することで、その中空有機顔料が確実に変形して高い光沢度が得られ、高光沢性と嵩高性や不透明性とを両立し、また網点再現性などの印刷特性に優れた印刷用塗被紙を得ることができる。
【0017】
また、JIS P8142による75°光沢度が75%〜85%で、かつ緊度が1.0〜1.2g/cm3 であると、所望の高光沢性と嵩高性や不透明性とを両立した印刷用塗被紙が得られて好適である。
【0018】
また、本発明の印刷用塗被紙の製造方法は、原紙の両面に顔料と接着剤を主成分とする塗被液を塗工し、乾燥、表面平滑化処理を行う印刷用塗被紙の製造方法において、顔料として粒径が0.5〜1.3μm、ガラス転移温度が100℃以上、空隙率が55%以上の中空有機顔料を、顔料100重量部中4〜10重量部含有する塗被液を用いるものである。
【0019】
この構成によると、上記のように実生産に有効な速度で、高光沢性と嵩高性や不透明性とを両立し、また網点再現性などの印刷特性に優れた印刷用塗被紙を得ることができる。
【0020】
また、上記組成の塗被液を、固形分濃度が63.0%以上でかつ粘度がB型粘度計の60rpm測定粘度で2000cps以上となるように調製することにより、1000m/分以上の高速で塗工を行っても、適正な塗工性と乾燥性を実現でき、一層高い生産性を確保しながら上記効果が得られる印刷用塗被紙を得ることができる。
【0021】
また、JIS P8142による75°光沢度が75%〜85%で、かつ緊度が1.0〜1.2g/cm3 となるように表面平滑化処理を行うことにより、所望の高光沢性と嵩高性や不透明性とを両立することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の印刷用塗被紙とその製造方法の実施形態を詳細に説明する。
【0023】
本発明は、原紙の両面に顔料と接着剤を主成分とする塗被液を塗工し、乾燥、表面平滑化処理を行うことにより、所望の高光沢性と嵩高性や不透明性とを両立しかつ網点再現性等の印刷特性に優れた印刷用塗被紙を、実生産に有効な1000m/分以上の高速塗工によって製造するものである。表面平滑化処理としては、通常塗被紙の平滑化処理に使用されるスーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトニップカレンダー等を問題なく使用でき、これらを併用してもよい。
【0024】
原紙の原料パルプは、特に限定されない。既知のKPのような化学パルプ、PGW、SGP、RGP、BCTMP、CTMP等の機械パルプ、脱墨パルプ、古紙パルプ、あるいはケナフ、竹、麻、藁等の非木材パルプ等を、単独であるいは二種以上を混合して用いることができる。特に、同一秤量の他のパルプと比較して不透明度が高く、森林資源保護に寄与する古紙パルプを用いるのが好ましく、また原紙を嵩高とするためには化学パルプに比して機械パルプや古紙パルプの配合量を10重量%以上、好適には50重量%以上とするのが好ましい。
【0025】
原紙の坪量は特に限定されず、一般の印刷用塗被紙の坪量である、30〜400g/m2 程度とすることができる。
【0026】
塗被液中の顔料には、全顔料成分100重量部に対して、中空有機顔料を4〜10重量部含有させる。その中空有機顔料としては、平均空隙率が55%以上の中空有機顔料を用いることにより、表面平滑化処理を実生産に有効な600m/分以上、例えば600〜900m/分の速度で行っても主として中空有機顔料が容易に変形し、そのため原紙厚及び塗被厚が薄くなることのないニップ圧やニップ数で処理を行っても高光沢性が得られる。空隙率が55%以上と高い中空有機顔料は、空隙率が50%の中空有機顔料よりも光沢、不透明度、嵩高さを向上させる効果が高く、塗被液中への含有量を低減することができる。塗被液中への中空有機顔料の含有量は、全顔料成分100重量部に対して4〜10重量部とするのがよい。中空有機顔料が4重量部未満では、表面平滑化処理時の変形性に劣るために所望の高光沢性が得られず、10重量部を越えると、塗被液の粘度が高くなり、高速塗工性を実現する粘度に調整することができなくなり、塗被面の平滑度が低下し、印刷特性を悪化させる。
【0027】
中空有機顔料の粒径は、0.5〜1.3μmのものとする。粒径が0.5μm未満の中空有機顔料では、空隙率が55%以上であってもカレンダー処理時に中空有機顔料の変形が十分に進まないので光沢再現性に劣り、1.3μmを越えると、分散安定性が劣るため、塗被液粘度が上昇し、実現しようとする高速塗工に適した粘度の塗被液が得られず、塗被面の乱れを生じさせる原因となって塗被面の平滑度が低下し、印刷特性を悪化させる。
