JP2004315867A - 金型の製作方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】比較的短時間で基材の微細パターンを精度良く転写可能な金型の製作方法を提供する。
【解決手段】母型から直接電鋳を成長させるのではなく、図6に示すように、スパッタリング処理で、母型の母光学転写面に第1の層としてのニッケル燐の被膜Pを形成し、ここから電鋳を成長させている。ニッケル燐の被膜Pの結晶粒径が小さいことから、微細パターンの形状に精密に倣うことができる。又、ニッケル燐の被膜Pは硬度が高いので、耐摩耗性に優れた金型の光学面転写面を提供できる。
【選択図】 図6
【解決手段】母型から直接電鋳を成長させるのではなく、図6に示すように、スパッタリング処理で、母型の母光学転写面に第1の層としてのニッケル燐の被膜Pを形成し、ここから電鋳を成長させている。ニッケル燐の被膜Pの結晶粒径が小さいことから、微細パターンの形状に精密に倣うことができる。又、ニッケル燐の被膜Pは硬度が高いので、耐摩耗性に優れた金型の光学面転写面を提供できる。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金型の製作方法に関し、例えば光学素子成形用金型の製作に好適な金型の製作方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、急速に発展している光ピックアップ装置の分野では、極めて高精度な対物レンズなどの光学素子が用いられている。プラスチックやガラスなどの素材を、金型を用いてそのような光学素子に成形すると、均一な形状の製品を迅速に製造することができるため、かかる金型成形は、そのような用途の光学素子の大量生産に適しているといえる。ここで、金型は消耗品であり、また不測の事態による破損なども予想されることから、高精度な光学素子を成形するためには、定期的或いは不定期の金型交換が必要であるといえる。従って、光学素子を成形するための金型(光学素子成形用金型ともいう)も、一定精度のものをある程度の量だけ予め用意しておく必要があるといえる。
【0003】
ここで、単結晶ダイヤモンド工具などを用いた切削加工で金型を製造した場合、手間がかかる上に、全く同一形状の金型を切り出すことは困難といえ、それ故金型交換前後で光学素子製品の形状バラツキが生じる恐れがあり、又コストもかかるという問題がある。
【0004】
特に、光ピックアップ装置に用いるある種の光学素子には、収差特性を良好にすべく、光学面の光軸に同心に、断面がブレーズ形状の微細な回折輪帯を設けることが行われている。このような回折輪帯に対応した同心溝を、金型の光学面転写面に形成する場合、切削加工に手間と時間がかかるという問題がある。光学素子成形用金型を超鋼などで形成する場合、精度良く所望の光学面転写面形状を得るためには、ダイアモンド工具による切削加工等によらなくてはならない。
【0005】
このような問題に対し、例えば光学素子の光学面に対応した母光学面を有する母型に対し、化学反応を通じて電鋳等を成長させることで、金型を製作しようとする試みがある。このような電鋳による金型製作手法を用いると、例えば光学素子の回折輪帯に対応した輪帯を備えた非球面を精度良く形成した母型を一つ用意するだけで、寸法バラツキの少ない光学素子成形用金型を比較的容易に転写形成することができる。このような電鋳技術に関しては、以下の特許文献1に記載されている。
【特許文献1】
特表平8−503522号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば回折輪帯に対応する微細パターンを形成するために、母型の表面に塗布剤としてレジストを塗布し、電子描画を行い、現像処理し、特許文献1の電鋳処理を行うことで、微細パターンを有する光学素子成形用金型を得ることができる。ここで、光学素子成形用金型の表面に、高精度な回折輪帯などに対応した母型上の微細パターンを精度良く転写形成するためには、電鋳の結晶粒径を極力小さくする必要がある。ところが電鋳の結晶粒径を小さくするためには、電鋳を成長させるために電極間に付与する電流を小さくする必要があるが、それにより電鋳の成長が抑制され、例えば5mmの厚さに成長させるまでに、1ヶ月近い膨大な時間がかかることが予想される。
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、比較的短時間で基材の微細パターンを精度良く転写可能な金型の製作方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の金型の製作方法は、基材の微細パターンが形成された表面に、気相成長で前記微細パターンを埋めた導電性の第1の層を被覆するステップと、前記基材に被覆された第1の層から電鋳を成長させることで第2の層を形成するステップと、前記基材から、前記第1の層及び前記第2の層を分離して、前記第1の層を転写面に露出させた金型を形成するステップと、を有するので、気相成長で前記第1の層を形成することで前記基材の微細パターンを精度良く転写し、その後前記第1の層から電鋳を成長させれば、電鋳の結晶粒径が大きくても微細パターンの精度に無関係であるので、大電流を付与して短時間で電鋳を成長させることができる。
【0010】
更に、前記第1の層の結晶の平均粒径は、前記微細パターンの最小寸法の1/10以下の寸法を有すると、前記基材の微細パターンを精度良く転写できる。
【0011】
又、前記第1の層の結晶の平均粒径は、前記第2の層の結晶の平均粒径より小さいと、前記基材の微細パターンを精度良く転写しつつ、電鋳成長時間を短縮化できる。
