JP2004284904A - 日射遮蔽材料の製造方法、日射遮蔽材料、日射遮蔽膜形成用塗布液および日射遮蔽膜 - Google Patents
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Abstract
【課題】可視光透過率が80%以上の高い領域でも日射透過率が低く、しかもヘイズ値が低い日射遮蔽材料の製造方法、日射遮蔽材料、日射遮蔽膜形成用塗布液および日射遮蔽膜を提供する。
【解決手段】錫化合物1の水溶液と、インジウム化合物2の水溶液と、レニウム化合物3の水溶液とを混合11した原料混合溶液4に、20℃制御下で攪拌しながらアルカリ溶液5を25分かけて滴下13し、10分間攪拌12して熟成14し共沈沈殿物6を得、これを洗浄15後乾燥16してインジウム、錫、レニウム水酸化物7とし、さらに、還元性ガス・不活性ガス雰囲気8のもとで、攪拌17しながら加熱18して還元処理することによって日射遮蔽材料9の微粒子を得、この微粒子を、バインダ−、硬化剤と供に溶媒中へ分散して、日射遮蔽膜形成用塗布液を得た。
【選択図】 図1
【解決手段】錫化合物1の水溶液と、インジウム化合物2の水溶液と、レニウム化合物3の水溶液とを混合11した原料混合溶液4に、20℃制御下で攪拌しながらアルカリ溶液5を25分かけて滴下13し、10分間攪拌12して熟成14し共沈沈殿物6を得、これを洗浄15後乾燥16してインジウム、錫、レニウム水酸化物7とし、さらに、還元性ガス・不活性ガス雰囲気8のもとで、攪拌17しながら加熱18して還元処理することによって日射遮蔽材料9の微粒子を得、この微粒子を、バインダ−、硬化剤と供に溶媒中へ分散して、日射遮蔽膜形成用塗布液を得た。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は車両、ビル、事務所、一般住宅などの窓、電話ボックス、ショ−ウィンド−、照明用ランプ、透明ケ−スなど、ガラス、プラスチックスその他の、日射遮蔽機能を必要とする透明基材に適用される日射遮蔽材料に係り、特に、可視光透過率が80%以上の高い領域においても、日射透過率が低くしかもヘイズ値の低い日射遮蔽膜と、この日射遮蔽膜の形成を可能とする日射遮蔽材料およびその製造方法と、この日射遮蔽材料を用いた塗布液とに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
太陽光や電球などの外部光源から熱成分を除去・減少する方法として、従来、熱効果に大きく寄与する赤外線を反射する材料を、膜としてガラス表面に形成して、これを熱線反射ガラスとすることが行われていた。そして、赤外線を反射する材料として、FeOx、CoOx、CrOx、TiOxなどの金属酸化物や、Ag、Au、Cu、Ni、Alなどの自由電子を多量にもつ金属材料が選択されてきた。
【0003】
しかし、これらの金属酸化物や金属材料では、赤外線以外に可視光も同時に反射もしくは吸収する性質があるため、これらの材料の膜が形成された熱線反射ガラスを用いると、可視光透過率が低下する問題があった。ところが、建材、乗り物、電話ボックスなどに用いられる透明基材では可視光領域の高い透過率が必要とされることから、上記材料を利用する場合は、その膜厚を非常に薄くしなければならない。このため、スプレ−焼付けやCVD法、あるいはスパッタ法や真空蒸着法などの物理成膜法を用いて、10nmレベルの薄膜として成膜することが通常行われてきた。
【0004】
しかしながら、これらの成膜方法は、大がかりな装置や真空設備を必要とし、生産性や成膜面積の大面積化に問題があり、膜の製造コストが高くなるといった課題がある。また、これらの材料を用いて日射遮蔽特性(波長域300〜2100nmの光を遮蔽する特性)を向上させようとすると、可視光領域の反射率も同時に高くなってしまう傾向がある。このため、これらの材料を成膜された熱線反射ガラスは、鏡のようなギラギラした外観を与えて美観を損ねてしまう。さらに、これらの材料は、膜の導電性が高いものが多く、膜の導電性が高いと携帯電話やTV、ラジオなどの電波を反射して、受信不能になったり、周辺地域に電波障害を引き起こすなどの課題もある。
【0005】
このような、従来の熱線反射膜の課題を改善するには、膜の物理特性として、可視光領域の光の透過率が高くて、赤外線領域の反射率が高く、かつ膜の表面抵抗が概ね106Ω/□以上となる膜を形成する必要がある。
【0006】
ここで、可視光透過率が高くしかも優れた日射遮蔽機能を持つ材料の一つとしてインジウム錫酸化物(以下、ITOと記載する。)が知られている。そして、この日射遮蔽機能を有するITOを得る方法として、一般的にはインジウム塩と錫塩の混合水溶液に沈澱剤を添加して共沈させ、この沈澱物を乾燥焼成する方法が知られている。
【0007】
さらに、例えば、特許文献1には、ITO粉末をさらに加圧不活性ガス中で熱処理する方法が開示され、特許文献2には、ITO粉末をアルコ−ル雰囲気下で加熱処理する方法が開示され、特許文献3には、錫塩とインジウム塩との溶液を30℃以下に保持し、アルカリ水溶液を、反応系のpHが最終的に5.0〜9.0となるように0.5〜12時間の添加時間をもって添加し、得られた水和物を不活性ガス雰囲気下あるいは還元性ガス雰囲気下で加熱処理する方法等が開示されている。
【0008】
しかしながら、これらの方法で得られたITO粉末を用いて形成した膜では、80%以上の高い可視光透過率を維持しつつ、60%未満の低い日射透過率を発揮し、かつ1%を下回るような低ヘイズ値を満たすことは、未だ実現されておらず、さらには生産性の点でも十分満足すべきものではない。
尚、上記ヘイズ値とは、全透過光に対する拡散透過光の割合であり、この値が高いと人間の目には曇って見える。したがって、透明性を要求される窓材、特により透明性を必要とする車両用途では、1%を下回るヘイズ値の膜が望まれている。
【0009】
【特許文献1】
特開平7−69632号公報
【特許文献2】
特開平5−24837号公報
【特許文献3】
特開平10−120946号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の課題とするところは、可視光領域においては高い透過率を持つとともに、可視光領域により近い近赤外域においては日射透過率が低く、しかもヘイズ値が低い日射遮蔽膜を形成することができる日射遮蔽材料の製造方法、当該製造方法により製造された日射遮蔽材料、当該日射遮蔽材料を含有し簡便な塗布法で日射遮蔽膜を形成できる日射遮蔽膜形成用塗布液、および当該日射遮蔽材料を用いた日射遮蔽膜を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の構成を有する。
(構成1)錫化合物とインジウム化合物とレニウム化合物とを含有する50℃以下に保持しながら攪拌し、前記溶液へ、アルカリ溶液を滴下時間30分未満で滴下し、その後も攪拌を続けて沈殿物を得る工程と、
前記沈澱物を洗浄した後、乾燥して、インジウムと錫とレニウムとの水酸化物を得る工程と、
前記水酸化物を、還元性ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気下において攪拌しながら加熱処理する工程とを具備することを特徴とする日射遮蔽材料の製造方法である。
【0012】
