JP2004339661A - 編地 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】実質的に無撚である紡績糸を30重量%以上含む編地であって、該編地片面の熱移動量が0.080W/cm2以上であることを特徴とする編地。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、編地の一部が実質的に無撚である紡績糸で構成された、抗ピリング性と清涼感に優れた編地に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、特に高い汗処理性が強く求められる春夏向けの編地には、繊維自体が吸汗、吸湿する綿、麻、レーヨン、キュプラなどのセルロース系単繊維が主に用いられてきた。
【0003】
しかしながら、セルロース系繊維のみを用いた編地は、吸汗性、吸湿性が高く、風合いが柔らかいものの、水分の保持性が大きいため、発汗量の多い高負荷運動時、盛夏期などにこれを衣服として着用した場合には、ベトツキや汗冷えが生じるという問題があった。さらには、洗濯時の縮みが大きい、シワになりやすいといった形態安定性の悪さ、乾燥時間が長いという問題もあった。
【0004】
これらの問題を緩和するために、天然繊維、再生繊維とポリエチレンテレフタレートなどの合成繊維の短繊維を混紡することにより、繊維内部に取り込まれる水分を減少させ、発汗時のベトツキや汗冷えなどの不快感を減少させる手法が用いられてきた。
【0005】
しかしながら、特に繊維の拘束力が比較的低い編物の場合、紡績糸を構成している短繊維が、摩擦、洗濯などの物理的外力により毛羽立ち、引き出され、お互いに絡み合い毛玉(ピル)となって衣料表面に残り、外観品位を低下させる問題がある。天然繊維、再生繊維のみからなる紡績糸は、短繊維の強度が比較的低く、形成されたピルが摩擦により脱落し、大きな外観品位低下になることは少ないが、ポリエチレンテレフタレートなどの合成繊維の短繊維を含む紡績糸は、天然繊維、再生性繊維に比べ、合成繊維の短繊維の強度が高く、上述した毛玉が一度形成されると脱落することなく編地表面に残り、著しく外観品位が低下する問題がある。
【0006】
天然繊維、再生繊維とポリエチレンテレフタレートなどの合成繊維の短繊維を混紡した紡績糸を使用した編物は、以上のように毛玉発生の問題が大きく、発汗時のベトツキ、汗冷え防止効果は高いものの、安物の肌着等に使用されているのが現状である。
【0007】
これらの問題を解決するため、一般的には編地の密度を高くする方法や、合成繊維の短繊維を含む紡績糸を中層もしくは裏側(肌側)に使用する方法が取られてきたが、これらの方法でピルの発生が大きく改善されることはなく、さらに、風合いが硬くなる、生地設計が制限されるといった問題があるため、根本的な解決には至っていない。
【0008】
一方、ピルの脱落を促進させるため、ポリエチレングリコールやスルホン酸金属塩を共重合させた改質ポリエステルや、あるいは極限粘度が0.45以下の低重合ポリエステルを用い、合成繊維の短繊維の強度を低下させる方法が提案されている。しかしながら、ピルの発生を防止する効果、すなわち抗ピリング性は得られるものの繊維強度が低下するため、紡績工程での生産性低下、さらには最終製品の物性面、例えば破裂強力などで問題が生じることがある。
【0009】
また、ポリエステルにリン酸、ホスホン酸、およびこれらの誘導体よりなる群から選択される少なくとも一種のリン化合物を添加し、該素材で構成された織編物を染色加工時の高温熱処理工程において加水分解を生じさせ、繊維を脆くさせる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この技術についても、織編物の強度低下をきたし、用途的に制約を受けるものである。
【0010】
さらには、編物を構成する紡績糸中から短繊維が抜け出し、ピルの形成を助長することを防ぐ目的で、紡績糸のヨリ数を高めに設定する方法、編地の裏面にウレタンなどの樹脂をコーティングする方法が提案されているが、いずれも製品の風合いが低下する問題が残されている。
【0011】
