JP2004314447A - フレキシブル積層板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】更なる薄層化を実現し、耐屈曲性に優れたフレキシブル積層板、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】金属粒子の焼結、金属溶液の還元および/または分解、もしくは金属の蒸着および/またはメッキにより形成される金属層と、可撓性樹脂および有機溶剤を含有する樹脂溶液を前記金属層上に塗布、乾燥して形成される樹脂層からなることを特徴とするフレキシブル積層板、およびその製造方法。
【選択図】 図1
【解決手段】金属粒子の焼結、金属溶液の還元および/または分解、もしくは金属の蒸着および/またはメッキにより形成される金属層と、可撓性樹脂および有機溶剤を含有する樹脂溶液を前記金属層上に塗布、乾燥して形成される樹脂層からなることを特徴とするフレキシブル積層板、およびその製造方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、層間の密着力、耐屈曲性、電気特性に優れ、高密度配線が容易なフレキシブル積層板およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電子機器の回路基板等に用いられているフレキシブル積層板として、たとえば、特許文献1にあるような、ポリイミドフィルム層、接着剤層、銅層の3層から構成されているものがある。これは、ポリイミドフィルムと銅箔とを接着剤を介して接着させ、3層構造のフレキシブル銅張積層板としたものである。
しかしながら、このような3層構造の積層板には接着剤層が存在するため、薄層化には限界がある。また、接着剤層として、ポリイミドフィルムよりも耐熱性、電気特性、機械強度に劣る接着剤が用いられるために、ポリイミドフィルムの特性が充分に活かされないという問題もある。
【0003】
そこで、このような3層構造の積層板の欠点を補うものとして、接着剤層が存在しない2層構造(銅箔層とポリイミドフィルム層からなる)の積層板が開発されている。この2層構造の積層板は、接着剤層が存在しないため、ポリイミドフィルムの特性を充分に活かすことができるうえに、上記3層構造の積層板よりも薄膜化させることができ、軽量化と共に耐熱性および電気特性の向上が可能となっている。
このような2層構造の積層板は、特許文献2にあるような、銅箔の片面または両面にポリイミドの前駆体であるポリアミド酸のワニスを塗布した後、熱処理を施してイミド化させるキャスト法や、特許文献3にあるような、銅片を高真空中で加熱蒸発させてポリイミドフィルム表面に薄膜として形成させる蒸着法、またはメッキ液中での化学還元反応によりポリイミドフィルム表面に銅を析出させて銅層を形成する無電解メッキ法などにより作製することができる。
【0004】
しかしながら、近年、更なる電子機器の軽量化、回路の微細化が進行してきており、ポリイミドフィルム層、銅箔層のいずれに対しても、より一層の薄膜化が望まれている。
しかし、2層構造のフレキシブル積層板を作製するにあたって、より一層の薄膜化を特許文献2、3等に記載される方法で行おうとすると、材料(ポリイミドフィルムまたは銅箔)のハンドリング性が悪くなり、薄膜化を図ることが困難であった。また、蒸着法やメッキ法などによってポリイミドフィルム上に金属を積層させる方法は、ポリイミドフィルムと金属との界面において剥離を生じやすい、すなわち密着性が悪いという問題があり、これが原因で耐屈曲性に劣るといった問題も抱えていた。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−48264号公報
【特許文献2】
特開平5−129774号公報
【特許文献3】
特開平5−183266号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、上記問題を解決し、更なる薄層化を実現し、耐屈曲性に優れたフレキシブル積層板およびその製造方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、薄膜状の金属層と、該金属層上に、可撓性樹脂と有機溶剤とを含有する樹脂溶液を塗布、乾燥して形成される樹脂層とからなるフレキシブル積層板により上記課題が解決されることを発見し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、前記課題を解決する本発明は、
(1)金属粒子の焼結により形成される金属層と、可撓性樹脂と有機溶剤とを含有する樹脂溶液を前記金属層上に塗布、乾燥して形成される樹脂層とからなることを特徴とするフレキシブル積層板。
(2)金属溶液の還元および/または分解により形成される金属層と、可撓性樹脂と有機溶剤とを含有する樹脂溶液を前記金属層上に塗布、乾燥して形成される樹脂層とからなることを特徴とするフレキシブル積層板。
(3)金属の蒸着および/またはメッキにより形成される金属層と、可撓性樹脂と有機溶剤とを含有する樹脂溶液を前記金属層上に塗布、乾燥して形成される樹脂層とからなることを特徴とするフレキシブル積層板。
(4)前記可撓性樹脂が、ポリイミド樹脂および/またはポリアミドイミド樹脂であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載のフレキシブル積層板。
(5)前記樹脂溶液が、さらにアルコキシシランおよび/またはアルコキシチタンを含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載のフレキシブル積層板。
(6)基体上に、金属粒子を含有する導電ペーストを塗布、乾燥して未焼結金属層を形成する工程と、該未焼結金属層を焼結して金属層を形成する工程と、前記未焼結金属層または前記金属層上に、可撓性樹脂と有機溶剤とを含有する樹脂溶液を塗布、乾燥して樹脂層を形成し、積層体を得る工程と、該積層体から前記基体を剥離する工程とを含むことを特徴とする(1),(4)または(5)記載のフレキシブル積層板の製造方法。