上述の製造方法によれば、可視光領域においては高い透過率を持つとともに、可視光領域により近い近赤外域においては、強いプラズマ吸収を発現して低い日射透過率を持ち、且つ熱線遮蔽に好ましい粒径を有し、日射遮蔽膜中に高度に分散することのできる日射遮蔽材料を製造することができる。
【0013】
(構成2)構成1に記載の製造方法で製造されたことを特徴とする日射遮蔽材料である。
【0014】
(構成3)構成2に記載の日射遮蔽材料であって、
錫と、インジウムと、レニウムとを含有する粉体であり、
L*a*b*表色系による、L*が52〜80、a*が−10〜−0.1、b*が−14〜20である粉体色を有し、
前記粉体の比表面積が50m2/g以上であることを特徴とする日射遮蔽材料である。
【0015】
上述の構成を有する日射遮蔽材料は、可視光領域においては高い透過率を持つとともに、可視光領域により近い近赤外域においては、強いプラズマ吸収を発現して低い日射透過率を持ち、且つ熱線遮蔽に好ましい粒径を有し、日射遮蔽膜中に高度に分散することができるため、可視光領域においては高い透過率を持つとともに、可視光領域により近い近赤外域においては低い日射透過率を持ち、かつヘイズ値が低い日射遮蔽膜を形成することができる。
【0016】
(構成4)構成2または構成3に記載の日射遮蔽材料が、溶媒中に分散されていることを特徴とする日射遮蔽膜形成用塗布液である。
【0017】
(構成5)構成4に記載の日射遮蔽膜形成用塗布液であって、無機バインダ−および/または樹脂バインダ−が含まれていることを特徴とする日射遮蔽膜形成用塗布液である。
【0018】
(構成6)構成2または構成3に記載の日射遮蔽材料を、含有することを特徴とする日射遮蔽膜である。
【0019】
(構成7)構成6に記載の日射遮蔽膜であって、
前記日射遮蔽膜の可視光透過率が80%以上のとき、波長域300〜2100nmにおける日射透過率が60%未満で、ヘイズ値が1%未満であることを特徴とする日射遮蔽膜である。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
(日射遮蔽材料)
図1は、本発明に係る日射遮蔽材料の製造方法を示すフロー図である。
図1に示すように、本発明に係る日射遮蔽材料の製造方法は、錫化合物1、インジウム化合物2およびレニウム化合物3を混合11して調製し、かつ50℃以下に保持された原料混合溶液4を攪拌12しつつ、アルカリ溶液5を滴下時間30分未満の条件で滴下13し熟成14させて共沈沈殿物6を得る工程と、上記沈澱物6を、例えばデカンテ−ションにより洗浄15した後、乾燥16してインジウムと錫とレニウムの水酸化物7を得る工程と、該水酸化物7を還元性ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気8下において攪拌17しながら加熱18処理する工程を具備することを特徴とするものである。
【0021】
ここで、本発明において適用されるインジウム化合物2、錫化合物1およびレニウム化合物3は、特に限定されるものでなく、例えば硝酸インジウム、塩化インジウム、塩化錫、硝酸錫、七酸化レニウム、過レニウム酸水溶液、レニウムオキシ酸、過レニウム酸アンモニウム、塩化レニウム酸などが挙げられる。
【0022】
インジウム化合物2、錫化合物1およびレニウム化合物3の構成において、元素換算での錫含有量は1〜12原子%未満が好ましく、より好ましくは3〜8原子%で、元素換算でのレニウム含有量は0.5〜10原子%以下が好ましく、より好ましくは1〜5原子%である。錫含有量、レニウム含有量がこの範囲にあると、可視光透過率が80%以上の高い領域でも、日射透過率が低くしかもヘイズ値の低い日射遮蔽膜を得ることができる。
【0023】
次に、本発明で用いるアルカリ溶液5も特に限定されず、例えば、炭酸水素アンモニウム、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、などの各水溶液が挙げられる。アルカリ溶液の濃度は、各原料化合物塩が水酸化物となるのに必要な化学当量以上、好ましくはアルカリ残留による洗浄時間の観点から当量〜1.5倍過剰量とする。
【0024】
このときの原料混合溶液4の温度は、50℃以下とすることが好ましい。温度下限は、得られる共沈沈澱物6微粒子の特性の観点より、特に限定されないが、低すぎると新たに冷却装置などが必要になってくることから、そのような装置を要しない温度とすることが好ましい。他方、50℃を超えない範囲であれば共沈沈殿物6の粒成長が所定の範囲に入り、日射遮蔽材料9へ所望の光学特性を付与することが出来るためである。
【0025】
アルカリ溶液5の滴下13の時間は、共沈沈殿物6の粒子の微細化および生産性の観点から30分未満であることが好ましく、さらに好ましくは25分以下とする。
滴下13の時間と共沈沈殿物6の粒子径には以下の関係がある。即ち、滴下時間が長い場合は、過飽和度が下がらないため(=生成する核の数が少ない)沈殿生成速度は遅くなり、粒子成長が主反応となるため共沈沈殿物6の粒子径は大きくなる。他方、滴下時間が短い場合は、過飽和度がすぐに下がるため(=生成する核の数が多い)沈殿生成速度は早くなり、核生成が主反応となるため共沈沈殿物6の粒子径は小さくなる。この関係より、滴下時間が30分以下であると、共沈沈殿物6の粒子径が大きくなり過ぎるのを回避できると供に、沈殿生成速度が速いのでコンパクトな設備でも生産量を確保できる。
【0026】
滴下13終了後、系内の均一化を図るために継続的に攪拌12しながら熟成14を行うが、そのときの温度は共沈温度と同温以下とし、攪拌12・熟成14は30分以下が好ましく、さらに好ましくは15分以下、最も好ましくは10分以下とする。これは、微少な粒子が分散している系において、より小さな粒子が減少・消滅して、より大きな粒子が成長する現象(オストワルド成長と呼ばれている。)が知られているが、上述の条件は、この大きな粒子が成長する現象が起こらない条件を選定し、共沈沈殿物6の粒子の微粒子化を図っているものである。
さらに、攪拌12・熟成14の時間を短くすることは、生産性の観点からも好ましい。
【0027】
次に、熟成14させて得られた共沈沈澱物6はデカンテ−ションによって十分洗浄15した後、乾燥16する。共沈沈澱物6の微粒子中に残留する塩素イオン、硝酸イオン、硫酸イオンなどの不純物は、後工程において還元阻害因子となる。このため、洗浄15によって、残留不純物量を好ましくは1.5重量%以下、より好ましくは0.2重量%以下とする。乾燥16の温度や時間は特に限定されるものではない。
【0028】
乾燥16の処理を終えて、インジウムと錫とレニウムの水酸化物7を得る。得られた、乾燥状態のインジウムと錫とレニウムの水酸化物7は、比表面積100m2/gを有する。
このインジウムと錫とレニウムの水酸化物7に対し、還元処理を施して、特定の粉体色、すなわち国際照明委員会(CIE)が推奨しているL*a*b*表色系(JIS Z8729)における粉体色L*が52〜80、a*が−10〜−0.1、b*が−14〜20を持つように調製する。
【0029】
インジウムと錫とレニウムの水酸化物7へ、上述の粉体色を付与するための処理は、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス単独またはこれらの混合ガスと、水素ガス等の還元性ガスとの混合ガス8を供給し、インジウムと錫とレニウムの水酸化物7を攪拌17しながら、加熱18することで行う。この攪拌は、例えば、攪拌羽根を有する回転攪拌機等が好適に用いられる。
