JP2004330247A - ニッケル粉末、及び導電性ペースト、並びに積層セラミック電子部品 - Google Patents
ニッケル粉末、及び導電性ペースト、並びに積層セラミック電子部品 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】導電性ペースト中での良好な分散性と粘度安定性を得ることができるようにする。
【解決手段】ニッケル粉末中に、Ni(OH)2及びNiOを含有すると共に、表面の成分組成が、Ni:5〜20モル%、Ni(OH)2:25〜75モル%、NiO:15〜65モル%である。また、これら表面の成分組成はX線光電子分光分析法で計測する。
【選択図】 選択図なし
【解決手段】ニッケル粉末中に、Ni(OH)2及びNiOを含有すると共に、表面の成分組成が、Ni:5〜20モル%、Ni(OH)2:25〜75モル%、NiO:15〜65モル%である。また、これら表面の成分組成はX線光電子分光分析法で計測する。
【選択図】 選択図なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はニッケル粉末、及び導電性ペースト、並びに積層セラミック電子部品に関し、より詳しくは積層セラミック電子部品の内部電極用導電性材料として使用されるニッケル粉末、及び該ニッケル粉末を含有した導電性ペースト、並びに該導電性ペーストを使用して内部電極を形成した積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の小型・軽量化、高機能化に伴い、電子部品の軽薄短小化が要求されてきている。特に、電子部品の中でも積層セラミックコンデンサの分野では、小型・大容量化が急速に進んでおり、それに伴いセラミック誘電体層の薄層化・多層化が進行してきている。
【0003】
また、この種の積層セラミックコンデンサでは、従来より、内部電極用導電性材料としてパラジウムや銀、白金、金などの貴金属材料が使用されていたが、近年における生産コストの低廉化の要請等から、これら貴金属材料に代えて、ニッケル(Ni)に代表される比較的安価な卑金属材料の使用が増加してきている。
【0004】
ところで、ニッケル粉末の製造方法としては、物理的製法と化学的製法とが知られている。物理的製法の代表例としては、ニッケル塊を機械的に粉砕する方法があるが、このような物理的製法では、微細で粒径の揃った球形のニッケル粉末を得るのは困難である。
【0005】
すなわち、積層セラミックコンデンサの薄層化・多層化に伴い、内部電極用導電性材料には微細で分散性に優れていることが要求されるが、上述した物理的製法では、微細で粒径の揃った球形のニッケル粉末を得るのが困難であり、このため所望の微細で分散性に優れたニッケル粉末を得るのは困難である。
【0006】
そこで、内部電極用導電性材料に使用されるニッケル粉末は、従来より、一般に化学的製法で製造されている。
【0007】
ニッケル粉末の化学的製法には気相法と液相法とがある。そして、気相法によりニッケル粉末を製造する方法としては、例えば、塩化ニッケルを加熱蒸発させ、水素還元雰囲気下で還元析出させる気相水素還元法が知られている(特許文献1)。
【0008】
該気相水素還元法では、ハロゲン元素が不純物としてニッケル粉末中に残留するため、ニッケル粉末を洗浄する必要があり、例えば、溶媒にエチレンジアミン四酢酸、酒石酸等のキレート剤や、水、希酸、有機酸、アルコール等を使用して洗浄したり、撹拌洗浄や超音波洗浄により洗浄したりしている。
【0009】
一方、液相法によりニッケル粉末を製造する方法としては、ニッケル含有溶液に還元剤を添加し、100℃以下に加熱して固体ニッケル塩を還元し、ニッケル粉末を析出させる方法(特許文献2)や、水酸化ニッケルを還元し、ニッケル粉末を析出させる方法(特許文献3)が知られている。
【0010】
また、その他の液相法によるニッケル粉末の製造方法としては、ニッケル塩化合物と錯化剤とを含有したニッケル水溶液を、還元剤水溶液中に滴下することによって、ニッケルイオンを還元し、これによりニッケル粉末を得るようにした技術が提案されている(特許文献4)。
【0011】
特許文献4の方法では、特許文献2や特許文献3のように、難溶性ニッケル塩を経由せずにニッケルイオンを還元するため、単純なプロセスで短時間に大量のニッケル粉末を得ることが可能となる。
【0012】
【特許文献1】
特開平11−80817号公報
【特許文献2】
特開昭53−95165号公報
【特許文献3】
特開平5−51610号公報
【特許文献4】
特開平11−302709号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1のような気相水素還元法では、生産性が低く、高価な設備が必要となる。しかも製造された金属粉末の粒径は不揃いであり、異常成長した粒子が内在し易く、このため、積層セラミックコンデンサの内部電極に使用した場合は、耐電圧特性等の電気的特性を著しく劣化させるおそれがあるという問題点があった。
【0014】
また、特許文献1では、上述したように還元析出したニッケル粉末を洗浄する必要があるが、洗浄後のニッケル粉末は、粉末表面の成分組成が一定とはならずにバラツキが生じ、このためペースト化した場合に有機ビヒクルへの分散が均一とはならず、その結果、セラミックグリーンシートに導電性ペーストを印刷し、乾燥した場合、塗膜にはニッケル粉末の再凝集による塊状物の発生や、表面粗さが悪化し、耐電圧特性の劣化や静電容量の低下を招くおそれがあるという問題点があった。
【0015】
さらに、特許文献1では、上述したようにニッケル粉末が有機ビヒクル中に均一に分散しないため、導電性ペーストを放置した場合、固形分の沈降分離や粘度安定性に悪影響を及ぼし、導電性ペーストに選択的に添加される分散剤等の添加剤の構成が複雑化するという問題点があった。
【0016】
また、特許文献2や特許文献3のように難溶性ニッケル塩を還元する場合、還元反応に要する時間が長くなり、固体ニッケル塩特性、特に不可避不純物や塩基性塩の影響によって、析出するニッケル粉末の特性が大きく変化するという問題点があった。しかも、反応が不均一になることでニッケル粉末の粒径が不揃いになって凝集し易くなり、その結果、特許文献1と同様、塗膜塊状物の発生や、表面粗さが悪化し、耐電圧特性の劣化や静電容量の低下を招くという問題点があった。
【0017】
また、特許文献4は、上述したように単純なプロセスで短時間に大量のニッケル粉末を得ることができるものの、特許文献1と同様、ニッケル粉末を洗浄した場合、洗浄後のニッケル粉末は、粉末表面の組成にバラツキが生じ、このためペースト化した場合に有機ビヒクルへの分散性が均一とはならず、その結果、塗膜には粉末の再凝集による塊状物の発生や、表面粗さが悪化し、耐電圧特性の劣化や静電容量の低下を招くおそれがあるという問題点があった。
【0018】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであって、導電性ペースト中での良好な分散性と粘度安定性を得ることができるニッケル粉末、及び導電性ペースト、並びに積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ニッケル粉末に純Niの他、Ni(OH)2、及びNiOを含有させると共に、表面におけるNi、Ni(OH)2、及びNiOの組成が、モル%で、Ni:5〜20%、Ni(OH)2:25〜75%、NiO:15〜65%となるように制御することにより、導電性ペースト中での塗膜表面粗さを抑制することができ、かつ再凝集による塗膜塊状物の発生を極力回避することができ、これにより良好な分散性を有し、しかも経時的な粘度安定性を有するニッケル粉末を得ることができるという知見を得た。
