JP2004298912A - すみ肉溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】高電流で高速度の溶接条件のみならず低電流域で使用した場合にも、プライマ塗布鋼板の水平すみ肉溶接において優れた耐ピット性、ビード形状、ビード外観および溶接作業性が得られるすみ肉溶接用フラックス入りワイヤを提供する。
【解決手段】ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、ワイヤ全質量に対して、Zr酸化物をZrO 換算値で0.7〜2.0%(以下、換算値はこれに準ずる)、SiO 換算値を0.5〜1.2%、TiO 換算値を0.3〜0.9%、ただし、ZrO 換算値/TiO 換算値を1.1〜2.4、Al 換算値ならびにMgO換算値(Al、Mgの単体と酸化物)を合計0.2〜1.0%、Na OおよびK Oの合計を0.16〜0.35%含有する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、軟鋼および490〜590N/mm 級高張力鋼や耐候性鋼などにショッププライマ(主に無機ジンクプライマ)を塗装した鋼板(以下、プライマ塗装鋼板という。)のすみ肉溶接用フラックス入りワイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
船舶、橋梁などの分野では、プライマ塗装鋼板のすみ肉溶接の比率が高く、これの溶接能率の向上のために溶接材料面についても改良要望が依然として強い。プライマ塗装鋼板を特に水平すみ肉溶接した場合、耐ピット性、ビード形状およびビード外観の劣化が問題となるが、これらの改善を目的としたフラックス入りワイヤが種々提案されている。プライマ塗装鋼板のすみ肉溶接用フラックス入りワイヤとしては、特開平3−180298号公報のようにTiO を主体とするスラグ形成剤を少量含有するもの(以下、TiO 系低スラグワイヤという。)が一般的に使用されている。しかし、近年、特開平11−5193号公報や特開2000−42787号公報のようなZrO を主体とするスラグ形成剤を少量含有するもの(以下、ZrO 系低スラグワイヤという。)が提案されている。
【0003】
本発明者らは上記提案にあるTiO 系低スラグワイヤおよびZrO 系低スラグワイヤについて、両者間の溶接特性を比較検討した。例えば造船や橋梁分野で行われている一般的な施工条件として、目標脚長5〜6mmに対して、ワイヤ径1.2mm、溶接速度40〜50cm/min(溶接電流250〜300A)のような比較的低電流で低速度の溶接条件下では、TiO 系低スラグワイヤの方がビード形状、外観および溶接作業性(アーク安定性、スパッタ、スラグ剥離性など)が良好であり総合的に優位にある。
【0004】
ZrO 系低スラグワイヤは、上記のような比較的低電流域で使用すると溶滴が大きくなり大粒のスパッタが発生し、また溶融スラグの凝固が速いのでごつごつしたビード外観になる。また溶接速度が40〜50cm/minであっても無機ジンクプライマの塗装膜厚が厚くなった場合、ピットやガス溝が発生し耐ピット性についてもTiO 系低スラグワイヤと比較して格段の優位性は認められなかった。一方、例えばワイヤ径1.2mm、溶接速度60cm/min以上、溶接電流330A以上のような高電流で高速度の水平すみ肉溶接では、ZrO 系低スラグワイヤの方が耐ピット性、ビード形状およびビード外観の劣化が少なくなり、大粒のスパッタも減少傾向を示した。
【0005】
すなわち、従来のZrO 系低スラグワイヤは、特に高電流で高速度の溶接条件で使用することを目的に開発されたものであって、比較的低電流側で使用した場合の耐ピット性、ビード形状、ビード外観および溶接作業性の改良が必要である。
【0006】
【引用文献】
(a)特許文献1(特開平3−180298号公報)
(b)特許文献2(特開平11−5193号公報)
