JP3464334B2 - プライマ塗装鋼板のすみ肉溶接に用いるガスシ−ルドア−ク溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents
プライマ塗装鋼板のすみ肉溶接に用いるガスシ−ルドア−ク溶接用フラックス入りワイヤInfo
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Description
接構造物の建造において、特にプライマ塗装鋼板のすみ
肉溶接に使用するルチール系ガスシ−ルドア−ク溶接用
フラックス入りワイヤ(以下、フラックス入りワイヤと
いう。)に関する。 【0002】 【従来の技術】従来,造船や橋梁等の分野では、全溶接
長に占めるすみ肉溶接の比率が高く、これに高能率でア
−ク安定性の良好な各種フラックス入りワイヤが使用さ
れている。しかしながら、鋼材の多くは発錆を防止する
ために無機ジンクプライマやウオッシュプライマが塗装
されており、その鋼材を特に水平すみ肉溶接した場合、
主に溶接ア−ク熱により発生したプライマ熱分解ガスに
起因したピットやガス溝が発生しやすく、手直しによる
工数増加や溶接速度制限等による能率低下が問題とな
る。 【0003】ビ−ド形状、外観を損なわずにピットやガ
ス溝の発生を防止するために、従来より種々のフラック
ス入りワイヤが提案されている。例えば特開昭61ー1
47993号公報は、耐プライマ性向上のために金属弗
化物及び金属炭酸塩を含有させ溶融金属プールの攪拌を
強めてガスの放出を容易にしたものであるが、スパッタ
の発生が多く溶接部に付着したスパッタ除去のために工
数増となる。特開平3ー294092号公報による提案
は、ワイヤの全水素量を低くし、かつスラグ生成量を制
限してピットやガス溝の発生を防止するというフラック
ス入りワイヤであり、この種のフラックス入りワイヤは
造船分野で多用されている無機ジンクプライマ塗装鋼板
の水平すみ肉溶接に一般的に使用されている(溶接速度
限界50〜60cm/min−脚長5〜6mm)。 【0004】しかし、スラグ生成量が少ないためにビ−
ド形状が丸みをおびたり、スラグが除去しにくいという
問題がある。また橋梁分野で多用されているウオッシュ
プライマ塗装鋼板を対象とした場合、ピットが発生しや
すく溶接速度が非常に制限される(溶接速度限界30〜
40cm/min−脚長5〜6mm)。なお、ウオッシ
ュプライマ塗装鋼板を対象としたフラックス入りワイヤ
としては、特開昭64−5699号公報、特開平2−4
2595号公報等による提案がある。いずれもフラック
ス中に故意に水素源化合物を含有させ溶融金属中に過飽
和となる水素量を供給し、溶融金属からのガスの浮上を
速めることによってピットやガス溝の発生を防止すると
いうものである。 【0005】しかし、ワイヤ中の水素量を高くして行う
ガス放出機構からして溶接速度を遅くしなければならず
(溶接速度限界30〜40cm/min−脚長5〜6m
m)、また必然的に溶接金属中の水素量が増加するので
耐割れ性が劣り鋼種や板厚が制限される他、ア−ク安定
性が悪くスパッタが多くなるという欠点がある。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来のす
み肉溶接用耐プライマ性ルチール系フラックス入りワイ
ヤの問題点を解決し、高速化した場合でも十分な耐プラ
イマ性があり、低スパッタでスラグ剥離性及びビ−ド形
状が良好なガスシ−ルドア−ク溶接用フラックス入りワ
イヤを提供することを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明の要旨とするとこ
ろは、鋼製外皮内にフラックスを充填してなるルチ−ル
系ガスシ−ルドア−ク溶接用フラックス入りワイヤにお
いて、ワイヤのポテンシャル水素量が50ppm以下
で、かつワイヤ全重量に対し、CaF2:40〜60重
量%、CaO:10〜30重量%、Al2O3:10〜3
0重量%を主組成とし、残部はSiO2 :20重量%以
下、TiO2:10重量%以下、MgO:10重量%以
下、ZrO2:10重量%以下の1種または2種以上の
合計で20重量%以下およびK2 O、Na2 Oの1種ま
たは2種の合計で5重量%以下の一方または両方を含有
する溶解原料を1.5〜3.5重量%含有し、さらに、
前記溶解原料に含まれる量との合計でTiO2:1.0
〜3.0重量%、SiO2:0.2〜1.0重量%、Z
rO2:0.2〜1.0重量%、Na、Kの1種または
2種の合計:0.05〜0.30重量%、脱酸剤:1.
5〜5.0重量%を必須成分として含有することを特徴
とするプライマ塗装鋼板のすみ肉溶接に用いるガスシ−
ルドア−ク溶接用フラックス入りワイヤにある。 【0008】 【発明の実施の形態】本発明者らは、上記課題に対し種
々のフラックス入りワイヤを試作し、水平すみ肉溶接試
験により詳細に検討した結果、次のような知見を得て本
発明を完成したものである。無機ジンクプライマ塗装鋼
板のみならずウオッシュプライマ塗装鋼板の水平すみ肉
溶接の高速化において最大の問題となる耐プライマ性を
向上させるためには、ワイヤのポテンシャル水素量の低
下、スラグ生成量の低減以外に、溶融金属プールの攪拌
を強化し、かつ溶融スラグを後退させて溶融金属プール
面をできるだけ拡げて、溶融金属からガスを放出しやす
くする必要がある。 【0009】また溶融スラグ自体もある程度の水素吸収
能をもつことが好ましい。このような溶融金属プール及
び溶融スラグはCaF2、CaO、Al2O3を主組成と
する溶解原料(以下、CaF2ーCaOーAl2O3系溶
解原料という。)をスラグ形成剤として相当量含有させ
ることにより形成できることを見いだした。さらに、C
aF2−CaO−Al2O3系溶解原料以外のスラグ形成
剤成分として、特にTiO2、SiO2及びZrO2の含
有量を限定し凝固温度、粘性を調整することにより耐プ
ライマ性とともに良好なビ−ド形状及びスラグ剥離性が
得られることがわかった。 【0010】以下に本発明のフラックス入りワイヤの成
分限定理由を述べる。 ワイヤのポテンシャル水素量:50ppm以下 ワイヤ中の水素はフラックス、鋼製外皮、外皮の内外表
面の付着物に含有されており、プライマ熱分解ガス中の
水素とともに溶接中ア−ク雰囲気中の水素分圧を上げて
溶接金属中に浸入し、ピット、ガス溝の発生原因とな
る。この水素に起因するピット、ガス溝の発生を抑制す
るためには、ワイヤのポテンシャル水素量を極力抑える
必要がある。ポテンシャル水素以外のワイヤ成分をほぼ
同一にした試作ワイヤについて水平すみ肉溶接試験を行
った結果、ワイヤのポテンシャル水素量が50ppm以
下であれば本発明の目的は十分に達成できることがわか
った。なお、ワイヤのポテンシャル水素量の測定は不活
性ガス融解熱伝導度法による。 【0011】CaF2−CaO−Al2O3系溶解原料:
1.5〜3.5重量% CaF2:40〜60重量%、CaO:10〜30重量
%、Al2O3:10〜30重量%を主組成とする溶解原
料を1.5〜3.5重量%含有させる。この組成の溶解
原料は凝固温度が低く、粘性も小さい。スラグ形成剤と
して作用するように1.5重量%以上含有させることに
よって、凝固温度が低く、粘性が小さい流動性のよい溶
融スラグを形成し、ア−ク点からの溶融スラグの後退距
離を大きくすることができる。この溶融金属プール面の
拡大効果によりプライマ熱分解ガスの放出が容易にな
る。さらにこのときの凝固スラグは多孔質になっている
ことから、溶融スラグによる水素の吸収効果がある。C
aF2による溶融金属プールの攪拌効果も加わり、これ
らが相乗的に作用し溶接速度を上げた場合のピット、ガ
ス溝の発生が格段に減少する。なお、多孔質化した凝固
スラグは砕けやすくスラグ除去が容易になる。 【0012】CaF2−CaO−Al2O3系溶解原料が
1.5重量%未満では耐プライマ性、スラグ剥離性、ビ
−ド形状の改善効果が小さく、一方、3.5重量%を超
えると溶融スラグの流動性が過剰となり特にビ−ドが丸
く凸状になったり、立板側の脚長が小さく下板側の脚長