【0012】
更に、前記第1の層に近い側における前記第2の層の結晶の平均粒径は、それより遠い側における前記第2の層の結晶の平均粒径よりも小さいと、前記第1の層と前記第2の層との結合力をを高めることができる。
【0013】
又、前記第1の層は、スパッタリングで形成されると好ましいが、それ以外の真空蒸着やイオンプレーティング等のPVD(Physical Vapor Deposition),あるいはCVD(Chemical Vapor Deposition)を用いて前記第1の層を形成しても良いが、レジストで微細パターンを形成する場合には、低温で被膜ができるものが好ましい。
【0014】
更に、前記第1の層は、ニッケル燐の合金であると硬度が高いので型材として好ましいが、これに限られることはない。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。図1は、本実施の形態にかかる金型の製作方法を構成する工程を示すフローチャートである。図2は、図1に示す主要な工程において、処理される母型の素材と電極部材の組立体(これを基材又は部材Aという)を示す断面図である。以後、基材(又は部材A)をここで製作する母型として説明する。図3は、部材Aの上面図である。尚、本実施の形態により製作される基材は、その母光学面に、光学素子の回折輪帯に対応した輪帯が形成されるものとする。
【0016】
まず、図1のステップS101で、SiO2又はポリシリコン製の略半球型の形状を有する母型の素材10を、金属など導電性の素材からなる円盤状の電極部材11の中央開口11aに埋め込み接着剤で相対回転不能に固定し(図2(a)参照)、部材Aを得る。その後、ステップS102で、不図示の施盤(ここでは超精密旋盤(SPDT加工機)を含む)のチャックに部材Aを取り付ける。更に、ステップS103で、部材Aを回転させなから、ダイヤモンド工具により、母型の素材10の上面を図1(b)に示すように切削加工し母光学面(成形しようとする光学素子の光学曲面に相当し、該母光学面は光軸を有する)10aを形成し、且つ電極部材11の上面に周溝11a(第1のマーク)を切削加工し、更に電極部材11の外周面11fを切削加工する。このとき、母光学面10aの光軸の位置は、その外形から確認することはできないが、同時に加工されることから母光学面10aと周溝11aとは、精度良く同軸に形成されることとなり、又、円筒面に形成された電極部材11の外周面11fも、光軸と精度良く同軸に形成される。即ち、外周面11fは回転軸を有し、それは母光学面の光軸に一致することとなる。
【0017】
ここで、周溝11aは、例えば、暗視野部(凹部に相当)と明視野部(凸部に相当)とからなる複数の溝から形成されてよく、暗視野部、明視野部を各々複数個有するとさらに好ましい(これはダイヤモンド工具の先端が凹凸を有するものであれば容易に形成できる)。また、周溝11aの凹凸形状により、塗布されるレジスト飛散防止の堤防としても機能させることができる。
【0018】
更に、ステップS104で、部材Aを超精密旋盤から取り外し、ステップS105で、不図示のFIB(Focused Ion Beam)加工機のステージ上にセットする。続くステップS106で、FIB加工機のステージ上の部材Aにおける周溝11aを読み取り、例えばその内側エッジから母型の素材10の光軸の位置を決定し、ステップS107で、決定した光軸から等距離で3つ(4つ以上でも良い)の第2のマーク11bを、電極部材11上に描画する(図2(b)及び図3参照)。ダイヤモンド工具により加工形成した周溝11aの幅は比較的広いため、これを用いて加工の基準とすることは、加工精度を低下させる恐れがあるが、FIB加工機は、幅が20nmの線を形成できるため、例えば十字線を形成すると、20nm×20nmの微細なマークを形成することができ、それを加工の基準とすることで、より高精度な加工が期待できる。
【0019】
ステップS108で、部材AをFIB加工機のステージから取り外し、ステップS109で、第2のマーク11b上に保護テープ13を貼り付ける(図2(c)参照)。この保護テープ13は、後加工で母型の素材10上に塗布されるレジストLが、第2のマーク11bに付着しないようにするためのものである。レジストLが第2のマーク11bに付着すると、加工の基準として読み取りが不適切になる恐れがある。
【0020】
更に、ステップS110で、部材Aを不図示のスピンコータにセットし、ステップS111で、レジストLを母型の素材10上に流下させながらプレスピンを実施し、その後ステップS112で本スピンを実施し、レジストLの被膜を行う(図2(d)参照)。プレスピンと本スピンとを分けたのは、複雑な曲面である母光学面10aに、均一な膜厚のレジストLを被膜させるためである。
【0021】
その後、ステップS113で、部材Aをスピンコータから取り外し、ステップS114で、ベーキングを行ってレジストLの被膜を安定させ、ステップS115で保護テープ13を剥がす。かかる状態の部材Aが、図2(d)に示されている。
【0022】
続いて、ステップS116で、部材Aを不図示の形状測定器(画像認識手段と記憶手段とを有する)にセットし、ステップS117で、形状測定器の画像認識手段を用いて、第2のマーク11bを検出する。更に、ステップS118で、超精密旋盤に用いた母型の素材10の母光学面10aの3次元座標を、第2のマーク11bに基づく3次元座標に変換して、これを記憶手段に記憶する。このように、母光学面10aを新たな3次元座標で記憶し直すのは、後工程で電子ビーム描画を行う際に、母光学面10aの被加工面に対して、狭い電子ビームの焦点深度を合わせるために、電子銃と部材Aとの相対位置を調整する必要があるからである。尚、第2のマーク11bは、測定の際、測定データにかかる座標の基準点がどこなのかを作業者が視認するための位置認識マークとして利用できる。その後、ステップS119で部材Aを形状測定器から取り外す。