一方、鞘側に低強力短繊維、芯側に高強力短繊維を配した空気紡績糸及びその織編物が提案されているが(例えば、特許文献2参照)、低強力短繊維を含むため、紡績糸および織編物としての強力が低下する上、芯側の高強力短繊維を鞘側の低強力短繊維でほぼ完全に被覆する必要があるために鞘側の巻き付き繊維が多くなり、紡績糸が非常に硬く締まった形状になり、織編物の風合いが非常に粗硬になるという大きな欠点がある。
【0012】
以上のように、いずれの方法においても、強力低下による高次加工工程通過性不良、製品物性、風合いの低下問題を含みながら抗ピル性の改善を追求したものであり、これらの問題を解決した肌着を提供することが長年の課題であった。
【0013】
また、春夏向けの衣料として快適な着用感を得るため、着用時の熱移動量を高めた編地が種々検討されているが、いずれも長繊維糸条を肌と接するように配したもので、紡績糸を主に含み、同時に着用時の熱移動量を高めた衣料は上市されていないのが現状である。
【0014】
【特許文献1】特開昭63−135517号公報
【0015】
【特許文献2】特開2001−192943号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、かかる背景に鑑み、紡績糸、編地の強度低下がなく、風合いを損なうことなく、優れた抗ピリング性、着用時の清涼感、吸汗・速乾性を併せ持った編地を提供せんとするものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、
(1)実質的に無撚である紡績糸を少なくとも30重量%以上含む編地であって、該編地片面の熱移動量が0.080W/cm2 以上であることを特徴とする編地。
【0018】
(2)JIS L 1076 A法に定められているICI法による抗ピリング性が2.5級以上であることを特徴とする前記(1)に記載の編地。
【0019】
(3)実質的に無撚である紡績糸の長さ1mm以上の毛羽数が、糸長10cm当たり60個以下であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の編地。
【0020】
(4)実質的に無撚である紡績糸が、合成繊維の短繊維を20重量%以上含むことを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の編地。
【0021】
(5)実質的に無撚である紡績糸に含まれる合成繊維の短繊維が、ポリエステル系、ポリアミド系、およびポリアクリルニトリル系繊維から選ばれる少なくとも一種からなることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の編地。
【0022】
(6)緯編地、または経編地からなることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の編地。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0024】
本発明でいう実質的に無撚である紡績糸とは、撚トルクの作用による撚り戻りの発生量が50個/50cm以下が好ましく、例えば、3.0回転/inch以下の実撚りがかかっているもの、または無撚状のものであることが好ましい。撚り数が3.0回転/inch以下の場合には、撚りトルクの作用による撚り戻りの発生量が50個/50cm以下であるので、実質的に無撚構造糸ということができる。撚り戻りの発生量は、0個/50cmのものも含まれる。
【0025】
ここでいう撚り戻りの発生量は、JIS L 1095(一般紡績糸試験方法)に定められているスナール指数の測定方法に基づき、つかみ間隔を50cmから0cmにした時の撚り戻り数を測定したものである。ただし、糊つけや熱セット等の方法により撚を固定した紡績糸は、撚を固定する前の状態で測定するものとする。
【0026】
実質的に無撚である紡績糸の製造方法として、ローラー方式のドラフト機構を有する空気精紡機が好ましく使用することができる。該空気精紡機は、紡速を変化させることで糸形態を変化させることができ、紡速を280m/分以上にすることにより実質的に無撚である紡績糸を得ることができる。また、紡速は300m/分以上が好ましく、さらには330m/分以上がより好ましい。
【0027】
紡速が370m/分より大きくなると弱糸の発生が多くなり、紡績糸としての強度を保つことが難しくなり好ましくなく、280m/分より小さくすると紡績糸全体が硬く締まった形状となり、衣服にした場合、非常にガサついた風合いとなるため好ましくない。
