JP2004337003A - 養魚用固形飼料およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】十分なビタミンC力価を有し、しかも経時的劣化が小さく、安定な養魚用固形飼料およびその製造方法を提供する。
【解決手段】安定化ビタミンCを含む養魚用固形飼料であって、表面から深さ1mm以内に飼料中の安定化ビタミンCの50%以上が存在するか、または、表面から深さ1mm以内の安定化ビタミンCの濃度が50質量ppm以上である養魚用固形飼料。この固形飼料は、養魚用飼料原料を混練・成形し、得られた成形物を乾燥し、次いで、乾燥された成形物を、液体に溶解または乳化または分散させた安定化ビタミンCと接触させることにより調製される。
【選択図】 なし
【解決手段】安定化ビタミンCを含む養魚用固形飼料であって、表面から深さ1mm以内に飼料中の安定化ビタミンCの50%以上が存在するか、または、表面から深さ1mm以内の安定化ビタミンCの濃度が50質量ppm以上である養魚用固形飼料。この固形飼料は、養魚用飼料原料を混練・成形し、得られた成形物を乾燥し、次いで、乾燥された成形物を、液体に溶解または乳化または分散させた安定化ビタミンCと接触させることにより調製される。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はアスコルビン酸活性を有し、かつ飼料中で安定な、特に経時的に安定なアスコルビン酸誘導体を含有する養魚用固形飼料、およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
養殖魚類において、L−アスコルビン酸が欠乏または不足すると壊血病症状を呈し死に至るなどの重大な被害が発生することが知られている。例えば、1962年に各地のニジマス養魚場で脊椎のわん曲を主徴とする異常魚が多発したが、研究の結果、アスコルビン酸の不足によることが証明された(日本水産学会31巻第818頁〜826頁)。さらに、昭和42年日本水産学会年会でニジマス、ヒメマスおよびシロザケ稚魚のアスコルビン酸欠乏による変形症が報告されている。また、アユでは食欲不振、軽度の眼球突出、ヒレ基部の出血、えらぶた、下頸部の損傷などの欠乏症、ハマチ稚魚では接餌量減少、成長停止、脊椎わん曲、体色異変、高へい死率などの欠乏症、ウナギでは食欲低下、成長停滞の他、ヒレ、頭部の出血などが起こる。さらに、ニジマス、ヒメマス、シロザケ、アユ、ヤマメ、カンパチ、ハマチ、タイ、コイ、ウナギなどの養殖に供される魚類は飼育中のストレスなどで天然魚に比較してアスコルビン酸要求量が高く飼料中のアスコルビン酸が不可欠である。
【0003】
従って、稚魚飼料にはアスコルビン酸を含むビタミン類が添加され、給餌されている。ところが、アスコルビン酸は水溶性ビタミンの中でも特に不安定なものであるため、飼料中に添加した場合に分解が起こる。とりわけ、蛋白源である魚粉中では特に不安定であり、ニジマス用飼料のように魚粉が半ば以上を占めるような配合のものでは分解によってビタミンCの力価が大きく低下する。
また、飼料製造時において、エクストゥルーダーを用い加圧、高温条件下で成形する際にアスコルビン酸の分解が非常に大きいことが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、エクストゥルーダーで成形したペレットに水溶性ビタミン乳化液を添加することが記載されているが、これはエクストゥルーダーによる分解を回避するためと考えられる。
【0004】
これらの問題を解決するための技術として、安定化ビタミンCであるL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの塩類を養魚用固形飼料中に配合する技術がある(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、本発明者らの知見によれば、養魚用固形飼料を大径化したり、飼料中に栄養分としての植物油および/または動物油を多量に含有せしめると、安定化ビタミンCであっても添加量の一部が分解する場合がある。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−056256号公報
【特許文献2】
特許2943785号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような状況に鑑み、本発明の目的は、十分なビタミンC力価を有し、しかも、固形飼料の製造時および保存中のビタミンC力価の経時的低下が著しく小さく、安定な養魚用固形飼料を提供することにある。特に、固形飼料を大径化したり、固形飼料中に植物油および/または動物油を多量に含有せしめても十分なビタミンC力価を保ち、かつ、製造時および保存中のビタミンC力価の経時的低下が著しく小さい養魚用固形飼料を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、固形飼料を大径化したり、固形飼料中に植物油および/または動物油を多量に含有せしめると、L−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの塩類を始めとする安定化ビタミンCの一部が分解されるのは、養魚用飼料配合物のエクストゥルーダーでの混練・成形工程後の乾燥工程で顕著であることが分かった。そこで、本発明者らは、安定化ビタミンCを含まない養魚用飼料原料をエクストゥルーダーで混練・成形してペレット飼料とし、その乾燥後のペレット飼料に安定化ビタミンCを添加して得られた養魚用固形飼料は、添加した安定化ビタミンCの大部分が分解せず、製品飼料中に残存し、十分なビタミンC力価を保ち、かつ経時安定性にも優れていることを見いだし、本発明を完成するに至った。なお、安定化されていないビタミンCの場合には、養魚用固形飼料の製造工程における混練・成形、乾燥時はもとより、その保存中にも分解が進むことはいうまでもない。
【0008】
かくして、本発明は、下記の養魚用固形飼料、およびその製造方法を提供するものである。
養魚用固形飼料
(1) 安定化ビタミンCを含む養魚用固形飼料であって、表面から深さ1mm以内に固形飼料中の安定化ビタミンCの50質量%以上が存在していることを特徴とする養魚用固形飼料。
(2) 安定化ビタミンCを含む養魚用固形飼料であって、表面から深さ1mm以内の安定化ビタミンCの濃度が50質量ppm以上であることを特徴とする養魚用固形飼料。
【0009】
(3) 表面から深さ1mm以内の安定化ビタミンCの濃度が100質量ppm以上である上記(1)または(2)に記載の養魚用固形飼料。
(4) 固形飼料中の安定化ビタミンCの含有量が25〜5000質量ppmである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の養魚用固形飼料。
(5) 植物油および動物油の中から選ばれた少なくとも一種を10質量%以上含む上記(1)〜(4)のいずれかに記載の養魚用固形飼料。
【0010】
(6) 魚油を10〜40質量%含む上記(1)〜(4)のいずれかに記載の養魚用固形飼料。
(7) 水分含有量が10質量%以下である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の養魚用固形飼料。
(8) 直径が11mm以上である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の養魚用固形飼料。
【0011】
(9) 安定化ビタミンCがL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの塩である上記(1)〜(8)のいずれかに記載の養魚用固形飼料。
(10) L−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの塩が、L−アスコルビン酸−2−リン酸エステルのマグネシウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、およびこれらの混塩の中から選ばれた少なくとも一種である上記(9)に記載の養魚用固形飼料。
(11) ニジマス、ヒメマス、シロザケ、カンパチ、ハマチ、タイ、マグロ、シマアジ、フグ、アユ、アマゴ、ヤマメ、コイ、ウナギ、クルマエビおよびブラックタイガーの飼料である上記(1)〜(10)のいずれかに記載の養魚用固形飼料。
