JP2004292580A - 粘着シート用基材および粘着シート - Google Patents
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Abstract
【課題】均一拡張性に優れており、かつ、適度な引張強度、柔軟性、透明性等を兼備し、層間剥離を起こすこともない粘着シート用基材、および、この粘着シート用基材を用いた粘着シートを提供する。
【解決手段】エチレン含有量が88重量%以下であるエチレン系共重合体60〜90重量%、および、重量平均分子量が80000〜500000であり、かつ、クロス分別クロマトグラフによる全溶出量の内、0℃〜10℃での溶出量が45〜80重量%であり、10℃を超え70℃以下での溶出量が5〜35重量%であり、70℃を超え95℃以下での溶出量が1〜30重量%であり、95℃を超え125℃以下での溶出量が3〜35重量%であるポリプロピレン系樹脂10〜40重量%を含有する樹脂組成物が製膜されてなることを特徴とする粘着シート用基材、および、上記粘着シート用基材の少なくとも片面に粘着剤層が形成されてなることを特徴とする粘着シート。
【選択図】 なし
【解決手段】エチレン含有量が88重量%以下であるエチレン系共重合体60〜90重量%、および、重量平均分子量が80000〜500000であり、かつ、クロス分別クロマトグラフによる全溶出量の内、0℃〜10℃での溶出量が45〜80重量%であり、10℃を超え70℃以下での溶出量が5〜35重量%であり、70℃を超え95℃以下での溶出量が1〜30重量%であり、95℃を超え125℃以下での溶出量が3〜35重量%であるポリプロピレン系樹脂10〜40重量%を含有する樹脂組成物が製膜されてなることを特徴とする粘着シート用基材、および、上記粘着シート用基材の少なくとも片面に粘着剤層が形成されてなることを特徴とする粘着シート。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、粘着シート用基材およびそれを用いた粘着シートに関する。なお、本発明で言うシートにはフィルムも包含される。
【0002】
【従来の技術】
一般に、シリコン等の半導体ウエハは、大面積の状態で製造された後、小片のチップ状にダイシングされて、マウント工程に移される。この際、半導体ウエハは、粘着シートに貼付され保持された状態でダイシング、洗浄、エキスパンド、ピックアップ、マウント等の各工程における作業が施される。上記粘着シートとしては、プラスチックシートからなる基材(シート基材)上に粘着剤層が形成されてなるもの、いわゆるダイシング用粘着シートが一般的に用いられている。
【0003】
上記ダイシング工程においては、回転する丸刃によって半導体ウエハの切断が行われるが、かかる半導体ウエハの切断方法としては、半導体ウエハを保持するダイシング用粘着シートの内部にまで切り込みを行なう切断方法が主流となってきている。
【0004】
このダイシング工程に用いられるダイシング用粘着シートを構成するシート基材には、均一な拡張性(エキスパンド性)を有しているとともに、その拡張性が優れていることが要求される。すなわち、上記シート基材の均一拡張性(均一エキスパンド性)が優れていると、ダイシング用粘着シートを拡張させた場合に、各チップ間に均等な隙間を形成することができ、その結果、チップのピックアップ工程における作業性が極めて優れたものとなる。
【0005】
このような性能を有するシート基材として、例えば、軟質塩化ビニル系樹脂シートが開発されている。しかし、軟質塩化ビニル系樹脂シートは、塩素を含有しているため、塩素イオンにより半導体ウエハを腐食させるという問題点がある。また、軟質塩化ビニル系樹脂シートは、柔軟性を付与するために多量の可塑剤が配合されているので、可塑剤が半導体ウエハに移行して半導体ウエハを汚染するという問題点や、可塑剤がダイシング用粘着シートを構成する粘着剤層に移行して粘着力を低下させ、ダイシング時にチップが飛散しやすくなるという問題点がある。
【0006】
そこで、軟質塩化ビニル系樹脂シートに代わる軟質のシート基材として、半導体ウエハを腐食したり、焼却時に有害ガスを発生する等の塩素含有に起因する問題点を生じないポリオレフィン系樹脂シートが開発されている。
【0007】
上記ポリオレフィン系樹脂シートとしては、例えば、ポリプロピレン系樹脂シートやポリエチレン系樹脂シート等が挙げられるが、これら従来のポリオレフィン系樹脂シートは、軟質塩化ビニル系樹脂シートに比較して、多くの点で劣っている。すなわち、ポリプロピレン系樹脂シートは、一般に結晶性が高いため、柔軟性や拡張性に劣るという問題点があり、また、ポリエチレン系樹脂シートは、一般に機械的強度が劣るという問題点がある。
【0008】
このような問題点を解消するために種々の試みがなされており、例えば、プロピレンおよび/またはブテン−1の含有率が50重量%以上の非晶性ポリオレフィンを20〜100重量%と結晶性ポリプロピレンを80重量%以下含有してなる樹脂組成物からなる層とエチレン系樹脂からなる層とを構成層とする積層フィルムが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
しかし、上記積層フィルムは、繰り返し折り曲げられた場合や拡張された場合に、非晶性ポリオレフィンを含有する樹脂組成物からなる層とエチレン系樹脂からなる層とが界面で容易に剥離することがあるという問題点や、軟質塩化ビニル系樹脂シートに比較して、均一拡張性が不十分であるという問題点がある。
【0010】
また、特定のプロピレン系ブロック共重合体5〜99重量%およびポリプロピレン1〜95重量%を含有してなるポリオレフィン系フィルムが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0011】
また、ポリプロピレンにスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体やエチレンプロピレンゴムなどの熱可塑性エラストマーを混合して、柔軟性を付与したポリオレフィン系フィルムの提案もある。
【0012】
しかし、これらのポリオレフィン系フィルムは、柔軟性は確かに改善されているものの、ポリプロピレンと混合される材料との相溶性の関係から透明性が不十分であるという問題点や、軟質塩化ビニル系樹脂シートに比較して、均一拡張性が不十分であるという問題点がある。
【0013】
さらに、少なくとも三層以上の多層フィルムであって、芯層がポリプロピレンを主体とし、ゴム弾性を有し、かつ、明確な融点を持つ樹脂からなり、該芯層に接する層が直鎖状低密度ポリエチレンからなるダイシング用基材フィルムが開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0014】
上記ダイシング用基材フィルムは、均一拡張性に優れ、適度な引張弾性率を有し、層間剥離を起こさないものであるとされている。しかし、上記ダイシング用基材フィルムは、フィルム厚を薄くした場合には、表層を構成する直鎖状低密度ポリエチレン層が積層する段階でロールの方に捲き付いてしまうという問題点がある。
【0015】
【特許文献1】
特開平6−927号公報
【特許文献2】
特開平7−300548号公報
【特許文献3】
特開2000−173951号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、均一拡張性に優れており、かつ、適度な引張強度、柔軟性、透明性等を兼備し、層間剥離を起こすこともない粘着シート用基材、および、この粘着シート用基材を用いた粘着シートを提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明(本発明)による粘着シート用基材は、エチレン含有量が88重量%以下であるエチレン系共重合体60〜90重量%、および、重量平均分子量が80000〜500000であり、かつ、クロス分別クロマトグラフによる全溶出量の内、0℃〜10℃での溶出量が45〜80重量%であり、10℃を超え70℃以下での溶出量が5〜35重量%であり、70℃を超え95℃以下での溶出量が1〜30重量%であり、95℃を超え125℃以下での溶出量が3〜35重量%であるポリプロピレン系樹脂10〜40重量%を含有する樹脂組成物が製膜されてなることを特徴とする。
【0018】
請求項2に記載の発明による粘着シート用基材は、上記請求項1に記載の粘着シート用基材において、エチレン系共重合体が、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体およびエチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸三元共重合体からなる群より選択される少なくとも1種類のエチレン系共重合体であることを特徴とする。