【0020】
本発明はこのような知見に基づきなされたものであって、本発明に係るニッケル粉末は、Ni(OH)2及びNiOを含有すると共に、表面の成分組成が、モル%で、Ni:5〜20%、Ni(OH)2:25〜75%、NiO:15〜65%であることを特徴としている。
【0021】
また、ニッケル粉末表面の成分組成は、X線光電子分光分析法(X−ray Photoelectron Spectroscopy:以下、「XPS」という)により高精度に計測することができる。
【0022】
すなわち、本発明のニッケル粉末は、前記表面の成分組成が、X線光電子分光分析法で計測されたことを特徴としている。
【0023】
また、本発明に係る導電性ペーストは、少なくとも上記ニッケル粉末と有機ビヒクルと溶剤とを含有していることを特徴としている。
【0024】
上記導電性ペーストによれば、導電性ペーストには上記ニッケル粉末を含有しているので、塗膜表面粗さが抑制されると共に、ニッケル粉末の再凝集による塗膜塊状物の発生を極力回避することができ、分散性が良好で粘度の経時的変化が小さい粘度安定性に優れた導電性ペーストを得ることができる。
【0025】
また、本発明に係る積層セラミック電子部品は、内部電極がセラミック焼結体に埋設された積層セラミック電子部品において、前記内部電極が、上記導電性ペーストを使用して形成されていることを特徴としている。
【0026】
上記積層セラミック電子部品によれば、前記内部電極が、ニッケル粉末の分散性が良好で粘度安定性にも優れた導電性ペーストを使用して形成されているので、耐電圧特性の劣化や静電容量の容量低下を極力回避することができる積層セラミック電子部品を高効率で得ることができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を詳説する。
【0028】
本発明に係るニッケル粉末は、粉末表面の成分組成が、モル%で、Ni:5〜20%、Ni(OH)2:25〜75%、NiO:15〜65%とされている。
【0029】
ニッケル粉末の表面組成として、Ni(OH)2やNiOが含まれると、ニッケル粉末の表面は極性を有するようになる。
【0030】
一方、導電性ペーストは、通常、ニッケル粉末と、セルロース系樹脂等の有機ビヒクルと、テルピネオール等の溶剤等を混合し、3本ロールミル等で分散させることにより作製される。したがって、導電性ペースト中に前記表面極性を有するニッケル粉末を含有させると、ニッケル粉末の表面極性の作用により、有機ビヒクルや溶剤の吸脱着を任意に制御することができ、これにより導電性ペーストに含有されたニッケル粉末の分散性を向上させることが可能となり、かつ粘度の経時変化を抑制して粘度安定性を確保することができる。
【0031】
また、導電性ペーストには上述した有機ビヒクルや溶剤の他、必要に応じて分散剤が適宜添加される。そして、分散剤を添加することにより、導電性ペーストにおける粘度安定性の確保、ニッケル粉末の分散性確保、積層セラミック電子部品の製造工程中の焼成時における熱挙動(ニッケル粉末の酸化、焼結抑制)に起因した構造欠陥の低減化を図ることができる。そして、分散剤は一般に極性を有しており、したがってニッケル粉末の表面極性を制御することにより、これら分散剤の上記効果をも最大限に引き出すことが可能となる。
【0032】
しかしながら、上記Ni、Ni(OH)2及びNiOのニッケル粉末表面における含有モル量が上記範囲外になると、ニッケル粉末の表面と有機ビヒクルや溶剤、分散剤との吸脱着が過剰に行われるため、導電性ペーストにおけるニッケル粉末の分散性や粘度安定性が悪化する。そしてその結果、積層セラミックコンデンサの作製時に、導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷し乾燥した場合、塗膜上にはニッケル粉末の再凝集による塊状物の発生や、塗膜表面粗さが悪化し、耐電圧特性や静電容量等の電気的特性を著しく劣化させる。しかも、ニッケル粉末の分散性が悪いため、導電性ペーストを放置した場合、ニッケル粉末の沈降分離や導電性ペーストの粘度安定性に悪影響を及ぼし、このため導電性ペーストに選択的に適宜添加される分散剤等の添加剤の構成が複雑となり、また添加剤に要求される所望の効果を得るのが困難になるおそれがある。
【0033】
そこで、本実施の形態では、ニッケル粉末の表面におけるNi/Ni(OH)2/NiOの含有モル量が5〜20モル%/25〜75モル%/15〜65モル%、好ましくは、10〜15モル%/50〜70モル%/20〜40モル%/、さらに好ましくは10〜15モル%/60〜70モル%/20〜30モル%/となるように制御されている。
【0034】
尚、ニッケル粉末の表面における成分組成は、後述するようにニッケル粉末に減圧乾燥処理を施すと共に、該減圧乾燥処理時の乾燥条件を調整することにより容易に制御することができる。
【0035】
また、このニッケル粉末の成分組成は、XPS法により高精度に計測することができる。
【0036】
すなわち、XPS法は、被測定試料であるニッケル粉末の表面における組成、化学状態を分析する電子分光法の一種であり、ニッケル粉末の表面にX線を照射した時に光電効果によって原子から放出される光電子のエネルギ分布、具体的にはX線によって励起される光電子の運動エネルギを測定することにより、X線エネルギと前記運動エネルギとの差、すなわち束縛エネルギを求め、これにより元素の同定と化学状態を分析することができる。
【0037】
尚、ニッケル粉末の平均粒径は、0.10〜1.50μmであるのが好ましい。すなわち、近年の電子機器の小型・軽量化、高機能化に伴い、電子部品の軽薄短小化が進行しており、特にチップ部品である積層セラミックコンデンサは小型かつ大容量化が急速に進んでおり、薄層化・多層化が進んでいる。したがって、積層セラミックコンデンサの内部電極としては平均粒径が微細であることが要求され、平均粒径が1.50μmを超えるような大きな粒径のニッケル粉末は、今日の内部電極用導電性材料としては適当でない。
【0038】
そこで、本実施の形態では、ニッケル粉末の平均粒径を、0.10〜1.50μm、好ましくは0.20〜0.60μmとしている。
【0039】
次に、ニッケル粉末の製造方法について説明する。
【0040】
まず、例えば、液相還元法により、ニッケル塩水溶液を還元剤水溶液中に滴下してニッケルイオンを還元し、Ni(OH)2やNiOを含有したニッケル粉末を作製する。
【0041】
ニッケル塩水溶液は、例えば、ニッケル塩に錯化剤を添加して作製される。このようにニッケル塩水溶液中に錯化剤を含有させることにより、Ni(OH)2等の難溶性ニッケル塩の析出が制御されると共に、還元反応が促進され、生産性向上を図ることができる。
【0042】
ここで、ニッケル塩としては、水に溶解性を有するものであれば、特に限定されることはなく、例えば塩化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル等から選択された1種又はこれらの2種以上を使用することができる。
【0043】
また、錯化剤としては、酢酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸等のオキシカルボン酸等の中から選択された1種又はこれらの2種以上を使用することができる。
【0044】
また、還元剤水溶液は、アルカリ性を有するようにpH調整される。ここで、還元剤としては、ヒドラジンやヒドラジン化合物、次亜リン酸アルカリ、水酸化ホウ素アルカリの中から選択された1種又はこれらの2種以上を使用することができる。