【0012】
養魚用固形飼料の製造方法
(12) 養魚用飼料原料を混練・成形し、得られた成形物を乾燥し、次いで、乾燥された成形物を、液体に溶解、乳化または分散させた安定化ビタミンCと接触させることを特徴とする上記(1)〜(11)のいずれかに記載の養魚用固形飼料の製造方法。
(13) 加温混練機を使用して、養魚用飼料配合物の混練を行う上記(12)に記載の製造方法。
(14) 成形物を水分含有量10質量%以下まで乾燥する上記(12)または(13)に記載の製造方法。
【0013】
(15) 成形物を110℃以上の温度で乾燥する上記(12)〜(14)のいずれかに記載の製造方法。
(16) 成形物を2時間以上かけて乾燥する上記(12)〜(15)のいずれかに記載の製造方法。
(17) 安定化ビタミンCの平均粒径が5〜300μmである上記(12)〜(16)のいずれかに記載の製造方法。
(18) 乾燥された成形物を、植物油および動物油の中から選ばれた少なくとも一種を含む液体に分散させた安定化ビタミンCと接触させる上記(12)〜(17)のいずれかに記載の製造方法。
【0014】
(19) 乾燥された成形物を、魚油を含む液体に分散させた安定化ビタミンCと接触させる上記(12)〜(17)のいずれかに記載の製造方法。
(20) 乾燥された成形物を、該液体に溶解、乳化または分散させた安定化ビタミンCと接触させた後、さらに、該液体が付着した成形物を乾燥する上記(12)〜(19)のいずれかに記載の製造方法。
(21) 液体が付着した成形物を90℃以下の温度で乾燥する上記(20)に記載の製造方法。
(22) 製造直後の養魚用固形飼料中の安定化ビタミンCの量が、固形飼料中へ添加した安定化ビタミンCの量の60質量%以上である上記(12)〜(21)のいずれかに記載の製造方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明で使用される安定化ビタミンCとしては、L−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの塩、L−アスコルビン酸−2−グリコシドなどが挙げられるが、天然型ビタミンCよりも経時安定性が優れ、生体内においてビタミンCに転換されるものならば種類を問わない。特に好ましいものとしてL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルのマグネシウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩およびそれらの混塩(例えば、ナトリウム・カルシウム混塩)がある。
なお、例えば、天然ビタミンやL−アスコルビン酸カルシウム塩のように、安定化されていないビタミンCを用いた場合には、養魚用固形飼料の製造工程における混練・成形、乾燥時はもとより、その保存中にも分解が顕著に起こる。
【0016】
本発明の養魚用固形飼料は、安定化ビタミンCを含む養魚用固形飼料であって、表面から深さ1mm以内に固形飼料中の安定化ビタミンCの総量の50質量%以上が存在するか、および/または、表面から深さ1mm以内の安定化ビタミンCの濃度が50質量ppm以上であることを特徴としている。
【0017】
固形飼料の表面から深さ1mm以内に存在する安定化ビタミンCの量は、好ましくは、固形飼料中の安定化ビタミンCの総量の60質量%以上、より好ましくは65質量%以上である。存在する安定化ビタミンCの量に格別上限はないが、通常、上限は約95%程度である。また、表面から深さ1mm以内の安定化ビタミンCの濃度は、好ましくは100質量ppm以上、より好ましくは200質量ppm以上、特に好ましくは250質量ppm以上である。この安定化ビタミンCの濃度に、格別上限はないが、通常、その上限は約1.5質量%程度である。固形飼料全体中の安定化ビタミンCの量は、通常、25〜5000質量ppm、好ましくは100〜4000質量ppm、より好ましくは100〜2000質量ppmである。
【0018】
本発明の養魚用固形飼料のように、表面近傍に多割合または多量の安定化ビタミンCが存在する養魚用固形飼料を調製するには、好ましくは、養魚用飼料原料を混練・成形し、得られた成形物を乾燥し、次いで、乾燥された成形物を、液体に溶解、乳化または分散させた安定化ビタミンCと接触させる。接触せしめる安定化ビタミンCとは別に、養魚用飼料原料にも安定化ビタミンCを加え混練・成形してもよい。
養魚用飼料原料を混練・成形するには、通常、加温混練機が用いられる。加温混練機は、格別限定されることはなく、例えば、エクストゥルーダーなどが用いられる。
【0019】
養魚用固形飼料に安定化ビタミンCを添加するには、安定化ビタミンCを溶解、乳化または分散させた液体を、乾燥した固体飼料と接触させるが、その方法は問わない。液体の種類に関してもその種類は問わないが、水を含む液体の場合は再乾燥の必要が生じ、工程が長く煩雑になることに加え、再乾燥の際に再び分解の恐れがあり好ましくない。また、安定性の点からも、安定化ビタミンCを溶解しない植物油および/または動物油、特に好ましくは魚油中に安定化ビタミンCを分散せしめた油性スラリー状態で接触させることが好ましい。そのような油性スラリーを用いると、溶解または乳化した場合と比較し、水との接触頻度が大幅に低下し、加水分解に対する安定性が著しく向上する。
【0020】
安定化ビタミンCは、平均粒径5〜300μmを有する微細な粒子の形態であることが好ましい。ここでいう「平均粒径」とは、レーザー回折式粒度分布測定装置(日機装株式会社製マイクロトラックMK−II)で測定して得られる数平均粒径である。粒径が大きすぎると安定化ビタミンCが飼料表面に均一に付着しない。逆に、小さすぎると取扱い性が悪くなる。
【0021】
安定化ビタミンCを分散させる媒体である液体としては、固体飼料添加用の植物油および動物油を好ましい例として挙げることができる。固形飼料添加用の植物油および動物油としては、豆油、なたね油、コーン油、ごま油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、落花生油、米胚芽油、小麦胚芽油、ツバキ油、パーム油、オリーブ油、ホホバ油、マカデミアンナッツ油、アボガド油、ヒマシ油、アマニ油、シソ油、ユーカリ油、月見草油、タートル油、ミンク油、豚脂、牛脂、魚油などの植物油、動物油が使用される。これらの中でも、魚油、特にタラ油、イワシ油などが好適である。これらの植物油、動物油は単独で用いても、混合して用いても構わない。
【0022】
乳化する場合には、乳化剤を用いるが、例としては、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセライド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ジグリセライド、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、シリコーン系界面活性剤およびアルキレンオキサイド付加界面活性剤などが挙げられる。それらの具体例としては、ソルビタンモノオレート、ソルビタンジステアレート、ポリオキシエチレン(6モル)ソルビタンモノステアレート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノリノレート、クエン酸とグリセリンモノオレートのエステル化物、プロピレングリコールモノステアレート、グリセリンジオレート、グリセリンジリノレート、なたね油とグリセリンのエステル交換により得られたジグリセライド、サフラワーとグリセリンのエステル交換により得られたジグリセライド、ジグリセリンジステアレート、ジグリセリントリステアレート、ヘキサグリセリントリオレート、ヘキサグリセリンペンタステアレート、テトラグリセリン縮合リシノレート、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ショ糖トリないしペンタステアリン酸エステル、ポリオキシエチレン(5モル)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(3モル)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(6モル)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(5モル)