JP2005015784A - 記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルム - Google Patents

記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルム Download PDF

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Abstract

【課題】
フィルム中の異物または粗大突起およびオリゴマー析出が少なく、ベース基材に用いた場合に各種記録媒体、特に蒸着磁気記録媒体としての特性、並びに蒸着磁気記録媒体への加工性が良好なポリエステルフィルムを提供すること。
【解決手段】
二軸延伸ポリエステルフィルムであって、該フィルムに用いられるポリエステルがチタン化合物をポリエステルに対するチタン原子換算で0.5〜150ppm含有し、かつリン化合物をポリエステルに対するリン原子換算で0.1〜400ppm、アンチモン化合物の含有量がポリエステルに対するアンチモン原子換算で30ppm以下であり、かつ、結晶サイズχc=5〜7nm、面配向指数χI=5〜8.5である記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルム。
【選択図】 なし

Description

本発明は、記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルムに関するものである。更に詳しくは、フィルム中の異物や粗大突起、オリゴマー析出などが少なく、各種記録媒体、特に蒸着磁気記録媒体としての特性や蒸着磁気記録媒体への加工適性が良好な記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルムに関するものである。
ポリエステルフィルムは、強度、耐熱性、透明性、耐薬品性などの優れた特性を有するため、多方面の用途に使用されているが、さらに機能性を付与することによって、光記録、光磁気記録、蒸着磁気記録の各種記録媒体用のベースフィルムとして特に使用されている。近年、各方式において記録密度あるいは記録容量の飛躍的向上が進んでおり、ベースフィルムへの要求特性も日増しに高まっている。
例えば、光記録媒体はベース上に感光層を設けたいわゆる光ディスクと呼ばれるもので、従来のCD−Rと称されるものから、高密度、大容量記録可能で追記型のDVD−R、さらに書換型で超高密度記録可能なDVRが開発、検討されている。具体的には、レーザー光の熱エネルギーを利用した相変化型では感熱色素に液晶化合物を利用したものが検討されている。あるいは、光による直接の変化を利用したフォトンモード型が検討されており、感光材料には、光そのものを吸収、スペクトル変化するフォトクロミック化合物の利用が提案されている。また、波長の異なるレーザーで書き込み、消去させるリライタブル型や、最近発売された短波長・高エネルギーの青紫色レーザーを利用した超高密度記録型も検討されている。
感光層と磁性層を併設した光磁気記録媒体は、MRヘッドと呼ばれる磁気抵抗型ヘッドにより情報を再生する磁気記録媒体である。記録容量向上のため、磁性層の光透過性と平滑性を高める工夫が検討されている。
蒸着磁気記録媒体は、ベース上に金属薄膜を蒸着加工して磁性層を設けたものであり、磁性層のさらなる薄膜化による記録密度の向上が検討されている。ポリエステルフィルムの利用が最も進んでいる蒸着磁気記録媒体について、以下に詳述する。
1995年に実用化された民生用デジタルビデオテープは、厚さ6〜7μmのポリエステルベースフィルム上に磁性層としてコバルト(Co)の強磁性金属薄膜を真空蒸着により設け、その表面にダイヤモンド状カーボン膜をコーティングして成るものである。デジタルビデオ(DV)ミニカセットを使用したカメラ一体型ビデオの場合には基本仕様(SD仕様)で1時間の録画時間をもつ。
このデジタルビデオカセット(DVC)は、家庭用では世界初であり、以下に示したような数多くの長所を有しているため、市場の評価が高い。
a.小型ボディながら、膨大な情報が記録できる
b.信号が劣化しないから、何年たっても画質・音質が劣化しない
c.雑音の妨害を受けないから高画質・高音質が楽しめる
d.ダビングを繰り返しても映像が劣化しない
また1998年にはSD仕様で1時間20分の録画時間をもつDVミニカセットテープが実用化され、そのベースフィルムには厚さ4〜5μmのポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムが用いられており、このテープも長時間の録画時間を持ち、市場の評価は高い。
これらポリエステルベースフィルムとしては、粒径10〜300nmの微細粒子を含有し、該微細粒子により高さ5〜90nmの微細表面突起が形成されたポリエステルフィルムと、該フィルムの少なくとも片面に密着された厚さ50nm以下の有極性高分子を主体とする不連続被膜とからなり、該微細表面突起の高さが該不連続被膜の高さよりも高いポリエステルフィルム(例えば特許文献1)、ヤング率が長手方向で600kg/mm2以上であり、幅方向のヤング率が長手方向のヤング率以上の厚み7μm以下のポリエチレン−2、6−ナフタレートフィルム(例えば特許文献2)に示されるポリエステルベースフィルム等が使用されている。
例えば、民生用DVCテープでは、ベースフィルム片面側に強磁性金属薄膜を蒸着形成させるが、膜厚が100〜300nmと薄く、ベースフィルムの表面特性がテープ特性(電磁変換特性、ドロップアウト等)に大きく影響する。特に近年では、記録密度向上のため蒸着膜厚の薄膜化が進められており、従来にも増して異物、粗大突起等のベースフィルム表面欠陥のさらなる低減が強く望まれている。
その一方では、急速なDVC普及により市場の価格低下要求が強まっている。これに対し、コスト低減のためテープ加工速度の増速化も進んでいるが、増速するにつれて加工工程上の問題が起こりやすい。例えば、蒸着工程では増速に伴い蒸着条件を強化する必要があるが、それに伴う熱履歴上昇によりフィルム面からオリゴマーなどのポリエステル低分子量物が生成しやすく、経時で工程中の搬送ロール、冷却キャン上に汚れが発生しやすい。また、増速そのものによってテープ巾カット時のスリット性が低下しやすい。従って、ベースフィルムにはテープ加工工程での汚れ防止とスリット性向上の機能も求められるようになってきた。
しかしながら、ポリエステルフィルム原料であるポリエステルの合成時に使用される触媒、例えば縮重合触媒として広く使用されているアンチモン化合物の場合、極微量の残存アンチモン化合物が異物(凝集体)としてフィルム中に析出するため、ベースフィルム表面欠陥の低減要求に答えることができない。アンチモン化合物以外の重縮合触媒では、ゲルマニウム化合物が知られているが、ゲルマニウム化合物は非常に高価であり汎用的に用いることは難しい。また、チタン化合物とリン化合物とからなるチタン錯体をポリエステル重合用触媒として用いる提案がされている(特許文献3〜5参照)。この方法によれば触媒に起因した異物を少なくすることができるものの、要求レベルをクリアすることができないか、あるいは得られるポリエステルの色調が不十分である。
また、寸法安定性を向上させるにはベースフィルム製造条件のうち熱処理温度を上げることが有効であるが、熱処理温度を上げるとポリエステル中からオリゴマーが析出しやすくなり、このオリゴマーが電磁変換特性を低下させたり、加工工程上での汚れを発生させやすくなる。その他、スリット性の向上のため製造条件中の延伸倍率を上げていくと、寸法安定性の低下や延伸破れによる収率の低下が起こりやすくなるという問題がある。以上の諸問題を抱えることにより、ベースフィルムへの要求を満たすことができなかった。
特公平6−51401号公報 特開平5−185507号公報 特表2001−524536号公報 特表2002−512267号公報 特開2002−293909号公報
本発明の目的は、上記のような問題点を解決し、フィルム中の異物や粗大突起、オリゴマー析出などが少なく、各種記録媒体、特に蒸着磁気記録媒体としての特性、並びに蒸着磁気記録媒体への加工適性が良好な記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することにある。
上記目的を達成するための本発明は、チタン化合物をポリエステルに対するチタン原子重量換算で0.5〜150ppm含有し、リン化合物をポリエステルに対するリン原子重量換算で0.1〜400ppm含有し、アンチモン化合物の含有量がポリエステルに対するアンチモン原子重量換算で30ppm以下であり、かつ、結晶サイズχcが5〜7nm、面配向係数χIが5〜8.5である記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルムを特徴とする。
本発明の記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルムは、フィルム中の異物または粗大突起およびオリゴマー析出が少なく、かつフィルム強度、熱収縮特性(寸法安定性)、結晶性、配向性などに優れている。従って、本発明の記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルムを用いた場合、特に蒸着磁気記録媒体としての特性、並びに蒸着磁気記録媒体への加工性が良好であり、該用途のベース基材として好適に使用することができる。
また、蒸着磁気記録媒体だけでなく、光記録媒体、光磁気記録媒体などの各種記録媒体用のベース記材としても好適に利用可能である。
本発明の記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルムは、ポリエステルをポリマーとして含んでおり、好ましくはこのポリエステルを主体として構成されるものである。
本発明において、ポリエステルとは、ジオールとジカルボン酸とから縮重合によって得られるポリマーである。さらに、ジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等で代表されるものであり、またジオールは、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等で代表されるものである。このようなポリエステルの具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−p−オキシベンゾエート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(ポリエチレンナフタレート)等を使用することができる。
もちろん、これらのポリエステルは、ホモポリエステルであっても、コポリエステルであってもよく、コポリエステルの共重合成分としては、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール等のジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等のジカルボン酸成分を用いることもできる。