【0045】
また、pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等のアルカリ溶液を使用することができる。
【0046】
尚、必要に応じ、前記還元剤水溶液に界面活性剤、分散剤、保護コロイド等を適宜添加するのも好ましい。
【0047】
次に、Ni/Ni(OH)2/NiOが5〜20モル%/25〜75モル%/15〜65モル%となるように真空度、乾燥温度、乾燥時間を設定してニッケル粉末に減圧乾燥処理を施し、これにより所望のニッケル粉末が製造される。
【0048】
そして、このようにして得られたニッケル粉末と、エチルセルロース樹脂等の有機ビヒクルやテルピネオール等の溶剤、及び必要に応じて分散剤等の添加剤を混練してペースト化し、これにより導電性ペーストが作製される。
【0049】
このように本導電性ペーストは、表面の成分組成が、Ni/Ni(OH)2/NiOが5〜20モル%/25〜75モル%/15〜65モル%のニッケル粉末を含有しているので、ニッケル粉末の分散性が良好で、粘度安定性に優れた導電性ペーストを得ることができる。
【0050】
次に、上記導電性ペーストを使用して製造された積層セラミック電子部品としての積層セラミックコンデンサについて詳説する。
【0051】
図1は積層セラミックコンデンサの一実施の形態を模式的に示した断面図である。
【0052】
該積層セラミックコンデンサは、セラミック焼結体1に内部電極2(2a〜2f)が埋設されると共に、該セラミック焼結体の両端部には外部電極3a、3bが形成され、さらに該外部電極3a、3bの表面には第1のめっき皮膜4a、4b及び第2のめっき皮膜5a、5bが形成されている。
【0053】
具体的には、各内部電極2a〜2fは積層方向に並設されると共に、内部電極2a、2c、2eは外部電極3aと電気的に接続され、内部電極2b、2d、2fは外部電極3bと電気的に接続されている。そして、内部電極2a、2c、2eと内部電極2b、2d、2fとの対向面間で静電容量を形成している。
【0054】
上記積層セラミックコンデンサは以下のようにして製造される。
【0055】
すなわち、まず、チタン酸バリウム等の誘電体材料を主成分とするセラミックグリーンシートを用意し、次いで、上記導電性ペーストを使用し、セラミックグリーンシート上にスクリーン印刷を施して所定形状の導電パターンを形成する。
【0056】
そしてこの後、導電パターンが形成されたセラミックグリーンシートを所定方向に複数枚積層し、導電パターンの形成されていないセラミックグリーンシートで挟持・圧着し、所定寸法に切断してセラミック積層体を作製する。しかる後、還元性雰囲気下、脱バインダ処理を含む焼成処理を所定時間行い、これにより内部電極2が埋設されたセラミック焼結体1を作製する。
【0057】
次いで、セラミック焼結体1の両端面に導電性ペーストを塗布し、焼付処理を行い、外部電極3a、3bを形成する。
【0058】
そして、最後に、電解めっきを施して外部電極3a、3bの表面にNi、Cu、Ni−Cu合金等からなる第1のめっき皮膜4a、4bを形成し、さらに該第1のめっき皮膜4a、4bの表面にはんだやスズ等からなる第2のめっき皮膜5a、5bを形成し、これにより積層セラミックコンデンサが形成される。
【0059】
このように本実施の形態では、分散性が良好で粘度安定性に優れた導電性ペーストを使用して内部電極を形成しているので、耐電圧特性に優れ静電容量の低下等を招くことのない積層セラミックコンデンサを高効率で得ることができる。
【0060】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上記実施の形態ではニッケル塩水溶液をアルカリ性還元剤溶液に滴下することによりニッケル粉末を得ているが、他の作製方法で得るようにしてもよい。
【0061】
また、ニッケル粉末中にCo、Mg、Si等の不純物を不可避的に含む場合にも適用することができる。
【0062】
また、上記実施の形態では、積層セラミックコンデンサについて説明したが、その他の積層セラミック電子部品、特にコンデンサ部を有する複合セラミック電子部品に好適する。
【0063】
【実施例】
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
【0064】
〔第1の実施例〕
硫酸ニッケル6水和物1モルに対し、錯化剤として0.35モルのクエン酸三ナトリウム2水和物を純水中で溶解させ、所定温度に加熱処理してニッケル塩水溶液を作製した。
【0065】
また、硫酸ニッケル6水和物1モルに対し、還元剤として6モルのヒドラジン水和物とpH調整剤として3.5モルの水酸化ナトリウムとを純水中で溶解させ、所定温度に加熱処理し、還元剤溶液を作製した。
【0066】
次いで、ニッケル塩水溶液を還元剤溶液に所定時間滴下し、滴下完了後に所定時間放置し、ニッケル粉末の沈殿を得た。
【0067】
次に、該ニッケル粉末をビフネルロートで固液分離して回収し、濾液導電率が10μS/cm以下になるまで純水で洗浄し、さらにアセトンで洗浄した。
【0068】
次いで、振動式の減圧乾燥機を使用し、表1の実施例1〜7で示す乾燥条件で前記ニッケル粉末に乾燥処理を施し、その後、該乾燥処理されたニッケル粉末に対し、気流旋回方式のジェットミルを使用して解砕処理を施し、実施例1〜7のニッケル粉末を作製した。
【0069】
また、上述と同様、振動式の減圧乾燥機を使用し、表1の比較例1〜5で示す乾燥条件でアセトン洗浄されたニッケル粉末に乾燥処理を施し、その後、該乾燥処理されたニッケル粉末に対し、気流旋回方式のジェットミルを使用して解砕処理し、比較例1〜5のニッケル粉末を作製した。
【0070】
また、アセトン洗浄されたニッケル粉末に対し、100kPa(常圧)下、300分間、100℃の熱風を負荷して乾燥処理を行ない、その後、気流旋回方式のジェットミルを使用して解砕処理し、比較例6〜8のニッケル粉末を作製した。
【0071】
次に、上記各実施例及び比較例について、その平均粒径、乾燥状態、及び表面組成を求めた。
【0072】
平均粒径は、電解放射型走査電子顕微鏡を使用し、加速電圧5kV、倍率10,000倍で画像を撮影し、得られた画像を画像解析装置(旭エンジニアリング社製IP−1000)で解析し、200箇所の円形粒子径を求め、その平均値を算出し、平均粒径とした。
【0073】
また、ニッケル粉末の乾燥状態は、カールフィッシャー分析法で水分量を測定することにより確認した。すなわち、水分気化装置を具備したカールフィシャー水分計を使用し、N2雰囲気中で、120℃に加熱したときの水分量を測定し、乾燥状態を確認した。
【0074】
また、ニッケル粉末の表面における成分組成は、XPS法により測定した。すなわち、ULVAC−PHI社製ESCA5400MCを使用し、各実施例及び比較例のNiピークが検出される束縛エネルギ範囲(850〜890eV)でナロースキャンスペクトルを測定し、Ni2pスペクトルのピーク分離を行い、Ni、Ni(OH)2、NiOの各結合状態のモル%を求めた。
【0075】
次に、各実施例及び比較例のニッケル粉末にエチルセルロースとテルピネオールとを加えて3本ロールミルで分散させ、これにより導電性ペーストを作製し、該導電性ペーストの塗膜表面粗さと塗膜塊状物数を求め、分散性を評価した。
【0076】