が大きい下付きビ−ドとなるなどビ−ド形成性が劣化す
る。なお、CaF2−CaO−Al2O3系溶解原料は、
CaF2、CaO、Al2O3を例えば蛍石、珪灰石や石
灰石、アルミナのようなそれぞれ別個の原料で含有させ
た場合に比べ、ア−ク安定性が増しスパッタの低減、ま
た溶融金属のスラグ被包が均一となり、ビ−ド形状及び
スラグ剥離性を効果的に改善する。 【0013】溶解原料に40〜60重量%含有させたC
aF2は、ア−クの吹き付けを適度に強くし、溶融金属
中からのガスの浮上を容易にする攪拌効果を十分に発揮
するとともに、上記溶融スラグの後退を促進する。溶解
原料のCaF2が40重量%未満では、溶融スラグの後
退距離が小さく耐プライマ性が劣化し、一方、60重量
%を超えるとア−クが次第に強くなりスパッタの多発や
溶融スラグの流動性が過剰となり、ビ−ドが丸く凸状に
なる。 【0014】溶解原料に10〜30重量%含有させたC
aOも流動性のよい溶融スラグを形成してガスの放出能
を高めるように作用するが、本発明のフラックス入りワ
イヤにおいては特にビ−ド止端部と母材とのなじみ性が
よく、かつ表面が滑らかで形状の良好なビ−ド形成のた
めに不可欠の成分である。溶解原料のCaOが10重量
%未満ではビ−ドが丸く凸状となり、一方、30重量%
を超えると下付きビ−ドとなる。 【0015】溶解原料に10〜30重量%含有させたA
l2O3は、溶融スラグの凝固温度及び粘性が過剰に低下
しないように調整しビ−ド形状を整える。溶解原料のA
l2O3が10重量%未満では凸状や下付きビ−ドとなり
やすく、一方、30重量%を超えると下板側のビ−ド止
端部がオーバーラップとなり、またスラグ剥離性が劣化
する。なお、本発明で含有させるCaF2−CaO−A
l2O3系溶解原料には、製造時の溶解作業性や溶融スラ
グの凝固温度及び粘性を調整しビ−ド形状を整えるため
にSi02(20重量%以下)、TiO2(10重量%以
下)、MgO(10重量%以下)、ZrO2(10重量
%以下)を合計で20重量%以下、また溶解作業性やフ
ラックス入りワイヤのア−ク安定剤としてK2O、Na2
Oを合計で5重量%以下であれば含有させることができ
る。 【0016】CaF2−CaO−Al2O3系溶解原料の
粒度、かさ密度等については、特に限定しないが、溶
解、粉砕した粉末状でフラックス入りワイヤに通常用い
られている原料と同程度の性状のものでよい。溶解原料
の水分量はワイヤのポテンシャル水素量を高め耐プライ
マ性を損なうので、溶解後水冷却しないで粉砕処理した
もの、あるいは十分に乾燥処理したものが好ましい。 【0017】TiO2:1.0〜3.0重量% TiO2はア−クを持続して安定させる成分である。本
発明ではア−クを安定にし、かつビ−ド形状、外観を整
えるために1.0重量%以上含有させる。TiO2が
1.0重量%未満ではア−クが不安定になりスパッタが
多発する他、スラグ生成量不足及び溶融スラグの流動性
が過剰となりスラグ被包むらが生じスラグが剥離しにく
く外観も不良となる。また下付きビ−ドとなりやすい。
一方、TiO2が3.0重量%を超えるとスラグ生成量
が多く、かつ溶融スラグの粘性も大きくなるので溶融ス
ラグの後退距離が小さくなりガスの放出が阻害されてピ
ット、ガス溝が発生しやすくなる。 【0018】SiO2:0.2〜1.0重量% SiO2は溶融スラグの流動性を調整しビ−ド形状を整
えるために含有させる。SiO2が0.2重量%未満で
は下付きビ−ドとなり、一方、SiO2が1.0重量%
