JP2004276427A - 記録媒体用ポリエステルフィルム、その製造方法、及び磁気記録テープ - Google Patents
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Abstract
【課題】ドロップアウトが極めて少なく耐久性に優れたDVCAM等の業務用磁気テープを製造するために好適な記録媒体用ポリエステルフィルムを提供する。さらに、その製造方法を提供する。
【解決手段】ポリエステルフィルムの片側表面に、微細粒子と有機化合物を含有する被膜が形成されてなる記録媒体用ポリエステルフィルムであって、被膜側の表面がデータ記録材薄膜が形成される面であり、被膜の表面における微細表面突起の直径が5〜60nm、微細表面突起の個数が300万〜1億個/mm2 、表面粗さRa値が0.5〜3.0nm、かつ、幅15μm以上の広がりの砂状集合表面付着異物の個数が1個/20m2 以下である。その製造時には、チタン化合物をチタン原子換算で2〜6ppm等の特定のポリエステルを用い、長手方向への延伸時の延伸ロールの表面を2〜8時間毎に純水含浸無塵布で清掃する。
【選択図】 なし
【解決手段】ポリエステルフィルムの片側表面に、微細粒子と有機化合物を含有する被膜が形成されてなる記録媒体用ポリエステルフィルムであって、被膜側の表面がデータ記録材薄膜が形成される面であり、被膜の表面における微細表面突起の直径が5〜60nm、微細表面突起の個数が300万〜1億個/mm2 、表面粗さRa値が0.5〜3.0nm、かつ、幅15μm以上の広がりの砂状集合表面付着異物の個数が1個/20m2 以下である。その製造時には、チタン化合物をチタン原子換算で2〜6ppm等の特定のポリエステルを用い、長手方向への延伸時の延伸ロールの表面を2〜8時間毎に純水含浸無塵布で清掃する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録媒体用ポリエステルフィルム、特に、デジタルビデオカセットテープ用、データストレージテープ用等のデジタルデータを記録する強磁性金属薄膜型磁気記録媒体の長時間にわたる画質の向上、エラーレートの低減のために好適な記録媒体用ポリエステルフィルム、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
1995年に実用化された家庭用デジタルビデオテープは厚さ6〜7μmのベースフィルムの片側表面上に、Coの金属磁性薄膜を真空蒸着により設け、その表面にダイヤモンド状カーボン膜をコーティングしてなり、DVミニカセットを使用したカメラ一体型ビデオの場合には基本仕様(SD仕様)で1時間の録画時間をもつ。
【0003】
このデジタルビデオカセット(DVC)は、家庭用で世界で初のデジタルビデオカセットであり、a.小型ボディながら、膨大な情報が記録できる、b.信号が劣化しないから、何年たっても画質・音質が劣化しない、c.雑音の妨害を受けないから高画質・高音質が楽しめる、d.ダビングを繰り返しても映像が劣化しない、等のメリットを持ち、市場の評価は高い。
【0004】
また、この家庭用DVフォーマットをベースにして、蒸着型デジタルビデオテープを用いて、テープ走行速度を1.5倍に上げ、記録トラック幅をDVの10μmから15μmへと広幅化し、業務用途に要求される高画質、高信頼性を実現させた同一テープ幅(1/4インチ)のDVCAMフォーマットが1996年に開発された。DVCAMフォーマットは高画質・高音質で小型・軽量化を実現した業務用VTRとして、また優れたダビング特性、高品位の編集性能など、業務用途に優れ、企業、プロダクション、ケーブルテレビ、ビデオジャーナリストの間で極めて評価が高くなってきた。
【0005】
それらデジタルビデオテープのベースフィルムには、
▲1▼ポリエステルフィルムと、該フィルムの少なくとも片面に密着されたポリマーブレンド体と粒径50〜500Åの微細粒子を主体とした不連続皮膜とからなり、該不連続皮膜には水溶性ポリエステル共重合体が含有され、微細粒子により不連続皮膜上に微細突起が形成されたポリエステルフィルム(例えば特許文献1参照)、
▲2▼熱可塑性樹脂からなる層Aと、微粒子が含有された熱可塑性樹脂からなる層Bとが積層された複合フィルム(例えば特許文献2参照)、
等が使用されてきている。
【0006】
しかしながらこのようなベースフィルムでは、フィルム製造に使用するポリエステル内に異物が存在したり、製膜工程途中でフィルム表面に傷が入ったり、製膜工程途中で付着した表面コンタミ物等によって表面欠陥が生じたり、という問題が生じがちであり、該ベースフィルムより作製される磁気テープはドロップアウト(DO)が増加しがち、という問題があった。
【0007】
ドロップアウトの少ないDVCテープを安定的に製造可能な磁気記録媒体用ポリエステルフィルムを与える事を目的として、特許文献3において、ポリエステルフイルムの一方の片側表面Aに高さ10〜50nmの微細表面突起が300万〜9000万個/mm2 設けられ、その片側表面Aに存在する高さ50〜120nmの表面突起が4万個/mm2以下、高さ120nm以上の表面欠陥が400個/100cm2以下である磁気記録媒体用ポリエステルフィルムが提案されている。
【0008】
【特許文献1】特公昭63−57238号公報
【特許文献2】特公平1−26338号公報
【特許文献3】特開2000−25105号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようなベースフィルムから作製した磁気テープは、DVC用テープとして用いた場合にはドロップアウト(DO)が低下し1分間のDO個数はほぼ零個を達成できたが、DVCAM用途に用いた場合には、標準テープで3時間の記録が可能であるものの3時間の記録においてDOは10個程度発生しがちであった。業務用途に使用する場合、磁気テープ全長にわたりDOの発生の無いことが望ましく、DOを3時間に2個以内、好ましくは零個にする要求が強まっている。
【0010】
そこで本発明は、ドロップアウトの少ないDVCAM用蒸着型磁気テープを製造するために好適な記録媒体用ポリエステルフィルム、及びその製造方法を与える事を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するための本発明は以下の通りである。すなわち、
1. ポリエステルフィルムの片側表面に、微細粒子と有機化合物を含有する被膜が形成されてなる記録媒体用ポリエステルフィルムであって、該被膜側の表面がデータ記録材薄膜が形成される面であり、該被膜の表面における微細表面突起の直径が5〜60nm、微細表面突起の個数が300万〜1億個/mm2 、表面粗さRa値が0.5〜3.0nm、かつ、幅15μm以上の広がりの砂状集合表面付着異物の個数が1個/20m2 以下である記録媒体用ポリエステルフィルム、
2. ポリエステルが、チタン化合物をポリエステルに対するチタン原子換算で2〜6ppm含有し、アンチモン化合物の量がポリエステルに対するアンチモン原子換算で0〜2ppmであり、ゲルマニウム化合物の量がポリエステルに対するゲルマニウム原子換算で0〜2ppmである上記1に記載の記録媒体用ポリエステルフィルム、
3. ポリエステルが、さらにリン化合物をポリエステルに対するリン原子換算で0.2〜9ppm含有し、そのチタン化合物とリン化合物の比率が、原子換算の重量比率(Ti/P)で0.7〜10である上記2に記載の記録媒体用ポリエステルフィルム、
【0012】
4. ポリエステルがポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2、6−ナフタレートである上記1〜3のいずれかに記載の記録媒体用ポリエステルフィルム、
5. デジタル記録方式の磁気テープ用に用いられる上記1〜4のいずれかに記載の記録媒体用ポリエステルフィルム、
【0013】
6. ポリエステルを、溶融押出し、加熱された延伸ロールにより長手方向に延伸した後に、一方向に延伸されたポリエステルフイルムの片側表面に、水溶性高分子又は水分散性高分子と平均粒径5〜50nmの微細粒子とを主成分として含有する水系塗液を被膜形成用に固形分塗布濃度3〜100mg/m2 となる量で塗布した後に、乾燥した後あるいは乾燥させながら、横方向に延伸し、必要に応じて更なる延伸を必要な方向に施した後に熱処理を行うことにより、上記1〜5のいずれかに記載の記録媒体用ポリエステルフィルムを製造する方法であって、溶融押出しに供されるポリエステルが、チタン化合物をポリエステルに対するチタン原子換算で2〜6ppm含有し、リン化合物をポリエステルに対するリン原子換算で0.2〜9ppm含有し、アンチモン化合物の量がポリエステルに対するアンチモン原子換算で0〜2ppmであり、ゲルマニウム化合物の量がポリエステルに対するゲルマニウム原子換算で0〜2ppmであり、そのチタン化合物とリン化合物の比率が、原子換算の重量比率(Ti/P)で0.7〜10であるポリエステルであり、かつ、長手方向へフィルムを延伸する際、延伸ロールの表面を2〜8時間毎に1回の頻度で、純水を含浸させた無塵布で清掃することを特徴とする記録媒体用ポリエステルフィルムの製造方法、
7. 上記1〜5のいずれかに記載の記録媒体用ポリエステルフィルムの被膜表面上に強磁性金属薄膜層を設けてなる磁気記録テープ、
とするものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明におけるポリエステルとは、分子配向により高強度フィルムとなるポリエステルであればよいが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましい。即ち、その構成成分の80%以上がエチレンテレフタレート又はエチレンナフタレートであるポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましい。エチレンテレフタレート、エチレンナフタレート以外のポリエステル共重合体成分としては、例えばジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、p−キシリレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸成分、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能ジカルボン酸成分、p−オキシエトキシ安息香酸などが挙げられる。
【0015】
さらに、上記のポリエステルは、他にポリエステルと非反応性のスルホン酸のアルカリ金属塩誘導体、該ポリエステルに実質的に不溶なポリアルキレングリコールなどの少なくとも一つを5重量%を越えない程度に混合してもよい。
【0016】
本発明のポリエステルフィルムの片側表面Aには、微細粒子と有機化合物を含有する被膜が形成されており、該被膜表面に微細粒子による微細表面突起が存在し、その直径が5〜60nmであり、その個数が300万〜1億個/mm2、好ましくは500万〜8000万個/mm2 であり、表面粗さRa値が0.5〜3.0nmであり、かつ幅15μm以上の広がりの砂状集合表面付着異物の個数が1個/20m2 以下、好ましくは0.5個/20m2以下である。
【0017】
被膜表面の微細表面突起は、粒径が5〜50nmの微細粒子を有機化合物に含有させた被膜層を、ポリエステル表面に設けることにより形成することができる。その微細粒子の粒子種としては、ポリアクリル酸、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアクリル酸エステル、ポリメチルメタクリレート、ポリエポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、アクリル−スチレン共重合体、アクリル系共重合体、各種変成アクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、各種変成スチレン−ブタジエン共重合体等の有機化合物の粒子、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム等の無機粒子を核として、有機高分子で被覆した粒子等が使用できるが、これらに限定されない。その有機化合物としては末端基がエポキシ、アミン、カルボン酸、水酸基等で変成された自己架橋性のものが好ましい。なお微細粒子としてはシリカ、アルミナ等の無機粒子も使用できるが、有機粒子の方が、発現する表面突起の径に比べて突起高さが低くなり易いので好ましい。
【0018】
被膜層に使用される有機化合物としては、ポリビニルアルコール、トラガントゴム、カゼイン、ゼラチン、セルロース誘導体、水溶性ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、アクリル−ポリエステル樹脂、イソフタル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂等の有極性高分子これらのブレンド体が使用できるが、これらに限定されない。
【0019】
被膜表面の微細表面突起により、被膜表面上に真空蒸着により形成される強磁性金属薄膜層の記録・再生時の磁気ヘッドによる磨耗が少なくなる。微細表面突起の直径が5nmより小さいと、あるいは、その個数が300万個/mm2より少ないと、磁気テープの磁性層表面が平滑すぎて、強磁性金属薄膜層が平滑となりすぎて、磁気テープの磁気ヘッドとの走行耐久性が低下するので適していない。微細表面突起の直径が60nmより大きいと、あるいは、その個数が1億個/mm2 より多いと、磁気テープの磁性層表面が粗れすぎて磁気テープのドロップアウトが増加しがちとなり適していない。
【0020】