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(15モル)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(20モル)ソルビトールテトラオレート、レシチン(日清製油(株)製、レシチンDX、ベイシスLP−20)、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン5モル付加)シロキサン共重合体、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、リゾレシチン、サポニン、糖脂質、蛋白質、蛋白分解物(ゼラチンを除く)、ショ糖ステアリン酸モノエステル、ヘキサグリセリンオレイン酸モノエステル、デカグリセリンステアリン酸モノエステル、酵素分解レシチン(日清製油(株)、ベイシスLG−10K、ベイシスLP−20E)、キラヤサポニン、大豆蛋白分解物、カゼインナトリウム、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン60モル付加)シロキサン共重合体、ポリオキシエチレン(25モル)硬化ヒマシ油およびポリオキシエチレン(80モル)硬化ヒマシ油などが挙げられる。
【0023】
乾燥後の養魚用飼料原料成形物と安定化ビタミンCとを接触させるには、安定化ビタミンCが固形飼料重量に対し、通常50〜5000質量ppm程度、好ましくは100〜4000質量ppm程度、より好ましくは100〜3000質量ppmが含まれるようにすることが可能な方法が採られる。例えば、▲1▼固形飼料を、安定化ビタミンCを含む(溶解、乳化、分散いずれの形態でもよい)液体(以下、「安定化ビタミンC含有液体」という)中に浸漬する、▲2▼安定化ビタミンC含有液体を固形飼料に塗布する、▲3▼安定化ビタミンC含有液体を固形飼料に噴霧する、などの方法が挙げられる。
【0024】
本発明の養魚用固形飼料の一態様においては、飼料中に取り込まれた安定化ビタミンCは、主として表面に付着されているが、付着の強さに関しては特に規定はなく、製造後消費地に輸送するまでの間大部分がはがれ落ちなければよい。前述のように、固形飼料を安定化ビタミンC含有液体中に浸漬する、安定化ビタミンC含有液体を固形飼料に噴霧または塗布することによって十分目的を達せられる。
固形飼料中に含まれる動物油および/または植物油の量は、通常10質量%以上である。好ましくは10〜40質量%、より好ましくは20〜30質量%である。
【0025】
動物油および/または植物油を吸収しやすくするために、安定化ビタミンCを分散せしめた動物油および/または植物油を適用する前に、養魚用固形飼料原料の成形物中の水分は10質量%以下、より好ましくは5質量%以下にまで乾燥しておくことが好ましい。水分量が多いと動物油および/または植物油の吸収が悪く、当然安定化ビタミンCの付着の効率も低下する。ただし、水分量が極端に少なくなるまで(通常、約1質量%未満となるまで)乾燥するには長時間を要し、有効成分の分解を生じるので好ましくない。
【0026】
本発明で述べている乾燥工程とは、固形飼料原料を加温混練機で混練・成形した後の乾燥工程のことである。乾燥は、通常110℃以上、好ましくは110℃〜130℃温度で、通常2時間以上、好ましくは2〜4時間実施することができる。
安定化ビタミンCを溶解、乳化または分散せしめた液体を、この乾燥工程後に乾燥物に付着させるが、その後さらに、安定化ビタミンC含有液体が付着した固形飼料を乾燥することが好ましい。この再度の乾燥は、安定化ビタミンCが分解しない温度、通常、90℃以下で行うことが好ましい。55〜75℃が特に好ましい。
【0027】
本発明の養魚用固形飼料中に含まれる安定化ビタミンCは、高い安定性を有するため、飼料中に高い割合で残存している。通常、製造直後の養魚用固形飼料中の安定化ビタミンCの残存量は、添加した安定化ビタミンCの60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。
養魚用固形飼料の形態は格別限定されないが、円柱状、球状、断面が長円形のものなどがある。特に、エクストゥルーダーを用いて造ったドライペレットと呼ばれる円柱状のものが広く用いられる。固形飼料の大きさは、直径が11mm以上であることが好ましい。より好ましくは12mm以上、特に好ましくは15mm以上である。大きさの上限は格別ないが、直径が好ましくは30mm以下、より好ましくは25mm以下である。
【0028】
本発明の養魚用固形飼料に含まれる安定化ビタミンC以外の成分は特に制約はない。代表的なものとしては、一般に養魚用固形飼料に添加される穀類、豆類、イモ類、油粕類、ヌカ類、製造粕類、動物質飼料、ビタミン、ミネラル、その他原材料から構成される組成物が挙げられる。上記穀類、豆類およびイモ類の具体例としては、トウモロコシ、マイロ(グレーンソルガム)、小麦、大麦、ライ麦、エン麦、小麦粉、玄米、アワ、大豆、キナコおよびキャッサバなどが挙げられる。上記油粕類の具体例としては、大豆油粕、脱皮大豆油粕、綿実油粕、菜種油粕、ラッカセイ油粕、アマニ油粕、ゴマ油粕、ヤシ油粕、ヒマワリ油粕、サフラワー油粕、パーム核油粕およびカポック油粕などが挙げられる。上記ヌカ類の具体例としては、生米ヌカ、白酒ヌカ、脱脂米ヌカ、フスマおよび大麦混合ヌカなどが挙げられる。上記製造粕類の具体例としては、コーングルテンフィード、コーングルテンミール、澱粉粕、糖蜜、しょうゆ粕、ビール粕、ビートパルプ、バガス、豆腐粕、麦芽根およびみかんジュース粕などが挙げられる。上記動物質飼料の具体例としては、魚粉、ホワイトフィッシュミール、フィッシュソリュブル、フュッシュソリュブル吸着飼料、肉粉、肉骨粉、血粉、フェザーミール、カニミール、エビミール、蚕よう油粕、脱脂粉乳、乾燥ホエーおよび動物性油脂などが挙げられる。上記ミネラルの具体例としては、食塩、塩化カリウム、クエン酸鉄、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、乳酸カルシウム、硫酸マグネシウム、リン酸二水素ナトリウム、クエン酸第二鉄、硫酸第一鉄、ヨウ化カリウムおよびヨウ素酸カリウムなどが例示できる。上記以外にも、大豆油、菜種油、コーン油、ゴマ油などの植物性油脂、ビール酵母、トルラ酵母、アルファルファミール、みかん皮、コーンコブミール、昆布、ワカメ、淡水産および海産クロレラ、セルロースパウダーおよびカルボキシルセルロースなどのビタミンミックスなどが挙げられる。
【0029】
本発明の養魚用固形飼料を与える対象魚種は格別限定されることはなく、ニジマス、ヒメマス、シロザケ、マグロ、シマアジ、カンパチ、ハマチ、ブリ、タイ、トラフグその他のフグ、ヒラメ、スズキ、アユ、アマゴ、ヤマメ、コイまたはウナギ、金魚などの全ての海産魚類および淡水魚類が含まれる。さらに、甲殻類も含まれ、その具体例としては、クルマエビ、ウシエビ、テナガエビ、ガザミ、イセエビ、大正エビ、ウエスタンホワイトシュリンプ、ペナウスメルグイエンシス、ペナウスインディカス、メタペナウスエンシス、ペナウススチリロストリス、アカエビ、ハコエビ、ウチワエビ、アカザエビ、タラバエビ、サクラエビ、シャコ、プローン、ザリガニ、ロブスター、ズワイガニ、タラバガニ、ワタリガニ、マッドクラブ、上海カニ、ヤドカリなどがある。これらの中でも、代表的な養殖対象魚であるニジマス、ヒメマス、シロザケ、カンパチ、ハマチ、タイ、マグロ、シマアジ、フグ、アユ、アマゴ、ヤマメ、コイ、ウナギ、クルマエビおよびブラックタイガーなどの飼料に好適である。
【0030】
次に実施例を挙げて本説明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより制限されるものではない。実施例中の%は質量基準である。
実施例において固形飼料に含まれるL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルのマグネシウム塩、ナトリウム塩およびカルシウム塩の量、ならびに比較例1において固形飼料に含まれるL−アスコルビン酸のカルシウム塩の量は、下記の方法により定量した。
固形飼料を十分に粉砕後、1%メタリン酸水溶液:クロロホルム(1:1、v/v)で振とう抽出する。抽出液の水層を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分析する。
HPLC条件