(7)基体上に、金属化合物を含有する導電ペーストを塗布、乾燥して金属層を形成する工程と、該金属層上に、可撓性樹脂と有機溶剤とを含有する樹脂溶液を塗布、乾燥して樹脂層を形成し、積層体を得る工程と、該積層体から前記基体を剥離する工程とを含むことを特徴とする(2),(4)または(5)記載のフレキシブル積層板の製造方法。
(8)基体上に、金属を蒸着および/またはメッキして金属層を形成する工程と、該金属層上に、可撓性樹脂と有機溶剤とを含有する樹脂溶液を塗布、乾燥して樹脂層を形成し、積層体を得る工程と、該積層体から前記基体を剥離する工程とを含むことを特徴とする(3)〜(5)のいずれか一項に記載のフレキシブル積層板の製造方法。
である。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1に、本発明のフレキシブル積層板1の断面の模式図を示す。本発明のフレキシブル積層板1は金属層2および樹脂層3からなっている。
【0010】
金属層2は、金属粒子の焼結により形成される金属層、金属化合物の還元および/または分解により形成される金属層、もしくは金属の蒸着および/またはメッキにより形成される金属層である。このようにして形成される金属層は、体積抵抗で5×10−5〜2×10−6Ω・cm程度の抵抗値を有する。
金属層2の厚みは、0.01〜50μmが好ましく、1〜20μmがより好ましい。厚みが0.01μmよりも小さいと微細な回路を形成した際に十分な導電性を得ることができないおそれがある。一方、厚みが50μmよりも大きいと、薄膜化、軽量化がなされないし、耐屈曲性に乏しい金属層となりやすい。
【0011】
金属粒子の焼結により形成される金属層としては、金属粒子を含有する導電ペーストを焼結して得られる金属層が挙げられる。この場合、金属としては、金、銀および銅から選ばれる1種または2種以上が望ましい。
このような金属層としては、金属粉末と無機結合剤とを有機ビヒクル中に分散した導電ペーストを高温焼結して、有機ビヒクルを焼損させた金属層や、1〜500nmといったナノサイズの粒径を有する金属粒子を金属の融点以下、常温付近の温度で焼結し、低抵抗の金属層としたものがある。
有機ビヒクルとしては、エチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等の樹脂をテルビネオール、ブチルカルビトール等の溶剤に溶解したものなどが挙げられる。
無機結合剤としては、ホウケイ酸亜鉛系の低融点ガラス等が挙げられる。
従来、上記したような高温焼結するタイプの導電ペーストは、通常、400〜800℃程度の高温が必要であるため、このような導電ペーストを用いて金属層を有機樹脂上に形成することは困難であったが、本発明においては、製造の際に、後述する基体として耐熱性の高い無機基体を用いることにより、有機樹脂上に金属層が形成されたフレキシブル積層板を得ることが可能となっている。
【0012】
金属溶液の還元および/または分解により形成される金属層としては、酸化金属の還元や、金属塩の還元、または有機金属化合物の分解によって生成される金属層が挙げられる。すなわち、酸化銀、酸化銅のような金属酸化物の微粒子を含有するコロイド溶液(金属溶液)に後述する還元剤を添加するなどによって還元して得られる金属層や、硝酸銀、ハロゲン化銀、酢酸銀などの銀化合物、硝酸銅、ハロゲン化銅、酢酸銅などの銅化合物を、上記と同様に還元剤により還元して得られる金属層、金属カルボン酸化合物、金属アミン化合物、金属メルカプト化合物、アセチルアセトン金属錯体などの有機金属化合物を加熱により分解して得られる金属層などを挙げることができる。また、これらの形成方法を組み合わせて形成される金属層を使用することも可能である。
金属溶液の溶剤としては、特に限定する必要はなく、水や、アルコール系、ケトン系、エステル系、炭化水素系、芳香族系の有機溶剤が挙げられる。
【0013】
金属の蒸着および/またはメッキにより形成される金属層としては、公知の蒸着法および/またはメッキ法によって得られる金属層が挙げられる。この場合、金属としては、金、銀、銅、ニッケルの1種または2種以上の金属が望ましい。
蒸着法としては、物理蒸着法と、化学蒸着法(CVD法)があり、いずれの方法も使用可能である。中でも、物理蒸着法の1つであるスパッタリング法は、形成される金属層が緻密で耐折り曲げ性に優れ、また、膜厚のコントロールがしやすい等の理由で、好ましく用いられる。
【0014】
樹脂層3は、可撓性樹脂と有機溶剤とを含有する樹脂溶液を、金属層2に塗布、乾燥して形成されるものである。
樹脂層3の厚みは、特に制限はないが、3〜50μmが好ましく、5〜30μmがより好ましい。厚みが3μmより薄くなると、樹脂層の強度が不足して取扱中に破損しやすくなり、50μmより厚いと、当該フレキシブル積層体を使用した機器の薄膜化を妨げるおそれがある。
【0015】
可撓性樹脂としては、可撓性を有し、有機溶剤に可溶なものであれば使用可能であるが、機械的強度、耐熱性に優れたものが好ましく、たとえば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリイミドシリコーン樹脂等が例示される。特に、耐熱性、機械的特性、電気的特性に優れたポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂が望ましい。これらの樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂としては、ポリアミック酸を閉環する前は有機溶剤に可溶であって、ポリアミック酸を閉環した後は有機溶剤に不溶である通常のポリイミド樹脂の閉環前のものと、ポリアミック酸を閉環した後にも有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂があるが、どちらも使用が可能である。
【0016】