【0023】
ステップS120で、部材Aを、不図示の電子ビーム描画装置の3次元ステージにセットし、ステップS121で、読取手段(走査型電子顕微鏡:電子ビーム描画装置に付属していると好ましい)を介して部材Aの第2のマーク11bを検出し、それと記憶されている母光学面10aの3次元座標とから、母光学面10aの被加工面の形状を求め、ステップS122で、求めた被加工面の形状に対して電子ビームの焦点が合うように、3次元ステージを移動させ、電子ビームB(図2(d)参照)を照射し、所定の処理として所望の輪帯形状を描画する。描画後、ステップS123で、3次元ステージより部材Aを取り外し、ステップS124で現像処理を行って、輪帯形状のレジストを得る。ここで、同一点における電子ビームBの照射時間を長くすれば、それだけレジストの除去量が増大するため、位置と照射時間(ドーズ量)を調整することで、ブレーズ形状の輪帯になるよう、レジストを残すことができる。尚、電極部材11の外周面11fを基準として、上述したごとく輪帯形状のレジストを得ることで、後述するごとく母光学面にブレース状の輪帯を形成しても良い。
【0024】
更に、ステップS125で、プラズマシャワーによるドライエッチングを経て、母型の素材10の母光学面10aの表面を彫り込んでブレーズ状の輪帯10b(微細パターンであるが、ここでは実際より誇張されて描かれている)を形成する(図2(e)参照)。ここまでの工程で加工処理された部材Aが、母型として製作されたこととなる。即ち、これらのプロセスの結果、限定の形状(パターン)を有する光学面が母光学面上に形成される。
【0025】
更に、図2(e)に示すように、ステップS126で、ニッケル燐のスパッタリング処理を行い(第1の層を被覆するステップ)、母光学面10aに対して、輪帯10bを埋め尽くすようにニッケル燐の被膜を行う。ここで、輪帯10b(微細パターン)を埋めるとは、少なくとも輪帯10b(微細パターン)の地肌が隠れるように被膜すれば足りるが、第1の層であるニッケル燐の被膜Pの表面が、実質的に微細パターンの頂部近傍の高さとなるまで被膜されると好ましい。
【0026】
その後、ステップS127で、スルファミン酸ニッケル浴中に、表面を活性処理した基材すなわち部材Aを浸し、電極部材11と外部の電極14との間に電流を流すことで、電鋳部材20を第2の層として母光学面10a(即ちニッケル燐被膜P)から成長させる(第2の層を形成するステップ、図2(f)参照)。このとき、電鋳に先立ち電極部材11の外周面11fに絶縁剤を塗布することで、絶縁剤が塗布された部分の電鋳形成を抑制できる。射出成形時に許容できるチルト角度を1分として以下の加工を行う場合、その基準面となる電鋳部材が形成されない外周面11fの軸線方向長さを7mm以上とすることが望ましい。電鋳部材20は、その成長の過程で、母光学面10aに精度良く対応した光学面転写面20aと、輪帯10bに精度良く対応した輪帯転写面20bとを形成する(光学面転写面20aと輪帯転写面20bを合わせて光学転写面と呼ぶ)。
【0027】
その後、ステップS128で、電極部材11の外周面11fを基準として、部材Aと電鋳部材20とを一体で、SPDT加工機の回転軸と部材Aの光軸とを一致させるようにしてチャックに取り付け、電鋳部材20の外周面20cを切削加工する(金型を形成するステップ、図2(g)参照)。この操作において、母光学面の光軸は電鋳部材の回転中心と一致することとなる。上述したように、外周面11fの軸線方向長さを7mm以上とすることで、例えば部材Aをチャックに取り付ける際に用いる支持部材(不図示)と、部材Aとの端面平行度を考慮する必要がなく、セットの手間が省ける。なお、ステップS103において、用いられるSPDT加工機(第1の施盤)とステップS128において用いられるSPDT加工機(第2の施盤であるがここでは同じもの)が用いられている。しかし、異なるSPDT加工機を用いることも可能である。
【0028】
加えて、図2(g)に示すように、電鋳部材20に、裏打ち部材との位置決め部としてのピン孔20d(中央)及びネジ孔20eを加工する。尚、ピン孔20dの代わりに円筒軸を形成しても良い。
【0029】
ステップS129(前半)において、電鋳部材20を、以下に述べるように裏打ち部材と一体化することで、可動コア30を形成する。
【0030】
図4は、可動コア30の断面図である。図4において、可動コア30は、先端(図で右側)に配置した電鋳部材20と、後端(図で左側)に配置した押圧部36と、その間に配置された摺動部材35とから構成される。摺動部材35及び押圧部36が裏打ち部材となる。
【0031】
電鋳部材20は、そのピン孔20dに、円筒状の摺動部材35の端面中央から突出したピン部35aを係合させることで、摺動部材35と所定の関係で位置決めされ、更に、摺動部材35を軸線に平行に貫通する2つのボルト孔35bに挿通したボルト37を、ネジ孔20eに螺合させることで、電鋳部材20は摺動部材35に取り付けられる。
【0032】
