JP2004291815A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Takanobu Takamatsu
孝修 高松
Masayuki Kita
政之 喜多
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Abstract

【課題】電動パワーステアリング装置において操舵トルクに対する慣性補償電流の付加の遅れを防止し、十分な慣性補償を行えるようにする。
【解決手段】モータに流すべき電流の目標値Itを設定する目標電流設定部12において、モータ電圧の検出値Vm等から算出されるモータ角速度ωを微分することにより得られる角加速度信号Saをフィルタ1233に通す。フィルタ1233は、DC領域では位相進みが0で、周波数が0から2Hz付近までは周波数が高くなるにしたがって位相進み量が大きくなり、2Hzで位相を約90度進ませるような周波数特性を有する。慣性補償制御部125は、フィルタ1233を通過した後の角加速度信号Sbの値に基づき慣性補償電流値Iicを決定する。加算器127は、アシスト電流設定部121により決定された基本アシスト電流値Iaに上記慣性補償電流値Iicを加算することにより上記目標値Itを算出する。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両操舵のための操作に応じて電動モータを駆動することにより当該車両のステアリング機構に操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置に関するものであり、更に詳しくは、電動パワーステアリング装置におけるモータ慣性の補償に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、運転者がハンドル(ステアリングホイール)に加える操舵トルクに応じて電動モータを駆動することによりステアリング機構に操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置が用いられている。この電動パワーステアリング装置では、ハンドルに加えられる操舵トルクを検出するトルクセンサが設けられており、トルクセンサで検出される操舵トルク等に基づきモータに流すべき電流の目標値が設定される。そして、この目標値とモータに実際に流れる電流値との偏差に基づき、モータの駆動手段に与えるべき電圧指令値が生成される。モータの駆動手段は、例えば、その電圧指令値に応じたデューティ比のパルス幅変調信号(PWM信号)を生成するPWM信号生成回路と、そのPWM信号のデューティ比に応じてオン/オフするパワートランジスタを用いて構成されるモータ駆動回路とから成り、そのデューティ比に応じた電圧すなわち電圧指令値に応じた電圧をモータに印加する。この電圧印加によってモータに流れる電流は電流検出器によって検出され、上記電流目標値と当該検出値との差が上記電圧指令値を生成するための偏差として使用される。電動パワーステアリング装置では、このようにして、操舵トルク等に基づき設定される目標値の電流がモータに流れるようにフィードバック制御が行われる。
【0003】
上記のように電動パワーステアリング装置では、その駆動源としてのモータに流すべき電流の目標値が操舵トルク等に基づき決定されるが、この電流目標値は、通常、操舵操作の操作性を向上させるための補償電流値をも含んでいる。すなわち、操舵補助力を発生させるために操舵トルクに応じて決定される電流値である基本アシスト電流値に、モータの慣性を補償するための慣性補償電流値や車両挙動の収斂性を確保するためのダンピング補償電流値等の各種の補償電流値が付加されることにより、モータに流すべき電流の目標値が算出される。このように各種の補償電流値を含む電流目標値がモータに流れるようにフィードバック制御が行われることにより、良好な操舵フィーリングを確保しつつハンドル操作における運転者の負荷が軽減される。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−247331号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記各種補償のうち慣性補償は、電動パワーステアリング装置に特有のモータ慣性を打ち消すためのものであり、通常、モータ端子間電圧等から求めたモータ角速度の微分値である角加速度(これは操舵加速度に相当する)に応じた補償電流を基本アシスト電流に付加することにより慣性補償が行われる。しかし、実際に運転者が慣性を感じるのは、ハンドル操作に対しモータの回転に位相ずれが生じた場合が多く、これは、操舵トルクに対するモータ角加速度の位相ずれを意味する。