この時の処理温度は、所望とする光学特性および生産効率の観点から、下限は200℃以上が好ましい。一方、上限は400℃以下が好ましい。200℃〜400℃の範囲においては、適宜な反応速度と粒成長を達成することができ、光学特性および生産効率の観点から好ましい。このときの還元時間は、処理温度に応じて、上述した粉体色となるよう適宜選択すればよい。
こうして本発明に係る日射遮蔽材料9を得る。得られた日射遮蔽材料9は、比表面積50m2/g以上を有し、(1)式より算出した平均一次粒径は16.7nm以下となった。
d=6/ρ×SA……(1)
(dは平均一次粒子径、ρは密度、SAは比表面積である。)
【0030】
ここで、日射遮蔽材料が熱線を遮蔽する面積は次式で表され、遮蔽面積は、日射遮蔽材料の粒子径に反比例して増加する。
A=πr2Mρ/4/3πr3……(2)
(Aは遮蔽面積、Mは微粒子重量、ρは比重、rは粒子半径である。)
式(2)より、上述の製造方法で得られる本発明に係る日射遮蔽材料は、熱線遮蔽に好ましい粒径を有していることが判明した。
【0031】
上述の製造方法によれば、錫化合物およびインジウム化合物へ、さらに可視光領域に選択的透過性を示し、近赤外領域から長波長側では伝導電子のプラズモンによる光吸収特性を有するレニウム化合物を添加し、これらを共沈させる条件、共沈沈殿物を乾燥して得た乾燥粉を還元処理する際の最適条件を見出した。この結果、日射遮蔽膜中に高度に分散することができ、可視光領域においては高い透過率を持つとともに、可視光領域により近い近赤外域においては、強いプラズマ吸収を発現して低い日射透過率を持ち、かつヘイズ値が低い日射遮蔽膜を形成することができる日射遮蔽材料を製造することができた。
【0032】
また、日射遮蔽材料9の粉体色は、粉体中の自由電子密度と相関しているものと考えられる。そして粉体中の自由電子密度と、この粉体がプラズマ吸収を発現する帯域とは相関していることから、日射遮蔽材料9の粉体色と、当該粉体が発現するプラズマ吸収帯域とは相関していると考えられる。この仮説を基に、日射遮蔽材料9の粉体色と、これから形成された日射遮蔽膜の日射透過率とを研究した結果、L*が52〜80、a*が−10〜−0.1、b*が−14〜20を有すると、上述した所望の特性を発揮することが判明した。そこで、インジウムと錫とレニウムの水酸化物7に対し還元処理を施して、上述の粉体色を持つ日射遮蔽材料9を調製したものである。
【0033】
(日射遮蔽膜形成用塗布液)
本発明に係る日射遮蔽膜形成用塗布液(以下、塗布液と記載する。)は、上記日射遮蔽材料を溶媒中に分散したものであるが、溶媒は特に限定されるものではなく、塗布条件、塗布環境に合わせて適宜選択する。また、後述するように、塗布液中へ無機バインダ−や樹脂バインダ−を含有させたときは、これらに合わせて適宜選択する。
具体例としては、水やエタノ−ル、プロパノ−ル、ブタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、イソブチルアルコ−ル、ジアセトンアルコ−ルなどのアルコ−ル類、メチルエ−テル,エチルエ−テル,プロピルエ−テルなどのエ−テル類、エステル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、イソブチルケトンなどのケトン類といった、各種の溶媒が使用可能であり、また必要に応じて酸やアルカリを添加してpH調整してもよい。さらに、塗布液中の微粒子の分散安定性を向上させるため各種の界面活性剤、カップリング剤などの添加も勿論可能である。
【0034】
また、必要に応じて配合される無機バインダ−や樹脂バインダ−について、その種類は特に限定されるものではない。例えば、無機バインダ−としては、珪素、ジルコニウム、チタン、もしくはアルミニウムの金属アルコキシドやこれらの部分加水分解縮重合物あるいはオルガノシラザンが利用でき、樹脂バインダ−として、アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂などが利用できる。
【0035】
日射遮蔽材料の溶媒への分散方法は、均一に分散した塗布液が製造される方法であれば特に限定されず、例えば、ビ−ズミル、ボ−ルミル、サンドミル、ペイントシェ−カ−、超音波ホモジナイザ−などが挙げられる。
【0036】
(日射遮蔽膜)
この塗布液を用いて日射遮蔽膜を形成したとき、形成された膜の導電特性および光学特性について説明する。
【0037】
本発明に係る日射遮蔽膜の導電性は、インジウム錫レニウム酸化物微粒子の接触個所を経由した導電パスに沿ってなされるため、例えば、上述した界面活性剤やカップリング剤の添加量を加減することで、導電パスを部分的に切断することができ、膜の導電性を、106Ω/□以上の表面抵抗値へ低下させることは容易である。また、無機バインダ−、あるいは樹脂バインダ−の含有量の加減によっても導電性を制御できる。
【0038】
次に、本発明に係る日射遮蔽膜は、透明基板上に上記インジウム錫レニウム酸化物微粒子を高密度に堆積させて膜形成されたものであるが、塗布液中に樹脂バインダ−または無機バインダ−を含有させることで、塗布硬化後にインジウム錫レニウム酸化物微粒子の基材への密着性を向上させ、さらに膜の硬度を向上させる効果を得ることができる。
【0039】
そして、このようにして得られた膜上に、さらに珪素、ジルコニウム、チタン、もしくはアルミニウムの金属アルコキシド、これらの部分加水分解縮重合物からなる被膜を第2層として被着して、180℃程度の温度で10〜30分加熱する。このようにして、珪素、ジルコニウム、チタン、もしくはアルミニウムの酸化物膜を形成することで、インジウム錫レニウム酸化物微粒子を主成分とする日射遮蔽膜の基材への結着力や膜の硬度、耐候性を一層向上させることができる。
【0040】
一方、塗布液中に樹脂バインダ−または無機バインダ−を含まない場合に得られる日射遮蔽膜は、基材上に上述したインジウム錫レニウム酸化物微粒子のみが堆積した膜構造になる。この膜は、勿論このままでも日射遮蔽効果を示すが、この膜上にさらに珪素、ジルコニウム、チタン、もしくはアルミニウムの金属アルコキシドやこれらの部分加水分解縮重合物などの無機バインダ−、または樹脂バインダ−を含む塗布液を塗布して被膜を形成し、多層膜とするとよい。このように日射遮蔽膜を多層構造とすることにより、塗布液成分が第1層のインジウム錫レニウム酸化物微粒子の堆積した間隙を埋めて成膜されるため、膜のヘイズが低減して可視光透過率が向上し、また微粒子の基材への結着性が向上する。
【0041】
また、本発明に係る塗布液およびバインダ−を含有する塗布液の塗布方法は、特に限定されず、例えば、スピンコ−ト法、バ−コ−ト法、スプレ−コ−ト法、ディップコ−ト法、スクリ−ン印刷法、ロ−ルコ−ト法、流し塗りなど、処理液を平坦かつ薄く均一に塗布できる方法であればいずれの方法でもよい。
【0042】