カラム:SHODEX(昭和電工(株)登録商標)J−411
溶離液:アセトニトリル:0.05M−KH2PO4=60:40(v/v)
温度:40℃
流速:1.0ml/min
検出:UV 波長257nm
【0031】
実施例1
魚粉、小麦粉、大豆粕、魚油を重量比で60%、小麦粉15%、大豆粕5%、魚油20%となるように配合し、練り込みしやすくするために水を魚油と同重量分加えた。エクストゥルーダーを用いて十分に混合・練り込み後、径が14mm程度になるように成形し、120℃で乾燥した。3時間乾燥後、水分が5%未満となったとき、乾燥を終了して、円柱状ドライペレット飼料を得た。
次に、アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム塩(昭和電工(株)製「商品名ホスピタン」、平均粒径15μm)(以下、「APM」と略称する)を5000質量ppmけん濁した魚油を調製し、乾燥後の上記ドライペレット飼料をこの魚油中に浸漬させた。浸漬前後でペレットは5%増加していた。増加量から算出すると、固形飼料中に取り込まれたAPMは250質量ppmであったことが分かった。このようにして得られた養魚用固形飼料からAPMを抽出し、定量したところ234質量ppmであった。
本固形飼料を40℃で保存し、1日目、3日目、5日目、10日目に同様の方法でAPMを抽出し定量したところ、表1に示す値(単位:質量ppm)となった。また、養魚用固形飼料調製後すぐに分析して得た234質量ppmに対する残存率(%)を求めた。その結果も合わせて記載する。
【0032】
【表1】
【0033】
実施例2
実施例1で製造した固形飼料を調製後すぐに表面を薄く削り取った(厚さ約1mm)。削り取った重量が0.53g、残りの中心部の重量は0.90gであった。削り取った部分のAPM含量を測定したところ510質量ppm、中心部のAPM含量75質量ppmであった。
【0034】
実施例3
APMの代わりにアスコルビン酸−2−リン酸エステルナトリウム塩(特開平09−077784に記載の方法で製造し、これを粉砕して平均粒径15μmに調整した)(以下、「APS」と略称する)およびアスコルビン酸−2−リン酸エステルカルシウム塩(特開平06−184173に記載の方法で製造し、これを粉砕して平均粒径15μmに調整した)(以下、「APC」と略称する)を別々に用いた以外は実施例1と全く同じ条件で固形飼料を調製した。それらの固形飼料中の上記成分の含量(質量ppm)を経時的に測定し、残存率(%)を求めた。結果を表2、3に記す。なお、調製直後の安定化ビタミンCの含量はそれぞれ230質量ppm、225質量ppmであった。
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
実施例4
APM(実施例1で用いたものと同じ)0.5gを水49.5gに混合して溶解させたものを水相とし、大豆油50gおよびヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(理研ビタミン(株)製、ポエムPR−300、HLB:1.7)5gを混合して80℃で溶解させたものを油相とした。該油相に前記水相をゆっくり添加しながらホモミキサーを用いて60℃で、6000rpm、20分間乳化混合し、乳化物を得た。実施例1と同様に飼料原料を混練・成形し、乾燥して得たペレット飼料10gに対し、上記乳化物0.5gを噴霧し、風乾した。風乾後、固形飼料中のAPM含量を測定したところ、228質量ppmであった。
【0038】
実施例5
APM(実施例1で用いたものと同じ)0.5gを水99.5gに溶解しAPM水溶液を得た。実施例1と同様に飼料原料を混練・成形し、乾燥して得たペレット飼料10gに、上記APM水溶液0.5gを噴霧し、風乾した。風乾後、固形飼料中のAPM含量を測定したところ、230質量ppmであった。
【0039】
実施例6
APM(実施例1で用いたものと同じ)を10%けん濁した魚油を使用したこと以外は実施例1と全く同じ方法で固形飼料を調製した。増加重量から算出すると添加されたAPMは5000質量ppmであることが分かった。また、この固形飼料からAPMを抽出し定量したところ4900質量ppmであった。
本固形飼料を40℃で保存し1日目、3日目、5日目、10日目のAPMの残存率を定量したところ、それぞれ98%、96%、95%、95%であった。
【0040】
比較例1
APMの代わりにL−アスコルビン酸カルシウム塩([和光純薬工業(株)製試薬]を粉砕して平均粒径15μmに調整した)(以下、「ASC」と略称する)を用いた以外は実施例1と全く同じ方法で固形飼料を調製した。調製直後に固形飼料からASCを抽出定量したところ220質量ppmであった。実施例1と同様に40℃でASC含量(質量ppm)の経時変化を測定し、ASCの残存率(%)を求めた。結果を表4に記載する。
【0041】
【表4】
【0042】
比較例2
魚粉、小麦粉、大豆粕、魚油とともに、APM(実施例1で用いたものと同じ)を250質量ppmになるように加えた以外は実施例1と同じ配合比率で飼料原料を混練・成形後、120℃で3時間乾燥した。得られた固形飼料からAPMを抽出し、定量したところ、APM含量は90質量ppmであり、添加量の36%が残存していた。
【0043】
実施例7
アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム塩として、平均粒径500μmのものを使用した以外は、実施例1と同様に養魚用固形飼料を得た。しかしながら、魚油中でのアスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム塩粒子の分散は不均一であり、ドライペレット飼料への付着にばらつきがあった。
【0044】
【発明の効果】
本発明の養魚用固形飼料のように、表面近傍に多割合または多量の安定化ビタミンCが存在すると、十分なビタミンC力価を有し、しかも、固形飼料の製造時および保存中のビタミンC力価の経時的低下が小さく、固形飼料は安定である。固形飼料を大径化したり、固形飼料中に植物油および/または動物油を多量に含有せしめても十分なビタミンC力価を保ち、かつ経時安定性に優れている。
【0045】
上記のような養魚用固形飼料は、養魚用飼料原料を混練・成形し、乾燥した後に、乾燥された成形物を、液体に溶解または乳化または分散させた安定化ビタミンCと接触させることによって調製することができる。とりわけ、動物油および/または植物油、特に魚油に分散させた安定化ビタミンCの微細粒子と接触させることによって調製した養魚用固形飼料は、高いビタミンC力価を有し、しかも、固形飼料の製造時および保存中のビタミンC力価の経時的低下が著しく小さく、非常に安定である。
【産業上の利用分野】
本発明はアスコルビン酸活性を有し、かつ飼料中で安定な、特に経時的に安定なアスコルビン酸誘導体を含有する養魚用固形飼料、およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
養殖魚類において、L−アスコルビン酸が欠乏または不足すると壊血病症状を呈し死に至るなどの重大な被害が発生することが知られている。例えば、1962年に各地のニジマス養魚場で脊椎のわん曲を主徴とする異常魚が多発したが、研究の結果、アスコルビン酸の不足によることが証明された(日本水産学会31巻第818頁〜826頁)。さらに、昭和42年日本水産学会年会でニジマス、ヒメマスおよびシロザケ稚魚のアスコルビン酸欠乏による変形症が報告されている。また、アユでは食欲不振、軽度の眼球突出、ヒレ基部の出血、えらぶた、下頸部の損傷などの欠乏症、ハマチ稚魚では接餌量減少、成長停止、脊椎わん曲、体色異変、高へい死率などの欠乏症、ウナギでは食欲低下、成長停滞の他、ヒレ、頭部の出血などが起こる。さらに、ニジマス、ヒメマス、シロザケ、アユ、ヤマメ、カンパチ、ハマチ、タイ、コイ、ウナギなどの養殖に供される魚類は飼育中のストレスなどで天然魚に比較してアスコルビン酸要求量が高く飼料中のアスコルビン酸が不可欠である。
【0003】
従って、稚魚飼料にはアスコルビン酸を含むビタミン類が添加され、給餌されている。ところが、アスコルビン酸は水溶性ビタミンの中でも特に不安定なものであるため、飼料中に添加した場合に分解が起こる。とりわけ、蛋白源である魚粉中では特に不安定であり、ニジマス用飼料のように魚粉が半ば以上を占めるような配合のものでは分解によってビタミンCの力価が大きく低下する。