【0006】
ハンドルの急な切り返しが無く操舵周波数が低い場合は、操舵トルクに対するモータ角加速度の位相ずれは殆ど生じず、ハンドルの切り返し時点と慣性補償電流が最大となる時点とがほぼ一致している。しかし、モータは、運転者が操作するハンドルに対しトーションバーを挟んで出力側に設けられていることから、ハンドルの急な切り返し等によって操舵周波数が高くなると、トーションバーのねじれが大きくなり、ハンドル操作に基づく操舵トルクとモータ角加速度との間に位相ずれが生じる。その結果、慣性補償電流値がモータの角加速度に応じて決定される構成では、慣性補償を必要とするハンドルの切り返し時において慣性補償電流の付加が遅れる。そして図7に示すように、ハンドルの切り返し時における慣性補償電流の付加の遅れは、操舵周波数が高くなるにしたがって(急な切り返しが行われるほど)大きくなる。なお図7は、操舵角θがθrまたは−θrとなる時点でハンドルが切り返された後の慣性補償電流値Iicの変化を、操舵周波数が低い場合、中程度の場合、高い場合の3つの場合について示したものであり、実線は操舵周波数が低い場合の慣性補償電流値Iicの変化を、点線は操舵周波数が中程度の場合の慣性補償電流値Iicの変化を、1点鎖線は操舵周波数が高い場合の慣性補償電流値Iicの変化をそれぞれ表している。
【0007】
上記のように操舵周波数が高くなると慣性補償電流の付加が遅れるため、ハンドルの切り返しの瞬間には慣性感すなわち運転者が感じる慣性力が低減されず、結果として十分な慣性補償が行えない。また、ハンドルの切り返し後、慣性感が低下する時点で慣性補償電流が増大することによりハンドルが急に軽くなるという現象(「トルク抜け」と呼ばれる)が生じ、運転者に違和感を与えることもある。
【0008】
そこで本発明では、操舵トルクに対する慣性補償電流の付加の遅れを防止し、操舵周波数にかかわらず十分な慣性補償を行えるようにした電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
第1の発明は、車両操舵のための操作手段による操作に応じて電動モータを駆動することにより当該車両のステアリング機構に操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置であって、
前記操作手段に加えられる操舵トルクを検出するトルク検出手段と、
前記車両操舵の加速度に相当する値を検出し、当該検出された値を示す操舵加速度信号を出力する操舵加速度検出手段と、
前記電動モータに供給すべき電流の目標値を決定する目標電流設定手段と、
前記目標値の電流が前記電動モータに流れるように前記電動モータを駆動する駆動制御手段とを備え、
前記目標電流設定手段は、
前記操舵補助力を発生させるために前記電動モータに供給すべき電流の値である基本アシスト電流値を前記操舵トルクに基づき決定するアシスト電流設定手段と、
前記電動モータの慣性を補償するための慣性補償電流値を前記操舵加速度信号に基づき決定する慣性補償電流設定手段と、
前記基本アシスト電流値に前記慣性補償電流値を加算することにより前記目標値を算出する加算手段とを備え、
前記操舵加速度検出手段は、前記操舵トルクと前記操舵加速度信号との位相差を低減するフィルタ手段を含むことを特徴とする。
【0010】
このような第1の発明によれば、フィルタ手段によって操舵トルクに対する位相ずれの低減された操舵加速度信号に基づいて慣性補償電流値が決定されるので、操舵周波数が高くなっても慣性補償電流の付加の遅れが抑制される。これにより、操舵のための操作手段の切り返し時等、慣性補償を必要とする時点でタイミングよく慣性補償電流が増大し、慣性補償を十分に行うことができる。また、慣性補償の遅れによってトルク抜け等の違和感を運転者に与えることもない。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、