また、被膜表面のRa値は、その表面上に真空蒸着により形成される強磁性金属薄膜が記録・再生時に磁気ヘッドによって受ける磨耗を極力少なくし、磁気テープの出力特性を良好に保つために、0.5〜3.0nmとする。好ましくは1.0〜2.8nmである。Ra値が0.5nm未満であると、被膜表面上に真空蒸着により形成される強磁性金属薄膜層が平滑すぎて、ビデオカメラ内での録画、再生時に磁気ヘッドとの接触走行により磁気テープの強磁性金属薄膜が磨耗し易い。Ra値が5nmを超えると、強磁性金属薄膜層が粗面すぎて、磁気テープの出力特性が低下し易い。
【0021】
上記した微細表面突起の直径は、被膜中の微細粒子の種類、平均粒径、横延伸温度等を調整することにより調節できる。また、この微細表面突起の個数、表面粗さRa値は前記微細粒子の種類、平均粒径、固形分塗布濃度を調整することにより調節できる。
【0022】
さらに、本発明のポリエステルフィルムでは、被膜表面において、幅15μm以上の広がりの砂状集合表面付着異物の個数が1個/20m2以下であり、この個数がそれより大であるとDVCAM磁気テープのドロップアウトが増加する。
【0023】
この砂状集合表面付着異物の個数を上記水準とするためには、ポリエステル重合時の触媒に由来する異物量を減らすことが効果的であり、そのためには、フィルムを構成するポリエステル中には、チタン化合物がポリエステルに対するチタン原子換算で2〜6ppm含有され、アンチモン化合物の量がポリエステルに対するアンチモン原子換算で0〜2ppmであり、ゲルマニウム化合物の量がポリエステルに対するゲルマニウム原子換算で0〜2ppmであることが好ましい。さらに、リン化合物がポリエステルに対するリン原子換算で0.2〜9ppm含有され、そのチタン化合物とリン化合物の比率が、原子換算の重量比率(Ti/P)で0.7〜10であることが好ましい。
【0024】
このように、ポリエステル中のアンチモン、ゲルマニウムの含有量が零ないし極めて少なく、かつ、特定範囲内のチタンやリンが含有される場合、フィルム製造工程中のロール延伸工程、特に縦延伸工程においてフィルム表面へ異物系付着物が付着することを抑制できるので、その異物系付着物量に関係する砂状集合表面付着異物の個数を低減させることができる。
【0025】
このポリエステルは、重合時の触媒としてチタン化合物触媒を用いて重合されたものであって、その触媒残渣に由来するチタン化合物の量がポリエステルに対するチタン原子換算で2〜6ppmであることが好ましい。触媒残渣として含まれるチタン化合物の量は一般的に極力少ない方が好ましいが、チタン化合物触媒による触媒効果を発揮させるためにはある程度以上の触媒量が必要であるので、少なくするにも限度がある。即ち、ポリエステルに対するチタン原子換算で2ppm未満であるとポリエステルが重合される時の時間が長くなりすぎポリエステルが熱劣化しポリエステル内に熱劣化物が生成されやすくなり、表面AのRa値が3.0nmを上まわりやすくなる。逆に、チタン原子換算で6ppmを上回るほどに触媒残渣のチタン化合物が多いとポリエステル内で触媒由来の異物が析出しやすくなりポリエステル内異物が増加しがちとなり、やはり表面AのRa値が3.0nmを上まわりやすくなる。
【0026】
また、リン化合物がポリエステルに対するリン原子換算で0.2ppmを下回るとポリエステルが重合される時、ポリエステルが熱劣化しポリエステル内に熱劣化物が生成されやすくなり、Ra値が3.0nmを上まわりやすくなり好ましくない。逆にリン原子換算で9ppmを上回るとリンがポリエステル内に析出しやすくなりポリエステル内異物が増加しがちとなり、Ra値が3.0nmを上まわりやすくなり好ましくない。そのチタン化合物とリン化合物の比率は、原子換算の重量比率(Ti/P)が0.7〜10の範囲内であることが、ポリエステルの熱安定性を良好とし、ポリエステルが製膜されるとき、特にポリエステルチップを溶融押し出しする際の熱劣化を防止し、Ra値を小さくするために好ましい。
【0027】
このポリエステル中にはアンチモン化合物もゲルマニウム化合物も実質的に存在しないことが特に好ましいが、存在する場合でも、各々がポリエステルに対する原子換算で2ppm以下とすることが好ましい。アンチモン化合物及び/又はゲルマニウム化合物の量が原子換算で2ppmを超える場合は、フィルム製造工程中のロール延伸工程、特に縦延伸工程において、加熱された縦延伸ロールとの接触走行によってフィルムが加熱を受ける時に、フィルム中のアンチモン化合物やゲルマニウム化合物がフィルム中のオリゴマーと共に縦延伸ロール表面に析出され易く、縦延伸ロールに付着したこれら異物がフィルム表面の付着物を増加させ、そして、その異物系付着物が付着したフィルム表面部分では、その後の水系塗液の塗布時に塗布液がはじかれて殆ど付かず、この結果、幅15μm以上の広がりをもつ砂状集合表面付着異物が形成され易くなるので、好ましくない。
【0028】
本発明のポリエステルフィルムの片側表面B(上記した被膜表面Aとは反対側の表面である)のRa値は、ポリエステルフィルムを製膜した後、ポリエステルフィルムを所定の幅にスリットする際、巻姿の良い製品を採取しやすくし、ポリエステルフィルムの片側の被膜表面上に強磁性薄膜を設けた後にロール状の巻取りにより片側表面Bの粗さが反対側の表面側に転写されて強磁性薄膜層にうねり状の変形が起きることを最小限に抑えるために、8〜50nm、より好ましくは10〜45nmが望ましい。
【0029】
本発明のポリエステルフィルムの片側表面B側には、シリコーン等の潤滑剤が含まれたより粗い被覆層が設けられるか、より大きな微細粒子を含有するポリエステルフィルム層が積層されて形成されたもの、あるいは更にその上に前記被覆層が設けられたものが好ましく用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。なおここで用いられる微細粒子としては炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、ポリスチレン等が例示される。この微細粒子としては、平均粒子径が好ましくは100〜1000nm、より好ましくは150〜900nmのものが用いられ、その添加量としては好ましくは0.05〜1.0重量%、より好ましくは0.08〜0.8重量%が望ましい。
【0030】
本発明のポリエステルフィルムはフィルム厚さ10μm未満が好ましく、さらに好ましくは厚さ3.5〜9.0μmが望ましい。
【0031】
本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステルを、溶融押出し、加熱された延伸ロールにより長手方向に延伸した後に、一方向に延伸されたポリエステルフイルムの片側表面に、水溶性高分子又は水分散性高分子と平均粒径5〜50nmの微細粒子とを主成分として含有する水系塗液を被膜形成用に固形分塗布濃度3〜100mg/m2 となる量で塗布した後に、乾燥した後あるいは乾燥させながら、横方向に延伸し、必要に応じて更なる延伸を必要な方向に施した後に熱処理を行うという製膜工程により製造されるが、溶融押出しに供するポリエステルとして、チタン化合物をポリエステルに対するチタン原子換算で2〜6ppm含有し、リン化合物をポリエステルに対するリン原子換算で0.2〜9ppm含有し、アンチモン化合物の量がポリエステルに対するアンチモン原子換算で0〜2ppmであり、ゲルマニウム化合物の量がポリエステルに対するゲルマニウム原子換算で0〜2ppmであり、そのチタン化合物とリン化合物の比率が、原子換算の重量比率(Ti/P)で0.7〜10であるポリエステルを用いること、さらに、長手方向へフィルムを延伸する際、延伸ロールの表面を2〜8時間毎に1回の頻度で、純水を含浸させた無塵布で清掃することが重要である。ここで、定期的表面清掃を行う対象の延伸ロールは、前記した長手方向延伸時の加熱延伸ロールである。なかでも、被膜が形成される側のフィルム表面が接触走行する延伸ロールについては、定期的表面清掃が必須であるが、その反対側のフィルム表面が接触走行する延伸ロールについては、定期的表面清掃の頻度をより少なくしてもよいし、場合によっては、定期的表面清掃なしにしてもよい。
【0032】
このポリエステルは、チタン化合物触媒を用いる次の重合方法によって製造することができる。具体例として、ポリエチレンテレフタレートの場合を例にとって説明するがこれに限定されるものではない。
【0033】
ポリエチレンテレフタレートは通常、次のいずれかの重合プロセスで製造される。すなわち、(1)テレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、直接エステル化反応によって低重合体を得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセス、(2)ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを原料とし、エステル交換反応によって低重合体を得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセスである。ここでエステル化反応は無触媒でも反応進行するが触媒を添加してもよい。また、エステル交換反応においては、触媒を添加して反応を進行させ、またエステル交換反応が実質的に完結した後には、反応に用いた触媒を不活性化する目的でリン化合物を添加することが行われる。上記の反応は、回分式、半回分式あるいは連続式等のいずれの形式で行ってもよい。
【0034】
本発明で用いるポリエステルの場合は、上記(1)または(2)の一連の反応の任意の段階で、好ましくは上記(1)または(2)の一連の反応の前半段階で得られた低重合体に、必要に応じて各種の添加物を添加した後、チタン化合物触媒を重縮合触媒として添加して重縮合反応を行い、高分子量のポリエチレンテレフタレートを得るというものである。
【0035】
ポリエステルの重合工程において添加するチタン化合物触媒及びリン化合物は、ポリエステル反応系中にそのまま添加してもよいが、予めジオール系の溶媒を加えて調製した溶液又はスラリーを、反応系中に添加することが、ポリマー中での異物生成をより抑制されるために好ましい。その溶液又はスラリーは、チタン化合物触媒やリン化合物を、エチレングリコールやプロピレングリコール等のポリエステル形成性ジオール成分を含む溶媒と混合して溶液状又はスラリー状とした後、必要に応じて、チタン化合物触媒やリン化合物の合成時に用いたアルコール等の低沸点成分を除去することにより調製できる。それらチタン化合物触媒等の添加時期は、エステル化反応触媒やエステル交換反応触媒として添加する場合には、原料添加直後でもよいし、又は、原料と同伴させての添加でもよい。また、重縮合反応触媒として添加する場合には、実質的に重縮合反応開始前であればよく、エステル化反応やエステル交換反応の前に、あるいはそれらの反応終了後に、また、重縮合反応が開始される前に添加すればよい。この場合、チタン化合物とリン化合物が接触することによる触媒の失活を抑制するための手段としては、異なる反応槽に添加する方法や、同一の反応槽においてチタン化合物とリン化合物を添加する場合にはそれらの添加時期を1〜15分間ずらす方法や添加位置を離す方法がある。
【0036】
また、チタン化合物触媒を予めリン化合物と反応させた化合物を触媒として用いることもできる。この場合には次のような反応方法をとればよい。
(1)チタン化合物触媒を溶媒に混合してその一部または全部を溶媒中に溶解させた溶液に、リン化合物を原液で又は溶媒に溶解希釈させた液でもって滴下して反応させる。
(2)ヒドロキシカルボン酸系化合物や多価カルボン酸系化合物等のチタン化合物の配位子を用いる場合は、チタン化合物または配位子化合物を溶媒に混合してその一部または全部を溶媒中に溶解させた溶液に、配位子化合物またはチタン化合物を原液で又は溶媒に溶解希釈させた液でもって滴下する。さらに、この混合溶液にリン化合物を原液でまたは溶媒に溶解希釈させた液でもって滴下して反応させる。この反応方法の方が、熱安定性及び色調改善の観点から好ましい。
【0037】
上記の反応条件は0〜200℃の温度で1分以上、好ましくは20〜100℃の温度で2〜100分間加熱することによって行われる。この際の反応圧力には特に制限はなく、常圧でもよい。また、ここで用いる溶媒としては、チタン化合物、リン化合物及びカルボニル基含有化合物の一部または全部を溶解し得るものから選択すればよいが、好ましくは、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ベンゼン、キシレンから選ばれる溶媒を用いる。
【0038】
本発明で用いるポリエステルを製造させる際に用いる重合用触媒のチタン化合物としては、置換基が下記一般式で表される官能基のうちの少なくとも1種を含むチタン化合物類(チタン酸化物も含む)が挙げられる。
【0039】
【化1】
【0040】
(式1〜式6中、R1〜R3はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基、水酸基、カルボニル基、アセチル基、カルボキシル基もしくはエステル基を、又はアミノ基を有する炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)
【0041】
上記式1の官能基としては、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、ブトキシド、2−エチルヘキソキシド等のアルコキシ基、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のヒドロキシ多価カルボン酸系化合物からなる官能基が挙げられる。また、上記式2の官能基としては、アセチルアセトン等のβ−ジケトン系化合物、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のケトエステル系化合物からなる官能基が挙げられる。また、上記式3の官能基としては、フェノキシ、クレシレイト、サリチル酸等からなる官能基が挙げられる。
【0042】
