JP2004296898A - 真空チャック - Google Patents
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Abstract
【課題】被吸着部の大きさの異なる被吸着体を吸着することができるとともに、吸着力が高く、吸着力が全体的に均一であり、被吸着体の均一な研磨を実現することができる真空チャックを提供する。
【解決手段】多孔質セラミックからなり、被吸着体15を吸着、保持するための保持面24を有する吸着体21と、前記吸着体21の保持面24及び吸引孔対応部を除いた面のほぼ全体を封止するための封止体22とを含み、被吸着部の大きさの異なる被吸着体15を吸着可能に構成された真空チャック20であって、前記吸着体21の内部には、保持面24の反対側の面から保持面24に向って、連続的に延び、かつ、平面視で被吸着体外縁と略同形状の緻密体からなる遮断壁26a、26bが1又は複数形成されるとともに、前記遮断壁26a,26bの保持面24に最も近い部分と前記保持面24との距離が3〜15mmに設定されていることを特徴とする真空チャック20。
【選択図】 図1
【解決手段】多孔質セラミックからなり、被吸着体15を吸着、保持するための保持面24を有する吸着体21と、前記吸着体21の保持面24及び吸引孔対応部を除いた面のほぼ全体を封止するための封止体22とを含み、被吸着部の大きさの異なる被吸着体15を吸着可能に構成された真空チャック20であって、前記吸着体21の内部には、保持面24の反対側の面から保持面24に向って、連続的に延び、かつ、平面視で被吸着体外縁と略同形状の緻密体からなる遮断壁26a、26bが1又は複数形成されるとともに、前記遮断壁26a,26bの保持面24に最も近い部分と前記保持面24との距離が3〜15mmに設定されていることを特徴とする真空チャック20。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体ウエハ等の被吸着体を吸着し、例えば、該被吸着体の加熱処理、研削処理、研磨処理、CVD処理、スパッタリング等のPVD処理等を行うために用いられる真空チャックに関する。より詳細には、特に、半導体ウエハ等の表面の研磨に好適に用いられる真空チャックに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、半導体製品を製造する際には、単結晶シリコンインゴットを薄くスライスした後、その表面を研削、ラッピング、ポリッシングすることにより、鏡面に研磨されたシリコンウエハを得ることができる。
このシリコンウエハの研磨工程は、精密な半導体製品(半導体チップ)を製造するために必要不可欠な重要な工程であり、このようなシリコンウエハの研磨工程では、シリコンウエハを固定して研磨を行うウエハ研磨装置が必要となる。そこで、従来から様々な種類のウエハ研磨装置が提案されている。
例えば、接着剤を用い、シリコンウエハをウエハ保持治具の保持面に貼り付けて、研磨を行うウエハ研磨装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4は、上記ウエハ研磨装置の一例を模式的に示した部分拡大断面図である。
図4に示した通り、このウエハ研磨装置200では、半導体ウエハ15を下向きに保持し、この半導体ウエハ15をテーブル225の研磨面225aに当接させた後、回転させることにより半導体ウエハ15の表面を研磨するように構成された円板状のウエハ保持治具201と、研磨面225aを有し、回転が可能なテーブル225とから構成されている。
【0004】
ウエハ保持治具201の保持面221の反対側の面の中心部には、プッシャ棒224が固定されており、このプッシャ棒224は図示しない駆動手段に連結され、この駆動手段を駆動させると、プッシャ棒224及びウエハ保持治具201が回転するようになっている。また、半導体ウエハ15は、ウエハ保持治具201の保持面221に形成された熱可塑性ワックス等からなる接着層を介して貼着、保持されている。
【0005】
半導体ウエハ15の研磨を行う際には、ウエハ保持治具201とテーブル225とを回転させ、次に、ウエハ保持治具201又はテーブル225を上下動させ、半導体ウエハ15とテーブル225の研磨面225aとを摺接させることにより半導体ウエハ15の研磨を行っていた。
【0006】
しかしながら、このようなウエハ研磨装置200では、半導体ウエハ215を貼り付けたり、剥がしたりする工程を行う必要があり、工程数が多くなるとともに、これらの工程で半導体ウエハ15に傷等がはいるおそれがあるという問題があった。また、半導体ウエハ15と保持面221との間に介在する接着層を均一の厚さにするのが難しく、半導体ウエハ15が傾きやすいという問題があった。
【0007】
そこで、半導体ウエハの脱着を容易に行うことができる真空チャックを用いた研磨装置が提案されている(特許文献2参照)。
この真空チャックを用いた研磨装置では、半導体ウエハを保持する吸着体として多孔質体を用いているため、半導体ウエハの脱着が容易であるのみでなく、半導体ウエハと吸着体の保持面との間に介在物が存在しないため、半導体ウエハが傾くことがなく均一な研磨を行い易いという利点がある。
【0008】
しかしながら、従来の真空チャックでは、半導体ウエハの径が異なると、その径に合わせた別の真空チャックを用いる必要があり、効率的ではなかった。そこで、このような問題点を解消するために、径の異なる複数種類の半導体ウエハの研磨を一台の真空チャックで行うことが可能なユニバーサルチャック機構が開示されている(例えば、特許文献3〜6参照)
【0009】。
ユニバーサルキャック機構の具体例としては、例えば、図5(a)〜(b)に示されるようなものが開示されている。即ち、(A)通気性ポーラスセラミック製円板322を中心とし、この円板の外周に軸心を同一、かつ、高さを同一にした複数の通気性ポーラスセラミック製環状体323a、323b、323c、323dが配列され、前記通気性ポーラスセラミック製円板322と通気性ポーラスセラミック製環状体323aの間、及び、これら通気性ポーラスセラミック製環状体323a〜323d同士の間に、幅が数ミリメートル、高さが上記円板と同一の非通気性薄膜環状仕切壁324a〜324dが配列されて全体として1枚の円盤を構成するウエハ取付板325、(B)上面にウエハ取付板325を収納する凹状環状縁部326を有し、取付板325の下側に位置する上面部分の中心部に凹陥部327を設けると共に、凹陥部327を中心にして複数の流体通路用の環状溝328a〜328dが同心円状に設けられ、該環状溝には複数の吸気孔329が各々垂直方向に設けられたウエハ取付板収納フレーム330、(C)ウエハ取付板325の非通気性薄膜環状仕切壁と上記フランジの環状溝に設けられた吸気孔により構成された吸気領域における通気性ポーラスセラミック製円板、通気性ポーラスセラミック製環状体の各底面を吸気する吸気手段331、この吸気手段を減圧、または加圧する、あるいは水等の液体を供給するパイプ332a〜332d、並びに、これらのパイプに取り付けられた切替バルブ333a〜333dを有するユニバーサルキャック機構が開示されている。
【0010】
また、上記パイプは、図示されていないが、コンプレッサー、吸水ポンプ、真空ポンプ等に接続されている。このユニバーサルチャック機構は、通常、中空軸に軸承された回転テーブルに備え付けられ、半導体ウエハをチャックの取付板に置き、半導体ウエハの径により円板とどの位置の環状体を吸気させるか決め、吸気手段331の切替バルブ332a〜332dを適宜開き、減圧して半導体ウエハを吸着した後、砥石または研磨パッドをウエハ面に押圧し、半導体ウエハおよび砥石または研磨パッドの両方を回転させて半導体ウエハを研削又は研磨する。研削又は研磨中、研削剤又は研磨剤スラリーがウエハ面または研磨パッド面に供給されることもある。
また、ユニバーサルチャック機構は、半導体ウエハをバキュームチャックに吸着させる前に半導体ウエハの裏面を洗浄する仮置台のウエハチャックとして利用されることもある。
【0011】
また、上述した文献に開示されているユニバーサルチャック機構では、半導体ウエハの径に応じて、作業者が切替弁を切り替える作業が必要であるものであったが、これら以外にも、例えば、作業者による切替弁の切り替え作業が不要なユニバーサルチャック機構も開示されている(例えば、特許文献7参照)。
【0012】
しかしながら、上記公報に開示されたユニバーサルチャック機構では、円筒状の不通気性壁が円盤形状の多孔質体を、厚さ方向に完全に区切った形態で形成されている。そのため、半導体ウエハを多孔質体の真空チャック保持面に吸着させ、研磨等の加工を行おうとすると、加工時の圧力により半導体ウエハが保持面に押しつけられた際、不通気性壁が形成されている部分と形成されていない部分とで、保持面が半導体ウエハに作用する力が異なるため、研磨状態が不均一になってしまうという問題があった。
また、不通気性壁に起因して、保持面に段差等が形成された場合には、半導体ウエハが不均一に加工されてしまうとともに、保持面と半導体ウエハとの密着性が低下し、半導体ウエハにずれが生じる可能性があった。
【0013】
【特許文献1】
特開平11−320394号公報
【特許文献2】
特開2000−15573号公報
【特許文献3】
特開平3−32537号公報
【特許文献4】
特開平8−1464号公報
【特許文献5】
特開平8−148548号公報
【特許文献6】
特開平9−174364号公報
【特許文献7】
特開平2000−232083号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたもので、被吸着部の大きさの異なる被吸着体を吸着することができるとともに、吸着力が高く、さらに、吸着力が全体的に均一で、吸着力分布がないため、研磨装置として用いた場合には、被吸着体の均一な研磨を実現することができる真空チャックを提供することを目的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
第一の本発明の真空チャックは、多孔質セラミックからなり、被吸着体を吸着、保持するための保持面を有する吸着体と、上記吸着体の保持面及び吸着孔対応部を除いた面のほぼ全体を封止するための封止体とを含み、
被吸着部の大きさの異なる被吸着体を吸着可能に構成された真空チャックであって、
上記吸着体の内部には、保持面の反対側の面から保持面に向って、連続的に延び、かつ、平面視で被吸着体外縁と略同形状の緻密体からなる遮断壁が1又は複数形成されるとともに、
上記遮断壁の保持面に最も近い部分と上記保持面との距離が3〜15mmに設定されていることを特徴とする。
【0016】
第二の本発明の真空チャックは、多孔質セラミックからなり、被吸着体を吸着、保持するための保持面を有するとともに、上記吸着体の保持面及び吸着孔対応部を除いた面のほぼ全体を封止するための封止層が形成された吸着体を含み、
被吸着部の大きさの異なる被吸着体を吸着可能に構成された真空チャックであって、
上記吸着体の内部には、保持面の反対側の面から保持面に向って、連続的に延び、かつ、平面視で被吸着体外縁と略同形状の緻密体からなる遮断壁が1又は複数形成されるとともに、
上記遮断壁の保持面に最も近い部分と上記保持面との距離が3〜15mmに設定されていることを特徴とする。
以下、本発明の真空チャックについて詳細に説明する。
【0017】
【発明の実施の形態】
第一の本発明の真空チャックは、多孔質セラミックからなり、被吸着体を吸着、保持するための保持面を有する吸着体と、上記吸着体の保持面及び吸着孔対応部を除いた面のほぼ全体を封止するための封止体とを含み、
被吸着部の大きさの異なる被吸着体を吸着可能に構成された真空チャックであって、
上記吸着体の内部には、保持面の反対側の面から保持面に向って、連続的に延び、かつ、平面視で被吸着体外縁と同形状又は被吸着体外縁より小さい略相似形状の緻密体からなる遮断壁が1又は複数形成されるとともに、
上記遮断壁の保持面に最も近い部分と上記保持面との距離が3〜15mmに設定されていることを特徴とする。
【0018】
以下、図面を参照しながら第一の本発明の真空チャックについて説明する。
図1(a)は、第一の本発明の真空チャックの一例を模式的に示した斜視図であり、(b)は、(a)におけるA−A線断面図である。