【0019】
請求項3に記載の発明(本発明)による粘着シートは、上記請求項1または請求項2に記載の粘着シート用基材の少なくとも片面に粘着剤層が形成されてなることを特徴とする。
【0020】
本発明の粘着シート用基材を構成する樹脂組成物には、エチレン系共重合体がが含有される。
【0021】
本発明の粘着シート用基材においては、上記エチレン系共重合体のエチレン含有量が88重量%以下であることが必要であり、好ましくは70〜85重量%である。換言すれば、上記エチレン系共重合体のエチレン以外の重合性モノマーの含有量が12重量%以上であることが必要であり、好ましくは15〜30重量%である。
【0022】
エチレン系共重合体のエチレン含有量が88重量%を超えると、換言すれば、エチレン系共重合体のエチレン以外の重合性モノマーの含有量が12重量%未満であると、得られる粘着シート用基材ひいては粘着シートの柔軟性や均一拡張性が不十分となる。
【0023】
上記エチレン系共重合体としては、上記エチレン含有量を有するもの、換言すれば、上記エチレン以外の重合性モノマーの含有量を有するものであれば如何なるエチレン系共重合体であっても良く、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体等が挙げられ、なかでも、引張強度と柔軟性とのバランスが良く、優れた均一拡張性を有する粘着シート用基材ひいては粘着シートを得られることから、EVA、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体およびエチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸三元共重合体からなる群より選択される少なくとも1種類のエチレン系共重合体が好適に用いられる。これらのエチレン系共重合体は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。なお、本発明で言う例えば(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリルを意味する。
【0024】
本発明の粘着シート用基材を構成する樹脂組成物には、ポリプロピレン系樹脂が含有される。
【0025】
本発明の粘着シート用基材においては、上記ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量が80000〜500000であることが必要である。
【0026】
ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量が80000未満であると、得られる粘着シート用基材ひいては粘着シートの引張強度や耐熱性が不十分となり、逆にポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量が500000を超えると、樹脂組成物の溶融粘度が高くなりすぎて製膜(成形)が困難となる。
【0027】
また、本発明の粘着シート用基材においては、上記ポリプロピレン系樹脂は、クロス分別クロマトグラフによる全溶出量の内、0℃〜10℃での溶出量が45〜80重量%であり、10℃を超え70℃以下での溶出量が5〜35重量%であり、70℃を超え95℃以下での溶出量が1〜30重量%であり、95℃を超え125℃以下での溶出量が3〜35重量%であることが必要である。
【0028】
上記クロス分別クロマトグラフによる溶出量の温度による差は、主として、ポリプロピレン系樹脂の結晶性の差を示している。すなわち、本発明の粘着シート用基材に用いられるポリプロピレン系樹脂は、上記の如く、広い結晶性分布を有するものであり、引張強度、耐熱性、柔軟性、製膜性(成形性)等の性能バランスに優れるものである。
【0029】
クロス分別クロマトグラフによるポリプロピレン系樹脂の各温度領域における溶出量が上記範囲を満たさないと、引張強度、耐熱性、柔軟性、製膜性等の性能バランスが損なわれ、樹脂組成物の製膜が困難となったり、得られる粘着シート用基材ひいては粘着シートの均一拡張性が不十分となる。
【0030】
なお、上記クロス分別クロマトグラフによる溶出量の測定は、例えば、ポリプロピレン系樹脂を該ポリプロピレン系樹脂が完全に溶解する温度の例えばo−ジクロロベンゼンに溶解し、次いで、この溶液を一定速度で冷却し、予め準備しておいた例えばシリコーン系の不活性担体表面に薄いポリマー層を結晶性の高い順および分子量の大きい順に生成させた後、温度を連続的もしくは段階的に上げ、所定温度領域ごとに順次溶出した成分の濃度を検出し、組成分布(結晶性分布)を測定する、いわゆる温度上昇分離分別とともに、その成分の分子量および分子量分布を高温GPCにより測定することにより行われる。
【0031】
上記ポリプロピレン系樹脂としては、前記重量平均分子量および上記溶出量を有するものであれば如何なるポリプロピレン系樹脂であっても良く、特に限定されるものではないが、例えば、アタクチックポリプロピレン樹脂、二段重合により重合されたポリプロピレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。これらのポリプロピレン系樹脂は、ランダムポリマーであっても良いし、ブロックポリマーであっても良い。また、これらのポリプロピレン系樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0032】
本発明の粘着シート用基材を構成する樹脂組成物は、前記エチレン含有量が88重量%以下であるエチレン系共重合体60〜90重量%、および、上記重量平均分子量が80000〜500000であり、かつ、クロス分別クロマトグラフによる全溶出量の内、0℃〜10℃での溶出量が45〜80重量%であり、10℃を超え70℃以下での溶出量が5〜35重量%であり、70℃を超え95℃以下での溶出量が1〜30重量%であり、95℃を超え125℃以下での溶出量が3〜35重量%であるポリプロピレン系樹脂10〜40重量%を含有していることが必要であり、好ましくは、上記エチレン系共重合体70〜85重量%および上記ポリプロピレン系樹脂15〜30重量%を含有していることである。
【0033】
上記エチレン系共重合体の含有量が60重量%未満であるか、上記ポリプロピレン系樹脂の含有量が40重量%を超えると、得られる粘着シート用基材ひいては粘着シートの均一拡張性が不十分となり、逆に上記エチレン系共重合体の含有量が90重量%を超えるか、上記ポリプロピレン系樹脂の含有量が10重量%未満であると、得られる粘着シート用基材ひいては粘着シートの引張強度や耐熱性が不十分となる。
【0034】
本発明の粘着シート用基材を構成する樹脂組成物には、必須成分である上記エチレン系共重合体およびポリプロピレン系樹脂に加えるに、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、例えば、酸化防止剤(老化防止剤)、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、塩素捕捉剤、難燃剤、結晶化核剤、ブロッキング防止剤、スリップ剤、防曇剤、離型剤、着色剤、有機充填剤、無機充填剤、中和剤、滑剤、分解剤、金属不活性剤、汚染防止剤、抗菌剤、上記エチレン系共重合体およびポリプロピレン系樹脂以外の樹脂や熱可塑性エラストマー等の公知の各種添加剤の1種類もしくは2種類以上が添加されていても良い。
【0035】
本発明の粘着シート用基材は、上記樹脂組成物が製膜されてなる。上記粘着シート用基材の製膜方法は、特に限定されるものではなく、例えば、押出法、カレンダー法、インフレーション法、キャスティング法(流延法)等の公知のいずれの製膜法を採っても良いが、製造工程が簡略であることから、押出法を採ることが好ましい。
【0036】
本発明の粘着シート用基材の厚みは、粘着シート用基材や粘着シートの用途によっても異なり、特に限定されるものではないが、一般的には50〜500μmであることが好ましく、より好ましくは80〜300μmである。
【0037】
粘着シート用基材の厚みが50μm未満であると、引張強度が小さくなりすぎて、粘着シート用基材ひいては粘着シートが破断しやすくなることがあり、逆に粘着シート用基材の厚みが500μmを超えると、引張強度が大きくなりすぎて、粘着シート用基材ひいては粘着シートの拡張性が損なわれることがある。
【0038】
本発明の粘着シート用基材は、一方の表面(後述する粘着シートにおいて、粘着剤層が形成されない方の表面)に例えば梨地模様などのエンボス加工が施されていても良い。
【0039】