また、飼料製造時において、エクストゥルーダーを用い加圧、高温条件下で成形する際にアスコルビン酸の分解が非常に大きいことが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、エクストゥルーダーで成形したペレットに水溶性ビタミン乳化液を添加することが記載されているが、これはエクストゥルーダーによる分解を回避するためと考えられる。
【0004】
これらの問題を解決するための技術として、安定化ビタミンCであるL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの塩類を養魚用固形飼料中に配合する技術がある(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、本発明者らの知見によれば、養魚用固形飼料を大径化したり、飼料中に栄養分としての植物油および/または動物油を多量に含有せしめると、安定化ビタミンCであっても添加量の一部が分解する場合がある。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−056256号公報
【特許文献2】
特許2943785号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような状況に鑑み、本発明の目的は、十分なビタミンC力価を有し、しかも、固形飼料の製造時および保存中のビタミンC力価の経時的低下が著しく小さく、安定な養魚用固形飼料を提供することにある。特に、固形飼料を大径化したり、固形飼料中に植物油および/または動物油を多量に含有せしめても十分なビタミンC力価を保ち、かつ、製造時および保存中のビタミンC力価の経時的低下が著しく小さい養魚用固形飼料を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、固形飼料を大径化したり、固形飼料中に植物油および/または動物油を多量に含有せしめると、L−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの塩類を始めとする安定化ビタミンCの一部が分解されるのは、養魚用飼料配合物のエクストゥルーダーでの混練・成形工程後の乾燥工程で顕著であることが分かった。そこで、本発明者らは、安定化ビタミンCを含まない養魚用飼料原料をエクストゥルーダーで混練・成形してペレット飼料とし、その乾燥後のペレット飼料に安定化ビタミンCを添加して得られた養魚用固形飼料は、添加した安定化ビタミンCの大部分が分解せず、製品飼料中に残存し、十分なビタミンC力価を保ち、かつ経時安定性にも優れていることを見いだし、本発明を完成するに至った。なお、安定化されていないビタミンCの場合には、養魚用固形飼料の製造工程における混練・成形、乾燥時はもとより、その保存中にも分解が進むことはいうまでもない。
【0008】
かくして、本発明は、下記の養魚用固形飼料、およびその製造方法を提供するものである。
養魚用固形飼料
(1) 安定化ビタミンCを含む養魚用固形飼料であって、表面から深さ1mm以内に固形飼料中の安定化ビタミンCの50質量%以上が存在していることを特徴とする養魚用固形飼料。
(2) 安定化ビタミンCを含む養魚用固形飼料であって、表面から深さ1mm以内の安定化ビタミンCの濃度が50質量ppm以上であることを特徴とする養魚用固形飼料。
【0009】
(3) 表面から深さ1mm以内の安定化ビタミンCの濃度が100質量ppm以上である上記(1)または(2)に記載の養魚用固形飼料。
(4) 固形飼料中の安定化ビタミンCの含有量が25〜5000質量ppmである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の養魚用固形飼料。
(5) 植物油および動物油の中から選ばれた少なくとも一種を10質量%以上含む上記(1)〜(4)のいずれかに記載の養魚用固形飼料。
【0010】
(6) 魚油を10〜40質量%含む上記(1)〜(4)のいずれかに記載の養魚用固形飼料。
(7) 水分含有量が10質量%以下である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の養魚用固形飼料。
(8) 直径が11mm以上である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の養魚用固形飼料。
【0011】
(9) 安定化ビタミンCがL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの塩である上記(1)〜(8)のいずれかに記載の養魚用固形飼料。
(10) L−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの塩が、L−アスコルビン酸−2−リン酸エステルのマグネシウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、およびこれらの混塩の中から選ばれた少なくとも一種である上記(9)に記載の養魚用固形飼料。
(11) ニジマス、ヒメマス、シロザケ、カンパチ、ハマチ、タイ、マグロ、シマアジ、フグ、アユ、アマゴ、ヤマメ、コイ、ウナギ、クルマエビおよびブラックタイガーの飼料である上記(1)〜(10)のいずれかに記載の養魚用固形飼料。
【0012】
養魚用固形飼料の製造方法
(12) 養魚用飼料原料を混練・成形し、得られた成形物を乾燥し、次いで、乾燥された成形物を、液体に溶解、乳化または分散させた安定化ビタミンCと接触させることを特徴とする上記(1)〜(11)のいずれかに記載の養魚用固形飼料の製造方法。
(13) 加温混練機を使用して、養魚用飼料配合物の混練を行う上記(12)に記載の製造方法。
(14) 成形物を水分含有量10質量%以下まで乾燥する上記(12)または(13)に記載の製造方法。
【0013】
(15) 成形物を110℃以上の温度で乾燥する上記(12)〜(14)のいずれかに記載の製造方法。
(16) 成形物を2時間以上かけて乾燥する上記(12)〜(15)のいずれかに記載の製造方法。
(17) 安定化ビタミンCの平均粒径が5〜300μmである上記(12)〜(16)のいずれかに記載の製造方法。
(18) 乾燥された成形物を、植物油および動物油の中から選ばれた少なくとも一種を含む液体に分散させた安定化ビタミンCと接触させる上記(12)〜(17)のいずれかに記載の製造方法。
【0014】
(19) 乾燥された成形物を、魚油を含む液体に分散させた安定化ビタミンCと接触させる上記(12)〜(17)のいずれかに記載の製造方法。
(20) 乾燥された成形物を、該液体に溶解、乳化または分散させた安定化ビタミンCと接触させた後、さらに、該液体が付着した成形物を乾燥する上記(12)〜(19)のいずれかに記載の製造方法。
(21) 液体が付着した成形物を90℃以下の温度で乾燥する上記(20)に記載の製造方法。
(22) 製造直後の養魚用固形飼料中の安定化ビタミンCの量が、固形飼料中へ添加した安定化ビタミンCの量の60質量%以上である上記(12)〜(21)のいずれかに記載の製造方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明で使用される安定化ビタミンCとしては、L−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの塩、L−アスコルビン酸−2−グリコシドなどが挙げられるが、天然型ビタミンCよりも経時安定性が優れ、生体内においてビタミンCに転換されるものならば種類を問わない。特に好ましいものとしてL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルのマグネシウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩およびそれらの混塩(例えば、ナトリウム・カルシウム混塩)がある。
なお、例えば、天然ビタミンやL−アスコルビン酸カルシウム塩のように、安定化されていないビタミンCを用いた場合には、養魚用固形飼料の製造工程における混練・成形、乾燥時はもとより、その保存中にも分解が顕著に起こる。
【0016】
本発明の養魚用固形飼料は、安定化ビタミンCを含む養魚用固形飼料であって、表面から深さ1mm以内に固形飼料中の安定化ビタミンCの総量の50質量%以上が存在するか、および/または、表面から深さ1mm以内の安定化ビタミンCの濃度が50質量ppm以上であることを特徴としている。