無機バインダ−として珪素、ジルコニウム、チタン、もしくはアルミニウムの金属アルコキシドおよびその加水分解重合物を含む塗布液を、塗布する場合、塗布後の基材の加熱温度を、100℃以上とすることが好ましく、さらに好ましくは塗布液中の溶媒の沸点以上に加熱することが好ましい。100℃以上に加熱することで、塗膜中に含まれるアルコキシドまたはその加水分解重合物の重合反応を殆ど完結させることができ、また水や有機溶媒が膜中に残留することを抑制し加熱後における、膜の可視光透過率の低下を回避することができるからである。
【0043】
他方、樹脂バインダ−を使用した場合は、それぞれの硬化方法に従って硬化させればよい。例えば、紫外線硬化樹脂であれば紫外線を適宜照射すればよく、また常温硬化樹脂であれば塗布後そのまま放置しておけばよい。このため、既存の窓ガラスなどへの現場での塗布が可能である。
【0044】
本発明に係る日射遮蔽膜では、インジウム錫レニウム酸化物微粒子が分散しているため、物理成膜法により製造された酸化物薄膜のような、結晶が緻密に膜内を埋めた状態を有し鏡面状表面をもつ膜に比べると、可視光領域での反射が少なく、ギラギラした外観を呈することが回避できる。その一方で、可視から近赤外域にプラズマ周波数をもつため、これに伴うプラズマ吸収が近赤外域で大きくなる。さらに可視光領域の反射を抑制したい場合には、インジウム錫レニウム酸化物微粒子分散膜の上に、SiO2やMgF2のような低屈折率の膜を成膜することにより、容易に視感反射率1%以下の多層膜を得ることができる。
【0045】
本発明に係る日射遮蔽材料、塗布液並びに日射遮蔽膜のさらなる紫外線遮蔽機能を付与させるため、無機系の酸化チタンや酸化亜鉛、酸化セリウムなどの微粒子や、有機系のベンゾフェノンやベンゾトリアゾ−ルなどの1種もしくは2種以上を添加してもよい。
【0046】
上記のように、本発明によれば、日射遮蔽効果を有する塗布膜製造が可能であり、インジウム錫レニウム酸化物微粒子は無機材料であるので有機材料と比べて耐候性は非常に高く、例えば太陽光線(紫外線)の当たる部位に使用しても色や諸機能の劣化はほとんど生じない。また、本発明に係る塗布液は、焼成時の熱によって塗布成分の分解あるいは化学反応を利用して目的の日射遮蔽膜を形成するものではないため、特性の安定した均一な膜厚の透過膜を形成することができる。
【0047】
以下、本発明についてその実施例を挙げ、さらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、得られた膜の可視光透過率や日射透過率は、日立製作所(株)製の分光光度計U−4000を用いて測定した。また、ヘイズ値は、村上色彩技術研究所(株)製HR−200を用いて測定した。膜評価においては線径の異なる3種のバ−コ−タ−で膜厚が異なる3種類の膜を成膜し、得られた3種類の膜の3点プロットから可視光透過率84%のときの日射透過率およびヘイズ値を求めた。
【0048】
[実施例1]
濃度10wt%In(NO3)33H2O水溶液500g、濃度10wt%SnCl455H2O水溶液30.4g(Sn5原子%相当)およびReO3換算で濃度60wt%の過レニウム酸水溶液0.35g(Re0.9原子%相当)を混合した原料混合溶液に、20℃制御下で攪拌しながら濃度15wt%NH4HCO3水溶液259gを25分かけて滴下し、滴下後さらに10分間攪拌して熟成し共沈沈殿物を得た。得られた共沈沈殿物に対し、デカンテ−ションにて一回につき700mlのイオン交換水での洗浄を繰り返し行い、その後105℃で乾燥し、インジウム、錫、レニウム水酸化物を得た。
【0049】
得られたインジウム、錫、レニウム水酸化物の乾燥物へ粉砕処理を施し、その25gを500mlのセパラブルフラスコに投入し、攪拌しながらN2ガスをキャリアとした9%H2ガスを供給しながら加熱し、280℃の温度で4.5時間攪拌しながら還元処理することによって日射遮蔽材料の微粒子を得た。
【0050】
日射遮蔽材料の微粒子20重量%、メチルイソブチルケトン63.3重量%、分散剤16.7重量%を、充填率63%相当の0.3mmジルコニアビ−ズを入れたペイントシェ−カ−で18時間分散し分散液とした。そして、該分散液67.5重量%と、バインダ−としてメチルイソブチルケトンに溶解したアクリル樹脂溶液27.5重量%と、硬化剤5重量%とを混合して日射遮蔽膜形成用塗布液を得た。
【0051】
得られた日射遮蔽膜形成用塗布液を、番手40,24,6のバ−を用いて、それぞれ100mm×100mm×3mmのソ−ダライムガラス基板に塗布した後、180℃で1時間焼成して日射遮蔽膜aを得た。膜aの日射透過率は57.9%、ヘイズ値は0.40%であった。この結果を、本発明に係る日射遮蔽材料の粒径および日射遮蔽膜の光学特性一覧表である図2に示す。
【0052】
[実施例2〜実施例3]
インジウム、錫、レニウム水酸化物の乾燥物より日射遮蔽材料の微粒子を得る際の加熱処理温度を325℃とした以外は、実施例1と同様にして日射遮蔽材料を製造し、日射遮蔽膜b(実施例2)を得た。また、同様に、加熱処理温度を350℃とした以外は実施例1と同様にして日射遮蔽材料を製造し、日射遮蔽膜c(実施例3)を得た。
【0053】
成膜された膜b、膜cに対し、膜aと同様に日射透過率およびヘイズ値を測定した。その結果、実施例2の膜b、実施例3の膜cの日射透過率はいずれも58%未満であり、ヘイズ値は1%未満であった。この結果を図2に示す。
【0054】
[比較例1〜比較例2]
共沈沈殿物を調製する際、過レニウム酸水溶液を添加しない以外は、実施例1と同様に日射遮蔽材料を製造し、日射遮蔽膜d(比較例1)を得た。
また、原料混合溶液を60℃に保持して共沈させた以外は、実施例1と同様にして日射遮蔽材料を製造し、日射遮蔽膜e(比較例2)を得た。
【0055】
成膜された膜d、膜eに対し、膜aと同様に日射透過率およびヘイズ値を測定した。その結果、比較例の膜d、膜eは、ヘイズ値は1%未満であるものの実施例に比較して高く、また、日射透過率はいずれも60%以上となった。この結果を図2に示す。
【0056】
また、代表的な膜の透過プロファイルとして、実施例1の膜a、および比較例1の膜dのプロファイルを図3に示す。図3は、縦軸に光の透過率を採り、横軸に透過する光の波長を採ったグラフである。この図3に示すプロファイルから明らかなように、膜aは、膜dに比べ、より近赤外域を遮蔽していることが明らかである。
【0057】
【発明の効果】
本発明に係る、錫化合物とインジウム化合物とレニウム化合物とを含有する溶液を50℃以下に保持しながら攪拌し、前記溶液へ、アルカリ溶液を滴下時間30分未満で滴下し、その後も攪拌を続けて沈殿物を得る工程と、
前記沈澱物を洗浄した後、乾燥して、インジウムと錫とレニウムとの水酸化物を得る工程と、
前記水酸化物を、還元性ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気下において攪拌しながら加熱処理する工程とを具備する日射遮蔽材料の製造方法によれば、可視光領域においては高い透過率を持つとともに、可視光領域により近い近赤外域においては低い日射透過率を持ち、かつヘイズ値が低い日射遮蔽膜を形成することができる日射遮蔽材料を製造することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る日射遮蔽材料の製造方法を示すフロー図である
【図2】本発明に係る日射遮蔽材料の粒径および日射遮蔽膜の光学特性一覧表である。
【図3】本発明に係る日射遮蔽膜の透過プロファイルの一例である。