を超えると溶融スラグの粘性が大きくなりピット、ガス
溝が発生しやすくなる。 【0019】ZrO2:0.2〜1.0重量% ZrO2は溶融スラグの流動性が過剰になるのを抑え
て、溶融金属全体を均一に被包しビ−ド形状及びスラグ
剥離性を改善するために0.2重量%以上含有させる。
ZrO2が0.2重量%未満ではスラグ被包性が悪く凝
固スラグむらが生じスラグを除去しにくくなり、また下
付きのビ−ド形状となる。一方、ZrO2が1.0重量
%を超えると溶融スラグの後退距離が小さくなりピッ
ト、ガス溝が発生しやすく、スラグ剥離性も劣化する。 【0020】Na、Kの1種または2種の合計:0.0
5〜0.30重量% Na及びKはア−ク安定剤として含有させる。これらの
1種または2種の合計が0.05重量%未満又は0.3
0重量%を超えた場合には、ア−ク状態が不安定でスパ
ッタ多発、これにともない溶融プールの安定性が失われ
ピット発生、スラグ被包性が劣化しスラグ剥離性不良、
ビ−ド形状も乱れる。また過剰な場合にはア−ク長が長
くなり過ぎてビ−ド止端部にカットが発生しやすくな
る。 【0021】脱酸剤:1.5〜5.0重量% C(0.01〜0.10重量%)、Si(0.2〜1.
5重量%)、Mn(1.0〜4.0重量%)、Ti
(0.5重量%以下)、Al(1.0重量%以下)、M
g(1.0重量%以下)、Zr(0.5重量%以下)等
の脱酸剤を溶接金属の脱酸不足による気孔発生防止及び
機械的性質の確保のために外皮成分を含む合計で1.5
重量%以上含有させる。一方、脱酸剤が5.0重量%を
超えると、スラグ焼き付きによる剥離性不良およびビー
ド表面外観不良、また強度が高くなりすぎて耐割れ性が
劣化する。なお、脱酸剤は溶接金属中に歩留まり合金剤
として働く以外にスラグ化し、溶融スラグの組成および
生成量にも影響するので、本発明の効果を損なわないよ
うにそれぞれ前記()内の範囲内であることが好まし
い。 【0022】上記TiO2、SiO2、ZrO2及びN
a、Kの原料は通常フラックス入りワイヤに使用してい
るものでよいが、CaF2ーCaOーAl2O3系溶解原
料にこれらの成分が含有されている場合には含有量は合
計して算出する。また本発明がいうルチール系ガスシー
ルドア−ク溶接用フラックス入りワイヤとは、ワイヤ中
にTi02(溶解原料成分を含む)を1.0重量以上含
有し、Ti02によるア−ク安定化およびスラグ被包効
果をもたらすものをいう。 【0023】これらの必須成分以外に、本発明のフラッ
クス入りワイヤは、スラグ生成量を少な目にした場合の
スラグ剥離性強化のためにBi(0.01〜0.10重
量%)やS(0.01〜0.05重量%)、プライマ無
塗装鋼板に適用した場合のビ−ド止端部と母材とのなじ
み性強化のためにFeOやFe2O3等の酸化鉄(1.0
重量%以下)、対象鋼種の拡大ためにNi、Mo、C
r、B等の合金剤、溶着速度向上に効果的な鉄粉あるい
は鉄合金などを適宜添加できる。フラックス充填率は溶
接能率及びワイヤの生産性面から8〜25重量%の範囲
内が好ましい。 【0024】ワイヤ径は電流密度を高くし高溶着性を得
るために細径の0.9〜2.0mmが好ましい。ワイヤ
断面形状は図1に示すような一般的な形状のものでよい
が、外皮部に開口部がないシ−ムレスタイプ(a)がワ
イヤ送給性、直進性に優れているのでア−ク及びワイヤ
先端狙い位置が安定し、コーナー部の溶け込みやビ−ド
止端部の揃いが良好になるとともに、フラックスの吸湿
がなく耐プライマ性や耐割れ性面からも優れている。シ