前記フィルタ手段は、所定値以下の周波数域で位相を進ませ、かつ、周波数が0から所定値まで増大するにしたがって位相進み量が0から所定量まで増大するような周波数特性を有することを特徴とする。
【0012】
このような第2の発明によれば、実用上必要とされる操舵周波数の範囲(所定値以下の周波数域)において、フィルタ手段により操舵トルクに対する操舵加速度信号の位相ずれを解消または低減できるので、慣性補償電流の付加の遅れを防止して慣性補償を十分に行うことができる。
【0013】
第3の発明は、第2の発明において、
前記操舵加速度検出手段は、
前記電動モータの角速度を検出し、当該角速度を示す角速度信号を出力する角速度検出手段と、
前記角速度信号を微分することにより、前記車両操舵の加速度に相当する値を生成する微分手段とを含み、
前記フィルタ手段は、
前記微分手段の前段もしくは後段または前記微分手段内に配置されており、
周波数が0から所定値まで増大するにしたがって位相進み量が0から略90度まで増大するような周波数特性を有することを特徴とする。
【0014】
このような第3の発明によれば、電動モータの角速度に基づいて操舵加速度に相当する値を算出し、その値に基づいて慣性補償を行う場合において、実用上必要とされる操舵周波数の範囲(0〜3Hzの周波数域)で、フィルタ手段により操舵トルクに対する操舵加速度信号の位相ずれを低減できるので、慣性補償電流の付加の遅れを防止して慣性補償を十分に行うことができる。なお、所定値として、人間が操舵可能な周波数の上限(例えば1.5〜3Hz)とすればよい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
<1.全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成を、それに関連する車両構成と共に示す概略図である。この電動パワーステアリング装置は、操舵のための操作手段としてのハンドル(ステアリングホイール)100に一端が固着されるステアリングシャフト102と、そのステアリングシャフト102の他端に連結されたラックピニオン機構104と、ハンドル100の操作によってステアリングシャフト102に加えられる操舵トルクを検出するトルクセンサ3と、ハンドル操作における運転者の負荷を軽減するための操舵補助力を発生させる電動モータ6と、その操舵補助力をステアリングシャフト102に伝達する減速ギヤ7と、車載バッテリ8からイグニションスイッチ9を介して電源の供給を受け、トルクセンサ3および車速センサ4からのセンサ信号に基づきモータ6の駆動を制御する電子制御ユニット(ECU)5とを備えている。このような電動パワーステアリング装置を搭載した車両において運転者がハンドル100を操作すると、その操作による操舵トルクがトルクセンサ3によって検出され、その検出された操舵トルクを示す操舵トルク信号Tsと車速センサ4によって検出された車速を示す車速信号Vs等に基づいて、ECU5によりモータ6が駆動される。これによりモータ6は操舵補助力を発生し、この操舵補助力が減速ギヤ7を介してステアリングシャフト102に加えられることにより、ハンドル操作における運転者の負荷が軽減される。すなわち、ハンドル操作によって加えられる操舵トルクとモータ6の発生する操舵補助力によるトルクとの和が出力トルクとして、ステアリングシャフト102を介してラックピニオン機構104に与えられる。これによりピニオン軸が回転すると、その回転がラックピニオン機構104によってラック軸の往復運動に変換される。ラック軸の両端はタイロッドおよびナックルアームから成る連結部材106を介して車輪108に連結されており、ラック軸の往復運動に応じて車輪108の向きが変わる。
【0016】
上記構成において、ステアリングシャフト102におけるハンドル100側の部分と減速ギヤ7を介して操舵補助力の加えられる部分との間にはトーションバーが介装されており、トルクセンサ3は、そのトーションバーのねじれを検出することにより操舵トルクを検出する。このため、既述のように、操舵周波数(操舵速度)が高くなると、そのトーションバーのねじれが大きくなり、モータ6の角加速度とハンドル100の操作に基づく操舵トルクとの間には位相ずれが生じる。そこで本実施形態では、後述のように、この位相ずれを解消または低減するためのフィルタが導入されている。