【0028】
中空有機顔料の材質としては、スチレン−アクリル共重合体が好ましく、具体例としては、中空孔ポリマー粒子の形態で提供される、ローム・アンド・ハース社製の「ローペイク」(登録商標)HP−1055が好適である。
【0029】
顔料には、上記中空有機顔料以外に、デラミネートクレー、炭酸カルシウム、カオリン、焼成クレー、サチンホワイト、酸化チタン、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、シリカ、活性白土、珪藻土、レーキ等の1種又は複数種を混合したものが含有される。特に、アスペクト比が30〜60のデラミネートクレーを含有させると、平滑性が向上するとともにインクが沈み難いため印刷特性の優れた性状が得られる。
【0030】
塗被液に使用される接着剤としては、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体、及びポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成接着剤、酸化でんぷん、エステル化でんぷん、酵素変性でんぷんやそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性でんぷん、カゼイン、大豆蛋白等の天然系接着剤等を用い得る。これらの接着剤は、顔料100重量部に対して10〜30重量部、より好ましくは10〜20重量部の範囲で用いるのが好適である。接着剤が上記範囲より少ないと接着性が劣り、多いと光沢性の発現を低下させる。
【0031】
塗被液には、必要に応じて分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤等の補助剤が含有される。
【0032】
塗被液は、固形分濃度が63.0%以上で、B型粘度計の60rpm測定粘度が2000cps以上となるように調製される。塗被液の物性をこのように規定することにより、1000m/分以上での高速塗工時の塗工性及び塗被層の乾燥性を適正にコントロールすることができ、塗被面に乱れを生じずに高い平滑度が確保され、所望の網点再現性等の印刷特性が確保される。
【0033】
原紙への塗被液の塗工方法は、ブレードコータ、エアナイフコータ、ロールコータ、ブラシコータ、カーテンコータ、バーコータ、グラビアコータ、サイズプレスコータ等の塗工装置によって、一層又は多層に分けて行うことができ、かつその塗工を原紙の両面に対して行うことにより、高光沢化と嵩高性や不透明性とを確実に両立することができる。塗工量は、乾燥重量で、片面につき5〜20g/m2 、好適には7〜15g/m2 の範囲に調整される。塗工量が、5g/m2 未満では、原紙の被覆性に劣り、塗工層が形成され難く、また原紙の地合いの影響を受けて平滑度が不充分となり、一方20g/m2 以上では紙のこしがなくなるとともにコスト高となる。
【0034】
塗被層乾燥後のスーパーカレンダー仕上げに際しては、JIS P8142による75°光沢度が75%〜85%で、かつ緊度が1.0〜1.2g/cm3 となるようにニップ圧を調整している。具体的には、ニップ数が10〜15ニップで、ニップ圧を線圧で150〜350kg/cmに、カレンダーロール温度は、品質を安定するため50〜95℃に調整する。50℃未満では好適な塗被層が形成されず、95℃を越えると白紙光沢感が低下する。また、このカレンダーロールの最高温度に対して中空有機顔料のガラス転移温度を100℃以上に規定し、スーパーカレンダー仕上げによって中空有機顔料がガラス転移することがないようにしている。
【0035】
【実施例】
次に、本発明のいくつかの実施例と比較例を説明する。
【0036】
(実験例1)
まず、中空有機顔料の粒度と配合重量部と空隙率の影響について主に調査する実験を行うため、試料として次のものを用意した。
【0037】
原紙:化学パルプと機械パルプと古紙パルプを表1に示すように配合し、硫酸バンドの助剤を添加し、抄紙した。
【0038】
中空有機顔料:中空有機顔料として、ガラス転移温度が105℃、空隙率が55%で、粒径が0.4μm、0.5μm、0.8μm、1.3μm、1.4μmのものを用意した。また、粒径が0.8μmで、ガラス転移温度が150℃のものと空隙率が60%のものを用意した。また、比較例として粒径が0.8μmで、空隙率が50%のものや、ガラス転移温度が55℃のものを用意した。
【0039】
他の顔料:クレー(商品名:ウルトラホワイト90/エンゲルハード社製)を中空有機顔料との合計で60重量部、デラミネートクレー(商品名:ハイドラプリント/ヒューバー社製)20重量部、炭酸カルシウム(商品名:FMT90/ファイマテック社製)20重量部の混合顔料を用いた。