本発明に用いられるポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートが強度、耐熱性、耐水性および耐薬品性等に優れているため、特に好ましく用いられる。
また、上記ポリエステルの極限粘度は特に限定されないが、25℃のオルソクロロフェノール中で測定したときに0.4〜1.2dl/gが好ましく、より好ましくは0.5〜1.0dl/g、さらには0.5〜0.8dl/gの範囲内であるものが、好適に使用できる。
本発明のフィルムは、チタン化合物をポリエステルに対するチタン原子重量換算で0.5〜150ppm含有し、リン化合物をポリエステルに対するリン原子重量換算で0.1〜400ppm含有し、アンチモン化合物の含有量がポリエステルに対するアンチモン原子重量換算で30ppm以下であり、かつ、結晶サイズχcが5〜7nm、面配向係数χIが5〜8.5であるという特徴を有するが、上記のチタン化合物は、例えば以下に示す一般式(I)〜(VI)で表される官能基からなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基を有していることが好ましい。なお、これらのチタン化合物は通常、重合用触媒として用いられることが好ましい。また、チタン化合物としてチタン酸化物を用いてもよい。
Figure 2005015784
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(上記一般式(I)〜(V)中、R1〜R3はそれぞれ独立に水素であるか、または炭素数1〜30の有機基を表す。なおこれら有機基はアルコキシ基、水酸基、カルボニル基、アセチル基、カルボキシル基、エステル基およびアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を含んでいてもよい。)
本発明におけるチタン化合物の好ましい例として、以下(a)〜(d)に示す。
(a)一般式(I)〜(III)のR1〜R3がそれぞれ独立に水素または炭素数1〜30の有機基である化合物:アルコキシ基であるチタンイソプロポキシドやチタンブトキシド。
(b)一般式(I)〜(III)中、R1〜R3のうち少なくとも1つが、水酸基、カルボニル基、アセチル基、カルボキシル基およびエステル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する炭素数1〜30の有機基である化合物:ヒドロキシ多価カルボン酸系化合物である乳酸チタン化合物やクエン酸チタン化合物、β−ジケトン系化合物であるチタンアセチルアセトン化合物、ケトエステル系化合物であるチタンアセト酢酸メチル化合物やチタンアセト酢酸エチル化合物、ベンゼン環を有する化合物であるチタンサリチル酸化合物。
(c)一般式(I)のR1〜R3のうち少なくとも1つが、カルボキシル基および/またはエステル基を有する炭素数1〜30の有機基である化合物:ヒドロキシ多価カルボン酸系化合物である乳酸チタン化合物やクエン酸チタン化合物。
(d)一般式(IV)のR1が、水酸基、カルボニル基、アセチル基、カルボキシル基およびエステル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する炭素数1〜30の有機基である化合物:多価カルボン酸系化合物であるトリメリット酸チタン化合物、トリメシン酸チタン化合物、ピロメリット酸チタン化合物、シュウ酸チタン化合物、マロン酸チタン化合物、コハク酸チタン化合物、、含窒素多価カルボン酸系化合物であるエチレンジアミン四酢酸チタン化合物、カルボキシイミノ二酢酸チタン化合物。
本発明においては、チタン化合物として、チタンイソプロポキシド、チタンブトキシド、乳酸チタン化合物、クエン酸チタン化合物が、得られるポリエステルの熱安定性や色調の観点から特に好ましい。
さらに、本発明における上記一般式(I)〜(V)での好ましい官能基について、具体例をそれぞれ以下に示す。
(I):エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、ブトキシド、2−エチルヘキソキシド等のアルコキシ基、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のヒドロキシ多価カルボン酸系化合物からなる官能基。
(II):アセチルアセトン等のβ−ジケトン系化合物、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のケトエステル系化合物からなる官能基。
(III):フェノキシ、クレシレイト、サリチル酸等からなる官能基。
(IV):ラクテート、ステアレート等のアシレート基、フタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸またはそれらの無水物等の多価カルボン酸系化合物、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、カルボキシイミノ二酢酸、カルボキシメチルイミノ二プロピオン酸、ジエチレントリアミノ五酢酸、トリエチレンテトラミノ六酢酸、イミノ二酢酸、イミノ二プロピオン酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二プロピオン酸、メトキシエチルイミノ二酢酸等の含窒素多価カルボン酸からなる官能基。
(V):アニリン、フェニルアミン、ジフェニルアミン等からなる官能基。
本発明においては、チタン化合物の置換基として(I)及び/または(IV)が含まれていることが、得られるポリエステルの熱安定性及び色調の観点から好ましい。
また、チタン化合物としてこれら(I)〜(VI)の置換基の2種以上を含んでなるチタンジイソプロポキシビスアセチルアセトナートやチタントリエタノールアミネートイソプロポキシド等も好適に使用できる。
また、チタン酸化物としては、主たる金属元素がチタン及びケイ素からなる複合酸化物や超微粒子酸化チタンを使用することもできる。
なお、本発明の重合用触媒とは、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体から合成されるポリマーにおいて、以下の(1)〜(3)の反応全てまたは一部の素反応の反応促進に実質的に寄与する化合物を指す。
(1)ジカルボン酸成分とジオール成分との反応であるエステル化反応
(2)ジカルボン酸のエステル形成性誘導体成分とジオール成分との反応であるエステル交換反応
(3)実質的にエステル反応またはエステル交換反応が終了し、得られたポリエステル低重合体を脱ジオール反応にて高重合度化せしめる重縮合反応
主たる金属元素がチタン及びケイ素からなる複合酸化物及び超微粒子酸化チタンの製造方法は、特に限定されないが、例えば、チタンのアルコキシド化合物を原料として、加水分解反応により製造する方法において、この加水分解の速度を制御することによって得られる。具体的には、例えば主原料であるチタンアルコキシド化合物に対して、ケイ素やジルコニウム等の少量の他の金属アルコキシド化合物や多価アルコール化合物を共存させ、両者の共沈法、部分加水分解法、配位化学ゾル・ゲル法等によって合成することができる。ここで共沈法とは2種あるいはそれ以上の成分を含有する所定の組成の溶液を調製し、その組成のまま加水分解反応を進行させる方法である。また、部分加水分解法とは、一方の成分をあらかじめ加水分解した状態としておき、そこへもう一方の成分を加えさらに加水分解を進行させる方法である。また、配位化学ゾル・ゲル法とは、チタンアルコキシド原料とともに分子内に官能基を複数持つ多価アルコール化合物等を共存させ、両者の間であらかじめ反応物を形成させることによって、その後の加水分解反応の速度を制御しようとするものである。以上のような化合物の合成方法は、例えば、上野ら、「金属アルコキシドを用いる触媒調製」、第321頁第1行〜第353頁第16行、(アイピーシー、1993年8月10日発行)等に記載されている。なお、触媒として用いる超微粒子酸化チタンは、分子量が100,000(g/mol)以下のものが、触媒活性、異物抑制の点で好ましく、より好ましくは500〜100,000(g/mol)、更に好ましくは1,000〜50,000(g/mol)、特に好ましくは1,500〜20,000(g/mol)である。
本発明におけるチタン化合物は、得られるポリエステルに対してチタン原子重量換算で0.5〜150ppm含有されていることが重要である。また、ポリエステルの熱安定性や色調の点で含有量が1〜100ppmであることが好ましく、より好ましくは3〜50ppmである。
本発明におけるポリエステルは、チタン化合物と共にリンがポリエステルに対してリン原子換算で0.1〜400ppm含有されていることが必要である。なお、製膜時におけるポリエステルの異物形成抑制や耐熱性、色調の観点からリン含有量は、0.5〜100ppmが好ましく、さらに好ましくは1〜50ppmである。
なお、本発明のポリエステルに含有されるリン化合物は、ポリエステルの製造過程でリン化合物として添加される。このようなリン化合物としてはリン酸系、亜リン酸系、ホスホン酸系、ホスフィン酸系、ホスフィンオキサイド系、亜ホスホン酸系、亜ホスフィン酸系、ホスフィン系からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。具体的には、例えば、リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル等のリン酸系、亜リン酸、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル等の亜リン酸系、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、トリルホスホン酸、キシリルホスホン酸、ビフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アントリルホスホン酸、2−カルボキシフェニルホスホン酸、3−カルボキシフェニルホスホン酸、4−カルボキシフェニルホスホン酸、2,3−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,6−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、メチルホスホン酸ジエチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジエチルエステル、フェニルホスホン酸ジメチルエステル、フェニルホスホン酸ジエチルエステル、フェニルホスホン酸ジフェニルエステル、ベンジルホスホン酸ジメチルエステル、ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、ベンジルホスホン酸ジフェニルエステル、リチウム(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、ナトリウム(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、マグネシウムビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、カルシウムビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、ジエチルホスホノ酢酸、ジエチルホスホノ酢酸メチル、ジエチルホスホノ酢酸エチル等のホスホン酸系化合物、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、メチルホスフィン酸、エチルホスフィン酸、プロピルホスフィン酸、イソプロピルホスフィン酸、ブチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、トリルホスフィン酸、キシリルホスフィン酸、ビフェニリルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジプロピルホスフィン酸、ジイソプロピルホスフィン酸、ジブチルホスフィン酸、ジトリルホスフィン酸、ジキシリルホスフィン酸、ジビフェニリルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アントリルホスフィン酸、2−カルボキシフェニルホスフィン酸、3−カルボキシフェニルホスフィン酸、4−カルボキシフェニルホスフィン酸、2,3−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,4−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,6−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、3,4−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,6−トリカルボキフェニルホスフィン酸、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、ビス(2−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3−ジカルボキルシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,4−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,5−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,6−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3,5−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,4−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,5−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,6−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,4,5−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、及びビス(2,4,6−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、メチルホスフィン酸メチルエステル、ジメチルホスフィン酸メチルエステル、メチルホスフィン酸エチルエステル、ジメチルホスフィン酸エチルエステル、エチルホスフィン酸メチルエステル、ジエチルホスフィン酸メチルエステル、エチルホスフィン酸エチルエステル、ジエチルホスフィン酸エチルエステル、フェニルホスフィン酸メチルエステル、フェニルホスフィン酸エチルエステル、フェニルホスフィン酸フェニルエステル、ジフェニルホスフィン酸メチルエステル、ジフェニルホスフィン酸エチルエステル、ジフェニルホスフィン酸フェニルエステル、ベンジルホスフィン酸メチルエステル、ベンジルホスフィン酸エチルエステル、ベンジルホスフィン酸フェニルエステル、ビスベンジルホスフィン酸メチルエステル、ビスベンジルホスフィン酸エチルエステル、ビスベンジルホスフィン酸フェニルエステル等のホスフィン酸系、トリメチルホスフィンオキサイド、トリエチルホスフィンオキサイド、トリプロピルホスフィンオキサイド、トリイソプロピルホスフィンオキサイド、トリブチルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド系、メチル亜ホスホン酸、エチル亜ホスホン酸、プロピル亜ホスホン酸、イソプロピル亜ホスホン酸、ブチル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸等の亜ホスホン酸系、メチル亜ホスフィン酸、エチル亜ホスフィン酸、プロピル亜ホスフィン酸、イソプロピル亜ホスフィン酸、ブチル亜ホスフィン酸、フェニル亜ホスフィン酸、ジメチル亜ホスフィン酸、ジエチル亜ホスフィン酸、ジプロピル亜ホスフィン酸、ジイソプロピル亜ホスフィン酸、ジブチル亜ホスフィン酸、ジフェニル亜ホスフィン酸等の亜ホスフィン酸系、メチルホスフィン、ジメチルホスフィン、トリメチルホスフィン、エチルホスフィン、ジエチルホスフィン、トリエチルホスフィン、フェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン系が挙げられ、これらのいずれか1種または2種であることが好ましい。特に熱安定性及び色調改善の観点から、リン酸系及び/またはホスホン酸系であることが好ましい。また、リン酸系リン化合物が、リン酸および/またはリン酸エステル化合物であることも好ましい。さらにホスホン酸系リン化合物を用いる場合、ホスホン酸および/またはホスホン酸エステル化合物であることが好ましい。さらに具体的には、リン酸、リン酸トリメチル、ジエチルホスホノ酢酸エチルが、色調、異物抑制の観点からより好ましいものである。
本発明の記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルムに用いられるポリエステルが、アンチモン化合物を含まないか、あるいはその含有量がポリエステルに対するアンチモン原子重量換算で30ppm以下であることが重要である。この範囲とすることで、比較的安価なポリエステルを得ることができ、かつフィルムを製膜したときにフィルム中の異物や粗大突起、オリゴマー析出などを少なくすることができる。より好ましい含有量は10ppm以下であって、特には実質的に含有しないことが好ましい。
また、チタン化合物とリン化合物の比率が、チタン原子とリン原子とのモル比率(Ti/P)で0.1〜20であると、ポリエステルの熱安定性や色調が良好となり好ましい。より好ましくはTi/P=0.2〜10であり、さらに好ましくはTi/P=0.2〜5である。
本発明で用いるチタン化合物およびリン化合物は、ポリエステルの反応系にそのまま添加してもよいが、予めエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリエステルを形成するジオール成分を含む溶媒と混合し、溶液またはスラリーとし、必要に応じてチタン化合物またはリン化合物合成時に用いたアルコール等の低沸点成分を除去した後で反応系に添加すると、ポリマー中での異物生成がより抑制されるため好ましい。添加時期としては、エステル化反応触媒やエステル交換反応触媒として原料添加直後に触媒を添加する方法や、原料と同伴させて添加する方法がある。また、重縮合反応触媒として添加する場合は、実質的に重縮合反応開始前であればよく、エステル化反応やエステル交換反応の前、あるいは反応終了後、重縮合反応開始前に添加してもよい。この場合、チタン化合物とリン化合物が接触することによる触媒の失活を抑制するために、異なる反応槽に添加する方法、同一の反応槽においてチタン化合物とリン化合物の添加間隔を1〜15分とする方法、あるいは添加位置を離す方法などがある。
また、本発明においてチタン化合物を予めリン化合物と反応させたものを触媒として用いることもできる。この場合には、(1)チタン化合物を溶媒に混合してその一部または全部を溶媒中に溶解し、この混合溶液にリン化合物を原液または溶媒に溶解希釈させ滴下する。(2)ヒドロキシカルボン酸系化合物や多価カルボン酸系化合物等のチタン化合物の配位子を用いる場合は、チタン化合物または配位子化合物を溶媒に混合してその一部または全部を溶媒中に溶解し、この混合溶液に配位子化合物またはチタン化合物を原液または溶媒に溶解希釈させ滴下する。また、この混合溶液にさらにリン化合物を原液または溶媒に溶解希釈させ滴下することは、得られるポリエステルの熱安定性及び色調改善の観点から好ましいものである。上記の反応条件は0〜200℃の温度で1分以上、好ましくは20〜100℃の温度で2〜100分間加熱することによって行われる。この際の反応圧力には特に制限はなく、常圧でも良い。また、ここで用いる溶媒としては、チタン化合物、リン化合物及びカルボニル基含有化合物の一部または全部を溶解し得るものであれば特に限定されないが、好ましくは、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ベンゼン、キシレンから選択すればよい。
本発明の記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルムに用いられるポリエステルについては、ポリエステル製造において任意の時点でマンガン化合物を添加するなどして、マンガン化合物をポリエステルに対するマンガン原子重量換算で1〜400ppm含有し、マンガン化合物とリン化合物の比率がマンガン原子とリン原子のモル比率(Mn/P)で0.1〜200であることが、重合活性の低下を抑制することができる他、得られるポリエステルの色調がより良好となるため好ましい。マンガン化合物の含有量は2〜150ppmがより好ましく、さらには3〜80ppmであることがより好ましい。マンガン原子とリン原子のモル比率Mn/Pは、0.2〜150がより好ましく、さらには0.5〜100であることが最も好ましい。この場合に用いるマンガン化合物としては特に限定されないが、具体例としては、塩化マンガン、臭化マンガン、硝酸マンガン、炭酸マンガン、マンガンアセチルアセトネート、酢酸マンガン四水塩、酢酸マンガン二水塩等を用いることができる。
また、本発明のポリエステルの製造方法において任意の時点でさらにコバルト化合物を添加すると、得られるポリエステルの色調が良好となり好ましい。コバルト化合物のポリエステルに対する含有量はマンガン原子重量換算で1〜400ppm、さらには2〜150ppmであることが好ましい。この場合に用いるコバルト化合物としては特に限定はないが、具体例としては、塩化コバルト、硝酸コバルト、炭酸コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ナフテン酸コバルト、酢酸コバルト四水塩等を用いることができる。