【0028】
本発明の編地を形成する際、実質的に無撚である紡績糸が30重量%以上、より好ましくは40重量%以上100重量%以下占めるよう編設計されることが重要である。実質的に無撚である紡績糸が含まれる割合が30重量%未満の場合、紡績糸特有のソフトな風合いが得られない上、編地として重要な特性である吸水性が低くなり好ましくない。なお、この実質的に無撚である紡績糸は、一部の繊維により部分的に把持されている形状のため、把持されていない膨らみのある繊維束部分に水分が入り込むことにより高い吸水性能を有している。
【0029】
本発明では、実質的に無撚である紡績糸の糸長10cm当たりの、長さ1mm以上の毛羽数が、60個以下であることが好ましい。さらには、糸長10cm当たりの、長さ1mm以上の毛羽数が、40個以下であることがより好ましく、0個のものも含まれる。ここでいう紡績糸の糸長10cm当たりの、長さ1mm以上の毛羽数の測定方法は実施例の中で説明する。
【0030】
この糸長10cm当たりの、長さ1mm以上の毛羽数が60個よりも多い場合、編地表面の毛羽密度が高くなり、その結果毛羽がお互いに絡みやすくなり、図1に示すとおり抗ピル性を悪化させることになる。
【0031】
本発明の編地は、JIS L 1076 A法に定められているICI法による抗ピリング性が2.5級以上であることが好ましい。該方法による抗ピリング性が2級以下の場合、一般的な合成繊維短繊維を含む紡績糸を使用した編地と、同様に、長期に及ぶ着用によりピルが多く発生し、製品の外観を著しく悪化させるものである。
【0032】
また、この糸長10cm当たりの、長さ1mm以上の毛羽数が60個よりも多い場合、肌と生地裏面の間に毛羽が介在する形となり、肌と生地の接触面積が減少し、本発明の編地の重要な要件である編地片面の熱移動量0.080W/cm2 以上とすることが難しくなる。
【0033】
本発明においては、編地片面の熱移動量が0.080W/cm2 以上であることが重要である。編地片面の熱移動量が0.080W/cm2 以上の場合、着用者に清涼感を与える効果を有するが、0.080W/cm2 未満の場合、熱移動量が充分でなく、着用者に清涼感を与える効果がない。この編地片面の熱移動量0.080W/cm2 以上を達成するために編組織を特に限定する必要はないが、プレーンな組織を肌側に接するように使用すると、編地片面と肌面の接触面積が増え、該熱移動量が増加する傾向にあるため、プレーンな組織が好ましく使用できる。また、染色・仕上加工においては、編地片面の熱移動を阻害するような加工でなければ特に限定されるものではない。編地片面の熱移動量の測定方法は実施例の中で説明する。
【0034】
本発明に使用される実質的に無撚である紡績糸には、合成繊維の短繊維が20重量%以上、好ましくは30重量%以上含まれるものであり、100重量%のものも含まれる。該紡績糸に含まれる合成繊維の短繊維の割合が20重量%未満の場合、編地として重要な特徴の一つである速乾性が得られなくなる上、多量の発汗時におけるベトツキ感が悪化することになり、本発明には適さない。
【0035】
本発明に使用される合成繊維の短繊維は、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリアクリルニトリル系繊維の少なくとも一種からなることが好ましい。例えば、ポリエステル系繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート繊維などを使用することができる。また、ポリアミド系繊維としては、ナイロン6やナイロン66繊維、さらに、アクリル系繊維としては、ポリアクリロニトリル繊維が好ましく用いられ、これらの合成繊維の短繊維であれば特に限定されるものではない。その他、ポリビニールアルコール系繊維、ポリ塩化ビニール系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリフルオロエチレン系繊維、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維などを使用することができる。
【0036】