図1に示したように、真空チャック20は、吸着体21と封止体22とから構成され、中央部分に貫通孔を有する円板上に筒状体が一体的に形成された形態の封止体22の上記筒状体の内部に、上面に保持面24を有する円板状の吸着体21が固定されている。
【0019】
吸着体21の内部には、保持面24の反対側の面から保持面24に向って、連続的に延び、緻密体からなる遮断壁26a、26bが形成されている。この遮断壁26a、26bは、緻密体からなるため、気体が通り抜けることがない。
【0020】
遮断壁26a、26bは、その保持面24に最も近い部分と、保持面24との距離が3〜15mmに設定されている。
上記距離が3mm未満では、半導体ウエハ15等の被吸着体を保持面24に吸着させ、研磨等の加工を行うと、遮断壁26a、26bに起因して、遮断壁26a、26bに対向する部分(直上部分)と、それ以外の部分とで、被吸着体に作用する力が異なるため、研磨状態が不均一になってしまう。
また、上記距離が15mmを超えると、遮断壁26a、26bと半導体ウエハとの間から気体が吸着体21の内部に入り込み、保持面と半導体ウエハ等の被吸着体との密着性が低下し、特に被吸着体の外周において、その密着度が低下するため、研磨状態が不均一になる。
【0021】
また、封止体22の一部には吸引孔23a〜23cを備えた吸引部23が一体的に設けられており、さらに、この封止体22の下部には吸引部23が延設されるとともに、真空チャック20を支持、固定するための固定ベース41が設けられている。封止体22と固定ベース41とは、等間隔に設置された4本のボルト29により連結、固定されている。
【0022】
このような実施形態の真空チャック20では、いずれの吸引孔を介して吸着体21内部の空気を吸引するかを適宜選択することにより、被吸着部の大きさの異なる半導体ウエハ等の被吸着体を吸着することができる。具体的には、平面視した際の被吸着部の大きさが保持面24の大きさに近い被吸着体を吸着する場合には、吸引孔23a〜23cの全ての吸引孔から空気を吸引することにより被着体を吸着する。平面視した際の被吸着部の大きさが平面視した遮断壁26aの大きさと略同一の大きさの被着体を吸着する場合には、吸引孔23a、23bから空気を吸引することにより被着体を吸着する。平面視した際の被着部の大きさが平面視した遮断壁26bの大きさと略同一の大きさの被着体を吸着する場合には、吸引孔23aからのみ空気を吸引することにより、被吸着体を吸着する。
【0023】
そして、研磨テーブルの研磨面と保持面に吸着された半導体ウエハとが平行になった状態で、研磨テーブルを回転させるか、真空チャック20自体を回転させるか、又は、両者を回転させ、両者を接触させることにより、半導体ウエハ表面の研磨等を行うことができる。研磨テーブルには、研磨クロスを貼り付けることにより粗化面が形成されていてもよく、ダイヤモンド砥粒等を用いて粗化面が形成されていてもよい。
【0024】
上記遮断壁の形状は、上述したように、その平面視形状が、被吸着体外縁と略同形状の円筒状であり、該遮断壁の保持面に最も近い部分と、上記保持面との距離が3〜15mmに設定されている。
【0025】
上記真空チャックでは、このような形状の遮断壁が1又は複数形成されている。具体的には、例えば、被吸着部の大きさの異なる2種類の半導体ウエハを吸着する場合には、少なくとも1つの遮断壁が形成されていればよく、被吸着部の大きさが異なる3種類以上の半導体ウエハを吸着する場合には、少なくとも2つの遮断壁が形成されていればよい。
【0026】
また、上記遮断壁の平面視形状は、上記被吸着体外縁と略同形状であれば特に限定されないが、上記被吸着体外縁より若干大きいことが望ましい。
被吸着体外縁より若干大きい場合に、被吸着体の吸着力に特に優れ、被吸着体の外縁部近傍の浮き上がり等が生じることがなく、被吸着体を特に均一に研磨することができるからである。
【0027】
上記遮断壁の平面視形状が、被吸着体外縁より若干大きい場合、その具体的な大きさは、被吸着体の径の100%より大きく、被吸着体の径の110%より小さいことが望ましい。
【0028】
また、上記遮断壁の厚さは特に限定されないが、1〜10mmであることが望ましい。
また、上記遮断壁としては、緻密体からなるものであり、気体を通過させることのないものであれば、その材料は特に限定されない。
上記遮断壁の材料の具体例としては、例えば、樹脂、金属、ガラス、セラミック等を挙げることができる。
【0029】
上記樹脂は、熱硬化性樹脂であっても熱可塑性樹脂であってもよく、上記熱硬化性樹脂としては特に限定されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド、キシレン樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ボリエステル樹脂、ユリア樹脂等を挙げることができる。
上記熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、ABS樹脂、AS樹脂、ポリエチレン、ボリプロピレン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル等を挙げることができる。
上記金属としては、例えば、SUS、鋼、アルミニウム合金等を挙げることができる。上記セラミックとしては、アルミナ、コージェライト、ムライト、シリカ等が挙げられる。上記ガラスとしては、珪酸ガラス、珪酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、ホウ珪酸ガラス等が挙げられる。
【0030】
上記吸着体の材料としては特に限定されず、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン等の窒化物セラミック、炭化珪素、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等の炭化物セラミック、アルミナ、ジルコニア、コージュライト、ムライト等の酸化物セラミック等を挙げることができるが、これらのなかでは、高い熱伝導率を有するとともに、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、フッ硝酸及び水酸化ナトリウム等に対する耐薬品性に優れる炭化珪素が望ましい。なお、上記セラミックに金属珪素を配合した珪素含有セラミックや、珪素や珪酸塩化合物で結合されたセラミックも用いることができる。
【0031】
上記吸着体の細孔分布は、水銀圧入法により測定した平均気孔径について、下限が10μm、上限が40μmであることが望ましく、下限が20μm、上限が40μmであることがより望ましく、下限が25μm、上限が30μmであることがさらに望ましい。
上記吸着体の平均気孔径が10μm未満であると、第一の本発明の真空チャックを用いた真空引きが困難となるため、上記吸着体の厚さを薄くする必要があり機械的強度を充分に確保することができなくなることがある。一方、平均気孔径が40μmを超えると、表面の気孔が存在する部分と気孔が存在しない部分との吸着力の差が大きくなり、その結果、気孔が被吸着体に転写された形態の研磨面が形成され、被吸着体の研磨面の平面度が低下することがある。
なお、上記吸着体の平均気孔径を測定する方法は、上記水銀圧入法のほか、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)による測定等従来公知の方法であってもよい。
【0032】
また、上記吸着体は、上記平均気孔径の0.7〜1.2倍の気孔径を有する細孔(以下、主細孔ともいう)の全細孔容積に対する割合が75%以上であることが望ましい。即ち、上記吸着体は、平均気孔径が10〜40μmの細孔が大部分を占めており、その気孔径分布のピークが非常にシャープで気孔径のバラツキが小さいことが望ましい。
上記主細孔の全細孔容積に対する割合が75%未満であると、上記吸着体の気孔径のバラツキが大きく、被吸着体の吸着力にバラツキが発生してしまい、例えば、第一の本発明の真空チャックを用いて被吸着体の研磨等を行おうとすると、部分的に吸着力に差が生じるため、被吸着体の研磨状態が均一にならないおそれがある。
上記主細孔の全細孔容積に対する割合は80%以上であることがより望ましく、85%以上であることがさらに望ましい。
【0033】
また、上記吸着体は、上記平均気孔径の0.7倍未満の気孔径を有する細孔(以下、微細孔ともいう)の全細孔容積に対する割合が15%以下であることが望ましく、上記平均気孔径の1.2倍を超える気孔径を有する細孔(以下、巨細孔ともいう)の全細孔容積に対する割合が10%以下であることが望ましい。
即ち、上記吸着体では、上記主細孔よりも小さな細孔(微細孔)及び上記主細孔よりも大きな細孔(巨細孔)が、略均等に存在していることが望ましい。
上記微細孔の全細孔容積に対する割合が15%を超えると、例えば、上記主細孔の全細孔容積に対する割合が75%以上であるがその平均気孔径が10μm程度と小さい場合、吸着体に存在する微小な細孔の割合が高くなり、第一の本発明の真空チャックを用いた真空引きが困難となるため、上記吸着体の厚さを薄くする必要があり機械的強度を充分に確保することができなくなることがある。一方、上記巨細孔の全細孔容積に対する割合が、10%を超えると、例えば、上記主細孔の全細孔容積に対する割合が75%以上であるがその平均気孔径が40μm程度と大きい場合、吸着体に存在する巨大な細孔の割合が高くなり、本発明の真空チャックを用いて被吸着体の研磨等を行う際、部分的に吸着力に差が生じるため、被吸着体の研磨状態が均一にならないことがある。
上記微細孔及び巨細孔の全細孔容積に対する割合は、それぞれ10%以下、5%以下であることがより望ましい。
【0034】
また、上記吸着体は、その気孔率の下限が20%であり、上限が50%であることが望ましい。気孔率が20%未満であると、被吸着体の吸引力が弱くなり、本発明の真空チャックを用いて被吸着体の研磨等を行う際、被吸着体が移動したり、剥がれたりすることがある。一方、気孔率が50%を超えると、吸着体の強度が低下するため、破壊されやすく、それを防止するためには吸着体の厚さを厚くする必要が生じ、本発明の真空チャックが大型化してしまうとともに、高価になってしまう。
上記気孔率の下限は25%であり、上限は45%であることがより望ましく、下限は30%であり、上限は40%であることがさらに望ましい。
なお、上記気孔率は、水銀圧入法、アルキメデス法、走査型電子顕微鏡(SEM)による測定等、従来公知の方法により測定することができる。
【0035】
また、上記吸着体の平均粒径の下限は30μmであり、上限は70μmであることが望ましい。このように平均粒径の比較的大きめの粒子が望ましいのは、一般に、熱が粒子の内部を伝導する効率は、熱が粒子間を伝導する効率に比べて高いため、平均粒径が大きいほど熱伝導率が高くなり、また、気孔径が揃い易いからである。
【0036】
上記吸着体の形状としては特に限定されず、円板状であってもよく、直径の大きな円板と直径の小さな円板とが一体的に積層形成された形状であってもよい。さらに、平面視楕円形の板状であってもよく、直方体形状や立方体形状であってもよい。
【0037】
上記吸着体の機械的強度としては特に限定されないが、例えば、JIS R 1601に準拠した三点曲げ試験において、20MPa以上であることが望ましい。20MPa未満であると、上記吸着体に反りやクラック等が発生し易くなる。
【0038】
上記吸着体の熱伝導率は、50W/m・K以上であることが望ましい。例えば、本発明の真空チャックを用いて半導体ウエハの研磨加工を行うと、上記吸着体が摩擦熱により高温になりやすいため、冷媒による冷却を行う場合があるが、この冷媒による冷却効果を向上させるために、熱伝導率の高い材料が好ましいからである。
【0039】
また、上記吸着体の厚さは、該吸着体の平均気孔径や平均気孔率、構成する材料の熱伝導率等を考慮して適宜決定されるが、例えば、上記吸着体が炭化珪素から構成されている場合、10〜60mmであることが望ましい。吸着体の厚さが10mm未満であると、その直径に対して薄くなりすぎ、吸着体に反りが発生しやすく、また、強度が低下して破損しやすくなる。一方、吸着体の厚さが60mmを超えると、重量が増し真空チャックの大型化を招く。