【0017】
<2.制御装置の構成および動作>
図2は、上記電動パワーステアリング装置における制御装置であるECU5の構成を示すブロック図である。このECU5は、ハードウェア的には、マイクロコンピュータ(以下「マイコン」と略記する)10と、そのマイコン10から出力される電圧指令値Vdに応じたデューティ比のパルス幅変調信号(PWM信号)を生成するPWM信号生成回路18と、そのPWM信号のデューティ比に応じた電圧をモータ6に印加するモータ駆動回路20と、モータ6に流れる電流を検出して当該検出結果を電流検出値Imとして出力する電流検出器21と、モータ6の端子間電圧(モータ電圧)を検出して当該検出結果を電圧検出値Vmとして出力する電圧検出器22とから構成される。
【0018】
マイコン10は、その内部のメモリに格納された所定のプログラムを実行することにより、目標電流設定部12と減算器14とフィードバック制御演算部(以下「FB制御演算部」と略記する)16とからなるモータ制御部として機能する。このモータ制御部10において、目標電流設定部12は、トルクセンサ3からの操舵トルク信号Tsと車速センサ4からの車速信号Vsと電圧検出器22からの電圧検出値Vmと電流検出器21からの電流検出値Imとに基づき、モータ6に流すべき電流の目標値Itを決定する。減算器14は、この電流目標値Itと電流検出器21からの電流検出値Imとの偏差It−Imを算出する。FB制御演算部16は、この偏差It−Imに基づく比例積分制御演算によって、PWM信号生成回路18に与えるべきフィードバック制御のための上記電圧指令値Vdを生成する。なお、上記モータ制御部10における減算器14およびFB制御演算部16は、PWM信号生成回路18、モータ駆動回路20および電流検出器21および電圧検出器22とともに、モータ6の駆動制御手段を構成する。
【0019】
PWM信号生成回路18は、この電圧指令値Vdに応じたデューティ比のパルス信号、すなわち電圧指令値Vdに応じてパルス幅の変化するPWM信号を生成する。モータ駆動回路20は、スイッチング素子としての複数個のパワートランジスタを用いて構成され、それらのスイッチング素子は、PWM信号生成回路18で生成されたPWM信号によってオン/オフされる。これにより、モータ駆動回路20は、電圧指令値Vdに応じた電圧を発生させ、これをモータ6に印加する。モータ6は、その電圧印加によって流れる電流に応じた大きさおよび方向のトルクを発生する。
【0020】
なお、上記で説明したECU5の構成は一例であり、上記の各構成要素をハードウェアとして実現するかソフトウェア的に実現するかも上記構成に限定されるものではない。また上記では、トルクセンサ3と目標電流設定部12との間に挿入される位相補償フィルタ等、本発明に直接に関係しない構成要素については説明の便宜上省略されている。
【0021】
図3は、上記モータ制御部10における目標電流設定部12の機能的構成を示すブロック図である。この目標電流設定部12は、操舵補助のためにモータ6に流すべき電流の値である基本アシスト電流値Iaを決定するアシスト電流設定部121と、操舵加速度に相当する角加速度を検出する操舵加速度検出部123と、その角加速度に応じてモータ6の慣性を補償するための慣性補償電流値Iicを決定する慣性補償制御部125と、基本アシスト電流値Iaに慣性補償電流値Iicを加算する加算器127とを備えている。そして操舵加速度検出部123は、角速度検出部1231と微分器1232とフィルタ1233とを有している。
【0022】
上記モータ制御部10において、トルクセンサ3から出力される操舵トルク信号Tsと車速センサ4から出力される車速信号Vsとは、アシスト電流設定部121に入力される。アシスト電流設定部121は、操舵トルク信号Tsおよび車速信号Vsに基づき基本アシスト電流値Iaを決定する。具体的には、適切な操舵補助力を発生させるためにモータ6に供給すべき基本アシスト電流の値と操舵トルクとの関係を車速をパラメータとして示すテーブル(「アシストテーブル」と呼ばれる)を予めマイコン10内のメモリに記憶させておき、このアシストテーブルを参照して基本アシスト電流値Iaを決定する。