(c)特許文献3(特開2000−42787号公報)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ZrO 系低スラグワイヤによる上記高電流で高速度の溶接条件における利点に着目し、この種ワイヤの用途をさらに発展拡大するために、溶接電流および溶接速度など広い溶接条件範囲で使用して優れた耐ピット性、良好なビード形状、ビード外観および溶接作業性が得られるすみ肉溶接用フラックス入りワイヤを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、鋼製外皮内にフラックスを充填してなるガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、ワイヤ全質量に対する質量%で、
Zr酸化物をZrO 換算値で0.7〜2.0%、Si酸化物をSiO 換算値で0.5〜1.2%、Ti酸化物をTiO 換算値で0.3〜0.9%、ただし、ZrO 換算値/TiO 換算値を1.1〜2.4、
AlおよびAl酸化物の一方または両方のAl 換算値ならびにMgおよびMg酸化物の一方または両方のMgO換算値の1種または2種の合計を0.2〜1.0%、ただしMgおよびMg酸化物の一方または両方のMgO換算値を0.5%以下、
Fe酸化物のFeO換算値およびMn酸化物のMnO換算値の1種または2種の合計を0.2%以下、
Na OおよびK Oの合計を0.16〜0.35%、ただし、Na Oの0.07%以上がSiO −Na O系化合物に含まれるものであることを特徴とするすみ肉溶接用フラックス入りワイヤにある。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明者らはZrO 系低スラグワイヤについて、種々のワイヤを試作して、さらに詳細に検討した。本発明のすみ肉溶接用フラックス入りワイヤがZrOをスラグ形成剤の主要成分にした理由は、その特有の強いアーク力による溶融プールの激しい攪拌作用と、均一なスラグ被包状態がスラグ生成量を少なくしても得られるからである。これによりプライマ燃焼ガスを溶融プールから外部に放出しやすくし、ピットの発生を防止できる。また、ZrO は溶融スラグの凝固温度を高くするので、高電流化にともなって強くなるアーク力による溶融プールの過度の後退を抑制してビードの凸状化を防止するように作用する。
【0010】
ZrO とともにSiO 、TiO 、Al (Al)、MgO(Mg)、FeO、MnO、Na O、K Oについて限定したが、本発明では、特にZrO に対するTiO の比率を規定し、かつSiO −Na O系化合物を含むNa OとK Oを多めに含有させ、さらにFeOやMnOの含有量を制限する。これによってアーク状態および溶融スラグの凝固温度および粘性(流動性)を適度な溶融プールの後退と良好なスラグ被包状態が得られるように調整し、高電流で高速度の溶接条件での使用に限定されることなく、従来のZrO 系低スラグワイヤの欠点であった比較的低電流域における溶接性をも向上させ、この種ワイヤの施工現場における適用性を大幅に高めることができる。
【0011】
図1はすみ肉溶接用フラックス入りワイヤによる水平すみ肉溶接状況(アーク力と溶融スラグの凝固状態)を説明するために示した模式図であって、図1(a)の本発明の場合、アーク2の力で溶融プール3が激しく攪拌されるが、溶融プール3が適度に後退(図の右方向)して保持されるので、良好な耐ピット性、ビード形状およびビード外観が確保できる。なお、1はワイヤ、4は凝固スラグを示す。
【0012】
これに対し、図1(b)に示したように溶融プール3の後退距離が長すぎると高電流で高速度の溶接条件ではビード形状が凸状になる。逆に図1(C)に示すように溶融プール3の後退距離が短すぎると、特に低電流域で使用した場合に耐ピット性、ビード形状およびビード外観が不良になる。図1(b)は従来のTiO 系低スラグワイヤの場合によく見られる形態である。図1(C)は従来のZrO 系低スラグワイヤを比較的低電流域で使用した場合の形態である。
【0013】
以下に本発明のすみ肉溶接用フラックス入りワイヤの成分限定理由を述べる。