摺動部材35は、ピン部35aの設けられた端面(図で右端)に対向する端面(図で左端)の中央に突出して形成されたネジ軸35cを、略円筒状の押圧部36の端部に形成されたネジ孔36aに螺合させることで、押圧部36に対して所定の位置関係で取り付けられる。図4において、本実施例では電鋳部材20の摩耗を考慮し、摺動部材35の外周面35eは、電鋳部材20及び押圧部36のフランジ部36b以外の部分の外周面よりも大径となっている。ここで、図1のステップS128(後半)で、電極部材11の外周面11fを基準に、摺動部材35と押圧部36の外周面が回転とともに切削加工により仕上げられるため、ステップS103で形成された基準がステップS129まで首尾一貫して使用され、基材の同心円パターン(輪帯10b)中心と、金型摺動部外形中心との同軸度を1μm以内に収めることができる(即ち、母光学面の光軸が摺動部材35と押圧部36を有する裏打ち部材の回転中心に一致する状態となる)。なお、ステップS129において電鋳部材20を裏打ち部材と一体化した後、切削加工後の電鋳部材20の外周面を基準に、裏打ち部材外周面を(切削加工により基材と同軸になるように)仕上げることも可能である。
【0033】
その後、図4の矢印Xで示す位置でカットすることにより、部材Aから電鋳部材20を脱型する(図1のステップS130)。このとき、ニッケル燐の被膜Pは、金型20側に付着し、母型の微細パターンを精度良く転写形成した状態で光学面転写面に露出する。更に、ステップS131で、電鋳部材20と基材を脱型後、可動コア30の先端の電鋳部材20を仕上げて、光学素子成形用金型を得る。
【0034】
図5は、このようにして形成された可動コア30を用いて光学素子を成形する状態を示す図である。図5において、光学面転写面41aを有する光学素子成形用金型41を保持する保持部42は、可動側キャビティ43に固定されている。可動側キャビティ43は、小開口43aと、それに同軸な大開口43bとを有している。可動側キャビティ43内に可動コア30を挿入したときに、摺動部材35の外周面35eが、小開口43aの内周面と摺動し、押圧部36のフランジ部36bの外周面36dが、大開口43bの内周面と摺動する。かかる2つの摺動部によって案内されることで、可動側キャビティ43に対して、大きく傾くことなく可動コア30は軸線方向に移動可能となる。光学素子成形用金型31、電鋳部材20の間に溶融した樹脂を射出し、可動コア30を矢印方向に加圧することで、光学素子OEが成形される。このように、基材から精度良く転写形成された光学素子成形用金型としての電鋳部材20を用いることで、光学素子OEの光学面には、電鋳部材20の光学面転写面20aが転写形成され、且つ輪帯転写面20bに対応した回折輪帯が光軸に同心的に精度よく形成されることとなる(即ち、光学素子OEの光学面には、電鋳部材20の光学転写面が光軸に対して精度良く形成される)。
【0035】
図6は、本発明者らが上述した工程を通して実際に形成した金型の微細パターン部を、図2(g)に示す状態で切断し拡大した模式図である。微細パターンの段差は、図で上下方向で約1μmである。本実施の形態においては、シリコン基材から直接電鋳を成長させるのではなく、スパッタリング処理で、シリコン基材の表面に第1の層としてのニッケル燐の被膜を形成し、そこから電鋳を成長させている。図6に示すように、ニッケル燐の被膜の結晶粒径が小さいことから(例えば微細パターンの最小寸法の1/10以下)、シリコン基材における断面が鋸歯状の微細パターンの形状に精密に倣うことができる。又、ニッケル燐の被膜は硬度が高いので、耐摩耗性に優れた金型の光学面転写面を提供できる。
【0036】
更に、電鋳形成時に、電極部材11と外部の電極14(図2(f)参照)との間の電流を、処理当初は小さくし、時間経過と共に増大させれば、図6に示すように、第2の層としての電鋳層の結晶において、ニッケル燐の被膜に近い側の平均粒径を、遠い側の平均粒径より小さくできる。こうすることで、ニッケル燐の被膜と電鋳層との結合力を高め、不測の剥がれなどを抑制できる。又、ニッケル燐の被膜に遠い側の電鋳層の平均粒径は大きくても、微細パターンの精度に影響はなく、又電鋳の成長速度が高まるため、処理時間の低減を図れるという効果がある。特に、上記ニッケル燐の被膜との組み合わせにより、単に電鋳のみで微細パターン上に徐々に電鋳を形成するよりも、電鋳の成長速度を大きくでき、且つ微細パターンの形状を正確に転写し、硬い金型表面を得られるという性能及び生産性を両立できる優れた効果を有する。
【0037】
以上、実施の形態並びに実施例を参照して本発明を説明してきたが、本発明は、上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良(実施の形態の組み合わせを含む)が可能であることは勿論である。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、比較的短時間で基材の微細パターンを精度良く転写可能な金型の製作方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態にかかる金型の製作方法を構成する工程を示すフローチャートである。
【図2】図1に示す主要な工程において、処理される母型の素材と電極部材の組立体すなわち部材Aを示す断面図である。
【図3】部材Aの上面図である。
【図4】可動コア30の断面図である。
【図5】可動コア30を用いて光学素子を成形する状態を示す図である。
【図6】金型の微細パターン部を切断し拡大した模式図である。
【符号の説明】
A 基材(部材)
P ニッケル燐被膜
10 母型の素材
11 電極部材
【発明の属する技術分野】