特に、本発明の粘着シート用基材をダイシング用粘着シートのシート基材として用いる場合、一方の表面に上記エンボス加工を施すことが好ましい。ダイシング用粘着シートは、半導体ウエハがチップ状にダイシングされた後にエキスパンダーリングに押し当てられて拡張される。その際、ダイシング用粘着シートの背面(非粘着剤層側の表面)とエキスパンダーリングとの不均一な滑りにより、ダイシング用粘着シートが局部的に拡張されるという不具合が発生することがある。しかし、本発明の粘着シート用基材の一方の表面に上記エンボス加工を施しておくことにより、ダイシング用粘着シートの背面とエキスパンダーリングとの滑りを均一にさせることが可能となり、上記不具合の発生を効果的に防止することができる。
【0040】
次に、本発明の粘着シートは、上述した本発明の粘着シート用基材の少なくとも片面に粘着剤層が形成されてなる。
【0041】
上記粘着剤層を形成するために用いられる粘着剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等が挙げられ、好適に用いられるが、なかでも、粘着性(タック)、粘着力、耐候性、透明性等に優れることから、アクリル系粘着剤がより好適に用いられる。
【0042】
上記アクリル系粘着剤のベースポリマー(主成分)として用いられるアクリル系ポリマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル同士の共重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと該(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な重合性モノマーとの共重合体等が挙げられる。これらのアクリル系ポリマーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0043】
上記アクリル系ポリマーの主モノマーは、特に限定されるものではないが、その単独重合体のガラス転移温度(Tg)が−50℃以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。
【0044】上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキルエステルとしては、特に限定されるものではないが、例えば、メチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、オクチルエステル、イソノニルエステル等があげられる。これらのアルキルエステルは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0045】
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な重合性モノマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシルエステルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルエステルなどの(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸N−ヒドロキシメチルアミド、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な重合性モノマーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0046】
本発明に粘着シートに用いられる粘着剤は、例えば、紫外線や電子線等により硬化する放射線硬化型粘着剤であっても良いし、加熱発泡型粘着剤であっても良い。
【0047】
特に、本発明の粘着シートをダイシング用粘着シートとして用いる場合には、放射線硬化型粘着剤、なかでも紫外線硬化型粘着剤を用いることが好ましく、該粘着剤はダイシング・ダイボンド兼用可能な粘着剤であっても良い。なお、粘着剤として放射線硬化型粘着剤を用いる場合には、ダイシング工程前またはダイシング工程後において粘着剤層に放射線が照射されるため、前記本発明の粘着シート用基材は十分な放射線透過性を有しているものであることが好ましい。
【0048】
上記放射線硬化型粘着剤は、例えば、前記アクリル系ポリマー(ベースポリマー)と放射線硬化成分とを含有してなる。
【0049】
上記放射線硬化成分としては、分子中に炭素−炭素二重結合を有し、ラジカル重合により硬化可能なモノマー、オリゴマーまたはポリマーであれば良く、特に限定されるものではないが、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレ−ト、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物、2−プロペニルジ−3−ブテニルシアヌレート、2−ヒドロキシエチルビス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロキシエチル)イソシアヌレートなどのイソシアヌレートまたはイソシアヌレート化合物、エステルアクリレートオリゴマー等が挙げられる。これらの放射線硬化成分は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。なお、アクリル系ポリマーとして、ポリマー側鎖に炭素−炭素二重結合を有する放射線硬化型アクリル系ポリマーを用いることも可能であり、この場合には、放射線硬化型粘着剤中に必ずしも上記放射線硬化成分を含有させる必要はない。
【0050】
上記放射線硬化型粘着剤を例えば紫外線により硬化させる場合には、放射線硬化型粘着剤中に光重合開始剤や架橋剤を含有させることが好ましい。また、上記放射線硬化型粘着剤には、必要に応じて、例えば、粘着性付与剤、充填剤、酸化防止剤(老化防止剤)、熱安定剤、着色剤等の各種添加剤の1種類もしくは2種類以上が添加されていても良い。
【0051】
上記光重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどの芳香族ケトン類、ベンジルジメチルケタールなどの芳香族ケタール類、ポリビニルベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン類等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0052】
また、上記架橋剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、アジリジン化合物、エポキシ樹脂、無水化合物、ポリアミン、カルボキシルキ含有オリゴマーもしくはポリマー等が挙げられる。これらの架橋剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0053】
前記本発明の粘着シート用基材の粘着剤層形成面には、上記粘着剤からなる粘着剤層との密着性をより向上させるために、必要に応じて、例えば、コロナ放電処理やプライマー(下塗り剤)塗工等の前処理(下地処理)が施されていても良い。
【0054】
本発明の粘着シートを構成する粘着剤層の厚みは、粘着剤の種類によっても異なり、特に限定されるものではないが、通常、1〜100μmであることが好ましく、より好ましくは3〜50μmである。
【0055】
前記本発明の粘着シート用基材の少なくとも片面に上記粘着剤を塗工して粘着剤層を形成する際には、粘着剤層を平滑にしたり、ラベル加工を可能とするために、必要に応じて、セパレーターを用いても良い。
【0056】
上記セパレーターの構成材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂フィルムや紙等が挙げられる。これらのセパレータの表面には、粘着剤層からの剥離性を高めるために、必要に応じて、例えば、シリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の剥離処理が施されていても良い。また、セパレータの厚みは、粘着剤の種類や作業性等を考慮して適宜設定されれば良く、特に限定されるものではないが、通常、10〜200μmであることが好ましく、より好ましくは25〜100μmである。
【0057】
本発明の粘着シートは、特に半導体ウエハのダイシング用粘着シートとして好適に用いられるが、上記用途に限定されるものではなく、例えば、表面保護シート、マスキングシート、テーブルクロス用シート、建築資材用シート、ストレッチシート、医療用シート等の各種工業用もしくは一般用(家庭用)粘着シートとしても好適に用いられる。また、本発明の粘着シートは、用途に応じて、片面粘着シートであっても良いし、両面粘着シートであっても良い。
【0058】
