JP2004331718A - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)、(B)、(C)及び(D)の合計を基準として、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)30〜93重量%、黒鉛、マイカ、ガラスフレーク及び板状炭酸カルシウムからなる群より選ばれる板状無機充填材(B)5〜35重量%、芳香族ポリエステル樹脂(C)1〜46重量%及び有機リン酸エステル系安定剤(D)0.005〜1重量%を含有してなる熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は機械的特性、良好な溶融熱安定性を有し、且つ線膨張係数が小さく外観が良好な成形品を与える熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネート樹脂は優れた対衝撃性、耐熱性を有するエンジニアリング樹脂であり、又熱可塑性ポリエステル樹脂は耐薬品性、成形加工性等に優れた樹脂として知られている。ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂とを配合した組成物は、それぞれの欠点を補完し、優れた性質を有する樹脂材料として産業界で広く使われている。かかる組成物は、たとえば、輸送産業、特に自動車産業、電気産業、建築産業、器械産業および家具産業における成形品用の樹脂素材として使用されている。
【0003】
ポリエステル樹脂−ポリカーボネート樹脂組成物は自動車部品等に要求される耐衝撃性、耐熱性、耐薬品性、耐候性、剛性等を満足させるため種々改良がなされており、耐衝撃性改良のためゴム状重合体等が配合されている。特に、自動車外装部品等に使用される場合には、部品間の隙間を小さくするために低い線膨張係数を有していることが望まれている。
線膨張係数を低くするためには、無機充填材としてガラス繊維を配合することが試みられているが、この方法によると耐衝撃性の低下、成形品表面の不良等が生じた。
【0004】
成形品表面の不良を改良し、低い線膨張係数を有する材料として、ガラス繊維に代えて、タルク、シリカ等の無機粉末或いはL/D≦10以下の無機繊維を配合した組成物(特許文献1)や平均粒子径0.1〜20μmのマイカを配合した強化樹脂組成物(特許文献2)が提案されている。しかし、これらの無機充填材はアルカリ性であるため、成形加工時にポリカーボネート樹脂や芳香族ポリエステル樹脂の加水分解がおこり、分子量の低下による強度劣化を惹起している。また、これに起因して、成形品が黄変あるいは表面肌荒れによる平滑性の低下を惹起し外観を悪くしている。そこで、無機充填材添加による樹脂の分解を解消する手法としてペンタエリスリトール型のホスファイト系抗酸化剤を配合した組成物が提案され(特許文献3)ている。
【0005】
一方、芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、タルク及び特定の有機リン酸エステルを配合した組成物が、剛性、外観、面衝撃性に優れ、良好な溶融熱安定性を持つ材料として提案されている(特許文献4)。しかしながら、時代の移り変わりに伴い、更に性能が改良された材料が望まれている。
【0006】
【特許文献1】
特開昭62−138550号公報
【特許文献2】
特開平4−85360号公報
【特許文献3】
特開平05−222283号公報
【特許文献4】
特開平06−49343号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、こうした実情の下になされたものであって、外観、面衝撃性、溶融熱安定性に優れ、線膨張係数が低いといった従来の樹脂組成物では困難な、多岐にわたる要求性能を同時に満足させる樹脂成形品を得るための熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を行なった結果、ポリカーボネート樹脂と芳香族ポリエステル樹脂とからなるブレンド物に特定の板状無機充填材を配合し、且つ特定の有機リン酸エステルを併用して配合した組成物を使用すると、外観、面衝撃性、溶融熱安定性に優れ、しかも線膨張係数が6×10−5cm/cm・℃以下となる熱可塑性樹脂成形品が得られることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は、(A)、(B)、(C)及び(D)の合計を基準として、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)30〜93重量%,黒鉛、マイカ、ガラスフレーク及び板状炭酸カルシウムからなる群より選ばれる板状無機充填材(B)5〜35重量%、芳香族ポリエステル樹脂(C)1〜46重量%及び下記式(1)で表される有機リン酸エステル(D)0.005〜1重量%を含有してなる熱可塑性樹脂組成物に存する。
【0009】
【化2】
【0010】