本発明は、金型の製作方法に関し、例えば光学素子成形用金型の製作に好適な金型の製作方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、急速に発展している光ピックアップ装置の分野では、極めて高精度な対物レンズなどの光学素子が用いられている。プラスチックやガラスなどの素材を、金型を用いてそのような光学素子に成形すると、均一な形状の製品を迅速に製造することができるため、かかる金型成形は、そのような用途の光学素子の大量生産に適しているといえる。ここで、金型は消耗品であり、また不測の事態による破損なども予想されることから、高精度な光学素子を成形するためには、定期的或いは不定期の金型交換が必要であるといえる。従って、光学素子を成形するための金型(光学素子成形用金型ともいう)も、一定精度のものをある程度の量だけ予め用意しておく必要があるといえる。
【0003】
ここで、単結晶ダイヤモンド工具などを用いた切削加工で金型を製造した場合、手間がかかる上に、全く同一形状の金型を切り出すことは困難といえ、それ故金型交換前後で光学素子製品の形状バラツキが生じる恐れがあり、又コストもかかるという問題がある。
【0004】
特に、光ピックアップ装置に用いるある種の光学素子には、収差特性を良好にすべく、光学面の光軸に同心に、断面がブレーズ形状の微細な回折輪帯を設けることが行われている。このような回折輪帯に対応した同心溝を、金型の光学面転写面に形成する場合、切削加工に手間と時間がかかるという問題がある。光学素子成形用金型を超鋼などで形成する場合、精度良く所望の光学面転写面形状を得るためには、ダイアモンド工具による切削加工等によらなくてはならない。
【0005】
このような問題に対し、例えば光学素子の光学面に対応した母光学面を有する母型に対し、化学反応を通じて電鋳等を成長させることで、金型を製作しようとする試みがある。このような電鋳による金型製作手法を用いると、例えば光学素子の回折輪帯に対応した輪帯を備えた非球面を精度良く形成した母型を一つ用意するだけで、寸法バラツキの少ない光学素子成形用金型を比較的容易に転写形成することができる。このような電鋳技術に関しては、以下の特許文献1に記載されている。
【特許文献1】
特表平8−503522号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば回折輪帯に対応する微細パターンを形成するために、母型の表面に塗布剤としてレジストを塗布し、電子描画を行い、現像処理し、特許文献1の電鋳処理を行うことで、微細パターンを有する光学素子成形用金型を得ることができる。ここで、光学素子成形用金型の表面に、高精度な回折輪帯などに対応した母型上の微細パターンを精度良く転写形成するためには、電鋳の結晶粒径を極力小さくする必要がある。ところが電鋳の結晶粒径を小さくするためには、電鋳を成長させるために電極間に付与する電流を小さくする必要があるが、それにより電鋳の成長が抑制され、例えば5mmの厚さに成長させるまでに、1ヶ月近い膨大な時間がかかることが予想される。
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、比較的短時間で基材の微細パターンを精度良く転写可能な金型の製作方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の金型の製作方法は、基材の微細パターンが形成された表面に、気相成長で前記微細パターンを埋めた導電性の第1の層を被覆するステップと、前記基材に被覆された第1の層から電鋳を成長させることで第2の層を形成するステップと、前記基材から、前記第1の層及び前記第2の層を分離して、前記第1の層を転写面に露出させた金型を形成するステップと、を有するので、気相成長で前記第1の層を形成することで前記基材の微細パターンを精度良く転写し、その後前記第1の層から電鋳を成長させれば、電鋳の結晶粒径が大きくても微細パターンの精度に無関係であるので、大電流を付与して短時間で電鋳を成長させることができる。
【0010】
更に、前記第1の層の結晶の平均粒径は、前記微細パターンの最小寸法の1/10以下の寸法を有すると、前記基材の微細パターンを精度良く転写できる。
【0011】
又、前記第1の層の結晶の平均粒径は、前記第2の層の結晶の平均粒径より小さいと、前記基材の微細パターンを精度良く転写しつつ、電鋳成長時間を短縮化できる。
【0012】
更に、前記第1の層に近い側における前記第2の層の結晶の平均粒径は、それより遠い側における前記第2の層の結晶の平均粒径よりも小さいと、前記第1の層と前記第2の層との結合力をを高めることができる。
【0013】
又、前記第1の層は、スパッタリングで形成されると好ましいが、それ以外の真空蒸着やイオンプレーティング等のPVD(Physical Vapor Deposition),あるいはCVD(Chemical Vapor Deposition)を用いて前記第1の層を形成しても良いが、レジストで微細パターンを形成する場合には、低温で被膜ができるものが好ましい。
【0014】
更に、前記第1の層は、ニッケル燐の合金であると硬度が高いので型材として好ましいが、これに限られることはない。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。図1は、本実施の形態にかかる金型の製作方法を構成する工程を示すフローチャートである。図2は、図1に示す主要な工程において、処理される母型の素材と電極部材の組立体(これを基材又は部材Aという)を示す断面図である。以後、基材(又は部材A)をここで製作する母型として説明する。図3は、部材Aの上面図である。尚、本実施の形態により製作される基材は、その母光学面に、光学素子の回折輪帯に対応した輪帯が形成されるものとする。
【0016】