【0023】
一方、電圧検出器22から出力される電圧検出値Vmと電流検出器21から出力される電流検出値Imとは、操舵加速度検出部123に入力される。操舵加速度検出部123では、まず、角速度検出部1231が、これら電圧検出値Vmおよび電流検出値Imに基づきモータ角速度ωを算出し、そのモータ角速度ωを示すモータ角速度信号Sωを出力する。具体的には次式によりモータ角速度ωを算出する。
ω=(Vm−Im×R)/K …(1)
ここで、Rはモータ抵抗を示し、Kは逆起電圧定数を示している。このようにして算出された角速度ωは、減速ギヤ7の減速比による違いを除けば操舵角速度と同一視できる。以下では、このモータ角速度信号Sωと操舵角速度信号とを特に断らない限り区別せずに単に「角速度信号」という。この角速度信号Sωは微分器1232に入力される。微分器1232は、この角速度信号Sωを微分することにより、角加速度dω/dtを示す信号(以下「角加速度信号」といい、符号“Sa”で表すものとする)を生成する。この角加速度信号Saはフィルタ1233に入力され、フィルタ1233を通過した後の角加速度信号(以下「フィルタ処理後の角加速度信号」という)Sbは、操舵加速度に相当する信号として出力される。
【0024】
このフィルタ1233は、操舵トルクに対する角加速度の位相ずれを解消すべく導入された位相進み遅れフィルタであって、その伝達関数G(s)は、次式で表現される。
G(s)=(1+T・s)/(1+T・s) …(2)
ここで、上記式におけるパラメータTおよびTは、操舵トルクに対する角加速度の位相ずれが解消(少なくとも低減)されるように決定すればよい。すなわち、操舵トルクに対する操舵角速度または操舵角加速度の周波数特性を実験やシミュレーション等により調べ、上記位相ずれが解消または低減されるように当該周波数特性に応じてフィルタ特性を設定すればよい。以下に、そのようなフィルタ特性の設定の具体例を示す。
【0025】
図5は、操舵トルクに対する操舵角加速度の周波数特性を示している。なお、この図に示す周波数特性は操舵角度を±25度とした場合のものである。この図における曲線のうち点線の曲線は、従来の場合(上記のようなフィルタを使用しない場合)における操舵トルクに対する角加速度の周波数特性を示しており、図5(b)における点線の曲線より、操舵周波数が0近傍では殆ど位相ずれはないが、操舵周波数が高くになるにしたがって位相ずれが大きくなり、操舵周波数が2Hzのときには約90度の位相遅れが生じることがわかる。したがって、DC領域(周波数が0)では位相進みが0で、周波数が高くなるにしたがって位相進みが大きくなり、2Hzで位相が約90度進むような周波数特性をフィルタ1233に持たせるように上記式(2)のパラメータTおよびTを決定すればよい。ただし、2Hz以上の高周波域では、位相を進めることが音や振動の原因となるので、位相を進ませる量が一定値に漸近するかまたは位相を遅らせるようにするのが好ましい。図4は、このようにして決定されたフィルタの周波数特性の一例を示す特性図(ゲイン曲線(a)および位相曲線(b))である。この図4に示す周波数特性をフィルタ1233(伝達関数G(s))に持たせると、操舵トルクに対する角加速度の周波数特性すなわち操舵トルク信号Tsを入力としフィルタ処理後の角加速度信号Sbを出力とする伝達要素(伝達関数)の周波数特性は、図5において実線の曲線で示すような特性となる。これによれば、操舵周波数が2Hz付近までは位相遅れが極めて小さくなっており、このような周波数特性のフィルタ1233の導入により、0〜2Hzの周波数領域において操舵トルクに対する角加速度の位相ずれがほぼ解消されることがわかる。
【0026】