【0040】
接着剤:リン酸エステル化でんぷん(日本食品化工製)とスチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(旭化成工業製)を1対3で配合したものを用いた。
【0041】
実施例1〜5及び比較例1〜4として、表1に示すように原紙と中空有機顔料の粒径と配合量とを変え、また実施例6としてガラス転移温度が150℃と高いものを用い、実施例7として空隙率が60%とより高いものを用い、また比較例5として空隙率が50%のもの、比較例6としてガラス転移温度が55℃と低いもの、を用い、各中空有機顔料と他の顔料との混合顔料を調整し、コーレス分散機を用いて水に分散して顔料分散液を調整し、顔料分散液100重量部に対して接着剤を20重量部配合して、最終的に固形分濃度65%で、B型粘度計の60rpm測定粘度が2200cpsの塗被液を調製した。これをブレードコータで原紙の両面に塗工量が20g/m2 となるように1000m/分の速度で塗工した。さらに、ニップ数が11ニップのスーパーカレンダーを用いて、ニップ圧を線圧で150〜350kg/cmの範囲で、塗被紙の緊度が1.0〜1.2g/cm3 の範囲に収まるように調整して処理を行った。
【0042】
以上の各実施例及び比較例の評価結果を、表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1の実施例1〜7と比較例1〜6から、粒径が0.5〜1.3μm、空隙率が55%以上の中空有機顔料を、顔料100重量部中4〜10重量部含有せしめた顔料を含む塗被液を原紙の両面に塗工することにより、75°光沢度(JISP8142)が75〜85%の高光沢性を有し、緊度(JIS P8118)が1.0〜1.2g/cm3 で、不透明度(JIS P8138)が90%以上で、網点再現性等の印刷特性に優れた印刷用塗被紙が得られることが分かる。その中で、実施例1〜3から粒径が相対的に大きいほど高い光沢度が得られ、また実施例5から中空有機顔料の配合量が多いと光沢度、不透明度、印刷特性に優れ、少ない実施例4では、緊度を高く不透明度を低くしても光沢度が相対的に低く、印刷特性も低下することが分かる。また、ガラス転移温度が150℃と高い実施例6でも同様の効果が得られる一方、ガラス転移温度が55℃と低い比較例6では緊度を高くしても光沢度が不十分であることが分かる。また実施例7のように空隙率が60%のものも同様の効果が得られることが分かる。また、比較例1、2から粒径が小さ過ぎても、大き過ぎても、また比較例3、4から配合量が少な過ぎても、多過ぎても、緊度を高くし、不透明度が低くなっても光沢度が十分に得られず、印刷特性も良くないことが分かる。また、比較例2のように中空有機顔料の粒径が大き過ぎたり、比較例4のように配合量が多過ぎると、塗被液粘度が上昇し、塗被面の乱れを生じさせる原因となって塗被面の平滑度が低下し、印刷適性を悪化させている。また、比較例5から空隙率が50%以下でも、緊度を高く不透明度を低くしても光沢度が相対的に低く、印刷特性も低下することが分かる。
【0045】
なお、網点再現性の評価は、ローランドオフセット印刷機にて、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローのハーフトーンを印刷し、網点のかすれ、欠け、階調を目視にて評価し、以下のように判定した。
◎ :ドットのかすれや欠けがなく、ハーフトーンの階調が滑らかである。
○ :ドットのかすれが若干見られるが、実用上問題ないレベルである。
△ :ドットのかすれや欠けが散見され、ハーフトーンの階調にムラが見られる。
【0046】
(実験例2)
次に、塗被液中の固形分濃度と粘性の影響について調査するための実験を行った。
【0047】
実施例8〜10と、比較例7、8として、原紙、中空有機顔料を含む顔料、接着剤等の組成は上記実施例1と同一で、塗被液の固形分濃度と粘度を、表2に示すように変えたものを調整した。これを、実験例1と同様の条件で原紙に塗工し、スーパーカレンダ処理を行った。
【0048】
以上の各実施例及び比較例の評価結果を、表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