また、上記式4の官能基としては、ラクテート、ステアレート等のアシレート基、フタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸またはそれらの無水物等の多価カルボン酸系化合物、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、カルボキシイミノ二酢酸、カルボキシメチルイミノ二プロピオン酸、ジエチレントリアミノ五酢酸、トリエチレンテトラミノ六酢酸、イミノ二酢酸、イミノ二プロピオン酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二プロピオン酸、メトキシエチルイミノ二酢酸等の含窒素多価カルボン酸からなる官能基が挙げられる。また、上記式5の官能基としては、アニリン、フェニルアミン、ジフェニルアミン等からなる官能基が挙げられる。
【0043】
中でも、式1の官能基及び/又は式4の官能基が含まれるチタン化合物触媒がポリマーの熱安定性及び色調の観点から好ましい。
【0044】
具体的なチタン化合物系の触媒としては、これら式1〜式6の置換基の2種以上を含んでなるチタンジイソプロポキシビスアセチルアセトナートやチタントリエタノールアミネートイソプロポキシド等が挙げられる。また、チタン酸化物系の触媒としては、主たる金属元素がチタン及びケイ素からなる複合酸化物や超微粒子酸化チタンが挙げられる。
【0045】
これらチタン化合物触媒は、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とジオール又はそのエステル形成性誘導体とから合成されるポリエステルを製造させる重合工程において、以下の(1)〜(3)の反応(全て又は一部の素反応)を促進させるために実質的に寄与する触媒機能を発揮するものである。
(1)ジカルボン酸成分とジオール成分との反応であるエステル化反応、
(2)ジカルボン酸のエステル形成性誘導体成分とジオール成分との反応であるエステル交換反応、
(3)実質的にエステル反応またはエステル交換反応が終了し、得られたポリエチレンテレフタレート低重合体を脱ジオール反応にて高重合度化せしめる重縮合反応、
【0046】
また、ポリエステル中に所定量のリン化合物を含有させるためには、ポリエステルの製造工程でリン化合物を添加すればよい。このリン化合物としては、リン酸系、亜リン酸系、ホスホン酸系、ホスフィン酸系、ホスフィンオキサイド系、亜ホスホン酸系、亜ホスフィン酸系、ホスフィン系の化合物のいずれでもよく、それらの1種または2種を用いればよい。特にポリエステルの熱安定性及び色調改善の観点から、リン酸系及び/又はホスホン酸系の化合物であることが好ましい。
【0047】
また、得られるポリマーの色調やポリマーの耐熱性を向上させる目的で、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アルミニウム化合物、亜鉛化合物、スズ化合物、マグネシウム化合物、マンガン化合物、コバルト化合物等を添加してもよい。
【0048】
上記したように、本発明法では、アンチモン化合物の量もゲルマニウム化合物の量も0〜2ppmと極めて少ない等の特定のポリエステルを用いてフィルムを製造しているので、従来技術では縦延伸ロールのような加熱延伸ロール部分で生じ易かった異物系付着物の量を、低減している。それでも、異物系付着物を完全になくすことは困難であるので、長手方向へフィルムを延伸する際の延伸ロールを、2時間〜8時間に1回の頻度で純水を浸した無塵布で、延伸ロール表面を清掃する。ここで清掃に用いる純水は、水中に粒径1μm以上の粒子を実質的に含まない水を指し、粒径0.8μmフィルターを通過させること等により作製できる。また無塵布は繊維のほつれがほとんど無く、塵の発生がほとんど無い布帛類である。
【0049】
このような定期的清掃手段を併用することによって、フィルムの被膜表面における、幅15μm以上の広がりの砂状集合表面付着異物の個数を1個/20m2 以下の水準まで低減させることが可能となり、この結果、このフィルムをベースフィルムにして製造されるDVCAMテープのDOを実用上十分な水準まで少なくすることができる。
【0050】
次に本発明のポリエステルフィルム及び磁気記録テープの製法の一例について説明する。
【0051】
本発明のポリエステルフィルムは、そのフィルム原料のポリエステルとして、含有粒子を可能な限り除いたポリエステルであって、かつ、触媒残渣由来のチタン化合物をポリエステルに対するチタン原子換算で2〜6ppm含有し、リン化合物をポリエステルに対するリン原子換算で0.2〜9ppm含有し、アンチモン化合物の存在量がポリエステルに対するアンチモン原子換算で0〜2ppmであり、ゲルマニウム化合物の存在量がポリエステルに対するゲルマニウム原子換算で0〜2ppmであり、そのチタン化合物とリン化合物の比率が、原子換算の重量比率でTi/P=0.7〜10であるポリエステルを用いる。このポリエステルを原料にして、溶融、成形、二軸延伸、熱固定からなる通常のプラスチックフィルム製造工程でフィルムを製造するが、その延伸工程では90〜140℃で、縦、横方向に、2.7〜5.5倍、3.5〜7.0倍に延伸し、190〜220℃の温度で熱固定する。そして、長手方向に延伸ロールで延伸する際に、前記した定期的清掃手段によって延伸ロールを清掃する。さらに、下記の操作を行うことにより、フィルムの片側表面に被膜を形成する。
【0052】
長手方向に延伸した後の平滑なポリエステルフィルムの片側表面に、水溶性高分子又は水分散性高分子と平均粒径5〜50nmの微細粒子とを主成分として含有する水系塗液を、固形分塗布濃度3〜100mg/m2となるように塗布する。水溶性高分子又は水分散性高分子としては、ポリビニルアルコール、トラガントゴム、カゼイン、ゼラチン、セルロース誘導体、水溶性ポリエステル、ポリウレタン、イソフタル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂等の有極性高分子、これらのブレンド体が使用できるが、これらに限定されない。
【0053】
この水系塗液の固形分塗布濃度は3〜100mg/m2である。固形分塗布濃度が3mg/m2を下回ると、微細表面突起の個数が300万個/mm2を、また、表面粗さRa値が0.5nmを下回りがちとなる。固形分塗布濃度が100mg/m2 を上回ると、微細表面突起の個数が1億個/mm2を、また、表面粗さRa値が3.0nmを上回りがちとなる。
【0054】
なお、共押出し技術の使用により、前記した原料をA層用の原料とし、積極的により大きな微粒子を含有させたB層用の原料を用いてA/B積層フィルムを溶融押出しし製膜してもよいし、B層を用いなく、前記表面A側と反対の表面B側に滑剤を含む塗液を塗布しB面側に易滑処理をしてもよい。B層を用い、更に滑剤を含む塗液を塗布しB面側の易滑処理をしてもよい。
【0055】
二軸延伸は、例えば逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法で行うことができるが、所望するならば熱固定前にさらに縦あるいは横方向あるいは縦と横方向に再度延伸させ機械的強度を高めた、いわゆる強力化タイプとすることもできる。
【0056】
本発明のポリエステルフィルムは磁気記録媒体のベースフィルムとして、デジタルデータを記録する磁気テープ用途に、特にDVCAM磁気テープ用途に優れた結果を得ることができ、好適である。また、光反応性のGe、Sb、Te等から成る映像データ記録用合金膜が形成され、映像データ等の記録が可能な光記録テープのベースフィルムとしても好適に用いることができる。
【0057】
本発明の磁気記録テープは、本発明のポリエステルフィルムの被膜表面A上に、真空蒸着により形成される強磁性金属薄膜層を設け、そしてテープ状にしたものであり、使用する金属薄膜としては公知のものを使用でき、特に限定されないが、鉄、コバルト、ニッケル、またはそれらの合金の強磁性体からなるものが好ましい。
【0058】
即ち、本発明の磁気記録テープは、本発明のポリエステルフィルムの被膜表面A上に、Co等からなる強磁性金属薄膜を、真空蒸着により膜厚み20〜300nm程度で形成し、この金属薄膜上に10nm程度の厚みのダイヤモンド状カーボン膜をコーティングし、さらにその上に、潤滑剤を塗布し、他方、片側表面Bに、固体微粒子および結合剤からなり必要に応じて各種添加剤を加えた溶液を塗布することによりバックコート層を設け、そして、所定のテープ幅に切断することにより、製造することができる。その固体微粒子、結合剤、添加剤は公知のものを使用でき、特に限定されない。バックコート層の厚さは0.3〜1.5μm程度が好ましい。
【0059】
【実施例】
本実施例で用いた測定法を下記に示す。
(1)フィルム上の微細表面突起の個数
フィルム表面を走査型電子顕微鏡により5万倍の拡大倍率で10視野以上観察し、突起状に見える突起が1mm2あたり何個あるかを測定することにより、フィルムの表面に形成された微細突起の個数を求めた。
(2)フィルム上の微細表面突起の直径
フィルム表面を走査型電子顕微鏡により5万倍の拡大倍率で5視野観察し、各視野より突起状に見える突起をランダムに10個選び、各突起の最大直径、最小直径を測定し、その平均値を各突起の直径とし、50個の突起の直径の平均値を求め、フィルムの表面に形成された微細表面突起の直径とした。
【0060】
(3)フィルムの表面粗さRa値、Rz値
フィルムの表面の表面粗さRa値、Rz値は、原子間力顕微鏡(走査型プローブ顕微鏡)を用いて測定した。即ち、セイコーインスツルメント(株)製の卓上小型プローブ顕微鏡(“Nanopics” 1000)を用い、ダンピングモードで、フィルムの表面を4μm角の範囲で原子間力顕微鏡計測走査を行い、得られる表面のプロファイル曲線よりJIS・B0601・Raに相当する算術平均粗さよりRaを、十点平均粗さよりRz値を求めた。面内方向の拡大倍率は1万〜5万倍、高さ方向の拡大倍率は100万倍程度とした。
【0061】
(4)幅15μm以上の広がりの砂状集合表面付着異物の個数
微分干渉式光学顕微鏡(観測倍率:100倍)を用いて、フィルムの被膜表面を観察し、幅15μm以上にわたる広がりでフィルム表面に付着して存在する付着異物をマーキングする。マーキングした付着異物を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、極微小物質が砂状に集合して表面に付着している異物(砂状集合表面付着異物)であるものを選択する。この光学顕微鏡での観察を、フィルムの長さ方向20m、幅方向1mの部分内について行い、マーキングし選択した付着異物の個数を数え、フィルム表面20m2あたりの、幅15μm以上の広がりの砂状集合表面付着異物の個数(個/20m2)とした。
【0062】
なお、磁気テープからの上記個数の測定は、次の方法による。
後述の(6)のように記録、録画した磁気テープのDO発生部のテープを磁気現像し、磁気記録の抜けた部分の磁性層を除去し、ベースフィルム部分をSEMにより観察し、DO原因を解析し、幅15μm以上の領域に砂状に集合した表面付着物起因か否かを解析し、上記同様に個数を数え換算して求める。
【0063】
(5)フィルムを構成するポリエステル内に含まれるチタン化合物、リン化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物の量
蛍光X線(FLX)法により、蛍光X線元素分析装置(堀場製作所社製、MESA−500W型)を用い、フィルム中のポリエステルに含まれるTi,P、Sb、Geの量を定量した。なお、添加剤や被膜中にそれら元素が含まれない場合にはフィルム全体を試料にして測定すればよい。
(6)ポリエステルの固有粘度IV
オルソクロロフェノールを溶媒として25℃で測定した。
【0064】
(7)磁気テープ(DVCAMテープ)の特性
市販のDVCAMデジタルカムコーダー(ソニー製「DSR−300」)を用いてDVCAM標準カセットテープに、静かな室内風景を180分録画した後、再生した。その再生時に画面にあらわれるブロック状のモザイク個数(ドロップアウト(DO)個数)を数えることによって、DVCAMテープ特性を評価した。
DO個数は記録後の最初の再生時と、100回再生(300時間)後とに測定し、3時間あたりのDO個数で表示した。
【0065】
次に実施例に基づき、本発明を説明する。
【0066】
[実施例1]
チタン化合物触媒によるポリエチレンテレフタレートの製造:
高純度テレフタル酸(三井化学(株)製)100kgとエチレングリコール(日本触媒(株)製)45kgのスラリーを、予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約123kgが仕込まれ、温度250℃、圧力1.2×105Paに保持されたエステル化反応槽に4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行い、得られたエステル化反応生成物123kgを重縮合槽に移送した。
【0067】
引き続いて、エステル化反応生成物が移送された重縮合反応槽に、酢酸マグネシウムのエチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対してマグネシウム原子換算で30ppmとなるように加えた。更に5分間撹拌した後、クエン酸キレートチタン化合物の2重量%エチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対してチタン原子換算で5ppmとなるように添加し、5分後、ジエチルホスホノ酢酸エチルの10重量%エチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対してリン原子換算で5ppmとなるように添加し、その後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を250℃から285℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージし常圧に戻し重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングしてポリマーのペレットとした。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は3時間であった。