さらに、金属層2への密着性を向上し、より耐熱性に優れたものとするために、上記樹脂溶液に、さらにアルコキシシランおよび/またはアルコキシチタンを含有させることが最も望ましい形態である。これにより、樹脂層3を、無機シラン、無機チタンと樹脂とのいわゆる有機無機ハイブリット樹脂とすることができる。
【0017】
樹脂溶液に含まれる有機溶剤としては、上記した可撓性樹脂を溶解することができるものであれば特に限定する必要はなく、アルコール系、ケトン系、エステル系、炭化水素系、芳香族系溶剤などの任意の有機溶剤を用いることができる。
【0018】
図2に、本発明のフレキシブル積層板の製造方法を示す。
本発明において、フレキシブル積層板1は、以下の工程a)〜c)により製造される。
a)基体4上に、薄膜状の金属層2を形成する工程、
b)金属層2上に、上記樹脂溶液を塗布し、溶剤を乾燥して樹脂層3を形成し、基体4、金属層2および樹脂層3からなる積層体5を得る工程と、
c)前記積層体5から前記基体4を剥離し、フレキシブル積層板1を得る工程
【0019】
前記基体4としては、ハンドリング性に優れたものであることが望ましい。ハンドリング性に優れた基体を使用することによって、2層構造各層の薄層化を図ることができる。基体4の材質としては、たとえば、ガラス板、金属板、セラミック板などの無機基体;ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂等からなるプラスチックシート、プラスチックフィルムなどの有機基体を用いることができる。また、基体4の厚みとしては、20μm以上が好ましく、20μm〜10mmがより好ましい。
用いる基体は、金属層の形成方法、製造効率等を考慮しながら種々選択すればよい。たとえば、金属層を高温の焼結によって得る場合には、耐熱性に優れた無機基体を用いることが望ましい。また、基体として、フィルム状態で連続的に供給して巻き取ることができる有機基体を用いる場合には、製造効率の良い工程が設計できる。
【0020】
この基体4は、最終的には製品(フレキシブル積層板)から剥離されるものである。そのため、基体4の表面には、剥離性を向上するための剥離材を設けておくことが好ましい。この剥離材としては、シリコーン樹脂やフッ素樹脂からなる有機剥離材や、酸化ジルコニウム薄膜などの無機剥離材が使用でき、特に耐熱性、耐久性に優れた酸化ジルコニウム薄膜を用いることが望ましい。
【0021】
製造工程a)〜c)をより詳細に説明する。
まず、工程a)において、前記のように剥離材処理された基体4上に、前記したように、金属粒子の焼結、金属溶液の還元および/または分解、もしくは金属の蒸着および/またはメッキにより、厚みが好ましくは0.01μm〜50μm、より好ましくは1〜20μmとなるように金属層2を形成する。
【0022】
前記したように、金属粒子の焼結により金属層を設ける場合には、基体4上に、金属粒子を含有する導電ペーストを、焼結したときの厚みが上記した範囲になるように塗布し、溶剤を乾燥して未焼結金属層を形成した後、該未焼結金属層を焼結すればよい。
なお、未焼結金属層の焼結は、樹脂層を積層する前に溶剤の乾燥と同時に行ってもよく、樹脂層を積層した後に行ってもよい。後者のように、焼結前に樹脂層を積層することによって、金属層と樹脂層との密着性が向上し、これによって耐屈曲性に優れたものとなるので好ましい。
また、未焼結金属層の焼結は、複数回行ってもよく、たとえば、樹脂層を積層する前と積層した後の2回行ってもよい。
【0023】
金属溶液の還元および/または分解により金属層を設ける場合には、上述した金属化合物および必要に応じて還元剤を含有する導電ペーストを基体上に塗布、加熱、乾燥して金属層を形成する。
還元剤としては、エチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどの還元性樹脂や、アスコルビン酸、ハイドロキノン、ベンゾキノン、カテコール、p−メトキシフェノール、ヒドラジン類、ホルムアルデヒド、グルコース、アミン類、トコフェロールなどが挙げられる。
導電ペーストの塗布は、上記と同様に、形成した金属層の厚みが上記した範囲になるように行えばよい。
【0024】
また、金属の蒸着および/またはメッキにより金属層を設ける場合には、蒸着および/またはメッキ後の厚みが上記した範囲になるようにすればよい。
【0025】
次いで、工程b)において、金属層2(または未焼結金属層)上に、上記樹脂溶液を塗布し、有機溶剤を乾燥して樹脂層3を形成し、基体4、金属層2および樹脂層3からなる積層体5を得る。
樹脂溶液の塗布は、バーコーティング、コンマコーティング、グラビアコーティング、スクリーン印刷、グラビア印刷などの公知の塗布方法によって行うことができる。
乾燥は、例えば、熱風炉、IR炉などを用い、通常100〜250℃程度の加熱によって行うことができる。
【0026】
次いで、工程c)において、積層体5から基体4を剥離し、フレキシブル積層板1を得る。
【0027】
上述のように、ハンドリング性に優れた基体上に薄膜状の金属層を形成し、該金属層上に溶液状の樹脂を塗布、乾燥する本発明の方法により製造されるフレキシブル積層板は、さらなる薄層化が実現可能であり、また、従来のように樹脂層(フィルム成形体)上に金属層を直接形成することによる金属層と樹脂層との密着性の不足が解消され、これによって耐屈曲性の向上がなされた、密着性および耐屈曲性の優れたものとなる。
金属層と樹脂層との密着性が改善される理由は、定かではないが、金属粒子の焼結や、金属溶液の還元および/または分解、金属の蒸着および/またはメッキ等の手段により形成される金属層中には空隙が存在しており、該金属層に対して樹脂溶液を塗布することにより、樹脂溶液が金属層内に浸透することが一因として考えられる。
【0028】
【実施例】
以下に、実施例を用いて、本発明をさらに詳しく説明する。
【0029】
(実施例1)
基体として厚み5mmの耐熱ガラスを用い、この上に酸化ジルコニウムをスパッタリングして離型基体を作製した。