【0040】
また、第一の本発明の真空チャックにおいて、上記吸着体は、被吸着体を吸着、保持するための保持面を有しており、該保持面の形状は、通常、吸着体の形状に依存して変化するが、保持面のみが特定の形状に形成されていてもよい。また、保持面は、精度のよい平面状に仕上げられていることが望ましく、上記保持面の平面度の望ましい上限は、10μmであり、より望ましい上限は、5μmである。
上記保持面の平面度が10μmを超えると、被吸着体の研磨を行った際、研磨面の平坦度が低下してしまう。
【0041】
本明細書において、吸着体の保持面の平面度とは、保持面のうち、気孔が形成されておらず、粒子が存在する部分について、その高さをプロットしていき、その一番高い点と低い点との間の差(距離)とする。これにより、保持面の起伏の大きさを評価することが可能である。このように規定したのは、保持面の粒子が存在する部分により被吸着体を支持するため、この部分の起伏の大きさの程度により、研磨を行う際の被吸着体の研磨面の凹凸が影響を受けるからである。なお、吸着体は、多孔質セラミックからなるため、保持面の表面には、上述したように、粒子が存在する部分と気孔が存在する部分とがあり、これに起因して細かな凹凸が形成されているが、この凹凸の大きさは、細孔分布等により評価を行うことができる。
第一の本発明の真空チャックを研磨装置、特に半導体ウエハ表面を研磨する研磨装置として用いる場合には、保持面の形状は、円形状であることが望ましい。
【0042】
上記保持面の大きさは特に限定されるものではなく、被吸着体の大きさに応じてその寸法を決定するが、例えば、半導体ウエハ等の被吸着体のうちで最も面積の大きいものを保持した際、該吸着体の保持面の外縁から0.1〜15mm内側に上記被吸着体の外縁が位置する形状、寸法となるように構成されていることが望ましい。吸着力が高く、かつ、吸着体の吸着力が全体的に均一であるため、研磨装置として用いた場合には、被吸着体の均一な研磨を実現することができるからである。
【0043】
上記被吸着体を吸着、保持した際、被吸着体が上記吸着体の保持面の外縁から内側に0.1mm入った位置よりも外側にくるように構成されている場合、即ち、被吸着体の外縁と吸着体の外縁との距離が0.1mmよりも小さくなるように設定されている場合、半導体ウエハを載置する際の精度との関係で、被吸着体と封止体とが接触しやすい。このため、研磨時に半導体ウエハが封止体に接触して浮き上がってしまうことがある。
従って、例えば、第一の本発明の真空チャックを半導体ウエハの研磨装置として使用した場合には、半導体ウエハの縁部付近が余計に研磨されてしまい、研磨状態が不均一になってしまうことがある。
【0044】
一方、上記被吸着体を保持した際、該吸着体の保持面の外縁から15mmよりもさらに内側に上記被吸着体の外縁が位置するように構成されている場合、被吸着体と封止体との間に大きな隙間が空いてしまうため、その隙間から空気が多量に吸い込まれ、被吸着体外周の吸着力が低下して浮き上がり、やはりそのため半導体ウエハの縁部付近が余計に研磨されてしまうことがある。ただし、吸着体の保持面の外縁から15mm内側に遮断壁が存在する場合には、均一な吸着を実現することができる。
【0045】
吸着体の保持面が円形である場合、その直径としては、研磨対象物である半導体ウエハ等の直径等を考慮して適宜決定されるが、150〜300mmであることが望ましい。
【0046】
上記封止体は、上記吸着体の保持面及び吸着孔対応部を除いた面のほぼ全体を封止するために設けられており、上記吸着体の保持面以外の部分から空気が漏れないようになっている。また、その一部に吸引部が一体的に設けられており、この吸引部を介して封止体の内部(吸着体内部)を吸引することにより、吸着体内部を減圧状態とし、被吸着体を吸着可能とするようになっている。
【0047】
上記封止体の材料は特に限定されるものではなく、SUS、鋼、アルミニウム合金等の金属であってよく、窒化ケイ素、炭化ケイ素、アルミナ等のセラミックであってもよいが、一定以上の機械的強度を有する緻密体であることが望ましい。減圧(真空)に耐え得る機械的特性を有する必要があり、また、封止体からの空気の漏れをなくす必要があるからである。
【0048】
図1に示した真空チャック20は、組み立て後、吸引部23に形成された吸引孔23a〜23cのそれぞれを適当な管状部材を介して真空ポンプ等に接続し、この吸引孔23a〜23cから空気を吸引することにより、保持面24に載置した半導体ウエハ15等の被吸着体を吸着・保持することができるようになっている。
【0049】
また、図1に示した真空チャック20では、吸着体21に溝等が形成されていないが、吸引速度を速めるために、例えば、保持面24の反対側の面に種々の形状の溝等が形成されていてもよい。
また、真空チャック20は、吸引部の中心軸を中心として回転を可能にする回転機構を備えていてもよい。
【0050】
第一の本発明の真空チャックの用途は特に限定されず、上述したように、被吸着体の加熱処理、研削処理、研磨処理、CVD処理、スパッタリング等のPVD処理を行うために用いられてもよい。
【0051】
以上説明した通り、第一の本発明の真空チャックでは、吸着体の内部に、保持面の反対側の面から保持面に向って、連続的に延び、かつ、平面視で被吸着体外縁と略同形状の緻密体からなる遮断壁が1又は複数形成されるとともに、上記遮断壁の保持面に最も近い部分と上記保持面との距離が3〜15mmに設定されているため、被吸着部の大きさの異なる被吸着体を確実に吸着することができる。
さらに、上記真空チャックは、吸着力が高く、吸着力が全体的に均一であり、吸着力に分布が生じないため、研磨装置として用いた場合には、被吸着体の均一な研磨を実現することができる。
【0052】
次に、第一の本発明の真空チャックの製造方法について簡単に説明する。
まず、初めに吸着体を製造する。
吸着体を製造するには、少なくともセラミック粉末とバインダーと分散媒液とを含む混合組成物を調製する。
【0053】
上記セラミック粉末は、予めその粒径をある程度揃えておくことにより、平均粒径のバラツキが小さくいことが望ましい。セラミック粉末の平均粒径のバラツキが大きいと、製造する吸着体の気孔径にバラツキが発生することがあるからである。上記セラミック粉末の粒径を揃える方法としては特に限定されず、例えば、セラミック粉末を密度の高い塊状等の成形体とした後、該成形体を破砕、解砕及び整粒する方法等公知の方法を挙げることができる。
上記セラミック粉末は、平均粒径の0.7〜1.2倍の粒径を有するセラミック粉末の全セラミック粉末に対する割合が75%以上となるように調整されることが望ましい。
【0054】
上記セラミック粉末は、平均粒径5〜100μmの粗粉末100重量部に対して、平均粒径0.1〜1.0μmの微粉末10〜100重量部を均一に混合することが望ましい。
上記バインダーとしては特に限定されず、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。
上記バインダーの配合量は、通常、セラミック粉末100重量部に対して、1〜10重量部程度が望ましい。
【0055】
上記分散媒液としては特に限定されず、例えば、ベンゼン等の有機溶媒;メタノール等のアルコール、水等を挙げることができる。
上記分散媒液は、混合組成物の粘度が一定範囲内となるように、適量配合される。
これらセラミック粉末、バインダー及び分散媒液は、アトライター等で混合した後、ニーダー等で充分に混練し、さらに、スプレードライ法等により顆粒状の粉末を製造する。そして、この顆粒を金型に入れて成形することにより、生成形体を作製する。
この生成形を、不活性ガス(アルゴン)雰囲気下、400〜650℃程度に加熱することで脱脂し、バインダー等を分解、消失させ、略セラミック粉末のみを残留させる。
【0056】
そして、上記脱脂処理を施した後、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、1400〜2300℃程度に加熱することで焼成し、セラミック粉末を焼結させて多孔質焼結体を製造する。
【0057】
次に、上記多孔質焼結体に遮断壁を形成するための円環状の切れ込みを形成する。
上記切れ込みの形成は、例えば、ダイヤモンドカッタを用いた切削加工、サンドブラスト処理等により行うことができる。
また、ここでは、後工程を経て遮断壁を形成した際に、該遮断壁の保持面に最も近い部分と、該保持面との距離が3〜15mmとなるように、上記切れ込みの深さを設定する。
【0058】
次に、上記切れ込みを形成した部分に、遮断壁を形成する。上記遮断壁の形成方法は、その材料を考慮して選択すればよい。
具体的には、例えば、上記遮断壁の材料として熱硬化性樹脂を選択した場合には、高分子化する前の液状の熱硬化性樹脂を上記切れ込み内に流しこみ、その後、熱効果処理を施すことにより形成すればよい。また、材料として熱可塑性樹脂を選択した場合には、溶剤に溶解した状態で流し込み、その後、溶剤を飛散させて硬化させたり、加熱して粘度を下げた後、上記切れ込み内に流し込み、冷却(放冷)して硬化させたりすることにより形成すればよい。
【0059】
また、遮断壁の材料として、金属、ガラス、セラミックを選択した場合には、これらの材料をその融点近くまで加熱し溶融させるか、粘度を下げて上記切れ込み内に流し込んだ後、冷却(放冷)すればよい。
また、遮断壁の材料として、セラミックを選択した場合には、スラリー状のセラミックを流し込み、不活性ガス雰囲気下1400〜2300℃で焼結させればよい。
【0060】
また、第一の本発明の真空チャックを製造する際には、遮断壁の保持面に最も近い部分と上記保持面との距離を3〜15mmに設定するのであるが、上記遮断壁を形成する際に、上述したように、上記切れ込み内に液状の材料を流し込む場合には、上記吸着体は多孔質セラミックからなるものであるので、その材料の一部が、多孔質セラミック内に浸透することとなる。
従って、上述した方法で遮断壁を形成する場合には、液状の材料が多孔質セラミック内に浸透することを考慮して切れ込みを形成する。
このような工程を経ることにより、吸着体を形成することができる。
【0061】
上記吸着体の製造方法は、上述した方法に限定されず、例えば、予め粒径をある程度揃えたセラミック粉末、該セラミック粉末を結合する結合剤として金属シリコン、バインダー及び分散媒液等からなる原料を用いて上述した生成形体を作製し、その後、生成形体を焼成することにより上記金属シリコンで上記セラミック粉末を結合し、吸着体を製造する方法や、上記混合組成物のバインダーに澱粉が含まれたものを使用し、この澱粉含有混合組成物を用いて吸着体を製造する方法等が挙げられる。
その後、吸着体を封止及び吸引するための封止体を形成し、その下部に固定ベースを設け、封止体と固定ベースとをボルトで連結、固定することにより真空チャックを組み立てる。
【0062】
次に、第二の本発明の真空チャックについて説明する。
第二の本発明の真空チャックは、多孔質セラミックからなり、被吸着体を吸着、保持するための保持面を有するとともに、上記吸着体の保持面及び吸着孔対応部を除いた面のほぼ全体を封止するための封止層が形成された吸着体を含み、
被吸着部の大きさの異なる被吸着体を吸着可能に構成された真空チャックであって、
上記吸着体の内部には、保持面の反対側の面から保持面に向って、連続的に延び、かつ、平面視で被吸着体外縁と同形状又は被吸着体外縁より小さい略相似形状の緻密体からなる遮断壁が1又は複数形成されるとともに、
上記遮断壁の保持面に最も近い部分と上記保持面との距離が3〜15mmに設定されていることを特徴とする。
【0063】
第二の本発明の真空チャックを構成する吸着体(多孔質セラミック)は、保持面を除いた面のほぼ全体を封止するための封止層が形成されている以外、その形状、材料、特性等は、第一の本発明の真空チャックを構成する吸着体と同様であるので、上記の異なる事項についてのみ、説明することとする。
【0064】
図2(a)は、第二の本発明の真空チャックの一例を模式的に示した斜視図であり、(b)は、(a)におけるA−A線断面図である。図3(a)は、第二の本発明の真空チャックの別の一例を模式的に示した斜視図であり、(b)は、その断面図である。