ジルコンサンドや酸化ジルコン等に含まれるZr酸化物がワイヤ全質量に対する質量%(以下、%という。)でZrO 換算値が0.7%未満では、溶融プールの攪拌作用が低下してピットが発生しやすく、ZrO 系スラグワイヤの効果を発揮できない。また、特に高電流域で溶融プールが後退しすぎてビードが凸状化したり、スラグ被包状態が悪くなりスラグを除去しにくくビード外観も不良となる。ZrO 換算値が2.0%を超えると、低電流域および高電流域ともにアークが粗く大粒のスパッタが多発し、また溶融スラグの凝固が早くなりすぎてスラグ粘性が急激に増加するためにピットやガス溝が発生しやすくなる。このときのビード外観は粗いアーク状態と溶融プールが凝固しやすいことが相まってごつごつして滑らかさがなくなる。
【0014】
珪砂やジルコンサンド等に含まれるSi酸化物がSiO 換算値で0.5%未満では、スラグ被包状態が悪くスラグ剥離不良になり、ビード形状およびビード外観も不良になる。SiO 換算値が1.2%を超えると、アークが粗くスパッタ発生量が多くなる。さらに、ビード趾端部(下板側)が膨れビード形状およびビード外観が不良になり、ピットやガス溝も発生しやすくなる。
【0015】
ルチール、酸化チタン、チタンスラグ、チタン酸ソーダ等に含まれるTi酸化物がTiO 換算値で0.3%未満では、アークが粗くスパッタ発生量が多くなり、またスラグ剥離性、ビード形状およびビード外観も不良となる。TiO 換算値が0.9%を超えると、スラグ被包むらが起こり、ビード上部(立板側)にスラグが薄く残り除去しにくく、ビード表面はざらつき光沢がなくなる。また、下板側のビード趾端部は膨れて下板とのなじみ性が悪いビード形状になる。TiO を2%を超えて増加させていくと、スラグ被包状態、アーク安定性などは徐々に良好になるが、前記TiO 系低スラグワイヤと同様に高電流で高速度の溶接条件ではピットやガス溝が発生しやすくなる。
【0016】
さらに、ZrO 換算値/TiO 換算値を1.1〜2.4の範囲に制限した。ZrO 換算値/TiO 換算値が1.1未満では、スラグ被包状態が悪くなりビード形状、ビード外観およびスラグ剥離性が不良になる。ZrO 換算値/TiO 換算値が2.4を超えると、スパッタ発生量が多くなり、また溶融スラグの凝固が速くスラグ粘性が急激に大きくなるためピットやガス溝が発生しやすくなり、ビード形状の劣化およびビード外観はごつごつして滑らかさがなくなる。これは特に低電流域の溶接条件で使用した場合に顕著に現れる。
【0017】
Al、Mgは強脱酸剤として作用し溶接金属の衝撃値を向上させるが、このときの脱酸生成物であるAl 、MgOはアルミナ粉(Al )、マグネシア粉(MgO)と同様に溶融スラグ成分として作用して、ビードの立板側に発生しやすいアンダーカットを防止し、またビード趾端部のなじみ性を良好にする。この効果は、AlおよびAl酸化物の一方または両方のAl 換算値、ならびにMgおよびMg酸化物の一方または両方のMgO換算値の1種または2種の合計で0.2%以上含有させることによって得られるが、1.0%を超えるとスラグ生成量が多くなり耐ピット性が劣化し、またスラグ被包むらが起こりスラグ剥離性、ビード形状およびビード外観が不良になる。ただし、上記MgO換算値については0.5%を超えるとアークが粗くなりスパッタが多発したりスラグ被包状態が悪くなってビード形状およびビード外観が不良になり、またピットも発生しやすくなる。
【0018】
FeO、Fe 等のFe酸化物およびMnO、MnO 等のMn酸化物が、FeO換算値およびMnO換算値の1種または2種の合計で0.2%を超えると、スラグ被包状態が悪くなってスラグ剥離性不良やビード外観不良になり、ビード趾端部が膨らみ、さらにヒューム発生量が際だって多くなるなどの悪影響が目立ってくる。本発明においてはFe酸化物およびMn酸化物をできるだけ少なく抑えることが好ましい。
【0019】
Na OおよびK Oはアーク安定剤としての作用だけでなく、スラグ形成剤として溶融スラグの凝固過程の急激な粘性増加を抑えて耐ピット性を高め、また平滑なビード形状にする作用がある。このためにNa OおよびK Oの合計で0.16〜0.35%を含有させる。Na OおよびK Oの合計が0.16%未満では特に低電流域で大粒のスパッタの発生量が多くなるとともに、ピットやガス溝が発生しやすく、ビードはごつごつした表面外観になる。一方、Na OおよびK Oの合計が0.35%を超えるとスラグ剥離性、ビード形状およびビード外観が不良となり、スパッタやヒューム発生量も多くなる。