ここで、塗膜表面粗さは以下のように求めた。すなわち、まず、得られた導電性ペーストを使用してガラス基板上にドクターブレード法により膜厚50μmの塗膜を形成し、150℃で熱風乾燥を行い、乾燥塗膜を作製した。次いで、接触式表面粗さ測定機(東京精密社製サーフコム)を使用し、測定長5mm、走査速度0.3mm/secで十点平均粗さRzを5回測定し、その平均値を算出し、塗膜表面粗さとした。
【0077】
また、塗膜塊状物数は以下のようにして求めた。すなわち、ガラス基板上で塗膜面積が528mm2となるように導電性ペーストを使用してスクリーン印刷を施し、次いで60℃で熱風乾燥を行って乾燥塗膜を得た。そして、この乾燥塗膜を光学顕微鏡(倍率50倍)で斜め側方から光源を照射して観察し、20μm以上の塗膜塊状物の個数を計測し、塗膜塊状物数とした。
【0078】
さらに、各実施例及び比較例の導電性ペーストについて経時的な粘度変化を求め、粘度安定性を評価した。すなわち、E型粘度計を使用し、回転速度0.042s−1(回転数2.5rpm)、測定温度25℃で導電性ペーストの初期粘度及び30日経過後の粘度をそれぞれ測定し、後者から前者を減算して粘度の経時変化を算出し、これにより粘度安定性を評価した。
【0079】
表1は各実施例及び比較例の乾燥条件、及び各測定結果等を示している。
【0080】
【表1】
この表1から明らかなように、実施例及び比較例共、平均粒径は0.50〜0.52μmであり、内部電極用導電性材料として好ましい範囲内(0.1〜1.5μm)であることが確認された。
【0081】
また、水分量も0.06〜0.09wt%であり、乾燥状態も良好であることが確認された。
【0082】
そして、比較例1〜4は、ニッケル粉末に減圧乾燥処理を施してはいるものの、乾燥条件が不適当であるため、ニッケル粉末の表面を形成するNi、Ni(OH)2及びNiOのうちの少なくとも1つ以上が本発明の範囲外となり、その結果、比較例1及び3こそ塗膜塊状物数は5以下となって良好であるが、比較例2及び4の塗膜塊状物数はそれぞれ10個、8個と多く、また塗膜表面粗さについてはいずれも1.48〜1.75μmと大きく、分散性に劣ることが分った。
【0083】
また、比較例1〜4は、粘度の経時変化の絶対値が1.0Pa・sを超えており、粘度安定性に欠けることが分った。
【0084】
また、比較例5は、粘度の経時変化は+0.9Pa・sと小さく、粘度安定性は良好であるが、Ni(OH)2の含有モル量が78モル%であり、75モル%を超えているため、塗膜平均粗さが1.55μmと大きく、分散性に劣ることが分った。
【0085】
さらに、比較例6〜8は、減圧乾燥を行わずに常圧で熱風乾燥処理を行なっているため、平均粒径の差異により粉末表面におけるNi、Ni(OH)2、及びNiOの含有モル量は異なるものの、いずれにしてもこれらNi、Ni(OH)2及びNiOの全てを本発明範囲内とすることはできず、その結果、塗膜表面粗さが1.52〜1.60μmと大きく、また塗膜塊状物数も10〜14個と多く、さらに粘度の経時変化の絶対値も1.5Pa・sを超えており、分散性及び粘度安定性に劣ることが分った。
【0086】
これに対し実施例1〜7は、ニッケル粉末の表面におけるNi、Ni(OH)2及びNiOのいずれの含有モル量も本発明の範囲内となるように乾燥条件を設定して減圧乾燥しているので、塗膜表面粗さは1.29〜1.47μm、塗膜塊状物数は5個以下であり、粘度の経時変化の絶対値も1.0Pa・s以下と小さく、分散性に優れ粘度安定性に優れた導電性ペーストを得ることができた。
【0087】
〔第2の実施例〕
前記第1の実施例の実施例4及び比較例6の乾燥条件で得られたニッケル粉末を使用し、樹脂成分としてエチルセルロース、溶剤としてジヒドロテルピネオールアセテート、分散剤としてオイゲノール、添加剤として硫酸エステル系界面活性剤を前記ニッケル粉末に添加し、3本ロールミルで分散させ、導電性ペーストを作製した。
【0088】
そして、第1の実施例と同様の方法・手順で導電性ペーストの塗膜表面粗さ及び塗膜塊状物数を求めた。
【0089】
次に、この導電性ペーストをチタン酸バリウムを主成分とする厚みが20μmのセラミックグリーンシート上にスクリーン印刷して塗布膜を形成し、その後乾燥処理を行った。次いで、塗布膜の形成されたセラミックグリーンシートを78層積層すると共に、これら積層されたセラミックグリーンシートを塗布膜の形成されていないセラミックグリーンシートで挟持して圧着し、所定サイズに切断しセラミック積層体を得た。そしてこの後、還元雰囲気下、温度350〜500℃で脱バインダ処理を行ない、さらに、酸素分圧が10−9〜10−12MPaに制御されたH2−N2−H2Oガスからなる還元性雰囲気下、温度1000〜1200℃で約2時間焼成し、これにより内部電極が埋設されたセラミック焼結体を作製した。
【0090】
次いで、このセラミック焼結体の両端面に外部電極形成用導電性ペーストを塗布し、焼付処理を行い、実施例11及び比較例11の積層セラミックコンデンサを作製した。
【0091】
次に、実施例11及び比較例11について、耐電圧不良率、及び静電容量低下品の発生率を求めた。
【0092】
ここで、耐電圧不良率は、実施例11及び比較例11の各10万個について、150Vの直流電圧を印加したときの短絡不良の有無を測定し、算出した。
【0093】
また、静電容量低下品の発生率は、実施例11及び比較例11の各10万個について、各々静電容量を測定し、設計容量の90%に満たない試料を容量不足と判断し、その発生率を算出した。
【0094】
表2は、これらの測定結果を塗膜表面粗さ及び塗膜塊状物数と共に示している。
【0095】
【表2】
この表2から明らかなように比較例11は、塗膜表面粗さが1.64μmと大きく、また15個の塗膜塊状物が認められ、したがってニッケル粉末の分散性に劣り、このため耐電圧不良率が0.370%と高く、また容量低下品の発生率も0.27%と高いことが分った。
【0096】
これに対して実施例11は表面粗さが1.25μmと小さく、塗膜塊状物の存在も認めらず、ニッケル粉末は良好な分散性を有しており、その結果耐電圧不良率が0.033%、容量低下品の発生率も0.01%と大幅に改善されており、製品歩留まりの向上を図ることができ、積層セラミックコンデンサを高効率で得ることができる。
【0097】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明に係るニッケル粉末は、Ni(OH)2及びNiOを含有すると共に、表面の成分組成が、モル%でNi:5〜20%、Ni(OH)2:25〜75%、NiO:15〜65%であるので、粉末表面の極性を制御することができ、導電性ペーストにおけるニッケル粉末の分散性を向上させることができると共に、導電性ペーストの粘度安定性を確保することが可能となる。
【0098】
また、前記表面の各成分組成は、X線光電子分光分析法で計測されることにより、高精度に表面の成分組成を計測することができる。
【0099】
また、本発明に係る導電性ペーストは、上記ニッケル粉末を主成分とするので、ニッケル粉末の分散性が良好で、しかも粘度安定性に優れた導電性ペーストを得ることができる。
【0100】
また、本発明に係る積層セラミック電子部品は、内部電極がセラミック焼結体に埋設された積層セラミック電子部品において、前記内部電極が、ニッケル粉末の分散性に優れ、粘度安定性が良好な導電性ペーストを使用して形成されているので、乾燥塗膜における平滑性を確保することが可能となり、電気的特性が良好な積層セラミック電子部品のを高効率で得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るニッケル粉末を内部電極用導電性材料に使用して製造された積層セラミック電子部品としての積層セラミックコンデンサの一実施の形態を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 セラミック焼結体