図2及び3に示したように、真空チャック50は、その上部に形成された保持面54及び吸引孔対応部を除いた面のほぼ全体に封止層52が形成された吸着体51からなり、その下に封止層52が形成された吸着体51を支持、固定するための固定ベース61が設けられている。また、吸着体51は円板状の吸着体下部51aと、その上に中心軸を共有するように一体的に積層形成され、吸着体下部51aよりも直径が小さい吸着体上部51bとからなり、吸着体下部51aには、等間隔に固定用の貫通孔が形成されている。
【0065】
そして、吸着体下部51aの貫通孔にボルト59が挿通されて固定ベース61に連結、固定されるとともに、貫通孔内部に封止剤57が充填され、吸着体51の貫通孔部分が封止されている。
【0066】
また、固定ベース61には、吸着体51の下面に通じる吸引孔53a、53b、53c、53dを有する吸引部53が設けられている。このような実施形態の真空チャック50では、図1に示した真空チャック20と同様に、吸引孔53a〜53dのうち、吸引孔53aのみ、吸引孔53a〜53b、吸引孔53a〜53c、吸引孔53a〜53dと吸引孔を選択して空気を吸引することにより、被吸着部の大きさの異なる被吸着体を吸着・保持することができる。
【0067】
封止層52は、図2及び3に示しているように、吸着体51の保持面54と、53a〜53dが形成されている吸引孔対応部とを除く面に、液状の高分子、高分子を形成するための原料、又は、ガラス組成物等を塗布等により付着させることにより形成することができる。
封止層52は、吸着体51の内部に原料を浸透させて固化させることにより形成した内部固化層52aであってもよく、吸着体51の内部に原料を浸透させず、表面で固化させることにより形成した被覆層52bであってもよく、図2に示しているような、吸着体51の内部に原料を一部浸透させて固化させることにより形成した内部固化層と被覆層とからなる複合層であってもよい。
また、封止層52としては、内部固化層52a、被覆層52b、及び、上記複合層からなる群より選択される2以上の層が併用されてもよく、例えば、図3に示しているように、吸着体上部51bに被覆層52bを形成し、吸着体下部51aに内部固化層52aを形成してもよい。
このように、封止層52を形成することにより、保持面54以外の面から空気が吸引されるのを防止しつつ、吸引孔対応部から吸引孔53a〜dを介して吸着体51内部の空気を吸引することができる。
【0068】
また、吸着体51の固定ベース61と接する面については、側面でなければ封止層52を省略してもよく、例えば、吸着体51の保持面54の反対側の面に溝が形成され、その部分から吸引することができるように構成されていてもよい。
【0069】
なお、吸着体51の形状は、図2及び3に示したような直径の異なる円板を一体的に積み重ねた形状に限られず、図1に示したような円板状であってもよく、そのほかの形状であってもよい。
【0070】
この真空チャック50は、吸引部の中心軸を中心として回転を可能にする回転機構を備えていてもよい。
【0071】
固定ベース61の材料は、第一の本発明で説明した固定ベース41と同様のものでよい。なお、吸着体51の保持面54の反対側の面に溝が形成された場合には、当然、固定ベース61の該当部分には、吸引した空気等を吸引孔53a〜dに導くための溝又は孔が形成されることとなる。
【0072】
封止層52を構成する材料は特に限定されるものではなく、例えば、樹脂、ガラス、金属、セラミック等が挙げられるが、比較的容易に封止層を形成することができる点から樹脂が好ましい。
【0073】
封止層52を構成する樹脂は特に限定されるものではなく、熱硬化性樹脂であっても熱可塑性樹脂であってもよい。上記熱硬化性樹脂としては特に限定されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド、キシレン樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ボリエステル樹脂、ユリア樹脂等が挙げられる。これら熱硬化性樹脂を用いる場合には、例えば、高分子化する前の液状の樹脂を塗布した後、加熱することにより硬化させればよい。
【0074】
上記熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、ABS樹脂、AS樹脂、ポリエチレン、ボリプロピレン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。これら熱可塑性樹脂は、溶剤に溶解した状態で塗布を行い、封止層52となるものを形成し、その後、溶剤を飛散させて硬化させてもよく、加熱して粘度を下げた後、吸着体に圧入し、封止層52を形成してもよい。
【0075】
ガラス、金属、セラミック等は、これらの材料をその融点近くまで加熱し、溶融させるか、粘度を下げて吸着体の内部に浸透させるか又は圧入する。
【0076】
吸着体の保持面近傍の封止層52は、内部固化層52aの厚さを薄くして、被覆層52bの厚さを厚くすることが好ましい。吸着体の保持面近傍の封止層52は、上記吸着体の表面に形成された被覆層52bであることがより好ましい。上記保持面近傍において、内部固化層52aの厚さを厚くすると、研磨熱、膨潤等により保持面近傍の内部固化層が膨張して、被着体と接触しやすくなると推定され、研磨が不均一になりやすいからである。
上記保持面の近傍では、内部固化層52aの厚さは、5mm以下が望ましく、被覆層52bの厚さは、15mm以下が望ましい。
【0077】
第二の本発明の真空チャックは、吸着体の内部に、保持面の反対側の面から保持面に向って、連続的に延び、かつ、平面視で被吸着体外縁と略同形状の緻密体からなる遮断壁が1又は複数形成されるとともに、上記遮断壁の保持面に最も近い部分と上記保持面との距離が3〜15mmに設定されているため、被吸着部の大きさの異なる被吸着体を吸着することができる。
さらに、上記真空チャックは、吸着力が高く、吸着力が全体的に均一で、吸着力に分布が形成されていないため、研磨装置として用いた場合には、被吸着体の均一な研磨を実現することができる。
【0078】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0079】
実施例1
平均粒径60μmのα型炭化珪素粉末90重量%と、平均粒径1μmのα型炭化珪素粉末10重量%とを湿式混合し、得られた混合物100重量部に対して、有機バインダー(メチルセルロース)を5重量部、水を10重量部加えて混練した後、スプレードライを行い、顆粒状の粉末を得た。
この顆粒状の粉末を金型に入れ、冷間静水圧(CIP)を利用する成形機を用いて、50MPaの圧力で、5分間保持して円板形状の炭化珪素成形体を作製した。
【0080】
次に、上記炭化珪素成形体を脱脂炉に搬入し、アルゴンガス雰囲気下、600℃で2時間加熱することにより炭化珪素成形体の脱脂を行った。
【0081】
次に、脱脂された炭化珪素成形体を温度:2200℃で焼成し、多孔質炭化珪素焼結体からなり、直径210mm、厚さ10mmの吸着体21を製造した(図2参照)。この吸着体の特性として、水銀圧入法により測定した気孔率及び平均気孔径を表1に示す。
【0082】
次に、この吸着体21に切り込み加工を行うことにより、平面視円形状の溝を3つ形成した。次に、この溝に、エポキシ樹脂を流し込み、固化することにより遮断壁26a、26bを形成した。遮断壁26a、26bの保持面24に最も近い部分と保持面との距離は、3mmであった。
【0083】
次に、図1に示すように、得られた吸着体21を封止体に固定し、真空チャック20の製造を終了した。
【0084】
実施例2〜5
吸着体の形状を図3に示すような直径240mm、厚さ10mmの吸着体下部51aに、それより直径の小さな直径210mm、厚さ10mmの吸着体上部51bが一体的に形成された形状としたほかは、実施例1とほぼ同様にして、図3に示す形状の吸着体51を製造し、実施例1同様にして、遮断壁56a、56b、56cを形成した。この吸着体の特性として、水銀圧入法により測定した気孔率及び平均気孔径を表1に示す。
その後、この吸着体51を用いて図3に示したような構成の真空チャック50を製造した。なお、封止層52の形成に際しては、吸着体上部51bの外周に、エポキシ樹脂を塗布、乾燥して被覆層52bを厚さ2mmにして形成し、吸着体下部51aの外周及び底面(吸引孔対応部を除く)に、エポキシ樹脂を塗布、吸引、乾燥して内部固化層52aを厚さ2mmにして形成した。
遮断壁56a、56b、56cの保持面54に最も近い部分と保持面との距離を表1に示す。
【0085】
比較例1〜4
遮断壁の保持面に最も近い部分と保持面との距離を表1に示すように設定したほかは、実施例1と同様にして吸着体を製造した。
その後、各吸着体を用いて実施例1と同様に真空チャックを製造した。
【0086】
比較例5
遮断壁を設けなかったほかは、実施例1同様にして吸着体を製造した。
その後、各吸着体を用いて実施例1と同様に真空チャックを製造した。
【0087】
実施例1〜5及び比較例1〜4に係る真空チャックに、平面視した遮断壁又は吸着体とほぼ同様の直径のシリコンウエハを平面視した遮断壁の中心部とシリコンウエハの中心部とが一致するように載置し、該シリコンウエハを真空度50KPaで吸着し、上記シリコンウエハの研磨処理を10回行い、このときのシリコンウエハの研磨面の平坦度を評価した。また、比較例5に係る真空チャックでは、直径160mmのシリコンウエハを吸着して研磨を行った。
【0088】
なお、研磨処理は、シリコンウエハを吸着・保持した真空チャックを、回転しているフェルト状の研磨クロスを貼り付けたテーブルと接触させることにより行った。テーブルの回転数は1.2s−1とした。
また、下記の表1に示すウエハ1、ウエハ2、ウエハ3は、各遮断壁又は吸着体の直径に対応するシリコンウエハについて大きさの順に番号を付けたのみで、その大きさは、それぞれの真空チャックで異なる。
【0089】
研磨面の平坦度は、平面度測定器(黒田精工社製 ナノメトロ)により評価した。なお、研磨面の平坦度は、研磨面の最も高い点と低い点との差(距離)である。また、細孔分布測定装置(島津製作所製)を用い、水銀圧入法により細孔直径0.2〜600μmの範囲で細孔分布を測定した。
評価結果を下記の表1に示した。
【0090】
【表1】
【0091】
表1に示した結果から明らかなように、実施例1〜5に係る真空チャックは、それぞれ直径の異なるシリコンウエハを載置しても、良好に研磨が行われていた。すなわち、研磨処理されたシリコンウエハの表面の平坦度は、0.5μm以下と極めて小さく、精度よく、かつ、均一に研磨処理されていた。
【0092】
一方、比較例1〜5に係る真空チャックでは、研磨処理されたシリコンウエハの表面の平坦度は、1μm以上と平坦度が大きく低下しており、均一な研磨を行うことができなかった。
【0093】
【発明の効果】
第一の本発明の真空チャック及び第二の本発明の真空チャックは、上述した通りの構成であるので、被吸着部の大きさの異なる被吸着体を吸着することができる。
さらに、上記真空チャックは、吸着力が高く、吸着力が全体的に均一であり、吸着力が分布していないため、研磨装置として用いた場合には、被吸着体の均一な研磨を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、第一の本発明の真空チャックの一例を模式的に示す斜視図であり、(b)は、その縦断面図である。
【図2】(a)は、第二の本発明の真空チャックの一例を模式的に示す斜視図であり、(b)は、その縦断面図である。
【図3】(a)は、第二の本発明の真空チャックの別の一例を模式的に示す斜視図であり、(b)は、その縦断面図である。
【図4】従来のウエハ研磨装置の一例を模式的に示した部分拡大断面図である。
【図5】(a)は、従来のウエハ研磨装置の一例を模式的に示した一部切り欠き斜視図であり、(b)は、縦断面図である。
【符号の説明】
15 半導体ウエハ
20、50 真空チャック
21、51 吸着体
51a 吸着体下部
51b 吸着体上部
22 封止体
23、53 吸引部
23a、23b、23c 吸引孔
53a、53b、53c 吸引孔
24、54 保持面
41、61 固定ベース
52 封止層
52a 内部固化層