【0068】
得られたポリマーのIVは0.66、ポリマーの融点は259℃、溶液ヘイズは0.7%であった。また、ポリマーから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は5ppm、リン原子の含有量は5ppmであり、Ti/P=1であり、アンチモン原子の含有量もゲルマニウム原子の含有量も0ppmであることを確認した。
【0069】
なお、上記の重合工程において触媒として添加したクエン酸キレートチタン化合物は、次の方法で合成した生成物を用いた。
【0070】
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた3Lのフラスコ中に温水(371g)にクエン酸・一水和物(532g、2.52モル)を溶解させた。この撹拌されている溶液に滴下漏斗からチタンテトライソプロポキシド(288g、1.00モル)をゆっくり加えた。この混合物を1時間加熱、還流させて曇った溶液を生成させ、これよりイソプロパノール/水混合物を真空下で蒸留した。その生成物を70℃より低い温度まで冷却し、そしてその撹拌されている溶液にNaOH(380g、3.04モル)の32重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えた。得られた生成物をろ過し、次いでエチレングリコール(504g、80モル)と混合し、そして真空下で加熱してイソプロパノール/水を除去したところ、わずかに曇った淡黄色のクエン酸キレートチタン化合物(Ti含有量3.85重量%)が得られた。
【0071】
上記方法により重合して得られ、実質的に不活性粒子を含有しないポリエチレンテレフタレートに平均粒径60nmのシリカを0.03重量%含有させた原料Aと、同一のポリエチレンテレフタレートに平均粒径190nmのケイ酸アルミニウムを0.15重量%含有させた原料Bとを、各々溶融し、厚み比5:1の割合で口金のスリットからシート状に吐出し、冷却ドラムに密着させて冷却し、ロール延伸法で110℃で3.0倍に縦延伸した。この際、延伸ロールの表面を4時間に1回の頻度で純水を浸した無塵布で清掃した。
【0072】
縦延伸の後の工程で、原料A側の表面Aの外側、原料B側の表面Bの外側に、下記組成の水溶液を25℃の温度に保ち、0.8μmのろ過精度を持つフィルターでろ過した後、固形分塗布量25mg/m2 、50mg/m2 となるように、それぞれ塗布した。
【0073】
【0074】
【0075】
その後、ステンターにて横方向に102℃で4.2倍に延伸し、215℃で熱処理し中間スプールに巻き、スリッターで小幅にスリットし、円筒コアーにロール状に巻取り、厚さ6.3μmのポリエステルフィルムとした。
【0076】
このポリエステルフィルムの表面A上に真空蒸着によりコバルト−酸素薄膜を150nmの膜厚で形成した。次にコバルト−酸素薄膜層上に、スパッタリング法によりダイヤモンド状カーボン膜を10nmの厚さで形成させ、フッ素含有脂肪酸エステル系潤滑剤を3nmの厚さで塗布した。続いて表面B上に、カーボンブラック、ポリウレタン、シリコーンからなるバックコート層を500nmの厚さで設け、スリッターにより幅6.35mmにスリットしリールに311mの長さ巻き取り磁気テープ(DVCAM用標準テープ)を作製した。
【0077】
得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0078】
[実施例2]
実施例1のベースフィルム製造において、ポリエチレンテレフタレートをポリエチレン−2,6−ナフタレートに変更し、原料A、B内のシリカ、ケイ酸アルミニウムの含有量を0.075重量%、0.45重量%と変更し、縦延伸温度、倍率を135℃で5.0倍と変更し、A面、B面外側塗布の固形分塗布量を50mg/m2、100mg/m2と変更し、横延伸温度、倍率を135℃、6.5倍と変更し、200℃で熱処理に変更し、その他は実施例1と同様にして、厚さ4.7μmのポリエステルフィルムを作製した。得られたポリエステルフィルムから、実施例1と同様にして幅6.35mm、長さ417mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は10nm、160nmであった。
【0079】
[実施例3]
実施例1のベースフィルム製造において、原料A中の平均粒径60nmのシリカを用いなかったこと以外は実施例1と同様にしてて厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0080】
[比較例1]
実施例1のベースフィルム製造において、A面外側への水溶液塗布時の固形分塗布量を2mg/m2と変更した。その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0081】
[比較例2]
実施例1のベースフィルム製造において、A面外側への塗布水溶液中の極微細シリカの濃度を0.09重量%、その水溶液塗布時の固形分濃度を120mg/m2と変更した。その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0082】
[比較例3]
実施例1のベースフィルム製造において、A面外側への塗布水溶液中の極微細シリカの粒径を4nm、その水溶液塗布時の固形分濃度を10mg/m2と変更した。その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0083】
[比較例4]
実施例1のベースフィルム製造において、A面外側への塗布水溶液中の極微細シリカの粒径を70nm、シリカ添加濃度を0.04重量%と変更した。その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0084】
[比較例5]
実施例1で得られたチタン化合物触媒によるポリエチレンテレフタレートに、従来の一般的なポリエチレンテレフタレート(アンチモン触媒によるもの、ゲルマニウム触媒によるもの)とを混合したポリマー原料を用いた。なお、この混合ポリマー原料中の元素含有量は表1に示すとおりであった。
【0085】
アンチモン触媒によるポリエチレンテレフタレート: ポリエチレンテレフタレート重合工程において添加する触媒として、通常のアンチモン系触媒を用い、通常の方法で重合して、IVが0.66のポリエチレンテレフタレート(ポリエステル中の元素含有利用は、チタンが0ppm、リンが10ppm、アンチモンが80ppm、ゲルマニウムが0ppm)を製造した。
【0086】
ゲルマニウム触媒によるポリエチレンテレフタレート: ポリエチレンテレフタレート重合工程において添加する触媒として、通常のゲルマニウム系触媒を用い、通常の方法で重合して、IVが0.66のポリエチレンテレフタレート(ポリエステル中の元素含有利用は、チタンが0ppm、リンが10ppm、アンチモンが0ppm、ゲルマニウムが40ppm)を製造した。
【0087】
実施例1のベースフィルム製造において、フィルム製造用ポリエステル原料を上記した混合ポリマー原料に変更した。その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0088】
[比較例6]
実施例1のポリエステル製造において、重合触媒として用いたクエン酸キレートチタン化合物の添加量を、得られるポリマーに対するチタン原子換算量が1ppmとなるように変更し、さらに、ジエチルホスホノ酢酸エチルの10重量%エチレングリコール溶液の添加量を、得られるポリマーに対するリン原子換算量が1ppmとなるように変更し、それ以外は実施例1と同様にして重合を行い、表1に示す元素含有量のポリエステルを製造した。
【0089】
得られたポリエステルを用い、その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0090】
[比較例7]
実施例1のポリエステル製造において、重合触媒として用いたクエン酸キレートチタン化合物の添加量を、得られるポリマーに対するチタン原子換算量が10ppmとなるように変更し、さらに、ジエチルホスホノ酢酸エチルの10重量%エチレングリコール溶液の添加量を、得られるポリマーに対するリン原子換算量が6ppmとなるように変更し、それ以外は実施例1と同様にして重合を行い、表1に示す元素含有量のポリエステルを製造した。
【0091】
得られたポリエステルを用い、その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0092】
[比較例8]
実施例1のポリエステル製造において、ジエチルホスホノ酢酸エチルの10重量%エチレングリコール溶液の添加量を、得られるポリマーに対するリン原子換算量が0.1ppmとなるように変更し、それ以外は実施例1と同様にして重合を行い、表1に示す元素含有量のポリエステルを製造した。
【0093】
得られたポリエステルを用い、その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0094】
[比較例9]
実施例1のポリエステル製造において、ジエチルホスホノ酢酸エチルの10重量%エチレングリコール溶液の添加量を、得られるポリマーに対するリン原子換算量が12ppmとなるように変更し、それ以外は実施例1と同様にして重合を行い、表1に示す元素含有量のポリエステルを製造した。
【0095】
得られたポリエステルを用い、その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0096】
[比較例10]
実施例1のベースフィルム製造において、ポリエステル原料を、比較例5で製造した、アンチモン触媒により重合されたポリエチレンテレフタレートに変更し、その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0097】
[比較例11]
実施例1のベースフィルム製造において、ポリエステル原料を、比較例5で製造した、ゲルマニウム触媒により重合されたポリエチレンテレフタレートに変更し、その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0098】
[比較例12]
実施例1のポリエステル製造において、重合触媒として用いたクエン酸キレートチタン化合物の添加量を、得られるポリマーに対するチタン原子換算量が3ppmとなるように変更し、さらに、ジエチルホスホノ酢酸エチルの10重量%エチレングリコール溶液の添加量を、得られるポリマーに対するリン原子換算量が8ppmとなるように変更し、それ以外は実施例1と同様にして重合を行い、表1に示す元素含有量のポリエステルを製造した。
【0099】
得られたポリエステルを用い、その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0100】
[比較例13]
実施例1のベースフィルム製造において、延伸ロールの清掃に用いた純水を通常の水道水に変えた。その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0101】
[比較例14]
実施例1のベースフィルム製造において、延伸ロールの清掃に用いた無塵布を通常のさらし布に変えた。その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0102】
[比較例15]
実施例1のベースフィルム製造において、延伸ロールの清掃頻度を12時間に1回と変更した。その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0103】
[比較例16]
実施例1のベースフィルム製造において、延伸ロールの清掃を行わなかった。その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0104】
【表1】
【0105】
表1の特性から明らかな様に、本発明によるポリエステルフィルムをベースフィルムに用いて製造されたDVCAM磁気テープは、3時間の全長にわたってDOが殆ど生じず、繰り返し再生した後もDO発生が極めて少ない磁気テープであった。
【0106】
【発明の効果】
本発明の記録媒体用ポリエステルフィルムを用いると、DVCAM等の業務用磁気テープを製造した場合でも、ドロップアウトが極めて少なく、耐久性に優れた蒸着型磁気テープとすることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録媒体用ポリエステルフィルム、特に、デジタルビデオカセットテープ用、データストレージテープ用等のデジタルデータを記録する強磁性金属薄膜型磁気記録媒体の長時間にわたる画質の向上、エラーレートの低減のために好適な記録媒体用ポリエステルフィルム、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
1995年に実用化された家庭用デジタルビデオテープは厚さ6〜7μmのベースフィルムの片側表面上に、Coの金属磁性薄膜を真空蒸着により設け、その表面にダイヤモンド状カーボン膜をコーティングしてなり、DVミニカセットを使用したカメラ一体型ビデオの場合には基本仕様(SD仕様)で1時間の録画時間をもつ。
【0003】