まず、図1のステップS101で、SiO2又はポリシリコン製の略半球型の形状を有する母型の素材10を、金属など導電性の素材からなる円盤状の電極部材11の中央開口11aに埋め込み接着剤で相対回転不能に固定し(図2(a)参照)、部材Aを得る。その後、ステップS102で、不図示の施盤(ここでは超精密旋盤(SPDT加工機)を含む)のチャックに部材Aを取り付ける。更に、ステップS103で、部材Aを回転させなから、ダイヤモンド工具により、母型の素材10の上面を図1(b)に示すように切削加工し母光学面(成形しようとする光学素子の光学曲面に相当し、該母光学面は光軸を有する)10aを形成し、且つ電極部材11の上面に周溝11a(第1のマーク)を切削加工し、更に電極部材11の外周面11fを切削加工する。このとき、母光学面10aの光軸の位置は、その外形から確認することはできないが、同時に加工されることから母光学面10aと周溝11aとは、精度良く同軸に形成されることとなり、又、円筒面に形成された電極部材11の外周面11fも、光軸と精度良く同軸に形成される。即ち、外周面11fは回転軸を有し、それは母光学面の光軸に一致することとなる。
【0017】
ここで、周溝11aは、例えば、暗視野部(凹部に相当)と明視野部(凸部に相当)とからなる複数の溝から形成されてよく、暗視野部、明視野部を各々複数個有するとさらに好ましい(これはダイヤモンド工具の先端が凹凸を有するものであれば容易に形成できる)。また、周溝11aの凹凸形状により、塗布されるレジスト飛散防止の堤防としても機能させることができる。
【0018】
更に、ステップS104で、部材Aを超精密旋盤から取り外し、ステップS105で、不図示のFIB(Focused Ion Beam)加工機のステージ上にセットする。続くステップS106で、FIB加工機のステージ上の部材Aにおける周溝11aを読み取り、例えばその内側エッジから母型の素材10の光軸の位置を決定し、ステップS107で、決定した光軸から等距離で3つ(4つ以上でも良い)の第2のマーク11bを、電極部材11上に描画する(図2(b)及び図3参照)。ダイヤモンド工具により加工形成した周溝11aの幅は比較的広いため、これを用いて加工の基準とすることは、加工精度を低下させる恐れがあるが、FIB加工機は、幅が20nmの線を形成できるため、例えば十字線を形成すると、20nm×20nmの微細なマークを形成することができ、それを加工の基準とすることで、より高精度な加工が期待できる。
【0019】
ステップS108で、部材AをFIB加工機のステージから取り外し、ステップS109で、第2のマーク11b上に保護テープ13を貼り付ける(図2(c)参照)。この保護テープ13は、後加工で母型の素材10上に塗布されるレジストLが、第2のマーク11bに付着しないようにするためのものである。レジストLが第2のマーク11bに付着すると、加工の基準として読み取りが不適切になる恐れがある。
【0020】
更に、ステップS110で、部材Aを不図示のスピンコータにセットし、ステップS111で、レジストLを母型の素材10上に流下させながらプレスピンを実施し、その後ステップS112で本スピンを実施し、レジストLの被膜を行う(図2(d)参照)。プレスピンと本スピンとを分けたのは、複雑な曲面である母光学面10aに、均一な膜厚のレジストLを被膜させるためである。
【0021】
その後、ステップS113で、部材Aをスピンコータから取り外し、ステップS114で、ベーキングを行ってレジストLの被膜を安定させ、ステップS115で保護テープ13を剥がす。かかる状態の部材Aが、図2(d)に示されている。
【0022】
続いて、ステップS116で、部材Aを不図示の形状測定器(画像認識手段と記憶手段とを有する)にセットし、ステップS117で、形状測定器の画像認識手段を用いて、第2のマーク11bを検出する。更に、ステップS118で、超精密旋盤に用いた母型の素材10の母光学面10aの3次元座標を、第2のマーク11bに基づく3次元座標に変換して、これを記憶手段に記憶する。このように、母光学面10aを新たな3次元座標で記憶し直すのは、後工程で電子ビーム描画を行う際に、母光学面10aの被加工面に対して、狭い電子ビームの焦点深度を合わせるために、電子銃と部材Aとの相対位置を調整する必要があるからである。尚、第2のマーク11bは、測定の際、測定データにかかる座標の基準点がどこなのかを作業者が視認するための位置認識マークとして利用できる。その後、ステップS119で部材Aを形状測定器から取り外す。
【0023】
ステップS120で、部材Aを、不図示の電子ビーム描画装置の3次元ステージにセットし、ステップS121で、読取手段(走査型電子顕微鏡:電子ビーム描画装置に付属していると好ましい)を介して部材Aの第2のマーク11bを検出し、それと記憶されている母光学面10aの3次元座標とから、母光学面10aの被加工面の形状を求め、ステップS122で、求めた被加工面の形状に対して電子ビームの焦点が合うように、3次元ステージを移動させ、電子ビームB(図2(d)参照)を照射し、所定の処理として所望の輪帯形状を描画する。描画後、ステップS123で、3次元ステージより部材Aを取り外し、ステップS124で現像処理を行って、輪帯形状のレジストを得る。ここで、同一点における電子ビームBの照射時間を長くすれば、それだけレジストの除去量が増大するため、位置と照射時間(ドーズ量)を調整することで、ブレーズ形状の輪帯になるよう、レジストを残すことができる。尚、電極部材11の外周面11fを基準として、上述したごとく輪帯形状のレジストを得ることで、後述するごとく母光学面にブレース状の輪帯を形成しても良い。