52b 被覆層
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体ウエハ等の被吸着体を吸着し、例えば、該被吸着体の加熱処理、研削処理、研磨処理、CVD処理、スパッタリング等のPVD処理等を行うために用いられる真空チャックに関する。より詳細には、特に、半導体ウエハ等の表面の研磨に好適に用いられる真空チャックに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、半導体製品を製造する際には、単結晶シリコンインゴットを薄くスライスした後、その表面を研削、ラッピング、ポリッシングすることにより、鏡面に研磨されたシリコンウエハを得ることができる。
このシリコンウエハの研磨工程は、精密な半導体製品(半導体チップ)を製造するために必要不可欠な重要な工程であり、このようなシリコンウエハの研磨工程では、シリコンウエハを固定して研磨を行うウエハ研磨装置が必要となる。そこで、従来から様々な種類のウエハ研磨装置が提案されている。
例えば、接着剤を用い、シリコンウエハをウエハ保持治具の保持面に貼り付けて、研磨を行うウエハ研磨装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4は、上記ウエハ研磨装置の一例を模式的に示した部分拡大断面図である。
図4に示した通り、このウエハ研磨装置200では、半導体ウエハ15を下向きに保持し、この半導体ウエハ15をテーブル225の研磨面225aに当接させた後、回転させることにより半導体ウエハ15の表面を研磨するように構成された円板状のウエハ保持治具201と、研磨面225aを有し、回転が可能なテーブル225とから構成されている。
【0004】
ウエハ保持治具201の保持面221の反対側の面の中心部には、プッシャ棒224が固定されており、このプッシャ棒224は図示しない駆動手段に連結され、この駆動手段を駆動させると、プッシャ棒224及びウエハ保持治具201が回転するようになっている。また、半導体ウエハ15は、ウエハ保持治具201の保持面221に形成された熱可塑性ワックス等からなる接着層を介して貼着、保持されている。
【0005】
半導体ウエハ15の研磨を行う際には、ウエハ保持治具201とテーブル225とを回転させ、次に、ウエハ保持治具201又はテーブル225を上下動させ、半導体ウエハ15とテーブル225の研磨面225aとを摺接させることにより半導体ウエハ15の研磨を行っていた。
【0006】
しかしながら、このようなウエハ研磨装置200では、半導体ウエハ215を貼り付けたり、剥がしたりする工程を行う必要があり、工程数が多くなるとともに、これらの工程で半導体ウエハ15に傷等がはいるおそれがあるという問題があった。また、半導体ウエハ15と保持面221との間に介在する接着層を均一の厚さにするのが難しく、半導体ウエハ15が傾きやすいという問題があった。
【0007】
そこで、半導体ウエハの脱着を容易に行うことができる真空チャックを用いた研磨装置が提案されている(特許文献2参照)。
この真空チャックを用いた研磨装置では、半導体ウエハを保持する吸着体として多孔質体を用いているため、半導体ウエハの脱着が容易であるのみでなく、半導体ウエハと吸着体の保持面との間に介在物が存在しないため、半導体ウエハが傾くことがなく均一な研磨を行い易いという利点がある。
【0008】
しかしながら、従来の真空チャックでは、半導体ウエハの径が異なると、その径に合わせた別の真空チャックを用いる必要があり、効率的ではなかった。そこで、このような問題点を解消するために、径の異なる複数種類の半導体ウエハの研磨を一台の真空チャックで行うことが可能なユニバーサルチャック機構が開示されている(例えば、特許文献3〜6参照)
【0009】。
ユニバーサルキャック機構の具体例としては、例えば、図5(a)〜(b)に示されるようなものが開示されている。即ち、(A)通気性ポーラスセラミック製円板322を中心とし、この円板の外周に軸心を同一、かつ、高さを同一にした複数の通気性ポーラスセラミック製環状体323a、323b、323c、323dが配列され、前記通気性ポーラスセラミック製円板322と通気性ポーラスセラミック製環状体323aの間、及び、これら通気性ポーラスセラミック製環状体323a〜323d同士の間に、幅が数ミリメートル、高さが上記円板と同一の非通気性薄膜環状仕切壁324a〜324dが配列されて全体として1枚の円盤を構成するウエハ取付板325、(B)上面にウエハ取付板325を収納する凹状環状縁部326を有し、取付板325の下側に位置する上面部分の中心部に凹陥部327を設けると共に、凹陥部327を中心にして複数の流体通路用の環状溝328a〜328dが同心円状に設けられ、該環状溝には複数の吸気孔329が各々垂直方向に設けられたウエハ取付板収納フレーム330、(C)ウエハ取付板325の非通気性薄膜環状仕切壁と上記フランジの環状溝に設けられた吸気孔により構成された吸気領域における通気性ポーラスセラミック製円板、通気性ポーラスセラミック製環状体の各底面を吸気する吸気手段331、この吸気手段を減圧、または加圧する、あるいは水等の液体を供給するパイプ332a〜332d、並びに、これらのパイプに取り付けられた切替バルブ333a〜333dを有するユニバーサルキャック機構が開示されている。
【0010】
また、上記パイプは、図示されていないが、コンプレッサー、吸水ポンプ、真空ポンプ等に接続されている。このユニバーサルチャック機構は、通常、中空軸に軸承された回転テーブルに備え付けられ、半導体ウエハをチャックの取付板に置き、半導体ウエハの径により円板とどの位置の環状体を吸気させるか決め、吸気手段331の切替バルブ332a〜332dを適宜開き、減圧して半導体ウエハを吸着した後、砥石または研磨パッドをウエハ面に押圧し、半導体ウエハおよび砥石または研磨パッドの両方を回転させて半導体ウエハを研削又は研磨する。研削又は研磨中、研削剤又は研磨剤スラリーがウエハ面または研磨パッド面に供給されることもある。
また、ユニバーサルチャック機構は、半導体ウエハをバキュームチャックに吸着させる前に半導体ウエハの裏面を洗浄する仮置台のウエハチャックとして利用されることもある。
【0011】
また、上述した文献に開示されているユニバーサルチャック機構では、半導体ウエハの径に応じて、作業者が切替弁を切り替える作業が必要であるものであったが、これら以外にも、例えば、作業者による切替弁の切り替え作業が不要なユニバーサルチャック機構も開示されている(例えば、特許文献7参照)。
【0012】
しかしながら、上記公報に開示されたユニバーサルチャック機構では、円筒状の不通気性壁が円盤形状の多孔質体を、厚さ方向に完全に区切った形態で形成されている。そのため、半導体ウエハを多孔質体の真空チャック保持面に吸着させ、研磨等の加工を行おうとすると、加工時の圧力により半導体ウエハが保持面に押しつけられた際、不通気性壁が形成されている部分と形成されていない部分とで、保持面が半導体ウエハに作用する力が異なるため、研磨状態が不均一になってしまうという問題があった。
また、不通気性壁に起因して、保持面に段差等が形成された場合には、半導体ウエハが不均一に加工されてしまうとともに、保持面と半導体ウエハとの密着性が低下し、半導体ウエハにずれが生じる可能性があった。
【0013】
【特許文献1】
特開平11−320394号公報
【特許文献2】
特開2000−15573号公報
【特許文献3】
特開平3−32537号公報
【特許文献4】
特開平8−1464号公報
【特許文献5】
特開平8−148548号公報
【特許文献6】
特開平9−174364号公報
【特許文献7】
特開平2000−232083号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたもので、被吸着部の大きさの異なる被吸着体を吸着することができるとともに、吸着力が高く、さらに、吸着力が全体的に均一で、吸着力分布がないため、研磨装置として用いた場合には、被吸着体の均一な研磨を実現することができる真空チャックを提供することを目的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
第一の本発明の真空チャックは、多孔質セラミックからなり、被吸着体を吸着、保持するための保持面を有する吸着体と、上記吸着体の保持面及び吸着孔対応部を除いた面のほぼ全体を封止するための封止体とを含み、
被吸着部の大きさの異なる被吸着体を吸着可能に構成された真空チャックであって、
上記吸着体の内部には、保持面の反対側の面から保持面に向って、連続的に延び、かつ、平面視で被吸着体外縁と略同形状の緻密体からなる遮断壁が1又は複数形成されるとともに、
上記遮断壁の保持面に最も近い部分と上記保持面との距離が3〜15mmに設定されていることを特徴とする。
【0016】
第二の本発明の真空チャックは、多孔質セラミックからなり、被吸着体を吸着、保持するための保持面を有するとともに、上記吸着体の保持面及び吸着孔対応部を除いた面のほぼ全体を封止するための封止層が形成された吸着体を含み、
被吸着部の大きさの異なる被吸着体を吸着可能に構成された真空チャックであって、
上記吸着体の内部には、保持面の反対側の面から保持面に向って、連続的に延び、かつ、平面視で被吸着体外縁と略同形状の緻密体からなる遮断壁が1又は複数形成されるとともに、
上記遮断壁の保持面に最も近い部分と上記保持面との距離が3〜15mmに設定されていることを特徴とする。
以下、本発明の真空チャックについて詳細に説明する。
【0017】
【発明の実施の形態】
第一の本発明の真空チャックは、多孔質セラミックからなり、被吸着体を吸着、保持するための保持面を有する吸着体と、上記吸着体の保持面及び吸着孔対応部を除いた面のほぼ全体を封止するための封止体とを含み、
被吸着部の大きさの異なる被吸着体を吸着可能に構成された真空チャックであって、
上記吸着体の内部には、保持面の反対側の面から保持面に向って、連続的に延び、かつ、平面視で被吸着体外縁と同形状又は被吸着体外縁より小さい略相似形状の緻密体からなる遮断壁が1又は複数形成されるとともに、
上記遮断壁の保持面に最も近い部分と上記保持面との距離が3〜15mmに設定されていることを特徴とする。
【0018】
以下、図面を参照しながら第一の本発明の真空チャックについて説明する。
図1(a)は、第一の本発明の真空チャックの一例を模式的に示した斜視図であり、(b)は、(a)におけるA−A線断面図である。
図1に示したように、真空チャック20は、吸着体21と封止体22とから構成され、中央部分に貫通孔を有する円板上に筒状体が一体的に形成された形態の封止体22の上記筒状体の内部に、上面に保持面24を有する円板状の吸着体21が固定されている。
【0019】
吸着体21の内部には、保持面24の反対側の面から保持面24に向って、連続的に延び、緻密体からなる遮断壁26a、26bが形成されている。この遮断壁26a、26bは、緻密体からなるため、気体が通り抜けることがない。
【0020】
遮断壁26a、26bは、その保持面24に最も近い部分と、保持面24との距離が3〜15mmに設定されている。
上記距離が3mm未満では、半導体ウエハ15等の被吸着体を保持面24に吸着させ、研磨等の加工を行うと、遮断壁26a、26bに起因して、遮断壁26a、26bに対向する部分(直上部分)と、それ以外の部分とで、被吸着体に作用する力が異なるため、研磨状態が不均一になってしまう。
また、上記距離が15mmを超えると、遮断壁26a、26bと半導体ウエハとの間から気体が吸着体21の内部に入り込み、保持面と半導体ウエハ等の被吸着体との密着性が低下し、特に被吸着体の外周において、その密着度が低下するため、研磨状態が不均一になる。
【0021】
また、封止体22の一部には吸引孔23a〜23cを備えた吸引部23が一体的に設けられており、さらに、この封止体22の下部には吸引部23が延設されるとともに、真空チャック20を支持、固定するための固定ベース41が設けられている。封止体22と固定ベース41とは、等間隔に設置された4本のボルト29により連結、固定されている。
【0022】
このような実施形態の真空チャック20では、いずれの吸引孔を介して吸着体21内部の空気を吸引するかを適宜選択することにより、被吸着部の大きさの異なる半導体ウエハ等の被吸着体を吸着することができる。具体的には、平面視した際の被吸着部の大きさが保持面24の大きさに近い被吸着体を吸着する場合には、吸引孔23a〜23cの全ての吸引孔から空気を吸引することにより被着体を吸着する。平面視した際の被吸着部の大きさが平面視した遮断壁26aの大きさと略同一の大きさの被着体を吸着する場合には、吸引孔23a、23bから空気を吸引することにより被着体を吸着する。平面視した際の被着部の大きさが平面視した遮断壁26bの大きさと略同一の大きさの被着体を吸着する場合には、吸引孔23aからのみ空気を吸引することにより、被吸着体を吸着する。
【0023】
そして、研磨テーブルの研磨面と保持面に吸着された半導体ウエハとが平行になった状態で、研磨テーブルを回転させるか、真空チャック20自体を回転させるか、又は、両者を回転させ、両者を接触させることにより、半導体ウエハ表面の研磨等を行うことができる。研磨テーブルには、研磨クロスを貼り付けることにより粗化面が形成されていてもよく、ダイヤモンド砥粒等を用いて粗化面が形成されていてもよい。
【0024】
上記遮断壁の形状は、上述したように、その平面視形状が、被吸着体外縁と略同形状の円筒状であり、該遮断壁の保持面に最も近い部分と、上記保持面との距離が3〜15mmに設定されている。
【0025】
上記真空チャックでは、このような形状の遮断壁が1又は複数形成されている。具体的には、例えば、被吸着部の大きさの異なる2種類の半導体ウエハを吸着する場合には、少なくとも1つの遮断壁が形成されていればよく、被吸着部の大きさが異なる3種類以上の半導体ウエハを吸着する場合には、少なくとも2つの遮断壁が形成されていればよい。
【0026】
また、上記遮断壁の平面視形状は、上記被吸着体外縁と略同形状であれば特に限定されないが、上記被吸着体外縁より若干大きいことが望ましい。
被吸着体外縁より若干大きい場合に、被吸着体の吸着力に特に優れ、被吸着体の外縁部近傍の浮き上がり等が生じることがなく、被吸着体を特に均一に研磨することができるからである。
【0027】
上記遮断壁の平面視形状が、被吸着体外縁より若干大きい場合、その具体的な大きさは、被吸着体の径の100%より大きく、被吸着体の径の110%より小さいことが望ましい。
【0028】
また、上記遮断壁の厚さは特に限定されないが、1〜10mmであることが望ましい。
また、上記遮断壁としては、緻密体からなるものであり、気体を通過させることのないものであれば、その材料は特に限定されない。
上記遮断壁の材料の具体例としては、例えば、樹脂、金属、ガラス、セラミック等を挙げることができる。
【0029】
上記樹脂は、熱硬化性樹脂であっても熱可塑性樹脂であってもよく、上記熱硬化性樹脂としては特に限定されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド、キシレン樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ボリエステル樹脂、ユリア樹脂等を挙げることができる。
上記熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、ABS樹脂、AS樹脂、ポリエチレン、ボリプロピレン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル等を挙げることができる。
上記金属としては、例えば、SUS、鋼、アルミニウム合金等を挙げることができる。上記セラミックとしては、アルミナ、コージェライト、ムライト、シリカ等が挙げられる。上記ガラスとしては、珪酸ガラス、珪酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、ホウ珪酸ガラス等が挙げられる。
【0030】
上記吸着体の材料としては特に限定されず、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン等の窒化物セラミック、炭化珪素、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等の炭化物セラミック、アルミナ、ジルコニア、コージュライト、ムライト等の酸化物セラミック等を挙げることができるが、これらのなかでは、高い熱伝導率を有するとともに、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、フッ硝酸及び水酸化ナトリウム等に対する耐薬品性に優れる炭化珪素が望ましい。なお、上記セラミックに金属珪素を配合した珪素含有セラミックや、珪素や珪酸塩化合物で結合されたセラミックも用いることができる。
【0031】
上記吸着体の細孔分布は、水銀圧入法により測定した平均気孔径について、下限が10μm、上限が40μmであることが望ましく、下限が20μm、上限が40μmであることがより望ましく、下限が25μm、上限が30μmであることがさらに望ましい。
上記吸着体の平均気孔径が10μm未満であると、第一の本発明の真空チャックを用いた真空引きが困難となるため、上記吸着体の厚さを薄くする必要があり機械的強度を充分に確保することができなくなることがある。一方、平均気孔径が40μmを超えると、表面の気孔が存在する部分と気孔が存在しない部分との吸着力の差が大きくなり、その結果、気孔が被吸着体に転写された形態の研磨面が形成され、被吸着体の研磨面の平面度が低下することがある。
なお、上記吸着体の平均気孔径を測定する方法は、上記水銀圧入法のほか、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)による測定等従来公知の方法であってもよい。
【0032】
また、上記吸着体は、上記平均気孔径の0.7〜1.2倍の気孔径を有する細孔(以下、主細孔ともいう)の全細孔容積に対する割合が75%以上であることが望ましい。即ち、上記吸着体は、平均気孔径が10〜40μmの細孔が大部分を占めており、その気孔径分布のピークが非常にシャープで気孔径のバラツキが小さいことが望ましい。
上記主細孔の全細孔容積に対する割合が75%未満であると、上記吸着体の気孔径のバラツキが大きく、被吸着体の吸着力にバラツキが発生してしまい、例えば、第一の本発明の真空チャックを用いて被吸着体の研磨等を行おうとすると、部分的に吸着力に差が生じるため、被吸着体の研磨状態が均一にならないおそれがある。
上記主細孔の全細孔容積に対する割合は80%以上であることがより望ましく、85%以上であることがさらに望ましい。
【0033】
また、上記吸着体は、上記平均気孔径の0.7倍未満の気孔径を有する細孔(以下、微細孔ともいう)の全細孔容積に対する割合が15%以下であることが望ましく、上記平均気孔径の1.2倍を超える気孔径を有する細孔(以下、巨細孔ともいう)の全細孔容積に対する割合が10%以下であることが望ましい。
即ち、上記吸着体では、上記主細孔よりも小さな細孔(微細孔)及び上記主細孔よりも大きな細孔(巨細孔)が、略均等に存在していることが望ましい。
上記微細孔の全細孔容積に対する割合が15%を超えると、例えば、上記主細孔の全細孔容積に対する割合が75%以上であるがその平均気孔径が10μm程度と小さい場合、吸着体に存在する微小な細孔の割合が高くなり、第一の本発明の真空チャックを用いた真空引きが困難となるため、上記吸着体の厚さを薄くする必要があり機械的強度を充分に確保することができなくなることがある。一方、上記巨細孔の全細孔容積に対する割合が、10%を超えると、例えば、上記主細孔の全細孔容積に対する割合が75%以上であるがその平均気孔径が40μm程度と大きい場合、吸着体に存在する巨大な細孔の割合が高くなり、本発明の真空チャックを用いて被吸着体の研磨等を行う際、部分的に吸着力に差が生じるため、被吸着体の研磨状態が均一にならないことがある。
上記微細孔及び巨細孔の全細孔容積に対する割合は、それぞれ10%以下、5%以下であることがより望ましい。
【0034】
また、上記吸着体は、その気孔率の下限が20%であり、上限が50%であることが望ましい。気孔率が20%未満であると、被吸着体の吸引力が弱くなり、本発明の真空チャックを用いて被吸着体の研磨等を行う際、被吸着体が移動したり、剥がれたりすることがある。一方、気孔率が50%を超えると、吸着体の強度が低下するため、破壊されやすく、それを防止するためには吸着体の厚さを厚くする必要が生じ、本発明の真空チャックが大型化してしまうとともに、高価になってしまう。
上記気孔率の下限は25%であり、上限は45%であることがより望ましく、下限は30%であり、上限は40%であることがさらに望ましい。
なお、上記気孔率は、水銀圧入法、アルキメデス法、走査型電子顕微鏡(SEM)による測定等、従来公知の方法により測定することができる。
【0035】
また、上記吸着体の平均粒径の下限は30μmであり、上限は70μmであることが望ましい。このように平均粒径の比較的大きめの粒子が望ましいのは、一般に、熱が粒子の内部を伝導する効率は、熱が粒子間を伝導する効率に比べて高いため、平均粒径が大きいほど熱伝導率が高くなり、また、気孔径が揃い易いからである。
【0036】
上記吸着体の形状としては特に限定されず、円板状であってもよく、直径の大きな円板と直径の小さな円板とが一体的に積層形成された形状であってもよい。さらに、平面視楕円形の板状であってもよく、直方体形状や立方体形状であってもよい。
【0037】
上記吸着体の機械的強度としては特に限定されないが、例えば、JIS R 1601に準拠した三点曲げ試験において、20MPa以上であることが望ましい。20MPa未満であると、上記吸着体に反りやクラック等が発生し易くなる。
【0038】
上記吸着体の熱伝導率は、50W/m・K以上であることが望ましい。例えば、本発明の真空チャックを用いて半導体ウエハの研磨加工を行うと、上記吸着体が摩擦熱により高温になりやすいため、冷媒による冷却を行う場合があるが、この冷媒による冷却効果を向上させるために、熱伝導率の高い材料が好ましいからである。
【0039】
また、上記吸着体の厚さは、該吸着体の平均気孔径や平均気孔率、構成する材料の熱伝導率等を考慮して適宜決定されるが、例えば、上記吸着体が炭化珪素から構成されている場合、10〜60mmであることが望ましい。吸着体の厚さが10mm未満であると、その直径に対して薄くなりすぎ、吸着体に反りが発生しやすく、また、強度が低下して破損しやすくなる。一方、吸着体の厚さが60mmを超えると、重量が増し真空チャックの大型化を招く。
【0040】
また、第一の本発明の真空チャックにおいて、上記吸着体は、被吸着体を吸着、保持するための保持面を有しており、該保持面の形状は、通常、吸着体の形状に依存して変化するが、保持面のみが特定の形状に形成されていてもよい。また、保持面は、精度のよい平面状に仕上げられていることが望ましく、上記保持面の平面度の望ましい上限は、10μmであり、より望ましい上限は、5μmである。
上記保持面の平面度が10μmを超えると、被吸着体の研磨を行った際、研磨面の平坦度が低下してしまう。
【0041】
本明細書において、吸着体の保持面の平面度とは、保持面のうち、気孔が形成されておらず、粒子が存在する部分について、その高さをプロットしていき、その一番高い点と低い点との間の差(距離)とする。これにより、保持面の起伏の大きさを評価することが可能である。このように規定したのは、保持面の粒子が存在する部分により被吸着体を支持するため、この部分の起伏の大きさの程度により、研磨を行う際の被吸着体の研磨面の凹凸が影響を受けるからである。なお、吸着体は、多孔質セラミックからなるため、保持面の表面には、上述したように、粒子が存在する部分と気孔が存在する部分とがあり、これに起因して細かな凹凸が形成されているが、この凹凸の大きさは、細孔分布等により評価を行うことができる。
第一の本発明の真空チャックを研磨装置、特に半導体ウエハ表面を研磨する研磨装置として用いる場合には、保持面の形状は、円形状であることが望ましい。
【0042】
上記保持面の大きさは特に限定されるものではなく、被吸着体の大きさに応じてその寸法を決定するが、例えば、半導体ウエハ等の被吸着体のうちで最も面積の大きいものを保持した際、該吸着体の保持面の外縁から0.1〜15mm内側に上記被吸着体の外縁が位置する形状、寸法となるように構成されていることが望ましい。吸着力が高く、かつ、吸着体の吸着力が全体的に均一であるため、研磨装置として用いた場合には、被吸着体の均一な研磨を実現することができるからである。