次いで、圧力0.6Torr(80Pa)のヘリウム真空条件下で銀を蒸発させ、生成した銀超微粒子にミネラルスピリットの蒸気を接触させて冷却回収して、溶媒(ミネラルスピリット)中に独立した状態で分散している平均粒子径0.01μmの銀超微粒子を20wt%含有する導電ペーストを作製した。
この導電ペーストを、上記で作製した離型基体上に、コンマコーターを用いてコーティングし、250℃で48時間乾燥、焼結して、厚み2μmの金属層を得た。
この金属層上に、固形分30%のポリアミドイミド溶液(バイロマックス:東洋紡績製)を、コンマコーターを用いて、厚み50μmでコーティングし、180℃で10分間乾燥し、厚み15μmの樹脂層を形成した。
こうして得られた積層体から基体を剥離し、フレキシブル積層板を得た。得られたフレキシブル積層板の厚み、耐屈曲性を下記手順で測定した。その結果を表1に示す。
【0030】
(厚み)
JIS C 6471に従い、電気マイクロメーターにて測定した値を示す。
(耐屈曲性)
JIS C 6471による耐折性試験を行い、断線するまでの回数を測定した。
【0031】
(実施例2)
基体として厚み50μmのポリイミドフィルム(カプトンEN:東レ・デュポン製)を用い、この上にシリコーン離型材(KS839:信越化学工業製)を塗布して離型基体を作製した。
還元型銀導電ペースト(XA−9024:藤倉化成製)を上記で作製した離型基体上に、コンマコーターを用いて厚み10μmでコーティングし、180℃で1時間乾燥、焼結して厚み2μmの金属層を得た。
この金属層上に、固形分30%のポリアミドイミド溶液(バイロマックス:東洋紡績製)をコンマコーターを用いて厚み50μmでコーティングし、180℃で10分間乾燥し、厚み15μmの樹脂層を形成した。
こうして得られた積層体から基体を剥離し、フレキシブル積層板を得た。得られたフレキシブル積層板の厚み、耐屈曲性を実施例1と同様にして測定した。その結果を表1に示す。
【0032】
(実施例3)
基体として厚み50μmのポリイミドフィルム(カプトンEN:東レ・デュポン製)を用い、この上に、銅スパッタリングにより厚み0.2μmの金属層を形成した。
この金属層上に、固形分30%のポリアミドイミド溶液(バイロマックス:東洋紡績製)をコンマコーターを用いて厚み50μmでコーティングし、180℃で10分間乾燥し、厚み15μmの樹脂層を形成した。
こうして得られた積層体から基体を剥離し、フレキシブル積層板を得た。得られたフレキシブル積層板の厚み、耐屈曲性を実施例1と同様にして測定した。その結果を表1に示す。
【0033】
(実施例4)
基体として厚み5mmの耐熱ガラスを用い、この上に酸化ジルコニウムをスパッタリングして離型基体を作製した。
圧力0.6Torr(80Pa)のヘリウム真空条件下で銀を蒸発させ、生成した銀超微粒子にミネラルスピリットの蒸気を接触させて冷却回収し、溶媒(ミネラルスピリット)中に独立した状態で分散している平均粒子径0.01μmの銀超微粒子を20wt%含有する導電ペーストを作製した。
この導電ペーストを、上記で作製した離型基体上にコンマコーターを用いてコーティングし、250℃で48時間乾燥、焼結して厚み2μmの金属層を得た。
次に、ポリアミック酸(Pyre−ML:(株)I.S.T製)にN−メチルピロリドンを加え、80℃まで昇温し、エポキシ基含有アルコキシシラン(KBM403:信越化学工業製)と触媒として2−メチルイミダゾールを加え、80℃で4時間、反応させた。これを室温まで冷却し、固形分20%のアルコキシシラン含有ポリアミック酸樹脂溶液を得た。
前記の金属層上に、上記で作製したアルコキシシラン含有ポリアミック酸樹脂溶液をコンマコーターを用いて厚み50μmでコーティングし、180℃で24時間乾燥し、厚み10μmの樹脂層を形成した。
こうして得られた積層体から基体を剥離し、フレキシブル積層板を得た。得られたフレキシブル積層板の厚み、耐屈曲性を実施例1と同様にして測定した。その結果を表1に示す。
【0034】
(比較例1)
市販の3層銅貼積層板(RAS32S47:信越化学工業製)を用い、実施例1と同様にして、厚み、耐屈曲性を測定した。その結果を表1に示す。
【0035】
(比較例2)
市販のキャスティング法2層銅貼積層板(エスパネックス:新日鐵製)を用い、実施例1と同様にして、厚み、耐屈曲性を測定した。その結果を表1に示す。
【0036】
(比較例3)
市販の蒸着法2層銅貼積層板(メタロイヤル:東洋メタライジング製)を用い、実施例1と同様にして、厚み、耐屈曲性を測定した。その結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表1から明らかなように、実施例1〜4のフレキシブル積層板は、厚みが20μm以下と非常に薄く、それと同時に、耐屈曲性も50000回以上と非常に優れていた。これに対し、比較例1、3の積層板は、厚みが厚く、耐屈曲性も劣っていた。また、比較例2の積層板は、耐屈曲性は良好であるものの、厚みが厚いものであった。
【0039】
【発明の効果】
上記したように、本発明によれば、更なる薄層化を実現し、耐屈曲性に優れたフレキシブル積層板、およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフレキシブル積層板の断面を示す模式図。
【図2】本発明のフレキシブル積層板の製造方法を示す説明図。
【符号の説明】
1…フレキシブル積層板、2…金属層、3…樹脂層、4…基体
【発明の属する技術分野】
本発明は、層間の密着力、耐屈曲性、電気特性に優れ、高密度配線が容易なフレキシブル積層板およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電子機器の回路基板等に用いられているフレキシブル積層板として、たとえば、特許文献1にあるような、ポリイミドフィルム層、接着剤層、銅層の3層から構成されているものがある。これは、ポリイミドフィルムと銅箔とを接着剤を介して接着させ、3層構造のフレキシブル銅張積層板としたものである。