−ルドガスはCO2ガスがコスト的にも安価で一般的で
あるが、溶接作業環境面からはヒューム量が少ないAr
−CO2混合ガスやArガスが好ましい。 【0025】 【実施例】以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細
に説明する。軟鋼パイプ(C:0.05重量%,Si:
0.03重量%,Mn:0.22重量%、P:0.01
2重量%、S:0.004重量%)に、フラックスを充
填後、伸線して(外皮部の軟化及び低水素化のための中
間焼鈍を1回実施)、フラックス充填率15重量%、ワ
イヤ径1.2mmのフラックス入りワイヤ記号W1〜2
7を試作した。なおワイヤ記号W25はワイヤの水素量
の影響を調査するためにフラックスに水素源化合物を微
量添加した。表1に溶解原料の組成(溶解原料組成記号
M1〜M10)を、表2に試作ワイヤ(ワイヤ記号W1
〜W27)を示す。これら試作ワイヤを用いて、板厚1
2mmのプライマ塗装鋼板(プライマ膜厚約25μm、
鋼種SM490B、試験体長さ2m)を通常のT字すみ
肉継ぎ手とし、水平すみ肉溶接試験を行った。表3、表
4に試験方法、表5に溶接試験結果を示す。 【0026】 【表1】【0027】 【表2】【0028】 【表3】 【0029】 【表4】 【0030】 【表5】【0031】試験No.1〜7及びNo.26、27は
本発明のフラックス入りワイヤ記号W1〜7を用いた場
合で、ウオッシュプライマ塗装鋼板の場合は表3に示し
た溶接条件(溶接速度50cm/min−脚長6mm)
で、無機ジンクプライマ塗装鋼板の場合は表4に示した
溶接条件(溶接速度70cm/min−脚長5mm)で
それぞれ水平すみ肉溶接を実施した結果、ピット、ガス
溝の発生がなく、スパッタは比較ワイヤに比べ小粒で少
なく、ビード形状、スラグ剥離性とも極めて良好であっ
た。 【0032】これに対し、比較例中、No.8はワイヤ
記号W8に含有させた溶解原料記号M6のCaF2が不
足のためにピットが発生した。No.9はワイヤ記号W
9に含有させた溶解原料記号M7のCaF2が過剰で、
またAl2O3が不足しているためにスパッタが多発し、
凸状ビ−ドとなった。No.10はワイヤ記号W10に
含有させた溶解原料記号M8のCaOが不足しているた
めに凸状ビ−ドとなった。No.11はワイヤ記号W1
1に含有させた溶解原料記号M9のCaOが過剰のため
に下付きビ−ドとなった。 【0033】No.12はワイヤ記号W12に含有させ
た溶解原料記号M10のAl2O3が過剰のために、ビ−
ド止端部がオーバーラップとなり、スラグ剥離性も劣化
した。No.13はワイヤ記号W13のCaF2−Ca
O−Al2O3系溶解原料が過剰のためにビ−ド形状が下
付きで凸状となった。No.14はワイヤ記号W14の
CaF2ーCaOーAl2O3系溶解原料が不足している
ためにピットが発生し、また、全体的にスラグ生成量が
少なくスラグ剥離性劣化及びビ−ド止端部の揃いが悪く
なった。No.15はワイヤ記号W15のTiO2が過
剰のために、ピット、ガス溝が多発した。 【0034】No.16はワイヤ記号W16のTiO2
が不足しているために、スパッタ多発、スラグ被包むら
によるスラグ剥離性が悪くなり、ビ−ド形状も下付きと
なった。No.17はワイヤ記号W17のSiO2が過
剰のためにピット、ガス溝が発生した。No.18はワ
イヤ記号W18のSiO2が不足しているために下付き
ビ−ドとなった。No.19はワイヤ記号W19のZr
O2が過剰のためにピット、ガス溝が発生し、スラグ剥