(式中Rは炭素数10〜30のアルキル基であり、nは1または2である。)。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において使用される芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、芳香族ジヒドロキシ化合物をホスゲン或いは炭酸ジエステル等のカーボネート前駆体と反応させることにより容易に製造される。反応は公知の方法、例えば、ホスゲンを用いる場合は界面法により、又炭酸ジエステルを用いる場合は溶融状で反応させるエステル交換法等が採用される。
【0012】
上記原料の芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]が代表的である。その他、たとえば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。
これらは単独または2種以上混合して使用されるが、これらの他にピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル類を混合して使用してもよい。更に、フロログルシン等の多官能性化合物を併用した分岐を有する芳香族ポリカーボネート樹脂を使用することも出来る。
【0013】
芳香族ジヒドロキシ化合物と反応させるカーボネート前駆体としては、ホスゲン、またはジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類が挙げられる。
【0014】
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、好ましくは10,000〜30,000であり、より好ましくは11,000〜25,000であり、最も好ましくは12,000〜20,000である。
所望の分子量の芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、末端停止剤或いは分子量調節剤を用いる方法や重合反応条件の選択等公知の方法が採用される。
本発明樹脂組成物中の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の含有量は、(A)、(B)、(C)及び(D)の合計を基準として、30〜93重量%、好ましくは30重量%〜80重量%である。含有量が30重量%より少ないと、芳香族ポリカーボネート樹脂本来の耐熱性、機械的特性、寸法特性等の性質が損なわれ、93重量%より多いと、剛性、溶融熱安定性の改良効果が不十分である。
【0015】
本発明に使用される芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、芳香族ポリカーボネートオリゴマーを含有していても良い。芳香族ポリカーボネートオリゴマーは、例えば、末端停止剤あるいは分子量調節剤を用いて芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンまたは炭酸ジエステルを反応させることで得られる。芳香族ジヒドロキシ化合物としては、ビスフェノールA或いはビスフェノールAと他の2価のフェノールとの混合物が好ましい。
【0016】
末端停止剤あるいは分子量調節剤としては、例えば、フェノール、p−t−アルキルフェノール、2,4,6−トリブロモフェノール、長鎖アルキルフェノール、脂肪族カルボン酸、ヒドロキシ安息香酸、脂肪族カルボン酸クロライド等が挙げられる。芳香族ポリカーボネートオリゴマーの具体例としては、好ましくは、p−t−ブチルフェノールで末端停止されたビスフェノールAポリカーボネートオリゴマー、p−t−ブチルフェノールで末端停止されたテトラブロムビスフェノールAとビスフェノールAからのコポリカーボネートオリゴマー等が挙げられるが、必ずしも芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と同じ原料や反応方法で製造されたオリゴマーである必要はない。
【0017】
芳香族ポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した値で、好ましくは1,500〜9,500であり、より好ましくは2,000〜9,000であり、最も好ましくは2,500〜8,500である。
ポリカーボネートオリゴマーの含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)中の0〜25重量%、好ましくは3〜20重量%である。上記範囲でポリカーボネートオリゴマーを含有する芳香族ポリカーボネート樹脂を用いると、本発明樹脂組成物から製造された成形品表面への塗料や印刷インキ等の密着性を改善することが出来る。芳香族ポリカーボネートオリゴマーの含有量が25重量%を越えると得られる成形品の耐衝撃性の低下が著しくなり好ましくない。
【0018】
本発明において使用される板状無機充填材(B)は、マイカ、ガラスフレーク、板状炭酸カルシウム、黒鉛等から選ばれる少なくとも1種であり、好ましくはマイカ、ガラスフレークであり、特にマイカが好適である。板状無機充填材(B)は、L/D>10、好ましくはL/D>15、さらに好ましくはL/D>20である。なお、ここに「L」は粒子の平均直径、「D」は厚さを意味する。更に板状無機充填材(B)は、成形品が良好な外観を得るために平均粒子径が80μm未満であることが必要で、好ましくは平均粒子径20μm以上、80μm未満である。平均粒子径が20μmより小さいと嵩密度が小さくなり過ぎるため押出機へのフィード性が悪くなり工業的規模での生産上好ましくない場合があり、一方、平均粒子径が80μmより大きいと成形品の外観が悪くなるため好ましくない。本発明において好ましく使用される板状無機充填材の平均粒子径としては20〜70μmがより好ましく、更に好ましくは40〜70μmである。