【発明の属する技術分野】
本発明は車両、ビル、事務所、一般住宅などの窓、電話ボックス、ショ−ウィンド−、照明用ランプ、透明ケ−スなど、ガラス、プラスチックスその他の、日射遮蔽機能を必要とする透明基材に適用される日射遮蔽材料に係り、特に、可視光透過率が80%以上の高い領域においても、日射透過率が低くしかもヘイズ値の低い日射遮蔽膜と、この日射遮蔽膜の形成を可能とする日射遮蔽材料およびその製造方法と、この日射遮蔽材料を用いた塗布液とに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
太陽光や電球などの外部光源から熱成分を除去・減少する方法として、従来、熱効果に大きく寄与する赤外線を反射する材料を、膜としてガラス表面に形成して、これを熱線反射ガラスとすることが行われていた。そして、赤外線を反射する材料として、FeOx、CoOx、CrOx、TiOxなどの金属酸化物や、Ag、Au、Cu、Ni、Alなどの自由電子を多量にもつ金属材料が選択されてきた。
【0003】
しかし、これらの金属酸化物や金属材料では、赤外線以外に可視光も同時に反射もしくは吸収する性質があるため、これらの材料の膜が形成された熱線反射ガラスを用いると、可視光透過率が低下する問題があった。ところが、建材、乗り物、電話ボックスなどに用いられる透明基材では可視光領域の高い透過率が必要とされることから、上記材料を利用する場合は、その膜厚を非常に薄くしなければならない。このため、スプレ−焼付けやCVD法、あるいはスパッタ法や真空蒸着法などの物理成膜法を用いて、10nmレベルの薄膜として成膜することが通常行われてきた。
【0004】
しかしながら、これらの成膜方法は、大がかりな装置や真空設備を必要とし、生産性や成膜面積の大面積化に問題があり、膜の製造コストが高くなるといった課題がある。また、これらの材料を用いて日射遮蔽特性(波長域300〜2100nmの光を遮蔽する特性)を向上させようとすると、可視光領域の反射率も同時に高くなってしまう傾向がある。このため、これらの材料を成膜された熱線反射ガラスは、鏡のようなギラギラした外観を与えて美観を損ねてしまう。さらに、これらの材料は、膜の導電性が高いものが多く、膜の導電性が高いと携帯電話やTV、ラジオなどの電波を反射して、受信不能になったり、周辺地域に電波障害を引き起こすなどの課題もある。
【0005】
このような、従来の熱線反射膜の課題を改善するには、膜の物理特性として、可視光領域の光の透過率が高くて、赤外線領域の反射率が高く、かつ膜の表面抵抗が概ね106Ω/□以上となる膜を形成する必要がある。
【0006】
ここで、可視光透過率が高くしかも優れた日射遮蔽機能を持つ材料の一つとしてインジウム錫酸化物(以下、ITOと記載する。)が知られている。そして、この日射遮蔽機能を有するITOを得る方法として、一般的にはインジウム塩と錫塩の混合水溶液に沈澱剤を添加して共沈させ、この沈澱物を乾燥焼成する方法が知られている。
【0007】
さらに、例えば、特許文献1には、ITO粉末をさらに加圧不活性ガス中で熱処理する方法が開示され、特許文献2には、ITO粉末をアルコ−ル雰囲気下で加熱処理する方法が開示され、特許文献3には、錫塩とインジウム塩との溶液を30℃以下に保持し、アルカリ水溶液を、反応系のpHが最終的に5.0〜9.0となるように0.5〜12時間の添加時間をもって添加し、得られた水和物を不活性ガス雰囲気下あるいは還元性ガス雰囲気下で加熱処理する方法等が開示されている。
【0008】
しかしながら、これらの方法で得られたITO粉末を用いて形成した膜では、80%以上の高い可視光透過率を維持しつつ、60%未満の低い日射透過率を発揮し、かつ1%を下回るような低ヘイズ値を満たすことは、未だ実現されておらず、さらには生産性の点でも十分満足すべきものではない。
尚、上記ヘイズ値とは、全透過光に対する拡散透過光の割合であり、この値が高いと人間の目には曇って見える。したがって、透明性を要求される窓材、特により透明性を必要とする車両用途では、1%を下回るヘイズ値の膜が望まれている。
【0009】
【特許文献1】
特開平7−69632号公報
【特許文献2】
特開平5−24837号公報
【特許文献3】
特開平10−120946号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の課題とするところは、可視光領域においては高い透過率を持つとともに、可視光領域により近い近赤外域においては日射透過率が低く、しかもヘイズ値が低い日射遮蔽膜を形成することができる日射遮蔽材料の製造方法、当該製造方法により製造された日射遮蔽材料、当該日射遮蔽材料を含有し簡便な塗布法で日射遮蔽膜を形成できる日射遮蔽膜形成用塗布液、および当該日射遮蔽材料を用いた日射遮蔽膜を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の構成を有する。
(構成1)錫化合物とインジウム化合物とレニウム化合物とを含有する50℃以下に保持しながら攪拌し、前記溶液へ、アルカリ溶液を滴下時間30分未満で滴下し、その後も攪拌を続けて沈殿物を得る工程と、
前記沈澱物を洗浄した後、乾燥して、インジウムと錫とレニウムとの水酸化物を得る工程と、
前記水酸化物を、還元性ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気下において攪拌しながら加熱処理する工程とを具備することを特徴とする日射遮蔽材料の製造方法である。
【0012】
上述の製造方法によれば、可視光領域においては高い透過率を持つとともに、可視光領域により近い近赤外域においては、強いプラズマ吸収を発現して低い日射透過率を持ち、且つ熱線遮蔽に好ましい粒径を有し、日射遮蔽膜中に高度に分散することのできる日射遮蔽材料を製造することができる。
【0013】
(構成2)構成1に記載の製造方法で製造されたことを特徴とする日射遮蔽材料である。
【0014】
(構成3)構成2に記載の日射遮蔽材料であって、
錫と、インジウムと、レニウムとを含有する粉体であり、
L*a*b*表色系による、L*が52〜80、a*が−10〜−0.1、b*が−14〜20である粉体色を有し、
前記粉体の比表面積が50m2/g以上であることを特徴とする日射遮蔽材料である。
【0015】
上述の構成を有する日射遮蔽材料は、可視光領域においては高い透過率を持つとともに、可視光領域により近い近赤外域においては、強いプラズマ吸収を発現して低い日射透過率を持ち、且つ熱線遮蔽に好ましい粒径を有し、日射遮蔽膜中に高度に分散することができるため、可視光領域においては高い透過率を持つとともに、可視光領域により近い近赤外域においては低い日射透過率を持ち、かつヘイズ値が低い日射遮蔽膜を形成することができる。
【0016】
(構成4)構成2または構成3に記載の日射遮蔽材料が、溶媒中に分散されていることを特徴とする日射遮蔽膜形成用塗布液である。
【0017】
(構成5)構成4に記載の日射遮蔽膜形成用塗布液であって、無機バインダ−および/または樹脂バインダ−が含まれていることを特徴とする日射遮蔽膜形成用塗布液である。
【0018】
(構成6)構成2または構成3に記載の日射遮蔽材料を、含有することを特徴とする日射遮蔽膜である。
【0019】
(構成7)構成6に記載の日射遮蔽膜であって、