さらに本発明では、重縮合反応の際に、アルカリ土類金属化合物を含有せしめることが異物形成抑制、重合活性、ポリエステル溶融時の体積比抵抗の点から好ましい。また、ポリエステル中のアルカリ土類金属化合物の含有量はアルカリ土類金属元素の原子重量換算で5〜100ppmであることが好ましく、より好ましくは10〜80ppm、さらには15〜60ppm含有せしめることが好ましい。100を超えてアルカリ土類金属化合物をポリエステルに含有させた場合、チタン化合物を含有した異物を形成しやすくなる。アルカリ土類金属原子とリン原子とのモル比率は、0.1〜200が好ましく、より好ましくは0.2〜150、さらには0.5〜80であることが好ましい。この場合に用いるアルカリ土類金属化合物としては、特に限定されないが、カルシウム化合物、マグネシウム化合物が好ましく、具体的には、カルシウム化合物として、塩化カルシウム、臭化カルシウム、硝酸カルシウム、炭酸カルシウム、カルシウムアセチルアセトネート、酢酸カルシウム一水塩等を用いることができ、マグネシウム化合物としては、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、硝酸マグネシウム、炭酸マグネシウムメチル、酢酸マグネシウム四水塩等を用いることができる。
また、得られるポリエステルの色調や耐熱性を向上させる目的で、アルカリ金属化合物、アルミニウム化合物、亜鉛化合物、スズ化合物等を添加してもよい。
さらに、本発明の目的を阻害しない範囲内で、着色防止剤、安定剤、抗酸化剤、耐光剤、耐候剤、充填剤、核剤、分散剤、カップリング剤等の添加剤を含有しても差支えない。
本発明の記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルムは、結晶サイズχc=5〜7nm、面配向指数χI=5〜8.5であることが必要である。結晶サイズが5nm未満で、面配向指数が8.5より大きい場合には、テープ加工時のスリット性が低下することがある。一方、結晶サイズが7nmより大きく、面配向指数が5未満である場合には、テープ特性、テープ加工性だけでなくフィルム製膜性も低下することがある。
各特性の好ましい範囲は、結晶サイズχc=5.3〜6.8nm、面配向指数χI=5.5〜8であって、より好ましい範囲は、結晶サイズχc=5.5〜6.5nm、面配向指数χI=6〜8である。
また、本発明の記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルムは、さらに下記(A)〜(C)の特性を満足していることが好ましい。
縦方向のフィルム強度=200〜400MPa・・・(A)
横方向のフィルム強度=300〜550MPa・・・(B)
横方向の80℃熱収縮率=−0.01〜0.1%・・・(C)
縦方向のフィルム強度が200MPa未満、横方向のフィルム強度が300MPa未満、横方向の80℃熱収縮率が−0.01%未満の場合には、テープ加工時のスリット性が低下しやすい。一方、縦方向のフィルム強度が400MPaより大、横方向のフィルム強度が550MPaより大、横方向の80℃熱収縮率が0.1%より大の場合には、テープ特性、テープ加工性だけでなくフィルム製膜性も低下することがある。特に横方向の80℃熱収縮率が0.1%より大きいとテープの寸法安定性が低下しやすい。
また、本発明における特性(A)〜(C)のより好ましい範囲は下記(A)’〜(C)’のとおりである。
縦方向のフィルム強度=250〜350MPa・・・(A)’
横方向のフィルム強度=350〜500MPa・・・(B)’
横方向の80℃熱収縮率=0〜0.04%・・・(C)’
本発明の記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルムは、必要に応じて2層以上の積層構成とすることが好ましい。例えば、一方の面を相対的に平滑な磁性層加工面とし、反対面を相対的に粗い走行面とすることは、加工時のフィルム搬送性、加工後のテープ特性とテープ搬送性を両立せしめることが容易であるため、好ましい構成である。
なお本発明においては、2層以上の積層体とする方法としては、溶融製膜中の共押出により複合化する方法、あるいはそれぞれ別々に製膜した後、ラミネートする方法のいずれでもよいが、コストなどの点で前者の方法がより好ましい。
実用的な層構成としては、A層/B層の2層またはA層/C層/B層の3層積層フィルムであって、A層を磁性層加工面側、B層を走行面側とした構成が好ましい態様である。なお、C層については上述のポリエステル、添加剤を使用すること以外は特に限定されないが、例えば、記録媒体用フィルムから回収されたポリエステル原料を使用することはコスト低減の観点から好ましいものである。コスト低減効果から回収されたポリエステル原料の使用比率はC層中で10重量%以上、さらには20重量%以上、特に30重量%以上であることが好ましい。
上記において、各層の厚み比率はA層/B層の2層積層の場合、B層を基準として2/1〜30/1が好ましく、より好ましくは3/1〜25/1である。A層/C層/B層の3層積層の場合には、A層+C層の厚みが前述した2層積層時のA層に相当することが好ましい。また、A層とC層の厚み比率は1/10〜2/1、さらには1/5〜1/1の範囲内であることが好ましい。厚み比率がこの範囲から外れた場合には、フィルム搬送性、テープ特性、テープ搬送性あるいはコスト低減効果が低下しやすい。
本発明においては、A層の中心線平均表面粗さRaAとB層の中心線平均粗さRaBの比率(RaA/RaB)が0.05〜0.7であることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5である。比率がこの範囲外の場合にはテープ特性、テープ搬送性あるいはフィルム搬送生が低下しやすい。
また、本発明におけるRaA、RaBの好ましい範囲は各々0.7〜10nm、2〜30nmであって、より好ましくは1〜7nm、3〜20nmである。なお、中心線表面粗さについて、後述の易滑層がフィルム表面に積層されている場合は、易滑層表面を測定した値を意味する。
本発明のポリエステルフィルムは、上記の突起形成および表面粗さを実現するため、平均粒径30〜800nm、好ましくは40〜500nm、さらに好ましくは50〜300nmの無機系および/または有機系の微粒子を0.005〜1.5重量%、さらには0.01〜1重量%添加することが好ましい。添加される微粒子としては、無機系ではシリカ、コロイダルシリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、シリカ−アルミナ複合体など、有機系では、架橋ポリスチレン粒子、ポリアクリル共重合体粒子、シリコーン粒子などを用いることが出来るが、上記のうちでは、シリカまたはコロイダルシリカを主体として添加することが好ましく、粒子径の異なる2種以上を併用することも好ましい。また、上記以外の粒子径・形状の異なる粒子を併用して添加してもよく、例えば、表面加工の施された平均粒径0.4μm以上1.0μm未満の炭酸カルシウムを、0.001〜0.1重量%となるよう併用添加してもよい。2層以上の積層構成とした場合には、微粒子の添加は走行面側のB層とし、磁性層加工面側のA層中には実質的に微粒子を含有していないことが好ましい。なお、C層については回収されたポリエステル原料に由来する微粒子を含有していても構わない。
本発明の記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルムには、単分散微粒子を含有した易滑層をフィルム表面に積層することが好ましい。易滑層の積層面側が磁性層加工面側となるが、特に2層以上の構成の場合には磁性層加工面側のA層上に積層して設けることが、ブロッキング防止効果とテープ特性とを両立できるため最も好ましい態様である。単分散微粒子としては、平均粒径3〜200nmさらには5〜100nmが好ましく、フィルム表面における存在密度としては1×105〜1×109個/mm2さらには1×106〜1×108個/mm2が好ましい。平均粒径が3nmより小さい場合にはブロッキング防止効果が低下したり、あるいは単分散微粒子同士の凝集が生じやすくなって、粒子の脱落や必要以上の粗大突起の形成を引き起こすことがあり、200nmより大きい場合にはテープ特性が低下しやすい。また、存在密度については1×105個/mm2未満では、単分散微粒子同士の間隔が広くなりすぎて実質的なブロッキング防止効果が薄れやすく、一方、1×109個/mm2より多い場合には、凝集によって粒子の脱落や必要以上の粗大突起の形成を引き起こしやすい。単分散微粒子としては、炭酸カルシウム、コロイダルシリカ、アルミナ、有機粒子などを用いることができ、コロイダルシリカ、有機粒子を主体として含有することが好ましい。さらに球形比が1.0〜1.3の粒子であることが好ましい。また粒径・種類の異なる粒子を組み合わせて(例えばコロイダルシリカと炭酸カルシウム、有機粒子とアルミナなど)添加してもよい。有機粒子としては、架橋ジビニルベンゼン粒子、アクリル系粒子、シリコーン粒子などが用いられ、アクリル系では、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アミドなどの共重合体も好適に用いられる。
易滑層にバインダーとして使用する樹脂については、ポリエステル、アクリル、ウレタン、ナイロンなどの各系統の樹脂およびそれらの混合物を用いることができるが、易滑層の上に磁性層を積層することになるため磁性層との易接着性があることが好ましく、ポリエステル樹脂、特に水溶性または水分散性ポリエステル樹脂が好ましく用いられる。水溶性ポリエステルとしては、スルホン酸塩含有ポリエステルが代表的であり、これは5−Naスルホイソフタル酸、5−アンモニウムスルホイソフタル酸、5−Kスルホイソフタル酸、4−Naスルホイソフタル酸などの成分によって、スルホン酸塩の基を分子内に導入したポリエステル樹脂である。スルホン酸塩の基を有する多価カルボン酸成分は、全多価カルボン酸成分の3〜50モル%が好ましく、より好ましくは5〜25モル%である。その他の多価カルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサン−1、4−ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などが好ましく、グリコール成分としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが好ましい。さらに、該ポリエステル樹脂のガラス転移点は40℃以上、さらには50℃以上であることが好ましい。フィルム製膜工程、あるいは磁性層加工工程ともにフィルムは熱を受けるため、ガラス転移点が40℃未満の樹脂を用いた場合には易滑層によってフィルムが工程内ロールに貼り付きやすく、かえってシワ発生などの原因になることがある。