表2から、固形分濃度が63.0%以上でかつ粘度がB型粘度計の60rpm測定粘度で2000cps以上となるように調製した塗被液を用いた実施例8〜10では、1000m/分以上の高速で塗工を行っても、適正な塗工性と乾燥性を実現できて上記効果が得られ、固形分濃度が63.0%より低い比較例7や粘度が2000cpsより低い比較例8では、上記効果が得られず、特に塗被面の平滑度が悪化するため、上記高速塗工を実現できないことが分かる。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、粒径が0.5〜1.3μm、ガラス転移温度が100℃以上、空隙率が55%以上の中空有機顔料を、顔料100重量部中4〜10重量部含有せしめた顔料と接着剤を主成分とする塗被液を原紙の両面に塗工・乾燥し、スーパーカレンダー仕上げを行うことにより、実生産に有効な速度でスーパーカレンダー処理を行っても高光沢性と嵩高性や不透明性とを両立しかつ印刷特性に優れた印刷用塗被紙を得ることができる。
【0052】
さらに、上記組成の塗被液を、固形分濃度が63.0%以上でかつ粘度がB型粘度計の60rpm測定粘度で2000cps以上となるように調製することにより、1000m/分以上の高速で塗工を行っても、適正な塗工性と乾燥性を実現できて上記効果が得られる印刷用塗被紙を得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、高光沢性と嵩高性や不透明性とを両立しかつ印刷特性に優れた印刷用塗被紙とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、写真媒体を主とした印刷物において、ビジュアル的な高級感に対する要求が厳しくなっている。すなわち、高光沢性、高不透明度、網点再現性等の印刷特性になどに対する品質要求が厳しくなってきている。
【0003】
従来の写真印刷用塗被紙としては、クレーリッチに代表される光沢性を向上する顔料処方設計、及びスーパーカレンダーにおけるニップ圧アップによる高光沢化が行われていたが、その結果紙厚、不透明度の低下を来たし、裏側から透けて見える裏抜けが発生するという問題があり、高光沢性と嵩高性や不透明性を両立できなかった。また、その改善策としては、嵩高剤の使用、米坪アップ、原料配合変更等が余儀なくされ、コスト高要因となっていた。
【0004】
このような問題に対して、塗被液中に粒径が0.8〜1.3μmで、ガラス転移温度が100℃以上の中空有機顔料を顔料100重量部中5〜20重量部配合し、これを塗被、乾燥した後、低温でスーパーカレンダー仕上げして成り、粒径の大きい中空有機顔料を配合することで、加熱カレンダー処理により塗被層表面の構造を緻密にすることなく、低温のスーパーカレンダー処理にて中空有機顔料を変形させて光沢性を向上し、強光沢を有する塗被紙を製造することが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、原紙の両面に、顔料と接着剤を主成分とする塗被剤を塗工・乾燥して平滑化処理する両面印刷用塗被紙の製造方法において、片面の塗被層に、粒径が0.1〜1.3μm、ガラス転移温度が40℃以上の中空有機顔料を3〜30重量%含有せしめ、所定条件でグロスカレンダー処理を行うことにより、緊度が1.05g/cm3 以下で、片面の光沢度が75%以上になるようにすることが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
また、原紙の両面に、顔料と接着剤を主成分とする塗被層を設けてなり、その塗被層中の顔料100重量部中に、所定の性状のカオリンを60重量部以上含み、さらに好適には平均粒径0.5〜1.5μmの中空有機顔料を1〜10重量部含むことにより、嵩高な構造を保ちながら高光沢を得、またインクの受理性の向上を図ることも知られている(特許文献3参照。)。
【0007】
また、原紙の表裏面の少なくとも一方の面に、顔料を含む塗工液を塗工し、乾燥し、スーパーカレンダー処理した光沢紙において、顔料が、0.5〜1.5μmの中空有機顔料を3〜20重量部含み、かつ基紙の機械パルプ繊維の割合を10重量%以上としたものも知られている(特許文献4参照。)。
【0008】
【特許文献1】
特開平6−192996号公報
【0009】
【特許文献2】
特開平9−119090号公報
【0010】
【特許文献3】
特開2000−226791号公報
【0011】
【特許文献4】