このデジタルビデオカセット(DVC)は、家庭用で世界で初のデジタルビデオカセットであり、a.小型ボディながら、膨大な情報が記録できる、b.信号が劣化しないから、何年たっても画質・音質が劣化しない、c.雑音の妨害を受けないから高画質・高音質が楽しめる、d.ダビングを繰り返しても映像が劣化しない、等のメリットを持ち、市場の評価は高い。
【0004】
また、この家庭用DVフォーマットをベースにして、蒸着型デジタルビデオテープを用いて、テープ走行速度を1.5倍に上げ、記録トラック幅をDVの10μmから15μmへと広幅化し、業務用途に要求される高画質、高信頼性を実現させた同一テープ幅(1/4インチ)のDVCAMフォーマットが1996年に開発された。DVCAMフォーマットは高画質・高音質で小型・軽量化を実現した業務用VTRとして、また優れたダビング特性、高品位の編集性能など、業務用途に優れ、企業、プロダクション、ケーブルテレビ、ビデオジャーナリストの間で極めて評価が高くなってきた。
【0005】
それらデジタルビデオテープのベースフィルムには、
▲1▼ポリエステルフィルムと、該フィルムの少なくとも片面に密着されたポリマーブレンド体と粒径50〜500Åの微細粒子を主体とした不連続皮膜とからなり、該不連続皮膜には水溶性ポリエステル共重合体が含有され、微細粒子により不連続皮膜上に微細突起が形成されたポリエステルフィルム(例えば特許文献1参照)、
▲2▼熱可塑性樹脂からなる層Aと、微粒子が含有された熱可塑性樹脂からなる層Bとが積層された複合フィルム(例えば特許文献2参照)、
等が使用されてきている。
【0006】
しかしながらこのようなベースフィルムでは、フィルム製造に使用するポリエステル内に異物が存在したり、製膜工程途中でフィルム表面に傷が入ったり、製膜工程途中で付着した表面コンタミ物等によって表面欠陥が生じたり、という問題が生じがちであり、該ベースフィルムより作製される磁気テープはドロップアウト(DO)が増加しがち、という問題があった。
【0007】
ドロップアウトの少ないDVCテープを安定的に製造可能な磁気記録媒体用ポリエステルフィルムを与える事を目的として、特許文献3において、ポリエステルフイルムの一方の片側表面Aに高さ10〜50nmの微細表面突起が300万〜9000万個/mm2 設けられ、その片側表面Aに存在する高さ50〜120nmの表面突起が4万個/mm2以下、高さ120nm以上の表面欠陥が400個/100cm2以下である磁気記録媒体用ポリエステルフィルムが提案されている。
【0008】
【特許文献1】特公昭63−57238号公報
【特許文献2】特公平1−26338号公報
【特許文献3】特開2000−25105号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようなベースフィルムから作製した磁気テープは、DVC用テープとして用いた場合にはドロップアウト(DO)が低下し1分間のDO個数はほぼ零個を達成できたが、DVCAM用途に用いた場合には、標準テープで3時間の記録が可能であるものの3時間の記録においてDOは10個程度発生しがちであった。業務用途に使用する場合、磁気テープ全長にわたりDOの発生の無いことが望ましく、DOを3時間に2個以内、好ましくは零個にする要求が強まっている。
【0010】
そこで本発明は、ドロップアウトの少ないDVCAM用蒸着型磁気テープを製造するために好適な記録媒体用ポリエステルフィルム、及びその製造方法を与える事を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するための本発明は以下の通りである。すなわち、
1. ポリエステルフィルムの片側表面に、微細粒子と有機化合物を含有する被膜が形成されてなる記録媒体用ポリエステルフィルムであって、該被膜側の表面がデータ記録材薄膜が形成される面であり、該被膜の表面における微細表面突起の直径が5〜60nm、微細表面突起の個数が300万〜1億個/mm2 、表面粗さRa値が0.5〜3.0nm、かつ、幅15μm以上の広がりの砂状集合表面付着異物の個数が1個/20m2 以下である記録媒体用ポリエステルフィルム、
2. ポリエステルが、チタン化合物をポリエステルに対するチタン原子換算で2〜6ppm含有し、アンチモン化合物の量がポリエステルに対するアンチモン原子換算で0〜2ppmであり、ゲルマニウム化合物の量がポリエステルに対するゲルマニウム原子換算で0〜2ppmである上記1に記載の記録媒体用ポリエステルフィルム、
3. ポリエステルが、さらにリン化合物をポリエステルに対するリン原子換算で0.2〜9ppm含有し、そのチタン化合物とリン化合物の比率が、原子換算の重量比率(Ti/P)で0.7〜10である上記2に記載の記録媒体用ポリエステルフィルム、
【0012】
4. ポリエステルがポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2、6−ナフタレートである上記1〜3のいずれかに記載の記録媒体用ポリエステルフィルム、
5. デジタル記録方式の磁気テープ用に用いられる上記1〜4のいずれかに記載の記録媒体用ポリエステルフィルム、
【0013】
6. ポリエステルを、溶融押出し、加熱された延伸ロールにより長手方向に延伸した後に、一方向に延伸されたポリエステルフイルムの片側表面に、水溶性高分子又は水分散性高分子と平均粒径5〜50nmの微細粒子とを主成分として含有する水系塗液を被膜形成用に固形分塗布濃度3〜100mg/m2 となる量で塗布した後に、乾燥した後あるいは乾燥させながら、横方向に延伸し、必要に応じて更なる延伸を必要な方向に施した後に熱処理を行うことにより、上記1〜5のいずれかに記載の記録媒体用ポリエステルフィルムを製造する方法であって、溶融押出しに供されるポリエステルが、チタン化合物をポリエステルに対するチタン原子換算で2〜6ppm含有し、リン化合物をポリエステルに対するリン原子換算で0.2〜9ppm含有し、アンチモン化合物の量がポリエステルに対するアンチモン原子換算で0〜2ppmであり、ゲルマニウム化合物の量がポリエステルに対するゲルマニウム原子換算で0〜2ppmであり、そのチタン化合物とリン化合物の比率が、原子換算の重量比率(Ti/P)で0.7〜10であるポリエステルであり、かつ、長手方向へフィルムを延伸する際、延伸ロールの表面を2〜8時間毎に1回の頻度で、純水を含浸させた無塵布で清掃することを特徴とする記録媒体用ポリエステルフィルムの製造方法、
7. 上記1〜5のいずれかに記載の記録媒体用ポリエステルフィルムの被膜表面上に強磁性金属薄膜層を設けてなる磁気記録テープ、
とするものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明におけるポリエステルとは、分子配向により高強度フィルムとなるポリエステルであればよいが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましい。即ち、その構成成分の80%以上がエチレンテレフタレート又はエチレンナフタレートであるポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましい。エチレンテレフタレート、エチレンナフタレート以外のポリエステル共重合体成分としては、例えばジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、p−キシリレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸成分、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能ジカルボン酸成分、p−オキシエトキシ安息香酸などが挙げられる。
【0015】
さらに、上記のポリエステルは、他にポリエステルと非反応性のスルホン酸のアルカリ金属塩誘導体、該ポリエステルに実質的に不溶なポリアルキレングリコールなどの少なくとも一つを5重量%を越えない程度に混合してもよい。
【0016】
本発明のポリエステルフィルムの片側表面Aには、微細粒子と有機化合物を含有する被膜が形成されており、該被膜表面に微細粒子による微細表面突起が存在し、その直径が5〜60nmであり、その個数が300万〜1億個/mm2、好ましくは500万〜8000万個/mm2 であり、表面粗さRa値が0.5〜3.0nmであり、かつ幅15μm以上の広がりの砂状集合表面付着異物の個数が1個/20m2 以下、好ましくは0.5個/20m2以下である。
【0017】
被膜表面の微細表面突起は、粒径が5〜50nmの微細粒子を有機化合物に含有させた被膜層を、ポリエステル表面に設けることにより形成することができる。その微細粒子の粒子種としては、ポリアクリル酸、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアクリル酸エステル、ポリメチルメタクリレート、ポリエポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、アクリル−スチレン共重合体、アクリル系共重合体、各種変成アクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、各種変成スチレン−ブタジエン共重合体等の有機化合物の粒子、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム等の無機粒子を核として、有機高分子で被覆した粒子等が使用できるが、これらに限定されない。その有機化合物としては末端基がエポキシ、アミン、カルボン酸、水酸基等で変成された自己架橋性のものが好ましい。なお微細粒子としてはシリカ、アルミナ等の無機粒子も使用できるが、有機粒子の方が、発現する表面突起の径に比べて突起高さが低くなり易いので好ましい。
【0018】
被膜層に使用される有機化合物としては、ポリビニルアルコール、トラガントゴム、カゼイン、ゼラチン、セルロース誘導体、水溶性ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、アクリル−ポリエステル樹脂、イソフタル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂等の有極性高分子これらのブレンド体が使用できるが、これらに限定されない。
【0019】
被膜表面の微細表面突起により、被膜表面上に真空蒸着により形成される強磁性金属薄膜層の記録・再生時の磁気ヘッドによる磨耗が少なくなる。微細表面突起の直径が5nmより小さいと、あるいは、その個数が300万個/mm2より少ないと、磁気テープの磁性層表面が平滑すぎて、強磁性金属薄膜層が平滑となりすぎて、磁気テープの磁気ヘッドとの走行耐久性が低下するので適していない。微細表面突起の直径が60nmより大きいと、あるいは、その個数が1億個/mm2 より多いと、磁気テープの磁性層表面が粗れすぎて磁気テープのドロップアウトが増加しがちとなり適していない。
【0020】
また、被膜表面のRa値は、その表面上に真空蒸着により形成される強磁性金属薄膜が記録・再生時に磁気ヘッドによって受ける磨耗を極力少なくし、磁気テープの出力特性を良好に保つために、0.5〜3.0nmとする。好ましくは1.0〜2.8nmである。Ra値が0.5nm未満であると、被膜表面上に真空蒸着により形成される強磁性金属薄膜層が平滑すぎて、ビデオカメラ内での録画、再生時に磁気ヘッドとの接触走行により磁気テープの強磁性金属薄膜が磨耗し易い。Ra値が5nmを超えると、強磁性金属薄膜層が粗面すぎて、磁気テープの出力特性が低下し易い。
【0021】
上記した微細表面突起の直径は、被膜中の微細粒子の種類、平均粒径、横延伸温度等を調整することにより調節できる。また、この微細表面突起の個数、表面粗さRa値は前記微細粒子の種類、平均粒径、固形分塗布濃度を調整することにより調節できる。
【0022】
さらに、本発明のポリエステルフィルムでは、被膜表面において、幅15μm以上の広がりの砂状集合表面付着異物の個数が1個/20m2以下であり、この個数がそれより大であるとDVCAM磁気テープのドロップアウトが増加する。
【0023】
この砂状集合表面付着異物の個数を上記水準とするためには、ポリエステル重合時の触媒に由来する異物量を減らすことが効果的であり、そのためには、フィルムを構成するポリエステル中には、チタン化合物がポリエステルに対するチタン原子換算で2〜6ppm含有され、アンチモン化合物の量がポリエステルに対するアンチモン原子換算で0〜2ppmであり、ゲルマニウム化合物の量がポリエステルに対するゲルマニウム原子換算で0〜2ppmであることが好ましい。さらに、リン化合物がポリエステルに対するリン原子換算で0.2〜9ppm含有され、そのチタン化合物とリン化合物の比率が、原子換算の重量比率(Ti/P)で0.7〜10であることが好ましい。
【0024】
このように、ポリエステル中のアンチモン、ゲルマニウムの含有量が零ないし極めて少なく、かつ、特定範囲内のチタンやリンが含有される場合、フィルム製造工程中のロール延伸工程、特に縦延伸工程においてフィルム表面へ異物系付着物が付着することを抑制できるので、その異物系付着物量に関係する砂状集合表面付着異物の個数を低減させることができる。
【0025】
このポリエステルは、重合時の触媒としてチタン化合物触媒を用いて重合されたものであって、その触媒残渣に由来するチタン化合物の量がポリエステルに対するチタン原子換算で2〜6ppmであることが好ましい。触媒残渣として含まれるチタン化合物の量は一般的に極力少ない方が好ましいが、チタン化合物触媒による触媒効果を発揮させるためにはある程度以上の触媒量が必要であるので、少なくするにも限度がある。即ち、ポリエステルに対するチタン原子換算で2ppm未満であるとポリエステルが重合される時の時間が長くなりすぎポリエステルが熱劣化しポリエステル内に熱劣化物が生成されやすくなり、表面AのRa値が3.0nmを上まわりやすくなる。逆に、チタン原子換算で6ppmを上回るほどに触媒残渣のチタン化合物が多いとポリエステル内で触媒由来の異物が析出しやすくなりポリエステル内異物が増加しがちとなり、やはり表面AのRa値が3.0nmを上まわりやすくなる。