【0043】
上記被吸着体を吸着、保持した際、被吸着体が上記吸着体の保持面の外縁から内側に0.1mm入った位置よりも外側にくるように構成されている場合、即ち、被吸着体の外縁と吸着体の外縁との距離が0.1mmよりも小さくなるように設定されている場合、半導体ウエハを載置する際の精度との関係で、被吸着体と封止体とが接触しやすい。このため、研磨時に半導体ウエハが封止体に接触して浮き上がってしまうことがある。
従って、例えば、第一の本発明の真空チャックを半導体ウエハの研磨装置として使用した場合には、半導体ウエハの縁部付近が余計に研磨されてしまい、研磨状態が不均一になってしまうことがある。
【0044】
一方、上記被吸着体を保持した際、該吸着体の保持面の外縁から15mmよりもさらに内側に上記被吸着体の外縁が位置するように構成されている場合、被吸着体と封止体との間に大きな隙間が空いてしまうため、その隙間から空気が多量に吸い込まれ、被吸着体外周の吸着力が低下して浮き上がり、やはりそのため半導体ウエハの縁部付近が余計に研磨されてしまうことがある。ただし、吸着体の保持面の外縁から15mm内側に遮断壁が存在する場合には、均一な吸着を実現することができる。
【0045】
吸着体の保持面が円形である場合、その直径としては、研磨対象物である半導体ウエハ等の直径等を考慮して適宜決定されるが、150〜300mmであることが望ましい。
【0046】
上記封止体は、上記吸着体の保持面及び吸着孔対応部を除いた面のほぼ全体を封止するために設けられており、上記吸着体の保持面以外の部分から空気が漏れないようになっている。また、その一部に吸引部が一体的に設けられており、この吸引部を介して封止体の内部(吸着体内部)を吸引することにより、吸着体内部を減圧状態とし、被吸着体を吸着可能とするようになっている。
【0047】
上記封止体の材料は特に限定されるものではなく、SUS、鋼、アルミニウム合金等の金属であってよく、窒化ケイ素、炭化ケイ素、アルミナ等のセラミックであってもよいが、一定以上の機械的強度を有する緻密体であることが望ましい。減圧(真空)に耐え得る機械的特性を有する必要があり、また、封止体からの空気の漏れをなくす必要があるからである。
【0048】
図1に示した真空チャック20は、組み立て後、吸引部23に形成された吸引孔23a〜23cのそれぞれを適当な管状部材を介して真空ポンプ等に接続し、この吸引孔23a〜23cから空気を吸引することにより、保持面24に載置した半導体ウエハ15等の被吸着体を吸着・保持することができるようになっている。
【0049】
また、図1に示した真空チャック20では、吸着体21に溝等が形成されていないが、吸引速度を速めるために、例えば、保持面24の反対側の面に種々の形状の溝等が形成されていてもよい。
また、真空チャック20は、吸引部の中心軸を中心として回転を可能にする回転機構を備えていてもよい。
【0050】
第一の本発明の真空チャックの用途は特に限定されず、上述したように、被吸着体の加熱処理、研削処理、研磨処理、CVD処理、スパッタリング等のPVD処理を行うために用いられてもよい。
【0051】
以上説明した通り、第一の本発明の真空チャックでは、吸着体の内部に、保持面の反対側の面から保持面に向って、連続的に延び、かつ、平面視で被吸着体外縁と略同形状の緻密体からなる遮断壁が1又は複数形成されるとともに、上記遮断壁の保持面に最も近い部分と上記保持面との距離が3〜15mmに設定されているため、被吸着部の大きさの異なる被吸着体を確実に吸着することができる。
さらに、上記真空チャックは、吸着力が高く、吸着力が全体的に均一であり、吸着力に分布が生じないため、研磨装置として用いた場合には、被吸着体の均一な研磨を実現することができる。
【0052】
次に、第一の本発明の真空チャックの製造方法について簡単に説明する。
まず、初めに吸着体を製造する。
吸着体を製造するには、少なくともセラミック粉末とバインダーと分散媒液とを含む混合組成物を調製する。
【0053】
上記セラミック粉末は、予めその粒径をある程度揃えておくことにより、平均粒径のバラツキが小さくいことが望ましい。セラミック粉末の平均粒径のバラツキが大きいと、製造する吸着体の気孔径にバラツキが発生することがあるからである。上記セラミック粉末の粒径を揃える方法としては特に限定されず、例えば、セラミック粉末を密度の高い塊状等の成形体とした後、該成形体を破砕、解砕及び整粒する方法等公知の方法を挙げることができる。
上記セラミック粉末は、平均粒径の0.7〜1.2倍の粒径を有するセラミック粉末の全セラミック粉末に対する割合が75%以上となるように調整されることが望ましい。
【0054】
上記セラミック粉末は、平均粒径5〜100μmの粗粉末100重量部に対して、平均粒径0.1〜1.0μmの微粉末10〜100重量部を均一に混合することが望ましい。
上記バインダーとしては特に限定されず、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。
上記バインダーの配合量は、通常、セラミック粉末100重量部に対して、1〜10重量部程度が望ましい。
【0055】
上記分散媒液としては特に限定されず、例えば、ベンゼン等の有機溶媒;メタノール等のアルコール、水等を挙げることができる。
上記分散媒液は、混合組成物の粘度が一定範囲内となるように、適量配合される。
これらセラミック粉末、バインダー及び分散媒液は、アトライター等で混合した後、ニーダー等で充分に混練し、さらに、スプレードライ法等により顆粒状の粉末を製造する。そして、この顆粒を金型に入れて成形することにより、生成形体を作製する。
この生成形を、不活性ガス(アルゴン)雰囲気下、400〜650℃程度に加熱することで脱脂し、バインダー等を分解、消失させ、略セラミック粉末のみを残留させる。
【0056】
そして、上記脱脂処理を施した後、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、1400〜2300℃程度に加熱することで焼成し、セラミック粉末を焼結させて多孔質焼結体を製造する。
【0057】
次に、上記多孔質焼結体に遮断壁を形成するための円環状の切れ込みを形成する。
上記切れ込みの形成は、例えば、ダイヤモンドカッタを用いた切削加工、サンドブラスト処理等により行うことができる。
また、ここでは、後工程を経て遮断壁を形成した際に、該遮断壁の保持面に最も近い部分と、該保持面との距離が3〜15mmとなるように、上記切れ込みの深さを設定する。
【0058】
次に、上記切れ込みを形成した部分に、遮断壁を形成する。上記遮断壁の形成方法は、その材料を考慮して選択すればよい。
具体的には、例えば、上記遮断壁の材料として熱硬化性樹脂を選択した場合には、高分子化する前の液状の熱硬化性樹脂を上記切れ込み内に流しこみ、その後、熱効果処理を施すことにより形成すればよい。また、材料として熱可塑性樹脂を選択した場合には、溶剤に溶解した状態で流し込み、その後、溶剤を飛散させて硬化させたり、加熱して粘度を下げた後、上記切れ込み内に流し込み、冷却(放冷)して硬化させたりすることにより形成すればよい。
【0059】
また、遮断壁の材料として、金属、ガラス、セラミックを選択した場合には、これらの材料をその融点近くまで加熱し溶融させるか、粘度を下げて上記切れ込み内に流し込んだ後、冷却(放冷)すればよい。
また、遮断壁の材料として、セラミックを選択した場合には、スラリー状のセラミックを流し込み、不活性ガス雰囲気下1400〜2300℃で焼結させればよい。
【0060】
また、第一の本発明の真空チャックを製造する際には、遮断壁の保持面に最も近い部分と上記保持面との距離を3〜15mmに設定するのであるが、上記遮断壁を形成する際に、上述したように、上記切れ込み内に液状の材料を流し込む場合には、上記吸着体は多孔質セラミックからなるものであるので、その材料の一部が、多孔質セラミック内に浸透することとなる。
従って、上述した方法で遮断壁を形成する場合には、液状の材料が多孔質セラミック内に浸透することを考慮して切れ込みを形成する。
このような工程を経ることにより、吸着体を形成することができる。
【0061】
上記吸着体の製造方法は、上述した方法に限定されず、例えば、予め粒径をある程度揃えたセラミック粉末、該セラミック粉末を結合する結合剤として金属シリコン、バインダー及び分散媒液等からなる原料を用いて上述した生成形体を作製し、その後、生成形体を焼成することにより上記金属シリコンで上記セラミック粉末を結合し、吸着体を製造する方法や、上記混合組成物のバインダーに澱粉が含まれたものを使用し、この澱粉含有混合組成物を用いて吸着体を製造する方法等が挙げられる。
その後、吸着体を封止及び吸引するための封止体を形成し、その下部に固定ベースを設け、封止体と固定ベースとをボルトで連結、固定することにより真空チャックを組み立てる。
【0062】
次に、第二の本発明の真空チャックについて説明する。
第二の本発明の真空チャックは、多孔質セラミックからなり、被吸着体を吸着、保持するための保持面を有するとともに、上記吸着体の保持面及び吸着孔対応部を除いた面のほぼ全体を封止するための封止層が形成された吸着体を含み、
被吸着部の大きさの異なる被吸着体を吸着可能に構成された真空チャックであって、
上記吸着体の内部には、保持面の反対側の面から保持面に向って、連続的に延び、かつ、平面視で被吸着体外縁と同形状又は被吸着体外縁より小さい略相似形状の緻密体からなる遮断壁が1又は複数形成されるとともに、
上記遮断壁の保持面に最も近い部分と上記保持面との距離が3〜15mmに設定されていることを特徴とする。
【0063】
第二の本発明の真空チャックを構成する吸着体(多孔質セラミック)は、保持面を除いた面のほぼ全体を封止するための封止層が形成されている以外、その形状、材料、特性等は、第一の本発明の真空チャックを構成する吸着体と同様であるので、上記の異なる事項についてのみ、説明することとする。
【0064】
図2(a)は、第二の本発明の真空チャックの一例を模式的に示した斜視図であり、(b)は、(a)におけるA−A線断面図である。図3(a)は、第二の本発明の真空チャックの別の一例を模式的に示した斜視図であり、(b)は、その断面図である。
図2及び3に示したように、真空チャック50は、その上部に形成された保持面54及び吸引孔対応部を除いた面のほぼ全体に封止層52が形成された吸着体51からなり、その下に封止層52が形成された吸着体51を支持、固定するための固定ベース61が設けられている。また、吸着体51は円板状の吸着体下部51aと、その上に中心軸を共有するように一体的に積層形成され、吸着体下部51aよりも直径が小さい吸着体上部51bとからなり、吸着体下部51aには、等間隔に固定用の貫通孔が形成されている。
【0065】
そして、吸着体下部51aの貫通孔にボルト59が挿通されて固定ベース61に連結、固定されるとともに、貫通孔内部に封止剤57が充填され、吸着体51の貫通孔部分が封止されている。
【0066】
また、固定ベース61には、吸着体51の下面に通じる吸引孔53a、53b、53c、53dを有する吸引部53が設けられている。このような実施形態の真空チャック50では、図1に示した真空チャック20と同様に、吸引孔53a〜53dのうち、吸引孔53aのみ、吸引孔53a〜53b、吸引孔53a〜53c、吸引孔53a〜53dと吸引孔を選択して空気を吸引することにより、被吸着部の大きさの異なる被吸着体を吸着・保持することができる。
【0067】
封止層52は、図2及び3に示しているように、吸着体51の保持面54と、53a〜53dが形成されている吸引孔対応部とを除く面に、液状の高分子、高分子を形成するための原料、又は、ガラス組成物等を塗布等により付着させることにより形成することができる。
封止層52は、吸着体51の内部に原料を浸透させて固化させることにより形成した内部固化層52aであってもよく、吸着体51の内部に原料を浸透させず、表面で固化させることにより形成した被覆層52bであってもよく、図2に示しているような、吸着体51の内部に原料を一部浸透させて固化させることにより形成した内部固化層と被覆層とからなる複合層であってもよい。