【作用】
本発明の粘着シート用基材は、エチレン含有量が88重量%以下であるエチレン系共重合体60〜90重量%、および、重量平均分子量が80000〜500000であり、かつ、クロス分別クロマトグラフによる全溶出量の内、0℃〜10℃での溶出量が45〜80重量%であり、10℃を超え70℃以下での溶出量が5〜35重量%であり、70℃を超え95℃以下での溶出量が1〜30重量%であり、95℃を超え125℃以下での溶出量が3〜35重量%であるポリプロピレン系樹脂10〜40重量%を含有する樹脂組成物が製膜されてなるので、均一拡張性に優れており、かつ、適度な引張強度、柔軟性、透明性等を兼備し、層間剥離を起こすこともないものである。
【0059】
また、上記エチレン系共重合体として、EVA、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体およびエチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸三元共重合体からなる群より選択される少なくとも1種類のエチレン系共重合体を用いることにより、上記効果はより確実なものとなる。
【0060】
本発明の粘着シートは、上記本発明の粘着シート用基材の少なくとも片面に粘着剤層が形成されてなるので、均一拡張性に優れており、かつ、適度な粘着性(タック)、粘着力、引張強度、柔軟性、透明性等を兼備するものである。
【0061】
【発明の実施の形態】
本発明をさらに詳しく説明するため以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0062】
(実施例1)
エチレン系共重合体として、酢酸ビニル含有量が20重量%(エチレン含有量が80重量%)であるEVA(商品名「ウルトラセン631」、東ソー社製)85重量部、および、ポリプロピレン系樹脂として、重量平均分子量が200000であり、かつ、クロス分別クロマトグラフによる全溶出量の内、0℃〜10℃での溶出量が69重量%であり、10℃を超え70℃以下での溶出量が11重量%であり、70℃を超え95℃以下での溶出量が2重量%であり、95℃を超え125℃以下での溶出量が18重量%であるポリプロピレン系樹脂(商品名「P.E.R.T310E」、メルトフローレート:1.5、トクヤマ社製)15重量部からなる樹脂組成物を調製し、この樹脂組成物をTダイ押出機で押出して製膜した後、得られたシートの片面にコロナ放電処理を施して、厚み100μmの粘着シート用基材を作製した。
【0063】
また、アクリル酸ブチル95重量部およびアクリル酸5重量部を酢酸エチル中で常法により共重合させて、重量平均分子量が800000のアクリル系共重合体を含有するアクリル系共重合体溶液を作製した後、このアクリル系共重合体溶液に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名「カヤラッドDPHA」、日本化薬社製)60重量部、ラジカル重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバスペシャルティケミカルズ社製)3重量部およびポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン社製)5重量部を添加し、均一に混合して、紫外線硬化型アクリル系粘着剤溶液を調製した。
【0064】
次に、上記で得られた粘着シート用基材のコロナ放電処理面に上記で得られた紫外線硬化型アクリル系粘着剤溶液を塗布し、80℃で10分間加熱乾燥および加熱架橋を行って、厚み10μmの粘着剤層を形成した。次いで、この粘着剤層面にセパレータを貼り合わせて、粘着シートを作製した。
【0065】
(実施例2)
エチレン系共重合体として、メタクリル酸メチル含有量が20重量%(エチレン含有量が80重量%)であるエチレン−メタクリル酸メチル(商品名「WH−401」、住友化学工業社製)85重量部、および、ポリプロピレン系樹脂として、実施例1で用いたポリプロピレン系樹脂15重量部からなる樹脂組成物を調製し、この樹脂組成物をTダイ押出機で押出して製膜した後、得られたシートの片面にコロナ放電処理を施して、厚み100μmの粘着シート用基材を作製した。
【0066】
上記で得られた粘着シート用基材を用いたこと以外は実施例1の場合と同様にして、粘着シートを作製した。
【0067】
(比較例1)
粘着シート用基材の作製において、実施例1で用いたEVA2重量部および実施例1で用いたポリプロピレン系樹脂98重量部からなる樹脂組成物を用いたこと以外は実施例1の場合と同様にして、粘着シート用基材および粘着シートを作製した。
【0068】
(比較例2)
粘着シート用基材の作製において、実施例1で用いたEVA99重量部および実施例1で用いたポリプロピレン系樹脂1重量部からなる樹脂組成物を用いたこと以外は実施例1の場合と同様にして、粘着シート用基材および粘着シートを作製した。
【0069】
(比較例3)
粘着シート用基材の作製において、プロピレン−エチレンランダム共重合体(商品名「サンアロマーPF631S」、サンアロマー社製)90重量部および実施例1で用いたEVA10重量部からなる樹脂組成物を用いたこと以外は実施例1の場合と同様にして、粘着シート用基材および粘着シートを作製した。
【0070】
実施例1および実施例2、ならびに、比較例1〜比較例3で得られた粘着シートの拡張性(エキスパンド性)を以下の方法で評価した。その結果は表1に示すとおりであった。
【0071】
[拡張性(エキスパンド性)の評価方法]
セパレータを剥離して粘着剤層を露出させた粘着シートに半導体ウエハを貼り付け、ダイシング工程においてダイシングを行った。次いで、エキスパンディング工程においてエキスパンドを行って、縦方向の半導体チップ間隔(X)および横方向の半導体チップ間隔(Y)を求め、X/Yを算出して、下記判定基準により拡張性(エキスパンド性)を評価した。上記X/Yが1.0に近いほど均一拡張性に優れていることになる。
〈判定基準〉
○‥‥X/Yが0.8〜1.2の範囲内にあった。
×‥‥X/Yが0.8〜1.2の範囲を逸脱していた。
【0072】
【表1】
【0073】
表1から明らかなように、本発明による実施例1および実施例2の粘着シート用基材を用いて作製した粘着シートは、いずれもX/Yが0.8〜0.9の範囲内にあり、極めて優れた均一拡張性(均一エキスパンド性)を発現した。
【0074】
これに対し、粘着シート用基材を構成する樹脂組成物中におけるエチレン系共重合体(EVA)の含有量が60重量%未満であり、かつ、ポリプロピレン系樹脂の含有量が40重量%を超えていた比較例1の粘着シート用基材を用いて作製した粘着シートは、エキスパンド工程において破断したので、実用性が無かった。また、粘着シート用基材を構成する樹脂組成物中におけるエチレン系共重合体(EVA)の含有量が90重量%を超えており、かつ、ポリプロピレン系樹脂の含有量が10重量%未満であった比較例2の粘着シート用基材を用いて作製した粘着シートは、X/Yが0.6未満であり、均一拡張性(均一エキスパンド性)が極めて悪かった。さらに、重量平均分子量が80000〜500000であり、かつ、クロス分別クロマトグラフによる全溶出量の内、0℃〜10℃での溶出量が45〜80重量%であり、10℃を超え70℃以下での溶出量が5〜35重量%であり、70℃を超え95℃以下での溶出量が1〜30重量%であり、95℃を超え125℃以下での溶出量が3〜35重量%であるポリプロピレン系樹脂の代わりに、プロピレン−エチレンランダム共重合体を用い、かつ、エチレン系共重合体(EVA)の含有量が60重量%未満であった樹脂組成物からなる比較例3の粘着シート用基材を用いて作製した粘着シートは、X/Yが0.8未満であり、均一拡張性(均一エキスパンド性)が悪かった。
【0075】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の粘着シート用基材は、均一拡張性に優れており、かつ、適度な引張強度、柔軟性、透明性等を兼備し、層間剥離を起こすこともないので、特に半導体ウエハのダイシング用粘着シートを始め、各種用途むけの粘着シートのシート基材として好適に用いられる。
【0076】
また、本発明の粘着シートは、上記本発明の粘着シート用基材を用いて作製されているので、均一拡張性に優れており、かつ、適度な粘着性(タック)、粘着力、引張強度、柔軟性、透明性等を兼備するものであり、特に半導体ウエハのダイシング用粘着シートを始め、各種工業用もしくは一般用(家庭用)粘着シートとして好適に用いられる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、粘着シート用基材およびそれを用いた粘着シートに関する。なお、本発明で言うシートにはフィルムも包含される。