また、本発明で使用される合成繊維の短繊維の繊維横断面形状は、一般的な丸断面形状、三角断面形状、扁平断面形状、多葉断面形状、中空断面形状以外に、繊維表面に長手方向に沿って複数の凹溝を形成している短繊維を使用することができ、横断面形状例として文字もしくは記号などでモデル的に示すとE、F、H、I、K、M、N、O,T、W、X、Y、Z、+などが挙げられ、特に限定されるものではない。
【0037】
さらに、合成繊維短繊維の単繊維繊度としては、0.6〜4.4デシテックスの範囲が好ましい。単繊維繊度が0.6デシテックス未満では、前紡工程を含めた紡績工程通過性が悪化し、単繊維繊度が4.4デシテックスより大きくなると、肌触り感が劣る傾向となる上、紡績糸自体の構成繊維本数が少なくなるため、紡績糸としても強度が極端に低下することになり、好ましくない。
【0038】
一方、合成繊維の短繊維以外の実質的に無撚である紡績糸を構成する繊維は、特に限定されるものではないが、植物質繊維である綿、麻、ケナフ、ラミーなど、動物質繊維である羊毛、カシミヤ、モヘア、絹など、再生繊維であるビスコースレーヨン、キュプラなど、半合性繊維であるアセテート、トリアセテート、さらには、合成繊維フィラメントなどが挙げられる。編地片面の熱移動量をより高める必要がある場合には、これらの中でも、吸湿性を有する繊維が好ましく用いられる。
【0039】
本発明に使用される実質的に無撚である紡績糸の番手は、特に限定されないが、その狙いとする衣服の薄地編地類から厚地編地類まで含めると、15〜60綿番手程度までの範囲を好ましく使用することができる。
【0040】
本発明は、上記要件を満たすことにより、編地の風合いを損なうことなく、優れた抗ピリング性、着用時の高い清涼感、吸汗・速乾性を併せ持った編地を得ることができる。
【0041】
本発明の編地は、特に編組織等には限定されるものではない。例えば、丸編地であれば、シングルジャージ、ダブルジャージ。経編地であれば、シングルトリコット、ダブルトリコット、シングルラッセル、ダブルラッセルを使用することができ、横編地であれば、シングルベットニット、ダブルベットニットを使用することができる。
【0042】
また、さらなる吸汗・速乾性が必要とされる場合には、表面層に異形断面糸などを配し、毛細管現象による吸汗・速乾性能を高めた、少なくとも二層からなる多層構造体が好ましく使用されるが、特に編組織などが限定されるものではない。
【0043】
製編における編成条件は、通常糸使いの編成条件に準じればよく、特に特殊条件を取るものではない。
【0044】
製編された生機編地の熱処理、精練や染色などの加工は、通常の編地の加工法に準じて行えばよく、特に特別な設備などは必要ではない。この染色段階での付帯加工として、撥水加工、防汚加工、抗菌加工、消臭加工、防臭加工、難燃加工、吸汗加工、吸湿加工、防カビ加工、紫外線吸収加工、減量加工など、さらに、後加工としてカレンダー加工、エンボス加工、シワ加工、起毛加工、プリント加工、オパール加工など、最終用途の要求特性に応じて適宜付与することが望ましい。
【0045】
特に、吸汗加工を行うことにより、編地の汗処理性は一層向上することになり好ましい。
【0046】
本発明の編地は、適宜選択することにより、次のように幅広く展開可能である。例えば、衣料用である運動着類、肌着類、ホームウエア類、ユニフォームウエア類、アウターウエア類。資材用である裏地類、靴材類、サポーター類、靴下類、手袋類である。
【0047】
運動着類ならば、ランニングシャツ・パンツ、競技シャツ・パンツ、ゴルフシャツ、テニスシャツ、サイクルシャツ、アウトドアシャツ、ポロシャツ、Tシャツ、野球用アンダーシャツ、トレーニングウエア、スエットシャツ・パンツ等。
【0048】
肌着類ならば、婦人用肌着であるスリップ、キャミソール、ペチコート、ショーツ、アンダーパンツ、タイツ、Tシャツ、丸首シャツ、U首シャツ、ボディスーツ、ガードルなど、また紳士用肌着であるTシャツ、丸首シャツ、U首シャツ、ランニングシャツ、アンダーパンツ、タイツ、ブリーフ、トランクス等に好ましく使用できる。さらに、これらの肌着の転用を含めたアスレチック、アウトドア、スキー等のスポーツ用肌着、さらには、屋外作業、屋内作業等の作業用肌着等にも使用できる。ホームウエア類ならば、室内着、パジャマ、ネグリジェ、ガウン等。アウターウエア類ならば、婦人服、紳士服、子供服、作業服等。裏地類ならば、スポーツウエア用、婦人服用、紳士服用、子供服用、礼服用、学生服用、作業服用裏地等に好ましく使用することができる。