特開2002−220795号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、本発明者が、粒径が0.5〜1.3μmで、ガラス転移温度が100℃以上、空隙率が50%の中空有機顔料を、顔料100重量部中10重量部含有せしめた顔料と接着剤を主成分とする塗被液を、通常の塗工に採用されているように、固形分濃度が60%で、粘度がB型粘度計の60rpm測定濃度で500〜1500cpsとなるように調製し、この塗被液を原紙の両面に塗工・乾燥し、例えばロール温度70℃、処理速度600m/分、ニップ圧を線圧250kg/cm、11ニップでスーパーカレンダー処理を行ったところ、75°光沢度が75%以上、不透明度が90%以上の高光沢度、高不透明度の塗被紙を得ることが困難で、実生産上では不可能であり、さらに1000m/分以上の高速で塗工を行ったところ、高光沢度、高不透明度、網点再現性等の印刷特性が十分に得られないということが判明した。
【0013】
一方、上記特許文献1〜4には、1000m/分以上の高速にて塗工を行った場合にも十分にかつ安定して効果を発揮できるような顔料の組成や、塗工性や乾燥性を実現するための塗被液の物性については開示されていない。
【0014】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、高光沢性と嵩高性や不透明性とを両立しかつ印刷特性に優れ、また高速塗工性にも優れた印刷用塗被紙とその製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の印刷用塗被紙は、粒径が0.5〜1.3μm、ガラス転移温度が100℃以上、空隙率が55%以上の中空有機顔料を、顔料100重量部中4〜10重量部配合した顔料と接着剤を主成分とする塗被層を原紙の両面に有し、表面平滑化処理を行って成るものである。
【0016】
この構成によれば、所望の嵩高性を保持できるような条件でかつ実生産に有効な600m/分以上の速度でスーパーカレンダー処理などの表面平滑化処理を行っても、粒径及び配合量が適切でかつ空隙率が55%以上と高い中空有機顔料を含有することで、その中空有機顔料が確実に変形して高い光沢度が得られ、高光沢性と嵩高性や不透明性とを両立し、また網点再現性などの印刷特性に優れた印刷用塗被紙を得ることができる。
【0017】
また、JIS P8142による75°光沢度が75%〜85%で、かつ緊度が1.0〜1.2g/cm3 であると、所望の高光沢性と嵩高性や不透明性とを両立した印刷用塗被紙が得られて好適である。
【0018】
また、本発明の印刷用塗被紙の製造方法は、原紙の両面に顔料と接着剤を主成分とする塗被液を塗工し、乾燥、表面平滑化処理を行う印刷用塗被紙の製造方法において、顔料として粒径が0.5〜1.3μm、ガラス転移温度が100℃以上、空隙率が55%以上の中空有機顔料を、顔料100重量部中4〜10重量部含有する塗被液を用いるものである。
【0019】
この構成によると、上記のように実生産に有効な速度で、高光沢性と嵩高性や不透明性とを両立し、また網点再現性などの印刷特性に優れた印刷用塗被紙を得ることができる。
【0020】
また、上記組成の塗被液を、固形分濃度が63.0%以上でかつ粘度がB型粘度計の60rpm測定粘度で2000cps以上となるように調製することにより、1000m/分以上の高速で塗工を行っても、適正な塗工性と乾燥性を実現でき、一層高い生産性を確保しながら上記効果が得られる印刷用塗被紙を得ることができる。
【0021】
また、JIS P8142による75°光沢度が75%〜85%で、かつ緊度が1.0〜1.2g/cm3 となるように表面平滑化処理を行うことにより、所望の高光沢性と嵩高性や不透明性とを両立することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の印刷用塗被紙とその製造方法の実施形態を詳細に説明する。
【0023】
本発明は、原紙の両面に顔料と接着剤を主成分とする塗被液を塗工し、乾燥、表面平滑化処理を行うことにより、所望の高光沢性と嵩高性や不透明性とを両立しかつ網点再現性等の印刷特性に優れた印刷用塗被紙を、実生産に有効な1000m/分以上の高速塗工によって製造するものである。表面平滑化処理としては、通常塗被紙の平滑化処理に使用されるスーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトニップカレンダー等を問題なく使用でき、これらを併用してもよい。
【0024】
原紙の原料パルプは、特に限定されない。既知のKPのような化学パルプ、PGW、SGP、RGP、BCTMP、CTMP等の機械パルプ、脱墨パルプ、古紙パルプ、あるいはケナフ、竹、麻、藁等の非木材パルプ等を、単独であるいは二種以上を混合して用いることができる。特に、同一秤量の他のパルプと比較して不透明度が高く、森林資源保護に寄与する古紙パルプを用いるのが好ましく、また原紙を嵩高とするためには化学パルプに比して機械パルプや古紙パルプの配合量を10重量%以上、好適には50重量%以上とするのが好ましい。