本発明における、易滑層の形成方法は、易滑層形成塗液をポリエステルフィルムに塗布、乾燥して設ける方法が好ましい。易滑層形成塗液の塗布方法としては、例えば、リバース(ロール)コート、グラビアコート、ナイフコート、エアーナイフコート、ロールコート、ブレードコート、ビードコート、回転スクリーンコート、スロットオリフィスコート、ロッドコート、バーコート、ダイコート、スプレーコート、カーテンコート、ダイスロットコート、チャンプレックスコート、ブラシコート、ツーコート、メータリングブレード式のサイズプレスコート、ビルブレードコート、ショートドウェルコート、ゲートロールコート、グラビアリバースコート、エクストルージョンコート、押出コートなどの方法を用いることができる。
また、易滑層形成塗液の塗布工程としては、ポリエステルフィルムの製膜工程内で塗布する方法(インラインコート)、製膜後のフィルム上に塗布、乾燥する方法(オフラインコート)のいずれの方法であってもよいが、均一塗布、薄膜塗布および経済性等の点で、インラインコートがより優れた方法である。さらに、インラインコートでは、ポリエステルフィルムの配向、結晶化が完了する以前に塗布を行うことが好ましく、例えば逐次二軸延伸製膜工程では、縦延伸後のフィルムに塗布し、横延伸、熱固定を経る間に、易滑層とフィルム本体との密着向上を得る方法が一般的である。また、コート前のフィルムには塗布性改良を目的として、予めその表面にコロナ放電処理、プラズマ処理などの前処理を施しておくことも可能である。
また、該易滑層形成塗液の液媒体は水系、溶剤系あるいは両者混合系のいずれの液媒体でもよいが、インラインコート法による場合には、取扱性や防爆などの安全性の点で水系または水を主体とした両者混合系の液媒体が好ましく用いられる。また、塗液には、フィルムへの濡れ性を向上させるために界面活性剤(アニオン型、ノニオン型)を添加してもよい。
本発明においては、上記のような易滑層が、乾燥後(ドライ)の厚みで0.5〜80nm積層されていることが好ましく、より好ましくは1〜60nm、さらに好ましくは1〜50nmである。易滑層の厚みが0.5nmより薄い場合、コート時の液の塗布性が低下したり、ブロッキング防止効果が不十分となり易く、逆に80nmより厚い場合には、塗布性が低下する他、フィルム破れが発生しやすくなったり、あるいは高コストとなって経済性が低下することがあるため好ましくない。
本発明においては、必要に応じて易滑層形成面と反対面に被覆層を設けてもよい。2層以上の構成の場合には走行面側のB層上に設けることが好ましい。被覆層中には単分散微粒子を含有しないことが好ましく、被覆層形成樹脂としては易滑層のバインダーに使用する樹脂が好ましい。また、その形成方法も易滑層に準じて行えばよい。被覆層の厚みは易滑層ほど厚く設ける必要はなく、塗布性とコストの両観点から乾燥後(ドライ)の厚みで0.5〜50nm、さらには1〜40nmが好ましい。
また、本発明の記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みは、特に限定されないが、通常3〜12μm、より好ましくは4〜10μm、さらには4〜8μm程度の範囲にあることが、製膜性、寸法安定性、実用面での取扱性などの点で好ましい。
次に本発明のポリエステルフィルムに使用されるポリエステル原料の製造方法について説明する。具体例としてポリエチレンテレフタレートの例を記載するがこれに限定されるものではない。
ポリエチレンテレフタレートは通常、次のいずれかのプロセスで製造される。すなわち、(1)テレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、直接エステル化反応によって低重合体を得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセス、(2)ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを原料とし、エステル交換反応によって低重合体を得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセス、である。ここでエステル化反応は無触媒でも反応は進行するが、前述のチタン化合物を触媒として添加してもよい。また、エステル交換反応においては、マンガン、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リチウム等の化合物や前述のチタン化合物を触媒として用いて進行させ、またエステル交換反応が実質的に完結した後に、反応に用いた触媒を不活性化する目的で、リン化合物を添加することが行われる。
すなわち、本発明におけるポリエステル原料の製造方法は、(1)または(2)の一連の反応の任意の段階、好ましくは(1)または(2)の一連の反応の前半で得られた低重合体に、各種の添加物を添加した後、重縮合触媒として前述のチタン化合物を添加し重縮合反応を行い、高分子量ポリマーを得るというものである。
また、上記の反応は回分式、半回分式あるいは連続式等の形式に適応し得る。
さらに、本発明の記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法について、その一例を説明するが、本発明は、かかる例のみに限定されるものではない。
乾燥したポリエステルのチップと無機系および/または有機系の微粒子のマスターチップとを、微粒子が0.005〜1.5重量%となるように混合し、これを260〜300℃に加熱された押出機に供給し、溶融してTダイ口金内に導入し、シート状に押出成形して溶融シートを得る。
この溶融シートを、表面温度10〜60℃に冷却されたドラム上で静電気により密着冷却固化し、未延伸フィルムを作製する。該未延伸フィルムを70〜120℃に加熱したロール群に導き、長手方向(縦方向、すなわちフィルムの進行方向)に2〜5倍延伸し、20〜30℃のロール群で冷却する。
続いて長手方向に延伸したフィルム表面にそのまま、あるいは必要に応じてコロナ放電処理を施した後、易滑層形成塗液を塗布する。塗布は片面/両面のいずれでもよい。この易滑層形成塗液を塗布されたフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き90〜150℃に加熱した雰囲気中で長手方向に垂直な方向(横方向)に2〜5倍に延伸する。
延伸倍率は、縦、横それぞれ2〜5倍とするが、その面積倍率(縦延伸倍率×横延伸倍率)は6〜20倍であることが好ましい。面積倍率が6倍未満であると得られるフィルム強度が不十分となり、逆に面積倍率が20倍を超えると延伸時に破れを生じ易くなる傾向がある。
このようにして得られた二軸延伸フィルムの結晶配向を完了させて平面性、寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内にて150〜230℃で1〜30秒間の熱処理を行ない、均一に徐冷後、室温まで冷却して巻き取ることにより、本発明の記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルムを得ることができる。なお、上記熱処理工程中では、必要に応じて横方向あるいは縦方向に1〜12%の弛緩処理(リラックス)を施してもよい。また、二軸延伸は上述の逐次延伸の他に同時二軸延伸でもよく、同時二軸延伸の場合のインラインコートは、溶融シートをドラム上に密着冷却固化した未延伸フィルム表面に必要に応じてコロナ放電処理を施した後、易滑層形成塗液を塗布し、延伸すればよい。また二軸延伸後に縦、横いずれかの方向に再延伸してもよい。
上記は単膜フィルムの一例であるが、2層以上の積層構成とする場合には、例えば磁性層加工面側のA層形成のため、乾燥したポリエステルのチップを押出機Aに供給し、走行面側のB層形成のためポリエステルのチップと無機系および/または有機系の微粒子のマスターチップとを、微粒子が0.005〜1.5重量%となるように混合したものを押出機Bに供給し、溶融してTダイ複合口金内に導入して口金内でA層/B層の2層に積層されるよう合流せしめた後、シート状に共押出して溶融積層シートとする。A層/B層の厚み比率は2/1〜30/1が好ましい。以降は単膜フィルムの場合と同様である。ただし、易滑層形成塗液の塗布が片面塗布の場合にはA層側とすることが特に好ましい。
このようにして得られた本発明の記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルムは、フィルム中の異物または粗大突起およびオリゴマー析出が少なく、かつフィルム強度、熱収縮特性(寸法安定性)、結晶性、配向性などに優れている。従って、本発明の記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルムを用いた場合、特に蒸着磁気記録媒体としての特性、並びに蒸着磁気記録媒体への加工性が良好であり、該用途のベース基材に適した特性を有するフィルムである。特に、デジタル記録方式の磁気テープ用ベースフィルムとして好適に用いることができる。また、蒸着磁気記録媒体だけでなく、光記録媒体、光磁気記録媒体などの各種記録媒体用のベース記材としても好適に利用可能である。
[特性の測定方法および評価方法]
本発明の特性値は、次の評価方法、評価基準により求めた。
(1)ポリエステルおよびフィルム中の触媒とリン化合物の含有量
蛍光X線元素分析装置(堀場製作所製、MESA−500W型)により求めた。なお、ポリエステルおよびフィルムをオルソクロロフェノールに溶解(溶媒100gに対してポリマー5g)し、このポリマー溶液と同量のジクロロメタンを加えて溶液の粘性を調整した後、遠心分離器(回転数18,000rpm、1時間)で粒子を沈降させる。その後、傾斜法で上澄み液のみを回収し、上澄み液と同量のアセトンを添加することによりポリマーを再析出させ、そのあと3G3のガラスフィルター(IWAKI製)で濾過し、濾上物をさらにアセトンで洗浄した後、室温で12時間減圧乾燥してアセトンを除去した。以上の前処理を施して得られたポリマーについて触媒(チタン化合物、コバルト化合物、マンガン化合物、マグネシウム化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物)とリン化合物の分析を行った。触媒は各金属原子、リン化合物はリン原子について、ポリエステル中の含有量を重量換算して求めた。
(2)触媒とリン化合物のモル比率
触媒(チタン化合物、マンガン化合物、マグネシウム化合物)とリン化合物のモル比率は、含有量および原子量を用いて下記式より求めた。
Ti/P=(チタン化合物の含有量/チタン原子の原子量)/(リン化合物の含有量/リン原子の原子量)
Mn/P=(マンガン化合物の含有量/マンガン原子の原子量)/(リン化合物の含有量/リン原子の原子量)
Mg/P=(マグネシウム化合物の含有量/マグネシウム原子の原子量)/(リン化合物の含有量/リン原子の原子量)
ここで、チタン原子の原子量=47.9g
マンガン原子の原子量=54.9g
マグネシウム原子の原子量=24.3g
リン原子の原子量=31.0g
(3)ポリマーの極限粘度
オルソクロロフェノールを溶媒として25℃で測定した。
(4)フィルム中の粒子の平均粒径、含有量
粒子の平均粒径は、フィルム断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて10万倍以上の倍率で観察し、TEM切片厚さを約100nmとして、任意に場所を変えて100視野以上測定し平均値を算出して求めた。凝集粒子の場合は凝集体について等価円相当径の平均値とした。