【0049】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0050】
実施例、比較例中での品質評価は、次の方法によるものである。
(1)編地片面の熱移動量(W/cm2)
編地片面の熱移動量は、面積9cm2、質量9.79gの純銅板(熱容量0.41855J/℃)に熱を貯え、これが編地測定面に接触した直後、貯えられた熱量が低温側の編地測定面に移動する熱流のピーク値(フィルターにより、接触後約0.2秒でピークに達する)を測定した値である。この熱移動量は、値が大きいほど清涼感が強くなり、小さいほど清涼感が弱くなることを示す。
【0051】
また、この熱移動量は、銅板初期温度と試料温度の差(△T)と接触圧(P)に大きく影響されるため、△T=10.0℃、P=980Pa(10gf/cm2)とした。
【0052】
なお、本発明では、カトーテック(株)製精密迅速熱物性測定装置KES−F7(THERMO LABO II TYPE)を使用し、試験片5枚の平均値を測定値とした。
(2)抗ピル性試験法(ICI法5時間)
JIS−L−1076 A法に基づいて評価を行った。
【0053】
評価結果は、以下の通り5段階で級判定を行った。また、各級の中間レベルの場合は、3.5(3級と4級の中間レベル)のように表示した。
【0054】
5級:ピリングの発生がほとんどないもの
4級:ピリングの発生が少々あるもの
3級:ピリングの発生がかなりあるもの
2級:ピリングの発生が多いもの
1級:ピリングの発生が著しく多いもの
(3)紡績糸表面における長さ1mm以上の毛羽数
(3−1)編地表面を構成している紡績糸を、ランダムに5箇所から採取する。
【0055】
(3−2)リーダープリンター用の枠(5×5cm)に、編地形成ループの捲縮がとれる程度の張力(約0.1g/dtex)をかけ、採取した紡績糸を5本等間隔でセットする。
【0056】
(3−3)その試料をリーダープリンター「MicroSP 3000」(ミノルタ株式会社製)で倍率10倍にて撮影し、採取した各紡績糸2cmあたりの長さ1mm以上の毛羽数を計測する。
【0057】
(3−4)各紡績糸(5本)の毛羽数を合計した値を、糸長10cm当たりの長さ1mm以上の毛羽数とする。
(4)実着用評価および総合評価
丸首肌着に縫製したサンプルを被験者10名に与え、3ヶ月間着用と洗濯を繰り返し、着用時の清涼感、吸汗性、ピリングの発生をそれぞれ4段階(非常に優れている:5点、優れている:4点、どちらとも言えない:3点、悪い:1点)で官能評価を行った。その10人の合計点が40点以上を◎、30〜39点を○、20〜29点を△、19点以下を×とした。
また、総合評価は、実着用評価の各項目の合計点により判定し、121点以上を◎、101〜120点を○、81〜100点を△、80点以下を×とした。
【0058】
実施例1
東レ(株)製ポリエステル原綿(1.45dtex×38mm)を通常の前紡工程を通過させることにより、混率がポリエステル100%、太さが4.0g/mのスライバーを作成した。このスライバーをローラー方式のドラフト機構を有する空気精紡機に仕掛け、ドラフト率を225倍、紡速を350m/minに設定して綿番手30’Sの無撚紡績糸を得た。この紡績糸の撚り戻りの発生量は28個/50cmで、実質的に無撚であるといえるものであった。なお、用いた空気精紡機の糸形成部は中空のエアーノズルを有し、エアーノズル内の空気流により短繊維が結束し、無撚の紡績糸を形成する機構となっている。
【0059】
この無撚紡績糸を用いて、22Gダブル丸編機でスムース編地を編成し、通常のT(ポリエステル)100%の編地の染色加工方法に準じ、リラックス・精練、染色、乾燥、仕上げセットを行った結果、目付が204g/m2 の編地を得た。
【0060】
この編地の無撚紡績糸が含まれる割合は100重量%、編地片面の熱移動量は0.089W/cm2、使用されている無撚紡績糸の糸長10cm当たりの長さ1mm以上の毛羽数は37個、抗ピリング性は3.5級であった。
【0061】
この編地を使用して丸首肌着を縫製し、20〜25℃×65%RHの環境下で軽作業を行い実着用評価を行った結果、清涼感、吸汗性に優れ、着用試験を繰り返してもピルがほとんど発生しなかった。結果を表1に示す。
【0062】
実施例2