【0025】
原紙の坪量は特に限定されず、一般の印刷用塗被紙の坪量である、30〜400g/m2 程度とすることができる。
【0026】
塗被液中の顔料には、全顔料成分100重量部に対して、中空有機顔料を4〜10重量部含有させる。その中空有機顔料としては、平均空隙率が55%以上の中空有機顔料を用いることにより、表面平滑化処理を実生産に有効な600m/分以上、例えば600〜900m/分の速度で行っても主として中空有機顔料が容易に変形し、そのため原紙厚及び塗被厚が薄くなることのないニップ圧やニップ数で処理を行っても高光沢性が得られる。空隙率が55%以上と高い中空有機顔料は、空隙率が50%の中空有機顔料よりも光沢、不透明度、嵩高さを向上させる効果が高く、塗被液中への含有量を低減することができる。塗被液中への中空有機顔料の含有量は、全顔料成分100重量部に対して4〜10重量部とするのがよい。中空有機顔料が4重量部未満では、表面平滑化処理時の変形性に劣るために所望の高光沢性が得られず、10重量部を越えると、塗被液の粘度が高くなり、高速塗工性を実現する粘度に調整することができなくなり、塗被面の平滑度が低下し、印刷特性を悪化させる。
【0027】
中空有機顔料の粒径は、0.5〜1.3μmのものとする。粒径が0.5μm未満の中空有機顔料では、空隙率が55%以上であってもカレンダー処理時に中空有機顔料の変形が十分に進まないので光沢再現性に劣り、1.3μmを越えると、分散安定性が劣るため、塗被液粘度が上昇し、実現しようとする高速塗工に適した粘度の塗被液が得られず、塗被面の乱れを生じさせる原因となって塗被面の平滑度が低下し、印刷特性を悪化させる。
【0028】
中空有機顔料の材質としては、スチレン−アクリル共重合体が好ましく、具体例としては、中空孔ポリマー粒子の形態で提供される、ローム・アンド・ハース社製の「ローペイク」(登録商標)HP−1055が好適である。
【0029】
顔料には、上記中空有機顔料以外に、デラミネートクレー、炭酸カルシウム、カオリン、焼成クレー、サチンホワイト、酸化チタン、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、シリカ、活性白土、珪藻土、レーキ等の1種又は複数種を混合したものが含有される。特に、アスペクト比が30〜60のデラミネートクレーを含有させると、平滑性が向上するとともにインクが沈み難いため印刷特性の優れた性状が得られる。
【0030】
塗被液に使用される接着剤としては、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体、及びポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成接着剤、酸化でんぷん、エステル化でんぷん、酵素変性でんぷんやそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性でんぷん、カゼイン、大豆蛋白等の天然系接着剤等を用い得る。これらの接着剤は、顔料100重量部に対して10〜30重量部、より好ましくは10〜20重量部の範囲で用いるのが好適である。接着剤が上記範囲より少ないと接着性が劣り、多いと光沢性の発現を低下させる。
【0031】
塗被液には、必要に応じて分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤等の補助剤が含有される。
【0032】
塗被液は、固形分濃度が63.0%以上で、B型粘度計の60rpm測定粘度が2000cps以上となるように調製される。塗被液の物性をこのように規定することにより、1000m/分以上での高速塗工時の塗工性及び塗被層の乾燥性を適正にコントロールすることができ、塗被面に乱れを生じずに高い平滑度が確保され、所望の網点再現性等の印刷特性が確保される。
【0033】
原紙への塗被液の塗工方法は、ブレードコータ、エアナイフコータ、ロールコータ、ブラシコータ、カーテンコータ、バーコータ、グラビアコータ、サイズプレスコータ等の塗工装置によって、一層又は多層に分けて行うことができ、かつその塗工を原紙の両面に対して行うことにより、高光沢化と嵩高性や不透明性とを確実に両立することができる。塗工量は、乾燥重量で、片面につき5〜20g/m2 、好適には7〜15g/m2 の範囲に調整される。塗工量が、5g/m2 未満では、原紙の被覆性に劣り、塗工層が形成され難く、また原紙の地合いの影響を受けて平滑度が不充分となり、一方20g/m2 以上では紙のこしがなくなるとともにコスト高となる。