【0020】
ただし、上記Na Oのうち、Na O換算値で0.07%以上を珪酸ソーダやSiO を組成に含むチタン珪酸ソーダ(TiO −SiO −Na O系)などのSiO −Na O系化合物により含有させることを必須とする。SiO −Na O系化合物は低電流域から高電流域まで広い溶接条件範囲にわたって、余盛りが小さくほぼ等脚長で趾端部のなじみ性がよいビード形状および滑らかな表面外観をもたらす。SiO −Na O系化合物が不足して、これによるNa Oが0.07%未満になると、低電流域ではビード表面のごつごつ感が解消されず、高電流域では趾端部が膨れて丸みを帯びたビード形状となり、スラグ剥離性も劣化する。
【0021】
上記Na O、K Oは珪酸ソーダ、チタン酸ソーダ、弗化ソーダ、氷晶石、珪酸カリ、チタン酸カリ、カリ長石、弗化カリ等に含まれるNaのNa O換算値およびKのK O換算値である。
なお、弗化ソーダや珪弗化カリ等の弗化物を原料に使用する場合、それらのF換算値の合計が0.20%を超えるとビード全面をスラグで被包することができなくなり、ビード上部(立板側)に除去しにくいスラグが薄く残り、また凸状のビード形状となる。
【0022】
以上、本発明のすみ肉溶接用フラックス入りワイヤの構成要件の限定理由を述べたが、その他のワイヤ成分としては、軟鋼および490N/mm 級高張力鋼用、耐候性鋼用などフラックス入りワイヤの品種毎に規定されている溶着金属試験の機械的性質および化学成分を満足するための元素と残部は主に鉄粉である。上記元素としてはたとえばC(外皮成分との合計で0.03〜0.10%)、Si(同、0.3〜1.0%が好ましい)、Mn(同、1.0〜3.5%)、Ni、Cu、Crなどの単体または合金鉄が挙げられる。
【0023】
また、S、Biなどのスラグ剥離補助剤を含有させることは、スラグ被包性を劣化させない程度の微量(0.01〜0.05%程度)であれば可能である。
【0024】
ワイヤに起因する水素は、アーク雰囲気中の水素分圧を上げピットの発生を助長する。ワイヤの全水素量を50ppm以下(不活性ガス融解熱伝導法による分析)にすることにより本発明の耐ピット性の改善効果が一層発揮される。なお、ワイヤの低水素化はフラックス原料の種類、充填フラックスの乾燥条件あるいはシームレスタイプのフラックス入りワイヤの場合はワイヤの中間焼鈍条件を適宜選択することによって可能である。
【0025】
また、図2はフラックス入りワイヤの各種断面を示すが、図2(a)に示したような貫通した隙間が鋼製外皮10に無い断面形態のシームレスフラックス入りワイヤは特に好ましい。上記断面形態は初期ワイヤの低水素化が可能であるとともに、吸湿性のあるNa OやK O原料をフラックス9中にかなり含有する本発明のすみ肉溶接用フラックス入りワイヤにおいて、製造過程、保管中、使用中に大気からの水分吸収がほとんどないので耐ピット性の改善効果が大きくなる。なお、ワイヤ断面形態については特に限定しないが、図2(b)、図2(c)に示したような断面形態にする場合は、製造中、保管中、使用中に大気からのフラックス9の吸湿防止には十分注意しなければならない。
【0026】
本発明のすみ肉溶接用フラックス入りワイヤは、フラックス充填後の伸線加工性が良好な軟鋼または低合金鋼の外皮内に、前記限定した成分のフラックスをワイヤ全質量に対して11〜20%程度充填後、ダイス伸線やローラ圧延加工により所定のワイヤ径(1.0〜1.6mm)に縮径して製造される。溶接用のシールドガスはCO ガスが一般的であるが、Ar−CO などの混合ガスも使用できる。
以下、実施例により本発明の効果をさらに詳細に示す。
【0027】
【実施例】
(実施例1)