東レ(株)製ポリエステル原綿(1.45dtex×38mm)とインド綿を通常の前紡工程を通過させることにより、混率がポリエステル20重量%、綿80重量%、太さが4.0g/mのスライバーを作成した。このスライバーを実施例1で使用した空気精紡機に仕掛け、ドラフト率を225倍、紡速350m/minに設定して綿番手30’Sの無撚紡績糸を得た。この紡績糸の撚り戻りの発生量は31個/50cmで、実質的に無撚であるといえるものであった。
【0063】
この無撚紡績糸を用いて、実施例1と同様にスムース編地を編成し、通常のT(ポリエステル)/C(綿)編地の染色加工方法に準じ、リラックス・精練、染色、乾燥、仕上げセットを行った結果、目付が208g/m2 の編地を得た。
【0064】
この編地の無撚紡績糸が含まれる割合は100重量%、編地裏面の熱移動量は0.098W/cm2 使用されている無撚紡績糸の糸長10cm当たりの長さ1mm以上の毛羽数は14個、抗ピリング性は4級であった。
【0065】
この編地を使用して丸首肌着を縫製し、20〜25℃×65%RHの環境下で軽作業を行い実着用評価を行った結果、清涼感、吸汗性に優れ、着用試験を繰り返してもピルがほとんど発生しなかった。結果を表1に示す。
【0066】
実施例3
実施例2で使用した無撚紡績糸を図2における給糸No.F2、F6に、167デシテックス72フィラメントの東レ(株)製異形断面ポリエステルフィラメント低捲縮仮撚加工糸(“エアファイン”(登録商標))を図2における給糸No.F1、F3、F4,F5、F7,F8に給糸し、22Gダブル丸編機で無撚紡績糸と異形断面ポリエステルフィラメント低捲縮加工糸(“エアファイン”(登録商標))の構成比が1:2になるようにリバーシブル(表メッシュ)編地を編成した。この編地を通常のT(ポリエステル)/C(綿)交編編地の染色加工方法に準じ、リラックス・精練、染色、乾燥、仕上げセットを行った結果、目付が184g/m2 の編地を得た。
【0067】
この編地の無撚紡績糸が含まれる割合は32重量%、編地裏面の熱移動量は0.112W/cm2 、使用されている無撚紡績糸の糸長10cm当たりの長さ1mm以上の毛羽数は14個、抗ピリング性は4.5級であった。
【0068】
この編地を使用して丸首肌着を縫製し、20〜25℃×65%RHの環境下で軽作業を行い実着用評価を行った結果、紡績糸特有の着用感を有し、清涼感、吸汗性に特に優れ、着用試験を繰り返してもピルがほとんど発生しなかった。結果を表1に示す。
【0069】
比較例1
東レ(株)製ポリエステル原綿(1.45dtex×38mm)を用い、通常の前紡工程を通過させることにより、混率がポリエステル100%、太さが0.6g/mの粗糸を作成し、リング精紡機に仕掛け、ドラフト率を33.4倍、撚係数を3.5に設定し、綿番手30’Sの撚の入った一般的なリング紡績糸を得た。
【0070】
このリング紡績糸を用いて、実施例1と同様に編成、染色加工を行った結果、目付が199g/m2 の編地を得た。
【0071】
編地裏面の熱移動量は0.069W/cm2 、使用されている紡績糸の糸長10cm当たりの長さ1mm以上の毛羽数は68個、抗ピリング性は1級であった。
【0072】
この編地を使用して丸首肌着を縫製し、20〜25℃×65%RHの環境下で軽作業を行い実着用評価を行った結果、清涼感、吸汗性に優位性はなく、着用試験を繰り返すことによりピルが多量に発生し、著しく外観を損なうものであった。結果を表1に示す。
【0073】
比較例2
東レ(株)製ポリエステル原綿(1.45dtex×38mm)とインド綿を通常の前紡工程を通過させることにより、混率がポリエステル20%、綿80%、太さが0.6g/mの粗糸を作成し、リング精紡機に仕掛け、ドラフト率を33.4倍、撚係数を3.5に設定し、綿番手30’Sの撚の入った一般的なリング紡績糸を得た。
【0074】
このリング紡績糸を用いて、実施例2と同様に編成・染色加工を行った結果、目付が210g/m2 の編地を得た。
【0075】
編地裏面の熱移動量は0.075W/cm2 、使用されている紡績糸の糸長10cm当たりの長さ1mm以上の毛羽数は89個、抗ピリング性は1.5級であった。
【0076】
この編地を使用して丸首肌着を縫製し、20〜25℃×65%RHの環境下で軽作業を行い実着用評価を行った結果、清涼感、吸汗性に優位性はなく、着用試験を繰り返すことによりピルが多量に発生し、著しく外観を損なうものであった。結果を表1に示す。