【0002】
【従来の技術】
一般に、シリコン等の半導体ウエハは、大面積の状態で製造された後、小片のチップ状にダイシングされて、マウント工程に移される。この際、半導体ウエハは、粘着シートに貼付され保持された状態でダイシング、洗浄、エキスパンド、ピックアップ、マウント等の各工程における作業が施される。上記粘着シートとしては、プラスチックシートからなる基材(シート基材)上に粘着剤層が形成されてなるもの、いわゆるダイシング用粘着シートが一般的に用いられている。
【0003】
上記ダイシング工程においては、回転する丸刃によって半導体ウエハの切断が行われるが、かかる半導体ウエハの切断方法としては、半導体ウエハを保持するダイシング用粘着シートの内部にまで切り込みを行なう切断方法が主流となってきている。
【0004】
このダイシング工程に用いられるダイシング用粘着シートを構成するシート基材には、均一な拡張性(エキスパンド性)を有しているとともに、その拡張性が優れていることが要求される。すなわち、上記シート基材の均一拡張性(均一エキスパンド性)が優れていると、ダイシング用粘着シートを拡張させた場合に、各チップ間に均等な隙間を形成することができ、その結果、チップのピックアップ工程における作業性が極めて優れたものとなる。
【0005】
このような性能を有するシート基材として、例えば、軟質塩化ビニル系樹脂シートが開発されている。しかし、軟質塩化ビニル系樹脂シートは、塩素を含有しているため、塩素イオンにより半導体ウエハを腐食させるという問題点がある。また、軟質塩化ビニル系樹脂シートは、柔軟性を付与するために多量の可塑剤が配合されているので、可塑剤が半導体ウエハに移行して半導体ウエハを汚染するという問題点や、可塑剤がダイシング用粘着シートを構成する粘着剤層に移行して粘着力を低下させ、ダイシング時にチップが飛散しやすくなるという問題点がある。
【0006】
そこで、軟質塩化ビニル系樹脂シートに代わる軟質のシート基材として、半導体ウエハを腐食したり、焼却時に有害ガスを発生する等の塩素含有に起因する問題点を生じないポリオレフィン系樹脂シートが開発されている。
【0007】
上記ポリオレフィン系樹脂シートとしては、例えば、ポリプロピレン系樹脂シートやポリエチレン系樹脂シート等が挙げられるが、これら従来のポリオレフィン系樹脂シートは、軟質塩化ビニル系樹脂シートに比較して、多くの点で劣っている。すなわち、ポリプロピレン系樹脂シートは、一般に結晶性が高いため、柔軟性や拡張性に劣るという問題点があり、また、ポリエチレン系樹脂シートは、一般に機械的強度が劣るという問題点がある。
【0008】
このような問題点を解消するために種々の試みがなされており、例えば、プロピレンおよび/またはブテン−1の含有率が50重量%以上の非晶性ポリオレフィンを20〜100重量%と結晶性ポリプロピレンを80重量%以下含有してなる樹脂組成物からなる層とエチレン系樹脂からなる層とを構成層とする積層フィルムが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
しかし、上記積層フィルムは、繰り返し折り曲げられた場合や拡張された場合に、非晶性ポリオレフィンを含有する樹脂組成物からなる層とエチレン系樹脂からなる層とが界面で容易に剥離することがあるという問題点や、軟質塩化ビニル系樹脂シートに比較して、均一拡張性が不十分であるという問題点がある。
【0010】
また、特定のプロピレン系ブロック共重合体5〜99重量%およびポリプロピレン1〜95重量%を含有してなるポリオレフィン系フィルムが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0011】
また、ポリプロピレンにスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体やエチレンプロピレンゴムなどの熱可塑性エラストマーを混合して、柔軟性を付与したポリオレフィン系フィルムの提案もある。
【0012】
しかし、これらのポリオレフィン系フィルムは、柔軟性は確かに改善されているものの、ポリプロピレンと混合される材料との相溶性の関係から透明性が不十分であるという問題点や、軟質塩化ビニル系樹脂シートに比較して、均一拡張性が不十分であるという問題点がある。
【0013】
さらに、少なくとも三層以上の多層フィルムであって、芯層がポリプロピレンを主体とし、ゴム弾性を有し、かつ、明確な融点を持つ樹脂からなり、該芯層に接する層が直鎖状低密度ポリエチレンからなるダイシング用基材フィルムが開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0014】
上記ダイシング用基材フィルムは、均一拡張性に優れ、適度な引張弾性率を有し、層間剥離を起こさないものであるとされている。しかし、上記ダイシング用基材フィルムは、フィルム厚を薄くした場合には、表層を構成する直鎖状低密度ポリエチレン層が積層する段階でロールの方に捲き付いてしまうという問題点がある。
【0015】
【特許文献1】
特開平6−927号公報
【特許文献2】
特開平7−300548号公報
【特許文献3】
特開2000−173951号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、均一拡張性に優れており、かつ、適度な引張強度、柔軟性、透明性等を兼備し、層間剥離を起こすこともない粘着シート用基材、および、この粘着シート用基材を用いた粘着シートを提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明(本発明)による粘着シート用基材は、エチレン含有量が88重量%以下であるエチレン系共重合体60〜90重量%、および、重量平均分子量が80000〜500000であり、かつ、クロス分別クロマトグラフによる全溶出量の内、0℃〜10℃での溶出量が45〜80重量%であり、10℃を超え70℃以下での溶出量が5〜35重量%であり、70℃を超え95℃以下での溶出量が1〜30重量%であり、95℃を超え125℃以下での溶出量が3〜35重量%であるポリプロピレン系樹脂10〜40重量%を含有する樹脂組成物が製膜されてなることを特徴とする。
【0018】
請求項2に記載の発明による粘着シート用基材は、上記請求項1に記載の粘着シート用基材において、エチレン系共重合体が、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体およびエチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸三元共重合体からなる群より選択される少なくとも1種類のエチレン系共重合体であることを特徴とする。
【0019】
請求項3に記載の発明(本発明)による粘着シートは、上記請求項1または請求項2に記載の粘着シート用基材の少なくとも片面に粘着剤層が形成されてなることを特徴とする。
【0020】
本発明の粘着シート用基材を構成する樹脂組成物には、エチレン系共重合体がが含有される。
【0021】
本発明の粘着シート用基材においては、上記エチレン系共重合体のエチレン含有量が88重量%以下であることが必要であり、好ましくは70〜85重量%である。換言すれば、上記エチレン系共重合体のエチレン以外の重合性モノマーの含有量が12重量%以上であることが必要であり、好ましくは15〜30重量%である。
【0022】
エチレン系共重合体のエチレン含有量が88重量%を超えると、換言すれば、エチレン系共重合体のエチレン以外の重合性モノマーの含有量が12重量%未満であると、得られる粘着シート用基材ひいては粘着シートの柔軟性や均一拡張性が不十分となる。
【0023】
上記エチレン系共重合体としては、上記エチレン含有量を有するもの、換言すれば、上記エチレン以外の重合性モノマーの含有量を有するものであれば如何なるエチレン系共重合体であっても良く、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体等が挙げられ、なかでも、引張強度と柔軟性とのバランスが良く、優れた均一拡張性を有する粘着シート用基材ひいては粘着シートを得られることから、EVA、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体およびエチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸三元共重合体からなる群より選択される少なくとも1種類のエチレン系共重合体が好適に用いられる。これらのエチレン系共重合体は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。なお、本発明で言う例えば(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリルを意味する。