【0019】
板状無機充填材(B)は、表面をエポキシシラン、アミノシラン等の各種シランカップリング剤で処理したものでも良い。
本発明樹脂組成物中の板状無機充填材(B)の含有量は、本発明樹脂組成物を構成する(A)、(B),(C)及び(D)の合計を基準として5〜35重量%の範囲であり、好ましくは10〜35重量%であり、より好ましくは10〜30重量%である。板状無機充填材(B)の量が5%未満では、線膨張係数が目標とする6×10−5cm/cm・℃より大きくなり、35重量%を超えると面衝撃性が小さくなり好ましくない。
【0020】
本発明に使用される芳香族ポリエステル樹脂(C)は、芳香族ジカルボン酸またはそのジアルキルエステルと脂肪族グリコール類との重縮合反応によって得られる重合体或いは共重合体である。
原料の芳香族ジカルボン酸またはそのジアルキルエステルとしてはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等或いはこれらのジメチルエステル等が挙げられる。好ましくはテレフタル酸またはそのジメチルエステルである。また、テレフタル酸またはそのジアルキルエステルと共に少量の他の二塩基酸または多塩基酸またはそのアルキルエステル、例えばテレフタル酸またはそのジアルキルエステルに対して20重量%以下のフタル酸、イソフタル酸、ナフタリンジカルボン酸、ジフェニルカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメシン酸、トリメリット酸またはそれらのアルキルエステル等を混合して用いてもよい。
【0021】
脂肪族グリコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等が挙げられるが、これら脂肪族グリコール類と共に少量の他のジオール類または多価アルコール類、例えば脂肪族グリコール類に対して20重量%以下のシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール、ビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、グリセリンあるいはペンタエリスリトール等を混合して用いても良い。
芳香族ポリエステル(C)の代表的なものとしてポリアルキレンテレフタレートまたはこれを主体とする共重合体であり、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0022】
芳香族ポリエステル樹脂(C)は、フェノールとテトラクロロエタンの1:1(重量比)の溶媒中、30℃の温度で測定した固有粘度が0.5〜1.5であることが好ましい。芳香族ポリエステル樹脂(C)がポリブチレンテレフタレートである場合、その固有粘度は好ましくは0.6〜1.2である。芳香族ポリエステル樹脂(C)が、アルキレンテレフタレートのコポリエステルである場合、その固有粘度は好ましくは0.5〜1.5である。芳香族ポリエステル樹脂(C)がポリブチレンテレフタレート/イソフタレートである場合、その固有粘度は好ましくは0.8〜1.3である。芳香族ポリエステル樹脂(C)がポリエチレンテレフタレートである場合、その固有粘度は好ましくは0.5〜0.9である。
【0023】
芳香族ポリエステル樹脂(C)の含有量は、本発明樹脂組成物を構成する(A)、(B),(C)及び(D)の合計を基準として1〜46重量%の範囲であり、好ましくは5〜40重量%である。芳香族ポリエステル樹脂(C)の量が1重量%未満では溶融熱安定性の改良効果が少なく、46重量%より多いと機械的特性、寸法特性等が損なわれたり、面衝撃性の改良が不十分になる畏れがある。
【0024】
本発明に使用される有機リン酸エステル(D)は下記式(1)で表される。
【0025】
【化3】
【0026】
(式中Rは直鎖または分岐の炭素数10〜30のアルキル基であり、nは1または2である。)。
式(1)において、Rで示されるアルキル基の炭素数が10より少ないとリン酸エステルは沸点が低くなり、樹脂組成物を高温下で溶融混練する際に蒸発、飛散しやすくなる。Rは炭素数12以上の高級アルキル基であることが好ましい。特に好ましいものとしては、Rがオクタデシル基(C18H37)で、nが1または2の有機リン酸エステル或いはその混合物が挙げられる。
有機リン酸エステル(D)の含有量は、本発明樹脂組成物を構成する(A)、(B),(C)及び(D)の合計を基準として0.005〜1重量%の範囲であり、好ましくは0.01〜0.5重量%である。有機リン酸エステルの量が0.005重量%未満では溶融熱安定性の改良効果が不十分であり、1重量%を超えると、有機リン酸エステルの熱分解により返って溶融熱安定性が低下する。溶融熱安定性の低下は、アルカリ性の無機充填材による樹脂の加水分解による組成物の劣化にも起因する。