前記日射遮蔽膜の可視光透過率が80%以上のとき、波長域300〜2100nmにおける日射透過率が60%未満で、ヘイズ値が1%未満であることを特徴とする日射遮蔽膜である。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
(日射遮蔽材料)
図1は、本発明に係る日射遮蔽材料の製造方法を示すフロー図である。
図1に示すように、本発明に係る日射遮蔽材料の製造方法は、錫化合物1、インジウム化合物2およびレニウム化合物3を混合11して調製し、かつ50℃以下に保持された原料混合溶液4を攪拌12しつつ、アルカリ溶液5を滴下時間30分未満の条件で滴下13し熟成14させて共沈沈殿物6を得る工程と、上記沈澱物6を、例えばデカンテ−ションにより洗浄15した後、乾燥16してインジウムと錫とレニウムの水酸化物7を得る工程と、該水酸化物7を還元性ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気8下において攪拌17しながら加熱18処理する工程を具備することを特徴とするものである。
【0021】
ここで、本発明において適用されるインジウム化合物2、錫化合物1およびレニウム化合物3は、特に限定されるものでなく、例えば硝酸インジウム、塩化インジウム、塩化錫、硝酸錫、七酸化レニウム、過レニウム酸水溶液、レニウムオキシ酸、過レニウム酸アンモニウム、塩化レニウム酸などが挙げられる。
【0022】
インジウム化合物2、錫化合物1およびレニウム化合物3の構成において、元素換算での錫含有量は1〜12原子%未満が好ましく、より好ましくは3〜8原子%で、元素換算でのレニウム含有量は0.5〜10原子%以下が好ましく、より好ましくは1〜5原子%である。錫含有量、レニウム含有量がこの範囲にあると、可視光透過率が80%以上の高い領域でも、日射透過率が低くしかもヘイズ値の低い日射遮蔽膜を得ることができる。
【0023】
次に、本発明で用いるアルカリ溶液5も特に限定されず、例えば、炭酸水素アンモニウム、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、などの各水溶液が挙げられる。アルカリ溶液の濃度は、各原料化合物塩が水酸化物となるのに必要な化学当量以上、好ましくはアルカリ残留による洗浄時間の観点から当量〜1.5倍過剰量とする。
【0024】
このときの原料混合溶液4の温度は、50℃以下とすることが好ましい。温度下限は、得られる共沈沈澱物6微粒子の特性の観点より、特に限定されないが、低すぎると新たに冷却装置などが必要になってくることから、そのような装置を要しない温度とすることが好ましい。他方、50℃を超えない範囲であれば共沈沈殿物6の粒成長が所定の範囲に入り、日射遮蔽材料9へ所望の光学特性を付与することが出来るためである。
【0025】
アルカリ溶液5の滴下13の時間は、共沈沈殿物6の粒子の微細化および生産性の観点から30分未満であることが好ましく、さらに好ましくは25分以下とする。
滴下13の時間と共沈沈殿物6の粒子径には以下の関係がある。即ち、滴下時間が長い場合は、過飽和度が下がらないため(=生成する核の数が少ない)沈殿生成速度は遅くなり、粒子成長が主反応となるため共沈沈殿物6の粒子径は大きくなる。他方、滴下時間が短い場合は、過飽和度がすぐに下がるため(=生成する核の数が多い)沈殿生成速度は早くなり、核生成が主反応となるため共沈沈殿物6の粒子径は小さくなる。この関係より、滴下時間が30分以下であると、共沈沈殿物6の粒子径が大きくなり過ぎるのを回避できると供に、沈殿生成速度が速いのでコンパクトな設備でも生産量を確保できる。
【0026】
滴下13終了後、系内の均一化を図るために継続的に攪拌12しながら熟成14を行うが、そのときの温度は共沈温度と同温以下とし、攪拌12・熟成14は30分以下が好ましく、さらに好ましくは15分以下、最も好ましくは10分以下とする。これは、微少な粒子が分散している系において、より小さな粒子が減少・消滅して、より大きな粒子が成長する現象(オストワルド成長と呼ばれている。)が知られているが、上述の条件は、この大きな粒子が成長する現象が起こらない条件を選定し、共沈沈殿物6の粒子の微粒子化を図っているものである。
さらに、攪拌12・熟成14の時間を短くすることは、生産性の観点からも好ましい。
【0027】
次に、熟成14させて得られた共沈沈澱物6はデカンテ−ションによって十分洗浄15した後、乾燥16する。共沈沈澱物6の微粒子中に残留する塩素イオン、硝酸イオン、硫酸イオンなどの不純物は、後工程において還元阻害因子となる。このため、洗浄15によって、残留不純物量を好ましくは1.5重量%以下、より好ましくは0.2重量%以下とする。乾燥16の温度や時間は特に限定されるものではない。
【0028】
乾燥16の処理を終えて、インジウムと錫とレニウムの水酸化物7を得る。得られた、乾燥状態のインジウムと錫とレニウムの水酸化物7は、比表面積100m2/gを有する。
このインジウムと錫とレニウムの水酸化物7に対し、還元処理を施して、特定の粉体色、すなわち国際照明委員会(CIE)が推奨しているL*a*b*表色系(JIS Z8729)における粉体色L*が52〜80、a*が−10〜−0.1、b*が−14〜20を持つように調製する。
【0029】
インジウムと錫とレニウムの水酸化物7へ、上述の粉体色を付与するための処理は、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス単独またはこれらの混合ガスと、水素ガス等の還元性ガスとの混合ガス8を供給し、インジウムと錫とレニウムの水酸化物7を攪拌17しながら、加熱18することで行う。この攪拌は、例えば、攪拌羽根を有する回転攪拌機等が好適に用いられる。
この時の処理温度は、所望とする光学特性および生産効率の観点から、下限は200℃以上が好ましい。一方、上限は400℃以下が好ましい。200℃〜400℃の範囲においては、適宜な反応速度と粒成長を達成することができ、光学特性および生産効率の観点から好ましい。このときの還元時間は、処理温度に応じて、上述した粉体色となるよう適宜選択すればよい。
こうして本発明に係る日射遮蔽材料9を得る。得られた日射遮蔽材料9は、比表面積50m2/g以上を有し、(1)式より算出した平均一次粒径は16.7nm以下となった。
d=6/ρ×SA……(1)
(dは平均一次粒子径、ρは密度、SAは比表面積である。)
【0030】
ここで、日射遮蔽材料が熱線を遮蔽する面積は次式で表され、遮蔽面積は、日射遮蔽材料の粒子径に反比例して増加する。
A=πr2Mρ/4/3πr3……(2)
(Aは遮蔽面積、Mは微粒子重量、ρは比重、rは粒子半径である。)
式(2)より、上述の製造方法で得られる本発明に係る日射遮蔽材料は、熱線遮蔽に好ましい粒径を有していることが判明した。
【0031】
上述の製造方法によれば、錫化合物およびインジウム化合物へ、さらに可視光領域に選択的透過性を示し、近赤外領域から長波長側では伝導電子のプラズモンによる光吸収特性を有するレニウム化合物を添加し、これらを共沈させる条件、共沈沈殿物を乾燥して得た乾燥粉を還元処理する際の最適条件を見出した。この結果、日射遮蔽膜中に高度に分散することができ、可視光領域においては高い透過率を持つとともに、可視光領域により近い近赤外域においては、強いプラズマ吸収を発現して低い日射透過率を持ち、かつヘイズ値が低い日射遮蔽膜を形成することができる日射遮蔽材料を製造することができた。