【0024】
本発明の粘着シート用基材を構成する樹脂組成物には、ポリプロピレン系樹脂が含有される。
【0025】
本発明の粘着シート用基材においては、上記ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量が80000〜500000であることが必要である。
【0026】
ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量が80000未満であると、得られる粘着シート用基材ひいては粘着シートの引張強度や耐熱性が不十分となり、逆にポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量が500000を超えると、樹脂組成物の溶融粘度が高くなりすぎて製膜(成形)が困難となる。
【0027】
また、本発明の粘着シート用基材においては、上記ポリプロピレン系樹脂は、クロス分別クロマトグラフによる全溶出量の内、0℃〜10℃での溶出量が45〜80重量%であり、10℃を超え70℃以下での溶出量が5〜35重量%であり、70℃を超え95℃以下での溶出量が1〜30重量%であり、95℃を超え125℃以下での溶出量が3〜35重量%であることが必要である。
【0028】
上記クロス分別クロマトグラフによる溶出量の温度による差は、主として、ポリプロピレン系樹脂の結晶性の差を示している。すなわち、本発明の粘着シート用基材に用いられるポリプロピレン系樹脂は、上記の如く、広い結晶性分布を有するものであり、引張強度、耐熱性、柔軟性、製膜性(成形性)等の性能バランスに優れるものである。
【0029】
クロス分別クロマトグラフによるポリプロピレン系樹脂の各温度領域における溶出量が上記範囲を満たさないと、引張強度、耐熱性、柔軟性、製膜性等の性能バランスが損なわれ、樹脂組成物の製膜が困難となったり、得られる粘着シート用基材ひいては粘着シートの均一拡張性が不十分となる。
【0030】
なお、上記クロス分別クロマトグラフによる溶出量の測定は、例えば、ポリプロピレン系樹脂を該ポリプロピレン系樹脂が完全に溶解する温度の例えばo−ジクロロベンゼンに溶解し、次いで、この溶液を一定速度で冷却し、予め準備しておいた例えばシリコーン系の不活性担体表面に薄いポリマー層を結晶性の高い順および分子量の大きい順に生成させた後、温度を連続的もしくは段階的に上げ、所定温度領域ごとに順次溶出した成分の濃度を検出し、組成分布(結晶性分布)を測定する、いわゆる温度上昇分離分別とともに、その成分の分子量および分子量分布を高温GPCにより測定することにより行われる。
【0031】
上記ポリプロピレン系樹脂としては、前記重量平均分子量および上記溶出量を有するものであれば如何なるポリプロピレン系樹脂であっても良く、特に限定されるものではないが、例えば、アタクチックポリプロピレン樹脂、二段重合により重合されたポリプロピレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。これらのポリプロピレン系樹脂は、ランダムポリマーであっても良いし、ブロックポリマーであっても良い。また、これらのポリプロピレン系樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0032】
本発明の粘着シート用基材を構成する樹脂組成物は、前記エチレン含有量が88重量%以下であるエチレン系共重合体60〜90重量%、および、上記重量平均分子量が80000〜500000であり、かつ、クロス分別クロマトグラフによる全溶出量の内、0℃〜10℃での溶出量が45〜80重量%であり、10℃を超え70℃以下での溶出量が5〜35重量%であり、70℃を超え95℃以下での溶出量が1〜30重量%であり、95℃を超え125℃以下での溶出量が3〜35重量%であるポリプロピレン系樹脂10〜40重量%を含有していることが必要であり、好ましくは、上記エチレン系共重合体70〜85重量%および上記ポリプロピレン系樹脂15〜30重量%を含有していることである。
【0033】
上記エチレン系共重合体の含有量が60重量%未満であるか、上記ポリプロピレン系樹脂の含有量が40重量%を超えると、得られる粘着シート用基材ひいては粘着シートの均一拡張性が不十分となり、逆に上記エチレン系共重合体の含有量が90重量%を超えるか、上記ポリプロピレン系樹脂の含有量が10重量%未満であると、得られる粘着シート用基材ひいては粘着シートの引張強度や耐熱性が不十分となる。
【0034】
本発明の粘着シート用基材を構成する樹脂組成物には、必須成分である上記エチレン系共重合体およびポリプロピレン系樹脂に加えるに、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、例えば、酸化防止剤(老化防止剤)、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、塩素捕捉剤、難燃剤、結晶化核剤、ブロッキング防止剤、スリップ剤、防曇剤、離型剤、着色剤、有機充填剤、無機充填剤、中和剤、滑剤、分解剤、金属不活性剤、汚染防止剤、抗菌剤、上記エチレン系共重合体およびポリプロピレン系樹脂以外の樹脂や熱可塑性エラストマー等の公知の各種添加剤の1種類もしくは2種類以上が添加されていても良い。
【0035】
本発明の粘着シート用基材は、上記樹脂組成物が製膜されてなる。上記粘着シート用基材の製膜方法は、特に限定されるものではなく、例えば、押出法、カレンダー法、インフレーション法、キャスティング法(流延法)等の公知のいずれの製膜法を採っても良いが、製造工程が簡略であることから、押出法を採ることが好ましい。
【0036】
本発明の粘着シート用基材の厚みは、粘着シート用基材や粘着シートの用途によっても異なり、特に限定されるものではないが、一般的には50〜500μmであることが好ましく、より好ましくは80〜300μmである。
【0037】
粘着シート用基材の厚みが50μm未満であると、引張強度が小さくなりすぎて、粘着シート用基材ひいては粘着シートが破断しやすくなることがあり、逆に粘着シート用基材の厚みが500μmを超えると、引張強度が大きくなりすぎて、粘着シート用基材ひいては粘着シートの拡張性が損なわれることがある。
【0038】
本発明の粘着シート用基材は、一方の表面(後述する粘着シートにおいて、粘着剤層が形成されない方の表面)に例えば梨地模様などのエンボス加工が施されていても良い。
【0039】
特に、本発明の粘着シート用基材をダイシング用粘着シートのシート基材として用いる場合、一方の表面に上記エンボス加工を施すことが好ましい。ダイシング用粘着シートは、半導体ウエハがチップ状にダイシングされた後にエキスパンダーリングに押し当てられて拡張される。その際、ダイシング用粘着シートの背面(非粘着剤層側の表面)とエキスパンダーリングとの不均一な滑りにより、ダイシング用粘着シートが局部的に拡張されるという不具合が発生することがある。しかし、本発明の粘着シート用基材の一方の表面に上記エンボス加工を施しておくことにより、ダイシング用粘着シートの背面とエキスパンダーリングとの滑りを均一にさせることが可能となり、上記不具合の発生を効果的に防止することができる。
【0040】
次に、本発明の粘着シートは、上述した本発明の粘着シート用基材の少なくとも片面に粘着剤層が形成されてなる。
【0041】
上記粘着剤層を形成するために用いられる粘着剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等が挙げられ、好適に用いられるが、なかでも、粘着性(タック)、粘着力、耐候性、透明性等に優れることから、アクリル系粘着剤がより好適に用いられる。
【0042】
上記アクリル系粘着剤のベースポリマー(主成分)として用いられるアクリル系ポリマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル同士の共重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと該(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な重合性モノマーとの共重合体等が挙げられる。これらのアクリル系ポリマーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0043】
上記アクリル系ポリマーの主モノマーは、特に限定されるものではないが、その単独重合体のガラス転移温度(Tg)が−50℃以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。