離性も劣化した。 【0035】No.20はワイヤ記号W20にZrO2
が含有されていないためにスラグ剥離性劣化、下付きビ
−ドとなった。No.21はワイヤ記号W21のNa、
Kが過剰なために、ア−ク不安定でスパツタが多発し、
溶融プールが乱れたことによるスラグ剥離性不良及びピ
ットが発生した。また立板側止端部にはカットが発生し
た。No.22はワイヤ記号W22のNa、Kが不足し
ているためにア−クが非常に不安定になり、ピット発
生、スパッタ多発、スラグ剥離性が悪くなり、ビ−ド形
状は凸状となった。 【0036】No.23はワイヤ記号W23の脱酸剤が
過剰のためにスラグが焼き付きスラグ剥離性及びビ−ド
表面外観が不良となった。No.24はワイヤ記号W2
4の脱酸剤が不足しているためにピットが発生した。N
o.25はワイヤ記号W25のポテンシャル水素量が多
すぎるためにスパッタが多く、ピット、ガス溝が発生し
た。No.28はワイヤ記号W14のCaF2−CaO
−Al2O3系溶解原料が不足しているために、無機ジン
クプライマ塗装鋼板でも溶接速度が速くなるとピットが
発生し、スラグ剥離性が悪く、ビ−ド形状も丸く凸状と
なった。 【0037】No.29はワイヤ記号W26にCaF2
−CaO−Al2O3系溶解原料を含有させないで、Ca
F2、CaO、Al2O3を別々の原料により含有させた
場合で、大粒のスパッタ多発し、スラグ剥離性不良及び
ビ−ド形状は立板側にカットが発生し、下板側はオ−バ
−ラップとなった。No.30はワイヤ記号W27にC
aF2−CaO−Al2O3系溶解原料を含有させない場
合で、スラグが薄く焼き付きスラグ剥離性不良、ビ−ド
は凸状となった。 【0038】 【発明の効果】以上説明したように、本発明のガスシ−
ルドア−ク溶接用フラックス入りワイヤによれば、プラ
イマ塗装鋼板のすみ肉溶接において溶接速度を高速化し
た場合に問題となる耐プライマ性を大幅に改善し、かつ
良好な溶接作業性及びビ−ド形状が得られ、溶接の高能
率化に貢献できる。
る。 【符号の説明】 1 鋼製外皮 2 フラックス
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 鋼製外皮内にフラックスを充填してなる
ルチ−ル系ガスシ−ルドア−ク溶接用フラックス入りワ
イヤにおいて、ワイヤのポテンシャル水素量が50pp
m以下で、かつワイヤ全重量に対し、CaF2:40〜
60重量%、CaO:10〜30重量%、Al2O3:1
0〜30重量%を主組成とし、残部はSiO2 :20重
量%以下、TiO2:10重量%以下、MgO:10重
量%以下、ZrO2:10重量%以下の1種または2種
以上の合計で20重量%以下およびK2 O、Na2 Oの
1種または2種の合計で5重量%以下の一方または両方
を含有する溶解原料を1.5〜3.5重量%含有し、さ
らに、前記溶解原料に含まれる量との合計でTiO2:
1.0〜3.0重量%、SiO2:0.2〜1.0重量
%、ZrO2:0.2〜1.0重量%、Na、Kの1種
または2種の合計:0.05〜0.30重量%、脱酸
剤:1.5〜5.0重量%を必須成分として含有するこ
とを特徴とするプライマ塗装鋼板のすみ肉溶接に用いる
ガスシ−ルドア−ク溶接用フラックス入りワイヤ。
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1996
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