粒子の含有量は、ポリエステルは溶解し、粒子は溶解させない溶媒を選択し、粒子をポリエステルから遠心分離して重量を測定して算出した。なお、粒子の重量の全体重量に対する比率(重量%)をもって粒子含有量とした。場合によっては赤外分光法の併用も有効である。
(5)易滑層中の単分散微粒子の粒径、存在密度
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてフィルムの易滑層積層面を任意の箇所について2,000〜30,000倍の倍率で5枚撮影した。粒子ごとに最大径と最小径を測定し、個々の粒子の粒径を最大径と最小径の平均として求めた。また、SEM写真から粒子の個数を数え、写真5枚での平均値から単位面積あたりの粒子数を算出して存在密度とした。
(6)易滑層の厚み
フィルムの小片を樹脂で固定し、フィルムの長手方向に平行に切断したフィルム断面の超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡により10万倍で観察することによって、易滑層の厚みを求めた。なお、塗布液のウェット厚みに塗布液固形分濃度を掛け、塗布後の延伸倍率で除することにより求めることもできる。
(7)フィルム表面粗さ(Ra)
卓上プローブ顕微鏡“ナノピクス”の測定ヘッドNPX100[NPX1MAP001]およびコントローラNanopics1000[NPX1EBP001](いずれもセイコーインスツルメンツ(株)製)を用いて測定した。なお、測定面積は、磁性層加工面側は40μm角、走行面側は100μm角とした。その他の測定条件は次のとおりである。スキャン速度:380sec/FRAME、スキャン回数:512本、振幅度合い:磁性層加工面側はLLモード、走行面側はHHモード。
(8)フィルム強度
JIS C2151に準じ、テンシロンUTM−4−100(ボールドウィン社製)を用いて測定した。
(9)80℃熱収縮率
JIS C2151に準じ、フィルムを300×300mmの大きさに切り出した試料を熱風オーブン内で80℃×30分間の熱処理を行い、処理前後の寸法差を読み取って下記式から熱収縮率を求めた。寸法測定には読み取り機を備えた万能撮影機を使用し、精度1μmで読み取った。
熱収縮率=((処理前長−処理後長)/処理前長)×100(%)
(10)結晶サイズχc、面配向指数χI
X線照射装置PW1729およびコントローラーPW1710(いずれもフィリップス社製)を用い、結晶化度100%と仮定して測定した。測定は印加電圧35kV、電流値15mA、倍率5万倍の条件で行った。なお、結晶サイズχcが大きいほど結晶性が高いことを表し、面配向指数χIが小さいほど配向が強いことを表す。
(11)異物または粗大突起の個数
フィルムの磁性層加工面同士を重ね合わせ静電印加法によって密着させ、これを10cm×10cmの大きさに切り出す。次に、ハロゲンランプからの光をフィルター(グリーン)にかけ、波長550nmの光として実体顕微鏡により表面を観察し、干渉縞(ニュートンリング)形成部分をカウントして100cm2当たりの個数を決定した。任意に5枚切り出したサンプルを用い、その平均値を異物または粗大突起の個数とした。
(12)オリゴマー析出特性(オリゴマー個数)
加熱強制テストで析出させたオリゴマー個数をカウントした。すなわちフィルムを10cm×10cmの大きさに切り出し、無塵紙で挟み込んだものを恒温恒湿機中で60℃×48時間処理する。加熱前、加熱後の各サンプル表面を磁性層加工面側(A層)からSEMで2,000〜20,000倍に拡大観察し、加熱後の表面のみに析出した長径0.1μm以上の異物をオリゴマーと見なした。任意に5枚撮影した写真の平均値から、1mm2当たりの個数に換算してオリゴマー個数とした。
(13)ロール、冷却キャン汚れ
ベースフィルムの表面へ強磁性金属薄膜を真空蒸着する際のロール、冷却キャンの汚れ状態を下記基準で判定し、この汚れ状況から、ベースフィルムからのポリエステル低分子量や分解物の析出の多寡を判断した。◎および○の場合が工程上およびテープ特性上問題ないものである。
この真空蒸着工程において、ベースフィルムの巻長(ロール、冷却キャンの汚れ判定までに通過したフィルムの長さ)は20,000m、フィルム走行速度は90m/分、冷却キャンの温度はマイナス25度に設定し、コバルト−酸素薄膜を110nmの膜厚で形成させた。
全く汚れなし ・・・◎
全面に均一に薄く汚れあり(青味) ・・・○
全面に均一に汚れあり(白味) ・・・△
全面あるいは部分的に粉状物が付着・・・×
(14)テープ特性
市販のカメラ一体型デジタルビデオテープレコーダーのLPモードを用いて静かな室内で録画、再生し、ドロップアウト個数を求めることにより行った。ドロップアウト個数の測定は、後述の方法で作製したDVCテープを市販のカメラ一体型デジタルビデオテープレコーダーで録画し、1分間の再生をして画面に現れたブロック状のモザイク個数を数えることによって行った。テープ製造後の初期特性と150回繰返し走行後のドロップアウト(DO)個数を測定した。ドロップアウトのないものが良い。
(15)テープ加工時のスリット性
DVCテープにスリットする際の刃の汚れ状態を下記基準で判定した。◎および○の場合が工程上およびテープ特性上問題ないものである。なお、スリット工程でのテープ巻長(刃の汚れ判定までに通過したテープ長さ)は20,000mとした。
全く汚れなし・・・◎
薄く汚れあり・・・○
汚れあり ・・・△
粉状物が付着・・・×
本発明を以下の実施例を用いて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
(1)ポリエステル原料の製造方法
高純度テレフタル酸(三井化学(株)製)100kgとエチレングリコール(日本触媒(株)製)45kgのスラリーを、予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約123kgが仕込まれ、温度250℃、圧力1.2×105Paに保持されたエステル化反応槽に4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応(以降、ES反応という。)を行い、このES反応生成物の123kgを重縮合槽に移送した。
引き続いて、ES反応生成物が移送された前記重縮合反応槽に、酸化チタン粒子のエチレングリコールスラリーを得られるポリエステルに対して0.3重量%添加した。5分間撹拌した後、酢酸コバルト及び酢酸マンガンのエチレングリコール溶液を得られるポリエステルに対してコバルト原子重量換算で30ppm、マンガン原子重量換算で15ppmとなるように加えた。更に5分間撹拌した後、チタン及びケイ素からなる複合酸化物(アコーディス社製、商品名:C−94、以降はTi/Si複合酸化物という。)の0.15重量%エチレングリコール溶液を得られるポリエステルに対してチタン原子重量換算で10ppmとなるように添加し、その5分後にフェニルホスホン酸ジメチルエステルの10重量%エチレングリコール溶液を得られるポリエステルに対してリン原子重量換算で6ppmとなるように添加した。その後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を250℃から285℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水中にストランド状に吐出、直ちにカッティングしてポリエステル原料としてポリエチレンテレフタレート(以降、PETという。)のチップを得た。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は3時間であった。
得られたPETチップのIVは0.66であった。また、該PETチップから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は10ppm、リン原子の含有量は6ppmであり、チタン原子とリン原子のモル比率Ti/P=1.1、アンチモン原子の含有量が0ppmであることを確認した。
(2)ポリエステルフィルムの製造方法
A層を形成するため、上記(1)の方法で製造したPETチップを180℃で3時間乾燥した後、押出機Aに供給し、常法により285℃で溶融してTダイ複合口金に導入した。
一方、B層を形成するため、上記(1)の方法で製造したPETをベースに、さらに平均粒径60nmのシリカを0.03重量%、平均粒径200nmのシリカを0.36重量%含有させたチップ原料を180℃で3時間減圧乾燥した後に、押出機B側に供給し、常法により285℃で溶融して同様にTダイ複合口金に導入した。
次いで、該口金内でA層/B層=6/1の厚み比に積層されるよう合流せしめた後、シート状に共押出して溶融積層シートとした。そして、該溶融シートを、表面温度25℃に保たれた冷却ドラム上にB層が該ドラム側に来るよう静電荷法で密着冷却固化させて未延伸積層フィルムを得た。続いて、該未延伸積層フィルムを常法に従い105℃に加熱されたロール群を用いて縦方向(以降、MDという。)に3.0倍延伸し、25℃のロール群で冷却して一軸延伸フィルムとした。さらに続いて該一軸延伸フィルムのA層側表面に下記組成の易滑層形成塗液(水溶液)をメタリングバーを用いたバーコート方式にて塗布した。
[易滑層形成塗液]
水溶性ポリエステル 0.10重量%
メチルセルロース 0.30重量%
平均粒子径18nmのコロイダルシリカ 0.03重量%
この易滑層形成塗液を塗布された一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の予熱ゾーンに導き105℃で予熱・乾燥後、引き続き連続的に110℃の加熱ゾーンで横方向(以降、TDという。)に4.2倍延伸した。さらに引き続いてテンター内の熱処理ゾーンで210℃の熱処理を施して結晶配向を完了させ、均一に徐冷後に巻き取り、ベース厚み6.3μm、易滑層の厚み1.9nmの構成としたポリエステルフィルムを中間製品として得た。さらに、スリッターで620mm幅にスリットし、20,000m長さのフィルムロール状物とした。
該ポリエステルフィルムのA層側に真空蒸着法によりコバルトを蒸着させ、膜厚110nmの強磁性金属薄膜層を形成させた。次にスパッタリング法によりダイヤモンド状カーボン膜を10nmの厚みで形成させ、さらにフッ素系潤滑剤層を6nmの厚みで設けた。続いて、B層上にカーボンブラック、ポリウレタン、シリコーンからなるバックコート層を400nmの厚さで設け、スリッターにより6.35mmの幅にスリットし、蒸着磁気記録媒体(DVCテープ)を作製した。
得られたPETフィルムおよびDVCテープの特性は表1、表2に示したとおりであって、異物または粗大突起の数、オリゴマー個数が少なく、蒸着工程でのロール、冷却キャンの汚れも少なく、テープ特性、テープ加工時のスリット性が良好であった。すなわち、蒸着磁気録媒体としての特性、並びに蒸着磁気記録媒体への加工性が極めて良好であった。
(実施例2)