しかしながら、このような3層構造の積層板には接着剤層が存在するため、薄層化には限界がある。また、接着剤層として、ポリイミドフィルムよりも耐熱性、電気特性、機械強度に劣る接着剤が用いられるために、ポリイミドフィルムの特性が充分に活かされないという問題もある。
【0003】
そこで、このような3層構造の積層板の欠点を補うものとして、接着剤層が存在しない2層構造(銅箔層とポリイミドフィルム層からなる)の積層板が開発されている。この2層構造の積層板は、接着剤層が存在しないため、ポリイミドフィルムの特性を充分に活かすことができるうえに、上記3層構造の積層板よりも薄膜化させることができ、軽量化と共に耐熱性および電気特性の向上が可能となっている。
このような2層構造の積層板は、特許文献2にあるような、銅箔の片面または両面にポリイミドの前駆体であるポリアミド酸のワニスを塗布した後、熱処理を施してイミド化させるキャスト法や、特許文献3にあるような、銅片を高真空中で加熱蒸発させてポリイミドフィルム表面に薄膜として形成させる蒸着法、またはメッキ液中での化学還元反応によりポリイミドフィルム表面に銅を析出させて銅層を形成する無電解メッキ法などにより作製することができる。
【0004】
しかしながら、近年、更なる電子機器の軽量化、回路の微細化が進行してきており、ポリイミドフィルム層、銅箔層のいずれに対しても、より一層の薄膜化が望まれている。
しかし、2層構造のフレキシブル積層板を作製するにあたって、より一層の薄膜化を特許文献2、3等に記載される方法で行おうとすると、材料(ポリイミドフィルムまたは銅箔)のハンドリング性が悪くなり、薄膜化を図ることが困難であった。また、蒸着法やメッキ法などによってポリイミドフィルム上に金属を積層させる方法は、ポリイミドフィルムと金属との界面において剥離を生じやすい、すなわち密着性が悪いという問題があり、これが原因で耐屈曲性に劣るといった問題も抱えていた。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−48264号公報
【特許文献2】
特開平5−129774号公報
【特許文献3】
特開平5−183266号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、上記問題を解決し、更なる薄層化を実現し、耐屈曲性に優れたフレキシブル積層板およびその製造方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、薄膜状の金属層と、該金属層上に、可撓性樹脂と有機溶剤とを含有する樹脂溶液を塗布、乾燥して形成される樹脂層とからなるフレキシブル積層板により上記課題が解決されることを発見し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、前記課題を解決する本発明は、
(1)金属粒子の焼結により形成される金属層と、可撓性樹脂と有機溶剤とを含有する樹脂溶液を前記金属層上に塗布、乾燥して形成される樹脂層とからなることを特徴とするフレキシブル積層板。
(2)金属溶液の還元および/または分解により形成される金属層と、可撓性樹脂と有機溶剤とを含有する樹脂溶液を前記金属層上に塗布、乾燥して形成される樹脂層とからなることを特徴とするフレキシブル積層板。
(3)金属の蒸着および/またはメッキにより形成される金属層と、可撓性樹脂と有機溶剤とを含有する樹脂溶液を前記金属層上に塗布、乾燥して形成される樹脂層とからなることを特徴とするフレキシブル積層板。
(4)前記可撓性樹脂が、ポリイミド樹脂および/またはポリアミドイミド樹脂であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載のフレキシブル積層板。
(5)前記樹脂溶液が、さらにアルコキシシランおよび/またはアルコキシチタンを含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載のフレキシブル積層板。
(6)基体上に、金属粒子を含有する導電ペーストを塗布、乾燥して未焼結金属層を形成する工程と、該未焼結金属層を焼結して金属層を形成する工程と、前記未焼結金属層または前記金属層上に、可撓性樹脂と有機溶剤とを含有する樹脂溶液を塗布、乾燥して樹脂層を形成し、積層体を得る工程と、該積層体から前記基体を剥離する工程とを含むことを特徴とする(1),(4)または(5)記載のフレキシブル積層板の製造方法。
(7)基体上に、金属化合物を含有する導電ペーストを塗布、乾燥して金属層を形成する工程と、該金属層上に、可撓性樹脂と有機溶剤とを含有する樹脂溶液を塗布、乾燥して樹脂層を形成し、積層体を得る工程と、該積層体から前記基体を剥離する工程とを含むことを特徴とする(2),(4)または(5)記載のフレキシブル積層板の製造方法。
(8)基体上に、金属を蒸着および/またはメッキして金属層を形成する工程と、該金属層上に、可撓性樹脂と有機溶剤とを含有する樹脂溶液を塗布、乾燥して樹脂層を形成し、積層体を得る工程と、該積層体から前記基体を剥離する工程とを含むことを特徴とする(3)〜(5)のいずれか一項に記載のフレキシブル積層板の製造方法。
である。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1に、本発明のフレキシブル積層板1の断面の模式図を示す。本発明のフレキシブル積層板1は金属層2および樹脂層3からなっている。
【0010】
金属層2は、金属粒子の焼結により形成される金属層、金属化合物の還元および/または分解により形成される金属層、もしくは金属の蒸着および/またはメッキにより形成される金属層である。このようにして形成される金属層は、体積抵抗で5×10−5〜2×10−6Ω・cm程度の抵抗値を有する。
金属層2の厚みは、0.01〜50μmが好ましく、1〜20μmがより好ましい。厚みが0.01μmよりも小さいと微細な回路を形成した際に十分な導電性を得ることができないおそれがある。一方、厚みが50μmよりも大きいと、薄膜化、軽量化がなされないし、耐屈曲性に乏しい金属層となりやすい。
【0011】