【0034】
塗被層乾燥後のスーパーカレンダー仕上げに際しては、JIS P8142による75°光沢度が75%〜85%で、かつ緊度が1.0〜1.2g/cm3 となるようにニップ圧を調整している。具体的には、ニップ数が10〜15ニップで、ニップ圧を線圧で150〜350kg/cmに、カレンダーロール温度は、品質を安定するため50〜95℃に調整する。50℃未満では好適な塗被層が形成されず、95℃を越えると白紙光沢感が低下する。また、このカレンダーロールの最高温度に対して中空有機顔料のガラス転移温度を100℃以上に規定し、スーパーカレンダー仕上げによって中空有機顔料がガラス転移することがないようにしている。
【0035】
【実施例】
次に、本発明のいくつかの実施例と比較例を説明する。
【0036】
(実験例1)
まず、中空有機顔料の粒度と配合重量部と空隙率の影響について主に調査する実験を行うため、試料として次のものを用意した。
【0037】
原紙:化学パルプと機械パルプと古紙パルプを表1に示すように配合し、硫酸バンドの助剤を添加し、抄紙した。
【0038】
中空有機顔料:中空有機顔料として、ガラス転移温度が105℃、空隙率が55%で、粒径が0.4μm、0.5μm、0.8μm、1.3μm、1.4μmのものを用意した。また、粒径が0.8μmで、ガラス転移温度が150℃のものと空隙率が60%のものを用意した。また、比較例として粒径が0.8μmで、空隙率が50%のものや、ガラス転移温度が55℃のものを用意した。
【0039】
他の顔料:クレー(商品名:ウルトラホワイト90/エンゲルハード社製)を中空有機顔料との合計で60重量部、デラミネートクレー(商品名:ハイドラプリント/ヒューバー社製)20重量部、炭酸カルシウム(商品名:FMT90/ファイマテック社製)20重量部の混合顔料を用いた。
【0040】
接着剤:リン酸エステル化でんぷん(日本食品化工製)とスチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(旭化成工業製)を1対3で配合したものを用いた。
【0041】
実施例1〜5及び比較例1〜4として、表1に示すように原紙と中空有機顔料の粒径と配合量とを変え、また実施例6としてガラス転移温度が150℃と高いものを用い、実施例7として空隙率が60%とより高いものを用い、また比較例5として空隙率が50%のもの、比較例6としてガラス転移温度が55℃と低いもの、を用い、各中空有機顔料と他の顔料との混合顔料を調整し、コーレス分散機を用いて水に分散して顔料分散液を調整し、顔料分散液100重量部に対して接着剤を20重量部配合して、最終的に固形分濃度65%で、B型粘度計の60rpm測定粘度が2200cpsの塗被液を調製した。これをブレードコータで原紙の両面に塗工量が20g/m2 となるように1000m/分の速度で塗工した。さらに、ニップ数が11ニップのスーパーカレンダーを用いて、ニップ圧を線圧で150〜350kg/cmの範囲で、塗被紙の緊度が1.0〜1.2g/cm3 の範囲に収まるように調整して処理を行った。
【0042】
以上の各実施例及び比較例の評価結果を、表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1の実施例1〜7と比較例1〜6から、粒径が0.5〜1.3μm、空隙率が55%以上の中空有機顔料を、顔料100重量部中4〜10重量部含有せしめた顔料を含む塗被液を原紙の両面に塗工することにより、75°光沢度(JISP8142)が75〜85%の高光沢性を有し、緊度(JIS P8118)が1.0〜1.2g/cm3 で、不透明度(JIS P8138)が90%以上で、網点再現性等の印刷特性に優れた印刷用塗被紙が得られることが分かる。その中で、実施例1〜3から粒径が相対的に大きいほど高い光沢度が得られ、また実施例5から中空有機顔料の配合量が多いと光沢度、不透明度、印刷特性に優れ、少ない実施例4では、緊度を高く不透明度を低くしても光沢度が相対的に低く、印刷特性も低下することが分かる。また、ガラス転移温度が150℃と高い実施例6でも同様の効果が得られる一方、ガラス転移温度が55℃と低い比較例6では緊度を高くしても光沢度が不十分であることが分かる。また実施例7のように空隙率が60%のものも同様の効果が得られることが分かる。また、比較例1、2から粒径が小さ過ぎても、大き過ぎても、また比較例3、4から配合量が少な過ぎても、多過ぎても、緊度を高くし、不透明度が低くなっても光沢度が十分に得られず、印刷特性も良くないことが分かる。また、比較例2のように中空有機顔料の粒径が大き過ぎたり、比較例4のように配合量が多過ぎると、塗被液粘度が上昇し、塗被面の乱れを生じさせる原因となって塗被面の平滑度が低下し、印刷適性を悪化させている。また、比較例5から空隙率が50%以下でも、緊度を高く不透明度を低くしても光沢度が相対的に低く、印刷特性も低下することが分かる。