【0027】
本発明の樹脂組成物は上記(A)、(B)、(C)及び(D)成分を含有することが必須であるが、更に、熱可塑性エラストマー(E)を含有することが好ましい。
本発明に使用される熱可塑性エラストマー(E)は一般にポリカーボネート樹脂組成物に配合されて、その機械的特性を改良し得るものであれば特に限定されるものではない。例えばエラスティック成分をその分子内に含むブロック共重合体またはグラフト共重合体からなるポリオレフィン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。ここでいうエラスティック成分としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の共役二重結合を有するモノマーの重合体、またはこれらの水添物が挙げられる。本発明の熱可塑性エラストマーは、好ましくは、ブタジエン、イソプレン、またはこれらの混合物等の共役ジエン化合物からなるソフトセグメントと、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、ビニルトルエン等の芳香族モノビニル化合物等からなるハードセグメントを有するエラストマーを包含する。かかる熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン共重合体及びアクリロニトリル−ブタジエン共重合体等を挙げることができる。さらに具体的には、SEPS(SIS)樹脂、SEBS樹脂、MBS樹脂等を例示することができる。
【0028】
エラストマーは、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合のいずれの重合法で製造されたものでもよく、また重合の方法として一段共重合或いは、多段共重合を採用されたものでも差し支えない。
本発明組成物中の熱可塑性エラストマー(E)の含有量は、(A),(B),(C),(D)及び(E)の合計を基準として0〜20重量%、好ましくは3〜20重量%、さらに好ましくは3〜10重量%である。熱可塑性エラストマーの含有量が20重量%より多い場合は、線膨張係数が大きくなり過ぎ、また耐熱性の低下が大きくなるため本発明の目的を達し得なくなるので好ましくない。
【0029】
本発明組成物の製造法は特に限定されるものではなく、公知の方法により、上記(A)〜(E)成分の所定量を、任意の順序で配合し、タンブラー、ブレンダー、バンバリーミキサー、押出機等により混合すれば良く、押出機により溶融混練することが最も好ましい。
さらに、本発明の組成物には、上記(A)〜(E)以外にも、本発明の目的を損なわない範囲内で周知の各種の添加剤を配合することが出来る。添加剤としては、例えばパラフィンワックス、ポリエチレンワックス、脂肪酸エステル等の滑剤、ガラスビーズ、ガラス繊維、シリカ、炭酸カルシウム等の充填剤、核剤、ヒンダードフェノールや亜リン酸エステル等の酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、発泡剤、帯電防止剤、顔料、染料等が挙げられる。また、他の熱可塑性樹脂、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、ABS樹脂等を混合して使用することも出来る。
【0030】
本発明の樹脂組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形等の熱可塑性樹脂の成形方法として当該業者に周知の各種方法で成形加工することができる。本発明組成物から製造された成形物は、優れた機械的性質、良好な溶融熱安定性と製品外観を有し、且つ、線膨張係数並びに異方性が低減されているので、この様な性質を要求される各種産業分野の製品の材料として好適であり、特に自動車外装部品の材料として好適である。
【0031】
【実施例】
以下に、本発明を実施例及び比較例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、これらの例に何ら制限されるものではない。
なお、実施例及び比較例では、以下の材料を使用した。
ポリカーボネート樹脂:ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂、三菱化学(株)製、商品名「ノバレックス7022A」、粘度平均分子量22000。
ポリカーボネートオリゴマー:ビスフェノールA型ポリカーボネートオリゴマー、三菱ガス化学(株)製、粘度平均分子量5000。
【0032】
マイカ(B1):山口雲母(株)製、商品名「A−61」、マイクロトラック法による平均粒子径51μm。
マイカ(B2):山口雲母(株)製、商品名「A−21」、マイクロトラック法による平均粒子径23μm。
マイカ(B3):山口雲母(株)製、商品名「B−92」、網篩法による平均粒子径98μm。
【0033】
芳香族ポリエステル樹脂(PBT);ポリブチレンテレフタレート樹脂、三菱化学(株)製、商品名「ノバデュラン5008」、固有粘度0.85。