金属粒子の焼結により形成される金属層としては、金属粒子を含有する導電ペーストを焼結して得られる金属層が挙げられる。この場合、金属としては、金、銀および銅から選ばれる1種または2種以上が望ましい。
このような金属層としては、金属粉末と無機結合剤とを有機ビヒクル中に分散した導電ペーストを高温焼結して、有機ビヒクルを焼損させた金属層や、1〜500nmといったナノサイズの粒径を有する金属粒子を金属の融点以下、常温付近の温度で焼結し、低抵抗の金属層としたものがある。
有機ビヒクルとしては、エチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等の樹脂をテルビネオール、ブチルカルビトール等の溶剤に溶解したものなどが挙げられる。
無機結合剤としては、ホウケイ酸亜鉛系の低融点ガラス等が挙げられる。
従来、上記したような高温焼結するタイプの導電ペーストは、通常、400〜800℃程度の高温が必要であるため、このような導電ペーストを用いて金属層を有機樹脂上に形成することは困難であったが、本発明においては、製造の際に、後述する基体として耐熱性の高い無機基体を用いることにより、有機樹脂上に金属層が形成されたフレキシブル積層板を得ることが可能となっている。
【0012】
金属溶液の還元および/または分解により形成される金属層としては、酸化金属の還元や、金属塩の還元、または有機金属化合物の分解によって生成される金属層が挙げられる。すなわち、酸化銀、酸化銅のような金属酸化物の微粒子を含有するコロイド溶液(金属溶液)に後述する還元剤を添加するなどによって還元して得られる金属層や、硝酸銀、ハロゲン化銀、酢酸銀などの銀化合物、硝酸銅、ハロゲン化銅、酢酸銅などの銅化合物を、上記と同様に還元剤により還元して得られる金属層、金属カルボン酸化合物、金属アミン化合物、金属メルカプト化合物、アセチルアセトン金属錯体などの有機金属化合物を加熱により分解して得られる金属層などを挙げることができる。また、これらの形成方法を組み合わせて形成される金属層を使用することも可能である。
金属溶液の溶剤としては、特に限定する必要はなく、水や、アルコール系、ケトン系、エステル系、炭化水素系、芳香族系の有機溶剤が挙げられる。
【0013】
金属の蒸着および/またはメッキにより形成される金属層としては、公知の蒸着法および/またはメッキ法によって得られる金属層が挙げられる。この場合、金属としては、金、銀、銅、ニッケルの1種または2種以上の金属が望ましい。
蒸着法としては、物理蒸着法と、化学蒸着法(CVD法)があり、いずれの方法も使用可能である。中でも、物理蒸着法の1つであるスパッタリング法は、形成される金属層が緻密で耐折り曲げ性に優れ、また、膜厚のコントロールがしやすい等の理由で、好ましく用いられる。
【0014】
樹脂層3は、可撓性樹脂と有機溶剤とを含有する樹脂溶液を、金属層2に塗布、乾燥して形成されるものである。
樹脂層3の厚みは、特に制限はないが、3〜50μmが好ましく、5〜30μmがより好ましい。厚みが3μmより薄くなると、樹脂層の強度が不足して取扱中に破損しやすくなり、50μmより厚いと、当該フレキシブル積層体を使用した機器の薄膜化を妨げるおそれがある。
【0015】
可撓性樹脂としては、可撓性を有し、有機溶剤に可溶なものであれば使用可能であるが、機械的強度、耐熱性に優れたものが好ましく、たとえば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリイミドシリコーン樹脂等が例示される。特に、耐熱性、機械的特性、電気的特性に優れたポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂が望ましい。これらの樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂としては、ポリアミック酸を閉環する前は有機溶剤に可溶であって、ポリアミック酸を閉環した後は有機溶剤に不溶である通常のポリイミド樹脂の閉環前のものと、ポリアミック酸を閉環した後にも有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂があるが、どちらも使用が可能である。
【0016】
さらに、金属層2への密着性を向上し、より耐熱性に優れたものとするために、上記樹脂溶液に、さらにアルコキシシランおよび/またはアルコキシチタンを含有させることが最も望ましい形態である。これにより、樹脂層3を、無機シラン、無機チタンと樹脂とのいわゆる有機無機ハイブリット樹脂とすることができる。
【0017】
樹脂溶液に含まれる有機溶剤としては、上記した可撓性樹脂を溶解することができるものであれば特に限定する必要はなく、アルコール系、ケトン系、エステル系、炭化水素系、芳香族系溶剤などの任意の有機溶剤を用いることができる。
【0018】
図2に、本発明のフレキシブル積層板の製造方法を示す。
本発明において、フレキシブル積層板1は、以下の工程a)〜c)により製造される。
a)基体4上に、薄膜状の金属層2を形成する工程、
b)金属層2上に、上記樹脂溶液を塗布し、溶剤を乾燥して樹脂層3を形成し、基体4、金属層2および樹脂層3からなる積層体5を得る工程と、
c)前記積層体5から前記基体4を剥離し、フレキシブル積層板1を得る工程
【0019】
前記基体4としては、ハンドリング性に優れたものであることが望ましい。ハンドリング性に優れた基体を使用することによって、2層構造各層の薄層化を図ることができる。基体4の材質としては、たとえば、ガラス板、金属板、セラミック板などの無機基体;ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂等からなるプラスチックシート、プラスチックフィルムなどの有機基体を用いることができる。また、基体4の厚みとしては、20μm以上が好ましく、20μm〜10mmがより好ましい。
用いる基体は、金属層の形成方法、製造効率等を考慮しながら種々選択すればよい。たとえば、金属層を高温の焼結によって得る場合には、耐熱性に優れた無機基体を用いることが望ましい。また、基体として、フィルム状態で連続的に供給して巻き取ることができる有機基体を用いる場合には、製造効率の良い工程が設計できる。