【0044】上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキルエステルとしては、特に限定されるものではないが、例えば、メチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、オクチルエステル、イソノニルエステル等があげられる。これらのアルキルエステルは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0045】
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な重合性モノマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシルエステルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルエステルなどの(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸N−ヒドロキシメチルアミド、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な重合性モノマーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0046】
本発明に粘着シートに用いられる粘着剤は、例えば、紫外線や電子線等により硬化する放射線硬化型粘着剤であっても良いし、加熱発泡型粘着剤であっても良い。
【0047】
特に、本発明の粘着シートをダイシング用粘着シートとして用いる場合には、放射線硬化型粘着剤、なかでも紫外線硬化型粘着剤を用いることが好ましく、該粘着剤はダイシング・ダイボンド兼用可能な粘着剤であっても良い。なお、粘着剤として放射線硬化型粘着剤を用いる場合には、ダイシング工程前またはダイシング工程後において粘着剤層に放射線が照射されるため、前記本発明の粘着シート用基材は十分な放射線透過性を有しているものであることが好ましい。
【0048】
上記放射線硬化型粘着剤は、例えば、前記アクリル系ポリマー(ベースポリマー)と放射線硬化成分とを含有してなる。
【0049】
上記放射線硬化成分としては、分子中に炭素−炭素二重結合を有し、ラジカル重合により硬化可能なモノマー、オリゴマーまたはポリマーであれば良く、特に限定されるものではないが、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレ−ト、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物、2−プロペニルジ−3−ブテニルシアヌレート、2−ヒドロキシエチルビス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロキシエチル)イソシアヌレートなどのイソシアヌレートまたはイソシアヌレート化合物、エステルアクリレートオリゴマー等が挙げられる。これらの放射線硬化成分は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。なお、アクリル系ポリマーとして、ポリマー側鎖に炭素−炭素二重結合を有する放射線硬化型アクリル系ポリマーを用いることも可能であり、この場合には、放射線硬化型粘着剤中に必ずしも上記放射線硬化成分を含有させる必要はない。
【0050】
上記放射線硬化型粘着剤を例えば紫外線により硬化させる場合には、放射線硬化型粘着剤中に光重合開始剤や架橋剤を含有させることが好ましい。また、上記放射線硬化型粘着剤には、必要に応じて、例えば、粘着性付与剤、充填剤、酸化防止剤(老化防止剤)、熱安定剤、着色剤等の各種添加剤の1種類もしくは2種類以上が添加されていても良い。
【0051】
上記光重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどの芳香族ケトン類、ベンジルジメチルケタールなどの芳香族ケタール類、ポリビニルベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン類等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0052】
また、上記架橋剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、アジリジン化合物、エポキシ樹脂、無水化合物、ポリアミン、カルボキシルキ含有オリゴマーもしくはポリマー等が挙げられる。これらの架橋剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0053】
前記本発明の粘着シート用基材の粘着剤層形成面には、上記粘着剤からなる粘着剤層との密着性をより向上させるために、必要に応じて、例えば、コロナ放電処理やプライマー(下塗り剤)塗工等の前処理(下地処理)が施されていても良い。
【0054】
本発明の粘着シートを構成する粘着剤層の厚みは、粘着剤の種類によっても異なり、特に限定されるものではないが、通常、1〜100μmであることが好ましく、より好ましくは3〜50μmである。
【0055】
前記本発明の粘着シート用基材の少なくとも片面に上記粘着剤を塗工して粘着剤層を形成する際には、粘着剤層を平滑にしたり、ラベル加工を可能とするために、必要に応じて、セパレーターを用いても良い。
【0056】
上記セパレーターの構成材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂フィルムや紙等が挙げられる。これらのセパレータの表面には、粘着剤層からの剥離性を高めるために、必要に応じて、例えば、シリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の剥離処理が施されていても良い。また、セパレータの厚みは、粘着剤の種類や作業性等を考慮して適宜設定されれば良く、特に限定されるものではないが、通常、10〜200μmであることが好ましく、より好ましくは25〜100μmである。
【0057】
本発明の粘着シートは、特に半導体ウエハのダイシング用粘着シートとして好適に用いられるが、上記用途に限定されるものではなく、例えば、表面保護シート、マスキングシート、テーブルクロス用シート、建築資材用シート、ストレッチシート、医療用シート等の各種工業用もしくは一般用(家庭用)粘着シートとしても好適に用いられる。また、本発明の粘着シートは、用途に応じて、片面粘着シートであっても良いし、両面粘着シートであっても良い。
【0058】
【作用】
本発明の粘着シート用基材は、エチレン含有量が88重量%以下であるエチレン系共重合体60〜90重量%、および、重量平均分子量が80000〜500000であり、かつ、クロス分別クロマトグラフによる全溶出量の内、0℃〜10℃での溶出量が45〜80重量%であり、10℃を超え70℃以下での溶出量が5〜35重量%であり、70℃を超え95℃以下での溶出量が1〜30重量%であり、95℃を超え125℃以下での溶出量が3〜35重量%であるポリプロピレン系樹脂10〜40重量%を含有する樹脂組成物が製膜されてなるので、均一拡張性に優れており、かつ、適度な引張強度、柔軟性、透明性等を兼備し、層間剥離を起こすこともないものである。
【0059】
また、上記エチレン系共重合体として、EVA、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体およびエチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸三元共重合体からなる群より選択される少なくとも1種類のエチレン系共重合体を用いることにより、上記効果はより確実なものとなる。
【0060】
本発明の粘着シートは、上記本発明の粘着シート用基材の少なくとも片面に粘着剤層が形成されてなるので、均一拡張性に優れており、かつ、適度な粘着性(タック)、粘着力、引張強度、柔軟性、透明性等を兼備するものである。
【0061】
【発明の実施の形態】
本発明をさらに詳しく説明するため以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0062】
(実施例1)