芳香族ポリエステル樹脂(PET);ポリエチレンテレフタレート樹脂、三菱化学(株)製、商品名「ノバペックスGS385」、固有粘度0.65。
【0034】
有機リン酸エステル:式[O=P(OC18H37)n(OH)3−n]、(n=1及び2の混合物)で表される化合物、旭電化工業(株)製、商品名「アデカスタブ AX−71」。
エラストマー(MBS):MBS樹脂、呉羽化学工業(株)製、商品名「EXL2603」。
【0035】
タルク:林化成(株)製、商品名「PKC」、平均粒子径11μm。
ワラストナイト:NYCO(株)製、商品名「NYGLOS4」、平均粒子径4μm、平均繊維長32μm。
【0036】
実施例1〜7び比較例1〜6
各成分を表−1、表−2に示す組成にて混合した後、スクリュー径30mmの2軸押出機(日本製鋼所(株)製、TEX−30C)を用いて樹脂温度270〜280℃で溶融混練してペレット化した。得られたペレットを120℃の雰囲気で5時間乾燥後、型締力75トンの射出成形機(東芝機械(株)製:商品名IS75PNII)を用いて、シリンダー温度260〜270℃、金型温度80℃、射出時間15秒、冷却時間15秒にて、下記に示す物性値測定に必要な各種試験片を射出成形した。
【0037】
得られた試験片を用い、線膨張係数、異方性、耐面衝撃エネルギーを測定し、試験片の外観を目視により判定した。また、組成物の溶融熱安定性を判定するために、同じ射出成形機を用いて、シリンダー温度を280℃、滞留時間を180秒として同じ試験片を成形し、得られた成形品の外観を目視により観察した。外観の判定基準は、表面が美麗であるものを「良好」、表面に若干の凹凸があるものを「表面粗」、表面にシルバーが見えるものを「シルバー有」、表面が黄色に変色したものを「黄変有」で示した。結果を表−1、表−2に示した。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
実施例及び比較例における各種物性値は下記の方法で測定した。なお、測定温度は23℃を標準として行なった。(1)線膨張係数:ASTM D−696に準じて測定した。(2)異方性:MD並びにTD方向の線膨張係数を用い、TD/MDの値で表した。
【0043】
(3)耐面衝撃エネルギー:ASTM D 3029−84を満足するよう設計された以下の装置を用い、実施例で製造した100×100×3(mm)シートを使用して衝撃試験を行い、ロードセルにかかる衝撃エネルギーを測定した。
・試験機 …FRACTOVIS(CEAST社)
・試験速度…4.0m/sec(1mの高さからの落下を想定。)
【0044】
表−1及び表−2から明らかなように、本発明に規定する特定の成分を特定割合で含有する実施例1〜7の樹脂組成物の成形品では、線膨張係数、異方性が小さく、耐面衝撃エネルギーが大きく、優れた外観と溶融熱安定性を有する。一方、有機リン酸エステルを含有しない比較例1及び逆にその量が多い比較例6では溶融熱安定性が低下している。又無機充填材としてタルクを用いた比較例2では、線膨張係数の低下が少なく、又同じくタルクを用いた比較例3では面衝撃エネルギーも低下している。繊維状の無機充填材であるワラストナイトを用いた比較例4では、異方性が大きく、線膨張係数の低下も不十分である。平均粒子径が80μmを超えるマイカを用いた比較例5では成形品の外観が不良である。
【0045】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物から得られる成形品は、優れた機械的強度、外観、良好な溶融熱安定性を有しながら、且つ線膨張係数並びに異方性が低減されている。
そのため工業的規模の生産において安定的に良好な外観および機械的強度を持ち、更には線膨張係数が小さく、低反り性に優れる成形品が製造できる熱可塑性樹脂組成物を得ることが可能となった。
この熱可塑性樹脂組成物は多くの用途に使用可能であるが、特に自動車部品、機械部品として好適である。
Claims (6)
- 板状無機充填材(B)が、平均粒子径80μm未満で、L/D>10であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 板状無機充填材(B)が、平均粒子径20μm以上、80μm未満のマイカであることを特徴とする請求項1または2記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 芳香族ポリエステル樹脂(C)が、ポリブチレンテレフタレート樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 熱可塑性エラストマー(E)を(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計を基準として0〜20重量%添加することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)が、0〜25重量%の芳香族ポリカーボネートオリゴマーを含有することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
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