【0020】
この基体4は、最終的には製品(フレキシブル積層板)から剥離されるものである。そのため、基体4の表面には、剥離性を向上するための剥離材を設けておくことが好ましい。この剥離材としては、シリコーン樹脂やフッ素樹脂からなる有機剥離材や、酸化ジルコニウム薄膜などの無機剥離材が使用でき、特に耐熱性、耐久性に優れた酸化ジルコニウム薄膜を用いることが望ましい。
【0021】
製造工程a)〜c)をより詳細に説明する。
まず、工程a)において、前記のように剥離材処理された基体4上に、前記したように、金属粒子の焼結、金属溶液の還元および/または分解、もしくは金属の蒸着および/またはメッキにより、厚みが好ましくは0.01μm〜50μm、より好ましくは1〜20μmとなるように金属層2を形成する。
【0022】
前記したように、金属粒子の焼結により金属層を設ける場合には、基体4上に、金属粒子を含有する導電ペーストを、焼結したときの厚みが上記した範囲になるように塗布し、溶剤を乾燥して未焼結金属層を形成した後、該未焼結金属層を焼結すればよい。
なお、未焼結金属層の焼結は、樹脂層を積層する前に溶剤の乾燥と同時に行ってもよく、樹脂層を積層した後に行ってもよい。後者のように、焼結前に樹脂層を積層することによって、金属層と樹脂層との密着性が向上し、これによって耐屈曲性に優れたものとなるので好ましい。
また、未焼結金属層の焼結は、複数回行ってもよく、たとえば、樹脂層を積層する前と積層した後の2回行ってもよい。
【0023】
金属溶液の還元および/または分解により金属層を設ける場合には、上述した金属化合物および必要に応じて還元剤を含有する導電ペーストを基体上に塗布、加熱、乾燥して金属層を形成する。
還元剤としては、エチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどの還元性樹脂や、アスコルビン酸、ハイドロキノン、ベンゾキノン、カテコール、p−メトキシフェノール、ヒドラジン類、ホルムアルデヒド、グルコース、アミン類、トコフェロールなどが挙げられる。
導電ペーストの塗布は、上記と同様に、形成した金属層の厚みが上記した範囲になるように行えばよい。
【0024】
また、金属の蒸着および/またはメッキにより金属層を設ける場合には、蒸着および/またはメッキ後の厚みが上記した範囲になるようにすればよい。
【0025】
次いで、工程b)において、金属層2(または未焼結金属層)上に、上記樹脂溶液を塗布し、有機溶剤を乾燥して樹脂層3を形成し、基体4、金属層2および樹脂層3からなる積層体5を得る。
樹脂溶液の塗布は、バーコーティング、コンマコーティング、グラビアコーティング、スクリーン印刷、グラビア印刷などの公知の塗布方法によって行うことができる。
乾燥は、例えば、熱風炉、IR炉などを用い、通常100〜250℃程度の加熱によって行うことができる。
【0026】
次いで、工程c)において、積層体5から基体4を剥離し、フレキシブル積層板1を得る。
【0027】
上述のように、ハンドリング性に優れた基体上に薄膜状の金属層を形成し、該金属層上に溶液状の樹脂を塗布、乾燥する本発明の方法により製造されるフレキシブル積層板は、さらなる薄層化が実現可能であり、また、従来のように樹脂層(フィルム成形体)上に金属層を直接形成することによる金属層と樹脂層との密着性の不足が解消され、これによって耐屈曲性の向上がなされた、密着性および耐屈曲性の優れたものとなる。
金属層と樹脂層との密着性が改善される理由は、定かではないが、金属粒子の焼結や、金属溶液の還元および/または分解、金属の蒸着および/またはメッキ等の手段により形成される金属層中には空隙が存在しており、該金属層に対して樹脂溶液を塗布することにより、樹脂溶液が金属層内に浸透することが一因として考えられる。
【0028】
【実施例】
以下に、実施例を用いて、本発明をさらに詳しく説明する。
【0029】
(実施例1)
基体として厚み5mmの耐熱ガラスを用い、この上に酸化ジルコニウムをスパッタリングして離型基体を作製した。
次いで、圧力0.6Torr(80Pa)のヘリウム真空条件下で銀を蒸発させ、生成した銀超微粒子にミネラルスピリットの蒸気を接触させて冷却回収して、溶媒(ミネラルスピリット)中に独立した状態で分散している平均粒子径0.01μmの銀超微粒子を20wt%含有する導電ペーストを作製した。
この導電ペーストを、上記で作製した離型基体上に、コンマコーターを用いてコーティングし、250℃で48時間乾燥、焼結して、厚み2μmの金属層を得た。
この金属層上に、固形分30%のポリアミドイミド溶液(バイロマックス:東洋紡績製)を、コンマコーターを用いて、厚み50μmでコーティングし、180℃で10分間乾燥し、厚み15μmの樹脂層を形成した。
こうして得られた積層体から基体を剥離し、フレキシブル積層板を得た。得られたフレキシブル積層板の厚み、耐屈曲性を下記手順で測定した。その結果を表1に示す。
【0030】
(厚み)
JIS C 6471に従い、電気マイクロメーターにて測定した値を示す。
(耐屈曲性)
JIS C 6471による耐折性試験を行い、断線するまでの回数を測定した。
【0031】
(実施例2)
基体として厚み50μmのポリイミドフィルム(カプトンEN:東レ・デュポン製)を用い、この上にシリコーン離型材(KS839:信越化学工業製)を塗布して離型基体を作製した。
還元型銀導電ペースト(XA−9024:藤倉化成製)を上記で作製した離型基体上に、コンマコーターを用いて厚み10μmでコーティングし、180℃で1時間乾燥、焼結して厚み2μmの金属層を得た。
この金属層上に、固形分30%のポリアミドイミド溶液(バイロマックス:東洋紡績製)をコンマコーターを用いて厚み50μmでコーティングし、180℃で10分間乾燥し、厚み15μmの樹脂層を形成した。
こうして得られた積層体から基体を剥離し、フレキシブル積層板を得た。得られたフレキシブル積層板の厚み、耐屈曲性を実施例1と同様にして測定した。その結果を表1に示す。