上記のようにして得られたフィルタ処理後の角加速度信号Sbは、慣性補償制御部125に入力される。慣性補償制御部125は、このフィルタ処理後の角加速度信号Sbの値に基づき慣性補償電流値Iicを決定する。この慣性補償電流値Iic決定の仕方は従来と同様である。具体的には、例えば、適切な慣性補償を行うために基本アシスト電流値Iaに付加すべき慣性補償電流値と角加速度値との関係を示すテーブル(以下「慣性補償テーブル」という)を予めマイコン10内のメモリに記憶させておき、この慣性補償テーブルを参照してフィルタ処理後の角加速度信号Sbに応じた慣性補償電流値Iicを求めればよい。また、必要に応じて、上記慣性補償テーブルを、基本アシスト電流値Iaに付加すべき慣性補償電流値と角加速度値との関係を車速をパラメータとして示すテーブルとして作成し、この慣性補償テーブルを参照してフィルタ処理後の角加速度信号Sbの値および車速信号Vsの値に基づき慣性補償電流値Iicを求めるようにしてもよい。さらにまた、慣性補償テーブルに代えて、基本アシスト電流値Iaに付加すべき慣性補償電流値と角加速度値等との関係を表す関数を予め設定しておき、その関数を使用してフィルタ処理後の角加速度信号Sb等に基づき慣性補償電流値Iicを算出するようにしてもよい。
【0027】
慣性補償制御部125で決定された慣性補償電流値Iicは、加算器127に入力される。加算器127は、この慣性補償電流値Iicを基本アシスト電流値Iaに加算することにより電流目標値Itを算出する。なお、実際の目標電流設定部では、慣性補償電流値の他、車両挙動の収斂性の確保等のためのダンピング補償電流値等の各種の補償電流値が付加されるが、他の補償電流値は本発明に直接に関係しないので、説明の便宜のために本実施形態ではそれら他の補償電流値の付加は省略されている。
【0028】
上記のようにして算出された電流目標値Itは、減算器14に入力され、前述のようにモータ6に対するフィードバック制御を行うための偏差It−Imの算出に使用される。
【0029】
<3.効果>
上記のように本実施形態では、フィルタ処理後の角加速度信号Sb、すなわち0〜2Hz付近までの操舵周波数の範囲において操舵トルクに対する位相ずれがほぼ解消された角加速度信号Sbに基づいて慣性補償電流値Iicが決定されており(図5)、操舵周波数(操舵速度)が高くなっても慣性補償電流値Iicにはハンドル操作に対する位相ずれが殆ど生じない。これは、フィルタ1233の導入により、慣性補償の観点からはトーションバーを剛体と見なせるようになったことを意味する。このため、図7に示したように操舵周波数が高くなるにしがって慣性補償電流の付加(慣性補償電流値Iicの絶対値の増大)が遅れる従来技術とは異なり、本実施形態によれば、図6に示すように、操舵周波数によらずハンドルの切り返し時に殆ど遅延無く慣性補償電流が付加される(慣性補償電流値Iicの絶対値が増大する)。これにより、ハンドルの切り返し時等の慣性補償を必要とする時点でタイミングよく慣性補償電流が増大し、慣性補償を十分に行うことができ、また、慣性補償の遅れによってトルク抜け等の違和感を運転者に与えることもない。
【0030】
<4.変形例>
上記実施形態では、角速度信号Sωを微分器1232で微分することにより角加速度信号Saが算出され、その角加速度信号Saに対しフィルタ1233によるフィルタ処理が施されるが、これに代えて、角速度信号Sωに対してフィルタ1233によるフィルタ処理を施した後に微分器1232で微分することにより角加速度信号Sbを求めてもよい。すなわち、フィルタ1233は、微分器1232の前段と後段のいずれに配置されていてもよい。また、微分器1232とフィルタ1233とを一体化して1つの微分フィルタとして実現してもよい。
【0031】
また、上記実施形態では、慣性補償電流値Iicを決定するために使用される操舵加速度に相当する角加速度は、電圧検出値Vm等から求められたモータ角速度ωを微分することにより算出されるが、他の方法で求められた操舵加速度に相当する値を慣性補償電流値Iicの決定に使用してもよい。例えば、電動パワーステアリング装置が搭載される車両が舵角センサを備えている場合には、その舵角センサで検出される信号を2階微分することにより操舵加速度に相当する角加速度を算出し、これに基づき慣性補償電流値Iicを決定するようにしてもよい。このようにしても、そこで得られた角加速度と操舵トルクとの位相差が解消または低減されるようなフィルタを導入すれば、上記実施形態と同様の効果が得られる。なお、舵角センサからの信号に基づき得られる角加速度は、通常、モータ角加速度に比べて操舵トルクに対する位相ずれが小さいので、導入すべきフィルタの周波数特性もそれに応じたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成をそれに関連する車両構成と共に示す概略図である。