【0032】
また、日射遮蔽材料9の粉体色は、粉体中の自由電子密度と相関しているものと考えられる。そして粉体中の自由電子密度と、この粉体がプラズマ吸収を発現する帯域とは相関していることから、日射遮蔽材料9の粉体色と、当該粉体が発現するプラズマ吸収帯域とは相関していると考えられる。この仮説を基に、日射遮蔽材料9の粉体色と、これから形成された日射遮蔽膜の日射透過率とを研究した結果、L*が52〜80、a*が−10〜−0.1、b*が−14〜20を有すると、上述した所望の特性を発揮することが判明した。そこで、インジウムと錫とレニウムの水酸化物7に対し還元処理を施して、上述の粉体色を持つ日射遮蔽材料9を調製したものである。
【0033】
(日射遮蔽膜形成用塗布液)
本発明に係る日射遮蔽膜形成用塗布液(以下、塗布液と記載する。)は、上記日射遮蔽材料を溶媒中に分散したものであるが、溶媒は特に限定されるものではなく、塗布条件、塗布環境に合わせて適宜選択する。また、後述するように、塗布液中へ無機バインダ−や樹脂バインダ−を含有させたときは、これらに合わせて適宜選択する。
具体例としては、水やエタノ−ル、プロパノ−ル、ブタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、イソブチルアルコ−ル、ジアセトンアルコ−ルなどのアルコ−ル類、メチルエ−テル,エチルエ−テル,プロピルエ−テルなどのエ−テル類、エステル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、イソブチルケトンなどのケトン類といった、各種の溶媒が使用可能であり、また必要に応じて酸やアルカリを添加してpH調整してもよい。さらに、塗布液中の微粒子の分散安定性を向上させるため各種の界面活性剤、カップリング剤などの添加も勿論可能である。
【0034】
また、必要に応じて配合される無機バインダ−や樹脂バインダ−について、その種類は特に限定されるものではない。例えば、無機バインダ−としては、珪素、ジルコニウム、チタン、もしくはアルミニウムの金属アルコキシドやこれらの部分加水分解縮重合物あるいはオルガノシラザンが利用でき、樹脂バインダ−として、アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂などが利用できる。
【0035】
日射遮蔽材料の溶媒への分散方法は、均一に分散した塗布液が製造される方法であれば特に限定されず、例えば、ビ−ズミル、ボ−ルミル、サンドミル、ペイントシェ−カ−、超音波ホモジナイザ−などが挙げられる。
【0036】
(日射遮蔽膜)
この塗布液を用いて日射遮蔽膜を形成したとき、形成された膜の導電特性および光学特性について説明する。
【0037】
本発明に係る日射遮蔽膜の導電性は、インジウム錫レニウム酸化物微粒子の接触個所を経由した導電パスに沿ってなされるため、例えば、上述した界面活性剤やカップリング剤の添加量を加減することで、導電パスを部分的に切断することができ、膜の導電性を、106Ω/□以上の表面抵抗値へ低下させることは容易である。また、無機バインダ−、あるいは樹脂バインダ−の含有量の加減によっても導電性を制御できる。
【0038】
次に、本発明に係る日射遮蔽膜は、透明基板上に上記インジウム錫レニウム酸化物微粒子を高密度に堆積させて膜形成されたものであるが、塗布液中に樹脂バインダ−または無機バインダ−を含有させることで、塗布硬化後にインジウム錫レニウム酸化物微粒子の基材への密着性を向上させ、さらに膜の硬度を向上させる効果を得ることができる。
【0039】
そして、このようにして得られた膜上に、さらに珪素、ジルコニウム、チタン、もしくはアルミニウムの金属アルコキシド、これらの部分加水分解縮重合物からなる被膜を第2層として被着して、180℃程度の温度で10〜30分加熱する。このようにして、珪素、ジルコニウム、チタン、もしくはアルミニウムの酸化物膜を形成することで、インジウム錫レニウム酸化物微粒子を主成分とする日射遮蔽膜の基材への結着力や膜の硬度、耐候性を一層向上させることができる。
【0040】
一方、塗布液中に樹脂バインダ−または無機バインダ−を含まない場合に得られる日射遮蔽膜は、基材上に上述したインジウム錫レニウム酸化物微粒子のみが堆積した膜構造になる。この膜は、勿論このままでも日射遮蔽効果を示すが、この膜上にさらに珪素、ジルコニウム、チタン、もしくはアルミニウムの金属アルコキシドやこれらの部分加水分解縮重合物などの無機バインダ−、または樹脂バインダ−を含む塗布液を塗布して被膜を形成し、多層膜とするとよい。このように日射遮蔽膜を多層構造とすることにより、塗布液成分が第1層のインジウム錫レニウム酸化物微粒子の堆積した間隙を埋めて成膜されるため、膜のヘイズが低減して可視光透過率が向上し、また微粒子の基材への結着性が向上する。
【0041】
また、本発明に係る塗布液およびバインダ−を含有する塗布液の塗布方法は、特に限定されず、例えば、スピンコ−ト法、バ−コ−ト法、スプレ−コ−ト法、ディップコ−ト法、スクリ−ン印刷法、ロ−ルコ−ト法、流し塗りなど、処理液を平坦かつ薄く均一に塗布できる方法であればいずれの方法でもよい。
【0042】
無機バインダ−として珪素、ジルコニウム、チタン、もしくはアルミニウムの金属アルコキシドおよびその加水分解重合物を含む塗布液を、塗布する場合、塗布後の基材の加熱温度を、100℃以上とすることが好ましく、さらに好ましくは塗布液中の溶媒の沸点以上に加熱することが好ましい。100℃以上に加熱することで、塗膜中に含まれるアルコキシドまたはその加水分解重合物の重合反応を殆ど完結させることができ、また水や有機溶媒が膜中に残留することを抑制し加熱後における、膜の可視光透過率の低下を回避することができるからである。
【0043】
他方、樹脂バインダ−を使用した場合は、それぞれの硬化方法に従って硬化させればよい。例えば、紫外線硬化樹脂であれば紫外線を適宜照射すればよく、また常温硬化樹脂であれば塗布後そのまま放置しておけばよい。このため、既存の窓ガラスなどへの現場での塗布が可能である。
【0044】
本発明に係る日射遮蔽膜では、インジウム錫レニウム酸化物微粒子が分散しているため、物理成膜法により製造された酸化物薄膜のような、結晶が緻密に膜内を埋めた状態を有し鏡面状表面をもつ膜に比べると、可視光領域での反射が少なく、ギラギラした外観を呈することが回避できる。その一方で、可視から近赤外域にプラズマ周波数をもつため、これに伴うプラズマ吸収が近赤外域で大きくなる。さらに可視光領域の反射を抑制したい場合には、インジウム錫レニウム酸化物微粒子分散膜の上に、SiO2やMgF2のような低屈折率の膜を成膜することにより、容易に視感反射率1%以下の多層膜を得ることができる。
【0045】
本発明に係る日射遮蔽材料、塗布液並びに日射遮蔽膜のさらなる紫外線遮蔽機能を付与させるため、無機系の酸化チタンや酸化亜鉛、酸化セリウムなどの微粒子や、有機系のベンゾフェノンやベンゾトリアゾ−ルなどの1種もしくは2種以上を添加してもよい。
【0046】