エチレン系共重合体として、酢酸ビニル含有量が20重量%(エチレン含有量が80重量%)であるEVA(商品名「ウルトラセン631」、東ソー社製)85重量部、および、ポリプロピレン系樹脂として、重量平均分子量が200000であり、かつ、クロス分別クロマトグラフによる全溶出量の内、0℃〜10℃での溶出量が69重量%であり、10℃を超え70℃以下での溶出量が11重量%であり、70℃を超え95℃以下での溶出量が2重量%であり、95℃を超え125℃以下での溶出量が18重量%であるポリプロピレン系樹脂(商品名「P.E.R.T310E」、メルトフローレート:1.5、トクヤマ社製)15重量部からなる樹脂組成物を調製し、この樹脂組成物をTダイ押出機で押出して製膜した後、得られたシートの片面にコロナ放電処理を施して、厚み100μmの粘着シート用基材を作製した。
【0063】
また、アクリル酸ブチル95重量部およびアクリル酸5重量部を酢酸エチル中で常法により共重合させて、重量平均分子量が800000のアクリル系共重合体を含有するアクリル系共重合体溶液を作製した後、このアクリル系共重合体溶液に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名「カヤラッドDPHA」、日本化薬社製)60重量部、ラジカル重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバスペシャルティケミカルズ社製)3重量部およびポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン社製)5重量部を添加し、均一に混合して、紫外線硬化型アクリル系粘着剤溶液を調製した。
【0064】
次に、上記で得られた粘着シート用基材のコロナ放電処理面に上記で得られた紫外線硬化型アクリル系粘着剤溶液を塗布し、80℃で10分間加熱乾燥および加熱架橋を行って、厚み10μmの粘着剤層を形成した。次いで、この粘着剤層面にセパレータを貼り合わせて、粘着シートを作製した。
【0065】
(実施例2)
エチレン系共重合体として、メタクリル酸メチル含有量が20重量%(エチレン含有量が80重量%)であるエチレン−メタクリル酸メチル(商品名「WH−401」、住友化学工業社製)85重量部、および、ポリプロピレン系樹脂として、実施例1で用いたポリプロピレン系樹脂15重量部からなる樹脂組成物を調製し、この樹脂組成物をTダイ押出機で押出して製膜した後、得られたシートの片面にコロナ放電処理を施して、厚み100μmの粘着シート用基材を作製した。
【0066】
上記で得られた粘着シート用基材を用いたこと以外は実施例1の場合と同様にして、粘着シートを作製した。
【0067】
(比較例1)
粘着シート用基材の作製において、実施例1で用いたEVA2重量部および実施例1で用いたポリプロピレン系樹脂98重量部からなる樹脂組成物を用いたこと以外は実施例1の場合と同様にして、粘着シート用基材および粘着シートを作製した。
【0068】
(比較例2)
粘着シート用基材の作製において、実施例1で用いたEVA99重量部および実施例1で用いたポリプロピレン系樹脂1重量部からなる樹脂組成物を用いたこと以外は実施例1の場合と同様にして、粘着シート用基材および粘着シートを作製した。
【0069】
(比較例3)
粘着シート用基材の作製において、プロピレン−エチレンランダム共重合体(商品名「サンアロマーPF631S」、サンアロマー社製)90重量部および実施例1で用いたEVA10重量部からなる樹脂組成物を用いたこと以外は実施例1の場合と同様にして、粘着シート用基材および粘着シートを作製した。
【0070】
実施例1および実施例2、ならびに、比較例1〜比較例3で得られた粘着シートの拡張性(エキスパンド性)を以下の方法で評価した。その結果は表1に示すとおりであった。
【0071】
[拡張性(エキスパンド性)の評価方法]
セパレータを剥離して粘着剤層を露出させた粘着シートに半導体ウエハを貼り付け、ダイシング工程においてダイシングを行った。次いで、エキスパンディング工程においてエキスパンドを行って、縦方向の半導体チップ間隔(X)および横方向の半導体チップ間隔(Y)を求め、X/Yを算出して、下記判定基準により拡張性(エキスパンド性)を評価した。上記X/Yが1.0に近いほど均一拡張性に優れていることになる。
〈判定基準〉
○‥‥X/Yが0.8〜1.2の範囲内にあった。
×‥‥X/Yが0.8〜1.2の範囲を逸脱していた。
【0072】
【表1】
【0073】
表1から明らかなように、本発明による実施例1および実施例2の粘着シート用基材を用いて作製した粘着シートは、いずれもX/Yが0.8〜0.9の範囲内にあり、極めて優れた均一拡張性(均一エキスパンド性)を発現した。
【0074】
これに対し、粘着シート用基材を構成する樹脂組成物中におけるエチレン系共重合体(EVA)の含有量が60重量%未満であり、かつ、ポリプロピレン系樹脂の含有量が40重量%を超えていた比較例1の粘着シート用基材を用いて作製した粘着シートは、エキスパンド工程において破断したので、実用性が無かった。また、粘着シート用基材を構成する樹脂組成物中におけるエチレン系共重合体(EVA)の含有量が90重量%を超えており、かつ、ポリプロピレン系樹脂の含有量が10重量%未満であった比較例2の粘着シート用基材を用いて作製した粘着シートは、X/Yが0.6未満であり、均一拡張性(均一エキスパンド性)が極めて悪かった。さらに、重量平均分子量が80000〜500000であり、かつ、クロス分別クロマトグラフによる全溶出量の内、0℃〜10℃での溶出量が45〜80重量%であり、10℃を超え70℃以下での溶出量が5〜35重量%であり、70℃を超え95℃以下での溶出量が1〜30重量%であり、95℃を超え125℃以下での溶出量が3〜35重量%であるポリプロピレン系樹脂の代わりに、プロピレン−エチレンランダム共重合体を用い、かつ、エチレン系共重合体(EVA)の含有量が60重量%未満であった樹脂組成物からなる比較例3の粘着シート用基材を用いて作製した粘着シートは、X/Yが0.8未満であり、均一拡張性(均一エキスパンド性)が悪かった。
【0075】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の粘着シート用基材は、均一拡張性に優れており、かつ、適度な引張強度、柔軟性、透明性等を兼備し、層間剥離を起こすこともないので、特に半導体ウエハのダイシング用粘着シートを始め、各種用途むけの粘着シートのシート基材として好適に用いられる。
【0076】
また、本発明の粘着シートは、上記本発明の粘着シート用基材を用いて作製されているので、均一拡張性に優れており、かつ、適度な粘着性(タック)、粘着力、引張強度、柔軟性、透明性等を兼備するものであり、特に半導体ウエハのダイシング用粘着シートを始め、各種工業用もしくは一般用(家庭用)粘着シートとして好適に用いられる。
Claims (3)
- エチレン含有量が88重量%以下であるエチレン系共重合体60〜90重量%、および、重量平均分子量が80000〜500000であり、かつ、クロス分別クロマトグラフによる全溶出量の内、0℃〜10℃での溶出量が45〜80重量%であり、10℃を超え70℃以下での溶出量が5〜35重量%であり、70℃を超え95℃以下での溶出量が1〜30重量%であり、95℃を超え125℃以下での溶出量が3〜35重量%であるポリプロピレン系樹脂10〜40重量%を含有する樹脂組成物が製膜されてなることを特徴とする粘着シート用基材。
- エチレン系共重合体が、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体およびエチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸三元共重合体からなる群より選択される少なくとも1種類のエチレン系共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の粘着シート用基材。
- 請求項1または請求項2に記載の粘着シート用基材の少なくとも片面に粘着剤層が形成されてなることを特徴とする粘着シート。
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JP2003085696A JP2004292580A (ja) | 2003-03-26 | 2003-03-26 | 粘着シート用基材および粘着シート |
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JP2013139499A (ja) * | 2011-12-28 | 2013-07-18 | Okamoto Kk | 難燃性合成樹脂フィルム及びその製造方法 |
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- 2003-03-26 JP JP2003085696A patent/JP2004292580A/ja active Pending
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