2 内部電極
【発明の属する技術分野】
本発明はニッケル粉末、及び導電性ペースト、並びに積層セラミック電子部品に関し、より詳しくは積層セラミック電子部品の内部電極用導電性材料として使用されるニッケル粉末、及び該ニッケル粉末を含有した導電性ペースト、並びに該導電性ペーストを使用して内部電極を形成した積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の小型・軽量化、高機能化に伴い、電子部品の軽薄短小化が要求されてきている。特に、電子部品の中でも積層セラミックコンデンサの分野では、小型・大容量化が急速に進んでおり、それに伴いセラミック誘電体層の薄層化・多層化が進行してきている。
【0003】
また、この種の積層セラミックコンデンサでは、従来より、内部電極用導電性材料としてパラジウムや銀、白金、金などの貴金属材料が使用されていたが、近年における生産コストの低廉化の要請等から、これら貴金属材料に代えて、ニッケル(Ni)に代表される比較的安価な卑金属材料の使用が増加してきている。
【0004】
ところで、ニッケル粉末の製造方法としては、物理的製法と化学的製法とが知られている。物理的製法の代表例としては、ニッケル塊を機械的に粉砕する方法があるが、このような物理的製法では、微細で粒径の揃った球形のニッケル粉末を得るのは困難である。
【0005】
すなわち、積層セラミックコンデンサの薄層化・多層化に伴い、内部電極用導電性材料には微細で分散性に優れていることが要求されるが、上述した物理的製法では、微細で粒径の揃った球形のニッケル粉末を得るのが困難であり、このため所望の微細で分散性に優れたニッケル粉末を得るのは困難である。
【0006】
そこで、内部電極用導電性材料に使用されるニッケル粉末は、従来より、一般に化学的製法で製造されている。
【0007】
ニッケル粉末の化学的製法には気相法と液相法とがある。そして、気相法によりニッケル粉末を製造する方法としては、例えば、塩化ニッケルを加熱蒸発させ、水素還元雰囲気下で還元析出させる気相水素還元法が知られている(特許文献1)。
【0008】
該気相水素還元法では、ハロゲン元素が不純物としてニッケル粉末中に残留するため、ニッケル粉末を洗浄する必要があり、例えば、溶媒にエチレンジアミン四酢酸、酒石酸等のキレート剤や、水、希酸、有機酸、アルコール等を使用して洗浄したり、撹拌洗浄や超音波洗浄により洗浄したりしている。
【0009】
一方、液相法によりニッケル粉末を製造する方法としては、ニッケル含有溶液に還元剤を添加し、100℃以下に加熱して固体ニッケル塩を還元し、ニッケル粉末を析出させる方法(特許文献2)や、水酸化ニッケルを還元し、ニッケル粉末を析出させる方法(特許文献3)が知られている。
【0010】
また、その他の液相法によるニッケル粉末の製造方法としては、ニッケル塩化合物と錯化剤とを含有したニッケル水溶液を、還元剤水溶液中に滴下することによって、ニッケルイオンを還元し、これによりニッケル粉末を得るようにした技術が提案されている(特許文献4)。
【0011】
特許文献4の方法では、特許文献2や特許文献3のように、難溶性ニッケル塩を経由せずにニッケルイオンを還元するため、単純なプロセスで短時間に大量のニッケル粉末を得ることが可能となる。
【0012】
【特許文献1】
特開平11−80817号公報
【特許文献2】
特開昭53−95165号公報
【特許文献3】
特開平5−51610号公報
【特許文献4】
特開平11−302709号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1のような気相水素還元法では、生産性が低く、高価な設備が必要となる。しかも製造された金属粉末の粒径は不揃いであり、異常成長した粒子が内在し易く、このため、積層セラミックコンデンサの内部電極に使用した場合は、耐電圧特性等の電気的特性を著しく劣化させるおそれがあるという問題点があった。
【0014】
また、特許文献1では、上述したように還元析出したニッケル粉末を洗浄する必要があるが、洗浄後のニッケル粉末は、粉末表面の成分組成が一定とはならずにバラツキが生じ、このためペースト化した場合に有機ビヒクルへの分散が均一とはならず、その結果、セラミックグリーンシートに導電性ペーストを印刷し、乾燥した場合、塗膜にはニッケル粉末の再凝集による塊状物の発生や、表面粗さが悪化し、耐電圧特性の劣化や静電容量の低下を招くおそれがあるという問題点があった。
【0015】
さらに、特許文献1では、上述したようにニッケル粉末が有機ビヒクル中に均一に分散しないため、導電性ペーストを放置した場合、固形分の沈降分離や粘度安定性に悪影響を及ぼし、導電性ペーストに選択的に添加される分散剤等の添加剤の構成が複雑化するという問題点があった。
【0016】
また、特許文献2や特許文献3のように難溶性ニッケル塩を還元する場合、還元反応に要する時間が長くなり、固体ニッケル塩特性、特に不可避不純物や塩基性塩の影響によって、析出するニッケル粉末の特性が大きく変化するという問題点があった。しかも、反応が不均一になることでニッケル粉末の粒径が不揃いになって凝集し易くなり、その結果、特許文献1と同様、塗膜塊状物の発生や、表面粗さが悪化し、耐電圧特性の劣化や静電容量の低下を招くという問題点があった。
【0017】
また、特許文献4は、上述したように単純なプロセスで短時間に大量のニッケル粉末を得ることができるものの、特許文献1と同様、ニッケル粉末を洗浄した場合、洗浄後のニッケル粉末は、粉末表面の組成にバラツキが生じ、このためペースト化した場合に有機ビヒクルへの分散性が均一とはならず、その結果、塗膜には粉末の再凝集による塊状物の発生や、表面粗さが悪化し、耐電圧特性の劣化や静電容量の低下を招くおそれがあるという問題点があった。
【0018】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであって、導電性ペースト中での良好な分散性と粘度安定性を得ることができるニッケル粉末、及び導電性ペースト、並びに積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ニッケル粉末に純Niの他、Ni(OH)2、及びNiOを含有させると共に、表面におけるNi、Ni(OH)2、及びNiOの組成が、モル%で、Ni:5〜20%、Ni(OH)2:25〜75%、NiO:15〜65%となるように制御することにより、導電性ペースト中での塗膜表面粗さを抑制することができ、かつ再凝集による塗膜塊状物の発生を極力回避することができ、これにより良好な分散性を有し、しかも経時的な粘度安定性を有するニッケル粉末を得ることができるという知見を得た。
【0020】
本発明はこのような知見に基づきなされたものであって、本発明に係るニッケル粉末は、Ni(OH)2及びNiOを含有すると共に、表面の成分組成が、モル%で、Ni:5〜20%、Ni(OH)2:25〜75%、NiO:15〜65%であることを特徴としている。
【0021】
また、ニッケル粉末表面の成分組成は、X線光電子分光分析法(X−ray Photoelectron Spectroscopy:以下、「XPS」という)により高精度に計測することができる。
【0022】
すなわち、本発明のニッケル粉末は、前記表面の成分組成が、X線光電子分光分析法で計測されたことを特徴としている。
【0023】
また、本発明に係る導電性ペーストは、少なくとも上記ニッケル粉末と有機ビヒクルと溶剤とを含有していることを特徴としている。