【0026】
また、リン化合物がポリエステルに対するリン原子換算で0.2ppmを下回るとポリエステルが重合される時、ポリエステルが熱劣化しポリエステル内に熱劣化物が生成されやすくなり、Ra値が3.0nmを上まわりやすくなり好ましくない。逆にリン原子換算で9ppmを上回るとリンがポリエステル内に析出しやすくなりポリエステル内異物が増加しがちとなり、Ra値が3.0nmを上まわりやすくなり好ましくない。そのチタン化合物とリン化合物の比率は、原子換算の重量比率(Ti/P)が0.7〜10の範囲内であることが、ポリエステルの熱安定性を良好とし、ポリエステルが製膜されるとき、特にポリエステルチップを溶融押し出しする際の熱劣化を防止し、Ra値を小さくするために好ましい。
【0027】
このポリエステル中にはアンチモン化合物もゲルマニウム化合物も実質的に存在しないことが特に好ましいが、存在する場合でも、各々がポリエステルに対する原子換算で2ppm以下とすることが好ましい。アンチモン化合物及び/又はゲルマニウム化合物の量が原子換算で2ppmを超える場合は、フィルム製造工程中のロール延伸工程、特に縦延伸工程において、加熱された縦延伸ロールとの接触走行によってフィルムが加熱を受ける時に、フィルム中のアンチモン化合物やゲルマニウム化合物がフィルム中のオリゴマーと共に縦延伸ロール表面に析出され易く、縦延伸ロールに付着したこれら異物がフィルム表面の付着物を増加させ、そして、その異物系付着物が付着したフィルム表面部分では、その後の水系塗液の塗布時に塗布液がはじかれて殆ど付かず、この結果、幅15μm以上の広がりをもつ砂状集合表面付着異物が形成され易くなるので、好ましくない。
【0028】
本発明のポリエステルフィルムの片側表面B(上記した被膜表面Aとは反対側の表面である)のRa値は、ポリエステルフィルムを製膜した後、ポリエステルフィルムを所定の幅にスリットする際、巻姿の良い製品を採取しやすくし、ポリエステルフィルムの片側の被膜表面上に強磁性薄膜を設けた後にロール状の巻取りにより片側表面Bの粗さが反対側の表面側に転写されて強磁性薄膜層にうねり状の変形が起きることを最小限に抑えるために、8〜50nm、より好ましくは10〜45nmが望ましい。
【0029】
本発明のポリエステルフィルムの片側表面B側には、シリコーン等の潤滑剤が含まれたより粗い被覆層が設けられるか、より大きな微細粒子を含有するポリエステルフィルム層が積層されて形成されたもの、あるいは更にその上に前記被覆層が設けられたものが好ましく用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。なおここで用いられる微細粒子としては炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、ポリスチレン等が例示される。この微細粒子としては、平均粒子径が好ましくは100〜1000nm、より好ましくは150〜900nmのものが用いられ、その添加量としては好ましくは0.05〜1.0重量%、より好ましくは0.08〜0.8重量%が望ましい。
【0030】
本発明のポリエステルフィルムはフィルム厚さ10μm未満が好ましく、さらに好ましくは厚さ3.5〜9.0μmが望ましい。
【0031】
本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステルを、溶融押出し、加熱された延伸ロールにより長手方向に延伸した後に、一方向に延伸されたポリエステルフイルムの片側表面に、水溶性高分子又は水分散性高分子と平均粒径5〜50nmの微細粒子とを主成分として含有する水系塗液を被膜形成用に固形分塗布濃度3〜100mg/m2 となる量で塗布した後に、乾燥した後あるいは乾燥させながら、横方向に延伸し、必要に応じて更なる延伸を必要な方向に施した後に熱処理を行うという製膜工程により製造されるが、溶融押出しに供するポリエステルとして、チタン化合物をポリエステルに対するチタン原子換算で2〜6ppm含有し、リン化合物をポリエステルに対するリン原子換算で0.2〜9ppm含有し、アンチモン化合物の量がポリエステルに対するアンチモン原子換算で0〜2ppmであり、ゲルマニウム化合物の量がポリエステルに対するゲルマニウム原子換算で0〜2ppmであり、そのチタン化合物とリン化合物の比率が、原子換算の重量比率(Ti/P)で0.7〜10であるポリエステルを用いること、さらに、長手方向へフィルムを延伸する際、延伸ロールの表面を2〜8時間毎に1回の頻度で、純水を含浸させた無塵布で清掃することが重要である。ここで、定期的表面清掃を行う対象の延伸ロールは、前記した長手方向延伸時の加熱延伸ロールである。なかでも、被膜が形成される側のフィルム表面が接触走行する延伸ロールについては、定期的表面清掃が必須であるが、その反対側のフィルム表面が接触走行する延伸ロールについては、定期的表面清掃の頻度をより少なくしてもよいし、場合によっては、定期的表面清掃なしにしてもよい。
【0032】
このポリエステルは、チタン化合物触媒を用いる次の重合方法によって製造することができる。具体例として、ポリエチレンテレフタレートの場合を例にとって説明するがこれに限定されるものではない。
【0033】
ポリエチレンテレフタレートは通常、次のいずれかの重合プロセスで製造される。すなわち、(1)テレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、直接エステル化反応によって低重合体を得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセス、(2)ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを原料とし、エステル交換反応によって低重合体を得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセスである。ここでエステル化反応は無触媒でも反応進行するが触媒を添加してもよい。また、エステル交換反応においては、触媒を添加して反応を進行させ、またエステル交換反応が実質的に完結した後には、反応に用いた触媒を不活性化する目的でリン化合物を添加することが行われる。上記の反応は、回分式、半回分式あるいは連続式等のいずれの形式で行ってもよい。
【0034】
本発明で用いるポリエステルの場合は、上記(1)または(2)の一連の反応の任意の段階で、好ましくは上記(1)または(2)の一連の反応の前半段階で得られた低重合体に、必要に応じて各種の添加物を添加した後、チタン化合物触媒を重縮合触媒として添加して重縮合反応を行い、高分子量のポリエチレンテレフタレートを得るというものである。
【0035】
ポリエステルの重合工程において添加するチタン化合物触媒及びリン化合物は、ポリエステル反応系中にそのまま添加してもよいが、予めジオール系の溶媒を加えて調製した溶液又はスラリーを、反応系中に添加することが、ポリマー中での異物生成をより抑制されるために好ましい。その溶液又はスラリーは、チタン化合物触媒やリン化合物を、エチレングリコールやプロピレングリコール等のポリエステル形成性ジオール成分を含む溶媒と混合して溶液状又はスラリー状とした後、必要に応じて、チタン化合物触媒やリン化合物の合成時に用いたアルコール等の低沸点成分を除去することにより調製できる。それらチタン化合物触媒等の添加時期は、エステル化反応触媒やエステル交換反応触媒として添加する場合には、原料添加直後でもよいし、又は、原料と同伴させての添加でもよい。また、重縮合反応触媒として添加する場合には、実質的に重縮合反応開始前であればよく、エステル化反応やエステル交換反応の前に、あるいはそれらの反応終了後に、また、重縮合反応が開始される前に添加すればよい。この場合、チタン化合物とリン化合物が接触することによる触媒の失活を抑制するための手段としては、異なる反応槽に添加する方法や、同一の反応槽においてチタン化合物とリン化合物を添加する場合にはそれらの添加時期を1〜15分間ずらす方法や添加位置を離す方法がある。
【0036】
また、チタン化合物触媒を予めリン化合物と反応させた化合物を触媒として用いることもできる。この場合には次のような反応方法をとればよい。
(1)チタン化合物触媒を溶媒に混合してその一部または全部を溶媒中に溶解させた溶液に、リン化合物を原液で又は溶媒に溶解希釈させた液でもって滴下して反応させる。
(2)ヒドロキシカルボン酸系化合物や多価カルボン酸系化合物等のチタン化合物の配位子を用いる場合は、チタン化合物または配位子化合物を溶媒に混合してその一部または全部を溶媒中に溶解させた溶液に、配位子化合物またはチタン化合物を原液で又は溶媒に溶解希釈させた液でもって滴下する。さらに、この混合溶液にリン化合物を原液でまたは溶媒に溶解希釈させた液でもって滴下して反応させる。この反応方法の方が、熱安定性及び色調改善の観点から好ましい。
【0037】
上記の反応条件は0〜200℃の温度で1分以上、好ましくは20〜100℃の温度で2〜100分間加熱することによって行われる。この際の反応圧力には特に制限はなく、常圧でもよい。また、ここで用いる溶媒としては、チタン化合物、リン化合物及びカルボニル基含有化合物の一部または全部を溶解し得るものから選択すればよいが、好ましくは、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ベンゼン、キシレンから選ばれる溶媒を用いる。
【0038】
本発明で用いるポリエステルを製造させる際に用いる重合用触媒のチタン化合物としては、置換基が下記一般式で表される官能基のうちの少なくとも1種を含むチタン化合物類(チタン酸化物も含む)が挙げられる。
【0039】
【化1】
【0040】
(式1〜式6中、R1〜R3はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基、水酸基、カルボニル基、アセチル基、カルボキシル基もしくはエステル基を、又はアミノ基を有する炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)
【0041】
上記式1の官能基としては、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、ブトキシド、2−エチルヘキソキシド等のアルコキシ基、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のヒドロキシ多価カルボン酸系化合物からなる官能基が挙げられる。また、上記式2の官能基としては、アセチルアセトン等のβ−ジケトン系化合物、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のケトエステル系化合物からなる官能基が挙げられる。また、上記式3の官能基としては、フェノキシ、クレシレイト、サリチル酸等からなる官能基が挙げられる。
【0042】
また、上記式4の官能基としては、ラクテート、ステアレート等のアシレート基、フタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸またはそれらの無水物等の多価カルボン酸系化合物、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、カルボキシイミノ二酢酸、カルボキシメチルイミノ二プロピオン酸、ジエチレントリアミノ五酢酸、トリエチレンテトラミノ六酢酸、イミノ二酢酸、イミノ二プロピオン酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二プロピオン酸、メトキシエチルイミノ二酢酸等の含窒素多価カルボン酸からなる官能基が挙げられる。また、上記式5の官能基としては、アニリン、フェニルアミン、ジフェニルアミン等からなる官能基が挙げられる。
【0043】
中でも、式1の官能基及び/又は式4の官能基が含まれるチタン化合物触媒がポリマーの熱安定性及び色調の観点から好ましい。
【0044】
具体的なチタン化合物系の触媒としては、これら式1〜式6の置換基の2種以上を含んでなるチタンジイソプロポキシビスアセチルアセトナートやチタントリエタノールアミネートイソプロポキシド等が挙げられる。また、チタン酸化物系の触媒としては、主たる金属元素がチタン及びケイ素からなる複合酸化物や超微粒子酸化チタンが挙げられる。
【0045】
これらチタン化合物触媒は、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とジオール又はそのエステル形成性誘導体とから合成されるポリエステルを製造させる重合工程において、以下の(1)〜(3)の反応(全て又は一部の素反応)を促進させるために実質的に寄与する触媒機能を発揮するものである。
(1)ジカルボン酸成分とジオール成分との反応であるエステル化反応、
(2)ジカルボン酸のエステル形成性誘導体成分とジオール成分との反応であるエステル交換反応、
(3)実質的にエステル反応またはエステル交換反応が終了し、得られたポリエチレンテレフタレート低重合体を脱ジオール反応にて高重合度化せしめる重縮合反応、
【0046】
また、ポリエステル中に所定量のリン化合物を含有させるためには、ポリエステルの製造工程でリン化合物を添加すればよい。このリン化合物としては、リン酸系、亜リン酸系、ホスホン酸系、ホスフィン酸系、ホスフィンオキサイド系、亜ホスホン酸系、亜ホスフィン酸系、ホスフィン系の化合物のいずれでもよく、それらの1種または2種を用いればよい。特にポリエステルの熱安定性及び色調改善の観点から、リン酸系及び/又はホスホン酸系の化合物であることが好ましい。
【0047】
また、得られるポリマーの色調やポリマーの耐熱性を向上させる目的で、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アルミニウム化合物、亜鉛化合物、スズ化合物、マグネシウム化合物、マンガン化合物、コバルト化合物等を添加してもよい。