軟鋼パイプ(C:0.02%、Si:0.01%、Mn:0.30%)にフラックスを充填後、縮径して(外皮の軟化および脱水素のための中間焼鈍を1回実施)、フラックス充填率13〜15%でワイヤ径1.2mmの、図2(a)に示すような貫通した隙間が鋼製外皮に無いシームレスタイプのフラックス入りワイヤを各種試作した。表1および表2に試作ワイヤを示した。なお、ワイヤの全水素量は全ワイヤとも20〜50ppmの範囲にあることを確認した。
【0028】
【表1】
Figure 2004298912
【0029】
【表2】
Figure 2004298912
【0030】
これら試作ワイヤを使用して、図3に示した無機ジンクプライマ塗装鋼板のT字すみ肉試験体を用いて自動溶接機で水平すみ肉溶接試験を行った。試験体は鋼種SM490B、板厚16mm、試験体長さ1.0mであって、プライマ7の膜厚は約25〜30μmで下板5および立板6端面にもプライマ7の塗装がある。これら鋼板を加圧しながら下板5と立板6の間隙がない状態で仮付け溶接して試験体とした。
【0031】
溶接条件は電流350A、アーク電圧37〜38V、溶接速度75cm/min、チップ・母材間距離30mm、電源極性DC(ワイヤ+)、シールドガスCO ガス(流量25リットル/min)で、両側同時溶接(両極のシフト距離75mm)して、スパッタ発生状態、スラグ剥離性、ビード形状、ビード外観および耐ピット性を評価した。表3に溶接試験結果を示す。表3において耐ピット性は○:ピット、ガス溝発生なし、△:1〜10個/m以下、×:多発を示す。ビート形状・外観は○:良好、△:問題あり、×:特に悪い(使用不可)を示す。スラグ剥離性は○:良好、△:除去しにくい、×:除去不可能を示す。スパッタは○:小粒で少ない、△:小粒、大粒混在で多い、×:大粒で多いを示す。また総合評価は○:合格、×:不合格を示す。
【0032】
【表3】
Figure 2004298912
【0033】
表3中ワイヤ記号W1〜W7が本発明例、ワイヤ記号W8〜W22は比較例である。本発明例であるワイヤ記号W1〜W7は、スパッタ発生量が少なく、スラグ剥離性、ビード形状、ビード外観および耐ピット性のいずれも良好で、極めて満足な結果であった。
【0034】
比較例中ワイヤ記号W8は、ZrO が多く、またZrO 換算値/TiO 換算値が大きいので、スパッタの発生量が多く、さらに耐ピット性、ビード形状およびビード外観が不良となった。
ワイヤ記号W9は、ZrO が少なく、またZrO 換算値/TiO 換算値が小さいので、スラグ剥離性、耐ピット性、ビード形状およびビード外観のいずれも不良となった。
【0035】
ワイヤ記号W10はSiO が多いので、スパッタが多発し、耐ピット性、ビード形状およびビード外観も不良となった。
ワイヤ記号W11は、SiO が少ないので、スラグ剥離性、ビード形状およびビード外観が不良となった。
【0036】
ワイヤ記号W12は、TiO が多いので、スラグ剥離性、ビード形状およびビード外観が不良となった。
ワイヤ記号W13は、TiO が少なく、またZrO 換算値/TiO 換算値が大きいので、スパッタが多発し、耐ピット性、ビード形状、ビード外観およびスラグ剥離性も不良となった。
【0037】
ワイヤ記号W14は、ZrO 換算値/TiO 換算値が大きいので、スパッタが多発し、耐ピット性、ビード形状およびビード外観も不良になった。
ワイヤ記号W15は、ZrO 換算値/TiO 換算値が小さいので、スラグ剥離性、ビード形状およびビード外観が不良となった。
【0038】
ワイヤ記号W16は、MgとMg酸化物によるMgO換算値の合計が多いので、スパッタが多発し、耐ピット性、ビード形状およびビード外観も不良となった。
ワイヤ記号W17は、Al換算値とMgO換算値の合計が多いので、耐ピット性、ビード形状、ビード外観およびスラグ剥離性が不良となった。
ワイヤ記号W18はAl換算値とMgO換算値の合計が少ないので、ビード形状が不良となった。
【0039】
ワイヤ記号W19は、MnO換算値が多いので、スラグ剥離性、ビード形状およびビード外観が不良となった。
ワイヤ記号W20は、SiO −Na O系化合物を原料として使用していないので、スラグ剥離性およびビード形状が不良となった。
【0040】