【0024】
上記導電性ペーストによれば、導電性ペーストには上記ニッケル粉末を含有しているので、塗膜表面粗さが抑制されると共に、ニッケル粉末の再凝集による塗膜塊状物の発生を極力回避することができ、分散性が良好で粘度の経時的変化が小さい粘度安定性に優れた導電性ペーストを得ることができる。
【0025】
また、本発明に係る積層セラミック電子部品は、内部電極がセラミック焼結体に埋設された積層セラミック電子部品において、前記内部電極が、上記導電性ペーストを使用して形成されていることを特徴としている。
【0026】
上記積層セラミック電子部品によれば、前記内部電極が、ニッケル粉末の分散性が良好で粘度安定性にも優れた導電性ペーストを使用して形成されているので、耐電圧特性の劣化や静電容量の容量低下を極力回避することができる積層セラミック電子部品を高効率で得ることができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を詳説する。
【0028】
本発明に係るニッケル粉末は、粉末表面の成分組成が、モル%で、Ni:5〜20%、Ni(OH)2:25〜75%、NiO:15〜65%とされている。
【0029】
ニッケル粉末の表面組成として、Ni(OH)2やNiOが含まれると、ニッケル粉末の表面は極性を有するようになる。
【0030】
一方、導電性ペーストは、通常、ニッケル粉末と、セルロース系樹脂等の有機ビヒクルと、テルピネオール等の溶剤等を混合し、3本ロールミル等で分散させることにより作製される。したがって、導電性ペースト中に前記表面極性を有するニッケル粉末を含有させると、ニッケル粉末の表面極性の作用により、有機ビヒクルや溶剤の吸脱着を任意に制御することができ、これにより導電性ペーストに含有されたニッケル粉末の分散性を向上させることが可能となり、かつ粘度の経時変化を抑制して粘度安定性を確保することができる。
【0031】
また、導電性ペーストには上述した有機ビヒクルや溶剤の他、必要に応じて分散剤が適宜添加される。そして、分散剤を添加することにより、導電性ペーストにおける粘度安定性の確保、ニッケル粉末の分散性確保、積層セラミック電子部品の製造工程中の焼成時における熱挙動(ニッケル粉末の酸化、焼結抑制)に起因した構造欠陥の低減化を図ることができる。そして、分散剤は一般に極性を有しており、したがってニッケル粉末の表面極性を制御することにより、これら分散剤の上記効果をも最大限に引き出すことが可能となる。
【0032】
しかしながら、上記Ni、Ni(OH)2及びNiOのニッケル粉末表面における含有モル量が上記範囲外になると、ニッケル粉末の表面と有機ビヒクルや溶剤、分散剤との吸脱着が過剰に行われるため、導電性ペーストにおけるニッケル粉末の分散性や粘度安定性が悪化する。そしてその結果、積層セラミックコンデンサの作製時に、導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷し乾燥した場合、塗膜上にはニッケル粉末の再凝集による塊状物の発生や、塗膜表面粗さが悪化し、耐電圧特性や静電容量等の電気的特性を著しく劣化させる。しかも、ニッケル粉末の分散性が悪いため、導電性ペーストを放置した場合、ニッケル粉末の沈降分離や導電性ペーストの粘度安定性に悪影響を及ぼし、このため導電性ペーストに選択的に適宜添加される分散剤等の添加剤の構成が複雑となり、また添加剤に要求される所望の効果を得るのが困難になるおそれがある。
【0033】
そこで、本実施の形態では、ニッケル粉末の表面におけるNi/Ni(OH)2/NiOの含有モル量が5〜20モル%/25〜75モル%/15〜65モル%、好ましくは、10〜15モル%/50〜70モル%/20〜40モル%/、さらに好ましくは10〜15モル%/60〜70モル%/20〜30モル%/となるように制御されている。
【0034】
尚、ニッケル粉末の表面における成分組成は、後述するようにニッケル粉末に減圧乾燥処理を施すと共に、該減圧乾燥処理時の乾燥条件を調整することにより容易に制御することができる。
【0035】
また、このニッケル粉末の成分組成は、XPS法により高精度に計測することができる。
【0036】
すなわち、XPS法は、被測定試料であるニッケル粉末の表面における組成、化学状態を分析する電子分光法の一種であり、ニッケル粉末の表面にX線を照射した時に光電効果によって原子から放出される光電子のエネルギ分布、具体的にはX線によって励起される光電子の運動エネルギを測定することにより、X線エネルギと前記運動エネルギとの差、すなわち束縛エネルギを求め、これにより元素の同定と化学状態を分析することができる。
【0037】
尚、ニッケル粉末の平均粒径は、0.10〜1.50μmであるのが好ましい。すなわち、近年の電子機器の小型・軽量化、高機能化に伴い、電子部品の軽薄短小化が進行しており、特にチップ部品である積層セラミックコンデンサは小型かつ大容量化が急速に進んでおり、薄層化・多層化が進んでいる。したがって、積層セラミックコンデンサの内部電極としては平均粒径が微細であることが要求され、平均粒径が1.50μmを超えるような大きな粒径のニッケル粉末は、今日の内部電極用導電性材料としては適当でない。
【0038】
そこで、本実施の形態では、ニッケル粉末の平均粒径を、0.10〜1.50μm、好ましくは0.20〜0.60μmとしている。
【0039】
次に、ニッケル粉末の製造方法について説明する。
【0040】
まず、例えば、液相還元法により、ニッケル塩水溶液を還元剤水溶液中に滴下してニッケルイオンを還元し、Ni(OH)2やNiOを含有したニッケル粉末を作製する。
【0041】
ニッケル塩水溶液は、例えば、ニッケル塩に錯化剤を添加して作製される。このようにニッケル塩水溶液中に錯化剤を含有させることにより、Ni(OH)2等の難溶性ニッケル塩の析出が制御されると共に、還元反応が促進され、生産性向上を図ることができる。
【0042】
ここで、ニッケル塩としては、水に溶解性を有するものであれば、特に限定されることはなく、例えば塩化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル等から選択された1種又はこれらの2種以上を使用することができる。
【0043】
また、錯化剤としては、酢酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸等のオキシカルボン酸等の中から選択された1種又はこれらの2種以上を使用することができる。
【0044】
また、還元剤水溶液は、アルカリ性を有するようにpH調整される。ここで、還元剤としては、ヒドラジンやヒドラジン化合物、次亜リン酸アルカリ、水酸化ホウ素アルカリの中から選択された1種又はこれらの2種以上を使用することができる。
【0045】
また、pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等のアルカリ溶液を使用することができる。
【0046】
尚、必要に応じ、前記還元剤水溶液に界面活性剤、分散剤、保護コロイド等を適宜添加するのも好ましい。
【0047】
次に、Ni/Ni(OH)2/NiOが5〜20モル%/25〜75モル%/15〜65モル%となるように真空度、乾燥温度、乾燥時間を設定してニッケル粉末に減圧乾燥処理を施し、これにより所望のニッケル粉末が製造される。
【0048】
そして、このようにして得られたニッケル粉末と、エチルセルロース樹脂等の有機ビヒクルやテルピネオール等の溶剤、及び必要に応じて分散剤等の添加剤を混練してペースト化し、これにより導電性ペーストが作製される。
【0049】