【0024】
更に、ステップS125で、プラズマシャワーによるドライエッチングを経て、母型の素材10の母光学面10aの表面を彫り込んでブレーズ状の輪帯10b(微細パターンであるが、ここでは実際より誇張されて描かれている)を形成する(図2(e)参照)。ここまでの工程で加工処理された部材Aが、母型として製作されたこととなる。即ち、これらのプロセスの結果、限定の形状(パターン)を有する光学面が母光学面上に形成される。
【0025】
更に、図2(e)に示すように、ステップS126で、ニッケル燐のスパッタリング処理を行い(第1の層を被覆するステップ)、母光学面10aに対して、輪帯10bを埋め尽くすようにニッケル燐の被膜を行う。ここで、輪帯10b(微細パターン)を埋めるとは、少なくとも輪帯10b(微細パターン)の地肌が隠れるように被膜すれば足りるが、第1の層であるニッケル燐の被膜Pの表面が、実質的に微細パターンの頂部近傍の高さとなるまで被膜されると好ましい。
【0026】
その後、ステップS127で、スルファミン酸ニッケル浴中に、表面を活性処理した基材すなわち部材Aを浸し、電極部材11と外部の電極14との間に電流を流すことで、電鋳部材20を第2の層として母光学面10a(即ちニッケル燐被膜P)から成長させる(第2の層を形成するステップ、図2(f)参照)。このとき、電鋳に先立ち電極部材11の外周面11fに絶縁剤を塗布することで、絶縁剤が塗布された部分の電鋳形成を抑制できる。射出成形時に許容できるチルト角度を1分として以下の加工を行う場合、その基準面となる電鋳部材が形成されない外周面11fの軸線方向長さを7mm以上とすることが望ましい。電鋳部材20は、その成長の過程で、母光学面10aに精度良く対応した光学面転写面20aと、輪帯10bに精度良く対応した輪帯転写面20bとを形成する(光学面転写面20aと輪帯転写面20bを合わせて光学転写面と呼ぶ)。
【0027】
その後、ステップS128で、電極部材11の外周面11fを基準として、部材Aと電鋳部材20とを一体で、SPDT加工機の回転軸と部材Aの光軸とを一致させるようにしてチャックに取り付け、電鋳部材20の外周面20cを切削加工する(金型を形成するステップ、図2(g)参照)。この操作において、母光学面の光軸は電鋳部材の回転中心と一致することとなる。上述したように、外周面11fの軸線方向長さを7mm以上とすることで、例えば部材Aをチャックに取り付ける際に用いる支持部材(不図示)と、部材Aとの端面平行度を考慮する必要がなく、セットの手間が省ける。なお、ステップS103において、用いられるSPDT加工機(第1の施盤)とステップS128において用いられるSPDT加工機(第2の施盤であるがここでは同じもの)が用いられている。しかし、異なるSPDT加工機を用いることも可能である。
【0028】
加えて、図2(g)に示すように、電鋳部材20に、裏打ち部材との位置決め部としてのピン孔20d(中央)及びネジ孔20eを加工する。尚、ピン孔20dの代わりに円筒軸を形成しても良い。
【0029】
ステップS129(前半)において、電鋳部材20を、以下に述べるように裏打ち部材と一体化することで、可動コア30を形成する。
【0030】
図4は、可動コア30の断面図である。図4において、可動コア30は、先端(図で右側)に配置した電鋳部材20と、後端(図で左側)に配置した押圧部36と、その間に配置された摺動部材35とから構成される。摺動部材35及び押圧部36が裏打ち部材となる。
【0031】
電鋳部材20は、そのピン孔20dに、円筒状の摺動部材35の端面中央から突出したピン部35aを係合させることで、摺動部材35と所定の関係で位置決めされ、更に、摺動部材35を軸線に平行に貫通する2つのボルト孔35bに挿通したボルト37を、ネジ孔20eに螺合させることで、電鋳部材20は摺動部材35に取り付けられる。
【0032】
摺動部材35は、ピン部35aの設けられた端面(図で右端)に対向する端面(図で左端)の中央に突出して形成されたネジ軸35cを、略円筒状の押圧部36の端部に形成されたネジ孔36aに螺合させることで、押圧部36に対して所定の位置関係で取り付けられる。図4において、本実施例では電鋳部材20の摩耗を考慮し、摺動部材35の外周面35eは、電鋳部材20及び押圧部36のフランジ部36b以外の部分の外周面よりも大径となっている。ここで、図1のステップS128(後半)で、電極部材11の外周面11fを基準に、摺動部材35と押圧部36の外周面が回転とともに切削加工により仕上げられるため、ステップS103で形成された基準がステップS129まで首尾一貫して使用され、基材の同心円パターン(輪帯10b)中心と、金型摺動部外形中心との同軸度を1μm以内に収めることができる(即ち、母光学面の光軸が摺動部材35と押圧部36を有する裏打ち部材の回転中心に一致する状態となる)。なお、ステップS129において電鋳部材20を裏打ち部材と一体化した後、切削加工後の電鋳部材20の外周面を基準に、裏打ち部材外周面を(切削加工により基材と同軸になるように)仕上げることも可能である。
【0033】
その後、図4の矢印Xで示す位置でカットすることにより、部材Aから電鋳部材20を脱型する(図1のステップS130)。このとき、ニッケル燐の被膜Pは、金型20側に付着し、母型の微細パターンを精度良く転写形成した状態で光学面転写面に露出する。更に、ステップS131で、電鋳部材20と基材を脱型後、可動コア30の先端の電鋳部材20を仕上げて、光学素子成形用金型を得る。
【0034】