ポリエステル原料の製造において、触媒として添加するTi/Si複合酸化物を、テレフタル酸とエチレングリコールのスラリーを供給する前のエステル化反応槽に、得られるポリエステルに対してチタン原子重量換算で15ppm添加し、重縮合反応では改めてチタン化合物を触媒として添加しなかったこと以外は実施例1と同様にしてPETを重合し、フィルムを製造した。その結果、得られたPETフィルムおよびDVCテープは表1、表2に示したとおり各特性に優れるものであった。
(実施例3)
ポリエステル原料の製造において、触媒として添加するTi/Si複合酸化物を、クエン酸キレートチタン化合物に変更し、その2重量%エチレングリコール溶液を得られるポリエステルに対してチタン原子重量換算で10ppmとなるように添加したこと以外は実施例1と同様にしてPETを重合し、フィルムを製造した。その結果、得られたPETフィルムおよびDVCテープは表1、表2に示したとおり各特性に優れるものであった。なお、クエン酸キレートチタン化合物の合成方法は以下のとおりである。
[クエン酸キレートチタン化合物の合成方法]
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた3Lのフラスコ中に温水(371g)にクエン酸・一水和物(532g、2.52モル)を溶解させた。この撹拌されている溶液に滴下漏斗からチタンテトライソプロポキシド(288g、1.00モル)をゆっくり加えた。この混合物を1時間加熱、還流させて曇った溶液を生成させ、これよりイソプロパノール/水混合物を減圧下で蒸留した。その生成物を70℃より低い温度まで冷却し、そしてその撹拌されている溶液にNaOH(380g、3.04モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えた。得られた生成物をろ過し、次いでエチレングリコール(504g、8モル)と混合し、そして減圧下で加熱してイソプロパノール/水を除去し、わずかに曇った淡黄色の生成物(Ti含有量3.85重量%)を得た。
(実施例4)
ポリエステル原料の製造において、触媒として添加するクエン酸キレートチタン化合物を、クエン酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸混合)に変更し、重縮合反応の開始時点でリン化合物(フェニルホスホン酸ジメチルエステルの10重量%エチレングリコール溶液)を添加しなかったこと以外は実施例3と同様にしてPETを重合し、フィルムを製造した。その結果、得られたPETフィルムおよびDVCテープは表1、表2に示したとおり各特性に優れるものであった。なお、クエン酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸混合)の合成方法は以下のとおりである。
[クエン酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸混合)の合成方法]
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた3Lのフラスコ中に温水(371g)にクエン酸・一水和物(532g、2.52モル)を溶解させた。この撹拌されている溶液に滴下漏斗からチタンテトライソプロポキシド(288g、1.00モル)をゆっくり加えた。この混合物を1時間加熱、還流させて曇った溶液を生成させ、これよりイソプロパノール/水混合物を減圧下で蒸留した。その生成物を70℃より低い温度まで冷却し、そしてその撹拌されている溶液にNaOH(380g、3.04モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えた。得られた生成物をろ過し、次いでエチレングリコール(504g、8モル)と混合し、そして減圧下で加熱してイソプロパノール/水を除去し、わずかに曇った淡黄色の生成物(Ti含有量3.85重量%)を得た。この混合溶液に対し、フェニルホスホン酸(158g、1.00モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量2.49重量%)。
(実施例5)
ポリエステル原料の製造において、触媒として添加するクエン酸キレートチタン化合物を、乳酸キレートチタン化合物に変更したこと以外は実施例3と同様にしてPETを重合し、フィルムを製造した。その結果、得られたPETフィルムおよびDVCテープは表1、表2に示したとおり各特性に優れていた。なお、乳酸キレートチタン化合物の合成方法は以下のとおりである。
[乳酸キレートチタン化合物の合成方法]
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた2Lのフラスコ中に撹拌されているチタンテトライソプロポキシド(285g、1.00モル)に滴下漏斗からエチレングリコール(218g、3.51モル)を加えた。添加速度は、反応熱がフラスコ内容物を約50℃に加温するように調節された。その反応混合物を15分間撹拌し、そしてその反応フラスコに乳酸アンモニウム(252g、2.00モル)の85重量/重量%水溶液を加えると、透明な淡黄色の生成物(Ti含有量6.54重量%)を得た。
(実施例6)
ポリエステル原料の製造において、触媒として添加するクエン酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸混合)を、乳酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸、リン酸混合)に変更したこと以外は実施例4と同様にしてPETを重合し、フィルムを製造した。その結果、得られたPETフィルムおよびDVCテープは表1、表2に示したとおり各特性に優れるものであった。なお、乳酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸、リン酸混合)の合成方法は以下のとおりである。
[乳酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸、リン酸混合)の合成方法]
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた2Lのフラスコ中に撹拌されているチタンテトライソプロポキシド(285g、1.00モル)に滴下漏斗からエチレングリコール(218g、3.51モル)を加えた。添加速度は、反応熱がフラスコ内容物を約50℃に加温するように調節された。その反応混合物を15分間撹拌し、そしてその反応フラスコに乳酸アンモニウム(252g、2.00モル)の85重量/重量%水溶液を加えると、透明な淡黄色の生成物(Ti含有量6.54重量%)を得た。この混合溶液に対し、フェニルホスホン酸(158g、1.00モル)及びリン酸の85重量/重量%水溶液(39.9g、0.35モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量5.71重量%)。
(実施例7)
ポリエステル原料の製造において、触媒として添加するクエン酸キレートチタン化合物をチタンアルコキシド化合物に変更し、リン化合物としてのフェニルホスホン酸ジメチルエステルをジエチルホスホノ酢酸エチルに変更したこと以外は実施例3と同様にしてPETを重合し、フィルムを製造した。その結果、得られたPETフィルムおよびDVCテープは表1、表2に示したとおり各特性に優れるものであった。なお、チタンアルコキシド化合物の合成方法は以下のとおりである。
[チタンアルコキシド化合物の合成方法]
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた2Lのフラスコ中に撹拌されているチタンテトライソプロポキシド(285g、1.00モル)に滴下漏斗からエチレングリコール(496g、8.00モル)を加えた。添加速度は、反応熱がフラスコ内容物を約50℃に加温するように調節された。その反応フラスコに、NaOH(125g、1.00モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えて透明な黄色の液体を得た(Ti含有量4.44重量%)。
(実施例8)
ポリエステル原料の製造において、触媒として添加するクエン酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸混合)を、チタンアルコキシド化合物(ジエチルホスホノ酢酸エチル混合)に変更したこと以外は実施例4と同様にしてPETを重合し、フィルムを製造した。その結果、得られたPETフィルムおよびDVCテープは表1、表2に示したとおり各特性に優れるものであった。なお、チタンアルコキシド化合物(ジエチルホスホノ酢酸エチル混合)の合成方法は以下のとおりである。
[チタンアルコキシド化合物(ジエチルホスホノ酢酸エチル混合)の合成方法]
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた2Lのフラスコ中に撹拌されているチタンテトライソプロポキシド(285g、1.00モル)に滴下漏斗からエチレングリコール(496g、8.00モル)を加えた。添加速度は、反応熱がフラスコ内容物を約50℃に加温するように調節された。その反応フラスコに、NaOH(125g、1.00モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えて透明な黄色の液体を得た(Ti含有量4.44重量%)。この混合溶液に対し、ジエチルホスホノ酢酸エチル(224g、1.00モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量2.87重量%)。
(実施例9)
ポリエステル原料の製造において、重縮合触媒として、さらに三酸化アンチモンを得られるポリマーに対してアンチモン原子重量換算で10ppm併用添加したこと以外は実施例1と同様にしてPETを重合し、フィルムを製造した。その結果、得られたPETフィルムおよびDVCテープは表1、表2に示したとおり良好な特性を示していた。
(実施例10)
熱処理温度を215℃としたこと以外は実施例1と同様にしてフィルムを製造した。その結果、得られたPETフィルムおよびDVCテープは表1、表2に示したとおり各特性に優れ、特にテープ加工時のスリット性に優れていた。
(実施例11)
易滑層のコロイダルシリカを平均粒子径11nmのアクリル酸エステル系有機粒子に変更したこと以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合し、フィルムを製造した。その結果、得られたPETフィルムおよびDVCテープは表1、表2に示したとおり各特性に優れていた。
(実施例12)
実施例1においてポリエステル原料の製造を以下のとおり行い、実施例1と同様にしてフィルムを製造した。その結果、得られたPETフィルムおよびDVCテープは表1、表2に示したとおり、各特性に優れ、特に異物または粗大突起が少ないものであった。
[ポリエステル原料の製造方法]