また、封止層52としては、内部固化層52a、被覆層52b、及び、上記複合層からなる群より選択される2以上の層が併用されてもよく、例えば、図3に示しているように、吸着体上部51bに被覆層52bを形成し、吸着体下部51aに内部固化層52aを形成してもよい。
このように、封止層52を形成することにより、保持面54以外の面から空気が吸引されるのを防止しつつ、吸引孔対応部から吸引孔53a〜dを介して吸着体51内部の空気を吸引することができる。
【0068】
また、吸着体51の固定ベース61と接する面については、側面でなければ封止層52を省略してもよく、例えば、吸着体51の保持面54の反対側の面に溝が形成され、その部分から吸引することができるように構成されていてもよい。
【0069】
なお、吸着体51の形状は、図2及び3に示したような直径の異なる円板を一体的に積み重ねた形状に限られず、図1に示したような円板状であってもよく、そのほかの形状であってもよい。
【0070】
この真空チャック50は、吸引部の中心軸を中心として回転を可能にする回転機構を備えていてもよい。
【0071】
固定ベース61の材料は、第一の本発明で説明した固定ベース41と同様のものでよい。なお、吸着体51の保持面54の反対側の面に溝が形成された場合には、当然、固定ベース61の該当部分には、吸引した空気等を吸引孔53a〜dに導くための溝又は孔が形成されることとなる。
【0072】
封止層52を構成する材料は特に限定されるものではなく、例えば、樹脂、ガラス、金属、セラミック等が挙げられるが、比較的容易に封止層を形成することができる点から樹脂が好ましい。
【0073】
封止層52を構成する樹脂は特に限定されるものではなく、熱硬化性樹脂であっても熱可塑性樹脂であってもよい。上記熱硬化性樹脂としては特に限定されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド、キシレン樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ボリエステル樹脂、ユリア樹脂等が挙げられる。これら熱硬化性樹脂を用いる場合には、例えば、高分子化する前の液状の樹脂を塗布した後、加熱することにより硬化させればよい。
【0074】
上記熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、ABS樹脂、AS樹脂、ポリエチレン、ボリプロピレン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。これら熱可塑性樹脂は、溶剤に溶解した状態で塗布を行い、封止層52となるものを形成し、その後、溶剤を飛散させて硬化させてもよく、加熱して粘度を下げた後、吸着体に圧入し、封止層52を形成してもよい。
【0075】
ガラス、金属、セラミック等は、これらの材料をその融点近くまで加熱し、溶融させるか、粘度を下げて吸着体の内部に浸透させるか又は圧入する。
【0076】
吸着体の保持面近傍の封止層52は、内部固化層52aの厚さを薄くして、被覆層52bの厚さを厚くすることが好ましい。吸着体の保持面近傍の封止層52は、上記吸着体の表面に形成された被覆層52bであることがより好ましい。上記保持面近傍において、内部固化層52aの厚さを厚くすると、研磨熱、膨潤等により保持面近傍の内部固化層が膨張して、被着体と接触しやすくなると推定され、研磨が不均一になりやすいからである。
上記保持面の近傍では、内部固化層52aの厚さは、5mm以下が望ましく、被覆層52bの厚さは、15mm以下が望ましい。
【0077】
第二の本発明の真空チャックは、吸着体の内部に、保持面の反対側の面から保持面に向って、連続的に延び、かつ、平面視で被吸着体外縁と略同形状の緻密体からなる遮断壁が1又は複数形成されるとともに、上記遮断壁の保持面に最も近い部分と上記保持面との距離が3〜15mmに設定されているため、被吸着部の大きさの異なる被吸着体を吸着することができる。
さらに、上記真空チャックは、吸着力が高く、吸着力が全体的に均一で、吸着力に分布が形成されていないため、研磨装置として用いた場合には、被吸着体の均一な研磨を実現することができる。
【0078】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0079】
実施例1
平均粒径60μmのα型炭化珪素粉末90重量%と、平均粒径1μmのα型炭化珪素粉末10重量%とを湿式混合し、得られた混合物100重量部に対して、有機バインダー(メチルセルロース)を5重量部、水を10重量部加えて混練した後、スプレードライを行い、顆粒状の粉末を得た。
この顆粒状の粉末を金型に入れ、冷間静水圧(CIP)を利用する成形機を用いて、50MPaの圧力で、5分間保持して円板形状の炭化珪素成形体を作製した。
【0080】
次に、上記炭化珪素成形体を脱脂炉に搬入し、アルゴンガス雰囲気下、600℃で2時間加熱することにより炭化珪素成形体の脱脂を行った。
【0081】
次に、脱脂された炭化珪素成形体を温度:2200℃で焼成し、多孔質炭化珪素焼結体からなり、直径210mm、厚さ10mmの吸着体21を製造した(図2参照)。この吸着体の特性として、水銀圧入法により測定した気孔率及び平均気孔径を表1に示す。
【0082】
次に、この吸着体21に切り込み加工を行うことにより、平面視円形状の溝を3つ形成した。次に、この溝に、エポキシ樹脂を流し込み、固化することにより遮断壁26a、26bを形成した。遮断壁26a、26bの保持面24に最も近い部分と保持面との距離は、3mmであった。
【0083】
次に、図1に示すように、得られた吸着体21を封止体に固定し、真空チャック20の製造を終了した。
【0084】
実施例2〜5
吸着体の形状を図3に示すような直径240mm、厚さ10mmの吸着体下部51aに、それより直径の小さな直径210mm、厚さ10mmの吸着体上部51bが一体的に形成された形状としたほかは、実施例1とほぼ同様にして、図3に示す形状の吸着体51を製造し、実施例1同様にして、遮断壁56a、56b、56cを形成した。この吸着体の特性として、水銀圧入法により測定した気孔率及び平均気孔径を表1に示す。
その後、この吸着体51を用いて図3に示したような構成の真空チャック50を製造した。なお、封止層52の形成に際しては、吸着体上部51bの外周に、エポキシ樹脂を塗布、乾燥して被覆層52bを厚さ2mmにして形成し、吸着体下部51aの外周及び底面(吸引孔対応部を除く)に、エポキシ樹脂を塗布、吸引、乾燥して内部固化層52aを厚さ2mmにして形成した。
遮断壁56a、56b、56cの保持面54に最も近い部分と保持面との距離を表1に示す。
【0085】
比較例1〜4
遮断壁の保持面に最も近い部分と保持面との距離を表1に示すように設定したほかは、実施例1と同様にして吸着体を製造した。
その後、各吸着体を用いて実施例1と同様に真空チャックを製造した。
【0086】
比較例5
遮断壁を設けなかったほかは、実施例1同様にして吸着体を製造した。
その後、各吸着体を用いて実施例1と同様に真空チャックを製造した。
【0087】
実施例1〜5及び比較例1〜4に係る真空チャックに、平面視した遮断壁又は吸着体とほぼ同様の直径のシリコンウエハを平面視した遮断壁の中心部とシリコンウエハの中心部とが一致するように載置し、該シリコンウエハを真空度50KPaで吸着し、上記シリコンウエハの研磨処理を10回行い、このときのシリコンウエハの研磨面の平坦度を評価した。また、比較例5に係る真空チャックでは、直径160mmのシリコンウエハを吸着して研磨を行った。
【0088】
なお、研磨処理は、シリコンウエハを吸着・保持した真空チャックを、回転しているフェルト状の研磨クロスを貼り付けたテーブルと接触させることにより行った。テーブルの回転数は1.2s−1とした。
また、下記の表1に示すウエハ1、ウエハ2、ウエハ3は、各遮断壁又は吸着体の直径に対応するシリコンウエハについて大きさの順に番号を付けたのみで、その大きさは、それぞれの真空チャックで異なる。
【0089】
研磨面の平坦度は、平面度測定器(黒田精工社製 ナノメトロ)により評価した。なお、研磨面の平坦度は、研磨面の最も高い点と低い点との差(距離)である。また、細孔分布測定装置(島津製作所製)を用い、水銀圧入法により細孔直径0.2〜600μmの範囲で細孔分布を測定した。
評価結果を下記の表1に示した。
【0090】
【表1】
【0091】
表1に示した結果から明らかなように、実施例1〜5に係る真空チャックは、それぞれ直径の異なるシリコンウエハを載置しても、良好に研磨が行われていた。すなわち、研磨処理されたシリコンウエハの表面の平坦度は、0.5μm以下と極めて小さく、精度よく、かつ、均一に研磨処理されていた。
【0092】
一方、比較例1〜5に係る真空チャックでは、研磨処理されたシリコンウエハの表面の平坦度は、1μm以上と平坦度が大きく低下しており、均一な研磨を行うことができなかった。
【0093】
【発明の効果】
第一の本発明の真空チャック及び第二の本発明の真空チャックは、上述した通りの構成であるので、被吸着部の大きさの異なる被吸着体を吸着することができる。
さらに、上記真空チャックは、吸着力が高く、吸着力が全体的に均一であり、吸着力が分布していないため、研磨装置として用いた場合には、被吸着体の均一な研磨を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、第一の本発明の真空チャックの一例を模式的に示す斜視図であり、(b)は、その縦断面図である。
【図2】(a)は、第二の本発明の真空チャックの一例を模式的に示す斜視図であり、(b)は、その縦断面図である。
【図3】(a)は、第二の本発明の真空チャックの別の一例を模式的に示す斜視図であり、(b)は、その縦断面図である。
【図4】従来のウエハ研磨装置の一例を模式的に示した部分拡大断面図である。
【図5】(a)は、従来のウエハ研磨装置の一例を模式的に示した一部切り欠き斜視図であり、(b)は、縦断面図である。
【符号の説明】
15 半導体ウエハ
20、50 真空チャック
21、51 吸着体
51a 吸着体下部
51b 吸着体上部
22 封止体
23、53 吸引部
23a、23b、23c 吸引孔
53a、53b、53c 吸引孔
24、54 保持面
41、61 固定ベース
52 封止層
52a 内部固化層
52b 被覆層
Claims (6)
- 多孔質セラミックからなり、被吸着体を吸着、保持するための保持面を有する吸着体と、前記吸着体の保持面及び吸引孔対応部を除いた面のほぼ全体を封止するための封止体とを含み、
被吸着部の大きさの異なる被吸着体を吸着可能に構成された真空チャックであって、
前記吸着体の内部には、保持面の反対側の面から保持面に向って、連続的に延び、かつ、平面視で被吸着体外縁と略同形状の緻密体からなる遮断壁が1又は複数形成されるとともに、
前記遮断壁の保持面に最も近い部分と前記保持面との距離が3〜15mmに設定されていることを特徴とする真空チャック。 - 多孔質セラミックからなり、被吸着体を吸着、保持するための保持面を有するとともに、前記吸着体の保持面及び吸引孔対応部を除いた面のほぼ全体を封止するための封止層が形成された吸着体を含み、
被吸着部の大きさの異なる被吸着体を吸着可能に構成された真空チャックであって、
前記吸着体の内部には、保持面の反対側の面から保持面に向って、連続的に延び、かつ、平面視で被吸着体外縁と略同形状の緻密体からなる遮断壁が1又は複数形成されるとともに、
前記遮断壁の保持面に最も近い部分と前記保持面との距離が3〜15mmに設定されていることを特徴とする真空チャック。 - 吸着体の保持面近傍の封止層は、前記吸着体の表面に形成された被覆層である請求項1又は2に記載の真空チャック。
- 保持面の形状は円形状であり、被吸着体は、半導体ウエハである請求項1〜3のいずれかに記載の真空チャック。
- 吸着体の平均気孔径は、10〜40μmである請求項1〜4のいずれかに記載の真空チャック。
- 吸着体の気孔率は、20〜50%である請求項1〜5にいずれかに記載の真空チャック。
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