図5は、このようにして形成された可動コア30を用いて光学素子を成形する状態を示す図である。図5において、光学面転写面41aを有する光学素子成形用金型41を保持する保持部42は、可動側キャビティ43に固定されている。可動側キャビティ43は、小開口43aと、それに同軸な大開口43bとを有している。可動側キャビティ43内に可動コア30を挿入したときに、摺動部材35の外周面35eが、小開口43aの内周面と摺動し、押圧部36のフランジ部36bの外周面36dが、大開口43bの内周面と摺動する。かかる2つの摺動部によって案内されることで、可動側キャビティ43に対して、大きく傾くことなく可動コア30は軸線方向に移動可能となる。光学素子成形用金型31、電鋳部材20の間に溶融した樹脂を射出し、可動コア30を矢印方向に加圧することで、光学素子OEが成形される。このように、基材から精度良く転写形成された光学素子成形用金型としての電鋳部材20を用いることで、光学素子OEの光学面には、電鋳部材20の光学面転写面20aが転写形成され、且つ輪帯転写面20bに対応した回折輪帯が光軸に同心的に精度よく形成されることとなる(即ち、光学素子OEの光学面には、電鋳部材20の光学転写面が光軸に対して精度良く形成される)。
【0035】
図6は、本発明者らが上述した工程を通して実際に形成した金型の微細パターン部を、図2(g)に示す状態で切断し拡大した模式図である。微細パターンの段差は、図で上下方向で約1μmである。本実施の形態においては、シリコン基材から直接電鋳を成長させるのではなく、スパッタリング処理で、シリコン基材の表面に第1の層としてのニッケル燐の被膜を形成し、そこから電鋳を成長させている。図6に示すように、ニッケル燐の被膜の結晶粒径が小さいことから(例えば微細パターンの最小寸法の1/10以下)、シリコン基材における断面が鋸歯状の微細パターンの形状に精密に倣うことができる。又、ニッケル燐の被膜は硬度が高いので、耐摩耗性に優れた金型の光学面転写面を提供できる。
【0036】
更に、電鋳形成時に、電極部材11と外部の電極14(図2(f)参照)との間の電流を、処理当初は小さくし、時間経過と共に増大させれば、図6に示すように、第2の層としての電鋳層の結晶において、ニッケル燐の被膜に近い側の平均粒径を、遠い側の平均粒径より小さくできる。こうすることで、ニッケル燐の被膜と電鋳層との結合力を高め、不測の剥がれなどを抑制できる。又、ニッケル燐の被膜に遠い側の電鋳層の平均粒径は大きくても、微細パターンの精度に影響はなく、又電鋳の成長速度が高まるため、処理時間の低減を図れるという効果がある。特に、上記ニッケル燐の被膜との組み合わせにより、単に電鋳のみで微細パターン上に徐々に電鋳を形成するよりも、電鋳の成長速度を大きくでき、且つ微細パターンの形状を正確に転写し、硬い金型表面を得られるという性能及び生産性を両立できる優れた効果を有する。
【0037】
以上、実施の形態並びに実施例を参照して本発明を説明してきたが、本発明は、上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良(実施の形態の組み合わせを含む)が可能であることは勿論である。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、比較的短時間で基材の微細パターンを精度良く転写可能な金型の製作方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態にかかる金型の製作方法を構成する工程を示すフローチャートである。
【図2】図1に示す主要な工程において、処理される母型の素材と電極部材の組立体すなわち部材Aを示す断面図である。
【図3】部材Aの上面図である。
【図4】可動コア30の断面図である。
【図5】可動コア30を用いて光学素子を成形する状態を示す図である。
【図6】金型の微細パターン部を切断し拡大した模式図である。
【符号の説明】
A 基材(部材)
P ニッケル燐被膜
10 母型の素材
11 電極部材
Claims (6)
- 基材の微細パターンが形成された表面に、気相成長で前記微細パターンを埋めた導電性の第1の層を被覆するステップと、
前記基材に被覆された第1の層から電鋳を成長させることで第2の層を形成するステップと、
前記基材から、前記第1の層及び前記第2の層を分離して、前記第1の層を転写面に露出させた金型を形成するステップと、を有することを特徴とする金型の製作方法。 - 前記第1の層の結晶の平均粒径は、前記微細パターンの最小寸法の1/10以下の寸法を有することを特徴とする請求項1に記載の金型の製作方法。
- 前記第1の層の結晶の平均粒径は、前記第2の層の結晶の平均粒径より小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の金型の製作方法。
- 前記第1の層に近い側における前記第2の層の結晶の平均粒径は、それより遠い側における前記第2の層の結晶の平均粒径よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の金型の製作方法。
- 前記第1の層は、スパッタリングで形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の金型の製作方法。
- 前記第1の層は、ニッケル燐の合金であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の金型の製作方法。
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2003
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