高純度テレフタル酸(三井化学製)100kgとエチレングリコール(日本触媒製)45kgのスラリーを予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約123kgが仕込まれ、温度250℃、圧力1.2×105Paに保持されたエステル化反応槽に4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行い、このエステル化反応生成物の123kgを重縮合槽に移送した。
引き続いて、エステル化反応生成物が移送された前記重縮合反応槽に、ジエチルホスホノ酢酸エチルを0.01重量部添加し、さらに酢酸マグネシウム4水塩を0.04重量部、さらに重合触媒として実施例1で用いたクエン酸キレートチタン化合物のエチレングリコール溶液を得られるポリエステルに対してチタン原子が原子重量換算で5ppmとなるように添加した。
その後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を250℃から285℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間は共に60分とした。所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングしてPETのチップを得た。なお、減圧開始から所定の攪拌トルク到達までの時間は3時間であった。
得られたPETの極限粘度(IV)は0.63、融点は259℃であった。また、該PETチップから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は5ppm、リン原子は10ppm、マグネシウム原子は40ppm(全て原子重量換算)であることを確認した。
(比較例1)
ポリエステル原料の製造において、触媒としてTi/Si複合酸化物の代わりに、三酸化アンチモン(住友金属鉱山(株)製)を、得られるポリエステルに対してアンチモン原子重量換算で400ppm添加したこと以外は実施例1と同様にしてPETを重合し、フィルムを製造した。触媒を変更しても重合反応性は良好に推移するが、得られたPETフィルムの特性は、表1、表2に示したとおり、異物または粗大突起の数、オリゴマー個数が多く、蒸着工程でのロール、冷却キャンの汚れも見られ、テープ加工時のスリット性が不良であった。また、DVCテープの特性としては表2に示したとおり150回走行後の磁気特性が不良であった。すなわち、蒸着磁気記録媒体への加工性、並びに蒸着磁気録媒体としての特性に劣っていた。
(比較例2)
ポリエステル原料の製造において、触媒としてTi/Si複合酸化物の代わりに、酸化ゲルマニウム(住友金属鉱山(株)製)を、得られるポリエステルに対してゲルマニウム原子重量換算で150ppm添加したこと以外は実施例1と同様にしてPETを重合し、フィルムを製造した。触媒を変更しても重合反応性は良好に推移するが、得られたPETフィルムおよびDVCテープの特性は、比較例1と同様、蒸着磁気記録媒体への加工性、並びに蒸着磁気録媒体としての特性、に劣るものであった。
(比較例3)
ポリエステル原料の製造において、触媒としてTi/Si複合酸化物の代わりに、酢酸アンチモン(住友金属鉱山(株)製)を、得られるポリエステルに対してアンチモン原子重量換算で400ppm添加したこと以外は実施例1と同様にしてPETを重合し、フィルムを製造した。触媒を変更しても重合反応性は良好に推移するが、得られたPETフィルムおよびDVCテープの特性は、比較例1と同様、蒸着磁気記録媒体への加工性、並びに蒸着磁気録媒体としての特性に劣るものであった。
(比較例4)
テンター内の熱処理温度を235℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてフィルムを製造した。得られたPETフィルムおよびDVCテープの特性は、表2に示したとおり蒸着磁気記録媒体への加工性(ロール、冷却キャンの汚れ)に劣り、磁気記録媒体としての特性(150回走行後DO個数)もやや劣るものであった。
(比較例5)
テンター内の熱処理温度を130℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてフィルムを製造した。得られたPETフィルムおよびDVCテープの特性は、表2に示したとおり蒸着磁気記録媒体への加工性(スリット性)に劣るものであった。
Figure 2005015784
Figure 2005015784

Claims (19)

  1. チタン化合物をポリエステルに対するチタン原子重量換算で0.5〜150ppm含有し、リン化合物をポリエステルに対するリン原子重量換算で0.1〜400ppm含有し、アンチモン化合物の含有量がポリエステルに対するアンチモン原子重量換算で30ppm以下であり、かつ、結晶サイズχcが5〜7nm、面配向係数χIが5〜8.5である記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルム。
  2. 縦方向のフィルム強度が200〜400MPaであり、横方向のフィルム強度が300〜550MPaであり、かつ横方向の80℃熱収縮率が−0.01〜0.1%である、請求項1に記載の記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルム。
  3. 少なくとも2層の層状構成を有している、請求項1または2に記載の記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルム。
  4. 層状構成がA層/B層の2層であるか、またはA層/C層/B層の3層であって、磁性層が設けられる側の層(A層)の中心線平均表面粗さRaAと走行側の層(B層)の中心線平均表面粗さRaBとの比率RaA/RaBが0.05〜0.7である、請求項1〜3のいずれかに記載の記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルム。
  5. 少なくとも片面に有機粒子および/または無機粒子を含有する易滑層が設けられている、請求項1〜4のいずれかに記載の記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルム。
  6. 記録媒体が、光記録媒体、光磁気記録媒体または蒸着磁気記録媒体のいずれかである、請求項1〜5のいずれかに記載の記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルム。
  7. 蒸着磁気記録媒体用であって、デジタル記録方式の磁気テープ用ベースフィルムとして用いられる、請求項6に記載の記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルム。
  8. チタン化合物とリン化合物の比率が、チタン原子とリン原子のモル比率(Ti/P)として0.1〜20である、請求項1〜7のいずれかに記載の記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルム。
  9. マンガン化合物をポリエステルに対するマンガン原子重量換算で1〜400ppm含有し、マンガン化合物とリン化合物の比率が、マンガン原子とリン原子のモル比率(Mn/P)として0.1〜200である、請求項1〜8のいずれかに記載の記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルム。
  10. リン化合物が、リン酸系、亜リン酸系、ホスホン酸系、ホスフィン酸系、ホスフィンオキサイド系、亜ホスホン酸系、亜ホスフィン酸系およびホスフィン系からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1〜9のいずれかに記載の記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルム。
  11. リン酸系リン化合物が、リン酸および/またはリン酸エステル化合物である、請求項10に記載の記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルム。
  12. ホスホン酸系リン化合物が、ホスホン酸および/またはホスホン酸エステル化合物である、請求項10に記載の記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルム。
  13. チタン化合物が酸化物である、請求項1〜12のいずれかに記載の記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルム。
  14. チタン化合物が、金属元素としてチタンおよびケイ素を含む複合酸化物である、請求項13に記載の記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルム。
  15. チタン化合物が、下記一般式(I)〜(VI)で表される官能基からなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基を有している、請求項1〜12のいずれかに記載の記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルム。
    Figure 2005015784
    Figure 2005015784
    Figure 2005015784
    Figure 2005015784
    Figure 2005015784
    Figure 2005015784
    (一般式(I)〜(V)中、R1〜R3はそれぞれ独立に水素であるか、または炭素数1〜30の有機基を表す。)
  16. 一般式(I)〜(III)中、R1〜R3が、それぞれ独立に水素または炭素数1〜30の有機基である、請求項15に記載の記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルム。
  17. 一般式(I)〜(III)中、R1〜R3のうち少なくとも1つが、水酸基、カルボニル基、アセチル基、カルボキシル基およびエステル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する炭素数1〜30の有機基である、請求項15に記載の記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルム。
  18. 一般式(I)のR1〜R3のうち少なくとも1つが、カルボキシル基および/またはエステル基を有する炭素数1〜30の有機基である、請求項15に記載の記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルム。
  19. 一般式(IV)のR1が、水酸基、カルボニル基、アセチル基、カルボキシル基およびエステル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する炭素数1〜30の有機基である、請求項15に記載の記録媒体用二軸延伸ポリエステルフィルム。
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