このように本導電性ペーストは、表面の成分組成が、Ni/Ni(OH)2/NiOが5〜20モル%/25〜75モル%/15〜65モル%のニッケル粉末を含有しているので、ニッケル粉末の分散性が良好で、粘度安定性に優れた導電性ペーストを得ることができる。
【0050】
次に、上記導電性ペーストを使用して製造された積層セラミック電子部品としての積層セラミックコンデンサについて詳説する。
【0051】
図1は積層セラミックコンデンサの一実施の形態を模式的に示した断面図である。
【0052】
該積層セラミックコンデンサは、セラミック焼結体1に内部電極2(2a〜2f)が埋設されると共に、該セラミック焼結体の両端部には外部電極3a、3bが形成され、さらに該外部電極3a、3bの表面には第1のめっき皮膜4a、4b及び第2のめっき皮膜5a、5bが形成されている。
【0053】
具体的には、各内部電極2a〜2fは積層方向に並設されると共に、内部電極2a、2c、2eは外部電極3aと電気的に接続され、内部電極2b、2d、2fは外部電極3bと電気的に接続されている。そして、内部電極2a、2c、2eと内部電極2b、2d、2fとの対向面間で静電容量を形成している。
【0054】
上記積層セラミックコンデンサは以下のようにして製造される。
【0055】
すなわち、まず、チタン酸バリウム等の誘電体材料を主成分とするセラミックグリーンシートを用意し、次いで、上記導電性ペーストを使用し、セラミックグリーンシート上にスクリーン印刷を施して所定形状の導電パターンを形成する。
【0056】
そしてこの後、導電パターンが形成されたセラミックグリーンシートを所定方向に複数枚積層し、導電パターンの形成されていないセラミックグリーンシートで挟持・圧着し、所定寸法に切断してセラミック積層体を作製する。しかる後、還元性雰囲気下、脱バインダ処理を含む焼成処理を所定時間行い、これにより内部電極2が埋設されたセラミック焼結体1を作製する。
【0057】
次いで、セラミック焼結体1の両端面に導電性ペーストを塗布し、焼付処理を行い、外部電極3a、3bを形成する。
【0058】
そして、最後に、電解めっきを施して外部電極3a、3bの表面にNi、Cu、Ni−Cu合金等からなる第1のめっき皮膜4a、4bを形成し、さらに該第1のめっき皮膜4a、4bの表面にはんだやスズ等からなる第2のめっき皮膜5a、5bを形成し、これにより積層セラミックコンデンサが形成される。
【0059】
このように本実施の形態では、分散性が良好で粘度安定性に優れた導電性ペーストを使用して内部電極を形成しているので、耐電圧特性に優れ静電容量の低下等を招くことのない積層セラミックコンデンサを高効率で得ることができる。
【0060】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上記実施の形態ではニッケル塩水溶液をアルカリ性還元剤溶液に滴下することによりニッケル粉末を得ているが、他の作製方法で得るようにしてもよい。
【0061】
また、ニッケル粉末中にCo、Mg、Si等の不純物を不可避的に含む場合にも適用することができる。
【0062】
また、上記実施の形態では、積層セラミックコンデンサについて説明したが、その他の積層セラミック電子部品、特にコンデンサ部を有する複合セラミック電子部品に好適する。
【0063】
【実施例】
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
【0064】
〔第1の実施例〕
硫酸ニッケル6水和物1モルに対し、錯化剤として0.35モルのクエン酸三ナトリウム2水和物を純水中で溶解させ、所定温度に加熱処理してニッケル塩水溶液を作製した。
【0065】
また、硫酸ニッケル6水和物1モルに対し、還元剤として6モルのヒドラジン水和物とpH調整剤として3.5モルの水酸化ナトリウムとを純水中で溶解させ、所定温度に加熱処理し、還元剤溶液を作製した。
【0066】
次いで、ニッケル塩水溶液を還元剤溶液に所定時間滴下し、滴下完了後に所定時間放置し、ニッケル粉末の沈殿を得た。
【0067】
次に、該ニッケル粉末をビフネルロートで固液分離して回収し、濾液導電率が10μS/cm以下になるまで純水で洗浄し、さらにアセトンで洗浄した。
【0068】
次いで、振動式の減圧乾燥機を使用し、表1の実施例1〜7で示す乾燥条件で前記ニッケル粉末に乾燥処理を施し、その後、該乾燥処理されたニッケル粉末に対し、気流旋回方式のジェットミルを使用して解砕処理を施し、実施例1〜7のニッケル粉末を作製した。
【0069】
また、上述と同様、振動式の減圧乾燥機を使用し、表1の比較例1〜5で示す乾燥条件でアセトン洗浄されたニッケル粉末に乾燥処理を施し、その後、該乾燥処理されたニッケル粉末に対し、気流旋回方式のジェットミルを使用して解砕処理し、比較例1〜5のニッケル粉末を作製した。
【0070】
また、アセトン洗浄されたニッケル粉末に対し、100kPa(常圧)下、300分間、100℃の熱風を負荷して乾燥処理を行ない、その後、気流旋回方式のジェットミルを使用して解砕処理し、比較例6〜8のニッケル粉末を作製した。
【0071】
次に、上記各実施例及び比較例について、その平均粒径、乾燥状態、及び表面組成を求めた。
【0072】
平均粒径は、電解放射型走査電子顕微鏡を使用し、加速電圧5kV、倍率10,000倍で画像を撮影し、得られた画像を画像解析装置(旭エンジニアリング社製IP−1000)で解析し、200箇所の円形粒子径を求め、その平均値を算出し、平均粒径とした。
【0073】
また、ニッケル粉末の乾燥状態は、カールフィッシャー分析法で水分量を測定することにより確認した。すなわち、水分気化装置を具備したカールフィシャー水分計を使用し、N2雰囲気中で、120℃に加熱したときの水分量を測定し、乾燥状態を確認した。
【0074】
また、ニッケル粉末の表面における成分組成は、XPS法により測定した。すなわち、ULVAC−PHI社製ESCA5400MCを使用し、各実施例及び比較例のNiピークが検出される束縛エネルギ範囲(850〜890eV)でナロースキャンスペクトルを測定し、Ni2pスペクトルのピーク分離を行い、Ni、Ni(OH)2、NiOの各結合状態のモル%を求めた。
【0075】
次に、各実施例及び比較例のニッケル粉末にエチルセルロースとテルピネオールとを加えて3本ロールミルで分散させ、これにより導電性ペーストを作製し、該導電性ペーストの塗膜表面粗さと塗膜塊状物数を求め、分散性を評価した。
【0076】
ここで、塗膜表面粗さは以下のように求めた。すなわち、まず、得られた導電性ペーストを使用してガラス基板上にドクターブレード法により膜厚50μmの塗膜を形成し、150℃で熱風乾燥を行い、乾燥塗膜を作製した。次いで、接触式表面粗さ測定機(東京精密社製サーフコム)を使用し、測定長5mm、走査速度0.3mm/secで十点平均粗さRzを5回測定し、その平均値を算出し、塗膜表面粗さとした。
【0077】
また、塗膜塊状物数は以下のようにして求めた。すなわち、ガラス基板上で塗膜面積が528mm2となるように導電性ペーストを使用してスクリーン印刷を施し、次いで60℃で熱風乾燥を行って乾燥塗膜を得た。そして、この乾燥塗膜を光学顕微鏡(倍率50倍)で斜め側方から光源を照射して観察し、20μm以上の塗膜塊状物の個数を計測し、塗膜塊状物数とした。
【0078】
さらに、各実施例及び比較例の導電性ペーストについて経時的な粘度変化を求め、粘度安定性を評価した。すなわち、E型粘度計を使用し、回転速度0.042s−1(回転数2.5rpm)、測定温度25℃で導電性ペーストの初期粘度及び30日経過後の粘度をそれぞれ測定し、後者から前者を減算して粘度の経時変化を算出し、これにより粘度安定性を評価した。