【0048】
上記したように、本発明法では、アンチモン化合物の量もゲルマニウム化合物の量も0〜2ppmと極めて少ない等の特定のポリエステルを用いてフィルムを製造しているので、従来技術では縦延伸ロールのような加熱延伸ロール部分で生じ易かった異物系付着物の量を、低減している。それでも、異物系付着物を完全になくすことは困難であるので、長手方向へフィルムを延伸する際の延伸ロールを、2時間〜8時間に1回の頻度で純水を浸した無塵布で、延伸ロール表面を清掃する。ここで清掃に用いる純水は、水中に粒径1μm以上の粒子を実質的に含まない水を指し、粒径0.8μmフィルターを通過させること等により作製できる。また無塵布は繊維のほつれがほとんど無く、塵の発生がほとんど無い布帛類である。
【0049】
このような定期的清掃手段を併用することによって、フィルムの被膜表面における、幅15μm以上の広がりの砂状集合表面付着異物の個数を1個/20m2 以下の水準まで低減させることが可能となり、この結果、このフィルムをベースフィルムにして製造されるDVCAMテープのDOを実用上十分な水準まで少なくすることができる。
【0050】
次に本発明のポリエステルフィルム及び磁気記録テープの製法の一例について説明する。
【0051】
本発明のポリエステルフィルムは、そのフィルム原料のポリエステルとして、含有粒子を可能な限り除いたポリエステルであって、かつ、触媒残渣由来のチタン化合物をポリエステルに対するチタン原子換算で2〜6ppm含有し、リン化合物をポリエステルに対するリン原子換算で0.2〜9ppm含有し、アンチモン化合物の存在量がポリエステルに対するアンチモン原子換算で0〜2ppmであり、ゲルマニウム化合物の存在量がポリエステルに対するゲルマニウム原子換算で0〜2ppmであり、そのチタン化合物とリン化合物の比率が、原子換算の重量比率でTi/P=0.7〜10であるポリエステルを用いる。このポリエステルを原料にして、溶融、成形、二軸延伸、熱固定からなる通常のプラスチックフィルム製造工程でフィルムを製造するが、その延伸工程では90〜140℃で、縦、横方向に、2.7〜5.5倍、3.5〜7.0倍に延伸し、190〜220℃の温度で熱固定する。そして、長手方向に延伸ロールで延伸する際に、前記した定期的清掃手段によって延伸ロールを清掃する。さらに、下記の操作を行うことにより、フィルムの片側表面に被膜を形成する。
【0052】
長手方向に延伸した後の平滑なポリエステルフィルムの片側表面に、水溶性高分子又は水分散性高分子と平均粒径5〜50nmの微細粒子とを主成分として含有する水系塗液を、固形分塗布濃度3〜100mg/m2となるように塗布する。水溶性高分子又は水分散性高分子としては、ポリビニルアルコール、トラガントゴム、カゼイン、ゼラチン、セルロース誘導体、水溶性ポリエステル、ポリウレタン、イソフタル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂等の有極性高分子、これらのブレンド体が使用できるが、これらに限定されない。
【0053】
この水系塗液の固形分塗布濃度は3〜100mg/m2である。固形分塗布濃度が3mg/m2を下回ると、微細表面突起の個数が300万個/mm2を、また、表面粗さRa値が0.5nmを下回りがちとなる。固形分塗布濃度が100mg/m2 を上回ると、微細表面突起の個数が1億個/mm2を、また、表面粗さRa値が3.0nmを上回りがちとなる。
【0054】
なお、共押出し技術の使用により、前記した原料をA層用の原料とし、積極的により大きな微粒子を含有させたB層用の原料を用いてA/B積層フィルムを溶融押出しし製膜してもよいし、B層を用いなく、前記表面A側と反対の表面B側に滑剤を含む塗液を塗布しB面側に易滑処理をしてもよい。B層を用い、更に滑剤を含む塗液を塗布しB面側の易滑処理をしてもよい。
【0055】
二軸延伸は、例えば逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法で行うことができるが、所望するならば熱固定前にさらに縦あるいは横方向あるいは縦と横方向に再度延伸させ機械的強度を高めた、いわゆる強力化タイプとすることもできる。
【0056】
本発明のポリエステルフィルムは磁気記録媒体のベースフィルムとして、デジタルデータを記録する磁気テープ用途に、特にDVCAM磁気テープ用途に優れた結果を得ることができ、好適である。また、光反応性のGe、Sb、Te等から成る映像データ記録用合金膜が形成され、映像データ等の記録が可能な光記録テープのベースフィルムとしても好適に用いることができる。
【0057】
本発明の磁気記録テープは、本発明のポリエステルフィルムの被膜表面A上に、真空蒸着により形成される強磁性金属薄膜層を設け、そしてテープ状にしたものであり、使用する金属薄膜としては公知のものを使用でき、特に限定されないが、鉄、コバルト、ニッケル、またはそれらの合金の強磁性体からなるものが好ましい。
【0058】
即ち、本発明の磁気記録テープは、本発明のポリエステルフィルムの被膜表面A上に、Co等からなる強磁性金属薄膜を、真空蒸着により膜厚み20〜300nm程度で形成し、この金属薄膜上に10nm程度の厚みのダイヤモンド状カーボン膜をコーティングし、さらにその上に、潤滑剤を塗布し、他方、片側表面Bに、固体微粒子および結合剤からなり必要に応じて各種添加剤を加えた溶液を塗布することによりバックコート層を設け、そして、所定のテープ幅に切断することにより、製造することができる。その固体微粒子、結合剤、添加剤は公知のものを使用でき、特に限定されない。バックコート層の厚さは0.3〜1.5μm程度が好ましい。
【0059】
【実施例】
本実施例で用いた測定法を下記に示す。
(1)フィルム上の微細表面突起の個数
フィルム表面を走査型電子顕微鏡により5万倍の拡大倍率で10視野以上観察し、突起状に見える突起が1mm2あたり何個あるかを測定することにより、フィルムの表面に形成された微細突起の個数を求めた。
(2)フィルム上の微細表面突起の直径
フィルム表面を走査型電子顕微鏡により5万倍の拡大倍率で5視野観察し、各視野より突起状に見える突起をランダムに10個選び、各突起の最大直径、最小直径を測定し、その平均値を各突起の直径とし、50個の突起の直径の平均値を求め、フィルムの表面に形成された微細表面突起の直径とした。
【0060】
(3)フィルムの表面粗さRa値、Rz値
フィルムの表面の表面粗さRa値、Rz値は、原子間力顕微鏡(走査型プローブ顕微鏡)を用いて測定した。即ち、セイコーインスツルメント(株)製の卓上小型プローブ顕微鏡(“Nanopics” 1000)を用い、ダンピングモードで、フィルムの表面を4μm角の範囲で原子間力顕微鏡計測走査を行い、得られる表面のプロファイル曲線よりJIS・B0601・Raに相当する算術平均粗さよりRaを、十点平均粗さよりRz値を求めた。面内方向の拡大倍率は1万〜5万倍、高さ方向の拡大倍率は100万倍程度とした。
【0061】
(4)幅15μm以上の広がりの砂状集合表面付着異物の個数
微分干渉式光学顕微鏡(観測倍率:100倍)を用いて、フィルムの被膜表面を観察し、幅15μm以上にわたる広がりでフィルム表面に付着して存在する付着異物をマーキングする。マーキングした付着異物を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、極微小物質が砂状に集合して表面に付着している異物(砂状集合表面付着異物)であるものを選択する。この光学顕微鏡での観察を、フィルムの長さ方向20m、幅方向1mの部分内について行い、マーキングし選択した付着異物の個数を数え、フィルム表面20m2あたりの、幅15μm以上の広がりの砂状集合表面付着異物の個数(個/20m2)とした。
【0062】
なお、磁気テープからの上記個数の測定は、次の方法による。
後述の(6)のように記録、録画した磁気テープのDO発生部のテープを磁気現像し、磁気記録の抜けた部分の磁性層を除去し、ベースフィルム部分をSEMにより観察し、DO原因を解析し、幅15μm以上の領域に砂状に集合した表面付着物起因か否かを解析し、上記同様に個数を数え換算して求める。
【0063】
(5)フィルムを構成するポリエステル内に含まれるチタン化合物、リン化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物の量
蛍光X線(FLX)法により、蛍光X線元素分析装置(堀場製作所社製、MESA−500W型)を用い、フィルム中のポリエステルに含まれるTi,P、Sb、Geの量を定量した。なお、添加剤や被膜中にそれら元素が含まれない場合にはフィルム全体を試料にして測定すればよい。
(6)ポリエステルの固有粘度IV
オルソクロロフェノールを溶媒として25℃で測定した。
【0064】
(7)磁気テープ(DVCAMテープ)の特性
市販のDVCAMデジタルカムコーダー(ソニー製「DSR−300」)を用いてDVCAM標準カセットテープに、静かな室内風景を180分録画した後、再生した。その再生時に画面にあらわれるブロック状のモザイク個数(ドロップアウト(DO)個数)を数えることによって、DVCAMテープ特性を評価した。
DO個数は記録後の最初の再生時と、100回再生(300時間)後とに測定し、3時間あたりのDO個数で表示した。
【0065】
次に実施例に基づき、本発明を説明する。
【0066】
[実施例1]
チタン化合物触媒によるポリエチレンテレフタレートの製造:
高純度テレフタル酸(三井化学(株)製)100kgとエチレングリコール(日本触媒(株)製)45kgのスラリーを、予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約123kgが仕込まれ、温度250℃、圧力1.2×105Paに保持されたエステル化反応槽に4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行い、得られたエステル化反応生成物123kgを重縮合槽に移送した。
【0067】
引き続いて、エステル化反応生成物が移送された重縮合反応槽に、酢酸マグネシウムのエチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対してマグネシウム原子換算で30ppmとなるように加えた。更に5分間撹拌した後、クエン酸キレートチタン化合物の2重量%エチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対してチタン原子換算で5ppmとなるように添加し、5分後、ジエチルホスホノ酢酸エチルの10重量%エチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対してリン原子換算で5ppmとなるように添加し、その後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を250℃から285℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージし常圧に戻し重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングしてポリマーのペレットとした。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は3時間であった。
【0068】
得られたポリマーのIVは0.66、ポリマーの融点は259℃、溶液ヘイズは0.7%であった。また、ポリマーから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は5ppm、リン原子の含有量は5ppmであり、Ti/P=1であり、アンチモン原子の含有量もゲルマニウム原子の含有量も0ppmであることを確認した。
【0069】
なお、上記の重合工程において触媒として添加したクエン酸キレートチタン化合物は、次の方法で合成した生成物を用いた。
【0070】
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた3Lのフラスコ中に温水(371g)にクエン酸・一水和物(532g、2.52モル)を溶解させた。この撹拌されている溶液に滴下漏斗からチタンテトライソプロポキシド(288g、1.00モル)をゆっくり加えた。この混合物を1時間加熱、還流させて曇った溶液を生成させ、これよりイソプロパノール/水混合物を真空下で蒸留した。その生成物を70℃より低い温度まで冷却し、そしてその撹拌されている溶液にNaOH(380g、3.04モル)の32重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えた。得られた生成物をろ過し、次いでエチレングリコール(504g、80モル)と混合し、そして真空下で加熱してイソプロパノール/水を除去したところ、わずかに曇った淡黄色のクエン酸キレートチタン化合物(Ti含有量3.85重量%)が得られた。
【0071】
上記方法により重合して得られ、実質的に不活性粒子を含有しないポリエチレンテレフタレートに平均粒径60nmのシリカを0.03重量%含有させた原料Aと、同一のポリエチレンテレフタレートに平均粒径190nmのケイ酸アルミニウムを0.15重量%含有させた原料Bとを、各々溶融し、厚み比5:1の割合で口金のスリットからシート状に吐出し、冷却ドラムに密着させて冷却し、ロール延伸法で110℃で3.0倍に縦延伸した。この際、延伸ロールの表面を4時間に1回の頻度で純水を浸した無塵布で清掃した。
【0072】
縦延伸の後の工程で、原料A側の表面Aの外側、原料B側の表面Bの外側に、下記組成の水溶液を25℃の温度に保ち、0.8μmのろ過精度を持つフィルターでろ過した後、固形分塗布量25mg/m2 、50mg/m2 となるように、それぞれ塗布した。