上記のように、本発明によれば、日射遮蔽効果を有する塗布膜製造が可能であり、インジウム錫レニウム酸化物微粒子は無機材料であるので有機材料と比べて耐候性は非常に高く、例えば太陽光線(紫外線)の当たる部位に使用しても色や諸機能の劣化はほとんど生じない。また、本発明に係る塗布液は、焼成時の熱によって塗布成分の分解あるいは化学反応を利用して目的の日射遮蔽膜を形成するものではないため、特性の安定した均一な膜厚の透過膜を形成することができる。
【0047】
以下、本発明についてその実施例を挙げ、さらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、得られた膜の可視光透過率や日射透過率は、日立製作所(株)製の分光光度計U−4000を用いて測定した。また、ヘイズ値は、村上色彩技術研究所(株)製HR−200を用いて測定した。膜評価においては線径の異なる3種のバ−コ−タ−で膜厚が異なる3種類の膜を成膜し、得られた3種類の膜の3点プロットから可視光透過率84%のときの日射透過率およびヘイズ値を求めた。
【0048】
[実施例1]
濃度10wt%In(NO3)33H2O水溶液500g、濃度10wt%SnCl455H2O水溶液30.4g(Sn5原子%相当)およびReO3換算で濃度60wt%の過レニウム酸水溶液0.35g(Re0.9原子%相当)を混合した原料混合溶液に、20℃制御下で攪拌しながら濃度15wt%NH4HCO3水溶液259gを25分かけて滴下し、滴下後さらに10分間攪拌して熟成し共沈沈殿物を得た。得られた共沈沈殿物に対し、デカンテ−ションにて一回につき700mlのイオン交換水での洗浄を繰り返し行い、その後105℃で乾燥し、インジウム、錫、レニウム水酸化物を得た。
【0049】
得られたインジウム、錫、レニウム水酸化物の乾燥物へ粉砕処理を施し、その25gを500mlのセパラブルフラスコに投入し、攪拌しながらN2ガスをキャリアとした9%H2ガスを供給しながら加熱し、280℃の温度で4.5時間攪拌しながら還元処理することによって日射遮蔽材料の微粒子を得た。
【0050】
日射遮蔽材料の微粒子20重量%、メチルイソブチルケトン63.3重量%、分散剤16.7重量%を、充填率63%相当の0.3mmジルコニアビ−ズを入れたペイントシェ−カ−で18時間分散し分散液とした。そして、該分散液67.5重量%と、バインダ−としてメチルイソブチルケトンに溶解したアクリル樹脂溶液27.5重量%と、硬化剤5重量%とを混合して日射遮蔽膜形成用塗布液を得た。
【0051】
得られた日射遮蔽膜形成用塗布液を、番手40,24,6のバ−を用いて、それぞれ100mm×100mm×3mmのソ−ダライムガラス基板に塗布した後、180℃で1時間焼成して日射遮蔽膜aを得た。膜aの日射透過率は57.9%、ヘイズ値は0.40%であった。この結果を、本発明に係る日射遮蔽材料の粒径および日射遮蔽膜の光学特性一覧表である図2に示す。
【0052】
[実施例2〜実施例3]
インジウム、錫、レニウム水酸化物の乾燥物より日射遮蔽材料の微粒子を得る際の加熱処理温度を325℃とした以外は、実施例1と同様にして日射遮蔽材料を製造し、日射遮蔽膜b(実施例2)を得た。また、同様に、加熱処理温度を350℃とした以外は実施例1と同様にして日射遮蔽材料を製造し、日射遮蔽膜c(実施例3)を得た。
【0053】
成膜された膜b、膜cに対し、膜aと同様に日射透過率およびヘイズ値を測定した。その結果、実施例2の膜b、実施例3の膜cの日射透過率はいずれも58%未満であり、ヘイズ値は1%未満であった。この結果を図2に示す。
【0054】
[比較例1〜比較例2]
共沈沈殿物を調製する際、過レニウム酸水溶液を添加しない以外は、実施例1と同様に日射遮蔽材料を製造し、日射遮蔽膜d(比較例1)を得た。
また、原料混合溶液を60℃に保持して共沈させた以外は、実施例1と同様にして日射遮蔽材料を製造し、日射遮蔽膜e(比較例2)を得た。
【0055】
成膜された膜d、膜eに対し、膜aと同様に日射透過率およびヘイズ値を測定した。その結果、比較例の膜d、膜eは、ヘイズ値は1%未満であるものの実施例に比較して高く、また、日射透過率はいずれも60%以上となった。この結果を図2に示す。
【0056】
また、代表的な膜の透過プロファイルとして、実施例1の膜a、および比較例1の膜dのプロファイルを図3に示す。図3は、縦軸に光の透過率を採り、横軸に透過する光の波長を採ったグラフである。この図3に示すプロファイルから明らかなように、膜aは、膜dに比べ、より近赤外域を遮蔽していることが明らかである。
【0057】
【発明の効果】
本発明に係る、錫化合物とインジウム化合物とレニウム化合物とを含有する溶液を50℃以下に保持しながら攪拌し、前記溶液へ、アルカリ溶液を滴下時間30分未満で滴下し、その後も攪拌を続けて沈殿物を得る工程と、
前記沈澱物を洗浄した後、乾燥して、インジウムと錫とレニウムとの水酸化物を得る工程と、
前記水酸化物を、還元性ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気下において攪拌しながら加熱処理する工程とを具備する日射遮蔽材料の製造方法によれば、可視光領域においては高い透過率を持つとともに、可視光領域により近い近赤外域においては低い日射透過率を持ち、かつヘイズ値が低い日射遮蔽膜を形成することができる日射遮蔽材料を製造することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る日射遮蔽材料の製造方法を示すフロー図である
【図2】本発明に係る日射遮蔽材料の粒径および日射遮蔽膜の光学特性一覧表である。
【図3】本発明に係る日射遮蔽膜の透過プロファイルの一例である。
Claims (7)
- 錫化合物とインジウム化合物とレニウム化合物とを含有する溶液を50℃以下に保持しながら攪拌し、前記溶液へ、アルカリ溶液を滴下時間30分未満で滴下し、その後も攪拌を続けて沈殿物を得る工程と、
前記沈澱物を洗浄した後、乾燥して、インジウムと錫とレニウムとの水酸化物を得る工程と、
前記水酸化物を、還元性ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気下において攪拌しながら加熱処理する工程とを具備することを特徴とする日射遮蔽材料の製造方法。 - 請求項1に記載の製造方法で製造されたことを特徴とする日射遮蔽材料。
- 請求項2に記載の日射遮蔽材料であって、
錫と、インジウムと、レニウムとを含有する粉体であり、
L*a*b*表色系による、L*が52〜80、a*が−10〜−0.1、b*が−14〜20である粉体色を有し、
前記粉体の比表面積が50m2/g以上であることを特徴とする日射遮蔽材料。 - 請求項2または3に記載の日射遮蔽材料が、溶媒中に分散されていることを特徴とする日射遮蔽膜形成用塗布液。
- 請求項4に記載の日射遮蔽膜形成用塗布液であって、無機バインダ−および/または樹脂バインダ−が含まれていることを特徴とする日射遮蔽膜形成用塗布液。
- 請求項2または3に記載の日射遮蔽材料を、含有することを特徴とする日射遮蔽膜。
- 請求項6に記載の日射遮蔽膜であって、
前記日射遮蔽膜の可視光透過率が80%以上のとき、波長域300〜2100nmにおける日射透過率が60%未満で、ヘイズ値が1%未満であることを特徴とする日射遮蔽膜。
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