【0017】
固形飼料の表面から深さ1mm以内に存在する安定化ビタミンCの量は、好ましくは、固形飼料中の安定化ビタミンCの総量の60質量%以上、より好ましくは65質量%以上である。存在する安定化ビタミンCの量に格別上限はないが、通常、上限は約95%程度である。また、表面から深さ1mm以内の安定化ビタミンCの濃度は、好ましくは100質量ppm以上、より好ましくは200質量ppm以上、特に好ましくは250質量ppm以上である。この安定化ビタミンCの濃度に、格別上限はないが、通常、その上限は約1.5質量%程度である。固形飼料全体中の安定化ビタミンCの量は、通常、25〜5000質量ppm、好ましくは100〜4000質量ppm、より好ましくは100〜2000質量ppmである。
【0018】
本発明の養魚用固形飼料のように、表面近傍に多割合または多量の安定化ビタミンCが存在する養魚用固形飼料を調製するには、好ましくは、養魚用飼料原料を混練・成形し、得られた成形物を乾燥し、次いで、乾燥された成形物を、液体に溶解、乳化または分散させた安定化ビタミンCと接触させる。接触せしめる安定化ビタミンCとは別に、養魚用飼料原料にも安定化ビタミンCを加え混練・成形してもよい。
養魚用飼料原料を混練・成形するには、通常、加温混練機が用いられる。加温混練機は、格別限定されることはなく、例えば、エクストゥルーダーなどが用いられる。
【0019】
養魚用固形飼料に安定化ビタミンCを添加するには、安定化ビタミンCを溶解、乳化または分散させた液体を、乾燥した固体飼料と接触させるが、その方法は問わない。液体の種類に関してもその種類は問わないが、水を含む液体の場合は再乾燥の必要が生じ、工程が長く煩雑になることに加え、再乾燥の際に再び分解の恐れがあり好ましくない。また、安定性の点からも、安定化ビタミンCを溶解しない植物油および/または動物油、特に好ましくは魚油中に安定化ビタミンCを分散せしめた油性スラリー状態で接触させることが好ましい。そのような油性スラリーを用いると、溶解または乳化した場合と比較し、水との接触頻度が大幅に低下し、加水分解に対する安定性が著しく向上する。
【0020】
安定化ビタミンCは、平均粒径5〜300μmを有する微細な粒子の形態であることが好ましい。ここでいう「平均粒径」とは、レーザー回折式粒度分布測定装置(日機装株式会社製マイクロトラックMK−II)で測定して得られる数平均粒径である。粒径が大きすぎると安定化ビタミンCが飼料表面に均一に付着しない。逆に、小さすぎると取扱い性が悪くなる。
【0021】
安定化ビタミンCを分散させる媒体である液体としては、固体飼料添加用の植物油および動物油を好ましい例として挙げることができる。固形飼料添加用の植物油および動物油としては、豆油、なたね油、コーン油、ごま油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、落花生油、米胚芽油、小麦胚芽油、ツバキ油、パーム油、オリーブ油、ホホバ油、マカデミアンナッツ油、アボガド油、ヒマシ油、アマニ油、シソ油、ユーカリ油、月見草油、タートル油、ミンク油、豚脂、牛脂、魚油などの植物油、動物油が使用される。これらの中でも、魚油、特にタラ油、イワシ油などが好適である。これらの植物油、動物油は単独で用いても、混合して用いても構わない。
【0022】
乳化する場合には、乳化剤を用いるが、例としては、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセライド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ジグリセライド、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、シリコーン系界面活性剤およびアルキレンオキサイド付加界面活性剤などが挙げられる。それらの具体例としては、ソルビタンモノオレート、ソルビタンジステアレート、ポリオキシエチレン(6モル)ソルビタンモノステアレート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノリノレート、クエン酸とグリセリンモノオレートのエステル化物、プロピレングリコールモノステアレート、グリセリンジオレート、グリセリンジリノレート、なたね油とグリセリンのエステル交換により得られたジグリセライド、サフラワーとグリセリンのエステル交換により得られたジグリセライド、ジグリセリンジステアレート、ジグリセリントリステアレート、ヘキサグリセリントリオレート、ヘキサグリセリンペンタステアレート、テトラグリセリン縮合リシノレート、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ショ糖トリないしペンタステアリン酸エステル、ポリオキシエチレン(5モル)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(3モル)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(6モル)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(5モル)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(15モル)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(20モル)ソルビトールテトラオレート、レシチン(日清製油(株)製、レシチンDX、ベイシスLP−20)、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン5モル付加)シロキサン共重合体、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、リゾレシチン、サポニン、糖脂質、蛋白質、蛋白分解物(ゼラチンを除く)、ショ糖ステアリン酸モノエステル、ヘキサグリセリンオレイン酸モノエステル、デカグリセリンステアリン酸モノエステル、酵素分解レシチン(日清製油(株)、ベイシスLG−10K、ベイシスLP−20E)、キラヤサポニン、大豆蛋白分解物、カゼインナトリウム、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン60モル付加)シロキサン共重合体、ポリオキシエチレン(25モル)硬化ヒマシ油およびポリオキシエチレン(80モル)硬化ヒマシ油などが挙げられる。
【0023】
乾燥後の養魚用飼料原料成形物と安定化ビタミンCとを接触させるには、安定化ビタミンCが固形飼料重量に対し、通常50〜5000質量ppm程度、好ましくは100〜4000質量ppm程度、より好ましくは100〜3000質量ppmが含まれるようにすることが可能な方法が採られる。例えば、▲1▼固形飼料を、安定化ビタミンCを含む(溶解、乳化、分散いずれの形態でもよい)液体(以下、「安定化ビタミンC含有液体」という)中に浸漬する、▲2▼安定化ビタミンC含有液体を固形飼料に塗布する、▲3▼安定化ビタミンC含有液体を固形飼料に噴霧する、などの方法が挙げられる。
【0024】
本発明の養魚用固形飼料の一態様においては、飼料中に取り込まれた安定化ビタミンCは、主として表面に付着されているが、付着の強さに関しては特に規定はなく、製造後消費地に輸送するまでの間大部分がはがれ落ちなければよい。前述のように、固形飼料を安定化ビタミンC含有液体中に浸漬する、安定化ビタミンC含有液体を固形飼料に噴霧または塗布することによって十分目的を達せられる。
固形飼料中に含まれる動物油および/または植物油の量は、通常10質量%以上である。好ましくは10〜40質量%、より好ましくは20〜30質量%である。
【0025】
動物油および/または植物油を吸収しやすくするために、安定化ビタミンCを分散せしめた動物油および/または植物油を適用する前に、養魚用固形飼料原料の成形物中の水分は10質量%以下、より好ましくは5質量%以下にまで乾燥しておくことが好ましい。水分量が多いと動物油および/または植物油の吸収が悪く、当然安定化ビタミンCの付着の効率も低下する。ただし、水分量が極端に少なくなるまで(通常、約1質量%未満となるまで)乾燥するには長時間を要し、有効成分の分解を生じるので好ましくない。