【0077】
比較例3
実施例1と同様の混率がポリエステル100%、太さが4.0g/mのスライバーを作成し、このスライバーをローラー方式のドラフト機構を有する空気精紡機に仕掛け、ドラフト率を225倍、紡速を250m/minに設定して綿番手30’Sの紡績糸を得た。この紡績糸の撚り戻りの発生量は58個/50cmで、実質的に無撚であるといえるものでなかった。
【0078】
この紡績糸を用いて実施例1と同様に編成・染色加工を行った結果、目付が204g/m2 の編地を得た。
【0079】
この編地は、使用されている紡績糸が硬く締まった形状をしているため、編地裏面の熱移動量は0.088W/cm2 、糸長10cm当たりの長さ1mm以上の毛羽数は7個、抗ピリング性は4.5級と清涼性と抗ピリング性については非常に優れるものの、非常に風合いが硬く、また、吸汗性も劣るものであった。
【0080】
この編地を使用して丸首肌着を縫製し、20〜25℃×65%RHの環境下で軽作業を行い実着用評価を行った結果、抗ピル性は問題ないものの、着用時の風合いが非常に硬く、衣料用、特に肌着として全く適したものでなかった。結果を表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
【発明の効果】
本発明の、実質的に無撚である紡績糸が30重量%以上含まれ、該編地片面の熱移動量が0.080W/cm2 以上であることを特徴とする編地は、優れた抗ピリング性のみでなく、清涼感と吸汗性を併せ持ち、各種の衣料用途に好ましく用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】毛羽数と抗ピル性の関係を示した概要グラフであり、ポリエステル100%、30’S天竺編地を用いて説明したものである。
【図2】図2は、実施例3の編地の編方図である。
【符号の説明】
F1〜F8:編機の給糸口No.O
D1〜D5:ダイヤル側編針
C1〜C6:シリンダー側編針
イ:編地表面側構成糸
ロ:編地裏面側構成糸
Claims (6)
- 実質的に無撚である紡績糸を少なくとも30重量%以上含む編地であって、該編地片面の熱移動量が0.080W/cm2 以上であることを特徴とする編地。
- JIS L 1076 A法に定められているICI法による抗ピリング性が2.5級以上であることを特徴とする請求項1に記載の編地。
- 実質的に無撚である紡績糸中、長さ1mm以上の毛羽数が、糸長10cm当たり60個以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の編地。
- 実質的に無撚である紡績糸が、合成繊維の短繊維を20重量%以上含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の編地。
- 実質的に無撚である紡績糸に含まれる合成繊維の短繊維が、ポリエステル系、ポリアミド系、およびポリアクリルニトリル系繊維から選ばれる少なくとも一種からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の編地。
- 緯編地、または経編地からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の編地。
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CN102433674A (zh) * | 2011-10-26 | 2012-05-02 | 青岛雪达集团有限公司 | 云母纤维舒爽性生态针织织物及其织造方法 |
JP2014043651A (ja) * | 2012-08-24 | 2014-03-13 | Toyobo Stc Co Ltd | 表面毛羽が少ない編物 |
CN110453355A (zh) * | 2019-08-23 | 2019-11-15 | 宁波大千纺织品有限公司 | 一种低模量化聚酯短绒抗起球新面料及其制备方法 |
-
2003
- 2003-05-19 JP JP2003140012A patent/JP2004339661A/ja active Pending
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