【0045】
なお、網点再現性の評価は、ローランドオフセット印刷機にて、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローのハーフトーンを印刷し、網点のかすれ、欠け、階調を目視にて評価し、以下のように判定した。
◎ :ドットのかすれや欠けがなく、ハーフトーンの階調が滑らかである。
○ :ドットのかすれが若干見られるが、実用上問題ないレベルである。
△ :ドットのかすれや欠けが散見され、ハーフトーンの階調にムラが見られる。
【0046】
(実験例2)
次に、塗被液中の固形分濃度と粘性の影響について調査するための実験を行った。
【0047】
実施例8〜10と、比較例7、8として、原紙、中空有機顔料を含む顔料、接着剤等の組成は上記実施例1と同一で、塗被液の固形分濃度と粘度を、表2に示すように変えたものを調整した。これを、実験例1と同様の条件で原紙に塗工し、スーパーカレンダ処理を行った。
【0048】
以上の各実施例及び比較例の評価結果を、表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
表2から、固形分濃度が63.0%以上でかつ粘度がB型粘度計の60rpm測定粘度で2000cps以上となるように調製した塗被液を用いた実施例8〜10では、1000m/分以上の高速で塗工を行っても、適正な塗工性と乾燥性を実現できて上記効果が得られ、固形分濃度が63.0%より低い比較例7や粘度が2000cpsより低い比較例8では、上記効果が得られず、特に塗被面の平滑度が悪化するため、上記高速塗工を実現できないことが分かる。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、粒径が0.5〜1.3μm、ガラス転移温度が100℃以上、空隙率が55%以上の中空有機顔料を、顔料100重量部中4〜10重量部含有せしめた顔料と接着剤を主成分とする塗被液を原紙の両面に塗工・乾燥し、スーパーカレンダー仕上げを行うことにより、実生産に有効な速度でスーパーカレンダー処理を行っても高光沢性と嵩高性や不透明性とを両立しかつ印刷特性に優れた印刷用塗被紙を得ることができる。
【0052】
さらに、上記組成の塗被液を、固形分濃度が63.0%以上でかつ粘度がB型粘度計の60rpm測定粘度で2000cps以上となるように調製することにより、1000m/分以上の高速で塗工を行っても、適正な塗工性と乾燥性を実現できて上記効果が得られる印刷用塗被紙を得ることができる。
Claims (5)
- 粒径が0.5〜1.3μm、ガラス転移温度が100℃以上、空隙率が55%以上の中空有機顔料を、顔料100重量部中4〜10重量部配合した顔料と接着剤を主成分とする塗被層を原紙の両面に有し、表面平滑化処理を行って成ることを特徴とする印刷用塗被紙。
- JIS P8142による75°光沢度が75%〜85%で、かつ緊度が1.0〜1.2g/cm3 であることを特徴とする請求項1記載の印刷用塗被紙。
- 原紙の両面に顔料と接着剤を主成分とする塗被液を塗工し、乾燥、表面平滑化処理を行う印刷用塗被紙の製造方法において、顔料として粒径が0.5〜1.3μm、ガラス転移温度が100℃以上、空隙率が55%以上の中空有機顔料を、顔料100重量部中4〜10重量部含有する塗被液を用いることを特徴とする印刷用塗被紙の製造方法。
- 塗被液を、固形分濃度が63.0%以上で、B型粘度計の60rpm測定粘度が2000cps以上に調製することを特徴とする請求項3記載の印刷用塗被紙の製造方法。
- JIS P8142による75°光沢度が75%〜85%で、かつ緊度が1.0〜1.2g/cm3 となるように表面平滑化処理を行うことを特徴とする請求項3又は4記載の印刷用塗被紙の製造方法。
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JP2006225815A (ja) * | 2005-02-21 | 2006-08-31 | Daio Paper Corp | 印刷用塗工紙 |
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