【0026】
本発明で述べている乾燥工程とは、固形飼料原料を加温混練機で混練・成形した後の乾燥工程のことである。乾燥は、通常110℃以上、好ましくは110℃〜130℃温度で、通常2時間以上、好ましくは2〜4時間実施することができる。
安定化ビタミンCを溶解、乳化または分散せしめた液体を、この乾燥工程後に乾燥物に付着させるが、その後さらに、安定化ビタミンC含有液体が付着した固形飼料を乾燥することが好ましい。この再度の乾燥は、安定化ビタミンCが分解しない温度、通常、90℃以下で行うことが好ましい。55〜75℃が特に好ましい。
【0027】
本発明の養魚用固形飼料中に含まれる安定化ビタミンCは、高い安定性を有するため、飼料中に高い割合で残存している。通常、製造直後の養魚用固形飼料中の安定化ビタミンCの残存量は、添加した安定化ビタミンCの60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。
養魚用固形飼料の形態は格別限定されないが、円柱状、球状、断面が長円形のものなどがある。特に、エクストゥルーダーを用いて造ったドライペレットと呼ばれる円柱状のものが広く用いられる。固形飼料の大きさは、直径が11mm以上であることが好ましい。より好ましくは12mm以上、特に好ましくは15mm以上である。大きさの上限は格別ないが、直径が好ましくは30mm以下、より好ましくは25mm以下である。
【0028】
本発明の養魚用固形飼料に含まれる安定化ビタミンC以外の成分は特に制約はない。代表的なものとしては、一般に養魚用固形飼料に添加される穀類、豆類、イモ類、油粕類、ヌカ類、製造粕類、動物質飼料、ビタミン、ミネラル、その他原材料から構成される組成物が挙げられる。上記穀類、豆類およびイモ類の具体例としては、トウモロコシ、マイロ(グレーンソルガム)、小麦、大麦、ライ麦、エン麦、小麦粉、玄米、アワ、大豆、キナコおよびキャッサバなどが挙げられる。上記油粕類の具体例としては、大豆油粕、脱皮大豆油粕、綿実油粕、菜種油粕、ラッカセイ油粕、アマニ油粕、ゴマ油粕、ヤシ油粕、ヒマワリ油粕、サフラワー油粕、パーム核油粕およびカポック油粕などが挙げられる。上記ヌカ類の具体例としては、生米ヌカ、白酒ヌカ、脱脂米ヌカ、フスマおよび大麦混合ヌカなどが挙げられる。上記製造粕類の具体例としては、コーングルテンフィード、コーングルテンミール、澱粉粕、糖蜜、しょうゆ粕、ビール粕、ビートパルプ、バガス、豆腐粕、麦芽根およびみかんジュース粕などが挙げられる。上記動物質飼料の具体例としては、魚粉、ホワイトフィッシュミール、フィッシュソリュブル、フュッシュソリュブル吸着飼料、肉粉、肉骨粉、血粉、フェザーミール、カニミール、エビミール、蚕よう油粕、脱脂粉乳、乾燥ホエーおよび動物性油脂などが挙げられる。上記ミネラルの具体例としては、食塩、塩化カリウム、クエン酸鉄、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、乳酸カルシウム、硫酸マグネシウム、リン酸二水素ナトリウム、クエン酸第二鉄、硫酸第一鉄、ヨウ化カリウムおよびヨウ素酸カリウムなどが例示できる。上記以外にも、大豆油、菜種油、コーン油、ゴマ油などの植物性油脂、ビール酵母、トルラ酵母、アルファルファミール、みかん皮、コーンコブミール、昆布、ワカメ、淡水産および海産クロレラ、セルロースパウダーおよびカルボキシルセルロースなどのビタミンミックスなどが挙げられる。
【0029】
本発明の養魚用固形飼料を与える対象魚種は格別限定されることはなく、ニジマス、ヒメマス、シロザケ、マグロ、シマアジ、カンパチ、ハマチ、ブリ、タイ、トラフグその他のフグ、ヒラメ、スズキ、アユ、アマゴ、ヤマメ、コイまたはウナギ、金魚などの全ての海産魚類および淡水魚類が含まれる。さらに、甲殻類も含まれ、その具体例としては、クルマエビ、ウシエビ、テナガエビ、ガザミ、イセエビ、大正エビ、ウエスタンホワイトシュリンプ、ペナウスメルグイエンシス、ペナウスインディカス、メタペナウスエンシス、ペナウススチリロストリス、アカエビ、ハコエビ、ウチワエビ、アカザエビ、タラバエビ、サクラエビ、シャコ、プローン、ザリガニ、ロブスター、ズワイガニ、タラバガニ、ワタリガニ、マッドクラブ、上海カニ、ヤドカリなどがある。これらの中でも、代表的な養殖対象魚であるニジマス、ヒメマス、シロザケ、カンパチ、ハマチ、タイ、マグロ、シマアジ、フグ、アユ、アマゴ、ヤマメ、コイ、ウナギ、クルマエビおよびブラックタイガーなどの飼料に好適である。
【0030】
次に実施例を挙げて本説明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより制限されるものではない。実施例中の%は質量基準である。
実施例において固形飼料に含まれるL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルのマグネシウム塩、ナトリウム塩およびカルシウム塩の量、ならびに比較例1において固形飼料に含まれるL−アスコルビン酸のカルシウム塩の量は、下記の方法により定量した。
固形飼料を十分に粉砕後、1%メタリン酸水溶液:クロロホルム(1:1、v/v)で振とう抽出する。抽出液の水層を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分析する。
HPLC条件
カラム:SHODEX(昭和電工(株)登録商標)J−411
溶離液:アセトニトリル:0.05M−KH2PO4=60:40(v/v)
温度:40℃
流速:1.0ml/min
検出:UV 波長257nm
【0031】
実施例1
魚粉、小麦粉、大豆粕、魚油を重量比で60%、小麦粉15%、大豆粕5%、魚油20%となるように配合し、練り込みしやすくするために水を魚油と同重量分加えた。エクストゥルーダーを用いて十分に混合・練り込み後、径が14mm程度になるように成形し、120℃で乾燥した。3時間乾燥後、水分が5%未満となったとき、乾燥を終了して、円柱状ドライペレット飼料を得た。
次に、アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム塩(昭和電工(株)製「商品名ホスピタン」、平均粒径15μm)(以下、「APM」と略称する)を5000質量ppmけん濁した魚油を調製し、乾燥後の上記ドライペレット飼料をこの魚油中に浸漬させた。浸漬前後でペレットは5%増加していた。増加量から算出すると、固形飼料中に取り込まれたAPMは250質量ppmであったことが分かった。このようにして得られた養魚用固形飼料からAPMを抽出し、定量したところ234質量ppmであった。
本固形飼料を40℃で保存し、1日目、3日目、5日目、10日目に同様の方法でAPMを抽出し定量したところ、表1に示す値(単位:質量ppm)となった。また、養魚用固形飼料調製後すぐに分析して得た234質量ppmに対する残存率(%)を求めた。その結果も合わせて記載する。
【0032】
【表1】
【0033】
実施例2
実施例1で製造した固形飼料を調製後すぐに表面を薄く削り取った(厚さ約1mm)。削り取った重量が0.53g、残りの中心部の重量は0.90gであった。削り取った部分のAPM含量を測定したところ510質量ppm、中心部のAPM含量75質量ppmであった。
【0034】
実施例3
APMの代わりにアスコルビン酸−2−リン酸エステルナトリウム塩(特開平09−077784に記載の方法で製造し、これを粉砕して平均粒径15μmに調整した)(以下、「APS」と略称する)およびアスコルビン酸−2−リン酸エステルカルシウム塩(特開平06−184173に記載の方法で製造し、これを粉砕して平均粒径15μmに調整した)(以下、「APC」と略称する)を別々に用いた以外は実施例1と全く同じ条件で固形飼料を調製した。それらの固形飼料中の上記成分の含量(質量ppm)を経時的に測定し、残存率(%)を求めた。結果を表2、3に記す。なお、調製直後の安定化ビタミンCの含量はそれぞれ230質量ppm、225質量ppmであった。
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
実施例4