ワイヤ記号W21は、Na O換算値とK O換算値の合計が多いので、スパッタが多発し、スラグ剥離性、ビード形状およびビード外観も不良となった。
ワイヤ記号W22は、Na O換算値とK O換算値の合計が少ないので、スパッタ発生量が多くなった。
【0041】
(実施例2)
実施例1と同じ試作ワイヤおよび無機ジンクプライマ塗装鋼板のT字すみ肉試験体を用いて自動溶接機で同様に水平すみ肉溶接試験を行った。
溶接条件は溶接電流260A、アーク電圧31V、溶接速度45cm/min、チップ・母材間距離25mm、電源極性DC(ワイヤ+)、シールドガスCO ガス(流量25リットル/min)で、両側同時溶接(両極のシフト距離0mm)して、スパッタ発生状態、スラグ剥離性、ビード形状、ビード外観および耐ピット性を評価した。表4に溶接試験結果を示す。○、△、×の評価の基準は表3と同じである。
【0042】
【表4】
Figure 2004298912
【0043】
本発明例であるワイヤ記号W1〜W7は、スパッタ発生状態、スラグ剥離性、ビード形状、ビード外観および耐ピット性のいずれも良好な試験結果が得られた。
【0044】
比較例中ワイヤ記号W14は、ZrO 換算値/TiO 換算値が大きいので、耐ピット性、ビード形状およびビード外観が不良で、スパッタ発生量も多くなった。
ワイヤ記号W15は、ZrO 換算値/TiO 換算値が小さいので、スラグ剥離性が不良で、ビード形状およびビード外観も不良となった。
【0045】
ワイヤ記号W19は、MnO換算値が多いので、ビード形状、ビード外観およびスラグ剥離性が不良となった。
ワイヤ記号W20は、SiO −Na O系化合物を原料として使用していないので、ビード形状およびビード外観が不良となった。
ワイヤ記号W22は、Na O換算値とK O換算値の合計が少ないので、スパッタ発生量が多く、ビード形状、ビード外観および耐ピット性も不良となった。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のすみ肉溶接用フラックス入りワイヤによれば、プライマ塗布鋼板の水平すみ肉溶接において、高電流で高速度の溶接条件のみならず低電流域で使用した場合にも優れた耐ピット性、ビード形状、ビード外観および溶接作業性が得られるので、溶接の高能率化および溶接部の品質向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)、(b)、(c)は、すみ肉溶接用フラックス入りワイヤによる水平すみ肉溶接状況を説明するために示した模式図
【図2】(a)、(b)、(c)はフラックス入りワイヤの断面形状を示す模式図
【図3】本発明の実施例に用いた水平すみ肉溶接試験体および溶接後のビード断面を示す模式図
【符号の説明】
1 ワイヤ
2 アーク
3 溶融プール
4 凝固スラグ
5 下板
6 立板
7 プライマ
8 ビード
9 フラックス
10 鋼製外皮

Claims (1)

  1. 鋼製外皮内にフラックスを充填してなるガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、ワイヤ全質量に対する質量%で、
    Zr酸化物:ZrO 換算値で0.7〜2.0%、
    Si酸化物:SiO 換算値で0.5〜1.2%、
    Ti酸化物:TiO 換算値で0.3〜0.9%、
    ただし、ZrO 換算値/TiO 換算値:1.1〜2.4、
    AlおよびAl酸化物の一方または両方のAl 換算値ならびにMgおよびMg酸化物の一方または両方のMgO換算値の1種または2種の合計:0.2〜1.0%、
    ただし、MgおよびMg酸化物の一方または両方のMgO換算値:0.5%以下、
    Fe酸化物のFeO換算値およびMn酸化物のMnO換算値の1種または2種の合計:0.2%以下、
    Na OおよびK Oの合計:0.16〜0.35%、
    ただし、Na O:0.07%以上がSiO −Na O系化合物に含まれるものであることを特徴とするすみ肉溶接用フラックス入りワイヤ。
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