【0079】
表1は各実施例及び比較例の乾燥条件、及び各測定結果等を示している。
【0080】
【表1】
この表1から明らかなように、実施例及び比較例共、平均粒径は0.50〜0.52μmであり、内部電極用導電性材料として好ましい範囲内(0.1〜1.5μm)であることが確認された。
【0081】
また、水分量も0.06〜0.09wt%であり、乾燥状態も良好であることが確認された。
【0082】
そして、比較例1〜4は、ニッケル粉末に減圧乾燥処理を施してはいるものの、乾燥条件が不適当であるため、ニッケル粉末の表面を形成するNi、Ni(OH)2及びNiOのうちの少なくとも1つ以上が本発明の範囲外となり、その結果、比較例1及び3こそ塗膜塊状物数は5以下となって良好であるが、比較例2及び4の塗膜塊状物数はそれぞれ10個、8個と多く、また塗膜表面粗さについてはいずれも1.48〜1.75μmと大きく、分散性に劣ることが分った。
【0083】
また、比較例1〜4は、粘度の経時変化の絶対値が1.0Pa・sを超えており、粘度安定性に欠けることが分った。
【0084】
また、比較例5は、粘度の経時変化は+0.9Pa・sと小さく、粘度安定性は良好であるが、Ni(OH)2の含有モル量が78モル%であり、75モル%を超えているため、塗膜平均粗さが1.55μmと大きく、分散性に劣ることが分った。
【0085】
さらに、比較例6〜8は、減圧乾燥を行わずに常圧で熱風乾燥処理を行なっているため、平均粒径の差異により粉末表面におけるNi、Ni(OH)2、及びNiOの含有モル量は異なるものの、いずれにしてもこれらNi、Ni(OH)2及びNiOの全てを本発明範囲内とすることはできず、その結果、塗膜表面粗さが1.52〜1.60μmと大きく、また塗膜塊状物数も10〜14個と多く、さらに粘度の経時変化の絶対値も1.5Pa・sを超えており、分散性及び粘度安定性に劣ることが分った。
【0086】
これに対し実施例1〜7は、ニッケル粉末の表面におけるNi、Ni(OH)2及びNiOのいずれの含有モル量も本発明の範囲内となるように乾燥条件を設定して減圧乾燥しているので、塗膜表面粗さは1.29〜1.47μm、塗膜塊状物数は5個以下であり、粘度の経時変化の絶対値も1.0Pa・s以下と小さく、分散性に優れ粘度安定性に優れた導電性ペーストを得ることができた。
【0087】
〔第2の実施例〕
前記第1の実施例の実施例4及び比較例6の乾燥条件で得られたニッケル粉末を使用し、樹脂成分としてエチルセルロース、溶剤としてジヒドロテルピネオールアセテート、分散剤としてオイゲノール、添加剤として硫酸エステル系界面活性剤を前記ニッケル粉末に添加し、3本ロールミルで分散させ、導電性ペーストを作製した。
【0088】
そして、第1の実施例と同様の方法・手順で導電性ペーストの塗膜表面粗さ及び塗膜塊状物数を求めた。
【0089】
次に、この導電性ペーストをチタン酸バリウムを主成分とする厚みが20μmのセラミックグリーンシート上にスクリーン印刷して塗布膜を形成し、その後乾燥処理を行った。次いで、塗布膜の形成されたセラミックグリーンシートを78層積層すると共に、これら積層されたセラミックグリーンシートを塗布膜の形成されていないセラミックグリーンシートで挟持して圧着し、所定サイズに切断しセラミック積層体を得た。そしてこの後、還元雰囲気下、温度350〜500℃で脱バインダ処理を行ない、さらに、酸素分圧が10−9〜10−12MPaに制御されたH2−N2−H2Oガスからなる還元性雰囲気下、温度1000〜1200℃で約2時間焼成し、これにより内部電極が埋設されたセラミック焼結体を作製した。
【0090】
次いで、このセラミック焼結体の両端面に外部電極形成用導電性ペーストを塗布し、焼付処理を行い、実施例11及び比較例11の積層セラミックコンデンサを作製した。
【0091】
次に、実施例11及び比較例11について、耐電圧不良率、及び静電容量低下品の発生率を求めた。
【0092】
ここで、耐電圧不良率は、実施例11及び比較例11の各10万個について、150Vの直流電圧を印加したときの短絡不良の有無を測定し、算出した。
【0093】
また、静電容量低下品の発生率は、実施例11及び比較例11の各10万個について、各々静電容量を測定し、設計容量の90%に満たない試料を容量不足と判断し、その発生率を算出した。
【0094】
表2は、これらの測定結果を塗膜表面粗さ及び塗膜塊状物数と共に示している。
【0095】
【表2】
この表2から明らかなように比較例11は、塗膜表面粗さが1.64μmと大きく、また15個の塗膜塊状物が認められ、したがってニッケル粉末の分散性に劣り、このため耐電圧不良率が0.370%と高く、また容量低下品の発生率も0.27%と高いことが分った。
【0096】
これに対して実施例11は表面粗さが1.25μmと小さく、塗膜塊状物の存在も認めらず、ニッケル粉末は良好な分散性を有しており、その結果耐電圧不良率が0.033%、容量低下品の発生率も0.01%と大幅に改善されており、製品歩留まりの向上を図ることができ、積層セラミックコンデンサを高効率で得ることができる。
【0097】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明に係るニッケル粉末は、Ni(OH)2及びNiOを含有すると共に、表面の成分組成が、モル%でNi:5〜20%、Ni(OH)2:25〜75%、NiO:15〜65%であるので、粉末表面の極性を制御することができ、導電性ペーストにおけるニッケル粉末の分散性を向上させることができると共に、導電性ペーストの粘度安定性を確保することが可能となる。
【0098】
また、前記表面の各成分組成は、X線光電子分光分析法で計測されることにより、高精度に表面の成分組成を計測することができる。
【0099】
また、本発明に係る導電性ペーストは、上記ニッケル粉末を主成分とするので、ニッケル粉末の分散性が良好で、しかも粘度安定性に優れた導電性ペーストを得ることができる。
【0100】
また、本発明に係る積層セラミック電子部品は、内部電極がセラミック焼結体に埋設された積層セラミック電子部品において、前記内部電極が、ニッケル粉末の分散性に優れ、粘度安定性が良好な導電性ペーストを使用して形成されているので、乾燥塗膜における平滑性を確保することが可能となり、電気的特性が良好な積層セラミック電子部品のを高効率で得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るニッケル粉末を内部電極用導電性材料に使用して製造された積層セラミック電子部品としての積層セラミックコンデンサの一実施の形態を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 セラミック焼結体
2 内部電極
Claims (4)
- Ni(OH)2及びNiOを含有すると共に、表面の成分組成が、モル%で
Ni:5〜20%、Ni(OH)2:25〜75%、NiO:15〜65%であることを特徴とするニッケル粉末。 - 前記表面の成分組成は、X線光電子分光分析法で計測されたことを特徴とする請求項1記載のニッケル粉末。
- 少なくとも請求項1又は請求項2記載のニッケル粉末と有機ビヒクルと溶剤とを含有していることを特徴とする導電性ペースト。
- 内部電極がセラミック焼結体に埋設された積層セラミック電子部品において、
前記内部電極が、請求項3記載の導電性ペーストを使用して形成されていることを特徴とする積層セラミック電子部品。
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