APM(実施例1で用いたものと同じ)0.5gを水49.5gに混合して溶解させたものを水相とし、大豆油50gおよびヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(理研ビタミン(株)製、ポエムPR−300、HLB:1.7)5gを混合して80℃で溶解させたものを油相とした。該油相に前記水相をゆっくり添加しながらホモミキサーを用いて60℃で、6000rpm、20分間乳化混合し、乳化物を得た。実施例1と同様に飼料原料を混練・成形し、乾燥して得たペレット飼料10gに対し、上記乳化物0.5gを噴霧し、風乾した。風乾後、固形飼料中のAPM含量を測定したところ、228質量ppmであった。
【0038】
実施例5
APM(実施例1で用いたものと同じ)0.5gを水99.5gに溶解しAPM水溶液を得た。実施例1と同様に飼料原料を混練・成形し、乾燥して得たペレット飼料10gに、上記APM水溶液0.5gを噴霧し、風乾した。風乾後、固形飼料中のAPM含量を測定したところ、230質量ppmであった。
【0039】
実施例6
APM(実施例1で用いたものと同じ)を10%けん濁した魚油を使用したこと以外は実施例1と全く同じ方法で固形飼料を調製した。増加重量から算出すると添加されたAPMは5000質量ppmであることが分かった。また、この固形飼料からAPMを抽出し定量したところ4900質量ppmであった。
本固形飼料を40℃で保存し1日目、3日目、5日目、10日目のAPMの残存率を定量したところ、それぞれ98%、96%、95%、95%であった。
【0040】
比較例1
APMの代わりにL−アスコルビン酸カルシウム塩([和光純薬工業(株)製試薬]を粉砕して平均粒径15μmに調整した)(以下、「ASC」と略称する)を用いた以外は実施例1と全く同じ方法で固形飼料を調製した。調製直後に固形飼料からASCを抽出定量したところ220質量ppmであった。実施例1と同様に40℃でASC含量(質量ppm)の経時変化を測定し、ASCの残存率(%)を求めた。結果を表4に記載する。
【0041】
【表4】
【0042】
比較例2
魚粉、小麦粉、大豆粕、魚油とともに、APM(実施例1で用いたものと同じ)を250質量ppmになるように加えた以外は実施例1と同じ配合比率で飼料原料を混練・成形後、120℃で3時間乾燥した。得られた固形飼料からAPMを抽出し、定量したところ、APM含量は90質量ppmであり、添加量の36%が残存していた。
【0043】
実施例7
アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム塩として、平均粒径500μmのものを使用した以外は、実施例1と同様に養魚用固形飼料を得た。しかしながら、魚油中でのアスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム塩粒子の分散は不均一であり、ドライペレット飼料への付着にばらつきがあった。
【0044】
【発明の効果】
本発明の養魚用固形飼料のように、表面近傍に多割合または多量の安定化ビタミンCが存在すると、十分なビタミンC力価を有し、しかも、固形飼料の製造時および保存中のビタミンC力価の経時的低下が小さく、固形飼料は安定である。固形飼料を大径化したり、固形飼料中に植物油および/または動物油を多量に含有せしめても十分なビタミンC力価を保ち、かつ経時安定性に優れている。
【0045】
上記のような養魚用固形飼料は、養魚用飼料原料を混練・成形し、乾燥した後に、乾燥された成形物を、液体に溶解または乳化または分散させた安定化ビタミンCと接触させることによって調製することができる。とりわけ、動物油および/または植物油、特に魚油に分散させた安定化ビタミンCの微細粒子と接触させることによって調製した養魚用固形飼料は、高いビタミンC力価を有し、しかも、固形飼料の製造時および保存中のビタミンC力価の経時的低下が著しく小さく、非常に安定である。
Claims (22)
- 安定化ビタミンCを含む養魚用固形飼料であって、表面から深さ1mm以内に飼料中の安定化ビタミンCの50質量%以上が存在していることを特徴とする養魚用固形飼料。
- 安定化ビタミンCを含む養魚用固形飼料であって、表面から深さ1mm以内の安定化ビタミンCの濃度が50質量ppm以上であることを特徴とする養魚用固形飼料。
- 表面から深さ1mm以内の安定化ビタミンCの濃度が100質量ppm以上である請求項1または2に記載の養魚用固形飼料。
- 固形飼料中の安定化ビタミンCの含有量が25〜5000質量ppmである請求項1〜3のいずれかに記載の養魚用固形飼料。
- 植物油および動物油の中から選ばれた少なくとも一種を10質量%以上含む請求項1〜4のいずれかに記載の養魚用固形飼料。
- 魚油を10〜40質量%含む請求項1〜4のいずれかに記載の養魚用固形飼料。
- 水分含有量が10質量%以下である請求項1〜6のいずれかに記載の養魚用固形飼料。
- 直径が11mm以上である請求項1〜7のいずれかに記載の養魚用固形飼料。
- 安定化ビタミンCがL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの塩である請求項1〜8のいずれかに記載の養魚用固形飼料。
- L−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの塩が、L−アスコルビン酸−2−リン酸エステルのマグネシウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩およびこれらの混塩の中から選ばれた少なくとも一種である請求項9に記載の養魚用固形飼料。
- ニジマス、ヒメマス、シロザケ、カンパチ、ハマチ、タイ、マグロ、シマアジ、フグ、アユ、アマゴ、ヤマメ、コイ、ウナギ、クルマエビおよびブラックタイガーの飼料である請求項1〜10のいずれかに記載の養魚用固形飼料。
- 養魚用飼料原料を混練・成形し、得られた成形物を乾燥し、次いで、乾燥された成形物を、液体に溶解、乳化または分散させた安定化ビタミンCと接触させることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の養魚用固形飼料の製造方法。
- 加温混練機を使用して、養魚用飼料配合物の混練を行う請求項12に記載の製造方法。
- 成形物を水分含有量10質量%以下まで乾燥する請求項12または13に記載の製造方法。
- 成形物を110℃以上の温度で乾燥する請求項12〜14のいずれかに記載の製造方法。
- 成形物を2時間以上かけて乾燥する請求項12〜15のいずれかに記載の製造方法。
- 安定化ビタミンCの平均粒径が5〜300μmである請求項12〜16のいずれかに記載の製造方法。
- 乾燥された成形物を、植物油および動物油の中から選ばれた少なくとも一種を含む液体に分散させた安定化ビタミンCと接触させる請求項12〜17のいずれかに記載の製造方法。
- 乾燥された成形物を、魚油を含む液体に分散させた安定化ビタミンCと接触させる請求項12〜17のいずれかに記載の製造方法。
- 乾燥された成形物を、該液体に溶解、乳化または分散させた安定化ビタミンCと接触させた後、さらに、該液体が付着した成形物を乾燥する請求項12〜19のいずれかに記載の製造方法。
- 液体が付着した成形物を90℃以下の温度で乾燥する請求項20に記載の製造方法。
- 製造直後の養魚用固形飼料中の安定化ビタミンCの量が、固形飼料中へ添加した安定化ビタミンCの量の60質量%以上である請求項12〜21のいずれかに記載の製造方法。
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JP2011200260A (ja) * | 2011-07-19 | 2011-10-13 | Kinki Univ | マグロ属魚類用飼料 |
CN104489411A (zh) * | 2014-12-31 | 2015-04-08 | 通威股份有限公司 | 金鳟鱼饲料 |
JP2015119644A (ja) * | 2013-12-20 | 2015-07-02 | ジェックス株式会社 | 観賞魚用固形餌 |
CN108552435A (zh) * | 2018-04-12 | 2018-09-21 | 福建高农饲料有限公司 | 高体鰤鱼人工配合饲料及其制备方法 |
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2003
- 2003-04-16 JP JP2003111859A patent/JP2004337003A/ja not_active Abandoned
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