【図2】上記実施形態に係る電動パワーステアリング装置における制御装置であるECUの構成を示すブロック図である。
【図3】上記実施形態における目標電流設定部の機能的構成を示すブロック図である。
【図4】上記実施形態におけるフィルタの周波数特性を示すボード線図である。
【図5】上記実施形態における操舵トルクに対するフィルタ処理後の角加速度の周波数特性を、フィルタ処理を施さない従来の周波数特性と共に示すボード線図である。
【図6】上記実施形態に係る電動パワーステアリング装置においてハンドルを切り返した時の慣性補償電流の変化を示す図である。
【図7】従来の電動パワーステアリング装置においてハンドルを切り返した時の慣性補償電流の変化を示す図である。
【符号の説明】
3 …トルクセンサ
4 …車速センサ
5 …電子制御ユニット(ECU)
6 …モータ
10 …マイクロコンピュータ(モータ制御部)
12 …目標電流設定部
14 …減算器
16 …フィードバック制御演算部(FB制御演算部)
18 …PWM信号生成回路
20 …モータ駆動回路
21 …電流検出器
22 …電圧検出器
121 …アシスト電流設定部
123 …操舵加速度検出部
1231…角速度検出部
1232…微分器
1233…フィルタ
125 …慣性補償制御部
127 …加算器
Ts …操舵トルク信号
Vs …車速信号
Im …電流検出値
Vm …電圧検出値
Ia …基本アシスト電流値
It …電流目標値
Iic …慣性補償電流値
Vd …電圧指令値

Claims (3)

  1. 車両操舵のための操作手段による操作に応じて電動モータを駆動することにより当該車両のステアリング機構に操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置であって、
    前記操作手段に加えられる操舵トルクを検出するトルク検出手段と、
    前記車両操舵の加速度に相当する値を検出し、当該検出された値を示す操舵加速度信号を出力する操舵加速度検出手段と、
    前記電動モータに供給すべき電流の目標値を決定する目標電流設定手段と、
    前記目標値の電流が前記電動モータに流れるように前記電動モータを駆動する駆動制御手段とを備え、
    前記目標電流設定手段は、
    前記操舵補助力を発生させるために前記電動モータに供給すべき電流の値である基本アシスト電流値を前記操舵トルクに基づき決定するアシスト電流設定手段と、
    前記電動モータの慣性を補償するための慣性補償電流値を前記操舵加速度信号に基づき決定する慣性補償電流設定手段と、
    前記基本アシスト電流値に前記慣性補償電流値を加算することにより前記目標値を算出する加算手段とを備え、
    前記操舵加速度検出手段は、前記操舵トルクと前記操舵加速度信号との位相差を低減するフィルタ手段を含むことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 前記フィルタ手段は、所定値以下の周波数域で位相を進ませ、かつ、周波数が0から所定値まで増大するにしたがって位相進み量が0から所定量まで増大するような周波数特性を有することを特徴とする、請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
  3. 前記操舵加速度検出手段は、
    前記電動モータの角速度を検出し、当該角速度を示す角速度信号を出力する角速度検出手段と、
    前記角速度信号を微分することにより、前記車両操舵の加速度に相当する値を生成する微分手段とを含み、
    前記フィルタ手段は、
    前記微分手段の前段もしくは後段または前記微分手段内に配置されており、
    周波数が0から所定値まで増大するにしたがって位相進み量が0から略90度まで増大するような周波数特性を有することを特徴とする、請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。
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