【0032】
(実施例3)
基体として厚み50μmのポリイミドフィルム(カプトンEN:東レ・デュポン製)を用い、この上に、銅スパッタリングにより厚み0.2μmの金属層を形成した。
この金属層上に、固形分30%のポリアミドイミド溶液(バイロマックス:東洋紡績製)をコンマコーターを用いて厚み50μmでコーティングし、180℃で10分間乾燥し、厚み15μmの樹脂層を形成した。
こうして得られた積層体から基体を剥離し、フレキシブル積層板を得た。得られたフレキシブル積層板の厚み、耐屈曲性を実施例1と同様にして測定した。その結果を表1に示す。
【0033】
(実施例4)
基体として厚み5mmの耐熱ガラスを用い、この上に酸化ジルコニウムをスパッタリングして離型基体を作製した。
圧力0.6Torr(80Pa)のヘリウム真空条件下で銀を蒸発させ、生成した銀超微粒子にミネラルスピリットの蒸気を接触させて冷却回収し、溶媒(ミネラルスピリット)中に独立した状態で分散している平均粒子径0.01μmの銀超微粒子を20wt%含有する導電ペーストを作製した。
この導電ペーストを、上記で作製した離型基体上にコンマコーターを用いてコーティングし、250℃で48時間乾燥、焼結して厚み2μmの金属層を得た。
次に、ポリアミック酸(Pyre−ML:(株)I.S.T製)にN−メチルピロリドンを加え、80℃まで昇温し、エポキシ基含有アルコキシシラン(KBM403:信越化学工業製)と触媒として2−メチルイミダゾールを加え、80℃で4時間、反応させた。これを室温まで冷却し、固形分20%のアルコキシシラン含有ポリアミック酸樹脂溶液を得た。
前記の金属層上に、上記で作製したアルコキシシラン含有ポリアミック酸樹脂溶液をコンマコーターを用いて厚み50μmでコーティングし、180℃で24時間乾燥し、厚み10μmの樹脂層を形成した。
こうして得られた積層体から基体を剥離し、フレキシブル積層板を得た。得られたフレキシブル積層板の厚み、耐屈曲性を実施例1と同様にして測定した。その結果を表1に示す。
【0034】
(比較例1)
市販の3層銅貼積層板(RAS32S47:信越化学工業製)を用い、実施例1と同様にして、厚み、耐屈曲性を測定した。その結果を表1に示す。
【0035】
(比較例2)
市販のキャスティング法2層銅貼積層板(エスパネックス:新日鐵製)を用い、実施例1と同様にして、厚み、耐屈曲性を測定した。その結果を表1に示す。
【0036】
(比較例3)
市販の蒸着法2層銅貼積層板(メタロイヤル:東洋メタライジング製)を用い、実施例1と同様にして、厚み、耐屈曲性を測定した。その結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表1から明らかなように、実施例1〜4のフレキシブル積層板は、厚みが20μm以下と非常に薄く、それと同時に、耐屈曲性も50000回以上と非常に優れていた。これに対し、比較例1、3の積層板は、厚みが厚く、耐屈曲性も劣っていた。また、比較例2の積層板は、耐屈曲性は良好であるものの、厚みが厚いものであった。
【0039】
【発明の効果】
上記したように、本発明によれば、更なる薄層化を実現し、耐屈曲性に優れたフレキシブル積層板、およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフレキシブル積層板の断面を示す模式図。
【図2】本発明のフレキシブル積層板の製造方法を示す説明図。
【符号の説明】
1…フレキシブル積層板、2…金属層、3…樹脂層、4…基体
Claims (8)
- 金属粒子の焼結により形成される金属層と、可撓性樹脂と有機溶剤とを含有する樹脂溶液を前記金属層上に塗布、乾燥して形成される樹脂層とからなることを特徴とするフレキシブル積層板。
- 金属溶液の還元および/または分解により形成される金属層と、可撓性樹脂と有機溶剤とを含有する樹脂溶液を前記金属層上に塗布、乾燥して形成される樹脂層とからなることを特徴とするフレキシブル積層板。
- 金属の蒸着および/またはメッキにより形成される金属層と、可撓性樹脂と有機溶剤とを含有する樹脂溶液を前記金属層上に塗布、乾燥して形成される樹脂層とからなることを特徴とするフレキシブル積層板。
- 前記可撓性樹脂が、ポリイミド樹脂および/またはポリアミドイミド樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフレキシブル積層板。
- 前記樹脂溶液が、さらにアルコキシシランおよび/またはアルコキシチタンを含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフレキシブル積層板。
- 基体上に、金属粒子を含有する導電ペーストを塗布、乾燥して未焼結金属層を形成する工程と、該未焼結金属層を焼結して金属層を形成する工程と、前記未焼結金属層または前記金属層上に、可撓性樹脂と有機溶剤とを含有する樹脂溶液を塗布、乾燥して樹脂層を形成し、積層体を得る工程と、該積層体から前記基体を剥離する工程とを含むことを特徴とする請求項1,4または5記載のフレキシブル積層板の製造方法。
- 基体上に、金属化合物を含有する導電ペーストを塗布、乾燥して金属層を形成する工程と、該金属層上に、可撓性樹脂と有機溶剤とを含有する樹脂溶液を塗布、乾燥して樹脂層を形成し、積層体を得る工程と、該積層体から前記基体を剥離する工程とを含むことを特徴とする請求項2,4または5記載のフレキシブル積層板の製造方法。
- 基体上に、金属を蒸着および/またはメッキして金属層を形成する工程と、該金属層上に、可撓性樹脂と有機溶剤とを含有する樹脂溶液を塗布、乾燥して樹脂層を形成し、積層体を得る工程と、該積層体から前記基体を剥離する工程とを含むことを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載のフレキシブル積層板の製造方法。
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