【0073】
【0074】
【0075】
その後、ステンターにて横方向に102℃で4.2倍に延伸し、215℃で熱処理し中間スプールに巻き、スリッターで小幅にスリットし、円筒コアーにロール状に巻取り、厚さ6.3μmのポリエステルフィルムとした。
【0076】
このポリエステルフィルムの表面A上に真空蒸着によりコバルト−酸素薄膜を150nmの膜厚で形成した。次にコバルト−酸素薄膜層上に、スパッタリング法によりダイヤモンド状カーボン膜を10nmの厚さで形成させ、フッ素含有脂肪酸エステル系潤滑剤を3nmの厚さで塗布した。続いて表面B上に、カーボンブラック、ポリウレタン、シリコーンからなるバックコート層を500nmの厚さで設け、スリッターにより幅6.35mmにスリットしリールに311mの長さ巻き取り磁気テープ(DVCAM用標準テープ)を作製した。
【0077】
得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0078】
[実施例2]
実施例1のベースフィルム製造において、ポリエチレンテレフタレートをポリエチレン−2,6−ナフタレートに変更し、原料A、B内のシリカ、ケイ酸アルミニウムの含有量を0.075重量%、0.45重量%と変更し、縦延伸温度、倍率を135℃で5.0倍と変更し、A面、B面外側塗布の固形分塗布量を50mg/m2、100mg/m2と変更し、横延伸温度、倍率を135℃、6.5倍と変更し、200℃で熱処理に変更し、その他は実施例1と同様にして、厚さ4.7μmのポリエステルフィルムを作製した。得られたポリエステルフィルムから、実施例1と同様にして幅6.35mm、長さ417mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は10nm、160nmであった。
【0079】
[実施例3]
実施例1のベースフィルム製造において、原料A中の平均粒径60nmのシリカを用いなかったこと以外は実施例1と同様にしてて厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0080】
[比較例1]
実施例1のベースフィルム製造において、A面外側への水溶液塗布時の固形分塗布量を2mg/m2と変更した。その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0081】
[比較例2]
実施例1のベースフィルム製造において、A面外側への塗布水溶液中の極微細シリカの濃度を0.09重量%、その水溶液塗布時の固形分濃度を120mg/m2と変更した。その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0082】
[比較例3]
実施例1のベースフィルム製造において、A面外側への塗布水溶液中の極微細シリカの粒径を4nm、その水溶液塗布時の固形分濃度を10mg/m2と変更した。その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0083】
[比較例4]
実施例1のベースフィルム製造において、A面外側への塗布水溶液中の極微細シリカの粒径を70nm、シリカ添加濃度を0.04重量%と変更した。その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0084】
[比較例5]
実施例1で得られたチタン化合物触媒によるポリエチレンテレフタレートに、従来の一般的なポリエチレンテレフタレート(アンチモン触媒によるもの、ゲルマニウム触媒によるもの)とを混合したポリマー原料を用いた。なお、この混合ポリマー原料中の元素含有量は表1に示すとおりであった。
【0085】
アンチモン触媒によるポリエチレンテレフタレート: ポリエチレンテレフタレート重合工程において添加する触媒として、通常のアンチモン系触媒を用い、通常の方法で重合して、IVが0.66のポリエチレンテレフタレート(ポリエステル中の元素含有利用は、チタンが0ppm、リンが10ppm、アンチモンが80ppm、ゲルマニウムが0ppm)を製造した。
【0086】
ゲルマニウム触媒によるポリエチレンテレフタレート: ポリエチレンテレフタレート重合工程において添加する触媒として、通常のゲルマニウム系触媒を用い、通常の方法で重合して、IVが0.66のポリエチレンテレフタレート(ポリエステル中の元素含有利用は、チタンが0ppm、リンが10ppm、アンチモンが0ppm、ゲルマニウムが40ppm)を製造した。
【0087】
実施例1のベースフィルム製造において、フィルム製造用ポリエステル原料を上記した混合ポリマー原料に変更した。その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0088】
[比較例6]
実施例1のポリエステル製造において、重合触媒として用いたクエン酸キレートチタン化合物の添加量を、得られるポリマーに対するチタン原子換算量が1ppmとなるように変更し、さらに、ジエチルホスホノ酢酸エチルの10重量%エチレングリコール溶液の添加量を、得られるポリマーに対するリン原子換算量が1ppmとなるように変更し、それ以外は実施例1と同様にして重合を行い、表1に示す元素含有量のポリエステルを製造した。
【0089】
得られたポリエステルを用い、その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0090】
[比較例7]
実施例1のポリエステル製造において、重合触媒として用いたクエン酸キレートチタン化合物の添加量を、得られるポリマーに対するチタン原子換算量が10ppmとなるように変更し、さらに、ジエチルホスホノ酢酸エチルの10重量%エチレングリコール溶液の添加量を、得られるポリマーに対するリン原子換算量が6ppmとなるように変更し、それ以外は実施例1と同様にして重合を行い、表1に示す元素含有量のポリエステルを製造した。
【0091】
得られたポリエステルを用い、その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0092】
[比較例8]
実施例1のポリエステル製造において、ジエチルホスホノ酢酸エチルの10重量%エチレングリコール溶液の添加量を、得られるポリマーに対するリン原子換算量が0.1ppmとなるように変更し、それ以外は実施例1と同様にして重合を行い、表1に示す元素含有量のポリエステルを製造した。
【0093】
得られたポリエステルを用い、その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0094】
[比較例9]
実施例1のポリエステル製造において、ジエチルホスホノ酢酸エチルの10重量%エチレングリコール溶液の添加量を、得られるポリマーに対するリン原子換算量が12ppmとなるように変更し、それ以外は実施例1と同様にして重合を行い、表1に示す元素含有量のポリエステルを製造した。
【0095】
得られたポリエステルを用い、その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0096】
[比較例10]
実施例1のベースフィルム製造において、ポリエステル原料を、比較例5で製造した、アンチモン触媒により重合されたポリエチレンテレフタレートに変更し、その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0097】
[比較例11]
実施例1のベースフィルム製造において、ポリエステル原料を、比較例5で製造した、ゲルマニウム触媒により重合されたポリエチレンテレフタレートに変更し、その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0098】
[比較例12]
実施例1のポリエステル製造において、重合触媒として用いたクエン酸キレートチタン化合物の添加量を、得られるポリマーに対するチタン原子換算量が3ppmとなるように変更し、さらに、ジエチルホスホノ酢酸エチルの10重量%エチレングリコール溶液の添加量を、得られるポリマーに対するリン原子換算量が8ppmとなるように変更し、それ以外は実施例1と同様にして重合を行い、表1に示す元素含有量のポリエステルを製造した。
【0099】
得られたポリエステルを用い、その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0100】
[比較例13]
実施例1のベースフィルム製造において、延伸ロールの清掃に用いた純水を通常の水道水に変えた。その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0101】
[比較例14]
実施例1のベースフィルム製造において、延伸ロールの清掃に用いた無塵布を通常のさらし布に変えた。その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0102】
[比較例15]
実施例1のベースフィルム製造において、延伸ロールの清掃頻度を12時間に1回と変更した。その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0103】
[比較例16]
実施例1のベースフィルム製造において、延伸ロールの清掃を行わなかった。その他は実施例1と同様にして厚さ6.3μmのポリエステルフィルムを作製し、さらに、幅6.35mm、長さ311mの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なお、ポリエステルフィルムのB面のRa値、Rz値は8nm、150nmであった。
【0104】
【表1】
【0105】
表1の特性から明らかな様に、本発明によるポリエステルフィルムをベースフィルムに用いて製造されたDVCAM磁気テープは、3時間の全長にわたってDOが殆ど生じず、繰り返し再生した後もDO発生が極めて少ない磁気テープであった。
【0106】
【発明の効果】
本発明の記録媒体用ポリエステルフィルムを用いると、DVCAM等の業務用磁気テープを製造した場合でも、ドロップアウトが極めて少なく、耐久性に優れた蒸着型磁気テープとすることができる。
Claims (7)
- ポリエステルフィルムの片側表面に、微細粒子と有機化合物を含有する被膜が形成されてなる記録媒体用ポリエステルフィルムであって、該被膜側の表面がデータ記録材薄膜が形成される面であり、該被膜の表面における微細表面突起の直径が5〜60nm、微細表面突起の個数が300万〜1億個/mm2 、表面粗さRa値が0.5〜3.0nm、かつ、幅15μm以上の広がりの砂状集合表面付着異物の個数が1個/20m2 以下であることを特徴とする記録媒体用ポリエステルフィルム。
- ポリエステルが、チタン化合物をポリエステルに対するチタン原子換算で2〜6ppm含有し、アンチモン化合物の量がポリエステルに対するアンチモン原子換算で0〜2ppmであり、ゲルマニウム化合物の量がポリエステルに対するゲルマニウム原子換算で0〜2ppmであることを特徴とする請求項1に記載の記録媒体用ポリエステルフィルム。
- ポリエステルが、さらにリン化合物をポリエステルに対するリン原子換算で0.2〜9ppm含有し、そのチタン化合物とリン化合物の比率が、原子換算の重量比率(Ti/P)で0.7〜10であることを特徴とする請求項2に記載の記録媒体用ポリエステルフィルム。
- ポリエステルがポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2、6−ナフタレートであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の記録媒体用ポリエステルフィルム。
- デジタル記録方式の磁気テープ用に用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の記録媒体用ポリエステルフィルム。
- ポリエステルを、溶融押出し、加熱された延伸ロールにより長手方向に延伸した後に、一方向に延伸されたポリエステルフイルムの片側表面に、水溶性高分子又は水分散性高分子と平均粒径5〜50nmの微細粒子とを主成分として含有する水系塗液を被膜形成用に固形分塗布濃度3〜100mg/m2 となる量で塗布した後に、乾燥した後あるいは乾燥させながら、横方向に延伸し、必要に応じて更なる延伸を必要な方向に施した後に熱処理を行うことにより、請求項1〜5のいずれかに記載の記録媒体用ポリエステルフィルムを製造する方法であって、溶融押出しに供されるポリエステルが、チタン化合物をポリエステルに対するチタン原子換算で2〜6ppm含有し、リン化合物をポリエステルに対するリン原子換算で0.2〜9ppm含有し、アンチモン化合物の量がポリエステルに対するアンチモン原子換算で0〜2ppmであり、ゲルマニウム化合物の量がポリエステルに対するゲルマニウム原子換算で0〜2ppmであり、そのチタン化合物とリン化合物の比率が、原子換算の重量比率(Ti/P)で0.7〜10であるポリエステルであり、かつ、長手方向へフィルムを延伸する際、延伸ロールの表面を2〜8時間毎に1回の頻度で、純水を含浸させた無塵布で清掃することを特徴とする記録媒体用ポリエステルフィルムの製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の記録媒体用ポリエステルフィルムの被膜表面上に強磁性金属薄膜層を設けてなることを特徴とする磁気記録テープ。
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JP2003071460A JP2004276427A (ja) | 2003-03-17 | 2003-03-17 | 記録媒体用ポリエステルフィルム、その製造方法、及び磁気記録テープ |
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